なぜ“誰かがいる空間” で暮らしたいのか?/東京大学・松村秀一教授
――それは例えば、どのような暮らし方でしょうか?
松村「代表的なのはシェアハウスでしょうね。古くは木造賃貸のアパートとかが一人暮らしの代表的な住まいでしたが、これはトイレが共同だったり、自分専用のお風呂がついていなかったり、自分の部屋だけで完結する快適な一人空間とは言い難かった。そこで登場したのがワンルームマンションで、これは家族が住むような部屋を一人向けに突き詰めていった形態の住居なのです。キッチンを小さくして、部屋の数を減らして、閉鎖的な一人の空間を作り上げたわけです」
――なるほど、確かにそうですね。
松村「けれど昨今は、一人だからって必ずしも住居の持つ機能をコンパクトにすればいいわけではないことがわかってきたのです。おひとりさまであっても“他人が含まれる空間”に住みたい人は少なからずいるようだ、と。
今までは、このような“他人が含まれる空間”というのは、住宅に必要なものだと認識されていなかったんですよね。ここ数年、“住宅”と呼んでいなかったものが、住宅化していっているのです」
なぜ“他人が含まれる空間”に住みたいのか
松村「“シェア”というのも今の世代特有の価値観だと思います。