ベトナム戦争を背景に、命を懸けた究極の愛を描くミュージカル『ミス・サイゴン』が、2年ぶりに上演される。【チケット情報はこちら】本作で、市村正親、ダイアモンド☆ユカイと共にトリプルキャストとしてエンジニア役を演じるのが、駒田一。前作で初抜擢され、今作が二度目の出演となる。「初演からこの作品を観てきた」という駒田にとって念願の出演であったが、その年、市村が休演を発表。市村とのダブルキャストでエンジニア役を演じていた駒田は、筧利夫が途中参加するまでひとりでこの大役を務めた。前作では「3度目のオーディションで受かった」と初出演への喜びを語った駒田が、2度目の『ミス・サイゴン』への想いを語った。「前回は市村さんがご病気になって、苦しいのとは違うんだけど、とてつもない重しが乗っかったといいますか。市村さんに甘えるつもりはなかったんですけど、どこかで不安を取り除いていただいてましたし、長い付き合いの中でかわいがってもらってたので、正直精神的に辛かったです」と振り返る。そんな市村の出演は今回で最後になるが、「僕と市村さん、ユカイさんは共演しないんですよ、同じ役なので。そこが寂しいかな。だから今のうち、稽古中にいっぱい楽しみます」と笑顔を見せた。「市村さんが大好きです。だからこそ、同じことをしても勝てるわけがない。それにやっぱり僕は駒田一として生きていきたいですし。今作でまたひとつ、ワンランク上の駒田一のエンジニアを作りたいです。あの時代をああやって生き延びようとした人ってエンジニアだけじゃない。そんな奴ばっかりだったんですよね。その代表と言ったら変ですけど、生きるための鋭さ、いやらしさ、泥臭さを演じながらも、どこか共感が持てるような人物にできれば」さらに、今作で初参加となるダイアモンド☆ユカイには「ちょっと恐ろしい人が来た、という印象があります。ミュージカル界ではないところからいらっしゃることも、僕にとっては本当に楽しみです」と期待を寄せる。「今までとは違った新しい『ミス・サイゴン』ができあがると思いますので、ぜひ楽しみにしていただきたいです。演じる側が苦しんで苦しんだ先に見つけた楽しさを舞台にのせられればなと思っています」(駒田)公演は帝国劇場にて、10月19日(水)から11月23日(水・祝)まで(10月15日(土)からプレビュー公演あり)。その後岩手、鹿児島、福岡、大阪、愛知でも上演される。取材・文:中川實穗
2016年07月28日今年で36年目となる、ブロードウェイミュージカル『ピーターパン』が、7月24日、東京国際フォーラム ホールCで開幕。その前日に、マスコミに加え子供たちも招待された公開ゲネプロが行われた。ミュージカル『ピーターパン』チケット情報主演は、9代目ピーターパンとして4年目の出演となる唯月ふうか。ゲネプロ前の囲み取材では、「夏と言えば『ピーターパン』。自分の中の原点の作品なので戻って来れて嬉しい。9月で20歳になるので、集大成のような気持ちで頑張りたい」と語った。また、本作の見どころともいえるフライングは、4度目ということで「成長した」そう。「お客さんの『飛んでる!』っていう顔が見えると、『いいだろう!』とピーターパンのような気持ち」と笑顔を見せた。ある夜、ピーターパンと出会ったウェンディは、ピーターに誘われ、ふたりの弟と一緒に、いつまでも子供でいられる“ネバーランド”へ連れて行ってもらう。そこで、ピーターやそこで暮らす迷子たちと楽しい時間を過ごすが、いつしかお母さんが恋しくなり帰ることに。しかし、フック船長率いる海賊たちが、ウェンディを自分たちの“お母さん”にするために連れ去ってしまう。それを知ったピーターパンはティンカーベルとともに海賊船へむかう――。まるで絵本のようなかわいいセットの中で、お馴染みのキャラクターたちが、歌い、踊り、空を飛ぶ。タイガー・リリーやインディアンたちは抜群の身体能力でバク天やバク宙をしながら動き回り、フック船長や海賊たちがどこか間の抜けた“悪さ”を仕掛けて失敗し……次々と目の前で広がる世界に、子供から大人まであっという間に引き込まれてしまう。音楽もキャッチ―で、子供たちは幕間でもう1幕の曲を歌っていた。唯月が「優雅だと思っていただけるように飛びたい」と話したフライングは、実に滑らかな動きで“釣られている”と感じさせない。ピーターパンがふわりと空に舞い上がり、魔法の粉を散らすと、客席からは「わぁ!」と歓声が上がっていた。遊ぶのが大好きなピーターパンを唯月が心から楽しそうに演じるので、観ているだけでワクワクした気持ちになる。吉野圭吾の新・フック船長も本当に魅力的で、最後のピーター対フックのシーンの華やかさはさすがだった。幼い頃から知っている人が多いストーリーだが、大人になって観てみると実は胸に刺さるエピソードがそこかしこに隠れている。子供はもちろん、大人同士でも楽しめる作品だ。公演は、8月3日(水)まで東京・東京国際フォーラム ホールC、8月17日(水)に大阪・梅田芸術劇場メインホールにて。取材・文・撮影:中川實穗
2016年07月25日お笑いコンビ・よゐこが、恒例の単独ライブを開催する。今年は「よゐこライヴ2016 ~ヒーローネタ祭~」と題し、ヒーローをテーマにしたネタを披露する。公演について、よゐこの濱口優と有野晋哉に話を聞いた。【チケット情報はこちら】ライブは毎年違うテーマで行うが、今回は「ヒーロー」。ネタについては「戦隊モノもやりつつ、“ヒーローインタビュー”みたいなアイデアも出てます」と濱口。すると有野が「でもふたりともスポーツ全然知らないんですよね。(ヒーローインタビューは)なんか打った人がしゃべるんでしょ?やったでー!みたいなことなんでしょ?」と、早速ネタを予測不能に変える一言を。さらに有野からは「殺陣やろうと思います。殺陣で50人斬りくらいを……40分くらいかけて(笑)」と爆弾発言がとびだすも、濱口の「言ってやらへんかったら苦情くるもんな」という一言に「……案ですよ!今現在の案です(笑)。どっちがやるかわかんないですよ!」(有野)と絶妙のかけあいに。毎年行うライブは2人にとってどんな存在か尋ねると、濱口は「苦行…(笑)」、有野も「しょうがないですね。会社から『(会場)とったで』って言われるので(笑)」とマイペースな回答。とはいえチケットが即日完売となることもある人気公演。ファンにとっては年に1回、よゐこを楽しむ大切な場だ。それは2人にとっても同じようで「年に1度ネタを作るのはお互いの意思確認のようなもの。俺はこれを面白いと思ってるけど、有野どう?みたいな、コンビとしてのすり合わせをしてる感じです。お客さんにもその世界を一緒になって楽しんでほしい。そんな風に楽しんでるんだと、思ってくれたら嬉しいです」(濱口)。2日間3公演という公演数にもこだわりがあるそうで「初日にやってみたら長くて、ネタ落としたりします。だから初日と2日目で全然違う。で、3回目くらいになってくると落ち着いてアドリブが挟める。4回やったらアドリブが多すぎてベースがなくなるっていう(笑)」(有野)。結成26年目と長くコンビを続けながらも、ライブには固定ファンに加え、初めて来る観客も多い。人を惹きつけ続けるよゐこの魅力を聞いてみると「休み時間の男子感だと思います。何それ?って引いて見られたら全然つまんないんだけど、いいなって思ってハマったらずっと見てられる。『こいつらバカやなぁ~(笑)』って」(濱口)。最後に有野からは「即日完売とか絶対ならないようにしてほしいです。この記事見て『行こう』と思っても発売2日目とか3日目にチケット押さえる気分でいてほしいですね。(即日完売すると)背負っちゃうから!ガチガチになっちゃうから!(笑)」公演は、9月3日(土)・4日(日)に東京・シアターサンモールにて上演。チケットの一般発売に先がけて、現在チケットぴあでは先行抽選プレリザーブを実施中。受付は7月25日(月)午前11時まで。取材・文:中川實穗
2016年07月22日ブロードウェイミュージカル『キンキーブーツ』が、7月21日(木)に東京・新国立劇場にて開幕した。本作は、2013年にトニー賞で6部門を受賞する快挙を成し遂げた話題作。オリジナルスタッフ陣が集結し、シンディ・ローパーが全曲作詞作曲した音楽や演出、振付はそのままに、森雪之丞が訳詞を手掛け、全編日本語で上演。主演は小池徹平と三浦春馬が務める。【チケット情報はこちら】物語の舞台は、イギリスの田舎町の老舗靴工場「プライス&サン」。その4代目・チャーリー(小池)は、フィアンセと共にロンドンに移住した矢先に父親が急死。地元に戻り工場を継ぐことになってしまう。しかし、その工場も倒産寸前。なんとか生き残るために、ロンドンで出会ったドラァグクイーンのローラ(三浦)にヒントを得て、ドラァグクイーンのためのブーツ“キンキーブーツ”をつくる決意をする。早速ローラを専属デザイナーに迎え、ミラノの見本市への出品に賭けるが――。小池演じるチャーリーは、父親の「継いでほしい」という願いを振り切って工場を飛び出したにも関わらず、あっという間に呼び戻されるお人好し。“飛び出した”という前提がありながら、工場への想いや従業員を愛する気持ちが真っ直ぐに伝わるのは、小池の歌唱力の賜物だ。三浦は、3年前にブロードウェイで観劇して以来の念願だったというローラ役。十数センチのピンヒールで走り回るだけでも大変なことだと思うが、華やかな衣装をまとい、迫力あるドラァグクイーンを生き生きと演じる姿は、まるでそうであるのが当然かのような強さ、そしてどこか切なさも感じさせ、とても魅力的だった。ブロードウェイのオリジナルスタッフが手掛ける本作。ドラァグクイーンたちによるクラブでのショーや、キンキーブーツの完成に沸く靴工場で全員が歌い踊るシーンなどは本当に華やかで、格別の楽しさを味わえる。同時に、囲み取材で三浦が「『他人を受け入れれば自分が変わる、世界が変わるよ』という大切なメッセージをしっかりお客様に届けることができる素晴らしい作品です」と話した通り、観終えた頃には大切なものを受け取っているはずだ。10月には、現在アメリカツアー中の『キンキーブーツ』<来日版>も初来日予定。本作と来日版、是非両方楽しんで!ブロードウェイミュージカル『キンキーブーツ』は、8月6日(土)まで東京・新国立劇場にて上演。その後、8月13日(土)より大阪・オリックス劇場にて上演し、8月28日(日)より東京・東急シアターオーブで凱旋公演を行う。取材・文:中川實穗
