宮本浩次が9月16日に発売するシングル『P.S. I love you』初回限定盤DVDに収録される『2020 612 宮本浩次バースデイコンサートat作業場 「宮本、独歩。」ひきがたり 完全版』より、「ハレルヤ」の映像が先行公開された。『2020 612 宮本浩次バースデイコンサートat作業場 「宮本、独歩。」ひきがたり 完全版』は、ファースト・ソロアルバム『宮本、独歩。』収録曲全曲に加え、エレファントカシマシの楽曲や貴重なカバー曲まで、全21曲を自身の”作業場“で独りで歌い切った白熱のコンサート全編をノーカットで収録し、さらに2020年現段階で唯一となる本コンサートにかける意気込みや今の想いを赤裸々に語ったインタビュー、コンサートに向けてのリハーサルシーンを含めたドキュメント映像も加えた、まさに”完全版”。「みんなに、祝福あれ!」という宮本の叫びから始まり、自身の作業場を縦横無尽に動き歌う、この「ハレルヤ」は、当日のライブを象徴する1曲となっているとのこと。ハレルヤ (2020 612 宮本浩次バースデイコンサートat作業場 「宮本、独歩。」ひきがたり 完全版 より)宮本浩次 リリース情報「P.S. I love you」NHK ドラマ10「ディア・ペイシェント~絆のカルテ~」主題歌2020年9月16日(水)発売初回限定盤(CD+DVD): UMCK-7072 税抜2,900円通常盤(CD) :UMCK-5693 税抜1,100円【CD】※初回限定盤・通常盤共通1. P.S. I love you2. 木綿のハンカチーフ3. P.S. I love you(Instrumental)4. 木綿のハンカチーフ(Instrumental)【初回限定盤DVD 収録内容】自身の誕生日である2020/6/12 に行われた『2020 612 宮本浩次バースデイコンサートat 作業場「宮本、独歩。」ひきがたり』を完全収録1. 夜明けのうた2. 冬の花3. 孤独な旅人4. 悲しみの果て5. 解き放て、我らが新時代6. going my way7. きみに会いたい-Dance with you-8. 獣ゆく細道9. 俺たちの明日10. 赤いスイートピー11. 珍奇男12. デーデ13. 明日以外すべて燃やせ14. 旅に出ようぜbaby15. 昇る太陽16. ハレルヤ17. 月夜の散歩18. Fight! Fight! Fight!19. 赤い薔薇20. 今宵の月のように21. Do you remember?宮本浩次 関連リンクofficial web site()Instagram()Twitter()YouTube()
2020年09月07日東京二期会オペラ劇場の新シーズンが9月3日(木)に開幕した。演目は生誕250周年のベートーヴェン《フィデリオ》。感染症の影響が続くなか、関係者全員の努力と創意による新シーズンのスタートに感謝したい。初日前日、最終の舞台稽古を取材した。【チケット情報はこちら】《フィデリオ》は、政敵に捕らえられた夫を救う妻の救出劇。演出の深作健太はこれを、20世紀以降のさまざまな政治の対立構造によって自由を奪われた人々とその解放の歴史の軸の上に配置した。キーワードは「壁」だ。オペラ全編が「壁の物語」として描かれる。ナチの強制収容所の壁。冷戦体制下のベルリンの壁。そして現在進行中のイスラエルの分離壁。しかしそうした、いわゆる「読みかえ」が台本やベートーヴェンの音楽を飲み込んでしまうことはなく、オペラの物語自体はそれらと絶妙な距離感を保って自立している。ネタバレになるので詳細は避けるが、最後には、ベートーヴェンらしい「苦悩を突き抜けて歓喜へ」の気分を、客席と舞台一体となって劇場全体で共有できる仕掛けも施されている。指揮は、鋭い着眼点でいつも聴き手の先入観を一新してくれる大植英次。いきなり来た!最終稿の序曲でなく、序曲《レオノーレ》第3番で開始。ベートーヴェンはこのオペラのための序曲を全部で4曲書いており、これは(ちょっとややこしいが)第2稿のための音楽。オペラ本編の音楽素材を先取りして用いる伝統的な作法で書いているので、本編中で、「ああ、序曲で出てきたあの旋律か」と、有機的な繋がりを感じる面白さに、あらためて気がつかせてもらった。もちろん、オペラ上演にも「ニューノーマル」が必須で、随所に感染症対策の工夫。客席への飛沫感染のリスクを最小にするため、舞台最前面には常時紗幕が下がっている。通常時のオペラ演出でもしばしば使われる、光が透過する薄いカーテンのこと。いわば舞台全体に巨大なマスクをつけたような状態だし、多用される映像を映すスクリーンも兼ねる。そして、『フィデリオ』で重要な合唱は、ほとんどの部分を舞台裏で歌う(二期会、新国立劇場、藤原歌劇団の合同)。でもそのぶん、フィナーレで(十分な距離を保って)姿を現す合唱団の存在感は圧巻だった。オーケストラ(東京フィルハーモニー交響楽団)は通常同様にピット内で演奏するが、「密」を避けるため、客席側の仕切り壁を撤去。初めて見る光景だ。さまざまな苦心が察せられるものの、それによる不自由さを感じることはほとんどなかった。通常時と同じ、本格的な上演に限りなく近い、オペラの醍醐味十分のプロダクションと言えそうだ。オペラの復活が心に滲みる。二期会《フィデリオ》は新国立劇場オペラパレスで9月3日(木)~6日(日)の4日間。出演はダブルキャストで、レオノーレに土屋優子/木下美穂子、フロレスタンに福井敬/小原啓楼、ドン・ピツァロに大沼徹/友清崇、ロッコに妻屋秀和/山下浩司、ほか。取材・文:宮本明
2020年09月04日全米映画祭で絶賛され、観客賞を総ナメにし、日本でも口コミが拡がりロングランヒットした映画『チョコレートドーナツ』が、東山紀之主演、宮本亞門演出で世界で初めて舞台化されることになった。1979年のウェスト・ハリウッド。ゲイの男性が育児放棄された障がいを持つ子どもを育てたという実話に着想を得て製作された映画『チョコレートドーナツ』(原題:ANY DAY NOW)は、社会的マイノリティが直面する問題を告発しつつ、愛と自由を求める人間の本質を描いた傑作ヒューマンドラマ。日本でも広く支持を得たこの映画を、世界で初めて東山さん、宮本さんの初タッグで舞台化。東山さんが演じるのは、シンガーを夢見ながらショーパブでドラァグクイーンとして日銭を稼ぐルディ。出口の見えない生活の中、ルディの人生は運命の人ポール、隣室のダウン症のある少年マルコと出逢うことで変わっていく。映画ではトニー賞受賞俳優アラン・カミングが演じたこの主人公に、東山さんがその魅惑のダンス、唄、演技で挑む。そしてルディと共に少年マルコを育てようと、世間と闘う地方検事ポールを演じるのは谷原章介。ゲイのカップルであるルディとポールが悩み迷いながら、ともに世の中に立ち向かっていく様は心を打つ。東山さんと谷原さんも初共演となる。また、ダウン症のある少年マルコ役として、実際にダウン症のある高橋永と丹下開登がダブルキャストで出演決定、高畑淳子、モロ師岡、堀部圭亮、八十田勇一らが共演する。70年代のアメリカのヒットナンバーを散りばめた華やかなショーシーンと、緊迫の法廷ドラマを織り交ぜつつ、愛と希望、未来を求めて、苦闘する人間の姿を謳い上げ、この舞台世界初演に臨む。「この難役に東山さんが挑戦することに、心から敬意を表します」と宮本さん。「今回のルディは、傷つき、ボロボロになっても真っ向から社会と戦う、愛情深い人間です。原作の映画でもアラン・カミング氏が壮絶な演技で観客の心を鷲掴みにしました。東山さんは、蜷川幸雄氏が演出した『さらばわが愛覇王別姫』や『サド侯爵夫人』で女形や女性を演じられていますし、今回の生々しいドラァグクィーン・ルディをどう演じるか、演出家としてとても楽しみ」と敬意を込めて語る。さらに「谷原さん演じるポールも作品を通して戸惑い変化していく難しい役です。東山さん、谷原さん、そしてダウン症のある少年マルコ役の高橋君、丹下君がみせる愛の姿、このコロナ禍で、本気で挑む舞台に是非ご期待ください」とコメント。ルディ役の東山さんは「感情の起伏が激しいけれど、愛情深い人物なので、とても難しい役柄だと感じています。宮本亞門さんが表現する世界観を楽しみながら全身全霊で演じたいと思います」と語り、「ドラァグクイーンのショーシーンでは様々なダンスを披露しますし、名曲の歌唱シーンもありますので、どうぞ楽しみにしていて下さい」と語る。そして、映画『チョコレートドーナツ』について「甘いタイトルですが切なくて悲しくも温かい物語。劇場で映画を観て大好きになった作品」と語る谷原さん。「今回、東山さんのドラァグクイーン姿、踊り、歌、そして何よりダウン症のある役者さん高橋さん丹下さんとお芝居できることが楽しみ。亞門さんの演出が優しくそして暖かく皆を包み込んでくれる事間違いなしです。深いテーマはそこにありますが、まずは難しい事抜きにして楽しんでいただきたい」と期待を寄せている。PARCO劇場オープニング・シリーズ「チョコレートドーナツ」は12月7日(月)~12月30日(水)PARCO劇場にて公演、2021年1月~長野、仙台、大阪、愛知にて地方公演。(text:cinemacafe.net)
