俳優・竹中直人と作・演出家の倉持裕による演劇ユニット・直人と倉持の会Vol.2「磁場」が12月11日に開幕。前日に公開舞台稽古が行われた。直人と倉持の会Vol.2「磁場」チケット情報本作は、2013年12月に第1回公演を行った「直人と倉持の会」のプロデュース公演第2 弾。コメディーの名手でもある倉持が“過剰な期待”が生み出す恐怖をテーマに描いた心理劇を、竹中、そして渡部豪太、長谷川朝晴、黒田大輔、玉置孝匡、菅原永二、田口トモロヲ、大空祐飛という豪華俳優陣が演じる。公開舞台稽古前の囲み取材で、竹中は「大好きな倉持裕さんと素敵な俳優さんたちが集まりました。複雑な人間模様が“6ペンス”…じゃないや“サスペンス”で盛り上がります。今回はかなり怖いですよ。追い詰められ方がどんどん重なっていって…という脚本になっています」と作品を紹介。大空は「素晴らしい皆さんとご一緒できて、稽古場が楽しい…だけじゃいけないんですけど、刺激的で、1秒たりとも無駄にしたくない幸せな日々です」と話した。物語の舞台は、ホテルの豪華なスイートルーム。若い脚本家(渡部)が、マコト・ヒライという芸術家を描いた映画の脚本執筆のために用意された部屋だ。プロデューサー(長谷川)と映画監督(田口)と打ち合わせをしていると、突然、出資者の男(竹中)が秘書(菅原)を引き連れてやって来る。「マコト・ヒライの大ファン」だという男は、あらゆる資料をホテルに運び込み、彼の生涯について熱く語りだし、さらには打ち合わせを見学したいと言い出す。「自分のことは無視してくれていい」と言う男だが、脚本家がアイデアを語り始めると「これはきっとすごい映画になりますよ!」と期待をかけはじめる――。不協和音が鳴り響く中で幕が開いた本作。スイートルームの空気を支配するのは、竹中演じる出資者の男だ。笑顔でゆっくりと近づいてきて、気付けば思考力まで奪うような恐ろしい存在を竹中が怪演。その支配はしんしんと積もっていき、いつしか登場人物たちは、彼の明らかに常軌を逸した行為すら受け入れるようになっていく。途中、追い詰められた脚本家のもとに劇団の友人(黒田)が訪れたとき、その温度差からハッと異常さに気付かされ、恐怖を感じた。客席までも支配する狂気の中、脚本家は過剰な期待に応えられるのか…。その結末はぜひ劇場で。公演は12月25日(日)まで、東京・本多劇場にて。その後、大阪、島根、愛知、神奈川を巡演。取材・文・撮影:中川實穗
2016年12月12日藤田俊太郎の演出、小川絵梨子の翻訳で上演するトニー賞作品『Take me out』が、12月9日(金)に開幕。その前日に公開舞台稽古が行われた。【チケット情報はこちら】2002年にロンドンで初演され、2003年度のトニー賞では演劇作品賞、演劇助演男優賞も受賞した作品の日本初演。演出をニナガワ・スタジオ出身の藤田、翻訳を新国立劇場の次期芸術監督・小川が手掛ける。白人の父親、黒人の母親を持つメジャーリーグのスター選手・ダレン(章平)が、自分はゲイだと告白したことを発端に起こるさまざまな混乱を描く本作。選手役を栗原類、多和田秀弥、味方良介、小柳心、渋谷謙人、Spi、章平、吉田健悟、竪山隼太、ダレンのビジネスマネージャー役を良知真次、監督役を田中茂弘が演じる。本作の特徴のひとつは舞台の構造。対面構造に加え、最下段の客席と舞台は地続きとなっており、まるでそこにあるロッカールームやシャワールームを、観客が取り囲んで観ているような造りなのだ。さらに舞台と客席の距離も近く、キャッチボールやバッティング練習のシーンは、ボールが向かってくるので思わず目を閉じてしまうほど。どこに座るかで観える人の表情、景色が変わり、何度も観たくなる構造だ。また、キャスト陣があまり捌けずに芝居が進んでいくのも特徴のひとつ。舞台上で着替えたりシャワーを浴びたり、ときには客席付近にキャストが座っていたり。真ん中で起きている出来事の間にも、それぞれの時間が流れていることを感じさせられる。そんな濃密な空間の中で、メジャーリーグのロッカールーム、シャワールーム、グラウンドを舞台に、人種、信仰、格差、同性愛、差別などを生々しく描く本作。日本では人種や信仰の問題に直面する機会も少ないが、それでもどこか彼らが発する感情に思い当たる節があり、自らの“正義”や“信念”がグラグラと揺さぶられるような感覚に襲われる。それぞれが持つ偏見、理解、正義、善意、悪意…どれも単純なものではない。さまざまな要因が何重にも重なった結果であることが物語の中でわかるため、感想も大きく分かれるだろう。観劇後は、誰かと感想を語り合いたくなったり、次は逆サイドの席で観劇したくなったりするような作品。ぜひ劇場に足を運んで体感してほしい。公演は12月21日(水)まで東京・DDD AOYAMA CROSS THEATER、12月23(金・祝)、24日(土)に兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールにて。取材・文:中川實穗
2016年12月12日ジャニーズ事務所の佐野瑞樹と、*pnish*のリーダー佐野大樹による兄弟演劇ユニット「WBB」の第11回目の本公演『スペーストラベロイド』が、12月3日に開幕した。兄弟が交互に企画を担当するWBB。今回は兄・瑞樹が企画するSide-W。毎回、上質なワンシチュエーションコメディを上演するSide-Wの今作は「WBB版新喜劇」と銘打ち、キャストにパンチ浜崎(ザ・パンチ)、児玉智洋(サルゴリラ)と芸人も参加。笑いに特化した作品となった。WBB vol.11『スペーストラベロイド』チケット情報物語の舞台は宇宙船。宇宙旅行の最後のモニタリング飛行を行う船内には、船長候補の玉地(瑞樹)と、火野(大樹)・八木沼(尾関陸)・土田(児玉)が乗組員として働き、総責任者の松金(細見大輔)が採点を行っている。玉地は船長になるために必死だが、土田は自由奔放に動き、開発部から異動してきた火野は機嫌が悪い。さらに八木沼はアンドロイドロボ・メイサ(パンチ)の外見を勝手に改造したと言う。そして乗客は、一般公募で当選した新婚夫婦(大久保聡美、川上将大)と、テレビ取材にやってきたディレクター(畠山遼)&カメラマン(篠田諒)。しかし、新婚夫婦が喧嘩になり撮影はうまく進まない。玉地がどうにか挽回しようと奮闘する中、ある事実が原因で勘違いが勘違いを呼び……。その場しのぎの嘘を発端にさまざまな混乱が起こるベーシックなコメディ。ゲネプロ後に瑞樹が「今回はエネルギー全開、汗かきまくり、全員ホームラン狙い。みんなフルスイングするぞっていうところがテーマになっています。だからみんなの必死さ加減、声の張り方ひとつからすごくパワフルに仕上がってる」と語ったように、キャスト達はフルスロットルでぶつかり合い、次々と笑いを生み出す。さらに今作ではアドリブコーナーもあるなど、これまでのSide-Wとひと味違う仕上がりに。瑞樹は「お客さんがどんな反応をするのかもやってみなきゃわからないので、非常にワクワクドキドキ、期待と不安の気持ちがいつもより強いです!」と開幕を心待ちにしていた。大樹が「キャストはいろんなジャンルから集まっていますが、すごくチーム感がある」と話す10人の息はピッタリ。それに加え、「自分で言うのもなんですが…WBBふたりのシーンもあるので」(大樹)、「そこは自分のやりがい。あそこにすべてを懸けているところはあります!」(瑞樹)という兄弟の熱いシーンも観られる。WBB版新喜劇をぜひ堪能して!WBB vol.11『スペーストラベロイド』は12月11日(日)まで東京・赤坂RED/THEATERにて上演。取材・文:中川實穗
2016年12月06日メジャーリーグスター選手のある告白から巻き起こる混乱を描いたコメディ『Take me out』が、12月9日(金)に開幕する。舞台『Take me out』チケット情報本作は、2002年にロンドンで初演され、その後ブロードウェイで上演。2003年のトニー賞では演劇作品賞、演劇助演男優賞も受賞した作品。日本初演となる今作は、翻訳を新国立劇場次期芸術監督の小川絵梨子、演出をニナガワスタジオでキャリアを積み第22回読売演劇大賞で杉村春子賞、優秀演出家賞を受賞した藤田俊太郎が手掛ける。出演は、良知真次、栗原類、多和田秀弥、味方良介、小柳心、渋谷謙人、Spi、章平、吉田健悟、竪山隼太と注目の若手揃い。そして田中茂弘が脇を固める。今回、その稽古場に潜入した。稽古前に行われていたのはキャッチボール。野球経験者の章平が栗原に球の持ち方や投げ方を教えると投球がみるみる変化し、「ナイスピッチング!」と盛り上がる。そのまま和やかに稽古にうつっていった。この日、取材したのは2幕の終わりからラストまでの後半部分。人種や同性愛への差別という問題がギュッと詰まった部分で、有色人種で同性愛者であるスター選手を演じる章平が、Spiや栗原、味方とそれぞれの理由で対峙する緊張感のあるシーンが続く。中でも栗原演じる白人至上主義の選手がある想いを吐露するシーンでは、栗原が激しく全身で叫ぶような熱演を披露。楽しいコメディで終わらない本作の一面を感じさせた。しかし、そんな中でも良知が演じるゲイの会計士が登場すると空気は一変。愛らしい言動でニコニコ笑顔を振りまく姿は、性別問わずに「かわいい!」と感じさせるもの。そのかわいさのままキャッキャとはしゃぎ章平にやさしく微笑む場面では、藤田が章平に「(良知の)かわいさをもっとキャッチして!」と演出をつけており、本番は更に甘いシーンに仕上がりそう。狭い舞台、少ない人数で表現するメジャーリーグの試合も見どころのひとつ。演出の藤田をはじめ、キャストや音響スタッフがアイデアを出し合い、台詞のタイミング、音響、動作のスピードなど全員で息を合わせていく。そうすると突然、広い球場、ボールの軌跡まで見えるような瞬間がおとずれ、驚いた。舞台上には8人分のロッカールームがあり、キャスト達はその場で着替えなども行う。さらにロッカーは可動式で、パズルのように移動させてさまざまな場所を表現するのが面白い。本作は、劇場の中央に舞台が設けられ、客席は両サイドとなる。どちらに座るかでもまた違う景色が観られそうだ。上演は、12月9日(金)から21日(水)まで東京・DDD AOYAMA CROSS THEATER、12月23日(金・祝)・24日(土)に兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールにて。取材・文:中川實穗
