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時間とともに植物と建物が一体となる世田谷区内の緑道と車道が交わる角地に建つ、構造設計士の多田脩二さん、由喜さんの住まい。建物から溢れるような植栽が緑道の緑と一体になり、この一角が大きく豊かな緑の空間になっている。建物の各層から緑がこぼれる立体庭園というコンセプトの住まいは、外から中の様子は伺えないが、一歩建物の中に入ると、外とつながる広々とした空間が広がる。設計は建築家の新関謙一郎さん。実は多田邸は、脩二さんよりも由喜さんが積極的に住まい造りにかかわったのだそう。「夫の仕事が忙しく、週末の家族サービスといえば夫が構造設計に関わった物件のオープンハウスに行くことでした。中でも、新関さんの設計した建物は、中に入ると外観からは予想できない広がりがあって、その空気感やデザイン性が素晴らしく、いつかは新関さんの設計した建物に住みたいと思うようになりました」美しい緑は、作庭家の長濱香代子さんが手がけた。竣工から5年目の今年、土を替えるなどの植栽の手入れを行ったそう。「長濱さんは、埼玉の農家の方と一緒に土作りからしっかり行っているので、手をかけなくても植物が生き生きと育ちます」緑のプランターが建物の各所に設けられていて、上下の位置を少しづつズラすことで、それぞれの場所で雨と光が当たるようになっている。「植栽のプランターは鉄筋コンクリートの構成の一部になっていて、梁の役目も果たしています」竣工5年目の多田邸。年月とともに緑のボリュームが変化していく。緑道の樹々と一体となった建物。緑に歓迎されながら洗い出しの階段を昇り、2階の居住スペースのあるテラスへ。新関さんの設計らしい物語性のある階段。窓を開け放てば、内と外がゆるやかにつながる。開放感が感じられる住まい。最上階は、低い窓の外に屋上の緑が広がる。茶室にいるかのような落ち着く空間。最上階の屋上の緑。ベンチの後ろのコンクリートのスラブの中にも深型のプランターがセットされている。最上階のプランターにはアガパンサスが植えてある。水やりはタイマーがセットされた潅水ホースで行うので手間がかからない。こだわり抜いたキッチンの設計由喜さんはご自宅で料理教室「こゆきの食卓」を開催していることもあり、キッチンの設計には細かな部分までこだわった。「調理器具や食器の数が多いので、効率よく収納できるよう引き出しの大きさを考えました。調理器具には電気を使うものが意外と多いです。後で困らないようにあらかじめコンセントの位置や数にもこだわりました」キッチンのカウンターの高さは92cm。「背の高い方や男性でも使いやすい高さです。たくさんの方が楽しく集まれる空間を創っていきたいと思っています」奥のI型キッチンの天板とカウンターテーブルは共にコンクリート打ち放し。ガスコンロはカウンター側に作った。長女の大学2年生の美久璃さん。そして弟が2人の5人家族。収納力抜群のキッチン。引き出しの高さは、あらかじめ収納したいものの大きさを測って決めたのだそう。モルタルのカウンターテーブルの裏側にもコンセントを設置。テーブル越しにも緑が見える。スタッキングできるグリーンの椅子はアンティーク。「テーブルは友だちからのお下がりのロイズ・アンティークスです」コンクリートの打設に立ち会い、頑丈な家に3階のバスルームは、まるでリゾートホテルにいるかのような非日常空間。煤を混ぜた黒いモルタルで壁や浴槽が作られている。「新関さんと沖縄のリゾートの仕事をご一緒させていただいた時、バスルームが素晴らしかったので、我が家にも作っていただきました」半地下には脩二さんの事務所がある。「以前は住まいと事務所が別々だったので、経費の面では一体になって良かったかもしれません」そして2階から4階が住居スペースの、計4層の建物になっている。「当初は木造で作ることも考えたのですが、4層はやはり難しく、RCで造ることにしました。しっかりした躯体を作りたかったので、コンクリートを打設する際は現場に来て、自分も手伝いながらコンクリートが密になるようにしっかり打ちました。コンクリート内の気泡は少ないほうが頑丈な建物にになるんです」頑丈な躯体と、年月とともに変化を見せる植物。これから先、さらに素敵な家になっていくに違いない。2階の浴室。床は玄昌岩、壁や洗面カウンター、浴槽は、煤を混ぜたモルタルに防水加工を施してある。幅広の水が滝のように流れる水栓。緑道に面した事務所のエントランス。「この入口はほとんど使っていないので、どんどん葉が茂ります(笑)」脩二さんの事務所。天井高3mのたっぷりとした空間。天窓からコンクリートの壁に落ちる光が美しい。約1m下げて半地下の事務所空間を作った。
2019年05月29日一目惚れの敷地正方形の敷地を探していたという建築家の古澤さん。「見た瞬間にここだと思った」敷地は約45㎡の狭小地で、私道(位置指定道路)の突き当りに位置する。そして、住宅に両脇を挟まれたその私道は古澤邸のためだけに存在しているかのように見える。「正面性もあって一目惚れでした。そして、ここだったら街とつながったような生活ができるんじゃないかと」私道奥の真正面に立つ古澤邸。敷地は約45㎡。建物の半分近くが外部空間になっている。外部空間が半分当初の計画ではプランの真ん中に螺旋階段をもうけていたが、「図式的には美しいけれども、求心力が強すぎて生活が束縛されそうな感じがしたため」、多数の案を経て現在のプランへと変更を行った。しかし、道路に面した建物の半分近くを外部空間にするというコンセプトははじめと変わらずに維持した。「こういう繁華街に近い場所ではどうしても外部が少なくなってしまう。さらに、子どもを育てるうえでも外があるほうが絶対いいと思ったので」と古澤さん。2階バルコニー。都会ではどうしても外部空間が少なくなってしまうため、2~4階でバルコニーを4カ所もうけた。2階の入口近くから外階段越しにバルコニーを見る。コンクリート階段が途中からスチールにかわる。2階へ上る階段途中から見る。梁とスラブを分離する試行錯誤を重ねて行き着いたプランは中央に十字形を配したものだった。図面を見る限りこのプランにも空間を支配するような図式の強さが感じられるが、十字の四隅に柱を設けて十字の交点の部分には柱を置いていないため、ある意味、螺旋のプランとは違って中心といえるものもなく、十字形によって「生活が束縛されそうな感じ」はまったくしない。十字形を意識させない要素としてはこのほか、梁と床/天井のスラブが分離していることが挙げられる。通常は梁と同じレベルにスラブがつくられるが、古澤邸では上下の梁の間にもうけられている。そのため床レベルから見ると天井までの途中に梁が見えることになる。2階スペース。柱から出ているのはスラブではなく梁。この梁が上から見ると十字の形になっている。梁が直角にぶつかっている部分が建物の中央になる。2階スペース。左からキッチン、階段室、バルコニー。ガラス面が大きいが、梁が視線をほどよくさえぎるためプライバシーの面ではあまり気にならないという。この構造は構造家との話し合いの中から生まれたものという。「梁とスラブが一体になっていることに疑いをもつ人はいないと思いますが、ラーメン構造というのは柱梁構造のためスラブは本来、構造的に不要です。ジャングルジムのようなものなので、ある意味、スラブは柱や梁とは別の要素なんですね」こうしてできた空間ではスラブと梁が絵画のフレームのようになって外部空間をさまざまなプロポ―ションで切り取るだけでなく、視線が内外ともに斜めにも抜けて都会の狭小敷地では得難い開放性も獲得している。さらにはまた、正面がガラス張りのため、内へと閉じがちの都会生活では珍しく街とのほどよい距離感と関係性もつくり出されている。4階からの見下げ。基本的に外の階段をコンクリート、内部は木にしているが、それだけでは対比的になりすぎるので途中にスチールの階段もつくっている。寝室のある4階スペース。柱から出た梁によって十字の形ができているのがわかる。階段部分の吹き抜けは1階から4階まで続く。狭小住宅では上下移動の体験が重要になるため、歩くごとに風景が変わる、街を散歩するような楽しさを目指した。2階と3階を見る。2つの床の途中に存在感のある梁があるため、スキップフロアと勘違いする人が多いという。スラブがピン角でぶつかる部分はスチールで接合されている。3階バルコニー。和室のある3階スペース。3階和室から見る。厳しさとは真逆の居心地がいい引っ越しをしてから1カ月という古澤さん一家。間仕切り壁のような存在感のある梁はモノを置く棚としても活用しているというが、はじめてチャレンジしたつくりの空間の中で古澤さんは「モノをどこに置くのかがまったく決まらなかった」と話す。「ようやく落ち着いてきましたが、いろんなところにモノを置いていいきっかけがあるから、しばらくの間、毎日のようにモノが移動していました」家族の戸惑いは、古澤さんよりもさらに大きかった。「最初は開放的すぎて全部外につながっている気がして自分の部屋がないような感じがしました」と娘さん。しかし今は心地よい開放感に慣れて外の目が気にならなくなり、カーテンも開けて暮らしているという。いろいろなプロポーションの開口部が外をさまざまに切り取って風景の変化を楽しませてくれる。1階玄関内部から外を見る。壁と天井のスリットから光が入る。1階。木のボックスの内部はトイレ。階段越しに玄関のほうを見る。階段途中から見る。梁とスラブが分離することで、通常ではありえないような外との関係性が建物のいたるところで生まれている。古澤さんと息子さんの2人がいるのは梁の上。40×40cmの梁は棚としても使えるし、腰かけたりすることもできる。奥さんも「家の中まで見えてしまうのかなと思っていたんですが、意外に見えないので、外からの視線はだんだん気にならなくなってきました」と話す。「あと、頭をコンクリートの梁にぶつけたりするととても痛いのですが、そうした厳しさとは真逆の居心地の良さがあってそれがとても気に入っています。コンクリートでなければ、このような快適な開放性は得られなかったんだろうなと」奥さんは古澤さんに「狭い面積の中でバルコニーを広く取りすぎてもったいない」と設計中ずっと言っていたそうだ。しかし「外とつながって空間が広く感じられるし、よくあそこでお茶を飲んだりして楽しんでいるので、これで良かったなと思って」いるという。設計で外を意識的に多く取り込んだ古澤さんもこう話す。「昨日も友人たちをまねいてバルコニーで食事をしたんですが、外というのはやはり気持ちがいいですね。外とつながっているというのは街とつながっているというのと同じなので、そのあたりの気持ちの良さに住んでみてあらためて気づいたような気がします」。古澤さんはまたこの気持ちの良さを「街と体験が一体化する」という建築家らしい表現でも伝えてくれた。古澤邸設計古澤大輔/リライト_D+日本大学理工学部古澤研究室所在地東京都杉並区構造RC造規模地上4階延床面積90.59㎡
2019年05月27日間口3m。筋交いが生み出す広々空間東京23区の中心部に位置し、歴史と文化の街として発展してきた文京区。Kさん夫妻がこの地に家を建てたのが5年前。共働きで子育てをすることを考え、文京区育ちの奥様の実家の近くに住もうと思ったのがきっかけだった。文京区という場所柄、限られた予算の中で購入できる建売住宅はとても狭く感じたという。そこで、土地探しからお願いしたのが石井井上建築事務所。「テレビの住宅番組で、いい雰囲気だなと思った家を手掛けていて、事務所も文京区だったのでお願いしました」(ご主人)。いくつか提案のあったなかで、Kさん夫妻が決めたのは約16坪の細長い狭小地。そこに、間口3m、奥行き10mの木造3階建ての家を建築した。「ご主人が『土地の特徴を活かして、建物も細長くしたほうが面白い』と言われたことが設計の決め手となりました」と当時を振り返るのは、建築家の石井大さん。通常、かなりの量の構造壁が室内に出るところを、見通せる筋交いで建物を支えるように設計した。天井高3mの2階は、階段部分に2つの筋交いを設置。リビング・ダイニングとキッチンを振り分けつつ、奥行きのある広々とした空間を実現した。4歳になる息子さんはひとつながりのワンルームを元気に走り回り、筋交いと絡んだ階段は格好の遊び場に。「筋交いがアクセントになり、楽しい家になりました」とご夫妻も微笑む。2階は、間口3m、奥行10mの細長いワンルーム。天井高3mがより開放的に印象付ける。「好きな家具を揃えていきたい」と、マルニ木工でジャスパー・モリソンのダイニングテーブルと椅子(手前)を購入。筋交いのある階段奥がキッチン。ダイニングスペースと分けたのは奥様の希望。使い勝手の良いコンパクトなキッチン。階段は移動手段だけでなく、コミュニケーションの場にもなっている。大きく窓をとったリビング。窓に筋交いを設け、耐震強化。住宅が密集した狭小地。アウトドアが趣味のご夫妻にとってガレージは必須だった。キャンピングカーの上部の棚は既製品の鋼製足場板を利用。アウトドアグッズが置かれている。リゾート気分のバスルームK邸の天井は、木のまま見せた梁が一定間隔で並んでいる。生活しながら木で造られた家であることを実感できるのが心地よい。「都心部の住宅ゆえに準防火地域に属するものの、火災に強い“燃え代設計”を利用していることで、通常は石膏ボードで覆われるところを回避しました」(石井さん)。階段を昇りきるとガラス張りの真っ白なバスルームが登場する。「リゾートホテル風なお風呂を希望しました」とはご主人。昼間は階段上の天窓からたっぷりの光が降り注ぎ、夜は季節によって天窓越しに月見風呂が楽しめるという。この天窓からの光は2階のダイニングまで届き、北向きのリビングを明るく演出している。3階まで階段を昇った右手には、扉のないガラス張りのバスルームがある。天窓を通して空が眺められる。開閉式の天窓。階下に十分な光を届ける。3階の左手(南側)には寝室がある。3階の右手奥(北側)は将来の子供部屋。白い机はご主人が20年ほど前に「unico」で購入したもの。家具職人!?必要なものは自分で製作今回、壁はご主人が中心になって塗装されたそう。「ビスを隠すために厚めに塗ったこともあり、時間がかかって大変でしたが、工事中に現場に入って大工さんの作業を見ていられるというのが楽しかったですね」。その影響なのか、ここに住むまではあまり経験がなかったというDIYだが、いまではまるで家具職人のように製作しているという。キッチンのスパイスラックやコーナー収納、本棚、PC机……と数えきれないほどである。「生活していて、こういうのがあったらいいね、と言うと図面を描いて作ってくれます」と奥様。「ただ時間がかかりますけどね」と笑うご主人。暮らしながら、必要なものを自ら作り、住まいやすいように手を加えていくことで、家への愛着がさらに深まっていくという。今、あったらいいなと思うものを訊いてみると、「屋上」とのこと。「料理に使うハーブなどを屋上で育てたい」と。なんでも作るKさんのこと。きっと何年後かに実現していることだろう。玄関奥にある書斎は80cm高くなっている。PCデスクや棚などすべてご主人が製作したもの。壁に取り付けたガス暖炉がオシャレ。玄関を入って階段へ向かう通路。洋服掛けや自転車のフックはご主人がDIY。キッチンに立つご主人が「あったらいいな」と思い作製したコーナー収納。構想2年の力作。「カップをつるす棚が欲しいと言ったら作ってくれました」(奥様)階段からのぞいたり、腰掛けたり。階段は4歳の息子さんの遊び場でもある。K邸設計石井井上建築事務所所在地東京都文京区構造木造規模地上3階延床面積89.40㎡
2019年05月20日ジャングルの奥にひっそりと湘南の海が望める稲村ケ崎の閑静なエリア。「海のそばで暮らしたい」とずっと思っていた池田さん夫妻は、ふらりと散歩に訪れた際この土地に出会う。「鎌倉の中でも田舎っぽさが残っているところが気に入りました。それまでは都心のマンションに暮らしていたので、がらりと環境が変わりましたね」と妻の麻里奈さん。ユッカの木などが茂る、アリゾナをイメージしたというエントランス。芝生の中の小径の奥に、ウッドデッキのあるベイスギの外壁の家が建つ。「うっそうと茂ったジャングルの奥に家がある。そんな雰囲気にしたかったんです」というのは、夫の紀行さん。敷地は150坪。広々とした庭にはガレージやDIYの作業部屋、アウトドアグッズなどを収めた小屋、ピザ窯などが点在する。「サーフィンはもちろん、箱根までサイクリングしたりしてアウトドアを楽しんでいます。以前はあまり縁がなかったのですが、ここに引っ越してきてから、趣味が広がりましたね」。外塀には「どうしてもこれを使いたかった」という琉球ブロックを。「輸送費の方が高くついた」そう。庭にはサボテンやオージープランツが。小径の奥にサーフハウスをイメージした白い家が建つ。カリフォルニアの農場にあるような小屋をイメージ。古トタンを譲り受けてDIYで作りあげた。キャンプ用品やDIYツールなどを置いている。ガレージにも接続。小屋の中では、紀行さんがランタンの整備などの作業を。レトロな雰囲気のワーゲンバスが小屋の中に鎮座。薪ストーブ用の薪をストック。家庭菜園も設け、サラダの素材はすべてここから調達している。知人の家で見て感動し、設計図をもらって造ったピザ窯。ガーデンパーティーで活躍。テラスのデッキも、なんとDIYで完成したものだそう。雨に強く腐りにくいウリンを使用。アウトドアでのお茶や食事も楽しんでいる。開放感ある西海岸風スタイル「カリフォルニアスタイルの家にしたかったんです。ラグジュアリーというよりは年月を経て古さが滲み出る、味のある家が理想でした」。土地の紹介から設計施工まで、鎌倉R不動産が担当。吹き抜けとウッドデッキを設ける希望は、いちばんに伝えたそう。「友達がよく集まる家なので、あまり仕切らずオープンで自由にしてほしいとお願いしました」。東京から何度も足を運んで打ち合わせ。大きな開口から光がたっぷり差し込む吹き抜けのリビング、ハワイをイメージしたという暖かなムードのキッチン、窓の向こうに江ノ電がコトコトと走るダイニング。のんびりとした時間が流れる西海岸風の家が誕生した。「キッチンだけは使い勝手を考えて、すこし独立した感じにしてもらいました。ゲストと一緒に調理することも多いので広々とさせ、誰でも使いやすいようにパントリーの動線も考えました。いずれはお弁当屋さんもできるように設計しています」。光と風が通り抜ける吹き抜けのリビングで。この春、3人家族になった池田家。「ふたり暮らしだと思っていたので1LDKを考えたのですが、後から仕切れるよう自由にしておいたのは良かったです」。奥のダイニングの向こうを江ノ電が走る。開口部を設けて、通り抜ける電車を眺められるようにした。ダイニングテーブルはイームズ。古くなっても廃れないロングライフデザインが好み。無垢の床とアイアン、白い塗装が心地よい。薪ストーブは絶対に入れたかったもののひとつ。陽光あふれるキッチン。パントリーは冷蔵庫を挟んで両側から入れるように。キッチン台はシンクの横の台に段差があるのがポイント。このスタイルのステンレスの天板を見つけ、それに合わせて造作した。魚をさばいた後の掃除などがしやすい。コンロ側は、シンク側のステンレスの冷たさを和らげるため木の天板に。あえてオープンな収納にして取り出しやすく。朝食はキッチン前のこのスペースでとることが多い。ウッドデッキのある庭に面していて明るい。悩んだカーテンはローマンシェードに。DIYでコストカットも箱自体の魅力に加え、驚くのは至るところをDIYで創り上げたということ。「外壁は1枚1枚、施工の前に自分たちで色を塗ったんです。庭のピザ窯も設計図をもらってDIYで造りました。完成して入居してからも1年くらいは、何かしら作業をしていましたね」。家の南側と北側にあるウッドデッキも、紀行さんの会社の社員の力を借りてDIY。「コストカットできるところはなるべくしたかったんです。ドア1枚も吟味しました」。もともとインテリア好きだったという麻里奈さん。色んなショップを回ったり、サイトで調べたりしてはディスプレイを考えたそう。「ノブひとつを見つけるのに、東京中を探しまわりましたよ(笑)」。コストカットを実現する一方、こだわったのはバスルーム。シャワーブースのあるホテルのような贅沢な空間は、爽やかなトーンのタイル貼りが美しい。「海から戻って外シャワーをあび、直行できるよう外から入れるドアも設けました。狭いところに籠るのは嫌なので、ゆったりできる空間にしたかったんです」。夜は麻里奈さんが取り付けたディスプレイ棚のキャンドルを灯して、ゆっくりとお風呂に浸かる時間が疲れを癒してくれる。「やっと少し落ち着いて、カフェに行ったり、お散歩をしたりして楽しむようになりました。春先には庭に自生するフキノトウを天ぷらにして食べたり、ピザパーティーを開いたり。ここでの暮らしを満喫しています。地元意識も芽生えてきて、もうここから離れられないと思いますね」。2階にあるオープンなセカンドリビングは、ゲストルームにも活用。いずれは仕切って子供部屋にすることもできる。ベッドルームは落ち着けるようヨーロッパ風に。開口も控えめにした。ベッドサイドの照明など、海外のサイトで見つけて購入。壁は淡い水色にDIYで塗装した。6畳あるウォークインクローゼットも海外サイトを参考に。棚の引出しはIKEAで調達し、それに合わせて棚を作ってもらってコストカット。外から入ってこられるドアも設けたバスルーム。左手にはシャワーブースがある。江ノ電がすぐそばを走るウッドデッキには屋外バスタブも。緑に包まれて入浴を楽しめる。どうしても使いたかったシンクは、イギリスに住む叔母さんにわざわざ送ってもらった英国製。鏡はIKEAのものにロープをかけてアレンジした。玄関からリビングに入るドアの文字は、ネットで探したサインペインティングのアーティストに描いてもらったもの。バスルームのドアにもペイント。玄関は、TVで見たカリフォルニアスタイルの家をモデルに。足場板に様々なカラーをかすれた感じに塗って、モザイクのようにあしらった。カゴはアフリカから取り寄せたもの。現在3カ月の長男と、湘南での暮らしを満喫する池田紀行さんと麻里奈さん。貸しスタジオHOHHOHOUSEも営む。