2020年08月27日NHK Eテレの人気音楽番組「ららら♪クラシック」(毎週金曜よる9時)と連携した「ららら♪クラシックコンサート」は、番組でも紹介された名曲の数々を、有名コンサートホールでの生演奏で味わえるという幸せな企画。その第8回「4手6手ピアノ特集~夢の競演でたどる音楽史」を聴いた(8月17日・サントリーホール)。この日出演したのは、上原彩子、近藤嘉宏、中野翔太、松永貴志、金子三勇士というゴージャスな顔ぶれ。いうまでもなく、普段はそれぞれがソロで1時間、2時間のコンサートを開く、日本を代表する5人のピアニストたちだ。司会は俳優・高橋克典と、フリー・アナウンサーの金子奈緒。ご存知のとおり、高橋克典は番組の現MCでもある。プログラムは2台ピアノ、3台ピアノの演奏で、バロックから現代まで、300年をひとっ飛びで楽しめるうれしい選曲。詳述する余裕はないが、中野とジャズ・ピアニスト松永のデュオで、ジャズ風の《展覧会の絵》とプロコフィエフの《戦争ソナタ》(第7番)を同時に弾いてしまうという「ロシアンremix」は白眉だった。調和ではない、心地よい混沌。「4手6手」以外に、この日急きょ、5人それぞれのソロ演奏も追加された。じつはこのコンサート、5月9日に開催される予定だったのが、新型コロナウイルス感染拡大のせいで延期された公演。お待たせしたお詫びの、5人からのプレゼントという趣向。金子の《トロイメライ》が圧巻。演奏の合間に司会の高橋がピアニストたちから引き出すさまざまなエピソードも楽しい。(三勇士=みゅうじという名前で、ミュージシャンになる宿命を意識したかと問われ、)「ないです!今日が初めてかも」(金子)「イスの高さ?僕はなんでもいいんです。段ボール箱だっていい」(松永)「(チャイコフスキー・コンクールのとき)体力を維持するために舞台袖でバナナを食べていたのですが、時間がなくて残したバナナのことが忘れられません」(上原)などなど、トークの個性もそれぞれ。最後は5人全員が交代しながら最大10手3台ピアノ編成になる《戦場のメリー・クリスマス》。互いが近づくので、このときだけ全員マスクをつけて登場した。上原の、ドレスと同柄のマスクが可愛い。演奏の美しい余韻に、前席のご婦人から思わず「うーん」とため息がもれた。いまはブラヴォーなどの掛け声は控えなければならないときだが、これは仕方がないだろう。真夏の夜の夢のようなぜいたくな競演。なお公演の模様は「PIA LIVE STREAM」で2020年8月24日(月)23:59まで配信中。会場とは異なる、カメラならではの視点のショットもあるので、コンサートに足を運んだ人も、自宅リビングでぜひもう一度!視聴券(2,000円)は8月24日(月)21:00まで販売中。期間中は何度でも視聴可能。(宮本明)
2020年08月19日宮本浩次が、9月16日(水)にCDシングル『P.S. I love you』をリリースすることが発表された。2020年3月4日に発売、ロングセールスを続けている宮本浩次のファーストソロ・アルバム『宮本、独歩。』を経て、待望の新曲となる『P.S. I love you』。同楽曲はNHKドラマ10『ディア・ペイシェント~絆のカルテ~』の主題歌であり、カップリングには、4月に放送された『The Covers』(NHK BSプレミアム)松本隆特集に宮本がゲスト出演した際に弾き語りで披露し、松本から絶賛を受けた名曲『木綿のハンカチーフ』のカバーが収録されている。さらに、初回限定盤のDVDには、今年の宮本の誕生日6月12日に行われた『2020 612 宮本浩次バースデイコンサートat作業場 「宮本、独歩。」ひきがたり』の完全版を収録。ファースト・ソロアルバム『宮本、独歩。』収録曲全曲に加え、エレファントカシマシの楽曲や貴重なカバー曲まで、全21曲を自身の”作業場“で独りで歌い切った白熱のコンサート全編と、2020年現段階で唯一の本コンサートにかける意気込みや今の想いを赤裸々に語ったインタビュー、コンサートに向けてのリハーサルシーンも含めたドキュメント映像も収録した、完全版となっている。●宮本浩次『P.S. I love you』2020年9月16日(水)発売初回限定盤(CD+DVD):UMCK-7072/2900円+tax通常盤(CD):UMCK-5693/1100円+tax【CD】収録曲M1:P.S. I love youM2:木綿のハンカチーフ※カバーM3:P.S. I love you(Instrumental)M4:木綿のハンカチーフ(Instrumental)※2形態共通【初回限定盤】DVD収録内容自身の誕生日である2020年6月12日に行われた『2020 612 宮本浩次バースデイコンサート at 作業場 「宮本、独歩。」ひきがたり』を、ノーカットですべて収録した完全版。●第一部1. 夜明けのうた2. 冬の花3. 孤独な旅人4. 悲しみの果て5. 解き放て、我らが新時代6. going my way7. きみに会いたい -Dance with you-8. 獣ゆく細道9. 俺たちの明日10. 赤いスイートピー11. 珍奇男12. デーデ13. 明日以外すべて燃やせ14. 旅に出ようぜbaby15. 昇る太陽16. ハレルヤ●第二部17. 月夜の散歩18. Fight! Fight! Fight!19. 赤い薔薇20. 今宵の月のように21. Do you remember?
2020年08月07日宮本浩次が新曲「P.S. I love you」のMusic VideoをYouTubeにてフルサイズ公開、各サイトにて配信をスタートした。「P.S. I love you」は、2020年3月4日に発売され、ロングセールスを続けているファーストソロ・アルバム『宮本、独歩。』以来の新曲で、NHKドラマ10「ディア・ペイシェント~絆のカルテ~」の主題歌にも起用されている楽曲。関和亮氏が務めたMVには、想いを歌に乗せる宮本と、想いを手紙にしたためている宮本、二人の宮本が登場。白と黒を基調とした空間の中で、「愛してる」というメッセージをストレートに届ける映像作品となっている。「P.S. I love you」Music Video「P.S. I love you」配信サイト一覧 関連リンク宮本浩次HP
2020年07月24日デザイナーの皆川明が、その前身となる「ミナ」を立ち上げたのは1995年。活動25周年を迎えた今年、兵庫県立美術館で『ミナ ペルホネン/皆川明つづく』が7⽉3⽇(金)から11⽉8⽇(⽇)まで行われる。同展は、過去最大規模のミナ ペルホネン展となり、今年の2月まで東京都現代美術館で開催されていた展覧会の巡回展。関西の美術館では初の開催となる。流行に左右されず、長年着用できる普遍的な価値を持つ「特別な日常服」をコンセプトに、皆川明が立ち上げたミナ ペルホネン。展覧会会場では、これまでの創作活動を余すところなく鑑賞できる。例えば、ミナ ペルホネンを代表する刺繍柄「tambourine(タンバリン)」に焦点を当て、一つのデザインが生地となり、さらに洋服やさまざまなプロダクトに展開されるさまを知ることができる展示は、とても魅力的だ。生地からデザインして洋服に仕立てることが、ミナ ペルホネンのものづくりの特徴であろう。皆川明、田中景子やインハウスデザイナーによる、生地のためのデザイン画が会場に並ぶ。また、これまで25年分、400着以上の洋服を一堂に集めた「森」の部屋も圧巻だ。現代美術家・藤井光による、ミナ ペルホネンの服を着ている人の「日常」を映し出した映像作品や、その創作活動の根幹にある、ものづくりの哲学やアイデアを紹介するコーナーも興味深い。さらに皆川明個人の活動にもスポットを当て、新聞連載のために描いた挿画もまとめて見ることができる。新型コロナウイルス感染拡大防止対策として、観覧は「日時指定による事前予約制」となっている。マスクを着用していない場合、入館できないこともあるので、各自でマスクの着用をお願いしたい。トークなどのイベントは、オンライン配信される。詳しくは兵庫県立美術館のウェブサイトを参照してほしい。【関連リンク】兵庫県立美術館( )本展東京会場「森」セクション撮影:吉次史成“tambourine” 2005-06→AW“sky flower” 2012-13→AW 原画photo:Yurie Nagashima“one day” 原画 2018-19→AWphoto: sono (bean)“pur” 2018-19→AWphoto: Mitsuo Okamoto“symphony “ 2019-20→AWphoto: sono (bean)
2020年07月02日6月12日(金)19時からWOWOWオンデマンドにて、宮本浩次が自身の作業場から生中継するバースデーライブが無料で配信される。宮本浩次は2019年に大きな注目を浴びた椎名林檎や東京スカパラダイスオーケストラとのコラボ作品の参加を経て、2019年にソロ活動をスタート。配信ソロデビュー曲『冬の花』をヒットさせ、2019年の誕生日に行ったソロとしての初ライブ「ソロ初ライヴ!宮本、弾き語り」では、新旧織り交ぜた楽曲を披露した。そして、ファースト・ソロアルバム『宮本、独歩。』のリリースを経て、今年のバースデーライブ開催を発表。宮本自身の作業場から生中継されるライブの模様は、WOWOWのオンデマンドにて無料でライブ配信され、7月26日(日)にはWOWOWライブでも放送される。合わせて、3月4日にリリースされたファースト・ソロアルバム『宮本、独歩。』の『初回限定612バースデーライブatリキッドルーム盤』と『初回限定2019ライブベスト盤』から、ライブ映像をYouTubeにて公開。ソフトバンクテレビCM 『新時代』篇テーマソング『解き放て、我らが新時代』、カンテレ・フジテレビ系ドラマ 『後妻業』主題歌『冬の花』(Live from 『転がる、詩』 2019.8.4)と映画『宮本から君へ』主題歌『Do you remember?』(Live Digest from COUNTDOWN JAPAN 2019.12.28)が配信されているので、圧巻のパフォーマンスを堪能してほしい。