2016年07月22日る・ひまわりと明治座による新企画のミュージカル『TARO URASHIMA』。おとぎ話「浦島太郎」をモチーフにした、劇作・脚本は池田鉄洋、演出は板垣恭一のオリジナルファンタジーミュージカルで、8月に東京・明治座で上演される。ミュージカル『TARO URASHIMA』チケット情報主演で浦島太郎役・木村了、ダイオウグソクムシ参謀役・辻本祐樹、深海王子役・原田優一に話を聞いた。辻本「“浦島太郎のお話”って聞くと、なんとなく想像つくじゃないですか。でも制作会社がる・ひまわりって聞いて…ひねってくるぞ、と(笑)。脚本を読んでみたらまさしくそうだったんで、ワクワクしました」木村「イケテツ(=池田鉄洋)さんワールド炸裂で、めちゃくちゃだなと思いましたね(笑)。今回、板垣さんとも初めてなので、どんな演出をつけられるのか、(脚本を)どうまとめていくのか、すごく楽しみにしてます」誰もが知る『浦島太郎』の物語をベースに、なぜ太郎は竜宮城に行ったのか、なぜ乙姫は浦島太郎に玉手箱を渡したのかなど、おとぎ話には描かれない部分を掘り下げることで新たな世界観へとつなげる池田鉄洋の脚本。そしてそのユニークな脚本を、板垣がミュージカルとして演出する。原田「板(=板垣)さんも、音楽の伊藤(靖浩)さんも、擦れてることが大好きなグランドミュージカル好き。邪道好きな王道好きっていうか。そこがおもしろいなって思うんですね。イケテツさんの脚本と、板垣さんの演出と、伊藤さんの音楽。枠がしっかりしているので、その中で大いに暴れられる。楽しみでしょうがないです」また、出演キャストも「暴走する人ばかり。どうやってまとめるんだろう」と原田や辻本が話す通り個性豊か。「坂元健児さんは暴走注意報ですよ!(笑)」(原田)など盛り上がる中、木村は「座長としてそりゃ…見守りますよ!」と笑う。特に今回は芝居とショーの二部構成。自由で実力派の面々が作り上げる新たな世界が楽しめそうだ。木村「すごくツイてない浦島太郎くんなんですけども、それがまた現代に通ずる部分もどこかにあって。観に来たお客様もどこか共感する部分があると思います。まず、チラシからしていろいろ裏切ってるんですけれども…こんな話ではないです(笑)。ハッピーエンドで終わるというところが、『浦島太郎』のお話とはちょっと違うところ。楽しく裏切られたい方はぜひぜひお越しください!」『TARO URASHIMA』は、8月11日(木・祝)から15日(月)まで東京・明治座にて上演。取材・文:中川實穗
2016年07月20日WBB vol.10.5『リバースヒストリカ2016』が7月27日(水)に開幕する。本作は、ジャニーズの佐野瑞樹と、*pnish*のリーダー・佐野大樹の兄弟ユニット「WBB」の新企画。番外公演として、本公演とはひと味違った切り口で異色な企画にチャレンジする。今回はその第1回目。2007年の初演以来、さまざまな劇団に毎年のように上演されている*pnish*の名戯曲『リバースヒストリカ』をWBB版として上演する。稽古も中盤に差し掛かった稽古場で、WBBに初参加する小笠原健と高崎翔太にインタビューを行った。【チケット情報はこちら】ふたりはWBBについて「すごいなって思うのが、大樹さんはこの作品で演じるの3回目なんですよ。なのに真っ新なんです。前公演を追えば簡単だと思うんですけど、一個もその話が出ないんですよ。どこからその探求心が生まれてくるのか」(高崎)。「前回ああだったからそれをやろう、みたいな話が全然出なくて。全部新しく丁寧に作っています。WBBのふたりが芝居をすごく好きなのも伝わってくるし、熱いんです。出演できてよかったなって思います」(小笠原)。今回、瑞樹がアドバイザーを務め、大樹は*pnish*の初演と同じ役を演じる。「瑞樹さんが見に来てくださって、すごく丁寧にち密にコメディを作っている感覚があります。それこそ円形の劇場なので、立ち位置も細かく調整しながら。難しいからヒリヒリするけど、どんどん楽しくなっています。若手の勢いと熟練したWBBのち密さが合わさっていく感じ」(高崎)。小笠原は売れない映画監督(兄)、高崎は人気俳優(弟)という兄弟役で、普段から仲がいいふたり。共演が「楽しい」と口を揃える。「俺らはわかりやすい役で、バカふたり。過去にコメディで共演したことが生きてるなって感じます。ラクと言うと違いますが、ひとつ先の段階から作っていけるし、助かりますね」(小笠原)。高崎「今回観に来てくれる僕とケンケンのファンには『またWBB観たい』って言ってほしいよね、俺ら出てなくても。こういう作品が誰にでも観てもらえるようになったとき、演劇界はめちゃめちゃ明るくなると思う。本の力、演劇の力だけで魅了できる作品です。こんなおもろい作品は観なきゃひと夏損しますよ!」小笠原「今回は特に円形劇場だし、芝居のおもしろさ、生の舞台の楽しさが体験できると思います。老若男女楽しめる作品です。歴史に興味なくてもおもしろいので、迷ってる方にも本当にオススメしたい!」高崎「あと、これだけは言っとけって大樹さんに言われたんですけど、円形だから席が変わったらまた面白いです。チケット一枚買って満足しちゃいけない(笑)。大樹さんが言っとけって…」WBB vol.10.5『リバースヒストリカ2016』は7月27日(水)から31日(日)まで東京・品川プリンスホテル クラブexにて上演。チケットは発売中。取材・文:中川實穗
2016年07月20日高畑淳子主演で9年ぶりに復活上演を行う、森光子が最も愛した喜劇『雪まろげ』。その製作発表記者会見が7月7日に行われ、高畑、榊原郁恵、的場浩司、青木さやか、脚本・演出の田村孝裕が登壇した。【チケット情報はこちら】本作は、1980年から2007年までにシリーズ通算471回上演回数を重ねた人気作。森の「嘘つき女を演じてみたい」というひと言から誕生したキャラクター・温泉芸者の夢子の小さなウソが、雪まろげ(=雪転がし)のようにどんどん次のウソを呼び、やがて温泉街を揺るがす大きなウソになってしまう喜劇だ。今回の登壇者のほか、柴田理恵、山崎静代(南海キャンディーズ)、湖月わたるら個性豊かなキャスト陣が演じる。会見は、高畑と榊原が艶やかな芸者姿、青木は芸者の見習い姿で登場。高畑は、「この『雪まろげ』は森さんのために書かれた本です。森さんと同じようにはどうしたってできませんので、“思わず調子に乗ってウソをついてしまう”というようなところを核にして、掘り下げてやってみたいと思います」と抱負を語った。また、高畑は「森さんとお芝居していると“お芝居の神様”とお芝居しているみたいで。『お芝居で一番なにを大事にしてらっしゃるんですか』って聞いたら、『和ね』って。みんなで作るってことだと私は思うんです」と、森との思い出を披露。榊原も「最後の2009年5月の『放浪記』も観に行きましたが、舞台で階段を手すりもなくダダダダッと上がられるあの姿、防波堤で見送られる後ろ姿がとても素敵で。人間ああやって立ち姿でその人の人となりとかが分かるんだなあって。姿で見せてもらいました」と笑顔を見せた。青木は高畑の印象を聞かれ「怖いって思ってました」と突然の告白。「そんなことないよ!」と驚く高畑にしどろもどろになりながら「よろしくお願いします!」と距離を詰めた。詩才あふれる新聞記者を演じる的場は、劇中に出てくる詩に共感し「思わずその台本を持って妻の前でその詩を読みました」と話し、女性陣を驚かせた。この日は七夕ということで、願い事を書いた短冊を披露。高畑は「『雪まろげ』生きて終われますように」、榊原は「愛らしい銀子ちゃんが12月まで務まりますように」、的場は「世界平和」、青木はかつて森がスクワットを150回やっていたことを受け「スクワット100回」。4人揃って笹に吊るした。『雪まろげ』は、9月24日(土)・25日(日)東京・シアター1010を皮切りに、全国16会場で上演。東京公演は7月9日(土)午前10時より一般発売開始。取材・文:中川實穗
2016年07月08日20世紀最高のエンタテイナーと言われるジュディ・ガーランドの最晩年の姿を描いた『End of the RAINBOW』が7月9日(土)、開幕する。舞台『End of the RAINBOW』チケット情報2015年の初演に続き、酒と薬物でボロボロになりながらも最後まで観客を魅了し続けたジュディを彩吹真央、フィアンセでありマネージャーでもあるミッキーを小西遼生、ピアニストとして長年彼女を支えてきたアンソニーを鈴木壮麻が再演。鈴木は昨年、同役で読売演劇大賞優秀男優賞を受賞している。また、インタビュアー他2役は寺元健一郎が務める。今回、本番まであと10日という稽古場に潜入した。本作の第2幕で主に描かれるのは、ジュディが亡くなる数か月前に行われたショーで、彼女が歌いきるまでのほんの数時間。しかしそこには、彼女が映画『オズの魔法使』(ドロシー役)でスターの座を掴んで以来、実力派ミュージカル・スターとして一世を風靡したこと、実生活では10代から薬物に頼り、酒と薬物がないとステージに立てなくなっていたという背景が存在する。稽古は第2幕、目の前のステージにひるむジュディをアンソニーが励ますシーンから始まった。アンソニーはジュディの“ステージへの恐れ”を見ている。彼女に穏やかな幸せを与えることで立ち直らせたいと考えており、薬物や酒、そしてステージも彼女から遠ざけようとする。一方、ミッキーはジュディの“ステージへの執着”を見ている。彼女がステージで輝くためなら薬物も酒も与え、「観客が待っている」と自信をつける。ミッキーに奮い立たせられ、目がらんらんと輝き始めるジュディの表情、そして歌声からはスターの持つ揺るぎない実力が溢れ出る。幕に隠れた悲劇ともいえる人生だ。だが、3人の芝居が決してそう思わせなかった。ミッキーやアンソニーの前にいるジュディと、ステージの上にいるジュディ。彼女を奮い立たせるミッキーと、包み込むアンソニー。そこに存在する“想い”を目で、声で、歌で、表情で語り、こちらに悟らせる。再演ならではの深みを感じる芝居だった。劇中では、『虹の彼方に』をはじめジュディの名曲が数多く歌われる。ジュディ・ガーランドファンはもちろん、エンターテインメントを愛する人にオススメしたい作品だ。公演は、7月9日(土)から24日(日)まで東京・俳優座劇場、7月27日(水)に大阪・サンケイホールブリーゼ、7月30日(土)に茨城・水戸芸術館ACM劇場にて。撮影・取材・文:中川實穗
