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建坪7.5坪の変形敷地夫婦そろって一級建築士の青柳創さんと綾夏さん。2019年に竣工した自邸は、高低差4m以上の変形敷地に建ち、建坪はわずか7.5坪。土地を探し始めて2年が経過した頃この土地に出会い、「即決でした」と話す。「予算が限られていたので、相場より安くなる特殊な土地を探していました。道路側と奥に2m強の擁壁があり、さらに斜線規制などの厳しい条件もありましたが、前面道路を挟んだ向かい側が学校の校庭で視界が開けていることが魅力でした。建築家の自分たちなら、この難しい土地も何とかなるのではないかと思ったのです」(創さん)。土地を購入後、近くに住み、さまざまな時間帯に訪れてはいろいろな高さから眺め、太陽の動きや周辺環境、場所の空気感をつかんでいったという。設計に要した期間は2年半。限られたスペースならではの工夫やアイデアが詰まった心地の良い家が完成した。地下2階、地上2階の浮遊感のある外観。突き出たテラスが1階に位置する。テラスからダイニングを見る。ダイニングの床は、ホワイトオーク材を白く塗装してふき取り、白っぽく仕上げた。天井や壁とともに光の陰影が楽しめる。ダイニングからテラスを見る。大きな引き込み窓で全開可能。1階とはいえ、地上3mの高さで開放感があり、道路からの視線も気にならない。光と影のコントラストを意識「床面積が欲しかったので地下2階を掘ることを決断しました」と話すお2人。敷地の高低差を逆手に取り、地下2階、地上2階の4層のボリュームを確保した。建蔽率や容積率、斜線規制などの条件に合わせて、ミリ単位で考えていったという。「階段の高さは、自分たちサイズで決めているので、背の高い人が来ると頭をぶつけます(笑)」(創さん)。「限られた開口をいかに活用するかということも大きなテーマでした」とは綾夏さん。各フロアはまわり階段や部屋の隅に設けた吹き抜けにより、ゆるやかにつながっている。光や空気を通し、人の気配をも感じられる空間となっている。「時間帯によって光の射し方が変わるように設計しています。明るいところと暗いところのコントラストをつけることで、狭いながらも空間に奥行をもたせています」(創さん)。道路から見ると、宙に浮いたように見えるせり出したテラスは1階に位置する。テラスから大きな開口を通して奥のダイニングキッチンへと光が導かれる。ダイニング奥の南西の隅に設けた吹き抜けからは、カーブを描いた天井に沿って、美しい光が拡散される。テラスや吹き抜けから入る光の動きや、交差して生まれる光と影のグラデーションを意識したという。「壁や天井はすべて珪藻土にし、光が優しくまわるようにしました。もとは白っぽい壁ですが、日中や夕方で色味が違って見えるんですよ」(綾夏さん)。1階のダイニングキッチンは16畳ほど。テラスまで一続きでさらに広く感じられる。天井と壁はすべて珪藻土を採用。南西(右側)の隅に設けた吹き抜けは、曲線を描く天井により幻想的な雰囲気。『カール・ハンセン&サン』の丸いダイニングテーブルとYチェアがシンプルな空間を引き立てる。生活感やスケール感の出るテレビは引き戸を閉めて隠して収納。幻想的な空間を盛り上げているのが現代アーティスト・永原トミヒロ氏の絵画で、創さんのお気に入り。青柳邸のインテリアには欠かせない存在。地下2階から地下1階へと続く吹き抜けと本棚。地下1階の高窓から光を取り込んでいる。地下1階のシアタールーム。東側(左)が吹き抜けで、地上に出ている高窓から光が降り注ぐ。壁面の本棚に加え、テレビの裏側も収納になっている。大きなキッチンをあえて造作コンパクトな家の中であえて大きく造作したというのが、5.5mに及ぶ壁付けのキッチン。継ぎ目のない一枚板のステンレスのワークトップが美しい。「狭い家で小さなキッチンではこじんまりしてしまうので、この空間にこの大きさのキッチンをあえてもってくることで、空間の狭さを感じさせないのではないかという狙いです。ギャップを楽しんでいますね」(綾夏さん)。キッチンはまわり階段の上まで続く。キッチン下の収納は、階段途中から取り出すというアイデアだ。「階段にあたる部分にオーブンも収納していますが、腰をかがめることなく使用できて、むしろ便利ですよ(笑)」と綾夏さん。壁一面を使用した5.5mのキッチン。料理好きの綾夏さんが使い勝手を考えて図面を描き、家具屋にオーダー。「『GAGGENAU』の食洗器は絶対に入れたかった」と綾夏さん。コンロはIHを採用し、レンジフードを壁付けにしたためすっきり。コンロ下の収納内にスイッチ等を隠し、表に出さない工夫も。一石二鳥の“兼ねる”アイデア青柳邸では、1か所で2つの用途として利用する“兼ねる”アイデアが随所に採用されている。まず、玄関の扉を開けると、そこは階段の踊り場でもある。地下1階に位置する玄関ホールと地下2階のアトリエへ向かう階段の踊り場と玄関を兼ねているのだ。また、広々とした玄関ホールの奥に見える手洗い場は、扉内にあるトイレの手洗い場であり、玄関の明かり取りの役割も持たせている。ほかにも、2階のバスルームは、屋上へと続く階段を洗い場として使用するなど、至る所にスペースの有効活用が施されている。「冷蔵庫やテレビなどスケール感が出るものは隠し、相対的なバランスで部屋が狭く感じないようにしています。また、窓や吹き抜け、カーブで視線の先に行き止まりをつくらないことも大事ですね。壁になる場合は絵を飾ったり、動きのあるものを置いたりして、流れるように続くことを意識し、奥へと期待が高まるように工夫しています」(創さん)。立地の難点を見事にクリアし、建築家夫妻が生み出した創意工夫により、7.5坪とは感じさせない空間の広がりを実現した。「狭いながらも、家族3人、思い思いに過ごせる場所が作れたことがよかったですね。ひととおりの断捨離を終えたので、住まいながらまた変化を楽しんでいきたいです」(創さん)。地下1階に位置する玄関ホール。キッチンと同様に、コンパクトな家に対してあえて広々とした玄関スペースに。くもりガラスの玄関の扉からやわらかな光が射す。玄関を入ると階段の踊り場に。玄関ホールの奥の扉内は、靴のまま使用できるトイレ。右側の手洗い場は明り取りの役目も。玄関から階段を下りると、綾夏さんが主宰する設計事務所のアトリエへ。コンクリート打ちっぱなしの無機質な空間は、「仕事に集中できます」と綾夏さん。2階の寝室。奥の吹き抜けから光が入る。布団等を入れた収納の上には、古道具屋で出会った“糸巻き機”をディスプレイ。「動きのあるものを置き、空間の流動感を演出しています」と創さん。各階をつなぐまわり階段は、光のまわり込みとカーブによる奥行き感を演出。階段上には無駄なく収納を設置。1階から続く吹き抜けを介して、2階のトイレと左奥の寝室へと光が届く。隣家が迫っているため、窓はくもりガラスを採用。2階トイレの洗面所の鏡は、スライド式で出し入れ自在。開けると、奥の吹き抜けから光が射し込む。FRPを使用したバスルームは階段まで防水になっていて、洗い場として使用可能。階段を上がると屋上へ。屋上では綾夏さんと娘の未詠(みよ)ちゃん(6歳)が野菜を栽培中。植木鉢には、軽量のルーツポーチ(不織布製)を使用。青柳邸設計aoyagi design所在地東京都杉並区構造木造、RC造規模地上2階、地下2階延床面積92.99㎡
2021年09月20日軽井沢高原教会をイメージした天井天井に連なる垂木が美しい、伸びやかな大空間が魅力の福田さん一家の住まい。シンプルだけど個性的な家に住みたいと考えていた福田さんは、設計を駒田建築設計事務所に依頼した。「天井は軽井沢高原教会をイメージして設計していただきました」。その天井の棟木がなんと斜め。床の高さも斜めの3段になっている。さいたま市内のこの土地は交通量のある中山道と細い生活道路が斜めに交差する変形敷地。その敷地に合わせた斜めの意匠だ。「家のどの場所に居ても心地よく、使わない場所のない住まいを作ってくださいました。毎日仕事から別荘に帰ってくるような感覚の住まいは、心からくつろげます。子どもの頃からTV番組の『建物探訪』を見ていたこともあって、家は設計家に頼むもの、と思っていました。土地を探し、建築家に依頼するのは、自分の中では自然な流れでした」このエリアで生まれ育った福田さん夫妻。土地は散歩中に売地の看板を見つけた。「この辺りは土地の売出しがなかなか出ないので、看板を見てすぐに連絡をとりました」天井の斜めの棟木に合わせて、床も斜めの3段のスキップフロアになっている。ご主人は週に2〜3日リモートワーク中。奥様は毎日出勤している。段差は高いところで90cm。低い段差が45cm。45cmを2つ重ね、90cmとしている。サーキュレーターを置く場所には、予めコンセントを設置。天井高は約5m。天井の意匠が美しい。ダイニングテーブルはカリガリスのTOKYO。椅子はカルテルのマスターズと、マジスのスチールウッドチェア。「子どもが大きくなったら、あと2脚、買いたい椅子を考えてあります」90cmの段差の下は子どもたちの格好の遊び場だ。秘密基地を楽しそうに作っている。低いほうの45cmの段差はどこにでも腰掛けられるベンチにもなる。キッチンの扉や収納家具は白で統一。カウンターワゴンを引き出すと作業台になる。拡張性を重視した1階1階は子どもの成長に合わせ、将来的に子ども部屋を2つ作れる拡張性を重視して設計。現在家族全員の寝室として使っている部屋は、将来の分割を考慮して出入り口を2カ所設けている。構造用合板の壁に浮かぶ階段の手すりのシンプルなデザインが美しい。「壁は将来的に色を塗ったり、プロジェクターを投影することも考えています」1階の廊下を広々と感じさせるスケルトンの階段。2階から玄関を見下ろす。福田邸の窓は、室内からサッシ枠が見えず、壁の中に埋め込まれているようなデザイン。現在主寝室として使っているこの部屋は、子どもの個室を2つ作れるように考えられている。子どもたちが覗いているのは、2階の床の段差を利用して1階に光を取り込むスリット。この隙間を通して、2階と1階にいる家族の気配が感じられる。洗面台を共有スペースに洗面台は帰宅時に直行して手洗いできるよう、一般的な脱衣室内ではなく廊下に設置している。「実家で暮らしていた時、誰かがお風呂に入っていると洗面台が使いづらかったので、独立した場所に作りました」脱衣室内にあるガス乾燥機が小さな子どもがいる4人家族の洗濯物を早く強力に乾かす。「洗濯物を干す手間が省けるので家事の時短になります」1階はロボット掃除機がすべて掃除できるよう、段差を無くしている。モノを少なくスッキリと暮らすのも、家の美しさを際立たせ、家事の手間を減らすのに役立つ。「本はある程度たまったらデジタル化して処分します。季節の服は保管サービスを利用しています」帰宅してすぐに手を洗える場所にある洗面台。アイアン製のイスは杉山製作所のワーカー・ラウンジ・チェア。洗面台はスタルクがデザインした大型のDURAVITを選択。ジョエ・コロンボのワゴンに洗面周りの細々としたものを収納している。「収納力があって使い勝手も良く、とても便利です」脱衣室。右手がバスルーム。「洗濯機の上のガス乾燥機はなくてはならないものになりました。洗濯物を干す手間が省けます」手前が将来主寝室として使う予定の部屋。生活道路に面した側を玄関とバルコニーにした。交通量の多い国道に面した側は、窓の位置を高くし、プライバシーを確保している。福田邸設計駒田建築設計事務所 所在地埼玉県さいたま市構造木造 規模地上2階 延床面積95.24㎡
2021年09月13日玄関を開けると焼き菓子店「玄関先にお店をつくるという条件を先に決めて設計に取りかかりました」と話すのは村上譲さん。村上さんは建築家で、お店というのは妻の祥子さんが切り盛りする焼き菓子のお店だ。「妻が焼き菓子をつくって自然食品屋さんに卸したりしていたんですが、お菓子をつくって売る場所がほしいということでまずはそれをつくることが最初に決まりました」。旗竿地で、東側には広い駐車場があって開けているけれどもいつ建物が建つかわからない。この敷地条件のもと、お店をつくるほかには、外に開いていく設計ではなく、家の中でいかに快適に過ごせるかかがまずは設計のテーマになったという。村上邸は旗竿地に立つ。右の玄関戸の正面に焼き菓子のお店を設けた。半地下の大空間家の中に入ってすぐ正面につくられた焼き菓子のお店の前を進むと住宅には珍しいといっていい大きな空間が現れる。将来的に焼き菓子店の延長で客席を設けカフェのような空間にすることも考えてつくったというこの半地下の空間は「セミパブリックのような感じで人が入って来られるような状況をつくりたかった」という。天井までの高さが3.5mで面積は32㎡ほど。気積の大きな空間にしたかったが、ふつうにつくったら家自体のボリュームが周囲より大きくなってしまうので、そうならないよう80cmほどフロアレベルを下げて半地下空間にしたのだという。「敷地が旗竿地ということもあり、できるだけ窓を取りたかったのですが、周囲と同じレベルで窓を開けると外部からの視線が気になるので、半地下にすることで視線をずらし居心地を損なわないことを意図しました」手前のフロアよりも80㎝低い半地下空間。現在は村上家のLDKとして使われているが、将来的には外部に開放してセミパブリックな空間にすることも考えているという。壁は漆喰仕上げ。漆喰には川砂とすさをまぜている。半地下の空間から見る。左奥に玄関と焼き菓子店、中央奥が水回り関係、キッチン奥にはパントリーがある。落ち着き感と安心感この半地下空間は「フロアレベルを少し下げることで洞窟にこもっている感じをつくろう」とも意図したというが、これがまた空間に落ち着き感をもたらしている。この空気感をつくり出すのにはさらに木を多用しつつ材のスケールに少し余裕をもたせていることも作用しているようだ。「この家では設計で線を細くしてくような作業はしていません。家具や開口の枠周りなどもスギの無垢材で30㎜程度であえて太めにつくっています」。さらに「材をぎりぎりまで細くして緊張感をつくるというよりは安心感をつくりたかったというのはあったかもしれない」とも。天井のスギ板は厚さが36㎜で梁せいは240㎜あるという。こうした設計上の選択も無意識の裡に安心感のようなものを空間にいる人間にもたらすのだろう。開口部は東側に設けた。トップライトから落ちる光が大きな壁面を照らしている。キッチンの横幅は4.3mと広め。娘さんたちとともに料理をするためのほか、いずれ料理教室を開くことなども想定してのものという。天板と壁はモールテックス。ロフト部分は昔の民家を思わせるような懐かしさを感じる。スケルトンにして家のつくりを見せる2階の柱梁のグリッド構成をもとにしたシンプルなつくりは家族の成長の具合に応じられるよう可変性を考えてのものという。仕切りには障子を採用したが「この昔からの日本の様式はすごくいいなと思っていたので、あえて壁を立てずに障子だけで仕切ることで、空間を大きくしたり小さくしたり調整しながら生活ができる」という。「それとこれは家全体の話になりますが、成り立ちというか、どうやって家が出来ているかをこの家を訪れてくれた方に、ぱっと目で見てわかりかつ容易に説明ができるようにしたいという思いもあって、できるだけ木造のスケルトンのような状態にしています。また、この家をつくってくれた棟梁は飯能で修業時代を過ごし西川材に縁があるため、スギの無垢材はすべて飯能の西川材を使用しています。そういった“ものづくり”のストーリーも大切にしたいと考えています」東側に設けた階段部分が吹き抜けになっている。トップライトから落ちる光が壁にさまざまな表情をつくり出す。2階はシンプルなグリッド構成でつくられている。左の障子の奥が書斎で右が寝室。左の大きなスピーカーは実家のご両親がマンション住まいになる際に引き取ったタンノイというイギリスのメーカーのもの。寝室の横に設けられた書斎的スペース。東側の壁をトップライトからの光が明るく照らす。お菓子の陳列に一工夫祥子さんが切り盛りしているのはmalcoと名付けた焼き菓子店。扱っているのはスコーンやクッキーなどの日持ちのする焼き菓子がメインで、卵、乳製品や白い砂糖を使わずアレルギーにも対応したもの。今では全国から注文が来ているという。スペースが限られていて平棚などにお菓子を並べて置くことが難しいため、譲さんには「本屋さんで本を立てかけて陳列させているような感じでお菓子を並べていきたい」とリクエストしたという。玄関のガラス戸を開けると正面が焼き菓子店のスペース。場所をコンパクトにおさめるため商品の焼き菓子は桟の上に本のように立てかけて並べている。景色がいいこの家に移り住んでから2年ほど。祥子さんは半地下の空間の東側に設けられた窓が気に入っているという。「わたしはこの窓が一番好きで、床に座ると視線が気持ちよく空まで抜けていくんです。電線も目に入らないし大きい建物もなくて隣の駐車場のところに人がいても視線が合わないのでカーテンがなくてもそんなに外が気にならない。あと家の中にいながら天気や明るさの変化が感じられるというのもすごくいいなと思っています」祥子さんはこの開口部から外を眺めるのが好きという。譲さんは階段を上がりながら1階の景色が変わっていく感じが気に入っているという。譲さんは半地下のダイニングテーブルに座っていることが多いという。「最近は家で仕事をすることが多くて、2階の書斎で子どもと並んで作業をしたりすることもあるんですが、夜、家族が寝てからはこちらのほうが落ち着くのでこの場所にいる時間が長いですね」さらに「この場所の景色がいい」「目のやり場がたくさんある」とも。住宅ながら空間を“見渡せる”ようにゆったりとしたスペースは天井も高く上を向いてもすぐに視線がぶつかることもない。こうしたことが落ち着くだけでなく、飽きることなく長い時間過ごすことを可能にしているのではないか――そう思えた。村上家は夫婦と娘さん3人の5人家族。床は当初モルタル仕上げだったが、お子さんが生まれた際にカーペットを敷いたという。大きな空間を半地下につくったため、周囲の2階建ての住宅と比べても屋根は高くない。グレーの部分がトップライトになっていて吹き抜けから半地下空間へと光を供給する。村上邸設計Buttondesign所在地東京都中野区構造木造規模地上2階延床面積99.2㎡
