LITALICO発達ナビがお届けする新着記事一覧 (122/132)
次男の抱えていた困難と、勧められた投薬次男がADHDと診断を受けたのは小学校3年生のころでした。年度が替わった頃から教室での離席や他害が目立つようになり、色々と調べたりあちこちに相談したりしている中で「発達障害では」という可能性が浮上しての診療予約、発達検査と医師による診断でした。診断結果を聴きに行った場で医師が提示した色々な対応策の中のひとつが、治療薬の投与でした。我が子への投薬、「大丈夫なのかな…」という不安出典 : 子どもに対する精神薬の投与、という難題を前に、不安や怖さが募りました。「もしやってみて、なにか息子に重大な問題が起こったらどうしよう…」ネットで色々と情報を探してみましたが、子供への投薬を強く否定するものがどんどん目に入ります。ホメオパシーやサプリメントなど、投薬以外の選択肢を勧めるものもたくさん。情報が多すぎて混乱して悩んでいたときに、相談に乗ってくれた友人がかけてくれた言葉がありました。「納得いくまで、聞けばいいんだよ」友人はこう言いました。「不安なら、飲ませるにせよやめるにせよ、とにかく納得がいくまで医者にちゃんと話を聞いてごらん。聞ける医者に出会うまで病院を替えてもいいんじゃない」ハッとしました。素人の私が、つたない知識や偏った情報だけで一人で全部決めるなんてそもそも無理だったんだ。それをやろうとしてたから混乱していたんだなぁと。次の診察のときに、医師とゆっくり話す時間を取ってもらいました。ネットで調べたことや本で読んだことをベースに、不安に思う部分やわからないことを聞き、最後に一番知りたかったことを尋ねました。「先生、もし飲ませてみて子供や私が『いやだ』と感じたらやめてもいいんですか?」お薬はいつでも止められる、支援の方法は何度でも変えられる出典 : 医師は即答してくれました。「もちろんです、副作用や違和感があったり、合ってないとか違うと感じたらいつでもやめていいです。その時にはまた違う方法を考えましょう。」先生のその言葉が、私の決断の最後の決め手になりました。自然療法と呼ばれたりする、標準医療とは違う方法で、体をメンテナンスすることを目指す考えや手法はたくさんあります。そのひとつひとつの善し悪しは私にはわかりません。手当法やマクロビオティック、ホメオパシーなどなど…私もこれまでいろいろな療法の本を読んだり、試してみたりしたことがありましたが、その中で感じていた違和感のひとつが、極端な選択肢の無さでした。選ばなくていい安心感と、「たったひとつ」に身を委ねることの危険性自然療法とされるものの多くに共通する傾向として、「その療法以外の選択肢が極端に少ない、または排除されている」というものがあります。特定の自然療法を勧める方の中には、標準医療とされるものを否定し、薬やワクチンの接種を拒否する傾向が強いものも多いです。次男の投薬を勧められたときの私は、とても不安でした。将来への不安も強く、現状の困難に対処するために奔走して疲弊しきった状態で、次男の今後の健康に関わる選択の責任が自分たちにのしかかる。またそんな重い荷物を背負わせるのか…そんな気持ちになったのを覚えています。心が弱っているとき、選択肢は少なければ少ないほど安心するものです。自分の代わりに、自分が不安に思っている何か(お薬もそのひとつ)を否定し、「こちら側が正解だよ」と導いてくれる存在に出会ったなら、心強く感じることもあるでしょう。しかし、そんな「心強い存在」たった一人、「救ってくれそうな療法」たった一つに身を委ねてしまったら、どうなるでしょう。息子の当時の主治医が言ったような「ダメだったら違う方法をやってみましょう」といった、状況を見ながら柔軟に対応を変えていく可能性が閉ざされることになります。目の前にある「○○療法」の中でだけで解決していく道しか、残されていないことになってしまうのです。私は夫や周囲の友人に相談して負担を軽くすることができたし、医師の言葉でさまざまな選択肢を落ち着いて比べて選べるようになったけれど、もし自分一人で抱え込んでしまっていたらどう転んでいたかわかりません。そのときどきのベストを模索する環境と、それを求めることの大切さ出典 : 発達障害児との暮らしは、試行錯誤の連続です。生活の中でもいろいろな工夫をやってみては本人に合うものを探していく。医療もそのなかのひとつだと私は思います。ライターのなないおさんがこのサイトで以前、サプリメントと薬の併用について医師と相談した経緯を書かれています。娘に対して私がサプリメント(ビタミンB群と亜鉛)を試してみたいと相談してみました。先生は、サプリメントの効果に関しては明言されませんでしたが、試してみること自体には否定はされませんでした。ただし、試す場合には薬との飲み合わせが大丈夫か確認し、子どもの体に合った量をきちんと計算した上で飲むほうがよいとアドバイスをくださいました。(中略)薬剤師の先生からも説明を受ける機会を作っていただきました。いつも薬は院内処方で出してもらっているので、薬剤師の先生にも気軽に相談することができました。お医者さんの性格や診療時間などで限界はあるかもしれませんが、こんなふうにゆっくり相談ができる病院を求めて私も転院を経験しました。今は最初の主治医より更に長い時間、薬についても細かく相談しながら調整をしてくれる病院にかかっています。なないおさんのように医療のなかにサプリメントを組み込んでいくような柔軟な対応も可能でしょうし、さまざまな療法と標準医療を両立しながら最適な方法を模索している方もいらっしゃると思います。大事なのは「そのとき何を選ぶか」ではなく「そのときどきのベストを模索できる環境を求める」ことだと思うのです。いつかは子どもたちが「自分で選ぶ」ことになる。それまでに親が出来ること出典 : 親だけが判断するのでもなく、医師が一方的に決めるのでもなく。子どもに関わるそれぞれの大人が希望や診断内容や知見について情報を出し合い、相談し、コミュニケーションを深め、その子に合ったそのときのベストな方法を模索していくことができる環境。それを整えることが、発達障害を含むハンディのある子たちのために大事なことだと私は思います。いずれは子どもたちが、私たち親が培ってきたその環境で、親に代わり自分で自分の方針を決めていくことになる。そのときに選べる道が少なくなってしまわないように、自分だけで抱え込まないように、可能性を潰さないように、選択肢のない未来にならないように……岐路に立たされ迷ったときにはいつもそれを意識するようにしています。
2016年10月27日アスペルガーだと公表してから、「困っていること」ばかり聞かれるようになった出典 : みなさんこんにちは、高校教師のゴトウサンパチです。36歳でアスペルガー症候群と診断を受けてから10年が経ちました。社会全体としても、発達障害に対する認知や関心が高まり、その間、ボクも著書を出したり、発達障害関連の学会での発表をやらせていただいたり、講演依頼もいただくようになりました。そうした場でお願いされることのほとんどは、発達障害への支援を充実させるために、ボクが何に困っているのかを話してほしい、というものでした。ボクが当事者の1人として話すことで、発達障害への研究や支援が進み、それでたくさんの方が救えるならありがたいことだと思い、ボクは一生懸命お話してきました。他にも大勢いる発達障害当事者たちの代弁者のつもりで、自分が何に困っているのかを発信してきたのです。でも、話しているうちに、何かが違うのではないかという感覚になってきました。当事者の代弁者になんてなれるのか。ボクの困り感をみんなに伝えることが、いったい何になるのか。今日は、そんな逡巡から始まった、ボク自身の内面の変化についてお話します。どれだけ話しても、自分の感覚を他人と分かち合うことはできない出典 : 多くの人からの相談に答え、講演などで話し続けるなか、ある時ボクは気づいてしまったんです。ボクには、「発達障害当事者」の代弁や代表なんてできないということに。そんな風に思ったのは、どれだけ話しても、当事者の代弁はおろか、ボク自身の気持ちを理解してもらえることは決して来ないのだということを知ったからです。ボクの感覚は、ボクだけの感覚なのでいくら説明しようと試みても伝わりませんでした。ボクが絵を描いて説明しても、こうして文章を書いても、それを見る人読む人のその時の感覚や知識に任せざるを得ないのです。つまり、全く同じ気持ちを、2人の異なる人間が分かち合うことはできないのです。それを言っちゃあおしまいよ、支援者の方々はそう思われるかもしれませんが、どうしようない事実です。他の多くのみんなの感覚と、自分の感覚は決して同じではないこと。当事者の方には一刻も早く気づいてほしい。でもボクはこのことをネガティブには捉えていません。決して絶望なのではなく、むしろスタートラインだと思っています。自分と他人は違うのだということを受け容れて初めて、ボクはボク自身の幸せを追求できるようになるからです。他人と比較すればするほど、「困り感」は増幅していく出典 : アスペルガーだと公表してから、周りからいただく質問は「何に困っているか」という話題がほとんどだとお話しました。でも、そもそもボクたちが抱く「困り感」とは、いったいどこから生まれるのでしょう?思うにボクらは、自分と何かを比較することで、差を見つけ、そこからやり場のない困り感を生み出している気がします。わかり合えるはずなのに戦ってみたり、できないことをしようとしてみたり、必要以上に不安に感じたり。できることだけをすればいいのに周囲と合わせなくちゃいけないからとか、仕事だからとか、成績だとか、これができなきゃ将来困るからだとか…そんな風にして周囲と比べ、差を埋める努力を重ねれば重ねるほど、良くも悪くも自分らしさを認めることが減っていく。ボクはそんな自分に疲れたんです。何をやっても上手くいかない日々、悲しくて泣いた日々を思い出すことさえ嫌なんです。実は未来に期待することも嫌です。それより今、幸せでいたい。自分らしく生きていたい。ボクの内側からそんな声が溢れていることに気づきました。そこからボクは、考え方を少し変えてみることにしました。困った時は、困っていることに注目するのではなく、「世界に自分1人であれば、こんなに困ることはないはず」「いつだって1人ぼっちになってもいいように、自分にできることを追求してみよう」そうやって考えることにしたのです。別に何かを始めることではなく、そんな風に意識を変えただけです。驚くことにそれだけで、徐々に葛藤が減り、トラブルが減り、心が穏やかになり、格段に楽しい日々を送れるようになりました。なぜか以前より友達も増えたんですよ。それからは、“他人”との差ではなく、“ボク自身”の内面の変化に気付けるようになりました。自分を観察し昨日とは違う自分を発見するのは楽しいことです。いろいろな実験をしてみることも楽しいです。例えば、散歩したり、食事の内容を変えたり、そんな些細なことで、今日という日は昨日とは違う展開を見せるのです。それは、社会でも、周囲でもなくボクが変化しているからに他なりません。「困っている人の支援」という発想から抜け出そう出典 : ボクに質問や相談をしてくれる人のなかには、発達障害のある人の支援をしたい、という人も多くいます。彼らと話していると、実は「支援したい人も困っている」のだということに気づきました。「困っている人を支援したいけど、どうしたら良いかわからない。彼らが何を感じているか分からない」そのことが彼ら支援者自身の「困り感」を招いていることがしばしばあります。ボクはそういう人たちにも、まずは自分の幸せを第一に考えてほしい、と伝えたい。困っていることを解消するというのは、お互いの間にある「差を埋めようとする」ことです。そもそもそんな期待を持つことを、やめてしまってはいかがでしょうか。あなたにできることだけをしてあげる。それしかありませんし、できないことを前もってハッキリ伝えてあげる方がいいと思います。抱えきれないことを引き受けると、支援者であるあなた自身の困り感が増えてしまいますし、困り感を抱えたもの同士のやり取りはお互いがより困るだけです。できないことをできないと言うと、その時はたしかにギクシャクしますが、大丈夫、正直な行動は時間がしっかり解決してくれます。ですから、あなたは自分の幸せを第一に考えてください。ボクは、他人に合わせることをやめ、自分の幸せを第一に考えるようになってから、不思議と相手の変化にも敏感に気付くようになりました。もしかすると、お互いの変化を認め合い、伝えることが本当の支援なのかもしれません。きっと、ボクもあなたも、お互いが正直に向き合うことで、すでに支援し、支援されているんですよ。さて、今回言いたかったことは言えました。最後まで読んでくださってありがとうございます。
2016年10月27日発達障害児を育てているといつも言われる、「子どもの得意を伸ばそう」という言葉出典 : 我が家には6歳になる発達障害の息子がいます。小さい頃からちょろちょろと動き回り、他人の気持ちもお構いなしに自分の好きなことを喋り続け、家族や集団の中にいてもどうしても叱られる回数が多くなります。そんな彼を育てることに行き詰まるたび、言われること…それは「発達障害児は、叱られることが多くて、どうしても自己肯定感が低くなりがちです。この子の好きなこと、得意なことを伸ばしてあげましょう」という言葉です。そして親戚やママ友に、息子が発達障害であることをカミングアウトしたときにも、同じことを言われます。「発達障害の子って、好きなことにはめちゃくちゃ集中しちゃうんでしょ?」「好きなこと、得意なことを伸ばしてあげればいいんじゃない?」極め付けは、いつも最後に聞かれるこの質問。「この子の好きなことって何?」これにはいつも答えが見つからず、私は絶句してしまうのです。気付けば、息子を天才児にしようと奔走していた私…出典 : 「発達障害の子は、好きなことを伸ばせばいいんだよ。で、何が好きなの?」と聞かれるたびに口ごもってしまう私は、いつしか必死に息子の才能探しをするようになってしまいました。ちょっと何かに夢中になっている姿を見れば、「もしかしたらこの子は、これに才能があるかもしれない!」と思って、習い事や道具を探してしまう毎日。そして周囲の目を気にするあまり、私は次第に息子を天才児に仕立て上げることを望む自分がいることに、気付いたのです。さらに、私を追いつめたのは、「好きなことを極めさせ、それを仕事にさせればいいんじゃない?」という周囲の言葉でした。発達障害児を育てていると、必ず頭をもたげてくるのは「この子は果たして自立することができるのだろうか」という遠い将来のこと。私は毎日考えるのです。自分の思いついたことを一方的に話し、相手の質問にまともに答えなかったり、そうかと思えば、相手の気持ちも考えず、思っていることをズバズバと言ってしまったり…。こんなにズレた会話ばかりしている息子は、将来まともに働いて食べていけるのだろうか、こんなすぐに大切なことを忘れてしまう息子は、自活ができるのだろうか…。毎日こんな風に将来のことで頭を悩ませていると、つい「好きなことを仕事にさせれば…」という言葉にすがってしまう自分がいました。そして訪れた、「好きなもの探し」への憤りとむなしさ出典 : 息子に発達障害という診断が下ってから、「この子の好きなことは?」と探し続けた数年間、私には焦りしかありませんでした。けれども、息子の苦手を支援することに追われるばかりの毎日。息子の「好きなこと」「才能」なんて、私にはちっとも見えてきませんでした。次第に、「好きなことを仕事にすれば?」と言われるたびに、「なんで発達障害児ばかり、小さい頃から好きなこと探しをしなければならないんだ」「息子の仕事のことまで、他人に心配されるいわれはない」という風に、イライラするようになってしまったのでした。息子は「好きなこと探し」につき合わされ、新しい本、新しいイベントを次々に私から突き付けられていました。しかし、「新しいこと」が苦手な息子は、そのたびに疲労で座り込んでしまいました。疲れ果てた息子をおんぶして帰宅するたびに、「私は一体何がしたいのだろう…」と思うのでした。好きなことって、こんなに躍起になって探すものなの?出典 : 息子の好きなもの探しをして追い詰められるあまり、次第に息子の何もかもがダメなように思えてきてしまった私。でもある日、ふっと気付いたのでした。「別に、将来の仕事に繋がるような、特別な『好き』でなくてもいいんじゃないか…」と。息子の将来の自立や自己肯定感の低下を心配するあまり、私は息子の飛びぬけた才能を探し続けました。でも、「好きなもの」ってそんな大げさなものじゃなくて良いのです。毎日の生活の中で、ちょっと子どもが楽しいな…と思うことを、否定せずに一緒に楽しんであげる、それが1番大切なのです。親の不安や焦りで見失っていたのは、子ども本来の姿だった出典 : 息子は車が好きです。車の種類はいくらでも覚えます。絵を描くことが好きです。毎日何時間でも絵を描いていて飽きないです。テレビアニメを観ることが好きで、セリフを全部覚えてしまいます。犬が大好きです。そして何よりも、幼稚園のお友達が大好きです。生活の中に沢山散らばっていた息子の「好き」を、実は私は1つも大切にしていなかったことに気付いたのでした。将来の仕事に繋がらないようなことでもいい、他人に誇れるようなことでなくてもいい、極めようなんて思わなくていい、小さな「好き」を大切にし、積み重ねることが大切なのです。発達障害児の「好き」は、別に何か特別なものではないのです。小さな「好き」を大切にしてもらった経験が、大人になってからのこの子たちを支えるのではないでしょうか。
2016年10月27日気分障害とは出典 : 気分障害とは常に気分が落ち込んだり、逆に高まることで日常生活に様々な支障をきたしてしまう心の病気です。この障害名は世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)により定められています。気分障害とは気分に関する障害がある病状・疾患を一群としてまとめたものをさしますが、主に以下が含まれます。・うつ病エピソード・躁(そう)病エピソード・双極性障害(躁うつ病)・反復性うつ病性障害・持続性気分障害「エピソード」とは、症状が現れている状態であるということを表す用語です。上記の分類に当てはまらない場合は、その他の気分障害や特定不能の気分障害と診断されます。人は生活を送っていると少なからず嬉しいことや悲しい出来事に直面しますが、その際に気分が上がったり、気分が落ち込んだりしてしまうことは当たり前のことです。しかしこのように発生した感情を、自分でコントロールできなくなることがあります。こうした状態が一定期間以上続いて仕事や私生活など普段の生活に支障がでている場合は、気分障害の可能性があります。参考文献: 『ICD-10』 2013年 中山書店/刊気分障害の種類と症状出典 : 『ICD-10』によると気分障害は大きく分けて5つに分類することができます。うつ病エピソードは気分の持続的な落ち込みを主体とした症状が現れている状態のことです。医師によってうつ病エピソードが確認されると、いわゆるうつ病と診断されます。うつ病エピソードが当てはまると診断された場合は、他の細かい基準が用いられ障害の程度が判断されます。厚生労働省のデータによると、日本においては「一生のうちにうつ病になる頻度は約15人に1人と考えられている」とされるとてもメジャーな疾患ですが、その中の4分の3の人は治療を受けたことがないと言われています。症状としては、・通常なら快楽を感じる活動に対して興味または喜びを感じなくなる・喜怒哀楽などの感情の変化が顕著に無くなってしまう・通常より2時間以上早く起床する・重度の抑うつ気分が午前中に現れる・食欲が激しく低下する・体重の減少・様々な欲求への著しい減退が挙げられます。現れる症状は人それぞれですが、『ICD-10』によるとこれらの症状のうち4つ以上の症状が2週間以上つづくとうつ病の基準を満たしていると診断されます。また、うつ病が重症になると妄想の症状が出ます。代表的なものは体の過度な不調があると妄想する心気妄想、自分はまずしいと思い込んでしまう貧困妄想、自分は犯罪など悪いことを行ってしまったと確信してしまう罪業妄想です。1990年のWHOの研究では「健康な生活を障害する疾患」の4位として発表されていましたが、2020年には虚血性心疾患に次いで2位に上昇すると言われています。その理由として社会のストレス要因が増えてきていることがあると言われています。また慢性疾患を抱えているとうつ病が合併しやすいといわれていることも挙げられます。例えばがんを発症している人のうちの20~38パーセント、糖尿病は25パーセントの人がうつ病を合併していると言われています。こころの耳l 厚生労働省気分障害l 慶応義塾大学病院躁病エピソードは爽快感、身体の快調感、幸福感があり、自信に満ち溢れ楽観的な考えに支配される症状が現れている状態のことです。医師によって躁病エピソードが確認されると、いわゆる躁病と診断されます。躁病エピソードが当てはまると診断された場合は、他の細かい基準が用いられ障害の程度が判断されます。躁病の症状としては、・活動的になる・口数が多くなる・注意不足、集中力低下によるミスが増える・睡眠欲求の低下・性的欲求が高まる・リスクを考えない浪費や無謀な運転などの常識をはずれた行動を起こす・社交的になる、または過度に馴れ馴れしくなるが挙げられます。『ICD-10』によると躁病の診断には上記の症状のうち3つの症状が4日以上持続していること、日常生活に本人が感じる程度のトラブルを起こしてしまっていることが条件となります。多くの場合、躁病の症状は徐々に始まり、何となく元気がみなぎってきたり、仕事の能率が上がったりすることで調子がいいと感じていきます。症状が重くなっていくと活動性が増加し、多くのアイデアを実行しようと一日中活動し続けます。この場合に睡眠時間が短くなってしまったとしてもあまり疲れたと感じません。当初は意識的に活動量を調整するように気をつけることができます。しかし、次第に調子が出すぎているという認識がなくなり周囲の人を考えない言動をするようになります。最終的には口数が多く、自己主張が強くなり、しきりに他人の世話を焼こうとし、対人関係トラブルを起こしてしまう傾向にあります。生涯にわたって躁病の症状しか発症しない単極性躁病はとても珍しく、躁病エピソードを発症している人のほとんどは双極性障害を発症しているといわれています。うつ病エピソードのみを2週間以上継続し、2回以上繰り返すと反復性うつ病性障害と診断されます。反復していると診断される基準として、先述したうつ病を発症した後2ヶ月以上同じような症状が現れない期間が存在することがあげられます。反復性うつ病性障害の一例として季節性感情障害が挙げられます。季節性感情障害とは主に秋から冬にかけて抑うつ状態となり、春には症状が改善するなど、抑うつ症状になる期間と回復する期間の転換が1年のうちの特定の時期に起こる疾患です。双極性障害とは一般的に躁うつ病と呼ばれる疾患です。双極性障害はうつ病エピソードと躁病エピソード両方を反復する場合、基準に当てはまると診断されます。初めのエピソードを発症してから次のエピソード発症するまで平均5年程度かかるといわれますが、エピソードを繰り返すごとに再発までの期間は短くなり、一つ一つのエピソードの継続期間はながくなるといわれています。躁病エピソードは急に発症することが多く、2週間から5か月程度持続します。一方うつ病エピソードは徐々に発症し、躁病エピソードに比べて発症期間が長い傾向にあります。双極性障害によって気分が高揚し、いらいらしたり、注意散漫になったり、誇大的になったりするなど対人関係などにも様々な障害を引き起こすことがあります。双極性障害は再発率が高いと同時に、自殺をしてしまう確率が精神障害の中で最も高い精神疾患の一つといわれています。双極性障害(躁うつ病)l 前田クリニック主に気分循環症・気分変調症をまとめて指す疾患です。躁病やうつ病の症状は当てはまらないけれど、明らかに気分が変わっていることが分かる状態をさします。■気分循環症通常は成人早期までに発症する双極性障害の軽症型です。うつ病エピソードと双極性障害の症状すべての条件を満たさない程度で、数日単位で落ち込んでいる状態と気分が良い状態が不規則に反復する期間が2年間以上続きます。気分循環症の症状としては、うつ病期間と気分高揚期間にそれぞれ3つ以上の症状が当てはまることが条件となります。うつ病期間:・エネルギーあるいは活動性の低下・自信が急に無くなるなどの自己評価の激しい変化・不眠・集中ができなくなる・引っ込み思案になり、社会からひきこもる・欲求の低下、喜びの感情の喪失・口数が少なくなる気分高揚期間:・エネルギーがありあまり、活動性が高くなる・睡眠欲求がなくなる・自己評価が過大になる・頭の働きがとてもよくなる・社交的になり、人付き合いがとてもよくなる・口数が多くなる・欲求を追い求めるようになる・過剰に楽観的になったり、過去に成し遂げたことに対して過大評価をしてしまう軽うつエピソードが優位の抑うつ型、軽うつエピソードと軽躁(そう)エピソードが同じ頻度で出現する定型的な気分循環症、軽躁(そう)エピソード優位の軽躁型の3つのパターンがあります。