サカイクがお届けする新着記事一覧 (31/34)
日頃はサカイクをご愛顧いただき誠にありがとうございます。この度、今後のサカイクのコンテンツ配信をよりよくするために読者の皆様のご意見をお聞かせいただくオンライン座談会を実施することになりました。子どもがサッカーをしている保護者の皆さんより・サカイクを知ったきっかけ・子どものサッカー、育児で悩んでいること・普段サカイクのどんな記事を読んでいるか・役に立っている情報は・こんな記事、情報があるといいな・こういう経歴を持っている方のインタビューを読みたい・○○について取り上げてほしいなど率直なご意見・ご要望をお聞かせいただければと思います。いただいた貴重なご意見は、全国の保護者の皆様と共有するために記事にさせていただく予定です。※記事にする際にお顔は表示しません。お名前は仮名での表示をお約束します。以下の日程で開催予定ですのでぜひご参加お申込みいただけますようお願い申し上げます。開催日時9/18(金)19:00~募集人数6名応募締め切り9/14(月)12:00参加費無料当選発表当選者にはメールにてご連絡いたします使用ツールZOOMオンライン座談会のお申し込みはこちら>>
2020年09月08日スポーツの現場での暴言、暴力、ハラスメントは世界中で大きな問題とされています。7月20日、調査機関ヒューマン・ライツ・ウオッチが、来年開催される予定のオリンピック、パラリンピックに向け「日本のスポーツにおける子どもの虐待」というレポートを発表しました。これは子どものころにスポーツをしていた50人以上へのインタビュー、400人以上へのオンラインアンケート、スポーツ団体へのデータ提供などで調査を行ったもので、日本の子どもたちがいまだにスポーツの場で暴力・暴言などの被害を受けていることがわかりました。また、この問題に対する対処と予防の遅れの原因となっている制度上の不十分な点も明らかに。サカイクではこの調査結果を受け、サッカー界での現状・対策方法などについて、日本サッカー協会(以下JFA)リスペクト・フェアプレー委員会、委員長の山岸佐知子さんにお話しを聞きました。2008年度にリスペクト宣言をし、暴力根絶に向けてとりくんできたJFAの現状とは。(取材・文:前田陽子)親は「我慢が足りない」などと言ってはいけません■サッカー界は他競技に先駆けて2013年に相談窓口を設置ヒューマン・ライツ・ウオッチのリサーチを受けて、山岸さんは「正直そうだと思います」と話します。ただ、日本も少しずつ改善されているとも。JFAでは、暴力行為の早期発見と是正および再発防止をするために2013年に暴力等根絶相談窓口を設置しています。2018年に寄せられた相談総数は120件、2019年は243件と増えています。増えた要因はさまざまなスポーツでの暴力暴言が報道されたことも一因。世間が関心をよせ、暴力や暴言に敏感になったことで相談数も増えているようです。「件数が増えることは決して悪いことではありません。悩みを抱えている人が、内にこもることなく相談というアクションを起こすことができているのは、いいことだと思います。」相談内容は暴力、暴言、そのほかのハラスメントと大きく分けていて、2019年は暴力が43件、暴言が127件と暴言の相談が増えています。「手を上げることはいけない、よろしくないという認識が大分浸透してきていますが、それまでは暴力をしていた指導が暴言にシフトしている可能性もあるのではないかと考えています。受ける側からすると暴力も暴言も同じこと。特に年齢が低いお子さんにはダメージが大きいです。暴言は暴力と同等、もしくはそれ以上の凶器になってしまうと考えています」■選手の安全や安全を確保する『ウェルフェアオフィサー』JFAでは2013年からウェルフェアオフィサーの設置に取り組んでいます。ウェルフェアオフィサーの主な役割は、サッカーを楽しむために選手の安心や安全を確保すること、リスペクトやフェアプレーを推進することにあります。全試合とはいきませんが、一部の主要な試合でマッチ・ウェルフェアオフィサーを置き、試合でのチームのマナー、声かけの仕方などをアドバイスしています。ウェルフェアオフィサーは規律委員ではないので、罰則を下すことで排除するのではなく、気づきを与え自ら改善するように促すことが役目です。「仲間同士で気づいて、お互いに指摘しあってほしいです。仲間内で改善されていくことが一番いいと思っています。暴力や暴言を続けていくと、監督さんやコーチもいずれはその立場を失うことになるかもしれない。そういうことを互いに話せる環境になっていくと暴力、暴言指導なども自然となくなっていくのではないかと思います」さらに、JFAではクラブで問題が起きた時にクラブ内で解決できるようにする仕組みづくりの一環として、クラブ・ウェルフェアオフィサーの設置を推進しています。■親は子どもの話をよく聞いて、解決ができなければ相談窓口へ子どもが暴力・暴言を受けていると思っても、監督やコーチに直接話をするのは難しいところ。子どもに「あなたがいけないんじゃない?」、「我慢がたりないのよ」などの声かけは絶対にNGです。そんな風に言われたら、子どもの言葉は続かなくなってしまいます。まずは子どもの話をきちんと聞くこと。そして、問題だと感じたらJFAの暴力等根絶相談窓口へ連絡することです。相談は匿名でも受け付けて、必要であれば調査をします。相談は昨年までは電話、FAXの手段でしたが、今年からはJFAのホームページ内にある暴力等根絶相談窓口通報受付フォームから通報が出来るようになりました。「これまでにライセンスの一次的な停止などの処置をしたケースもありました。ですが、起こしてしまったことをしっかりと反省をして、心を入れ替えて再度サッカーに携わるという道もないといけないと思っています。大切なのは過ちを理解して、繰り返さないこと。そのための教育的なプログラムは必要になってくると思います」と山岸さん。■サッカーをプレーしているところに笑顔があふれるようにJFAでは、自分たちの環境を自分たちで守るウェルフェアオフィサーのような役割の人を増やしていく予定です。サッカーに暴力も暴言も必要ありません。プレーしている選手たちが笑顔でサッカーを楽しめることが重要で、そういう環境を守るのは、サッカーに携わる私たち大人です。また、指導者には暴力暴言を使って指導をしていてもいいことはないということを、しっかりと認知してもらくことが大事です。「ただし、古い体質は長い歴史の上にあるもので改善までには長い時間がかかるのではないかと思っています。コツコツと努力を続け、グラスルーツのチームまで浸透させていくことが我々の役割だと思います」■子どもたちは大人の背中を見ています山岸さんは、以前はレフェリーとして多くの試合を担当していました。そんな山岸さんから貴重なお話をうかがいましたので、ご紹介します。「サッカーはコンタクトスポーツです。当然、フェアにチャレンジしていてもコンタクトすれば倒れる場面もあります。その際にすぐに立ち上がってプレーを続けることを促すチームと、倒れたことをアピールするチームでは、特に下の年代ですが、冷静なチームの方が強いです。コーチがレフェリーに対して倒れたことをアピールすることで、選手も煽られてしまい、プレーに集中することを忘れてしまうのです。それが当たり前だと、自分たちがミスをしたりうまくいかないと人のせいにしてしまうようになります。練習の中でレフェリーにアピールするようにという指導はしていないと思いますが、子どもたちは大人の背中を見ている。せっかくいいプレーをする力も持っているのに残念です。倒れてもすぐに起き上がってプレーする習慣があるチームは、仮にその時に優勝する力がなくても、そういう習慣が身に付いている選手は年齢が上がるに連れてたくましくなり、優勝争いができるようになります。自分のやるべきことがちゃんとわかるようになるので。子どもたちは大人の様子を見て、真似ます。大人はそれを自覚して接してほしいですね。」大人になると中々自分を変えることは難しいものです。ですが、選手たちが安心、安全な環境の中でサッカーを楽しむために、JFAへの啓蒙を続けていきます。後編では指導者養成の面でどのような活動をしているのかをお送りします。日本サッカー協会暴力等根絶相談窓口対象となる行為の詳細、通報フォームはこちら>>
2020年09月08日子どもとの暮らしは大きな喜びをもたらしてくれます。同時に子育ては何らかのストレスがついてまわります。保護者として子どものスポーツに関わるときも例外ではありませんね。大きな喜びや楽しみはあるけれど、しんどさやストレスもある......。今回はスポーツをする子どもの親が感じる「ストレス」「目に見えないプレッシャー」はどこからくるのか。親のストレスが子どものスポーツにどう影響するのかを、スポーツライターでかつてはデイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当し、現在は米国在住で米国のプロから子どものスポーツまでカバーしている谷口輝世子さんがお伝えします。(構成・文:谷口輝世子)子どものスポーツで保護者がストレスを感じるのは、不安や焦りからくるプレッシャーが原因!?■現代の保護者に求められていることとは私は7月に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか』(生活書院)という本を上梓しました。なぜ、子どものスポーツ観戦が、これほど楽しく、しかし、時にはストレスを感じるのかについて書いており、英米の専門家や、米国の実践などから重圧やストレスへの対処について教えてもらったり、取材したりしたことをまとめたものです。我々のようなスポーツをする子を持つ保護者にはどのような負担がかかっているのでしょうか。英国の研究者カミラ・ナイトとレイチェル・ニューポートは、現代の保護者に求められている事がらを次のように分析しています。・一般的に子育てに必要なこと。・自分自身の仕事や職場で求められること。・社会から「良い親」として期待されていること。・メディアで描かれる保護者の姿。・子どもが所属するスポーツ組織から保護者に求められること。・コーチから保護者に求められること。・アスリートとしての子どもから保護者に求められること。保護者は子どもがスポーツをしている、いないに関わらず、食欲はあるか、よく眠れているか、学校生活で問題を抱えていないか。いろいろなことに気を配りながら暮らしています。それに、仕事、職場、家事などでも求められる役割をこなしていかなくてはなりません。また、メディアで伝えられるような毒親ではないかと悩むことがあるかもしれませんし、世間で求められている「良い親」であるか、育児本で推奨されているような「良い子育て」ができているかと不安になることもあります。子どもがスポーツをすれば、チームや組織の何らかの当番や役割を担わなければいけませんし、金銭的な負担もあります。コーチからは家庭で注意すべきことなどの指示があるかもしれません。子どもがスポーツで伸び悩んでいると気になりますし、ケガの心配も大きいですね。保護者は「子どもの将来に最善の選択をしているか」という、重圧や不安、焦りにさらされていると言えます。■子どもがコーチの指示を理解できないのは親の育て方の問題なのか、線引きは困難例えば、私が子どもだったとき。幼稚園や小学生を対象にしたスポーツ教室や競技チームはほとんどありませんでした。中学校や高校、大学での運動部活動では、親の意見ではなく、私自身のどのようにしたいかを考えて決めました。しかし、今は幼児や小学校低学年を対象にしたスポーツ教室も多く、子どもの希望を聞きながら決めていても子どもの年齢の幼さゆえに、親が主導権を握らざるを得ない、ということも少なくありません。親である自分のせいで、子どもがスポーツをする機会を逃してはいけないという焦りもありますよね。親は子どものためにベストの選択をしたいと思って焦ったり、悩んだり、調べたりします。しかし、子どものスポーツを取り巻く環境が、親と子の決断をより難しくすることもあります。親も子も学業との両立をと願っても、チームの活動形態がスポーツ優先になってしまっていたり......。保護者は勝つことよりも、子どもの長期的な成長をと願っていても、チームは勝利主義に傾いていることもあります。保護者が「個人」で何とかできることもありますが、子どものスポーツを取り巻く「社会や環境」から変えていかなければいけないこともあります。自己責任といえば、こんなこともあるのではないでしょうか。子どもが良い選手、競技力の高い選手ならば、保護者の育て方がよいのだろうと見なされることが多いように感じます。(世界で活躍するスーパースター選手の親御さんがどのように子育していたのかを知りたいと思うのも、良い子育てをされたからだろうなという気持ちがあるからだと思います)。逆に子どもが伸び悩んでいたり、コーチの指示を理解できない、指示通りにできないなどは、保護者の育て方に問題があるのではないか、とみなされやすいですね。これもどこまでが保護者の育て方の問題なのか、誰も線を引くことはできません。■保護者のストレスは子どものスポーツにも影響我々、保護者がどのようなところにストレスを感じているのか。保護者個人が対処できることは何かか、子どもを中心に保護者と指導者が手を結ぶことで軽減できることは何か、スポーツ界、教育界全体で取り組まなければいけないことか。ストレス、負担、イライラを引き起こす原因を、少し分解して対処方法を考えてみるのもよいのではないでしょうか。観戦席にいる保護者がストレスを感じてそれを表に出すことは、子どものスポーツにあまりよくない影響を与えているという研究結果もあります。ですから、保護者がどのようなところに負担やストレスを感じ、それをつい子どもにぶつけてしまいそうになるのか、を調べたり、考えたりすることはムダではないはずです。それに、保護者自身がストレスに対処しようとする様子、子どものスポーツをよりよくしようと対応することは、大人のやり方を見ている子どもたちがストレスや物事に対処する方法を学ぶことにもつながると、英国の研究者カミラ・ナイトは説明しています。後編では親のストレスを軽減するアドバイスを送ります。
2020年09月07日今冬の高校サッカー選手権で初の8強入りを果たした埼玉の強豪・昌平高校サッカー部。この10年ほどで一気に力をつけ、今や埼玉県内だけでなく全国でもその名を轟かせる強豪校に飛躍しました。そんな昌平高校サッカー部を躍進させた藤島崇之監督に、指導理念や選手を伸ばすための取り組みについて考えを伺いました。(取材・文:元川悦子)取材当日練習に参加していた昌平高校の選手たち■恩師、本田裕一郎氏から送られた言葉「できない理由を探さない」2020年1月の全国高校サッカー選手権大会で初のベスト8入りを果たした埼玉県の昌平高校。チームを率いる藤島崇之監督(40)は2007年の就任からわずか13年で同校を全国屈指の強豪校へと引き上げました。近年は東京五輪代表候補のボランチ・松本泰志(福岡)、彼と同期のテクニシャン・針谷岳晃(磐田)らJリーガーを続々と輩出。急激な躍進ぶりは全国からも注目を集めています。日本鋼管で活躍した元日本代表の信雄氏を父に持つ藤島監督は、習志野高校時代に玉田圭司(長崎)や吉野智行(鳥取強化部長)ら同学年のタレントとともにプレーしていました。順天堂大学卒業後は青森山田中学校で教員になり、柴崎岳(ラコルーニャ)らを指導。4年後に昌平へと赴いています。転職の際、習志野高校時代の恩師である本田裕一郎監督(国士舘高校テクニカルアドバイザー)から送られてきたハガキにしたためられていた「できない理由を探さない」という言葉が琴線に触れ、それを肝に銘じながら現チームの指導に当たっているという藤島監督。「僕が赴任して最初に掲げたのは『日本一』。当時は部員も20人程度しかいなくて、東部支部予選敗退くらいのレベルでしたが、日本一に相応しいチームになるために何ができるかを第一に考えました。学校や先生、仲間や地域に愛され、応援されるのがいいチーム。『挨拶や礼儀正しい言動や振る舞いといった基本的なことをしっかりやって、サッカーしかできない人間にならないようにしよう』と選手には伝えました」■社会に出ればすべてが自分の判断になる。高校時代はその準備期間同時に高校生の本分である学習面も重視しており、文武両道も目指す姿勢も明確にしました。「勉強とサッカーの2つをやろうとすれば、効率よく物事を進めたり、時間を管理する力が求められます。課外学習や趣味などやるべきことが3つ4つと増えていけば、自分をマネージメントする能力がより一層、問われます。そのために自分なりに工夫し、的確な判断をしていくことが非常に重要。学生時代は学校側がカリキュラムを決めてくれるし、練習メニューも監督が与えてくれますけど、社会に出れば全てが自分の判断になる。高校時代をその準備期間を捉えてもらえるように、僕はアプローチをしてきたつもりです」こういった方針の下、チーム強化に取り組み始めましたが、藤島監督は選手に口うるさく指示することはせず、できるだけ自主性や自律心に任せるスタンスを取っています。試合ではあえて戦い方を決めずに入り、選手自身の状況判断に委ね、積極的なトライやチャレンジを力強く後押ししたと教えてくれました。「ユース年代はチャレンジの場。ジュニアユース時代の所属先で『なぜパスをしないんだ』と怒られてウチに来たというドリブラーの選手がいましたが、僕は長所を生かそうとするチャレンジは大いに歓迎。むしろ『なぜ積極的に仕掛けないんだ』と言いますし、失敗しても大丈夫だと思わせる環境を作ろうと心掛けてやってきました。習志野時代に玉田のスーパーな左足のドリブル突破を見て『ファウルして止めるしかない』と思いましたけど、ああいう尖ったストロングを持つ選手の集合体がサッカー。『昌平の選手はうまい』とよく言ってもらいますが、みんなで助け合い、サポートし合うから、そう見えるんだと思います。やはり長所を伸ばしてあげる方が選手は大きく成長する。僕はそう確信しています」■考える習慣を身に着けてもらうことがピッチ上の一挙手一投足にもプラスになる遠征や大会での行動についても、起床時間・消灯時間などを事細かく定めず、自らの判断に任せているといいます。その方が選手のベストパフォーマンス発揮につながるという藤島監督の考えがあるからです。「2年前の選手権埼玉県準決勝の時、2時間半前に会場入りしたら、ミーティングが始まるまで教科書を開いて勉強をしていた選手がいましたね。それも彼のルーティン。一番いい状態になれるサイクルを自ら見つけてくれればいいと僕は思っています。寮も外出時間や門限など多少の規律は作っていますが、オフの日にモラルの範囲内でどこへ行くのも自由。ガールフレンドを作ることも規制していません。それでパフォーマンスが下がるなら苦言を呈しますが、自分の行動に責任を持ってもらえるなら問題ない。何事も判断ですから、考える習慣を身に着けてもらうことがピッチ上の一挙手一投足にもプラスに働く。それが僕の目指すところなんです」藤島監督は今回のコロナ禍でよりそういう気持ちが強くなったといいます。3月2日から全国一斉休校になってから、昌平高校は部活動を全面的に休止。6月15日の再開まで3か月以上を要することになりました。その間、オンライントレーニングなども実施したそうですが、基本的な練習は選手自身に任せざるを得なかったと振り返ります。「『自覚ある行動を取りなさい』と声掛けはしましたが、指導者としてやれることに限界がある。だからこそ、より選手たちの自律心や判断力を伸ばすように仕向けなければいけないと痛感しました」と藤島監督は語ります。■口に出すことで考えを整理する力がつく「この3か月間で選手たちは社会人になったような感覚を持ったと思います。彼らなりに勉強やサッカー、将来の進路などいろんなことに思いを巡らせて、グラウンドに戻ってきたはず。以降は通常通りの活動をしていますし、僕からは『どうだった?』『何してた?』くらいしか聞きませんけど、意識の変化は少なからず感じ取れます。こうした中で再認識したのは、選手は大人と話すことで人間的に成長するということ。口に出すことで考えを整理することもできます。選手権などの大会の際、取材に来られた記者のみなさんに『選手の考えを引き出してください』とよく声をかけていますが、短期間で彼らの自己表現力はグングン上がります。実際にそういう選手を数多く見てきました。言葉での説明は社会に出てからもつねに求められる。その重要性も踏まえながら、選手と向き合っていこうと思います。彼らをサッカー選手として、高校生としてさらに一段階飛躍させられるように頑張ります」2020年前半戦の公式戦がなくなった彼らにとって、ここからが本当の戦いです。9月から始まる高円宮杯JFA・Uー18サッカープレミアリーグ2020関東、その後の選手権に向けて、彼らのチャレンジは続いていくのです。藤島崇之(ふじしま・たかゆき)昌平中学・高等学校サッカー部監督習志野高校時代は世代を代表する名選手として活躍。元日本代表FW玉田圭司と同期で、高校3年生時の選手権では全国大会まで勝ち進んだ。順天堂大卒業後は青森山田中学で指導者としてのキャリアをスタートさせ柴崎岳らを指導。2007年に昌平高校に着任。14年に選手権に初出場。第98回(2019年度)大会では準々決勝まで勝ち進んだ。16年には18年にはインターハイで全国ベスト4入りなど昌平高校を強豪校に成長させた。