2021年09月06日土地いっぱいの建物に広がる開放的な作り透明水彩画家のかとうくみさんが家族4人で茅ヶ崎に越してきたのは19年前。「繁華街の近くに住んでいたのですが、2人目の子どもがお腹にできた時に、子育てにいい環境への引っ越しを考えました。それで縁あって茅ヶ崎に越してきたんです」とかとうさん。およそ250㎡の土地に延床面積175㎡の2階建ての新築を建てたが、当初は土地の大半は庭に使う予定だった。「上物はしっかりしたものを建てたほうがいいと図面を見た父が言いまして。そのあと父が他界して遺言のようになったので、土地いっぱいに建物を建てました」。“アメリカかぶれ”を自称するかとうさんが目指したのは、アメリカ風の住宅だったが、施工を依頼したのは和風建築を得意とする企業。「夫が野球好きで、好きな選手がCMに起用されているという理由で決めました。アメリカ風にしたいと言ったら、わざわざ外部から設計士を連れてきてくれたんですよ」。何冊もの洋書を設計士に見せ、すり合わせをし、理想に近づけていった。玄関から視界を遮る仕切りがなく開放感ある1階スペース。元々カウンターキッチンがあった西側の空間。キッチンがなくなり本来ある広さが活きる。西側から見たリビング。ご夫婦は大がつくほどのアメリカ好きで、アメリカ国旗が飾られている。風と光を遮らない空間設計玄関を入ってすぐ、1階のリビングとキッチンには仕切りがなく開放的な空間が広がる。天井は吹き抜けで南側にははめ殺しの窓を設置した。「私も夫も天井が高い家が大好きだったのでリクエストしました。窓のお陰で雨の日でも明るいですし、夕方まで電気はつけません。暖房の効きが悪くなるのが心配でしたが、床暖房をいれたら問題ないですね」。リビングの南側に設置された庭に繋がる観音開きの窓はアメリカを意識したもの。「最初は引き戸を考えていたんですが、設計士さんがアメリカ風にするならということで勧めてくれました。とても気に入っています」。東西南3面に窓があり、壁がないため心地よい風が室内を抜ける。冬は、ほぼ全面に敷かれた床暖房で足りなければ、吹き抜けに設置されたファンを使って暖気を回す。風も光も充分に入るリビング。家族4人ほとんどの時間をここで過ごす。庭は元々芝生だったが、当時飼っていた愛犬が土を掘って虫を捕まえてきてしまうのが嫌で、オールデッキに。玄関とリビングの間に両開きの引き戸を設置し断熱効果を高めた。リノベーションで理想により近づける19年前、ほぼ理想の家が出来上がったが想定外のことがあった。夫の母親が泊まる部屋として、東側に設けた和室に地窓しかなかったことだ。「図面上は窓があると思っていたので、地窓で驚きました。お話はしてもらっていたんですが、理解不足だったんです。座った時に、当時あった庭を窓から見られるのは良かったのですが、陽が昇る東から光を取り込めないのが難点でしたね」。転機は8年前。西側に設置していたキッチンの電気系統の故障で床と壁を全面張り替えすることになった。「これを機に、よりアメリカンにしたいと思い、一番陽の当たる東側にある和室を無くして、キッチンにすることにしました。お母さんも床布団よりベッドの方が楽ということだったので」。空間を仕切っていた襖、押入れを無くしたことで、広い空間と東側からの光を室内に取り込めるようになった。さらに真っ白だった壁は、濃い色が好みというご夫婦の希望でブルーとイエローの2色をベースカラーに。床は複合材から無垢材に張り替え、より理想的なアメリカンな空間にしていった。「いちからキッチンを作るならアメリカンなものにしたかった」とかとうさん。和室だった場所を、2面たっぷり使った贅沢なキッチン空間に。窓を設置したことによって、東側からも採光できるようになった。1階は端から端まで視界が届き、のびやかさがある。右に見える壁はコルクボードにしてメモなどを貼れるようにした。外壁をサイディングにすることは夫婦で一致。建てた際はブルーだったが、リノベーションの際にえんじ色に塗り替えた。自宅にある自分だけの創作空間2階南側にはかとうさんのアトリエがある。2階の廊下から1段下がって入るという入室経路と、雲のイラスト入りの壁紙を採用し差別化することで、日常空間との切り替えを演出。「家を建てる時に、私が一番家にいるから一番いい場所にアトリエを作って欲しいとお願いをしました。子どもが小さい時は、ご飯作らなきゃなど考えましたが、今は手がかからないので一日中いることもありますね。ここにいると時間を忘れます」。頻繁にニューヨークに行き、絵の素材探しをするほどアメリカ好きだが、絵を始めたきっかけもアメリカが関係している。「アメリカ西海岸を舞台にした漫画を読んだのがキッカケでアメリカと絵に興味を持ちました」。19年目を迎えた自宅は、壁紙や床など変化してきたが、アトリエは変わることがなかった。それは13歳から変わらず絵が好きで、アメリカが好きだというかとうさんのブレない想いの現れかも知れない。1階の床はキッチンを除き無垢材に統一。ほぼ全面に床暖房が敷かれている。2階廊下。はめ殺しの窓から室内に光が入る。左奥がかとうさんのアトリエ。2階廊下の天井には、屋根裏部屋に続く階段が収納されている。物置として使っていた屋根裏だが、愛犬の死をきっかけに次女が3週間かけ模様替えをした。今はお子さんの友人が泊まりに来るなど交流スペースになっている。アトリエ。左側にある天井いっぱいの造作棚には資料が並ぶ。壁紙はアメリカの有名なアニメ作品をイメージして選んだ。透明水彩の絵具には白がない。そのため白で表現する所は、何も塗らず画材の色を活かす。9月には兵庫県で、来年8月には東京での個展開催が決まっている。詳細はかとうさんのホームページで確認できる。
2021年08月30日土地に出会う前から仮の図面を作成バイクや釣り、キャンプ、サーフィン…と多彩な趣味を持つ、デザインユニット『トネリコ』の君塚賢さん。都内有数の広さを持つ公園を有した住宅街でありながら、幹線道路や高速道路のインターチェンジも近い利便性に富んだ世田谷の地に、昨年自邸を建てた。「十数年前からこの近くの中古マンションに住んでいました。そのときどきの生活スタイルに合わせて3回リノベーションして暮らしていましたが、子どもが大きくなったこともあり移ることに。僕は外遊びが好きなので、山や川、海へと車で出かけるのに便利なこの辺りから離れたくなかったのです。最初はマンションを探していましたが、高騰していてなかなか良い物件がなくて。むしろ土地のほうがそれほど上がっていなかったため、戸建てを考え始めたんです。希望の条件を盛り込んで戸建てを建てたらどのくらいの敷地面積が必要か、“仮の図面”を描いてみることで、30坪はないと住みたい家は厳しいということがわかりました」。偶然出会ったというこの土地は、準防火地域の角地。通常この辺りは、建蔽率50%、容積率100%だが、耐火建築物を建てることで準防火地域と角地の緩和措置を併用して建蔽率は20%プラスされた。「ここの敷地面積は25坪ほどですが、建蔽率が70%建てられることがわかり、仮の図面で考えていたことが実現できるのではないかと思ったのです。勝手に現調したもので再度図面を引いてみて、“これははまる”と確信し、購入を決めました」。東南の角地に建つ。出入口を2方向使用できることも購入の決め手に。「玄関とガレージの場所を分けられなければ、マンションのほうが良いと思っていました」(賢さん)。板塀の内側には、四季を意識できるジューンベリーの木を中心に考えられた前庭が広がる。賢さんの愛車『ゲレンデヴァーゲン』の車高に合わせてガレージを設計。ダイニング・キッチンの下に位置する。ガレージの奥は賢さんの“秘密基地”。趣味のバイクやサーフボードのお手入れ、キャンプの準備など休日はここで過ごすことが多いそう。室内から続く浮造り仕上げの天井が贅沢。空間を立体的に。巧みなフロア構成限られた敷地を有効活用するため、スキップフロアを採用。エントランスを入るとまず200mm下がり、寝室はさらに400mm下がっている。この合計600mmの段差は、寝室の上に位置する2階のリビングの天井高2800mmをキープするため。また、ガレージの上に位置するダイニングがリビングより800mm高いのは、賢さんの愛車が収まるガレージの高さから導かれたものだ。さらに、子ども部屋は、ダイニングから続く廊下から400mm下がる。下に位置する1階の洗面室やバスルームに高い天井は不要のため、その分コンパクトな子ども部屋の天井高を確保している。「空間を立体的にとらえ、面積ではなく体積で考えていきました。それぞれの空間が心地よく感じられるよう天井高や広さを設定。さらに、リビングやダイニング、子ども部屋など各部屋での行動や目線の動きを想像し、光の入り方や風の抜け、借景を取り込んでいます」。動線の先には窓を設け、目線が抜けるように設計した。また、床のフローリングに使用した浮造り仕上げの栗の木を壁や天井(1階)にも採用し、連続性をもたせた。ボリュームの異なる高低差で変化をつけ、段差を利用した開口で奥行を出すなど、細部まで計算され尽くした空間は、体感的な広さを実現している。天井高を確保するため、リビングはダイニングより低めに設定。ダイニングの下がガレージ。元気に育っている“バキラ”は、賢さんが独身時代に小さなポットで購入したもの。「人が集まるところが好きみたいなので(笑)、リビングに置いています」。板塀に囲まれた前庭に面した寝室は、玄関から600mm掘り下げた。緑に癒される落ち着いた空間に。「街と一拍置きたかった」と、板塀内に前庭やベンチを設けた。ベンチは、玄関の外部から内部へとつながり、視線も通す。寝室を掘り下げたことで生まれた上部の段差を開口にし、光と視線の抜けを取り入れた。奥のガレージに続く部分はガラスにし、奥行を演出。足触りのよい浮造り仕上げの栗の木を床だけでなく、壁や天井にも採用。経年変化が楽しめるのも魅力。前庭へと抜けを造ったバスルーム。趣のある檜の風呂蓋はふるさと納税の返礼品で、オーダーメイドしたもの。バスルームを使用していても洗面台が使えるように、トイレ側(奥)と、バスルーム側(手前)に2か所設けた。「外出時に着ていたものを一時的にかけられるオープンなクロークが欲しかった」と、玄関近くに設置。コロナ禍になり、手洗い場が重宝。人を招くことを前提に「人を招くことが好き」という君塚さん夫妻。コロナ禍による自粛生活前は、毎週末のように友人たちが集まっていたこともあり、新しい家もそれを前提に設計した。「キッチンは誰でも入りやすいよう開かれたものにしたくて、対面式を希望しました。レンジフードもあえて真ん中につけました」とは、妻の奈々子さん。キッチン側は200mm堀り下げ、カウンターに座る人と目線を合わせ、コミュニケーションを取りやすくした。また、「ビアガーデンをしたいという構想もありました」とは、賢さん。3階に広いテラスを造ることは戸建てを建てるうえで必須だったという。「この辺りは、歩いてくると家に囲まれていますが、3階のレベルになると奥の森の木へと視線が抜け、富士山も眺めることができます。この抜けの良さもこの土地を決めたポイントですね」(賢さん)。グリーンに囲まれた広々としたテラスには、飲食をする際の使い勝手を考えてシンクをつけた。板張りの塀で視線を遮っているため、周囲を気にせず楽しむことができる。「住み始めたのが昨年の4月で、最初の緊急事態宣言が出たときでした。そのため、なかなか人を呼べず、まだ本領発揮していません。楽しみは取っておこうと思います(笑)」(奈々子さん)。造作のキッチンカウンターは円形のダイニングテーブルと同様の人工大理石。「キッチンに立っていると全体が見渡せて気持ちいいです」と奈々子さん。目線の高さも合い、会話も弾む。『アルヴァ・アアルト』のスツールは奈々子さんのお気に入り。「これを置くことを前提にカウンターを造作しました」。シンクは下げて手元を隠した。『無印良品』のバスケットを入れることを想定してデザインした収納。普段は見せたくない電子レンジなどは引き戸で隠すことができる。3階へと続く、キャンチレバーのミニマルな階段。階段を昇っているとトップライトから空に視線が抜け、まるで空に向かっているよう。トップライトからたっぷりの光が降り注ぐ3階。グラフィックデザイナーの奈々子さんの仕事場所でもある。全開できる扉の奥が広々としたテラス。板塀に囲まれた、緑豊富な心地よいテラス。「ビアガーデンをする日が待ち遠しいです」と賢さん。「家族でコミュニケーションを取る場」というリビングにはテレビはなく、エタノールの暖炉がさりげなく置かれている。バックの白い壁にプロジェクターで映画を映し出し、家族で鑑賞することもある。大らかに暮らせる自在空間造作のソファが置かれたリビングから数段上がった子ども部屋の前の廊下は、通常の廊下よりも広めにとった多目的なスペース。「子ども部屋をミニマムにしているため、子どもたちにとってはここが第2の部屋です。机代わりにして本を広げたり、腰掛けて読書したり。壁にプロジェクターで映し出した映画を観る時には、ソファのクッションを取り外してゴロンと寝転がったりも。自由に過ごしていますね」(賢さん)ダイニングに置かれたアームチェアは、『トネリコ』がアーティゾン美術館(東京都中央区)のためにデザインしたもの。賢さんの師であるデザイナーの内田繁氏の椅子をオマージュしたものであり、座り心地も抜群である。ここに座って見上げると、吹き抜けを介して3階フロアのトップライトから空へと視線が抜け、開放感に包まれる。「一度、スタッフの方たちがいらしたとき、ソファや椅子だけでなく、階段や段差などいろいろなところに座っていたのが面白かったですね」と奈々子さん。思い思いに過ごせる場所がそこここにあり、それぞれ見える景色も変わる君塚邸は、自由度が高く、暮らしの楽しみを運んでくれる。「また数年経つと状況が変わるかもしれませんが、僕ら家族の今の生活では、戸建てのこの状態がベストです。今ではマンションは考えられませんね。素材の経年変化とともに生活の変化を楽しみ、そのときどきのベストを考えながら暮らしていきたいですね」(賢さん)。3階から2階を見下ろす。スキップフロアの楽しい構成がよくわかる。階段の手すりとアームチェアの脚とは同じ太さにし、統一感をもたらしている。リビングの窓からは、前庭から伸びたジューンベリーの樹が楽しめる。ユニークな掛け時計は、イタリアの巨匠・ガエタノ・ペッシェの作品。丸太のテーブルは『トネリコ』の米谷ひろし氏から譲り受けたもの。廊下より400mm下げた子ども部屋。左側が中2の娘さん、右側が小5の息子さんの部屋。それぞれ好きな色でベッドをペインティングした。真ん中の壁は簡単に外せるため、いずれは一部屋にすることも可能。『トネリコ』の代表作、フロアランプ『MEMENTO』。光を灯すと、空間全体に光のアートが拡散される。コンセントは表に出ないよう工夫して設計。ここでは造作ソファの中に設置し、右側のスピーカーともつないでいる。スマホ立ても『トネリコ』のオリジナル。調光スイッチも隠して設置。子どもたちがよく見るという給食メニューや学校行事等の書類は扉の中に貼り、表は常にすっきり。
2021年08月23日「スタイルのある家と暮らし」をテーマに情報発信する『100%LiFE』。クリエイティブな感性で暮らしと空間を楽しむ人たちのライフスタイルメディアとして2012年の7月にスタート、10年目を迎えました。そこで、特別企画として、これまで公開した中から人気のある記事を、テーマごとに振り返ってみました。今回は、憧れの「湘南スタイル」、ランキング形式で紹介します。第1位湘南のサーファーズハウス海を気持ちよく楽しめるカリフォルニアスタイルの家ハワイで挙式した時に借りたバケーションレンタルが理想の家。海岸まで歩いて5分。サーフィン好きの真崎さんにとってこの上ない家が誕生した。第2位愛犬との湘南ライフ非日常性を求めて暮らしを楽しみ尽くす海の近くで暮らすこと、犬を飼うことを目的に湘南へ。漫画家・小説家の折原みとさんは自然に寄り添う暮らしを楽しんでいる。第3位湘南の海を望む天空の家地上から高く離れて海と山と空を満喫する家東海道線の大磯の駅から歩いて10分ほど。ゆるやかな傾斜の続く住宅地の先に、巨大な擁壁の姿が現れる。その上に立つのが藤田邸だ。第4位鎌倉の景色を一望自然とつながる湘南の家に都会的なエッセンスをプラス4年程かけて土地を見つけ建てたのは、テラスの向こうに大パノラマが広がる家。湘南の景観に溶け込みつつ、モダンさもミックスした暮らしを楽しんでいる。第5位海辺の暮らしを満喫海辺の古い一軒家を自分らしく再生潮騒の音が聞こえる海辺の1軒家。築40年の古いコンクリート住宅を、アメリカの匂いを感じさせる快適な住まいへと変身させた梅本さん夫妻。第6位海のそばの住まい自然とふれあいのびのびと暮らす東京から湘南に移り住み、海まで3分の場所に家を建てた薮田さん一家。まずは地域を知ろうと引っ越してから、じっくりと土地を探した。第7位葉山の絶景を楽しむシンプルな箱を自分流に変化させて住む目の前にさえぎるものがなにもない、素晴らしい眺望。渡部夫妻は以前住んでいたこの地に、シンプルな四角い箱のような家を建てた。第8位海を愛する建築家の自邸海まで3分。カリフォルニアスタイルのヴィンテージハウス数々のカリフォルニアスタイルの家を手がけてきた建築家・岩切剣一郎さん。満を持しての自邸は、茅ヶ崎の築約40年の平屋のヴィンテージハウス。第9位遊び道具は土間に集結葉山の米軍ハウスをフルリノベーション海の近くに住みたいと考えていた青木さん。友人の縁で出会うことができた葉山の物件は、一度住んでみたいと思っていた平屋の米軍ハウスだった。第10位海風を感じる家スケルトン住宅をDIYでカスタマイズ佐島漁港を見下ろす斜面の中腹に、内装の間取りや仕上げは住む人が自由に選択できるスケルトンハウスを建てた野村夫妻。海の見える家に住みたいという希望を叶えた。
2021年08月16日街全体を暮らしの一部に建築家の西川日満里さん、坂爪佑丞さん、琴ちゃんが暮らす家は、西川日満里さんが共同主催するツバメアーキテクツと、設計事務所に勤務する坂爪佑丞さんの共同設計だ。琴ちゃんの誕生をきっかけに、2019年に竣工。「自邸を設計し、実際に住んでみて気づくことがたくさんありました。たとえば大きく開いたトップライトは、1年を通して暮らしてみることでその良さと難しさの両方を知ることができます」家は阿佐ヶ谷の賑やかな通りに面して建つ。「都市に住むと、徒歩圏内に暮らしに必要な場所を持つことができます。週末は銭湯に行って広々としたお風呂を楽しんだり、図書館を利用したり、遊びに来た友人とすぐ近くの料理店へ足を運びます。家の外で生業が広がっているので、それらを利用し、共存しながら暮らしたいと思いました」リビングから見上げる窓の外に、テラスに植栽した緑が広がる。吹き抜けの最上階の天窓から差し込む時間とともに変化する光が、様々な表情を加える。リビングの床は明るい色のタイルカーペット。床暖房で冬は暖かく、床に座って過ごすことが多いそう。「小さな子どもがいる家で白のカーペットはメンテナンスが心配でしたが、部分的に剥がして洗濯ができるため問題なく使えています」ダイニングテーブルの上のアートの作家さんは……、なんと、家の壁を塗った左官屋さん。「目地をパテで塗りつぶしてから仕上げの塗装をするのですが、下地の段階で止めてもらいました」「床に置いたエチオピアのコーヒーテーブルは把手がついていて移動させるのも簡単なので重宝しています」。天井と壁は同じ素材だが、天井だけツヤのある塗料を使い、光の反射を楽しんでいる。「なにか楽器を弾けるようになりたいと思い立ち、最近ピアノを始めました」と佑丞さん。両サイドにお気に入りのアートを飾る。「ラワン材の壁は、ビスが効くため好きな場所に絵を飾ることができます」モロッコのテーブル、李朝時代の脚付きテーブル、アフリカの民芸家具と、様々な国、違った時代の家具をチョイス。家のあちこちに居場所を作る「都市部の狭小地ですが家に“庭をつくりたい”と考えて、まずその庭の場所をどこに作るか考えました。生まれ育った家や、1つ前に住んでいた賃貸のアパートにも植栽を楽しめるテラスがあり、そこで過ごす時間がとても気持ちがよかったので、新しい家にも季節を感じられる庭があるといいなと思いました」決まったのがリビングからも寝室からも庭の緑を楽しめる場所。リビングからは樹々を見上げて木漏れ日を楽しみ、すぐ横の小部屋は樹々の成長を間近で見守ることができる。寝室の横の本に囲まれた小さな空間は、階下の家族の存在を感じながら、ひとりだけの時間を作れるとっておきのスペース。ピアノを弾いたり、テラスの緑の手入れをしたりと、様々なことをしながら過ごせる場所があることで、小さいながらも豊かな時間を過ごすことができる。「簡単に動かせて多目的に使える家具を多く使い、住みながら生活スタイルを整えることを楽しんでいます。動物の巣作りの感覚です。まず大きなストラクチャーを作り、その後に小さな居場所を作っていきました」テラスの横の部屋は、将来的に琴ちゃんのお部屋になるかも。窓の外の緑をすぐ近くで楽しめる特等席。本を読みながら、ゆったりとした時間を過ごす。リビングと耐力壁に隙間を開けることで、広がりを感じられる。本は一箇所に集めるのではなく、家のそこここで手に取れるようにしている。階段の吹き抜けを通して、一階まで光が落ちる。夏はトップライトに簾をかけ、木漏れ日のような光を楽しんでいる。階段はグレーにグリーンを混ぜ、自然界にある色に近づけた。寝室の横の小さなスペースは、周囲を本に囲まれたお籠もり感抜群の場所。椅子に座って視線を上げると、寝室の窓から空が見えて気持ちいい。それぞれの窓に機能と役割を分担開口は、いろいろな風景を楽しみ、様々な役割を持たせて作られている。「レマン湖のほとりに立つコルビュジエが母親に贈った小さな家は、フレーミングした窓を作り風景を切り取ることで湖の美しさを際立たせていました。この家は雑居ビルと住宅が入り混じる雑多な地域に建っていることもあり、慎重に開口部の位置を調整し、それぞれから見える風景を考えました」リビングの棚下に開いた窓からは、吹き抜ける風と共に、通りの緑や行き交う人を眺めることができる。テラスに面した窓は庭を楽しみ、道路に面した窓は高い位置に作ることで視線を遮り、流れる雲を眺めることができる。「模型で検討しても、実際の空間とはずれが必ずあります。現場に入ってからも窓の位置を微調整していました」リビングから50cm下げた位置にあるキッチンは、にじり口から中に入っていくような感覚。天井が低く、籠もる感じが心地よい。タイルは光を反射するものを選び、横の窓は住宅地の奥まで見通せる場所を狙って開けている。リビングの棚の下に開けた小窓から、賑やかな通りを眺める。階段の踊り場には、写真家の中村絵さんの台南で撮った作品を。「ガラスのように艶感のある仕上げにしていただき、台南の街に開いた窓のように楽しんでいます」「寝室の窓から外を見ると、偶然なのか赤い瓦屋根やピンクの壁の家が多く立ち並んでいました。その色に合わせて、透け感のある淡いピンクのカーテンを選びました」右の絵は住宅全体を使って個展を開いた奥誠之さんの作品。「1階をアトリエとして設え1ヶ月ほど滞在しながら実際に絵を描いていただき、展示期間中は作品を部屋に飾って、ご近所の方含めたくさんの方に見ていただきました。この作品はこどもたちが囲むテーブルのようにも、池のようにも、様々な風景に見えるところが好きです」1階にはコミュニティを育むスペースを1階の通りに面した部屋は街の一部となり、ギャラリーとして使ったり、喫茶店を開いたり、いろいろな住み方を楽しめるよう考えられている。同時に夫婦それぞれの仕事場の延長として使ったり、将来的にはこどものための部屋として活用することも想定している。「阿佐ヶ谷は外から訪れる街というよりも、そこに住む人が日常的に街で過ごす比率が高い街だと思います。地域の人が協力して街の雰囲気をつくっていこうとする意識があり、1Fをオープンにすることでこの家もその輪の中に参加できるとよいですね」通りに面した1階の部屋で今年3月に開催された奥誠之さんの個展「小さな部屋に絵具を渡す」。琴ちゃんも一緒に絵を描いた。©Yurika Kono住宅の中に奥誠之さんの絵を飾り鑑賞する試み。©Naohiro Tsutsuguchi1階の通りに面した部屋では、イベントを開いたり、打ち合わせをしたりと多目的に使っている。1階は玄関とバスルームが、同じ素材で連続する。大理石のモザイクタイルを使ったバスルーム。「エストニアで宿泊した古民家の石に囲まれた水回りがとても気に入って、そこをイメージして造りました」。琴ちゃんがお風呂で遊んでいる間、洗面台の横のスペースで仕事をすることもあるそう。通りに面した1階の窓はショーウィンドウのような役割を持たせている。季節の花を飾り、道行く人の目を楽しませている。外壁材は経年変化する素材を採用。1階から3階までのスキップフロア。2.5階に設けたテラスの緑がリビングと寝室の3層に心地よい視覚効果をもたらす。窓に当たった風が家の中を周るシカケになっている。テラスの下が回廊式のキッチン。その下の1階が洗面バスルーム。画像提供/ツバメアーキテクツ・坂爪佑丞坂爪邸設計ツバメアーキテクツ+坂爪佑丞 所在地東京都杉並区構造木造規模地上3階 延床面積73㎡