抑うつ型を発症している人が一番多く、割合としては気分循環症を発症している人の50パーセントを占めていると言われています。■気分変調症うつ病の診断基準を満たさない程度の軽度の抑うつ状態が2年以上持続する疾患です。うつ病と違い比較的短期間であれば気分が落ち込まない正常な期間が存在しても診断内容に影響がないと言われています。気分変調症の症状としては、気分循環症のうつ病期間に発症する症状に加えて、・涙もろい・物事に対して絶望感を感じる・日常生活でこなさなければいけない課題を対処しきれないという考えに陥る・将来や過去の出来事に対して考え込んでしまうなどの症状を発症します。これらの症状のうち3つ以上が当てはまると気分変調症を発症していると診断されます。持続性気分障害を発症している人自身は無気力感や気分の大きな落ち込みを感じていますが、社会的・職業的にはトラブルが発生していない場合が多いです。そのため本人も周囲の人も疾患を発症していると認識できず、本人は不調をそのままにしてしまう傾向があります。参考文献: 『ICD-10』 2013年 中山書店/刊気分障害を発症しやすい年齢出典 : うつ病はいかなる年齢においても発症しますが、発症率は思春期以降に大きく増加します。平均発症年齢は20歳代ですが、高齢者になって初めて発症する人も少なくはありません。厚生労働省研究班のデータによると、日本においては「一生のうちにうつ病になる頻度は約15人に1人と考えられている」とされています。女性のほうがかかりやすく、有病率は男性の1.5倍~3倍であると言われています。これは女性ホルモンの増加、妊娠、出産など女性に特有のトラブルが多いことが原因の一つであると考えられています。うつ病をしっていますか?l 厚生労働省双極性障害の発症年齢をみてみますと、15~19歳が最も多く、20~24歳がそれについで多く、それ以上では50歳以上も稀にあると言われます。発症平均年齢は30歳と言われています。5、6歳くらいの子どもについても双極性障害の発症が認められていますが、ADHD(注意欠陥・多動性障害)との識別が難しく、まだ研究が進められている段階です。双極性障害l 前田クリニック気分循環性障害は通常青年期または成人期早期に始まる疾患です。性別関係なく発症すると言われており、子どもの気分循環性障害では症状発症の平均年齢は6.5歳です。気分循環性障害がある人が双極性障害を発症する可能性は15~50パーセントです。気分変調症は小児期、青年期、あるいは成人期早期に発症し、慢性化する場合が多いです。『DSM-5 』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)2014年医学書院/刊気分障害の原因出典 : 気分障害が発症してしまう理由として遺伝子、ストレス、環境、性格などの様々な要因が複雑にかかわりあっていることが挙げられます。主な要因は抑うつ症状の強いうつ病・気分変調症、もしくは躁うつ症状がでる双極性障害・気分循環性障害のどちらかによって異なります。しかしまだはっきりとした原因は解明されておらず、今後更なる研究が必要とされています。うつ病・気分変調症は主に性格、ストレス、生物学的要因が大きく関与しているといわれています。かつてはうつ病や気分変調症は性格や遺伝の問題であるとされていましたが、近年患者数が急増するとともに研究が進み、性格や遺伝の問題だけではないことが徐々にわかってきました。近年ではストレスや生物学的要因がうつ病に深く関与していると多く言われています。■性格:主にきまじめな性格や社交的な反面気が弱い性格の人がうつ病になりやすいと言われています。熱心に仕事に打ち込み、責任感が強くすべてのことに対して正直に取り組む人や、親しみやすくいい人として周囲からは見られるが、実は気が弱いために他者を優先させてしまう一面を持つ人が例として挙げられます。■ストレス:近親者の死亡、病気、家庭内のトラブル、出産、結婚・離婚、会社の人事異動や転勤、仕事上のトラブル、過労などさまざまなストレスがうつ病の発症の大きな誘因となっているという研究結果が出ています。■生物学的要因:上記の性格やストレス要因が当てはまる人のなかで、うつ病を発症する人としない人の違いは主に生物学的要因にある傾向があります。脳の中で重要な情報伝達の働きをしているセロトニンやドーパミンなどの異常が、うつ病の発症と深く関わっているのではないかという有力な説もあります。しかし、この生物学的要因もまだ解明されたわけではなく、研究が進められている過程にあります。双極性障害・気分循環性障害の発症要因と考えられるものは遺伝子、ストレス、性格、生物学的要因で、もっとも深く関与していると言われているのが遺伝子です。■遺伝子:双極性障害は同じ家系に発症する確率が高いことから、何らかの遺伝子が発症にかかわっているのではないかと指摘されています。しかし、ある特定の遺伝子ではなく、いくつかの遺伝子の組み合わせによって発症するのではないかと推測されています。■ストレス:身の周りで起こることを本人がストレスに感じてしまうことも大きな原因の一つであると言われています。例として結婚や引っ越し、出産などのライフイベントに対する受け止め方や重なり具合、職場の人間関係などが挙げられます。このような生活環境の変化がストレスとなり、こころの安定の成分をつかさどるセロトニンに影響がでてしまったり、様々な支障が発生します。■性格:うつ病・気分変調症を発症する人と違い、双極性障害・気分循環性障害を発症する人は社交的で明るい、ユーモアのある性格という傾向があります。このような性格を一般的に循環気質と表現します。気配りも上手で、常に周囲の人の中心的役割を果たしていますが、気分が高揚しているときと沈み込んでいるときが周期的に訪れるため、状況に応じながら気分や思考がポジティブになったり、ネガティブになったり変化します。しかし、現在では循環気質の性格だけではなく様々な気質の人も発症することが分かっており、執着気質がその一つです。執着気質とは一つのことにたいして徹底的に自分を追い込む頑張り屋さんのような人です。「疲れてなんかいない」といって自分自身を鼓舞し、さらに頑張り過ぎることを継続することで双極性障害を知らない間に発症している場合があります。■生物学的要因:近年双極性障害には生物学的要因もあることが明らかになってきています。それは、脳細胞内にあるミトコンドリアの機能異常です。ミトコンドリアはエネルギー物質を生産する働きの他に、情報伝達にかかわるカルシウムの濃度を調整する機能をもつ物質です。ミトコンドリアの異常によってカルシウム濃度の調整がうまく行われなくなると細胞内の情報がうまく伝わらず、双極性障害の発症を誘因するものと考えらます。しかし双極性障害は発症する確率も低くはっきりとした原因はまだ解明されていません。研究が今後進んでいくことが期待されます。気分障害l 前田クリニック気分障害の相談先と治療先出典 : 気分障害に区分される疾患はストレスが多い現代社会ではいつ、誰が発症してもおかしくない疾患です。気分が上がらず憂鬱な気分のまま数週間が経ってしまったり、逆にテンションの上がり下がりにムラがあり不安を感じる場合は以下の行政機関に相談するか、医療機関の受診をおすすめします。■児童相談所:児童相談所は、すべての都道府県と政令指定都市に最低1つ以上設置されている児童福祉の専門機関です。主に、「子どもの養育に関する相談」、「障害に関する相談」、「性格や行動の問題に関する相談」などの育児に関する相談ができる機関となっています。全国児童相談所一覧l 厚生労働省■全国精神保健福祉センター:各県、政令市にはほぼ一か所ずつ設置されている、保健・精神保健に関する公的な窓口です。精神保健福祉に関する相談をすることができます。精神科医、臨床心理技術者、作業療法士、保健師、看護師などの専門職が配置されています。相談については、施設によって予約が必要な場合や健康保険の適用が可能なところがあります。詳細は、それぞれのセンターにお問い合わせください。全国の精神保健福祉センターを探すl 厚生労働省■精神科:精神疾患をはじめ、精神障害や睡眠障害、依存症を診療する科です。具体的には不安、抑うつ、不眠、イライラ、幻覚、幻聴、妄想などの症状を扱います。■心療内科:心と体、それだけでなく、その人をとりまく環境等も考慮して扱う科です。前述の精神症状だけでなく、ほてりや動悸などの身体症状、また社会的背景及び家庭環境なども考慮して治療を行います。精神科、心療内科どちらに行ったらいいか迷う方もいらっしゃるかもしれませんが、気分障害の場合は精神科を受診しても、心療内科を受診してもどちらでも大丈夫です。気分障害の治療出典 : 気分障害の治療法として現在主に効果的であると考えられ、用いられているのは薬物療法、精神療法、そして電気けいれん療法です。発症している疾患により細かい治療法は異なるので詳しい情報は専門家に相談することをおすすめします。薬物療法の場合、うつ病に対してはうつ症状を改善する「抗うつ薬」が用いられます。一方、双極性障害に対しては激しい移り変わりがある感情を安定させる「気分安定薬」が中心的に用いられます。いずれの場合も、不安を抑える「抗不安薬」が同時に処方されることがあります。代表的な抗うつ薬として三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)などが挙げられ、適切な量と期間で服用することが重要であるとされています。抗うつ薬は主にうつ病・気分変調症に処方されています。双極性障害・気分循環障害を発症している人が抗うつ薬を服用するとかえって気分が不安定になったり、躁状態になってしまったりすることがあるため、躁うつの症状に対しては抗うつ薬は基本的に使用されせん。気分安定薬には気分が上がりすぎる躁状態を抑える効果、沈みすぎてしまう抑うつ状態を改善させる効果、いったん安定した気分を維持させる効果があります。現在、双極性障害・気分循環障害の薬物療法は気分安定薬が中心となっていますが、飲み始めてからしばらくは重い副作用を防ぐために血液検査が数回必要です。また検査後も一定期間ごとに採血をすることで効果と安全性が確かめられるため、継続して受診することが大切です。うつ病は再び症状が出現することの多い病気です。回復後1年の間に約20%の患者さんに再び症状が出現する上に、その後の再発も含めると、その割合は約40~50%に上がります。また、途中で治ったと感じて治療することをやめてしまうと半年後に再び症状が出現する危険性が2倍になるという研究結果もでています。しかし、いずれの場合も治療法の効果や必要な量・期間には個人差があるため、自分だけで判断することは危険です。治療の際には、専門家の指導を受けながら用量・用法を守って行うことが大切です。気分障害l 慶應大学病院気分変調症l前田クリニック現在様々な精神療法が開発されていますが、気分障害に有効であると考えられているのは認知行動療法と対人関係療法です。一般的には医師やカウンセラーとの対話を通して、自身がどのタイミングで不安や心配を感じるのか、物事をどのように捉えているのか自身の思考のクセを把握します。そして、不安を感じる状況をどのように捉え、対処していけばいいかを考え、自身の感情をコントロールできるようにしていく治療法です。また対人関係療法は気分障害を抱えている人だけではなく、その人の家族や恋人などの重要な他者との関係に焦点を当てて、他者との関わり方を考えていく精神療法です。最終的には身近な他者との関係だけではなく、より広い範囲の人々に対してもよりよい関係を築けるようになることを目的とします。頭皮から電流を流すことで意図的にてんかん発作を発生させ、抑うつ症状を改善します。うつ病、双極性障害に有効といわれています。この治療法が用いられるのは薬物療法をはじめ、認知行動療法、その他の治療では効果が認められない場合、あるいは妄想をしてしまうなど症状が非常に重く治療の緊急性が高い場合です。軽、中度のうつ病の場合、あるいは他の治療法によって効果が認められている場合には原則使用されません。電気けいれん療法がなぜうつ病や、双極性障害の症状に効果があるのかについては未だ解明されていません。しかし、多くの医療機関においてその有効性が確認されており、日本においても保険の適応となっています。以前は治療の過程で生じる全身のけいれんが骨折などの怪我につながるリスクがありました。しかし、1980年代頃から施行されるようになった「修正型電気けいれん療法(m-ECT)」では麻酔科医の同伴のもと麻酔薬及び筋弛緩剤を投与し、けいれんを防ぐことができます。治療を受けることができる医療機関は必要な薬剤や人員の確保ができる病院に限られるようです。気分障害l 慶應義塾大学病院まとめ出典 : 気分障害がある人は少なくとも世界に3億5000万人以上もいると言われており、世界的に増加傾向にあります。日本も例外ではなく厚生労働省によると、平成26年度時点で約112万人の人が発症していると言われています。気分障害の症状により日常生活に悪い影響をきたしてしまうと、何かとうまくいかないことがストレスにつながり悪循環に陥ってしまう場合も少なくはありません。そのため気分障害は悪循環に陥る前の初期治療、そして症状が治まった後の再発予防がとても大切になっています。近年研究が進んでいることにより治療法の種類も増えてきています。そのため疾患や症状の程度を考慮した上での一人ひとりに合わせた治療法が選択できるようになっています。最近気分が晴れずずっと暗いままであったり、気分の上がり下がりが激しく自分をコントロールできない時があるなど、不安を抱えている場合はこころの風邪である気分障害を抱えている可能性があります。気になることがある場合は、専門家に相談しながら、症状の見極めや対応方法を検討すると良いでしょう。平成26年度患者調査の概要l 厚生労働省
2016年10月26日指示を聞き取ることがとっても苦手な発達障害の娘5歳半になる広汎性発達障害の娘は、指示を「聞き取ること」がとても苦手です。これくらいわかるかな?という簡単なお願いでも、なかなか理解できません。Upload By SAKURAお出かけ前の準備、大慌てでお手伝いを頼んでみたけど…お出かけ前に準備が間に合わず焦っていたある日のこと。そんな娘にお手伝いするようお願いをしました。Upload By SAKURA内容が難しかったのか、早口だったからか、予想通り娘に伝わりませんでした(笑)。できることを増やしてほしい!急いでいるけど再チャレンジもちろん、娘に頼むのを「もういいや」と諦め、自分でやった方が早いのはわかります。しかし、いつまでもこれじゃあ困る…と思い、急いではいるけど再チャレンジしてみることにしました。Upload By SAKURAUpload By SAKURAしかし、丁寧に言ってもやはり難しかったのか…娘には伝わりませんでした。言葉で伝わらないのなら、一緒にやってみよう!こうなるともう途中でやめるわけにはいきません。耳から指示を聞くのが苦手なら、実際にやっているところを見せてみよう!と考えた私は、娘に向かい合って座り、キーワードを言いながらお手本にやってみました。Upload By SAKURA娘はハッと理解したようでやり直しを要求し、自分で同じことをやりたがりました。確かにちょっと面倒くさい。それでも娘の成長につながると信じて!Upload By SAKURA確かに正直言って、面倒くさい…時間もない…です。でもこういう日々の積み重ねが、娘の成長につながっていく…そう信じて、繰り返す毎日です。
2016年10月26日子どもが学校でいじめられている…親として正直な気持ち出典 : 娘は現在小学校6年生。広汎性発達障害の診断が出ていますが、小1からずっと普通級に在籍し、苦手な授業だけ支援級へ通っています。これは1年前、娘がいじめに遭っていたときのお話です。ある日、大好きなおばあちゃんと2人で遊びに行くことがあり、その時にふと「学校でいじめにあっている」と娘が話したのだそうです。「まさか娘が…!?」この話を聞いた直後、私は正直信じられませんでした。娘の様子について、妻は「最近元気がなさそう」と言っていましたが、私は異変に全く気付かなかったからです。これまで娘は、登校を嫌がったり体調が悪くなったりすることもなく、普通に学校に通っていました。驚きつつも、学校でどんなふうにいじめられるのか聞いてみたところ、「お友達から避けられる…」とのことでした。学校に問い詰めた事実。見えてきたのはいじめの実態だった出典 : いじめを知った私は、事実を確かめるために学校に連絡を取りました。まず私は、娘のことについては何でも連絡して欲しい、と伝えていたので「なぜいじめについて、こちらが問い合わせるまで何も連絡がなかったのか?」と問い詰めました。担任の先生は「すみませんでした」と謝罪していました。そして、これまでのことを確認すると、以下のような状況がみえてきたのです。●いじめは夏休み明けから始まっていた(この時点で、約2ヵ月間続いていたことになる)●学校はいじめを把握していて、学級会を2度開き、クラスで話し合っていた●最初関わっていた生徒は数人、アンケートを取ると、いじめに実際に関わっていたのはクラスの半数の人数だった●いじめは、娘に対して「気持ち悪い」と言う、無視する●話し合いをしたにも関わらず、まだ何の変化もない学校と同じ方向を向き、整えていったいじめへの態勢出典 : 起こってしまったことは仕方ありません。私は担任に、2度も学級会を開いてくれたことについて感謝を伝えました。いじめがあったのは事実ですが、ただ一方的に学校を責めるよりも、それまでの学校の対応を評価すべきと考えていました。こちらも歩み寄りの姿勢を示すことで、学校側も柔軟になり「親と学校が共にいじめに対処していこう」という雰囲気ができたような気がします。その直後から、約2ケ月ほど学校を休ませました。娘にいじめについて詳しく聞くと、「みんなと話すのが嫌。戻るのが嫌」と言っていました。また、自宅ではリラックスしてもらいたかったので、できるだけ普段通り接することにしました。親と学校、双方が建設的になることで出てくるアイデア出典 : それからは、月2回ほどのペースで学校側と話し合いを行いました。学校では校長先生のアイデアで、学年全体にアンケートを取り、いじめを見聞きしたか?どんないじめがあったのか?など、詳細な調査をしてくださいました。また、「いじめに関わっていたクラスに影響力のある子は、クラス委員にさせるのはどうですか?」と、私から学校側へ対策を提案することもありました。学校に全てをお任せするのではなく、親も自分の意見をはっきり主張することが大事なのでは?と思います。しかし、感情的に我を通すのではなく、建設的な姿勢で誰もが納得できる策が提案できると、学校も意見を受け取りやすくなるかもしれません。アンケートの結果で見えてきた原因。これがきっかけで子どもたちにも変化が出典 : その後、アンケートの結果が出てきました。多かったのが、「授業中、なぜ一部の子たちは支援級に抜けていくのか?」「支援級ってどういう子が行くところかわからない」という回答でした。このことから私は、「娘だけではなく他の支援級に行っている子は、周りの理解が得られていないのでは?」と校長先生に話しました。すると校長先生は、「支援級について、支援級の先生から個々のクラスに説明する機会を設けましょう」と言ってくださいました。説明会の後、児童からは「支援級に行っている子について事情がよくわかった、これからは優しくしようと思う」という声が増えました。この時点で学校は3学期を迎えていました。いじめが発覚してから約半年です。娘はまだ、クラスには通えていませんでした。しかし、支援級にだけは通えるようになっていました。1日に1時間だけ支援級に通い、学校には徐々に馴染めるようにしていきました。また、当時から仲の良いお友達に協力してもらい、支援級に遊びに来てもらっていました。その後まもなく春休みとなり、6年生にあがるときにはクラス替えがあったため、このタイミングで通常どおり登校できるようになりました。いじめを悪にすることは簡単。しかし、理由を探れば解決策も見えてくる出典 : あれから1年が過ぎ、娘は元気に学校に通えています。その後、いじめられている様子はありません。実は、娘をいじめていた子どもたちからは説明会の後、娘あてで手紙や絵をもらっていました。子どもたちには反省の色が窺え、娘に対しての理解も深まったようでした。この一件で特別仲の良いお友達が増えた訳ではありませんが、それでいいと思っています。娘には、何の問題もなく安心して学校に通える環境があれば、それでいいです。子どもがいじめに遭っているというのは、親としては衝撃だと思います。相手の子やその家庭、学校に対して憤りを抱く方もいるかと思います。私自身も、学校の最初の対応には納得がいかず、感情的になりました。しかしこうした問題は、いじめっ子本人や自分たち親、学校が成長するチャンスでもあると思うのです。学校との連携では冷静になり、子どもの自己肯定感や自尊心を守るためにも、建設的な話し合いや提案ができるといいですね。
2016年10月26日言語療法・言語聴覚療法とは?出典 : 言語療法とは、言葉を話したり聞いたりする機能に障害がある人に対して、日常生活を円滑に送るために行われるリハビリテーションのことです。言語療法は、英語ではspeech and language therapyと表記され、しばしばSTと呼ばれています。言語療法が対象とするのは、言語機能の障害、話し言葉の障害ですが、食べたり飲み込んだりする嚥下(えんげ)機能の障害もリハビリの対象とされます。聞こえに関する障害のリハビリも行われる場合には、言語聴覚療法ともいわれます。言語療法を受けられるのはどんな人?出典 : 言語療法が対象とするのは、言語障害、言語発達性遅滞(子どもの言葉の遅れ)、発音・発声に関する障害などがあります。言語療法ではこれらに対して検査を行いその結果から個々人にあったリハビリの計画を立てて、改善していきます。ここでは、言語療法が対象とする障害や状態には具体的にどのようなものがあるかを紹介します。言語障害とは、発語や発声や運動器官に問題がないものの、脳の言語機能・高次の認知機能の障害が起こることにより、聞いた言葉を理解できなかったり、言いたい言葉が口から出なくなってしまう障害のことです。主に以下のような疾病が関わっています。■失語症失語症とは「言葉の記憶喪失」のような状態であり、いったん獲得された言語知識が脳の損傷により失われてしまうことです。失語症では、言語中枢に障害が現れるため、話すことのほか、相手の言ったことを理解することにも障害が現れます。■高次脳機能障害高次脳機能障害とは、見たり聞いたりしたことを把握し理解する脳の認知の機能の障害のことです。その結果、記憶や注意や認知において障害が起こります。例えば、注意力が削がれやすかったり、集中力が長く続かなかったり、新しいことを覚えられなかったりします。そのため言葉が出てこないのです。認知症や記憶障害なども、高次脳機能の障害のひとつです。言語発達遅滞とは子どもの言葉の遅れを指し、生活年齢から予測される平均的な発達状態よりも、言葉の表出や理解が大幅に遅れていることをいいます。その原因は、耳の聞こえに関する問題や、言葉の理解に関する問題、または、発達障害や知的障害など脳の機能に問題がある場合、または、ただ言葉が出るのが遅れているだけなどさまざまな場合があります。言葉が遅れるパターンは大きく分けて2通りあります。ひとつ目は、その子の言葉を獲得するスピードが「ただ遅いだけ」というものです。子どもの成長のスピードは個人差が大きく、その場合、乳児期の時点では言葉が遅れていても、年齢が進むにつれて、遅れが目立たなくなることも多くあります。もうひとつは、発達や聴覚に障害のある可能性があり、その兆しとして言葉が遅れる場合です。この場合には、治療や発達を促す療育的なトレーニングを受けることになります。言語療法では、発音や発声に関する障害もリハビリの対象とします。声帯や舌、唇などを使う動作や、音を作り出す体の器官がうまく機能しないことにより起こります。これらの障害は、身体の部位が物理的に損傷を受けて起こる後天性のものと、先天性のものがあります。発声や発音の問題は、子どもの言葉の遅れに関わることもあります。■声の障害大きな声が出なかったり、かすれ声になってしまったります。■発声の障害例えば、「さかな」というところを「しゃかな」と言って、「さ」が「しゃ」という別の音に置き換わってしまったり、呂律(ろれつ)が回らなくなったり、音が省略される状態を指します。■吃音(きつおん)の障害同じ音を繰り返したり、言葉が円滑に出ずに詰まったりすることを指します。例えば、「みみみみかん」と同じ音を繰り返したり、「みーかん、」音が引き延ばされたり、「・・・・・みかん」など、言う言葉がとっさに出てこず、詰まったりします。言語療法では、口腔の機能、つまり食べることに関する障害も改善できます。食べることに障害があると、食べ物が肺に入っておこる肺炎や食べ物による窒息など生命に危険を及ぼす可能性のほか、低栄養による体力・免疫力の低下が起こった結果、食べる喜びも失われます。