2020年09月04日鹿島アントラーズ所属時にはクラブワールドカップでレアルマドリード相手に2点を決め世界最高峰の相手に鮮烈な印象を残すなど、中盤の選手として技術、判断力に優れる柴崎岳選手。前編では、ご両親のかかわり方や幼少期から負けず嫌いだったこと、試合では考えている暇はないので練習で定着させる必要があることなどを伺いました。後編では学生時代に身につけておくこと、海外生活で大事なことなどを語ってくれました。(取材・文:松尾祐希)学生時代に身につけておくべきこと、海外でプレーするために大事なことをお話してくれました<<前編:「両親は自分の取り組みや考え方を尊重してくれた」日本代表柴崎岳選手が振り返る両親のかかわり方■プロになれるのはほんの一握り。だからこそ学生時代に身につけておくべきこと柴崎岳選手は青森山田高を卒業後、プロ世界へ足を踏み入れます。鹿島アントラーズでは1年目から出場機会を掴み、主軸として目覚ましい活躍を見せました。2年目にはナビスコカップ(現ルヴァンカップ)で最優秀選手に輝き、Jリーグでもベストヤングブレーヤー賞を受賞。2014年の9月には日本代表デビューを飾り、2016年にスペイン2部リーグのテネリフェに活躍の場を求めました。プロの世界で着実にステップアップを果たしていった柴崎選手。幼い頃に培った質問する力と自分で判断して実行に移すバランス、挑戦する姿勢、礼儀作法などは夢を叶える上で欠かせないものでした。では、幼少期に何を学ぶべきなのでしょうか。柴崎選手が最も重要だと考えているのは、人としてのあり方です。「高校サッカーはサッカーを通じて部活動の中で自身を高める場所ですが、本分は学生としてどうあるべきかです」と断言します。「黒田剛監督も今はサッカーの監督として有名ですが、本職は教師です。『教師として1人の人間をどう育てていくか』を一番に掲げています。そのことはサッカー部のスタッフも重々理解しているはずですし、選手も学生であることを忘れずに寮生活や学校生活を過ごすことが大切です。挨拶を含めた礼儀は社会に出ていく上で最低限持っておかないといけません。選手たちもそれを意識して取り組み、当たり前のこととして身に着けて欲しいですね。何故ならば、サッカー選手になれなかったとしても社会人として大事な事だからです。全ての人がサッカー選手になれるわけではなく、むしろなれない人がほとんどだということを忘れてはいけません」プロサッカー選手になれるのはほんの一握り。多くの人が一般社会で生きていきます。人としてどうあるべきか――。しかし、挨拶、礼儀も含めた人としての振る舞いは大人になれば勝手に身に付くものではありません。だからこそ、柴崎選手は人間性を磨く重要性を強調します。「サッカーを失ったら何も残らない。この状態は好ましくありません。高校を卒業して10年経ちますが、改めて大事な事だったと感じています。僕はサッカー以外を二の次にし、プロになるために幼い頃からやってきました。プロで活躍するため、海外でプレーするため。自分はプロ入り後を見据えて自分の目標ラインを置いていたのでプロになることはある種当たり前のことでした。自分はプロになることができましたが、先ほども言ったように全員がプロになれるわけではありません。子どもたちにとってサッカー以上にパーソナリティーの部分が大事なので、そこを意識しながら生活をしてもらいたいですね」■海外生活で大事なのは周りに流されないこと現在、柴崎選手は海外で生活をしています。日本で学んだ事がなければ、今はありません。ただ、異国での暮らしは困難が付き物です。具体的には何が一番違ったのでしょうか。「海外に行って良かったと感じているのは、自分の基準を持つ事です。自分は周りに流されない性格なので、そこは良かったなと思います。人種も文化も過ごし方も言語も違います。その中で自分と周りの環境を考えながらバランスを取らないといけません。自分だけが快適でも不快であってもいけないので、周りとの関わり方が重要だと知りました。ただ、日本での礼儀や習慣は海外では必要なく、邪魔になることもあります。逆に学んだことが生きるところもありますが、そこは難しい部分ではありますね」実際に柴崎選手もスペインで文化の違いを感じました。特に人々の気質は日本にないものだったそうです。「スペインでは育成年代の試合を中継するのですが、幼い選手も試合後のインタビューに答えています。育成年代からそういう環境があることに驚きました。そういう環境があるので喋るスキルを身に付けられます。状況を説明して、自分が思っていることを話す。そこは日本と違う部分なのかなと思います。国民性も違いますし、スペイン人と比べると日本人は大人しい部類に入るかもしれません。チームの規模が大きいので各々がYouTubeチャンネルなどを持っており、育成年代まで情報伝達ができています。情報の量と質が揃っている。そのような環境があるからこそ、『子どもたちが育っていくんだな』と感じました」語学も当然、海外でプレーをしたいと考えているなら日本にいるときから勉強しておくなどの準備はした方が良いですが、柴崎選手はそれだけではないと言います。「語学はもちろんやっておいた方が良いですが、たとえ言葉が完璧に通じなくても理解しあうことはできます。そのためには、相手の発言をよく聞きその意図を理解すること、そして自分の意見を伝えるという、言葉以前の要素が大事だと思います」と、海外で生活したことで実感したコミュニケーションの基本の大切さを語ってくれました。■自分のプレーを見て憧れを持ってもらうそうした積み重ねが今の柴崎選手を支えています。現在28歳。現役を退くのはまだまだ先かもしれませんが、今後はどのような形でサッカーに関わっていくのでしょうか。最後に柴崎選手へ引退後のキャリアについて尋ねました。「今が選手として一番いい時期。だからこそ、子どもたちに指導できていると思う時があります。プロサッカー選手としてプレーすることが、子どもたちの模範になるからです。自分を見て憧れを持ってもらう。これが一番の指導になるかもしれません。監督やコーチになった時に今と同じプレーを見せられる訳ではないからです。そして、引退後はどのような形か分かりませんが、子どもたちにサッカーを伝えていければいいなと思います。監督として指導に関わりたいという思いは少なからず持っているので、今もそういう目線で見ることもあります。指導者になった際は、自分が持っている経験を生かしながら、サッカー界に貢献できるようにやっていきたいですね」サッカーを通じて1人の大人へと成長した柴崎選手。人間性を磨くことが自立へとつながり、子供たちの将来を豊かにしていくのではないでしょうか。<柴崎選手のサイン入りユニフォームとスパイクをプレゼント>柴崎選手より直筆入りのユニフォームとスパイクを読者プレゼントとしていただきました。抽選でそれぞれ1名様にプレゼントしますので下記のフォームよりご応募ください。皆様のご応募お待ちしております!応募締め切り:2020年9月11日(金)18:00詳細・応募フォームはこちら>>
2020年09月01日6歳までに脳の神経系統が大人の90%に発達すると知り、脳を発達させるメニューを知りたいコーチ。ですが、未就学児に集中させるのは難しいですよね。飽きて一人でほかの事をしだす子もいるし、この年代に教えるにはどうすればいい?というご相談です。今回のご相談に池上さんが提案する、子どもたちが楽しんで取り組める「遊び」の要素を取り入れたメニューとは。これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが送るアドバイスを参考にしてみてください。(取材・文島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<技術はあるのに「1対1を組み合わせた」単騎攻撃ばかり。連携のイメージをつけさせる指導法を教えて<お父さんコーチからの質問>スクールで未就学児を指導しています。6歳頃までに脳の神経系統は大人の90%にも達すると聞いたので、脳を発達させるためにいろんなことにチャレンジさせたいのですが、いかんせん集中が続かない年代なので、練習にあきたり、一人で違う事を始めることもあります。まだ始めたばかりの子たちで、中にはゲームでの接触を怖がったりして積極的にボールを追えない子もいるのですが、この年代におすすめの練習はありますか?<池上さんのアドバイス>ご相談いただき、ありがとうございます。おっしゃる通り、脳の神経系統は6歳頃までにぐんと発達します。このあたりの概論は日本サッカー協会のB級ライセンスを取得する際に学びますね。では、6歳までに発達する90%とはどんなことでしょうか?■遊びの中で身体の動きをスムーズにすることもできる例えば、手の指が一本ずつ折れる。グー・チョキ・パーができる。そのような基本的な動きが該当します。そこから、例えば「右手がグーで左がパーをやってごらん」と言われると、ちょっと難しく感じる子どもが出てきます。さらに、その右手グー、左手パーと違うものを出している状態から「グー・チョキ・パーの順番で変えていこう」となったら、ひとつずつずれていくわけです。(大人でも難しかったりします)そうなると、左右違う動きがなかなかできません。そんな基本的な動きを、遊びのなかで行うだけで、身体の動きはスムーズになります。例えば、鬼ごっこ。鬼ごっこには、本当にいろんな動きが含まれています。鬼が来た。鬼が右に行こうとしたのを見定めて、左に動いてタッチを避ける。もしくはかわすためにしゃがむ。動いている場所に、石とか、椅子とか、何らかの障害物があればそれをよけたり、飛び越えて動く。そんなふうにたくさんの遊びの要素をもったものをメニューに取り入れると、スムーズな動きが自然に身についていきます。■サッカーボールを使った左右バランスの取れた発達を図る方法もまた、幼児期にできるものとしては、サッカーボールを手で使うメニューがあります。右手と左手、両方で交互に投げさせます。右で投げるときは右で投げる姿勢と動きに、左は左のそれになります。6歳くらいで始めると、利き手で投げる動作をたくさんやっていないので、左右どちらも簡単にできるようになります。利き手と逆の手で投げる不自由さを感じないので、子どもは抵抗なく交互に試るからでしょう。ずっと利き手ばかりで投げていると、利き手のほうがスムーズなので逆の手で投げたがらなくなります。これは大人もそうですね。これは、足でも同じことが起きます。6歳以下の幼児の頃から両方の足で蹴ることを遊びの中でたくさんやってみてください。そうすると、左右バランスのとれた発達が図れます。■あまり気負わないこと、大人が義務感をもってしまうと「遊び」が楽しめない少年サッカーでは、小学3年生くらいからコーディネーションのようなトレーニングをしていますね。そんなふうに考えてやってみてください。そして、気をつけたいのは「6歳になるまで90%成長してしまうから、今のうちにいろんなことをやろう」と大人が気負わないことです。あくまでも楽しく遊ばせてあげてください。何かの本に書かれている通りにやらせなくてはと大人が考えてしまうと、遊びでやっているはずが遊びでなくなってしまいます。もっと簡単に考えると、幼児期はスキップくらいで十分です。それより上、小学3年生くらいであれば、スキップしながら手を回す。手を叩きながらスキップする。身体全体をスムーズに動かすメニューですね。ほかにも、サイドステップをしながら手を回したり、道具を使う「ラダー」などさまざまあります。ネットで検索すればたくさん出てくるでしょう。ただし、そういった運動を長い時間やる必要はありません。ちょっと経験するくらいの程度でいいのです。足がクロスするような動きの入ったものも3年生くらいからやるといいでしょう。■遊びの要素はとても重要、「我慢」ではなく楽しくて続けられることを意識して「遊びの要素」はとても重要です。大阪教育大学の先生で「子どもの遊び」の研究をされていた方が、子どもが本当に楽しいと感じたものはいつまででもやると言われていました。ノコギリで丸太を切ることにハマってしまった子どもは、30分くらい一心不乱で切り続けます。幼児の集中力は、興味関心と関連があります。楽しくなれば、ずっとやります。大人は、小さい子はすぐ飽きてしまうと思いがちですが、彼らは集中力がないわけではありません。日本人の「集中力をあげる」というイメージですぐに浮かぶのは「我慢・忍耐力・根性」です。ここを改めなくてはいけません。子どもは楽しいものを提供すれば喜んで取り組みます。サッカーも、最初に一番楽しいはずの「試合」から入らないから、そんなことが起きるのだと思います。多少気が弱いとか、相手とぶつかりそうになったらやめるといった傾向があっても、試合はこんなことなんだよ、ボールの取りあいがあって、点が入るとうれしいよね、ということが伝えられたら子どもは変わっていきます。その点で、年齢が下がれば下がるほど、すべてが楽しいものになっている必要があります。指導者も同様の対象です。「あのコーチとやるのは楽しい」という評価が、コーチのありかたにつながってほしいと思います。ところが実際は「楽しい」よりも「勝たせてくれるかどうか」みたいなことがコーチの評価になりがちです。「積極的にやれ」「逃げるな!」と叱ったりする場面を見ることはまだ多いです。しかしながら、子どもにはそういう面があることを理解しておいてほしいのです。「いま、逃げなかったらどうなると思う?」と問いかけて、解決の方法を子どもと一緒に見つけ出すことが求められます。■「無理しなくていいよ」と言ってあげることが大事(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)じゃあ、どんな練習だったら、怖くないかな?こんなふうに一度やってみる?と、少し強度を下げたり、違う形でやるメニューを提供してみることで、子どもたちは克服できる。3年生、4年生になって、子どもがぐっと変わったりしませんか?そこまで待ってあげましょう。この子は弱気だと決めつけたり、無理やりやらせる必要はありません。サッカーが嫌いになってしまいます。「ぼく、できない」と言ったときに「無理しなくていいよ」と言ってあげること。何回かでできなからといって、その子の一生が決まるわけではありません。長い目で見てあげてください。6歳の子が何かができなければ「じゃあ、来年1年生になったらまたやるか」と言ってあげてください。池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2020年08月28日元バルセロナで現在はヴィッセル神戸でプレーするアンドレス・イニエスタ選手。世界最高峰のプレーを日本で見られるのは本当に幸せなことですよね。そんなイニエスタ選手が、自身の理念を伝えるサッカーアカデミー「Iniesta’s Methodology(イニエスタ メソドロジー)」では、自身の経験やビジョンを次世代の子どもたちに伝える指導を行っています。そんなイニエスタ選手が日本の子ども達と共有したいこととは。昨年開催された「Iniesta’s Methodologyスペシャルエディションin神戸」で語った内容をご覧ください。(取材・文・写真:貞永晃二)Iniesta’s Methodologyスペシャルエディションin神戸参加者の子どもたちと記念撮影(C)貞永晃二■イニエスタが日本人の子どものと共有したいことイニエスタ選手のアカデミーでダイレクターを務めるフアン氏が夢について講義を行いました(C)貞永晃二特別講義「夢を叶えるために大事なこと」の講師を務めたフアン・カルロス氏はアカデミーのテクニカルダイレクターを務める人物で、イニエスタ選手が9歳の頃、故郷スペイン・アルバセテのクラブ「アルバセテ・バロンピエ」でプレーしていた当時に出会いました。その後20年以上の間イニエスタ選手の成長と活躍ぶりを見守り、サッカーを通じて親交を深めてきたことでイニエスタ選手が厚く信頼する方です。講義では、イニエスタ選手の華麗な選手人生を振り返りながら、夢を叶えるために大事なことを伝えました。フアン:「彼は自分がどのようにサッカーというものをどのように感じているのか、どのように捉えているのか、楽しんでいるかを日本人の子どもたちに伝えて、そして感じてほしいのです。このメソドロジーはイニエスタ選手が練習してきた内容をそのまま練習しようというプロジェクトで、世界でもトップ選手であるイニエスタ選手がしているようにトレーニングをして、サッカーが与えてくれる情熱を日々感じていく練習をしています。彼は日本の子どもたちの持つ特徴や、日本の文化にとても興味を持っているので、自身のサッカーへの情熱を伝えて、日本の子どもたちが持っているサッカーへの情熱を共有したいのです。このイニエスタ メソドロジーで、子どもたちと共有したいのは『どういうふうに教えて、どういう経験をして、プロ選手になっていくか』ということです。人としてどんな価値観を持ち、経験を積んできたか説明して子どもたちの能力に合った練習を挿入して組んでいきます。そこで注意していることは、相手、味方、ボール、スペースの確保、ピッチ上でボールを受けるときのポジション、相手を突破するのか、相手の裏をかく動きをどうやるのかなど、できるだけ質の高い練習を考えています。そして個人としても、チームとしても成長することを目指します」■認知・判断・実行の向上ができるトレーニング子どもたちとミニゲームを楽しんだイニエスタ選手(C)貞永晃二フアン氏は、イニエスタ選手が大切だと考えている考えは、自己犠牲、努力、向上心、情熱、チームワークの5つだと教えてくれました。そこからトレーニングの内容を作っていくのだそうです。フアン:「Iniesta’s Methodologyでは常に試合をイメージして、ボール、味方、対戦相手を重視して練習します。そして、イニエスタ選手自身の反省から来ていることは技術、戦術、体力、そしてメンタルを同時に向上できるような練習を取り入れていることです。子どもの年代では心も体も成長しますから、認知能力、判断能力、実行能力という3つの能力の向上を目指します。子どもたちのモチベーションを高めることで、練習意欲や参加する姿勢を養います。そして何よりもサッカーを楽しみながら学んでもらうことです。これが一生続けるべき学び方だと考えているのです。子どもたちにはどういうところを好きになったのか、どこに注意を払ったのか、何に興味があったのかを聞き出します。そうすることでイニエスタ選手とともに練習内容を考えるときに、子どもたちの欲求に応えられるような練習にしたいからです」と指導哲学を教えてくれました。子どもたちは「楽しい」からサッカーを続けたくなる、それをしっかり大人が理解して接することが大事なのです。これは指導者だけでなく、親も参考になる意見です。■プロ選手になりたければ学校の勉強も大事質疑応答で子どもたちが「プロ選手になるにはどのようなことを続ければいいですか?」と尋ねるとフアン氏は「たくさん練習をして、たくさん努力して、学校でよく勉強すること。そして親とコーチの言うことをよく聞くこと。そして練習ではいっぱい楽しむこと」と答えました。サッカーの技術的な回答を予想していた保護者達にとっては予想外の答えだったようで、会場では大きな笑いが起こりましが、イニエスタ選手がこのメソドロジーで伝えたいのは、サッカーに関することだけではなく、『アスリートとして大切な日常の立ち振る舞いやケガを防止するための身体のケアなど、人間的な成長を目的とした機会を創出』することなのです。サッカーのプレーだけでなく、勉強や人間性などオフザピッチの生活も重要な要素なのだと理解することができる言葉でした。■イニエスタが子どもたちに伝えたいことその後行われた実技指導では、子どもたちはお揃いの背番号8のユニフォームでピッチを駆け回りました。小2、3年生組と小4~6年生組に分かれ、ラダーを使ったウォームアップから、フェイントを入れたドリブル練習やミニゲームの中にじゃんけんや遊びの要素を挟んだもので自然に笑顔になれる楽しめるトレーニングが紹介されていました。途中で登場したイニエスタ選手は記念写真撮影のあと、実際のトレーニングメニューやミニゲームに参加して子どもたちと触れ合いましたが、メソドロジーで最も重視するのはやはり「サッカーを楽しむ」ことなのだということが伝わってくる内容でした。最後にイニエスタ選手とメディアの一問一答をご紹介します。【イニエスタ選手の一問一答】――子どもたちに囲まれてどういう感想を持ったか?アンドレス・イニエスタ(以下、イニエスタ)子どもたちと一緒の時間を楽しんでいます。私が日本に来た目的、理由の1つが自分のサッカーの理解の仕方を、サッカーの未来を担う子どもたちに教えたいという気持ちです。そういった意味でこれは大事なプロジェクトですし、やっていて楽しめるプロジェクトでもあるので、子どもたちにはこのイベントで楽しい時間をすごしていただきたいなというふうに思っています。――10歳前後の子どもたちが身につけるべきスキルはどういうものか?イニエスタ:彼らは育成年代でこれからどんどん育っていく年代なので、いろいろな要素を練習していく必要がありますが、本当に基礎的なこと、頭を上げて周りを見る、味方が周りのどこにいるかを判断する能力や、例えば両足でキックできるように技術を磨くというところが重要になります。ただ、そういった技術が高いだけでなく戦術もフィジカルも重要です。こういった場では子どもたちにいろいろな要素を教えていくことで彼らが成長していく中でどんどん総合的にサッカー選手としての力を身につけていけるようにやっています。特に重要だと思うタスクの1つがチームプレーです。サッカーというのは1人でプレーするものではなくて、チームとしてプレーしてはじめて成り立つものなので、やはり子どもの頃からゲームの中でのポジショニングや味方を見つけることや味方とのコンビネーションなどを学んでいくことが大事だと思いますし、このイニエスタ メソドロジーではそういうところを重点的にやっています。――子どもたちの教訓となるような座右の銘にしているような言葉があれば教えて下さい。イニエスタ:いつも言うことでもあるのですが、子どもの頃から、そしてキャリアを通してやり続けてきたことは、『学び続ける、成長し続ける姿勢』です。監督の話を聞いて、監督をリスペクトして、また毎日新たなことを学ぶ姿勢を持つこと、チームメイトと協力し合ってチームメイトを成長させたり、逆にチームメイトから学ぶことだったり、先ほども言いましたように、サッカーというのはチームスポーツなので大事なフレーズというか、コンセプトとしてはやはりサッカーにおいては周りが自分を成長させてくれますし、自分も周りに与えるものもある。そういう協力関係があってはじめて成立するスポーツなので、そこを理解していくことが大事かなと思います。――親元を離れバルサのカンテラに入られたわけですがご両親はどのように支えてくれましたか?イニエスタ:確かにあれは難しい時期ではありました。離れて生活するようになったこともあって、親はいつも私のことを助けてくれました。アルバセテにいた頃から、練習に連れて行ってくれたりして犠牲を払ってくれましたし、実際に離れて生活するという意味でも彼らが払った犠牲は大きなものだったと思いますし、人生はいい時ばかりではないので、両親はいい時も悪い時も私を支えてくれましたし、家族の意味はそういうところにあるのかなと思っています。【オンラインイベント決定】イニエスタ選手のトークセッションを8月31日開催!日本サッカー、日本の子どもたちのサッカーの「良いところ」「スペインとの違い」イニエスタ選手が12歳の頃の1日のスケジュールについてなどを語ります。テレビ放送、Webのアーカイブ配信ナシ。リアルタイムでしか見られない貴重なイベントです。ぜひご参加ください。詳細・申し込みはこちら>>■イニエスタ選手に質問するコーナーもあのイニエスタ選手に直接聞けるチャンス※事前抽選があります■サイン入りユニフォームを抽選で8名にプレゼント!!※お申込時に振られるお申込番号が抽選番号となります