2020 612 宮本浩次バースデイコンサート at 作業場『宮本、独歩。』ひきがたり公開日時:2020年6月12日(金)よる7:00~WOWOWメンバーズオンデマンドにて先行無料ライブ配信2020年7月26日(日)よる7:15~WOWOWライブにて放送※WOWOW未加入の方も「WEB会員登録」(無料)すると視聴可能番組URL: 『解き放て、我らが新時代』(アルバム『宮本、独歩。』初回限定612バースデーライブ at リキッドルーム盤より))『冬の花』~『Do you remember?』(アルバム『宮本、独歩。』初回限定2019ライブベスト盤より)ファースト・ソロアルバム『宮本、独歩。』2020年3月4日(水)発売中<収録楽曲>1. ハレルヤ2. 冬の花3. 夜明けのうた4. きみに会いたい -Dance with you-5. Do you remember?6. 獣ゆく細道/椎名林檎と宮本浩次7. going my way8. Fight! Fight! Fight!9. 解き放て、我らが新時代10. 明日以外すべて燃やせ feat. 宮本浩次/東京スカパラダイスオーケストラ11. 旅に出ようぜbaby12. 昇る太陽●初回限定612バースデーライブatリキッドルーム盤(CD+DVD)UMCK-70505,000円+税特典DVD:自身の誕生日6月12日に恵比寿リキッドルームで行われた『ソロ初ライヴ!宮本、弾き語り』を全編ノーカットで収録、さらにライブに向けてのリハーサル風景やインタビュー、当日の舞台裏も含めて山田智和監督が作品化●初回限定2019ライブベスト盤(2CD+DVD+ブックレット)UMCK-70515,000円+税特典CD:2019年に出演した各地ライブからの音源を収録特典DVD:各公演からセレクトしたライブ映像、2019年のライブ活動に関して宮本浩次にインタビューした撮りおろし映像、Music Video集を収録ブックレット:岡田貴之氏撮影のライブ&バックステージフォトを収めた未公開カット16点を含む20pブックレット●写真集付受注生産限定盤(CD+写真集)PROS-19138,000円+税BOX入り・100p写真集「宮本的北京写真日記」・B2サイズポスター(折り畳み)・CD「宮本、独歩。」写真集サイズ:縦27cm×横21cm※受注受付期間終了●通常盤(CD)UMCK-16513,000円+税
2020年05月19日企画展「長沢明展 オワリノナイフーケイ」が、新潟市美術館にて、2020年5月12日(土)から6月7日(日)まで開催される。長沢明・初の大規模個展長沢明は、新潟に生まれ、現在は山形を拠点に国内外で活躍する画家だ。大画面にトラなどのモチーフを描く長沢は、日本画を出発点にしつつもその伝統にとらわれず、素材の物質性に向き合いながら、新たな表現を生みだしている。初の大規模個展となる「長沢明展 オワリノナイフーケイ」では、各時期の代表作に加えて、継続的に描いているドローイングを貼りこんだ巨大な《マントラ》、そして立体やインスタレーションをおり交ぜ、作家の追い求める“風景”を紹介する。スケールの大きな作品の数々とりわけ注目は、スケールの大きな作品の数々。長沢を象徴するトラのモチーフを描いた《マウンテンII》や《Mother》、翼を大きく広げるトリ《ブルーバード》など、3mを超える代表作が並ぶ。また、古本を使用したダイナミックな立体作品や、新作によるインスタレーションも楽しむことができる。初公開のドローイングもさらに、切り絵などの手法によるドローイングを初公開するほか、初期作品の《鳥に舟》や、2019年に刊行された長沢初の絵本『あおいトラ』の原画なども展示。長沢の制作の秘密と、幅広い活動を見て取ることができるだろう。展覧会概要企画展「長沢明展 オワリノナイフーケイ」会期:2020年5月12日(土)〜6月7日(日)※当初は4月25日(土)~開幕予定だったが臨時休館にともない、開幕を延期。※5月10日(日)に開催予定だったワークショップは中止。※新潟市美術館は4月21日(火)~5月10日(日)までの間、臨時休館。※今後の状況により、さらなる変更が生じる可能性あり。決定次第、新潟市美術館公式ホームページ、Facebookなどにて告知。会場:新潟市美術館 企画展示室・常設展示室の一部住所:新潟県新潟市中央区西大畑町5191-9休館日:月曜日(5月4日(月)は開館)、5月7日(木)開館時間:9:30〜18:00(券売は閉館30分前まで)観覧料:一般 1,000円(800円)、大学・高校生 800円(600円)、中学生以下 無料※( )は20名以上の団体およびリピーター割引料金※障がい者手帳・療育手帳の所有者および一部の介助者は無料【問い合わせ先】新潟市美術館TEL:025-223-1622
2020年03月19日エレファントカシマシの宮本浩次さん初めてのソロアルバム『宮本、独歩。』。椎名林檎さんとの「獣ゆく細道」、東京スカパラダイスオーケストラとの「明日以外すべて燃やせ」といったコラボ曲も収録された全12曲。大半の曲がタイアップ曲ということもあり、非常に華やかでエネルギッシュな一枚だ。ポップロック、パンク、ヒップホップと、バラエティ豊かな音楽性に溢れ、齢53歳にして、これまで見たことのなかった宮本さんが全開になっている。「最初はソロアルバムを作るにあたって、散歩したり、『源氏物語』や途中で止まっちゃってる『論語』も全部読んだりしながら作ろうと思ってたんです。でも、2018年のエレファントカシマシの「Wake Up」ツアー中にスカパラからコラボの話が来て、その後に林檎さんからも話があって。そうこうしているうちに、どんどんドラマやCMのタイアップの話が来た。だから俺自身は何も考えてなくて(笑)。元々、子供の頃に合唱団に入っていてテレビに出たり、『みんなのうた』の『はじめての僕デス』って曲を歌ったり。学芸会では自分が主役じゃなきゃ嫌な子で。要するに、子供の頃から人前ではしゃぎ気味っていうかね。人を楽しませるのが好きだったし、歌うこともすごく好きだったから、いろんな新しいオファーが嬉しくて、自然とこういうアルバムになったというか」自由で開放的な言葉が並ぶ中、最後にできたという「旅に出ようぜbaby」では“いつか終わりが来るその日まで僕ら陽気な冒険者でいよう”と、たくさんのミュージシャンと出会い、パワフルな今作が生まれたことへの想いが歌われている。「ディズニーランドとか、ハリー・ポッターとか、そういうメルヘンの世界って、実は大人に必要なものだって今の年齢になってわかったんです。俺がドラゴンクエストVを13回か14回やるほど好きなのは、仲間たちとの旅や冒険が繰り広げられる“メルヘン”があるからで。『旅に出ようぜbaby』の、“いかした旅人でいよう”って歌詞は、『宮本、独歩。』っていうメルヘンの入り口だと思って作ったんです。仲間ができて一緒に歩んでいく。そうやって人生は進んでいくわけで。この曲のバンドメンバーはみんな俺より年上で、長い間音楽界に君臨している人ばかり。その人たちが想いをストレートに乗せて演奏しているから、すごく説得力がある」バンドでデビューしてから32年。そのみなぎる創作意欲の源には何があるのだろうか。「やっぱり、自分が元気だと元気な友達ができるよね。孤独になるのが良い時もあるから、どっちが良いとか悪いとかじゃないんだけど。ビクトル・ユーゴーが『40代は青年の老年期、50代は老年の青年期』っていう言葉を残してますが、実感してますよ。いろんなことを受け入れて、むしろ余裕ができたのかもしれないね。40代だと抗っちゃうところもあるけど、受け入れると逆に元気になれるんじゃない?でもこれからもっと受け入れることが増えるんだろうね(笑)。その分、音楽を作ったり歌ったりすることは充実させていきたいですね」ソロアルバム『宮本、独歩。』【初回限定612バースデーライブatリキッドルーム盤(CD+DVD)】¥5,000【初回限定2019ライブベスト盤(2CD+DVD+ブックレット)】¥5,000【通常盤(CD)】¥3,000(UNIVERSAL MUSIC)みやもと・ひろじ1966年生まれ。’88年、エレファントカシマシのボーカル&ギターとしてデビュー。2018年、ソロシンガーとして椎名林檎、東京スカパラダイスオーケストラの曲に参加。3月13日から全国13か所14公演の初のツアーを開催予定。※『anan』2020年3月18日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)ヘア&メイク・茅根裕己(Cirque)取材、文・小松香里(by anan編集部)