2019年05月15日この家に住みたい「自分のライフスタイルにちょうどいいプランで、2階はワンルームで生活して下は事務所にも使えるというものでした。それで建てようかなと」こう話すのは工務店を営む黒羽さん。ある集まりで知り合った建築家の若原さんがデザインした規格化住宅のプロトタイプのプランが気に入って設計を依頼したのだという。「若原さんの家をいくつも見ていてどういう空間になるのかは想像ができたので、“この家に住みたい”と思いました」黒羽さんはワンルームでシンプルな空間が好みという。考え抜かれたプロポーションによってつくられた2階スペースには静かで落ち着いた雰囲気が漂う。白い漆喰の壁・天井は鏝で粗く仕上げているため、表面自体に細かな陰影がある。モデルルームも兼ねる黒羽邸のプランはこのプロトタイプをベースにつくられ、1・2階がそれぞれ約15坪の延床30坪ほどの広さのものに落ち着いた。モデルルームの機能ももたせたいと考えた黒羽さんは「ローコスト」かつ「シンプルであまりつくり込まない」をこの家のコンセプトとした。さらに、黒羽さんが仕事でよく使っている空調システムを採用。1階に設置したエアコンの暖気を床下のダクトを通して部屋全体を暖めるというものだ。また、床に北海道のナラ材、2階の中心近くに立つ柱をヒノキ材にするなど黒羽さんの希望によって材が選択された。開口の開け方をコントロールして生まれた陰影が空間に奥行きをもたらす。右の畳スペースはセパレートして移動することもできる。上部のスチール材は横に開こうとする登り梁を留めるためのもの。たっぷり幅を取ったキッチン。パーティなどの際には料理を盛ったお皿を並べセルフサービスで取ってもらうことも。障子を閉めると空間に柔らかな光が回って和の雰囲気が強まる。傍島浩美さんデザインによる家具がシンプルで落ち着きのある空間にとてもフィットしている。奥行きと場所をつくる黒羽邸の空間には考え抜かれたプロポーションとともに空間の明るさ/暗さにも特徴がある。一般的な住宅よりも明るさを抑えた空間の中に開口からの光で場所/領域をつくっているのだ。こうして空間に明るさのメリハリをつくり出すことで奥行き感も生まれている。場所の明るさの違いも意図的につくり出されている。たとえば2階のダイニング近くには大きめの開口によって比較的広範囲に明るさが確保されているのに比べて、リビングのスペースは近くの開口も小さくやや暗めの印象。畳スペースの近くには畳面と同じレベルにつくられた小窓とトップライトがあるが、このスペースもダイニングよりやや暗めに明るさが抑えられている。トップライトが直接照らす壁面には、斜めに射す光が印象的なものになるように周囲と同じ白い漆喰ではなく木を採用した。壁面自体で陰影と奥行き感を出すために凹凸に張られているが、さらに粗い仕上げ感も出そうと間柱用のスギ材が使われた。この壁面が、セパレートして移動できる畳とともに空間を特徴づける要素となっている。ダイニング横の障子を開けると付近がかなり明るめの空間となる。通常は間柱に使われる材でつくられた正面の壁はトップライトからの光で多様な表情を見せる。設計側からの提案のものよりも大きなものに変更してもらったというストーブは工務店業で出た廃材を薪に使う。街とつながる1階の事務所スペースはお施主さんとの打ち合わせのほか、この地域で協力関係にある工務店などともに行っている子どもたちを対象とした大工教室やお祭りなどのイベントのための会合などにも使用している。事務所スペースの隣に設けた和室の部分は最初のプランではなかったものという。「事務所だった部分をゲストルームに使える畳の部屋にしてもらったんですが、打ち合わせ中にお客さんのお子さんたちが遊ぶスペースになったりしていてこれはつくって良かったなと思っています」この1階にもモデルルーム的な機能をもたせている。コンセプトは「50~60代ぐらいの人たちが家にいながら地域に開いていく場所」。それぞれの家に街とつながる場所をつくることでまた違った暮らしの楽しみようをつくってほしいという思いから、玄関側の開口はそこからも気軽に入っていけるようなつくりにしている。和室側から見る。奥の左手が玄関。玄関ホールと事務所スペースは引き戸によって仕切ることができる。左が事務所スペースで右が玄関。事務所スペースから玄関側の開口を見る。玄関ホールから奥の和室を見る。空間を縁どるフレームが奥の開口へとむけて連なる。和室から事務所スペースを通して玄関ホールを見る。和室から灯籠の置かれた庭を見る。大人の空間引っ越しをされてから2年ほど経つ黒羽邸。黒羽さんは温熱環境が良くすごく快適に過ごせているという。夫妻ともにいることが多いのはダイニングスペースで、とても居心地が良く、また家具作家の傍島さんデザインによる家具も気に入っているという。「ちょっと薄暗い印象はありますが、それが“とても心地良い”というのを住んでみて実感しています」。こう黒羽さんが話す2階のワンルームはとても落ち着いて静かな空気感が特徴的だ。シンプルながら考え抜かれたプロポーションと相まって「大人の空間」の雰囲気が漂っているのである。ダイニングスペースは夫妻ともにお気に入りの場所。平側1階の左が玄関、右が事務所スペースの開口。手前の黒いカバーが掛けられているのは黒羽さんの愛車「Lotus Elise」。モデルハウスという要素もあったため、お客さんの記憶に残りやすい家形の屋根が採用された。黒羽邸設計若原アトリエ所在地神奈川県横浜市構造木造規模地上2階延床面積106.82㎡
2019年05月13日構想5年。念願のカフェをオープン再開発が進む京王線調布駅から徒歩5分。拡張工事中の道路沿いを歩いていると、ウエスタンレッドシダーの壁に施された、ぷっくりとした「!」マークに目が留まる。目立った看板はないものの、丸太の椅子が置かれ、植栽で彩られたエントランスは、一般の住宅とは一線を画しており、「何屋さんかな?」と足を止める人も多い。ここは、直井雄太さんが昨年春に開いたカフェ「いづみ」。かつて、直井さんの祖父母が40年以上も洋食屋を営み、暮らしていた場所である。祖父が他界し、祖母の惠子(しげこ)さんが一人で住んでいたが、建て替えを機に1階をカフェ、2、3階を住居とし、3世代4人での暮らしが始まった。「祖父母の店で祖父のハンバーグなどよく食べていました。料理をしている、“かっこいいおじいちゃん”の姿が目に焼き付いています」。祖父の影響もあり、料理が好きになったという直井さん。調理師学校に進み、その後代官山のカフェで珈琲について学んだという。「祖父母の店があったこの場所だからこそカフェを開きたいと思ったんです。思い出の場所で、祖父母の思いを引継ぎ、地域に密着したお店を持ちたいと。店名も、当時と同じ『いづみ』にしました。いつも祖父が見守ってくれているように感じます」。目立った看板はなく、OPEN、CLOSEの札のみ。大きなドアから「何屋かな?」とのぞく人も多い。切妻屋根と四角い木製窓がかわいらしい外観。入口の左側に丸太の椅子があり、ウェイティングスペースになっている。「いづみ(IDUMI)」の“i”や滴を連想させる店のマークは、グラフィックデザイナーが作製した数案の中から、祖母の惠子さんが最終決定したそう。シェアハウスのような造り現在は、主に、2階が直井さんと惠子さん、3階が直井さんのご両親の生活スペースになっている。2階のリビング・ダイニングは家族の共有スペース。作業台を広くとった大きなアイランドキッチンでは、直井さんをはじめ惠子さん、働いている母、ときには父も、そのときどきでできる人が料理を作る。夕食時にはダイニングに家族が集い、カフェでの出来事など何気ない話題で会話が弾むという。床はオークのフローリングを斜めに敷き詰め、天井には杉の足場板を使用。自然素材が心地よい空間には、ハンス・J・ウェグナーやボーエ・モーエンセンの名作椅子たちがさりげなく置かれている。家族の時間を大切にしている直井さんは、家族が集う2階のスペースには経年変化が楽しめる素材や家具にこだわったという。北欧家具の専門店「グリニッチ」オリジナルの一人掛けソファに座る惠子さん。「座り心地がとてもいいです。ここは、木のぬくもりが感じられ、広々としていて落ち着きますね」と、最も2階で過ごすことが多い惠子さんの笑顔から、その快適さがうかがえる。2階でもうひとつ目を引くのが、オブジェのように置かれたバスタブ。思い切って扉や間仕切りを設けず、“見せるバスルーム”という大胆な発想である。「常にオープンになっているため、通気性もよくカビも生えません。簡単に拭くだけでよいので、掃除もラクですよ」と直井さん。シンプルな空間のアクセントにもなっている。「料理しながら2階全体を見渡せる、この場所が好き」という直井さん。大きなアイランドキッチンは、将来、料理教室を開くことも視野に入れている。光がたっぷり入る2階のリビング・ダイニング。さりげなく置かれたバスタブがインテリアの一部になっている。直井さん憧れの北欧の椅子たちに「IKEA」のダイニングテーブルをセット。ダイニング側の引き出しには、衣類や生活雑貨が収納されている。2階にある直井さんの寝室。ベッドと棚を設えただけのシンプルな個室がほかに4つある。約30畳の広々とした空間。惠子さんが座っている椅子が「グリニッチ」のオリジナルソファ。テレビの下の棚は、この家の設計を手掛けた「TENHACHI」の製作。扉や間仕切りを設けず、“見せるバスルーム”に。入浴するときは、カーテンを閉める。机にシンクをはめ込んだような家具調の洗面台は、「TENHACHI」のオリジナル。1階から2階へ昇る階段は、昇降機を設置することを考慮し、広めにとっている。可変性を考えた余白のある空間3世代にわたる家族は、生活パターンや趣味もさまざま。それぞれのプライベートな時間を守れるようにと、2階に2つ、3階には3つの小さな個室を設けた。また、3階にもリビングとミニキッチン、シャワーブースを設け、各階で生活が完結できるようにした。好きなときにテレビを観たり、シャワーを浴びたり、父母の生活スタイルに合わせて自由に過ごせるようになっている。3階のクローゼットの奥は、予備の個室もある余白を残した空間。将来、家族構成やライフスタイルが変化したときにも柔軟に対応できるようにと考えてのこと。自由度の高いシンプルな造りは、そのときどきの家族の暮らし方に合わせてカスタマイズできるのである。ラーチ材で統一した3階のリビングと父母の寝室。2階とは異なる印象に。一人掛けソファは2階と同様、「グリニッチ」のオリジナル。ミニキッチンや冷蔵庫も用意。木製サッシを開けると、日当たりのよいベランダへ。4人各自のクローゼットが設置。勾配天井と素朴な素材感が山小屋風。「ドアノブなどの細かいところにもこだわりました」。これは、「パシフィックファニチュアサービス」で購入。父の帰りが遅いときなどシャワーブースが活躍。珈琲に思いを込めて家族をはじめ、人とのつながりを大切にする直井さん。1階のカフェでもお客様とのコミュニケーションを大事にしている。「豆は常時6~8種類用意しています。お客様の好みや気分などをうかがい、今飲みたいもの、お客様の求めているものに応えられるよう心がけています。カフェオレも基本のレシピはありますが、お客様の年齢や性別、雰囲気などから想像して、豆やミルクの量など微妙に変えたりすることもありますね」。お客様に合わせて一杯ずつ丁寧にドリップ。「同じ一杯はありません」と、一杯一杯に思いを込めた仕事ぶりが伝わってくる。この極上の珈琲を引き立てるのが、シンプルな木の空間と北欧の名作家具たちである。ここにはゆったりとした時間が流れ、まるでリゾート地で飲むような格別な一杯が楽しめる。「最近嬉しいことがあったんです」ととびっきりの笑顔で話し始めた直井さん。「“先日、ここで婚姻届けを書きました”というエピソードを話してくれたお客様がいらしたんです。そういう人の人生に寄り添い、思い出の1ページになるようなお店にしていきたいですね」。カフェ「いづみ」は、朝7時から夕方6時まで営業(水曜日定休)。土日のみ登場する直井さんのお父様が作る家庭的なサンドウィッチも好評。祖母の惠子さんがカフェで座っていると、昔馴染みの方々が集まってくるそう。家具はすべてハンス・J・ウェグナーのもの。「心地よい椅子でゆっくり珈琲をお楽しみください」。忙しいときにも効率的に動けるように考え尽くしたシンク。作り置きはせず、注文を取ってから淹れる。「TENHACHI」の建築家、佐々木倫子さんの父・典彦氏の作品。「いづみ」のコーヒーは典彦氏作製のカップで提供される。一杯ずつ心を込めて、丁寧に珈琲を淹れる直井さん。その姿は美しく、見ている人を飽きさせない。直井邸設計TENHACHI一級建築士事務所所在地東京都調布市構造木造規模地上3階延床面積195㎡
2019年05月06日もう一度、理想の家を作りたいDIYを楽しみながらリノベーションした都内のマンションに住んでいた葛谷晴子さん。「DIYをやり尽くした感覚もあったので(笑)、もう一度、1からリノベーションを楽しみたいと思い始めたんです」とんとん拍子にマンションの売却が進んだので、とり急ぎ北鎌倉の賃貸物件にお試し移住しながら次の家を探したのだそう。「最初は古い家をリノベーションするつもりで探していたのですが、多くの物件が、階段の場所は移せない、この柱は取れないといった制約のあるものでした。そして実際に見積もりをとってみると、新築の家を建てるのと同じくらいの金額になることもわかりました。ならばリノベじゃなくて新築もありじゃない?と考えを変えた時に出会ったのが、この『ENJOY WORKS(エンジョイワークス一級建築士事務所)』の”スケルトンハウス”でした」“スケルトンハウス”は、居住性を高めた箱型の建物で、内装は施主が自由に設計できるというもの。内装は以前からおつきあいのあった『FIELD GARAGE(フィールドガレージ)』にお願いした。パリの部屋を思わせる真っ赤な床は、パイン材にDIYでペイント。15年ほど愛用しているというセルジュ・ムイユの照明スタンドと、イケアのペンダントライトの組み合わせが素敵。窓際の段差はベンチとしても使える。室内にはたっぷりのグリーンを。リビングの一角の、アーチ状の入り口のある囲いの中は、パントリールームになっている。手前は20年以上使っているという愛着のある小さなテーブル。奥のヘリンボーンに貼った扉も、葛谷さんのDIYなのだとか。光がたっぷり差し込むキッチン。「キッチンの棚はオープンラックにしたいと思っていました。なかなか気に入ったものがなくてずいぶん探し、『オルネ ド フォイユ』の実店舗でやっとお目当てのものが見つかりました」正面のキッチンの奥と階段の吹き抜けの壁に大谷石を貼っている。壁付けのキッチンの横は白のタイルにして目地を黒に。ブルーの壁も自分でペイント。棚板の幅を変えれば、背の高い植物も飾れる。「食器棚として使っている和家具は、自分でペイントしました」扉を一から作るほどのDIYの腕前都内のマンションに住んでいた頃からDIYを楽しんでいたという葛谷さん。この逗子の家でも、自分で扉をつけたり、壁や床をペイントしたりと、存分にDIYの腕を発揮している。「床は以前住んでいた都内のマンションと同じ赤にペイントしました」1階の床は足場板。階段の踏み板も施主支給の足場板を使った。「大工さんが、こんな古い板を貼って大丈夫?と心配してくれました。確かに裸足で歩くとキケンなほどササクレだっていたので、後から丁寧に磨いてオイルを塗りました」葛谷さんのDIYの腕前は、足場板を組み合わせてドアを作ってしまうほど。愛猫用のドアは額縁を使っている。「20年ほど前からDIYを始めました。今回は初の戸建てなので、フェンスを自分で作ってみました。DIYは予算の節約にもなりますし、自分らしいインテリアを作ることができる最高の趣味だと思います」寝室のカーテンはH.P.DECOのもの。階段室との間の仕切りはまだ開いたまま。「まだアイディアが固まっていません。猫がここを便利に使って行き来しています(笑)」このドアがすべて手作りというから驚く。足場板を使い、ドアの下に額縁を使った愛猫のタンゴちゃんのための出入口もある。日だまりでお昼寝していた黒猫のタンゴちゃん。「2階のベランダは出入り自由にしています」1階から2階への吹き抜けの壁はすべて本棚に。アイアンの手すりの階段。踏み板は古い足場板。右の扉はアメリカの小学校で使われていたものだそう。「塗装を削ってみると歴代のペンキが現れ、カラフルな扉になりました」本物の素材を使うことで経年変化も楽しめる「この”スケルトンハウス”は、4坪単位のモジュールで大きさを決められること、そしてインフィルを自由設計できる魅力に大いに惹かれました。加えて、実際に住んでみると、建物の断熱性が高いのに驚きました。北鎌倉に住んでいた時の家と比べると、広さは倍になっているのですが、光熱費は半分。全館空調なので快適です」間取りは数十パターンも考えたという葛谷さん。もろもろ検討した結果、寝室は1階に、ウォーキングクローゼットは寝室と浴室と玄関の側に、リビングは海の見える2階と決まった。「お気に入りは、階段の脇の書棚とスチールの手すりと足場板の踏み板です。DIYの作業は階段下のホールですることが多いです」葛谷さんがインテリアを考える上で大切にしていることは、”本物の素材を使うこと”。「年月を経ても味わいが出てくる本物の素材を選ぶようにしています。”スケルトンハウス”の外壁はレッドシダーを使っていますが、年月とともにシルバーに変わっていく過程も楽しみです」水回りはすべて大理石の白のモザイクタイルを使った。こだわりのコンセントプレートや水栓、洗面台など、様々なものを施主支給して内装を仕上げてもらったのだそう。鏡の横のライトはIKEAのもの。「施主支給して設置してもらいました」。眺めのよいバスルームは、手前にもシャワーがある。「シャワーだけで済ませる時に浴室全体が濡れないほうが掃除が簡単かなと思って贅沢をしました(笑)」壁につけた水色の2つのボックスはDIYしたもの。「木箱に扉をつけて、クラックペイントしました」。この壁の裏側が洋服の収納スペースになっている。ネットオークションで手に入れたという黄色の扉が目を引くエントランス。左のアーチ型の奥のスペースは物入れになっている。キュートなデザインと色が気に入って購入を決めたインポートの宅配ボックス。逗子の高台に建つ葛谷邸。以前ここには平屋があった。「撮影用のポールの先にスマホをつけて伸ばしてみたら、2階の高さから逗子マリーナ辺りの海が見えることがわかったんです。この眺めを見て、平屋をリノベするよりも、2階建てを新築したほうがよいと決断しました」外回りは整備を始めたばかりなのだそう。「先日、蛇カゴを置いてもらいました。これから草木を植えていこうと思っています」