また、言語聴覚療法の場合には、難聴などの「聞こえ」に関する疾病や障害のリハビリも行います。言語療法科|社会医療法人 愛仁会 リハビリテーション病院言語療法は具体的にどんなことをするの?出典 : 言語療法は、主に専門家である言語聴覚士(ST/Speech-Language-Hearing Therapist)により行われます。言語聴覚士は、文部科学省または厚生労働省が指定する養成校で学び、言語聴覚士国家試験に合格している「話す」「聞く」「食べる」のリハビリに関するスペシャリストです。また、言語療法は、言語聴覚士を中心としながらも、医師・歯科医師・看護師・理学療法士・作業療法士などの医療専門職、ケースワーカー・介護福祉士・介護支援専門員などの保健・福祉専門職、教師、心理専門職などと連携し、チームで連携しつつ行われます。■個人の言語療法専門家から1対1で直接、言語療法を受けることをいいます。個人のセッションの場合には、基本的に20~60分ほどの面接・訓練を、1週間~1ヶ月に1度行います。移動が困難な場合には、在宅によるリハビリテーションが行われることもあります。■集団の言語療法集団の言語療法とは、患者さんの社会性やコミュニケーション能力の向上を目的とします。似たような状況にいる人が集まることで助け合いながら治療を行うことができるとともに、他の人の意見を聞くことで客観的な視点を養うことができます。集団における言語療法は、歌を歌う能力を利用したり、体操をしたりしながら、言葉の出やすい身体づくりをします。言語療法は、大きく分けて、発声、発話能力の獲得と、意思疎通を支えている高次脳機能の獲得を目指すという、2つのアプローチがあります。これらは、それぞれにリハビリの内容や注意点が異なります。1. 発音や発声の機能の獲得構音障害、発声に関する機能に障害がある人に対して、声を出すための基礎となる姿勢や呼吸を意識しながら、口の運動を通して、発声・発音の練習を行います。例えば、発声のために必要な姿勢についての指導や、全身の運動、深呼吸を行います。重度の障害の場合は、発声や発音の練習だけでなく、字を書いたり、50音表を指さしたりするなどコミュニケーションの補助手段も用いるようにします。2. 言語をつかさどる脳の機能の獲得脳は、言葉を理解したり言葉を発する指示を出すなど、他人とのコミュニケーションを支える大事な機能をつかさどっています。トレーニングの中では、本など一般に用いられる教材に加え、タブレット機器が用いられることもあります。■失語症の場合知能・心理検査によって、「聞く」「話す」「読む」「書く」のすべての言語的な検査、評価し、状態を分析します。そして、本人の状態に合わせてトレーニングのプログラムが組まれます。失語症のトレーニングの一例を以下に挙げます。・耳で聞いたり、目で見せたりして、言葉の理解力を伸ばす練習・絵や文字を見て、その言葉を言う練習・日付・名前など、自分にとって身近なものを紙に書く練習・言葉以外の方法でコミュニケーションをとる練習■高次脳機能障害の場合知能・心理検査によって、障害の状態や問題点を挙げ、本人の状態に合わせてトレーニングのプログラムが組まれます。高次脳機能障害トレーニングの一例を以下に挙げます。・注意力を強化する練習・新しく体験したことを覚える力を伸ばする練習・物事を計画し、順序立てて実行する力を伸ばす練習・疲れやすい、またはやる気が出ないなどの社会的行動障害に対する対応また、その他にも、家族に対する症状の説明、本人が社会生活を営むための家族への援助や、本人への心理的ケアなど様々な側面からも行われます。言語療法 | リハビリテーション科 | 医療法人ガラシア会 ガラシア病院脳卒中の言語リハビリテーション | 国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス子どもの言語療法出典 : 子どもの言葉の遅れには、年月を経るごとに自然と言葉が追いついてくる場合と、発達障害や聴覚障害の兆しとして言葉が遅れているという2つの場合があります。子どもが幼い段階ではその違いに判別がつきにくいことが多いですが、言語療法のトレーニングを受けていると、後から何らかの障害があるとわかった場合にも、専門家を通して適切なサポートを受けることができます。子どもの言語療法では、言葉に対してだけではなく、運動やコミュニケーションなどその子どもの発達全体に働きかけるようなトレーニングが行われます。子どもへの言語療法の流れは、以下のようになります。保護者への問診、遊びを通した行動評定、聴力検査、発達検査、言語学習診断検査などにより、言葉の遅れや偏りの原因を見極め、支援の目標やトレーニングが決められます。子どもの言語療法の支援は、個人へのアプローチ、環境へのアプローチ、家族へのアプローチの3つの観点から行われます。■個人に対して子どもが楽しみながら社会性を伸ばし、日常生活で使える言葉を獲得することを目指して、個別、または集団で遊びを取り入れたトレーニングが提供されます。子どもの言語の発達レベルに合わせて、聞く、読む、話す、書くことという言葉全般に働きかけてトレーニングを行っていきます。その他には、コミュニケーションの面を伸ばすトレーニングも豊富に行われます。個々人によって原因は異なるものの、言葉に遅れや偏りがみられるときには、コミュニケーションの面にも偏りがみられることが多いためです。楽しんで取り組めるような課題に取り組む中で、子どもは自発的な言葉を話すことができるようになっていきます。例えば、「それ、とって」「もう1回」「どこ?」など、相手へ発信する言葉や、自発的なコミュニケーションなどです。保護者が付き添ってよいこともあれば、保護者と離れて別の部屋で行うこともあります。■環境に対して発達段階や本人の状況に合わせて、トレーニングに集中して取り組むことのできるように、環境にも配慮を行います。例えば、部屋の中に集中を妨げる刺激物を最小限にし、スケジュールを黒板に書いて視覚的に伝え時間に見通しを持たせることで、子どもが過ごしやすい環境をつくるなどです。■ご家族に対して子どもの発達について理解ができるように、検査の結果子どもの発達段階や、トレーニングを経たことによる子どもの言葉の変化について説明が行われたり、環境への配慮、日常生活の中でできるトレーニングなど、子どもの発達を伸ばすための工夫を教えてくれます。また、子育てや、子どもの学校生活について家族の抱えている悩みや心配事を相談することもできます。言語療法を受けるためには?出典 : 言語療法を受けるためには、医師の診察および処方箋が必要な場合があります。まず、かかりつけの病院で症状や困りごとなどを相談した上で、言語療法が必要かどうか判断しましょう。日本言語聴覚士協会のホームページから、全国の施設検索が可能です。所在地や施設名や障害の種類で詳しく検索できるので、お住まいの近くの言語療法が受けられる施設を調べてみてはいかがでしょうか?また、自治体によっては言語聴覚士による療育や在宅訪問サービスなどを行っていることもありますので、福祉などの担当窓口で相談してみるとよいでしょう。以下のHPから、言語療法を行う専門家である言語聴覚士のいる施設を検索することができます。一般社団法人 日本言語聴覚士協会■医療機関病気やけがの治療やリハビリが目的の場合、担当医から紹介・指示を受けることになります。この場合、健康保険が適用となります。また、子どもの場合も医師の診断・指示があれば医療機関で言語聴覚士の指導を受け、健康保険が適用となることもあります。病院のリハビリテーション科を訪れてみましょう。■教育・療育のサービス子どもの場合、「言葉の教室」「きこえの教室」といった小学校などの支援級、特別支援学校、療育施設で言語療法を受けられる場合もあります。園や学校に相談したり、自治体に問い合わせましょう。健診や就学前健診で個別に相談・進められる場合もあるようです。その後、面談や審査など、所定の手続きに従います。地域によっても制度が異なりますので、お住まいの自治体に問い合わせましょう。■福祉施設施設・地域によって異なりますので、各施設や自治体の定める手続きをとります。訪問リハビリテーションなど介護保険の適用になる場合もありますので、福祉窓口、ケースワーカーや民生委員に相談してもよいでしょう。■言葉の教室など民間が行っている言語に関する指導を行う教室です。その場合には、施設に直接申し込みを行います。■医療機関医療機関で治療・リハビリの一環として言語療法を受ける場合、費用は治療内容などによっても異なりますが、健康保険が適用されます。一例として、辻みみはなクリニック(兵庫県)の場合の費用をご紹介します。言語療法の費用3割負担の方3単位(1時間)2,420円2割負担の方(未就学児)1,690円各種医療券(乳幼児・障害児・母子)も適用となります訓練時診察をされたり、知能検査・聴力検査などを行った場合は負担額が追加となります。■教育機関、民間学校や療育センターなどで言語療法を受ける場合、無料から有料まで、自治体や施設により異なります。年会費などが必要になる場合もあります。例えば、兵庫県の子ども発達支援センター(ひょうご子どもと家庭福祉財団)の場合の費用は以下の通りです。子ども発達支援センターは、民間の福祉団体の「ひょうご子どもと家庭福祉財団」が運営しています。そのため、訓練やプログラムに参加していただく際には、保護者の皆様に費用の一部をご負担いただいています。個別訓練費用●月4回の場合:15,000円+消費税(月2回の場合:7,500円+消費税)グループ訓練費用●月4回の場合:9,000円+消費税(月2回の場合:4,500円+消費税)上記の料金は一例です。施設によって、また受ける回数や時間、サービスの内容によっても異なりますので、ご利用前に問い合わせることをおすすめします。言語療法の体験談出典 : 言語療法について関心があるけれど、通うかどうかを迷っている方もおられるかもしれません。ここでは、実際に言語療法を行ったことのある方や、その保護者の体験談をご紹介します。脳梗塞リハビリセンターで評価を受けた結果、失語症ということでした。軽度なのでなかなか周りが気づかないけれど、言葉がうまくしゃべれない、伝えたいことを頑張って言葉にするのだけど周りがうまく理解できない。文字がうまくかけない、短期記憶がうまくとどめられない、雑音などがイライラとしてしまうということでした。(中略)ちょっとした雑音なんかも気になるともう気になってダメだったんですけど、そういったことも少しずつ慣れてきたように思います。 先生からは、文字の書きやすさや記憶に関するところは少しずつ良くなったと言われています。(40代、男性、失語症)言語療法を継続的に行っていくことで、言葉だけでなく、記憶についての機能の向上も期待できます。初めての本格的なST指導に、お父さんは目を見張りました。「石川STは、その子がどこまで理解しているのか、何が足りないのか、ひとりひとりの状態を明確に把握している」と感じたからです。(中略)「ストローを吹く練習をしましょう」と教わったことも。「目的は口をすぼめた発音ができるようになることだったと思います。伸明は、意識的に息を吹くことができなかった。“ウーウー”になったり、“フ・ウ・フ・ウ”」と一語一語発声したりしていましたね。でもそういう練習をするといいだなんて、われわれには思いつかないですよ!」お母さんも、「“熱い食べ物をフーフーしましょう”とかね。そんなふうに生活の中で取り組めるヒントをくださる。それがさすがだと思いますし、親にはとてもありがたいんです」とおっしゃっています。中川信子/著『発達障害とことばの相談子どもの育ちを支える言語聴覚士のアプローチ』2009年/小学館/刊思い通りに息をふきだすために、子どもが楽しみながら取り組むことのできるトレーニングを提供してくれます。家庭でも簡単に取り組むことのできるトレーニングを専門家に直接教えてもらえる場合もあります。まとめ出典 : 言語療法とは、日常生活を送る上で欠かせない言葉や聴覚、嚥下(えんげ)に障害のある子どもや成人に対して行われるリハビリテーションのひとつです。言葉を使って私たちは生活をしています。阻害されていた言葉や聞こえの問題を解決することは、単に言葉を話す、聞くことができるようになるという機能面の向上に留まらず、言葉を使って人とやりとりや、人とのふれあい通した安らぎというコミュニケーションをとることによる心の安定をもたらします。障害のある人が、思い通りに言葉によるコミュニケーションを通して人とやり取りを行い、自分らしい生活を送ることのできるように手助けを行うのが言語療法です。
2016年10月25日音楽室への移動時間、長男は突然涙目になり…出典 : 小学校入学直後から「学校いかれへん!」となった大混乱から、私との付添い登校により少しずつ学校に慣れてきた長男でしたが、小3になって新たな壁になったのが、専門教室への移動が増えたことでした。これまで音楽は音楽室、図工は図工室へ移動するときには、支援級の先生につき添いをしてもらっていました。しかし、支援級の先生1人で2人以上の子を担当する体制になったことで、常時サポートが難しくなり、私の付き添い登校時間を再び増やさざるを得なくなりました。その日の4時間目は音楽。クラスメートが列をつくって移動し始める中、長男は「行かれへん!」と叫び、教室に戻ろうとしました。なおも進もうとする先生や私を押し戻そうとするので、廊下で相撲をとっているような感じになりました。「どうして行かないの?」という先生の問いかけにも、涙で目を赤くして「とにかく行かへん!」と言い続けるばかりです。音楽を学校で習いたいと思えない。目的が見出せないと納得できない長男出典 : なぜ音楽室に行きたくないのか理由を聞いてみました。私「しっかり聞くから考えていることを言葉で説明してほしい」長男「だって、行く意味がわからへんもん…図工は、その日にその作業をしないといけないって理解してるから行ける。陶芸だったら、みんないっしょに窯に入れないといけないとか。でも音楽は、自分はぜんぜんやりたくないし、今日絶対にそこにいないといけないってことが理解できへん」先生「音楽も一緒。今日は〇〇っていう曲を始めて鍵盤ハーモニカで吹いてみる日だから、聞いておいてほしいなって思ってるの」長男「自分は、ぜんぜんふけないし、みんなのをただ聞いててもしんどい。絶対暴れるか、床に寝てるしかできない!」手と目の協調運動が極端に苦手な長男は、聞くことにも集中しなくてはならない楽器の演奏が、ものすごく苦手なのです。長男「無理や!」そう言うと、と先生から逃げて私の方にきて、手をひっぱってその場を離れようとします。私「そんなにひっぱったら痛いよ!」その後の先生との話し合いで、先生には先に音楽室へ行ってもらうことにしました。どうして行けないの?ゆっくり話すことで出てきた本音出典 : その後私と2人だけになったので、落ち着ける場所へ移動して話すことにしました。植物が大好きな長男が落ち着ける場所は菜園です。冬野菜が育ち始めている学校の畑のへりに、とりあえず2人で腰をおろしました。長男「なんで自分は音楽室に行かれへんのやろう」私「予想だけど、音楽室へ行くことが自分の中から湧き出してきた考え、行動じゃないからだと思う。自分でやりたい!と思ったことなら難しいことでもできるけど、しなさい!と言われたことはかなり簡単なことでもできない。キミにはそういう特徴がある」長男「それって、先生とかに理解してもらう必要ある?」私「半分ぐらいは、あるかなあ」長男「なんで?」私「それがわからないと、今みたいにお互いに嫌な思いしなきゃいけないから。行きましょう、行けません、の繰り返しで平行線。音楽室に行くだけなら、普通そんなに難しいことじゃない。理由がわからなくて先生や周りの人もイライラしてしまうでしょう」出典 : 長男「自分は、理解してもらわんでもいいと思ってる」予想通りの反応。でも、言葉の奥には葛藤がありそうな気もしました。私「まあ、正直、完全に理解してもらうのは難しいし、必要はないかもしれないと思ってるよ」長男「なんで?」私「理解してくれたとして、『じゃあ、〇〇くんはもう音楽室に行かなくてもいいよ』って言ってもらう?そしたら、音楽室に行く力が身につきにくいと思う。できれば、大きくなるころには音楽室に行ける体質になれるほうがいいと思わへん?」長男「そう…やろな。やけど、やっぱり無理やわ」私「今はね。けどいつか、いろいろやってるうちに、ひょっと行けるようになると、お母さんは思ってるよ」その後、2人で音楽室へ。先生は来てくれたことを喜んでくれたけれど…出典 : 私が「そろそろ行こか」と言うと、長男はゆっくり歩きはじめました。音楽室に着くともうすぐ授業が終わる時間で、何も楽器はできませんでした。先生「気持ちを落ち着けて、よく来てくれたね」私「どうして音楽室へ移動できないのか?2人で話しながら理由を考えていました」先生「音符を読みながら吹くのが難しいと感じているのかなと思い、カタカナで書いておきました。支援していきますから、頑張ってほしいです」私「先生、楽譜にドレミを書きこんでおいてくれたよ」と長男に伝えました。話しながら、先生は本当に理解してくださっていないかもしれない…と、頭の隅で思いました。長男の特性では、「難易度を下げる」ことは「がんばり」のエンジンになりにくいのです。それよりも「音楽をやることが腑に落ちる」「音楽をやるのが楽しく思えるアタマとカラダになる」のが行動を変える早道なのです。どうアプローチすれば、長男の行動は変わるのだろうか?出典 : 今のところ、私を含めて他人の指示をキャッチし、カラダを動かすのがとても難しい長男。彼自身のアタマがカラダに「音楽室、行ってみたら。行ってみてもきっと大丈夫だよ。それどころか、もしかしたら楽しいかもしれないよ」と命令できるようにするのがポイントかな、というのが私の推論です。他者の指示を聞いてすぐに動けるアタマとカラダの持ち主である先生には、想像しにくい特性だと思います。言えばわかってくれる、動いてくれると私自身もずっと思っていましたが、ずっと観察してやっと「こういうことかも」と思うようになりました。家では替え歌を作ったり、楽器を作ってみたり、また知り合いの音楽の先生のおうちに遊びに行ってピアノを触らせてもらったり、アタマとカラダを耕す感覚でいろいろ試しています。思ったよりはノリがいいので、心の底から音楽が嫌いではないんだとわかり、ちょっと安心もしました。しんどさはなくならない。でも、現場でしかわからないことがある出典 : 我が子が暴れたり、他の子ができてることができない姿を見るのは、「しんどいな…」と感じる時も多いですが、やっぱり学校は、できること、できないことを見わける機会として活用できるように思います。「あー、がっこうって、ほんまに、しんどいわ」と、毎日口ぐせのように言っていますが、今のところは「そやなー、けど、ぼちぼちでOKだから登校を続けてみたら」と言っています。
2016年10月25日Hな言葉を覚え始めた中学生の息子。ある日こんなことを聞いてきたUpload By かなしろにゃんこ。ADHDの息子リュウ太が中学生になったある日のことです。学校でお友達から聞いて分からなかったのか、ちょっとHな言葉の意味を聞いてきました(マンガ内の○○○○○は想像していただけたら幸いです。笑)。子どもにこんな話を振られたら恥ずかしがらずに答えようと考えていた私は、いい機会だから保健体育で教えてもらえない部分にもツッコんで伝えておかなければな!とここぞとばかりにはりきったのです。ついに性のハナシをするときが来た!意気揚々と話そうとするも…Upload By かなしろにゃんこ。すると、少しきわどいキーワードを出した途端に「ふざけんな!そこまで聞いてねーよ!」とイヤな顔をして逃げ出してしまいました…。「性の話は大事なこと!恥ずかしくなんかない、真面目に話そうか」と言ってもダメでした(笑)。恥ずかしいというよりも「異性として特別な存在である母親の口からそんな話を聞きたくない」といった感じのようです。父親にバトンタッチしたいのですが、父親は性の話を子どもにするのを嫌がります。女性から見た性も理解して欲しいという気持ちがあったのですが、先走って失敗しちゃったお話でした。
2016年10月25日小学校と園をやめた姉弟。その後増えていったのは、子どもたちの笑顔だった出典 : 我が家には8歳の娘と6歳の息子がいて、それぞれアスペルガー症候群とADHDの診断が出ています。「学校をやめる」と宣言し、毎日家で過ごしている娘。後を追うように息子も「幼稚園をやめる」と決断し、のんびりと家で過ごしています。子どもが毎日家にいると大変では?と、聞かれることがありますが、実は私にとっては、子どもたちが学校や幼稚園へ行っていた時の方が大変でした。学校や幼稚園に通っていた頃は、帰宅後ぐったりと疲れていたりストレスで荒れたりと、子どもたちをフォローすることで精一杯。お互い心に余裕がなく、日常生活をなんとかこなすだけの日々で、何かを楽しむという時間は全くありませんでした。家で過ごすようになり、私は子どもたちが行きたくない場所へ送り出すエネルギーと、罪悪感から解放されました。そして、ストレスのなくなった子どもたちはとても明るく、元気になりました。うちの子たちって、こんなによく笑うんだな、と毎日とても新鮮な気分で眺めています。子どもたちをゆっくりと観察することもできるようになり、凸凹のタイプが異なる2人の違いも、より一層明確になってきました。一緒に過ごす時間が増え、子どもたちの得意なこと苦手なことがよくわかるようにUpload By GreenDays娘と息子の思考の違いに気付いたのは、娘とアイロンビーズに取り組んでいたときでした。以前、人によって物事を認知する能力が違う、というコラムを書かせていただきました。娘の場合、目で見る言語・耳で聞く言語にとても強く、頭の中も言語で埋め尽くされている状態です。アスペルガーの娘曰く、頭の中にはたくさんの引き出しがあって、きちんとインデックスがついており、全ての情報がしかるべき場所にきちんと言語化して収納されているそうです。ADHDの息子は視覚優位で、映像から物事を理解するタイプ。例えば「今日の午前中は何をした?」と聞いても「えっと何だっけ?」「思いだせない」と思いだすこともなく、考えることをあっさりやめてしまいます。娘に息子と同じ「今日の午前中、何をしたかな?」という質問をすると、「今日の朝は〇時〇分に目が覚めて、ママは起きていたけど弟はまだ寝てたよね。朝ごはんを食べている時に…」と、とても細かい部分まで正確に答えが返ってきます。娘とアイロンビーズを整理していたときです。綺麗に並べられたビーズを見ていてふと、「これは娘と私の頭の中みたいだな」と思いました。では、息子の頭の中をアイロンビーズで例えると、どんな風になっているのだろう?という疑問が湧いてきました。それから数日間、息子の言動を追いかけ、頭の中がどうなっているのかを想像してみました。娘とは違う方法で情報を記憶していた息子。大変なのは、その情報を取り出すときUpload By GreenDaysそして辿りついたのは、息子の記憶は1つひとつが細かく分かれていて、それが整理されることもなくどんどん放り込まれ、山積み状態になっているのでは?という考えでした。それは、色分け途中のアイロンビーズのようなイメージです。息子は何の脈絡もなく、突然昔のワンシーンを語り出すことがあります。数々の情報が整理されないまま記憶されているので、膨大な記憶の山から必要な情報を探し出すのに、途方もない労力が必要なのだと思います。そして、息子の記憶は言語化されておらず映像のまま残っているようなので、それを言語化して人に説明するためには、また多くの力を注がなくてはならないのでしょう。この分析が正解かどうかは、息子がもっと大きくなってから聞いてみないとわかりません。でも、「こんな感じなのかもしれないな」と想像するだけでも、息子が苦手なことにも理由があるのだ…と、イライラせずに済むので、子どもの特性を知ることは、大切な作業だと思います。努力では補いきれないときはどうすればいい?模索する中…出典 : さて、バラバラの情報が山積みになっている息子に、「お姉ちゃんのように、きちんと情報を整理しなさい」と言っても、脳の構造が違うので無理なものは無理です。これから息子に合ったやり方を一緒に見つけて行かなければなりません。とりあえず、「今日の朝からお昼まで」の情報を思い出す練習を、お昼ごはんの後に行うことにしました。毎日、手帳に箇条書きで書き出していきます。でも、お昼ごはんの前に何をしたかさえ、思い出せない息子。それでも毎日続けているうちに、「今日はこれを手帳に書いてみようかな」という言葉が息子から出てくるようになりました。もちろん、手帳を前にした時にはその出来事をすっかり忘れてしまい、「あれ?何を書こうと思ってたんだっけ?」ということの方が多いですが、それでも「今日の出来事を手帳に整理する」という意識が、少しずつ芽生えてきたことは大きな進歩です。子どものタイプによって苦手なことは違う。支援のコツは「その子が生きやすくなるかどうか」出典 : 自分が簡単に情報を引き出せるタイプではないことを理解した上で、いつかはその対処法として、必要なことはメモを取ったり、予定を忘れないようにアラームを設定するなどの行動をきちんとできるようになれば、息子自身が生きやすくなるのではないかと思います。子どもたちの色々な特性に気がつき、それで子ども自身や周囲の人が困っているのならば、こんな方法もあるよ、あんな方法もあるよ、と一緒に試しながら、その子にあった方法を見つけられるといいですね。