2016年12月02日全世界で1億冊以上読まれている大ベストセラー官能小説をパロディ化したミュージカル『フィフティシェイズ!~クリスチャン・グレイの歪んだ性癖~』が11月28日に開幕した。主演は関西ジャニーズJr.の浜中文一が務め、演出と上演台本は河原雅彦が手掛ける。公演初日を観劇した。ミュージカル『フィフティシェイズ!』チケット情報官能小説『50 Shades of Grey』をパロディ化し、2014年にオフ・ブロードウェイで上演された作品。若く有能だが心から人を愛せないサディストの青年実業家・グレイ(浜中)と、うぶで恋すら知らない女子大生・アナ(玉置成実)との歪んだ愛のかたちを過激な性描写で描いた原作を、“悪乗り×変態×コメディ”200%というスーパー・エロティック・ワールドを描く、R-15指定のコメディミュージカルとなっている。関西ジャニーズJr.として幅広く活躍する浜中、相手役にブロードウェイミュージカル『キンキーブーツ』での好演も記憶に新しい玉置、という爽やかな組み合わせだが、「劇中、信じられないほど下品な場面がごまんとありますが、お忘れください」というアナウンスで開幕した本作。バンドの生演奏の中、明星真由美、安田カナ、佐藤仁美が演じる主婦3人組が『50 Shades of Grey』を読書するという形で進行役となって物語は進んでいく。コミカルな芝居と美しい歌声で紡ぎ出される台詞や歌詞は…とにかく過激!浜中が普段であればなかなか声に出せないような言葉の並ぶ歌詞を軽快に歌い上げ、玉置が変態プレイについて語り、ふたりで腰を振り、股を開き、キレッキレで踊るというかなり振り切れた表現に、客席には大笑いしている人もいれば、驚きのあまりかたまっている人も。本作の元であるオフ・ブロードウェイの演出すらパロディにしているシーンもあり、もう何が何やらという状態だ。2幕は1幕以上にアブノーマルな世界に突入していき、「そんな恰好まで見せる!?」というようなシーンも。大澄賢也演じるメキシコ人や安田演じるアナの友人もかなりの存在感で笑わされる。最後まで息つく暇がないが、最後まで目が離せないミュージカルだった。公演は12月11日(日)まで東京・新宿FACEにて。その後、12月28日(水)・29日(木)に大阪・サンケイホールブリーゼにて。取材・文:中川實穗
2016年12月02日日本でも大ヒットした同名映画が原作のミュージカル『キューティ・ブロンド』が来年3月に上演される。日本では今回が初演となる本作は、ミュージカルとしてもブロードウェイでトニー賞7 部門ノミネート、ウエストエンドではオリヴィエ賞3部門受賞した超人気作。その主人公で、恋もお洒落も全力投球な女子大生・エルを演じる神田沙也加に話を聞いた。【チケット情報はこちら】「ニューヨークでミュージカルを観ていたので、やっと日本に来るんだって嬉しさがあります。それに今でもこの映画が一番好きっていう女の子が多いので『エルやるんですね』ってすごく言ってくれて。嬉しかったです」と出演の喜びを語る神田。自身が演じるエルの魅力について「絶対的ヒロインの可愛らしさと説得力を持ちつつ、何をやってもいろんな意味で人の心をキャッチする素質を持っている人だと思います」“歩くバービー”と言われるエル。「お衣裳もすごく楽しみ!ビジュアルにはかなり力をいれて作るんじゃないかなと思います。最初にカツラ合わせをしたときに、『キューティ・ブロンド』というタイトルなので、演出の上田(一豪)さんをはじめ、みんなブロンドの色味にすごくこだわっていたんですよ。やっぱりエルは舞台上に出てきたときに特別なブロンドでなくてはいけないから、と」原作の映画は「何度も観てますが、さらにここからすごい回数を観ると思います。私は、元々キャラクターのイメージが皆さんの頭に強くある場合は、それを完コピすることに価値を感じるタイプなので。仕草とか目の動き方とかそこまで完コピするために、めちゃくちゃ観ると思いますね」コメディ要素の強い本作。日本での上演については「日本人の風貌で日本語でやったときに、テンションをどこまでキープできるかなっていうのが課題だと思っています。コメディ要素を“落ち着かせる”という方法を取らずにどこまでスライドできるかというのが、かなり勝負どころではないかと」。そのためにはプライベートも作品に捧げるという。「やっぱり日本人でもあるし、役柄のテンションと温度感にギャップを感じると思うんですよ。そのギャップを常に埋めておくにはどういう生活を送ったらいいかなっていうことは考えてます。だからちょっとピンクの服は買っておこうと思って(笑)」「かわいいもの好きな女子はもちろんですし、実力ある諸先輩方がいらっしゃいますからミュージカル好きさんにもぜひ観に来ていただきたいです。入口広くお待ちしています!」(神田)公演は3月21日(火)から4月3日(月)まで東京・日比谷・シアタークリエにて。その後、全国7か所を巡演。チケットぴあでは12月3日(土)よりプレイガイド最速先行を受付開始。取材・文:中川實穗
2016年12月02日中川大志×平祐奈のW主演で映画化される『ReLIFE リライフ』。この度、本作の新たなキャストとして千葉雄大の出演が決定した。海崎新太(中川大志)27歳、現在ニート。大学院を卒業後、入社した会社はたったの3か月で自主退職。その後、再就職できないまま、コンビニバイトを続ける日々。大学時代の友人に誘われた飲み会では、スーツを着てサラリーマンのフリ。そんな彼の前に突然現れた謎の男。“リライフ研究所”の所員と名乗る謎の男・夜明了から提案されたのは、薬で見た目だけ若返り、1年間高校生活を送るという実験の被験者。なかば自棄っぱちで、つい薬を飲んでしまう。そして、まさかの27歳男子の青春学園生活が幕を開ける。2度目の学園生活で出会うのは、成績はトップだが極度のコミュニケーション音痴の女子高生・日代千鶴(平祐奈)。頭と顔はいいがほかはいろいろと残念な大神和臣。負けん気の強い毒舌女子・狩生玲奈…など個性豊かな面々。そんな彼らだが、やがて打ち解けてゆき、気づけばかけがえのない仲間となってゆく。一方、一生懸命な日代に恋心を抱くようになるが、相手は10歳も年下の女子高生。実験が終われば記憶も消える。切ないラブストーリーの結末とは…。これまで高杉真宙、池田エライザ、岡崎紗絵と続々と追加キャストが発表されてきたが、今回また新たなキャラクターの登場が決定。「戦う!書店ガール」「家売るオンナ」や『黒崎くんの言いなりになんてならない』など、ドラマ・映画と様々な作品に出演する千葉さんが今回演じるのは、リライフ研究所職員・夜明了。ニートとなった主人公・海崎新太に、「人生、やり直しませんか?」と、社会復帰プログラム「リライフ」への参加を持ちかけ、10歳若返る薬を手渡す。自身も27歳から高校生の姿に若返り、海崎と同じ高校に通いながら海崎をサポートし、本部へ行動報告も。いつも笑顔でニコニコしており丁寧な物腰だが、時折大人ならではの凄みのある発言も多く、海崎からは通称「変人ドS」と言われる二面性のある役どころだ。今回のキャラクターについて千葉さんは「まあ僕も“ドS”なところがあるので、違和感なくやらせていただいてます。うそです」と冗談を話しつつも、「海崎さんとの関係性がとてもおもしろくて、同世代のようでいて、ときに年上のようでいて、ツッコミを入れられる年下のようでいて、と変幻自在な人物にも見えるので、フワフワ、キリッと臨めたら、と思います」と意気込みを語った。また、撮影が佳境に向かっているという本作だが、千葉さんは「夜明さんは、みんなをこっそりと見ているシーンが多いので、後ろからしっかりみんなを見守りつつ、一緒に最後まで楽しめたら本望です」とコメントした。『ReLIFE リライフ』は2017年4月15日(土)より全国にて公開。(cinemacafe.net)