2016年07月07日歴史朗読劇『僕とあいつの関ヶ原』『俺とおまえの夏の陣』が、7月7日に開幕する。シリーズ3回目となる今回は『僕とあいつの関ヶ原』2チーム、『俺とおまえの夏の陣』1チームの計3チームで上演される。公演チケット情報各チームの稽古場に潜入した。まず、戦国時代の終焉をもたらした“関ヶ原の戦い”に向け、徳川家康と石田三成が率いる軍の武将の駆け引きや葛藤を描いた『僕とあいつの関ヶ原』。演じるのは荒田至法、尾関陸、黒羽麻璃央、染谷俊之、松田凌による【紫陽花チーム】と、猪塚健太、尾関陸、西川俊介、松田岳、矢部昌暉(DISH//)による【青竹チーム】の2チームだ。印象的だったのは、島左近と女性・染音を演じる荒田(紫陽花チーム)、松田岳(青竹チーム)だ。同じ本でここまで変わるかというほど役の印象が違う。その両チームで松平忠吉役の尾関も、同じ役、同じ台詞でありながらもやはり演じ方が違っている。“チームで作る”ことがよくわかり、同じ脚本を2チームが演じる楽しさを感じた。さらに紫陽花チームでは、三成と家康のどちらにつくか悩み、侍女・染音との恋も捨てられない小早川秀秋を演じる松田凌の“ヘタレ”な姿は新鮮。黒羽は、鬼と呼ばれる井伊直政と、友情に生きる大谷吉継のコントラストでそれぞれの役を引き立たせる。そして、染谷が演じる三成と家康がグッと空気を引き締めていた。青竹チームは、猪塚の熱演も印象的。家康の「がじゅり、がじゅり」と爪を噛む音だけで舞台上の空気を不穏に変え、圧倒的な恐ろしさを見せつける。矢部は、今回最年少の18歳という若さながら重みのある直政と吉継という役をのびのびと演じていた。小早川役の西川がスイッチのようにパチパチとモブ役を入れ替えていく様も面白い。そして、伊達政宗とその家臣・小十郎の過ごした長い年月を軸に戦国時代を描く『俺とおまえの夏の陣』を演じるのは、須賀健太、染谷俊之、黒羽麻璃央、猪塚健太。『夏の陣』チームはこの日が初稽古だったが、テンポが合うスピードも早く、ひとつ合わさるたびに魅力を増していく様子は観ていて驚いた。幼い梵天丸(政宗/須賀)の願いを命懸けで叶える小十郎(染谷)のシーンでは、互いの複雑に入り混じった感情、決意までしっかりと伝わるのがさすが。猪塚はかわいらしい政宗の弟と、政宗を毒殺しようとした母親を同時に演じるという難しいことをしていたが、魅力的に演じ分けていた。黒羽によるナレーションも舞台全体の空気を動かしており、朗読劇ならではの面白さを感じた。『僕とあいつの関ヶ原』は7月7日(木)から9日(土)、『俺とおまえの夏の陣』は7月10日(日)に東京・天王洲銀河劇場にて。取材・文:中川實穗
2016年07月06日ニューエスト・モデルの結成30周年を記念して、7月6日(水)にベスト盤、8月3日(水)にトリビュートアルバムがリリースされる。同バンドの中心人物、中川敬がぴあのインタビューに答えた。【チケット情報はこちら】1985年に結成され、日本のロック・シーンに大きな影響を与えたバンド、ニューエスト・モデル。その後、盟友バンド、メスカリン・ドライヴと1993年、同時に解散。ふたつのバンドを統合し、ソウル・フラワー・ユニオンが結成され現在に至る。「30年経った感覚なんてまったくないですよ。もちろんニューエスト・モデルは違うバンドやねんけども、いまとなっては、奥野(真哉)と30年やってる、ひと続きのバンドの感じがある。だからニューエストは初期ソウル・フラワー・ユニオンっていう感じやね、俺の中では」インディで活動し、レーベルごとメジャーと契約するなど、音楽性だけでなくバンド環境の先駆でもあった彼ら。「若さに溢れてて、例えば、パンク・バンドがメジャーから出すのはかっこ悪いとか、若気の至りで大企業の太鼓持ちはしたくないとか、相棒の(メスカリン・ドライヴの)伊丹英子も似たような考えでね。一緒にレーベル立ち上げて、メジャーから誘いがあったときに、ヒデ坊と条件を決めた。大阪に住み続けること、2バンドでレーベル契約できること、作品を出す時期は自分で決める、外部プロデューサーをつけない、と。この無茶な条件を飲んだ会社が1社あった」阪神淡路大震災の際にはソウル・フラワー・モノノケ・サミットとして出前慰問ライブを展開。「来れる人間だけ来ればいいって決めたのに、毎回、メンバー全員ちゃんと来る。いい仲間やと思ったよ。みんな音楽人生の転機になったと思う。本業をバリバリやりながら、3年間で200回以上やったよ」その活動から多くのミュージシャンからリスペクトを受ける彼ら。トリビュート盤にも、BRAHMAN、大森靖子、岸田繁(くるり)、スピッツ、仲井戸麗市、など、若手、同世代、先輩まで個性溢れる面々が参加した。「俺、全部好きやね。ありがたいし嬉しいよ。ワクワクしながら聴かせてもらってる。それぞれの持ち味でやってくれてるしね」ソウル・フラワー・ユニオンは6月に大阪、東京、宮城で30周年記念ツアーを敢行したばかり。7月から8月にかけて中川敬の弾き語りツアーを展開し、9月にもバンドで福岡、大阪、東京とツアーを廻る。「ニューエスト初期の曲を選んで演ってる。お客さんにとっては意外やと思うけど、今の俺にとっては愛すべき音楽の原風景でね。俺はここから始まったんやなっていう。2年後はソウル・フラワー・ユニオンの結成25周年やし、原点回帰的なアルバムを作りたいな。結構怒ってるしね、世の中に(笑)。ちょっとうるさいのをやりたい感じがあってね」9月のツアー、チケットの一般発売は7月23日(土)午前10時より。取材・文:浅野保志(ぴあ)
2016年07月05日赤ちゃんたちが大人になってママのピンチを救う舞台『ママと僕たち』 ~たたかえ!!泣き虫BABYS~ が7月8日(金)に開幕する。本作は2013年に始まった『ママと僕たち』シリーズの3作目。今回の赤ちゃん役は、シリーズ全作に出演中の原嶋元久に加え、佐藤永典、木戸邑弥、井澤勇貴、三浦海里、上村海成の6人。大人役には、同じく全作出演中の今井ゆうぞうのほか、デーモン閣下も出演する。初の通し稽古を取材した。舞台『ママと僕たち』 ~たたかえ!!泣き虫BABYS~ チケット情報演出の村上大樹が「みなさんの予想を超えていく、最新版にして最高の一番濃いもの、面白いものが観れることは間違いないです!」と語る本作。描かれるのは、時系列としてはシリーズ1、2作目よりも前。公彦(原嶋)が生後7か月のときに出会った赤ちゃん・朝陽(木戸)、金次郎(三浦)、柾(佐藤)と、金次郎のお兄ちゃんで3歳の愛之助(井澤)、謎の赤ちゃん(上村)たちのストーリーだ。稽古場で、赤ちゃんたちのクオリティに思わず笑ってしまった。彼らの演技力によるものだが、“赤ちゃん風”では決してない。本当に赤ちゃんに見えるので、観ていて照れを感じない。ママを見つめる目は最高に真っ直ぐだし、遊んでいるときは驚異の集中オーラを放っている。思わず赤ちゃん同様のかわいさを感じてしまう。また、井澤の3歳児っぷりにも注目。泣きわめく姿もママに甘える姿も、3歳児らしさ炸裂。ひと味違う姿が見られるはずだ。だからこそそんな彼らがふと大人びたことを言ったり、キレッキレでエグザイル風の歌やダンスを披露したときの爆発力はすごい。さらに、託児施設の先生(内藤大希)とママ(山田まりや)の昼ドラ風恋愛模様や、業界風をビュービュー吹かせるイバリD(佐藤貴史)など、大人チームも“脇を固める”に収まらない魅力なのだが、その中でもやはり格別の存在感だったのが、歌のお兄さんを演じる今井とデーモン閣下。「パロディで出てきそうな人物が本物だから、何やっても感動的」と村上も言うように、長い時間をかけて積み重ねてきた本物のオリジナリティが、本作では圧倒的な面白さに変わる。今井VS閣下のシーンは、本作でないと絶対に観られない姿のはずだ。舞台の後には、夏休み特別企画としてミニライブ『バブライブ!』も開催。『バブバブポン』など歴代のママ僕SONGSを披露するほか、日替わりコーナーも。ペンライトを持って参加しよう。面白さも温かさも感動もあるが、なにより楽しい。一度観るとまた観たくなる、クセになる作品だと感じた。公演は、7月8日(金)から18日(月・祝)まで東京・AiiA 2.5 Theater Tokyo、7月22日(金)から24日(日)まで大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて。取材・文:中川實穗
