なぜ“誰かがいる空間” で暮らしたいのか?/東京大学・松村秀一教授
おひとりさまブームが依然として続く中、その真逆の価値観を題材とした『東京タラレバ娘』のヒットには驚かされた。「結婚=幸せな人生」という考え方よりも、多様な生き方が求められる社会になったかと思えば、『東京タラレバ娘』での「東京オリンピックまでに結婚しなきゃダメ!」といった煽りにもまだまだ需要があるのだろう。
東京オリンピックに向けて着々と開発が進んでいる街を見て、「一人だけ取り残されている気がして不安」とボヤいたSOLO編集部の編集者O氏の一言がきっかけで、この記事は企画された。「一人暮らしの家に帰った瞬間に押し寄せる不安をどうにかしたい。独り者が快適に暮らせる住環境について知りたい」と嘆くO氏。
一人世帯の住環境は、今どうなっていて、これからどうなっていくのだろうか。『ひらかれる建築 ――「民主化」の作法』(ちくま新書)の著者・松村秀一先生にお話を伺った。
多様化されつつある一人世帯の暮らし方
松村秀一先生(以下、松村)「今の日本には一人世帯が最も多く、ワンルームマンションに住んでいる人がほとんどなので、『一人だけ取り残されている』という感覚は実は間違っているのです。
ただ、そういった一人きりで生きていくという不安からなのか、一人世帯の暮らし方が多様化している流れは確かにあります」