2019年04月29日大工とインテリアコーディネーター夫妻の家づくり桜が満開となった4月初旬のある日、坂牧さん夫妻が住む町田市の家を訪ねた。坂牧邸が建つのは、緑豊かな市民公園のすぐ隣。目の前が桜並木になっており、窓からはまるで絵画のように美しく切り取られた桜を楽しめる。将平さん・麻世佳さん夫妻は、「毎年特等席でお花見を楽しめるところに惹かれ、この土地を選びました。昨年冬に竣工して初めての春を迎えたのですが、想像以上の眺めですね」と、声を揃える。将平さんのお仕事は大工。お父さま・お兄さまと共に、坂牧工務店で家づくりを行っている。麻世佳さんはインテリアコーディネーターで、建築事務所で働いていた経歴を持ち、現在は坂牧工務店で空間デザインなどを担当している。そろって家づくりのプロである2人。「結婚してからずっと、自分たちらしい家を自らの手で建てたいと考えていました」と話す。そんなお2人が設計を依頼したのは、IYs inc.(イノウエヨシムラスタジオ株式会社)の井上亮さんと吉村明さん。以前から、「設計:IYs inc. /施工:坂牧工務店」というタッグを組んで家づくりをしており、遊び心や高いデザイン性を備えたプランに一目置いていたという。玄関を入ると、天井高3.4mの開放的なLDKが広がる。チークの大黒柱は、将平さんが材木屋で目利きして選んだもの。天井にはストライプ柄が特徴的なLVL材を張った。リビングスペースはタイル貼り。土間やインナーテラスのような雰囲気で、外との繋がりを感じられる。壁一面の本棚は将平さんが2日がかりで組み上げ、ご夫婦で夜な夜な塗料を塗って仕上げたそう。開放感とこもり感の共存これまで数多くの家を見てきたからこそ、「普通の家にはしたくない」「自分の家だからこそできることをしたい」という想いがあった坂牧さん夫妻。「ジャングルジムのようにワクワクできる家にしたい」「壁一面の本棚が欲しい」「外との繋がりを感じて過ごしたい」という希望を、IYs inc.のお2人に伝えたという。それを受けた井上さんと吉村さんは、プランをじっくり考案。1階をワンフロアのLDKとし、桜が見える窓のある壁面に、壁一面の本棚を組み合わせることにした。また、フロアや個室をはっきり区切らない繋がりのあるつくりとし、家中どこにいても視線がすっと抜ける心地よさを生み出した。井上さんと吉村さんが最後まで悩んだのは、吹き抜けの有無だった。麻世佳さんは「開放的に吹き抜けをつくりたい」、将平さんは「こもり感が欲しい」と言っていて、希望が相反していたのだ。また、敷地面積的に、吹き抜けをつくると床面積が限られてしまうのも問題だった。「お2人の希望をなんとか叶える案はないものかと考え抜きました。そして最後の最後に閃いたのが、1階は天井を上げて開放的に、2階はその分天井高を抑えてこもり感を、というシンプルな解決法でした」(井上さん)。1階から階段を登った先が、踊り場のような書斎スペース。右上のグレーの部分は将平さんの趣味室で、リビングに向いた小窓がついている。床と階段側面の材はオーク。書斎スペースの先が将平さんの趣味室、右に上がった先が寝室。家全体に視線が抜けるのが心地よい。夫妻の書斎スペース。「とにかく使いやすいように、棚のサイズや高さにはかなりこだわりました」と麻世佳さん。一生懸命になりすぎて家を建て始めたのは昨年の夏。施工は将平さんがほぼ一人で行い、内装はご夫婦で協力して仕上げたという。しかしその作業には、夫婦喧嘩がつきものだった。「うちの奥さんは凝り性で、デザイン性や暮らしやすさをとことん追求するんです。でもその要求は、大工の僕からするとすごーく難しかったり、前例がなかったり……。『こんなにギリギリじゃできないよ!』、『いや、ここは妥協したくない!』って、四六時中やりあってましたね」と話す将平さんに、麻世佳さんも「2人とも一生懸命になりすぎてムキになってしまって……。造りかけの棚を『もういい!』って破壊したこともあったよね」と笑う。特に大変だったのが、造作のキッチンと書斎。ミリ単位で完璧を求める麻世佳さんの理想を叶えようと将平さんが奮闘し、かなりの時間と手間をかけて満足のいくものをつくりあげた。「作業中は終わりが見えなくて『これは悪夢だ』って思っていたけれど(笑)、今思えば奥さんの希望を叶えてあげられて良かったなと思いますね」(将平さん)。将平さんの趣味屋。麻世佳さんがデザインした美術品のような壁面飾り棚に、プラモデルが並ぶ。この部屋からも桜が見える。書斎のカウンター板とアイアンの手すりの見事なおさまり。壁面飾り棚に使っているのは、柱用の木の端材。あえて無垢材と集成材を組み合わせ、多彩な表情に仕上げた。天井高を抑えた2階の寝室。扉はつけず、ひとつながりの空間に組み込んだ。寝室の窓からも桜。階を上がるごとに、さまざまな角度からの桜を楽しめる。オリジナルの造作キッチン。「カウンター下の扉や照明を濃い色にして、空間をほどよく引き締めました」と麻世佳さん。「苦労しただけあって、見事な仕上がりなんですよ」と自画自賛の将平さん。「前のアパートはキッチンが独立していて寂しかったけど、今はとても楽しい場所になりました」と麻世佳さん。真っ白いサブウェイタイルに、キッチンツールがきれいに並ぶ。大好きな住まい麻世佳さんのデザインへのこだわりと、将平さんの大工の腕があわさって完成した坂牧邸。IYs inc.のお2人も、「この空間には、時間を手間を惜しまず、お施主さん自らが愛情を込めてつくりあげたからこその心地よさがありますよね」「空間コーディネートも造作の家具も本当に見事で、お二人の腕の良さが体現されています」と感心しきりだった。坂牧さん夫妻がこの家で暮らし始めて約4カ月。「空間が全て繋がっているから、贅沢でゆったりした気持ちになります」「夫婦で喧嘩しながらも一生懸命つくったから、どこを見ても『やっぱりいいなあ』と思うんですよ」。お2人の話を聞いていると、家への愛着がひしひしと伝わってくる。情熱と経験を注ぎ込み、自分たちらしい家を完成させた坂牧さん夫妻。窓の外の桜も、そんなお2人を祝福しているかのようだった。IYs inc.のお2人が熟考したのは窓の配置。高さやサイズをランダムにして空間にリズムを与え、朝・昼・夕と違う光の入り具合を楽しめるようにした。「本棚の本は徐々に増やし、最終的にはギッシリにしたいです」と麻世佳さん。坂牧邸外観。「斜線制限に沿った斜めの屋根の形を生かすプランを考えました」と吉村さん。左から、IYs inc.の吉村さん・井上さん、坂牧さん夫妻、将平さんのお兄さんで時々施工を手伝っていた佳典さん(坂牧工務店代表)。「目の前の桜や公園が、室内と一体になったような感覚なんです」と坂牧さん夫妻。坂牧邸設計IYs inc.(イノウエヨシムラスタジオ株式会社)施工株式会社坂牧工務店所在地東京都町田市構造木造規模地上2階建延床面積106.81㎡(1階53.82㎡/2階52.99㎡)
2019年04月24日実家は築90年超線路沿いの道から敷地に入ってその先の階段を10段ほど上がると、そこには一瞬言葉を失うほどの風景が現れる。なだらかな傾斜地に見事な具合に草木が配置され、その背後には登録有形文化財「旧坂井家住宅」の和館と洋館が控えているのだ。和館は昭和2年に建てられたというから築90年以上。かつて別荘地として整備された土地は今もその趣を十分に残している。H邸はその南側に隣接した敷地に立つが、実はこの旧坂井家の家屋と土地は以前は奥さんの実家が所有し相続に際して寄付をしたものだ。階段をのぼるとこの風景が目の前に広がる。元は別荘地として整備された敷地は草木の配置も素晴らしく目を楽しませてくれる。左上に見えるのがH邸の玄関庇。土地と建物を寄付「父が10年ほど前に倒れて、世話をしながら維持管理をすることになったんですが、これがとにかく大変で、相続しても自分ではとてもできないのではないかと。それで父とも話をして公のところにお願いしようという話になって鎌倉の風致保存会に建物と土地を寄付することになりました」お父様が亡くなられてお母様の世話をされたときに当時住んでいた土地と行ったり来たりの生活になったが、その頃に家を建ててこの地に暮らすという話が持ち上がったのだという。夫のHさんはそれまで20年近く住んだ土地に骨を埋めるつもりだった。しかし「幸い土地もあったので建てようかという話が突然出てきたんです。環境もいいし、終の住処をつくって鎌倉で終わるのもいいなということでこちらに移ることになりました」と話す。駅から道すがら見てきた風景とは一変して目を癒してくれるが、一方で維持管理にはとても手間がかかり、個人では手に負えないことから建物と土地を寄付することに。和館の2階からH邸を見る。H邸の外観デザインはその前に広がる風景との関係を重視してスタディが重ねられた。終の棲家をつくる奥さんにはその終の住処は「鎌倉という土地に調和し、かつ前のお家とも調和するような家であってほしい」という思いがあった。「別荘地として立った風情にあまりにもアンマッチなものを建ててはいけないだろうなと。そうしたことを考えたら、色合いも形も決まってくるのかなという感じでしたね」設計を依頼したのはナフ・アーキテクト&デザインの中佐さん。奥さんの従兄の息子さんである中佐さんは、夏休みなどにこの地を何度か訪れたことがあるという。終の住処ということからバリアフリーであること、そして、面積は以前の家と同じくらいで100㎡くらいというイメージを夫妻は持っていた。依頼を受けた中佐さんは「以前の暮らしぶりをあまり変えることなく自然に継承できるような方向で考えて、間取り的には6畳と8畳の組み合わせでいこうと。それに打ち合わせを重ねる中で要望をうかがいながらまとめたものを提案させていただいた」と話す。敷石がわりのコンクリートのPC板がH邸の玄関まで導く。北側から玄関付近を見る。玄関の左手に階段がある。外壁の素材はメンテのしやすさも考慮して決められた。西側の斜面の上から見る。手前の紫の花はショカッサイ。奥さんは家の周囲に自然に広がって咲く様を見てとても癒されるという。北側は旧坂井家を訪れる人がいるため、プライベートな庭は南側に設けた。外壁はグレーから途中でベージュに色を切り替えている。フレキシビリティを仕込む中佐さんからの提案のひとつは建物にフレキシビリティをもたせることだった。夫妻は「いずれ子どもたちに別荘にしてもらってもいいし、住めるのだったら住んでもらってもいい」という考えだった。そこでお子さんたちの好きなようにできるようにと間取りと面積が変えられるようにした。間取り的には現在部屋を仕切っている壁は取ることができるし、また逆に壁をつくって新たに空間を仕切ることもできるように。そしていま吹き抜けている部分に2階をつくることで面積を増やすこともできるようにしたのだ。このような仕組みを支えているのは特徴的な形をした構造システムである。柱と梁の間に斜めの材(方杖)を使っているのだが、通常であれば耐力壁を入れて空間を仕切らないといけない箇所にこれをダブルで設置しさらにその間に板を渡すことで耐力壁と同様の働きをしてもらうというものだ。「天井が高くて生活に対する圧迫感はまったくないし、また、南側もクリアに見えて向こうの空間が共有できているのですごく開放感がある」。このように夫妻は空間的な広がりの気持ちの良さを指摘するが、これも中佐さんからの提案から生まれたもの。「立体的な多様性があったほうがいいだろう」と考えた断面のデザインによって、南側の部屋であっても立てば北側につくったハイサイドから旧坂井家の庭へと視線が気持ちよく抜けていく。吹き抜けになっている部分に床を張り2階を増築することも可能。現在は2階へ上がることができないが、最近、お子さんの家族が泊まりがけで来たがることから階段をつくることを考えているという。高窓からは旧坂井家の家が見える。建物奥から玄関方向を見る。玄関を入ってすぐのスペースは廊下兼納戸。右に仕切られた部屋が並ぶ。新たな挑戦新しい家で生活を始めて1年と5カ月。Hさんはこの家が気に入っているし「こうした機会にこのような環境のいいところに住めて非常に幸運」だと思っているという。さらに「鎌倉に恩返しというか、なにかできたらいいなと思ってます」とも。そのHさんが目下「意欲的に取り組んでいる」というのが鎌倉の歴史。散歩好きでよく出かけるというHさんが、途中で出会った観光客に「鎌倉に点在するお寺の歴史などを紹介するようなことができればはげみにもなるんじゃないかな」と話す。築90年を超える家とも調和するように考えられながらもどこか清々しさの漂うH邸。そういった雰囲気も、Hさんのこの新たな挑戦を後押ししているのだろう、そんな印象を持った。夫妻ともに理系出身のため、中佐さんは構造や全体の構成が把握できるつくりにすることを意識したという。各部屋の柱の上の戸に棒状の取っ手が付けられていて開閉ができるようになっているが、これは北側の高窓と南側の窓との間で換気を行うためのもの。柱から続く斜めの部分が方杖。これを奥に見えるものとダブルとしかつ梁の間に板を渡すことで耐力壁のかわりとしている。以前、橋脚の仕事をされていた奥さんはこの柱梁の形が橋脚に似ていて気に入っているという。右上の棒は換気のための取っ手。玄関からダイニングを見る。中央に見える天井部分もその両脇の柱梁とともに構造の役割を果たしている。寝室からもショカッサイのきれいな紫色の花を楽しむことができる。西側の斜面に咲くショカッサイの花を眺めるH夫妻。H邸設計中佐昭夫/ナフ・アーキテクト&デザイン所在地神奈川県鎌倉市構造木造規模地上1階延床面積102.12㎡
2019年04月22日特徴的な外観世田谷区南部の多摩川寄りの斜面に立つK邸。傾斜した道路から見上げるその外観は2階が迫り出して左右のつくりも対照的と、特徴的なものだ。周囲の家並みから際立つその姿はKさんのリクエストに応えたものであった。「僕からのリクエストで大きかったのはガレージをつくることと、あとは家を建てるのに借金をしますから“このために頑張ろう”と思えるような、他とはちょっと違った雰囲気のものにしてくださいと」予算的なこともあり建築家の岸本さんから出された1案目はおとなしめのものだったが、現状のデザインに近い2案目を模型で見たときは「パッと見で、“うわっ、カッコいいじゃないですか”と声を上げた」という。斜面に立つK邸。道路へと迫り出した2階部分が左右で素材とデザインが対照的なのがとても印象的だ。左のリビングは道路側から見ても左の部分。20cm近く周りより下げることで”領域”が生まれている。天井に木(レッドシダー)を張ったのはKさんの希望から。晴れていると左手に富士山が見える。開口前の20cmほど上がった部分は座るのにもちょうどいい高さ。これは開口上部の鴨居とともに、開口部のプロポーションを整えるためのものでもあった。鴨居上部には間接照明が仕込まれている。開放的なつくりと閉じたつくり道路から見て左側は長手方向にガラス面を大きく取った非常に開放的な空間。対して右側は隣家からの視線があるため壁でほぼ閉じたつくりだ。空間のつくり方も柱梁で木を多用した空間に対して、白い壁と天井に囲まれた空間と対照的。西側に向けて開放的なつくりにして眼前に広がる眺望を満喫できるようにすることは、敷地が決まった段階で当然のように設計条件に組み込まれた。幅1.8mのガラス窓が横一列に並んだ開口からは天気のいい日には富士山を望むこともできる。2階が迫り出して一部中に浮いたようなつくりになった理由はこうだ。「西の眺望に気持ちよく開けるようにするために長手方向の長さを延ばすというのは必然でした。ですが、1階はそこまでのボリュームは必要ではなかったし、道路に対して1階から全部がドーンと威圧的に立ちはだかるようなつくりは避けたかったんです」(岸本さん)。つまり2階を出したのではなく1階をひっこめたのである。リビングから和室の方向を見る。奥の和室まで開口部はすべて障子で閉じることができる。道路側に少し迫り出した和室部分。開口が大きいため浮遊感も感じられる。ごろっと寝転がることができる空間がほしいとのKさんの要望からつくられた。障子で仕切るとぐっと落ち着いた空間になる。2世帯共存のためのつくり空間を左右にわけるように家の中央には吹き抜けがありトップライトからの光が1階まで落ちるが、この吹き抜けは下階へと光をもたらすためだけのものではない。Kさんのご両親とともに2世帯が暮らすこの家で、空間的には離れながらもお互いの気配を感じることができるのだ。2世帯が共存して暮らすときにご両親が玄関からそのままそれぞれの個室に向かえるつくりではうまくいかないのではと考えた岸本さんは、玄関入ってすぐの吹き抜けのある場所に2世帯共有の廊下をつくった。廊下に関しては「その右手側にご両親のお部屋があって左手に畳、突き当たったところに浴室などの水回り、その途中に階段を設けました。そして、この廊下にタイルを敷いて外部の路地のように扱いそこに上からスーッと光が落ちるようにするといいのではないかと考えた」という。リビングからキッチン方向を見る。2つの空間の間に吹き抜けがあり、トップライトから1階まで光が落ちる。リビング、和室とは対照的に壁に囲まれた空間。壁には珪藻土が塗られている。リビングと80cmのレベル差がある。キッチンからも外の景色を眺めることができる。奥さんの要望でパントリーは余裕のある広さにつくられた。“いちばん”がないこの家に越してきてから1年と2カ月ほど。Kさんは「この家にはひとつも文句がない」という。さらに「どこがいいかと聞かれても、ひとつというのは選べないですね。ダイニングに座っていてもいいしリビングに座っててもいい。2階の和室で寝ててもいいし、下の和室にいてもいい。バルコニーで遊んでいてもいいし。そういう一個一個の場所が満たされているんです。ぜんぶの場所が活用されていて、“ここはいらなかったね”みたいなところがひとつもない」とも。奥さんも同様に「すべてが良すぎて、“ここがいちばん”という場所がない」という。ダイニングのところから西側の景色を眺めることが多いという奥さんは、「雲も空の色も毎日こんなに違うものなのか」とはじめて気づいたという。さらに、「家族でよくハワイに行くんですが、前回はいつもの感動がなかったんです。ダイヤモンドヘッドの景色を見ていつも感激するんですが、“これはいつも見ているのと変わらない”と思った」という。奥さんは自宅にいながら“いちばん”の眺望を手に入れた、そう思っているのではないだろうか。岸本さんは「左右の空間をわけるのにトップライトからの光を使う」という意図もあったという。座ることもできる幅広の階段。右側は犬用に敷かれたもの。玄関から少し進むと右手にこの空間が現れる。右にご両親の部屋が並ぶ。外部的空間とするため床にタイルを敷いた。1階から見上げる。右の奥に玄関がある。ご両親の個室の前につくられた畳のスペース。濃紺の壁は2階までつながり空間の連続性を感じさせる。岸本さんによると「濃紺はいろんなものを吸収してすーっとその背後にイメージを抜かすことができる色」だという。畳に寝転がって空を見上げると知らぬ間に時間が経っていきそうだ。元の地形に沿って傾斜するつくりにした。1階西側につくられたウッドデッキのテラス。「多摩川の花火大会ではこの場所が”特等席”になる。夏にはまた大きなプールを広げて、お子さんの友だちも呼んで水遊びの場となるという。左が玄関。右にライト設計の照明。Kさんは帰宅時にこの照明が点いていると「帰って来たという気がしてホッとする」という。用途を限定していない多目的空間。「ここで靴をはいてもいいし、人が来た時に靴のまま上がって座ってもらってもいい」黒い木戸の左部分がガレージ。傾斜した道路から入るときに車が擦らないようにするのに設計では苦労したという。K邸設計acaa所在地東京都世田谷区構造RC造+S造+木造規模地上2階地下1階延床面積191.91㎡