2021年08月09日外を気にせず開放感のある家「東京にいる感じがしません」という上野さん。敷地を購入したときには周囲は植木畑だった。現在では畑の面積は減ったものの緑が多く、また静かな環境で「蓼科や軽井沢などの別荘地に住んでいるような感じがする」と話す。上野夫妻が設計を依頼した建築家の村田淳さんへのリクエストは大きなところでは2つあった。「ひとつは外の目を気にしないで暮らしたい。当初、コートハウスのイメージをもっていたので、外の目をあまり気にしないで生活ができて、かつ開放感のある家がいいなと」右の駐輪スペースの後ろに立つのがアズキナシ。図書室の外につくられたデッキスペースに植えられていて2階からもその緑を楽しむことができる。図書室をつくる「もうひとつは図書室がほしかったんですね。本が多いので、家族3人の本を1カ所に集めて、みんなで読める場所をつくってもらいたいとお願いしました」(上野さん)図書室をつくる思いは上野さんがいちばん強かったという。「引っ越しのたびに本を処分するのがとてもつらかったようで、この家ではちゃんとスペースをつくろうということになりました」(奥さん)上野さんも「自分の家ができたら本はすべて捨てずにとっておいていつでも読み返せるようにしたいという思いは強くありました」と話す。さらに「本はどこでも読むし寝る前に読んだりもするんですが、ゆったりと座って気持ちよく読めるスペースがほしかった」とも。半地下につくられた図書室を1階レベルから見る。庭側から図書室の外部につくられたデッキスペースを見る。アズキナシの木が見える。デッキスペース側から図書室と奥の庭を見る。半地下につくられた図書室の天井高は約3.8mある。夫妻ともに図書室のイメージとしてもっていたのはオードリー・ヘプバーンが主演した1963年の『マイ・フェア・レディ』のヒギンス教授の書斎だった。バーナード・ショーの戯曲『ピグマリオン』を原作とするこの映画では、2層分のスペースが本棚でぎっしりと埋まり、上の棚にある本を梯子を使って取るシーンがあるが、そこから梯子付きの背の高い本棚が生まれた。天井高約3.8m。設計側では住宅でこの大きさを確保するための苦労があった。「この土地は建ぺい率に余裕がないのでいろんなご要望を入れていくとどうしても入りきらない。図書室を魅力的な空間にしたいけれども、かといってほかの部屋がその犠牲になるのも良くない。それで寝室を地下にもっていくことにしました」(村田さん)本棚の上にも開口が設けられて明るい室内。対面して設けられたデッキスペース側と庭側の2つの開口の間を空気が流れ湿気の心配もない。階段下から庭の緑を見上げる。玄関から小窓を通して図書室を見ることができる。高2の息子さんはこの図書室について「作業が落ち着いてできてけっこう快適です。明るいのもいいですね」と話す。ソファの左に見えるのが寝室開口部。デッキスペースの脇に植えられたアズキナシ。半地下からの眺めしかし単に地下にもっていっただけでは湿気の問題が発生する。そこで天井高のある図書室を半地下につくりその両サイドに大きめの開口を設けて空気がこもらず流れるようにしたうえで、さらに低い位置にある寝室とつなげることにした。半地下にある図書室のソファに座ると開口からは緑と空しか見えない。このスペースの心地よさはこの緑が大きく作用していると夫妻で口をそろえていう。「窓が上にあるため、両サイドにある緑を下から見上げるかたちになります。そうすると緑の後ろに空だけ見える感じになるのでそれがものすごく気持ちがいいんです」(上野さん)濡れ縁から図書室を見る。奥のデッキスペース側の開口との間で風が抜ける。静かで落ち着いた空気感のある庭。この緑があるおかげでお隣の視線も気にならない。手前の木はオオサカズキ(モミジ)。床がルーバー状になっているのは地下との間で空気を循環させるため。その上は物干しスペースになっている。右奥に見えるのが玄関でその左に図書室がある。地下室からルーバー状の床を見上げる。左下の鉄棒は上野さんが懸垂をするために取り付けられたもの。階段室を1階から見る。2階の天井とキッチン道路側にアズキナシが立ち、奥の庭にはオオサカズキとシラカシなどが植えられているが、それらの緑は2階からも楽しむことができる。下階とはまた違う角度から緑に接することのできる2階は家型の天井がL字でつながっている。「勾配屋根の木造の2階は天井を自由につくりやすいので、空間に変化をつけるためにL字のプランのままに家型の天井をつなげてみました。家型にするとフラットな天井よりも陰影が出るし、陰の部分も時間によって表情が変わっていくので面白いのではないかと」(村田さん)リビングダイニングと一体的につくられたキッチンでは、食洗器をビルトインにするなど隠せるものはなるべく隠して表にモノが出ないようにするほか、広さについてのリクエストがあった。「2人立てるような広さにしてくださいとお願いしました。一緒に料理することも多いので、2人いてもつっかからないような広さがほしいとお伝えしました」(奥さん)リビングからダイニングとキッチンを見る。キッチンは夫婦2人で作業ができるよう広めにつくった。家型の天井を交差させた部分は少し不思議な印象を与える造形になっている。ダイニングとキッチンを見る。ダイニングからキッチン内のモノが見えないようキッチンを囲む壁の部分を高くしている。2階は引き戸で階段室が仕切られるようになっている。約24㎡あるリビングダイニング。表と庭側の2つの開口のほかにテレビの上にも開口が開けられていて室内が明るい上に天井も高めで快適に過ごせる空間になっている。キッチンからリビングを見る。右の開口からはアズキナシの木がよく見える。リビングから庭の方向を見る。オオサカズキが少し紅葉しているのが見える。アズキナシの前の室内にも緑が置かれている。“ここはどちらですか?”最後にこの家で5年ほど暮らされての感想をうかがった。「図書室がいちばん好きなスペースですね。両方に緑と空が見えてまた静かで明るい部屋なので、最高の空間かなと思っています」と奥さん。さらに2階のキッチンスペースも好きという。「キッチンに立つとちょうどアズキナシがダイレクトに見られてお気に入りの場所ですね」上野さんも自らの強い希望でつくった図書室がやはりとても気に入っているという。「しかし、僕がメインで使おうと思っていた当初の予定と違って家族に取られてしまうことが多い」と話す。3月からのコロナ禍のもとでは大学で英語の教師をされている奥さんがZoomでオンライン授業を行う際に図書室を使っているため「ほぼ使えない」状態になっているという。「Zoomでは皆さん背景を替えたりしますが、うちではそのまま室内を映しています。そうすると大きな本棚とその後ろの中庭の緑が大きな開口を通して見えるので、“ここはどちらですか?”とよく聞かれます。今は思っていたほど図書室で過ごすことができていないですが、やっぱりあそこに座るとすごく落ち着くし集中もできるのですごくいいですね」。こう話す上野さんには、世の中とはまた別にもうひとつ、「コロナ禍が早く過ぎ去ってほしい」と願う強力な理由があるように思えた。上野邸設計村田淳建築研究室所在地東京都三鷹市構造木造規模地上2階地下1階延床面積142.19㎡
2020年11月30日細長い敷地を生かしてアトリエと家を配置木々や花に彩られるアプローチの先に建つ、グレーの外壁の建物。屋根から煙突がのぞく、まるで絵本に出てくるようなあたたかみのある家が、工藤さん一家が暮らす住まいだ。順一さん、恭子さんともに埼玉県出身のため、ゆかりのある地での家づくりを考えていたという夫妻。敷地を探す中で出会ったのが、現在の場所だった。「家だけでなく、設計事務所のアトリエも建てたいと考えていたので、ある程度の面積が必要でした。南にひらけたこの土地なら、細長い敷地を生かして奥に住まいを、手前にアトリエを建て、さらに駐車スペースもとれるなと考えました」(順一さん)。順一さんにとって、独立後初めての仕事となった自邸。「これまで設計と現場監督を経験してきましたが、自分の家では施主の立場を経験できます。さらに、建材の手配や施工も自ら行うことで、家づくりすべてに関わろうと考えました」と振り返る。こうして、1年がかりの家づくりがスタートした。アプローチから工藤さんの家を見る。左手のブルーの建物はアトリエ。家やアトリエの建物はもちろん、外構もセルフビルドにつくりあげた。リビングと庭をつなぐ広いウッドデッキは、千楓くんの大好きなスペース。開放感あふれる空間が人とのつながりを育む夫妻で理想のプランを考える中で、「細かく間仕切らず、空間がひとつながりになる平屋建て」「どの部屋も明るく、風通しのよい間取り」といったイメージがふくらんでいった。恭子さんは「前の家が手狭だったこともあって、広い玄関や使いやすいキッチンに憧れていたので、今度の家はぜひとお願いしました」と笑顔で話す。施工については、仲間の助けも借りながら、コツコツとつくりあげていった。順一さんは「自分自身が職人として携わる中で、設計と施工は一体で家づくりだという思いが強くなりました。今では、陶芸家が器を、家具作家が家具をつくるように、家づくりに丸ごと向き合っていきたいと考えています」と話す。こうして完成した住まいは、薪ストーブが据えられた広い玄関土間から、LDKが見渡せる開放的な空間が印象的だ。効果的に配された開口部から光がたっぷりと入り、さわやかな風が吹き抜ける。順一さんが手配した自然素材のやさしい風合いも特徴だ。「柱の杉、梁の米松をはじめ、ブナ、桜、ナラなどさまざまな樹種を使っています」。広いLDKでは「ごぼう設計工房」が開催する料理や手芸などのワークショップが行われており、空間の心地よさが好評だという。「月に1回の開催ですが、お子さまも一緒に参加してくださる方もいらっしゃいます。皆さんくつろいで楽しんでくださるのが嬉しいですね」(恭子さん)。広い土間玄関。アールの下り壁の奥は広いシューズクローゼット。刺繍をほどこしたのれんは恭子さんのハンドメイド。土間には薪ストーブが据えられている。薪ストーブの設置は、家を建てる際の希望の一つだった。ストーブの奥の壁は一部くりぬかれ、廊下とつながっている。ヒンメリはワークショップでつくったもの。ウッドデッキに面した掃き出し窓と、高窓からの光に満ちるリビング。つきあたりの壁は、プロジェクターの映像を映すために物を飾っていない。日々手を入れ、進化していく家「施工も自分たちで行っていたので、2017年春に引っ越してきたときはまだまだ未完成の状態でした」と振り返る夫妻。タイルを貼るなどの仕上げは、住みながら二人で行ったという。「もともと、生活の変化に合わせて、必要になったらつくればいいという考えでした。子どもが生まれたことで収納を増やしたり、少しずつ手を入れ続けています」(恭子さん)。家族の暮らしのベースとして、自分たちでつくった工藤さん一家の住まい。これからも家族の成長とともに、たくさんの思い出が刻まれていくのだろう。ダイニングでくつろぐ工藤さん一家。大きめのダイニングテーブルと椅子は、那須の家具作家につくってもらった。玄関土間の上はロフト。シーズンオフの雑貨類を収納している。色とりどりのタイルが楽しいキッチン。多目的に使える畳敷きの小上がり。ベンチがわりにちょっと腰掛けるにも便利。順一さんのアトリエ。この建物もセルフビルドでつくった。ごぼう設計工房
2020年11月23日茅ヶ崎を永住の地にしたい神奈川県茅ケ崎市。海まで自転車で10分の地に、安藤裕司さん・こずえさん夫妻は家を構えた。転勤族で各地を転々としてきたお2人だが、「茅ヶ崎は、初めてずっと住みたいと思った土地でした」とこずえさん。サーフィンが趣味の裕司さんにとっても、海の近くは理想的な場所だった。「家を建てる前に、この近くの賃貸の戸建てに2年ほど住んでいました。近所の方が野菜や果物を持ってきてくれたりと、気さくであたたかな人が多く、都会とは違った交流が楽しめ、すっかり気に入ってしまったんです。偶然、近くに良い物件が出たため、即決しました」(こずえさん)。以前から、デパートや企業に出向いて料理を教えていたというこずえさん。「自宅で料理教室を開くことが夢でした」と、家づくりの構想はそこからスタートした。2階リビングの中央にキッチンを設けた。リビング側には料理教室で使用するキッチンツールが並び、見ているだけでも楽しい。キッチンに立つと、ベランダまで見通せて気持ちがいい。真っ白いキッチンカウンターは人工大理石。来客時にはいつも用意しているというウェルカムドリンク。本日は、プルーンのビネガードリンク。手入れがラクな黒い壁面を採用。料理教室の場所を伝えるのにも、「黒い家」は目印になるとのこと。料理教室を楽しむために使い勝手を重視キッチンスタジオとしても使用する2階は、天井が高く、高窓からのたっぷりの光が降り注ぐ、開放的なワンルーム。対面式のキッチンを中央に設置し、回遊性をもたせた。キッチン前のカウンターや収納棚には、プロ仕様の調理家電、フライパンや鍋などの調理器具、食材、食器がオシャレに陳列。“見せる収納”にこだわり、料理教室に訪れる生徒さんたちの意欲をかきたてる。こずえさんが主催する料理教室『Recette(ルセット)』は、当初はイタリア料理からスタートした。その後、生徒さんのリクエストに応え、和食やエスニック、中華などへとジャンルは広がり、初心者からベテランまで誰でも楽しめる料理を提案している。「料理教室は、効率よく、短い時間でいろいろなものを作れるようにと考えています。そのため、キッチンの中ではなく、ガス台や作業台をリビングに出し、広々とした空間で生徒さんたちが自由に動けるようレイアウトを工夫しています。生徒さんが使用したものは洗い場にさげておき、合間を見て私が洗います。また、生徒さんが試食している間に私がデザートの準備をしたりと、キッチン内と外で同時進行できるよう使い勝手を第一に考えた造りにしました」。約3時間半のレッスンのなかで、生徒さんたちに充分に楽しんでもらいたいというこずえさんのおもてなしの姿勢が伝わってくる。回遊性をもたせた対面キッチン。料理教室のときにキッチン内に入るのは、基本的にこずえさんのみ。奥のスパイスラックの下に窓を設けたのは、コンロの火に影響がないように。『キッチンエイド』の赤いスタンドミキサー(手前)は、お菓子やパン作りだけでなく、味噌や挽肉を作るのにも重宝。保存容器はガラス製に行き着いたという。「中身が見えないと忘れてしまうので(笑)」とこずえさん。上部からライトを当て、美しく演出。『IKEA』で購入したバタフライテーブルは、全く同じものが3台。天板を片側のみ開いたり、両サイド開いたり、全部閉じたりと自由自在。生徒や来客人数によって調整でき、レイアウトもその都度変更可能。普段はキッチン内に置いてあるガスコンロと作業台を、料理教室のときのみリビングへ。あらかじめリビングの床にガス栓を取り付けた。大小のフライパンがずらり。「フライパンはどうしても汚れるので、ある程度使用したら買い替えます。電熱が良いものを合羽橋で購入しています」。『ストウブ』の鍋の取っ手を動物に変更。「鶏、豚、魚、エスカルゴと食材がモチーフになっています。私のささやかな贅沢です(笑)」(こずえさん)。階段を昇ってくると本棚が。生徒さんたちがレッスン前などの時間に手に取れるようにとの心遣い。2階のトイレ。臭いを吸収する特殊な壁紙を採用。バリを意識したリゾートライクな空間安藤邸に一歩足を踏み入れると、お香の良い香りがし、玄関にはカエルの石像が鎮座し、壁には木製のゲッコーが張り付いている。遊び心のあるバリ風インテリアでゲストを迎えてくれる演出は、裕司さんのアイディア。「学生時代にバリ島を訪れ、サーフィン三昧の生活をしていました。海もいいですが、食べ物も美味しくて、人もあたたかくてね。すっかり魅了されて何度も訪れています。長いときは数か月いたことも。家を建てるなら、バリのリゾートホテルのような空間にしたいと思ったんです」。リビングの床はタイル調に仕上げ、天井はダークブラウンの梁に、重厚感のあるシーリングファンを設置した。壁にはストーンカービングをはめ込み、天然木やラタン素材の家具で統一。程よいグリーンもアクセントになっている。「雑貨や家具は輸入物なので、バリ雑貨のお店にこまめに通い、出会いを待ちます。やりすぎるくらいに徹底してバリ風にこだわることを楽しんでいます(笑)」(裕司さん)。「この家に住んで6年くらい経ちますが、人との良い出会いが増え、運もよくなったと感じます。観葉植物もこんなに大きくなるのかというほどよく育つんですよ(笑)」(こずえさん)。心地よいリゾートライクな空間で笑い声が絶えない安藤邸。そのお2人の笑顔が幸せを呼び込んでいるようだ。ロフトからリビングを見下ろす。安藤邸にはカーテンがない。裕司さんの友人がロフトに気軽に泊って行かれるそうだが、「眩しくて寝ていられないそうです(笑)」(裕司さん)。スペースを最大にしてもらったというロフト。料理本がずらりと並ぶ。当初は、レシピを作成するなどこずえさんの部屋として作ったが、「コタツを置いたら、人間も猫も皆集まってきます」と。向かい側にコミュニティセンターがあるため、壁を高くし、木製調のルーバーで抜けを作った。BBQや食事をする際、人目を気にせず楽しめる。窓が多く、自然光がたっぷり入り、風が心地よく抜ける。壁(奥上)に飾られた大きなバリ絵画は、お店の人が何枚もの絵画を持ってきてくれて、実際に壁に合わせてみて、選んだものだそう。壁に張られたゲッコーはバリでは『守り神』。“無事帰る”の願いを込めて、カエルの石像を玄関に。裕司さんのウェットスーツは玄関脇に収納。サーフィンから帰宅し、風呂場に直行できるよう隣にバスルームを設けた。「玄関から3歩以内で入れるようにしてもらいました(笑)」。1階の廊下には、飾り棚を設け、バリの雑貨をディスプレイ。ゲストの目を楽しませてくれる。スコティッシュフォールドのコウくん(1歳、オス)は人懐っこくて、撮影にも協力的。たびたび登場いただきました。アメリカンショートヘアーのリンちゃん(8歳、メス)はお気に入りの場所から終始動かず。キッチンの脇には、生徒さん各自のレシピ等を置くスペースを確保。教室名の「Recette(ルセット)」はフランス語でレシピという意味だそう。レッスンは1回完結のため通いやすいのも魅力。野菜ソムリエやオーガニックコンシェルジュ、雑穀エキスパート、調味料マイスター・点心マイスターなど数々の資格をもつ勉強熱心なこずえさん。裕司さんや猫ちゃんたちも応援している。