2016年10月25日ファミリーサポートとは?出典 : ファミリーサポート(ファミサポ)とは、育児を手伝ってもらいたい「依頼会員」と、育児を手伝いたい「提供会員」が参加し、地域で子育てを支えあっていくサービスです。厚生労働省が構想、設立を始めた制度で、平成26年度の調査によると、769市区町村がファミリーサポートを実施しています。平成27年度からは子ども・子育て支援新制度の開始に伴い、地域子ども子育て支援事業として位置づけられています。各市区町村が設立運営するファミリー・サポート・センターという組織がファミリーサポート会員の仲介や支援、講習の実施・運営などを行っています。依頼会員になって、実際にサービスを受けられるようになると、保育施設や学校・学習塾までの送り迎えを提供会員にお願いしたり、保育施設の利用時間外・保護者が子どもを見れないときに代わりに預かってもらったりすることができます。また、発達障害がある子どもがいる家庭も、約8割のファミリー・サポート・センターが利用を受け入れています。サービスを利用することで育児の負担が軽減できる制度です。参考:厚生労働省子育て援助支援活動(ファミリー・サポート・センター事業)について出典 : ・子どもの対象年齢各センターによって差はありますが、3ヶ月未満の乳幼児から、12~14歳の児童までを対象としているセンターが多数です。・会員数一般財団法人女性労働協会が平成26年に調査したところ、提供会員が約20%、依頼会員が73%、提供会員と依頼会員どちらも登録している両方会員が約7%でした。ファミリーサポートは、依頼会員の数が圧倒的に多く、需要と供給がつりあっていないという現状にあります。・会員の年齢提供会員は、子どもが手を離れ、時間にも余裕がある60歳代が1番多く、50歳代、40歳代の順に続いています。依頼会員は30歳代が半分以上を占めていて、30歳代と40歳代を合わせると9割を超えています。・性別女性会員が約96%と大半を占めています。・会員の条件概ね成人であれば会員となれますが、自治体によっては家族構成(例:3歳未満の子どもがいる)によって協力会員として登録するのに制限が生じる場合などがあります。詳しくは最寄りのファミリー・サポート・センターにお問い合わせください。平成27年3月一般財団法人女性労働協会平成26年度全国ファミリー・サポート・センター活動実態調査結果ファミリーサポートはどんなサービスがあるの?出典 : 依頼会員がファミリーサポートで実際に受けられるサービスは、大きく分けて子どもの送り迎え、預かりの2種類です。会員どうしでの取り決めによってはどちらもお願いするという場合もあります。・仕事があって保育園のお迎え時間に間に合わない・時間がなくて子どもを習い事の場所へ送り迎えできない・子ども一人での保育園~自宅間、学校~習いごと場所間の移動をさせることに不安を感じるこのような悩みをお持ちのパパ・ママにはぴったりのサービスです。中には送り迎え時の事故やケガを不安に思う方もいるかもしれませんが、各自治体はファミリー・サポート・センターの援助活動について保険をかけることを義務付けています。万が一の場合でもきちんと補償がされます。・仕事があるから、保育施設・学校に子どもを預かってもらえない時間帯も誰かに子どもを見ててほしい・急に病気になった、冠婚葬祭などが入ってどうしても子どもの面倒を見れなくなってしまった・病児、病後児を預かってほしい(一部地域で実践中)・早朝や夜間の緊急時預かってほしい(一部地域で実践中)・たまには子どもを誰かに預けてリフレッシュしたいこんな時、子どもを預かってくれる人がいたら…。と思うことってありますよね。各センター、そして依頼・提供会員の間で取り決めた範囲内であれば、預かりをお願いすることができます。預かりは提供会員の家に子どもを預ける、というケースが多いようです。その場合は提供会員自身の子どもと一緒に過ごすこともあります。このように、どのように預かりをしてくれるかは提供会員ごとに変わってくるので、提供会員との事前顔合わせの時にしっかり相談しあうことが大切です。ファミリーサポートを利用するには?出典 : では、実際にファミリーサポートを利用するためにはどういった手続きが必要なのでしょうか。依頼会員・提供会員別に紹介します。1.会員登録お住まいの各市区町村のファミリーサポートセンターへ連絡をし、実際に出向いて会員登録を行います。登録説明会や個々での詳しい説明を受け、入会申込書や会員証などの書類に記入します。ファミリー・サポート・センターを訪れ登録が終了しても、直後にファミリーサポートを受けられるという訳ではないので注意しましょう。各ファミリーサポートセンターには託児所を設けているところも多く、事前の予約や申し込みをすれば利用できるので、まだ小さい子どもがいるパパ・ママも安心して登録手続きをすることができます。お住まいの地域のファミリー・サポート・センターの連絡先などは、下記URLから簡単に探すことができます。一般財団法人女性労働協会ファミリー・サポート・センター厚生労働省ファミリー・サポート・センター連絡先一覧PDF2.提供会員とのマッチングファミリー・サポート・センターのアドバイザーから提供会員を仲介・紹介してもらい、お互いが実際に顔を合わせて事前打ち合わせを行います。事前打ち合わせでは、依頼会員とその子ども(ファミリーサポートを受ける子ども)と提供会員で顔を合わせて行うケースが多いようです。依頼会員と提供会員が実際に会い、子どもの様子や注意事項、活動の際の時間や料金の支払い方法など、サポートを受けるうえで決めなくてはならないことや気になることを話し合います。3.ファミリーサポートの実施前もって送り迎えやお預かりをしてほしい日時と内容をセンターに伝えます。活動後、提供会員へ料金を支払います。※料金は、自治体ごとに規定されています。東京都内ですと平日1時間あたりで800円が相場ですが、休日・年末年始の料金は自治体ごとに異なります。また、交通費や食費は別途のところが多いため、利用する市区町村のファミリー・サポート・センターへ必ず確認をとりましょう。1. 会員登録利用しやすい各市区町村のファミリー・サポート・センターへ連絡をとり、会員登録後、活動に必要な事前講習を受けます。その市区町村に住む、子育てを助けたい!と思っている20歳以上の人であれば誰でも提供会員として受け入れてもらえるケースがほとんどです。事前講習は、“安全・事故”、“保育サービスを提供するために”、“子どもの遊び”という3トピックに関して、5割以上のファミリー・サポート・センターが講習を行っています。とくに安全・事故に関しては多くのファミリー・サポート・センターが比重を置いて講習をしています。2. 依頼会員とのマッチングファミリー・サポート・センターのアドバイザーから提供会員の仲介・紹介を受け、お互いが実際に顔を合わせて事前打ち合わせを行います。依頼会員の子どもと顔を合わせたり、依頼会員の細かな要望を聞いたり、提供会員自身がどのように活動するか説明したりします。3. ファミリーサポートの実施依頼会員からの依頼連絡がセンターを通して伝えられます。活動終了後、登録しているファミリー・サポート・センターへ、子どもの様子や託児時間などを記載する活動報告書を作成します。ファミリーサポートを利用してみて出典 : ここで実際にファミリーサポートを利用している人・利用したことがある人の声からファミリーサポートのメリットと注意点を紹介します。■メリット・保育園・小学校の学童保育などが預かってくれる時間外でも子どもをみてもらえる・低料金・事前打ち合わせ・保険加入という安心感・ファミリーサポートを通じて地域でのつながりが生まれる・提供会員自身に子どもがいる場合、遊び相手・友達づくりにつながる■注意点・提供会員と依頼会員・またその子どもとの相性が合わない場合もある・提供会員にどんな人がいるかわからない、資格を持っている人に限ってはいない・提供会員によって保育・子育ての質に差がある残業の日や出張の日でも子どもを預かってもらえるので、安心して仕事ができます。この制度のおかげで仕事が続けられました。メリットは、なんといっても料金が安いことです。民間シッターさんは1500円~2000円が相場ですが、うちの自治体は1時間800円です。デメリットはとくに、登録するときに資格の有無を問わないので、どんな人がいるかわからないことですね。うちは自宅で仕事をしているため自宅にファミサポの人に来ていただいています。子どもとの相性がバッチリの人やいつも子供に泣かれてばかりの人…さまざまです。いきなり当日に「風邪をひいたからお休みします」とメールをもらったりすると青くなります。関わっているお子さんの成長が見られます。今では家族ぐるみで交流もしています。とてもかわいくて毎回のサポートが楽しみです。我が家は子どもがいるので同伴可でもよい人に依頼をしてもらいました。兄弟はうちの子とも遊び、親子でサポートしているかんじです。事前の打ち合わせではお母さんからかなり人見知りをして心配、と聞いていましたが、最初だけで兄弟ともすぐに慣れました。これから申し込みされるのなら、サポーターさんにはお子さんのことは詳しく教えてあげるとよいと思います。ファミリーサポートのお仕事は保育園の送迎に間に合わない家庭に代わって、送迎にいったり…感染症系の病気で保育園や幼稚園を休ませるけど 仕事の方もどうしても休めないとか…理由が理由なので、預かる時間も早朝か夕方から夜にかけてだったり…病気の預かりの場合は急な依頼のときもあるそうです。発達障害がある子どもがいる家庭はファミリーサポートを使えるの?出典 : 障害がある子どもがいる家庭の援助を受け入れているファミリー・サポート・センターの割合は約82%です。非常に多くのファミリー・サポート・センターが、障害がある子どもの受け入れをしていることがわかります。障害の種類としては、多い順に・自閉症スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(および自閉症、アスペルガー症候群)・知的発達症/知的発達障害・注意欠如・多動性症/多動性障害・ダウン症候群となっていて、さまざまな障害がある子どもの受け入れを行っていることがわかります。受け入れ家庭の子どもの年齢は、割合が多い順に6~9 歳(小学校低学年)、3~5 歳、10~12 歳(小学校高学年)と、3~12歳が大半を占めていますが、16 歳~18 歳といった高校生以上の年齢の預かりも、少数ながら行われています。平成27年3月一般財団法人女性労働協会平成26年度全国ファミリー・サポート・センター活動実態調査結果障害がある子どもがいて、ファミリーサポートを使用している会員が受けているサービスは、件数が多い順に学校や保育施設、社会福祉施設等への送り迎え、放課後児童クラブや自宅への送り迎え、学校の放課後の子どもの預かりとなっています。預かりよりも送り迎えをお願いする依頼会員が多いようです。ここで注意すべきことは、提供会員は障害に関しての専門家ではないということです。障害がある子どもの送り迎えやお預かりを依頼する場合は、提供会員・依頼会員の間でより綿密な事前打ち合わせやコミュニケーション、お互いの理解を大切にしましょう。まとめ出典 : ファミリーサポートは子育てへの手助けを求めているパパ・ママの心強い味方です。子育て支援に関するサービスはさまざま登場していますが、地域でのつながりが薄れている今、ファミリーサポートを利用することで、ご近所に子育てに関して頼れる人ができるということはとても心強いですよね。メリットと注意点をきちんと理解した上で自分の子育てに取り入れてみることも一つの手かもしれません。
2016年10月25日情緒障害とは出典 : 「情緒障害」とは、子どもが何らかの要因により感情面に問題が生じ、社会に適応できない状態にあることを指す言葉です。広義に解釈すると上記の意味ですが、実は「情緒障害」は、厳密かつ普遍的な定義がなく、その意味や内容は時代や社会的な背景とともに大きく変遷してきました。そのため現在実際に使われている「情緒障害」という言葉も、文部科学省、厚生労働省、医学のそれぞれにおいて定義や概念にばらつきがあります。情緒障害に含まれる具体的な障害もそれぞれの定義によって異なるため混乱を招くこともままあり、必要に応じて関係機関の定義を参照し、確認する必要があります。以下でそれぞれの定義を見ていきましょう。教育、福祉、医学、それぞれ違う「情緒障害」の定義出典 : ・情緒障害の教育的定義主に特別支援教育の場面で使われる、文部科学省による「情緒障害」の定義は以下の通りです。状況に合わない感情・気分が持続し、不適切な行動が引き起こされ、それらを自分の意思ではコントロールできないことが継続し、学校生活や社会生活に適応できなくなる状態をいう。平成25年教育支援資料Ⅶ 情緒障害|文部科学省HP・情緒障害の教育的定義に当てはまる症状教育の場で用いられる情緒障害にあてはまる症状の具体例としては、主に選択性緘黙(かんもく)を指し、その他、集団行動・社会的行動をしない、引きこもり、不登校、指しゃぶりや爪かみなどの癖、常同行動、離席、反社会的行動、性的逸脱行動、自傷行為をあげています。・教育的定義における情緒障害と発達障害の関係文部科学省では、情緒障害は心理的な要因から生じる後天的な問題であり、先天的な問題から生じる発達障害とは違うものと定義しています。・「情緒障害」の教育的定義の成り立ち教育の場で言われる「情緒障害」は、教育上の概念・分類であり、医学用語の「情緒障害」の定義とは必ずしも一致しません。現在、このようなわかりにくさを生んでいるのは、情緒障害という障害の概念が時代によって変遷していることと、特殊支援教育の歴史的背景に由来しています。公立学校に現在の特別支援学級の前身である情緒障害特殊学級が成立した1969年当時、自閉症などの先天性由来の障害も含めおおまかに「情緒障害」と定義していました。のちに、先天的な障害である自閉症は「情緒障害」から除外されたため、「情緒障害」は後天的な心理的問題により社会に適合していない子どもを分類するための概念と修正されました。平成18年には「学校教育法施行規則の一部を改正する省令」が発令され、平成21年には「情緒教育特別支援学級」の名称も「自閉症・情緒障害特別支援学級」と変更され、特別支援教育の場でも自閉症が情緒障害から分けられるようになりました。・情緒障害の福祉的定義厚生労働省管轄の情緒障害児短期治療施設などの福祉の場面で用いられる「情緒障害」は、厚生労働省が定義したものに沿っています。厚生労働省の情緒障害児の定義は以下の通りです。情緒障害児とは,家庭,学校,近隣等での人間関係のゆがみによって,感情生活に支障をきたし,社会適応が困難になった児童をいう。厚生白書(昭和53年版)・情緒障害の福祉的定義に当てはまる行動や状態不登校、引きこもり、かん黙、軽度の非行、チック、発達障害による二次障害、虐待により心理的に傷ついた状態など参考ページ:厚生白書(昭和43年版)第3章社会福祉|厚生労働省HP・福祉的定義における情緒障害と発達障害の関係厚生労働省が定義する「情緒障害」(情緒障害の福祉的定義)は、同省が定義する発達障害に含まれる、としています。参考ページ:発達障害者支援法の施行について|厚生労働省HP医学的な用語としての「情緒障害」は、主として、心理的な反応として起きる、情動が著しく不安定で激しい現れ方をする状態であり、病名ではないとするのが主流です。国立特別支援教育総合研究所によると、医学的な用語としての「情緒障害」は次のようにまとめられます。1)厳密で普遍性のある定義はない。2)病名ではなく症状もしくは状態像を指して用いられることが一般的。3)現在では、心理的要因が原因と想定されるものに主に用いられるが、例外もある。世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)においては、「情緒の障害」と表記されているものが、医学的な用語としての情緒障害とほぼ同義とされ、病名に相当する診断カテゴリーとされています。参考:発達障害と情緒障害の関連と教育的支援に関する研究・医学的見地における情緒障害と発達障害の関係基本的に、医学的には情緒障害と発達障害は別の区分とされています。就学相談などで使われる「情緒障害」のさす意味とは?出典 : 教育の場で「情緒障害」とされる状態は、具体的には2種類の問題行動があります。一つは、周囲から介入しない限り周囲に迷惑や支障を生じない、内向性の問題行動、もう一つは、周囲からの介入がなければその行動自体が周囲の人に迷惑や支障を生じる外向性の問題行動です。専門用語で「内向性行動問題」と呼ばれるもので、周囲が介入しない限り迷惑や支障を生じないものをさします。具体的な例として、・選択性緘黙(かんもく)・不登校、集団行動・社会的行動をしない・ひきこもり、指しゃぶりや爪かみなどの癖・身体を前後に揺らし続けるなどの同じパターンの行動を反復すること(常同行動)・自分の髪の毛を抜くことなどです。一般的にはただの「癖」と考えられているものでも、この行動が長期間頻繁に続き、学校での学習や集団行動に支障をきたすほどの場合には情緒障害としてとらえられます。専門用語で「外向性行動問題」と呼ばれるもので、周囲からの介入がなければその行動自体が周囲の人に迷惑や支障を生じる場合をさします。具体的な例は、・離席、教室からの抜け出し・集団逸脱行動・犯行、暴言、暴力、反社会的行動・非行、性的逸脱行動などです。これらの行動から、学校での学習や集団生活に支障をきたしてしまいます。攻撃性を示す場合が多く、その攻撃性が自分に向った場合である自傷行為も情緒障害としてとらえられます。教育の場で「情緒障害」としてあがることの多い、選択性緘黙と不登校について紹介します。・選択性緘黙文部科学省が定義する選択性緘黙は、以下の通りです。選択性かん黙とは,一般に,発声器官等に明らかな器質的・機能的な障害はないが,心理的な要因により,特定の状況(例えば,家族や慣れた人以外の人に対して,あるいは家庭の外など)で音声や言葉を出せず,学業等に支障がある状態である。(平成25年文部科学省教育支援資料)・不登校文部科学省の教育支援資料において、不登校は、以下のように定義されています。不登校の要因は様々であるが,情緒障害教育の対象としての不登校は,心理的,情緒的理由により,登校できず家に閉じこもっていたり,家を出ても登校できなかったりする状態である。そして,本人は登校しなければならないことを意識しており,登校しようとするができないという社会的不適応になっている状態である。したがって,一般的には,怠学や学校の意義を否定するなどの考えから,意図的に登校を渋る場合は,学校に登校しないという状態は類似しているが,ここでいう情緒障害の範囲には含まない。平成25年教育支援資料Ⅶ 情緒障害|文部科学省HP「情緒障害」の子どもには、どのような支援があるの?出典 : 自閉症・情緒障害通級指導教室通級指導教室とは、通常学級の学校に籍を置いて、通級指導の時間のみ通級指導教室に通って支援を受けるという制度です。子どもが在籍する学校に通級指導教室が無い場合は、通級指導教室がある他の学校に通って通級指導を受ける場合もあります。障害の種別に分かれ、その子に合った指導が受けられますが、情緒障害のある子どもは「自閉症・情緒障害通級指導教室」に通うことになります。・対象者通常の学級におおむね参加でき、一部特別な指導(社会的適応のための特別な指導や強化の補充指導など)を必要とする程度のものであるとされています。・どのような指導がされるか基本的には、特別支援学校などにおける、障害がある生徒の自立を目指した教育的な活動を参考とした指導が中心で、社会的適応性の向上が目的とされています。通級指導を受ける場合、大半の時間を通常学級で過ごし、通級指導を受ける時間は限られています。そのため、必要に応じて各教科などの補充的な指導は行っていますが、個別の指導内容を設定することはできません。自閉症・情緒障害特別支援学級特別支援学級とは、通常学級ではなく特別支援学級に籍を置き、よりきめ細かな指導を受ける少人数の学級です。もし、子どもに手厚い指導が必要な場合は、上記の通級指導教室ではなく特別支援学級に通う場合が多いです。情緒障害のある子どもは「自閉症・情緒障害特別支援学級」で指導を受けることになります。・対象者文部科学省は、自閉症・情緒障害教育の対象を以下のように定めています。一 自閉症又はそれに類するもので,他人との意思疎通及び対人関係の形成 が困難である程度のもの二 主として心理的な要因による選択性かん黙などがあるもので,社会生活へ の適応が困難である程度のもの平成25年教育支援資料Ⅶ 情緒障害|文部科学省HP選択性かん黙や不登校などの感情面での問題のために、通常の学級では学習を行うことが難しく、社会的適応のための特別な指導を行う必要がある子どもが対象者であるとされています。・どのような指導が受けられるか情緒障害や自閉症のある子どもなどが、人とのかかわりを円滑にし生活する力を育てることを目標に指導を受けることができます。 特別の教育課程を編成することができることが特徴です。基本的に主な授業は特別支援学級で受けますが、体育や図画工作、給食の時間は通常学級の子どもたちと過ごすこともあります。特別支援学校基本的には、情緒障害であるというだけで特別支援学校の支援対象となることはありませんが、情緒障害とされている子どもが、知的障害や病弱・身体虚弱を伴う場合は、知的障害、病弱などの区分での支援対象となることもあります。特別支援学校と特別支援学級・通級指導教室の違いについては、以下のコラムに詳しく解説されています。・放課後等デイサービス幼稚園・大学を除いた学校に就学中で、かつ障害のある子どもが、学校の授業終了後や長期休暇中などに通い、生活能力向上のための訓練および、社会との交流促進を行う施設です。施設利用にあたって療育手帳や障害者手帳は必須ではなく、障害児通所支援受給者証を申請し、認可が下りれば利用することができます。施設のタイプは、習い事型、学童保育型、療育型の大きく分けて3つのタイプに分けられます。詳しくは以下の記事をご覧ください。・情緒障害児短期治療施設(児童心理治療施設)情緒障害短期治療施設とは、学校教育との緊密な連携をとりつつ、医学的な心理治療を行う総合的な治療・支援施設です。情緒障害児短期治療施設の対象児童は、心理的困難や苦しみを抱え日常生活に生きづらさを感じている子どもたちであり、心理治療が必要とされる子どもたちであるとされています。知的障害児や重度の精神障害児は基本的に対象ではありません。利用方法は、宿泊入所、通所、外来相談の3つがありますが、施設によっては外来相談が設置されていない場合もあるため、一度お近くの情緒障害児短期治療施設に電話などで相談してみることをおすすめいたします。・児童相談所児童相談所とは、家庭や学校などから18歳未満の子どもに関するあらゆる相談に応じ、また、子どもおよび家庭に対して医学的、心理学的、教育学的、社会学的及び精神保健上の判定や調査、調整を行う場所のことです。各相談所には精神科医師、児童心理士、児童福祉司などの専門職員が配置されています。・児童家庭支援センター児童家庭支援センターは、児童心理療育施設、児童養護施設、児童自立支援施設、母子生活支援施設、乳児院に設置されているもので、18歳未満の子どもに関する様々な相談を、子ども、家庭、地域住民から受け付けます。また、児童福祉施設などの関係する機関との連絡調整も行います。学校で子どもが直面する「情緒障害」の原因は?出典 : 教育的定義における「情緒障害」とされる状態を引き起こす原因としては、対人関係のストレス状況、学業・部活動の負担、親子関係の問題などが考えられるとされています。友人同士や教師との関係において、対等な人間関係が崩れた場合大きなストレスが生じます。いじめがその最たるものとされています。一方的、威圧的に教師や友人に接されることによりストレスが生じ、情緒障害とされる状態に陥る原因になります。学業、部活などにおいて、本人の能力に見合わない要求をされ、かつその環境から抜け出すことができない雰囲気がある場合、それがストレスとなり情緒障害の原因となると言われています。親子関係において信頼関係が築けていない場合に、教育的定義における「情緒障害」の原因となる可能性があります。親子の信頼関係が築かれていないパターンで、児童虐待なども含まれます。子どもと過ごす時間を十分にとることが信頼関係の構築において大切です。平成25年教育支援資料Ⅶ 情緒障害|文部科学省HP子どもが情緒障害の疑いがあるとき、どう対応すべきなの?出典 : 生活上の問題が生じたときは、できる限り早い段階でなんらかの対応をとることが必要です。・毎日の基本的な生活環境を整える子どもの成育には、障害の有無、障害の種類にかかわらず、安心して過ごせる環境作りが必須です。毎日の生活のなかで、家族関係の安定を意識し、なるべくお子さんをほめてあげること、そして、できるだけ一緒に過ごしてあげること。このような安心して過ごせる基本的な環境作りを心がけることこそが、お子さんの症状の回復のための基礎づくりとなります。・いじめはすぐ対処もし、お子さんがいじめを受けているように感じたら、本人に対処させるのではなく、いじめが起きている環境から保護することが最優先です。まず、教師に相談し、お子さんのいる環境を変えるなどの対応をし、それに加え児童精神科などで専門的な治療を受けることで、心の傷がこれ以上深まらないようにする必要があります。・医療機関を受診する身体症状が強い場合は小児科、情緒面の問題が強い場合は児童精神科を受診することをおすすめします。専門家の指示を仰ぎ、適切な指示を受ければ、ご家族もお子さんも、無為に苦しむことなく解決の糸口を見つけることができます。どうしても、医療機関の受診への敷居が高い場合には、スクールカウンセラーや各相談機関を利用するのも一つの手です。もし、近くに児童精神科がない場合は、大学病院や総合病院の精神科でも診療してもらえます。少しでもお子さんが何らかの問題を抱えているように感じたら、どうか一人で抱え込まずに、専門家の助けを求めてください。参考文献:杉山登志郎 /著『子どもの発達障害と情緒障害』2009年講談社/刊まとめ出典 : 「情緒障害」の定義はさまざまですが、一般に情緒障害とされる状態は、主に対人関係などの後天的なストレス要因から生じるとされています。先述の通り、お子さんの成育の基本となるのは安心して生活できる環境づくりであり、それには家族からの理解が不可欠です。お子さんをあたたかい目で見守ってあげることこそが、問題解決のための近道となります。とはいえ、保護者の方が、何のストレスも感じずお子さんに接し続けるのは難しいこともあります。専門家からアドバイスしてもらうことで、今までずっと悩んでいた問題から抜け出す解決の糸口が見つかることもありますので、少しでも悩み事がある場合は一人で抱え込まず、医療機関や相談窓口に連絡を取ることをおすすめします。平成25年教育支援資料Ⅶ 情緒障害|文部科学省HPあなたのそばの相談機関|情緒障害児短期治療施設(児童心理治療施設)ネットワークHP発達障害者支援施策について|厚生労働省HP厚生白書(昭和53年版)|厚生労働省HP情緒障害児短期治療施設運営指針|厚生労働省HP特別支援教育について|文部科学省HP 自閉症・情緒障害とは|国立特別支援教育総合研究所HP