2016年07月05日2014年に宝塚歌劇100周年を記念して上演され、7万人を動員した、世界初・女性キャストのみの宝塚歌劇OGバージョン『CHICAGO』が、7月9日(土)に神奈川・KAAT 神奈川芸術劇場大ホールで開幕。NY、東京、大阪を巡るワールドツアーが開催される。本番を間近に、代表曲を抜粋した公開稽古が行われた。宝塚歌劇OGバージョン『CHICAGO』チケット情報まず、序曲『Overture』~『All That Jazz』では、和央ようか演じるヴェルマが舞台中央から艶やかに登場。朝海ひかる演じるロキシーが愛人を殺害する、本作でも代表的な曲が披露された。続いては、麻路さきが演じる、大金を積めば無罪にしてくれるという敏腕弁護士・ビリーの登場シーン。大きな羽根扇に囲まれて『All I Care About』を歌う姿はビリーという人物を一瞬で印象付ける、大胆で華やかな演出だ。姿月あさと演じるビリーが、大和悠河演じるロキシーをマリオネットに見立て、記者会見で腹話術のように歌う『We Both Reached For The Gun』は、映画版でも印象的なシーンのひとつ。その記者会見によって朝海ひかる演じるロキシーが一躍スターダムに上り詰め、「私、スターよ!」と喜びを歌い上げる『Roxie』では、朝海の滑らかに動くセクシーな腰も見どころだ。ビリーがいかに法廷、世間を支配しているかを歌い上げるナンバー『Razzle Dazzle』は、峰さを理演じるビリーがダンサーを支配していく姿に圧倒的存在感が漂う。公開稽古の最後には、NY公演でのみ上演する『タカラヅカ・アンコール』より『すみれの花咲くころ』を。宝塚歌劇団の演出家・三木章雄が今回のためだけに構成したレビューショーは、初風諄の美しい歌声の中、キャストが全員登場。純白の羽根扇が美しく舞い、宝塚歌劇の伝統と歴史の華が披露された。レビューショーは、横浜公演でのお見送りセレモニーで一部上演予定。公開稽古後に行われた囲み取材では、峰が「ワクワク感と緊張感が混ざった感じ。よりいい空気感が出るように、アンサンブルも含めて一緒に上がっていきたい」と話すと、麻路も「ずっとこのまま続いててほしいなって思うほど、稽古場でのひとときが楽しい。久しぶりに男役をやれて幸せ」と笑顔に。『タカラヅカ・アンコール』では、その日のメインキャストが羽根を背負う演出もあるそうで「ぜひNYまで観にいらしてください!」(朝海)と盛り上げた。最後に峰は「アンサンブルの中には私が退団してから生まれた方もいるんですけど、魂がやっぱり同じなんだなってひしひしと感じます。そこに退団後の経験が上乗せされているので、OG公演は魅力がある」と話し、公演への期待を高めた。主要キャストはダブルキャストもしくはトリプルキャスト。公演は、7月9日(土)から14日(木)のKAAT 神奈川芸術劇場大ホールを皮切りに、7月20日(水)から24日(日)にはNYで上演。8月に東京・大阪公演を行う。撮影・取材・文:中川實穗
2016年07月04日舞台『BENT』が、7月9日(土)から東京・世田谷パブリックシアターで上演される。本作は、第二次世界大戦中のドイツ・ナチスの強制収容所で密かに気持ちを通わせる男性同士の愛を描いた作品。極限状態で愛を貫くふたりを佐々木蔵之介と北村有起哉が演じ、2013年に『読売演劇大賞』最優秀演出家賞と最優秀作品賞をW受賞した森新太郎が演出を務める。その稽古場に潜入した。舞台『BENT』チケット情報この日、稽古場で演じられたのは冒頭からの3つのシーン。舞台は、二日酔いのマックス(佐々木)が、同棲中の恋人・ルディ(中島歩)に、昨夜の自分の様子を尋ねるところから始まる。酔うと記憶をなくしてしまうマックス。そこに昨夜彼が“お持ち帰り”したウルフ(小柳友)が素っ裸で登場する。マックスは、自分の痴態を知って落ち込んだり、困るとすぐに「ルディ!」と頼ったり、反省したそばからウルフの誘いを拒みきれなかったり。だらしないがどこか愛らしさを感じる。そんな恋人に呆れながらもなんだかんだ世話を焼いてしまうやさしいルディ。ふたりの性格や関係性、そして魅力が伝わってくるシーンだ。シーンを終えると、台詞の抑揚やソファに座るタイミングなど、森からの丁寧なダメ出しが入る。その場で何度も同じセリフを繰り返しながら、細かな修正を加え、少しずつ芝居を作り上げていく。すぐわかるほどの大きな変化でなくても、伝わり方が全く違うことに驚いた。ひとつの台詞、ひとつの動きがより生き生きと場景を伝え、物語に引き込んでいく。その後も、ルディが働くクラブのママ・グレダ(新納慎也)のもとにふたりが逃げ込む場面や、マックスが叔父のフレディ(藤木孝)と生き延びるための交渉をする場面が演じられた。グレダからは一晩を境に同性愛者が迫害対象になったことを教えられ、叔父からは同性愛を禁じる法案が通過したことを伝えられる。ゴージャスな楽屋で、のどかな公園で、グレダやフレディの言葉が空気を不穏に変えていく。そんな中でもなんとか“ふたりで”助かろうとするマックス。誰もが知る史実の上でその姿は痛々しい。稽古場は和やかな雰囲気の中、台詞を繰り返す声が絶えず聞こえる。北村は役作りで食事制限をしているようで、佐々木が「かなり痩せたよな」と声をかけていた。その側では役者がよりスムーズに動けるよう、小道具の調整が行われている。演出家、演者、スタッフ、誰もが作品に真摯に取り組んでいた。幾度も上演されてきた作品だが、今作は真っ直ぐ、そして深く描かれる“愛の物語”が観られるはずだ。PARCO Produce『BENT』は、7月9日(土)から24日(日)まで東京・世田谷パブリックシアターにて。文:中川實穗
2016年07月04日ミュージカル「忍たま乱太郎」第7弾 再演~水軍砦三つ巴の戦い!~が、東京ドームシティ シアターGロッソで上演中だ。ミュージカル「忍たま乱太郎」チケット情報尼子騒兵衛著作の漫画「落第忍者乱太郎」(朝日新聞出版刊)と、それを原作にしたアニメ「忍たま乱太郎」(Eテレ)をミュージカル化した本作。2010年の第1弾から“忍ミュ”の愛称で親しまれ、本作は今年1月に上演された第7弾の再演。今回はシリーズ始まって以来の静岡、尼崎での旅公演も行う。中でも尼崎は、尼子騒兵衛の暮らす街であり、土地名がそのままキャラクターの名前になっているなど、『忍たま乱太郎』の聖地とも言える場所。描かれるのは、シリーズ初登場のキャラクター・兵庫水軍と忍術学園六年生たちとの“ファーストコンタクト”。忍者嫌いで知られる兵庫水軍の男たちが、忍術学園の生徒たちとどのようにして出会い、また理解しあうようになったのか、という原作には描かれていないオリジナルストーリーで、兵庫水軍が原作に登場する以前の「エピソードゼロ」となっている。第7弾初演で好評を博した、足を踏み鳴らして踊る“ストンプ”や、20人以上の大迫力の殺陣、楽しいマルチエンディングはもちろん、今作では、ヒーローショーも行われる“シアターGロッソ”という劇場を生かし、派手なワイヤーアクションや新曲も新たに追加。地上から空中まで楽しそうに動き回る忍者たちの姿に、子供から大人まであっという間に引き込まれるはずだ。囲み取材では、初めての旅公演について、潮江文次郎役の海老澤健次が「歴代のメンバーが一生懸命、一弾ずつ作ってこられたおかげで僕たちが行くことができます。今までの先輩方の気持ちも持って、代表として、たくさんの方々にこのミュージカル『忍たま乱太郎』を知っていただいて、元気を与えて、みんなが明るくなるようにがんばりたい」。また、立花仙蔵役の鐘ヶ江洸は「“日本を元気にしていく”っていう目標で僕たちはやっています。舞台を観て、明日もがんばろうって思ってもらえるように、僕らは精一杯舞台上で生きますので、楽しんでもらえたら!」と意気込みを語った。本作は、7月3日(日)まで東京・東京ドームシティ シアターGロッソ、7月15日(金)から17日(日)まで兵庫・あましんアルカイックホール、7月23日(土)・24日(日)は静岡・静岡市民文化会館にて上演。取材・文:中川實穗
2016年06月30日韓国の劇作家・李康白(イ・ガンペク)が1993年に発表した傑作4人芝居『鱈々(だらだら)』が、10月に開幕する。出演は藤原竜也、山本裕典、中村ゆり、木場勝己。演出を手掛けるのは、栗山民也。秋から始まる稽古に先がけ、都内スタジオで行われた藤原と山本のビジュアル撮影現場に潜入した。【チケット情報はこちら】塗装がはがれコンクリートがむき出しになった壁に、武骨な鉄骨を立てたスタジオは、藤原演じるジャーンと山本演じるキームが長年働き暮らす、倉庫のような趣。同じつなぎを着た藤原と山本だが、藤原は“几帳面で世話好き”な役柄のジャーンらしくきちんと着こなし、山本は“本能のまま”なキームらしく半分脱いで腰に巻いたタンクトップ姿。ツーショット撮影でただ並んで立つだけでも、ふたりのコントラストを感じさせられる。鍋を囲むショットの撮影準備中には、体勢を崩してニコニコとお喋りするふたり。そこに運ばれてきたのは、干した鱈の頭がのぞく鍋。実はこの鱈の頭は、本作の韓国原題である「プコテガリ」という食材で、舞台中でも重要な役割を果たすアイテム。具材をよそった器を手に撮影開始するも、スープを匂って微妙な表情をする藤原にスタッフは思わず笑ってしまう。撮影後は、ふたりでオフィシャルの動画撮影に。山本が「竜也くんといつか共演したいなと思って11年経った」と告白し藤原を驚かせるなど、和やかな雰囲気でお互いの印象などを語り合った。撮影後、山本は念願だった藤原との共演について「ずっと思ってたことなので叶ってよかったです。4人芝居で密にお芝居できるというのも“ラッキー!”って」と笑顔を見せつつも「負けないように食らいついていきたい」と気合を見せた。「2016年を締めくくる舞台になると思いますし、自分なりに気合を入れて、終わったときに『こいつ変わったな』とか『成長したな』とか、ファンの人や観に来てくれたお客さんに思ってもらえるようなものを見せたい」藤原は、本作の出演について「栗山さんとは1、2年に1本やらせてもらう機会があって。最近も何か一緒にできたらいいなと思ってたのですごく嬉しい」。作品については「今回、鱈の煮込んだ鍋が出てくるけど、そのグツグツ煮立った血のような熱いものがある本。それを栗山さんの演出でやらせてもらうのは、今の僕にとっていいことなんじゃないかと思っています」と語った。「個性的な役者4人で、栗山さんのもとでやらせてもらえるっていうのは楽しみ。しっかりと皆さんに恥ずかしくないような芝居をつくれたらと思います」舞台『鱈々』は、10月7日(金)から30日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場にて公演後、全国6都市を巡回。取材・文:中川實穗