2016年12月02日2017年3月に上演される舞台『スーパーダンガンロンパ2 THE STAGE ~さよなら絶望学園~ 2017』の制作発表会が行われ、主演・横浜流星をはじめとするキャストとスタッフ総勢19名が登壇した。舞台『スーパーダンガンロンパ2 THE STAGE ~さよなら絶望学園~ 2017』チケット情報本作は、累計80万本を売り上げる大ヒット推理ゲーム『ダンガンロンパ』シリーズを原作にした舞台シリーズの第2弾。2014年に初舞台化した『ダンガンロンパTHE STAGE~希望の学園と絶望の高校生~』の続編(2015年上演)の再演となる。主人公・日向 創は初演同様、横浜が演じる。会見で横浜は「この作品を再演できることを幸せに思っています。再演ということでキャストも半分ほど変わって、演出、振り付けも変わって。またみんなでイチから力を合わせて、初演よりも確実にパワーアップしたものをお届けできるよう全力でがんばっていきたい」と意気込みを語った。本作が初舞台となる伊藤萌々香(フェアリーズ)は、超高校級のゲーマー・七海千秋役。「『ダンガンロンパ』はアニメも観ていて、ゲームもやっていた原作ファンなので、精一杯七海千秋を演じ切りたいです」と喜びを語った。同じく今作から超高校級の極道・九頭龍冬彦を演じる植田圭輔は「この作品をやらせていただけることを光栄に思います。作品に精一杯取り組みたいと思います!」と意気込んだ。前作に続き超高校級のメカニック・左右田和一を演じるいしだ壱成は「また左右田くんをやらせてもらえることをすごく幸せに思っていますし、身の引き締まる思いもしております。初心に立ち返ってカンパニーの皆さんと一緒に精一杯努めていきたい」。同じく続投で超高校級の幸運・狛枝凪斗を演じる鈴木拡樹は「初演で『キーパーソンになる役』とプレッシャーをかけられ緊張していた記憶が甦ります。狛枝凪斗に寄り添う形でがんばっていきたい」と話した。初演同様、今回も映像出演で参加する神田沙也加は、本作のテーマソングにも携わることが発表され「音楽の方からもバッチリ力になれば!」と笑顔をみせた。今作から脚本・演出を手掛ける山本タクは「(再演だが)もう新作だと思います」と予告。「『ダンガンロンパ』は、記憶をなくした人間がどう生きていくのか、その中でどのように最期を迎えるのか、生き抜いていくのか…それが世界中に愛される理由だと思っています。そこを脚本・演出し、舞台としての『ダンガンロンパ』をお送りしたい」と語った。公演は2017年3月16日(木)から26日(日)まで東京・Zeppブルーシアター六本木、 3月30日(木)から4月2日(日)まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて。取材・文:中川實穗
2016年12月01日レプロエンタテインメント創立25周年プロジェクト「浅草九劇(あさくさきゅうげき)」製作発表会見が行われ、こけら落とし公演に出演する羽田美智子、川島海荷、内田理央、「ベッド&メイキングス」の福原充則と富岡晃一朗、「カンパニーデラシネラ」の小野寺修二、「ONEOR8」の田村孝裕、「劇団子供鉅人」の益山貴司が登壇した。「浅草九劇」とは、ホテルと飲食店などの複合施設として来春オープンする「浅草九倶楽部(あさくさここのくらぶ)」の核となる新劇場。【チケット情報はこちら】こけら落とし公演・第一弾で川島が出演するベッド&メイキングスの『あたらしいエクスプロージョン』について脚本・演出の福原は「この国にキスの文化を広めた人間たちを描いた作品です。この劇場が新しく文化の出発点になり広がっていくイメージを持って、キスがここまで一般的になって、キスから始まって結婚して子供が生まれて…と広がることをテーマに創りました」と解説。富岡が「毎回違うメンバーを集めてはいますが、劇団という形をとって公演しているので、劇団員として働いてもらいます。海荷ちゃんにも劇団員としてやってもらいたい」と話すと、川島は「私もがんばって劇団員として働きたい」と笑顔。「舞台は直で伝わるものが大きいので、パワーも声も出してがんばります!」と話した。こけら落とし公演・第二弾を担うカンパニーデラシネラの小野寺は「浅草は外国の方もいらっしゃいますが、僕は言葉を少なめにした身体の表現(パントマイム)をやっているので、観てご理解いただけるのではないかと思います。がんばります」と話した。来年11月に内田出演で公演を行う劇団子供鉅人の益山は「血に飢えた演劇集団の我々にとって、こけら落としというのはかっこうの餌食ですので、全力でしとめにいきたい。一番若い劇団として積極的に汗をかく芝居をしていけたら」。この場で“女子プロレス”の作品になると聞いた内田は「想定外です。運動が苦手なので身体を鍛えるところから始めたいです!」と驚きながらも気合を入れていた。来年12月に羽田出演で公演を行うONEOR8の田村は「うちの劇団員が子役の頃に羽田さんと共演し、待ち時間1時間ずっとじゃんけんをし続けたというエピソードがあって(笑)。そういう羽田さんにあて書きしていく作品になると思います」。舞台出演は12年ぶりの羽田は「今から恐れてはいるんですけど(笑)、ずっと『映像の人』だと言われ続けてきたその殻を破りたい」と熱く語った。『あたらしいエクスプロージョン』は2017年3月3日(金)から21日(火)まで、カンパニーデラシネラの公演は3月24日(金)から31日(金)まで東京・浅草九劇にて上演。取材・文:中川實穗
2016年12月01日西岡徳馬が新納慎也、音尾琢真(TEAM NACS)と対峙する傑作推理劇『スルース~探偵~』が11月25日に開幕した。西岡と新納、西岡と音尾という2バージョンで上演する本作。演出は深作健太が手掛ける。公演初日、ゲネプロ(新納出演)が公開された。舞台『スルース~探偵~』チケット情報本作は、1970年に初演され、71年にはトニー賞演劇作品賞とエドガー賞を受賞。72年、2007年に2度にわたり映画化され、日本では劇団四季が1973年に初演し、現在も再演されている傑作サスペンス。ピアノの音と雷の中、舞台上に突然西岡のシルエットが浮かび上がり、ゾクッとした瞬間に『スルース~探偵~』の世界へ連れていかれる。物語は著名なミステリー作家のアンドリュー・ワイク(西岡)が、妻の愛人であるマイロ・ティンドル(新納/音尾)を自宅に呼び出すところから始まる。アンドリューは「浪費家の妻にはほとほと困り果てていた」「私にも愛人がいる」と告白し、自宅の金庫から宝石を盗んでほしいと言い出す。それによりアンドリューは保険金と愛人を、マイロには宝石と妻を手に入れられるというのだ。マイロは考えた末、アンドリューの筋書きどおりに珍妙な手順で宝石を盗むが――。社会的地位も年齢も上のアンドリューは余裕の態度で、若いマイロはそこに取り込まれまいと虚勢を張る…ふたりはそんな力関係から始まる。しかし、騙し合いに次ぐ騙し合いで徐々にグラつき始めるそのバランス。ポーカーフェイスのふたりから吹きだす汗までもがなにかを語っているようだった。対峙とも競演ともいえる熱演は、西岡が本作を「ずっとやりたかった」と熱く語る姿を思い起こさせるものだ。しかし、そんな舞台上のやり取りをただ楽しむ、というわけにいかないのが本作。相手に見せる顔、見せない顔、すべてを観ることができるのは客席だけであり、無意識のうちにそこにある虚と実を見極めようとしている。西岡、新納、客席の間をグルグルと回る疑念がじっとりと劇場を包み込んでいく楽しさは、劇場でしか味わえないものだろう。一瞬たりとも気の抜けないむき出しともいえる芝居は、演じる人によって全く違うものになることは間違いない。公演前半の新納、後半の音尾出演の両バージョンをぜひ体験して!西岡VS新納の<探偵バージョン>は12月11日(日)まで、西岡VS音尾の<スルースバージョン>は12月17日(土)から28日(水)まで、東京・新国立劇場 小劇場にて。その後、<スルースバージョン>が福岡、愛知、宮城を巡演。取材・文・撮影:中川實穗
2016年11月28日全員声優キャストによる本格コメディ『Run for Your Wife』が、11月30日(水)に開幕する。本作は、声優・俳優・タレントとしての活躍中の山寺宏一と水島裕、演出家の野坂実がコメディをやるために立ち上げた演劇ユニット「ラフィングライブ」の第2回公演。山寺、水島に加え、高垣彩陽、寿美菜子、岩崎ひろし、高橋広樹、小野賢章、横田健介という豪華声優陣が揃った。ラフィングライブ第二回公演『Run for Your Wife』チケット情報今回、その稽古場に潜入した。物語の鍵となるのは、タクシードライバー・ジョン(山寺)のとある秘密。実はジョンは、メアリー(高垣)とバーバラ(寿)というふたりの女性と結婚し、仕事のタイムスケジュールを完璧にコントロールすることで、重婚生活をエンジョイしていたのだ。しかし、あるアクシデントからスケジュールが狂い、ごまかすためのウソがウソを呼んで大パニックが巻き起こっていく――。イギリス人脚本家 レイ・クーニーの戯曲である本作。まず独特に感じたのは、このキャスティングでないと味わえない台詞回しだ。どこか洋画の吹き替えを彷彿とさせるノリとテンポが、海外のコメディ特有の面白さを引き立てる。さらに、山寺のハイテンションに動き回るドタバタっぷりや、高垣が躊躇なくやり遂げる振り切れた表情、水島と寿の一向に?み合わないやり取りなど、コミカルな芝居に大笑い。中でも小野の“オネエ”っぷりは濃厚で、すれ違いざまに岩崎の顔を撫でてお尻を触っていく姿には、稽古場が笑いに包まれていた。演出の野坂は、台詞の最初の一音のタイミングから次の動きにつなげやすい立ち位置まで、一つひとつを精査して、コメディの命である“間”を丁寧に調整していく。それに対しキャスト達も、わからないときは何度も確認しながら、確実に稽古を進めていく。そんな真剣さ漂う稽古場だが、雰囲気は和やか。ちょっとした確認でも毎回全力で演じる高垣に、水島が思わず「声がもったいないよ!」と声をかけるなど、山寺や水島、そして最年長の岩崎が積極的に空気をほぐしていた。誰かがひとりでセリフの確認をしていると他の人が稽古に付き合ったり、アドバイスしたり、それぞれが協力し合いながら芝居が作られている現場だった。公演は11月30日(水)から12月4日(日)まで、東京・Zeppブルーシアター六本木にて。12月1日(木)・2日(金)は、キャストによるお見送り企画も。取材・文:中川實穗
