2歳半から早期療育!親子通園クラスで学んだことわが家の息子は1歳半健診の時点で指差しがなく、発語はほぼ喃語の単語のみ、 何事にも興味が薄い子どもでした。保健センターの発達教室に通い、1歳10ヶ月で受けた発達検査で「10ヶ月程度の発達年齢」と分かりました。その後、2歳半でASD(自閉スペクトラム症)と診断され、親子通園クラスがある療育園に通うことにしました。まだ0歳児だった娘と、喃語しか話せず意思疎通が難しい息子を連れての通園は、肉体的にも精神的にも本当ーーーーに大変でした。しかし、療育の専門家である先生が、息子へどのように関わっているのかを間近で見られたことは、大きな学びとなりました。療育園では、あの手この手で反応の少ない息子の気をひいて、"人と関わることはこんなに楽しいんだよ"ということを、遊びやプログラムの中でも教えてくれました。また、親子で一緒に活動する中で、家庭では気づかなかった息子のさまざまな面を知ることができました。例えば、息子が特にリトミックとミュージックケアという音楽療法が好きなことを知りました。逆に、スライム遊びはあまり得意ではないことも分かりました。苦手な活動でも息子なりに取り組み、克服していく姿を間近で見守れたことは、発達の遅れに闇雲に焦っていた私の心を落ち着かせてくれたように思います。Upload By 海乃けだま就学先を見据えての園選び息子は2歳9ヶ月になった頃、喃語から少しずつ2語文を話し始めましたが、まだまだ発音が不明瞭で、ママしか理解できないレベルでした。衣服の着脱はズボンを履けるのみ、食事はスプーンをなんとか握るように持つことはできましたがほぼ手づかみ、排泄に至っては尿意の訴えもなく完全にオムツ……。このように、言葉の発達も身辺自立も進んでいませんでした。私たちの住んでいる地域では、多くの子どもが3歳児から幼稚園の年少クラスに入りますが、その時点では、地域の幼稚園は息子には難しいと考えていました。そのため、年少の間は少人数で手厚くサポートしてくれる療育園の単独通園クラスに通うことを決めました。療育園の単独通園クラスで過ごした1年間で、息子はできることがかなり増えました。言葉については、まだ一方通行な会話でしたが、発音もしっかりしてきて、ママ以外の人にも聞き取れるようになりました。身辺の自立も、衣服は前後ろを間違えることはあれど、自分で着脱できるようになり……なんとオムツも外れました(療育園の先生方には感謝してもしきれません…(涙))!!自分でできることが増えてきたので、年中の年は地域の幼稚園に転園することも視野に入れ始めた時、療育園の先生との面談がありました。先生は「ひとでくんは、地域の小学校に行けると思います。なので、地域の小学校に通うなら、もう1年療育園の単独通園に通って、集団に対応する力をつけてから幼稚園に転園するほうが、ひとでくんにとっても良いと思います」と話してくれました。その頃の息子は、療育園で自信をたくさんつけてもらい、みんなの前で発表する時や当番などに俄然やる気を出していました。先生からのアドバイスを受け、今はまだ、より大きな集団で過ごすことを目指すよりも、少人数で手厚くサポートしてくれる環境のほうが息子にとってプラスが多いと感じました。その結果、年中の間は引き続き療育園に通い、年長から地域の幼稚園に転園することに決めました。Upload By 海乃けだま年長で療育園から幼稚園へ転園した息子は?そして小学校入学へ……さらに1年間療育園へ通った後、息子は地域の幼稚園の年長クラスに転園しました。息子が転園した幼稚園は、1クラス十数人ほどの比較的少人数の園です。1学期の間は、まるで息子専属のように、加配の先生がぴったりついていてくれました。転園してきて最初の2ヶ月ほどは、息子も新しい環境にすぐにはなじめず、幼稚園での活動に参加しないことや、家で不機嫌になったりすることもありました。今では、多少の登園しぶりをすることはあるものの(家でマイペースに遊びたいため)、幼稚園に着いてしまえば笑顔で「ママいってきます!」