2019年04月15日3人兄弟が育つ家1歳から小学生まで、3人の男の子がいるAさん夫妻。以前はマンション住まいをしていたが、元気いっぱいの兄弟が伸び伸び過ごせるようにと考え、横浜市内の眺めの良い高台に家を建てた。設計をお願いしたのは、IYs inc.(イノウエヨシムラスタジオ株式会社)の井上亮と吉村明さん。土地を購入した不動産屋さんの紹介で知り、スタイリッシュでありながら温かみもあるデザインに惹かれたという。「お二人は気さくで話しやすくて、打ち合わせがとにかく丁寧なんです。最初に間取りを決めるときは、私たちの希望を聞きながら、30パターン以上も提案をしてくださいました」と振り返る奥さま。取材に同席してくださった井上さんは、「じっくりお話してたくさんの選択肢をご提示することは、『あっ私たちはこんな家に住みたいんだ。こういうものが好きだったんだ』と気づいていただくために、大切な工程なのです」と話す。Aさん邸外観。ブルーグレーの壁が爽やかな印象。木製のフェンスの中は、広々としたテラスになっている。ゆったりと広さをとった玄関。手前の扉はキッチン脇のパントリーにつながり、奥の扉の中は土足で入れるシューズクロークになっている。ほどほどに繋がる「前に住んでいたマンションは、広いリビングダイニングがドーンと広がっていて、開放感はあるけれど、いまいち落ち着けなかったんです。そこで、こっちで大人がお茶をしてあっちで子どもたちが遊ぶという風に、空間を分けつつ、ほどよい繋がりもある家にしたいと思いました」と振り返る奥さま。その希望を受けた井上さんは、リビングスペースとダイニングスペースを斜めに配置。いわばひょうたん型のくびれの部分でリビングとダイニングがつながるプランを考案し、リビングの上は吹き抜けとした。「視線が斜めに抜けつつ空間は分かれているところをとても気に入っていて、楽しいリズムがある家だなあと感じています」(奥さま)。また井上さんは、窓の大きさや形、並べ方にもあえてランダムさを持たせた。特に印象的なのは、吹き抜けと2階主寝室をつなぐ大きな室内窓。空間は分けつつも、どちらにいてもスッと視線が抜けるのが心地よい。「まるで森の中にいるように、いろいろな眺めがあって、明るいところも暗いところもある。家族団らんの時間も自分の時間も満喫できる。そんな“場所のグラデーション”を追求しました」(井上さん)。手前の吹き抜けリビングと奥のダイニングスペースが、斜めにゆるやかにつながる。ダイニングスペースからリビングスペースを見る。奥の白い扉は、ウォークスルー・クローゼットにつながる。吹き抜けに面してつくった主寝室の窓。主寝室。吹き抜けに向いた窓があることで、開放的でユニークな空間に。主寝室の窓からは2階フリースペースの様子も見える。毎日の家事を快適に今は育休中だが、ほどなく仕事に復帰する予定だという奥さま。3人兄弟の食事づくりや洗濯は、ますます忙しくなるだろう。「快適に家事ができる家に」というのは、切実な願いだった。そこで打ち合わせでは、家事の効率もじっくりと追求。玄関パントリーキッチンと抜けられる動線を確保し、食材をしまったりゴミ出しをする作業をスムーズに行えるようにした。また、「洗濯物を毎日2階のそれぞれの部屋にしまうのは大変」という奥さまの声を受け、1階に家族全員の衣類をしまえるウォークスルー・クローゼットを確保。そして、洗濯乾燥機を置いた脱衣室、洗面室、ウォークスルー・クローゼットを一列に配した。奥さまも、「洗濯物を乾燥機から出して片付けるまでの流れと、朝の身支度が驚くほど楽になりました」と頷く。キッチンは「GRAFTEKT」。「とても使いやすいし、絶妙な色味が気に入っています」と奥さま。右の奥がパントリーになっていて、玄関につながっている。玄関からパントリーを通してダイニングを見る。洗面台は2つ並びにして、5人家族の朝の身支度をサポート。ウォークスルー・クローゼットの中から、洗面室、脱衣室を見る。家族全員の衣類をしまえる大容量のウォークスルー・クローゼット。突き当たりを右に抜けると、リビングに出られる。木の積層を見せた天井デザイン面では、「シンプルな北欧風テイストに」という奥さまの希望を受け、グレーと白をメインカラーに。そこに無垢の木の床を合わせ、温かみもプラスした。また、木のラインがきれいな天井は、「LVL材」を張って仕上げたもの。LVL材とは薄い板を何枚も貼り合わせた構造材で、「積層面のストライプの表情が面白い」と考えた井上さんが内装材として使うようになったという。「内装に取り入れるのはまだめずらしいようです。Aさん邸の施工では大工さんが『本当にこれ貼るの?やり直しになったら嫌だよ』と言っていたのですが、完成したら『何これ。すごいきれいじゃん!』って驚いていました(笑)」。Aさん一家がこの家に住み始めて数ヶ月。奥さまは「かっこよさも使い勝手も兼ね備えていて、大満足です」と微笑む。この家はこれからの3兄弟の成長を見守り、にぎやかで楽しい日々を支えていくのだろう。2階の廊下。LVL材の天井とグレーの壁紙がよくマッチしている。2階の床はバーチ材にして、1階とは少し表情を変えた。LVL材天井の表情。軒天井もLVL材。ダイニング奥の壁にもLVL材を貼った。「釘やピンが刺せるので、ご家族の写真やお子さんの絵を自由に飾っていただけます」(井上さん)。2階フリースペース。将来は区切って個室にすることもできる。長男と次男はピアノを弾くのが大好きだそう。吹き抜けからリビングを見下ろす。1階の床は幅19cmの無垢のオーク材で、足に心地よい。Aさん邸設計IYs inc.(イノウエヨシムラスタジオ株式会社)施工坂牧工務店所在地神奈川県横浜市構造木造規模地上2階建延床面積137.45㎡(1階74.52㎡/2階62.93㎡)
2019年04月08日白い箱をデコレーション生まれ育った都心にある家を、3年程前に建て替えたWAKOさん。「どうしたら楽しく過ごせるかということをいちばんに考えて、希望を設計士さんに伝えました」。こだわったのは生活動線を考えた間取りと、床のタイルに壁の素材。細かなところは余白を残し、瀟洒な白い箱が完成した。「初めはキッチンやバスルームなど、必要なもの以外何もない空間でした。暮らしながら2年くらいかけて完成してきた感じです」。必要な棚やディスプレイスペースなどは、実際に住んでみながら、欲しいものを設置してひとつずつクリア。シアトル、中国、ボリビアなど、世界各地に暮らした経験が育んだ感性が白い箱を彩っていった。大きな開口を開け放てば、リビングとテラスが一体に。南側から明るい日差しが室内まで入り込む。リビングの床には適度なムラと質感のあるタイルをセレクトした。大きなバスケットを愛用するWAKOさん。食材をたっぷり入れ、カゴごとキッチンに移動して調理に取りかかる。動線を考えて快適に「快適な暮らしを考えたとき、私の場合まず自分の生活まわりを完結させたいと思いました。そこで1階に自分のベッドルームとバスルーム、2階に子供たちの部屋とバスルームをそれぞれ設けました」。家族共用の玄関と接続する形で、WAKOさん専用の玄関もベッドルームに設け、クローゼットで身支度を整えたらそのまま外出できるスタイルに。クローゼットも両サイドから出入りできるなど、動きやすさを確保している。「自分の生活まわりを一体化させることで、ストレスが減りましたね(笑)。子供たちもお掃除など、自分のことは自分でする習慣を身につけてくれています」アメリカ製のクイーンサイズのベッドは、毎朝ベッドメイクを欠かさない。「そうすることで心地よくいられるんです。毎日の習慣にしてしまえばそんなに苦にも感じません。使ったら必ず片付けることを心がけているので、逆にお掃除も楽ですよ」。ベッドヘッドの向こうにクローゼット、水まわりを配置し、ホテルのように動線をつなげた寝室。「ここは夢みる感じにしておきたいと思いました。1日の中で長い時間を過ごす場所なので、ベッドやリネンにはお金をかけていいと思うんです」。建築当初はなにもなかったクローゼット。使いたい収納ボックスや衣類の収まりを考えて、後から棚を作っていった。クローゼットの片方の入り口には仕切りを設けて、部屋側から中が見えないように。仕切りの裏側にも棚を取り付けて収納に活用している。古い木製の台にシンクを取り付けて洗面に。扉などは後から設けた。ベルギーの照明などをアレンジしたコーディネートが見事。ベッドルームに接続してバスルーム、そしてお風呂上がりに涼むことができる小さなテラスも。ガラスのキャビネットには気分で選べるようバスソルトを数種類スタンバイしている。家の中に景色をつくる「20代前半はアメリカで暮らし、日常生活にキャンドルを欠かさないことなど、生活を楽しむことを知りました」。というWAKOさんが望んだのは、テラスでゆったり時間を過ごすこと。「プロバンスの静かな時間の流れ方が好きなんです。緑に囲まれたテラスを設けることも、当初からの希望でした」。大きなガラスの引き戸は壁面にすべて内蔵することができ、開け放てばリビングとテラスが一体に。オリーブやユーカリの緑、ミモザの黄色が鮮やかに目に飛び込んでくる。「あちこち旅をしてきて、最近は旅先では暮らすように過ごしたい、でも家の中では旅をするように暮らしたい、と思うようになりました。どこを見てもいいなと思えるように、家の中に景色をつくっておきたいですね」。海外から輸入した家具や、旅先で見つけた雑貨、小物などでコーディネートされた室内は、洋雑誌の世界のよう。「30代になったとき、やっぱり私が好きなのはヨーロッパだなと気づいたんです。白、ベージュ、グレーをテーマカラーにまとめるのが落ち着きますね」。ミモザの花が美しく咲き乱れるテラスでは、ブランチやアペリティフを楽しむ。インドネシアから輸入したベンチ、バリで購入した雑貨など、年代を感じさせるものでコーディネート。テラス前のリビング。奥のソファーは空間のサイズに合わせてオーダーしたもの。アウトドア用のファブリックで、ワインなどをこぼしても汚れが残らないそう。大きな鏡をしつらえた玄関。暗くなりがちな場所なので、ドアにはガラスを用いて光の通り道を確保した。脇にはWAKOさん専用のドアもある。エイジング加工されたキャビネットは、ノブをWAKOさんが付け替えた。手間をかけることも忘れない。キャンドルと花、植物のコーディネートを欠かさない。「1輪差しをアレンジするのが気に入っています」。キッチンを中心に家族が集うテラスで育てたローズマリーを料理に使ったり、ミントでゼリーを作ったり。料理することと食べることが大好きで、いちばん長く時間を過ごすキッチンは、特にこだわった場所。「家の中心なのでオープンにしておきたいと思いました。広いスペースを確保したので、シンクは2カ所つけましたが、1カ所は食器洗い、もう1カ所は野菜洗いにと使い分けられて便利です」。家族との食事も、ビュッフェ式のパーティーのときも、カウンターキッチンが役立つそう。「作りながら食べるのでカウンターは重宝しています。外食はほとんどせず、家でちゃんとテーブルセッティングをしていただくのが、子供たちも好きですね」。仕事をしながら3人のお子さんを育てるWAKOさん。夕方16時頃から調理にかかり、手の空いた時間にテラスでワインなどを飲みながら、お子さんたちの帰りを待つ時間がいちばん好きなのだとか。「どこかに行っても、やっぱりうちがいちばんいいな、と思いますね。好きな風景に囲まれて、どこよりも居心地がいいんです」。アメリカのメーカーのキッチンを採用。収納力に余裕があるので吊り戸棚はつけず、ディスプレイを楽しんでいる。大きなカウンターテーブルは料理をしながらサーブができて便利。シンクのひとつは窓際に。庭の緑を眺めながら洗いものができる。奥はパントリーと仕事用のストックルーム。ワインラックは塗装とエイジング加工を施した。お子さんと料理をしたり、家で過ごす時間を大切に考えるWAKOさん。セレクトショップKOKOROの元オーナーで、現在はライフスタイルプロデューサー。wakoinc.jpではお花の毎月便やブログをアップ。インスタグラムは@wako_world
2019年04月01日3月末、オルネ ド フォイユが青山から目黒駅よりほど近い不動前の住宅街に移転オープンした。新しいオルネ ド フォイユは、店主、谷あきらさんの「パリでの暮らしで得た感覚」を軸に、エレガンスというフィルターを意識してセレクト。また、「お店」という固定概念を取り払い、もっと自由に、実験的な場所としてスタートした。お部屋づくりのアイディアやひらめきがきっと見つかるはず。もっと自由に、実験的に。スタイリスト石井佳苗さんが手がけた、パリジェンヌのアトリエ。スタイリングの一角に置かれたデンマークのフラワーベース。ムーニーともみさんの絵皿と吉田麻衣子さんの花器。フラワーアーティストの平井かずみさんによる店内装花。もっと自由に、実験的に、テーマに合わせてまるごと店内の雰囲気を変えていく、というコンセプトのもと、新しくスタートしたオル ネ ドフォイユ。初回のイメージは、パリジェンヌのアトリエ。スタイリングとともに並べられたフラワーベースや照明、器などは、イメージもしやすく、ディスプレイや植物の取り入れ方は、実際の部屋づくりの参考に。商品を陳列して販売するという、今までのスタイルではなく、商品とともにアイデアも提供してくれる。モロッコフェア異国情緒を感じる水草のモロッコランプ。モロッコラグは、アートとして飾っても。ヴィンテージから一点モノの手織りまで、センスのいいものだけ厳選されたモロッコラグが充実。オープンと同時に、モロッコフェアを開催。個性的な水草のランプシェードや、オブジェ、色とりどりのモロッコラグやポットなど、現地でセレクトされたアイテムが並ぶ。モロッコラグは、さまざまな民族の伝統柄や、従来のエスニックのイメージにとらわれない新鮮な色使いなど、オルネ ド フォイユにしかないラグが集結。モダンなインテリアに、センスよくプリミティブな要素を取り入れたボーホースタイルを楽しんでみては?部屋づくりの決め手は照明フランス、FORESTIER(フォレスティア)のユニークな照明。フランスの工房、Datcha.(ダッチャ)の吹きガラスによるランプ。モダンなフォルムとメタリックな質感が美しいデンマークのペンダントランプ。アスティエ・ド・ヴィラットの陶器のランプシェード。ノスタルジックな雰囲気が魅力。インダストリアルなランプシェードをブラスで仕上げることで、モダンでクラシカルな印象に店主の審美眼により集められた照明にも注目。デザイナーのバーナード・フォレスによりフランスで設立された照明ブランド、フォレスティアは、オブジェのようなフォルムが一際目を引く、存在感のあるランプ。二人のフランス人アーティストにより設立されたダッチャのガラスランプは、手吹きガラスならではの味わいと、美しい色合いが魅力。ブラスやブラックのデンマークのランプは、シンプルでモダンな印象。品よくインテリアのアクセントになってくれる。デンマークのデザインスタジオ「FRAMA」フラマの美しい照明とシェルフ。デンマークで注目されている気鋭のデザインスタジオ、FRAMA ( フラマ ) は、日本での取扱いはオルネ ド フォイユのみ。オーク材とステンレスのウォールシェルフは、素材を活かしたミニマルな構造が美しい。リビングの飾棚やキッチンの食器棚など、見せる収納で使いたい。気鋭のデザインデュオINCLUDED MIDDLEによるペンダントランプは、スワンネックと名付けられた真鍮製のポールが特徴。日本の作家、パリの陶器、ジュートのタッセルLue ( ルー ) のカトラリー、櫻井薫さんの器、MISHIM POTTERY CREATION ( ミシンポタリークリエイション ) のマグカップ。アスティエ・ド・ヴィラットの白い陶器。センスのいいシンプルなタッセル。オルネ ド フォイユのいまの気分に合うクラフトを厳選。岡山の真鍮作家によるブランド、ルーの繊細なカトラリーや、益子の陶芸作家、櫻井薫さんの灰釉の器、ミシンポタリークリエイションの美しいかいらぎのマグカップなど、その時々のバイヤーの個人的な興味や視線を率直に反映されたセレクト。アスティエ・ド・ヴィラットは、テーブルウエアだけでなく、キャンドルホルダーや香炉、花器なども充実。フランス製の美しいカーテンタッセルにも注目。ジュートのロープの両端にボールがついただけのシンプルなデザインで、中にワイヤーが通してあるので、自在に形を変えて、保つことができる。インテリアの細部までこだわることができるアイテムが見つかるのも嬉しい。訪れるたびに新しい発見!モロッコフェア中のファサード。テーマにより、ガラッと変わる可能性もあり、訪れるたびに新しい発見ができそう!エントランスのピロティは、気持ちの良い風が通る心地よい空間。Informationオルネ ド フォイユ03-6876-7832東京都品川区西五反田5-21-19Open 11:00- 19:00 ( 金土のみ )
2019年03月29日1階は居心地のいいカフェに改装町田の住宅地に建つ築約50年の古民家は、見附春佳さんの祖母の持家だったのだそう。「もともと美容院として建てられた家だったそうです。その家を祖母が購入したのですが、祖母が亡くなった後は父が管理を任されていました。彫刻家の親戚が作品の保管場所として使っていたのですが、やはり人が住まないともったいないということになり、私が住むことになりました」見附さんがこの家に住むに当たり、『無相創』 にリノベーションを依頼した。「世界観が大好きで、『無相創』にはずっと通っていました。今回、自分の家をまるごとお願いすることができてとても幸せです」1階を念願のブックカフェ『403.notfound』に、2階を住居にリノベーションした。リノベーションにあたり、1階は見附さんが作りたかったブックカフェにした。カフェスペースと調理場は、古い電車の窓のような、持ち上げて開くスタイルに。金色の金物も美しい。2階をプライベートな空間に2階がプライベートな空間。階段を上がり、手前にリビングとベッドの空間、奥がダイニングキッチン、窓の外には広いテラスが続く。「親戚が使っていた家具は手放すことも考えたのですが、いい感じに収まったので有り難く使わせていただいています。『無相創』さんがラックを作ってくださり、また照明器具もつけてくださいました」リノベーションにあたり、外断熱にしてペアガラスも導入。「驚くほど暖かく、快適な住まいになりました!」2階がプライベートスペース。左官の下地材で仕上げにした壁がいい雰囲気を作っている。「ガラスの見本を見せていただいて、その中からこのストライプのものを選びました」チェストの後ろをベッドスペースとしている。「光が天井に当たるハーフミラー電球は、明るすぎないのでベッドの上の照明としては最適でした」窓には遮光のロールスクリーンを採用。奥の部屋がダイニング。「その先のベランダは父母がDIYで板を張りベンチを作って、居心地よくしてくれました」トレイにまとめたお茶のセット。「このランプシェードは母のハンドメイドです」隅々まで丁寧に作り込んだ家1階のお店部分は、古材やアンティークを使用。照明器具はすべて『無相創』のオリジナル。壁は珪藻土、電気の配線には銅管を使っている。隅々まで心を配り丁寧に仕上げることで、居心地のいいセンス溢れる空間に仕上がっている。ブックカフェをオープンさせる前は、ソムリエの仕事をしていたという見附さん。『403.notfound』では、美味しい焼菓子とコーヒー、そして自然派のワインをいただける。「ワインバーは敷居の高いお店が多いので、ひとりでふらりとワインを飲める場所を作りました。ぜひ気軽に遊びにいらしてください」ひとつひとつ違う椅子。ひとりになれるスペースがお店のそこここに用意されている。いろんな場所に座ってみたくなる。「アンティークスイッチを使いたいとお願いしたら、まさかの1箇所に10個!ひとつひとつ違う表情のスイッチがとても気に入っています」デザインの違う照明はすべて『無相創』のオリジナル。地球儀のモビールが素敵。リノベ前の家の窓の形をそのまま残している。「私もこの家の前を通って通学していました」「親戚が使っていた畳敷きの小上がりにカーペットを敷きました。靴を脱いでリラックスしていただけます」お店の入口のドアは、フランスのアンティーク。見附邸米原政一( 無相創 )所在地東京都町田市構造木造規模地上2階延床面積85.8㎡読みたくなる本がお店のそこここにある。外断熱+ペアガラスに変えてとても暖かく快適な家になったそう。