2016年11月28日宅間孝行主宰・タクフェスの新シリーズ第一作目『わらいのまち』が、2017年3・4月に上演される。作・演出で長男役も務める宅間、次男役の永井大、三男役の柄本時生に話を聞いた。タクフェス 春のコメディ祭!『わらいのまち』チケット情報本作は、「タクフェス春のコメディ祭!」シリーズの第1作目。「1997年に劇団を旗揚げして、来年12月で20年になるんです。20年間お客様に支えられてなんとかやってきた身からすると、もう少し感謝の気持ちを形にしたい」(宅間)と、シリーズを立ち上げた。今後、秋は切ない系、春はコメディを毎年上演する。そして今回は、2011年に宅間主宰の東京セレソンデラックス(2012年解散)で上演した『わらいのまち』の再演。寂れた田舎町の寂れた温泉旅館を舞台にしたシチュエーションコメディで、<暗転なし・転換なし・ノンストップ>という宅間の一幕モノの原点となった作品でもある。永井と柄本の印象を聞いてみると「大は以前うちに一本(『夕』/2008年)出てて、それが初舞台だったんですね。お世辞抜きにすごくよかったので、もう一回一緒にやりたいなって思っていて。この役、ぴったんこなんじゃないのって。時生くんは今回初めてなんですけど、顔が並んでるだけで『面白いことが起きるんじゃないか』って感じさせる人がよくて。まさにドンピシャ。すごく楽しみです」。それに対して永井は「コメディをあまりやったことがないので、いろんなところで使える引き出しを宅間さんに教えていただきたいです!」。柄本は「僕も、舞台でど真ん中のコメディってやったことなくて。自分でもどうなるかわからないから楽しみ。頑張りたいです」。宅間作品2作目の永井は稽古場について「すごく体育会系。ピリピリした空気や、和らいだ空気、みんなのチームワーク…メリハリがあって好きな場所です」。それを聞いて柄本は「楽しいだけで終わらない、そういう感じがないと稽古って面白くない。やってるときは泣きたくなると思うけど(笑)、結局はいいことがあるんだと思います」。また、唯一初演から出演する柴田理恵について宅間は「この公演直後に(柴田が所属する)WAHAHA本舗の公演があるんですけど、柴田さんが『この役は絶対やりたいんだ』って言ってくれて。嬉しかったですね。ただし、WAHAHA本舗で毎回柴田さんが作るコーナーを俺が考えるんだったら、って(笑)」と、意外な展開も!宅間が「初演を上演したシアタークリエのプロデューサー曰く『クリエ史上一番笑いを取った』作品です。ぜひこの機会を逃さずに劇場に参加しに来てください!」と意気込む公演は、2017年3月30日(木)から4月12日(水)まで東京グローブ座にて。その後、名古屋、兵庫を巡演。取材・文:中川實穗
2016年11月24日あべ美幸の同名漫画が原作のミュージカル『八犬伝―東方八犬異聞―』二章が、11月23日に開幕した。本作は、犬塚信乃や犬川荘介ら8つの玉に導かれた若者たちが、それぞれの真実の願いや戦う意味をみつけていく冒険ファンタジー。2015年8月に上演された初演の続編で、今作では犬阪毛野や犬山道節との出会いや、琥珀とのエピソードを描く。『八犬伝―東方八犬異聞―』二章 チケット情報前作に引き続き、演出・音楽は浅井さやか(One on One)、脚本は空想組曲のほさかよう。犬塚信乃役の坂口湧久ら続投メンバーに加え、犬川荘介役の松村龍之介、犬坂毛野役の安里勇哉(TOKYO流星群)、犬山道節役の山本一慶、九重役の帆風成海、琥珀役の岡村さやかが今作から出演する。舞台は全員での歌唱で幕を開けた。感情の温度まで伝わってくるような一人ひとりの歌唱はもちろん、全員で歌ったときのハーモニーも美しく印象的。劇中のコーラスもすべて出演者が袖で歌っているという。歌もナチュラルで聴きやすく、ミュージカルが苦手な人でも入り込みやすいはず。浅井によるオリジナルの楽曲はどれもキャラクターに寄り添うような温かさを感じた。ストーリーに妖や異形のもの(刀、動物)が登場する本作だが、前作同様、映像は使わずにマイムやダンスなど肉体のパフォーマンスで表現。村雨(天羽尚吾)の常に舞っているかのような軽やかな動きや、荘介と完全に動きをリンクさせた四白(美木マサオ)は本作の魅力のひとつだ。布やロープを使った演出も幻想的だった。ゲネプロ後の会見では「それぞれのキャラクターの“生きる意味”が違う形で描かれている。その“生きる意味”を大切に皆さんに届けられたら」(山本)、「オープニングやクライマックスは演じていても鳥肌が立つ。ぜひ観ていただきたい」(畠山遼)、「これほどまでに全員が一丸となって作っているカンパニーも珍しい」(三上俊)と本作の魅力をアピール。最後に松村が「この舞台に立てたことを光栄に思います。原作の世界を尊敬しつつこのメンバーでしかできないものを皆さんにお届けできるよう精進します」、坂口が「またこの作品に参加できることがすごく嬉しいです。前回よりもいい『八犬伝』、前回よりもかっこいい信乃が演じられるように頑張ります」と挨拶した。ミュージカル『八犬伝―東方八犬異聞―』二章は、11月27日(日)まで東京・全労済ホール/スペース・ゼロにて。取材・文:中川實穗
2016年11月24日川本成が主宰の劇団「時速246億」の最新作『バック・トゥ・ザ・ホーム』が、11月18日に開幕した。時速246億『バック・トゥ・ザ・ホーム』チケット情報毎回、バラエティ豊かな作家、演出家、出演者を招く「時速246億」の公演。今作は、作・演出に“見た後に何も残さないバカにこだわったコント”を続ける「男子はだまってなさいよ!」の細川徹とタッグを組んでのSFコメディだ。さらに出演は、和田琢磨、高橋良輔、平子悟、アイアム野田(鬼ヶ島)、小野坂昌也、そして川本と、舞台はもちろんお笑い、声優と幅広いジャンルのキャストが集結。この作品でしか見られない顔ぶれとなった。物語は、道路に飛び込もうとする和田(和田)に川本(川本)が思わず声をかけるところから始まる。「死なせてくれ」と暴れる和田に仕方なくビールを手渡す川本……翌朝、ふたりが二日酔いになりながらも目を覚ますと、なんと宇宙船の中だった!あっという間の2時間。むちゃくちゃな展開に、とにかくゲラゲラ笑ってしまう。それぞれの役柄も絶妙で、和田は暗いし、高橋はチャラいし、宇宙人のふたり(平子、野田)は気弱でかわいい。普段のイメージとのギャップが楽しく、けれどしっかりハマっている。さらに、舞台以外でも共演の機会が多い小野坂と川本のコンビネーションも抜群!コメディのテンポや間合いの良さは言う間でもなく、なにより最初から最後まで出演者がみんな楽し気で、劇場にその空気が充満している。要所要所で入る根本宗子の声もスパイスだった。観劇後も楽しい余韻が続く作品。ぜひ劇場で体感してほしい。時速246億『バック・トゥ・ザ・ホーム』は11月27日(日)まで、東京・赤坂RED/THEATERにて。取材・文:中川實穗
2016年11月22日西岡徳馬VS新納慎也、西岡VS音尾琢真(TEAM NACS)というWキャストで上演される『スルース~探偵~』が、11月25日(金)に開幕する。それに先がけ、西岡、新納、音尾と、演出を手掛ける深作健太の会見が開かれた。舞台『スルース~探偵~』チケット情報公演期間の前半を西岡VS新納の<探偵バージョン>、後半を西岡VS音尾の<スルースバージョン>で上演される本作。西岡は「芝居は相手役で全然違いますから、『同じもの!?』と思っていただけるようにがんばっていきたい。『どっちがオススメ?』とよく聞かれるのですが、両方です。両方観てください!」と挨拶。新納は「毎日『楽しい!楽しい!楽しい!』って叫びたいくらい楽しく稽古させていただいています。こういうお芝居がやりたかったんだなって細胞が生き生きしている」と喜びを語った。まだ稽古にほとんど入っていない音尾は「Wキャストは初めてで、しかも僕は稽古に参加するタイミングも遅い。すでに徳馬さんが新納さんと稽古しているところに僕が入るっていう…怖くてしょうがないです!」と不安顔を見せた。そんなWキャストについて深作は「新納さんも音尾さんも役へのアプローチが全然違いますし、それを受け止める徳馬さんが日々柔らかくどんどん役を育てていく。演劇の根源的なパワーを日々感じています。衣裳からキャラクターから、もしかしたら上演時間まで違う2バージョンになると思います」と話した。新納が役柄について「イタリアからイギリスに来た移民で、ユダヤ人の血も入っている。そういうマイノリティをずっと抱えて生きてきた青年」と語ると、音尾が「へ~、新納さんはそういうことを考えてるんですか」と対抗心を露わにし、西岡と新納も大笑い。音尾は「それぞれ深く考えてやっていますし、そこに僕と新納さんが生まれ育っていく中で見たもの聞いたものが投影され、最終的に違うマイロになっていく」と話した。ふたりを受け止める西岡は「寝てると頭の中で台詞が飛び交ってるんですよ。夢の中で作品が映像になってたりして。もう頭の中がずーっと『スルース』ですよ。こんなのは今までなかったな」と笑顔。「通したら汗びっちょりになっちゃって、久しぶりにこういう感じを思い出しました。体力が持つかは心配ですが、こんな幸せなときはないと思っています」と話した。<探偵バージョン>は11月25日(金)から12月11日(日)まで、<スルースバージョン>は12月17日(土)から28日(水)まで、東京・新国立劇場 小劇場にて。その後、<スルースバージョン>が福岡、愛知、宮城を巡演。取材・文:中川實穗