2020年11月16日印象を決める木製窓やアンティークのドア代々木公園に隣接するハンバーガーショップ『ARMS』のオーナー、岩田卓之さん、朋代さんご夫妻。「公園近くのペット可の賃貸マンションに住んでいたのですが、そろそろ家が欲しくなり物件を探し始めました。鎌倉なども探したのですがなかなか思い描くような家は見つからず、『エンジョイワークス』に相談することにしました」そして見つかったのが、三浦半島は南葉山の約1400㎡もの広大な敷地に建つ平屋の家。「築18年の普通の家が建っていたのですが、この家を生かしてリノベーションすることにしました」印象的な木製扉はアンダーセン社のもの。「『エンジョイワークス』の設計の方とリノベーションの相談をしながら必要な個数を出していただいて、価格を抑えるために個人で安く買いました」玄関扉や室内のブルーのアンティークのドアも岩田さんが見立てて施主支給したもの。フローリングはエイジング加工されたオーク材を選んだ。他にも、タイル、照明、把手、蝶番や鋲に至るまで素材にこだわって空間を作り上げた。「現場の職人さんも含めて、チームプレーでとてもよい家を作ることができました」そして外装は杉板の鎧張りに。これからシルバーに経年変化していくのが楽しみだ。リビングを含む全ての部屋と庭をつなぐ大きなウッドデッキを設置。母屋の横にはキャンピングカーも。奥行きのある広々とした小高い斜面が岩田さんの敷地になっている。この庭が格好の犬たちの遊び場だ。かつては日本風の庭園だったが、樹木を整理し、芝生を張った。広い庭の管理用に新たに軽トラックを購入したのだそう。「今後は好みの植物を入れて、自分らしい庭を作りたいと思ってます」天井を抜いて古い梁を見せた。切妻屋根を生かした三角の天井は白に。「ソファは実家にあった母の嫁入り道具を引き継いで大事に使っています」木製の窓はすべてアンダーセン社の二重サッシ。「壁に煉瓦を貼った場所には、薪ストーブを置く予定です」2頭の愛犬も都内から一緒に越してきた。卓之さんを遊びに誘う8歳のビッケちゃん。14歳のヒニーちゃんは、この場所から外を眺めるのが大好きなのだとか。新しい可能性を秘めた三浦半島の暮らし鎌倉や葉山だけではないポテンシャルが、三浦半島にはまだまだあることを岩田邸は教えてくれる。クルマで片道約1時間半で、都内へとアクセスが可能だ。「以前は店のすぐそばに住んでいたので大変といえば大変ですが、その分、ここには都内では得られない豊かな暮らしがあります。完全にスイッチを切り替えるため、たとえば家にTVは置いていません」広い庭では犬たちが駆け回る。「実はひとつ気づいたことがあります。犬は自分ひとりで庭で遊ぶより、飼い主と一緒に散歩に行くのが大好きなんです(笑)」跳ね上げ式の木製窓もアンダーセン社のもの。窓が部屋の印象を大きく変える。下駄箱にしている棚は内側の黄色のペイントがキュート。小物はアメリカで買ったものが多いそう。玄関扉は『GALLUP』でオーダーしたハンドメイドのヴィンテージ。下駄箱にしたヴィンテージの棚も『GALUP』で。「窓の高さとピッタリのサイズだったので、購入を即決しました」玄関の横のスチールのラックのサイドが鍵の指定席。ラックの塗装の剥げ感がとてもよい味わい。ポッテリとしたアメリカ製の食器を愛用している。約150年前のアンティークのホーローのダブルシンクは、家を建てる前に福生の『DECO DEMODE』で見つけて確保。このシンクに合わせてキッチンを作っていった。窓辺のキッチン。庭を見ながら気持ちよく料理ができる。冷蔵庫(写真右下)は業務用を選択。友人が泊まれるガレージを作る母屋の横のキャンピングカーはクレーンで吊り上げて設置。「友人が遊びに来た時にここに泊まってもらっていたのですが、雨漏りし始めたので修理が必要な状態です」クルマが大好きな岩田さん。敷地内に数台のクルマを停めている。「ゆくゆくはガレージを作りたいと思っています。ガレージの上には友人が泊まれる部屋を作りたいです。家の中も、これから薪ストーブを入れたいですし、ウッドの腰壁も作りたいし、天井に木を貼りたいとも思っています。庭にも手を入れたい。やりたいことが山ほどあるので、これからの変化が楽しみです」奥がベッドルーム。いつのまにかヒニーちゃんがベッドで爆睡。寝室のクローゼットは、通気性の高い木製扉。2面採光の明るいベッドルーム。ベッドルームからも、木製の観音開きのドアから外のデッキに出ることができる。洗面所はアンティークの黒白のタイルを貼り、NYスタイルに。洗面台はアメリカンスタンダード社のもの。鏡はヴィンテージ。トイレはテラコッタタイルのカントリースタイル。グローエ社のシャワーヘッドに、クラシックなデザインの蛇口を組み合わせた。
2020年11月09日奥行き感のあるアプローチ「近所の散歩がてらたまたま見に来たら、途中から丘のような傾斜があってそこからの景色の抜けが素敵だったのと、敷地まで続く細いアプローチがあってその奥行き感というか奥まった感じがいいなと思ったんですね」と田中さんが話すのは東急沿線の閑静な住宅街の一角にある田中邸の敷地だ。砂利の敷かれた敷地に入り砂利と同様のグレーに塗られた壁を右手に向かうとプライベートの入口があり、敷地をぐるりと囲む塀へと渡しかけられた壁の下をくぐった先は木壁になっていて、そのコーナー部分に開けられた大きな開口からは内部の様子をうかがうことができる。旗竿敷地にある田中邸。グレーの壁はコンクリート造ではなくモルタルが塗られている。奥のコーナー部分がギャラリーになっている。半地下のギャラリーこの奥のコーナー部分がギャラリーになっていてグランドレベルより90cmほど下がってつくられている。「半地下ですが、地下ではなく1階のような雰囲気になるように設計しました」と田中さん。設計は自身で行ったためこの家の施主兼設計者だ。「単に住むための家を建てるというのではなく、自分たちがいろいろ挑めるというか試すことができる余白のある家をつくろうと思い、ギャラリーのある家をつくりました」ギャラリーへのアプローチが敷地までのアプローチ部分の細長い道を引き継ぐようにつづく。ギャラリーのコーナー部分から外を見る。ギャラリーの入口は右の開口。半地下だが、天高が270cmと高めでかつ開口部も大きいため地下というよりも1階のように感じられる。右に置かれた机は田中さんのワークスペースとしても使われている。この半地下には将来カフェもできるように水回りやガスなどの配管がなされている。取材時には陶芸家の手になる器の作品などが展示されていた。生活空間もギャラリーに「当初は半地下にあるギャラリーだけをギャラリースペースとして考えていたんですが、その上の生活空間もギャラリー化して開いてみたらどうかなと思ったんですね。展示されている器とかが生活空間のなかに自然に溶け込んでいたら来ていただいた方たちも感情移入できるんじゃないかと」(田中さん)生活空間もギャラリーとして使うとなると設計の考え方も当然変わってくる。余分な装飾をそぎ落としながら暮らしの中にも余白をつくり、冷蔵庫や洗濯機など個性の強いものは存在を感じない配置にしたという。そして空間のコンセプトは「自然な素材を活かして、削ぎ落された余白感を残す」というものだった。田中さんは1級建築士だが通常は企業のブランディングなどにかかわるクリエイティブディレクターをしている。奥さんはグラフィック系のデザイナーで料理家でもある。この1階では家具などの位置も決めずにつねに動かしながら使うことができるような空間設計を心がけた。2階への階段下から見る。奥さんは「キッチンを作業場的な見た目にしたいと思った」という。1階のキッチン周りは防火上の必要からモルタル仕上げに。それを設計の工夫によりデザインとしても見せている。「用途を決めない余白ある空間をつくっておいて、その時々の状況に合わせて使えるように設計しています。コスト削減の意味合いももちろんありましたが、余分な装飾はしないし素材はそのまま活かして使っています。そして、ふつうの家であればどこにソファやテレビを置くのかそれぞれの位置を決めて設計しますが、ここでは日々過ごし方に合わせて配置や用途を変えるような可変性のある心地のいい居場所つくる、そういう考え方で設計を進めました」キッチンの延長上にあるカウンターとその上の棚に置かれているのは陶芸作家の作品で売り物。ここに置いてあると購入する人がけっこういるという。その下にあるのは「料理のイベントの時に使ってください」と作家の人からいただいたもの。周りを囲まれた敷地で抜け感をつくるこの田中邸はどのスペースの開口も大きく取られていて光がよく入る。しかし、この大きめの開口は採光のためというよりは空間の抜けをつくることのほうが目的だったという。「あるはずの場所よりも奥に壁がある感じにすると空間に広がりができるので、外にある壁のほうを意識するようにしました。ですから、手前にある家の壁を感じさせないように開口をできるだけ大きくしている感じですね」この開口部では設計上の工夫があった。この地域は準防火地域のため、耐火性能の高いアルミサッシなどフレームの大きなサッシを使わないといけないが、サッシの黒い枠は主張しすぎてしまってシンプルな抜け感が出ない。それで内壁外壁どちらからもサッシ面がセットバックするように設計を行い、サッシの存在感をできる限り減らすように設計したという。壁の部分を少なくして開口を大きめにとり外に設けた壁=塀が家の壁と感じられるようにした。アルミサッシはこの大きさでは家庭用のものがないためビル用のものを使った。外の壁=塀に渡しかけられている部分はウォークインクローゼットになっていて、この1階から出入りすることができる。「自然の間仕切りのようになっていてつくって良かった」という小上がりスペース。いずれ子ども部屋にする予定という。シンプルなデザインのなかに選び抜かれた家具や小物が収まる室内は和なのか洋なのかわからないニュートラルさを目指したという。外を感じられる家越してきてから2年と数カ月。奥さんは「余白が多い分収納のしやすさだったり使い勝手みたいな暮らしの基礎的な部分が定まるまでけっこう時間がかかりましたが、暮らしていくうちにとてもフィットしてきました」と話す。そして、家の中にいても外を感じることができるという。「この1階だけでも、一周すると光や温度が違ったり見える景色が違ったりして、家の中にいてもちゃんと刺激があっていいなあと思いますね。あと2階に上がるとテラスで風も感じられる。そこで落ち着いて寝たりとかもしたりしているので、今のコロナ禍でも子どもを育てるのにもとてもいい家だなって思っています」1階から玄関スペースを見下ろす。2階には形が気に入って購入したというデンマーク製のアンティークの椅子が置かれていた。2階のスペースは6畳もなく天高も190cmと抑えられているが、大きな開口からテラスを通して視線が遠くまで抜けるため広く感じ振られる。玄関スペース。手前側を右手に進むとギャラリーと浴室がある。浴室はギャラリーに隣接してつくられている。手前から奥へ木の床が続いているように見えるのはタイル製の床。気持ちのいい居場所がたくさん「暮らしの中で自己表現をしていくなかでその表現の場として会社があったりこういう家があったりすればこれからの暮らし方も街のいとなみも変わっていくと思う」という田中さん。「それをまず自分たちが試して発信してみよう、どうせ家を建てるならそういう家にしようと思ってつくった」と話す。完成した家は「毎日の変化が気持ちいい空間ができた」という。「居場所がたくさんあって、気分によって場所や配置を変えることができる。光や風の入り方も時間帯によって変わるのでそれに合わせて場所を変えたりもできる。半地下と2階とまったく異なる居場所があり、この1階の中でもまたいろいろな居場所がある。変化を楽しむことは想像以上に気持ちが良かったですね。仕上げも時間とともに朽ちていく美しさが好きで素地そのままにしたんですが、こんなに気持ちのいいものなのかと」。実際に住んでみて、田中さんは、意図した以上の気持ちよさを生活の中で日々実感しているようだった。田中邸設計田中培仁 / NOLK +ムカバトリ一級建築士事務所所在地東京都世田谷区構造木造規模地上2階延床面積 80.84㎡
2020年11月02日究極のマルチスペースガレージを生かした生活住まいの困りごとで多いのが「物を置く場所がない」「作業するスペースがない」「子どもを安心して遊ばせる場所がない」など。実はこれらの多くは、ガレージで解決できます。シャッターを閉めれば、プライバシーやセキュリティ面に優れたプライベート空間に。土足で使え水に濡れても安心なので、作業スペースとしても最適。物を置くスペースとしてだけでなく、室内より幅広い用途で使えるのです。自由度が高いガレージは、様々なニーズに応え、それぞれのライフスタイルに合わせることができます。ヘーベルハウスでは、「楽しい」が詰まった多彩なガレージプランをご提案。今回は「Play Site」「Secret Base」「Activity Pit」の3つのカタチをご紹介します。ガレージを、駐車場や物置きとしてだけでなく、便利でカジュアルなスペースとして使いこなす。家族と過ごすレジャースポットに「Play Site」移動時間ゼロ、家族だけのレジャースポット。天候にも左右されず、周りも気にならない空間は家族の思い出づくりの場にピッタリです。テントを張ってキャンプをしたり、バーベキューやD.I.Y.など、家族が集まる第二のリビングで家族時間を過ごせます。ガレージに置いてある機材と、キッチンで下ごしらえした料理でバーベキュー。天候を気にせず、テントを張ってキャンプ体験。スクリーンとプロジェクターを設置して映画鑑賞。ハンモックに揺られながら、自分たちだけの空間と時間を楽しめます。趣味に没頭できる大人の隠れ家空間「Secret Base」ファミリーカーが必要なくなり空いたガレージは、長年抱いてきた理想を実現する場所になります。好きなことに集中し浸り趣味を極める、とっておきの大人空間。これまで集めてきたコレクションのギャラリーや、気兼ねなくできるプライベートジム、汚れを気にすることなく行える染色工房など、時間を忘れて夢中になれる環境がつくれます。趣味のものが並べられた自分だけの空間。オイルやグリスの床汚れも気にせず作業に没頭。書斎としてのワークスペースに。家にいながら集中して仕事ができる。ガレージと書斎が一体となった空間。自分だけの世界を存分に楽しむ贅沢なひととき。趣味を詰め込んだ外遊びの拠点「Activity Pit」趣味を楽しむ休日の始まりの場所。夫婦一緒に楽しめるアクティビティのアイテムも、それぞれの趣味の道具もガレージに。準備から家族の時間が始まります。「好き」を詰め込んだ空間で、自然と夫婦との会話も弾む。ガレージにアイテムを集約していれば、アクティビティから帰ってきた後の荷降ろしもラク。十分なスペースでお手入れもスムーズに。作業をしながらの家族との会話も楽しみのひとつ。屋内では場所を取ってしまうものも、ガレージなら余裕を持ってレイアウトできます。理想の暮らしにフィットするライフスタイルブックをプレゼント!へーベルハウスが考えるGARAGEをさらに詳しく知りたい方はこちらから。へーベルハウスの住宅展示場を見学されたい方はこちらから。
2020年10月26日「スタイルのある家と暮らし」をテーマに情報発信する『100%LiFE』。クリエイティブな感性で暮らしと空間を楽しむ人たちのライフスタイルメディアとして2012年の7月にスタート、8周年を迎えました。そこで、今回、特別企画として、これまで取材した家の中で『100%LiFE』に集う読者の方々に人気のあった家を、テーマごと振り返ってみました。読者の皆さんが興味をもった家とは?第6回は、趣味を空きティブに楽しむ、「ガレージ」のスタイル、人気の10軒を紹介します。type1クルマと共に暮らす家家中のどこからでも愛車を眺められる住まい建物の横に縦に2台分停められるスペースを確保し、もう1台分は、ビルトインガレージとした。中庭を囲む“ロの字型”の家なので、家のどこからでも愛車を眺められる。仕事場からは後ろ姿を、和室からは愛車の横顔を、リビングからは斜め上からの姿を楽しめるのだ。type2建築家自邸の3つのこだわり食と向きあい、クルマと音楽を楽しむこだわったのは3つ。そのひとつはガレージだった。「かなりなクルマ好きなんですね。クルマ好きにもいろいろありますが、僕の場合は、クルマ自体をプロダクトとして見る。ずっと見ていても飽きません」type3パティシエールこだわりの家造り広めのキッチンと“わくわくする”空間こだわったのはビルトインガレージ。ダイニングと大きなガラス面を介して接し、上のリビングの“床の窓”からも車を眺められるという特別仕様だ。家の中から車を眺めるというのは長年の夢だったという。type4これからの変化が楽しみな家素材感にこだわった心休まる住まい男の夢がギュッと詰まったガレージと書斎。大学生の頃からの趣味というオートバイとクルマは、ガラス越しに書斎からも眺められるようになっている。乗り物が趣味の男なら、誰もが夢見る空間だ。type5次の世代に残したい家作品性の高い建築を丁寧にレストアして住む湘南の地で家を探したのは、箱根にクルマでツーリングに出かける拠点を作りたかったからだそう。キットを輸入して作った大型のガレージには、遊び道具が満載。type6DIYで自分好みの空間に元倉庫を大改装自由な発想で暮らすガレージには中2階を設けて事務所にしたいということと、その下に工作ができる小部屋を作ること、塗装など内装の仕上げや、造り付けの棚などは、自分たちで少しずつ作っていきました。type7休日が待ち遠しい家公園の緑を従える抜群の環境カリフォルニアスタイルの家オーナーは自分で溶接したり塗装もしてしまうほどのDIYの技術の持ち主。クルマやバイクを思う存分いじることのできる広いガレージつきの家が完成した。type8居住空間半分ガレージ半分の家ミニマムデザインの家をカスタマイズして暮らすバイクが8台と車も2台あって、なかなか手放せなかったんですね。しかも、どうしてもすべてを家の中に入れたかったので、居住スペース半分ガレージ半分ということになりました。type9大型ガレージのある家趣味を極める自分だけのファクトリー「ガレージが欲しいというのが、家を建てたいちばんの理由でした」。Jeepラングラーの改造車、BMWアドベンチャーが余裕で収まるガレージで、元メカニックのオーナーはそう語る。type10100年経っても色あせない家西海岸の空気感を感じながら暮らすオーナーが「アメリカの普通の家のガレージみたいにモノをいっぱい突っ込んでおもちゃ箱にしてある」という地下1階のガレージ。Recommendedおうち時間をもっとアクティブに感性に応えて、可能性が広がるガレージライフのススメヘーベルハウスが考えた、究極のマルチスペース、ガレージを生かした生活のアイデアをご紹介します。