2020年03月11日7月に東京二期会オペラ劇場が17年ぶりに新演出上演するアルバン・ベルクの《ルル》(2幕版)は、20世紀オペラの傑作。2月22日、東京文化会館内で、演出のカロリーネ・グルーバーによるプレトークが開催された。【チケット情報はこちら】カロリーネ・グルーバーはオーストリア出身の女性演出家。世界中の歌劇場が熱い視線を送る彼女は、すでに二期会の舞台でもおなじみだが、年に数回はプライベートで来日するというほどの日本びいきで、この日のトークイベントも、旅行中に急きょ引っ張り出されたのだそう。彼女の演出の根底にあるのは、「自分の側から、つまり女性の視点で分析すること」という。「多くのオペラで女性が死ぬ。なぜ?男性が作曲しているから?それを理解することが使命になった」《ルル》はそんな彼女の「使命」にふさわしい作品だ。ルルは妖艶な魅力を放つ魔性の女。新聞社編集長のシェーン博士はじめ、彼女と結婚した男たちはその魅力に惑わされ、嫉妬し、次々と命を落とす。しかしグルーバーは、「ルルはけっしてモンスターではない」と言い切る。原作では、ルルは貧民街で育ち、シェーン博士に拾われて、彼好みの女性として育てられた生い立ちを持つ。「その幼少期の体験が、現在のルルを形作った。ある種彼女は犠牲者。#MeToo(セクハラの被害体験を告発するムーヴメント)の時代の今だからこそ、初めてそれを公にできる。その意味でこれは#MeTooオペラだ」「これまでの自分のオペラ演出の結論になるかもしれない」と意気込みを語ったグルーバー。「ルルの内面の感情、魂を表現したい」と、自身のオペラ演出では初めて、ダンサーを起用する(後日、事務局から、コンテンポラリー・ダンサー中村蓉の出演が発表された。振付も担当する)。また、映像作家の上田大樹もスタッフに加わる。最近では昨年のNHK大河ドラマ「いだてん」のタイトルバックなども手がけた気鋭のアートディレクター。《ルル》は20世紀の作品らしく、台本(作曲者自身)にあらかじめ映像の使用が指定されている。ニュースフィルムのような映像でルルの身に起こった出来事をフラッシュバックのように映して時間の経過を表すのだが、おそらくはその範疇を超えた、もっと舞台全般に関わる表現として、効果的なコラボレーションになるのだろう。東京二期会の《ルル》は7月10日(金)~12日(日)の3公演。東京文化会館で。ルル役(ソプラノ)は森谷真理と冨平安希子のWキャスト。指揮は、昨年の二期会《金閣寺》(黛敏郎)でもシュアな手腕を発揮したマキシム・パスカル。フランソワ=グザヴィエ・ロトの秘蔵っ子のフランスの新鋭だ。チケット発売中。取材・文:宮本明
2020年03月04日早いもので、今年で開館23年目のシーズンを迎える横浜みなとみらいホールだが、耐震やバリアフリー化のための修繕工事のため、2021年1月から2022年10月まで、1年10か月間にわたって休館する。2月に開かれたプレス懇談会では、休館前最後となる2020年シーズンの主催公演ラインナップ発表と併せて、3月末をもって退く池辺晋一郎館長の退任挨拶、および4月から就任する新井鴎子新館長の紹介が行なわれた。【チケット情報はこちら】まず挨拶に立ったのは現館長の池辺晋一郎。2007年4月の就任以来13年間の在任期間を振り返り、「悲喜こもごもを語ると1時間18分かかる」と笑いを取りつつ、「やりきったという気持ちはないが、やりきってないところで終わるのが物を作るということ」と述べたのは、つねに「次の作品」を見据える現役の作曲家としての率直な心情だろう。「これからもひとりの音楽家としてお目にかかりましょう」と結んだ。つづいて新館長・新井鴎子の紹介。「誇りを持って、公共ホールとしての使命を果たしていきたい」と挨拶した新井は、東京芸術大学楽理科および作曲科の出身。音楽構成作家として、数々のコンサートやテレビの音楽番組などの台本を手がける一方で、東京芸術大学特任教授として障害者支援プログラムの研究開発に携わるなど、さまざまな分野で音楽文化の新たな受容を模索する活動を繰り広げている。休館のため、2022年度の事業が新館長としての初シーズンとなるが、休館中にも、最新のVR技術を駆使する「移動型みなとみらい」で病院などを巡り、ふだんホールに来場することができない人々にホールを体感してもらいたいというプランを明かした。まだ計画段階だが、音楽ホールの新しいあり方を探る姿勢をさっそく示した格好。一方で、たとえば現代音楽の新作を委嘱する「Just Composed」など、池辺が手がけた意義ある企画はしっかり継承していきたいと約束してくれた。つづいて発表された2020年度の公演ラインナップでは、やはり2020年ならではの企画が特徴的だ。「Tokyo 2020」開催期間を含む7~9月を「MMMusic for 2020」と名付け、音楽ジャンルや伝達メディアを超えて体感するアート・プログラム「きこえる色、みえる音」や、子供たちのための参加型イベント「みなとみらい遊音地」などを開催する。そして生誕250年のベートーヴェンの「第九」をメインに据えたのが10~11月の秋シーズン。リスト編曲のピアノ版と、ピリオド楽器オーケストラ「オルケストル・アヴァン=ギャルド」による2つの「第九」が演奏される。年末の「第九」も併せると、主催公演に3つの「第九」。ベートーヴェン・イヤーならではの選択だ。そして大晦日恒例のジルヴェスターコンサートが休館前最後の公演。建物も陣容も一新された横浜みなとみらいホールが帰ってくるまで、しばしのお別れだ。取材・文:宮本明
2020年02月26日フランス生まれの「ラ・フォル・ジュルネTOKYO」(LFJ)が今年も5月のGWにやってくる。東京・有楽町の東京国際フォーラムを中心に行なわれる有料無料合わせて300超のコンサートに43万人の来場が見込まれる大音楽祭。プロデューサーのルネ・マルタンが来日して、概要発表会見が開かれた(2月18日・東京国際フォーラム)。【チケット情報はこちら】今年のテーマは生誕250周年の「ベートーヴェン」。これはLFJが初上陸した2005年と同じ。交響曲やピアノ・ソナタの全曲演奏でベートーヴェンの生涯を通観できるのはもちろんのこと、レア作品を含む協奏曲全曲やピアノ三重奏曲全曲などの百科全書的な企画のほか、室内楽曲や歌曲・合唱曲、珍しいところでは劇音楽《エグモント》全曲の朗読付きと、全編がベートーヴェンずくめ。全公演が、ベートーヴェン・プロか、あるいはベートーヴェンに密接にリンクしたプログラムという、徹底したベートーヴェン祭りになる。会見でマルタンが力を込めたのが、「トランスクリプション(編曲)」という、独自の面白い切り口。ベートーヴェン自身による自作編曲もあるが、同時代から21世紀に至る作曲家たちが試みたさまざまなアプローチもたくさん。ベートーヴェンが時代を超えて影響を与えてきた証を示す。清く正しいロマン派音楽から抱腹絶倒のラテン版まで、ベートーヴェンの百面相。大きな注目が《第九》。この人類の宝にもさまざまな方向から光が当てられる。通常どおりの演奏以外に、リストやワーグナー、そしてベートーヴェンの同時代人カルクブレンナーの三人がピアノと合唱用に編曲した《第九》第4楽章を並べて一気に聴き比べるのは前代未聞。さらに、「第九大国」の日本ならではの企画が、5,000席のホールAの会場全員で合唱に参加してしまおうという「みんなの第九」。鼻歌でメロディを口ずさむレベルではなく、座席の多くはパート別に販売される合唱専用席だから、隣の人に負けじと熱唱可能。公式のリハーサルもあるが本番のみの参加OK。今年のGWは《第九》で締めよう。出演者は例年どおり多士済々、豪華絢爛。チケット代が原則として最高3,000円と安価に収められているのもうれしい限り。なお会見には、「LFJアンバサダー」に就任したタレントのふかわりょうさんも出席。昨年の流行語にかけて「にわかジュルネも大歓迎」とスローガンを掲げるも、報道陣の反応は今ひとつで、「ペンが動いていませんねえ…」と消沈。ふかわさん、書きましたよ!開幕が待ち遠しいLFJは5月2日(土)~4日(月祝)+前夜祭。チケット販売も始まった。ベートーヴェン漬けの3日間を体験すれば、クラシック初心者も筋金入りのベテランも、必ずやベートーヴェン度が急上昇する。間違いなくメモリアル・イヤーの目玉のひとつだ。しかしこの身はひとつ。全部は聴けないから、どの公演を選ぶか、ああ、例年にも増して悩ましい。取材・文:宮本明
2020年02月19日国内最高峰の音楽コンクールの覇者たちが集う「第88回日本音楽コンクール受賞者発表演奏会」が、2月26日、今年も東京オペラシティ・コンサートホールで開催される。今年度のピアノ部門を制したのは、年齢規定下限の17歳で参加した亀井聖矢だ。【チケット情報はこちら】──優勝おめでとうございます。予選を勝ち進むにつれて、手ごたえは感じていましたか?第三予選に進んだ頃から、ここまで来たらやっぱり1位を獲りたいなという気持ちにはなりました。でも本選も好きな曲でしたし、余計なことは考えないと決めたら、辛い苦しいというよりは、わりと楽な気持ちで楽しく臨めました。いま思えば、ですけど(笑)。──その本選の協奏曲は、サン=サーンスのピアノ協奏曲第5番《エジプト風》。レアな曲を選びましたね。3つの楽章のどれも魅力的で、最後に魅せることができる曲です。「えっ、サン=サーンス?」と思った人にも、いい曲だと感じてもらえるような演奏ができたらなと思いました。──音楽雑誌の記事に、演奏後の会場が、フィギュアスケートの羽生弓弦の演技後のような雰囲気になったと書かれていました。あはは(笑)。その時は興奮していてよくわかりませんでしたが、いい演奏ができたのかなと思います。──一転して、今度のコンサートでは、王道中の王道、チャイコフスキーのピアノ協奏曲 第1番(第1楽章)です。幼い頃から弾きたいと思っていた曲です。オーケストラも重厚で、派手で華やかなイメージがあると思うんですけど、実際勉強してみるとすごく繊細で、心の中でうごめくような感情、微妙な感情の変化を表現できたらなと思います。誰もが知っている曲なので、より難しくなるとは思うんですけれども。──聴いて影響を受けたピアニストの演奏はありますか?あまり誰の演奏という意識では聴かなくて……。いろいろ聴いてもレッスンを受けても、それぞれの解釈があるので、それらをうまく取り入れながら、自分の音楽にしていかないとならないので。──優勝から3か月あまり。周囲の環境がずいぶん変わったのではないですか?少しずつ本番が増えてきたり、忙しくなって、半分慣れないままですけれども、常に何かあったほうが自分のモチベーションになるので、今のところ楽しくやっています。その中で、本番に引っ張られるのではなくて、本番をうまく次に繋げていくためのステップにできるようにと考えています。若い勢いのある演奏だけでは、今後どこかで通用しなくなると思うので、誰もが弾くような曲でも、ひと味もふた味も違う、“あ、上手いな”と思わせる演奏ができるように、内面的な部分をもっと磨いていきたいと思います。昨年12月に18歳の誕生日を迎えた。通常なら高校3年生の年齢だが、飛び級入学で現在桐朋学園大学の1年生。コンクール優勝は「ゴールではなくスタート」ときっぱり。若武者の眼差しはしっかりと前だけを見据えている。取材・文:宮本明