2016年11月22日鴻上尚史のプロデュースユニット「KOKAMI@network」の第15 回公演『サバイバーズ・ギルト&シェイム』が、11月11日に開幕した。KOKAMI@network『サバイバーズ・ギルト&シェイム』チケット情報「サバイバーズ・ギルト」とは、戦争や災害、事故、事件から奇跡的に生還を遂げた人が、周りの人々が亡くなったのに自分が助かったことに対して感じる罪悪感のこと。日本では特に3.11(東日本大震災)で広く浸透した。本作のタイトルにはそれに日本人ならではの「生き延びた恥ずかしさ(シェイム)」が加わっている。物語は、戦場から1年ぶりに故郷に戻ってきた主人公が母親に「母さん。僕ね、死んじゃったんだ」と告白することから始まる。主人公の水島明宏を演じるのは、本作で初主演を務める山本涼介。明宏が所属していた大学の映画サークルの先輩・夏希を演じるのは南沢奈央。さらに、身体が弱い明宏の兄を伊礼彼方、明宏の所属する部隊の上官・榎戸を片桐仁、明宏の母親を長野里美、その婚約者・岩本を大高洋夫が演じる。明宏が本当に幽霊として戻ってきたのかそうでないのかは、明かされないまま物語は進んでいく。とぼけた母親は息子の帰宅を喜び、堅物の兄は「戦場に戻れ、非国民!」と非難する。そこに母親の婚約者や、明宏の上官まで現れると混乱状態に。そんな中で明宏は「生きた証を残したい」と夏希に出演を頼みこみ、最後の映画撮影に挑む。“抱腹絶倒の爆笑悲劇”と銘打たれた本作。登場人物それぞれの個性は強烈で、ちょっとした会話にいちいち笑わされてしまう。中でも片桐が巻き起こすハチャメチャなやり取りには何度も爆笑が起きていた。その一方で、そんな彼らがそれぞれの理由で抱えている「自分が許せない」という感情。それは懺悔のように吐露したところで終わらない感情だが、物語の中で少しずつ溶かされ、温められ、さまざまに昇華されていく。「映画の撮影が終わるまで」をひとつの支えのようにして進んでいく彼らの結末を、ぜひ劇場で見届けてほしい。笑いながらも泣けてしまうし、泣きながらも笑ってしまう。そんな演劇ならではの体験ができる作品『サバイバーズ・ギルト&シェイム』は、12 月4 日(日)まで東京・紀伊國屋ホールにて。取材・文:中川實穗
2016年11月17日11月11日(金)に開幕する川栄李奈主演の舞台『あずみ~戦国編』の公開ゲネプロが行われた。小山ゆうの漫画『あずみ』が原作で、刺客として育てられ、大義のために戦うあずみを川栄が演じる。昨年9月に川栄主演で上演された舞台『AZUMI~幕末編』の前作にあたる“戦国編”。舞台『あずみ~戦国編~』チケット情報ゲネプロ前に川栄、鈴木拡樹、早乙女友貴、小園凌央、有森也実、星田英利、構成・演出の岡村俊一が登壇した囲み取材で、川栄は「不安の方がまだ大きいですけど、最後までがんばりたい」、鈴木は「生きるということをテーマにそれぞれが戦っています。何よりも強いなと感じたのは川栄座長です。最後までひとり戦い抜いて生き抜いていく力に引っ張られて、僕達はここまで来れてると思いますので、千秋楽まで座長の背中にちゃんとついていけるようにがんばりたい」と意気込みを語った。500人斬りといわれる殺陣について川栄は「ただ斬ってるわけではなく、すごく意味のある殺陣になっている」と語り、本作を「胸が打たれるようなすごく切ないシーンだったり、辛いシーンが多いですが、生きる意味とはなんなのかということが伝わると思う」と話した。そんな川栄について岡村は「とんでもないことになってます。女優って感受性が重要なんですよ。もう教えることはないくらいです。言葉は悪いけど、『アイドルくずれ』みたいな言い方するじゃないですか。でもとんでもない。そんなこと言うやつがいたら観に来た方がいい。女優ってこういう感受性のことを言うんだと川栄が体現してくれてます」と絶賛した。「天下のため、徳川のため、泰平の世のため」に豊臣恩顧の大名を次々と暗殺し、次は加藤清正(久保田創)を狙うあずみ(川栄)やうきは(鈴木)。それに気付いた清正の重臣・井上勘兵衛(吉田智則)は、なんとかしてあずみを打ち取ろうと、人を斬ることだけが生き甲斐という手練れ・最上美女丸(早乙女)を呼び寄せる――。人と出会い、使命により斬る中で、「これは本当に正しいことなのか」と迷いを感じ始めるあずみ。その想いが溢れるような殺陣は、切なく苦しい。そんなあずみとは対極で、快楽のために人を斬る美女丸の殺陣は軽やか。早乙女の美しい刀さばきが残虐さを際立てた。あずみを見守り共に戦ううきはは、殺陣はもちろんフライングも披露。あずみとふたりで生きる未来を夢見ながら、共に人を斬り続けるという切ない役どころを演じた。斬って傷ついてそれでもまた斬るあずみの姿は印象的。ぜひ劇場に足を運んで。公演は11月11日(金)から27日(日)まで東京・Zeppブルーシアター六本木にて。取材・文:中川實穗
2016年11月11日阿佐ヶ谷スパイダース『はたらくおとこ』が、11月3日に東京・本多劇場で開幕した。今年20周年を迎える阿佐ヶ谷スパイダース(長塚圭史、中山祐一朗、伊達暁)が2004年に初演した作品で、今回は12年ぶりの再演。池田成志、中村まこと、松村武、池田鉄洋、富岡晃一郎、中山祐一朗、伊達暁、長塚圭史という初演時のキャストが再集結し、女性キャストとして新たに北浦愛が初参加する。北浦は初舞台。阿佐ヶ谷スパイダースPresents『はたらくおとこ』チケット情報舞台は「茅ヶ崎りんご園」の事務所。社長の茅ヶ崎(中村)、東京から来た夏目(池田成志)、前田(中山)、バイトの豊蜜(池田鉄洋)は、社長の夢である“渋くて苦いリンゴ”を作り出す夢に破れ、今やすることもない事務所で朝から晩まで過ごしている。そんなある日、豊蜜の妹・涼(北浦)があるものを持って事務所に駆け込んでくる。さらに兄の蜜雄(松村)、涼のボーイフレンドの満寿夫(富岡)も現れ、男たちの再起をかけた暴走が始まる。だがそこに連絡が取れなくなっていた前田の弟・愛(伊達)が戻って来て、物語は思わぬ方向に進んでいく――。ギャグもあるがバイオレンスもある。殴り合いのシーンなどはバシバシとリアルな音が響き、観ているだけで痛い思いをする。登場人物は全員どこかしくじっていて苦しく、目を背けたくなる描写もある。劇中には“臭いもの”や“危険なもの”が出てき、実際は臭くないのに何か鼻につく気がして不快だし、“危険なもの”と同じ空間にいる恐怖を本気で感じる。だがそれが、圧倒的に楽しい。これは観劇で味わえる快感のひとつだろう。そしてその分、ぐっちゃぐちゃの事務所の外でしんしんと降り続ける雪や、イマイチな男たちが突然見せる勇敢な“かっこつけ”はとても美しく心に残る。演劇の醍醐味、魅力をたっぷりと味わえる、このキャスト陣ならではの贅沢な舞台だと感じた。北浦以外は12年前と同じキャストで演じられる本作。つまり初演は12歳若かったメンバーが、2004年の空気の中で演じていた作品だが、その違和感などは当然なく、ストーリーとしてはむしろ“今”観たい作品。前作を観劇した人にもそうでない人にもオススメしたい。公演は、11月20日(日)まで東京・本多劇場にて。その後、福岡・キャナルシティ劇場、広島・JMSアステールプラザ 中ホール、大阪・松下IMPホール、愛知・名古屋市青少年文化センター アートピアホール、岩手・盛岡劇場 メインホール、宮城・電力ホールを巡演。取材・文:中川實穗
2016年11月08日12月22日(木)に開幕する ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン青学(せいがく)vs六角。その公演に先がけ、11月1日にファンを招いてのお披露目イベントとプレス向け発表会が行われた。ミュージカル『テニスの王子様』チケット情報2003年から続くミュージカル『テニスの王子様』は、この9月に公演を終えた「3rdシーズン青学(せいがく)vs氷帝」にて、青学(せいがく)8代目キャストが卒業。今回のお披露目では、新青学(せいがく)12名、六角7名が初めて観客の前に勢揃いした。劇中歌『24/365』に乗せ、まずは新青学(せいがく)のメンバー、次に六角のメンバーが登場し、歌とダンスを披露。さらに役柄としてのトークも展開するなど、フレッシュなパフォーマンスで公演への期待を高めた。その後は、初代青学(せいがく)・桃城 武などを演じた森山栄治がMCとして登場。主人公・越前リョーマ役の阿久津仁愛はパフォーマンスの感想を聞かれ「全力で披露できたと思います!」と笑顔。続いて青学(せいがく)・手塚国光役の宇野結也が「本日に至るまで本当に過酷なスケジュールでしたが、ここにいる仲間と全力で支え合って、今日に向かって頑張ってまいりました。その甲斐もあって新たな青学(せいがく)として、新たな六角として、本日を迎えることができたと思います。これからも常に上を目指して、もっともっといいステージになるように頑張ってまいります」、六角・葵 剣太郎役の矢代卓也が「これから先、六角の情熱、チームの団結力、テニスへの熱い想いを忘れずに、一丸になって進んでいきたいと思います。みんな、六角もよろしくね!」と、両部長の挨拶があった。さらにゲストとして青学(せいがく)8代目の神里優希(不二周助役)、田中涼星(乾 貞治役)、眞嶋秀斗(桃城 武役)の3人が応援に駆け付け、客席の温度もますます上昇。同じ役の後輩にアドバイスをする場面では、田中は加藤 将に“乾ノート”を手渡し「乾のカッコよさを自分らしく発揮して」とアドバイス、眞嶋は吉村駿作に「僕のときは髪を切りすぎじゃないかと言われたけど(笑)、髪型OKです!立体的なシルエットも完璧」と絶賛。神里は「聞かれたくない」と定本楓馬に耳打ちで長いメッセージを伝えた。最後にリョーマから「みんな、これから俺たちの応援よろしくね!」と、全員で楽曲『ニュー・ウェーブ』を披露し、イベントは終了。その後のプレス向け発表会では観客からの質問に答える時間なども設けられた。公演は12月22日(木)から25日(日)まで東京・TOKYO DOME CITY HALLにて。その後、大阪、愛知、宮城、福岡、東京(凱旋)を巡演する。取材・文:中川實穗