と言ってクラスに入っていきます。運動会・保育参観・展示作品の製作・音楽会・劇の発表……この1年間でさまざまな行事がありました。しかし、息子は自分の出番まできちんと椅子に座って待っていたり、セリフを言って役を演じたり、楽器をリズムに合わせて鳴らしたり……思わず目頭が熱くなる思いでした(涙)。加配の先生も、3学期の今では息子に付きっきりではなく、少し遠くからの見守りで対応してくれています。このように息子の成長を感じる一方で……当然ながら同級生のお友達も、年長の1年間でぐんぐん成長していきました。療育園の時にはあまり気にならなかった周囲との差に驚かされ、内心ショックを受けることも多々あります。しかし、小学校へ入学する際に顔見知りのお友達がいることは、息子にとって安心材料となっているようです。そして、1年間幼稚園で一緒に過ごしたお友達は、息子のことをよく分かってくれているので、息子が困っている時に声をかけるなど気を配ってくれて、とてもありがたく思っています。先日小学校の体験入学があり、息子がどんな感想を伝えてくるのかドキドキしていましたが、小学生のお兄ちゃんお姉ちゃんにも優しくしてもらい、とても楽しかったようでホッとしています。Upload By 海乃けだま今回は、発達ゆっくりマイペースなわが家の息子の、就学に向けた園選びの経験をお伝えしましたが、同じように悩んでいらっしゃる方の参考になれば幸いです。執筆/海乃けだま(監修:鈴木先生より)言葉の遅れがあるお子さんを診た時、小児科医がまず考えるのは「難聴」の有無です。2歳までに単語が、3歳までに2語文が出てくれば正常範囲内と考えます。聴性脳幹反応(ABR)という寝かせて行う検査で難聴の有無は判定可能です。もし難聴が判明すれば耳鼻科で補聴器などの相談に入ります。先天的な難聴は新生児期に産婦人科で行うスクリーニング検査でほぼ分かりますが、後天的には中耳炎後などが多いため、ABR検査が必要になります。言葉が出ていたとしても、一度はABR検査をすることをお勧めします。前の記事はこちら(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2024年03月15日「気軽に専門家に質問ができて、さらに返信も早い」とママから日々感謝の声が寄せられているベビーカレンダーの人気コンテンツ【助産師に相談】の掲示板。そのなかから特に注目をあつめた質問の内容を一部抜粋してご紹介します。今回は、赤ちゃんの喃語に関するご質問です。 Q.喃語なのでしょうか?生後7カ月の子のことで質問です。「んっーんっー」と鼻で声を出すようなときがあります。これは喃語に入るのでしょうか? 長い時間「んー、あー、うー」と、何か言っています。喃語が多いと言葉を喋るのも早いのでしょうか? 宮川めぐみ助産師からの回答ご質問に書いてくださったような鼻で声を出すような場合も喃語になると思いますよ。喃語が多いと喋るのも早いのかどうかですが、早いかもしれません。しかしその後の環境やお子さんの性格も関係してくるとも思いますので、一概には言い切れないかもしれません。引き続き見守っていただけたらと思います。※参考:ベビーカレンダー「助産師に相談」コーナー※診断や具体的な治療については医師の指示にしたがってください どのように赤ちゃんの言葉は発達していく?赤ちゃんの耳は生まれる前の在胎20週ごろから音を聞けるようになり、在胎30週ごろから大きく発達して、お母さんの声を聞き取れるようになります。生まれてからは、母語(人間が幼少期から自然に習得する言語) のリズムや音の高低、長さなどの特徴を認識し、生後2カ月ごろから「あ~あ~」「あーうー」など、まだ言葉にならない喃語(なんご)を話すようになります。 そして生後6~9カ月ごろには、耳で自分の母語を聞き分けられるようになり、母語に似た発音を真似るようになります。このように成長しながら、少しずつ大人が話す言葉と言葉の区切りが分かるようになります。