2020年08月25日帯同するコーチによって下の学年の起用機会、頻度が変わるチーム。積極的に起用してくれるコーチばかりなら経験を積めるけど、起用してくれないコーチの帯同が続くと試合に出られない。これが続くと、試合に出られる学年と出してもらえない学年の子たちで技術にもモチベーションにも差がつく。小学生年代なら均等に出場機会を与えてくれてもいいのでは?と悩むお母さんからのご相談です。出場機会の問題にモヤモヤしたり悩んでいる保護者の方も多いですよね。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、取材で得た知見をもとにアドバイスを授けますので参考にしてください。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<試合多すぎ!なのに上手な子ばかりが延々試合に出続ける不条理を何とかしてほしい問題<サッカーママからのご相談>こんにちは。息子(11歳)のチームの指導者についてご意見を聞かせて下さい。チームには10人以上コーチがいるのですが、監督がいません。コーチは、卒業生のお父さんや、在籍中の子の父親などのボランティアコーチです。子どもたちの人数が多くないので2学年で試合に行くことが多いのですが、下の学年の選手起用機会、頻度が試合に帯同するコーチによって違います。積極的に下の学年を起用するコーチだと、上の学年の試合でも必ず一度は出場させてもらえたりしますが、そうでない方だと、上の学年の試合ではベンチにいるだけ。練習試合でも、数分の出場のみ......ということもあり、試合当日のコーチが誰になるかによって考え方が変わる為、不公平が生じています。それが在籍中何年も続くとたくさん試合経験をした子(学年)と、そうでもない子(学年)に分かれてしまうのです。下の学年の起用に積極的なコーチが担当する学年の子たちはいつも楽しそうですし、たくさん試合経験を積めて上手くなっていますが、そうでないコーチが担当する学年の子たち(息子含む)は、モチベーションが上がらないようで淡々としていますし、出場機会の多い子たちに比べると上手くないです。機会の不公平さに、親の方も何だかモヤモヤした気持ちを抱えてしまいます。監督をたてない方針は構わないのですが、コーチたち全員のまとまった方針がないので育成の面で矛盾が生じていると思っています。まだ小学生なので、出場機会は均等にしてくれてもいいのでは。と感じているのですが、このような状態でも親は黙ってみているべきでしょうか。<島沢さんのアドバイス>ご相談のメールをいただき、ありがとうございます。毎回ご相談のメールだけでは判断が難しいものですが、今回は特に難解な事案ではあります。下の学年の選手を起用する機会や頻度が試合に帯同するコーチによって違っていて、試合当日のコーチが誰になるかによって変わる――という理解を私はしました。そうすると、下の学年の選手もたくさん出場させる人と、そうでない人が入れ代わり立ち代わり現れるわけで、均(なら)せば均等ではないかと感じます。違うのでしょうか。■黙って見守ることがマストではない。何をどう伝えるかがポイントいただいたご相談文だと、息子さんは現在「下の学年」ですね。そして、コーチは息子さんら下の学年を試合に出さないということですね。しかし、その方は今度は息子さんが「上の学年」になったときは、息子さんたちを出場させるということになります。例えば2年間くらいのスパンで言えば、試合の出場時間は同じになりそうな気もします。もちろん、このやり方がいいとは言いません。「小学生なので、出場機会は均等にしてくれてもいいのではと感じている」というお母様のご意見、もっともです。そして、親が黙ってみているべきか?という質問については、黙って見守ることがマストだとは私は思いません。このお母さんのケースでは、誰に対し、何を、どのように伝えるかが課題だと思います。クラブ(もしくは少年団)側が、例えば「みんなで作る、みんなのクラブ」をモットーにして、「みんなで意見を出し合っていいクラブにしましょう」と呼びかけているようであれば、意見はしやすい。しかし、息子さんが所属するクラブは、そんな感じでもなさそうです。では、どうするか。■一人で悩まず同じ意見を持つ保護者を集めようまずは、仲間を作りましょう。同じように、子どもたち全員に試合の出場機会を与えてほしいと考えている保護者を集めるのです。ひとつの要望として「こんなふうに考えてほしい」と話をまとめることが先決です。息子さん個人のことでとどまらないよう、チームの課題として考えてもらわなくてはいけません。次に、クラブの代表の方に要望を伝えましょう。監督は置かない慣習のようですが、ひとつの任意の集団なので一番上に立つ代表格の方はいらっしゃるかと思います。徒党を組むというイメージではなく、あくまでもひとり一人の子どもが楽しくサッカーをするために考えてほしいと伝えるのです。この連載の前回(91)で、『上手な子ばかりが延々試合に出続ける不条理を何とかしてほしい問題』を書いています。お母さんと同じように、子どもが試合に出られない不条理を訴えられています。私はこの記事の文中、「日本の少年サッカーの全員出場させない悪しき慣習には、四つのマイナス面がある」と書き、それを説明しました。サカイクのサイトからこの部分をコピーして渡してもよいかと思います。その際、絶対に感情的になってはいけません。まずは、日ごろボランティアでコーチを務めてくださることに感謝の意を伝え、できれば笑顔で主旨を伝えます。その際、当方の記事以外に、サカイクなどで報じられている他クラブや少年団の実践例や、池上正コーチの本なども添えて渡してもよいかと思います。そのように苦心されても、代表の方やコーチの方々からまったく話を受け付けず「クラブのことはクラブに任せて」と言われる可能性は高いでしょう。そもそも、日本サッカー協会のキッズ指導や、ライセンス取得の際に「試合に全員出場させる」ことは規定化されていません。ルールもなく、罰則もないので、コーチたちは技術が秀でた子どもの出場時間が長くなる傾向があります。したがって、全員を出場させるメリットや、逆に全員をプレーさせないリスクが伝えられていません。このため、多くのクラブにおいて、個人の育成やサッカーの普及、チームの底上げよりも、一つ一つの試合を勝つことにベクトルが向いているのが実情です。でも、だからといって、お子さんを他のクラブに移籍させるとか、サッカーをやめさせたりしないでください。■中学に入るまではなるべく楽しめるようにサポートしてあげること(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)11歳なのですでに上級生です。サッカーを遊びだととらえて、息子さんが中学生になるまでなるべく楽しめるようサポートしてあげてください。ゲーム形式の練習をたくさん行うスクールに通うことも一考です。国内でも海外でも、好きなチームの試合を親子でオンラインやテレビで一緒に観てもいいでしょう。試合に出られないことが、ダメだ、情けない。試合に出られないから上達しない。そんなネガティブな事柄を発信しないほうがいいです。試合に出られず一番残念なのも、焦っているのも息子さん本人です。子どもは親が思っている以上に、いろんなことを感じているし考えてもいます。試合以外の練習でサッカーを楽しむ。ミニゲームや紅白戦を目いっぱい楽しむ。そんな姿がお母さんはとても誇らしい。そんなことを伝えましょう。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2020年08月19日少年時代を振り返り、保護者のあり方や青森山田で身につけたこと、海外で必要なコミュニケーションなどたくさんお聞かせいただいた柴崎岳選手。選手自身が語る親のあり方などは、保護者の皆さんも参考になったのではないでしょうか。今回、柴崎選手より直筆入りのユニフォームとスパイクを読者プレゼントとしていただきました。抽選でそれぞれ1名様にプレゼントしますので下記のフォームよりご応募ください。皆様のご応募お待ちしております!※当選は発表を以て代えさせていただきます着用ユニフォームとスパイクに直筆サインを入れてプレゼントこれからも「自分で考えるサッカーを子どもたちに。」をスローガンに、保護者の皆様に向けたコンテンツをご紹介してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。他では手に入らない貴重なアイテムです。ぜひご応募ください。■応募フォームプレゼントに応募する>>お申込み期間:2020年8月27日(木)~9月10日(金) 18:00※当選は発送を以て代えさせていただきます。※転売目的でのご応募は禁止とさせて頂きます。※応募時に記載いただく個人情報は、株式会社イースリーが管理し、頂いた個人情報をプレゼントの発送とそのご連絡の場合に限り利用することとし、他の目的に利用する場合は別途お客様の承認に基づき利用するものとします。
2020年08月19日海外では、全体練習の前に個々の選手の状態に合わせて行うケガ予防プログラムがあります。いったいどんな事を行っているのでしょうか。イングランドプレミアリーグ、クリスタルパレスFCのトップチームのコーチ、デイブ・レディントン氏に、日本の少年サッカーの現場ではまだ根付いていないその「ケガ予防プログラム」について伺いましたのでご覧ください。(取材・文・写真:末弘健太/BAREFOOT)子どもがケガをした時、保護者が知っておくべきこととは......(写真は少年サッカーのイメージ)<<前編:疲労を可視化してケガを回避、プレミアリーグのトップチームが行うケガ予防とは■個人の状態に合わせたケガ予防プログラム――プロの選手はメイントレーニング前にインジャリー・プリベンション(外傷予防)といって、各自それぞれのケガ予防プログラムを終えてからグランドに出てきますが、これはどのようなものですか?基本的にはストレッチポールやゴムバンド(チューブ)を使ったストレッチやトレーニング、腰や股関節の可動域を広げる運動をします。ハードルを使って腰部を刺激してあげたり、ゴムバンドを使った運動を通して体を温めていきます。また、ゴルフボールを足の裏で転がし、足裏のストレッチにも使いますね。マッサージも受けることができるので、必要な選手はインジャリー・プリベンション中でもマッサージを受けます。――そのメニューは彼らが必要としているものをベースにしているということですよね?そうですね、それぞれの選手によって取り組むメニューは変わってきます。若手の選手はすでにチームで用意されているケガ予防のルーティーンメニューをこなしていくことが多いですが、年齢を重ねるにつれて、より個人に合わせたものになります。そしてそれを習慣化させていき、プレーヤーが無意識でもこれらのメニューに取組めるようになることも実は大切です。プレーヤーは試合前に「これをしろ、あれをしろ」と指示されることを嫌います。このインジャリー・プリベンションが習慣化していれば、細かいプログラムも自分のペースで行うことができます。これらのメニューはスタッフによってアドバイスを受けたりモニタリングはされますが、基本的には個人で行う傾向が強いです。■個人プログラムをこなしてから全体練習――ということは、選手は個人でケガ予防メニューをこなしてから、外に出てチームでのウォームアップをしてボールトレーニングに移るということですよね?ロックダウン前と解除後の今とではウォーミングアップに違いはあるのでしょうか?解除後のウォームアップは非常に軽めでした。というのも、再開後はフィジカルレベルを戻すために多くのサーキットトレーニングや非対人トレーニングを取り入れていたため、ウォームアップがメインセッションの一部に付け足されたというイメージです。ウォームアップからサーキットトレーニングまでずっと対人トレーニングが入らなければ選手にとって刺激が足りず、ただ練習時間を延ばすだけのためになってしまいますからね。従って、やっていること(ウォームアップ内容)自体には大きな変化はなく、時間が短くなったということくらいでしょうか。――チーム再始動後の選手たちの様子はどうでしたか?プレーヤーたちはもちろん新型コロナウイルスを意識しているし、それがもたらすものも認識していますが、とにかく早くプレーを再開したい、自分たちの生活を元のものに戻したいと強く願っていました。以前の彼らはフットボールにコントロールされた環境の中で生活してきました。決められた時間に食事をし、決められた時間に休息していました。それが突然、彼らのルーティーンが取り上げられてしまったのです。もちろんサッカー選手に限らず、多くの人が同じような状況でしょうが、サッカー選手にとっては、それはかなり難しいことです。明らかに普段よりも家で過ごす時間が長かったですが、その期間を楽しめた人もいれば、難しいと感じた人もいました。誰もが同じような経験をしていると思いますが、とにかく全員プレーできることを楽しみにしていました。■子どもがケガをした時親が知っておくべきこと――最後の質問です。U-13の選手がケガをした際に、親が家で選手をサポートするために何かできることはあると思いますか?その質問はアカデミーレベルの視点で聞いているのか、グラスルーツ的な視点で聞いているのかどちらですか?――主にグラスルーツ的な視点で聞いています。難しいですね。はっきり言って専門家の診断次第で、どの様なケガなのか分かっているのであれば、与えられたリハビリプログラムに沿って子どもを(リハビリする上で)サポートしてあげることが重要です。診断されていない場合は、サポートする上で非常に難しいです。 言えることとしては、筋肉の損傷であれば、アイシングをしてあげること、あとは十分に休ませてあげる必要があります。その後に、ケガをして使わなかった期間に強張ってしまった筋肉をストレッチさせ始める必要があります。靭帯のケガであればストレッチではなく周辺の筋肉を強化する必要がありますよね。とはいえ、やはり診断されていない場合は、家庭でのサポートというのはとても難しいです。日本は比較的病院に行きやすい国のようなので、可能であれば子どもがケガをした際には速やかにドクターに診断をしてもらった方が良いと思います。医師の診断を受けるのがむずかしいとしても、少なくとも親は子どもが何をして、どの様にそのケガが起きたのかを知っておく必要はあります。子どものころは痛くても早くプレーに戻りたいと考えてしまうので、保護者としてできることとしては、子どもの様子をしっかりと観察し、無理してプレーしていないか、ということに気づいてあげることです。あとはコーチとしっかりとコミュニケーションをとってケガの治り具合を共有することも大切です。今回は、全体練習の前に個々に合わせて組まれたケガ予防プログラム「インジャリー・プリベンション」というトップレベルの選手の一部の活動をご紹介しました。前編で、低年齢の選手の方が関節が柔らかくて可動域が広くケガのリスクが低いとお伝えしましたが、ケガをせずサッカーを続けるためにも成長期に入ったら身体のケアをし始める必要があります。すぐに完全に同じものを導入するのは難しくても、ケガでサッカーを楽しめない子を増やさないためにも日本も参考にしたいものではないでしょうか。Dave Reddington(デイブ・レディントン)イングランドプレミアリーグ一部、クリスタルパレスのトップチームコーチ。クリスタルパレス、ワトフォードのアカデミーでコーチとしてのキャリアを積みジュニア~ユース年代まで指導。クリスタルパレスU23チームの監督からトップチームのコーチに就任した。BAREFOOT(ベアーフット)はロンドンに本社があるイングランドサッカー留学会社。選手や指導者、サッカービジネス留学などの個人プログラムも充実している一方、チームでのイングランド遠征も手配可能。長くイングランドのサッカー界に携わっていることから、サッカー関連の情報やノウハウ、クラブとの強い繋がりがある。BAREFOOTのホームページはこちら>>個人の状態に合わせたケガ予防プログラム
2020年08月18日世間はお盆休みですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。お子さんが休みのこの時期に、改めてお子さんのサッカーの事を考えてみませんか。本日は、ジュニアサッカー(少年サッカー)の保護者向け情報サイト「サカイク」で2020年1月から7月に配信した記事の中でみなさんの注目度が高かった「テクニック」をテーマにした記事をランキングでご紹介します。技術や判断力を磨くベースも、自分で考える力があってこそになります。どんなふうに習得させるのか、三菱養和サッカースクールにはご家庭での過ごし方なども伺いましたので、ぜひいま一度ご覧ください。第3位中村憲剛が語るDFにボールを奪われなくするための2つのポイントDFがいる状況でも「止める・蹴る」を実行するにはどんなことを意識すればよいのか。日本最高峰のMF、中村憲剛選手がコーチとなって教えてくれた「中村憲剛のプレーの極意」。日本の選手の中もトップクラスに技術、判断に優れた中村選手が直接教えてくれたDFにボールを奪われないためのポイントとは。DFがいる状況でも「止める・蹴る」を実行するにはどんなことを意識すればよいのかを理解するのにおすすめです。記事を読む>>第2位「勝負に徹するより"個"を育てる」40年以上も続く静岡学園高校サッカー部のスタイルとは?テクニカルかつ攻撃的なスタイルを貫く静岡学園のプレースタイルには、多くのファンがひきつけられました。拘り続けるのは、目の前の勝負ではなく、選手の10年後を見据えた育成。選手として上のステージに行った時に何が必要なのかを意識した静学の「個の育成」について、選手権優勝の川口修監督に伺いました。記事を読む>>第1位育成の名門、三菱養和サッカークラブに聞いたサッカー上達につながる「判断力」の身につけさせ方テクニック系の記事で1~7月に一番読まれたのは、三菱養和サッカークラブに伺った判断力のお話でした。サッカーに必要な判断力をどう身につけるのかは、多くの保護者にとって関心が高いことです。育成の名門、三菱養和サッカースクールが子どもたちの判断力を高めるために保護者達にお伝えしていることなどをスクールの統括責任者を務める、秋庭武彦さんにお話を伺いました。上手いけど伸びない子の特徴なども教えていただいたので、記事でご確認ください。記事を読む>>いかがでしたでしょうか。これからも親御さんご自身が考えるきっかけになったり、チームがよくなるきっかけになる記事を配信していきますので、ご愛顧のほどよろしくお願いいたします。【保護者、指導者の皆さんへ】連日猛暑続きで夏バテが続いている方もいらっしゃるのではないですか?まだまだ暑い日は続きますが、お父さんお母さんの疲労回復のためにこちらの記事をご紹介しますので、参考にしてリフレッシュしてくださいね。バスクリンのお風呂博士に聞いた「正しい入浴と睡眠の知識」>>
2020年08月13日世間はお盆休みですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。休暇をとられている方も、世間のカレンダーとは逆にお仕事の方も、お子さんが夏休みのこの時期に色々と考えることがあるのではないでしょうか。本日は、ジュニアサッカー(少年サッカー)の保護者向け情報サイト「サカイク」で2020年1月から7月に配信した記事の中でみなさんの注目度が高かった「考える力」をテーマにした記事をランキングでご紹介します。サッカーを通して子どもを自立させる方法など参考になることがたくさんありますので、ぜひいま一度ご覧ください。第3位サッカーは一人ではできないから助け合いが大事。選手権常連の矢板中央高校が大事にする「サッカーを通じて社会で生きる力」「うち(矢板中央)はプロを多数輩出する学校ではないからこそ、選手同士の『助け合い』など社会で生きる力をつけさせて送り出す」という高橋健二監督。どのようにしてサッカーを通じてその力を身につけさせているのかを伺いました。「90分の試合は人生と一緒。人生において人は一人で生きていけるか?」サッカーは一人ではできない。だから助け合いの精神が大事記事を読む>>第2位今どきの子は実年齢マイナス4歳幼い!? 自分の事を自分でできる子にするために小学生の親が心得ておくこと「最近の子どもは実年齢よりマイナス4歳ぐらい幼い印象の子が増えている」それ感じてた、ハッとした(でも親の自分もそうかも)、わかる、ちょっと耳が痛い......など多くの保護者の反応をいただいたこの記事が2位でした。「今現在」幼さが残るだけならいずれ成長して実年齢相応になりますが、いつまでも子ども扱いして自立を防ぐのはよくありません。いずれ社会に出る子どもたちをどう導けばいいのか。進学塾「VAMOS」の代表で、日本サッカー協会登録仲介人として若手プロサッカー選手の育成も手がけ、アスリートと学習教育に共通する「成長プロセス」の体系化にも取り組む富永雄輔さんに伺いました。子どもが幼いのではなく、大人が幼い子どもを作っている記事を読む>>第1位ゼロ百思考でいきなり「自立しろ」は無理、今どきの子どもに必要な自立へのステップとは「最近の子どもは実年齢よりマイナス4歳ぐらい幼い」がテーマの記事がワンツーフィニッシュという結果になりました。物事についてゼロか百かで考えてしまうこともあるかもしれませんが、子どもの自立においてはゼロか百かで判断できるものではありませんよね。自分の指針となるマニュアルを求める親が多い「まだ子どもだから」「子どもを傷つけたくないから」など自分に都合のいい意見だけを切り取って子どもに対峙する。失敗しないよう親が先回りしてつまづく要因を取り除いて甘やかされた子は勉強でもスポーツでも中途半端になってしまうのだそう。今どきの子どもたちを段階的に自立させるために意識してほしいことを伺ったのでご覧ください記事を読む>>いかがでしたでしょうか。これからも親御さんご自身が考えるきっかけになったり、チームがよくなるきっかけになる記事を配信していきますので、ご愛顧のほどよろしくお願いいたします。【保護者、指導者の皆さんへ】連日猛暑続きで夏バテが続いている方もいらっしゃるのではないですか?まだまだ暑い日は続きますが、お父さんお母さんの疲労回復のためにこちらの記事をご紹介しますので、参考にしてリフレッシュしてくださいね。バスクリンのお風呂博士に聞いた「正しい入浴と睡眠の知識」>>
2020年08月12日世間はお盆休みですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。休暇をとられている方も、世間のカレンダーとは逆にお仕事の方も、お子さんが夏休みのこの時期に色々と考えることがあるのではないでしょうか。本日は、ジュニアサッカー(少年サッカー)の保護者向け情報サイト「サカイク」で2020年1月から7月に配信した記事の中でみなさんの注目度が高かった記事をランキングでご紹介します。サッカーを通してわが子を成長させる親の接し方について参考になることがたくさんありますので、ぜひいま一度ご覧ください。第5位上手い子だけボールを触れればいいの? サッカー強国ドイツが導入を決めた3vs3のミニゲーム「フニーニョ」とはわが子を含めチームメイトの子どもたちも、好きでやっているサッカーなのに試合中1度もボールに触れない子がいて良いと思いますか?それで「楽しい」という気持ちをもち続けられるでしょうか。スポーツ本来の楽しみ方を全員に感じてもらう、みんながボールに触れる環境がチーム全体のレベルアップにつながります。少年の全国大会がないドイツで、ドイツサッカー連盟が9歳以下の試合に導入を推奨したことで注目されるようになったミニゲーム「フニーニョ」が、チームの底上げにおすすめな理由とは。ドイツで長く指導者を務め、フニーニョ導入の経緯や実際の現場を知る中野吉之伴さんに教えていただいたフニーニョのメリット記事を読む>>第4位新年度から8人制にも本格適用! 新ルールをおさらいしよう!! <前編>すでにJリーグでは取り入れられているサッカーの新ルール。まだ小学生年代では適用しきれていないかもしれませんが、もともと日本サッカー協会が「遅くとも2020年4月1日」と8人制サッカーのルール改正適用の時期を定めていました。すべての大会で新ルールが適用されるのですが、今年は新型コロナウイルスの影響などでチーム活動停止の期間などもあり、まだ新ルールに慣れてないチーム、子どもたちも多いのでは?酷暑の時期、涼しい場所での座学でサッカーへの理解を高めるのもお勧めです。ハンドや交代など多くのルールが改正された今回の新ルールについて今のうちに覚えておきましょう記事を読む>>第3位夏休み短縮、炎天下の登校...今年の夏、子どもたちの学校生活で心配なことトップは?3位にはこの夏の心配事のアンケート結果がランクインしました。多くの学校で夏休みが短縮され、例年は夏休みだった時期も登校になり、マスクをしての授業など、親も子も先生方も経験したことがない今年の夏への不安など、忌憚なきご意見が寄せられました。保護者のみなさんが心配しているのはどんなことなのか、外出の際に子どもに気を付けてほしいことは・・・記事を読む>>第2位「うちの子運動神経が悪くて」と悩む親必見!「サッカー以前」に必要な運動スキルとは「運動能力」の記事に関心の高い親御さんはとても多いです。運動ができる子と苦手な子の違いは何でしょうか。親御さんたちの中にも自分の幼少期に比べ、わが子の運動体験が少ないかも......と潜在的に感じている方もいらっしゃると思います。そもそもいまの子どもたちはサッカーをするための基礎的な運動体験から得られる体力運動能力が低いので、サッカーのスキル習得を中心とした練習や運動をしても上手く習得できないのだ、といわきスポーツクラブアカデミーアドバイザーを務める小俣よしのぶさんが教えてくれました。身体活動の基礎となる姿勢維持の力が弱い子も増えているのだとか。「走る運動も身体を支える力が必要です。走るフォームを直してほしいという要望をよく聞きますが、走る運動は総合的な体力運動で、子どもにとっては高負荷の運動なんです」運動が苦手なお子さんの運動機能を向上させるために、家庭でもできる「身体機能を整える運動」を教えてくれたので参考にしてください記事を読む>>第1位高校サッカー選手権優勝の静岡学園が、部員が多く1日2時間半程度しか練習できないからこそ身につけたタイムマネジメント術毎年注目度の高い高校サッカー選手権大会。今年優勝した静岡学園は南米のサッカースタイルをベースに世界で活躍できる選手育成を目指し、足元のスキルなど個人技に優れた静学スタイルは多くのファンを魅了しました。昨年度の部員は260名。なのに練習グラウンドはフルコート1面と小コート1面という環境。グランドを使える時間が限られているなかでサッカーも勉強も両立するために選手たちがどんな工夫をしているか、齊藤興龍コーチにお話を伺いました。サッカーに勉強にと忙しい選手たちのタイムマネジメントに関心のある保護者の意見も多く寄せられます。近年では現役サッカー部員で東大合格者も生んだ静岡学園の選手たちが、どんな風に時間を使って高いレベルでタイムマネジメントをしているか、ご覧ください記事を読む>>いかがでしたでしょうか。これからも親御さんご自身が考えるきっかけになったり、チームがよくなるきっかけになる記事を配信していきますので、ご愛顧のほどよろしくお願いいたします。【保護者、指導者の皆さんへ】連日猛暑続きで夏バテが続いている方もいらっしゃるのではないですか?まだまだ暑い日は続きますが、お父さんお母さんの疲労回復のためにこちらの記事をご紹介しますので、参考にしてリフレッシュしてくださいね。バスクリンのお風呂博士に聞いた「正しい入浴と睡眠の知識」>>