2016年06月28日ディズニーの名曲の数々を、フルオーケストラの演奏とニューヨークでも活躍するヴォーカリストたちの歌声で届ける、大人のための音楽会「ディズニー・オン・クラシック ~まほうの夜の音楽会 2016」が今年も上演される。「ディズニー・オン・クラシック」チケット情報今年のメイン演目は映画『アナと雪の女王』。エルサ役を演じるヴォーカリストは、『シスター・アクト(天使にラブ・ソングを)』や『キャッツ』(グリザベラ役)など、豊富なステージ経験を持つ、トリシア・タンガイ。指揮は、第1回(2002年)よりタクトをとるブラッド・ケリー。今回、来日したブラッドとトリシアに話を聞いた。『アナと雪の女王』についてブラッドは「世界中にインパクトを与え、ディズニー映画の新時代をつくった作品。楽曲も、ディズニー音楽でありながら、これまでとは違うサウンドやオーケストレーションのされ方が魅力」だと話す。演奏するのは、ブラッドも「このオーケストラが大好き」というオーケストラ・ジャパン。昨年創立されて以来、型にとらわれない活動と、照明や特殊効果を用いた新しいコンサートスタイルで楽曲を届ける。今回参加するトリシアについては「『レット・イット・ゴー』を本当の意味で歌える人は少ない。その1人が彼女なんじゃないかと思う」とブラッド。トリシアは「プレッシャーをかけるのはやめてください(笑)」と笑いながらも、「この日本という美しい国をまわりながら新しい経験ができるということ、とても楽しみにしています。真摯に向き合っていきたい」と話した。今回のテーマは「“真実の愛”は心をとかす。」「『アナと雪の女王』のユニークなところは、今までのディズニー映画の“愛=ロマンティック”というイメージを打ち破り、家族の愛に着目したところ。姉妹が過去を克服し、もう一度美しい愛を見出すというストーリーに、今回のテーマは触れていると思います」(トリシア)。また、今回は“アナ雪”以外にも、組曲「火の鳥(ストランヴィンスキー)」が初登場。映画『ファンタジア2000』の映像と共に音楽を奏でる楽しい演出になるという。「お客様の中には、家族や友達との時間を楽しみたい人もいるでしょうし、悲しいことが起きて元気が欲しい人もいると思います。この公演を観ることで、心を開いたり、テーマの“心をとかす”ような経験になることを願っています」(トリシア)「ディズニー・オン・クラシック ~まほうの夜の音楽会 2016」は、9月23日(金)から12月25日(日)まで、全国36会場54公演を開催。ディズニーヴィランズ(悪役)スペシャルや、クリスマス・スペシャルなど、公演日によって異なる特別プログラムなども用意されている。取材・文:中川實穗
2016年06月24日湖月わたるら宝塚歌劇団OGを中心とする“BAD GIRLS”がフラメンコに挑戦する『フラメンコ・カフェ・デル・ガト』が、6月25日(土)の開幕に先がけ、公開稽古で4曲を披露した。「フラメンコ・カフェ・デル・ガト」チケット情報本作は、2012年の『BAD GIRLS meets BAD BOYS』、2014 年の『Argentango』に続くダンスレジェンドシリーズの第3弾。今回は、第1弾から出演する湖月わたる、水夏希、原田薫に加え、昨年2月に宝塚歌劇団を退団した緒月遠麻が初参戦。さらに、2014年公演で“BAD BOYS”に参加した大貫勇輔と、本場スペインのダンサー4人で作り上げられる。構成・演出・振り付けは、フラメンコの名門マリア・パヘス舞踊団の舞踊手・振付家であるホセ・バリオス。ホセは、スペインフラメンコ界で最も権威のある賞「フラメンコ・オイ賞」男性舞踏家部門・最優秀賞を受賞したばかり。フラメンコの本場・マドリッドでの稽古を終え、6月13日に帰国したばかりというキャスト達。稽古場には、約1か月間の稽古を共に過ごす中で生まれたであろう濃厚な空気が漂う。ACT1は、19世紀に存在したフラメンコショーを観劇できる酒場「カフェ・デル・ガト」で起きる愛と悲劇の物語。その中から披露されたM1「GALLARDO」、M2「Carmen Overture」は大迫力の群舞。まず振動を感じるほどのサパテアード(足を踏み鳴らす動き)に圧倒され、そして情熱的なダンスに心を奪われる。照明もセットもない稽古場でも、その熱い空気に飲み込まれてしまいそうなフラメンコは、実際のステージでは更に強烈な魅力を放つはずだ。M4「Yo solo quiero caminar」は芝居仕立てで、湖月演じるローラと闘牛士が互いに惹かれ、想いを伝え合うように踊る姿がセクシーで印象的。その仲を裂こうとするローラの弟役・大貫の演技にも注目だ。ACT2は、アンダルシアをイメージしたダンスショウ。披露されたM6「FLAMENCO JAZZ」では、ACT1から雰囲気をガラリと変え、BAD GIRLSの4名がマニッシュなパンツスタイルで登場。宝塚歌劇団時代の男役を彷彿させる姿で披露されたクールなダンスは必見だろう。稽古後の囲み取材では日本人キャストの5人が本作について、「言葉より、観て、感じていただくと魅力がわかる」(湖月)、「フラメンコは難しいイメージがあるかもしれないが、気負いなく楽しんでもらえるはず」(水)、「東京に戻ってまたいい雰囲気になった。楽しむ雰囲気が伝われば」(原田)、「スペインチームの足さばきはすごい」(緒月)、「僕らにしかできないフラメンコを観てもらいたい」(大貫)と話した。公演は、6月25日(土)・26日(日)に大阪・サンケイホールブリーゼ、6月29日(水)から7月4日(月)まで東京・東京芸術劇場 プレイハウスにて上演。撮影・取材・文:中川實穗
2016年06月22日ラッパ屋第42回公演『筋書ナシコ』が、6月18日に東京・紀伊國屋ホールで開幕した。ラッパ屋『筋書ナシコ』チケット情報本作は、劇団主宰・鈴木聡による書き下ろし作品。主人公は、40代のフリーランス雑誌ライター・梨子。バツイチ、独身、収入は不安定。唯一の発注元である出版社はネット時代のあおりを受けて倒産の危機…。“人生の筋書き”が行方不明の梨子(ナシコ)を中心に、パーティー会場の“共有スペース”で起きる人間模様を描くワンシチュエーション・コメディだ。共有スペースで出会う(居合わせる)15人の登場人物は、フリーランス、社長、会社員、地方の名士など職業もバラバラだし、世代もバラバラ。濃いキャラだらけだが、バブル世代を経たか否かや、デジタルネイティブか否かなど、世代のリアリティも反映されており、「いるいる!こんな人」「私、こういう考え方する」と引き込まれる。そんな“あるある”の連続に、客席は笑ったり、共感したり、驚いたり。客席全体が同じ箇所でドッと笑うこともあれば、バラバラと笑い声が上がることもあり、観ている人の背景によって反応が違うのだと感じた。脚本・演出の鈴木が“出版不況、格差、人は見た目が9割問題、メディアの危機、高齢者婚活、東京と地方、年齢詐称疑惑、舛添さん、センテンススプリング問題、ダメージジーンズ問題”と紹介しているように時事ネタも多く、今の時代の縮図のような状況が多く描かれている。だがそれらをただ茶化して笑わせるのではなく、まず鈴木の温かな目線があり、梨子役の岩橋道子をはじめ役者たちの芝居が魅力的に描き出す。だから観客は何も考えずに思い切り笑えるし、晴れやかな気分になれる。リラックスして自由な空気で楽しめるムードも舞台から漂ってくるものだろう。演劇好きやラッパ屋ファンはもちろんだが、演劇ビギナーも楽しめる作品。特に仕事をしている人なら、職場のうるさい上司やイマイチ理解できない部下、さらにはあまり関わり合いのない取引先の人まで、なんだか愛おしく見えてきそうだ。物語には清々しい大団円が待っている。そんな大団円の末に生まれた、梨子の“人生の筋書き探し”の行方はぜひ劇場で確かめてほしい。ラッパ屋第42回公演『筋書ナシコ』は、6月26日(日)まで、東京・紀伊國屋ホールにて。チケットは発売中。取材・文:中川實穗
2016年06月21日舞台『ダンガンロンパ THE STAGE~希望の学園と絶望の高校生~2016』が、6月16日に東京・Zeppブルーシアター六本木にて開幕。その前日に、囲み取材と公開ゲネプロが行われた。同名人気ゲームの舞台化である本作。2014年に初演され今回はその再演という形だが、初演に続き主演を務める本郷奏多が「今回、再演と言われることも多いのですが、キャストも変わっていますし、なにより演出が田尾下哲さんに変わっておりまして。見せ方から何からかなり変わったかなって。前回観ていただいたお客様にも楽しんでいただけると思います」と話すように、演出も脚本も大きく変化。山崎静代(南海キャンディーズ)や、モノクマの声を担当するTARAKOなど、新キャストにも注目だ。ゲネプロ前に行われた囲み取材では、原作ファンであり、アニメ新シリーズでは声優として参加する本郷が「『ダンガンロンパ』が好きな方だったら必ず『おお…』と唸ってしまうような変更点が1か所あります」と見どころをチラリ。初演に続き、超高校級のギャル・江ノ島盾子を演じる神田沙也加は、舞台に加えアニメのテーマ曲も担当。「私は『ダンガンロンパ』シリーズのファンです。ゲームからやりこんできて、新作を心待ちにして、アニメに興奮して、グッズをいっぱい買って(笑)。本当にガチなファン。(自身が演じる)江ノ島盾子というキャラクターが好きで、自分がその大好きな存在になれるというのは、私の中のシンデレラストーリーをいただいたような気持ち。ファンとして最後までやり続けたい」と熱く語った。今作の見どころのひとつは、アンサンブルが生かされた演出。“モノクマ”風着ぐるみ&メイク姿のアンサンブルキャスト達が、映像で表現しそうな部分も人力で描き出し、尚且つその表現は洗練されている。中でも学級裁判の結果による「おしおき」シーンは注目。原作でも胸をえぐる衝撃シーンだが、その残虐さを、音と振り、そしてキャストの演技力という演劇的表現によって、印象的かつ魅力的なシーンへと昇華させている。登場キャラクターは15人と多いが、各々が徹底的に演じ切っているため、たとえ原作未経験でもどんなキャラクターなのか一目でわかり、混乱することもない。特に神田の怪演ともいえる強烈な芝居は見どころ。ギャル風のかわいらしいルックスで見せつける江ノ島盾子は、一度体験すると必ずまた観たくなる魅力を持っている。公演は、6月26日(日)まで東京・Zeppブルーシアター六本木にて上演後、愛知、大阪、神奈川を巡回。取材・文:中川實穗