2020年02月18日11年ぶりの新制作となる東京二期会の《椿姫》。初日が1週間後に迫った2月12日、公演の指揮者ジャコモ・サグリパンティによるプレトークが開かれた。赤丸急上昇中の若きオペラ指揮者はこれが初来日。詰めかけた約100人の熱心なファンを前に、軽妙に、しかし誠実に語った(自由学園明日館講堂)。【チケット情報はこちら】1982年生まれのサグリパンティは、目下世界の主要歌劇場を次々と制覇し続ける逸材。今回もバイエルン国立歌劇場でアンナ・ネトレプコ主演の《トゥーランドット》を指揮してきたばかりだ。2016年には英国の「オペラ・アワード」最優秀若手指揮者に選出されている。自らの正式なオペラ・デビューを、2010年イタリア南部の街マルティナ・フランカのヴァッレ・ディートリア音楽祭でのドニゼッティ《パリのジャンニ》と答えたサグリパンティ。この音楽祭は、知られざるベルカント・オペラを多数上演することで知られるが、彼自身、これまで40以上のベルカント・オペラを指揮しており、ヴェルディとベルカント・オペラには密接な関係があるのだと語った。「(ベッリーニの)《ノルマ》と(ヴェルディの)《ナブッコ》を、知らずに聴いたら、作者が逆だと思うほど似ています。ベッリーニをヴェルディが発展させたのです」《椿姫》でも、音楽的に難しいヴィオレッタ役に比べて他の役はシンプルで、たとえば有名なジェルモンの〈プロヴァンスの海と陸〉が平凡(!?)なのは、古い社会の象徴として(古い)ベルカント風に書いているからだと教えてくれた。《椿姫》の人気の理由として、どの時代にも起こりうる普遍的なテーマとメロディの美しさを挙げたサグリパンティ。なかでも聴きどころは「ワルツ」だという。「当時ヴェルディがパリで聴いたワルツがさまざまな場面に出てきます。有名な〈さようなら過ぎ去りし日々〉もワルツですね。私が1番泣ける美しいワルツが(第2幕でヴィオレッタがアルフレードに別れを告げる)〈私を愛してね。私があなたを愛しているのと同じくらい〉です。なぜ泣けるかといえば、あそこで初めて本当のヴィオレッタが描き出されるから。魂をえぐられるようなシーンです」ちょっとしたアクシデントもあった。トークの途中で震度1の小さな地震。すぐに収まったが、サグリパンティは「ちょっと怖かった」とお茶目に告白。「イタリアだったら全員が外に逃げたと思うよ!」と笑わせた。最後はソプラノの柴田紗貴子とテノールの澤原行正のふたりが《椿姫》から3曲を歌うミニ・コンサート付き。今回の《椿姫》では、宝塚歌劇団の新鋭演出家・原田諒を起用し、ダンサーとして元タカラジェンヌらが出演することもオペラ・ファンの話題だ。ヴィオレッタ役は日本を代表するプリマ大村博美と、初の大役に抜擢された新星・谷原めぐみのWキャスト。大きな注目を集める二期会《椿姫》は、2月19、20、22、23日の4公演。東京文化会館大ホールにて。チケット発売中。取材・文:宮本明
2020年02月17日「ホールアドバイザー」という複数の音楽家たちからなるアドバイザリー・スタッフによるサポート・システムは、ミューザ川崎のユニークな特徴のひとつ。そのひとりでオルガニスト松居直美の企画「言葉は音楽、音楽は言葉〈パイプオルガンとパントマイムが紡ぐ物語〉」(2月22日(土))には、タイトルとは裏腹に、声としての「言葉」は登場しない。演奏と実際のプログラム作成を委ねられたのが、在仏のオルガニスト青木早希。フランスを代表するパントマイム・ユニット「マンガノマシップ」のふたりと共演する。【チケット情報はこちら】「松居さんからは最初、言葉と音楽をテーマに異ジャンルとのコラボレーションを、というお話でした。相談しながらたどり着いたのが、身体を使った芸術であるダンス、それも抽象的なモダンダンスよりも、具体的な表現であるパントマイムです。私が教えている、ノルマンディ地方のブルゲビュという街の音楽学校でちょうどマンガノマシップのふたりを招聘する計画があり、彼らの活動を知っていたのです」青木の見立ては大当たりで、彼らも初体験のオルガンとのコラボに興味津々。「さまざまな曲を聴きながら、私が作品の歴史的背景や性格、作者のメッセージを説明すると、“それならこんなこともできる”と、彼らのほうからさまざまなアイディアを次々に提案してくれました」器楽奏者である青木だが、言葉と音楽は切り離せない関係と言い切る。「演奏はもちろん、教えるという場でも常に意識しています。フレーズや和声、テンポや呼吸。作曲家がそこに託した言葉を読み取ろうとする試みが演奏の基本であり醍醐味です。今回マイムと一緒に表現することで、その言葉を、より具体化しなければならないと感じています。彼らとコラボレーションすることで、ひとつひとつのフレーズがマイムの動作とつながって、より細かい単位で聴こえてくるようになり、演奏がより豊かに、より自由になっている気がします」コンサートは2幕構成で、第1幕は言葉本来の役割である「対話」をテーマに、第2幕はタイトルに「言葉」を持つ作品で構成。バッハから日本の現代作曲家・柿沼唯まで、時間と空間を縦横に行き来する。オルガンの魅力は、その膨大な「可能性」にあると青木は言う。長い歴史を誇るレパートリー。何千というパイプが奏でる無限の音色。そしてひとつとして同じ楽器が存在しないという魅力。オルガニストにとっては毎回が新しい出会いであり、新たな発見なのだ。「どの時代をとってもどこかで聞いたことのある作曲家のオルガン作品を見つけることができます。そんなオルガンの魅力を最大限に活かした、時代をひとっ飛びできる色彩豊かなプログラムです」「言葉」を、視覚的に表現するマイムと、聴覚的に表現する音楽。言葉の束縛から自由に解き放たれたふたつの芸術が出会い、無限の可能性が生まれる。取材・文:宮本明
2020年02月07日話し込むほどに、とてもよい音楽家だと感じさせる人だ。ヴァイオリニストの山根一仁が2月、埼玉、静岡、京都、そして東京をめぐるリサイタルを開く。ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第5番《春》とフランクのヴァイオリン・ソナタを核に、シュニトケの《古い様式による組曲》、ストラヴィンスキーの《イタリア組曲》というプログラム(順不同)。【チケット情報はこちら】ベートーヴェンやロシア音楽は、彼の音楽との関わりの原点のような作品でもあるのだそう。「2~3歳の頃、音楽に興味を持ったきっかけが、家にあったプロコフィエフの《ピーターと狼》のバレエのビデオ。そして4歳でヴァイオリンを始めたきっかけが、ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番。その後も、(ロシアの大ヴァイオリニストである)オイストラフ門下のオレグ・クリサ先生に教えていただいていたので、ロシア音楽にはずっと親近感を持っています」ベートーヴェンに夢中になったのも、音楽好きのご両親が録り溜めていたビデオがきっかけ。「小学1年生の頃、カルロス・クライバーが1986年に東京で指揮した交響曲第4&7番にハマりました。とくにティンパニ。親にスコアを買ってもらって、学校から帰ると毎日、菜箸で座布団を叩いてました(笑)」共演は同い年のピアニスト小林海都。昨秋、ミュンヘンの山根の自宅で、プログラムを相談しながら、いろんな曲を弾きまくった。「とにかく、ただ音楽に触れているような楽しい時間でした。海都くんは、互いに意見をぶつけることを楽しめる、大好きな相手です。ぶつける時間を取れること自体が大切で、効率を求めればぶつからない。でも妥協が生まれ始めたら、それは絶対にいい音楽につながりませんから。ふたりでこのプログラムを演奏できることが楽しみだし、全部の曲が、“僕ら”にすごく合っている。いい4曲が選べたかなと思っています」演奏家でも、作曲家・作品でも、表現者の人間性が強く出ていることに惹かれると話す。たとえばヴァイオリンのギドン・グレーメルや先述のクライバーの唯一無二の個性。「彼らは自分を出しきりながらも音楽を尊重しています。クレーメルが、『美しさを求めたことはない』というようなことを過去に話しているのですが、もちろん、彼は美しい音でも弾くんですけど、それは音楽を求めた結果だということなんですね。音楽の中の美しさを見つけるのが音楽家の仕事であって、美しさを求めたらダメなんです。音楽の中には、汚い部分、くさい部分もあります。それを出せる音楽家になりたいと思っています」「つねに音楽に正しくあれ」これが、現在ミュンヘンで師事するクリストフ・ポッペンの教えだという。演奏はもちろん、音楽を語ることにも、飾ることなく真摯に誠実に向き合う山根は、まさにそれを体現している。もちろん「正しさ」はひとつではないだろう。2月のリサイタルは、彼の現在の解答を示してくれるはずだ。取材・文:宮本明
