■秋、突然の再会
気づけば、パリが1年でもっとも美しくなる季節、秋がやって来ていた。街を歩いても空気が冷たく、街頭で焼栗の焼ける香ばしい匂いが漂っていた。
会社のデスクに戻ると、事務の女の子が妙にニコニコしながら近づいてきた。
「カズ、あなたのボーイフレンドが来てるわよ。隣の部屋に」
ハッと心臓が掴まれたような気がした。たぶん、飛ぶように、部屋を出て行ったと思う。それくらい、心が跳ね上がっていた。
「マサシ!!」
ドアを大きく開けて、部屋に飛び込んだ。
彼は、隣の部屋の窓に向かったテーブルの椅子に腰かけていた。突然飛び込んだ和紗の勢いに押されて、飛び上がってこちらを振り向いた。
驚きのあまり、目を見開いて。何もかもが、一瞬で、彼には分かったようだった。
「かずさ・・・・・・」
亮平は、呆けたような顔で立っていた。「突然、ごめん。出張でパリまで来て、それで、驚かせようと思って」
一生懸命笑顔を貼りつけて説明しようとする亮平を見ながら、みるみるあからさまな落胆が襲ってくるのを、和紗は感じていた。
なんと返事をしていいのか分からず、和紗はただ黙って、亮平の横の椅子に腰かけた。