例えばおもちゃを渡されながら「おもちゃ」と言われると、渡された物と「おもちゃ」という言葉を結び付けられるようになります。このように言葉をどんどん覚えていくことで、1歳を過ぎたころには、言葉の意味を理解しながら、言葉を言うようになるのです。 赤ちゃんとのコミュニケーションの取り方生まれたばかりの赤ちゃんとは、最初のうちは、大人が子どもの仕草を見たり声を聞いたりして、それらから質問を投げかけたり、赤ちゃんの気持ちを代弁するような声掛けをして、コミュニケーションを取っていきます。例えば、赤ちゃんが泣いているときには「おなかが空いたのかな?」「眠いのかな?」と声をかけますよね。また、ミルクを飲んでいると「おいしいね」と言ったり、あくびをしていると「眠たいね」と言ったりします。これは、赤ちゃんとのコミュニケーションで、1歳を過ぎたころまで続きます。 一方、赤ちゃんが言葉の意味を理解し始めると、徐々に「やりとり」ができるようになります。つまり、少しずつ大人同士のコミュニケーションに近づいてくるのです。※参考:基礎知識(ベビー)「赤ちゃんが言葉を理解するようになるのはいつごろ?」【監修:医師 松井 潔 先生小児科 | 神奈川県立こども医療センター総合診療科部長】
2020年02月05日まめに比べて言葉を発するのが遅かったゆめこはある時期、突如その沈黙を破り喃語を喋り始めた。そして喃語が終わってからは「ブーブー」とか「ワンワン」などといういわゆる「幼児言葉」的なものは一切喋らず突然あたりまえの言葉遣いを始めたので驚きました。舌足らずでまだ全然うまく喋れていないように思えるけれど母音はほぼ合っているので何となく言いたいことがわかる。同じ環境で育っているのに子供の成長ってこうも違うものなんだなそういえばまめはブドウのことを「なんどう」新幹線のことを「がないちん」と呼んでいて当時の私は心配して言い直させようとしていたけれど今はすっかり正しい言葉遣いになり「なんどう」も「がないちん」ももう二度と聞くことができない。もう少し幼児言葉を楽しめばよかったなあ
2019年09月27日成長するにつれて「だー」や「あー」などの声が出るようになってきた長女。次男は家族の誰よりも長女とのお話しが上手でした。■子どもにしかわからない世界?少しずついろいろな種類の声が出るようになってきた長女。長男や次男が赤ちゃんのときは、私が「うんうんそうだね」「そうだったのかー」とお返事をしていました。とくに次男には教えてないのですが、次男は自分から長女のところに行って、同じような言葉でお話ししていました。通じているのかわかりませんが、二人でニコニコしていました。今もとっても仲良しの二人ですが、このときから仲が良かったです。
2019年08月08日子どもの成長は、後で振り返るとあっという間です。「昨日できなかったことが、今日はできるようになっている」なんてことはよくあるもの。写真や動画で子どもの成長を記録していても、日常の1コマは意外と忘れてしまいがち。乳幼児時代を卒業したママ達が、「もっと記録に残しておけばよかった」と思うものもあるようです。■あんなによく泣いていたのに、ない!? 「赤ちゃん時代の泣き顔写真」「赤ちゃんは泣くのが仕事」とよくいわれますよね。でも写真や動画は笑顔のシーンばかりで、あとで見返して「泣き顔の写真も残しておけばよかったな」と思っているママもいるようです。赤ちゃんが泣いていると「なんとか泣きやませなきゃ」と、ママはあわててしまいがちです。でも緊急性がなければ、たまには写真を撮っておいてもいいかも。ママが赤ちゃんをあやしている様子を、パパに撮ってもらうのもいいかもしれません。「大泣きして大変」と思うようなシーンも、子どもが大きくなってから見返せば、きっと「かわいかったな」といい思い出になると思います。■子どもが大きくなってからの楽しみに「家族全員・祖父母との日常スナップ」子どもが生まれると、写真はどうしても子ども中心になりがち。