2020年10月26日開放的な角地を活かす起伏に富んだ、東京・大田区の閑静な住宅街。近くには富士山を望めるスポットもある高台の一角に、Hさん夫妻と5歳になる娘さんは暮らす。偶然出会ったというこの土地は、幅員約6mの広めの道路に面した角地。開放感があり、交通量も少ない静かな環境が気に入ったという。「兵庫県出身で、静かで落ち着いた住宅地で育ったため、東京によくある狭小3階建てや家に囲まれている環境が苦手だったんです。ここは最寄りの駅から静かな街並みが続き、家と家の距離もゆったり取られています。道路幅と街の雰囲気で決めました」(ご主人)。“リビングに家族が自然に集うような家”を求めたHさん夫妻。角地で開放的な土地の特性を活かしつつ、その要望に見事に応えたのが建築家の山本浩三さん。敷地面積に対する建築面積や床面積の割合から熟慮し、1階にLDKを配置し、その上部に大きな吹き抜けを設けるプランを提案した。「この敷地は、建ぺい率50%ですが、角地のため10%加算され、合計60%になります。容積率は100%なので、1階に敷地面積の60%を確保すると、2階は残りの40%になる。これ以上の床は無理でも、20%の吹き抜け空間なら作れるのです。そのため、住空間としては120%を確保できるというわけです」(山本さん)。敷地のほぼ中央に大きな吹き抜けを設け、それを囲むように玄関や駐車スペース、バルコニー、各居室など生活のあらゆるパーツを配置した。玄関から一続きのLDK、さらにリビング階段にすることで、家を出入りする家族がリビングに自然と集まってくる。また、吹き抜けを介して、どこにいても家族の気配を感じられる家となった。玄関を入るとすぐに大きな吹き抜けをもつ開放的なLDKにつながる。現在、左上の壁にかける絵画を探しているそう。リビングに座るとバルコニーの開口を通して空が見える。シーリングファンで空気を循環。2階のワークスペースからLDKを見下ろす。1階と2階での会話も自然に生まれる。幅員約6mの道路に面した角地にゆったりと建つ。「真新しいものより古くて味のあるものが好き」というご主人の愛車は、32年前のランドクルーザー。どこにいても家族を感じられる安心感「1階のリビングは明るさが十分取れるのか心配でしたが、採光も通風もしっかり考えて造っていただきました」(ご主人)。南側のバルコニーの大きな開口をはじめ、プライバシーを守りながらも光と風を導くよう計算して窓が配置されているため、リビングはもちろんどこにいても明るく心地よい空間となった。「道路幅があり、建ぺい率も低いため、家と家との間に距離ができることで、自然光や風がたっぷり入ってくるのです」(山本さん)。1階は広々としたワンルームにこだわったご主人。柱を立てず、華奢な手すりの片持ち階段にし、抜け感を意識した。すっきりとしたステンレスキッチンは奥さまの希望で対面式に。「料理をしながらこの広い空間を見渡せたら気持ちいいと思いまして。娘が遊んでいるのも見えるし、2階で仕事をしている夫にも気軽に声をかけられますね」。バルコニーで洗濯物を干していてもリビングの様子が見え、リビングにいる娘さんからはママの姿が見えるため、安心感もある。小さな子どもへ配慮した造りになっている。抜け感にこだわったご主人の強い希望で、約22畳のLDKには柱を設けなかった。その分、天井や床下に太い梁を通し、強度を保っている。リビング階段は片持ちタイプに最低限の手すりを付け、軽やかに仕上げた。ダイニングの真鍮の照明は『ニューライトポタリー』。「経年変化を感じられるものが好き」というご主人が最初から決めていたそう。シャープなステンレスキッチンは『サンワカンパニー』。奥の窓から光と風が入る。「コロナの外出自粛期間中は娘とよくお菓子を作っていました」と奥さま。花やグリーンを娘さんと一緒に活けることもあるそう。レッドシダーの天井が窓の外まで延び、広さを強調。「寝室の窓からバルコニーの上、右側の窓下のラインと一直線につながっているのが美しくて好きです」と奥さま。この夏はバルコニーが活躍。「初夏にはバーベキュー、真夏には子どものプールを出して遊びました」。道路からの視線を気にせず楽しめる。ワークスペースの奥に位置する子ども部屋。カラフルなディスプレイが可愛らしい。ウォーキングクローゼットには寝室からとワークスペース側の2か所から出入り可能。夜遅くなったときなど、寝室を通らず着替えができる。寝室の上には、勾配天井を活かした大型収納がある。寝室と同じスペースほどあり、「なんでも詰め込めて便利です」とご主人。幸せに満ちた“新しい生活”Hさん一家がここで暮らし始めたのは昨年の12月。新型コロナウィルスが話題にもなっていないときである。外資系広告代理店でクリエイティブディレクターとして活躍するご主人は、以前は毎晩のように帰宅が遅かったそうだが、現在はほぼ毎日在宅勤務に。2階のワークスペースで1日のほとんどを過ごすという。「家の設計を考えているときは、こんなにこのワークスペースを使うとは思っていませんでした。ここからは1階が見渡せて、目の前のバルコニーで遊ぶ娘の姿も見えます。家族を常に感じられ、毎日気持ちよく仕事をしています」。コロナ禍において家族で一緒に過ごす時間が増えたHさん一家。「くしくも娘との時間が持てるようになりました。家族とつながりながらも仕事には集中できるため、結果的に良いワークライフバランスになっていると感じますね」と話すご主人。その充実した表情から、“新しい生活”がより豊かな時間をもたらしてくれたことが伝わってくる。これからも一層家族の絆を深めていかれることだろう。機能満載の『ハーマンミラー』のアーロンチェアに座り、仕事に集中。お絵描きをしている娘さんと並んで仕事をするのが、嬉しいひととき。ワークスペースの天板は約2.7m。ラックにはご主人のお気に入りのものをお洒落にディスプレイ。『リバーゲート』のソファやダイニングテーブルですっきりまとめたLDK。「広々としたワンルームで天井が高いため、トランポリンや風船遊びなど体を使った遊びもできます」(奥さま)。玄関脇(右奥)のシューズクローゼットの正面に鏡(左側)を設置。コートや靴を合わせたトータルコーディネートの最終チェックができる。ホテルライクな洗面&バスルーム。「洗面ボウルは絶対2つ欲しかった」とご主人。朝のバタバタとした時間もスムーズに。細かいタイルが個性的で一目惚れしたというご主人。「好きな椅子と同じデザイナーのもので運命を感じた」と話す。独身時代に椅子を集めていたご主人が、今も大切にしているロッキングチェア。デザイナーは、洗面のタイルと同じジャン・マリー・マッソー。「現在は、娘が気に入って使っています」。H邸設計PANDA : 株式会社 山本浩三建築設計事務所所在地東京都大田区構造木造規模地上2階延床面積98.11㎡
2020年10月19日濡れた足で歩ける土間「モアデザイン」で店舗デザインを中心に、数多くの物件を手掛けてきたインテリアデザイナーの山口大輔さん、昌愛さんご夫妻。お二人ともサーフィンにすっかり魅了され、6年前に3匹の愛犬とともに都内から鎌倉・由比ヶ浜近くに移住した。海まで自転車で約5分、サーフ天国な家だ。「当時、そろそろ家を買いたいなと考えていました。都内より、波乗りができる場所がいいと鎌倉に狙いを絞りました」サーフィンのためにリノベーションをした家なので、サーフボードの置き場と、海から上がった際の動線を確保するために、庭だった場所に土間部分を建て増しした。海から帰ったら庭でシャワーを浴び、濡れた足で土間を歩いてもまったく問題ない。ダイニングやリビングからも見ることができる美しい柄が施されたロングボードは、メキシコでアーティストにオーダーしたもの。「メキシコではバハカリフォルニアでサーフトリップもしました。美しい海とサボテン以外はなにもない場所(笑)。日本とのギャップを存分に楽しみました」サーフボードを保管している土間は、もともと庭だった部分に増築している。ロングボードの長さ分の天井高をしっかりと確保。土間は玄関からシューズクローゼットまで続いている。リノベの際、キッチンの場所は移動。濃いブルー、黒、そして階段の虎柄の壁紙、木目のキッチンとフローリング、5つのライト。リズミカルなインテリアがカッコいい。ダイニングテーブルの上の照明は、電球のデザインがすべて違っている。建て増しした玄関のモルタルの壁が、時間とともに味わいのある色に変化してきたそう。土間の奥は靴棚を設置。「鎌倉は湿気が多いのと、ここでウエットスーツも干すので、カビを防止するためエアコンを常時回しています」オリジナルな無国籍インテリア風、スタイルの家と括られる空間にはしたくなかったという山口さん。サーフィンをするための家なのだが、いわゆるサーフスタイルの家ではないのだ。山口さんのセンスに彩られた、オリジナルな山口スタイルの家だ。「さっぱりとした家より、ゴチャゴチャしているほうが好きなんです」山口さん宅には豹柄アイテムがとても多い。ラグマット、ビーチサンダル……階段に置かれたスケートボードも豹柄だ。HALOのパンクな星型スタッズの棚の上には、バリ島で買った仏像のアート、スカル、ライオン、スケッグと、様々な国の様々なテイストのものが並ぶ。階段の輸入壁紙は虎!よく見ると様々なデザインの金のロープタッセルを咥えている。手摺りは流木。1.5人掛けの白いソファやTV台など、家具はイギリスのHALOのものが多いそうだ。もともとあった出窓はモルタルで仕上げ直し、たくさんの植物を飾っている。MIX犬のパンダちゃんはHALOのソファがお気に入り。フレンチブルのサイちゃん、ポメラニアンのコトラちゃんの3匹とともに暮らす。2階は元々の間取りを活かしてリノベ1階は大きく手を入れてリノベーションをしたが、2階はもともとの部屋を活かして手を加えたという。「仕事部屋はもと和室です。無理に洋に寄せるのではなく、壁紙などで和の名残りMIXを楽しんでいます」寝室はハチ柄の輸入壁紙。甘くなりすぎないピンクの壁紙が最高。両袖の机はロイズ・アンティークスで買ったアンティーク。ベッドの脇には、犬たちのためのスロープが設置されていた。DIYで作ったのだとか。寝室にウォーキングクローゼットを作った。左右でゆるく夫婦の服を分けて収納しているのだそう。都内の事務所だけでなく、鎌倉でも仕事が進められるよう、仕事部屋を整えた。
2020年10月12日ぐるぐると回れる家があこがれ300㎡と広い敷地に立つ安達邸。もともとは奥さんの千紘さんの実家が立っていたこの土地で千紘さんのお父さんとの2世帯住宅を建てることになったのが4年前だった。家づくりに際し夫妻の間には「人が集まれる家」「古くなっていくのが面白い家」「かくれんぼができる家」などのイメージがあったという。設計を担当した建築家の岸本さんには、それらに加えて「子ども部屋を閉じた空間にしたくない」「敷地を生かした家にしたい」などの希望も伝えた。「トトロに出てくるサツキとメイの家みたいにぐるぐると回れる家があこがれだった」とも話す千紘さん。安達邸は階段を中心にしてぐるりとめぐるつくりになっている。トップライトから光の落ちるこの階段室の1階部分には階段を囲むようにお父さんの部屋と浴室などの水回り、そしてお父さんからのリクエストだった書庫がつくられている。そしてこの書庫は階段室の1階部分の壁ともなっている。2階から見る。3階に開けられた小窓を通して階段室の様子をうかがうことができる。階段室の1階部分の2つの壁が本棚になっている。書庫と子ども部屋「父からは最初にとにかく書庫をつくってほしいと。本が多いので最初は図書室のようなイメージだったんですが、本を中心として居場所をつくる提案をしていただいたのが面白かったですね」(千紘さん)。そして2階には、この書庫と同じように階段室に対して開かれた、いずれ子ども部屋となるスペースがつくられた。「2世帯住宅でよくやるんですが、この安達邸でも親世帯と子世帯をつなぐつなぎ目のところに子ども(孫)の居場所をつくりました」と岸本さん。またこの2階は「1階の延長であってほしかった」ともいう。「“2階に上がった”という感じにしないことを考え始めたときから階段の仕上げや造形、プロポーションを徹底的にスタディして、2階に至るまでは大地がそのまま延長・連続していくような、地形あるいは彫塑的な造形として扱っています」3階部分の壁に開けられた窓から見下ろす。将来子ども部屋になる2階部分はL型につくられている。2つにわけられるようスイッチも2カ所に付けられている。壁がなくオープンなつくりの子ども部屋から階段室を見る。2階から階段室を見る。3階に上がって扉を開けるとキッチンが正面に見える。キッチンと「こもり部屋」3階にあるキッチンは「はじめは“こもれるような感じにしたい”ってお願いしました」と千紘さん。キッチンに隣接して「こもり部屋」がつくられてこの“こもれる願望”がかなったため、実現したキッチンは完全にクローズな空間にはしなかったけれども、ひとりで集中して作業のできるスペースになったという。「完全に仕切られているわけではないので家族と話したりしながらでも料理をつくれるけれども、床が一段下がっていて白い鉄筋の棒と吊り棚で区切られた感覚もあるので集中して作業をすることができます」キッチンとダイニングスペース。キッチンでは冷蔵庫の収めどころがいつも問題になるが、安達邸では千紘さんの「こもり部屋」との仕切りとして機能しかつキッチンと隣りあわせにもかかわらずぐるりと迂回するために心理的な距離もつくっている。丸テーブルのところからキッチンを見る。天井は家形になりかつ壁との境目が柔らかくあいまいにされている。ベンチは丸テーブルのところからぐるりと手前側へとつくられている。テーブルを中心に多くの人が集まれるつくりだ。千紘さんのお気に入りの2畳ほどの「こもり部屋」からキッチンを見る。キッチンは周囲の床から13㎝下がっている。キッチン部分に立てられた白い鉄筋棒が透過性をもちつつ吊り棚とともに通路とキッチンとを仕切っている。居場所がいろいろある引っ越してきてから4カ月ほど。安達さんは3階のキッチン横から寝室のほうにまでL形にぐるりとめぐるようにつくられたベンチにいることが多いという。「日当たりに合わせてベンチの位置を移動してクッションがあれば寝転がれるというのもいいですね」。さらに「このベンチのほかにもこの家には座れる場所がすごくたくさんある。階段もそうですが居場所が厳密に決められているというのではなく、日の当たり具合だけでなく、季節や時間帯などによっても移動して、移動しながら自分のいいところを探していけるような感じになっている」と話す。お子さんが2階で遊んでいるときには階段をイスのようにして座って様子を見たりとかもしているという。千紘さんは安達さんと同様に3階のベンチも好きだが、やはりキッチン横の「こもり部屋」がとても気に入っているという。「2人目がまだ小さいので昼間はまったく自分の時間がない。でも、夜、子どもを2人とも寝かせたあとなどにあそこに座っていると、囲まれていることで安心感がありかつ目の前に窓があって視線も抜けるので、すごく気分がいいですね」玄関側から階段室を介して奥に浴室などの水回りスペースを見る。2階が子ども部屋。彫塑的、あるいは地形的につくられた階段部分。手前のタイルの部分はお子さんと本を読むスペースにもなっている。トップライトから落ちる光が階段室を介して周りのスペースにも光を供給する。浴室側から階段室を介して玄関方向を見る。最後に2世帯住宅にしたことについて話していただいた。「2世帯住宅ということはあまり気にならないです。とはいえ、お父さんがいるかどうかはちゃんとわかるのがいいですね」と安達さん。千紘さんは「2世帯住宅に住むのはわれわれの暮らしにとって大きな変化でした。父の部屋は父の部屋で扉を閉めれば独立して暮らしているようにもなるんですが、階段のところで子どもと一緒に遊んでくれたりするし、庭で遊んでいる時に父の部屋が見えたり声が聞こえたりとかというのもけっこう面白かったので、2世帯でもこうやって暮らすのは悪くないなと思っています」と話す。「3世代で一緒にご飯を食べたりすることもよくある」という安達家。暮らしの変化は、不自然になることなく親世代・子世代ともにすでにしっくりとなじんできているようだった。左の扉を開けると千紘さんのお父さんの部屋。右に玄関の引き戸が見える。玄関の引き戸を閉めた状態。手前の空間は「リビングみたいな使い方にしたいと思っています」と安達さん。玄関の引き戸をすべて外に出した状態。「開けば外でもあり閉じれば中でもありという感じがほしいかった」という。300㎡と広い敷地は旗竿地。奥に竿の部分が見える。敷地に対して斜めに角度を振って四方に庭をつくっているため、誰も足を踏み入れないような「裏」の空間がない。安達邸設計acaa所在地東京都杉並区構造木造規模地上3階延床面積116.4㎡
2020年10月05日人が集まる楽しい家海と山に囲まれた自然豊かな大磯に住宅を構えて、約2年。グラフィックデザイナーの西田友美さんと農家を営むご主人が暮らすこの家は、これから2人で生活していく上で、人が集まるような空間で楽しい時間を過ごしたいという思いによって生まれた。「いつかは自分たちの家を持ちたいという夢をずっと持ち続けていたのですが、夢で終わらせるのではなく、ちゃんと実現させようと思い、土地探しから始めました」と話す西田さん。しかし、今の土地に出会うまでには紆余曲折があったという。「当初は職場の都合上、都内で土地を探していたのですが、どうしても条件の合う良い土地と出会うことができませんでした。そこで一度仕切り直して、主人も私も神奈川県出身ということもあり、神奈川県を中心にして探し始めたところ、出会ったのが大磯でした。かつては別荘地だったこともあり、自然も豊かで、時間の流れがゆっくりしているように感じたことが決め手となりました」と西田さんは振り返る。玄関を正面に見る。あえてサイドには壁を作らず、開放感のある空間を目指した。右を向くと、2階へと続く階段ホールに。開放感のある吹き抜けの階段ホール。2階へ上がる階段の手すりにはアイアンを採用し、モダンな印象を空間に与えた。シンプルにまとめられた洗面スペース。清潔感を意識して、収納力のあるフラットな三面鏡を採用した。職場が都内にある西田さんと農家を営むご主人のそれぞれの生活リズムを考慮し、玄関からすぐにアクセスできるところに寝室を配置した。1階の客間兼書斎。右手前には造作の小上がりを設置し、下は収納スペースとなっている。パッシブデザインにこだわった心地のよい空間づくり吹き抜けの階段ホールから2階へ上がると、明るく開放的なLDKが広がっている。「依頼した建築士の方はパッシブデザインにこだわった設計をしていて、採光や風の抜ける心地よさをとことん追求してくれました。また、経年変化も楽しめるような素材感も大切にしたいという思いがあったのですが、そうした気持ちも全部詰め込んだ設計を提案してくれました」と西田さん。西田さんご夫妻の希望と建築士の考え方がマッチしたことで生まれたこの居心地のよい空間には、以前の住まいから引き継いだという、ご夫妻こだわりのアンティーク家具が配置されている。「新築であっても、全部が新しいものだけの家は嫌だったんです。新しいものと古いものが並ぶことで、両方の良さが引き立つんじゃないかなと思っています。そういう意味でも素材感を大切にしたかったんです。椅子や棚など家具を購入する際は、いつも主人と話し合って決めています」(西田さん)。明るく開放感のある2階LDK。採光を考慮した勾配天井によって空間に動きと広がりが生まれている。キッチンから吹き抜けの階段ホールを見る。左側にはモルタル仕上げのアクセントウォール。西田さんが特にこだわったオープンキッチン。造作のカウンターテーブルは栓(せん)の木の一枚板から製作されている。ゲストを招いた際は、このカウンターで料理を振る舞うという。また、キッチンの床はゲストと目線が合うように1段下げている。アンティークの収納棚には西田さんの趣味で集めたというお猪口がずらり。同じく西田さんが趣味として集めている箸置き。「ゲストに料理を出すときには、好きな食器を選んでもらっています」(西田さん)。リビングの窓からは緑豊かな景観が楽しめる。「キッチンから緑が眺められるのは、特に気に入っているポイントです」と西田さん。楽しみながら、住まいを育てていく夫婦2人での充実した暮らしとともに、人との交流も楽しめるような住まいを目指し、実現させた西田さんご夫妻。「空間の心地よさはもちろん、お互いの生活リズムにあわせた間取りになっていて、都内に住んでいた頃と比べて、本当にストレスを感じずに過ごすことができています。家にいる時間が長い主人も、この家での生活を気に入っているようです」(西田さん)。ご主人は約10年前に農家として独立。無農薬にこだわり、農地を耕すところから、収穫、配達まで、すべて1人で行なっているという。「家のことについては、農作業に追われて、まだ自分のやりたいことに手をつけられていないと主人は言っていました。私自身も庭をウッドデッキにしてみたいなど、まだまだやりたいことがあります。家づくりは完成がゴールではなく、暮らしながら育てていくものだと思っているので、これから先も夫婦で楽しみながら家づくりをしていきたいです」と微笑む西田さん。その笑顔が、何よりもこの住まいでの豊かな暮らしぶりを物語っていた。西田邸から、ほど近い場所にあるご主人の農園。まるで緑のトンネルのような栽培スペースでは、かぼちゃやミニスイカなど、つる性の野菜を宙吊りにして育てている。収穫したばかりの色とりどりの野菜木の質感が引き立つナチュラルモダンな外観。