2020年01月31日多くのファンに愛される「炎のコバケン」。指揮者の小林研一郎が4月に満80歳(傘寿)を迎える。これを祝う記念プロジェクト「マエストロ小林研一郎80th祝祭演奏会」についての会見が開かれ、マエストロ自ら意気込みや抱負を語った(1月28日・東京文化会館内)。【チケット情報はこちら】小林は会見冒頭、今年の大相撲初場所で33歳にして初優勝を果たした徳勝龍の「もう33歳ではなく、まだ33歳」という発言を引き、「私も同じ気持ち。80歳を迎え、そこからまたもうひとつ輝く世界、80歳の階段を登りつめたときに見える景色に期待しながら、そしてオーケストラという、とてつもない才能の集団の方々に、何か新しい光のようなものを(示す)、そのために作曲家の行間のうちを相当勉強しなければならないと思っています」と、変わらぬ真摯さで音楽に向き合う姿勢を語った。プロジェクトは3つのコンサート企画から構成され、すでに昨年9月、「VOL.1 ハンガリー放送交響楽団 日本公演」でスタートしている。そしていよいよ80歳イヤーの今年開催されるのが、4月のサントリーホールでの「VOL.2 チャイコフスキー交響曲 全曲チクルス」(管弦楽:日本フィル)と、11月の東京芸術劇場での「VOL.3 ハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団 日本ツアー」。チャイコフスキーは小林が得意とする作曲家のひとり。最近では2013~2015年にロンドン・フィルとスタジオ録音した交響曲全集が大きな話題となった。小林が「命綱」と形容する強い絆で結ばれた日本フィルとともに演奏する今回は、5日間にわたって、もちろん《マンフレッド交響曲》も含めて全曲を網羅する完全版。公演2日目の4月9日が80歳のバースデー当日だ。チャイコフスキーは今年生誕180年なので「80年」つながりでもある。「チャイコフスキーの持っているペシミスティックな、あるいは救いようのない苦しみの世界。その苦しみの大叙事詩をお見せできたら、今までとまったく違うチャイコフスキー観が生まれるかもしれない」と小林。ハンガリー国立フィルとの共演歴も長い。1974年、小林が世界へ羽ばたくきっかけとなったブダペスト国際指揮者コンクールのホスト・オーケストラだったから(当時「ハンガリー国立交響楽団」)、すでに45年以上の付き合いだ。「彼らと新しいことをやる時には、なぜかいつもこの曲」というマーラーの交響曲第2番《復活》(ソプラノ:市原愛、アルト:山下牧子、合唱:東京音楽大学)や、ベートーヴェンの交響曲第7番などを演奏する。「炎のコバケン」という呼び名には恥じらいを感じるという小林。燃え上がるのではなく、自身は冷静に、むしろ炎に水をかけているのだと、独特の言い方で表現したが、いずれにしても「老いては益々壮(さか)んなるべし」。そのベースの炎の勢いは、80歳を迎えてなお、まったく衰えることはなさそうだ。取材・文:宮本明
2020年01月30日80年代のヒット映画『ベスト・キッド』がブロードウェイミュージカル化されることになった。脚本はオリジナルを書いたロバート・マーク・ケイメン。演出は宮本亜門。美術はトニー賞受賞者デレク・マクレーンが担当する。キャスティング、初演スケジュールなどは未定。『ベスト・キッド』が公開されたのは1984年。主演はラルフ・マッチオ。2年後には続編『ベスト・キッド2』が公開され、2010年にはウィル・スミス製作、ジェイデン・スミスとジャッキー・チェン主演でリメイクされた。文=猿渡由紀
2020年01月23日今年創立50周年を迎える神奈川フィルハーモニー管弦楽団。5月から始まる記念事業の発表会見を開き、常任指揮者の川瀬賢太郎や楽団顧問でもある黒岩祐治・神奈川県知事らが出席した(1月17日・神奈川県庁)。【チケット情報はこちら】従来の定期公演と並行して行なう記念事業は大きくふたつ。ひとつはマーラーの交響曲第8番《千人の交響曲》を演奏する祝賀演奏会(11月21日・横浜みなとみらいホール)。そしてもうひとつは県内10都市での巡回主催公演。どちらも、次の未来を見据える意味で、「フューチャー・コンサート」と名付けられている。マーラーの交響曲第8番について川瀬は、「(この曲を指揮するのが)長年の夢だった」と語る。今回が初挑戦となる。「僕がまだ幼稚園児の頃、最初に夢中になったクラシック音楽が、モーツァルトでもベートーヴェンでもなく、この曲」。そんな彼のマーラー愛はどうやら父親譲りで、父はマーラー協会に所属していたほどのマーラー・ファン。当時のマーラー協会会長は指揮者の故山田一雄で、1984年に川瀬が生まれたとき、お祝いに指揮棒をプレゼントしてくれたのだそう。山田は1949年に交響曲第8番を日本初演した指揮者だから(演奏の一部がニュース映像として残っている)、川瀬がこの作品を指揮することは、もしかしたらこの世に生まれた瞬間から宿命づけられていたのかもしれない。巨大なエネルギーの奔流のような作品だが、それだけではない、川瀬らしい、切れ味鋭い、そして丁寧なアプローチを見せてくれるはず。必ず聴きたいコンサートだ。ソリスト等の詳細は後日発表。県内巡回公演は、各地ゆかりの出演者や作品を交えて、多くの人に親しまれている名曲でプログラムを構成する。海老名、横須賀、茅ヶ崎、秦野、川崎、藤沢、小田原、相模原、鎌倉、大和の各市を巡る。「神奈川の地元オーケストラ」としての顔も神奈川フィルの大事な側面だが、県内で一定期間に集中してこれだけの都市で主催公演を開くのは初めてとのこと。会見では、楽団が財政的に苦境に立たされた時期のあったことや、それを官民一体となった支援で乗り越えてきたことも語られた。神奈川フィルは独立した公益財団法人だが、こうした自治体や県民の支援があったからこその50周年。楽員もそれをよく知っている。2014年の公益財団法人化に向けて5億円の資金を集めなければならなかった際、自ら「応援団長」としてホールのエントランスに立って募金を呼びかけたという黒岩知事は、楽員たちが次第に自主的に募金活動に参加するようになったことを語り、その意識の変化が演奏のクォリティ向上にもつながっていると力を込めた。創立50周年。もしかしたら、華々しく海外公演という考え方もあったかもしれないが、「外に目を向けるのではなく、県内各地で」と川瀬。会見中に何度も繰り返された「感謝」という言葉がふさわしい、足元を見つめた記念事業になりそうだ。取材・文:宮本明
2020年01月21日英国の名門フィルハーモニア管弦楽団。1月23日(木)からの来日公演にさきがけて、最新デジタル技術による「VR(ヴァーチャル・リアリティ)サウンド・ステージTokyo」を実施している。360度の3D映像とサラウンド音響で、リアルなオーケストラ演奏を間近に体感できるというもの。「フィルハーモニア管弦楽団」来日公演のチケット情報演目は2017年にロンドンのロイヤル・フェステイヴァル・ホールでライヴ収録したマーラーの交響曲第3番。1983年にサロネンが代役で急遽フィルハーモニア管を指揮し、その後の首席指揮者就任のきっかけとなった作品だ。会場内には15脚の回転椅子。VRゴーグルとヘッドフォンをつけると映像が始まる。冒頭に上述の出会いのエピソードを語るサロネンの肉声が流れ、すぐに演奏へ。いきなり目の前にサロネンが現れた。譜面台を挟んでサロネンと向かい合う位置に座った格好。このプログラムの売りが、視界360度の3D映像だ。そのための回転椅子。ぐるぐる回って周囲を見渡すと、自分がオーケストラに囲まれているのがわかる。演奏は第6楽章の最後の6分ほど。映像同様、音声もサラウンドなので、たとえばフルートの聴こえる方向を振り返れば、そこにフルート奏者がいる。弾いているパート、休んでいるパート、旋律の受け渡しなどが、文字どおり目に見えるようで、スコアを見ながら聴いているような感覚。あまりにリアルなので、奏者や客席最前列のお客さんがこちらを見ているような気がして、なんだか照れくさい。壮大なコーダで曲を閉じると、盛大な拍手に応えてオーケストラ全員が立ち上がる。自分だけ座ったままではまずい!と本気で焦った。「VRサウンド・ステージTokyo」は東京芸術劇場地下1階アトリエウエストで1月29日(水)まで(1月20日(月)・21日(火)は休館日)。1日14回上映されるが、各回限定15名。当日整理券またはWEB予約が必要。詳細はホールHPへ。さらに、東京芸術劇場前の池袋西口公園に誕生した野外劇場「グローバルリング」では、関連イベント「TOKYO MUSIC EVENING “YuBE”(ユーベ)」が開催中(1月31日(金)まで)。VRと同じマーラー交響曲第3番の通常の2D映像を大型スクリーンとサラウンド・スピーカーで上映するもので、こちらは第6楽章まるまる(約30分間)が流れる。VRと同じコンサートの映像で、さっきたしかに座っていた感覚のある場所に自分がいないのが、なんだか不思議。特殊なサラウンド音響効果を作り込んだりはしていないようだったが、マルチ・スピーカーのおかげで、リング内のどこで聴いても良好な音響で楽しめる。上映は期間中の毎晩、午後7時と午後8時30分の2回(予約不要・入場無料)。野外なので防寒対策はお忘れなく!そして1月23日(木)からは、いよいよ公演が始まる。サロネンとフィルハーモニア管弦楽団の集大成を、今度は生身で!取材・文:宮本明