しかもシャッターを押すのはパパやママであることが多いので、家族全員が写った写真というのは数が少なくなってしまいます。「記念の節目にはスタジオで家族写真を撮っている」という家庭も多いと思いますが、中には「家族写真はかしこまった記念写真ばかり」というママの声も。普段から、家族みんなでの日常スナップを意識して撮ってみてはいかがでしょうか。同じように、帰省などで祖父母と会う際にも、みんなで一緒に写真を撮るようにしてみては。パパやママ、おじいちゃん、おばあちゃんと一緒の写真は、子ども本人が大きくなってから見てもきっと喜びますよ。 ■動きはなくても見るだけでほっこり「ねんね時代の動画」生まれてからしばらくは、赤ちゃんのねんね時代。まるで観音様か大仏か…といった福福しい顔で寝る姿はかわいいですが、あまり動きもないため、写真は撮っても動画は…という家庭も多いようです。でも、ねんね時代は人生の中でほんの数カ月。子どもが大きくなってから「もう見られないと思うと、手足をバタバタさせる様子などの動画を残しておけばよかった!」というママも。数分程度の短い動画をこまめに撮っておくと、赤ちゃん時代のすてきな思い出として残せそうです。■ママが通訳していたのも今は昔? 子どもの「なん語・宇宙語・言い間違い」赤ちゃんから幼児、小学生と成長するにつれ、子どもの声は大きく変化します。とくに男の子の場合、思春期に声変わりを迎えるとそれまでとは全く様変わりすることに。「ママ、あのね~」というかわいらしい声を残せるのは、今だけかもしれません。赤ちゃんのころの「あー」「うー」といったなん語や、しゃべりはじめのいわゆる宇宙語、かわいらしい言い間違いなども、成長しておしゃべりが上手になると言わなくなってしまいます。その時々の声やおしゃべりを、動画などで残しておくと見返した時に楽しいですね。■かさばるものは写真撮影で一括保管「工作やお手紙」子どもが描いてくれた似顔絵やお手紙なども、数が多いとどこかにまぎれてしまい、「きちんととっておけばよかった」と後悔するママもいるよう。お絵かきやお手紙、折り紙、工作など保管するとかさばるものは、写真で残すのがおすすめです。園で作った作品や、母の日・父の日のお手紙だけではなく、普段家で作った工作やお絵描きも写真で残しておけば良い記念になります。ブロックや粘土で作った作品はその瞬間だけのもの。遊び終わって片付ける前、写真に撮っておくといいですね。大人にとっては数年でも、その間に子どもは大きく成長します。今しかない子どもの姿を、すてきな記念として写真や動画に残しましょう。
2018年02月04日喃語(なんご)とは?出典 : 喃語とは、赤ちゃんが言葉を覚える前に発する、意味を伴わない声のことを指します。「なむ」「ばばば」「だだだ」など、口や舌を使うことで出すことのできる声で、2つ以上の音がつながっているものです。赤ちゃんは、喉から出す音を変化させたり、違った音声を組み合わせたり、繰り返したりしながら、それを自分で聞いて楽しんでいます。一人でいるときにも、自発的に声を出すことが多くなるので「声遊び」をしていると考えられています。最初は「あう」、「まん」など短い喃語しか発することのできなかった赤ちゃんは、この「声遊び」をしていく中で、だんだんと「あぶぶぶ」「あむあむ」「んまんまんまんま」など長い喃語を発する機会が増えてきます。喃語が出るときには、新生児期のときよりも体の動きが活発となります。リズミカルに上下に手を動かすバンギング(bangging)が、機嫌のよいときに出るようになり、また顔の表情も豊かになってきます。そして、だんだんと手足を動かしながら、喃語を発することが増え、発声そのものが思いや感情を伝える「道具」としての役割をもつようになってきます。これまで泣くことでしか気持ちを伝えることのできなかった赤ちゃんは、喃語を発することも大好きな養育者と関わるためのひとつの方法であることがわかるようになります。それまでは大人の働きかけに受け身で反応するだけだった赤ちゃんが、自ら相手に対して働きかける、コミュニケーションの主人公に生まれかわろうとしているときであるといえます。