夫の浮気相手とまさかの遭遇…キャリア女性とボサボサの妻、惨めで何も言えない
第5話:惨めな自分
ヒールの音を鳴らし、沙彩がホームに降りてくる。
さらさは時が止まったように、沙彩を見つめた。
(沙彩……?)
颯爽と降りてきた沙彩が、足を止める。
沙彩「やっぱり、さらさ先輩だ」
一瞬驚いたような表情は見えたが、すぐに大学時代と同じように愛くるしく微笑んだ。
さらさは、きゅっと持っていた荷物の手を握り締める。
沙彩の視線が大きな荷物に向けられた。
(この状況…)
大きな荷物に抱っこ紐の中で眠る子ども。誰がどう見ても、帰省にしか思えない身なり。
そしてさらさの目は、泣いた後のように腫れている。
この状況に気づいているであろう沙彩の気持ちを考えると、ふつふつと怒りが湧いてきた。
(バレちゃったかなとか、それともラッキー宗太に会えるとか思っているのかな)
(…ひとことでもいいから言ってやりたい。この場で謝ってもらいたい)
思いながら唇をかみしめ、沙彩を見つめ返した、その時……
沙彩「先輩、すっかりママですね。憧れます」
さらさ「え?」
沙彩が手入れの行き届いた髪を、片耳にかける。
予想をはるかに超えた言葉にさらさは言葉を失った。
沙彩「私なんか仕事に追われちゃって…」