“家族”という厄介な絆を描く『海街diary』の背後に漂う“生と死”の匂い
を見つめた話なんだな、ということです。
幸が看護師であること(幸は後に終末期ケア病棟に異動)、父の死、さまざまな形で関わる相続の問題など、「生きる」「死ぬ」を見つめた話が非常に多いです。
生きているから恋をして、トラブルが起こり、そして病と闘い、亡くなれば遺産の問題が起きる。四姉妹の体験を通して、そういう生と死にまつわる出来事を語っているように思います。
逆境と挫折を抱えて自分と向き合う朋章にも注目この話は、非常に考えどころが多いので、萌えだの壁ドンだの軽薄な感想が全然思いつかないんだけど、強いて言うなら序盤に登場する朋章くんです。
彼は、『ラヴァーズ・キス』という作品のメインキャストでした。時系列から言うと、『海街Diary』のあとに『ラヴァーズ・キス』という順番なのですが、となると両作品を読んでいる読者は、彼がこのあとどうなるかを知ってるわけです。読み進めながら、一生懸命登場人物たちに突っ込みを入れてしまいます。
しかしこの朋章くん、いろいろ人生大変そうです。朋章は、死ぬギリギリのところで生きてきたような人なので、まさしくこの作品に登場するにふさわしい感じがします。
いえね、でも順風満帆で失敗の経験のない男は、なんにも考えてないし思い上がっててあとあと面倒くさいので、やっぱり女はトラウマ抱えて頑張ってる男子が好きなんですよね。
Text/和久井香菜子