赤ちゃんの喃語が出てきたときには、相槌をうったり、声をかけてあげたりと応答的に返事をしてあげましょう。相手と「通じ合っている」喜びや心地よさを体験することで、赤ちゃんはやりとりをすることに対して前向きな気持ちをもつことができます。赤ちゃんがよく育つためには、大人とのコミュニケーションが欠かせません。喃語はいつからいつまで?子どもの言葉の育ちのステップ出典 : 赤ちゃんが私たち大人のように、言葉を使いコミュニケーションをとることができるまでにはどのようなステップがあるのでしょうか。ここでは、赤ちゃんの言葉が育っていくステップについてご紹介します。Upload By 発達障害のキホン①泣く生まれてきてすぐの頃には、赤ちゃんは空腹や排泄などの不快な状態を表すために泣きますが、これは体の内部の不快な状態を表しただけで、特に養育者に向かって訴えたものではありません。②クーイング生後間もなくは、泣くことでしか自身の身体の状態を示すことのできなかった赤ちゃんはやがて、「くー」や「あー」などの、柔らかい声を出すようになります。これは、赤ちゃんが「心地よい」「気持ちよい」と感じるときに多く発する声でクーイングと呼ばれています。クーイングは、だいたい生後2ヶ月頃に見られます。音を作る器官が少しずつ育ってきている証拠です。③喃語そして、骨格が整い、口の奥にある音を作る器官が成長することにより、「あう」「あむ」や「ばぶ」などの、2つ以上の音のある声である喃語を発するようになります。やがて、8~9ヶ月頃を過ぎると、周りの人や自分が発した音声が、意味のあるものとして取り入れられてきます。また音の調節と発声、肺から出る空気のコントロールができるようになり、発する喃語の発音もはっきりしてきます。④指さし喃語が出るようになってから、3~4ヶ月くらいが経つ頃には、徐々に喃語は少なくなり、その代わりに指さし、身ぶり手ぶりが増えていき、嬉しい、楽しいなど自分の気持ちを伝えられるようになってきます。この時期になると、言葉を話す一歩手前だといえます。⑤一語文、やがて二語文へそして、ある特定の音声(マンマならマとンとマという音の組み合わせ)が、どの人にとってもほぼ共通するモノと結びついていくことがわかり、一語文という意味をもった言葉になります。一語文が喃語と異なるのは、意味のともなう言葉であるという点です。例えば、「犬」という意味をともなった「わんわん」、「ご飯」という意味をともなった「まんま」などです。言葉は、子どもが伝えたい事柄に対して、大人がそのものの名前を伝えていくことにより獲得されていきます。「まんま、ちょうだい」などの二語文が出るのは、一語文が出るようになってから、6~8ヶ月経過した頃です。最初のうちは片言でしか話すことができないですが、徐々にはっきりと話すことができるようになってきます。池川明 /監修『はじめてママの妊娠・出産・育児ブック』2010年/日東書院/刊喃語がなかなか出ない……。原因は?出典 : 母子手帳やインターネットや書籍には、月齢ごとの赤ちゃんの発達について沢山の情報が溢れています。子育てをする中で、そのような情報と比較して、不安になることがあるかもしれません。しかし、体重や身長、運動能力などと同じように、言葉の育ちのスピードは、赤ちゃん一人ひとり異なります。赤ちゃんの育ちにおいて、「この時期にこれこれができるようになる」という基準は非常に曖昧なものです。喃語も、おおよそ生後5~6ヶ月に出るという基準はあるものの、赤ちゃんによって生後6ヶ月よりも早く喃語の出る赤ちゃんもいれば、1歳頃になってから喃語が出る子もいます。赤ちゃんが喃語を発するまでには、体や心の中でいくつかの準備が行われ、整えられていく過程があります。一つは聴覚や、喉の筋肉、運動機能の発達などの身体的な基礎の発達です。二つ目は、社会的な基礎の発達です。