2016年10月24日発達障害支援の研究は日進月歩。最新の研究はどうなっているの?出典 : 発達障害の原因や治療法、支援技術に関する研究は、世界各地、様々な分野の専門家が取り組んでいる領域です。私たちが日常生活するなかでも、メディアに掲載されるニュースなどを通して、その研究成果の一部にふれることがあります。実際に発達障害のある子どもを育てている保護者や、その周辺の支援者にとって、最新の研究成果は今と未来の生活にどのような影響をおよぼすのでしょうか?そんな疑問に応えるシンポジウムのお知らせです。11月5日、「うちの子、少し違うかも・・・~発達障害に対する適切な療育・支援のための研究開発~」と題されたシンポジウムが、東京都江東区青梅にある、日本科学未来館にて開催されます。主催団体である「社会技術研究開発センター(RISTEX)」からいただいたシンポジウムの概要をご紹介します。ご興味のある方はぜひ参加してみてください。11月5日(土)「うちの子、少し違うかも・・・~発達障害に対する適切な療育・支援のための研究開発~」シンポジウム概要Upload By 発達ナビ編集部1. 趣旨落ち着きがない、こだわりが強い、人見知りが激しい、などで子育てが難しいと感じられる子どもに発達障害※があると診断されることがあります。しかし、発達障害は早期に発見し適切な療育を行うことで子どもの将来の可能性が広がり、周囲の支援によりご家族の困難を軽減することが期待できます。JST社会技術研究開発センター※※では、発達障害に関する研究開発プロジェクトを支援しています。本シンポジウムでは、その中で活動した研究者からの最新の研究報告と有識者によるパネルディスカッションを行い、早期発見、療育、ご家族への支援の大切さへの理解を深めることをねらいとします。※発達障害は、生まれつき脳の発達が通常と違っているために、幼児のうちから症状が現れ、通常の育児ではうまくいかないことがあります。成長するにつれ、自分自身のもつ不得手な部分に気づき、生きにくさを感じることがあるかもしれません。(厚生労働省 みんなのメンタルヘルス HPより)※※社会技術研究開発センター(RISTEX)では、「社会のなかの科学・社会のための科学」の理念のもと、社会の具体的な問題の解決を目指す研究開発を推進しています。2. 日時平成28年11月5日(土)開場12:30開演12:45~14:45(2時間)3. 場所日本科学未来館(東京都江東区青海)7階未来館ホール(定員300名)4. 対象ご家族、教育・保育に携わる方、子育て支援に関わる民間団体の方、地方自治体の方、など注:主に、以下の方を対象とします。・情報収集がインターネットや親同士の情報交換に限られ、クリニックの検診まで踏み出せないご家族・子どもが発達障害との診断を受けたがその後の子育てに不安を持つご家族・発達障害がある子、もしくは、気になる子を持つご家族が親戚や友人にいる方5. プログラム12:30受付開始12:45開会挨拶12:50講演①神尾 陽子 氏(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 児童・思春期精神保健研究部 部長)『一人ひとりの発達特性にあった子育てとそれを支える地域社会』②船曳 康子 氏(京都大学大学院人間・環境学研究科 総合人間学部 准教授)『MSPA(Multi-dimensional Scale for PDD and ADHD)による発達特性の理解と今後』③山野 則子 氏(大阪府立大学大学院 人間社会システム科学研究科 教授/スクールソーシャルワーク・評価支援研究所 所長)『発達障害を抱える児童・生徒の学校における支援と課題~スクールソーシャルワークの視点から~』13:35パネルディスカッションモデレーター:熊 仁美 氏 (特定非営利活動法人ADDS 共同代表)パネリスト :上記講演者3名、山﨑 順子 氏(東京都発達障害支援センター(TOSCA) センター長)14:25フロアとの対話(質疑応答)、まとめ14:45終了Upload By 発達ナビ編集部京都大学医学部卒業、ロンドン大学付属精神医学研究所児童青年精神医学課程終了、京都大学医学部精神神経科助手の後、米国コネティカット大学(フルブライト研究員)で自閉症研究に従事した後、九州大学大学院人間環境学研究院助教授を経て、2006年より国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所児童・思春期精神保健研究部部長、2010年より山梨大学客員教授を併任。Upload By 発達ナビ編集部H8年京都大学医学部卒業。京都大学医学部付属病院、京都市立病院にて研修後、京都大学大学院医学研究科に入学し、認知症の臨床研究を行った。H12年からは、カリフォルニア工科大学行動生物学教室に留学し、小鳥の歌を用いた音声発達の臨界期の研究に従事。H15年に帰国し、こころの発達、発達障害の分野の臨床と研究に従事。日本学術振興会特別研究員、京都大学医学部付属精神科助教を経て、H27年より現職。Upload By 発達ナビ編集部関西学院大学社会学研究科後期博士課程修了、博士(人間福祉)。スクールソーシャルワーク評価支援研究所所長内閣府: 子どもの貧困対策検討委員会委員・有識者会議委員、文部科学省:中央教育審議会生涯学習分科会委員、企画調整部会委員、家庭教育支援の推進方策に関する検討委員会座長、教育相談等に関する調査研究会議委員、ほか国の委員多数。大阪府子ども施策審議会会長、子どもの貧困部会部会長、大阪府スクールソーシャルワーク配置事業スーパーバイザー、ほか多数。Upload By 発達ナビ編集部2010年、慶應義塾大学大学院社会学研究科修士課程修了。2011年、自閉症児に効果的な早期療育が届くことを目指し、NPO法人ADDS設立。2013年、同大大学院後期博士課程を単位取得退学、同大先導研究センター研究員。自閉症児のコミュニケーション研究や、早期療育の実践研究に携わる。NPO法人では、保護者が家庭療育に取り組むためのペアレントトレーニング、セラピスト認定制度等を実施し、現在までにセラピストを約100名養成、ペアレントトレーニングを約200家庭に提供してきた。Upload By 発達ナビ編集部東洋大学社会学研究科社会福祉学専攻博士後期課程修了、元国際医療福祉大学医療福祉学部教授。前清瀬市子どもの発達支援・交流センターセンター長、東京都発達障害者支援体制整備委員会委員、東京都要保護児童対策地域協議会代表者会議委員、東京都若者の自立等支援連絡会議委員 等を歴任。障害やソーシャルワーク関連の著書多数。イベント申し込みはこちら参加申込フォーム
2016年10月24日なんでも自由に、自分の意思にまかせてくれた両親編集部:前回は、現在のお仕事である義足の研究開発に至るまでのエピソードや、MIT(マサチューセッツ工科大学)への留学を決めた理由などをお伺いしました。「留学費用をどうまかなうか」というご両親との話し合いが印象深かった、と…。遠藤:ええ、当時24歳でしたので、働いてもいい年齢でした。MITの学費は400万円くらい。その上アメリカでの生活費もかかる。どうしようかなと迷っていたら、「最初の一年はなんとかしてやるから、後は自分でなんとかしろ」と言って、背中を押してくれました。あの一言は忘れられないですね。結局はリサーチアシスタントとして学費と生活費ををもらえたので良かったのですが。編集部:高校生のころに「留学したい」と伝えた時は、目的が不明確で反対されたとおっしゃっていましたが、他にも、ご両親がこれまで遠藤さんの決断に反対されることはあったのでしょうか。遠藤:注意されたり、止められたりというのは無いです。どんな場面でも、無いですね。あれを伸ばせ、これを勉強しろというのも無かったです。自由にやらせてもらってましたね。編集部:そうなんですね、そんな「自由」な環境の中で熱中していたことはありますか。遠藤:ゲーム…ですかね?僕はまさにファミコン世代で、ゲームをひたすらやってました。 あ、ドラクエって、わかりますか?心配になってきた。編集部:大丈夫です。わかります(笑)。遠藤:僕の世代は人気絶頂期でしたから、新しいのが出たら数日間はつきっきりでやる、みたいな世界でした。編集部:新作はみんな並んで買ってましたよね。遠藤:そう、それで一週間後くらいにはクリアしちゃって、クラスの中での順位が決まる。僕は一番目にクリアしましたよ。…ドラクエ4だけでしたけど(笑)。編集部:一度クリアしたら、熱は冷めるものなんですか。遠藤:それが、クリアしても何度もやるんです。レベルをあげたり、違うルートを行ってみたり、はぐれメタルが仲間になるとか、クリアするために必要じゃない要素も全部やりきりたいタイプ。編集部:こだわりですね(笑)。遠藤:そう思います(笑)。親に「ほどほどにしなさいよ」と言われながらもやってましたね。もちろん学校はちゃんと行っていましたけど。夢中になってやる。「もっと知りたい」という気持ちにまっすぐに遠藤:あとはミニ四駆、あれはハマってましたね。編集部:ミニ四駆ですか?遠藤:そうです、既存のものを改造して、速く走れるようにして大会に出るんです。子どもが読む漫画雑誌の、「コロコロコミック」と「コミックボンボン」って人気のが2つあって。あ、「コロコロコミック」とか知ってます?編集部:はい、今のところついていけてます(笑)。遠藤:よかった。「コロコロコミック」には当時必ずミニ四駆の情報が入っていたんです。だからそれを読んでは改造し、読んでは改造し。相当やりましたよ。編集部:大会みたいなのもありましたよね。遠藤:そう!大会に出るためには標準パーツがあってそれを使わないといけないとか、穴を開けるにも何%までとかルールがあって。今は自由度がないと思うけど、当時はかっこいいのが作りたいと思って、一生懸命目指してましたよ。遠藤:ジャパンカップっていう大会にでたかったけど、僕の住んでいる沼津から小学生一人で行ける距離ではなかったので諦めました。でも沼津市内でお店の人が主催する会があって、それには優勝したことはあります。編集部:子どもの頃から興味関心に対してまっすぐだったんですね。どんどん深堀っていくというか。遠藤:そうかもしれないですねえ。編集部:逆に苦手なこともあるんですか。遠藤:うーん、勉強で困ったことは無いですけど、しいて言うなら音楽の授業はあまり好きじゃなかったです。「積極的に辞める」ことも多い。自分の目的が明確だから選べる。編集部:中高はバスケットボールに熱中していたとか。遠藤:そうですね、それも「背が高いからいいんじゃない」と言われたことがキッカケで。編集部:ざっくり(笑)。遠藤:実際やってみたらおもしろかったんですよね。バスケットって騙し合いなんですよ。足の速さやシュートの正確さを競うだけじゃなくて、試合の中で1:1で付かれたときに如何に抜くのか、それともシュートを打つのか。いくつかパターンかあって、色んな騙し方があります。それを考えるのも面白かった。編集部:面白い。バスケを騙し合いとして見たことがなかったです。遠藤:でも、うまくはならなかったですね。中学校のときはNBA(北米のプロリーグ)を目指していたけど、チームも強くなかったし、インターハイすら遠かったです。プロは目指していたけど、途中で積極的に目標を切り替えました。編集部:積極的に、ですか?遠藤:そうですね。部活レベルで留めることにしました。他にも積極的にやめてきた物事はけっこう多かったと思います。編集部:なるほど。前回のお話でも、「1番だと嬉しいけど、そうでなくてもまあいい」タイプだとおっしゃっていましたが、中高で熱中していたバスケも、スッと切り替えられたんですね。遠藤:そうですね。今もパラリンピックを盛り上げようという視点でみると、例えば為末(元陸上競技選手の為末大さん)は、SNSを使った情報発信や意思の発信が上手ですよね。僕もそれができたらすごくいいなと思うけど、できないと思う。だから僕は、SNSでの情報発信ではなくてモノを作る方向にコミットしてますし、そこに「なんで僕はできないんだろう…」という未練のようなものは、あまり無いです。編集部:なるほど。この流れで、遠藤さんの「出来ないこと」の話をもう少し。遠藤:あります、さきほど「勉強で困ったことはほとんどない」と言いましたけど、僕は生活能力が圧倒的に低い(笑)。編集部:生活能力ですか。研究と会社と、ご多忙の中でどう管理してらっしゃるのですか。遠藤:日本に帰国してから「スケジュール管理が苦手なんだ」と気づいて、そこからは自分1人でやらないようにしました。事務を担当してくださる方に頼ってますね。そうでないと大事なスケジュールも遅れたり忘れたりして、怒られるんです。時間の計算ができないんですかね…。編集部:意外な一面といいますか…。遠藤:あとはコミュニケーション能力が低い。初対面で、「感じよくしゃべる」ということが苦手です。「頑張ってもうまくいかない」ですね。だから交友関係も少ない方だと思っています。編集部:それは学生の頃からですか?遠藤:そうですねえ、部活や研究室の仲間とはもちろん話しますけど、クラス単位の活動とかは積極的ではなかったかも。ギラギラしている目立つ子たち、苦手で(笑)。編集部:勉強もスポーツもできて、クラスの中心的存在だったのかなと思ってました…!遠藤:いやいや全然です。でもだからといって、さっきの為末の話と同じですけど、すごい社交的な友人を見て落ち込むことも無かったんで、そんなに気にしていなかったですね。「出来なかったことに引きずられない考え」をお持ちの遠藤さん。次回は、「自分の熱量を何に傾けるべきか」ということをお伺いしたいと思います。株式会社 Xiborgソニーコンピュータサイエンス研究所プロフィール
2016年10月24日発達障害のある小5の息子が、自分からお手伝いをしてくれた日出典 : 我が家には発達障害の息子と、定型発達の娘がいます。小5の息子にはADHD、アスペルガーの診断が出ています。ちょっとしたことですぐにイライラしやすく、手先が不器用なところもあります。そんな息子が少しでも自分に自信を持てるよう、私はどんなに些細なことでも本人の頑張りを見つけたら褒めるようにしていました。ある日のこと、我が家の和室に洗濯物が山づみになっていました。これが目に入るといつも、「たたまなきゃ」とストレスの原因になっていました。ある日、夕食の支度をしようと動き出しながら、ふと和室を見て驚きました。洗濯物がたたんであったのです。出典 : 驚きつつも、嬉しくてつい聞きました。私「洗濯物、誰がやってくれたの?」息子「ボクだよ!」声をあげたのは息子。これには心底驚きました。たまに手伝いでやっても、とにかくブーブーと文句を言いながらやっていた息子が、自分からやったんですから。私「助かるよー!ありがとう!」心の底から出た言葉でした。その日の夕飯時、息子が嬉しそうに今日の出来事を報告し始め…出典 : 夕飯時に、息子が再度その話を掘り返しました。「ボクがたたんだの、スゴかったでしょ?!」褒められたい!頑張ったよ!そんな言葉が聞こえてくるような表情です。息子の成長になればという気持ちもあり、私は再度、助かったことを伝え、たたみ方の話などを持ち出し、本や相談機関から得た方法「より具体的に褒める」を実行しました。それに対し、喜ぶ息子。私も嬉しかった気持ちを「意識して」伝えました。するとそこへ割り込んで来たのは、夫の一言でした。「そろそろ、そのお話は終わりにしよう。」この言葉で振り向いた私の目に映ったのは、目に涙をいっぱいためた5歳の娘の姿でした。すぐに「しまった!!」と思いましたが、時すでに遅し。「私もたくさんお手伝いしてるのに、どうしてお兄ちゃんだけたくさん褒めるのぉぉぉーー!!」娘は泣きながら言いました。息子の障害を理由に、娘に我慢をさせてはいけない。わかってはいたけれど出典 : 娘の絞り出した言葉は、当然の言い分でした。自分からお手伝いをしてくれる回数は、娘の方が断然多いのです。洗濯物をよくたたんでくれるのも娘。たたみ方の上手さは同じだけど、むしろお片付けまで一緒にしてくれる事を考慮したら、私を助けてくれたのは、いつも娘でした。息子へは頭の片隅に「支援」があるので、褒めるのも意識して言葉を追加しています。でも、娘にはそこまでの配慮をしていなかった事が、この件でよくわかりました。健常のきょうだい児への配慮。これは、常に息子への支援で手一杯の私に、欠けていた部分でした。それでも気を付けていたつもりだったのに。娘へしわ寄せがいかないように、と思っていたのに。悩みは尽きない。けれど、工夫できることはきっとある出典 : 当事者への支援はそれだけでも大変なのに、2人以上子どもがいる家庭は、きょうだい児へのケアまで配慮しなくてはならない…。私たち親が、日々の支援で気を配らなくてはならないことは計り知れません。それはまるで、積んでも積んでも崩れる砂の山へ、根気よく砂を積むような日々です。いつか立派な砂山を目指して。今回の出来事でのせめてもの救いは、娘との関係が「理由や意図を伝えられる関係」だったことかもしれません。今後もその関係を続けていけることを意識し、娘のガス抜きができる時間を作っていく必要性を考えさせられました。
2016年10月24日小学校に上がるまでに、もう1年あったら…そんな事を考えたことありませんか?出典 : 「我が子も来年は小学校へ入学…だけど、病気や障害があって体が小さく体力も十分についていない。小学校でみんなと一緒にやっていけるのか」「小学校へ上がるまでに、せめてあともう1年あったら、体力も同年代に追いついて、心配せずに入学できるのに…」お子さんの発育と、小学校入学のタイミングについて、そんな風に悩まれているご家庭もあるかもしれません。今回のコラムでご紹介するのは、発育不全や病気等を理由に、教育委員会の許可を得て主に小学校に上がる年を1年遅らせることのできる就学猶予という制度です。以下は数年前に未熟児で生まれ、発達の遅れのため就学猶予をしたお子さんを持つ方のお話です。3ヶ月早く、3月末に産まれてしまいました。早生まれになったことで学年は1つ上に、でもそのせいで発達面や学力面で余計差が開いてしまう状態でした。690グラムで産まれた我が子ですが幸い障害はなく、猶予という形を取って本来の位置に戻し可能性を伸ばしてあげたいというのが猶予を決めた一番の理由です。現在は、特別支援教育の充実とともに、就学猶予の取得は以前より難しくなっていると言われています。ですが、上記の体験談のように、お子さんが未熟児や低体重で生まれた場合、就学猶予・免除を利用できる場合もあるようです。以下では、就学猶予の制度や背景、申請・利用方法などを中心に解説していきます。就学猶予・就学免除とは?義務教育との関係は?出典 : 一般的に義務教育といわれているものは、保護者が負っている「教育を受けさせる義務」(教育義務)によって子どもが受ける教育のことをさします。保護者は、児童を小中学校などに通学するように取り計らう「就学義務」という義務を負っています。一方子どもには、基本的人権の一つである教育を受ける権利があります。国民は国家に教育を受ける権利を要求できます。憲法第26条第2項で「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。」と規定されており、また、教育基本法第5条第1項に「国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。」出典 : 就学猶予・免除とは、保護者が負っている就学義務に猶予を設けたり、免除を与える制度です。通常、保護者は児童が6歳になった時に所属していた学年の最初の日(つまり6歳になる年度の4/1)から、15歳になった時に所属している学年の最後(15歳になった年度の3/31)まで、児童に教育を受けさせる義務があります。就学猶予・免除を取得すると、その就学義務を負う時期を遅らせる、または場合によっては義務を放棄することができます。ただし、保護者または児童が日本国籍を持っており、かつ日本に住んでいる場合に限ります。例えば、保護者は日本国籍で日本にいるが、児童が海外で学んでいる場合や、児童が重国籍で日本外で教育を受けている場合などは、就学猶予・免除の対象外となります。ちなみに、就学猶予と就学免除の間には、明確な違いはありません。というのも、就学猶予を認められた場合でも、就学義務期間は延長されず、満15歳の時に子どもが所属していた学年の終わりで、親の就学義務は消失するからです。ですので実質、猶予された期間は免除されたことと同じことになります。Upload By 発達障害のキホン日本では明治時代の中期ごろから義務教育の基盤が出来上がり始めました。しかし、当時は障害のある児童が学校で義務教育を受けるための環境はほとんど整備されていませんでした。そのため、障害のある児童の保護者は、就学義務の猶予・免除を受けとなり、結果として児童は教育をほとんど受けませんでした。上のグラフが示すように、第二次世界大戦の直後1945年は、就学猶予者・免除者の人数はとても多くなっています。これは、障害のある児童のための学校、例えば盲、聾、知的、肢体不自由児向けの養護学校は、国が定める義務教育として扱われていなかったという背景があります。そのため保護者が障害のある児童を盲、聾、知的、肢体不自由児向けの学校に通わせる場合、就学義務を果たしたことにはならないが、就学猶予・免除を受けるという形を取っていたのです。しかし、1979年からは、養護学校が義務教育とみなされるようになり、就学猶予や免除制度を利用する必要のある家庭は急激に減っていきました。今日では、特別支援学校、支援学級の整備・充実により、障害を理由に就学義務を果たせず、就学猶予・免除を受けるという場合は非常に少なくなっています。では、現在では、どのような場合にこの制度が利用されているのでしょう。どんな理由なら就学猶予・免除が認められるの?出典 : 保護者は、児童を就学させる義務を負っていますが、例外として、その児童について以下で説明するような理由が認められた場合は、一定手続を経て就学義務の免除を市町村の教育委員会から受けることができます。学校教育法では、就学猶予・免除が認められる理由を、「病弱、発育不完全、その他やむを得ない事由のため就学困難と認められる場合」としています。病弱、発育不完全とは、治療や生命・健康の維持のために療養をしなければならず、教育を受けることが困難である場合、学校教育に耐えることができない程度の障害がある場合などを意味します。その他のやむを得ない理由とは、以下のような場合が挙げられます。1. 児童自立支援施設等に入所し、就学ができない場合2. 重国籍者で、将来外国籍を取得することを前提として、在日外国人学校等に就学を希望する場合3. 帰国子女で、日本語の能力が養われるまでの一定期間、適当な機関で日本語の教育を受ける等の措置が講じられている場合4. 低出生体重児等であって、教育上及び医学上の見地等の総合的な観点から、市町村教育委員会が就学を猶予又は免除することが適当と判断する場合一方、経済的な理由では就学猶予・免除は認められません。学校教育法では、経済的理由によって就学困難と認められる学齢児童の保護者に対しては、必要な援助を市町村が与えなければならないとされているからです。そのような場合は、就学援助制度を利用できます。就学猶予・免除を受けたい場合は教育委員会の許可が必要です出典 : 前述した理由に該当し、就学猶予・免除を受けたい場合は、在住する市区町村の教育委員会に申し出を出すことが必要です。申し出の際には、就学猶予・免除を受ける理由を証明する書類が必要です。市区町村によっては指定の医師の診断書が必要なこともあります。理由を証明する書類とを参考に、保護者の申し出を教育委員会が審議し、就学免除・免除が認められた場合は許可通知が出されます。Q&A障害のある子どもの就学事務手続の手引就学免除・猶予を利用しても、子どもは中学校を卒業できる?出典 : 就学免除・猶予を利用した場合でも、子どもは、1年または数年遅れて中学校を卒業することができます。保護者が児童に教育を受けさせる義務は、就学猶予を1年受けた場合、子どもが中学校2年生の時になくなりますが、これは保護者の就学義務がなくなるだけであって、引き続き児童は教育を受ける権利を持っています。学校に行かず、不登校やフリースクールに通っている場合は?出典 : 現在、文部科学省の見解では、厳密には不登校やフリースクールの利用では、保護者が就学義務を果たしたことにはなりません。しかし、学校長の裁量などにより、学校外の施設等における学習活動を学校への出席として扱うことができる場合もあります。また、長期の不登校により中学校卒業資格を得られなかった子どもに対する救済措置として、中学校卒業認定試験という制度が存在します。この試験に合格すれば、中学校に通って卒業することができなかった子どもも、高校へ進学することができます。まとめ出典 : 就学猶予・免除は、その制度の確立当初、重い障害がある児童が義務教育を受けられない場合に利用されてきました。その後、特別支援学校や支援学級での教育も義務教育とみなされるようになり、就学猶予・免除を利用する必要のある家庭の数は大幅に減っています。しかし、近年でも、低体重児など、病気や発育不全がある場合に、就学猶予・免除が適応されることがあります。お子さんの発育と、小学校入学のタイミングについて悩まれているご家庭は、こうした制度の活用も選択肢の一つとして参考にしてみてください。