2016年11月04日中村誠治郎主演の「戦国御伽絵巻『ソロリ』~妖刀村正の巻~」が、11月2日に開幕した。本作は、川光俊哉による書き下ろしオリジナル時代劇。戦国時代を舞台に、人を殺す「刀」ではなく、それをおさめる「鞘」をつくってきたソロリ党の後継者・高丸(中村誠治郎)が、のちの豊臣秀吉(町田慎吾)と出会い、妖刀による支配や小平(佐藤永典)と戦いながら、泰平の世への道を模索する物語。“戦国御伽絵巻”の名の通り、絵巻の中から登場人物が抜け出てきたかのような演出で幕を開けた。演出は大岩美智子。戦国御伽絵巻『ソロリ』~妖刀村正の巻~ チケット情報時代劇の魅力のひとつは殺陣。しかし、本作におけるそれは勝敗をつけるためのものとは違っていた。「人を殺めた者、ソロリを退くべし」という掟があるソロリ党の党首・高丸は、“切り捨て、ねじ伏せ、おさめゆく”のではなく、“おさめ、守り、慈しむ”という信念を持っている。しかし、それでも戦わなければならないとき、高丸は刀ではなくそれをおさめる鞘を使って相手と戦うのだ。そんな状況で生まれる殺陣は印象的。身体の使い方一つひとつから、高丸の想い、そして相手の想いが滲み出て、多くのものが伝わってくる。感情だけでも技術だけでも演じられないであろうその殺陣はどれも熱く、中でもクライマックスシーンでの中村の姿には目を奪われた。一人ひとりの役柄も魅力的。中村演じる高丸はどこか情けないところもあるがまっすぐで、ひとつの信念を守り抜こうと必死な、ヒーローというには人間くさい男。秀吉との仲が深まるにつれ、少しずつ変わっていく表情も心に残る。町田演じる秀吉は、腕が立つ高丸とは逆の、口が立つ男。ホラをうまく使って天下人を目指す秀吉はユニークで、口を開くとふと空気が和らぐ。高丸に戦いを仕掛けるのは、佐藤演じる小平。ヒロイン・葵(小口ふみか)のためというその一心で生きる彼は、その痛々しいほどの想いが刀さばきからも伝わり、切ない。主人公の高丸の逆の立ち位置の小平や葵らの過去も描かれることで、“勧善懲悪”とは違う、刀を鞘におさめる者、刀を振る者、知恵を使う者、それぞれの信じる「正義」が見えてくる。誰もが必死だからこそ、「乱世を終わらせたい」という目的は同じはずの彼らが選んだ手段、それが生んだ結末の違いに心が揺れる。ぜひ劇場で熱い芝居を体感してほしい。「戦国御伽絵巻『ソロリ』~妖刀村正の巻~」は、11月6日(日)まで東京・シアターサンモールにて。取材・文:中川實穗
2016年11月04日11月11日(金)に開幕する川栄李奈主演の舞台『あずみ ~戦国編~』。その公開稽古が行われ、幼い頃から刺客として育った少女・あずみを演じる川栄をはじめ、あずみと運命を共にする忍び・うきは役の鈴木拡樹、あずみたちを狙う美しく最強の剣士・美女丸を演じる早乙女友貴ら出演者が白熱した殺陣を披露した。舞台『あずみ ~戦国編~』チケット情報原作は、小山ゆうの漫画『あずみ』。今作は、昨年9月に川栄主演で上演された舞台「AZUMI~幕末編」の前作にあたる“戦国編”で、舞台では10年ぶりのリメイクとなる。構成・演出は10年前と同じく岡村俊一。公開されたのは、全体の3分の1という殺陣シーン。あずみ、うきは、あまぎ(斉藤秀翼)、ひゅうが(三村和敬)の共に育った4人が戦うシーンでは、華やかでスピード感のある剣さばきが次々と繰り出され、幼い頃から刺客として育てられた彼らの過去を感じさせる。中でも、あずみとうきはが大人数の敵を斬り続けるシーンは、舞台上がどれだけ入り乱れてもふたりは圧倒的な存在感で視線を集め、強く鮮やかな殺陣を披露していた。また、美女丸が中心となるシーンでは早乙女の流れるような殺陣が圧巻。事前に岡村が「ゆっくん(=早乙女)のスピードになるので気を付けてね!」と共演者に声をかける場面も見られた。そのほかにも、あずみが剣を使わずにアクロバットで敵を倒すシーンなども公開され、川栄は汗だくになりながらも軽やかに演じた。稽古後、川栄が「ここでお見せしたよりも何倍も殺陣があるので、みんなで協力していいものができたらなと思っています」、鈴木が「殺陣返し(=殺陣の確認)だけでも汗だくです。本番はこれに熱量もプラスされてもっと汗をかくんだと思います。スッキリといい汗かいて痩せたいです(笑)」、早乙女が「本番はもっともっとスピードも上がって、お芝居が入って、熱量が上がって、テンションも上がってると思うので、ぜひ期待していただければ」と熱く語る中、豊臣秀頼役の小園凌央は殺陣のシーンがなかったため「僕は汗ひとつかいてません(笑)」と笑わせつつ「今はお芝居を死ぬ気でがんばっています」とコメント。さらに飛猿役の星田英利が「まだ科学技術が我々の本気の殺陣に追いついてない。カメラのスピードが捉えきれないということで、今日は極力遅くした次第でございます!」とうそぶき共演者を笑わせながらも「これからも精進します」と挨拶し、公開稽古は終了した。公演は11月11日(金)から27日(日)まで東京・Zeppブルーシアター六本木にて。取材・文:中川實穗
2016年11月01日ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」“烏野、 復活!”が、10月28日(金)に開幕した。本作は、男子バレーボール(=排球)部メンバーの挑戦と成長を描いた古舘春一原作の同名コミックが原作。舞台は昨年11月に初演、今年4月に再演され、今作は新作となる。「ハイキュー!!」“烏野、復活!”チケット情報身長162.8cmの主人公・日向翔陽(須賀健太)が影山飛雄(木村達成)らチームメイトと共に「落ちた強豪“飛べない烏”」から脱却していく姿を描く本作。烏野高校のほか、音駒高校、伊達工業高校、常波高校、青葉城西高校が登場し、一幕では因縁のライバル・音駒高校との練習試合…カラス対ネコの<ゴミ捨て場の決戦>に、二幕では“鉄壁”のブロックで烏野のエース・東峰 旭(冨森ジャスティン)のトラウマを作った伊達工業高校らと対決するインターハイ予選に挑む。全5校、総勢29名が出演し、3つの試合を展開。試合のほかにも音駒高校との賑やかな合宿シーンや各メンバーの過去などがもりだくさんで描かれるが、それを映像、音、光、肉体を駆使して、一つひとつ印象的にみせていくのがこの演劇「ハイキュー!!」。芝居と見事に融合したプロジェクションマッピングや、試合を表現する歌&ダンス、美しいアクロバット、なにより圧倒的な熱量の芝居と、演劇の楽しさがギュッと詰まった世界が広がる。ゲネプロ後の囲み取材では、主演の須賀が「今、人生で一番舞台上で動いています。でも汗をかくからこそ、それが芝居につながって、芝居の熱さも上がっていく。原作の持っている力をそのまま舞台上で体現できているのではないかと思います」と話した。演出のウォーリー木下は、3作目となる須賀と木村のコンビネーションについて「このお芝居って特に息が大事で、そこがこのふたりは誰よりも早い。それがただの会話じゃなくて、動きながらとか、アクロバットしながらとか、そういう中で合わせていくっていう、ちょっとしたサーカス団(笑)。頭の回転の速さと身体の回転の速さがメキメキよくなってます」。また、須賀は本作の見どころを「やっぱりオープニングはすごく熱い。“ハイパープロジェクション”なところは更に進化しているし、僕たちもそれに負けないくらいの熱量で全力で、と重きを置いています」と紹介。常波高校・池尻役の松田 裕が語った「スポーツは勝ち負けですので、烏野が復活するということはどのような人たちが存在するのか、という面にも注目してもらえたら嬉しい」という言葉も印象的だった。公演は、11月6日(日)まで東京・AiiA 2.5 Theater Tokyoにて上演後、岩手、福岡、大阪を巡演し、東京にて凱旋公演。最終日にはライブビューイングも。取材・文:中川實穗
2016年11月01日魔劇「今日から(マ)王!」シリーズの第3弾『舞台オリジナル外伝 魔劇「今日から(マ)王!」~魔王暴走編~』が、11月3日(木・祝)に開幕する。舞台オリジナル外伝魔劇『今日からマ王』チケット情報原作は、文庫からアニメ、コミック、ゲームと展開される人気作で、平凡な高校生の主人公が実は“異世界最強の魔王”だった…というファンタジー作品。舞台第3弾では、原作の“魔笛”エピソードをベースに、初の舞台版オリジナルストーリーで上演する。主演の小西成弥に話を聞いた。今作から主人公・渋谷有利を引き継ぎ、演じる小西。3作目にして主演を引き継ぐプレッシャーはないか聞いてみると「あります。でも(前作まで有利役だった)聖也くんとはもともと仲がいいんですよ。その聖也くんが本当に大切に有利を演じていたので、僕はその要素もしっかりと引き継いでいけたらと思います」と真摯に語る。自身にとって初めての座長だが「メインキャストでは一番年下なので、引っ張るというよりはみなさんに支えていただいてる感じです。ただやっぱり、できているかは別としても座長として引っ張っていかないとっていう気持ちはあって。例えばみんなより早く台詞を覚えるとかそんな“行動”でできるだけやっています」。役については「主人公が初めてなので、中心に立っていろんな人と絡む楽しさを感じています。忙しいっていうか(笑)」とフレッシュな感想。「ぜひ観てほしいのは、グウェンダルとのシーン。今作では有利とグウェンダルの距離が縮まるところが見られるので。それと、“魔王モード”になったとき。有利の信念や正義感が出るシーンなので、ちゃんと演じたいですね」。特に好きなシーンを聞いてみると「渋谷勝利(岡田地平)と村田健(反橋宗一郎)の絡みが好きです。地平くんはコメディ体質なのですごく面白いんですよ。それと、ギュン汁のくだりは今回も面白いです!」と笑顔。コミカルなやり取りも多いが「舞台と同じで稽古場の空気もすごく明るいんです。みんな仲がいいし、そういう関係性があるから、(コミカルなシーンも)いい空気でできるんじゃないかな」。「観たら明るい気持ちになってスッキリする作品です。ダンスも歌も殺陣もあるエンターテインメント性の高い作品ですが、その奥にあるメッセージも受け取って頂ければ嬉しいです。初めて観る方にもわかるように作っているので、ぜひ観に来てください!」公演は11月3日(木・祝)から13日(日)まで、東京・全労済ホール/スペース・ゼロにて。取材・文:中川實穗