2020年08月11日前回の記事では、日本サッカー協会のスポーツ医学委員でJクラブのドクターも務める大塚一寛先生(上尾総合病院スポーツ医学センター長)に、オンライントレーニングは正しい姿勢で行わないとケガのリスクがあることや、ジュニア年代のフィジカルトレーニングについて、話をうかがいました。今回は具体的な動き方とチェックポイントについて、アドバイスをいただきました。(取材・文:鈴木智之)自重トレーニングで代表的なダイアゴナルの動き。このとき連動性を意識する筋肉は......■鏡やムービーも活用!骨、関節が正しい位置にある状態で行うことオンラインも含め、トレーニングをする際に気をつけたいこと。それが「正しい姿勢で行うこと」です。大塚先生は「鏡を見て、先生やトレーナーがやっているものと同じ姿勢を作ることを意識しましょう」とアドバイスを送ります。「映像を録って、動画で見るのも良いと思います。自分がやっているイメージとトレーナーがやっている動きのどこが違うのか。視覚で理解して、正しい動きに修正することが大切です」とくにジュニア年代では、筋肉量も少なく、体を支えるのに苦労することがあります。身体のコア(中心)の筋肉を鍛えるトレーニングでおなじみの『プランク』や、片膝を地面に着き、片手を前方に伸ばしてバランスをとるポーズ『ダイアゴナル』をすると、腰が反ったり、重心が左右にぶれてバランスを崩してしまうことがあります。「ピサの斜塔のように、どちらかに傾いたままポーズをとると、身体が間違った動きを覚えることになります。見よう見まねでやるのではなく、シンプルなものから複雑な動きへと、段階を踏んで正しいフォームでできるようにすると良いと思います」自重トレーニングで代表的なのが、ダイアゴナルの動きです。片膝を地面に着き、片手を上げるポーズをしたことのある人も多いのではないでしょうか。「ダイアゴナルの時は、まず四つ這いになり、足だけを上げます。その状態でキープができたら、次に手を前方へ上げます。この時に横隔膜(胸郭)を上げた状態で姿勢をキープします。お腹をへこませたまま呼吸をする『ドローイン』をして、横隔膜を上げた状態をキープして呼吸をすると、背中が曲がりません。このとき、体幹を安定させる胴回りの4つの筋肉(多裂筋、横隔膜、腹横筋、骨盤底筋群)の連動性を意識しましょう」■肩甲骨はがしで上半身の可動域を広げるサッカーは足でするスポーツなので、どうしても下半身に意識が向きがちですが、連動性の面では、上半身も同じぐらい重要なもの。とくに胸郭と肩甲骨の動きは、スムーズかつしなやかな動きに欠かすことができません。「メジャーリーガーの前田健太選手がする『マエケン体操』という、肩甲骨と胸郭、肋骨を回す体操がありますが、これは上半身の可動域を広くするための動作です。上半身を柔らかく動かすことができると、ケガをしにくくなります。反対に、上半身も下半身も、可動域が狭い選手はケガをしやすくなってしまいます」大塚先生は「最近の子はスマートフォンを見ている時間が長く、前かがみになり、猫背の状態で長時間いるので、走るときに胸郭の動きが悪く、肋骨が動いていない子もいます。それは、日常生活の姿勢が少なからず影響していると思います」と注意を呼びかけます。そこで、おすすめなのが『肩甲骨はがし』です。頭の上で両手の甲を合わせ、頭の後ろを通して両手を引き下げていきます。同じように、両手を体の前に伸ばし、後ろに引き下げる運動も効果的です。肩甲骨が動いて、気持ちよく感じます。上半身の可動域を広げるのに効く肩甲骨はがし。頭上で手の甲を合わせ、両手を引き上げる時の姿勢「肩甲骨はがしをするときは、鼻で息を吸って、口で息を細く、長く吐くと、胸郭と横隔膜が固定されます。その状態でスクワットをすると、インナーマッスルが常に使えて、骨盤をしっかり支えている状態を感じ取ることができると思います」肩甲骨はがしには、両手を体の前に伸ばし、後ろに引き下げる運動も効果的スクワットをするときも、骨盤が後傾せず、正しい姿勢ですることを意識しましょう。「家でトレーニングをするときは、保護者の方が、『猫背になっていないか』『腰が反っていないか』『重心が左右に偏っていないか』など、見てすぐわかるポイントだけでいいので、チェックしてあげると良いと思います」■サッカー上達の1番のポイントはケガをしないこと大塚先生の病院には、ケガをしてリハビリに来る子どもたちがたくさんいます。その子達に、こう言葉をかけるそうです。「病院に来るよりも、グラウンドでサッカーしたいよね。少しのことでいいので、毎日体づくり、動きづくりのトレーニングをすると、ケガをせずにボールを蹴ることができるよ」ケガなく、楽しくサッカーに取り組むためにも、日々のちょっとしたトレーニングの積み重ねが大切なのです。そして、日常生活では猫背にならないように、姿勢を意識すること。この2つを心がけて、楽しいサッカーライフを送りましょう!大塚一寛(おおつか・かずひろ)医師、上尾中央総合病院整形外科・スポーツ医学センター長。1999年からJクラブのドクターとしてチームとともに帯同を続けている。そのほか、『日本サッカー協会スポーツ医学委員』や、『Jリーグチームドクター会議部部会長』を務める。多数の講演にも出演し、現場のノウハウや選手のケガ、障害予防などの啓発活動も積極的に行っている。上尾中央総合病院・スポーツ医学センター日本サッカー協会スポーツ医学医員
2020年08月06日監督が片っ端からカップ戦に申し込む。空いた休日も練習試合を入れたり試合が多すぎ。それなのに監督やコーチの子、うまい子しか試合に出さない。しかも、家族と過ごすことを前提として設けられている「家庭の日」はスポ少などもお休みの日とされているのに、それも無視。考えを改めてほしいけど、指導者に意見するなんて何事だという空気もあって言いにくいし、ほかに移籍するチームもない。どうすればいい?身も心も疲労困憊。というお母さんからのご質問です。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、取材で得た知見をもとにアドバイスを授けますので参考にしてください。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<コーチの差別的な対応があってサッカーをやめてしまった問題<サッカーママからのご相談>小学5年生の息子がスポーツ少年団に所属していますが、試合が多すぎて困っています。地域のリーグ戦に加え、他チームが主宰するカップ戦に監督が片っ端から申し込み、かろうじて空いていた日も自チームでカップ戦を主宰したり、急遽練習試合をいれたりするので土日がほぼ全て潰れます。地域では毎月第三日曜を「家庭の日」としてスポ少の活動を原則禁止していますが、監督は全く無視です。試合数が多い分、チームのいろんな子が起用される機会があればまだ良いのですが、監督やコーチの子と一部の上手な子ばかりが延々と出場し、そうでない子は最後の数分しか出られません。指導者に物申せば、ますます息子の出場時間が減らされるのが怖くて言えません。都会ではきちんと話し合いができるのかもしれませんが、私の地域では監督が偉い立場で、親が口を出すなんて何事だ、という古い価値観があります。移籍も考えましたが田舎のため他に行くチームがありません。せめて日曜日だけでも休ませて欲しいと思っております。私は平日フルタイムで働いており、土日はスポ少の手伝いで身も心も疲労困憊なのですが、世のサッカー少年の親はみんなこんな大変な思いをされているのですか。無理かもしれませんが、監督に何とかわかっていただくための伝え方などはあるのでしょうか。よろしくお願いいたします。<島沢さんのアドバイス>ご相談のメールをいただき、ありがとうございます。お母さんの「全員出場させてもらえない」という悩みは、少年サッカーが抱える大きな問題です。公式戦だと固定メンバーになりがちな問題は残しているものの、練習試合は平等にプレーさせるコーチは増えてきています。ところが、このご相談でお母さんは「試合数が多い分、チームのいろんな子が起用される機会があればまだ良いが、監督やコーチの子と一部の上手な子ばかりが延々と出場し、そうでない子は最後の数分しか出られない」と書かれています。ということは、練習試合でも「最後の数分だけ」なのかもしれませんね。サッカーはもちろん、スポーツは試合が一番楽しいに決まっています。しかも、お住まいが地方のほうで、通えるチームがそこしかない、という八方ふさがりな状態です。お母さんのやり切れない思いが伝わり、こちらまで胸が苦しくなってきました。■出場機会の偏りには四つのマイナスがある日本の少年サッカーの、全員出場させない悪しき慣習には、四つのマイナス面があると私は考えます。ひとつは、チーム力の底上げができないことです。上手な子だけが延々試合に出続ければ、出られない子のスキルは上がりません。対人スポーツのサッカーは力が匹敵した相手とプレーすることで成長していくのに、チーム内で実力がくっきり分かれてしまうと、拮抗した場面が生まれません。そうなると、やりがいがあってなおかつ楽しいサッカーからほど遠いものになってしまいます。ふたつめは、小学生は成長とともに体格も運動能力も変わることを、指導者が考えていないことです。そこを加味せず、勝つために低学年のころから足が速い子、体が大きい子ばかり起用すると、あとで伸びてきた選手が経験を積めません。逆に、ずっと試合に出続ける子どもは、一日に何試合もプレーしなくてはいけないので、全力でプレーしなくなります。つまり、走れない選手に育ってしまう。そして、なおかつ、活動過多で、足の甲を疲労骨折する、膝を壊すといった故障を抱えるリスクが上がります。三つめは、人権の問題です。コーチは子どもがサッカーを楽しむという人権を侵害してはいけません。ところが「補欠になったなら、その悔しさをぶつけろ」などと、謎の論理を振りかざします。そんな「俺についてこい」型の指導が根強い日本は、選手よりコーチの意見が強い。そこを緩和するため、以前は「アスリートファースト」などと言われました。この言葉は、スポーツ先進国の欧米では使われません。当然の概念だからです。近頃は日本では「アスリート・センタード・コーチング」と言われるようになりました。文字通り、選手が主役。主従関係が強いままでは、選手は主体的に動けません。主体的に動けないところに、未来につながる本当の意味の成長はありません。四つめのマイナス面は、全員出場をさせる文化でなければ、スポーツは勝利至上主義が過熱してしまいます。そのリスクをとっくの昔に理解しているドイツやフランスと言った欧州のサッカー強豪国は、過熱させないよう配慮して育成してきました。ノックアウト方式のトーナメント大会が少なくリーグ戦文化が根付いていたり、全国大会が実施されないのはそのためです。ブラジルでは、数十年前に全国大会を数年続けたら、ファンタジスタと呼ばれるような面白い選手が輩出されなくなりました。そこで全国大会を廃止したら、ようやくロナウドらが出てきたそうです。■全員試合に出すべき、という考えをまだ理解していない指導者も少なくないそんなこともあって、最近は子どもを全員出場させる指導者は増えつつあります。私が行動を共にしてきた少年サッカーコーチの池上正さんはいま、全国を回って「コロナをきっかけに少年サッカーを変えよう」と環境改善に地道に取り組まれています。と、ここまでご説明したように、少年サッカーは全員試合に出るべきです。お母さんの要望はなんら間違ってはいません。ただ、一方で、そのように考えて実践する指導者は非常に少ないうえに、その指導者たちを育成するコーチングデベロッパーの方々や、都道府県、区市町村のサッカー協会のトップの方もこのことを理解していない方は残念ながら少なくありません。サッカー少年の保護者向けのサイトはほかにもありますが、そのひとつにこんな文章を見つけました。「いつかは誰もが控えになる。そういう可能性があるということを知り、保護者が先に悲観しないのも大事です。保護者の悲観は子どもに移ります。控えで居続けることさえ、全然珍しくないことです。泰然と『時期』を待ってあげてください」これは間違っています。メディアでさえ、新たな価値観に気づいている人は少ないのが実情なのです。■自分一人の力で解決しようとせず、区市町村のサッカー協会にも相談をお住まいの関係上、今の所属先以外でサッカーをする環境はないようです。非常に難しいケースですが、以下にアドバイスをさせてください。まず、「監督に何とかわかっていただくための伝え方はあるか」との質問ですが、これはお母さんだけの力では無理だと思います。例えば、ほかのお母さんと同じ考えの保護者に、上記の私がお伝えしたリスクを説明し、一緒にお願いしに行くことも一案ですが、非常にハードルが高いでしょう。したがって、区市町村のサッカー協会に相談してみてはいかがでしょうか。サカイクの悩み相談をしたらこう言われた、と説明してもいいかと思います。「家庭の日」が定められているにかかわらず、休養を子どもに与えていない点も改善を訴えてはいかがでしょうか。区市町村のサッカー協会は、そのような役目を担っています。ただし、匿名だとスルーされるので、実名で話しつつ監督本人には名前を明かさないことを約束してもらってください。■中学以降も視野に入れ、お子さんに確認してほしいこと(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)そして、最後になりますが、子どもの意思を確認してください。5年生の今の状態で、満足しているのかどうか。サッカーが楽しいのかどうか。そのうえで、お母さんが「せめて日曜日だけでも休んでほしい」と思っていることなど、伝えてみましょう。中学生でどのスポーツをするかも話しながら、続ける、辞める、ほかのことをする。サッカーは週末の試合だけ休んで、他のスポーツもやる。いくつかの選択肢の中から答えを出してください。理不尽なことを子どものうちから我慢するのもいい経験だ、などとはまったく思いません。理不尽を感じなくなるほうが不幸です。ただ、そのなかで親子で寄り添った時間は大きな宝物になると思います。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2020年08月05日子どものサッカーでの心配事の一つがケガ。特に今年は新型コロナウイルスの影響で休校、チーム活動停止が長引いたこともあり、活動再開をしている今もケガの心配をしている保護者は多いでしょう。海外では全体練習の前に個別のケガ予防策をとっているチームもあります。イングランドプレミアリーグ、クリスタルパレスFCのトップチームのコーチ、デイブ・レディントン氏にお話を伺いました。前編では、長期休暇明けの練習のポイントや、選手の疲労チェックなどをお送りします。(取材・文・写真:末弘健太/BAREFOOT)子どもたちには形だけ整えたトレーニングでなく飽きないような工夫をしてあげる方が良いとデイブ氏は言います(写真は少年サッカーのイメージ)■疲労を可視化してケガ予防対策を取っている――日本ではイギリスより早くサッカーが再開され始めましたが、イギリスではどうやって活動が再開されていったのか、他国の施策に興味を持っています。クリスタルパレスのトップチームはどのようにトレーニング強度を高めていったのでしょうか?まず、ロックダウン中は、選手各自にトレーニングプログラムが配られ、そのプログラムを消化していきました。GPSでトラッキングできるようになっていたので、データが毎日アップロードされ、週の終わりには大きなスプレッドシートが送られてきて、選手が何をしたか、どのような状態だったかが把握することができました。チームとして活動を再開する際は、政府のガイドラインに沿って練習を再開していく必要がありました。1ピッチに4人の選手まで入ることができ、3つのグループに分かれていたのですが、 各グループごとに練習時間帯が違うので、2ピッチ、3グループで練習時間帯を変えて練習しました。トレーニング中もソーシャルディスタンシング(2m)を保つ必要があり、最初の3つまたは4つのセッションでは、有酸素運動を多く取り入れて、心肺持久力を高めていく作業となりました。そして、おそらく6回ほどのセッションを経て、ステージ2に移行し、ボディコンタクトを伴うトレーニングが可能になりました。もちろんステージ2に移行する前に政府からその旨の発表がなされています。この時点からトレーニング強度を上げていきました。このような流れは各国同じではないでしょうか。――トレーニング強度を上げる際に、何か基準はあったのでしょうか?決まった基準というものはなく、その選手のケガ歴やロックダウン中の様子などを考慮して決めていきました。なので、チーム全員をそれぞれ見ていく必要があります。トレーニング中、例えばある選手がケガのリスクが高いと判断されます。そうしたらトレーニング中だとしてもその選手をトレーニングから外し、若い選手を入れます。毎朝、プレーヤーはスクイーズテスト(筋肉を圧迫して状態を確かめるテスト)を行い、疲労がどの部分に溜まっているか視覚的に見ることができます。スクイーズテストの結果が低いと、その選手はケガのリスクが高いということになります。その結果を毎朝のミーティングで各スタッフと話し合い、トレーニングプログラムを修正する必要がある場合は都度見直していきます。■形だけのトレーニングより子どもたちの心を刺激するような工夫を――ロックダウン解除後にケガをした選手はいますか?いませんでした。元々ケガをしていた選手がリハビリから何人か戻ってきました。ロックダウン中にケガをしてしまった選手が1名いて、リハビリ用に設定されていたプログラムをしていました。この辺りはこちら側にもコントロールできないので仕方ありません。今のところロックダウン解除後のケガ人は出ていませんが、リーグが再開されると週に3試合あるので、できるだけ多くの選手が試合に出られるような状態にしておくことが大切になります。そのため、それぞれの選手のプレー時間の管理などもしっかりとおこなう必要がありますね。――では、ローカルクラブでも徐々に強度を高めていく必要がありますか?年代によりますね。低年齢の選手の方が関節が柔らかくて可動域が広く、筋肉量も少ないので、いきなり動き始めてもケガをするリスクが低いため、低年齢であればあるほど、通常と同じようなトレーニングをしても問題ないかと思います。カテゴリーが上がるにつれてボールを使ったサーキットトレーニング(俊敏性、アジリティ、技術系トレーニングを組み合わせて短時間で行うメニュー)などを取り入れるなどして、トレーニング強度に気を付けながらフィジカルレベルを元に戻していく必要があります。私が現在指導している選手は全員プロ選手ですのでトレーニングの意図を理解できるし、自分のフィジカルレベルをどこまで引き上げなければいけないかわかっています。低年齢の子どもにサーキットトレーニングをしてもすぐに飽きてしまうと思うので、コーチが工夫をしなければいけません。しかもソーシャルディスタンシングを保つことも忘れてはいけませんからね。私が低年齢のプレーヤーを指導していた頃は、できるだけゴールを設置してシュートを打てるようなトレーニングにしていました。なので、低年齢のプレーヤーには、サーキットトレーニングなどをしてフィジカルレベルを戻すような作業は必要ないかと私は思います。サーキットトレーニング本来の意味も持たせることができないし、子どもも刺激が足りなくなってしまうからです。もちろん低年齢のプレーヤーもサーキットトレーニングをやっても全然良いとは思いますが、私だったら対人トレーニングでないクロスからのシュート練習などから始めます。ただ、ここでも気を付けなければいけないポイントがあります。彼らは長い間サッカーから離れていたので、クロスやシュートなどの筋肉への負荷が一瞬で大きくかかる動作をしていたかどうか、また、その反復回数を見ていく必要がありますよね。同じ選手がずっとクロスを上げていないか、右足でも左足でもやっているか、この辺りはよく見ていく必要があります。こんな時はペアを作らせて、交互に役割を変えていくといいですね。コーチは選手を守るためにこれらのようなことを考えていかなければいけません。日本でもJクラブのドクターが急激に高負荷をかけるとケガのリスクが高まると忠告していますが、プレミアリーグのトップクラブのコーチであるデイブ氏も同様の指摘をしています。休んでいた分を取り返そうとするよりは、飽きずにできるようやる気を刺激してあげるようにしましょう。Dave Reddington(デイブ・レディントン)イングランドプレミアリーグ一部、クリスタルパレスのトップチームコーチ。クリスタルパレス、ワトフォードのアカデミーでコーチとしてのキャリアを積みジュニア~ユース年代まで指導。クリスタルパレスU23チームの監督からトップチームのコーチに就任した。BAREFOOT(ベアーフット)はロンドンに本社があるイングランドサッカー留学会社。選手や指導者、サッカービジネス留学などの個人プログラムも充実している一方、チームでのイングランド遠征も手配可能。長くイングランドのサッカー界に携わっていることから、サッカー関連の情報やノウハウ、クラブとの強い繋がりがある。BAREFOOTのホームページはこちら>>