2016年10月23日アスペルガー症候群の娘が遊ぶ姿は、まるで蝶々出典 : 私の娘にはアスペルガー症候群があります。私が幼稚園を訪れると、園庭で遊んでいる娘を見かけることがあります。基本はひとりで遊んでいます。ふわふわと中途半端な位置で舞っていたり(笑)、ふわ~っと遊具のところへ行って遊んだと思えば、またふわ~っとどこかへ…その様子はまるで蝶々のようです。娘は自分のペースで、自分のイマジネーションの中で遊んでいるんだなぁと思いながら見ていると、私はとてもあったかい気持ちになります。幼稚園の先生方もそんな娘を暖かく見守ってくださり、空気や顔色が読めない娘の発言を「だからこそ真実味があって信用できて、心に響く」と評してくださったりします。周りの方のそんな言葉を聞くのはとても嬉しく、また娘を誇らしく感じていました。就学相談担当者から指摘された、娘の様子出典 : そんなある日、就学相談の担当者の方が幼稚園での娘の様子を観察しに来ました。その担当者の方の口から娘の様子を聞くと、・ホールに集合してみんなで先生の話を聞いているときに、誰に何の断りもなく水を飲みに行った・自分の近くに置いてあるペンをお友達に「取って」と言われても、名前を呼ばれるまで自分が言われていることに気づかなかったなど色々な指摘をされましたが、あの蝶々のように遊ぶ娘の様子についても報告がありました。ジャングルジムに登って、そこにいたお友達とちょっと喋ったと思えば、園庭の隅にある、娘お気に入りの葉っぱを取りに行き、そこへいた年少さんと少し言葉を交わし、今度は砂場で遊んでいたお友達に声をかけたと思えば、ふらふら~っと今度は鉄棒のところへ行って前回りを数回、その後…と、いつも見かけるような様子を微笑ましく聞いていたのですが、担当者の方はこう言いました。「お友達とじっくり関わったり、腰を据えてじっくり遊ぶことがなかったですね。」他の子にはない娘の良いところを、つぶしたくない!出典 : まるで娘の遊び方に問題があるかのようなその言葉に、私は考えさせられました。「うーん、私は全然そんなこと問題だと思わないんだけどなぁ…むしろ彼女の持つ空想力というか夢見がちなところを大事にしたいんだけどなぁ」そう思うと同時に、「ああ、これは大事にするっていうか、守ってやらなきゃ潰れてしまう!」と決意と危機感が合わさったような気持ちになったのです。娘の個性を大事にしたい。そう思えるようになったのは、自分の幼少期を思い出したから出典 : 今でこそこんな娘の様子を「守ってあげたい」と思うようになった私ですが、娘に「凸凹がある」と指摘されたばかりのころは、「娘のことがわからない」と悩んだこともありました。娘の個性を大切にしたいと思えるようになったきっかけは、自分の子ども時代を思い出したことです。親に「どんな子だった?」と聞くと、私は必ず「ちょっとませた、変な子だった。」と言われます。幼稚園の頃の記憶を思い返してみると、園庭の一角にあった小さな森のような場所が大好きでした。そこに一人で座って、リスやクマ、ウサギやシカなどの森の動物がやって来て、木の実でパーティーをやるという妄想をしながら遊んでいました(笑)。またある時は、朝食のパンに入っていた小さな四角いチーズを持って、「ここははネズミのお家に違いない」と思っていた建物のひび割れに空いた穴に詰めに行ったり。親や周りの大人からは「変な子」と思われていたかもしれないけれど、私にとってはとても幸せな思い出です。娘にもそんな素敵な思い出を大事にしてほしい。他の子と少し違うからといって、すぐそれを「問題」と決めつけて娘の個性をつぶしたくない。そう考えた出来事でした。「わが子のことが分からない」と行き詰まったときは、自分やパートナーの子どもの頃はどうだったか?と周りに聞いてみたり、思い返してみたり、家族で話してみてはいかがでしょうか。
2016年10月23日学校とのトラブル、たくさんの家庭からの相談から見えてきた法則は?出典 : こんにちは、國學院大學教授の池田行伸です。私はこれまで、高等学校のスクールカウンセラーとして、定期的に学校の教育相談室に勤務し、カウンセリングにあたってきました。また、小児科外来の心理担当としても、医師が診る範囲外であると判断があった場合、患者さん・親御さんの相談にあたるという職務も経験してきました。心理担当に回ってくるのは、不登校など学校と家庭と子どもとの関係が入り組んでいるケースなどで、場合によっては学校に直接出向いて糸口を探ることもあります。担当中、受診していた子どもが学校に行けるようになり、それと同時に健康を取り戻すという嬉しい出来事もありました。解決したケースを振り返ると、筋道をたてて根拠に基づいてタイミングを図りながら間を取り持ち、コミュニケーションが成立した場合がほとんどです。これまで経験したエピソードをお伝えするとともに、問題に直面した場合、どんな解決策が考えられるのか一緒に探っていきましょう。「私たちは学校にいじめられてきた」 − 高校でのカウンセリングで出会った事件出典 : 週に1日の出校日、教育相談室に着くなり、教育相談担当教員から「今日、生徒と親を呼んでいます。もうすぐ来られると思いますので対応お願いします。」と告げられました。教育相談担当教員から手短にその生徒の状況を聞き出しますと、その生徒に忘れ物が多く生徒指導の教員から苦情が来ているというのです。その生徒は入学したての1年生の女子で、制服に付けなければならない蝶ネクタイを頻繁に忘れ、生徒指導部に借りに来ていたとのこと。きつく叱って指導し、家を出るときにも確認するよう何度も注意したが改善しない、と怒り気味に訴えてきました。このような話が聞き終わるか終らないかののち、生徒とその両親がやってきました。出典 : <span><a class="linkclass" href="">善良そうな会社員風の父親と少しうつむき加減の母親、そしてその女子生徒です。椅子に座らせ、こちらが名乗ってあいさつした次の瞬間、やさしそうな父親が口を開きました。「この子が小学校に入ってからずっと私たち親子は学校にいじめられてきました。私たちがいったい何をしたというのでしょうか」。決して悪意を持って攻撃するような言い方ではなく、むしろやさしく問いかけるような語り口でした。娘さんは高校に入り電車通学時にたびたび乗り間違えをし、遅刻したり帰りが遅くなったりすることがあったようです。「お聞きしたことを学校教育での指導に活かさせていただきます」と伝え、まずはその日の相談が終わりました教育相談担当教員に、この生徒には注意障害があるかもしれないこと、それゆえ忘れ物をきつく叱ると心が傷つき逆効果になることなどの一般的なことがらを話し、注意障害の対応に従って指導するほうが良いと告げました。その後、生徒はきつく叱られることなく普通に過ごしていると報告を受けました。その生徒に注意障害の可能性があるかもしれないことが生徒指導教員に伝えられ、蝶ネクタイの忘れ物があってもきつく叱らずただ貸し出せばよいことが伝えられたのです。このことが学校で共有され、職務上厳しく生徒指導をしなければならないと思っていた教員の意識が変わったのでした。ただあの時の父親の「私たち親子はずっと学校にいじめられてきた」という言葉が今も脳裏に焼き付いています。学校にその子の特性を理解してもらえず、子どもの奇妙な行動を指摘され続け、親のしつけの甘さなどを暗に批判され、長年親子で悩み苦しんできたであろうことを思うと、申し訳ない気持ちになりました。母親と学校の間に募る不信感 − 小児科外来の心理相談にて出典 : 附属病院の小児科外来で心理相談をしているときにも、子どもの盾となって学校と対峙する親に出会いました。母親に連れられて、男子中学生が私の部屋に訪れました。母親は、現在子どもが中学校に行けなくなり家にいること、そうなった原因は中学教師が自分の子だけ理不尽に叱ったからであり、その後の学校の対応に誠意がないと訴えました。小児科を不登校で受診したのですが、医師として行うような治療はないので、心理で話を聞いて欲しいと、私のところへ相談が回ってきたのでした。このような場合、安易に「それは学校にも問題がありますね。」と言うと、親は「やっぱりそうだ、学校が悪い」と、学校批判を強めて火に油を注ぐ結果になりかねません。小児科医局の研修会では「それは学校が悪い」の一言は問題をさらに複雑にするので、苦しまぎれにそのような言葉を吐かないようにとスタッフに注意してきました。母親から話を聞いた後、私が学校に行って直接話を聞いてきても良いかと親子に尋ねました。二人ともけげんな顔をしていましたが、「お母さんが学校に伝えたいと思っていることを伝えてきます。担任に会ってどうしたら学校に行きやすくなるか話してきます。」と言うと「お願いします」と言って承知してくれました。この問題は、小児科外来で定期的に話しても解決するようなものではないと思ったので、そのような提案をしたのです。出典 : <span><a class="linkclass" href="">親と学校が険悪な状態に陥っているこのような場合、子どもにとって学校に行くことは一人で敵地に乗り込むことにほかなりません。登校したくなってもできないでしょう。この時私は地方の大学の教育学部の教員でしたので学校に行くことにさほど抵抗がありませんでした。先方の中学校に電話すると話し合いの場を設定してくれ、教頭、担任、学年主任など数人の先生方と話しをすることができました。学校側のその母親に対する認識はやはり「モンスターペアレント」でした。母親が学校に抗議に来るので母親からの電話には、教職員がいつもピリピリしているとのことでした。小児科での見立てを説明し、母親も一生懸命なのだが言葉が足りないのかもしれないとも話し、なんとか母親と学校の溝を埋めようとしました。学校も何とかしなくてはいけないと考えていたところだと言いました。その子の特性として級友と共同歩調をとりにくい面があるかもしれないと言い、このことは母親にも伝えてあるが、そこだけに着目した指導はしないほうがいいのではないかと意見も述べました。教員は、「分かってはいるが、ついつい目が行き、叱りつけていた。今後はあらためて指導方法を練り直したい」と言ってくれました。また、「母親の子どもを思う気持ちは分かったので何とかして生徒と接触できるようにしたい」とも言ってくれました。その後母親から、自分が働きに出ているときに、担任が何度か家庭訪問してくれた、誘われて子どもが数回登校したと、小児科外来受診時に報告を受けました。私との面談の時、母親は思いのたけをぶつけてきましたが、回を重ねるごとに学校に対する攻撃が鳴りを潜めました。同時に子どもの表情にも明るさが出てきました。このような経過を経て生徒は登校するようになりました。ずいぶん後になって子どもが専門学校に進学でき元気に通っていると母親から連絡をいただきました。非難、批判合戦から科学的教育へ出典 : 親が子どものことで一生懸命になり過ぎるあまり担任とぶつかり、間に入った学年主任や教頭とも険悪になり、家庭対学校の対立の図式が出来上がることがしばしばあります。上記の例以外にもたくさん経験しました。特に発達障害などの疑いのある子どもの場合、容易には対立が解消されない傾向にあるように思います。学校でいじめられた、教師にひどいことを言われたなどと子どもから聞いた親は、学校はなんてひどいところだと怒りの感情が先に出てしまうでしょう。一方教師は、一人だけ別なことをする子に手を焼いていて授業ができない、他の生徒の被教育権が奪われる、などとといきり立つことでしょう。そんな両者が穏やかに話し合うことは理想ではあっても困難なことだと思います。平静さを保っているように見えても、心の底ではお互い分かり合えない複雑な感情を抱いている。そんな状態では、学校は家庭がもっとしっかりやるべきだと考えるし、家庭は学校が悪いから自分の子がおかしくなったと考えるわけで、お互いの不信感がつのるばかりです。さらに母親は、「子どもがおかしくなったのはお前の育て方が悪かったからだ」と夫や義理の両親からなじられている場合もあります。子どもの回りにはこのような批判や非難が渦巻いているのです。このような状況をどのように解決すれば良いのでしょうか。今のところの解決法は、親が発達支援センターや小児科等の専門医を訪れて子どもの状態を客観的に観察してもらい、それらの情報をスクールカウンセラー等を経由して学校に伝えてもらい、その子の特性に応じた指導をするようお願いすることだと思います。学校は、必要に応じて専門家の派遣を教育委員会等の管轄組織にお願いし、そこからアドバイスを受けることもできます。ただし現在のところ第三者的存在が十分機能しているとは言えません。上記のような枠組みの中で何度も挑戦しながら経験を積み、新たな教育体制を作り出さない限り家庭と学校の非難合戦は無くならないと思います。自分の子どもが学校で正しく教育を受けていないと感じる親は、学校に対する不満や怒りをぶつけるだけでなく、客観的データ、科学的根拠に基づいた教育を行うよう学校に申し出るべきだと思います。その時には、ぜひスクールカウンセラーを有効活用してください。
2016年10月22日ADHDの息子は片づけが苦手…と、思いこんでいた!Upload By かなしろにゃんこ。ADHDの息子・リュウ太の部屋はとにかく汚い!部屋の掃除は月に一回すればいいほうで、息子の部屋から細かいゴミが廊下や階段に飛んできて散らかるほどです。掃除が苦手なのだとばかり思って、「誰かと一緒に暮らしているうちは、同居人に気をつかって片づけなさい」と注意していたのですが、息子はいつも良い返事をしません。どうしてそんなに片づけを拒むのか聞いてみると…「散らかってるほうが落ち着く」「思い出のあるものは捨てたくない」という驚きの答えが!なんと出掛けたときに買い物をしたときのレシートも思い出の品だと言うんです。私がゴミだと思っていたものは、彼の中ではゴミではありませんでした。だから片付かないのか!!物を大切することは良いことですが、どんなものにも愛着を持ってしまう気持ちには驚きでした。「片づけない」というのも、息子なりの解決方法…?Upload By かなしろにゃんこ。それから、目の前にものが見えていないと生活ができないということも分かりました。棚のなかに物が隠れると上手に探せなくなってしまいます。上の物をどかして下に探し物があるかどうか確認する動作や、記憶をたどって物をどこにしまったか思い出すことが苦手だからです。そのため物をどこかにしまうよりも、部屋中の置けるスペースを使って広げておくほうが生活しやすいようなのです。そういえば以前、ADHDがある人の生活を紹介したドキュメンタリー番組で、洋服などをタンスにしまわずに床に並べているところを見たことがあります。なんだか息子に似ているな~と思いました。これも息子なりの、自分のADHDの特性に対処する方法なのかなと思います。ただそれを理解して受け入れるのには、もう少し時間がかかるかもしれないと思う母なのでした(笑)。
2016年10月22日自閉症とは?Upload By 発達障害のキホン自閉症は先天的な発達障害の一つで、社会性と対人関係の障害、コミュニケーションや言葉の発達の遅れ、行動や興味の偏りの3つの特徴があると言われています。世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)では広汎性発達障害というカテゴリーのもと、自閉症という障害名が使われています。一方、2013年に発行されたアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)において自閉症という障害名は廃止され、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラムの障害名のもとに統合されました。そのため、今後自閉症という名称での診断は自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害に変わっていくことが予想されますが、自閉症という名称は現在も一般的であり、また発達障害者支援法などの法律や文部科学省・厚生労働省などでも使用されています。以上をふまえ本記事では、下記の文部科学省の定義で示されるような概念における「自閉症」についてご紹介します。自閉症とは、3歳位までに現れ、①他人との社会的関係の形成の困難さ、②言葉の発達の遅れ、③興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害であり、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。自閉症の原因は何?出典 : 自閉症とは、様々な要因が関与して起こる先天的な脳機能障害です。自閉症の原因に関しては諸説あり、医学的にはっきりとした原因はわかっていませんが、脳や心身が発達する時期に、なんらかの先天的な遺伝的要因に加えて様々な環境要因が相互に影響し合って生じた脳機能障害が原因になると考えられています。つまり自閉症は生まれ持った障害です。よく「テレビを見過ぎたから自閉症になった」とか「親の愛情不足で自閉症になった」との話を耳にすることがありますが、誤解です。親の育て方やしつけのせいではありません。自閉症って治療できるの?出典 : 自閉症を根本的に治す薬や手術などの医療的な治療法は開発されていないため、現在自閉症を完全に治療することはできません。しかし療育や環境調整を通して接し方や伝え方を工夫することで、発達を促進したり、日常生活における本人の困りごとを解消したりすることができます。自閉症のある子がのびのび生活するためには、周囲の理解と協力が必要不可欠です。パパ・ママはまず本人の性格や特性をよく理解し、周囲にも根気よく説明して過ごしやすい環境を整えてあげましょう。幼稚園や保育園、小学校に通うようになると、コミュニケーションの困難から、自分の思いをうまく伝えられなかったり、周りから孤立してしまったりすることも考えられます。上手にコミュニケーションをはかるためにも、日頃から自分の思いをどう伝えたらよいかを教えていきましょう。また、こだわりとの付き合い方やパニックになったらどう対処したらよいかなど、落ち着いて生活する方法を一緒に考えましょう。興味や関心の高い分野を伸ばすなど、特性や強みを生かして本人の自己肯定感を高めることも重要です。自閉症の治療の判断基準は?いつから始めるべきなの?出典 : 自閉症の子どもは早ければ1歳頃から症状が出始めます。3歳頃になると「周りの子ども達と比べると話すのが遅い」「目を合わさない」などの症状がより目立ってきます。自閉症の症状は大きくわけて・社会性と対人関係の障害・コミュニケーションや言葉の発達の遅れ・行動や興味の偏りの3つがあり、それぞれの症状が3歳ぐらいまでに現れると定義されています。乳幼児健診などの時に気づかれることもありますが、見過ごされてしまうこともあります。ほかの子と比べて何か違いを感じたり気がかりなことがあれば、親が勝手に判断するのではなく、まず身近な相談できる専門機関や、かかり付けの医師に相談してみましょう。専門の医療機関を紹介してくれるかもしれません。できるだけ早期に症状に気づくことで支援につながり、適切な対応をすることで子どもの状態が大きく変わることがわかってきています。療育などの専門機関に通い始めるのは早いほうがよいと言われています。本人や家族がなんらかの困りごとに直面している場合、できるだけ早いうちからその子に合った療育や環境調整を行うことが望ましいでしょう。自閉症の方は、自分が好きなことに集中することが得意です。なので、子どもでも大人顔負けの知識を持っている子も多いですし、大人になってから仕事などで専門性を発揮する方もいます。その子に合った治療や支援を受けることは、得意分野を伸ばし、特性を活かす力を育むことにつながります。上述の通り、自閉症そのものを根本的に治療することは困難ですので、「こうなれば治療や支援は終わり」という明確な線引はありません。しかし、本人が成長するにつれて、サポートの内容や頻度を減らしても問題が起こりにくくなったり、医療機関の受診間隔が長く空けても安定してくる場合はあります。大人になると、数ヶ月に1回ぐらいのペースでの受診になったり、困りごとが軽減されれば治療や投薬の必要がなくなることもあります。自閉症の治療法・療育法Upload By 発達障害のキホン自閉症を根本的に治す薬や手術などの医療的な治療法は開発されていないため、現在自閉症を完全に治療することはできません。しかし療育や環境調整を通して接し方や伝え方を工夫することで発達を促進したり、日常生活における本人の困りごとを解消したりすることができます。また二次障害や合併症の症状を緩和させる治療を受けることもできます。自閉症の人は、それぞれ個々に合った対応法を組み合わせた支援プログラムを受けていきます。ここでは一般的な自閉症の対応法である療育法・治療法を紹介したいと思います。現時点では根本治療のための薬は開発されていませんが、自閉症そのものを治すための薬ではなく、不安障害を抑える薬や、パニックを抑える薬など、自閉症の症状を緩和するために薬が処方されることがあります。その他にも医師によって個人に合った薬を処方されますので、信頼できる医師に困っている症状を相談し、服薬で改善されるのか、それとも療育や環境調整など別の手段で改善できるのかを確認しましょう。薬の服用により特徴が緩和されている時には療育や教育の効果も上がりやすくなるとも言われています。薬物療法は医師の指示のもと用法や用量を守って服用していかなくてはいけません。薬に頼り切って多用するのは避けましょう。療育とは医療、訓練、教育、福社などの現代の科学を総動員して障害を克服し、その児童が持つ発達能力をできるだけ有効に育て上げ、自立に向かって育成することである。自閉症の特性に合わせてトレーニングをしたり、環境調整をすることで、困りごとを改善したり、得意なことを伸ばしたりできるのが療育です。小さいうちから療育に通うことで、精神的・身体的機能に対してある程度の効果が表れるようです。英国自閉症協会は自閉症の治療・教育の理念としてSPELL(スペル)という枠組みを示しています。■SPELLのフレームワークStructure(構造化): 自閉症の人たちに周囲の環境の意味をわかりやすく整理し伝える。