例えば、養育者にあやしてもらえることが嬉しくて微笑みを返すなど赤ちゃんと養育者がお互いにやりとりを行っているという関係性の基盤が出来ていることが重要です。赤ちゃんの喃語が出ない要因には、以下のようなものが考えられます。人が声を発するためには、咽頭部という喉の奥のスペースが必要ですが、下顎や喉を包んでいる骨格が未成熟な場合には、その空間が狭いために、2つ以上の音からなる喃語を発することはできません。またその他に、2つ以上の音から喃語を発するためには、はじめに吐き出す空気の量をコントロールしてセーブしつつ、声を出すために必要な声門という部分を閉じたり開いたりする機能が整っている必要があります。赤ちゃんの骨格がまだ成熟していなかったり、声門の開閉機能が整っていないなど、身体的な基礎が未発達であるために、喃語が出ない可能性があります。言葉の獲得は、音を聞くことから始まります。赤ちゃんは、お母さんのお腹の中にいるときに耳の機能ができあがり、お腹の外の音を聞くことができるようになります。赤ちゃんが自発的に喃語を発するためには、聴覚の機能が整っている必要があります。周囲の大人の声や、環境音、自分の出した声を耳で聞き取ることにより、喃語は促されていきます。厳密には、聴覚に障害のある赤ちゃんも「あー」「うー」などのクーイングの音声は出ます。ですが、自分の出した声を聞き取ることができないと、自分が発声しているという感覚が薄まってしまい、次第に喃語を発することが少なくなってきます。赤ちゃんが喃語を発声しない原因のひとつとして、赤ちゃんと養育者の間にコミュニケーションをとる関係が築けていないということが考えられます。赤ちゃんは、養育者からお乳をもらったり、泣いているときにはあやしてもらったり、またクーイングの声をあげたら反応をしてくれたりと、お世話をしてもらう中で、養育者に対する信頼感を築いていきます。養育者のやさしげな表情や声、匂いなどの養育者の情報が赤ちゃんの頭の中に記憶され、「いつもの養育者=よい気持ちにさせてくれる大切な人である」と、なんとなくわかるようになります。赤ちゃんの養育過程では、養育者があやして赤ちゃんが笑顔で応える、そして、その笑顔に養育者がまた応えてあげるというやり取りが繰り返されます。他にも、「養育者が視線を合わせる⇒赤ちゃんも視線を返す」といった視線のやり取りもよく行われます。こうした養育者と双方向的なやり取りの繰り返しは、赤ちゃんにとって非常に心地のよいものです。こうした体験の積み重ねが、相手とコミュニケーションを交わし、再び心地よい気持ちを味わいたいという動機を引き出し、赤ちゃんの喃語を促します。心地よい気持ちの体験が積み重ねられていないときには、赤ちゃんの中にやりとりを行おうとする気持ちが芽生えないために、喃語が出ないということが考えられます。スターン,D.N.小此木啓吾他/著.訳『乳児の対人世界』1989年/岩崎学術出版社/刊秦野悦子/著『①ことばの発達入門』2001年/大修館書店/刊発達障害のある子どもの乳児期の特徴のひとつとして、喃語を含めて、言葉がなかなか出ないという症状があります。発達障害とは、先天性の脳の機能障害です。自閉症スペクトラム障害をはじめとする発達障害のある赤ちゃんは、コミュニケーションや人との関わりを作ることなどの社会的な基盤が育ちにくいという特性があります。人と人とのコミュニケーションは、喃語を含む言葉によるものだけではありません。例えば、養育者と視線を合わせたり、養育者の働きかけに対して微笑みを浮かべたりすることもコミュニケーションです。養育者との間で視線を交わしたり、働きかけに対して微笑みを浮かべたりすることが少ないときには、発達に遅れがあることも考えられます。しかし、喃語が出なかったり、養育者とのやり取りを積極的に行うことのない場合にも、その赤ちゃんが必ずしも発達障害であるとは断定できません。乳児期の赤ちゃんの育ちには個人差が大きいため、医師や臨床心理士などの専門家でも発達障害があるかどうか診断を下すことは難しく、診断がおりるのは赤ちゃんの年齢が上がってきてからとなります。