2020年08月04日ゲームは好きだけど、複数人で協力するプレーがまだできない。一人でできるドリブル練習の方が集中できる子どもたち。U‐6世代ならそんなもの?今は個人のスキルを身につけさせた方がいいのか、それとも仲間との協力プレーを意識させる方法はある?と指導者よりご相談をいただきました。先日配信した、「日本での指導の順番が海外とは逆」という記事でお伝えした課題は、サッカーを始めたばかりの年代にも言えるのだそう。これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが送るアドバイスを参考にして、子どもたちに仲間と協力するプレーを意識づけてあげてください。(取材・文島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<ボールを蹴るのは上手いけど、手で投げたりキャッチが苦手な子が多い。全身をうまく使えるようになる方法を教えて<お父さんコーチからの質問>U‐6世代を指導している者です。まだまだ集中力が続かない年代なので、楽しんでもらうことをモットーにしているのですが、自分が得意でなかったり、あまり好きではないメニューになるとどうしても気が散りがちです。ゲームは好きですが、複数人で協力し合うプレーなどがまだまだ苦手で、一人でできるドリブルなどのほうが集中できるようです。この年代では個人のスキルを身につけさせることが先決でしょうか。仲間との協力を意識させるようになる練習やウォーミングアップなどがあれば教えてください。<池上さんのアドバイス>ご相談、ありがとうございます。いただいたメールを読んで、ジェフ時代にオシムさんに言われた言葉を思い出しました。当時私はジェフの普及事業として、ホームタウンにある小学校や幼稚園などを巡回して授業をする「サッカーおとどけ隊」の内容を考えていました。クラブハウスでスタッフと相談していると、オシムさんがやってきたので、「どんなことをしたらいいか考えている」と話したら、一言だけおっしゃいました。「子どもたちにサッカーのやり方を教えるのではなく、サッカーすることを教えなさい」と。■6歳でもプレーを止めて考える時間を与えようサッカーをするといえば、一番楽しいのはゲームです。ゲームをしながら、子どもがサッカーというスポーツを理解していく手助けをしてみましょう。この連載直近の回で「チームの底上げ」や「判断を伴う練習」というテーマでお伝えした、スペインリーグのビジャレアルの育成方法を憶えていますか?日本人コーチの佐伯夕利子さんが育成のトップで活躍されているこのクラブでは、子どもたちにゲームを楽しんでもらいながら、サッカーの成り立ちを理解(認知)させます。考えながら動くことは難しいので、その状況ではどんな選択肢があるかをわかってもらうために「一回止まって考えてみようよ」と呼びかけます。6歳でも、試合を止めて、一緒に考えてみます。一見すると、とても大変そうですが、少しずつやっていくと子どもとさまざまなコミュニケーションがとれるようになります。そんな時間をとれば少しずつ変わってきます。ビジャレアルは、これを3歳児からやっているのですから、日本の6歳児も十分できるはずです。私もこれを実践しています。大阪で「サッカープレーパーク」という無料のスクールを実施していますが、集まるとまずゲームです。様子を見ながら、プレーを止めて対話する時間をつくります。答えは言いません。「どうして、ここにいったの?」「なぜこうなったのかな?」周りを見ていなかった。パスするのを忘れた......ハッキリだったり、ぼそぼそだったり、いろんな声が聴こえてきます。子どもたちの意見は一切否定せず、私の意見も言います。「そうか。オッケー。コーチはね、こうするといいかなって思ったよ。そんなことも考えながらプレーしてごらん」詰問するような言い方ではなく、あくまでリラックスした状態で、伝わりやすい言葉を選んで話します。6歳くらいだと、ボール保持者にぶつかっていく子どももいます。「みんな、知ってる?ソーシャルディスタンス。あるよね?コロナに感染しないようにしてるよね。サッカーもそういうふうにしよう。サッカーの試合、思い出してみて!自分からぶつかっていく人はいないよね」子どもたちはゲラゲラ笑います。全員ではないにしろ、少しイメージできます。ディフェンスが間にいてパスができないとき、どうする?「ドリブルで少し移動してからパスを出す」そんな答えが出てきます。そうやって、子どもが自分で気づいて、自分で学んで理解していくと、パスが早く出始めたり、自分でひとりでドリブルでいってしまうことが減ったりします。■「パスした方がいい理由」を見つけられるように導くサッカープレーパークでは、小学1年生から中学1年生まで一緒にサッカーをします。ある日のこと。小学1年生でドリブルばかりする子がいました。サッカーの初心者では当然です。そこで止めて、私はみんなに声をかけました。「ねえ、君さ、自分の味方がだれか理解していますか?えっと、この子の味方の人?」周りにいた子が一斉に手を挙げました。「ほら、こんなにいるよ」ドリブルをしていた6歳の小学1年生に尋ねます。「君はドリブルしていたね。コーチが前にいたね。右のほうに味方がいるよね。ドリブルをしていた君は、コーチにボールをとられたね。どう?味方にパスする?ドリブルする?どっちのほうがいいと思う?」すると、次にボールをもったとき、その子はドリブルをしながら周りを見たのです。パスもするようになりました。このように頭で理解をさせるのが非常に大切です。コーチの方は子どもたちに「パスしろ!」と言いますが、どうしてパスしたほうがいいのかを子どもたちは理解していません。「ああ、だからパスしたほうがいいんだ!」と子どもたちが納得できるように、その答えを自分で見つけられるような指導をコーチのほうもしていません。そういった指導でも、もし子どもがパスしたとしたら、それはパスをしないと怒られてしまうからだと私は思います。私の孫はいま小学3年生です。先日、通っているサッカースクールの子たちでチームを作って大会に出ました。全員顔見知りではなく、互いに恥ずかしがっていました。孫は特に内気な子で、コーチにベンチから大声で名前を呼ばれるとびっくりしてミスをしてしまいます。ほとんどがポジションが悪くて失敗するのですが、それが重なるとどんどん下を向いていきます。その大会の後、私のプレーパークにもやってきました。私は子どもたちに「ナイス」「お、いいね」とほめることしかしないので、帰宅後に「今日はいっぱいほめられて楽しかった」と母親である私の娘に言ったそうです。リラックスして楽しくプレーしていれば、いいプレーはたくさん出て来るようになります。■褒めながらプレーの幅を広げていく声かけ(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)ご相談者様いわく「協力し合うプレーなどがまだまだ苦手」とのことですが、少しでもみんなで協力してできたことがあったらほめてください。自分でドリブルしてうまくできたことを「すごいね」などとほめてしまうと、それだけしかできなくなります。「ドリブルうまいね。良かったよ。でも、こんなときはどうする?」そんなふうにプレーの幅を広げていくことが指導者の役目です。これまでは、6歳や小学校低学年は個人のスキルを身につけることに重点が置かれていました。でも、決してそうじゃないことがわかっています。みんなでサッカーをすることがどういうことなのか。ここをぜひ理解させましょう。池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2020年07月31日"コロナ自粛"の影響で、スポーツ界にオンライントレーニングが広がりました。場所を問わず、フィジカルトレーニングができる便利さが受け、多くの選手やチームが取り入れています。ですが、正しく行えていないとケガのリスクもあるのだとか。そこで、日本サッカー協会のスポーツ医学委員でJクラブのドクターも務める大塚一寛先生(上尾総合病院スポーツ医学センター長)に「オンライントレーニングをする際に気をつけたいこと」について、話をうかがいました。(取材・文:鈴木智之)上手くなるために大事なのはケガしないことと正しい姿勢でトレーニングすること(写真は少年サッカーのイメージ)■アライメントが崩れているとオスグッド→シンスプリントなど芋づる式にケガをする可能性大塚先生がまず強調したのが「正しい姿勢でトレーニングを行うことの大切さ」です。オンライントレーニングは一気に身近になりましたが、痛みの発生につながることもあるので注意しなければなりません。「正しい姿勢でトレーニングをしないと、体が"代償"を覚えてしまいます。代償とは、代わりとなる部位の筋肉が動くことで、本来鍛えたい箇所に負荷がかからなくなり、トレーニング効果が得られません。画面を見て、ただ『型』をマネするような形になってしまうので気をつけましょう」と、間違った姿勢でトレーニングすることのリスクを教えてくれました。ジュニア年代でも、オンライントレーニングでフィジカルに刺激を与える取り組みを、たくさんのチーム、指導者が実施しています。サカイク編集部にも「何歳から筋トレをしたほうがいいですか?」という質問が届くなど、保護者の関心が高いジュニア年代での筋トレの情報。ですが、大塚先生は「ジュニア年代であればまずは正しい動きづくり、いわゆる"アライメント"を高めるトレーニングをする方が良いと思います」とアドバイスを送ります。アライメントとは骨、軟骨、間接の配置のことで身体の連動性にも影響します。たとえばシュートを打つときは、ボールに直接触れるのは足ですが、両手を振って、上半身と下半身をねじって、パワーを生み出して、足をボールに当てるという動作をします。この上半身と下半身の連動性、各パーツの動きが連続して行われることがケガをしないために大事なことなのです。「アライメントが崩れていると、慢性障害(痛み)につながる恐れがあります。そうすると、コンスタントにピッチに立てなくなってしまいます。とくに、神経系が発達する"ゴールデンエイジ"と言われる時期の、8歳~12歳前後の子どもたちはボールを蹴ることで感覚を身につけることが大事なので、筋トレではなくアライメントを含めた身体の使い方を身につけることに意識を向けると良いと思います」ケガを未然に防ぐことで、常に練習に取り組むことができ、技術や体力面のレベルアップにつながります。大きく伸びると言われているゴールデンエイジの貴重な時間を、ケガで棒に振ってしまうのはとてももったいないことです。「バランス能力やアライメントが悪いと、小学生の時にオスグッドになり、中学生になってシンスプリントになるなど、芋づる式にケガをしてしまう恐れもあります。アライメントが悪い影響で、身体の至るところに負荷がかかっているのです。元の部分を改善していかないと、痛みが出るたびに治療をしても、根本的な解決にはなりません」■体のバランスを整えるのは「サッカー以前」のことアライメントが大切なのは、子どもだけではありません。大塚先生が日ごろ接している、プロ選手でも、入団したばかりの若い選手はアライメントに改善の余地がある選手がいるそうです。「例えば、あるプロ選手に片足立ちのスクワットをやらせると、片方に傾いて、まっすぐできないことがありました。これがアライメントが良くない状態、つまり機能不全です。選手としてはすごくまずい状態ですよね。アスリートではない私がその選手とおしくらまんじゅうをすると、簡単に勝つことができました」その選手は空中戦やハイボールには強い一方で、相手を背負ってプレーする際には、アライメントが良くないので苦戦していたそうです。「繰り返しお伝えしているとおり、身体のバランスが悪いのでグロインペインなど、股関節周辺のケガをよくしていました。私からすると、プロ選手であるにも関わらず、サッカーをする以前の状態と言えます。それから、アライメント向上のトレーニングに取り組んだことで動きが改善され、いまでは大活躍しています」ジュニア年代から動きづくりに取り組んでいたら、早い段階から上のレベルに到達できたかもしれません。■筋トレなどフィジカルトレーニングは16歳以上で十分「男の子の場合、技術面に関しては、16歳ごろまではやればうやるだけうまくなります。一方で、それ以降の伸びしろは5%ほどしかないと言われています。だからこそ、ジュニア年代から16歳ごろまでは、ケガをせずに、コンスタントにピッチに立つための身体作りが大切なのです」さらに、こうアドバイスを送ります。「その意味でも、指導者の方々は、子どもたちがケガをせず、ピッチに立てるようにしてあげてほしいです。フィジカルトレーニングは16歳以降に取り組んでも、十分に間に合います。ボールテクニックや、ラダーを使って動きの敏捷性を高めるトレーニングなど、ゴールデンエイジのときにするからこそ、より効果的なトレーニングはたくさんあると思います」次回の記事では、正しい姿勢でトレーニングする際に、保護者がチェックすべきポイントについて紹介します。大塚一寛(おおつか・かずひろ)医師、上尾中央総合病院整形外科・スポーツ医学センター長。1999年からJクラブのドクターとしてチームとともに帯同を続けている。そのほか、『日本サッカー協会スポーツ医学委員』や、『Jリーグチームドクター会議部部会長』を務める。多数の講演にも出演し、現場のノウハウや選手のケガ、障害予防などの啓発活動も積極的に行っている。上尾中央総合病院・スポーツ医学センター日本サッカー協会スポーツ医学医員
2020年07月28日千葉県の流通経済大学付属柏高校をサッカー強豪にし、高校サッカー選手権や高校総体で複数回の全国制覇を達成した本田裕一郎さん。これまで45年にわたって高校サッカー部の監督として育成に携わり、73歳の今なお新たな挑戦に挑んでいる名将に伺う、今だからこそ若い指導者に伝えたいこと。後編では、世界中が困難に直面しているからこそ、今、あえて言いたいことを語っていただきました。(取材・文:元川悦子)国士館高校サッカー部(2020年3月19日撮影)<<前編:選手の情熱を掻き立てるのが指導者の務め、全国制覇複数回の元流経柏・本田裕一郎監督が語る目標達成への「早道」とは■「真似る」のは良い指導者になる第一条件新型コロナウイルスの感染拡大でユース年代の活動が制限される中、選手の行動調査を行ったり、自宅で最新の指導法や戦術を勉強をしたりと、本田裕一郎先生は先を見据えた準備に余念がありません。昨年まで指導していた流通経済大学柏高校時代も毎年のように欧州に出かけて最新のトレーニング方法を持ち帰っていました。2018年夏にはGPSを導入し、走行距離やスプリント回数を計測。2019年1月の第97回高校サッカー選手権準優勝の原動力とした実績もあります。このように本田先生はつねに情熱を持って新たなことを取り入れようと努めています。自身を「カメレオン」と称するように、年齢に関係なくいいものは取り入れ、若い指導者から学び、誤りは正すという潔さを備えているからこそ、73歳になろうというタイミングで、4度目の新天地に赴くことができたのでしょう。「国士舘に来てから痛感することですが、若い指導者はチーム運営に忙殺されています。今は上野晃慈監督ら8人に加え、大学生コーチを含めて10人で180人もの選手をマネージメントしていますが、それだけでも本当に大変。そういう状況下でも、私のような人間が来ることで新たな刺激を受けてもらえれば、彼らにとっても活性化になるのかなと感じます。私自身も経験ある指導者に学びながらここまでやってきました。市原緑にいた若い頃は飲めないお酒を飲んで静岡学園の井田勝通さんや島原商の小嶺忠敏先生(現長崎総合科学大学付属)に近づいてノウハウを盗んだものです。人のことを真似るというのはいい指導者になる第一条件。お茶の世界の『守破離』もそうですけど、最初は徹底的に真似るところから始まります。完ぺきにコピーできるようになって初めて応用段階に入れるし、オリジナリティも出せます。『ただの物真似』と言われてもいいですから、人からもっと学んだほうがいいと私は思いますね」■環境の不備を言い訳にしていたら、いつまでも成功できない本田先生の教え子である尚志高校(福島県)の仲村浩二監督、昌平高校(埼玉県)の藤島崇之監督も恩師が目指したテクニックと創造性溢れるサッカーをベースにして経験を重ね、自分らしさを模索していきました。そうやって「経験者に学びながら新しいものを追求していくんだ」という意識を持った指導者が優れたコーチになれると本田先生は考えているのです。「今の時代は情報過多で、いつでもどこでも世界のトップレベルのクラブでやっている練習方法を知ることができます。若い指導者は『盗む前に教えられている状態』と言ってもいいかもしれない。『野鴨も先に餌をやると食べる方法を覚えない』と言いますから、人間も同じかもしれない。飢えている指導者の方が強く求めていくのでしょう。今の時代、ゼロからチームを作り上げるというのは簡単なことじゃないですし、そういう環境にも巡り合えるとは限りませんけれど、『自分が作り上げるんだ』という強い情熱を持った人間が成功できると私は考えます。京セラの創業者である稲森和夫さんが『思い邪なし(よこしまなし)』という本を出されていますが、素直な心でひたむきに前進することの大切さは全ての世界で通用するのではないでしょうか」もちろん全てのサッカークラブの環境が整っているわけはありません。沢山の選手を1人で教えなければいけない指導者もいれば、サッカーコート1面も満足に使えないチームもあるでしょう。そんな環境の不備を言い訳にしていたら、いつまで経っても成功は手にできません。あえて困難に挑んでいくくらいのタフなメンタリティを持ってほしいと本田先生は力強くアドバイスしています。「『ウチはいい人材が来ないから勝てない』と言っている指導者をよく見ますけど、そのことを嘆いているだけでは進歩はないと思います。私も市原緑の頃は弱小チームでしたし、千葉のトップレベルの中学生を送ってもらえるような状況ではなかった。少しずつグランドを作り、選手集めに回り、宮沢ミッシェル(解説者)や石井正忠(現タイ・サムットプラカーン監督)のような選手が来てくれるようになりました。習志野の頃も前任者が辞めてから2~3年経っていたので、チームの規律がなくなっていて、立て直すのに苦労しました。流経も全くのゼロからのスタートで寮を作るところから選手の勧誘まで自分で取り組みました。そうやって環境を変えるような努力を続けて今に至ったのです。家庭のことを振り返ると、私の家族は被害者だったと反省していますが、そのくらいの覚悟を持って取り組まなければ頂点には立てないのではないかと。そこまでやっても私も常勝にはなれませんでした。少し古い考え方かもしれませんが、オンとオフを器用に分けるような指導者では難しいのかなとも思っています」■いくつになっても挑戦し続ける姿を若い指導者に見せる今年に入って、新型コロナウイルスの問題も重なり、全ての指導者が苦しんでいます。子どもたちを高いレベルに引き上げることよりも、安心安全を第一に考えて行動しなければならないのも確かでしょう。そういう時でも落ち着いて生徒の状態を把握し、手洗いとうがいを徹底させ、自分でできるトレーニングを与えてチェック体制も構築するといった工夫も重要になってくるでしょう。厳しい状況の中でも若い指導者を育てることを本田先生は今の最重要テーマだと考えています。新天地・国士舘では自分の長年の経験を全て駆使して、取り組んでいく構えだといいます。「今年は思うような活動ができなくて、チーム強化に遅れが出ているのは確かです。それをどう取り返していくかがこれからの大きな課題になります。転んでもただで起きないようなアプローチを上野監督や若いコーチと一緒になって考えていきたい。私自身もまだまだ成長できると思っていますし、いいチャンスだと捉えて頑張ろうと思います。世界中が困難に直面しているからこそ、今、あえて言いたいことがあります。まず夢を描きましょう。描けなければ夢ではない。妄想です。夢を描いたら、それに近づく目標を、期限つきで考えなさい。そして、目標を持ったらやりなさい。少し頑張れば可能な目標、それより少し高い目標を少しずつ達成していくことが大事。諦めたら、終わりです。前向きに取り組んでいきましょう。そんなことを自分にも言い聞かせていきます」飽くなき情熱を持って挑戦し続けることの重要性を示している本田先生。そのポジティブ志向と積極性を多くの人々に学んでほしいものです。<<前編:選手の情熱を掻き立てるのが指導者の務め、全国制覇複数回の元流経柏・本田裕一郎監督が語る目標達成への「早道」とは本田裕一郎(ほんだ・ゆういちろう)1947年5月1日、静岡県生まれ。順天堂大卒業後、千葉県市原市教育委員会を経て、75年に千葉県立市原緑高校サッカー部監督に就任し佐々木雅尚、宮澤ミシェル、石井正忠らを指導。その後86年に習志野高に転勤し福田健二、広山望、玉田圭司らを指導し、95年のインターハイで初の日本一に。2001年より流通経済大柏高に赴任し、2007年の全日本ユースを皮切りに5度の全国制覇を成し遂げた。2020年4月より国士舘高サッカー部のスーパーバイザーに就任。指導者としてだけでなく高円宮杯U-18サッカーリーグの前身である関東スーパーリーグの立ち上げなど高校サッカーの発展に大きくかかわっている。
2020年07月27日所属したチームのコーチが上手い子とそうでない子をあからさまに差別するので、自信を失ってチームを退団したが、数か月たっても自信が回復しない。サッカーが嫌いになったわけではなさそうだけど、今はほとんどボールも触らないし、こんなときはどうすればいい?子どもに合うチームを探すか、他の道を探すべきか迷っている。というお母さんからご相談です。みなさんならどうしますか?今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、取材で得た知見をもとに3つのアドバイスを授けますので参考にしてください。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<お前いらなくない?と中傷される中学生のクラブ内いじめ問題<サッカーママからのご相談>小四の息子がいます。運動神経は良い方ではありません。一年から、スクールで遊び程度にサッカーをはじめ、昨年から本人の上手くなりたいという気持ちからチームに入りました。その際にスクールは退会しています。しかしながら、自分から入りたいと言ったのにチームに入団して半年経っても自分から練習をしたりせず、親が言って練習するような状態でした。ですが、しばらくすると自分が成長している実感が出てきたのか、前向きに取り組む様になりました。ようやくやる気を出してくれたと思っていたのですが、所属したチームのコーチが上手な子とそうでない子をあからさまに差別する対応をとることもあり、自信を失ってチームを辞める事となりました。数か月たちますが未だに自信が回復しません。サッカー自体を嫌いになったわけではないようですが、今はスクールにも行っていないし、時々、本当に時々ボールを触るぐらいです。こんな時は、子どもに合いそうなチームを見つけて続けさせるべきなのか、サッカーは辞めて他の道を一緒に探すのが良いのかとても迷っています。なにかアドバイス頂けたら幸いです。<島沢さんのアドバイス>ご相談のメールをいただき、ありがとうございます。短いお便りだけなので、正確に把握できないかもしれません。そこを踏まえてお聴きください。■選択肢を限定しているのでは?ご相談のメールから、お母さんはいま、息子さんのことをあまり認める気分ではないのかな?という印象を受けました。「自分から入りたいと言ったのにチームに入団して半年経っても自分から練習をしたりせず、親が言って練習するような状態でした」「今はスクールにも行っていないし、時々、本当に時々ボールを触るぐらいです」そのような言葉から推測するに、息子さんに対して「なんだかなあ」と残念に感じているのではありませんか?間違っていたらすみません。でも、誤解しないでくださいね。お母さんを責めているのではありません。お気持ち、非常にわかります。もっと前向きにやってよ。やる気出してよ。シャキッとしてよ。子どもに対して、そんなふうに思うこと、ありますよね。私にもよくありました。何かに付け、「もう、本当に不甲斐ない!」と思っていました。お母さんがそんなふうに残念な気持ちでいるときに、お母さんだけの思惑で動くのは危険です。お母さん自身が「この状態を早く何とかしたい」と焦ってしまい、冷静に行動できないかもしれません。親が冷静に動けないときはほとんどの場合、子どもの意思や気持ちを尊重できていません。すでにお母さんは「こんな時は、子どもに合いそうなチームを見つけて続けさせるべきなのか、サッカーは辞めて他の道を一緒に探すのが良いのか」と選択肢を限定して、焦っている様子がうかがえます。では、どうしたらいいか。三つアドバイスさせてください。■声に出していなくてもお母さんからの無言の圧力を感じているはずひとつめ。立ち止まってください。お母さんの息子さんへのネガティブな気持ちを、まずは鎮めましょう。スクールにも行かず、自分でボールを蹴るくらいの息子さんが気になるようですが、「息子とサッカーにまつわること」をとにかく気にしない。見ない、聞かない。そう決心して、なるべくサッカー以外のことで息子さんとつながってください。一緒に何か作って食べる。家で映画を見る。同じ本を読む。一緒にゲームをする。何でもいいです。それも難しければ、一時的に息子さん以外のことで自分を忙しくしてください。首都圏などにお住まいならまだコロナの影響で動きづらい状態ですが、そのなかで自分の趣味や好きなことを見つけてください。子育て以外のことに熱中しましょう。そんなふうにお母さんの視線が息子さんから離れることは、彼自身にとってもいい影響を及ぼすはずです。サッカー、どうするの?もうやめるの?続けないの?もし声に出していなかったとしても、息子さんはお母さんからの無言の圧力を感じているはずです(本人に自覚がなかったとしても)。そこから解放されれば、彼自身にも余裕が生まれます。いまは親子ともに精神的な余裕がない状態だと考えられます。すでにお伝えしましたが、そんなときはあまり新しいことを始めたり、決断をしないほうがいいと思います。