2019年03月27日家のあり方を決めた2つのリクエスト2世帯の3世代が暮らすT邸は埼玉県東部の住宅地に建つ。敷地は40年以上前に宅地開発された土地で周りにはびっしりと家が建て込んでいる。外観は日本家屋と箱形のボリュームをトリッキーに組み合わせたようなデザインが特徴的だが、敷地の中での配置にも特徴がある。周囲の家が敷地の北側に寄せて南側に庭を取っているのに対して、T邸はほぼその中央に建っているのだ。間取りや使用する素材などに対しては、具体的なリクエストはほとんどしなかったというT夫妻。しかし、長年住み慣れた場所であるがゆえのリクエストがあり、それが結果的に敷地の中での配置の変更とともに家のつくりを決める大きなファクターとなった。南側に大きく取ってあった庭をなくして敷地の中心近くに配置されたT邸。「周囲の家とは違うつくりには見えるが、そんなには違ってもいない」ような印象になるようにシルエットが調整されたという。「隣家のこの部屋は使われている雰囲気がないので大丈夫だけれども、あの窓からはすごく気配を感じるのでどうにかしてほしいなど、周囲の各窓に対する細かいリクエストがありました」と話すのは建築家の田村さん。それぞれの窓に対して家を開いたり閉じたりという対応を行ってコントロールしていった。もうひとつのリクエストは庭に対してのもの。庭は花を植えたりと見映えをよくすることにも大変な手間がかかるが、草むしりの作業も大変だ。「これから年齢を重ねていくうえでも大きな庭は管理できない」ということからスケールダウンすることにした。「視線をコントロールし庭をスケールダウンするために、窓辺を隣の敷地に寄せずに少し引いた場所につくり、間にクッションとして庭を挟み込むというような配置にしました」と田村さん。手前がサンルームで左がAVルーム。一部、屋根の上にまた屋根がつくられたようなつくりになっている。隣家の開口との関係から場所によって外に対して閉じたり開いたりといった操作が行われている。家の際だけは草が生えないように三和土にしてあるが、敷地の際は隣の敷地とうまく交じり合うようにした。真ん中にガランドウをつくる同時並行して内部のつくりも詰められていった。玄関を入って廊下を少し進むと高さが4mの大きな空間に出るが、この空間から各部屋が張り出すように配置されていて、一見して多様な場がつくり出されているのがわかる。田村さんはこのつくりについてこう説明する。「その多様な場所同士が近からず遠からずという関係ができればいいなと。そこでまず中心にガランドウの母屋をつくって、このいわば室内化された中庭に対して、さまざまな生活の要求に応える部屋たちがちょっとずつあふれ出すというイメージですね」ただそのほかの部分とのコントラストをはっきりさせてしまうとこの中庭が取り残されてしまう。そこで、各部屋を少しずつ寸足らずにして機能があふれ出るようにしているのだという。「アクティヴィティがはみ出るというか、空間をまたがらないと活動できないようにしてあります。中庭か部屋かどちらにいるのか少しわからなくなるような感じがあるといいかなと思いました」と田村さん。真ん中のガランドウが孤立しないように、周囲の各室を少し寸足らずにしてアクティヴィティがはみ出るようにしている。AVコーナーのソファもわざとガランドウのほうへとはみ出るようにした。左からダイニング、キッチン。食器棚の右にロフトとその下がバス、トイレなどの水回り、右側の下が主寝室。視線のことだけでなく風の通り具合についても打ち合わせをして、いい風が室内に入るようにも配慮されている。ロフトからガランドウの部分を見る。右のダイニングの隣の奥に玄関がある。正面奥がサンルームで右がAVルーム。2階へはサンルームの上の踊り場で折り返してから上がる。不思議な感覚の空間どの部屋も扉を設けずに室内化された中庭に対して開かれているが、このつくりに対しての反応はさまざまなようだ。娘さんは「どちらかというと囲われたところが好きなので、家族の出す音が聞こえてくる環境にはまだ慣れが必要」と前置きしつつ、「中2の息子との関係を考えると、男の子ですし親に対して閉じたいと思ったときに、部屋自体が完全に閉じられるつくりになっていると関係性が少し難しくなるかなという心配があったんですが、そのあたりはこのつくりで何をしているのかはなんとなく伝わるし、距離感としても近く感じられているのかなと思います」と話す。さらにまた、「わたしの部屋は2階ですが、音は聞こえつつも視線は閉じられているので不思議な感覚がありますね」とも。息子さんのほうは「これまで自分の部屋から声を出して家族に何かを伝えるようなことはなかったのですが、そういうことができるようになったのは前の家からの変化としていちばん大きい」と話す。左が主寝室の上のテラス。AVルームの上がお孫さんの部屋。2階への階段途中から見下ろす。2階から踊り場を見る。階段途中の右側にお孫さんの部屋がある。お孫さんの部屋から見る。複雑なプランのため、見る角度によってさまざまな表情を見せる。左のお孫さんの部屋へは階段途中から入る。そのまま直進して上がると2階は娘さんの部屋。2階の娘さんの部屋。視線は感じないが閉じてはいないため家族の気配は感じ取ることができるという。階段途中から見る。右がお孫さんの部屋。ここがうちの庭Tさんの奥さんが「ここがうちの庭だという意識がある」と話すのは家の中心につくられたガランドウの大きな空間だ。「朝起きて寝室からここに上がってくると庭に出てきたような気分になるんですね。と同時に“ああ、朝が来た”みたいな感じも味わえます」。さらに「普通の声で“もう時間だよ”と言ってもみんなに通じるのでとても住みやすいですね」とも。元の家は南側に庭があっても1階には日が当たらなかったという。でも今は1階のフロアにも日が差し込んできて十分に明るく、また天井が高くて開放感もある。まさに体験としては戸外の感覚に近いものがあるのかもしれない。内部化して生まれ変わったT家の庭は、すでに家族にとってなくてはならない存在になっているようだった。50cmほど下がった主寝室より見る。正月にお孫さんがガランドウの部分で冬休みの課題であった書初めを始めたところ、大人たちも参加してイベント会場のようになったという。T邸設計一級建築士事務所松岡聡田村裕希所在地埼玉県上尾市構造木造規模地上2階延床面積101.722㎡
2019年03月25日寒い冬も終わり春が近づいてきました。これから訪れるあたたかな季節に向けて、インテリアも春夏にチェンジしてみてはいかがでしょうか?今回は、この春に注目されているパステルカラーをフィーチャー。アルネ・ヤコブセンによる名作チェアは上質なピンクをピックアップ、ハンス J.ウェグナーデザインのYチェアは、絶妙なブルーのグラデーションをリコメンド、ストリングとビスレーからは新色のピンクが登場、そして、気鋭デザイナーやアーティストによるモードなパステルもご紹介。小さな収納や椅子、照明、クッションなど、インテリアのアクセントとして取り入れやすいアイテムを集めました。名作から選ぶ上質な色ミッドセンチュリーを代表する名作セブンチェアのアルトシュタットローズが新鮮!アルネ・ヤコブセンの傑作ドロップチェアは、コロンとした愛らしいフォルムが特徴。プラスチックシェルは、スチールレッグと、シェルと同色にペイントを施した仕上げも。Yチェアの愛称で知られるCH24は、ベーシックな色をはじめ全25色展開。誰もが知る名作から美しいカラーチェアをリコメンド。フリッツ・ハンセン社からは、アルネ・ヤコブセンによるセブンチェア、ドロップチェア、スワンチェアのピンクに注目。セブンチェアのアルトシュタットローズは、デンマークの芸術家タル・アールによる色彩。思わず目を引く個性的なピンクは、上品な空間にもよく似合う。コペンハーゲンのSASロイヤルホテルのために制作されたドロップチェアは、丸みをおびた雫を思わせるユニークなデザイン。存在感のあるフォルムに対してミレニアルピンクは、落ち着きのあるペールトーン。憧れの名作、スワンチェアは、置いてあるだけで絵になる独特の存在感を放つ。上品で優しいピンクのラウンジチェアは、空間をより引き立ててくれる。カール・ハンセン&サン社のYチェアは、カラーバリエーションも豊富。実はハンス J.ウェグナーは色にこだわりを持ち、色による斬新な表現を試みていたそう。インテリアに合わせて色を揃えたり、定番のビーチやオークのアクセントにしても。また、それぞれが絶妙な色合いなので、グラデーションで並べてみても素敵。ノスタルジックなペールトーンアルネ・ヤコブセンがコペンハーゲンのSASロイヤルホテルのためにデザインしたAJシリーズ。上品な色合いのブルー、ペール・ペトローリアムは、白い空間にも落ち着いたダークな空間にも合う。ルイスポールセンのAJシリーズは、アルネ・ヤコブセンが好んだ、派手ではない美しい色彩が感じられる名作。この完璧なプロポーションのランプは、SASロイヤルホテルのためにデザインした製品の中で、ホテル全体のデザインコンセプトの重要な役割を果たしたそう。また、シルクマットと呼ばれる光沢を抑えた塗装が施されているために控えめで上質感のある仕上がりに。注目ブランドの新色ピンクストリング ポケットに新色、ブラッシュが登場!ストリングやビスレーなど、注目のブランドから新色のピンクが登場。ストリング ポケットの新色、ブラッシュは、スウェーデンのトップスタイリスト、 ロッタ・アガトンとのコラボレーションから誕生。頰を赤らめることを意味するblash。 その名の通り、ほんのりと染まった頬のように優しいピンクが魅力的。イギリスの老舗スチール家具メーカー、ビスレー社から、思わず目を引くキャッチーなピンクが登場。インダストリアルな雰囲気も合わせ持つスチールキャビネットは、インテリアやデザイン関係のファンも多い。モードなパステルユニークなフォルムと独特な色合いが印象的なペンダント。空間のアクセントに、モードなパステルカラーを取り入れてみては。スィルクは、スウェーデンのデザイナーでグラフィックアーティストのクララ・フォン・ツヴァイベルクによるペンダントライト。 CIRQUE ( スィルク )は、フランス語でサーカスの意味、遊園地や回転木馬、気球にインスピレーションを得て、遊び心をもって色彩とフォルムに取り組んだデザイン。オランダの気鋭デザイナー、サンダー・ムルダーによるステラーチェア。1950年代の素朴なスクールチェアをヒントに、一体型のプラスチックでモダンにデザイン。ミニマルなフォルム、ガラス繊維強化ポリプロピレンのハイテク素材、クリーンなミントグリーンのバランスが心地よい。ホワイトやブラックと組み合わせればよりモードな印象に。フランスらしいニュアンスカラーが印象的なキャラバンのベルベットクッションカバー。ローズレッドやベビーピンク、シャーベットグリーン・ダークグリーンなど他に類のない美しいシャーベットカラーが魅力的。四隅のさりげないフリンジがアクセントに。12/5 – A4 キャビネット 引き出し5段 ( ピンク )W280 H325 D380mm¥21,00012/3 – A4 キャビネット 引き出し3段 ( ピンク )W280 H325 D380mm¥20,000ともに BISLEY COMBOストリング ポケット ( ブラッシュ )W600 H500 D150mm¥16,000ストリング ファニチャーセブンチェア ( アルトシュタットローズ )W500 D520 H790 SH430mmカラードアッシュ ¥54,000ラッカー仕上げ¥80,000フリッツ・ハンセン青山本店ドロップチェア ( ミレニアルピンク )脚:粉体塗装仕上げ・クローム仕上げW455 D545 H885 SH460mm各¥38,000フリッツ・ハンセン青山本店スワンチェア ( ピンク )W740 D680 H770 SH400mm¥442,000〜フリッツ・ハンセン青山本店CH24 COLORS ( Light Purple・Light Blue・Steel Blue )W550 D510 760 SH450mm各¥97,000〜カール・ハンセン&サン フラッグシップ・ストア東京ステラーチェア4脚セットW575 D535 820 SH450mm¥60,000Generate Designホワイト・ブラック・ライトグレイ・チャコールグレイ・ミントグリーンの5色から4脚選択スィルク ( カッパー・トップ / イエロー・トップ )φ380 H478mm¥70,000φ220 H295mm¥49,000φ150 H189mm¥35,000以上ルイスポールセン ジャパンAJテーブル ( ペール・ペトローリアム )W350 H560mm¥98,000ルイスポールセン ジャパンベルベットクッションカバー ( レッド・ピンクベージュ )400×550mm¥10,000500×700mm¥12,000ともにCARAVANE ( H.P.DECO )ベルベットクッションカバー ( ライトグリーン・ダークグリーン )400×550mm¥10,000500×700mm¥12,000ともにCARAVANE ( H.P.DECO )shop listH.P.DECO03-3406-0313カール・ハンセン&サン フラッグシップ・ストア東京03-5413-5421Generate Design03-6320-5691ストリング ファニチャーinfo-jp@string.seBISLEY COMBO03-3797-6766フリッツ・ハンセン青山本店03-3400-3107ルイスポールセン ジャパン03-3586-5341商品価格は、消費税別の本体価格です。( 2019年3月現在 )
2019年03月20日南仏を代表するデザイナー、ジャクリーヌ・モラビトがプロデュースする食材ブランド「LA PETITE EPICERIE(ラ プティット エピスリー)」を特集。「ラ プティット エピスリー」 はフランス語で「小さな食材店」のこと。普段から毎日キッチンに立つ彼女が、”モノが溢れる時代に、シンプルに、本物の価値を持つものだけ” をコンセプトに、家庭料理に合う調味料を選び抜いた。日本初となる直営店では、こだわりの調味料や食材、ライフスタイルグッズが並び、ラ プティット エピスリーの調味料を使用した料理教室も開催する。いつもの料理がより美味しくなるオリーブオイルと白バルサミコ左から 白バルサミコ¥2,000ドレッシングセット ( エクストラバージンオリーブオイル 100ml、白バルサミコ 100ml )¥3,000エクストラバージンオリーブオイル タジャスカ¥2,300フレッシュレモンEX.V.オリーブオイル¥2,600上質な素材からつくられた調味料を少し加えるだけで、毎日の料理がより味わい深いものに。ラ プティット エピスリーが提案する基本アイテムは、エクストラバージンオリーブオイルと白バルサミコ。これさえあればシンプルなドレッシングからアレンジレシピまで、簡単に美味しくなる。オリーブオイルと白バルサミコに、ブレンドペッパーを加えただけの簡単ドレッシングは絶品!バルサミコの聖地、イタリアのモデナでつくられた「白バルサミコ」は、葡萄のほんのりとした甘さとすっきりとした酸味が特徴。葡萄は、白ワインの品種としても有名なトレビアーノ種を使用し、あえて熟成期間を短めにすることで、おだやかな酸味に仕上げたというこだわり。スライスした生姜に白バルサミコとハチミツ、鷹の爪を加えて漬け込めば、美味しいジンジャーシロップに。自家製のホットジンジャードリンクやジンジャーエールが楽しめる。オリーブオイルは、イタリア・リグーリア州で手摘みされたタジャスカ種オリーブを低温圧縮で搾った最高級の「エクストラバージンオリーブオイル」。独特のクセがないので、醤油やダシなど、和の調味料とも合う。種をくり抜いたアボガドにオリーブオイルを注いで、レモンを絞り、塩を加えるだけで、アボガドが絶品に!また、選び抜かれたフレーバーオリーブオイルも人気。オリーブオイルを搾る際に、フレッシュレモンをまるごと入れて一緒に絞ったという、「フレッシュレモンEX.V.オリーブオイル」がイチオシ。最高級の塩、魔法のペッパー、世界各地のスパイス左から ミックススパイス アンティーブ¥1,300ミックススパイス コ サムイ¥1,300ミックススパイス マスカット¥1,300野菜のブイヨン¥1,900ブレンドペッパー5¥2,100ソルト ゲランド¥1,700フランス・ゲランド地方の高級な海の塩、「ソルト ゲランド」は、干潟での天日干しの過程で、最初にできる結晶だけを集めた“塩の花”と呼ばれる最高級品。粗さと適度な湿り気が特徴で、うまみが凝縮されているため、料理に一振りするだけで味が決まる。「ブレンドペッパー5」は、世界の胡椒の名産地から厳選した5種類を独自にブレンドした奥深く豊かな風味のペッパー。5つの胡椒の風味が絶妙に絡み合い、料理の仕上げにさっと振りかけるだけで、おいしさが断然アップ。“魔法のひとふり”と呼ばれ、リピーターが続出しているそう。タマネギとセロリを煮出して、野菜の旨みをぎゅっと凝縮した顆粒状の「野菜のブイヨン」は、煮込み料理や炒め物に、塩の代わりに使えば、野菜の旨みたっぷりでより美味しく。そのまま熱湯に溶かして野菜スープにしても。南フランス、プロヴァンスをイメージして、フェンネルやチャイブをミックスした「ミックススパイス アンティーブ」、タイやサムイ島からインスパイアされたエスニックの刺激的な風味の「ミックススパイス コ サムイ」、中東、オマーンを思わせるエキゾチックな魅惑の風味の「ミックススパイス マスカット」など、料理の絶妙なアクセントになる世界各地のスパイスも充実。選び抜かれたペースト&オイル漬け左から クルミペースト¥2,100セップペースト¥2,400バジルペースト¥2,100サンドライトマトペースト¥2,250サンドライトマト オイル漬け2,250円アンチョビ オイル漬け¥3,300アーティチョーク オイル漬け¥2,800ブラックオリーブ オイル漬け¥2,300ラ プティット エピスリーのEX.V.オリーブオイルを使用したペーストとオイル漬けは、パスタソースや、料理の味付けの主役として活躍。フランス食材ならではのセップ ( ポルチーニ )やアーティチョーク、アンチョビの瓶詰めもオススメ。イタリアントマトの旨味がぎゅっと詰まった「サンドライトマト オイル漬け」は、シンプルなサラダはもちろん、ご飯にも合うので、丼ぶりやちらし寿司など和食にもオススメ。濃厚でクルミ本来の香ばしい風味が味わえる「クルミペースト」は、バゲットに薄く塗ってもよし、料理に加えればコクが出て、より味わい深いものに。ドレッシングから和え物、ソース、デザートまで万能に使える。ラ プティット エピスリーオリジナルレシピソルト タブレット¥3,300エクストラバージンオリーブオイル タジャスカ¥2,300ブレンドペッパー5¥2,100ブレンドペッパー3¥2,100目黒本店では料理教室も開催するラ プティット エピスリー。今回は、ラプティの調味料を使った簡単レシピを伺った。塩とオリーブオイル、ブレンドペッパーを使用した、素材が引き立つシンプルで美味しい料理。ご飯にも合う和テイストのレシピ。白バルサミコのアレンジソースをご紹介。魔法のペッパーでつくるシンプルで美味しい料理ブレンドペッパーとチーズのパスタソルトタブレット・EX.V.オリーブオイル・ブレンドペッパー5・パスタ リッシオリーナ ¥1,300<材料>パスタ リッシオリーナ1人分80gソルトタブレット1リットルにつき1個EX.V.オリーブオイル 適量ブレンドペッパー5適量パルミジャーノ美味しいパスタを作るポイントは、しっかりと塩をきかせて茹でること。2リットルのお湯にソルトタブレットを2個入れて、沸騰したらパスタ リッシオリーナを入れ、約5分茹でる。茹で上がったら熱々のパスタにオリーブオイルをまわしかけ、パルミジャーノをすりおろしてふりかけ、最後にブレンドペッパ−5を かけて完成。シンプルが一番美味しい!と感じるパスタの食べ方です。ソルトタブレットの塩がきいている。シチリアの海の塩でつくられた「ソルト タブレット」は、野菜の塩茹やパスタを茹でる際に最適。見た目にもかわいいソルトタブレットが詰まった大きな瓶も素敵。オイルやスパイスと一緒にキッチンに並べておきたくなるルックスも魅力的。ブロッコリーとトリュフオイルのサラダソルトタブレット・EX.V.オリーブオイル・ブレンドペッパー3・白トリュフEX.V.オリーブオイル ¥1,900<材料>ブロッコリー1束チーズ(エダムやペコリーノ)適量白トリュフEX.V.オリーブオイル適量ソルトタブレット1個EX.V.オリーブオイル適量ブレンドペッパー3適量小房に分けたブロッコリーを、ソルト タブレット1個を入れた1リットルの湯で3分茹でる。平皿にトリュフオリーブオイルを塗り、温かいブロッコリーを並べてのせる。オリーブオイルをたっぷりとまわしかけて、チーズを削って、ブレンドペッパーをかけて完成。ご飯にも合う和のレシピをリコメンドオリーブの実たっぷりおむすびブラックオリーブオイル漬け・ソルト ゲランド<材料>温かいご飯・大葉・いりごま・おぼろ昆布ブラックオリーブオイル漬けソルト ゲランド炊き上がったご飯に、大葉、いりごま、ブラックオリーブオイル漬けを適量混ぜて、さっくり混ぜる。おむすびにしたら、おぼろ昆布で包んで、輪切りにしたブラックオリーブオイル漬けを飾って完成。上質なソルトゲランドが上品な味に。意外な組み合わせがクセになる美味しさ。ラプティスタイル 贅沢卵かけご飯白トリュフEX.V.オリーブオイル・アンチョビオイル漬け・ブレンドペッパー5<材料>炊きたてのご飯・卵黄アンチョビオイル漬けブレンドペッパー5白トリュフEX.V.オリーブオイル炊きたてのご飯に卵黄と、ラプティアンチョビをのせる。仕上げにブレンドペッパーをふり、トリュフオイルを回しかけて完成。ブレンドペッパーは、5ミックスでも3ミックスでもお好みで。おもてなしにもオススメ。白バルサミコのアレンジソースハニーマスタード白バルサミコ・フレッシュレモンEX.V.オリーブオイル・ソルトゲランド・トラディショナル マスタード¥1,500<材料>トラディショナル マスタード大さじ1はちみつ大さじ1/2フレッシュレモンEX.V.オリーブオイル大さじ2白バルサミコ大さじ2ソルトゲランド小さじ1/2にんにく(すりおろす)1/2片ボウルに全ての材料を入れて混ぜ合わすだけ。はちみつは、栗などの味が濃厚な蜜より、ポピュラーな蜜が向く。レモンオリーブオイルの代わりに、EX.V.オリーブオイルでもよい。野菜のドレッシングとしても、お肉やお魚のソースとしても美味しい。「トラディショナル マスタード」は、マスタードの種とリンゴ酢・水・塩のみでつくるフランスの伝統的な粒マスタード。 すっきりとした酸味が程よくきいて、もたつかない、きれいな味わい。LA PETITE EPICERIE JACQUELINE MORABITOラ プティット エピスリー ジャクリーヌモラビト 目黒本店。フランスの食材店のような店内。リネントーション各¥3,800エッグスタンド各¥2,500メッセージグラス各¥3,000ヴィンテージリネンバッグ¥23,000日本第一号店となる目黒本店では、食材の他に、エスプリの効いたテーブルウェアやインテリア小物が並ぶ。赤い刺繍のラインがさりげなく入ったものや、片方だけ赤いパイピングが施されたリネントーション。ニワトリの形が、かわいらしい陶器のエッグスタンド。AMOUR(愛)やAMITIE(友情)など、フランス語のメッセージが刻印されたシンプルなグラス。希少なヴィンテージリネン生地をふんだんに使用した大きなトートバッグなど、ここでしか手に入らないセンスのいい雑貨も魅力。Informationラ プティット エピスリー東京都目黒区鷹番1-6-903-5721-3738Open 10:00- 19:00日曜定休商品価格は、消費税別の本体価格です。