2016年06月16日パルコ劇場で25年間上演され続けてきた朗読劇の金字塔『ラヴ・レターズ』が、パルコ劇場クライマックス・シリーズ2『ラヴ・レターズ2016クライマックス・スペシャル』として6月27日(月)、28日(火)に上演される。【チケット情報はこちら】1989年にニューヨークで初演された本作。パルコ劇場では1990年8月に幕を開けて以来、450組超のカップルが出演。四半世紀の時を経てもなお、演者や観客の心をとらえ続けている。現パルコ劇場の一旦休館に伴うクライマックス・シリーズ公演に出演する、柳下大とイモトアヤコに話を聞いた。一度テレビドラマで共演しているが、しっかりとした共演は今回が初というふたり。柳下は「面白いなって思いました。完璧に想定外ですよね。普段女優さんだけやられてる人とは違った感情が出てくると思うのでワクワクします」、イモトは「(柳下のことを)まだよく知らないので、お手紙だけでやり取りするっていうのはいいなって。むしろ本番を通して、アンディを通して知れたらいいなって思っています」。“稽古一回、本番一回”が原則の本作について柳下は「普段の舞台では役を固めていく作業があるんですけど、今回はそれができない。技術とかではなく、そのとき生まれた感情で、自分も楽しむしかないなと思っています。なにしろ本番も1回しかできないので。その場でしか観れない、その日にしか観れないっていうところも楽しみですよね」。パルコ劇場はイモトにとって『君となら』(三谷幸喜演出・2014年)で初めての舞台を経験した場所。休館前の出演についてイモトは、「三谷さんが本番前に誰もいない客席を見せてくださって、座った跡のハートマークがたくさんあったなとか、毎日夏に通ってたあのエレベーター、なかなか来なかったなとか(笑)。いろんな思い出があるから、そこでできるのは嬉しいですね。すごく大好きな劇場です」と語った。「僕がこの本で一番大事にしたいのは、一番最初の手紙のやり取り。そのときにメリッサに対する感情が湧いて、それがずっと続いていくわけなので。そこを大事にすれば、あとは感情を積み重ねていくだけ。先のことは全部ないと思って、そのときに生まれた感情で演じようと思っています」(柳下)「かき乱したいですね!自分の奥の奥のものが出ちゃうし、出さなきゃいけないと思うし。6月27日(月)19時から約2時間の間に何が起こるんだろうって観に来てもらえるとすごく嬉しい。我々もそういう気持ちでやりたいです」(イモト)舞台は、6月27日(月)柳下大&イモトアヤコ、28日(火)三宅弘城&野々すみ花で上演。取材・文:中川實穗
2016年06月16日佐々木蔵之介と北村有起哉が、ナチスの強制収容所という極限状態で貫いた愛を描く舞台『BENT』。7月の上演に先がけ稽古場でトークセッションが行われ、ミッツ・マングローブの進行のもと、主演の佐々木、北村、演出の森新太郎が本作について語り合った。舞台『BENT ベント』チケット情報本作は、第二次世界大戦下のドイツを舞台に、セクシャルマイノリティの人々が受けた弾圧と、その中で育まれる究極の愛を描いた物語。ゲイをストレートに表現した世界で初めての演劇作品と言われており、佐々木演じる主人公・マックスを、海外ではリチャード・ギア、日本では役所広司や椎名桔平といった名だたる名優たちが演じてきた。演出の森は「戯曲を読んだのは10年位前になると思うのですが、そのときとにかく泣けちゃったんですね。涙腺が崩壊して、こんな泣けてしまったものは自分で演出できないんじゃないかと思うような作品でした。今回、パルコに提案する前にもう一回読んだらやっぱり泣けてしまって。演出プランを作るときに読んだらまた泣けてしまって。こんなに泣ける戯曲は僕の演劇人生ではない」。佐々木は「戯曲を読んでいくと、僕と北村さんの間で互いの顔を見合わせることもなく、触れることもなく、ふたりで愛を確かめ合うシーンがあって。これはまさに演劇の醍醐味だなと。できるかどうかわからんけど、森さんとやってみようと決めました」北村は「僕もほんとに読む度に泣いちゃって。演じてるときも本当にクッとこらえてがんばんないとってくらい、作品としてすごく力がある。ちょっとでも客観的になると泣きそうになるので、しっかり手綱を握っとかないと」と、それぞれ本作について熱く語る。ミッツからの「同性愛者を演じるというのはいかがですか?」という質問には、佐々木が「北村さんが稽古場で、裸足に雪駄をはいて、足を触りながら本を読んでるんですけど、それすら愛おしく見えてきた」と告白。北村は「エアセックスのシーンがあるんですけど、お客さんもドキドキすると思います」と見どころを紹介した。森は「ナチスの抑圧というのが前面に出ていますが、差別や偏見の壁というのはいつの時代、どの社会でもなくなったことはない。数日前には銃乱射事件も起きて。日本ではあそこまでのことはないですけれども、ああいう社会の不寛容さがある以上、この作品はやられ続ける価値があるんじゃないかと思います」と語った。「国境も人種も性別も超えたストレートな愛の話です。ぜひ劇場で観て頂ければ」(佐々木)PARCO Produce『BENT』は、7月9日(土)から24日(日)まで東京・世田谷パブリックシアターにて。撮影・取材・文:中川實穗
2016年06月15日乙女ゲームを原作にした『黒蝶のサイケデリカ THE STAGE』が8月に東京・紀伊國屋ホールにて上演される。本作は、同名の乙女ゲーム(PlayStation Vita向け)が原作。過去の記憶を失った少女・紅百合(べにゆり/藤本かえで)が、謎めいた洋館で緋影(ひかげ/山田ジェームス武)らと出会い、拳銃で「黒蝶狩り」をしながら“万華鏡の欠片”を集めていくサスペンスラブストーリー。従来の乙女ゲームとは異なる世界観で人気を博し、熱狂的なファンも多く、初の舞台化に注目が集まる。『黒蝶のサイケデリカ THE STAGE』チケット情報今作で座長を務める山田ジェームス武に意気込みを聞いた。実は「恋愛ゲームが好き」という山田。原作もプレイ中だそうで、「乙女ゲームの世界観はわかっているつもりでしたが、『黒蝶―』はサスペンス要素が強くて他とは違う雰囲気。引き込まれました」と語る。自身が演じる緋影に関しては「僕は、背伸びしてるんじゃないかと思っています。大人な面やクールな面は、実は取り繕ってる部分なのかなって。いろいろ抱えてる分、本当はしんどいんじゃないですかね。でもやさしくてお茶目な一面もありますね」。山田自身はどうかと聞いてみると、「僕はね、悩みがないんですよ(笑)。本当に真逆。そういう役は楽しみも多いです。緋影として中からしっかり作っていきたいです」。乙女心をときめかせるのも原作の魅力のひとつ。「キュンキュンさせられるかなあ?僕、どっちかというと残念なほうですよ。女性の求めるものが正直よくわからない」と笑う。「紅百合として恋するなら山都(やまと)。男らしさと荒っぽさの中にやさしさがあってキュンキュンします!同性として憧れるのは鴉翅(からすば)。本質的にいいところがたくさんあるからあの立ち位置でいられるんだと思う。……でも緋影が一番です!」舞台で初めての座長を務める山田。「がんばらないとなっていうのはありますけど、僕、気負っちゃうとダメなタイプなので、みんなで作れたらと思っています。今作は、初座長で、乙女ゲームも初で、アクションも初で、女性との恋愛ものも初。本当に初めてのことだらけなんですけど、一つひとつにしっかり取り組んでいって、皆さんに『黒蝶のサイケデリカ』をより好きになってもらえる舞台を届けたいです」原作や舞台についてたくさんのことを語る山田の姿から、本作への意気込みを感じられた。『黒蝶のサイケデリカ THE STAGE』は、8月3日(水)から7日(日)まで、東京・紀伊國屋ホールにて。取材・文:中川實穗