2020年09月28日小さな白い箱をイメージして幼少期を過ごした実家を建て替え、2年前に都心から引っ越した石澤敬子さん。活気のある商店街を入ったところに、3階建ての白い箱が建つ。「バウハウスのデザインや、ル・コルビジェの“小さな家”が好きだったので、イメージはシンプルな白い箱でした。建築設計会社さんに、必要な間取りと大まかなイメージをお伝えして設計してもらいました」。引っ越してくる前に住んでいた六本木でも、自宅でワークショップやイベントを開いていた石澤さん。1階にはアトリエを設け、2階にLDK、3階にベッドルームと水まわりを設けることを決めていたそう。「もともと服を作るところから始まって、ものづくりが好きだったんです。自分の作品が作れて人を招くこともできる、可能性のあるスペースが欲しかったですね」。アトリエには大きなガラスの引き戸をリクエストした。格子状のガラス戸は、閉じれば緩やかな仕切りとなり、開け放てば玄関からひとつながりの空間に。「ミナ ペルホネン」に勤務する傍ら創作を楽しむ空間は、自ら選んだ世界各地からのインテリアで彩られている。引き戸を開け放てばひとつながりの空間に。アトリエは、服の制作、イベントやワークショップの開催など、石澤さんのブランド「moss*」の活動スペース。引き戸はガラスに、アイアンを格子状にあしらった枠でオーダー。テーブルは「ミナ ペルホネン」に海外から届くコンテナボックスを譲り受け、「マウンテンスタンダードタイム」に依頼して制作したもの。「ワイヤーハンガーの佇まいが好き」という石澤さん。心を惹かれる“華奢で味わいのあるもの”を集めたコーナー。自分らしさをMIX「使うパーツや素材などは、選んだプランの中で何種類か用意されていたのですが、家の顔となる部分など、どうしてもこだわりたかったところはこちらで探したものを使ってもらいました」。3階のテラスのアイアンの手すりはできるだけ細いものにこだわって、「マウンテンスタンダードタイム」にオーダー。2階のLDKにもキッチン収納と、壁付けのシェルフを造作した。「イベントなどを行うときは2階をカフェにしてゲストをおもてなしします。友人がキッチンに立ったりもするので、キッチンには余裕が欲しかったんです」。奥行きの深いステンレスのキッチンの上には、年代を感じさせるペンダントライトが。「古いミシンのオイル差しをアレンジして照明にしてあるんです。照明はすべてリバーサイドファームのものを選びました。古く見せて作っているものはあまり好きではなくて、今は新しかったとしても、年月が経ってやがて味が出てくるものが好きですね」。ダイニングスペースには、「パシフィックファニチャーサービス」のテーブルに、イルマリ・タピオヴァーラのヴィンテージチェア。社員旅行で訪れた北欧のロッピス(蚤の市)で購入したアンティーク雑貨、イギリスのマーケットで見つけたヴィンテージのラグや「サムエルワルツ」で手に入れたものなど、国やジャンルにとらわれずセレクトしたインテリアが、シンプルな空間に味わいを添えている。白とベージュのトーンに、古さを感じさせるインテリアが落ち着く2階のLDK。床は無垢材を選んだ。落ち着いた配色の中に、階段のアイアンの手すりや、キッチンの白いタイルがアクセントに。テレビボードにもなっているオープンシェルフは、「マウンテンスタンダードタイム」にオーダー。グリーンの鉢カバーは7月にアトリエで開催したルヴォンアフリクのイベントで手に入れたもの。アイランドキッチンの背面も「マウンテンスタンダードタイム」に依頼。ヴィンテージ感を感じさせる佇まい。古いオイル差しを使った「リバーサイドファーム」のペンダントライトに、スウェーデンのロッピスで購入した古い天秤をアレンジ。使い込んだ風情の「パシフィックファニチャーサービス」のテーブル。「リバーサイドファーム」の照明は、「サムエルワルツ」で購入。ビーチ材の曲木のトランクは「 Fanerfabrik A.B.」 の1940〜50年代のプロダクト。いつも上には花をあしらって季節のディスプレイを楽しんでいる。「ミナ ペルホネン」皆川明さんが創作した陶板のオブジェを飾る。スウェーデンの小学校で使っていたMOSS=苔の教材。蚤の市で発掘。創作意欲をかきたてる空間パブリックにも利用する1階と2階に対して、3階は完全にプライベートなスペース。ベッドルームとバスルーム、洗面に、広いテラスを設けた。「いずれはテラスでグリーンを育てたり、イスやテーブルを出して寛げるようにしたりしたいと思っているんです。以前は手狭だったけれど、今は余裕をもって生活を楽しむことができますね」。新しい建物に味のあるインテリアが溶け込んだ空間は、竣工後2年経ってより深みを増している。「だんだん自分らしい空間になってきたかな、と思っています。好きなもの、欲しいものを集めて暮らし、創作もできる。テレワークを行う時間もオフタイムも充実していますね」。ベッドルームの奥にはウォークインクローゼットを設けた。右手にベッドルームとほぼ同じ広さのテラスがある。レースのカーテンはパラグアイのもの。ベッドルームの入り口には、イラストレーター寺坂耕一さんの描いた絵を飾って。バスルーム、洗面、トイレはひとつの空間に。シンプルで清潔感に溢れる。リビングで寛ぐ家内製手工業人・石澤敬子さん。赤坂蚤の市で購入したレースのパーツを窓枠にあしらって。糸まきをアレンジした照明、「スタンダードトレード」のソファーテーブル、イギリスのアンティークのイスなど、好きで集めたものが白い空間に溶け込む。
2020年09月21日小上がりは友人のためのベッドルーム20代にスノーボーダーとして活躍した河尻晋介さん。波を滑る楽しさがライフスタイルに加わり、13年前に藤沢、そして辻堂と、湘南エリアに住み始めた。「マンションをリノベーションした家も気に入っていたのですが、戸建てに住みたくなり、土地を探し始めました」そして出会ったのが、海のすぐそば、鎌倉の小高い丘の上で見つけたこの場所だ。「家は『エンジョイワークス』のスケルトンハウスで作ることにしました。間取りも設備も仕上げもすべて自由に設計することができる家です。自由度が高すぎてすごく悩んだのがいい思い出です。社長がサーファーで、話が合いそうなのも良かったです。短パン、Tシャツで打ち合わせに来ました(笑)」リビングルームの一角に小上がりを作った。カーテンを閉めれば個室に早変わり。「友人が泊まりに来たらここで寝てもらいます。布団類は小上がりの下に作った引き出しに収納しています」リビングに小上がりを設けた。床下は引き出し式の大型の収納庫になっている。小上がりは、カーテンを閉めれば寝室に。カーテンレールはガス管を使用。カーテンは『IKEA』のもの。リビングはフローリング、キッチンとダイニングは大判のタイル張りにした。ダイニングテーブルが河尻さんのワークデスクに。コの字型の大型キッチン。キッチンの天板は防水性の高いモールテックス塗装で仕上げた。陶器のシンクは『IKEA』のもの。『パシフィックファニチャー』のチェアの座面は、河尻さんの友人が古着のデニムでリメイク。「奥のTV台として使っている古いステレオのスピーカーは、猫が味を出しました」ボード置き場はDIYで玄関にはOSB合板を使い、DIYで仕上げたロングボードのラックと、自転車が並ぶ。緊急事態宣言中に製作したそうだ。「大工の経験もあるプロサーファーの友人に手伝ってもらいながら、2日で仕上げました。ショップでOSB合板をサイズに合わせてあらかじめカットしてもらったのが助かりました」「波乗りにも行きますが、今は自転車にハマっています」ブルーラグ代々木公園店で組んだサーリーでロングトリップを楽しんでいる。「小田原まで自転車で寿司を食べに行きました(笑)」玄関の天井はブルーに。キッチンや小上がりの床もブルーを使うなど、効果的にブルーを効かせた海沿いの家らしいインテリアに仕上がった。OSB合板を使ってDIYした、ボードラックと自転車置場。1階は階段も濃いブルーの絨毯を張り込んでいる。「立て掛けてあるロングボードは友人の預かりものです。新居に入らなかったそうです(笑)」寝室の壁は落ち着いた黒に。ベッドのヘッドボードは板張りにして小物を置けるようにした。プロジェクターとスクリーンを設置。「緊急事態宣言中に取り付けました。ゆっくりと家で映画を楽しみました」イメージは『ACE HOTEL』シアトルに誕生し、クリエイターに絶大な支持を集めている『ACE HOTEL』。河尻さんはその『ACE HOTEL』をイメージして家づくりを進めたのだそう。「1階はカーペットを敷いて落ち着いた雰囲気にしました。玄関から風呂場まではタイルにする案もあったのですが、思い切ってすべてカーペットにしました」ベッドルームの壁面は黒に。ヘッドボードには木を使っている。水回りはグレーの壁にした。「リラックスできるホテルライクな風呂を目指しました。ユニットバスではなくぜひ在来工法で作りたかったです」洗面所には海から上がってそのまま風呂に直行できる裏口も作った。「せっかく作ったのですが、残念ながらほとんど使っていません(笑)。ロングボードを持ってクルマの脇をすり抜けるのが大変だったんです。外のシャワーで流して、玄関からそのまま入ってきたほうが楽でした」ここに住みはじめて4年。家が少しづつDIYで手を入れながら河尻さんらし家になってきた。「育てていける家を作りたかったので、すごく楽しいです。ラフな家のほうが友人も来やすいと思いますし。手を入れる余地が残されているのも『スケルトンハウス』の良さですね」トイレとバスルームの間の仕切りは、鉄作家が製作。階段の手すりも鉄作家によるもの。大きな洗面台は、モールテックス塗装で造作。バスルームの壁は下半分をタイル貼りにし、デザイン製の高いバスタブを置いた。海から上がったら、お湯の出るシャワーを浴びて塩と砂を落とす。『スケルトンハウス』はレッドシダーのスクエアな外観が特徴だ。
2020年09月14日自宅に理想のWORK SPACEを取り込むアイデア働き方が多様化する今、自宅にワークスペースを設ける人が増えています。ヘーベルハウスでは、自宅で働く人達の「理想のワークスペース」を実現するために、さまざまな技術を採用。駅の防音壁にも使われている建材「ヘーベル」で静かで集中できる空間を作り、在宅勤務で増える光熱費を抑える高断熱仕様や高効率設備を導入するなど、生活に仕事を取り入れる工夫をしています。生活にどのようにワークスペースを取り入れるかは、人それぞれ。仕事と生活をしっかり分けたい、家族の存在を感じながら働きたいなど、ライフスタイルによって異なります。ヘーベルハウスでは「働く・仕事する」を、上手に生活に入れた様々な住まいの形をご用意。今回は「Private Style」「Semi-Open Style」「Open Style」の3つのワークスペースのカタチをご紹介します。自宅で仕事をする空間はこれからの住まいに欠かせないものになる。仕事とプライベートにメリハリを作る「Private Style」書斎など一人でいられる空間を確保すれば、オンライン会議中に子どもの相手などで中断されることなく集中できます。独立したワークスペースがあれば、家族も気を使うことなく、ふだん通りの生活ができます。効率が上がり仕事を早く終わらせることができれば家族との時間が増えたりと、プライベートが充実。仕事とプライベートを空間で分けることで、メリハリのある暮らしが可能になります。落ち着いた重厚な空間づくりは、仕事へのモチベーションにもつながる。秘密基地のような自分だけの場所。余計な情報を入れないシンプルモダンな空間は集中力を高める。寝室など日中は使わない空間をワークスペースに使うことで、空間を有効活用できるメリットも。在宅勤務の頻度が少なく独立した書斎スペースを設ける必要がない場合や、個々の書斎スペースを設けることが難しい場合などにもおすすめです。集中と安らぎのオンとオフの切り替えが自然とできる「Semi-Open Style」ほどよく仕切られたこもり感のあるワークスペースを、リビングやダイニングの近くに設けることで、孤立しないで集中できる環境を作ります。忙しい時はじっくり集中し、リラックスしたい時は視線を外に向けたり家族と会話をしたりと、気の向くままにオンとオフの切り替えができる自由度の高さが人気です。少し閉じられたワークスペースは、家族の気配を感じつつ仕事に集中することが可能。外の景色を眺めてリラックス。開かれた空間なので家族とのやり取りもしやすい。階段横をワークスペースに。デッドスペース生かした効率的なプラン。ワークスペースに窓を設けることで、圧迫感のない空間に。家族とのつながりを感じながら開放感の中で働く「Open Style」家族とコミュニケーションを取りながら仕事をすることで、一人では考えつかなかった新しいアイデアが生まれるかもしれません。気分転換に外に出たり、オフィスとは全く違う仕事環境が、ライフスタイルをより充実したものにします。日差しを浴び、風を感じることのできるウッドデッキなら、リラックスして仕事もはかどる。家族が思い思いの時間を過ごすオープンなスペースで、コミュニケーションしながら仕事をする。子育て世代にもおすすめのプラン。愛車を眺めながら仕事。のびのびと仕事をするならガレージがおすすめ。アウトドアリビングなら軽やかな発想が生まれるかもしれません。働きながらリフレッシュを!へーベルハウスが考えるWORK SPACEをさらに詳しく知りたい方はこちらへーベルハウスの住宅展示場を見学されたい方はこちら
2020年09月10日家の真ん中につくられたゆるやかな階段同郷のお2人、佐藤さんと須田さんがともに暮らすのは5匹の犬たち。この家のコンセプトにはこの犬たちの存在が大きくかかわる――コンセプトのひとつは「犬たちとともに伸びやか、おおらかに暮らす」というものだった。この家の大きな特徴である平面の対角線上につくられた階段はこのコンセプトから導き出されたもの。設計を担当した建築家の比護さんは「最初は抱っこして上り下りするというお話だったんですが、階段にスロープを付けて犬と一緒に並んで歩けるようにしようと考えました」と話す。2階のLDKを見る。できるだけゆるい角度にするために階段は対角線上に配置してめいっぱい距離を長くとった。犬たちも楽々上り下りできる階段。階段の上にスロープを付ける予定だったが、コストの関係で延期された。手前側は表にある緑を高い位置から見えるようにレベルを上げている。奥は階段の角度をゆるくするため下がっている。開放感もほしい階段を対角線上につくったのはできるだけ距離を長くとって角度をゆるやかにするためだった。家の真ん中にあるためこの階段を中心にして犬たちがぐるぐると走り回ることもできる。この階段には設計案を見て「比護さんらしい斬新な感じだな」と思ったという佐藤さんのリクエストが合体している。階段部分の上にクッションが置いてあってそのうえで寝そべることができるのだ。そのほか、2階ではお酒の好きな佐藤さんがアルコール類だけを入れる冷蔵庫を入れたい、料理のお仕事をされている須田さんがキッチンにこだわりパントリーをつくりたいと伝えたが、これらに加えて大きめのバルコニーもリクエストだった。「開放感がほしかったので、リビングに隣接して大きなバルコニーを希望しました」(佐藤さん)開放感という意味ではバルコニーとともに階段と同じ対角線の延長線上に開けられた開口も作用している。視線を遠くまで通すとともにその先に緑がとらえられるように開けられているのだ。左上の垂木は少しねじれながら奥に続いているため、静的な印象にはならず動きながら連続しているように感じられる。左が佐藤さんが希望した日本酒にも対応したセラー。真ん中にロフト用の梯子。右奥がパントリーになっている。バルコニー側から見る。佐藤さん(左)は今座っている小上がりがお気に入りの場所。ロフトから見下ろす。正面奥の右側にバルコニーがある。開放感を得るために希望したバルコニー。当初はもっと大きくしたいと考えていたという。収納スペースもおおらかに「ちらかっているのがいやなので、なるべくきれいに整うような感じでパントリー、水回りと寝室以外はほぼワンルームで広くて開放的な感じにしてくださいとお願いしました」(佐藤さん)。この要望は1階でもしっかりと反映されている。2階は階段を中心にしてぐるりと回れるつくりになっているが、1階でもお風呂の戸を開ければぐるりと回ることができるのだ。このつくりは「伸びやか、おおらかに住む」ということにつながっているが、同じ趣旨から収納の方法も工夫された。「おおらかに住みたいということでしたので、極力1階の収納は可動棚にしました。やはり住んでみないとわからない部分もあったので、ここには服の収納あちらにはキャンプ用品を置いてというふうに決めずに、ここからここまでぜんぶ棚を入れられるようにしておくので、置くものが決まったらそれにあわせて収納スペースをレイアウトしてくださいという感じでつくりました。竣工間際にその一角に机をつくりたいという話になったのですが、収納スペースの一部がワークスペースになったり靴を入れたりキャンプ用品を入れたりというように生活に合わせて自由に変えられるようになっています」(比護さん)左のアール状に切りとられた壁が空間に柔らかな表情を与える。左がお風呂で右奥が寝室。お風呂の戸を開けると階段の周りをぐるりと回ることができる。犬たちの体を洗えるように大きめの洗面にした。洗面側から玄関方向を見る。竣工から1年と2カ月ほど、佐藤さんは階段の上につくられたクッションのスペースがお気に入りという。「お酒を飲んでからここですぐひっくりかえってテレビを見ていてそのまま犬たちといっしょに寝てしまうことも多いので、ここが自分ではいちばん気持ちがいいんだろうなと思います」須田さんはこだわってつくったパントリーがお気に入りという。「ちょっと広すぎるかなと思ったんですが、これくらいあるとまだまだいろいろと整理がつけられるのでいいですね。それとキッチンとダイニングがコンパクトにまとまっているのでご飯をつくって食べて洗ってというのがほぼひとつの場所ですむのもよかったです」。さらに「収納に関しては満足がいく状態に落ち着くまで2年かかりますって比護さんに言われたのですがそれはその通りだなといま思っていて、まだいろいろこうやってみたいとかああやってみたいとかと考えています。それがまたとても楽しいですね」と続ける。「あまりかっちりしすぎていないのがいい」という佐藤さん。犬たちも走り回ったりそれぞれが好きなところで寝て好きなところで遊んでいて喜んでいるようだという。犬たちと「伸びやかに暮らす」という当初のコンセプトは見事に実現されているようだった。正面にマンションがあるため、視線が抜けるようにこの左手にもうひとつ開口を設けている。玄関を入ると右手に収納内容によって変更できる可動棚による収納スペースが続く。バルコニー+駐車場でよく見かける外観になるのを避けて「ちょっと楽しい感じにできないか」と考えられたデザイン。内部にもあるアール状のデザインがここでも採用された。右の開口はお隣とコミュニケーションできるよう開けられたもの。佐藤・須田邸設計ikmo所在地東京都清瀬市構造木造規模地上2階延床面積97.42㎡