2020年01月15日三浦文彰、26歳。難関のハノーファー国際ヴァイオリン・コンクールに史上最年少の16歳で優勝し、注目を集めて10年。3年前の大河ドラマ『真田丸』のテーマ音楽演奏ではお茶の間の人気もがっちりと掴んだ。2020年2~3月の東芝グランドコンサートで、サントゥ=マティアス・ロウヴァリ指揮エーテボリ交響楽団と、ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番を弾く。【チケット情報はこちら】「どの協奏曲を弾きたいか聞かれたら毎回必ずこの曲を挙げているのですが、なかなか採用されません。今回はそれが通って、ツアーで5回も弾くことができるのはすごくうれしいですね。演奏するたびに毎回見え方が違って、曲の深さがわかってくる。僕にとってはとても大事な曲です」1955年に初演された作品。三浦が師事したパヴェル・ヴェルニコフは、初演時のヴァイオリニスト、ダヴィッド・オイストラフの門下なので、いわば直伝で多くのことを学んだ。「一番は音のイメージです。強いだけじゃない、強くて重たいんだ、とか。それを言葉だけではなく、弾いて教えてくれました。あとは、ロシア文学を読めと。とくにこの曲の場合、ただ無意識に弾いていると運動会っぽくなっちゃうところがあるので。勘違いされやすいところかなと思うんですけど、ショスタコーヴィチは、人の声、叫びというか、金属的なカンカンした音ではない、木質の響きが必要です」すでに2019年10月に、来日公演と同じ顔合わせで、オーケストラの本拠エーテボリで共演してきた。「とてもいいオーケストラ。みんな本当によく聴いていて、ちゃんとアンサンブルができる。それに、彼らの感じているショスタコーヴィチというのがはっきりとあって、楽章ごとのキャラクターが際立っています。僕が何か仕掛けても、はっきりリアクションがあるので、やりがいがありました。(旧ソ連出身の)ネーメ・ヤルヴィが20年以上首席指揮者だったので、ロシア音楽の伝統も持っているのでしょうね。指揮者のサントゥも、その彼らがのびのび弾けるように振っている。すごく自然な音楽づくりだし、一緒にやっていて面白かったです。気が合うなと思いました。イージー・ゴーイングな性格で、打ち合わせでペちゃくちゃしゃべるのではなく、まずオケとやってみようよという感じ。僕もそのほうが好きなので」首席指揮者ロウヴァリは34歳。世代も近く、酒席もともにしてすっかり意気投合した様子。「日本でもどこか連れて行けと言われているので、考えなきゃ(笑)。メインのシベリウスの交響曲第2番もきっとすごくいいと思います。彼はフィンランド出身で、もちろんシベリウスを愛している男ですし、彼らはちょうどシベリウスの全曲録音を始めたところですから。プログラム全体が、大編成だし、聴きごたえ十分のコンサートだと思います」取材・文宮本明
2020年01月14日新国立劇場2020/2021シーズンラインアップの発表会見が開かれ、オペラ部門は、芸術監督として3シーズン目を迎える指揮者・大野和士が出席した(1月8日)。新制作上演は次の4本。●ブリテン《夏の夜の夢》(2020年10月)●藤倉大《アルマゲドンの夢》(2020年11月)※世界初演●ストラヴィンスキー《夜鳴きうぐいす》/チャイコフスキー《イオランタ》(2021年4月)●ビゼー《カルメン》(2021年7月)大野が芸術監督就任時に掲げた施策には、隔年で行なうプロジェクトが含まれており、来シーズンはその1年目の企画枠が戻ってくることになる。そのひとつが日本人作曲家への創作委嘱シリーズ。今回大野は、いま世界が最も注目する作曲家である藤倉大に狙いを定めた。《アルマゲドンの夢》は、20世紀初頭の「SFの父」H.Gウェルズの『世界最終戦争の夢』が原作。藤倉のオペラ3作目だが、日本で演出付きで舞台上演されるのはこれが初めて。指揮は大野和士。演出は2018年ザルツブルク音楽祭の《魔笛》が注目を浴びたアメリカの女性演出家リディア・シュタイアー。英語台本なので海外上演の可能性も含めて注目される。上演順が前後するが、シーズン開幕を飾るのはブリテンの《夏の夜の夢》。大野は「20世紀オペラは難解で敷居が高いと思われがちだが、底抜けに明るい喜劇、幸せになる現代オペラもあることをアピールしたい」と意図を述べた。プロダクションは2004年にベルギーのモネ劇場で初演され高評価を得ているデイヴィッド・マクヴィカー演出の舞台。新国立劇場が権利を買い取った。今後は他劇場へのレンタルも含めて、新国立劇場の所有レパートリーとなる。指揮はイングリッシュ・ナショナル・オペラ音楽監督でブリテンのスペシャリスト、マーティン・ブラビンス。2021年4月の《夜鳴きうぐいす》と《イオランタ》の2本立ても、隔年プロジェクトであるダブルビル第2弾。「童話」つながりの2作品だ。さらに今回は、これも大野が掲げる「ロシア・オペラの充実」という方針の一環でもある。新国立劇場として4度目の新制作となる《カルメン》の演出を手がけるのは、スペインのアレックス・オリエ。昨年の新国立劇場と東京文化会館共同制作の《トゥーランドット》では、スケール大きな舞台装置と、姫が自ら命を絶つショッキングなラストシーンが大きな話題となった。大野は「オリエは、室内楽的、内面的な精神の変化を描きたいと言っている。昨年の《トゥーランドット》とはまったく視点の異なるビジュアルの演出になるはず」と語った。レパートリー作品も、臼木あいのスザンナ、脇園彩のケルビーノと、日本人歌手の活躍に期待が募る《フィガロの結婚》や、わが国のワーグナーの第一人者で前芸術監督の飯守泰次郎が指揮する《ワルキューレ》はじめ、充実のラインアップ。取材・文:宮本明
2020年01月09日2018年の『リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~』(テレビ朝日系)でドラマデビューを果たした宮本茉由(24)。2019年は、7月期の月9ドラマ『監察医 朝顔』で女性鑑識官・渡辺英子役でさらなる経験を積んだ。主演の上野樹里と共演し、彼女の中には何が残るのか。昨年末のイベント「晴れ着撮影会」終了後、2020年1月11日スタートの日本テレビ系ドラマ『トップナイフ―天才脳外科医の条件―』(毎週土曜22:00~)への意気込みも聞いた。○■セットに入るとすぐに朝顔の顔に晴れ着撮影会には2018年に初めて参加させて頂いて、当時は「きっと仮のスケジュール」と思ってしまうぐらい信じられなかった(笑)。2019年は、『東京独身男子』と『監察医 朝顔』と2クールのドラマに出演させて頂いて、自分とは異なる人を演じることの難しさと、役を作り上げていくことの楽しさを学んだ一年でした。『監察医 朝顔』では解剖シーンを一日中撮っていることもあって、みなさんと一緒にいる時間がすごく長くて、これまでのドラマでは最も現場にいた時間が長かった作品でした。ドラマを作り上げていく過程を学べたり、控室で共演者の方々との距離が縮まっていっていくことを感じたり、みなさんの演技を間近で見れたり。私にとってはすごく濃い撮影期間でした。それから、監督が少ないセリフの私にセリフを足してくれたり、上野樹里さんの後ろに立たせてくださってカメラに映り込むようにしてくれたり、すごく優しいスタッフの方々と温かい現場で撮影させていただいて、私にとってはすごく恵まれた環境でした。周囲の方々のおかげで、役と向き合うことができました。本当に感謝しています。上野樹里さんと現場でご一緒させていただいて感じたのは、オンとオフの切り替え。控室では普段の上野樹里さん、でもセットに入るとすぐに朝顔の顔に。すごく優しい方で、私が一度貧血で体調を崩した時は「大丈夫?」とすぐに来て、介抱してくださいました。私以外にも、「私もスタッフだから」と荷物を運んだりする姿を見て、主役としての立ち振る舞いの大切さを知りました。2020年1月からは、天海祐希さん主演のドラマ『トップナイフ』で、東都総合病院の脳神経外科部長秘書・玉井静香を演じさせて頂きます。これからいよいよ撮影です(取材は2019年12月)。いつも新たな現場を目前に控える時は、「100メートル走のスタート前」のような気持ち。「きちんと走れるかな?」という不安があっても、走り出したら走り抜くしかない。緊張と不安を感じつつ、入り抜けられるように頑張ります。■プロフィール宮本茉由(みやもと・まゆ)1995年5月9日生まれ。2016年9月、第1回ミス美しい20代コンテストにて審査員特別賞を受賞し、芸能界入り。同年12月から『CanCam』専属モデルに抜てきされ、2018年10月期のテレビ朝日系『リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~』でドラマデビュー。2019年は『東京独身男子』(テレビ朝日系)、『監察医 朝顔』(フジテレビ系)に出演したほか、2020年1月11日スタートの日本テレビ系ドラマ『トップナイフ』(毎週土曜22:00~)に出演する。