時間や空間、意図の視覚化をするPositive(肯定): 子どもを肯定しほめる(自己肯定感を高める)Empathy(共感): 自閉症の特性を深く理解し、共感するLow arousal(低刺激): おだやかな刺激や環境にする(過激な刺激や興奮を避ける)Links(連携): 地域と連携し協力する自閉症の療育方法は色々ありますが、上記のような原則にのっとり進められることが多いです。|The National Autistic Society(英国自閉症協会)適切な治療やサポートを受けられない場合、自閉症の主症状とは異なる合併症状や状態を引き起こしてしまうことがあります。このような症状や状態を、一般的には「二次障害」と言うこともあります。注意すべき合併症・二次障害には以下のようなものがあります。・うつ病・不安障害・睡眠障害・不登校やひきこもり・アルコールなどの依存症など自閉症の二次障害で多いのが「不安障害」とうつ病などの「気分障害」です。不安障害とは生活の中で、常に高い不安を感じ社会生活に支障をきたす状態をいいます。自閉症の方は、感覚過敏や環境の少しの変化にも対応するのが難しく、不安を感じパニックになってしまうことがあります。また、強い失敗経験や自己肯定感の低下から、うつ病などを発症してしまうこともあります。二次障害が起こらないように生活環境を整えることは、自閉症の重要な対応法です。周りの人が本人を気にかけ、困っているときはすぐにサポートを受けられるような環境づくりをして、少しでも本人が過ごしやすいようにしましょう。接し方で大きく変わる!自閉症の子どもへの接し方のポイント出典 : 自閉症の子どもに接するときに以下のポイントに気をつけましょう。■言葉は短く具体的に伝える長く説明されたり一度にたくさん指示されたりすると混乱してしまいます。指示は短く簡潔に、子どもが理解しやすい言葉を工夫しましょう。また、「おやつよ。座って食べてね」のように一文にいくつもの指示があるとわからないこともあります。まず「座ってね」と一つ指示を出し、できてから「おやつを食べてね」と次の指示を出しましょう。■視覚的な手段を使って説明する自閉症の子どもは、耳で伝えられる情報はなかなか理解することが苦手ですが、絵や写真といった視覚的な情報は理解できることが多いようです。そうすると、言葉だけでなく視覚でも理解ができます。言葉でのコミュニケーションが苦手な自閉症の子どもにとって理解しやすい環境になり、何をして欲しいのか明確にわかるようになります。予定や約束ごとなども、絵にして知らせると、理解しやすく安心できます。■のぞましい行動をほめる自閉症のある子どもは相手の言葉の意図をくみ取ることが難しい場合があります。そのため「してはダメ」なことを叱るよりも、「してほしい」ことをしたときにストレートな表現でほめるほうが効果的です。うまくいったことや頑張ったことがあれば、どんな小さなことでも思い切りほめます。同じことでも何度もほめることで「よい行動」が印象づけられ、具体的にわかります。■大人が感情的にならない接する時に気をつけたいのが、何かを説明するときに決して怒らないということです。こちらが感情的になると、いつもと違うできごとにパニックを起こしてしまい、逆効果になってしまいます。何かを伝えたい時は、冷静さと短い言葉で完結に伝えることを心がけてください。否定的な言葉は使わず、「○○してほしい」「○○しましょう」と言い換えるようにしましょう。自閉症の子どもは接し方を工夫すると、パニックを起こすことも少なくなり、本人も家族も生活を共にするのがとても楽になります。生活のパターンを掴むまでは時間が掛かりますし、大変なことも色々あると思いますが、少しずつ問題は解決していきます。諦めずに医師に相談しアドバイスをもらいながら対処していきましょう。■スケジュールが変わるときは事前に説明する自閉症の特性として、突然の変化が苦手ということがあります。いつもと違うことやスケジュールの変更は自閉症の子どもにとってとても不安なことです。変更を伝える時には、事前に絵に書いて見せるなどして説明しましょう。本人が理解でき、見通しが持てるとパニックにならずにすみます。■何か行動を始めたら途中で邪魔しない自閉症の子どもが何か行動を始めた時に邪魔をしてしまうと、パニックになってしまいます。パニックになると落ち着くまでに時間がかかりますので、本人も周りの大人も体力を消耗してしまいます。その行動をやめてほしい時は、行動を始めて終わったタイミングで注意するようにしましょう。■感覚過敏に配慮する自閉症の子どもは感覚過敏がある場合も多いです。嫌がったり偏食したりしますが、単純な好き嫌いや我がままではないので、叱ったり無理強いしても解決しません。できるだけ苦手なものは避けてあげましょう。音に敏感な場合はイヤーマフなどを使用するなど、対応を考えましょう。手をつなぐことや触られることが苦手なこともありますが、決してその人が嫌いということではないことを理解して接してください。■興味・関心のあることで不安を解消し、得意なことを増やす自閉症のある子どもは、何もすることがないと時間をもてあまして不安になる傾向があります。病院の待合室や電車の中などで手持無沙汰を解消できるよう、絵の描けるホワイトボードやパズルなど、好きな遊びを準備しておくと落ち着いて過ごせます。本人に合った習い事に取り組むなど、余暇の過ごし方を教えることもことも重要です。興味・関心のあるものを増やしていくことで、本人の得意なことも増やせます。■困ったことがあれば子ども自身がヘルプ要請を出せるようにする自閉症のある子どもは自分ではうまくできず、困る場面が多くあります。ですが、コミュニケーションをとるのが苦手です。そこで、困ったことや、できないことがあったときに、自分でサインを出して助けを求められるようにすることがとても大切です。そもそも自閉症のある子どもは自分が「困っている状況」だということが理解できず、パニックになったり固まってしまう場合もあります。まずは子どもに「いらいらする」「どうしたらいいのかわからない」「涙が出る」など、自分の感覚や感情がどんなときに「困っている状況」なのかを教えます。そして困った状況になったら誰に助けを求めればいいかを教えます。「どうしたらいいのですか?」「わからないので教えてください」など、なんと言うかもできるだけ具体的に説明するとよいでしょう。まとめUpload By 発達障害のキホン自閉症は現時点では根本治療ができないので、診断をされると色々と不安になってしまうと思います。しかし、適切な対処法を身につけることで社会や生活上での困難が軽減できます。そのためには、できるだけ早期に専門機関などで専門家に相談したり、必要に応じて療育などの支援をスタートするとよいでしょう。何が得意で何が苦手なのかをはっきりすることによって、対処法が見つけられるかもしれません。一人ひとりに合わせた方法で根気よく子どもと付き合っていけば、その子の困難を克服できるでしょう。また、自閉症のある人は、ある特定の分野に非常に優れている人も多いので、得意なことを伸ばし、本人の特性をいかすこともできます。周りの人の協力を得ながら、本人がいきいきと過ごせる環境をつくるように心がけましょう。
2016年10月21日医療は日進月歩。その進歩はニュースになりやすい一方で…出典 : 医療は日進月歩です。他の領域に比べて、新しい発見や新開発の治療法の情報がニュースになりやすいのは、医療領域の一つの特徴であると言えるでしょう。けれども本人やご家族は、その新しいニュースを見聞きする度に一喜一憂することになります。また、ニュースで報じられるような新しい治療法は、受けられる機関がとても限られています。本当に新しいニュースを追い続ける必要は果たしてあるのでしょうか。医療で採用される新しい診断法、治療法などは、とても慎重に、何度もその有効性と安全性が確かめられてから、一般的な医療機関に採用され、また日本では健康保険が適用され、安価に利用できるようになります。この数年でも発達障害に含まれる障害に対して、新しく正式に適応が承認されたお薬がいくつかあります。その一方で、ニュースになった多くの新しい発見や治療薬は、まだまだ開発のごく初期段階に留まっているものがほとんどです。その後の研究の中で、実はあまり有効ではないことがわかったり、思ったより安全ではなかったりすることがしばしばあります。自閉スペクトラム症の領域では、これまでにも数多くの薬剤が颯爽と登場しては消えていくという経過を繰り返しています。こうした新しい診断法や治療法に期待することは悪いことでありません。また新たな方法の開発を担当するような医療機関に通院している方には、ぜひその研究に協力していただいて、新しい支援の道を開くことを助けていただきたいという思いもあります。けれどもそれはむしろボランティア、社会貢献という位置づけです。残念ながら本人やご家族に利益をもたらすとは限らない、それが研究途上の新しい医学的手法なのです。サプリメントを使っても良い?判断の基準は安全性・コスト・併用可能性出典 : もう一つ、残念ながら現在の日本の状況では、医学による厳密な効果や安全性の検討を受けない、あるいはあえてそうした検討を避けて、宣伝されたり使われたりする物質や薬物も少なくありません。医師の処方箋を必要としない多くのサプリメントや薬物などが、発達障害への有効性を謳って、あるいはより巧妙にそれをほのめかして宣伝されていたりします。診察室でそうした物質を使ってみてもよいか、相談されることもしばしばあります。自分の場合にはこのようなとき、それがかなり安全であることがはっきりしていて、家計の負担になるほど高価ではなく、標準的な他の支援を受けることを妨げないのであれば、それを使ってみることを検討してもよいのではないか、とお伝えしています。このうち、安全であることを確かめるのは実はなかなかやっかいです。物質そのものは安全そうであっても、製造過程で混じり物がないかどうか、そもそも能書き通りの物質が含まれているのか、それを確かめるのはなかなか難しいことも多いのです。またこうした有効性と安全性の検証を経ていない治療法というのは、実はお薬に限りません。心理社会的介入と呼ばれるような薬物以外の様々な支援の中でも、しっかり研究が進められているものと、確からしい証拠がほとんど見つからないものが、世の中で入り混じっています。このときにも判断の原則は、安全性、価格や時間などのコスト、標準的な支援との併用可能性ということになります。貴重な時間やお金、気力や体力を上手に使っていくためにも、筋のよい情報を収集することが必要ですね。迷ったときは、主治医に相談を。これからも上手に医療と付き合って出典 : 全ての医師がこうした、標準的な医療以外の支援に詳しいわけではありませんが、迷ったときに主治医に相談してみるのは、悪くないかもしれません。そして主治医がまったくそれを知らなかったら…、それはその方法についてほとんど研究が進んでいない証拠かもしれません。さてここまで10回の連載では、医療による支援そのものの詳しい説明ではなく、どのようなスタンスで医療とつきあってゆくと物事がうまく進みやすいのか、できる限り踏み込んで書いてみました。実は自分のスタンスは必ずしも平均的な医師とは重ならないところもあるかもしれず、そこはたいへん申し訳ないのですが、皆様の今後の医療サービスの利用に際して、少しでもご参考にしていただけたらとても嬉しく思います。
2016年10月21日お着替えが苦手な長男、彼の気持ちを動かしたのは・・・Upload By モンズースーUpload By モンズースー私は以前、シンプルな服が好きだったので、キャラクターが大きく書かれた派手な子供服が苦手でした。ベビー用品などに使われるキャラものも苦手でしたが、人から頂いたり、お下がりを着せたりするうちに、少しづつ抵抗がなくなってきました。あるとき、なかなか好きになれないお着替えに興味を持ってもらおうと、長男のために私が戦隊ヒーローのインナーを買ってきて見せたところ、すごくいい笑顔で大喜びしてくれたのでした。そして、その服を着たときはとても機嫌がよく、普段は苦手なことも頑張れるようになったのです。次男も保育園へ行く時、好きなキャラの付いた靴やタオルを持っていくと、少し落ち着けるようでした。今まで苦手だったけれど、あの笑顔を見たくて、今ではよく子ども達の好きなキャラクターのものを買っています。
2016年10月21日制服はいらない。娘なりの中学校入学準備出典 : 前回は不登校の娘と迎えた、小学校の卒業エピソードをご紹介しました。(以下、関連記事参照)今回はその合間にあった、中学校入学準備のエピソードからご紹介したいと思います。2学期の終わりの家庭訪問で、娘は担任から「小6の2学期に中学の制服採寸会がある」と聞かされました。「どうする、制服いる?」と私が聞くと、「先生、私の行く中学の名前を教えて」といってパソコンで検索をし始めました。そして、制服の画像を出してきて「これやったらいらんわ」といったのです。そして私に「体操服もいらん。またそのとき考えよう」と言いました。おそらくどんなデザインであろうと制服はいらなかったのでしょう。感覚過敏の彼女は、制服どころか普通の服装もままならない状態。制服は無理だろうと私も思っていました。そして娘は、自分なりに中学校との距離の取り方を既に考えていました。「入学式は行かない」、「中学生の間に1回くらい行ってみたい」と通学する意思がないことははっきりと言っていました。だから「制服はいらない」といったのだと思います。正直、制服姿が見たかった私ですが、彼女にとって制服は重荷になるだけだと思ったので、もし「学校に行きたい」ということがあればその時に購入したらいいと考え、一切買わないことにしたのでした。小学校を留年したいと言う娘。その真意は…出典 : 小6の3月のことです。娘がふと「小学校と中学校はだいぶ違うの?」と聞いてきました。「そうやね、だいぶ違うね。」と答えると、「小学校を卒業するの不安。留年できたらいいのに。」と言ったのです。ああ、中学校という新しい環境に入るのがとても不安なんだなと改めて感じました。最初は本人も、「どうせ通わないんだから、今までと何も変わらない」と言っていたのです。しかしだんだんと不安になってきたらしく、「中学校の先生ってどんな人だろう」など中学校のことをいろいろ聞いてくるようになりました。そして、「私はまだ小学生をクリアしていない」と言ったのです。小学校の勉強ができていない状態で、中学校に進学するのはとても怖かったようで、小学校をクリアしないと、中学校に行ってはダメだと思っているようでした。「中学へは行かない」と言っていても、心は乱れ思い悩んでいたのだな、と気付かされました。入学式当日、親子で感じた中学進学への未練出典 : あらかじめ中学校には「入学式には出席しません。学校に通う意志もありません。」と私から言ってありましたので、入学式はのんびり家で過ごそうと思っていました。でも娘は朝から熱が出て苦しそうにしています。私も頭がガンガン痛くなり、頭では切り替えたつもりでいましたが、やっぱり親子して入学式を心から追いやるのは難しいな、と感じました。結局この日は、2人して1日中寝込んで終わったのでした。不登校児にとって、進学時期はどういう心理になるのか?出典 : 娘と共に小学校卒業、そして中学校の入学を経て、ふと思い出した話があります。これは、中学校の教員から教育相談の相談員になった先生に聞いた話です。小6や中3といった、進学を控えた学年になると、急に勉強を始めてみたり、3日くらい頑張って学校に行ってみる不登校の子が、増えるそうです。「次は中学だ」、「次は高校だ」ということを意識すると、子ども自身も学校に行っていないことを気にしますし、なんとか「自分はやれる」ということを証明したくて、いろいろチャレンジしてみるのですね。子どものなかでは「進学したい」という気持ちもあります。「小学校は行けなかったけど中学こそ」「中学は行けなかったけど高校には行きたい」…こういう気持ちがあるのも、子どもの心の中では本当のことなんです。だけど、「人並みに進学したい」という気持ちの裏には、「でも行きたくない」という本心が隠れていることが多いです。そして、心のエネルギーがついてこないので、何日かは無理に行ってみたものの、やっぱりダメだったと落ち込んでしまうことが多いそうです。親は子どもの表面的な言葉や行動を見て、「やっとやる気になったのね」と期待するので、また行かなくなった我が子を前に、傷口に塩を塗りこむように責め立てることも多いのだとか。娘も、小5の終わりくらいから「学校って楽しそう」「学校へ行ってみようかな」という言動が目立ちました。けれど、放課後ちょっと学校に顔を出しただけでもダメージはひどく、先生の家庭訪問に合わせるように睡眠リズムが乱れ、当日には必ず寝ている状態でした。私はこの話を思い出し、娘の行動や気持ちにこうした変化があっても無理をさせずに済み、良かったと思っています。進学は子どもも不安。小6、中3といった時期は気を付けて出典 : 不登校の子どもは、進学を控えるととても不安定になります。人並みに進学したいという気持ち、でも行きたくないという気持ち、親や周りの期待に応えたい気持ちで揺れ動いています。1番苦しんでいるのは子どもだということを忘れず、進学を区切りに無理に次のステップに押しやるような言動は、やめてあげたいものですね。子どもたちが本当に動きたくなったときは、どれだけ親が止めても動き出します。それまでは親も辛いですが、子どもを「信じて、任せて、待つ」という気持ちを忘れないでいたいものです。
2016年10月21日いじめられていないけれど、学校に行けない子どもたち…この子たちは「頑張っていない」だけ?出典 : 我が家の3人の子どもたちは、みんなそれぞれに不登校を経験しています。そのうち2人は、「学校に行きたくない」と口にはしませんでしたが、そのメッセージが体調不良として現れました。学校に行く前、身体が熱っぽくなり、頭痛を訴えます。それでも学校に行かせようとすると玄関先で嘔吐したり…でも、休む事が決まると熱も下がります。頭痛も治り元気になります。私も何度も子どもたちに問いかけました。「学校で嫌な事があったの?先生が嫌?いじめられた?勉強が嫌?」子どもが不登校になった時期はそれぞれ違いますが、3人ともこの質問に首を横に振りこう言いました。「嫌な事があった訳じゃない。いじめもない。勉強が嫌な訳じゃない。」この子たちは怠けているのでしょうか?頑張ってないのでしょうか?サボろうとしているのでしょうか?自分の気持ちをうまく言葉にできない子どもたちもいる出典 : いじめられているわけでも、学校で嫌なことがあるわけでもなく学校に行けない子どもたち。このような子どもたちは、子ども自身も自分の気持ちに気付いていないこともあるようです。自分の中に何となくある「違和感」を観察して言語化することが、とても苦手な子どももいます。学校での様子が一見大丈夫そうに見えても、普通に難なく過ごしているように見えていても、実は気を常に張り詰めていて、疲れを溜め込んでいるかもしれません。この子どもたちの疲労感は凄いものなのです。親や学校の先生からみると怠けているように見えるかもしれない子どもたちも、実はとても頑張ってるんです。子どもは必死になって、今の状況と戦っています。そんな子どもたちと接するとき、学校の先生にお願いしたいこと出典 : そんな子どもたちの担任になった学校の先生に、お願いしたいことがあります。子どもと学校とのやり取りを記入しする連絡帳についてです。家庭への連絡は、連絡帳ではなく、他のノートに記入するか電話にてお願いしたいです。なぜなら連絡帳は、子どもが目を通すこともあるからです。そこに親へのメッセージである「早寝早起きさせてください。」「頑張るよう励ましの声かけお願いします。」などを書いてしまうと、子どもに影響があることは目に見えています。また、クラスメイトからの「早く元気になって学校に来てね!」「ゆっくり休んでね。学校で待ってるよ。」という励ましの言葉を届けることで、不登校の子どもは逆に負担に感じることもあります。病気や怪我で学校に行けない場合の励ましは力になりますが、不登校の子どもの場合はそうとは限らないということを忘れないでほしいです。たとえば、家庭訪問で先生が子どもと面談できたときには、ぜひ子どもと会えた喜びを伝えてあげてください。会う度に「学校においで!」と言ってくれる先生もいますが、その言葉が子どもの負担になっていることもあります。我が家でも実際に、先生からの「お前、頑張れよ。みんな待ってるよ。しっかりしろよ。」「学校に少しでもいいからおいで。みんな待ってるよ。」という言葉に子どもは拒否反応を示していました。こういった言葉が、これまで頑張ってきた子ども自身を否定してしまうこともあるのです。さらに、こういった言葉かけによって子どもは「先生と会えば学校に連れていかれる!」と思い、会うことすら拒否をするようになりかねません。出典 : それから、先生方からよく言われたのは「お子さんの生活リズムを整えるように」ということでした。先生から実際に「生活リズムを整えないから学校に行けないのでは?」と言われたこともありますが、本当にそうでしょうか?そもそも生活リズムが崩れる原因が、「学校に行きたくない。学校で過ごすのは不安。」という気持ちです。そんな不安により子どもが不眠になったり、夜なかなか寝付けないことに繋がっていると思います。もちろん親である私も早寝早起きさせる事には気を付けてはいました。しかしそれと同時に、不登校になる前から夜に寝付けず辛そうな子どもの様子も目の当たりにしています。子どもがたまに学校に行けたときには、子どもと会うことができて良かったこと、学校で起きた出来事や、楽しかったことなどを伝えてあげてください。「家でどんな風に過ごしていたの?朝はちゃんと起きれた?ご飯は食べてる?」というように、家庭での過ごし方を質問攻めしてしまうと、子どもは家で過ごしていたことに罪悪感を感じるようになるかもしれません。「笑顔で見守る」という支援を大切にしてほしい出典 : 我が家では、学校に行けないことや、自分が人と違うことを受け入れられずに子ども自身が苦しんでいました。学校を休むことで、心身の健康を取り戻す休養になることもあります。その場合は、笑顔で見守るという支援をお願いしたいです。これまで関わってくれた先生の多くが「生徒のために何かしたい。」と支援を申し出てくださいました。でも、焦って無理に解決策を見つけていくよりも、「見守ってるよ!」という風にあたたかく見守ってほしいのです。そこから子どもは自分を認められたことで安心し、自然と前に向くようになっていきます。これは、家庭療養してきた子どもを観察してわかったことです。自宅では穏やかに過ごして元気を取り戻した後、そこからもう1度周りとの関わりを持つよう前を向くためには、スモールステップの関わりが必要です。言葉を発信する前に、まず子どもの心身の状態を考慮していただき、子どもやその親御さん達の想いに寄り添ってもらえますよう、切に願います。