2020年09月07日「スタイルのある家と暮らし」をテーマに情報発信する『100%LiFE』。クリエイティブな感性で暮らしと空間を楽しむ人たちのライフスタイルメディアとして2012年の7月にスタート、8周年を迎えました。そこで、今回、特別企画として、これまで取材した家の中で『100%LiFE』に集う読者の方々に人気のあった家を、テーマごと振り返ってみました。読者の皆さんが興味をもった家とは?第5回は、いま考える仕事と暮らしの両立、「ワークスペース」のスタイル、人気の10軒を紹介します。type1子育てと事業を両立させる住まいとワークスペースが共存“五感で愉しめる空間”こだわったのは、奥さんが子育てをしながら事業を行えるということ。住まいと事業スペースを分けるのではなく、混在するような空間造りを目指した。type2IoTと伝統技術の融合未来に向けて始動するこれからの心地よい住まいこの家を語る上で外せないのが、住宅設備のIoT化。音声デバイス、ハブ、端末を組み合わせたシステムが日常生活をサポートする。「IoTはこれからの住宅の鍵になると思います。type3コンサバトリールームを併設外に向けて開かれる光に満ちた暮らし階段の踊り場に接続する中2階に、ワークスペース&子供たちの勉強スペースを設置。上部をオープンにしていて、ここからLDKも2階のプライベートスペースも見渡せる構造。type4眼下に公園を望む家ミリ単位にまでシビアにこだわって建てる昔、貝塚であったという公園を眼下におさめる住まい。ワークスペースにも大きな開口が設けられていて公園の緑が堪能できる。type5自然と呼応するシンプルな造り住む人が描いていく家は白いキャンバス美術家が建てたアトリエ兼住居。アトリエと直角に配置されたワークスペースは、あえて狭くすることで落ち着ける空間を確保。type6素朴な素材感でシンプルに光と風がぐるりと回遊抜け感が心地いい家理想は“仕切りが少なく、全部がつながっているような家”。1歳の長女が1階のリビングで遊んでいても、2階のワークスペースからその様子を感じ取ることができる。そんな見通しのいい家を目指した。type7シンプルに心地よくシームレスにつながる家族との共生の場自分のワークスペースを独立させると、部屋にこもりっきりになるんです。だから僕は、家族のいるリビングとつながりを感じられるスペースに、仕事場を設けたかった。type8こだわりを散りばめて戸建てで実現させたアトリエ併設の住まい自然豊かな郊外の住宅地に建つ、北村さん夫妻の住まい。一歩足を踏み入れると、輸入壁紙やアンティークの家具が配されたこだわりの空間が広がる。type95層の狭小住宅運河沿いのビルを改装した建築家夫婦のSOHO5層でおよそ80㎡ほどの小さな建物。この運河沿いのビルを改装しSOHOとした。建築家夫婦が考える、自分たちにちょうどいい暮らし。type10海を愛する建築家の自邸海まで3分。カリフォルニアスタイルのヴィンテージハウスもしサーファーがリモートワークするなら?その究極の回答がこの家。数々のカリフォルニアスタイルの家を手がけてきた建築家・岩切剣一郎さんがリノベーションした、茅ヶ崎のヴィンテージハウス。recommend住まいに「仕事」を取り入れるヘーベルハウスが提案する「暮らす」と「働く」のいい関係ヘーベルハウスが考えた、自宅に理想のWORK SPACEを取り込むアイデアを紹介します。
2020年08月31日コロナでニーズが高まっているのが、ワークスペース。過去に配信したワークスペース作りの特集を緊急再配信します。前編では機能性を備えたミニマルなワークデスクをフィーチャー。北欧で注目されているストリングの美しい昇降式デスク、ジャン・プルーヴェの名作デスク、ロナン&エルワンブルレック兄弟によるアルテックのカアリデスク、バウハウスとのコラボレーションで知られるドイツの老舗トーネットのミニマルなデスク、ジョージ・ネルソンによる名作スワッグワークテーブルをご紹介。まずはデスクから、ワークスペースを見直し、自分だけのとっておき空間をつくってみては?《string works》電動昇降式デスク W1200 D780 H715〜1185mm ¥235,600〜 W1400 D780 H715〜1185mm ¥241,600〜 W1600 D780 H715〜1185mm ¥247,700〜 以上ストリング ファニチャー天板はチャコールグレーリノリウム、ホワイトラミネート、アッシュ、オークの4種。ダイニングスペースにもしっくり馴染む洗練されたデザイン。ワイヤースクリーン W578 H355mm ¥9,500 フェルトカバー W600 H360mm ¥8,300 ともにストリング ファニチャーストリングのオフィス家具シリーズ、ストリング ワークスから、昇降式デスクが新登場、日本でも9月1日に販売開始に。ボタン⼀つで71.5〜118.5 ㎝の好みの高さに調整でき、体格や作業内容に合わせて丁度いい位置に座ったり、⽴ったりしながら仕事ができる。機能的でありながら、佇まいが美しく、対面でも使えるデザインなので、ダイニングテーブルや立食パーティーのバーカウンターとしてもオススメ。スウェーデンでは、健康面への配慮から⽴ちながら仕事をすることを労働組合から推奨されており、昇降式デスクは90%の普及率と⾔われているそう。座りっぱなしによる浮腫の解消や、仕事に行き詰まった時のリフレッシュに、立ちながらデスクワークをしてみては!《Compas Direction》ジャン・プルーヴェの名作デスク、コンパス ディレクション。コンパス ディレクション W1250 D600 H730mm ¥247,000〜 ヴィトラどの角度から見てもプルーヴェらしい存在感のあるスチールレッグ。20世紀を代表するデザイナー、JeanProuvé(ジャン・プルーヴェ)によるデスク、コンパス ディレクション。コンパスを思わせるスチールレッグは、建築家でありデザイナーでもあったプルーヴェが、構造的アプローチから工学原則に基づいて設計したもの。ベースとなる脚は、ジャパニーズレッド、ディープブラック、チョコレート、コーヒー、エクリュから選べる。《KAARI》REB005 カアリ デスク W1500 D650 H750mm ¥128,800〜 アルテックベースに無垢のオーク材を使用したモデル。繊細なスチールパーツとウッドレッグのバランスが絶妙。フランスのデザインデュオ、Ronan & Erwan Bouroullec(ロナン&エルワンブルレック)がアルテックのためにデザインしたカアリデスク。1933年にアルヴァ・アアルトが開発したL−レッグからインスピレーションを受けてデザインしたアーチ状のスチールパーツが特徴。アルテック創業80年以上の歴史のなかで、木とスチールを組み合わせた家具はカアリシリーズが初という。《THONET S1200》バウハウスらしいスチールパイプを用いたミニマルなデザインに惹かれる。デスクトップが二段に使えるスマートな機能性が特徴。S1200 W1100 D670 H740mm ¥327,000〜 トーネット(アイデック)バウハウスとのコラボレーションで知られるドイツの老舗THONET(トーネット)の曲パイプのミニマルなデスク。S1200は、昨今のデジタル化により、書類などの紙メディアがデジタル化され、引き出しなどデスク収納の必要性が低くなったことに着目。ペーパーレス化をキーワードに、バウハウス流に機能の整理と統合の試行錯誤を繰り返し、このシンプルなカタチに辿り着いた。《Nelson Swag Leg Work Table》美しい彫刻のような脚、スワッグレッグ。ネルソンスワッググループワークテーブル W1372 D915 H747mm ¥243,000 Herman Miller Japanミッドセンチュリーモダンを確立したデザイナーの一人として知られるジョージ・ネルソンが1958年に発表したスワッググループワークテーブル。「美しい彫刻のような脚を持った家具をデザインしたい」というネルソンの思いから生まれ、スワッグレッグという優雅なカーブを描くスチールの脚部から模索、さらにウォールナットの横板でつなげることで、安定性と耐久性の高いベースを完成させた。広いテーブルトップは、書類や道具をいっぱいに広げられ、対面での作業も可能。shop listアイデック03-5772-6660アルテック03-6447-4981ヴィトラ03-5775-7710ストリング ファニチャーinfo-jp@string.seHerman Miller Japan03-3201-1830商品価格は、消費税別の本体価格です。2017年9月4日に初回配信。商品の情報はその時点のものです。
2020年08月24日コロナでニーズが高まっているのが、ワークスペース。過去に配信したワークスペース作りの特集を緊急再配信します。後編では、自由にレイアウトできるモジュールファニチャーをご紹介。スウェーデンのウォールシェルフのブランドSTRING、スイスのモジュラー収納システムUSMハラー、テレンス・コンラン卿により普及したイギリスのスチールファニチャーメーカーBISLEYの3ブランドに注目。《STRING》ストリング システムW3200 D300 H1500mm¥283,400(写真の組み合わせ)ストリング ファニチャーストリング システムW800 D300 H2000mm¥54,300(写真の組み合わせ)ストリング ファニチャーはしご状のサイドパネルによる圧迫感のない空間を実現。省スペースでのワークスペースを快適にストリング ワークス/フリースタンドシェルフW820 D330.5 H1180mm〜¥100,500〜ストリング ファニチャー空間や用途に合わせて左右に連結ができ、片面のみにシェルフを取り付けることも可能。スウェーデンのウォールシェルフのブランド、STRING(ストリング)は、規格化されたパーツを組み合わせてつくるモジュール式シェルフ。ライフスタイルやスペースに合わせて自由に設置でき、その組み合わせは無限。ストリングシステムシリーズのサイドパネルはフロアパネルとウォールパネルの2型、奥行き20cmと30cm、高さは5種類、さまざまなパーツを組み合わせてオリジナルのシェルフが完成。棚板(3枚組)¥11,000〜マガジンシェルフ¥7,800〜キャビネット¥36,900〜チェスト¥44,900〜ワークデスク¥12,700〜ストリング ワークス シリーズのシェルフは、設置場所を選ばないフリースタンドタイプで、棚板などのパーツはシステムと共通。ワークスペースとリビングなど、空間の仕切りにも。《USM Haller》キャビネット W773 D373 H1090mm ¥167,300〜 USMハラー (USMモジュラーファニチャー)サイドボード W1523 D373 H740mm ¥177,650〜 USMハラー (USMモジュラーファニチャー)ドロップダウンドアは、ちょっとしたデスクにも。ジェンシャンブルー。上品なブルーが空間のアクセントに。高さ109cmの3段キャビネット。部屋を仕切りながら会話もできる。サイドやバックスタイルも美しいので、置く場所を選ばない。グラファイトブラック。さり気ないツヤ感がモダンな空間を演出。サイドボードは高さ74cm。デスク横に馴染む丁度いいサイズ。スイスの建築家、フリッツ・ハラーと3代目経営者ポール・シエアラーの共同開発で誕生したモジュラー収納システム、USMハラー。基本モジュールをもとに連結し、扉や引き出しなどのパーツを加えてオリジナルのユニットがつくれて、ライフスタイルの変化によって形や色、サイズを変えることも。高品質な素材、堅牢な構造にこだわったタイムレスなデザインで、最大の魅力は14色ものカラーバリエーション。ホワイト、ブラック、ブラウン、グレーなど上品なベーシックカラーから、イエロー、レッド、グリーンなど、モードなビビッドカラーまで豊富に揃う。多くのデザイン賞を獲得し、ニューヨーク近代美術館の永久コレクションにも選定された名作。基本モジュールはボール、パネル、チューブで構成された75×35×35cmのボックス。キャビネットはモジュールを縦3段に。サイドボードは横2連、縦2段で構成。扉は、ドロップダウンドア、エクステンションドア、フリップアップドア、ガラスドアの4種類。A4ファイルが横には3つ分並べておくことができ、縦にも収納することができる。サイト内でデザインシミュレーションも可能。《BISLEY》キャビネット ベーシック29シリーズ W280 D380 H673mm 10段 ¥34,000 6段 ¥32,000 8段 ¥38,000 以上BISLEY (BISLEY COMBO青山ショールーム)デスクプラン:ウォールナット天板にシルバーのLフット、シルバーのキャビネットを両サイドに。インダストリアルな雰囲気。Lフット (2本組) W600 D600 H710mm ¥38,000〜 デスク天板 ¥32,000〜 BISLEY (BISLEY COMBO青山ショールーム)デスクプラン:ウォールナット天板にブラックのLフット、ブラックのキャビネットを3つ配置。大きな作業面と大収納も確保できる。デスクプラン:ホワイトのメラミン天板にホワイトのLフット、レッド・ホワイト・ブルーのトリコロールカラーで遊び心をプラス。1939年にイギリスで創業したスチールファニチャーメーカー、BISLEY(ビスレー)。今回紹介するベーシックキャビネットは、1970年代にテレンス・コンラン卿のストレージ提案によりヨーロッパ中に広く普及し、今ではイギリスNo.1の生産規模を誇るもの。A4サイズのベーシック29シリーズは、6,8,10段の3タイプと9色のカラー展開で、専用の脚と天板を合わせてデスクプランを組むことも。キャビネットはスティール、シルバー、ブラック、ホワイト、ブラウン、グリーンなどイギリスらしいトラディショナルな色合いが魅力。脚は5種類、天板はホワイト、ブラック、木材、ガラスなど全12種23サイズから選べる。組み合わせ次第でシックにもポップにも!shop listストリング ファニチャーinfo-jp@string.seBISLEY COMBO青山ショールーム03-3797-6766USMモジュラーファニチャー03-5220-2221商品価格は、消費税別の本体価格です。2017年9月18日に初回配信。商品の情報はその時点のものです。
2020年08月24日斜線制限をかわしてトンガリ屋根に結婚3年目のNさん夫妻。結婚を決めたと同時に、「住まいは注文住宅がいいね」と、土地探しをスタート。結婚式の準備と並行してマイホームの構想も始めたという。当時住んでいて気に入っていた東急東横線沿線で探し、駅からも程近い好立地な物件に出会った。設計は、g_FACTORY 建築設計事務所の渡辺ガクさんに依頼した。「ガクさんの事務所のサイトを見て、素材を大事にした家に対する考え方や作品のテイストが気に入って連絡しました。会話をしていて、自分たちの日常生活に寄り添って考えてくれるところに惹かれ、この人にお願いしたら間違いないと確信したんです」(ご主人)。Nさん夫妻が購入したのは、住宅密集地で斜線制限もかなり厳しい20坪弱の敷地。「各斜線制限を意識しながら、できるだけ天井を高く、最大限にスペースを確保できるように考えました」(渡辺さん)。斜線制限をかわすことで生まれたトンガリ屋根の可愛らしいフォルムと黒い外壁が、住宅街の中で異彩を放っている。トンガリ屋根とランダムな色調の黒いファサードが印象的。西日を避けるため、左側の壁を広めに取っている。3階の天井は三方に勾配がついている。高い位置に開口を設け、通気性も考慮。奥は、子ども部屋を想定し、ロフトの設置も可能に。2階に光を届けるため、3階の廊下には吹き抜けを設けた。窓に手が届くよう手すりは斜めに設置。大きな窓と吹き抜けによりたっぷりの光が入り、明るいダイニングに。サボテンも元気に育っているそう。素材や段差でゾーニングしたワンルーム2階は、キッチンからダイニング、リビング、テラスまでが一続きになった開放的な空間。階段も部屋になじませ、広々としたスペースを実現した。ダイニングの床はミモザの無垢材、一段下げたリビングはエイジング加工を施したタイルを敷き、素材の変化とレベル差でゆるやかにゾーニング。テラスの床はリビングと同じタイルで延長し、テラスの壁にはスギの木を貼り、室外だがまるで室内にいるような雰囲気を演出。テラスまで部屋がつながったような視覚効果を狙った。「家を建てるにあたり最初に決めたのが、『Miele』のオーブンを入れることでした」とは奥さま。料理好きのお2人は、キッチンにもこだわった。キッチンカウンターは迷った末にクールなモルタル仕上げをセレクトし、『KOHLER』のホーローのシンクを設置。キッチン下の収納部分は木を使用してあたたかみをプラスし、『Miele』のオーブンと大型食洗機をビルトインした。共働きのお2人は、一緒にキッチンに立つことも多いため、動線を考え、広めのスペースを確保した。コロナ禍でホームパーティも自粛ムードになる前は、会社の仲間や友人を呼んで料理をふるまうことがよくあったそう。念願のオーブンを使った奥さま特製のラザニアやチキン料理、ご主人のパスタは大好評だったという。テラス側からLDKを見る。奥行のあるワンルームの窓側には、長いベンチを造作。「パーティのときには何人も座れ、また荷物を置くのにも便利です」(ご主人)。ご主人が独身時代から使用しているというヴィンテージ感のあるレザーソファとアイアン脚のローテーブル。エイジング加工をした床のタイルとも相性がいい。ダイニングからテラスを見る。開口部を全開できる折り戸を採用し、室内外のつながりと開放感をもたらした。スペースを有効活用するために階段室は設けず、LDKと一体化。「あえて壁に収めず、はみ出した段板が気に入っています」(ご主人)。階段の段板はタモ集成材にオイル着色塗装をしたもので、ダークな色味が落ち着いた雰囲気。階段の奥は収納で、1番奥はパントリーになっている。2人で立っても余裕のキッチン。共働き夫妻には必需品の食洗器(右奥)は特にご主人の希望。吊戸棚を省いてすっきり。パントリー内に食器を置くスペースも確保。憧れの『Miele』のオーブン。「凝ったものを作りたくなりますね」と奥さま。ロンドン生活の影響を受けて数年前、ロンドンに語学留学をしていたという奥さま。家を建てるにあたって、留学先で見てきたものが影響されているという。「古いものと新しいものがミックスされたロンドンの街や家の雰囲気が好きなんです。あちらの人は、室内を好きに装飾するのが一般的です。壁紙を替えたり、好きな色にペインティングしたり。今回、私も挑戦してみました」(奥さま)。3階の寝室はすべて奥さまの考案。まず、大胆な花柄の壁紙が目に飛び込んでくる。「この壁紙を使いたかったんです」と、海外から取り寄せ、一面に使用。壁紙に合わせて黒に近いグレーのペンキを購入し、奥さま自ら塗った。「あえてムラを残して塗るのが外国っぽいんです(笑)」と、塗り方も研究。下地が所々に残っていたり、雑なムラ感を出したり、奥さまが器用にペイントした。「インパクトのある花柄ですが、横たわると頭の上なので目に入りません。ダークな部屋で熟睡できます。朝、天窓から自然光が入り、目覚めもいいですよ」(ご主人)。廊下から寝室を見る。黒っぽい壁色に大胆な花柄が映える。匂いたつような花々。リアルな画風で、よく見ると蝶々やアリなども描かれている。勾配天井には、採光と通風を考えて天窓を設置。女優ライトの付いたドレッサーは奥さまのリクエストでご主人がDIYした。玄関ドアは、ロンドンの香りがする深めのグリーンにこだわった。黒い外観にも映える。ドアノブは経年変化が楽しめる真鍮製をチョイス。スプルースの無垢材を使用した玄関ドアは外側のみ塗装。内部の雰囲気とガラリと印象が変わる。頻繁に使う空間こそ贅沢に隣家が迫る1階は、日当たりも期待できないため、思い切って部屋を設けなかった。その分、玄関やサニタリールーム、シューズクローゼットなどのスペースをたっぷり取り、贅沢な空間に仕上げた。「コンパクトな家で全部小さくすると息苦しくなるため、日常的に使用するところこそゆとりをもたせ、リッチな空間にしました」(渡辺さん)。広々とした玄関ホールには、色味を抑えた花や枝物がセンス良く飾られ、ゲストを迎える。使用頻度の高いサニタリールームは、ホーロー製のバスタブを置き、タオル掛けなどのパーツは真鍮製にこだわり、好きなテイストで仕上げた。新しい中にもレトロな雰囲気が加わり、ヨーロッパ映画にも出てきそうなこの空間は、お2人のお気に入りスペースとなった。海外のエッセンスを上手に取り入れ、ヴィンテージ感とモダンさが共存したN邸。居場所がたくさんあり、ゆったり寛げる心地よさに加え、大らかで楽しいお2人の人柄に惹かれ、コロナ禍が落ち着いた頃にはまた人が集まってくることだろう。奥さまが活けた植物に彩られた、広々とした玄関ホール。靴好きのお2人のために、大容量のシューズクローゼットを設置(右側ドアの奥)。ホーロー製のバスタブが鎮座したガラス張りのバスルームは、外国映画に出てきそうな雰囲気。床のヘキサゴンタイルは『サンワカンパニー』。奥さまがデザインした洗面所のタイル。ブルーのラインがさわやかで奥さまのお気に入り。3階のトイレ。やはり壁紙は奥さまが海外から取り寄せた。和モダンで仕上げた、広めの1階トイレ。トイレットホルダーや鏡は真鍮製で、ご夫妻で持ち込んだ。N邸設計g_FACTORY 建築設計事務所所在地神奈川県横浜市構造木造規模地上3階延床面積95.31㎡