2016年10月31日中川晃教、平野綾、橋本さとし、濱田めぐみが90分間ノンストップ&全編歌で届けるミュージカル『マーダー・バラッド』が、11月3日(木・祝)に開幕する。オフ・ブロードウェイ、韓国で大ヒットした注目作の日本初演。その公開稽古に潜入した。ミュージカル『マーダー・バラッド』チケット情報物語の舞台はニューヨーク。燃えるような恋に落ちたトム(中川)とサラ(平野)だったが、トムがサラに飽き、一方的に別れを告げ終わってしまう。失恋で酒におぼれるサラを救ったのは詩の博士号を持つマイケル(橋本)。ふたりは恋に落ち、結婚。高級住宅街に家を買い、娘も誕生し、絵に描いたようなしあわせな毎日を送る。だがサラはいつしか繰り返しの毎日に疲れ、トムがオープンしたクラブを訪ねてしまう…。再会し、越えてはならない一線を越えるふたり。そんな彼らを見つめるバーテンダー(濱田)。やがてマイケルがふたりの関係に気がつき、殺人事件へと発展する――。お酒が並んだカウンター、テーブル&椅子が並ぶ舞台。セット転換もなく、4人がほぼ出演しっぱなしで全41曲、ノンストップで紡いでいくという贅沢な作品。一曲一曲に込められたストーリーも濃厚で、4人はときに恋焦がれ、ときに嫉妬に狂い、過激でセクシーな芝居も交えながら、燃えるように愛憎の一部始終を伝えていく。また、狂言回しのようなポジションの濱田は、舞台上でただただ彼らのやりとりを見つめている。物語を進めていく3人からふと濱田に目を移すと、ゾッとするような表情で彼らを睨んでいることが多々あり、その理由は最後にわかるが、得体の知れない存在として舞台上の空気を揺らしていた。「殺人事件」ということで別世界の物語をイメージしていたが、実際は日常の生々しい感情が描かれた作品だった。観る人の“今”によって感想も変わってくるだろうと思う。登場人物それぞれの視点で観劇すると、違う発見もありそうだ。また、舞台の両サイドには、クラブの一部のようにして設けられている“ステージシート”があり、なんと同じ舞台上で観劇できる。今回はこのステージシートからの取材となったが、身体が当たりそうなほどの距離で、彼らの歌はもちろん息遣い、熱気までダイレクトに届く。ぜひ楽しみにしてほしい。公演は、11月3日(木・祝)から6日(日)まで兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール、11月11日(金)から27日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場にて。取材・文:中川實穗
2016年10月31日安西慎太郎主演の舞台『幸福な職場~ここにはしあわせがつまっている~』 が、2017年1月に上演される。本作は、2009年の初演以来、劇団「東京フェスティバル」が再演を重ねてきた、きたむらけんじ代表作。全国初の心身障害者雇用モデル工場となった日本理化学工業が初めて知的障害者を雇用した時の物語を描く。舞台『幸福な職場』チケット情報主演の安西、松田凌、谷口賢志に話を聞いた。本作への出演について「すごく嬉しい」(安西)、「早く稽古したい」(松田)、「楽しみしかない」(谷口)と口々に語る3人。谷口は「お話をいただいたときに安西慎太郎の名前を見て、とにかく嬉しくて。それに松田凌くんや中嶋しゅうさん、世田谷パブリックシアターで6人芝居でって…最初からおいしいケーキが届いてるのに、どんどんいいものがトッピングされてくみたいな情報しか来ない(笑)」、松田も「主演が他の役者だったら悔しかったと思います。しんた(安西)は、演技力と人間力が好きで、彼とだったらやりたいって思わせてくれる役者さん。今回、ガッツリ芝居で絡めるのがすごく嬉しいです」と共演を喜ぶ。本作の印象を、安西は「前段階の情報に障害を持たれてる方を初めて雇用した会社っていうのがあって、重かったりしっとりした感じかと思っていました。でも逆で、障がいを持たれている方が入ってきたから人間関係が渦巻いていくし、ところどころコミカルで楽しくて、ほっこりするような作品です」と話す。谷口「“泣く”という意味での感動的な作品なのかなと思ったのですが、そこが軸ではない。働くことは普遍的なテーマで、その普遍的なことがある種の小さい奇跡でつながっていくお話です。個人的な話ですが、僕は、障害者の方に対して無駄にやさしくしてないかとか、余計に明るくしてないかとか、もしくは避けてはいないかとか、自問自答することがあります。そんな中でこの作品に携わって、僕自身も何か広がるものがあると思うので、そこも楽しみです」松田「押し付けで奇跡を与えるわけではなく、だけど人生が少し変わる要素を確実に皆さんに届けられる作品だと思っています。必ずなにか持ち帰って頂けるんじゃないかなと思いますので、ぜひ観に来てください!」安西「実際に起きたことなので、強い責任をもって、キャスト6人、そしてきたむらさんをはじめとするスタッフの皆さんで素敵な作品を届けたいなという一心でやります。皆さんぜひ楽しみにしていてください!」公演は2017年1月26日(木)から29日(日)まで、東京・世田谷パブリックシアターにて。取材・文:中川實穗
2016年10月28日傑作推理劇『スルース~探偵~』が11~12月に上演される。最後の最後まで何が真実かわからない、男と男の化かしあいが描かれる本作。西岡徳馬VS新納慎也の<探偵バージョン>、西岡徳馬VS音尾琢真(TEAM NACS)の<スルースバージョン>というWキャストで、深作健太が演出を務める。舞台『スルース~探偵~』チケット情報西岡徳馬と音尾琢真が作品の魅力を語った。1970年に初演され、72年にはローレンス・オリヴィエとマイケル・ケインで映画化。2007年の再映画化ではケインがオリヴィエの役を演じ、ジュード・ロウと共演した。日本では劇団四季が73年に初演し、今も再演を繰り返している。音尾は「映画を2作とも観て、いつかやりたいと思っていました。時間がない中でのオファーでしたが、この作品ならどうにかしてやりたくて」と出演を喜ぶ。西岡も「文学座に入って1、2年目の頃にオンタイムで映画を観て、衝撃的で憧れた。僕もいつかやりたいって言って、以前、話を持っていったこともあるんですけど、そのときは版権の問題でできなかった。もうだめかと思っていたところでこの話をいただいて。これはもう…本当に僕の代表作にしたい。その意気込みで向かわせてもらいます。演劇史に残すつもりで、過去にないくらいの興奮と意気込みを持ってぶち当たろうとしています」と熱く語る。物語は、ミステリー作家のアンドリュー(西岡)が、妻の愛人であるマイロ(音尾/新納)を呼び出すところから始まる。マイロにとある提案をするアンドリュー。マイロはその筋書きどおりに珍妙な手順で宝石を盗むが――。音尾は「ホンに向き合うこと、そして目の前の西岡さんと向き合うことに終始して新しいものを作っていきたい。西岡さんは、僕の一言が変わればそこに返してくれる、そんな素晴らしい俳優さん。その胸に飛び込んでいきます」。対して西岡は「芝居はキャッチボールだから、相手役で全然違う形になるのは当然。どれだけふたりで練れるかが勝負になってくる。ふたりの評判のよさは知ってるから、どういう風にやってくるかなってワクワクしていけばいいんですよ」と懐の深さを見せる。「『探偵役?』って言われるんですけど、探偵は出てこないんですよね」と音尾が話すと、西岡から名言が生まれた。「スルース(=探偵)はお客様です!」。年末の劇場で、男たちの真実と嘘を見破る“スルース”として過ごしてみるのはいかが?公演は、新納が出演する<探偵バージョン>が11月25日(金)から12月11日(日)まで、音尾が出演する<スルースバージョン>が12月17日(土)から28日(水)まで、東京・新国立劇場 小劇場にて。なお、チケットぴあでは東京公演のインターネット先着先行「座席選択プリセール」を受付中。取材・文:中川實穗
2016年10月26日劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)の、第54回本公演『土九六(どくろ)村へようこそ』が、10月21日に開幕した。SET『土九六村へようこそ』チケット情報前日の囲み取材で座長の三宅裕司が「今回はSET初期の頃のような、社会的なテーマを笑いと音楽、アクションで楽しく観られるようにしたというような作品です。昔はそういう作品ばかりやっていました」と、本作について解説した。物語は、東京から数百キロ離れた土九六村が舞台。村立30周年のお祭りの真っ最中だが、村長・吉蔵(三宅)のひとり娘であるお龍(西郷みゆき)たちの世代は、村の神様「ドクロ様」の存在に違和感を覚え、親世代とぶつかっている。秘密を抱え、歯切れの悪い反論しかできない親世代。そんな村に、移動型ミュージカル劇団「放浪座」がやってくる。その団長兼演出家のヒロ(小倉久寛)やメインボーカルで息子のアツシ(大竹浩一)は、とある目的で訪れていた――。ミュージカル劇団による歌とダンスや、村人たちのコミカルなやり取りなど、劇中にはハイクオリティーなダンス、歌、アクション、笑いがたっぷりで、ストーリーもわかりやすい。特に三宅と小倉の軽妙なやり取りに観客は爆笑。ふたりのシーンになると客席の温度も上がるようだった。今作はゲストを招かず、劇団員のみで作り上げた。それについて三宅は「僕が65歳で小倉ももうすぐ62歳。SETを残していくためには若手に頑張ってもらわないと困るし、三宅・小倉なしでも人気劇団として成長していきたい。若手にとにかくたくさんギャグを背負わせて、役を与えて、生のお客さんの中での笑い作りを経験させたいと思いました」と、大竹や西郷をはじめ若手の活躍シーンも多い。共に芝居をする小倉は、「周りで若い劇団員が上手に踊ってくれますので、なんか『踊れてるのかな』って勘違いしちゃうんですよね」と、今作でのダンスシーンについて言及。役名からも連想できるあのグループ風のダンスは小倉の見せ場のひとつとなっている。三宅「“ミュージカル・アクション・コメディー”で誰が観ても楽しいお芝居です。今回はテーマをグンと前に押し出してますけれども、初めてお芝居を観る方でも楽しく観られる優しいお芝居になっています。前知識なしでフラッと観に来ていただいて楽しめると思います。お待ちしております!」小倉「僕も踊りますので、ドキドキしたい方はぜひお越しくださいませ」公演は、11月6日(日)まで東京・サンシャイン劇場にて、11月11日(金)・12日(土)に愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホールにて上演。取材・文:中川實穗