2019年03月18日景色を最大限に活かす「不便でもいいから、景色が良くて、その景色と反対側にアプローチがあるところという条件で土地を探し、まさに理想的な土地に出会えました」と話すのは、建築家の阿川宮鳥さん。東京・日野市の高台に位置し、南側には深い森を望む絶好のロケーションである。しかもそこは、阿川さんの事務所があるマンションの隣地。それまで建っていた施設が取り壊され、たまたま売りに出された物件だった。「都心から日野に越してきて、マンションの4階からこの景色を見ていました。こんな環境に家を建てたいと、この界隈の土地が空かないかとずっと狙っていたのです(笑)」。隣が売りに出されたときは即決だったという。この借景が広がった土地を最大限に生かすために、“森の中で暮らす”をテーマに設計をスタート。道路側である北側は最小限の窓にし、景色のよい南側を思いっきり開き、全面に窓を設けた。目の前に広がる森は白樺などの落葉樹が中心。「冬の今はほとんど葉がなく伸びやかなシルエットが楽しめますが、春には葉を付けて新緑が、夏にはたっぷりの緑で木陰を、秋には見事な紅葉と、季節によって全く表情が変わり、楽しみ方もいろいろです。自然の力ってすごいなって感動しますね」。北側から見た外観はシンプルな白い箱。車関係の仕事をする夫の和生(かずなり)さんの希望であった2台分のガレージを手前に配置し、アプローチを長くとることで、住居部分は準防火地域の規制から外れるようにした。国道(手前)から距離を離したことで騒音防止にも。準防火地域を避けたかった理由のひとつが「網の入った防火ガラスがどうしても嫌だったから」。網の入っていないガラスに、窓枠は木製サッシを実現させた。南側から見た外観は、全面に窓を設け、ほぼガラス貼り。森から野良猫たちもやって来て、地域猫としてご近所みんなでかわいがっているそう。斜めに設置した壁阿川さん夫妻と猫3匹が暮らす阿川邸は、お客様を招いたり、仕事のプレゼンをしたりするパブリックスペースと、寝室やバスルームなどのプライベートスペースとに、リビングのグレーの壁によって分かれている。そのグレーの壁は、南に向って斜めに開いて設置されており、リビングから森へ広がる臨場感が楽しめる。また、トップライトを設けた天井はRにカーブし、壁へとつながっている。この丸みにより、やわらかな光が奥まで届く。天井材はレッドシダーにこだわった。部位によって色の異なる木の特性を活かし、細い刻みでランダムに並べ、デザイン性もアップ。「どうしてもこの材を使いたくて、材木屋さんにカットしてもらいました。夜に間接照明を照らすと、この木がいい感じに光るんですよ」。グレーの壁を境に、1階、2階ともに奥がプライベートスペース、手前がパブリックスペース。壁は南(左)に向かって開いている。細めにカットしたレッドシダー材の天井が美しい。トップライトからも十分な光が注ぐ。宙に浮いた片持ち階段もスタイリッシュ。造り付けのテレビ台の下にはCDなどをたっぷり収納できる。音楽が好きで音にもこだわる阿川さんご夫妻。R天井は音響効果もよい。玄関を入って正面にはレッドシダーの壁が。奥がプライベートスペースでシューズクローゼットを設置。手前がリビングへと続く。庭にもフェンスを設置。プライベートスペースに洗濯物を干しても、パブリックスペースからは見えないように配慮。シンクはバーベキューのときに重宝。回遊性で楽しく効率よい生活料理好きという阿川さんは、よく友人や建築家仲間を招いては、イタリアンなど前菜からメニューを考えて振る舞うそう。「景色を楽しみながら料理ができるように、キッチンは南側に向けて設置しました」。キッチンの奥の、プライベートスペースとパブリックスペースの間には家事ゾーンを設けた。冷蔵庫や洗濯機、ワインセラーなどをまとめて置き、どちらのスペースからも行き来できるよう生活動線を考え尽くした造りになっている。また、リビングだけでなくプライベートスペースにも階段を設け、1階も2階も回遊性をもたせた。「例えば、私の友人たちがリビングのあるパブリックスペースに集まっているときに、夫が途中ですーっと抜けて、お風呂に入ったり、寝室で横になったりできるようにしています。プライベートスペースで生活を完結できるようにすることで、それぞれのペースで生活できますからね」。“行き止まりのない家”で、人も猫も心地よく、楽しく暮らしているようだ。ペニンシュラ型のキッチン。料理をしながら最高の眺めが楽しめる。キッチンの奥が家事ゾーン。冷蔵庫や洗濯機が置かれ、バスルーム、寝室へと続く。お客様がお好みのワイングラスを自由に選べるようになっている。ホテルライクなバスルーム。奥が寝室で、扉は最低限しかない。夜はライトアップされた森を見ながら入浴タイムが楽しめる。洗面の鏡は、右にスライドすると収納棚が登場。寝室やバスルームから2階へつなぐプライベートスペースの階段。回遊性があり、便利。生きている自然素材の心地よさ「建築家としてやりたかったこと、好きなことを詰め込んだ家となりました」という阿川さんだが、特に「やってよかった」と思うのが和室を設けたことと言う。「習っている茶道の先生に“和室はあるんでしょ?”と訊かれてはっとしたんです。確かに和室があるといいな、と。玄関上の納戸だったスペースを一段下げ、屋根裏みたいな和室にしたら楽しいなと思って、慌てて図面を書き直しました」。斜めにカーブした天井や収納、細長い障子窓など、大工さん泣かせの要望ではあったが、意欲的に楽しんで対応してくれたという。北欧家具をさりげなく置いたリビングに和のテイストがほんのり加わったことで、さらに味わい深い空間となった。「ささくれようが、隙間が空こうが、生きている自然素材が好きです」という阿川さん。経年変化を楽しみながら、住み続けるほどに愛着がわく家となり、それは阿川さんが提案する住宅のコンセプトでもある。友人の家具作家(アトリエヨクト)にオーダーしたというダイニングテーブルは鉄の脚がポイント。壁には飾り棚を設け、お気に入りの物をディスプレイ。「リビングにギャラリー風のビューポイントを造るのがおすすめです」。手前が、最近注目しているという熊田恵子さんの作品。奥が和生さんの妹で陶芸家の阿川まさ美さんの作品。3畳ほどの和室。低めのR天井、細めの障子窓などこだわりがのぞく。奥(下)には布団を収納。天井のカーブに沿って上部にも収納を設けた。一段下げて和室を設計。手前のタンスは着物を収納。ハンス・J・ウェグナーのイスは座り心地抜群。北欧家具に不思議とマッチする、和室の障子窓(右上)。2階のパブリックスペースからの眺めも素晴らしい。奥は和生さんの書斎。なかなか顔を見せてくれなかった3匹の兄弟猫たち。“広報部長”のコタロウくんがやっと登場してくれた。サスケくんとサクラちゃんは会えずじまい。阿川邸設計コエタロデザインオフィス一級建築士事務所所在地東京都日野市構造木造規模地上2階延床面積160㎡
2019年03月18日前の家のものを残して使うNさんのお母様が暮らしていた築50数年の家を取り壊したのが3年前。設計を依頼した若原さんに、解体作業の前にその古い家を見てもらったことがN邸のあり方を決めるうえで大きなポイントとなった。「若原さんが“まずは見に行きます”って言ってくださったんですね」と話すのは奥さん。N夫妻は建て替えに際して、前の家のものを何か残して新しい家で使うとは思ってもみなかった。また、前の家のイメージをどこか引き継ぐような家にしてほしいという要望もなかったという。若原さんによるとそれは、「残す残さないは別として、前の家がどういうものだったのか設計をする前に見ておきたかったし、ただ更地にして新しい家を建てるのはもったいないかなと思って発した言葉だった」と話す。1階道路側の窓。解体された家の窓をそのまま使っていて、昭和中期頃のレトロな雰囲気が漂う。周りの壁などの木はこのサッシの色味に合わせて塗装が施されている。家を実際に見た結果、応接間に使われていた窓の一部を残すことに。「前の家でいちばん印象的だった」と奥さんが言うその窓は、現在は国内生産されていないガラスが木のサッシにはめ込まれている。1階道路側の窓で使われることになったこの窓は、柔らかな凹凸がつくり出すラインが水平に並んだガラスと、焦げ茶色の木のサッシとのコンビネーションで、昭和のレトロな雰囲気を醸し出している。竣工する少し前、はじめてこの家を訪れた息子さんが一目見て思わず、「あ、おばあちゃんちだ!」と言ったそう。これはこの窓を見ての発言だったという。応接間をぐるりと囲んでいたこの窓は、N家の人たちにとって前の家のイメージを代表するものだったのだ。書をマグネットで留められるように壁の最上部にフラットバーが取り付けられている。焦げ茶色の壁は書道紙を留めたときにコントラストがついて書がより映えて見える。リビングの天井に開けられたトップライトが手前の北側のスペースにまで光を注ぐ。家を開くこの窓が設置されたスペースは焦げ茶色の木の壁面が特徴的だが、これは奥さんが書道をされる関係でまずは計画されたもの。「書道教室を必ずしようとまでは決心が固まっていなかったんですが、個人で書くための場所はほしいと話をしている中で、それであればリビングとつなげることで書道教室をすることもできるし、別の用途にも使えるといったご提案をいただいたんです」若原さんの提案は、Nさんが定年になってずっと家にいるようになることも見越してのものだったと話す。「“家を開く”というか、書道教室をやるためだけのスペースではなくて、たとえばご主人が趣味のサークルに入ったらその会合に使ってもいいし、展示スペースとして貸すこともできるような、外へと開かれたスペースとして計画しました」パブリックな用途にも使用することが想定されている手前のスペースとリビングは低い壁でゆるやかに分節されている。白い壁には漆喰が塗られているが、Nさんはこの漆喰壁に当たる光の感じが素敵で気に入っているという。住宅にしては大きな気積をもつ空間。これはNさんのお母様が描かれた「秋の日」という日本画作品をかけるために大きな壁面が必要だったためだが、同時に多人数の人が来ても対応可能な空間となった。日本画とピアノと松ぼっくり残したのはガラス窓だけではなかった。Nさんのお母様が自身で描いた日本画のうちの1枚がリビングの壁にかけられているのだ。若原さんも加わって大量に遺された絵を片づけているうちに、やはり何枚かは取っておこうと決まった。また打ち合わせ時にお母様にまつわる思い出話が盛り上がる中で、厨子を置くコーナーをつくること、そして1962年頃にイギリスで購入されたという古いピアノを絵と厨子の近くに置くことも決まっていった。厨子には木彫作家のクロヌマタカトシさんに彫ってもらった松ぼっくりがおさめられている。これは葬儀の際には棺の中に入れてほしいというくらい松ぼっくりが好きで、海外滞在時も含めて膨大な数の松ぼっくりを収集していた故人を偲ぶものだ。「結局、窓と絵とピアノと松ぼっくりとが集合することになって、日常の生活の中でもお母さんの影というのか存在を感じられるスペースになったのではないか」と若原さん。テーブルはこの家のために製作されたオリジナル。リストアされて新品同様に見えるピアノの右隣には厨子の置かれたコーナーがつくられている。奥さんがとても好きだという庭。大きな窓を通して庭を体感することができる。窓の上部が壁から突き出て段状になっているがこれは「リビングのある空間の断面のプロポーションが最後までしっくりこなくてスタディを重ねた結果」できたもの。1962年頃、Nさんのご両親がイギリス滞在時にハロッズデパートで買い求めたドイツ製のピアノ。リビングの開口近くから見る。左手にキッチンがある。厨子の中にはお母様が大好きだった松ぼっくりを象った彫刻がおさめられている。最初から懐かしい家この家に越してきてから4カ月ほどだが、奥さんは新築であるにもかかわらずどこか懐かしい感じがするという。「不思議な感覚ですが、それがすごく楽しい。あと、素人にはこのような家になるとは想像もつかなかったんですが、メリハリがあって広いところとこもることのできる空間の両方があるのもすごく楽しいですね」Nさんはリビングの空間がとても落ち着けて好きだという。さらに「この裏庭に向けて開いた窓の上の段になった部分が一見無駄なように見えながらすごく味があってとてもいいです。夜、光が当たるとまたこれがいいんですよ」と話す。新築の家はなじむまで時間がかかるものだが、N邸は越してきた当初から「落ち着けて」また「懐かしい」。これはN邸が前の家とお母様の記憶をしっかりと継承しているからこそなのだろう。1階のダイニング・キッチン。コンパクトにデザインされたテーブルのスケール感も良く落ち着く空間となっている。ダイニング・キッチンからリビングスペースを見る。リビングからダイニング・キッチンを見る。キッチンはリビングからでも火元が見える位置に配置してもらった。書道教室などで左の空間が使われているときのために、プライベート空間にダイレクトに行ける動線を用意した。2階に上って左手にある空間。手前左側が奥さんの部屋で奥がNさんの部屋。Nさんの部屋にはハイサイドライトから光が入る。奥さんの部屋を仕切った状態。奥に見えるのが息子さんの部屋。家族全員が「小さなスペースで十分」ということから、2階の個室はコンパクトに納め、その分、1階のリビングを広くした。N夫妻は「漆喰や木などを使って自然な感じにしてほしい」という希望は持っていたが、このような空間になるとはまったく予想をしていなかったという。左側とのバランスを考え右の部分を思い切って高くデザインした。ご近所では「塔のある家」と言われているという。手前の窓ガラスは強度が不足していて割れやすいため、内窓として使用している。N邸設計若原アトリエ所在地神奈川県藤沢市構造木造規模地上2階延床面積101.92㎡
2019年03月13日住み慣れた街に家を建てるある休日のお昼前。デザイナー、アートディレクターとして書籍のデザインなどを手がける中澤睦夫さんと、デザイン事務所でマネージャーを務める奥さまの千佳子さんの自宅を訪ねると、穏やかな光が差し込む3階のダイニングで、お二人がゆったりとブランチを楽しんでいた。中澤さん夫妻がこの家を建てたのは、6年ほど前のこと。睦夫さんのアトリエと自宅を兼ねるため、マンションではなく戸建てにしたいと考えていた二人は、千佳子さんが子供の頃から慣れ親しんできた東京・高円寺、阿佐谷周辺で土地を探すことに。そうして、いわゆる狭小地ではあるが、駅から近く周囲の街並みもきれいなこの土地に出会った。「この辺りは周囲に高い建物がなくて、視界が抜けているのが気に入りました」と振り返る睦夫さん。限られた敷地に理想の住まいをつくるため、設計は奥さまの叔父である建築家の小野寺利朗さんに依頼した。ダイニング・キッチンの壁は一面だけ淡いピンク色。白で統一された空間のアクセントになっている。明るいダイニングで休日のブランチ。共通の趣味であるマラソンの話題に花が咲く。シンプルで清潔感のあるキッチン。千佳子さんの帰宅時間が遅いため、料理は睦夫さんが担当することが多いそう。キッチンの壁や冷蔵庫の上も、ディスプレイ空間に。アレッシイのじょうごなど、お気に入りの雑貨を飾っている。心地よい居場所がいくつもある中澤邸は、1階に睦夫さんのアトリエ、2階に水まわりと寝室、3階にダイニング・キッチンとリビングというつくり。3階は日当たりのいい南側にダイニング・キッチンをつくり、階段の踊り場と吹き抜けを挟んだ北側にリビングを配置している。リビングの窓の外には視界を遮る大きな建物がなく、ダイニングからリビング、その先の景色まで視線が通るため、実際の面積以上に広く感じる。「休日はテレビを観たりお茶を飲んだりとダイニングでのんびりしている時間が大好きです」と千佳子さん。一方の睦夫さんは、特にリビングが気に入っているのだそう。「設計当初の案ではリビングの場所に部屋がなかったのですが、リクエストしてつくってもらいました」と話す。また、ダイニング・キッチンとリビングが離れていることで、心地よい居場所が複数あるのも魅力のひとつ。「友人が集まったとき、ダイニングで食事をして、その後リビングでゆっくり話をしたり」と千佳子さん。「タバコを吸う人はベランダへ行ったり、それぞれが好きな場所に分かれて過ごしますね」と睦夫さんも続ける。千佳子さんは、ダイニングとリビングの間の踊り場にヨガマットを敷いてストレッチをするのも好きなのだとか。「ちょうどいい広さで、集中できるんですよね」(千佳子さん)。ダイニングと写真右のリビングをつなぐ踊り場。左手に1階から3階まで貫く吹き抜けがある。北側に位置するリビング。PIET HEIN EEKのベンチは睦夫さんのお気に入り。2階の踊り場。写真右手が吹き抜け。シンプルで清潔感のある洗面室。作品が引き立つ白の空間室内のいたるところに、絵や陶器、雑貨などが飾られている中澤邸。知人のアーティストから譲ってもらったイラストや陶器なども並ぶが、中でも目を引くのが、画家でもある睦夫さんが描いた音楽家をテーマにした作品たち。「数年前に個展を開いた時に描いたものです。誰もが覚えているであろう、音楽室に厳粛に飾られていた肖像画を、“現代の空間に飛び出させたらなんか合うんじゃないのかな”と思い、心地よいクラシックが聞こえてくるようなイメージで巨匠達を僕なりに描いてみました。我が家にはゆる〜く合っていて自分の作品ながらとても気に入っています」(睦夫さん)。さまざまな作品が印象的に目に映るのは、シンプルな白の空間だからこそ。設計時から、このようにたくさんの絵を飾ることを前提に、壁や床はもちろん、ドアなどの建具、キッチンや洗面台などの設備まで白にこだわって選択したのだという。1階にある中澤さんのアトリエ。大きな仕事机は友人から譲り受けたもの。画材やアートディレクションを担当した書籍や雑誌、資料などが並ぶアトリエの収納棚。家のあちこちに、さりげなく花が飾られている。デスク上部は3階までつながる吹き抜け。階段の手すりなども白で統一。飾られた作品がパッと目に飛び込んでくる。階段の手すりには、お気に入りの小さなぬいぐるみがかけてあった。玄関には、友人であるアーティストのスドウピウさん作の陶器などをディスプレイ。白い花が咲く庭白へのこだわりは、玄関前の庭にも。取材に訪れた1月は冬の表情だったが、夏にはアジサイやサルスベリ、ハニーサックル、マグノリアなどの「白い花」が賑やかに咲くそうだ。じつは、当初は庭をつくる予定ではなかったのだという。「北側斜線の関係で、玄関前の空間が空いてしまって。普通はコンクリートを敷いて駐車スペースにするんでしょうけど、必要ないからどうしようかと考えて」と睦夫さん。そんなとき、たまたま井の頭公園で開催されていた緑化フェアを二人で訪問。出展していた自由が丘のショップ「BROCANTE」のブースを訪れ、「すごくきれいで魅力的な庭をつくっていたのを見て、急遽お願いすることに決めました」と千佳子さんは振り返る。「BROCANTE」がつくり出したのは、小さなスペースながら訪れた人を迎え入れてくれるようなおおらかで自然な雰囲気の庭。「近所のワンちゃんやアイドル猫が、散歩の途中によく立ち寄ってくれます。夏になるとカエルも来てくれて」と笑顔で話す千佳子さん。「家だけだと味気ない。やっぱり庭があるのはいいですね」と睦夫さんも。楽しそうに話すお二人の様子から、家や庭への愛着が伝わってきた。門や塀はあえてつくらず、開かれた雰囲気に。初夏の庭は、こんもり茂った緑と白い花のコントラストが美しい。(写真2点=中澤さん提供)