2020年08月17日南に開けた大きな高窓から光を取り込む奥様が育った目黒区内の土地に新築した3階建てのお宅。建て替えにあたり、いかに光を家全体に取り込むかが一番のポイントだったそう。「南側にお隣の建物が迫って建っているので、以前の家は特に1階が暗かったです」と奥様。南側の高い位置に大きな窓を作り、そこからの光を家全体に回すことにした。この家を設計した稲山貴則さんと、施主は、同じ大学の建築学科の同級生。「私が勤める会社では、病院や学校、工場、事務所などの建物の設計が中心です。住宅の設計は専門性が高いので、住まいの設計は気心の知れた住宅の専門家、稲山くんにお願いしたいと思っていました」2階から3階を見上げる。大きな白い吹き抜けの大空間に、四角いバーチ合板の箱がポッカリと浮かび、白い階段がふたつの箱をつなぐ。左右の箱の高さや長さが違うのも楽しい。左側の箱の上部にはロフトもある。南側の高い窓から、建物全体に明るい光が届く。ぽっかりと箱が空間に浮くユニークな設計。ロフトから2階を見下ろす。真下中央に見えるのが1階へと続く階段と、子どもが使っている勉強机。反対側(写真上)にもデスクがあり、ご主人がテレワークの際に使っている。階段とダイニング床下のスリットが1階とつながり、光が建物全体に行き渡る。鉄骨造で実現した大胆なプラン柱の必要な木造ではできない、鉄骨造だからこそ可能な気持ちの良い大空間が実現した。「地盤の強度にも不安があったこと、そして鉄骨造は木造にはできない思い切ったことができる楽しみもありました。箱を吊り下げて3階を作る、私の想像を超えるプランを考えてくれました」とご主人。奥様は、子どもたちがリビングを通って子ども部屋に行く動線にしてほしいとリクエスト。「親が泊まっていくこともありますし、また将来的に同居ができるように、1階に客間を作っていただきました」「奥まった場所が心地よいのか、よくここで勉強してくれます」家事をしながら勉強中の子どもと話ができる。「ここの勉強机からはリビングのTVが見えないので集中できるようです」トイレの手洗いを外側に。「2階に手洗いがあると、食事の前後など、子どもがこまめに手を洗えます」リビングとダイニングキッチンの天井の高さを変え、段差もつけている。「家具は以前使っていたものが多いですが、ブルーのL字型のソファはソファ専門店NOYESで購入しました」居場所がたくさんある家「大きな吹き抜けは、家に居ながら開放感があります。1階から2階へ上がる階段、そして3階からロフトへ上がる浮遊感のある階段と、視線が移り変わり、ひとつの家で様々な風景を楽しめます。コロナで外出できない期間がありましたが、ストレスなく過ごすことができました」そして、家族が家の中で別々のことをしていても、一体感が感じられるのだそう。「奥の勉強机で長男が勉強し、手前のデスクでリモートワーク、キッチンで食事の準備をし、長女はリビングのソファで遊ぶなど、2階だけでもそれぞれの居場所がたくさんあるのも良かったと思います」3階の寝室。奥のサンルームは洗濯物の乾燥にも。「子どもが小さいのでまだ使っていませんが、3階には子ども部屋として2室準備しています」子ども部屋とロフトへと続く鉄骨階段は、蹴り込み板にエキスパンドメタルを使うことで抜け感と安全性を両立。玄関を入ると視線の先に明るいグリーンの扉が出迎える。階段下は収納になっている。白を基調とした明るいバスルームは1階に。角地の2面道路。南側に隣家が迫り、北側と西側は斜線規制という条件の中、3階建ての豊かな空間を作った。K邸設計稲山貴則建築設計事務所所在地東京都目黒区構造鉄骨造規模地上3階延床面積103.89㎡
2020年08月11日敷地の高低差は3.5m敷地について、「日当たりのよい土地を探していて、以前からいい場所だと思っていた」という三石さん。すでに更地になっていた敷地は途中から斜面になっていて最高部では前面の道路と3.5mくらいの高低差があったという。「まず、高さがあるので道路からの目線がそんなに気にならないんじゃないかと。それからそこに塔のような感じで建てたら眺めもすごくいいだろうし、地面のレベルから4階建てくらいの高さまでをふつうの住宅一軒で体験できるのは面白いのではないかと思いました」(三石さん)旗竿敷地の傾斜した旗の部分に立つ三石邸。家の前側は地面を掘削している。玄関は前面道路と同じレベルだが以前は地下だった。雨にぬれずに階段を上がりたい設計は友人の武田さんに依頼した。武田さんは敷地を見て「これはちょっと大変そうだな」と思ったという。「まずこの傾斜地にどう建てるかというところから考え始めないといけない。ただ建築家としてはこの場所でしか建たないものにできそうだなとは思いました」難しいのは傾斜している土地に建てるだけではなかった。これに三石さんからのリクエストが加わり設計の難易度はさらに増したようだ。「敷地に高低差があるところでは外階段を上がって玄関があるパターンが多い。この家の並びも全部そうなんですが、そこを僕は家の中に入ってから上がりたいと。それに対して武田さんは“何を言ってるんだ?”みたいな反応でしたが、“雨にぬれずに階段を上がって行きたい”って言ったんです」玄関から階段で上がるとリビング。リビングのある部分も掘削してつくられた。ダイニングから旗竿敷地の竿の部分を見る。室内の壁=擁壁以前は地下レベルであったところに玄関がつくられ、そこから階段を上がったところにリビングが配置されているが、このリビングも掘削して元の地盤面よりも低いところに位置している。しかし傾斜した部分の土をすべて取り除いたわけではないため、残った土を押さえるための擁壁が必要となる。三石邸ではこの擁壁を建築の壁として活用しかつ仕上げで隠さずに室内で露出して見せている。このコンクリート壁が独特の質感を空間に与えている。「ふつうは木造2階建てというとフローリングの下にコンクリートの基礎があって土を押さえているわけですが、生活の中ではそれがわからない。それを室内で見せてRC造の質感みたいなものを出しています」(武田さん)そしてこの擁壁はふつうのコンクリートではなく、洗い出し仕上げでコンクリートの中にある骨材が浮きだしたような見えになっている。この住宅内部では見ることのない仕上げを三石夫妻は気に入っているという。「洗い出し仕上げは外構で使われているイメージがあったので最初聞いたときは“え?”と思って、家の中にある状態をイメージするのが難しかったんですが、でもなんか面白そうだよねと」。奥さんは公園のような場所で使われているイメージがあったという。しかし現場で見たときには「“ああこうなるのか”という感じで思っていたより荒々しくもなく、住んでみて今すごく気に入ってます」と三石さん。リビングにはキャンプ用のテーブルやランタンが置かれている。左がダイニングキッチン。階段を上がったところからリビングを見る。左の壁と奥の壁は擁壁がそのまま室内の壁として使われている。リビングの壁と同様に左と奥の壁は、型枠に遅延効果シートを貼ってコンクリートを打設し、型枠をはずした後にウォータージェットで表面を洗い出している。乾燥後、表面を固めるためにコーティング剤を塗っている。ダイニングキッチンの奥にはお風呂などの水回りが配置されている。キッチン側からダイニングを見る。最後の最後までキッチンとダイニングテーブルの高さをそろえるか迷ったという。最終的には美しさを優先しこの形になった。キッチン側からワークスペースを見る。吹き抜け途中につくられた三石さんのワークスペース。光と風と開放感三石邸はこの洗い出し仕上げのほかに吹き抜け空間の開放感と明るさも大きな特徴となっている。吹き抜け部分の高さは5.5m。そこに大きな開口がいくつも開けられ旗竿地ながら光がふんだんに注ぎ込む。日当たりの良さを気に入って入手したこの土地、当然ながら光をたくさん採り入れたいというリクエストがあった。「明るくしてほしいというリクエストはしました。あと旗地は周りが家に囲まれているのでその閉塞感、圧迫感をどうやってクリアしていこうかと。さらにリビングで上を見上げたときに空が抜けて見えると住み心地の良さにつながるのではと思って、窓だらけにしてほしいとリクエストしました」(三石さん)さらに通風に関してのリクエストもあった。「周りを囲まれているので風が抜けるのかどうかとても心配しました」。窓を全開にして寝たいというリクエスも出して、いまでは、真夜中でも2階の窓を全開して風が抜けるような状況にしていることもあるという。吹き抜け部分を見上げる。高さは5.5mあり、大きく取られた開口部から光がふんだんに注ぎ込む。手前が吹き抜けの途中につくられたワークスペース。三石さんはここでギターを弾くこともあるという。2階には寝室が並ぶ。いちばん手前側が主寝室。主寝室の壁は中まで光を採り込むために施工途中でリクエストしてガラス張りに変更してもらった。ダイニングから玄関とリビングを見下ろす。左が主寝室。下のお子さんが成長したらこの部屋を2つに分けて主寝室と子ども部屋にすることも想定されている。夫妻ともにお気に入りという塔屋スペース。晴れた日には横浜のランドマークタワーが見えるという。奥のギターはギブソンとフェンダー。リビングの奥にもう1本テイラーのセミアコがあり、主にブルースを弾くという。つねにアウトドア感覚住み始めてから4か月ほど。「ほんとに毎日が楽しい」という三石さん。家に居ながらにしてアウトドアみたいな感覚が体験できるのが特に楽しいという。「それとリビングだと半分ぐらい土に囲まれていて土につながっているという感覚があって、ちょっと暖かみがありますね。あと半分洞窟の中にいるような感じもあります」「もともとキャンプとかアウトドアが大好き」だという三石さん。「夜には照明をぜんぶ落としてランタンやろうそくを点けてお酒をのんだりするのが楽しみで、いつもキャンプしている気分です」4人のお子さんたちもこれで楽しくないはずがない。「相当喜んでいて走り回っています。高低差があるのでアスレチックの延長線みたいな感じもあって」。そういわれてみると、吹き抜け部分の柱梁のスケルトンが多く露出したつくりがアスレチック施設のように見えないこともない。このあたりもアウトドア好きの三石さんにはたまらないポイントなのではないだろうか。ウッドデッキでは子どもたちが遊んだりべランピング的なことをしたりすることを当初より想定していた。2階のリビングから庭を見る。三石邸設計武田清明建築設計事務所所在地東京都世田谷区構造木造規模地上2階延床面積 115.01㎡
2020年08月05日「スタイルのある家と暮らし」をテーマに情報発信する『100%LiFE』。クリエイティブな感性で暮らしと空間を楽しむ人たちのライフスタイルメディアとして2012年の7月にスタート、8周年を迎えました。そこで、今回、特別企画として、これまで取材した家の中で『100%LiFE』に集う読者の方々に人気のあった家を、テーマごと振り返ってみました。読者の皆さんが興味をもった家とは?第4回は、都市の住まい造りの永遠の課題「狭小住宅」、人気の10軒を紹介します。type1子どもが自由に駆け回る暮らしに合わせてDIY進化し続ける都心の狭小住宅東京・文京区の住宅密集地に、間口3m、奥行き10mの木造3階建てを新築。筋交いで建物を支えることで、広々とした空間を生み出した。type2狭小敷地を最大限にどこにいても心地いい“ミルクカートン”の中の開放感ミルクカートン(牛乳パック)のような建物の中は、4層に分けて居住空間を確保。光が取り込まれた開放的な住まいが誕生した。type3360度広がる都会のパノラマ6坪で叶える快適でゆとりのある暮らし住み慣れた都会の街での永住を決めたオーナー。建築面積わずか6坪の超狭小地。建築家の知恵とアイディアで広々とした美しい空間が生まれた。type4狭小敷地にあえて庭を残す小さな土地に大らかに住まう都心の息苦しくない暮らし鋭角な三角形の18坪の土地。敷地いっぱいに建てるのではなく、あえて土を残し隣家との距離を取ることを、一級建築士・腰越耕太さんは考えた。type5光や風に満たされる地下2階、地上2階建坪8坪で豊かに住まう規制が厳しい地に4層構成の家を建てた建築家の近藤正隆さん。2つの大胆な吹き抜けや大きな窓等で、開放的かつ一年中快適な住まいを創り出した。type6素材,工法,設備にこだわりの工夫都心の狭小地で快適に暮らす住宅が建ち並ぶ路地でスチールの出窓と入口が目を引く川久保邸。間口3.3mの敷地に建てられたこの家には、さまざまな工夫が詰め込まれている。type7曖昧な境界が広げる可能性狭小を感じさせない開かれた街のスタンド建坪8.8坪に、自宅兼事務所、ときにカフェスペースを併用。建築家・落合正行さんの自邸は、アイデアと創意が溢れていた。type8ミニマムに暮らす恵比寿の狭小住宅は都心のキャンプ場…!?狭くてもいいから都心に住む。その家は、JR恵比寿駅から徒歩10分、幅2mほどの狭い路地の両脇に2~3階建の住宅が肩を寄せ合うように立ち並ぶ一角にある。type9狭小だが開放感のある家都心近くの住宅街につくられた“異空間”蔵のような雰囲気も漂わせる池村邸。周囲を建物に囲まれた狭小スペースに、広がり感と明るさをもたらす工夫がさまざまに凝らされている。type10見たことないつくりのRC住宅都会の狭小地で街とつながって暮らす建築家が正方形の敷地にほれ込んで建てた家は、梁と床・天井のスラブを大胆にずらしてつくられた、今までにない体験のできるコンクリート住宅だ。
2020年08月03日教会を思わせるアーチ窓が美しい杉並区内の静かな住宅街に建つ染織作家の高見由香さんのお宅。1階には念願のアトリエを構えた。設計は『佐藤・布施建築事務所』 。「幼い頃から渡辺篤史さんの『建物探訪』が大好きでずっと見ていました。素敵だなと思った建物は『佐藤・布施建築事務所』 が手がけていたり、雑誌を開いていいなと思えば『佐藤・布施建築事務所』だったりと、いつか自分で家を建てることになったらぜひお願いしたいと思っていました」作家として独立する以前は、美大でインテリアデザインを学び、内装設計の仕事をしていた高見さん。木や石の素材感やデザインなど、自分の住まいへのイメージはしっかりとあったのだそう。建築家との打ち合わせには、自作のファイルを持参した。1階と2階の窓際には吹き抜けを設け、内側にアーチ型のデザインの開口を作った。「建築家が写真を見せてくれた海外の教会の窓のイメージです。壁の厚みを生かし、テーパーをとることで光の変化が感じられる、美しい窓になりました」家族は3人。プロダクトデザイナーの荒川正之さん、そして7歳のいおりちゃん。「アトリエと家族の住まいの両方をどう実現していくかが課題でした」3階建てを建てられる土地を探し、1階にアトリエ、2階に個室と洗面とバスルームをまとめ、視界が開ける3階をリビングとダイニングキッチンにした。外から見ると格子の窓は、内側から見ると吹き抜けをはさんで美しいアーチを描く。1階がアトリエ、2階に寝室や水回りなどのプライベート空間、3階が眺めの良いリビングダイニング。下見張りにしたレッドシダーのエントランスが物語を感じさせる。経年変化が楽しみだ。植栽も美しい。1階は手動の織機のあるアトリエ。「織機は畳むこともできるので、1Fのスペースを広く使い、展示会を開くこともできます」ピーター・アイビーの照明は、ぜひ使いたいものだったそう。アプローチから室内へと連続する床のトラバーチンはあえて磨いていない裏面を表にして張り、ナチュラルな表情を楽しむ。正面の棚の裏側はウォークスルークローゼットになっている。右側の仕事場からグルリと回遊できる。「糸巻きのサイズに合わせて、戸棚の幅を決めたので、無理なくきれいに収まります」収納やドアのハンドルは『千sen』の真鍮金物を使っている。素材感と機能を両立漆喰の壁、トラバーチンの床、オークの階段、真鍮の把手と、ひとつひとつの素材感を大切にした高見邸。光の美しい家に仕上がった。アトリエの正面の棚の下段には、作家の作品を並べる。「間合いを大切にしながら飾っています。時々レイアウトを入れ替え、楽しんでいます」一方で、使い勝手のよい動線や収納にもこだわっている。ウォークスルークローゼットはグルリと回遊できるように設計され、予め何を収納するか決めて作った棚はピッタリと無駄なくモノを収納できる。壁に飾られているのはカシミアを使い立体的に織られた作品。アーチ状の開口部の奥が仕事場。手前のアームチェアはフィン・ユールの「No.45」。左官の壁と木のバランスがとても美しい。作業台は壁付に。棚の間に玄関を伺える小窓をつけた。作業場の奥には染色に使うコンロとシンク、染めた糸を干すバーを設置。少しだけグレーを混ぜた左官の壁。オークの床材は、土足で歩く部分は荒目、靴を脱いで上がる段から目を整えている。ウォークスルークローゼットはグルリと回遊できるようになっている。2階へ上がる階段の手前で靴を脱ぐ。見晴らしのいい3階リビング3階は広々としたワンルームのリビング&ダイニングキッチン。周囲は2階建ての建物が多い住宅街のため、屋根越しに視界が開ける。リズミカルに連続する窓が美しい。「実はアルミサッシなのですが、内側に木製の方立をつけてくださいました」リビングの一角には、テラスのグリーンを眺めながら籠もれるデイベッドも設えた。天井高もたっぷり。継ぎ目のない天井材が美しい。ダイナミックな変形の切妻天井。見晴らしがよく、船にいるかのような気分になる。オークのダイニングテーブルはstudio fujinoの藤崎均さんが制作。「家族が3人が座りやすいように脚を3本にしていただきました」。フォールディングチェアはデンマークのモーエンス・コッホ。階段の壁は一部ガラスにすることで、リビングからも照明器具の明かりを楽しむことができる。「飛松灯器のペンダントライトは、ぽっかりと浮かぶお月さまのようで気に入っています」ガラス作家の大室桃生さんにオーダーしたペンダントライト。デイベッドの張り地はデンマークのKvadratのもの。木枠は板の中央に目地を入れて細いピッチにした。見晴らしの良いコの字型の造作キッチン。「シンクはシャープなエッジにこだわって作っていただきました」ライムストーンを細かく砕いて貼った壁が美しい。アントニン・レーモンドの戦前の建築として名高い東京女子大学の礼拝堂の鐘楼が見える位置を確認しながら小窓を作った。2階には個室と水回りを「寝室と娘の部屋、クローゼットと、バスルームや洗面の水回り、それらを限られた面積の中でどう収めるかに頭を悩ませました」狭さを感じさせないよう、洗面台の下はあえて空間を開けるなど、工夫をこらしている。前川國男邸でも使われているテクスチャーが美しい葛布クロスを引き戸に使っている。「今は廃番になっているそうで、建築家が大切に保管していた貴重なクロスを使わせいただきました」2階の寝室にもアーチ型の開口部。「吹き抜けのカーテンは1階までの長さがあります。キレイな透け感のある生地を探し、自分で縫いました」。手前はリネンのカーテン。クローゼットの引き戸は寝室側と廊下側の両方から開くことができるので、風通しが抜群。「普段は娘の部屋側の引き戸も開け放ち、風を通しています」両サイドは葛を織り込んだ表情豊かなクロスの引き戸。右側が寝室のクローゼット、左側がいおりちゃんの部屋のクローゼット。バスルームの扉は木で造作。グレーのタイルが美しい。シャワーはグローエ社のもの。「浴室乾燥の機能があるので、ここで洗濯物も干します。ハンガーバーはデザイン性にこだわり、あえて角型のものにしました」洗面ボウルは台から浮き上がったようなフォルムが美しいDuravit社のもの。棚の小口を斜めにカットすることで、軽やかなイメージに。大理石のモザイクタイル。細やかな仕事が美しい。荒川邸設計 佐藤・布施建築事務所所在地東京都杉並区 構造木造規模地上3階 延床面積102㎡
2020年07月22日