喃語や言葉の発達の相談先は?出典 : これまでに何度か述べてきたように、乳児期の赤ちゃんの発達には大きな幅があるため、身体の成長などとともに、喃語が急に出てくることは決して稀なことではありません。しかし、専門家に相談してみることで、療育の機会の提供や、思ってもみなかった子育てに関する情報を得られることもあります。気になることがある場合には、専門機関を訪れてみるとよいでしょう。小児科というと、子どもの風邪や病気の診断、治療をするイメージをもつかもしれませんが、子どもの発達に関する悩みごとの相談にも乗ってくれます。より子どもの発達に詳しい専門機関などの情報も持っているので、地元の専門機関を紹介してくれる場合もあります。行政や自治体が実施主体となって行っている事業です。子育て中の親子が気軽に集い、交流や子育ての不安・悩みを相談できる場を提供 することを目的として各地域に設置されています。無料で相談をすることができます。0~17歳の児童を対象として、育児の相談、健康の相談、発達の相談など、さまざまな相談を受け付けています。必要に応じて、発達検査を行う場合もあり、無料で医師や保健師、心理士、言語聴覚士などから支援やアドバイスをもらうことができます。基本的に予約制なので、あらかじめお住まいの市町村のHPなどを見て確認するようにしましょう。乳幼児健診は、各市町村の保健センターなどで行われているもので、赤ちゃんの病気の早期発見や予防と早期発見、そして順調に発達しているかどうかを確認するための検査です。保護者が普段の子育てで疑問に思っていることや、なかなか話す機会がない不安などを専門家に相談できる場でもあります。また、乳幼児健康診査は、同じ月齢期の赤ちゃんを育てる保護者も来ており、子育てを同じくする人と情報交換できる場所でもあるので、上手に活用しましょう。赤ちゃんの育ちが「早い」か「遅い」かは判断できるの?出典 : 育児の中で、よく聞かれるのは「遅いか早いか」というスピードについて心配する声です。ですが、赤ちゃんの育ちを遅いか早いかというスピードだけで捉えるのは不十分です。赤ちゃんの育ちはそれほど単純ではありません。赤ちゃんの育ちは、「順序や方向性」という縦の関係と「他の領域の育ちとのつながり」という横の関係というふたつの軸から理解することが大事です。■縦の関係:順序や方向性子どもは発達していく際、ある一定の順序をたどります。わかりやすいのは、「ハイハイする→立つ→歩く→走る」という順序です。子どもが「走る」ことができるようになるためには、発達の順序をさかのぼって、乳児期に「ハイハイする」状態が達成されていることが大切であることはわかると思います。これが縦の関係です。赤ちゃんの育ちは、同じスピードで進むのではなく、あるとき急に前に進んだり、時にはしばらく停滞する時期があったりと、波があります。ですが、そこには決まった順序と方向性があるのです。■横の関係:他の領域の育ちとのつながりそして横の関係とは、子どもの育ちにおける、さまざまな領域の互いのつながりのことです。ここでいう領域とは、運動発達、他者とのコミュニケーション、言葉の発達などです。喃語が遅れている場合には、そのほかの領域でも遅れが重複してみられるケースがほとんどです。つまり、喃語という「言葉」の領域のことについて考えるとき、赤ちゃんの運動能力の育ちや、情緒面の育ちについて同時に考えることが必要です。ですので、赤ちゃんの育ちに寄りそう際に、喃語の発声のみを促そうとしても、発達を手助けすることにはなりません。喃語が出ないときには、赤ちゃんが発達のどの段階にいるのかどうか把握をして、赤ちゃんの生活全体に対して働きかけていくことが大切になります。お医者さんが教えてくれない発達障害についての疑問 - 自閉症 アスペルガー LD ADHDを含む発達障害児の発達促進の臨床開発研究機関|日米発達障害研究院喃語を引き出すための工夫出典 : 赤ちゃんの喃語が出てくるには、子どもと養育者のコミュニケーションの積み重ねがあります。