2016年06月13日昨年、好評を博した新感覚の歴史朗読劇『僕とあいつの関ヶ原』『俺とおまえの夏の陣』が約1年ぶりに再演される。本作は、原作・吉田恵里香(映画『ヒロイン失格』脚本)×演出・中屋敷法仁(劇団「柿喰う客」)という異色タッグによる朗読劇シリーズ。前回からキャストを一新。『僕とあいつの関ヶ原』2チーム、『俺とおまえの夏の陣』1チームの計3チームで、戦国武将たちの友情、忠誠、裏切り、愛情と、戦国末期を駆け抜けた男たちの生きざまを描く。今回、猪塚健太、須賀健太、染谷俊之、松田岳にそれぞれ意気込みを聞いた。チケット情報朗読劇の経験者である染谷はその魅力を「視覚に頼らず、情景や心情をお客さんが好きに想像できるのが良さだと思います。演じる側としては、身体を使わずに声だけでどう表現するかというのが楽しいところですね」と語る。今作はこれから作られていくが、前作を見た須賀が「演者の熱量がすごく大切な作品だと思いました。朗読劇は、立って読む様子ををみせるイメージがあったんですけど、この作品は意外と動いていたりして。新しい試みなのかなと思います」と話す通り、本作は和服姿で動きも交えて朗読する独特のスタイル。一人何役も演じることもあり、猪塚は「衣裳もメイクも変えずに何役も表現するのは、この作品ならではの特徴。それをどこまで表現できるか。メインの役以外でもその人の生き様があると思うので、役が生きるように演じ分けたい」と意気込みを語った。舞台となる戦国時代が好きだという松田。「戦国時代って合戦の勝ち負けのイメージがあるんですけど、実は政治的な部分が泥臭くて面白いんですよ。特にこの作品はその辺りがたくさん描かれているので楽しいと思います!」と魅力を教えてくれた。猪塚「初めての朗読劇ではありますが、今の自分にできる最高の舞台を観てもらえるようにがんばります!」染谷「人がすごくあっけなく死んだり、燃えるように生きたりと熱い時代。そんな時代を生きる男たちを一生懸命演じたいです」須賀「朗読劇は初めてなので、新しい一面をぜひ観て頂きたいです。再演なので、さらに新しい挑戦やこのキャストならではの魅力を出せたらと思います」松田「チーム感が大事な作品。“このメンバーが好きだな”と思ってもらえるようにがんばりたいです」『僕とあいつの関ヶ原』は7月7日(木)から9日(土)、『俺とおまえの夏の陣』は7月10日(日)に東京・天王洲 銀河劇場にて。取材・文:中川實穗
2016年06月10日劇団・犬と串のモラルが作・演出を務めるシュールコメディ『昆虫戦士コンチュウジャー』が、6月8日、東京・紀伊國屋ホールにて開幕した。舞台『昆虫戦士コンチュウジャー』チケット情報本作は、地球の味方“昆虫戦士コンチュウジャー”と侵略者“爬虫類帝国”の戦いを描く新感覚のシュールコメディ。主役の中年「ヤゴ」戦士・時羽奏(ときわそう)をモト冬樹が務めるほか、元・特撮ヒーローの馬場良馬と斉藤秀翼、Berryz工房の須藤茉麻など個性的なキャストが顔を揃えた。ストーリーは2XXX年、爬虫類帝国の襲来で地球は未曽有のピンチに。科学技術で人間に昆虫の能力を与える「昆虫戦士コンチュウジャー計画」に未来が託される。そこで選ばれた5人の若者は、ひとまず地球のことは地球防衛軍に任せ、完全なる昆虫パワーを得るべく蛹(さなぎ)となり眠りにつく。30年もの年月が経ち、ようやく目覚めた若者たち。コンチュウジャーとして再び集合すると、ひとり中年男性が混じっていた…!モチーフが「トンボ」の時羽奏は、生態が不完全変態だったため、蛹になることなく普通に歳をとってしまったのだ…。そして地球もこの30年で何かが変わっていた――。若手俳優にひとり混ざるモト冬樹、のインパクトも去ることながら、ストーリーもシュール。30年前の血で血を洗う戦いは、「やることがないから戦うんだ」と就職のあっせんにより沈静化。それでもまだなんとなく戦い続けてしまっている爬虫類帝国だが、争いが勃発するたびに時羽奏が「まあ、まあ」と諫めてしまう。実際、帝国の最高幹部の面子も真面目な努力家やインテリ気取りなど、悪役としてはポンコツ揃い。コンチュウジャーについても、例えば馬場が演じるカブトムシ戦士は口癖の「そうだろ、みんな!?」がヒーロー感たっぷりだが、時羽奏に「そういう熱血漢な感じ、頭悪そう」といなされるなど、ヒーローもののセオリーが次々と覆されてしまう特撮ヒーロー風の動きや発想はこの舞台では違和感を生み、掛け合いのテンポも抜群。どのシーンでもキャスト一人ひとりが光っている。笑いどころは数えきれないが、思わず心が打たれるエピソードもあり、観劇後は意外と特撮ヒーローものならではの清々しさも感じる舞台だった。カーテンコールでは出演者全員によるライブがあり、モト冬樹はギタープレイも披露。公式サイトのテーマソングを覚えて行くとより楽しめそう!MMJプロデュース公演『昆虫戦士コンチュウジャー』は6月12日(日)まで東京・紀伊國屋ホールにて。取材・文:中川實穗
2016年06月09日落語家・立川志の輔の新作落語をもとにした舞台『メルシー!おもてなし~志の輔らくごMIX~』が6月4(土)に東京・パルコ劇場にて開幕した。舞台『メルシー!おもてなし~志の輔らくごMIX~』チケット情報立川志の輔の4つの新作落語「踊るファックス」「ディアファミリー」「ガラガラ」「メルシーひな祭り」(2000年~03年に上演)からエピソードを繋ぎ、ひとつの作品として上演する本作。中井貴一、勝村政信、音尾琢真(TEAM NACKS)、YOU、阿南健治、明星真由美、サヘル・ローズらが演じる。物語は、さびれた商店街の会長を務める源造(中井)のもとに「フランス特使の奥様とお嬢様が商店街を見学したいと言っている」と、外務省の武田(音尾)から電話がくるところから始まる。源造は商店街を盛り上げる機会だと張り切るが――。中井演じる商店街会長は、いわゆる下町のおやじ。普段は穏やかな印象の中井がべらんめえ口調でまくしたてる様は見どころのひとつだ。そこに抜群の間合いでツッコミや相槌を入れるのが、妻役のYOU。男たちの行動をツッコミひと言で笑いに変えつつ、自身もボケるという器用さには貫禄すら感じる。さらに同じ商店街の魚屋を演じる勝村の振り切れっぷりも、本作ならではと言えそうだ。踊って寝転んでキスをして…どこまでがアドリブで台本なのかわからない自由さで客席の爆笑を生んでいた。賑やかなこの作品を志の輔がひとりで演じていたと考えると改めて驚愕だ。志の輔が作り上げた世界を実力派の俳優陣が12人がかりで再現するこの舞台。落語家がひとりで演じるからこその勢いや間が踏襲されながらも、複数の俳優が演じるからこその賑やかな掛け合いも実現するという、独特の楽しさが生まれていた。同じ登場人物が複数のネタを渡り歩く“落語あるある”がこのような形で観られるのも、本作ならではの魅力。もちろん元ネタを知らなくても、落語未経験でも、何も考えずに思い切り笑えて、心がぽっと温かくなる人情味も忘れない“落語の魅力”が味わえる舞台となっている。大阪でも上演する本作。中井は「大阪のお客さんはハッキリしていて、特にコメディ、喜劇をやるときは怖さすら感じるほど。今回、どう観ていただけるか僕たちも心配ですけど、みなさんが温かい時間を持って帰っていただける2時間になるようにみんなで努めます」。パルコ・プロデュース公演『メルシー!おもてなし~志の輔らくごMIX~』は、6月26(日)まで東京・パルコ劇場にて、6月28日(火)から30日(木)まで大阪・メルパルクホール大阪にて上演。撮影・取材・文:中川實穗
2016年06月08日浅利慶太プロデュース公演『この生命(いのち)誰のもの』が、6月4日(土)より東京・自由劇場にて上演される。【チケット情報はこちら】イギリス人作家ブライアン・クラークによって書かれた本作は、テレビドラマとして放映後、1978年にロンドンで初演し、ローレンス・オリビエ賞(作品賞)を受賞した。1979年に日本で初演された後、浅利が8年の歳月をかけて原作者と話し合い、舞台を日本に置き換えた改訂版で1987年から上演を重ねている。不慮の事故で身体の自由を失った若き彫刻家・早田健が選択した“治療の中止”と、病院側の“医の倫理”を巡る裁判を描く。1994年、2004年の公演で主人公・早田の担当医・北原を演じ、今回は朝田婦長を演じる坂本里咲に話を聞いた。稽古もほぼ大詰めという時期。「演出家(浅利)が毎日みっちり稽古をつけてくださってます。これまでこの作品は迫力や力で見せていた部分があるのですが、今回は役者ひとりひとりがリアリティを持って、自然にやれと言われています。これまでとはまた違った印象になると思います」。浅利が目指しているのは「本そのものの感動を、役者が透明な媒体になって客席に届ける」というものだという。「俳優は書かれているものを自分の体を通して言葉で伝えていくしかない。だから、言葉には厳密。一音でも落ちたら、お客様は『え?』ってなりますよね。そうなったときにはもう物語の世界からはずれて、役者の言葉を聞き取る方に意識が向いちゃう」と坂本は、浅利が独自に作り上げた発声法で、一音も落とさないよう、今でも訓練は欠かさないという。1994年から3度目の出演となる坂本は、演じる中で自身の変化も感じるという。「歳を重ねることで主人公の想いがわかるようになりました。以前、演じたときは、早田は特別な存在だと感じてたんです。特殊な考え方をする人だと。それが今はすごく共感できる。若いときはとにかく好きなことを一生懸命やっていればよかったのですが、役者をやめようかと悩んだ時期があり、それ以降、役者としてどう生きたいか、自分らしく生きるとは、と考えるようになり、作品が近くなりましたね」。主人公・早田はこれまで日下武史や石丸幹二とベテランが演じてきたが、今回は若手の近藤真行が演じる。「演出家には『役者として本に向かうだけじゃなく生きることを実感しろ』と言われながら、彼は今すごく一生懸命やっています。これまでとは全く違う雰囲気ですよ」。「“生命の尊厳”というと重いですけれども、生きることは素晴らしいと思っていただける舞台です。テーマを問うというものではなくて、温かい人間ドラマですので、気軽に来ていただければ」。『この生命誰のもの』は、6月4日(土)から6月11日(土)まで、東京・自由劇場にて上演。取材・文:中川實穗