■自分で決めなさい、と言いながら親が誘導していないかふたつめ。これまでの子育てを少し見直してみましょう。ご相談文に、「所属したチームのコーチが上手な子とそうでない子をあからさまに差別する対応をとることもあり、自信を失ってチームを辞めた」とありましたが、これは、息子さんが「差別だよ。こんなチームにはいたくない。とりあえずやめる」と強く主張し、自分から決心して退団したのでしょうか?もし、お母さんが「もうやめたら?」と働きかけていたとしたら、少しばかり過干渉な部分がなかったか、考えてみてください。この連載で何度か書きましたが、あれこれと世話を焼くことは、過度になると「転ばぬ先の杖」になってしまいます。大人が世話を焼くことは、子どもが自分で考えたり、決心して自分から動く機会を奪います。失敗もしないし、子どもも何も考えなくていいので楽ですが、そこに成長はありません。杖があると、足腰は鍛えられないのです。そして、注意すべきは「自分で決めなさい」と言いながら、「こうしたらいいのに」「これがいいと思うけど」と誘導している場合です。これは私自身もここに気づくのに時間がかかりました。主体的に動く人間になってほしいと思いながら、いつの間にかうまくいくよう誘導していました。ところが、親が「良かれと思って」動くと、あまりうまくいきません。したがって、親は放置する勇気を持たなくてはいけません。私の子どもは二人ともすでに大学生です。今思えば、放置できてこそ、親になれるのかなという気がします。■待っていても子どもが動き出さなかったら?(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)最後、三つめは、お子さんの気持ちを考えること。ご自分の焦りや感情に向き合うのではなく、「いま、この子はどんな気持ちなんだろう?」と考えてみてください。好きで始めたサッカーがうまくいかなかった。息子さんは大いに傷ついているはずです。傷を癒せるよう、少し休ませてあげてください。「せっかく頑張ろうとしていた矢先だったのに残念だったね。でも、また他のところでやってもいいし、サッカー以外のことをしてもいいよ。いつも応援してるよ」そんな言葉をかけてあげてください。そして、息子さんが自分から動き出すのを待ってください。なかなか動き出さなかったら?もう一度、「いま、この子はどんな気持ちなんだろう?」と観察してください。動き出すペースは人それぞれです。お母さんのペースを押し付けず、「放置する勇気」を奮い起こしましょう。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2020年07月22日全体的に足元の技術は高いけど、勝負のタイミングでバックパスを選択したり、確実に勝てそうなポイントでしか仕掛けない。「判断力」を養うにはどうすればいいの?というご質問をいただきました。池上さんは、前回の内容でお伝えした、日本での指導の順番が海外とは逆で細かな基本技術から入る事による日本サッカーの課題に通ずると言います。子ども達に判断を伴うプレーを身につけさせるためにはどうすればいいか、スペイン・ビジャレアルFCの育成組織で指導されている日本人コーチのお話なども交えてご紹介します。これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが送るアドバイスを参考にして、子ども達の判断力を養う指導を実践してみてください。(取材・文島沢優子)(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)<<足元の技術はあるけど勝負のタイミングで判断できない。判断力をつけるためには何をすればいい?<お父さんコーチからの質問>私は街クラブで小1~小4を指導しています。年代により伸びやすい能力があると聞きましたが、今指導している年代で伸びる能力と、おすすめのトレーニングメニューを教えていただけませんか。また、兄弟の影響などで未就学児からサッカーをしている子も何人かいて、足でボールを扱う技術はあると思うのですが、手でボールを投げたりキャッチするような動きは得意でなかったりします。サッカーの技術だけでなく、ほかの運動や遊び経験から得られる動き、身体を自在に動かせることなども大事だと思うのですが、楽しんでできるメニューなどもあればお聞きしたいです。<池上さんのアドバイス>ご相談、ありがとうございます。サッカー少年で、ボールをうまく投げられない子どもが多いという話はよく聞きます。この連載でも、昨年2月に掲載された「ボールが投げられない、腰より高いボールが怖い子どもたちが飽きずにできる動きを教えて」という記事で、類似した相談を受けています。そのときにも紹介していますが、練習の中に「バルシューレ」を取り入れることを勧めています。■サッカーの要素もたくさん含まれる「バルシューレ」「バルシューレ」とは直訳すると「ボールスクール」(Ball school)。ボールゲーム教室という意味ですが、実際は子どものための運動プログラムのことです。ドイツのハイデルベルク大学スポーツ科学研究所で開発されました。ほとんどが試合形式なので、子どもたちは楽しく入っていけます。野球のボールからバランスボールまで、大小さまざまなボールを扱います。私もバルシューレのテキストを持っていて、そこから選んだメニューでトレーニングの導入部分などに活用しています。子どものボールゲーム導入プログラム(特定非営利活動法人・バルシューレジャパンのページにリンクします)また、バルシューレには、サッカーの要素がたくさん含まれます。例えば、ネット越しでボールを使ったパス交換をした後は、それを「足でやってみよう」という展開になったりします。ボールを相手の体に当てる鬼ごっこもあります。手で当てるときは、当たっても痛くないよう風船を使います。それを足でもやります。いわゆる発展形ですね。そのように発展させるのは、手も足も使うことで身体の機能がバランス良く高めるためでしょう。■身体をイメージ通りに動かすことができれば全体的なプレーの質もアップ身体の神経系は小さなときからどんどん鍛えられます。どんなスポーツも、自分が思った通りに動けるよう、バランスよく体の機能を向上させなくてはいけません。これが「コーディネーション」です。自分の体をイメージ通りに動かすことができれば、スキルはもちろん全体的なプレーの質もアップします。そこから、もっと素早く動く、もっと高く跳ぶ、もっと強く蹴るといったことができるようになるのです。さらにいえば、バルシューレがいいのは、遊び感覚でやっているあいだにいろいろな能力が身につく点です。そして、それはあくまでも手取り足取り教えられてやるものではなく、基本的に「自己学習」です。例えば、手でボールを「投げる」という動作は、子どもが自由にどんどん投げていくことで、自分でいろんな動きを獲得していきます。遊びの中で、どんどん投げていると、勝手にフォームが良くなると言います。教えられたわけでもないのに、なぜそうなるかは、研究の結果でも明らかになっています。つまり、根拠があるわけです。■サッカーは「どう蹴るか」が目的ではない一方で、指導者の皆さんの多くは、練習メニューが気になるようです。練習メニューや練習のやり方を一生懸命学ばれています。「基礎基本」をとても大事にします。ですが、サッカーは「どう蹴るか」が目的ではなく、どんなタイミングでどんなボールを蹴ってチャンスにするかが重要です。蹴り方は自由でいい。そこから少しずつ選手自身が修正していくものだと考えます。もっと自由な発想をしていきましょう。バルシューレにも、そんな自由な要素がちりばめられています。サッカーのメニューばかりを追い求めずに、バルシューレの成り立ちを学んでみましょう。ご相談者様が「子どもが手を使えない」ことに注目してくださったことは、素晴らしいと感じます。キーパー以外は足でプレー出来れば十分だと思われる方もいらっしゃるかもしれません。でも、前述したように、全身のコーディネーションという側面から考えると、バルシューレを活用して投げる動作をたくさんやることはサッカーの上達にもつながります。■最近推奨されている「ダブルスポーツ」とは(写真はサカイクキャンプ。お互いにボールを投げ、キャッチする練習)もっといえば、サッカーの上達しか考えられないのは、もったいないと思います。スポーツする意味は、スポーツによって人生を豊かにできるからです。サッカーならサッカーばかり。野球なら野球だけしかしない。そんな子が日本では目立ちますが、いまは「ダブルスポーツ」といって、シーズナブルに複数のスポーツをすることが奨励されています。ひとつの種目だけしているとほかのことができないのは、あまり幸せではありません。Jリーグのジュニアユースチームのなかには、家族旅行をしたことがない選手や、海水浴に行ったことがない子どもがいっぱいいました。つまり、サッカー漬けなのです。それでは、その人のスポーツ人生は豊かとはいえません。サッカーの練習のみではなく、今日はバルシューレ、週末はチームでハイキングに行く、そんな将来だと、とても豊かになりますね。池上正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさいサッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。
2020年07月17日スカウトが見るポイントは技術だけではない。早熟、晩熟傾向などの成長スピードや、何より人間性を含めたポテンシャルであることを前編でお送りしました。プレミアリーグのトッテナムやイングランドサッカー協会のスカウト責任者を歴任するなどたくさんの育成年代の選手を発掘してきたベテランスカウト、リチャード・アレン氏に、後編では成功している選手の保護者が行っているサポートの具体例などを伺いました。(取材・文・写真:末弘健太/BAREFOOT)ベテランスカウト、リチャード・アレン氏が語る、スカウトの際に技術以外でチェックすることとは■プレーしている時には見えない部分も大事――スカウティングをする際に社会性や精神面にもフォーカスを当てるとおっしゃっていましたが、ピッチ外で選手が自分を高めるために何かできることはありますか?スカウトは試合会場に行き、ピッチ上で起きる事象を見ることになります。ただ試合が始まる前や終わった後の選手の言動も見ることができます。良いスカウトというのはただ試合を見に行くわけではなく、試合前後に起こることも全て見に行きます。そして彼らはできるだけ多くの情報を集めます。特に目では見られない情報ですね。例えばその選手はどんな性格なのかなどです。やはり、いつでも少しでも今の自分より良い選手になりたいという気持ちを常に持つことは大切ですよね。クリスティアーノ・ロナウドやリオネル・メッシなどの素晴らしい選手は常にこの気持ちを持ち続けています。その気持ちがあればチーム練習以外の時間で、もしフィジカル能力が足りなければそのトレーニングをするし、技術的に劣っていればそれを補うようにするはずです。もちろん選手がこのようなことをしているかはスカウトには見えにくいところなので、彼らがどのような人間なのか探るために、彼らをよく知る人に話を聞くことも非常に重要です。しっかり毎回の練習にコミットしているか、毎日自分をよくしようとしているか、必要があれば何かを犠牲にしてまでトレーニングができるか、などのメンタリティがあるかを確認します。私はそれをGood Characterと呼んでいますが、それはただの「いい子ちゃん」というわけではなく、トレーニングや試合の時に全身全霊でそれに取組めるメンタリティのことです。今の話が質問の答えになっているかわかりませんが、プレーをしている時だけ見える事象だけではなく、そこでは見えないことも、良い選手になるには非常に重要です。あとは選手のバックグランドも重要な要素ですね。両親が過去にアスリートだったかどうか、保護者が選手をしっかりとサポートしてくれているか、こういった細かいこともスカウトをする上で一つの判断材料にはなります。ある論文の中で、「適切な程度」のサポートを受けているアスリートは、過度にサポートを受けていたり、受けているサポートレベルが低いアスリートよりも成功しやすいというデータが出ています。――では保護者からのサポートというのは非常に大切ということですよね。そうです。ただ、ここは非常に気を付けなければいけません。もちろん過干渉はいけません。選手をサポートしてくれている周りの人にしっかりと責任を与え、モチベーションを高めてあげることは大切です。選手はそれぞれ家庭によって受けられるサポートのレベルが違い、トレーニングに行くのに車で送ってもらえる選手もいればバスなどの公共交通機関で向かう選手もいます。では保護者に活動場所まで送ってもらえる選手の方が成功するかと言うと、もちろんそうではなく、逆にバスで自分で通う経験が選手を成長させることもあります。ほとんどの成功している選手の保護者は、それが母子家庭だろうと父子家庭だろうと関係なく、親から、過干渉でもなく、放置されすぎているわけでもなく、適切な程度のサポートを受けています。親が子どもに自分の夢を押し付けるのではなく、選手の夢をサポートすることが大切です。■子どものモチベーションを下げないために気を付けること――具体的には保護者からはどのようなサポートが必要ですか?選手の年代によってサポートの種類は変わってくるかと思いますが、今お話したように、選手を支え続ける姿勢を貫くことがどの年代でも鍵になります。時に保護者は、親ではなく、コーチになりたがります。でも本来は、指導はコーチに任せ、サポートに徹するべきです。選手がうまくプレーできない時など、話を聞いてあげたり、寄り添ってあげたり、場合によっては背中を押してあげることも必要です。なので、特段「このサポートが必要」というのはなく、通常の親としての役割を普通にこなすということが大切だと思います。やはり選手がやりたくないと思っていることを、無理矢理やらせ始めたりすると問題が起こります。各家庭での子どもへのサポートは違っても当たり前ですが、うまくいかない時は励まし続けてあげましょう。物事を大きくとらえさせ、長期的に考えさせましょう。指導したり、やることを指示したり、プレーに口出ししたりしないようにしましょう。これをしてしまうと選手は混乱してしまいます。コーチの指示と親の指示も聞かなければいけなくなり、一貫性が無くなってしまいます。上手くプレー出来ていても出来ていなくても、何が起ころうともピッチサイドで笑顔で見届けてあげる。それが大切です。あなたが子どもの成長の願っても、全ての子どもが目指しているゴールまで辿り着けるわけではありません。もちろん全ての子どもにポテンシャルはあり、確実に成長しますし、自分のポテンシャルを超える子どももいます。ただし現実は、プロ選手になれる数はそこまで多くありません。トッププロ選手になるにはさらに数が限られます。それはどのスポーツにも当てはまります。さらには人生にも当てはまります。エリートとは限られた人にしかなれないからエリートと呼ばれるのです。色々な要素が相互的に作用しその選手を形成しますが、両親のサポートというのはその要素の一つにすぎません。ただその中で気を付けなければいけないのは、サッカーを強要したりすると選手はモチベーションを下げ、場合によってはサッカーをやめてしまいます。いかがでしょうか。サッカーが好きで頑張っているお子さんをサポートしたいのはどの親御さんも一緒だと思いますが、それが「無理やり」「強要」になってしまうとお子さんはサッカーを楽しめなくなってしまうのです。成長過程において常に右肩上がりで成長するものでもありません。停滞するとき、上手くいかない時もおおらかな気持ちで見守ってあげることが大事なのだとリチャード氏の言葉から気づかされます。Ricard Allen(リチャード・アレン)トッテナム・ホットスパーで6年間アカデミーのスカウティング部門の最高責任者を任され、ヨーロッパサッカー協会連合 (UEFA) やイングランドサッカー協会 (The FA) が開催するジュニアユースとユースのすべての大会で様々な国のトップクラブを視察。the FA Talent Identification in Footballコース (才能あるサッカー選手の選考) を欧州各国のプロフェッショナルクラブで開催し、スカウティングについての講義も開催。現在はラフバラ大学サッカー部門 ダイレクターを務めている。BAREFOOT(ベアーフット)はロンドンに本社があるイングランドサッカー留学会社。選手や指導者、サッカービジネス留学などの個人プログラムも充実している一方、チームでのイングランド遠征も手配可能。長くイングランドのサッカー界に携わっていることから、サッカー関連の情報やノウハウ、クラブとの強い繋がりがある。BAREFOOTのホームページはこちら>>
2020年07月15日千葉県の市原緑高校、習志野高校、流通経済大学付属柏高校をサッカー強豪にし、高校サッカー選手権や高校総体で複数回の全国制覇を達成した本田裕一郎さん。これまで45年にわたって高校サッカー部の監督として育成に携わり、今年からは国士舘高校でテクニカルアドバイザーに就任するなど今なお新たな挑戦に挑んでいる名将に、今だからこそ若い指導者に伝えたいことを伺いました。(取材・文:元川悦子)国士館高校サッカー部(2020年3月19日撮影)<<連載一覧:ベテランの金言「言わずに死ねるか」-今だからこそ、若い指導者・保護者に伝えたい-■SNSツールの弊害がサッカーの現場にも千葉県の市原緑、習志野、流通経済柏で45年間にわたってユース年代の指導に携わり、高校サッカー選手権や高校総体で複数回の全国制覇を達成しているのが、本田裕一郎先生です。2006年ドイツワールドカップ日本代表の玉田圭司(長崎)らを数多くのプロ選手を育てた名将は、2020年1月から国士舘高校でテクニカルアドバイザーに転身。新たなチャレンジに打って出ています。新天地ではトップチーム約30人を主に指導していますが、「笑ってグラウンドに立つ」と新たな目標を設定。明るく接しやすいイメージを作ろうと心掛けています。「練習前からしかめっ面だとチームのモチベーションは上がりません。そう気づいて、『今日は元気?』『目標は何?』とまず笑顔で選手に話しかけ、彼らの考えを聞くところからスタートするようになりました。昨年まで指導していた流経柏はAチームの9割方が『プロを目指す』という目標をハッキリと持っていましたが、国士舘の場合は『全国大会に行きたい』という子がほとんどで、プロを目指しているのは1~2割程度。それはそれでもちろんいいのですが、全国に行くためにやらなければいけない具体的なビジョンをうまく描けないのかなと感じます。それを自分から言葉にして説明できればいいんですけど、今の子どもはコミュニケーション不足なのか、何か聞いても一言二言で終わってしまう。それも目標達成の足かせになっていると思いますね」本田先生がコミュニケーション不足の最大要因だと考えるのがスマートフォンの普及。昨今は『LINE』などの通信アプリで簡単にやり取りできるので、子どもたちが言葉を発しなくていい環境になっています。それがサッカーの現場にも影響しているというのです。「日本人のよさというのは、挨拶や礼儀正しい行動、場の雰囲気を察知したり、相手の表情を見ながらうまく会話を運ぶことだと思うんです。しかし『LINE』だと単にスタンプを押すだけで意思疎通が成り立つ。そればかり多用していたら、目で会話をしたり、相手の思いを汲んで物事を進めていく力は身に付きません。人間関係も希薄になり、サッカーのようなチームスポーツをやるうえでは大きなマイナスになります。現場に立っていて2~3年前から生徒の質がだいぶ変わってきたなという印象を受けるので、我々指導者も工夫を凝らしていく必要があると思います」■選手自身が「何が必要か」に気づくことが一番の早道国士舘に来てからの本田先生は「生徒たちにより高い経験をさせてやりたい」とモチベーションを高めています。同時に「どうすれば全国大会出場へ導けるか」というテーマを真剣に模索し始めました。その一歩として、目標達成への道筋をより明確にさせるところから取り組もうとしています。「選手たちが全国に出るまでの段取りを探っていく中で『何が必要か』を自ら気づいてくれるのが一番の早道なんです。人によってはボールコントロール力やドリブル技術、シュートのスキルを磨かなければいけないという人間もいるでしょうし、走力やパワーが足りないと感じる人間もいるでしょう。個人レベルでもチームでもできることは沢山ある。そこに気づいて行動するように、指導者が仕向けていかないといけないと思います。子どもたちの『全国大会出場』への気持ちは同じでも、重さが100gから1kgになれば取り組み方は全然違ってくる。そうやって情熱をかきたてることが大事なんです。長年、子どもたちを教えてきた私が『全国はそんなに遠い目標じゃないんだ』と言えば『そうかな』と感じる生徒がいるかもしれない。そんな期待を持って、最初に話したように笑顔でグランドに入ることを心掛けたり、言い回しを工夫したりとトライを続けているところです」■高校サッカー部員の休校中の過ごし方、多かったのは......現在も連日感染のニュースが流れていますが、本田先生の新たなチャレンジが始まって約2か月が経過した今年2月末。新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化し、安倍晋三首相が全国一斉休校を要請しました。私立の国士舘も部活動休止に踏み切りました。練習は3月19日にいったん再開され、3月末までは2日に1度ペースで継続できていましたが、東京都から外出自粛要請が出た4月頭から再び活動を停止。少なくとも4月いっぱいまでは全員が自宅待機することになったのです。もともと「日本サッカー界もオフシーズンを設定すべき」と主張し、定期的な休みを取ることに前向きな本田先生にとっても、これは予期せぬ出来事。45年超の高校サッカー指導者人生の中でも初めてのアクシデントだと言っていいでしょう。そんな時だからこそ「選手のことをより知りたい」という思いが強まり、休部期間に彼らがどんな過ごし方をしていたかを調査してみたといいます。「2月末から3月19日までの約3週間に何をしていたかを尋ねたところ、1日の生活は睡眠が約8時間、食事は家族のいずれかととっている選手が多かったですね。ただ、勉強はほとんどしておらず、読書をしたと答えた者も皆無に近かった。スマホでSNSなどで流れてくるニュースを見る子もいましたけど、それを含めてもニュース記事などに目を通していたのは1日1時間以内。活字に触れる時間が極端に減っているなと考えさせられました。外出は1日5時間以内。外で走っていた者、ボールを触っていた選手、買い物に行った選手などさまざまでしたが、それ以外は外出自粛を意識して自宅にいたようです。その多くの時間を(ニュースチェック以外の)スマホ利用と向き合っていたというのはやはりもったいないと感じました。生徒の行動調査をしたのは私自身も初めてでしたが、練習がストップし、時間が空いたことで見えるものもありました。彼らの行動をしっかりと把握したうえで、再開後の部活動に役立てたいと思っています」こうやって目の前の事態を冷静に受け止め、臨機応変な対応を取り、先の段取りを考えていくのが本田先生流のやり方です。何度も全国制覇を達成し、数多くのプロ選手を輩出してきたベテランの発想力や行動力はやはり特筆すべき点でしょう。そこは多くの指導者に見習ってほしいところです。<<連載一覧:ベテランの金言「言わずに死ねるか」-今だからこそ、若い指導者・保護者に伝えたい-本田裕一郎(ほんだ・ゆういちろう)1947年5月1日、静岡県生まれ。順天堂大卒業後、千葉県市原市教育委員会を経て、75年に千葉県立市原緑高校サッカー部監督に就任し佐々木雅尚、宮澤ミシェル、石井正忠らを指導。その後86年に習志野高に転勤し福田健二、広山望、玉田圭司らを指導し、95年のインターハイで初の日本一に。2001年より流通経済大柏高に赴任し、2007年の全日本ユースを皮切りに5度の全国制覇を成し遂げた。2020年4月より国士舘高サッカー部のスーパーバイザーに就任。指導者としてだけでなく高円宮杯U-18サッカーリーグの前身である関東スーパーリーグの立ち上げなど高校サッカーの発展に大きくかかわっている。