2019年03月11日祖父母の家をリノベーション情緒あふれる川越の街。祖父母が暮らした築45年の1軒家をほぼDIYでリノベーションして、安田太陽さんと妻・詩織さんは暮らしている。「もともと手を動かすのが好きで、立体物を作るのが大好きでした。家のリノベーションはこれが初めてでしたけど(笑)」。プロダクトデザインの部署から始まり、現在はイベントや空間のデザインを行う部署で会社員として働きつつ、休日には廃材や自然素材を使ったアクセサリーを制作するミツメとしても活動。そんな安田さんが、気になって集めてきた古道具を活かして創りあげたのは、驚きや発見がたくさんある独創的な空間だ。ガスの接続以外はすべてDIYで創ったキッチン。古道具や古材が味を出す。有機物と無機物の組み合わせ方が絶妙。和室の畳を取り外し、無垢のスギ材を張った。床の間にはガルバリウムをあしらってディスプレイ空間に。DIYで温もりのある家に「ここは祖父母の家だったので、子供の頃よく遊びに来た記憶があるし、母にとっては育った家なので思い入れがあるんです。まさか自分が住むとは思いもしなかったけれど、リノベーションして活かすことができたのは良かったと思っています」。耐震補強や外壁塗装、ガス、電気、水道などは業者に任せたものの、それ以外は知人・友人に手伝ってもらいほとんどDIYで完成した。「天井を壊して現れた梁に塗装したり、床も自分で張り替えたり、大変でしたけど暮らしながら少しずつ進めていきました」。キッチンは、ダイニングと分けていた壁を自力で取り壊してひと続きの空間に。「この家は日当りが悪く、暗いんです。その為、白を基本とし、広い開放的なキッチンを作ってやろうと」。木脚と白いタイルのキッチン台も自作。シンプルなものを求めて探しに探したリンナイのビルトインコンロとIKEAのシンクを取り付けてタイルを貼った。「工業系の道具やパーツが好きなのですが、あまり取り入れると冷たくなってしまいます。木を入れると温かさが出せるので、温度感をうまく組み合わせました」。広々としたダイニングキッチンでは、大人数で集まることも多いそう。曾祖母の桐箪笥など、この家にもともとあったものも活かしている。テーブルは古いオフィステーブルの脚に、足場板を組み合わせて載せたもの。キッチン台の下はオープンな収納に。リンゴ箱に取手をつけた箱には食材などをストック。古い木箱を壁に打ち付けて収納棚に。「壁は構造用合板なので、どこにでもビスや釘を簡単に打つことができるんです」。シンクとガスコンロはシンプルなものにこだわった。タイルもすべてDIYで貼ったもの。安田さんは「BALMUDA」勤務のデザイナー。自宅でも製品を使用している。素材の使い方を考える漆喰で塗り上げた白い空間は、オリジナルのアイデアがあちこちに。元々は床の間だったリビングの一角のスペースには、壁にガルバリウムを貼った。サンルームには掘りごたつがあり、扉だった板を天板として載せている。「解体している家があると、建具とか家具を譲ってもらえないか頼んでみたりします」。2階のベッドルームの小窓も、昔手に入れて長年寝かせていた建具を使用。年代を感じさせるナラ材が風情を感じさせる。「この建具もそうですが、数十年の時を経た質感はエイジング加工では表現できません。古いものや価値がないとされているものを大事に再利用していきたいんです」。ルールに縛られず使えそうなものを自由にアレンジして使う。それは、安田さんが手がけるミツメのアクセサリーのコンセプトともクロスする。開口部やサンルームからやわらかな日差しが入る。ガルバリムを壁にあしらった床の間。作業台と陶器の花瓶に金属が不思議と調和する。サンルームの掘りごたつ。下からぽかぽかと暖かい。階段の蹴込み板もペンキで白く塗装。漆喰の壁は「下地を塗るのが大変でした」。仕切りの壁に小窓を取り付けたベッドルーム。砂壁はこれから塗装に着手する予定。モノから家、街へ「最初はこんなとこ住めるの?って思いました」。と笑う詩織さんも趣味は完全に一致し、ここでの暮らしを楽しんでいる。「夏には新しい家族を迎えるので、子供にとって安全な家かどうかも考えていかなきゃいけないですね。ベッドルームの壁もこれから塗るところだし、まだまだ仕上がりは半分くらい。暑さ対策、寒さ対策もしっかりやっていきたいと思っています」。Googleで検索したり、YouTubeで動画を見たり、ホームセンターで聞いてみたり。ルールに捕われず、あちこちで情報を集めて行われるリノベーションは、これからも進化する。「アイデアを出して、それが形になっていくのが楽しいんです。実は、今増えている空き家などにも手を掛け始めています。街づくりにも近いうちに携われたらいいと思っています。古いものは使えない、汚いものは捨てる、ではなく再利用できないか考えてみる。当たり前だと思っていることを少し立ち止まって考えてみる。忙しい日々を過ごす人ほど大切だと思います。そして、それを実行できることが毎日の幸せです」。玄関にはベッドのスプリングがオブジェのように飾られていた。友人のお店で仕入れたYKKのキャビネット。錆びた鍬を廊下に飾る。ペンダントライトはアルミの漏斗をリメイク。古道具屋で買った暗室のライトをベッドルームの照明に。itashioriの名で活動する詩織さんは、籐でカゴを編む作家。冬は寒いのでサンルームの掘りごたつで作業することが多い。もともとはイラストを描いていた詩織さん。右側のイラスト2点は作品。制作したカゴは、イベントなどで販売。何でもない日常をしっかりと楽しむというおふたり。愛着のあるギターを一緒に演奏したり、踊ってみたり。
2019年03月04日古くから繊維街として知られ、近年ではアートの街としても注目を集めている馬喰町にミナ ペルホネンの新しいショップ「minä perhonen elävä 」が2月にオープンした。elävä(エラヴァ)はフィンランド語で「暮らし」を意味。日々の暮らしの中で、長く大切に愛せるものや、丁寧なものづくりをされている作り手との出会いの場所として歩みはじめた。minä perhonen elävä Ⅰスターネット東京がリノベーションして営業していた馬喰町の古いビルを引き継いだそう。エラヴァIは、器と食品の販売。2階のショップ兼ギャラリースペースでは、作家の個展を不定期に開催。エラヴァ I は、器と食品がメインの店。日常使いの食器、作家の器やアートピース、オーガニック野菜や果物、ナチュラルワイン、調味料、缶詰、乾物、焼き菓子など、こだわりのアイテムをセレクト。はじまりは、益子のセレクトショップ、スターネット東京が閉店をする際に、その場所を残したいというデザイナー皆川 明さんの思いから。スターネット東京がリノベーションを手掛けた空間の一部は設えそのままに、エラヴァIを開店した。郡司製陶所による日常使いの器。ブルーの縁どりが効いたシンプルな器は重ねた姿も美しい。上段のオブジェは、岐阜の陶芸家、吉田次郎の作品。中段は、陶芸家、小前洋子による花器。沖縄の大嶺工房、岐阜の陶芸家 吉田次朗、沖縄の陶芸家 宮城正幸など、人気作家の作品が並ぶ。缶詰、ピーナッツバター、蜂蜜、調味料など、拘りのセレクト。Ome Farmの無農薬のサツマイモ 紅はるかとぽんかん。石垣島ペンギン食堂の島こしょうと、フランスの老舗缶詰メーカー、ラ・ベル・イロワーズのオイルサーディン。福田商店の干し芋と、皆川さんのお姉様がつくっている生味噌。ともにパッケージは皆川 明デザイン。櫻井焙茶研究所によるエラヴァ オリジナルブレンドの茶葉と、陶作家 安藤雅信がミナ ペルホネンのために手掛けた花茶杯。山形 タケダワイナリーの白ワイン、サン・スフルと、オーストリアのワイナリー、グート・オッガウのオーガニックワイン。器は、作家によりつくられた毎日の暮らしに役立つ日常使いの食器と、1点で存在感のある作品などを展開。またアートピースとして、陶芸家のオブジェや花器も揃える。独特の存在感を放つ小前洋子の作品は、皆川さんも自宅に置いているそう。東京都青梅市にあるOme Farmは、西洋野菜や日本の伝統野菜を有機農法で栽培。オイルサーディンは、ブルターニュの漁港で獲れた新鮮な魚介と良質の植物オイルのみを使用し、伝統的なハンドメイドでつくられる。静岡の干し芋専門店、福田商店の紅はるかの干し芋は、皆川さんもよく召し上がっているそう。サン・スフルは、山形でつくられた無添加の辛口発泡性ワイン。グート・オッガウは、さまざまな年齢、性別の架空の人物が描かれたエチケットに注目。葡萄の樹齢や土壌の個性などを反映している。minä perhonen elävä Ⅱ真鍮製のノスタルジックなサインが目印。ヴィンテージの什器に並ぶアートピース。服と家具を線引きせずに、どちらも暮らしの一部として捉える、という皆川さんの思いから、ヴィンテージ家具とミナ ペルホネンのアーカイブコレクションを同じ空間に並べているという。エラヴァⅡは、北欧を中心に集められたヴィンテージの家具をメインに、アートピースやビンテージのテーブルウエア、書籍、ミナ ペルホネンのアーカイブコレクションが並ぶ。丁寧につくられた昔からのいいものを次世代につなぎたいという思いで集められたヴィンテージは、出会った姿のまま店頭に並べている。そのままの状態で使うもよし、希望があれば張り地のカスタマイズをはじめ、さまざまなリペアの相談にも乗ってくれるそう。アルテックのチェアが積まれたインスタレーションのようなコーナー。北欧のヴィンテージシェルフ。ミナ ペルホネン オリジナルの張り地を選んで家具をカスタマイズすることもできる。シャルロット・ペリアンのサイドチェア、フィン・ユールのチェア、アルテックのティートロリー、フィンランドのアーティストによるモビール。フィンランドのガラス作家、オイバ・トイッカによるガラス製のバード。カイ・フランクによるカルティオグラス。上段の洋書も購入可能。フィンランドの建築家アルヴァ・アアルトがデザインしたアルテックの名作チェアは、無地のシートの他に、ミナ ペルホネンのファブリックを張ったチェアも展開。デンマークの巨匠フィン・ユールのチェアは曲線の美しさが秀逸。シャルロット・ペリアンのサイドチェアは、誕生から50年経った今でも色褪せないシンプルで力強いデザイン。皆川さんがフィンランドで出会った作家ミラ・ヴァーテラが手がけるモビールは斬新でモダン。ミラ・ヴァーテラの展示会は3月末にエラヴァⅡで開催予定。フィンランドでも入手困難と言われているイッタラのカルティオグラスやピッチャーは、ヴィンテージならではの繊細な薄さと美しい色味に惹かれる。informationmina perhonen elävä Ⅰ東京都千代田区東神田1-3-903-6825-3037Open 11:00-19:00日曜定休(展覧会開催期間は無休)minä perhonen elävä II東京都千代田区東神田1-2-11 201号室03-6825-8037Open 11:00-19:00日曜定休(展覧会開催期間は無休)
2019年02月28日30人のパーティも余裕の大空間横浜の南向きの傾斜地に建つお宅は、大きな窓や吹き抜けが気持ちのいい開放感のある住まい。グレイエムさんが南アフリカ出身ということもあり、日本に来た時に住んだ小さな窓の集合住宅が、とても息苦しく感じたのだそう。「その反動から、大きな窓がたくさんあって、外に広がりを感じられる家は、夫のたっての希望でした。なので我が家の窓にはカーテンがほとんどありません(笑)」と奥様の理恵さん。部屋を仕切る壁もほとんどないので、内部空間が広々と感じられる。「冬に暖房効率を上げたい時など、必要な時にカーテンで仕切れるようにしています」玄関から続く土間は、一段高くなっているリビングの周囲をぐるりと回ることができる。広々としたキッチンは、30人も集まるというホームパーティのお客さんの受け入れ態勢も万全。「仕切りのない家なので、思い思いの場所でくつろいでいただけます」大人数のホームパーティも余裕で楽しめる広々としたキッチン。「鍋も洗える大型の食洗機は私の希望でつけていただきました」。庭のバーベキューコーナーへもキッチンから直行できる。土間をはさんだ反対側の部屋は壁にプロジェクターで映像を流し、ゴロゴロしながらくつろげる空間。階段の踊り場の下が収納になっている。吹き抜けを生かした明るい空間。玄関を入ると正面に庭に出られるガラスのドアがある。傾斜地に建つ家ならではの抜け感が気持ちいい。左側の収納の扉には鏡を張った。「姿見になりますし、部屋も広く見えます」モルタルの土間はリビングをグルリと回ることができる。行き止まりを作らないことで、空間が澱まないようにした。必要なものは楽しくDIYで大きな吹き抜けがあり、部屋を壁で区切っていないので、家のどこにいても家族の気配が感じられる。「1階にいて、2階で子どもが何をしているのかがわからないのが嫌だったので、できるだけ壁を作らないようにしました。もし子どもが成長して必要になれば、後から壁を作ることもできますし」と理恵さん。凛々子(りりこ)ちゃんのお部屋の家具や、壁の塗装など、DIYで仕上げた部分も多いのだそう。「海外での暮らしが長かったこともあり、自分で工夫してカスタムする習慣が身につきました。たとえばダイニングのスツールは980円のものを買ってきて、テープを巻いて座面にカバーをかけました」凛々子ちゃんのお部屋は、吹き抜けの渡り廊下の先。空間を柔らかにカーテンで区切っている。吹き抜けにある照明器具はIKEAで。IKEAのフレームつきのベッドにふんわりとレースをかけて、お姫様気分のベッドルームのできあがり。「淡いグレーの壁は自分たちで塗りました」壁や扉がない凛々子ちゃんのお部屋は、広がりが感じられる。寝室にも広々とした窓を確保。グリーンを飾ってくつろげる空間に。日々成長する家竣工から1年が経ち、この家で四季を体験したとのこと。「薪ストーブを導入するかどうかはまだ考え中です。いつでも作ることができるように、ダイニングの一角に煙突用の穴をいつでも開けられるようにしておいていただきました」友人をたくさん招いてホームパーティを開き、庭でバーベキューを楽しむ。家を存分に使いこなしているグレイエムさん一家。DIYで手を入れたり改造したり、これからさらに心地のいい家に成長していくはずだ。奥に広くなっている変形敷地。敷地に沿って家を建てたことで、開口部を大きく取ることができた。ガルバリウムの外壁。玄関の庇がアクセントに。外からも丸い照明器具が見える。伊藤暁(伊藤暁建築設計事務所)所在地神奈川県横浜市構造木造規模地上2階延床面積106㎡
2019年02月27日ワンフロアのようにI邸は築18年の住宅のリノベーションだ。改築前は細かく区切られて小さな部屋がたくさんある間取りだった。そこで「ワンフロアのような感じに」と建築家に依頼した。「あと、廊下を無くしてほしいとお願いしました」と奥さん。「子どもが大きくなって外から帰ってきたときに、廊下があると顔を合わさずにそのまま自分の部屋に行ってしまうかもしれない。それがいやだったので、できるだけオープンにしてくださいと」「ワンフロアのように」というリクエストに対し、あえて既存の壁を一部残した上で穴(開口)を開けていった。グレーの床はフレキシブルボードの表面を研磨した上で撥水剤を塗布している。あえて壁を残す「ワンフロアのように」というリクエストを受けた建築家の桐さんは、あえて既存の壁を部分的に残すという選択をして提案を行った。「壁をすべて取り払うこともできましたが、ある程度残し、その残した壁でフレームをつくって、フレームの向こうにまたフレームが見えるという構成にしました」(桐さん)。この提案を受けた奥さんの感想は「壁をぜんぶ取ってしまったほうが広く感じられて気持ちいいのでは?」だった。そしてまた、「壁を残したほうが室内の風景の変化が楽しめる」という桐さんの説明にも「実際はどうなんだろう」と思っていたという。しかし住んでみるとその思いは大きく変わった。桐さんが言った通り、室内をさまざまに縁どる壁/フレームのおかげで移動のたびに見える風景が刻々と変わっていく。そして「壁があることで空間が区切られている意識もあって、子どもたちも“ここらへんで遊ぼう”と。わたしも片付けなどをする時などには“だいたいこのあたり”というふうになんとなく空間を区切ることができるのがいいですね」と話す。リビングからダイニング・キッチンを見る。空間にさらに変化をもたらすために壁の開口部分の高さを変えている。天井を抜くとても低い印象があった既存の天井を取り払うという提案が出たのは最初の打ち合わせ時だった。「天井を抜けば気積が確保できて気持ちのいい空間になるというのは予想していました。それで屋根裏をのぞいてみたら大きな気積があったので、やはり天井をはがそうということになりました」(桐さん)。これで頭上に広々とした空間を確保することになったが、奥さんから「トップライトを付けたい」というリクエストが出されたため、視線が空まで抜けてさらに開放的な印象が強まることに。壁の棚はあえて存在感のある厚いものに。ダイニング・キッチンの家具はラワンの突板にオイル塗装。トップライトを2カ所に設けたため、室内は冬でも暖かい。さらに広く縦方向だけでなく横の方向でも空間を拡張した。かつてベランダがあった部分にまで室内空間を広げたのだ。「南側の開口は羽目殺しにしたいという希望があったので、だったらサンルームではないですが室内でも洗濯物を干せるように思いきり広げてしまおう」(奥さん)ということだったらしい。ベランダをつぶして軒先まで羽目殺しのガラス壁面を後退させた。「それによって既存のフレームの外側にもう1枚レイヤーがある状態をつくることができて、さらに空間が重層化した印象になりました」と桐さん。スチールの柱よりも外側は増築部分。階段近くから道路側を見る。壁と柱によって空間が幾重にも縁どられている。バルコニーのあった部分まで拡張して広く開放的なリビングスペース。寝室から階段越しにダイニング・キッチンを見る。生活感を消したいという奥さんの希望からごみ箱はキッチン下に納めている。1階から見上げる。1階にはIさんの祖母が暮らす。できるだけ空間が広く感じられるように浴室の壁・扉はガラスに。階段からダイニング・キッチンの天井部分を見上げる。この家に住み始めて1年とちょっと。Iさんはダイニング以外ではリビングに家族が集まることが多いと話す。「テレビの前のスペースが“家族の憩いの場”になっていて、あそこでゲームしたり遊んだりしています。とても開放的だし高さもあって実際の面積以上に広く感じられて、伸び伸びと遊べたり過ごしたりできるのが楽しいですね」奥さんはキッチンにいる時間が長いという。「子どもの様子をみながら料理ができるし、リビングにいる子どもとも会話しながら作業ができるのがとてもいいですね。あとはやはり壁や柱を残していただいたのが良かったと思います。風景の変化も楽しめるし、子どもはかくれんぼしたりとかしてこの空間を楽しんでいます」さすがに残した壁が「かくれんぼ」に使われるとは建築家も想定していなかっただろう。しかし言われてみると、かくれんぼに適した場所がそこここにあるのに気づく。ワンフロアの空間に壁が適度に残されているというところが子どもの遊び場所として打って付けなのだろう。ダイニングから“家族の憩いの場”であるリビングスペースを見る。ベランダのあった部分まで室内が拡張されている。I邸設計KIRI ARCHITECTS所在地東京都杉並区構造鉄骨造規模地上2階延床面積77.8㎡