2016年05月31日赤ちゃんたちが大人になってママのピンチを救う舞台『ママと僕たち』 ~たたかえ!!泣き虫BABYS~ が7月に開幕する。本作は、2013年に始まった『ママと僕たち』シリーズの3作目。舞台『ママと僕たち』チケット情報今回の赤ちゃん役は、シリーズ全作に出演中の原嶋元久、初出演の佐藤永典、木戸邑弥、井澤勇貴、三浦海里、上村海成の6人。脇を固めるのは、同じく全作出演中の今井ゆうぞうら個性豊かな実力派俳優に加え、デーモン閣下の出演も話題だ。本作で久々の共演となる佐藤永典と木戸邑弥に話を聞いた。「めっちゃ仲いい」と口を揃えるふたり。ミュージカル『テニスの王子様』以来、6年ぶりの共演について感想を聞いてみると「楽しみですよ」(木戸)、「俺はイヤなのよ」(佐藤)と真逆の反応。佐藤は「演出家さんもスタッフさんもそうだけど、久しぶりに共演したらダメになってるって思われたらイヤだなっていう変な緊張感はある。その分稽古が楽しみですけど」。木戸は「(佐藤出演の舞台を)観るたびにまた一緒にやりたいなっていう気持ちが強まってて。周りからも『あの子、邑弥と一緒にやってた子でしょ、すごくよかった』って聞くし」。本作については、「劇場で観て、本当にかわいらしい作品だな、元気な作品だなって思いました。ストーリーももちろん面白いですし、芝居以外でも歌があったり踊りがあったりっていうエンタメな部分もあったりして。お子様連れで来ていただいても楽しめる作品だと思います」(木戸)。役作りについて聞いてみると「この前、(別作品の稽古場で)子供がラーメン食べながら号泣してる動画を見たんですけど、あの絶妙なかわいさとおもしろさはすごい。その要素がみんなにあったらおもしろいと思います。でも変にやると白々しくなるので、そこはがんばりたい」(佐藤)最後に意気込みを。「気楽に楽しく観られる作品になると思うので、小難しいのが苦手だって人にも来てほしいです。僕たちは赤ちゃんに全力を尽くしますので、それを楽しんで帰ってもらえるのが一番ですね」(佐藤)「『ママ僕』の作品 ファンもいらっしゃると思うので、1作目2作目のいいところは引き継ぎつつ、今回のキャストでしか生まれない『ママと僕たち』ができればいいなと思っています。自分たちも次につなげられるようにがんばりたいです」(木戸)『ママと僕たち』 ~たたかえ!!泣き虫BABYS~ は、7月8日(金)から18日(月・祝)まで東京・AiiA 2.5 Theater Tokyo、7月22日(金)から24日(日)まで大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて。取材・文:中川實穗
2016年05月30日濱田めぐみの活動20周年を飾るソロ・ミュージカル『Tell Me on Sunday~サヨナラは日曜日に~』が、6月の公演に先がけ制作発表会を開催。報道陣のほか、130名のオーディエンスが招待された。『Tell Me on Sunday~サヨナラは日曜日に~』チケット情報本作は『CATS』や『オペラ座の怪人』で知られる巨匠アンドリュー・ロイド=ウェバーの作曲で、1979年にロンドンで初演され、現在も世界各国で上演されるソロ・ミュージカル。サラ・ブライトマンらが演じており、日本ではこれが初上演となる。濱田は、主人公・エマの設定「デザイナー志望でニューヨークに出てきたイギリスの女の子」をイメージした衣裳で登場。本編で1曲目に歌われる『放っておいてよ』と、『一通目の手紙』を、本番同様、江草啓太のピアノ伴奏で披露した。トークには、本作の演出を担当する市川洋二郎も登壇。日本、イギリス、アメリカで活躍中の市川は、濱田が所属していた「劇団四季」からの付き合い。本作のストーリーについて市川は「ひとりの女性・エマの自立を描く物語。夢と希望を胸にニューヨークに出てきた彼女が、さまざまな喜びと悲しみに遭遇しながら、人間として少しずつ成長していきます。そのエマの旅路を観客の皆様と辿る中で、生きるとは何か、人間が自分の足で立つとはどういうことなのか、考えていけたら」と解説。70分で25曲を歌唱する本作。ソロ・ミュージカルへの挑戦について濱田は「難しいです。一瞬たりとも気が抜けないことは、ソロ・ミュージカル以外ないと思う」と苦労を語った。エマというキャラクターについては「彼女が持っている夢を諦めないという信念や情熱、バイタリティーは、自分が今まで20年間やってこれた核心の部分とすごく似ている」と共通点を語る。「ひとり芝居の醍醐味として、舞台上に他の人間が出てこないという点はすごく大切だなと僕は考えていて。舞台の転換もやる濱田めぐみっていうのはなかなか新しいと思います」(市川)と、舞台上のことは全て濱田が行うことも明らかに。その後も、互いの印象などを語り合った。最後にはタイトル曲『サヨナラは日曜日に』を披露。「自分の中に持っている一番純粋な部分、夢を持っている情熱の部分、いろいろな部分をさらけ出して、誠心誠意、心を込めて、エマという女性と共に生き、皆さんと共に素敵な旅を毎公演したいと思います」(濱田)と挨拶した。『Tell Me on Sunday~サヨナラは日曜日に~』は、6月10日(金)から26日(日)まで東京・新国立劇場 小劇場にて。取材・文:中川實穗
2016年05月25日ウーピー・ゴールドバーク主演の大ヒット映画『天使にラブ・ソングを…』をミュージカル化した『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』が、5月22日(日)に東京・帝国劇場で開幕。前日に、主役のデロリス・ヴァン・カルティエをWキャストで演じる森公美子と蘭寿とむ、デロリスを匿う修道院のシスターを演じる春風ひとみ、浦嶋りんこ、宮澤エマ、修道院長を演じる鳳蘭が会見を開いた。舞台『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』チケット情報本作は、殺人事件を目撃してしまったことで命を狙われるハメになった破天荒な黒人クラブ歌手・デロリス(森/蘭寿)がカトリック修道院に囲われ、そこで暮らすシスターたちと聖歌隊の特訓を通じ友情を育んでいく物語。2009年にウーピー自身のプロデュースでミュージカル化。2014年に日本初上陸し、今回はその大ヒットを受けての再演となる。会見にはそれぞれ役衣裳で登場。前作に続きデロリスを演じる森は「素晴らしいミュージカル。五月病の方でも、本当に明るく、明日を生きる力になるのではないかと思います!」と挨拶。Wキャストでデロリスを演じ、初参加となる蘭寿は「私は帝国劇場に初めて立たせていただける喜びをかみしめながら、この超ハッピーなミュージカルでお客様と一緒に盛り上がっていきたいと思います」と笑顔を見せた。2014年からの再演について森は「2年経って少しは覚えているかと思いましたが、ゼロの状態から始まりました(笑)。でも今回はまたさらにグレードアップして素晴らしいものになったと思います」。蘭寿は「難しいところはたくさんありますが、アラン・メンケン氏の曲が本当に素晴らしくて心躍るものなので、それが歌える喜びを感じながらできたら」と語る。そんな蘭寿を宝塚歌劇団の先輩・鳳は「宝塚で培われた華やかさとか、大劇場に負けない大きさがあるので私は安心しています」と評価した。仙台出身の森は、東北公演に懸ける想いを聞かれ思わず涙を浮かべる場面も。「初演でも盛岡と宮城に行かせていただいて、みなさんからの『元気になった』『素晴らしかった』って言葉に、私たちはこの仕事やっててよかったねって。私たちが元気をもらった作品でもある。来年は九州公演もあるので、ぜひ観て頂きたい。復興にはまだまだいろんな問題がありますけども、心は楽しく、前にいくように。この作品で少しでもみなさんの心の中に温かいものが生まれれば」と話した。ミュージカル『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』は、5月22日(日)から6月20日(月)まで東京・帝国劇場にて。その後、大阪、愛知、岩手、北海道、宮城を巡回。2017年には福岡、静岡、長野での公演も決定。取材・文:中川實穗
2016年05月24日松井玲奈が沖田総司を演じる舞台『新・幕末純情伝』の制作発表会が5月18日、都内で開かれ、松井玲奈、石田明(NON STYLE)、細貝圭、早乙女友貴、味方良介、荒井敦史、伊達暁、永田彬、演出の岡村俊一が登壇した。舞台『新・幕末純情伝』チケット情報本作は劇作家・つかこうへいの代表作のひとつで、新撰組の沖田総司が実は女だったというユニークな着想のもと1989年に上演された。その後も、「この作品は代々、次代のヒロインと言われる方々が(沖田を)演じて、もう30年近くなります」(岡村)というように、広末涼子や石原さとみ、桐谷美玲らが演じ、松井は9代目。沖田の相手役・坂本龍馬は石田明が演じる。松井は本格的な舞台は初挑戦。すでにひとりで殺陣の稽古を始めているそうで「初心者なので。出演者の方々はアクションがすごくできるって聞いて、足を引っ張らないように、いいものを観ていただけるように殺陣の練習はしております」と気合を見せた。石田も「歴史のある舞台。今までやってきた方々に恥じぬよう、なんやったら今までの演者に勝てるように、一心不乱にがんばりたい」と話した。メインのふたり以外はまだ役が決まっていない、という話から岡村は「(石田が4月に)骨折したので、石田くんの役も今考え直してる」と発言。石田が「僕今必死ですよ。骨折を直すために松井秀喜とかベッカムがやっている治療法全部やってるんですから!」と慌てると、共演者は大爆笑だった。岡村は「力のあるものが勝つ、というのはつかさんの遺言」「これは殺し合いの物語なので、誰より誰が強いか、というのが重要」と配役について説明した。会見後、松井、石田、岡村の囲み取材では、岡村は「松井さんは頭がいいんですよ。台本を読んでの印象を聞いても非常に解析力がある」と絶賛。会見中に話題になった石田の骨折については「でも、右手がダメながら左手があるし、左手がダメなら(刀を)口でくわえてもいいし。そういういろんなことが起きても立ってる姿を見せるのが演劇だと思っている」と話した。松井も「(本作の出演が決まり)周りの方からすごいね、楽しみにしてるよって言われて、初めてことの重大さに気付いて。みなさんの期待以上のものにできるように頑張らないといけない」と決意を述べた。つかこうへい七回忌特別公演舞台『新・幕末純情伝』は、6 月23 日(木)に東京・天王洲 銀河劇場で開幕。命日でもある7月10日を挟みつかこうへい縁の東京・紀伊國屋ホール含む3会場で上演。取材・文:中川實穗
2016年05月20日