2020年07月14日今年の夏休みは新型コロナウィルスの影響で短縮傾向と言われてます。短い休みだからこそ、より充実した時間にしませんか?一般的なサッカーキャンプでは技術の向上がメインですが、サカイクキャンプではサッカーの練習だけでなく、子どもたちが成長する際に身に付けたい「ライススキル」をプログラムに導入しています。なかなかチャレンジができなかった子が積極的になって帰ってきたと、親御さんからも好評です。キャンプでチャレンジを促すためにどのような工夫をしているか、サカイクキャンプの菊池健太コーチにお話を伺いました。(取材・文:前田陽子)クーラーボックスに氷を常備、いつでも適温の水分補給ができるよう準備しています<<【熱中症対策】子どもたちを守るためサカイクキャンプが実施する万全の対策-オンザピッチ編-■キャンプに参加すること自体が、子どもたちにとってはチャレンジサカイクキャンプは、初心者でもサッカーを始めて何年か経つ子でも誰でも参加できます。年齢を対象に分かれているので参加してくれる子どもたちのレベルは様々です。保護者の方にキャンプ参加の動機についてうかがうと「消極的でチャレンジができないので、キャンプを通してチャレンジすることを身につけてほしい」という声が多くあります。「キャンプは親元を離れて、まだ知らない友達やコーチ、初めての場所で生活するという大人でも大変なことだと思います。そこに参加してくれるということ自体、子どもたちにとってはチャレンジだと思います」と菊池コーチ。キャンプでは子どもたちの経験値などを見て、キャンプに慣れている子と初めての子にはそれぞれに合ったチャレンジを提案できるようにしているのだそうです。トレーニングでは、個々のキラリと光る部分を見つけてその部分を評価。自分のしたことを認められると、子どもたちはもっとチャレンジしようと頑張ります。最初の段階では得意なプレーを見せてもらい、「こういうこともするといいよね」と提案をしてその子の苦手なことでも取り組めるように促しています。■ミスした経験の少なさが、チャレンジの邪魔をする最近は、やる前から「絶対ムリ」「下手だから出来ない」とチャレンジする前からあきらめてしまう子もたくさんいるという声も聞きます。そうなってしまう要因のひとつは、ミスした経験の少なさです。親が先回りしすぎてミスした経験が少ないので、失敗に対する免疫がなく「どうしよう、どうしよう」という考えが頭の中に先行する子がたくさん見られるのです。チャレンジしてほしいと考えている親が、先回りして子どもがチャレンジする機会を奪っているのはとても残念なことですよね。また、サッカーの現場では指導者が指導をしすぎる点があるようだとコーチは言います。キャンプで練習していると、プレーが終わるたびにコーチの顔を見る子がよくいるのだとか。「指導者はミスを正してあげよう、欠点を補ってあげようとしているんだと思うんです。けれどそれではどうしても子どもたちは窮屈ですし、コーチは次に何を言うんだろうと顔色を見てしまいます。僕たちサカイクキャンプのコーチたちは常に笑顔を見せ、どんなプレーであっても『やるじゃん』という気持ちで子どもたちを見ています。いいタイミングでシュートを打っても入らないことはたくさんあります。シュートを外そうと思って打っている子はいないので、『いいシュートだったね。でもこうするといいよ』とひとつヒントを与えます。そのとき具体的にこうしろとは言いません。そうすると自分で考えて次にいいプレーをしてくれます。そんな声かけからチャレンジが出てくるかなと思います」と菊池コーチは言います。■サッカーはミスが多いスポーツ。キャンプではミスしてもいい雰囲気を意識サカイクキャンプでは最初にサッカーはミスが多いスポーツだということを子どもたちに伝えるのだとコーチは教えてくれました。先述したように、普段の生活の中で失敗経験の少ない現代の子どもたちは、チャレンジしようとすると「失敗したらどうしよう」という気持ちが先に立ってしまいます。コーチたちもその気持ちは理解しているので、キャンプでは「ミスしていいよ」という雰囲気を作るようにしているのだそうです。指導者はどうしても、パスが通らなかった、シュートが入らなかったという結果に着目してしまいますが、サカイクキャンプでは結果だけでなく過程も見ているといいます。「たとえシュートが決まらなくても、その子なりのちょっとしたチャレンジに良かったよと、Goodサインを出してあげるととてもいい笑顔を見せてくれます。そうやって過程を認めてあげることを続けていると自己肯定感が高まり、キャンプ2日目、3日目になると、僕らもびっくりするくらいいいプレーをしてくれるんです」と菊池コーチ。菊池コーチは、子どもたちのサッカーは上手い下手ではなく、経験が多いか少ないかだと考えているそう。「どうせ下手だから出来ない」ではなく、いろいろなことをやってみる。経験が積み重なってサッカーは上手くなっていきます。リフティングの出来る回数が3回から5回になった。そいういう経験をしてほしい。ボールを取られたら、取り返せばいい、シュートを外したら次に入れればいい。サッカーとはそういうスポーツだとコーチは語ります。■キャンプの主役は子どもたち。短期間でも必ず成長して帰りますご自身もサッカー少年の親でもある菊池コーチ。親の視点でもサカイクキャンプの魅力を語ってもらいました。「サカイクキャンプの主役は子どもたちです。子どもたちのことは、様々な面をしっかり見ていますが、大人が必要以上に手を出すことはしません。道具の忘れ物などちょっとした失敗が予想できる場合も先回りはせず、こういう失敗もするだろうなと見守っています。そうやって失敗してみて気づくことがあったり、次回から注意しようと意識するようになるので」と、子どもたちが失敗できる環境を用意しているのも成長を促すきっかけになっているといいます。もちろん、大きな失敗にはならないように、これ以上は危険だなという時には声をかけています。例えば水筒を忘れてずっと飲料がないのは危険なので、練習に入る前に声かけをします。その時も「水筒忘れているだろう?」とは言わずに、「何か心配なことない?」と気づきを促します。そして一緒に取りに行きながら、こんな会話をするそうです。「荷物の準備はいつも誰がしているの?」「お母さん」「そうか、今回は自分で準することができたね。いい経験になったね」水筒を忘れたことをダメなことにせず、サッカーの準備を自分ですることを意識するような会話にしているのだそう。そういう経験を経て、人間的にも成長できるといろいろなことにチャレンジできる。自己肯定感を高めてあげることも必要だと思っているとコーチは教えてくれました。サカイクキャンプでは熱中症だけでなく新型コロナウイルス感染予防の対策を徹底して行っています。キャンプは数日ですが来れば、間違いなく何かきっかけをつかんでもらえるはずです。子どもたちにとってキャンプに参加してくれることが大きなチャレンジ。親御さんにも子どもをキャンプに行かせるというチャレンジをぜひしてください。帰ってきた子どもはキラキラしているはずです。<<【熱中症対策】子どもたちを守るためサカイクキャンプが実施する万全の対策-オンザピッチ編-
2020年07月13日「お前が何でJ下部行けたんだ」「お前いらなくない?」。小学生時代にJクラブの育成組織に所属していたけど上に上がれず、セレクションを受けて入ったチームでチームメイトから誹謗中傷を受けている。中学生だから親がでしゃばるのもどうかと思うけど、相談させてほしい。とご連絡をいただきました。チームメイトからのいじめは、小学生年代でも心配な親御さんも多いことでしょう。今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、取材で得た知見をもとに、子どもを守るための3つのアドバイスを授けますので参考にしてください。(文:島沢優子)(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)<<試合が多いため毎週の遠征費が家計を圧迫。移籍させたい問題<サッカーママからのご相談>はじめまして。どうしようもなく悩みご相談いたします。息子は中学一年生でサッカークラブチームに所属しています。小学校の頃は某Jクラブの育成組織に所属していましたが、進級できず。セレクションを受け今のチームに所属しているのですが、体格もなく足の速さも遅い方で現チームでいじめ(誹謗中傷)に合っているようなのです。「お前が何でJ下部行けたんだ」とか「足遅いんだよ(笑)」「お前いらなくない?」など。はじめは頑張って自習練したりしていましたが、最近は暴言が酷くなってきたようで、「サッカーをやめたい、つまらない」と夜な夜な枕を濡らしこらえています。それでも最後には「やる」とは言いますが、明るかった笑顔は消え暗い表情の息子を見てるのもつらいです。厳しいスポーツの世界だからコーチに相談するのも気が引けます。中学生なので親がでしゃばるのもどうかという気もあって。こんなとき見守ることしかできないのでしょうか。<島沢さんのアドバイス>ご相談のメールをいただき、ありがとうございます。中学生男子が泣いてしまうのですから、おそらくチームメイトからの暴言はひどいのだろうと察します。そばで見ているお母さんも辛いですね。とはいえメールだけで詳しいことはわからないので、あくまで推測の上でのお話であることを前提にお聞きください。■「いじめに負けるな、強くなれ」と命じるのではなく、「あなたは何も悪くない」と伝えてメール文によると、息子さんはJクラブの育成組織出身者。それゆえに、そうではない中学生たちから少しばかり疎まれている。つまり、彼らにとってジェラシーの対象になっていることがよくわかります。息子さんが落ち込むのを見て、彼ら「非J育成組織組」は溜飲を下げるわけです。とてもばかばかしいし、スポーツマンシップに欠ける行為です。いいですか?悪いのは、完全にそのチームメイトたちです。それなのに、親御さんの中には間違った行動をとる方もいらっしゃいます。「厳しい世界なんだから耐えなきゃだめだ」「おまえのほうが強くならなきゃ」「言われるほうも問題がある」「逃げたら負けだ」いかがでしょうか?こういったアドバイスは、「いじめられている側の問題」にしてしまっています。息子さんは何も悪くない。悪いのは誹謗中傷するチームメイト。ここを絶対にはき違えないこと。これが私からのひとつめのアドバイスです。これがとても重要です。それを誤って、「まだ中学生だから、そういうやつもいるよね」とか「試練だと思って乗り越えろ」などと軽い気持ちで言わないこと。思ってもいけません。もし、少しでもそう考えていたのなら、考え方を変えてください。今の子どもたちは、自分を否定してくる言葉をストレートに受け止めがちです。「ああ言ってるけど、軽い気持ちで言ってる」「暴言だけど、ただの嫉妬だ」そんなふうに逃がすのが苦手です。苦手なことを「うまくやれ」と命じるのではなく、「あなたは何も悪くない」ときちんと伝えください。例えば、お父さんや、ほかの兄弟姉妹。祖父母など、ほかの家族でそのような対応をされる方がいたら、息子さんの目の前でお母さんがそれをバッサリ否定してあげましょう。そうせずに、息子さんに「お父さんはこう言ってるけど......」などと、陰で言うような状況はダメです。夫に遠慮してはいけません。■子どもをポートする上で大事なのは「言う」より「聴く」そして、二つめ。親御さんがサポートするうえで大事なことは、息子さんの話に耳を傾け続けることです。お母さん自身もお仕事があったり、他にも兄弟姉妹がいてお忙しいかもしれませんが、彼が落ち着くまでは毎日でも話を聴いてあげてください。子どもがいじめられたり、その身の上に何か困ったことが生じたとき、親御さんがそこにかかわって解決しようとする傾向があります。いわゆる「転ばぬ先の杖」ですね。以前も、この連載で「杖を用意してしまうと、自分の足で難題を乗り越える脚力がつきませんよ」と伝えているように、親が出しゃばってしまうと課題解決する力を育む機会をつぶすことになります。したがって、まずは本人の話を聴いて、その辛さに一緒に向き合ってください。「それはひどいね!ママなら、我慢できないかも」とか「許せないね」と息子さんのぶんまで怒ってあげてもいい。とにかく、本人の話を聴き続けましょう。小学生に同様の問題が起きたり、いじめ以外でも子どもが悩みを抱えたときも、いつも同じアドバイスをしています。「言わなきゃ!より、聴かなきゃ!と考えていください」と。お母さんも「コーチに相談するのも気が引けます」「中学生なので親がでしゃばるのもどうかという気もあって」と躊躇されていますね。ただ、毎日「今日はどうだった?」というわざとらしい聴き方はいけません。「サッカー、楽しかった?」「いつでも話聞くからね」「お母さんたちは君の味方だよ。楽しくサッカーしてほしいと思ってるよ」そういったことを伝えながら、聴く耳を持っているということをアピールしましょう。■逃げることは恥ではない。子ども自身が見出す「次の一手」を尊重しようそして、三つめ。どこかのタイミングで「じゃあ、どうする?」と解決方法を尋ねてみてください。もう中学生なので「いろいろ言うのはやめてほしいと勇気を出して言う」とか、「コーチに相談してみる」「他の自分を悪く言わない仲間に相談する」もしくは、「とにかく無視する」など、さまざま出てくるかと思います。そうならず「わかんないよ」と沈んでいるようなら、「少しお休みしてみる?」とクラブと距離を置くことを提案してもいいかと思います。逃げることは恥ではありません。逆に「悪い仲間や環境からは逃げていいのだ」ということを伝えてください。自分から「もうこのクラブを辞めたい」と言うかもしれません。もしくは、「もう少しやってみる」かもしれません。そうやって、どんな答えが出たとしても、それを否定しないでください。すべての答えを「そうか、じゃあ、そうしてみるといいよ。自分で考えたようにやってみるといいよ」と受容してあげてください。もし、それがお母さんの望む答えでなかったとしても、尊重してあげましょう。息子さんがこの、毎晩枕を濡らすような苦しみの中で見出した「次の一手」なのです。そこをまず認めてあげてください。■あまりに追いつめられると......(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)いじめられているときは、子どもも、大人も、著しく自己肯定感が落ちています。「自分はここでサッカーをしていいのか」「自分はこのクラブにいていいのか」あまりに思い詰めると「自分は生きていていいのか」になります。スポーツは何のためにするのか。ぜひそんなことを家族で話し、価値観を共有しながら道を探っていってください。島沢優子(しまざわ・ゆうこ)スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てるテニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。最新刊は『世界を獲るノートアスリートのインテリジェンス』(カンゼン)。
2020年07月10日新型コロナウイルスの感染減少にともない、社会活動が徐々に再開し始めました。しかし都道府県によって現状は異なり、同じ県でもクラブの状況によっては、サッカーの活動範囲が限定的なところもあります。早期に感染拡大が起きた、北海道札幌市にある『札幌中央FC』の明真希(あきらまさき)監督は、活動停止期間を経て子どもたちにポジティブな変化が現れたといいます。その変化とはどんなものか伺いました。(取材・文:鈴木智之写真提供:札幌中央FC)札幌市の繁華街が近いこともあり、活動再開も慎重にならざるを得なかった■あえてオンラインツールを活用しなかった理由北海道での新型コロナウイルスの感染拡大は早く、2月下旬には感染者数が東京よりも多くいました。独自に緊急事態宣言を出すことで活動自粛を進め、感染者数を抑え込んできましたが、その後「第2波」が押し寄せるなど、厳しい状況が続いていました。第2波襲来以降、活動が段階的に解除できたのが5月30日。札幌市では学校の分散登校が6月1日から始まり、少しずつ日常を取り戻し始めました。学校再開にともない、道内のサッカー少年団の活動も復活したところがあります。札幌中央FCが活動する札幌市中央区は「すすきの」という繁華街が近くにある、札幌の中心です。東京の新宿歌舞伎町のようなものといえば、イメージしやすいかもしれません。地域性や場所の問題が重なり、学校側もチームの活動再開に対し、慎重にならざるを得ませんでした。学校再開後もグラウンドは使えないままで、体育館も『密』を避けるため一部の学年の教室となり、使うことができません。結果的に、子どもたちの活動場所は失われてしまいました。イレギュラーな事態に直面した、札幌中央FC。緊急事態宣言が出され、活動ができない中、色々なチームの取り組みを目にする機会がありましたが、明監督は「ある疑問を感じました」と言います。それが、オンラインの活用の仕方です。自粛期間中にZOOMなどオンラインツールを活用し、コーチと子どもたちとの間でコミュニケーションをとるチームも多くありましたが、札幌中央FCはあえてしませんでした。その理由を、明監督は次のように話します。「中高生であれば、個人の携帯やパソコンを使って、オンラインでコミュニケーションをとることも可能かもしれません。でも小学生は、保護者のスマホを借りて行うケースが大半です。そうなると昼間に働きに出ている保護者が多いので、日中はできず、夜になります。保護者が求めているのは休校時間の有効活用だと思ったので、あえてオンラインツールを活用するには至りませんでした」一方で毎週、保護者にメールを送り、活動中止の連絡を入れるとともに、子どもたちには「監督もみんなとサッカーがしたいけど、ここは我慢しよう」「学校がある時と同じ時間に起きて、課題をやろう」などのメッセージを送っていたそうです。さらには指導者、選手、卒業生を含めて、リレー形式でボールをつなぐ動画を作成することで、保護者と子どもがボールを使ってコミュニケーションをとる時間を作るとともに、クラブとつながっている気持ちにさせることなど、様々な取り組みで平日を過ごし、週末の練習に全力で臨むことのできる環境を作りました。札幌中央FCの選手たちに現れた変化とは......■限られた時間しかサッカーができないことで子どもたちに現れた変化チームによって、グラウンド使用状況は様々です。札幌中央FCは、通常時は平日に学校のグラウンド、週末は天然芝のグラウンドで練習をしていました。ですが、6月に入っても学校のグラウンドは使えないので、練習は週末(土日)の2日間、各2時間だけの練習になっていました。限られた時間しかサッカーができない中で、子どもたちにどのような変化が起きたのでしょうか?明監督は目を細めて語ります。「活動が再開したばかりの1、2週目はスイッチが入っていないように見えたのですが、6月中旬からはこちらが驚くぐらい、子どもたちに変化が見られ、楽しそうにプレーしていたんですよね。子どもたちが、サッカーができる喜びから、サッカーを大切にするようになってきたんです」そう言って、次のように続けます。「うちは平日の練習がなくなり、土日だけの活動になりました。練習や紅白戦を見ていて驚いたのが、子どもたちの口から、ポジティブな声がたくさん出始めたことです。たとえば、試合で相手にプレッシャーをかけにいく場面で、寄せが遅かったり、甘かったりすると、『もっと行けよ』『なんで行かないの』などの声が、選手間で出ることもあったのですが、活動再開後はサッカーをやれるという喜びが勝ったのか、ポジティブな声掛けが出るようになりました。そんな変化が起きるんだ!と驚きましたね」さらには、相手チームの良いプレーに対しても、自然と褒める言葉が出るようになり、失点後に子どもたちが自主的に集まって、話し合いをするようになったそうです。「失点後にゴール前に自然とみんなが集まって、どうすればよかったかを話し合っていました。コロナで活動を休止する前は、見られなかった光景です。プレー面でも変化があって、以前は球際でそれほどバチバチやる感じではなかったのですが、激しさが出るようになりました。これも、サッカーができる喜びから来ていると思います。とても良い変化だと思いました」子どもたちは限られた時間でサッカーを目一杯楽しみ、「また来週ね!」と笑って帰って行くそうです。子どもたちがサッカーを大事にするようになった「サッカーをする時間が限られたことで、その時間を大切にするようになったのは、コロナ前に比べて、大きな変化だと思います。いまの子どもたちは勉強や塾、習い事でスケジュールが詰まっています。忙しさに加えて、コロナの影響で精神的にいっぱいいっぱいの子もいると思うので、サッカーは適度に力を抜いてやったほうが、結果としてよくなるのではないか。活動再開後は、そんな風に思っています」■改めて気づいた「大人の仕事」とはコロナ自粛明けに、札幌中央FCへの入部を希望する子どもたちが、13人もいたそうです。明監督は「この状況で札幌中央FCを選んでくれたのは、素直にうれしい」と笑顔を見せます。新型コロナウイルスの感染拡大が、今後どうなるかはわからない以上、予防は徹底しています。移動中は明監督が手作りしたオリジナルのマスクを着用し、手洗い、検温をまめにするなど、細心の注意を払っています。明監督が手作りしたマスク「コロナのことがあってから、あらためて、大人の仕事は子どもたちに遊ぶことができる場所、ボールを蹴る場所を提供してあげることなんだと気がつきました。今後はグラウンドの確保も含めて、場の提供に目を向けていきたいです」コロナで起きた変化を、少しでも良い方向へとつなげられるように、多くのクラブ、指導者、そして子どもたちは歩みを進めています。総勢75人に増えた札幌中央FCの挑戦は、これからも続いて行きます。