2019年02月25日寒い冬の日は、あたたかな紅茶を淹れて穏やかな時間を過ごしたいもの。そして、お気に入りのティーポットがあると、お茶の時間がより一層楽しいものに。今回は、紅茶の本場イギリスの伝統的なティーポットや、バウハウスの思想をふまえたティーポット、日本の工房のガラスポットなど、8ブランドを厳選してご紹介。《 Brown Betty 》ティーポット 2カップ ¥2,500 ティーポット 4カップ ¥2,800 LABOUR AND WAIT TOKYOティーポット 4カップ ¥7,800 マグ ¥2,000 ともにLABOUR AND WAIT TOKYO手前、新作のティーポットには、ステンレスのティーストレーナーが付く。下向きの注ぎ口も特徴。インサート ティーストレーナー ¥420 LABOUR AND WAIT TOKYOティーコゼー ( レッド・イエロー ) 各5,800 LABOUR AND WAIT TOKYO17世紀後半に誕生し、英国の家庭で長く愛され続けているブラウンベティのティーポットは、イギリスのスタッフォードシャーでとれる良質な赤土と、ダークブラウンのロッキンガム釉薬でつくられる伝統的な陶器。保温性・耐久性に優れ、安価であることから、日用品として普及し、イギリスの民藝ともいわれている。ブラウンベティの誕生により、かつてイギリスの上流階級のステータスとして広まった紅茶文化が、一般大衆にも普及した。そしてこの度、LABOUR AND WAITからブラウンベティの新作が登場。注いだ時に水滴が漏れず、スタッキングもできるという機能が加わり、内部にはステンレスのストレーナーも付く。伝統的な柄が魅力のティーコゼーは、ウェールズの120年以上続く伝統ある毛織工場が、LABOUR AND WAITのためだけにつくったもの。《 CORNISHWARE 》ベティティーポットS ( コーニッシュレッド ) ¥4,800 340mlT.G.グリーン コーニッシュウエア ( カサラゴ )ロージーティーポットS( コーニッシュブルー ) ¥6,800 560mlT.G.グリーン コーニッシュウエア ( カサラゴ )1864年創業、英国T.G.グリーン社を象徴するストライプのシリーズ、コーニッシュウェアのティーポット。どこか懐かしさを感じさせる縞模様の陶器は時代を越えて愛され、 ロンドンデザイン博物館の20世紀のデザインアイコンのひとつにもノミネートされた。今ではイギリスだけでなく世界中にもコレクターが多い。コーニッシュブルーは、コーンウォール地方の青い空と白い波をイメージして、ブルーとアイボリーの爽やかなボーダーに。コーニッシュレッドは、落ち着いたレッドと、あたたかみのあるアイボリーの組み合わせがノスタルジック。《 Price & Kensington 》ティーポット 2カップ (艶なしホワイト) 450ml ¥2,300 (ストレーナーなし) ¥3,600 (ストレーナーあり) プライス&ケンジントン (CINQ)ティーコージー 2カップ (ナチュラル) ¥4,000 ハイランド2000 (CINQ)コロンとした丸い形は、茶葉がジャンピングしやすい伝統なスタイル。コロンとした丸いフォルムが印象的なイギリスの伝統的なティーポット。プライス&ケンジントンは、英国陶磁器の街として知られるストーク・オン・トレントで、 1896年にプライス兄弟によって誕生し、創立以来4代に渡り、伝統的で機能的な製品をつくり続けている。丸みを帯びたポットは、お湯を注ぐと茶葉がジャンピングしやすいので、おいしい紅茶を淹れることができる。イギリスの老舗ニットブランド、ハイランド2000のティーコージーは、英国羊毛公社に認められた高品質なウールを使用し、ハンドフレーム手法によってたっぷりと贅沢に編み上げられたもの。古き良き時代の英国ニットの風格が魅力。《 Ingegerd Raman 》左からティーカップ S ( ホワイトマット ) 180ml ¥9,000 ティーカップ S ( ブラックマット ) 180ml ¥9,500ティーカップ M ( ブラックマット ) 210ml ¥11,000 ティーポット S ( ブラックマット ) 250ml ¥27,5002016株式会社左からティーカップ S ( ホワイトマット ) 180ml ¥9,000 ティーカップ S ( ホワイト ) 180ml ¥5,000 ティーポット S ( ホワイト ) 250ml ¥18,5002016株式会社やわらかな手触りの黒と白のマットな釉薬は、このコレクション用に特別に開発されたもの。ツヤのあるホワイトも新たに登場。手入れがしやすく、価格も抑えめに。スウェーデンを代表するデザイナー、インゲヤード・ローマンによる、有田焼の陶器ブランド2016/(ニーゼロイチロク)のモダンなティーセット。エッジの効いたミニマムなフォルムのポットやカップは、単体でも、スタッキングしても、日常のどんな場面でも美しい佇まいを感じられるデザイン。また、それぞれの蓋は、カップソーサーやプレートとしての機能も合わせ持つ。有田焼の伝統と風格を感じるしっとりとした釉肌も魅力のひとつ。オールマイティなホワイトは、ビスケットと紅茶に、マットなブラックは、和菓子と日本茶にも合いそう。《 Keramische Werkstatt Margaretenhohe 》カップM (ライトブルー マット) ¥5,000 ティーポット (ライトブルー マット) ¥24,400 マルガレーテンヘーエ 工房 ( リビング・モティーフ )ドイツの陶芸工房マルガレーテンヘーエのオブジェのように美しいティーポット。丸みを帯びた特徴的なフォルムは、優美でありながらも彫刻的でミニマル、手仕事の跡を残しすぎない凛とした佇まいに惹かれる。東洋的で美しいブルーの釉薬も唯一無二。マルガレーテンヘーエ工房は、1924年にバウハウスの影響下に設立。ディレクターの李英才(リー・ヨンツェ)は、ソウル芸術教育大学を卒業後、ドイツ・ヴィースバーデン芸術大学の彫刻科に通いながら陶芸を学び、ドイツでの生活に様々な刺激を受け、作品をつくり続けている。《 Wilhelm Wagenfeld 》ヴィルヘルム・ヴァーゲンフェルド ティーカップ & ソーサー ¥7,500 ヴィルヘルム・ヴァーゲンフェルド ティーポット 1500ml ¥45,000 イエナグラス ( ツヴィーゼル・ブティック代官山 )いつかは欲しいと憧れるドイツ、ヴィルヘルム・ヴァーゲンフェルドのティーセット。バウハウス出身の工業デザイナー、ヴィルヘルム・ヴァーゲンフェルドが1931年にデザインを手掛けたティーシリーズは、バウハウスの造形思想をふまえ、耐熱ガラスのもつ実用性と繊細で美しい質感を生かして、すばらしいデザインと機能の融合に成功。彼の代表作であると同時にデザイン史上の傑作といわれている。現在では、ニューヨーク近代美術館を始め、世界中の美術館で永久展示をされている。《 STUDIO PREPA 》ティーポット Φ105 H170mm ¥22,000 スタジオプレパ ( リビング・モティーフ )長野のガラス工房、STUDIO PREPAによる耐熱ガラスのティーポット。ガラスポットに、あけびの持ち手を組み合わせたシンプルなデザインは、日本の伝統的な急須をアップデートしたようなモダンな印象。注ぎ口には、デザインの邪魔にならない専用のステンレス製の茶こしが付く。《 H.P.DECO 》ガラスティーポット 1000ml ¥7,800H.P.DECO日本のガラス作家が手がける耐熱ガラスのティーポット。球状に近いコロンとしたフォルムが可愛らしいポットは、ジャンピング空間の確保、ガラスのストレーナー、液垂れしない注ぎ口など、見た目だけでなく、機能性にも徹底的に拘って制作されているそう。ガラス製のストレーナーは、茶葉の香りや汚れが付きにくく清潔を保てる。別売りのキャンドルウォーマーを使えば保温も可能。shop listH.P.DECO03-3406-0313カサラゴ03-3987-3302CINQ0422-26-8735ツヴィーゼル・ブティック代官山03-3770-35532016株式会社0955-42-2016リビング・モティーフ03-3587-2784LABOUR AND WAIT TOKYO03-6804-6448商品価格は、消費税別の本体価格です。cooperation : AWABBES・UTUWA
2019年02月20日煙突との出会いが始まりだった吉祥寺の賑やかな商店街から1歩入ると、そこは閑静な住宅街。以前は鍼灸院だった築20年程の3階建て鉄筋コンクリートの建物を、2世帯で暮らす戸建てにリノベーション。住人は店舗のディレクションや空間設計を手掛ける鈴木善雄さん、舞さんご家族と、舞さんのご両親の引田ターセンさん、かおりさんのご夫婦だ。「結婚した当初は、いつか古い物件を改装して暮らせたらなと考えていましたが、義父母からいい物件があるから一緒に住まないかという話をいただいて。訪れてみると、1階に暖炉のある住宅でした。煙突のある家なんて、東京ではなかなか建てられないけれど、ここならずっと自分が憧れていた薪ストーブも設置できるだろうと」そう語るのは、新木場で複合施設「CASICA」のディレクションを手掛ける鈴木善雄さん。1階はご両親の住居、2階はゲストルーム&作業場、3階を鈴木さんご家族の住居に。2世帯それぞれの、思い思いのリノベーションが始まった。ヨーロッパの古い照明に、日本の古道具の作業台など、年代を感じさせるインテリアが味わい深い3階。昨年11月、新木場にオープンした複合施設「CASICA」は100%LIFEでも掲載。「CASICA」「スタンダード トレード」にリノベーションを依頼。ホテルのように洗練されたシンプルで居心地のいい1階。古家具を独自に再構築鈴木さん家族が暮らす3階のフロアは、3LDKだった間取りを70㎡ほどのワンルームに変更。荒々しい古材を敷いた床に工業的なペンダントライト、日本の古い家具などがあしらわれた空間は、おふたりが手掛ける店舗の世界観のよう。「何風というのではなく、好きなものを選んで、縛られることなく構築したいんです。インダストリアルと和家具が合わないわけではないし、トルコのラグもあればアメリカのソファなど、国も色々とミックスしていいと思っています」。リノベーションは、善雄さんと大工仲間達とDIYで少しずつ着手していったそう。壁づけのキッチンは、和箪笥や小引き出しなどをパズルのようにはめこんだ棚に目を奪われる。「日本のものをどう現代的にアレンジするか、と常に考えています。畳からイスの生活になった今、和箪笥は床の上じゃなくてもいいですよね」。斬新なアイデアの溢れる空間を彩るのは、仕事の買い付けで見つけた古道具だったり、全国を車で旅する中で出会ったものだったり。愛着のあるものたちが、素朴な素材感が活かされた空間に味わいを加える。「キレイすぎると落ち着かないんです」と善雄さん。キッチンという境を設けず多様性のある空間にしたかった、という暮らしの中心にあるダイニングテーブルで。南北に開口があり光が通り抜ける。床には室内用ではないインドネシアのチーク材を張った。キッチンには、少しずつ集めた古家具などをパズルのようにはめ込み、独創的な棚をアレンジ。抜けのあるワンルームにスケルトンにした空間に、あえて1カ所仕切りを設けたのはアトリエ。「鉄加工ができる友人に頼んで、窓枠を作ってもらい、わざと錆びさせてガラスをはめ込みました」。現在は仕事部屋にしているが、保育園に通うお子さんがもう少し大きくなったら、いずれ子供部屋にする予定だそう。「壁は後からいくらでも作れるので、最低限に。ベッドルームにも仕切りは設けませんでした」。床と同じ古材を面材にして、壁一面に収納を設けたベッドルームは、サンルームからの明るい日差しで満たされる。「ここに暮らすようになって、グリーンを育てるのも楽しくなりました」。薪ストーブが鎮座するリビングで、家族で語らう暖かな時間も偲ばれる。「1階には両親がいることで、一緒に食事をしたり、息子を見てくれたり、たくさんの時間を共にするようになりました。仕事の話も夫も交えて色々と話せる関係なので、いつもたくさんの刺激をもらっています」と舞さん。LDKの一角に仕切りを設け、アトリエを設置。ガラスの窓を光が通過する。現在、仕事部屋にしているアトリエは、いずれは子供部屋にする予定だそう。リビングに隣接したベッドルーム。壁のように見えるよう、床と同じ素材で収納を設けた。南側のサンルームは植物がよく育つ。お子さんの遊び場にも。ESSE社の「THE IRONHEART」が置かれたリビング。クックオーブンなど機能も充実。チェーンソーと斧で薪割りをしているそう。北欧テイストの1階「早期リタイア後がこんなに充実するとは思っていませんでした」。と語るのは、舞さんのご両親、引田ターセンさんとかおりさん。人気のパン屋さんとギャラリーを営みつつ、2世帯での暮らしを楽しんでいる。140㎡ある1階は、3階と打って変わって、北欧テイストで統一されたシンプルでナチュラルな空間が広がる。「以前からおつきあいがあって、家具のデザインなどが好きだったスタンダードトレードさんにリノベーションをお願いしました」。薄い緑の混ざった珪藻土の壁、オークの天井や家具、麻混の絨毯の敷き詰められた床。穏やかで居心地のよい空気が流れる。「私たちが求めたのはやりすぎない、主張しないインテリア。和でも洋でもなじんで、ずっと使い続けられるテイストが好きなんです」。1階は床面積140㎡の広々空間。暖炉のある山小屋風の空間だったのを、北欧テイストに。コンクリートの冷たい躯体に、木とガラスで温もりを加えた。ハンス・J・ウェグナーのテーブル、フリッツ・ハンセンのイスなど、内装に合わせて家具もセレクト。吉祥寺で「ギャラリーフェブ」、パン屋さん「ダンディゾン」を営む、ターセンさんとかおりさん。普段はキッチンとリビングの間の空間で仕事をすることが多いそう。ワンルームを半オープンの仕切りと床の段差が緩やかに分ける。人の集まる居心地のいい家に鍼灸院だった南側のスペースは、外構の緑とルーバー状になったガラス窓から光が差し込む、明るいベッドルームに。暖炉のある広々としたLDKは、大人数でパーティーを開いたり、何人かで料理をしたりも可能な余裕のスペースを確保した。「婿の誕生日会には40人くらい集まりましたよ。キッチンはアイランドにシンクを入れるかどうか悩みましたが、オープンなキッチン台にして正解でした。お料理を運んだりするのを、みんなが手伝ってくれるんです」。一部分には仕切りを立てて、キッチン内すべてを見せないよう細かな計算も。「家は私たちにとって充電をするところ。明るくて風が通って、“ああ、家に帰りたい”と思えるような快適な場所にしておきたいですね」。その願いが結集した1階には、家族や友人たちが集まってくる。個性の違う2つのフロアのそれぞれの生活を、コンクリートの堅牢な建物が包み込んでいる。明るい日差しに包まれるベッドルームには、ウォークインクローゼットを設けた。ベッド脇のステップは、年を取った愛犬用。ベッドルームの入り口。ルーバー状になったガラス窓から光が差し込む。パーツにこだわり、イタリア製のグレーのタイルを貼ったバスルーム。微妙な陰影が奥行きを出す。余裕の幅を確保したキッチンでは、普段おふたり一緒に料理するそう。キッチン台の黒の面材がアクセントとなっている。パントリーにキッチンまわりのものを一括に。以前は勝手口だったところを塞いで、ガラスブロックを採用した。窓辺には、「ギャラリーフェブ」でもかかわりのある陶芸家・内田鋼一や、ガラス作家・イイノナホの作品を飾る。十字型のガラスをはめ込むようオーダーしたドア。玄関にあるイイノナホの照明がガラス越しに見えるのが、かおりさんのお気に入り。約100坪の敷地に建つ、鉄筋コンクリート3階建ての建物。元オーナーとは知り合いで、縁あってリノベーションが実現。
2019年02月18日子どもメインの家づくり鈴木邸が建つのは目黒区にある旗竿敷地。竿の部分の先に見えるその姿は他では見たことのないものだ。妻側の壁面がそのまま扉のように外へと向かって開いているように見えるのだ。奥さんとニジアーキテクツの谷口さんが保育園のママ友だったところから設計をお願いすることになったという鈴木夫妻。リクエストとして伝えたのは「リビングは明るく、また人が呼べる空間に」「キッチンから階の全体が見渡せるように」「お風呂は広く掃除がしやすく」などだったが、ともに幼い2人の子どもの親であることから、子どもを中心にした家づくりになったのは自然な流れだった。「リクエストとしてお伝えはしませんでしたが、子どもメインで考えていました。設計サイドでも子ども目線で考えてくれて、子どもが伸び伸びと遊べる空間もつくっていただきました」と鈴木さん。旗竿敷地の竿の先の部分に壁を外へと向けて開いたようなエントランスがつくられている。階段を上がって左側に玄関がある。半地下をつくって広く明るく「お2人の人柄をよく知っていたのでイメージはしやすかった」と話すのは谷口さん。夫で設計事務所を共同主宰する原田さんとまず考えたのは、半地下の部屋をつくって最上階の2階を明るく広い空間にすることだった。「3階建てにするとどうしても北側斜線の制限から3階が窮屈になってしまう。それだったら建物を少し沈めて最上階を思いきりゆったりした空間にしようと考えた」(原田さん)という。1層を完全に地下に埋めると工事費がかさむので、大きな影響の出ない範囲内に収めるため1.5mほど沈めることに。2階のベランダ。左がリビングで右が外側へと開いた袖壁。2階リビング。左の袖壁からの反射光が室内へと入る。このように開口を開けると袖壁の部分までリビングが延長したように感じられる。横幅いっぱいの大開口をつくれたのはこの袖壁のおかげ。構造的にも防火の上でも役立っている。多用途な袖壁これで2層分に近い高さとなった2階部分は、扉のように開いた部分につくったベランダがリビングが延長しているように感じられることとも相まって実際の床面積以上に広く感じられることに。このベランダはまたコンパクトな敷地で子どもたちが走り回れる場所を確保することにもつながっている。旗竿敷地にもかかわらず十分な明るさを確保できたのは三角屋根に設けたトップライトの存在もあるが、妻側に袖壁をつくったことも大きい。2階リビングの大開口が可能になったのはこの外側に開いたように見える袖壁があるおかげなのだ。構造と防火面でも役立っているほか、この袖壁は周囲から家族のプライバシーも守っている。1階も同様で、玄関扉にガラスを使えたのも寝室の開口を壁の横幅いっぱいに開けられたのもこの袖壁が隣家との間にあるからだ。南側に設けたトップライトから光が室内へと降り注ぐ。テレビの上の壁面前にはロフトスペースがつくられている。キッチン部分の壁の高さは1.2m。リビングに座っている人からは調理している手元が見えない高さという。玄関を入って左側に寝室、その奥に浴室がある。浴室はリクエスト通り「広く、かつ掃除がしやすい」ものになったという。階段は段板の裏にリブを設けずすっきりとしたデザインに。リブのかわりに蹴込みの部分に板を渡して補強している。玄関前から敷地の竿の部分を見る。右の寝室部分の開口は壁の横幅いっぱいに開けられている。寝室前から階段を見る。一筆書きのように続く手すりが美しい曲線を描いている。将来は子ども部屋として使う予定の半地下の空間。上のお子さんはこの半地下の空間が家の中で一番のお気に入り。朝起きるとすぐ「地下に行きたい」と言うほどという。大人も満足設計サイドでは夏場に2階の大開口を開け放しにしてベランダで子どもたちが水遊びをすることも想定したという。去年は「たらいみたいなものをベランダに出したら“キャッキャキャッキャ”と言いながらみんなで走り回って」(奥さん)と想定通りの展開になったそうだ。夫妻の希望であった「子どもメインの家」になったが、もちろん大人も満足させる空間となっているようだ。「リビングを子どもが大きくなってもみんなが集まれる空間にしてほしいというのは設計の途中でお伝えしたんですが、今まさにわれわれ大人もここにほとんどいるような感じになっています」(鈴木さん)奥さんの自慢はトップライトという。「朝起きて2階に上がると、天気のいい日はパーッと光がきれいに通って、夜は夜でお月様がきれいに見えるんです」。「初夏とかは、冷房を付けないでもここ(大開口)とトップライトを開けると風が抜けて」とても気持ちよく過ごせるのだという。「土地を最初に見に来た時にわれわれが共通して抱いたのは、竿の部分から渦を巻くようにして上昇していくイメージでした。それを空間としてつくれたと思っています」と話す原田さん。渦の終着点はリビングの家族の座るあたり。鈴木邸設計ニジアーキテクツ所在地東京都目黒区構造木造+一部RC造規模地上2階地下1階延床面積64㎡
2019年02月13日