最初は抱っこをすることによる養育者の体温や匂いを感じることから始まり、また、視線を合わせたり、微笑みがシンクロしたり、音声のトーンを真似したりという、やりとりが生まれ、進展していきます。人とふれあうことの心地よさこそが喃語の発声を促していきます。前の章で、赤ちゃんの生活全体に働きかけることが大切だと記しました。このような考え方をベースとして、喃語を引き出すための工夫についてお伝えいたします。赤ちゃんが喃語を発するためにはある程度の訓練が必要です。赤ちゃんは、喉の筋肉や音を作る器官の成長に伴い、思い通りの音を出すために準備をしている段階です。なので、大人はその準備を支える役割を担ってあげることが大切です。具体的な方法は、赤ちゃんに、口の動きがよく見えるようにゆっくりと、そしてはっきりと話しかけることです。生まれたばかりの赤ちゃんは視力が弱いために、遠くにあるものは見えないので、赤ちゃんの顔の近くで話しかけてあげるとよいでしょう。ある実験によると、母親が赤ちゃんに話しかけるときに特有の、ゆっくりとした抑揚のある少し高めの声は、赤ちゃんの注意を引きつけ、脳を活性化させる効果があると検証されています。このような働きかけを行うことで養育者の口元の動きに引きずられるようにして口を動かして模倣しようとする姿が見られます。また、赤ちゃんが声を出すための準備をお手伝いするために、赤ちゃんを笑わせる方法があります。ここで指している笑いとは、微笑みとは異なり、「キャッキャ」「ハッハッハ」と声をあげて笑うというもので、喃語と同じく2つ以上の音で構成されます。赤ちゃんが喃語を発するためには、息を吐き出すコントロールをすること、喉の奥の空間が広がっていることが必要な要素なのですが、笑うときにはそれらのことが赤ちゃんの体で行われます。よって、赤ちゃんの笑い声を促すことで、自然と喃語を発しやすくなるような赤ちゃんの体づくりをすることができるのです。正高信夫/著 0 歳児の言語習得と四肢運動の発達 2002年/『バイオメカニズム学会誌』Vol.26 ,No.1上記では、赤ちゃんが思い通りに声を出すための工夫についてお伝えしました。こちらでは、その「思い」を引き出すための工夫についてお伝えします。赤ちゃんの表情や行動から、その心を察して気持ちに寄り添い、働きかけを行うことによって、乳児に「通じ合っている」喜びや心地よさを体験させてあげます。具体的な働きかけとは、微笑みを返すことや、「そうなのね」と相槌を打ってあげたり、「気持ちいいのね」と赤ちゃんの気持ちを代弁するような言葉がけをするなど、さまざまなものが挙げられます。赤ちゃんはお母さんをはじめとする養育者からの働きかけによって、心地よい思いを経験します。その経験が積み重なることで、養育者ともっと関わっていきたいと、人とのコミュニケーションに対して強い欲求をもつことができます。このように外界への前向きな意欲をつくりあげていくことと結び合わせながら、子どもは育っていきます。育ちを考えるときに常に立ち返っていく原点は、養育者と赤ちゃんとの心地よいコミュニケーションなのです。加藤ひとみ・大國ゆきの/著 「幼児期の言葉の獲得 〜幼児期の発達特性と幼稚園での教育」2015年/『東京成徳短期大学紀要』48号白石正久/著『発達の扉<上>』1994年/かもがわ出版/刊まとめ出典 : 赤ちゃんの喃語は、言葉を話すまでの大切なステップのひとつです。このコラムでは、赤ちゃんの育ちを捉えるために大切にしたい視点を中心に、喃語が出ない・遅いときの原因や、喃語を引き出すために生活の中でできる工夫や相談先についてお伝えしました。乳児期の赤ちゃんの育ちは、身長や体重のように大きな個人差がありますので、長い目で見守ってあげることが大切です。養育者との心地のよいやりとりが、言葉の育ちを促していきます。赤ちゃんの気持ちに寄り添ってあげながら、一緒に過ごすことのできる時間を味わいたいものですね。
2016年09月30日