2020年07月08日気象庁によると、今年の夏は暑いという予報が出ています。ただでさえ年々暑くなるように感じる日本の夏は熱中症の危険がいっぱいです。今年は特に新型コロナウィルスの影響で外出ができない日々が続き、多くの人が暑熱順化できていないので、熱中症には特に注意が必要です。そんな中でも、せっかく参加してくれた子どもたちが思い切りサッカーができるようサカイクキャンプでは、さまざまな熱中症対策をして子どもたちが健康で楽しく過ごす事ができるように工夫しています。トレーニングの環境だけでなく、練習以外の場所で行っている安全策をご紹介しますのでぜひご確認ください。(文:前田陽子)クーラーボックスに氷を常備、いつでも適温の水分補給ができるよう準備しています<<前編:【熱中症対策】子どもたちを守るためサカイクキャンプが実施する万全の対策-オンザピッチ編-■練習の前と後に体重測定前編でもご紹介しましたが、体内の水分が不足すると、脱水症や熱中症を引き起こす原因になります。また、体内の水分が低下すると徐々に動きが鈍くなり正しい判断、動きができなくなってしまいます。そうならないためには、運動中に発汗する分の水分を摂取することが大切です。運動前後の体重を測定することで、水分補給が適切に行われているかを確認することができます。体重の3%以上の水分が失われると体温調節に影響が出るといわれているので(※)、体重の減少が2%以内に収まるように水分補給をさせています。その確認のために、子どもたちの体重を練習の前と後で測定をしています。※独立行政法人日本スポーツ振興センター学校災害防止調査研究委員会「体育活動における熱中症予防調査研究報告書」より■練習前に氷の準備を徹底する水分補給とは、水分を口に含むことではなく体内に吸収することです。口に入れた水分は胃を通過して腸で吸収され、血管に入り全身に運びます。ですから、胃から腸へ水分が速やかに移動することが重要なのです。そのためには、水分の温度管理が重要になります。運動中に摂取する水分は5℃~15℃が適温だとされています。サカイクキャンプでは、子どもたちの摂取する水分の適温をキープするために、グランドに向かう前に各自のボトルに氷を入れることを徹底しています。また、クーラーボックスに氷を常備し、いつでも適温の水分を用意できる状況にしています。■水・清涼飲料水を用意汗は99%が水分で、残りの1%にナトリウムと塩分を中心にカリウム・カルシウムなどのミネラル分が含まれます。汗をかくということは、水分だけが喪失するのではなく、ナトリウムなどもなくなっているということ。ですから炎天下での発汗の際には、水の他に電解質(イオン)などが含まれている清涼飲料水も用意しています。清涼飲料水は塩分濃度0.1~0.2%、糖分濃度3~5%が理想なので、水2リットルに対して1リットル用のパウダーを溶かし清涼飲料水を作っています。水分は一度に大量にとるのではなく、こまめに少しずつ飲むことが大事なので、練習中に自由に水分が摂取できるようにしています。■水分・エネルギーの必要量を確保熱中症を予防するためには運動中はもちろん、運動前の事前飲水が大切です。ですのでサカイクキャンプでは、グラウンドに出る30分前までに、スポーツドリンク500mlを飲むことを義務付けています。これによって、体内に水分が十分ある状態で練習をスタートできます。また、熱中症対策には栄養バランスのいい食事も必要。過不足ない量をきちんと食べ、かつ5大栄養素をバランス良く食べられるように、昨年のキャンプでは食品に栄養素がわかるシールを貼るようスタッフが促しました。このように可視化したことで子どもたちは毎回何を食べたら良いか考えながら取り組めました。バランスよく栄養素をとることも熱中症対策として大事なことです(写真は過去のサカイクキャンプ)■練習後のリカバリー練習後なるべく早い栄養補給を心がけております。また水分補給だけでなくサカイクキャンプでは「熱中症対策には食事も大切だよ」と伝えています。トレーナーやコーチたちが体重が2%以上減少した子を把握することで食事の指導、水分補給を積極的に促し、熱中症を予防します。このようにピッチの外でも熱中症予防に取り組んでいます。練習前後の体重測定をはじめとした施策を行うなど、コーチ、スタッフ全員が子どもたちの様子に目を配り、体調の変化をすぐにキャッチできるように努めているので、安心して参加ください。<<前編:【熱中症対策】子どもたちを守るためサカイクキャンプが実施する万全の対策-オンザピッチ編-
2020年07月07日スカウトの人って選手のどこを見ているの?身体が大きくて速いと有利なんでしょう?など、スカウトの人が何を見て判断するのか気になる親御さんも多いのでは。今回は、世界最高峰のリーグ、イングランドプレミアリーグのトッテナム・ホットスパーFCやイングランドサッカー協会でスカウト部門のトップとして育成年代の発掘に関わってきたベテランスカウト、リチャード・アレン氏に「U-13世代をスカウトする時に見るポイント」を伺いました。(取材・文・写真:末弘健太)技術以外にスカウトが見ているのは......(写真は少年サッカーのイメージ)■「成長速度の違い」も見ている――U‐13世代をスカウティングする際に何を見ますか?スカウティングといってもファンデーション・フェーズ(5~11歳)とU‐13では少し見るものが変わってきます。U‐12、U‐13からは少しずつ、その選手が攻撃的な選手なのか守備的な選手なのかわかってきます。最終的にどこのポジションがその選手にとってベストかはその時点ではわかりませんが、どこが強みでどこが改善点なのかわかってきます。ただし、この年代の選手を見る上で気を付けなければいけないことは、選手それぞれで成長の速度が違うということです。思春期が訪れる頃に、身体的な機能は一気に発達していきます。12、13歳の選手でも15、16歳に見える選手もいますし、9歳くらいにしか見えない選手もいます。これによってもちろん身体能力に差が出てきてしまいます。なので、その場のパフォーマンスの出来で評価するのではなく、選手のポテンシャルを見てあげることが大切です。チームの中で非常に速くて強い選手がいたとしても、もしかしたらそれは彼がチーム内で月齢が一番高いだけかもしれません。この年代の選手をスカウティングをする上で、この点は必ず気を付けなければいけない点です。――では、その一時のパフォーマンスの良し悪しよりも、ポテンシャルを秘めていることの方が大切ということですよね?そうですね。私はその選手のプレーの意図を見るようにしています。例えばある選手がパスを出したとします。その判断は良いものでしたが、身体能力的にパスが通らないことがあるかと思います。30mのパスを出したかったとしても、15mもしくは20mにしか届かなかったということです。そのような時、指導者の方は選手にしっかりと自信を持たせてあげることが必要ですね。パスは届かなかったけど、プレーの意図は良かったと。たとえその場面でのプレーがうまくいかなくても、その選手が正しいプレーをしようとしていれば、私はそれを評価します。■技術面だけではない、スカウトが見る「ポテンシャル」の内容――ポテンシャルがある選手というのはどのように見分けていますか?良い意図のあるプレーをしている選手がポテンシャルがある選手ということでしょうか?もちろん良い意図のあるプレーをすることは大切ですが、最終的には全ての要素が揃わなければ良い選手とは言えません。技術的な能力が高いことも大切です。ゴールデンエイジと言われる時期には技術的な能力が一気に向上します。そしてそれは11vs11の中でゲームの理解度を向上させなければいけない年代になっても伸び続けます。ただし、最終的には技術的の能力に加え、ゲーム理解度と身体能力がうまく相互的に作用してプレーすることになります。そしてそれが自動的に(自然と)できないといけません。あなたが技術的に素晴らしいとしても、身体の成長が追い付いていなくてうまくプレーできないということもありますし、反対にとてもうまくプレーできても、それは身体の成長が周りの選手より早いからということもあり得ます。もちろん、そういう選手は技術的にも優れていて、身体能力も高いという可能性もありますが。この辺りの判断は難しく、スカウトの人間も時々見落とすことがあります。プロの世界では19、20、21歳で素晴らしいプレーをする選手がいますが、彼らが必ずしもU‐13の時に素晴らしい選手だったとは限りません。だから今チームの中でベストイレブンに入っていなくても、将来的にベストイレブンに入ってくる可能性は大いにあります。多くのことは変わっていくのです。――あなたはプレミアリーグ・トッテナム・ホットスパーなどのプロクラブで指導者としての長いご経験がありますが、U‐13の選手をスカウトをする上で大切にしていることはありますか?上記の通り、やはりまずはポテンシャルがあるかどうか、成長の余地があるかどうかが大きなポイントとなります。クラブが求める能力まで伸びる可能性があるのか。スカウトによっては、身体能力などの特徴がある選手を見る人もいます。例えば、思春期に入る前でもずば抜けて素早い選手がいるとして、おそらくその選手は思春期後もずば抜けて素早いのは変わらないだろうと思います。私個人的には技術的な能力を重要視します。もちろん現時点で技術的にパーフェクトである必要はなく、技術的に伸びる要素があることが大切です。私はとにかく1に技術2に技術3に技術です。もちろん最終的にはゲーム理解度や戦術理解度も高める必要があり、身体的な特徴も少なくとも1つ2つは最低ないとプロの世界では戦っていけませんが。あと、この年代を見るうえで大事にしていることといえば、人/選手としての言動や人間性です。社会性や精神的な部分ですね。選手はU‐13の時期でもこのような能力を培います。もちろんこの時点で精神的に成熟しきっている必要はありません。ただし、良いメンタリティを持っているとスカウトに感じさせることは大切です。「もっとうまくなりたい」「もっと学びたい」というような強い気持ちをもち、集中して一生懸命練習している選手は、やはり目にとまります。もちろんまだ若く発展途上なので、先ほど話したようにU‐13時点でパーフェクトである必要はなく、例えば感情のコントロールをうまくできない選手もよくいます。でもこれは技術的な要素と同じで、例えばヘディングの技術がそこまで高くない選手がいます。でもそれは、ヘディングの方法を教わってしっかり練習すれば改善されるのと同様に、精神的な部分も経験を積めば成長していきます。とても強いウィニング・メンタリティを持っている選手で、時に感情のコントロールをうまくできずレッドカードを貰って退場することがあります。イングランドの選手ではベッカムだってW杯で退場したし、ルーニーだって退場しました。多くの選手がやってしまいます。でも彼らが成長するにつれて、その課題に対して上手く向き合えるようになりました。■クラブごとに「良い選手」は異なる各クラブにクラブ哲学があるかと思いますが、それはスカウトする際に影響を与えますか?全てのクラブにクラブ哲学があるかと思います。スカウトをする上で、クラブのニーズと選手のクオリティをマッチングさせることは非常に重要です。あるクラブは1on1に強く、ボールをうまく扱える選手を好むとします。ファーストタッチの質、オンザボール、オフザボールでの色々な動き方ができるという技術的な要素ですね。反対に、あるクラブはとにかく身体能力が大切だと考えていて、たくさん走れてロングボールをバシバシ蹴れる能力などにフォーカスしていて、技術的な側面はあまり必要ないと感じています。このようなクラブ哲学を基に、クラブがどのような選手を求めているか明確にすることはスカウトをする上で非常に重要です。どのクラブも同じようなタイプの選手を探しているわけではありません。ロンドンの中でも、トットナムが求めている選手はチェルシーが求めている選手とは異なります。どのクラブも良い選手を探していることには間違いありませんが、その「良い選手」のニュアンスがそれぞれによって異なり、チェルシー、ウェストハム、フルハム、アーセナル、トットナムが求めている選手というのは全て異なります。リチャード氏の言うように、クラブの哲学、その時志向するスタイルなどによって「良い選手」が異なるのです。セレクションなどを受けて合格できなかったとしても、それは良い選手ではなかったからではないのです。そのクラブがその時求める条件に合ってなかっただけなので、結果に一喜一憂せず技術やメンタルを磨くことで選手として成長することができるということを心に刻んでお子さんをサポートしてあげてください。後編では、子どもの夢をサポートするために親はどうすればいいかをお送りします。Ricard Allen(リチャード・アレン)トッテナム・ホットスパーで6年間アカデミーのスカウティング部門の最高責任者を任され、ヨーロッパサッカー協会連合 (UEFA) やイングランドサッカー協会 (The FA) が開催するジュニアユースとユースのすべての大会で様々な国のトップクラブを視察。the FA Talent Identification in Footballコース (才能あるサッカー選手の選考) を欧州各国のプロフェッショナルクラブで開催し、スカウティングについての講義も開催。現在はラフバラ大学サッカー部門 ダイレクターを務めている。
2020年07月06日学校が再開され、スポーツのチーム活動も再始動しているかと思います。3か月近い自粛期間を経て、サッカーを再開するにあたって気をつけるべきこととは何でしょうか?日本サッカー協会のスポーツ医学委員でJクラブのドクターも務める大塚一寛先生(上尾総合病院スポーツ医学センター長)のインタビュー後編では、例年以上に気をつけたい「熱中症」について、話をうかがいます。(取材・文:鈴木智之)休んだ分を取り戻そうと負荷の高いトレーニングを長時間行うのは禁物(写真は少年サッカーのイメージ)<<前編:休校明け、チーム練習再開で気をつけたいケガのリスク、適切な練習負荷とは■外気が30℃の場合、マスクの下は42℃にも。マスク熱中症に注意日に日に気温の上昇が見られます。このときに気をつけたいのが熱中症。とくに、気温や湿度が急激に変化する時期は、連日猛暑が続く時以上に注意が必要なようです。「今年は自粛の影響で家の中にいる時間が長くなり、外気に触れる機会が少なかったお子さんも多いと思います。急に暑くなったり、気温が下がるときはとくに注意してください。たとえば18℃の日が4日続き、気温が突然28℃になったときに、前日と同じ強度のトレーニングをすると、熱中症になるリスクが高まります。それほど、急激な気温の変化には、気をつけなくてはいけないのです」真夏の30度越えが連日続くとき以上に、涼しい日から一転して真夏日になるようなときは、気温や湿度の急激な変化に身体が対応できず、熱中症になりやすいそうです。昨今、新型コロナウイルスの影響で授業中のマスクが必須になっていますが、スポーツ庁からは「体育の授業はマスク不要」と全国の教育委員会に連絡されています。大塚先生もまた「運動中のマスクは危険なので外しましょう」と呼びかけます。「マスクをつけて運動をすると、外気が30℃の場合、マスクの下は42℃ほどになります。いわゆる"マスク熱中症"になる危険性があります。とくに、子どもたちは昼間に練習することが多いので、指導者は正しい知識を頭に入れておいてください」とくに気をつけたいのが、試合中、ベンチに座っている子どもたちです。「マスクをしたままベンチに座っている子は、炎天下の中でじっとしているので体温が上がり、マスクの中も高温になります。中国でN95マスクをつけて運動した中学生が死亡した例がありますが、気密性が高いマスクをして運動をするのは極めて危険ですので、絶対にしないようにしましょう。サッカーのプレー中にマスクをするのは、現実的ではありません」熱中症だけでなく、ウイルス対策もしなければいけないので、今年の夏は気をつけるべきことがたくさんあります。飲水にも注意が必要です。いままでのように、スクイーズボトルを使って回し飲みをすることは、ウイルス対策の観点からは避けなくてはいけません。「ウイルス対策の観点からすると、試合中に誰が口をつけたかわからないボトルを飲むわけにはいかないので、飲水タイムを設けて、各自のボトルから飲むようにすることも検討するべきでしょう」■成長期だと自粛前と後で身体やボールフィーリングが変わっている子も学校やスポーツ活動も再開していますが、急に3か月前と同じ強度のトレーニング、試合をするのは避けたほうが良さそうです。「子どもの場合、基礎的なトレーニングから、試合と同じ強度のトレーニングに移行するのに、6週間ほどかかります。そこから逆算して、試合は何日から開催すると決めた方がいいでしょう。とくに子どもの場合は、慎重に段階を経て強度を上げていくこと。急に強度の高い練習を長時間すると、外傷リスクは確実に上がります」活動自粛によって失われた時間を焦って取り戻そうとすると、ケガのリスクが上がります。結果として、長期間サッカーができなくなることになるので、自粛明けの指導者には、トレーニングの時間や強度をコントロールすることが、いつも以上に求められそうです。「トレーニングをしていない期間が8週間ある場合、もとに戻るのに8週間かかります。それを2、3週間で戻そうとすると、大幅にギャップがあるので、ケガをするのは当たり前です。すぐに戻そうとせず、時間をかけて戻さなければいけません。とくに小学生年代は身長が急激に伸びる時期なので、自粛前と自粛開けとでは身体のサイズ等の状態が違います。それなのに、2ヶ月前の感覚でやろうとすると代償が起こったり、整合性がとれなくなります」長い休みによって、身長が急激に伸びる子もいます。自粛前と後では、身体やボールフィーリングの感覚が違うことは、頭に入れておいた方が良さそうです。「極端な例ですが、フィギュアスケートの選手が、14歳のときにトリプルアクセルが跳べたのに、20歳になると同じように跳べなくなることがあります。それと似たようなことが、長期休暇明けの子どもたちの身体に起こる可能性があるので、とくに注意深く見ることが必要だと思います」■今年ならではの、子どもに腰痛が出やすい理由さらに、こう続けます。「コロナの自粛時期はストレスが溜まっていた子が多いので、腰痛になる子が通常よりも出やすいと言えます。家の中でゲームばかりしていると背中が丸まり、体幹(※胴回りのこと)も弱くなります。"コロナ巣ごもり"のあとは、筋力の衰えとストレスや悪い姿勢から来る腰痛に気をつけてほしいと思います」ウイルス対策と熱中症予防に加え、長期休暇開けの子どもたちに、どの程度のトレーニング量、強度で行うのかは、指導者の腕の見せ所です。夏はすぐそこに来ています。大人も子どもも例年以上に注意深く行動し、先の見えない時期を乗り越えましょう!<<前編:休校明け、チーム練習再開で気をつけたいケガのリスク、適切な練習負荷とは大塚一寛(おおつか・かずひろ)医師、上尾中央総合病院整形外科・スポーツ医学センター長。1999年からJクラブのドクターとしてチームとともに帯同を続けている。そのほか、『日本サッカー協会スポーツ医学委員』や、『Jリーグチームドクター会議部部会長』を務める。多数の講演にも出演し、現場のノウハウや選手のケガ、障害予防などの啓発活動も積極的に行っている。上尾中央総合病院・スポーツ医学センター日本サッカー協会スポーツ医学医員
2020年07月03日新チームに加入したとき、チームを離れたキャンプ、セレクションのときなど「はじめまして」の相手が多いときに「自分はなにができるのか」「どんな選手なのか」をチームメイトや監督に知ってもらうのは、とても大切なことです。それは自分の力を存分に発揮することにもつながります。ですが、小学生年代だと、知り合ったばかりの子に自分を知ってもらうためにどうすればいいか意外とわからないものですよね。前編では、アジアを中心に4カ国でプレーした経験を持つ渡邉卓矢選手に「初めての相手とサッカーをするときのコツ」を伺いました。後編では初めての相手、入団したばかりなどでも「自分の得意なプレーをする方法」について聞きました。(取材・文:鈴木智之)セレクションやトライアルで自分の力を発揮するためには、仲間の特徴を早くつかむことも大事<<前編:海外リーガーが伝授する、セレクション、チームの中で自分のプレーを出すために必要なスキル■点を取ることから逆算して動くこれまでのサッカー人生で、数え切れないほどセレクションやトライアルを受けてきた渡邉選手。トライアルのときは「どのポジションでプレーしても、点を取ることだけを考えている」そうです。「僕はサイドバックでプレーすることもありますが、どのポジションで起用されても点を取ることを意識しています。トライアルの試合であれば、PKもCKもFKも全部蹴りに行きます。他の選手が『俺が蹴る』と言うこともあるのですが、『わかった。俺は左利きだから、ボールの横に立ってフェイントをかけるよ』と言って、先に蹴ってしまうんです(笑)。そのときは相手に『なにやってんだ!』と言われますが、そこで『ごめん。次は譲るよ』と謝れば、たいていは許してくれます」常に得点チャンスをうかがい、貪欲にゴールを狙う渡邉選手。タイでトライアルを受けた時は、「点を取らないと評価されない」と感じ、点を取ることから逆算して動いていたそうです。「ゴール前のエリアでボールを受けると点に繋がりやすいので、そこに走り込むために、どう動けばいいかを常に考えてプレーしていました。ペナルティエリアの手前で、一度ボールを受けて味方にパスをして、ゴール前に入っていくといったように、シュートを打てるエリアに飛び込む回数を増やそうと心がけてプレーしたところ、2ゴール、2アシストの結果を残せたことがありました」試合中に何度もアップダウンを繰り返すなど、豊富な運動量が持ち味の渡邉選手。ゴール前に駆け上がるスプリントは武器のひとつであり、試合で発揮するための努力は惜しまないそうです。「技術はすぐにうまくはなりませんが、スプリントはトレーニングをすればするほど、走れるようになります。1試合に1、2回スプリントしてボールが来なくても、10回、15回と増やすことができれば、そのうちの1回が得点につながるかもしれません」■チームのために動くことが自分の長所を存分に出すことにつながるスプリントを得点につなげるためにポイントになるのが、味方からパスを呼び込むこと。とくにセレクションや急造チームなどでは、呼吸を合わせるのは難しいもの。渡邉選手は「だからこそ、味方の特徴を早く知ることが大事」と言葉に力を込めます。「僕がトライアルやセレクションのときに心がけているのが、うまい選手の特徴を見極めて、共存することです。たとえば、中盤にボールを持ててパスも出せてという、司令塔タイプの選手がいた場合、その選手と同じように自分がボールを持つのは難しいですよね。やりたいプレーが重なるので、プレーが合わなくなってしまいます」たしかに、互いに自分の得意なプレーをしようとすることで連携がとれず、結果としてチームに悪影響を及ぼしてしまうかもしれません。そうなると、個人の評価は下がってしまいます。「上手な選手をライバル視するのではなく、その選手に合わせることを心がけています。パスが上手な選手がいて『この選手がキーマンだな』と思ったら、その選手から良いパスを引き出す動きをするんです。パスが得意な選手は、走っている選手がいればパスを出してくれます。これが共存です」もし、その選手がボールを奪われたら、我先にと戻って守備をするそうです。チームが円滑に流れるためのサポートを惜しまず、自分の長所をどれだけ出すことができるか。それがセレクションやトライルの場ではポイントになるようです。「サッカーで上を目指したい子どもたちは、セレクションやトライアルを受ける機会はたくさんあると思います。メンタル面で大切なのは『自分はこのプレーで勝負するんだ』という気持ちです。僕であればスプリントと運動量、プレースキック。この3つで勝負して、評価されなかったらしょうがないという気持ちでやっています」■セレクションで緊張したら......セレクションのときは緊張し、プレッシャーを感じることもあるかもしれません。ですが、渡邉選手は「必要以上にネガティブにならず、サッカーを楽しんでほしい」と笑顔を見せます。「セレクションを楽しめると良いですよね。僕も昔は緊張しましたけど、楽しいからサッカーをしているのであって、怖い顔をしてサッカーをしてもうまくいきません。体に力が入り、トラップも失敗してしまいます。いいプレーができるとき、アイデアが浮かんでくるときは、笑顔を作れていたり、リラックスした状態のときが多いです。サッカーを楽しむことがパフォーマンスアップにつながるので、無理矢理でも楽しいと思うこと。緊張していても、『サッカーは楽しい!』と繰り返し思って、その場を楽しんで全力でやれば、結果はどうであれ、得るものはあると思います」新チームでの活動やセレクションに臨むときは、ぜひ渡邉選手の言葉を思い出し、楽しんでチャレンジしてみてください。きっと、良いパフォーマンスにつながるはずです。<<前編:海外リーガーが伝授する、セレクション、チームの中で自分のプレーを出すために必要なスキル渡邉卓矢(わたなべ・たくや)プロサッカー選手千葉県出身 1988年4月11日生Estudiantes de la plata(アルゼンチン1部/レセルバ3軍相当)→JSC Niigata(日本/新潟)→Sportiva Tsukuba(日本/茨城)→HBO Tokyo(日本/東京)→CMAC UNITED(カンボジア1 部)→Goyo FC(モンゴル1部)→Selengepress(モンゴル1部)→Three Star Club(ネパール1部)→Selengepress(モンゴル1部)→Samutprakan FC(タイ4部)→Athletic 220(モンゴル1部)東南アジアを中心にプロサッカー選手として活動する傍ら、子供の頃にJリーグでプレーするサッカー選手に夢を与えてもらったように、子供たちに夢を与えたいと思い、サッカー教室の開催や孤児院への訪問、支援などの活動をしている。
2020年07月02日