2016年10月25日梅棒 6th OPUS『GLOVER -グラバー-』が、10月15日に東京グローブ座で開幕した。今作では、大貫勇輔、梅田彩佳、松浦司(Shya7)らをゲストに迎え、シェイクスピア「ロミオとジュリエット」をベースに “ダンス×J-POP×演劇”という独自のスタイルで上演する。梅棒 6th OPUS『GLOVER』チケット情報劇場に入り、まず圧倒されたのは美術。むき出しの鉄骨とそこに植物のように這う管、そして植物が天井を覆い、これから始まる『GLOVER -グラバー-』のスケールの大きさを予感させる。この美術、劇中では照明によってもさまざまに印象が変わっていた。梅棒の舞台は基本的に台詞がない。出演者のダンス、芝居、曲(J-POP)の歌詞で物語を表現するのが独特のスタイルだ。台詞がなくても、物語の軸となる大貫演じるロメオと梅田演じるジュリエッタの恋模様はもちろん、その周囲の登場人物たちの心の機微までしっかり伝わってくる。今作ではやや複雑な設定もあったが、そこのわかりにくさもなかった。それは衣裳などの視覚的な要素もあるし、キャスト達のダンスや演技、そして演出によるものだろう。「台詞がない」ということが逆に、舞台を豊かにしているように感じた。加えて面白かったのは、今まで何度も聴いてきたであろうJ-POPが梅棒の舞台で聴くと「こんなにいい曲だったのか」と感じることだ。それはストーリーに乗って心情にピタリとリンクしていることや、魅力的なダンスと合わさっていることもあるだろうが、この独特な表現方法の舞台を受け止めているうちに観客の感受性も全開になっているからではないかと思う。バラバラなミュージシャンの曲を使いながら観客の集中力を途切れさせないのも、細部まで世界観を作り込んでいるから。もちろんダンスは一番の見どころだ。物語に沿って、アニメーションダンスやブレイクダンスなどさまざまなジャンルのダンス、さらにダンサーならではの美しい殺陣などが次々と観られる贅沢さは、梅棒ならでは。中でもやはり世界を舞台に活躍する大貫の技術には圧倒された。その高い身体能力を敢えて無駄遣いする、梅棒の舞台だからこそ見られるシーンなども楽しく、のびのびとした大貫の姿が印象的だった。そして梅田はこの舞台の華。少しずつ恋を学んでいくジュリエッタの愛らしさや透明感は、梅田でなければ成り立たないと感じるほど。梅田がダンスすると自然と目が引き付けられる、そんな魅力がある。その個性的なゲストたちをひとつの作品の上でつないでいく梅棒メンバーの存在も強く感じられる舞台だった。公演は、10月23日(日)まで東京グローブ座、10月25日(火)から27日(木)まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて。取材・文:中川實穗
2016年10月19日劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)の、第54回本公演『土九六(どくろ)村へようこそ』が、10月21日(金)に開幕する。約半月後に本番を控えた稽古場にお邪魔した。SET『土九六村へようこそ』チケット情報本作は、SETの新作。物語の舞台は小さな「土九六村」。村民は祭りを催し、今年の豊作を「ドクロ様」に祈っていた。ところが村の若者たちは「ドクロ様」「村のしきたり」に違和感を覚え、親世代とぶつかる。そんな中、村には移動型ミュージカル劇団「放浪座」がやってくる。実は彼らは単なる劇団ではなかった――。稽古場では、演出と出演を務める座長・三宅裕司を前に、ダンスのチェックが行われていた。出演者全員によるキレのあるダンスは圧巻だが、三宅は立ち位置や見え方の調整はもちろん、「腕の位置はそこでいい?」など細かい部分まで見逃さず、丁寧にキッチリと詰めていく。大きく変わったわけではないのに、グッと見やすさがあがっていた。ダンスの後は、コメディシーンの確認。とある“歌がハモれない”場面では、わざと音をずらすのが意外と難しいようで、微妙な音で苦戦。すると「(取材陣がいる中で)SETが音を取れないと思われるのでやめてください!」というツッコミが入り、稽古場は大爆笑。そんな中でもひときわ大きな笑いをさらうのは、やはり小倉久寛。登場シーンからインパクト抜群だったが、エグザイル風ダンスシーンでは独特の存在感を爆発!さらに三宅とふたりのシーンはさすがのコンビネーションで、何気ない会話すら面白く感じさせていた。その後、稽古はアクションシーンへと続き、わずか1、2時間の間に踊り、歌、殺陣、芝居とさまざまな稽古をすることに驚いた。しかし、稽古場には“ミュージカル・アクション・コメディー”をつくり続ける劇団ならではの「何が来ても大丈夫」な空気があった。三宅は稽古中、「そこは息がぴったり合った方が面白い」「差を見せるためにもうちょっと長さがほしい」など、ただ動きを調整するのではなく“なぜそうした方がいいか”を必ず伝えていた。団員は入れ代わり立ち代わり三宅のもとに訪れ、気になる動きやセリフの確認をする。稽古場を見渡すと、あちこちで団員同士がシーンの相談をしていた。なぜSETは鮮度を失わずに走り続けているのかがわかる稽古場だと感じた。公演は10月21日(金)から11月6日(日)まで東京・サンシャイン劇場、11月11日(金)・12日(土)愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホールにて。取材・文:中川實穗
2016年10月19日作家・演出家である鴻上尚史のプロデュースユニットKOKAMI@networkの第15回公演『サバイバーズ・ギルト&シェイム』が11月に上演される。主演は、『仮面ライダーゴースト』の仮面ライダースペクター/深海マコト役などを演じた山本涼介。鴻上と山本に話を聞いた。KOKAMI@network vol.15『サバイバーズギルト&シェイム』チケット情報鴻上書き下ろしの新作である本作。「サバイバーズ・ギルト」とは、戦争や災害、事故、事件などに遭いながら奇跡的に生還を遂げた人が、周りの人々が亡くなったのに自分が助かったことに対してしばしば感じる罪悪感を表す言葉。鴻上は本作が生まれた背景について「“サバイバーズ・ギルト”という言葉、生き残ったことへのいろんな想いについて、ずっと考えていました。具体的にはやっぱり3.11。それまでもそういうことはあったけど、国民として“サバイバーズ・ギルト”にどう向き合えばいいんだろうっていうことを、みんなが考えだしたのはやっぱり3.11以降なんじゃないかなって思うんですよね。“シェイム”って足したのは、日本人らしく生き延びた恥ずかしさもあるだろうってことで。このタイトルで作りたい作りたいと思ってて、やっと作品になりました」と語る。それを“抱腹絶倒の爆笑悲劇”と表現するのは「悲劇的な状況をどれだけ笑える状況にするかっていうのが、表現の力だったり、芸術や芸能のやるべき仕事だと思っているから」(鴻上)。山本は舞台初主演。「台詞が出ない夢を見ます(笑)」とプレッシャーを感じながらも「共演者のみなさんは、僕にはまだできない芝居をする方々。観て学びたいですし、この舞台を通してたくさんの“初めて”を経験していきたい。一個一個大事にできたら」と意気込む。そんな山本に鴻上は「涼介の仕事は、野球でいえばピッチャーとしてとにかく一生懸命球を投げること。周りの守備たちはベテランなのでどんな球が飛んできても処理する。だから観客は一生懸命投げる涼介の姿に一番感動するんだよ」と話す。山本が演じるのは、戦場から「死んじゃった」と帰ってきた主人公。天国に行かずに故郷に戻った理由は、大学で所属していた映画研究会で納得できる映画がまだ撮れていないから。南沢奈央をヒロインに最後の映画を撮ることを決意する。「人に対してまっすぐぶつかる人。自分とそこまでかけ離れてないので、自身にあるもので活かせるところは活かしていきたいですね」(山本)。「テーマは「生きる」ってことかなあ。「サバイバーズ・ギルト」に苦しんでいる人もいない人もみんないろんな意味で生きのびて苦労してると思うんです。そういう時に、深刻に悩むんじゃなくて笑い飛ばせる力を少しでも与えられる作品になれば。」(鴻上)公演は、11月11日(金)から12月4日(日)まで東京・紀伊國屋ホールにて。取材・文:中川實穗
2016年10月18日