2016年10月20日成長を実感する幸せも束の間、子どもの将来と向き合う時期となり…出典 : 子どもの就学先を決めるとき、みなさんはすぐに「ここだ!」と思える学校選び(学級選び)ができましたか?いいえ、と答える方が多いのではないでしょうか?溢れる情報の中、いっそのこと誰かに決めて欲しい!とすら、私は思っていました。私の息子は、幼稚園入園直前に発達障害の診断が下りました。年少から年中にかけては、とにかく幼稚園生活をスムーズに送らせることに、全神経を集中させていました。段々と成長していく姿は何よりも嬉しく、疲れやすい息子を必死にサポートしながら、日々を過ごしました。そういう意味で、年少から年中にかけては、「今現在の息子」の姿だけを見ることのできる、1番幸せな時期だったのかもしれません。誰かが4歳~5歳は、「発達障害のゴールデンエイジ」と呼んでいましたが、それほどまでに、子どもの成長が実感できる時期でもあったのです。そして年長になって、いつもの発達外来に行ったときに、担当医にこう言われました。「来年度は就学ですから、ゴールデンウィークあけに市の就学相談に行ってください。息子くんの就学についてどうするか、そろそろご両親で話し合いをしてくださいね。」私はこの言葉でハッとしました。これまでは「今現在の息子」の姿を見ていれば楽しかった毎日。しかし、年長になった途端「未来を考えて行動する」よう求められるのです。決断の重さを自覚するほど、決められないジレンマ出典 : 就学相談では、本人同伴で市役所の相談員と話をします。子どもは臨床心理士の先生と一緒に遊びながら、行動観察をされます。しかし、「この子はこういう特性がありそうだから、特別支援がいいですよね」「普通級で大丈夫だと思いますよ」などといった助言は一切されることはありません。決断は全面的に親に委ねられます。発達検査での数値もある程度は参考にされますが、数値だけではわからないような、本人の困り感というのがあります。私たち親にとって発達検査の数値は、就学の決定の参考に、あまりなりませんでした。発達外来の担当医も、療育の先生も、幼稚園の先生さえも、この件についてはあまりはっきりとしたアドバイスを下さいませんでした。「あくまでも決めるのは親御さんですから、私たちからはこうしたらいいとかは言えないんですよ…」というお答えがほとんど。おまけに、小学校の特別支援級を批判する声が、耳に入ってきました。私は、考えれば考えるほど頭がこんがらがってきました。息子にとっての人生の大きな決断を、自分だけに委ねられている状況。客観的な資料は無いに等しく、私の感覚と経験値だけで選ばなければならない辛さ。今まであんなにいろいろな人が助けてくれたのに、どうしてこの決断だけは自分ひとりに委ねられてしまうのか…。「いっそ、誰かが決めてくれたらいいのに…」私は、ついに就学について考えることが嫌になり、逃避状態になっていました。やっと行動する気になり、見学へ。そこで見た特別支援学級は…出典 : 特別支援級への通級になるかどうかは、うちの自治体では8月から審査が開始されます。ですから秋までには、親の希望を市のほうに提出して欲しいと言われます。ところが私は考えることを放棄し、9月になっても答えを出しませんでした。しまいには「このまま放置して、普通級でいいか」と思い始めていました。しかし私は、発達ナビに以前掲載された記事(下記、関連記事参照)をふっと思い出したのです。私は重い腰をあげ、入学予定の小学校に電話をかけ、特別支援級の見学を申し込みました。(残念ながら息子同伴は不可でした)これで納得がいかなければ、答えが出るだろうと思ったのです。授業見学当日は、教頭先生がわざわざ同伴してくださり、1クラスずつ支援の内容を説明しながら、案内してくださいました。授業後は、教頭先生と特別支援コーディネータの先生が面談の時間を取ってくださいました。見通しをたてた授業、刺激を一切排除したシンプルで静かな教室、教室の奥には囲いに囲われたクールダウンスペース、そして何よりも、子どもたちの楽しそうな様子に目が留まりました。教頭先生が教室にフラッと立ち寄るたび、子どもたち「先生今日ね、テスト頑張ったんだよ」「先生、明日のテストはここで受けてもいい?」と声をかけてくる様子が印象的でした。教頭先生は支援級にいる全ての生徒の名前を覚えていて、みんなが「教頭先生!教頭先生!」と慕っています。私はそのときに、自分の中に湧き上がってきた感想を忘れることができません。「自分も小学生の頃、この教室に通いたかった…!」決めるのは怖い。でも、親が「失敗を恐れない」ことで子どもの可能性につながることも出典 : 自分の中に湧き上がってきた感想が私の答えの全てでした。「まずは特別支援級の通級から始めてみよう」、私は授業見学から帰宅してすぐに、2回目の就学相談の予約を取りました。みなさんがもし、お子さんの就学先で特別支援級か普通級か?決定を委ねられて悩んだときには、まずは入学予定の小学校の特別支援級へ、見学に行ってみることをお勧めします。そしてもう1つ、私からお伝えしたいこと。特別支援級か普通級か選ぶことを、「子どもの人生を決めてしまう」という風に、プレッシャーに感じないで欲しいのです。子どもが普通級が良かったと言うのであれば、(息子の小学校に関しては)学期途中で普通級に転籍することは可能です。普通級が合わないと思うのであれば、次の学年から特別支援級を検討することもできます。子育てをしていると、節目節目で大きな決断を迫られることが沢山あります。けれども、それを選んだら、子どもの人生はもう後戻りできないわけではありません。大切なのは、上手くいかなかったとしても、次の一手を冷静に考える力を残しておくことです。だからどうか、自分が全ての手綱を握っているかのように悩まないでください。そのときの状況に応じて考え、決断を変えていく自由も、私たちにはあるのですから。
2016年10月20日自傷、噛みつき、頭突き…発達障害とも関係が深い「強度行動障害」とは?出典 : 「強度行動障害」という言葉をご存知でしょうか。強度行動障害は厳密には医学用語ではなく、知的障害がある人に、他害、自傷、著しい反復的な行動や睡眠障害などが現れて来る場合に用いられる、行政・福祉の用語です。最初にこれが定義された際には、「精神科的な診断として定義される群とは異なり、直接的他害(噛み付き、頭突き等)や、間接的他害(睡眠の乱れ、同一性の保持等)、自傷行為等が通常考えられない頻度と形式で出現し、その養育環境では著しい処遇の困難な者であり、行動的に定義される群」であり「家庭にあって通常の育て方をし、かなりの養育努力があっても著しい処遇困難が持続している状態」とされていました(1989年行動障害児者研究会)。どんな状態の子ども達、大人達なのか、なんとなくイメージができたでしょうか。そしてこうした行動の障害を示す人では、その背景に知的障害だけではなく、自閉スペクトラム症を持っている場合がとても多いこともわかっています。こうした強い行動上の障害は、元来の障害の特性を背景として、育っていく環境との間に大きな不適合が生じ、それに対して、どうしても上手くいかない方法、長く続けてはいけない方法が身についてしまった場合に起こってくると言われています。例えば、・不快な音に対して自分の頭を激しく叩いてそれを紛らわす・退屈な時に窓ガラスをバンバン叩いて楽しむ・大人の指示に従いたくないときに暴れて拒否をするなどのパターンです。ある意味でこの強度行動障害こそが、「二次障害」の一つの典型であると言えるでしょう。このように行動の障害が著しい場合には、家庭はもちろん、教育、福祉などの多くの領域の支援者が関わって、その対応を考える、また本人やご家族を支えていく方法や態勢を考えていくことになります。「強度行動障害」に対して、医療で出来ることは何か出典 : このようなときには、もちろん医療に期待が集まることも少なくありません。そしてご家族や支援者の気力や体力、時間に限界が近づくと、「もう家で、地域で、施設で暮らせないから、入院させよう」というアイデアも浮かんできます。入院すれば魔法のように行動障害がよくなって、落ち着いた状態で帰ってきて、しかもその後その状態が長く続くといった、ちょっと現実離れした期待をしてしまうこともあります。ではこの強度行動障害に対して、実際に医療は何ができるのでしょうか。強度行動障害の本質は、先に述べたように、本人の特性と環境との不適合、そしてそれを補うために誤って学習された行動のパターンです。このように考えていくと、実は医療で出来ることはそれほど多くないことがわかります。知的障害があり、強い行動障害のある患者さんが入院する場合、ごく一部の専門病床を持つ病院などを除けば、ほとんどの総合病院や精神科病院の場合には、外から鍵をかけた個室に入っていただくことになります。激しい他害や自傷がある場合には、身体拘束といって、手足をベルトなどでベッドに固定したりすることも少なくありません。こうした対応は、緊急時に本人と周囲の人の安全を守るための手段としては、やむを得ない場合があります。興奮が激しく、このままでは自宅で安全に暮らせないという状況で、家族や支援者がそれに対応する時間と気力と体力の余裕を取り戻すために、一時的に入院を選択することは充分にありえます。逆に病院は、施錠や身体拘束という方法を法的に許されているために、慣れていない患者さんが急に入院してきた場合でも、本人や周囲の人の安全を比較的守りやすいのです。しかし、このような対応を長く続けることは、本人がその特殊な状況に合わせた、更にうまくいかない方法を身に付けてしまう結果に繋がることがあります。本人にとっても辛い状況であることも多いので、退院した後、行動の問題が悪化することも少なくありません。また入院が長期化すると、地域の支援体制はだんだんと手薄になって、時間が経てば経つほど、地域に戻りにくくなってしまうこともあります。そして行動を制限された入院の環境は、本人の誤った学習、うまく行かない行動のパターンを変えていく、別のやり方を模索していくためには、とても不利な状況でもあるのです。更に言えば、こうした行動障害に対しては、第7回の記事で触れたように、お薬が使われることがあります。しかし行動を強く制限された状態では、お薬の量の調整がうまくいきません。施錠、身体拘束の状態では行動の観察ができず、どの程度のお薬の量が適当なのか、知る手立てが限られてしまいます。また病院と家庭では全く環境が違うので、入院中に適当であったお薬の量が退院後にもちょうど良いかどうか、帰ってみないとわからないということになります。医療を上手に活用して、本人も周囲の人も無理のない生活を出典 : 結局、強度行動障害に対して、一般的な医療機関ができることは、外来の薬物療法によって一部の行動の問題を和らげること、特に「易刺激性」が関わっている場合に、本人や支援者が対処しやすくなるように、少しそれを緩和することが一つです。入院については、急性期の対応、家族や支援者が対応の余裕を稼ぐために一時的に避難するのが上手な使い方です。また地域の支援体制ができていても、どうしても家族や支援者に疲れがたまってきてしまうという場合、家族や支援者、時には本人の休息の目的で病棟を使うこともあってもよいかもしれません。そしてとても大切なことは、医療が関わり始めたとしても、地域の支援体制を解除しないということです。行動障害のある人は、正しい手順が踏まれていれば、地域の支援力が総動員されているはずです。それでも足りないから医療もそこに加わる。けれどもそれは足りないから足しているわけであって、医療が出てきたからといって、他の領域の支援者が手を引いてもよいということにはならないのです。このような医療の限界がよくわかっているからこそ、厚生労働省は平成25年から、福祉領域の従事者を対象に、「強度行動障害支援者養成研修」を始めました。対応の主軸が地域の生活と、その中での再学習、環境の調整であることが明らかであるからです。強度行動障害に関して、医療は「最後の砦」ではありません。むしろ必要がありそうなら追い詰められる手前の、できるだけ早い時期から医療をチームに加えていただくこと、医療を支援の一つのパーツとして組み込むことで、無理なく地域での生活を続け、できるだけ早く、本人も周囲の人も苦しまない暮らし方を再獲得していくことが必要なのです。
2016年10月19日学校生活を楽しんでいるかに見えた息子。ある日から登校を渋るように出典 : 学期が始まり2週間ほど経ったころ、アスペルガー症候群を持つ小学1年生の息子・ハルが、「学校へ行きたくない」と登校を渋りました。勉強も運動も得意で、コミュニケーション能力が高く友人が多い息子が、そんなことを言い出すのは、私にとって意外なこと。しかし、「夏休み明けに疲れが出て休みたがる子は多い。大抵の子はすぐにまた学校へ行きたがるから心配ない」というような話をどこかで聞いたことがあった私は、さして気にはしませんでした。ただ、何かしらの問題を抱えていて言い出せない、という可能性も危惧し、念のため理由を聞いてみることに。すると、「何かあったわけじゃない。でもうまく言えない」と言い、困ったような表情を浮かべました。同じアスペルガー症候群の私自身にもあることなのですが、自分の感情をすぐさま理解できなかったり、心の中にある思いを上手く言語化できないことが、息子にはしばしばあるのです。ですからここで無理に聞こうとしても、ますます困るのが目に見えているので、「整理がついたら教えてね」とだけ伝え、私は息子の要望を聞き入れ、欠席する旨を学校に連絡しました。3日後に学校から電話が。一方的に話を展開する先生についカーッときた私は…出典 : そんな調子で3日休んだとある週末、担任の先生から電話がかかってきました。先生「このままですと、息子さんは不登校になる危険がありますよ」私「危険?何が危険なんですか?しかも、たかだか3日で…」先生「きっとハルさんは“こう言えば学校を休める、嫌なことから逃げられる”ってパターンがわかってるんですよ。休み癖が付いてきてるんじゃないですか?」私「休みぐせ?何ですかそれ?息子は息子なりの理由があるのかもしれなくて、今は言葉にまとめられないと申し上げたじゃないですか!!」先生「だってそうとしか考えられませんよ、この状況は」冷静に話さなければならないのはわかっていましたが、息子なりに理由を整理しようとする姿を見ていた私。先生とのやり取りですっかり頭に血が上ってしまいました。結局その日は、状況の確認はおろか何の解決策も見出せず、水掛け論のまま終わってしまったのでした。ようやく出てきた本音。そこには、息子なりに学校と向き合おうとしている姿が出典 : しかし、土日を挟んだ週明け、息子は何事もなかったかのように学校へと向かいました。「やっぱり一時的なものだったのか…」と安心していたら、2日通ったその翌日、また登校を渋りだしたのです。これはやはりはっきりとした理由があるのだなと思い、「何か嫌なことがあるの?説明できる?」と再度質問してみたのです。ハル「授業中、早く終わった他の教室から、ザワザワした声が聞こえてくるのが辛い。不安になる」聴覚過敏を持つ息子は、小学校に上がる前から多人数の声がザワザワ響くのが大の苦手です。ハル「あとね、絵を描くのが辛い。先生は『こうやって描けばいい』って教えてくれるけど、それを描くのが辛くて怖い」アスペルガーならではの、セルフイメージの高さもあるのかもしれませんが、文字はともかく、絵に関しては同年代の子と同じように認識し、描画することに強いプレッシャーを感じているようでした。私「そっか…ところでさ、ハルはそういうのを学校の先生に言ってる?言えないのだとしたら、それはどうして?」ハル「だってさ、先生には正しいこと(先生が喜ぶこと、納得しやすいこと)を言わないと、先生が悲しむでしょ?」その言葉は息子が入学以来、何度も口にしてきたものでした。相手の期待を優先し、自分の辛さを抑え続けたら、疲れも溜まるし学校にも行きたくなくなるはずです。私「わかったよ。じゃあ私がそのことをE先生(発達障害専門医)に相談して、そこで聞いたことを学校の先生方に伝えてみる。そうすればハルの辛い気持ちが先生方にも伝わって、対策が見つかるかもしれないね」専門医からのアドバイスを踏まえ、改めて先生に状況を伝えるものの…出典 : 翌日私は、発達障害専門クリニックの先生に相談しに行きました。先生からは「行事はできれば部分参加、できなければ無理強いの必要はない。」とのアドバイスを頂き、それを息子自身の言葉と併せ、担任の先生に伝えることにしました。ところが、私が息子と同じ障害を持っていることが災いしたのか、「息子はこのように申しています」と伝えても、「それでハルさんはどう言っていますか?」「お母さんはそのようにおっしゃいますけど…」と、まるで私が勝手な代弁をしているかのように思われ、話が一向に進まなかったのです。これではらちがあかないと、主治医の先生の言葉を伝えました。すると今度は、「絵だって、“こういうふうに描きましょう”とお手本を見せれば上手にできるし、感覚過敏に関してもさほど辛いようには見えませんよ。そうやって嫌なものを避けさせて、学ぶ機会を失ってしまってもいいんですか?」と返ってきました。強いプレッシャーや感覚過敏に耐えていると息子が発言していたことは、全くと言っていいほど信じていない様子です。ただ、私も学校での姿を見ているわけではありません。とはいえ息子のことを疑いたくもないし…。このようなやりとりが連日続き、発達障害に関して普段は楽天的に捉えている私も、さすがに疲弊してしまいました。改めてこのことを、主治医の先生に相談すると「教育支援センターに相談し、学校との間に入ってもらうこと」を、勧められたのでした。実はこの問題は現在も相談中で、まだ解決していません。子どもの選択に親がどこまで介入すべきか?正解は無いけれど、大切にしたいのは出典 : その後10日ほど欠席をし、息子は学校に行き始めました。今でも楽しい日々の報告と合わせ、感覚過敏の辛さ等について私に話してくれますが、登校を拒否するまでには至っていません。しかし、このまま何事もなく学校に通い続けるのかといえば、それは私にも、息子自身にもわからないことです。とはいえ、息子が本当に辛い思いをしているのだとしたら、学校に行かなくても済む環境作りをしたいと思っています。でも、そもそも私は「学校なんかに行かなくてもいい!」と主張したい訳ではないのです。学校でしか学べないこと、できない体験はたくさんあります。それを親である私が奪う権利はありませんし、奪いたいとも思いません。しかし同時に、学校に行かなかったからこそ学べること、できる体験もあるように思えるのです。どちらが優れているのかなどは簡単に比べられるものではなく、私には判断できません。出典 : 以前コラムでもお伝えしましたが、息子自身、感覚過敏や環境の変化の辛さを堪えて行事等に参加すること、あるいは欠席すること、双方のメリットとデメリットを体験しています。このため、私はそれを元に自身で判断するように促してきました。メリットとデメリットの境目は息子の成長によって変わるかもしれませんし、体調や気分でも変化するかもしれません。何より息子の辛さは息子にしかわからないので、何かと難しいことがあるのですが…。学校には引き続き、努力で乗り越えられない辛さがあることを、ご理解いただけるように伝えていくつもりです。学校と支援センター、そして息子と私で協力し合いながら、息子にとって最善の判断、「これで良かった!」と思える選択ができるように、サポートしていきたいと思います。
2016年10月19日離乳食時代、とにかく小食だった娘Upload By SAKURAUpload By SAKURAまだ離乳食を食べていたころの娘は、とっても小食でした。とにかく全然食べてくれなくて、せっかく作ったものをそのまま捨てることも多々ありました。そんなことを繰り返すうち、最初は凝っていた離乳食も「どうせ食べてくれないし…」とあきらめながら作るようになり…レトルトに頼ったり、シンプルなものが多くなっていきました。3歳になると、激しい偏食がはじまった!!Upload By SAKURA3歳になり、幼稚園に入園した娘。以前に比べてたくさん食べるようにはなったのですが、とにかく偏食が激しくなりました。ご飯は、炊き込みご飯やチャーハン、ケチャップライスなどを嫌がり、白いご飯にふりかけをかけたものや、のりを巻いたおにぎりしか受け付けません。そして、おかずも…複数の食材が混ざった炒め物や、煮物を嫌がっていました。娘の様子を見て、盛り付けを工夫してみると…作戦成功!娘の食事をよーく観察してみると、いろいろな食材が混ざったおかずは食べませんでしたが、野菜や肉、果物…単体では嫌がらず食べているようです。それならば!と、いつも通り、炒めたり、煮たり…と調理した後、それぞれの具材を別々に盛ってみました。。Upload By SAKURAすると、娘は…食べてくれたのです!Upload By SAKURAどうやら、味が混ざったり、見た目がごちゃごちゃしているものが嫌だったようです。生野菜も嫌がらず食べてくれるのですが、いろんなものが混ざったサラダのような状態になると、突然嫌がって食べなくなります。しかし、トマト、レタス、ブロッコリーなどを別々に盛りつけると、ペロリと完食。娘は料理の好き嫌いを、味よりも見た目で判断していることがわかりました。Upload By SAKURA家では良いけど…給食は大丈夫??これが娘のこだわりだと分かり、家での食事は何とかなるようになりました。しかし幼稚園の給食などは、そこまでしてあげることが出来ません。「給食は大丈夫だろうか…」と心配していた私ですが、先生に聞いてみると…Upload By SAKURA最初はやはり苦戦して給食を嫌がっていたようですが、年中さんになるころには、ある食材だけを選んで先に食べるという技を身につけていたようです。年長さんになり、状況次第でガマンができるようになった!年長さんになった娘は、幼稚園ではいろんなものが混ざったおかずや、炊き込みご飯なども普通に食べられるようになりました!ここではわがままは言えないということがわかったようです。Upload By SAKURAしかし、幼稚園で頑張っている反動か…家でのご飯は、やっぱり「食材別盛り」が続いています。そして、ご飯は白ご飯オンリー。まぁ、胃に入ると一緒だし…これは私が手間なだけ…娘がストレスなく食べられればいいし、家以外で頑張ってくれればいいか!と、楽観的に見守っています。
2016年10月19日忘れん坊のADHD息子は、いつも誰かに助けられてばかり。それなのに…息子がまだ小学生だったときのお話です。忘れ物が多いのは日常茶飯事なのですが、先生からの電話でこんなことがあったことを知りました。Upload By かなしろにゃんこ。Upload By かなしろにゃんこ。Upload By かなしろにゃんこ。いつも息子を助けてくれる親切なお友達に、突然頼みを断られてショックだったようです。思えば周りに助けてもらってばかりだった息子はこのころ、「親切にしてもらって当たり前」になっていたのかもしれません。いつも自分のことに精いっぱいで、自分を犠牲にして誰かを助けた経験はまだまだ少ない息子ですが、助けてくれた人への感謝を忘れず、いつかは自分を後回しにして誰かのために汗水流してほしいと思う母なのでした。
2016年10月18日もうすぐ運動会シーズン。ふとリレーの順番表が目に留まり…出典 : 運動会を間近に控えた、長男の保育園での出来事です。いつもより早くお迎えに行った日、誰もいない教室をふと覗くと、そこにはリレーやかけっこの順番表が貼り出されていました。その順番表を見て思わず嬉しくて、涙が溢れました。順番表に長男の名前が「あった」からです。これまで受けたことのない対応につい感動出典 : 私は順番表に名前があったことが嬉しくて、保育園の先生に伝えました。私「長男もリレーに出られるんですねー!嬉しいです。」先生「あたりまえじゃないですか。みんなで参加する行事ですから。」私「実は、去年通っていた幼稚園では、出ないで欲しいと言われたんですよ。だから嬉しくて正直驚いています。」これまで、園の先生とここまで話せたことはありませんでした。その後も先生は、長男のために「環境に慣れるためにも積極的に運動会の練習に参加してください」と言ってくれました。私はこうした園の対応がとても嬉しく、感動していました。もう終わったことと思っていた、以前の幼稚園での出来事出典 : 以前、コラムにも書いたことがありますが、発達障害のある長男は以前通っていた幼稚園で「かけっこに出ないでください」と言われたことがあります。それでも私の意地で出場させた結果、長男の尊厳を傷つける結果になったのでした。結局その幼稚園はやめてしまったのです。現在長男は、別の保育園に通っています。あのときの出来事は「絶対におかしいことだ」とは未だに思いますが、それでも私なりには「仕方がなかった」と消化したつもりでいました。しかし、名前のある順番表を見て涙するなんて、心の中ではずっと消化されないままだったようです。運動会が近付くにつれ、「かけっこはゴールできないだろうから出してもらえないかもしれない」「リレーに出ると迷惑がかかるから、出してもらえないかもしれない」そんな気持ちがあったからこそ、順番表を見るときには息苦しくなるほどに緊張をしましたし、名前があったことに感動し、感謝し、涙が溢れたのだと思います。障害児をもつ私たち親が、気付かずに受け入れている悲しい現実出典 : 本来ならば「クラスに在籍しているのだから出場して当たり前」な運動会。しかし私は、これまで何度も園から断られ、「息子の障害のせいでイベントに参加できない」ことに、すっかり慣れてしまっていたことに気付きました。例えば、健常のお子さんが「足が遅いので、リレーには出ないでください」と言われたらどうでしょう。きっと学校や地域を巻き込んだ大問題になるのではないでしょうか。しかし、障害のある子どもやその保護者は、「周りのために遠慮する」ということを当然のように強いられ、私たち親も無意識のうちにそれを受け入れ、生活していることが多いように思います。これは果たして社会の望ましい姿なのでしょうか?障害者という理由で、奪われて当然なものなんてあるのだろうか?出典 : 園に断られたイベントは、他にこんなものがありました。入園式お誕生日会かけっこ園外学習…これらは全て、子どもの発達障害が理由で参加できなかった数々です。思い返せばもっともっと浮かんでくるでしょう。そして、きっとこれから就学すれば、もっともっと分け隔てられて、手の届きそうな「普通」さえも、我慢しなくてはならないのかと思うと、とても切ない気持ちでいっぱいです。子どもがいつか大きくなったとき、「皆が当たり前に過ごしてきたことを、自分は経験してこなかった」と、辛い思いをしないかどうか、私は気がかりなのです。解決方法は1つだけじゃないはず。全ては参加できなくても、「工夫」できる社会に出典 : 発達障害のある子どもたちも、それぞれの速度でそれぞれの形で成長していきます。彼らもいつか大人になるのです。過去を振り返ったときに、さまざまな園や学校のイベントを、「障害」を理由に勝手に奪われていたとしたら、どんな気持ちになるのでしょうか。たくさんの選択肢の中から、何を選べば正解、というものは無いのかもしれません。ただ、周りが少し工夫すれば経験できたことも、きっとあると思うのです。さまざまな可能性を前にして、「ただ取り上げる」だけで解決することは、もうやめにして欲しい。親として、心から訴えたいと思うのです。
2016年10月18日