2020年01月02日「音が自然に届く素晴らしい響きが大好きです」【チケット情報はこちら】横浜みなとみらいホールについてそう語るピアノの阪田知樹。少年時代からの地元でもある横浜で、2年連続となるリサイタルを開く(2020年3月1日・大ホール)。前回の全リスト・リサイタルに続き、《ピアノ・ソナタ》と《ラ・カンパネッラ》のリスト作品を今回もプログラムに入れた。「私の中で特別な作曲家ですし、《ピアノ・ソナタ》は人生をかけて勉強し続けるべき、自分の中でも常に進化している曲。10月にベートーヴェンの最後の3つのソナタに取り組んだのですが、リストのソナタは、ベートーヴェンの32曲のソナタの延長線上に存在する曲だと考えていて、特に最後の第32番のソナタとの類似点にはいろいろと気づいていました。それにあらためて直接触れたことで、目指すものがよりクリアになってきた気がしています」リサイタルは一般的な2部ではなく3部構成。第1部にモーツァルトのソナタ第5番とシューマンの《交響的練習曲》、第2部がリストのソナタ、第3部に《ラ・カンパネッラ》を含む、さまざまな編曲作品。「SP時代の巨匠たちのリサイタルを研究してみると、3部に分けていることが多いんです。第1部がクラシカルな作品。第2部がちょっと挑戦的な作品。第3部はアンコール的な意味合いも込めて、楽しく聴ける作品が続くという形です。今回はまさにその形。巨匠たちへのオマージュです」さらに新たな試みも。「彼らは、作品を弾く前に、つなぎの即興を入れることが多かったんですね。バックハウスやディヌ・リパッティがそうです。演奏者自身も聴き手も気持ちの準備ができる。それをやれたらなと思っています」作曲家でもある阪田ならではの発想かもしれない。「演奏会を、大きな枠で全体としてお届けしたいと思っています。植物のポプリのように。それをどういうふうに作ってプレゼントするのかが、私たちの表現です」リサイタルの翌週にはヴァイオリニストの諏訪内晶子がプロデュースする「国際音楽祭NIPPON 2020」の一環で「ベートーヴェン室内楽マラソンコンサート」(3月8日・東京オペラシティ)に出演。諏訪内とヴァイオリン・ソナタ第10番などを弾く。「諏訪内さんは、彼女ならではのパッションをもつ音楽家。その諏訪内さんがベートーヴェンとどう向き合われるのか、最も間近で聴くことにもなるのでうれしいですし、諏訪内さんのCDを子供の頃から聴いていたので、なんだか不思議な気持ちです」9時間を超える長丁場のコンサート。「作品1のピアノ三重奏曲も演奏します。後期のソナタ第10番と合わせて、ベートーヴェンの音楽の発展、変化を1日で体験できるのは楽しみです」2020年6月からはリスト編曲によるベートーヴェン交響曲全曲ツィクルス(全9回・Hakuju Hall)もスタート。彼のベートーヴェンとの向き合い方にもいっそう注目していきたい。取材・文:宮本明
2019年12月26日俳優の横浜流星が、2020年7月~9月に上演される舞台『巌流島』で主演を務めることが9日、明らかになった。剣豪・宮本武蔵と佐々木小次郎の「巌流島の戦い」に焦点をあてた物語で、横浜が宮本武蔵を、伊藤健太郎が佐々木小次郎を演じる。2人は本作が初共演となる。横浜流星伊藤健太郎圧倒的迫力で魅せる大立ち回り、人間ドラマが織り成す決闘の真実、関門海峡に浮かぶ「巌流島(船島)」で繰り広げられた大勝負、その壮絶な戦いを壮大かつ画期的なアクション時代劇として描き出す同作。今回の舞台化のため、新解釈、新設定をもとに新たに脚本を創り上げ、オリジナル作品として上演する。脚本は時代物の舞台に敏腕を振るう『魔界転生』『真田十勇士』などのマキノノゾミ氏、演出は『ダンス・オブ・ヴァンパイア』『アニー』などの山田和也氏が担当する。マキノ脚本・山田演出の新作での組み合わせは、2004年上演の『浪人街』以来、16 年ぶりとなる。主人公・宮本武蔵を演じる横浜は、2017年以来3年ぶりの舞台出演。佐々木小次郎役の伊藤は1年ぶり、3作目の舞台出演となる。初共演の2人が、令和版の新しい『巌流島』を創造。本格的な殺陣に初めて挑み、2人が闘い、迫真のアクションを披露するのも大きな見せ場となる。横浜は「今回『巌流島』で宮本武蔵役を演じさせていただくことになりました。3年ぶりに舞台に立つことができ、幸せです。とても楽しみで、今からワクワクしています」と喜び、「これまで、たくさんの方々が宮本武蔵を演じていて、プレッシャーを感じていますが、僕にしか演じることの出来ない宮本武蔵を演じます。1人でも多くの方々にこの作品が届くと嬉しいですし、お越し下さる方々の期待を裏切らないよう、キャスト、スタッフ共に力を合わせて、圧巻の『巌流島の戦い』を責任を持ってお届けしますので、ご期待下さい」とメッセージ。伊藤も「この度、『巌流島』で佐々木小次郎を演じることになりました伊藤健太郎です。誰もが知っている武蔵と小次郎の物語を演じる事がとても嬉しいですし、個人的には殺陣を舞台でやるのが初めてで今からワクワクしてます。あと、横浜流星くんとは初めましてなので、見てくれる人の心に響く舞台を一緒につくれたらいいなと思います」と意気込んでいる。舞台『巌流島』は、7月末に東京で開幕し、大阪、名古屋、福岡など全国各地を巡る予定。開催日程、会場名などは後日発表される。
2019年12月09日横浜流星が剣豪・宮本武蔵役で舞台「巌流島」に主演。ライバル・佐々木小次郎を初共演となる伊藤健太郎が演じる。圧倒的な迫力で魅せる大立ち回り、人間ドラマが織り成す決闘の真実、 関門海峡に浮かぶ「巌流島(船島)」で繰り広げられた大勝負、その壮絶な戦いを、壮大かつ画期的なアクション時代劇として描き出す。主演の宮本武蔵には、「日経トレンディ」の今年の顔、「DIMEトレンド大賞」、「GQ MEN OF THE YEAR」、「Yahoo!検索大賞」の大賞と俳優部門賞のW受賞にも選ばれ、2019年最も注目を集めた横浜流星。主演映画3本のほか、ブレイクのきっかけになったTBSドラマ「初めて恋をした日に読む話」や日本テレビ系日曜ドラマ「あなたの番です-反撃編-」、TBSドラマ「4分間のマリーゴールド」への出演、さらに2020年1月期主演ドラマ「シロでもクロでもない世界で 、 パンダは笑う。」や2020年秋公開の映画『きみの瞳(め)が問いかけている』など主演作が続く。クールな凜々しさと透明感のある演技でファンを魅了しており、 舞台への出演は2017年以来3年ぶり。「3年ぶりに舞台に立つことができ、幸せです」と横浜さん。「とても楽しみで、今からワクワクしています。これまで、たくさんの方々が宮本武蔵を演じていて、プレッシャーを感じていますが、僕にしか演じることの出来ない宮本武蔵を演じます」と意気込みたっぷりにコメント。そして佐々木小次郎には、 TVドラマ「今日から俺は!!」で大ブレイクし、朝ドラ「スカーレット」にも出演予定、映画『惡の華』では主演を飾り、ますます活躍の場を拡げ、若手俳優としていま注目度抜群の伊藤健太郎。演技力には定評があり、舞台出演は1年ぶり、3作目となる。「誰もが知っている武蔵と小次郎の物語を演じる事がとても嬉しいですし、個人的には殺陣を舞台でやるのが初めてで今からワクワクしてます」と同様にコメント。「横浜流星くんとは初めましてなので、見てくれる人の心に響く舞台を一緒につくれたらいいな」と期待を込めた。横浜さんと伊藤さんは今回が初共演。本格的な殺陣に初めて挑み、2人が闘い、迫真のアクションを披露する姿は大きな見せ場となるはず。脚本は、「魔界転生」「真田十勇士」など時代物の舞台に腕を振るうマキノノゾミ、演出はスケール感のある大作を次々と世に贈り出す「ダンス・オブ・ ヴァンパイア」「アニー」などの山田和也と、演劇界を支えるベテラン2人が担当。今回の舞台化のため、新解釈、新設定によるオリジナル作品として上演する。舞台「巌流島」は2020年7月~9月、東京・大阪・名古屋・福岡ほかにて上演。(text:cinemacafe.net)
2019年12月09日師走のクラシック音楽の風物詩といえばまずは「第九」が思い浮かぶ。でもクリスマスは《メサイア》のシーズンでもある。東京でも、東京芸術大学や立教大学、東京女子大学など、60年から70年近い歴史を持つ《メサイア》演奏会が少なくない。そんななか、2001年に始まったのが、サントリーホールのバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)の《メサイア》。今年で19年目。すでに新たな伝統だ。【チケット情報はこちら】「うれしいことですね。僕らが普段バッハを演奏していることは知らずに、毎年これだけを聴きに来るというお客様もいらっしゃいます(笑)」(BCJ音楽監督・鈴木雅明)バッハと同年生まれのヘンデルのオラトリオの代表作。その魅力は「わかりやすさ」だと語る。「非常にまとまりがあって、音楽的にも楽しめる。バッハみたいに複雑な対位法などはありませんから。バッハと同じぐらいの作曲技術はあったと思いますけど、難解なことは避けている。とても巧みで上手いんですね。けっして浅薄ではないですが娯楽的でわかりやすい。その意味では、すでにかなり(次の古典主義の時代の)啓蒙主義的な傾向にあるんですよ」「メサイア」は救世主のこと。イエスの生誕から受難、復活までを描く。「歌詞は聖書の言葉だけを使っているので、キリスト教の音楽であることは間違いありません。しかしバッハのカンタータや受難曲とはちがって、教会の典礼のための音楽ではなく、あくまで劇場用、演奏会のための作品なんですね。オペラにも似たストーリー性があるのもわかりやすさにつながっていると思います」一部をカットして演奏することも多いが、BCJは常に全曲演奏で、2時間40分ほど。「音楽も歌詞もつながりがあってできているので、カットすべきところがないんです。ヘンデルの他のオラトリオは平気で4時間を超えますから、それに比べたら非常にコンパクトだと言えます(笑)」ヘンデルが演奏のたび、おもに歌手の都合に合わせてさまざまな編曲を施したために多くの異版が存在する。BCJも19年の間にさまざまな版で演奏してきたが、あまりそこにこだわる必要はないと説く。「毎年議論はするのですが、ヘンデルが実際にどのように演奏したかがわからないので、どうやっても正統的な演奏にはならないんです。海外で、全部の版を演奏するというプロジェクトもあるらしいですが、そこにこだわり過ぎてはいけないと思います」つまり、妙に「通」を気取ることなく、ヘンデルの音楽の美しさを素直にじっくり味わうのが正しい楽しみ方のようだ。「実際《メサイア》は、〈ハレルヤ〉などのブリリアントな面だけでなく、じつは非常にしっとりとした部分が多いんですよ。クリスマスはパーティも楽しいですが、そんな美しい旋律、しかもシンプルでわかりやすい音楽を一緒に味わうのも、クリスマスのよい経験になると思います」取材・文:宮本明
2019年12月06日令和元年も残り1か月を切った東京で、見逃せない画期的なプロジェクトが注目を集めている。芸術総監督ワレリー・ゲルギエフ率いるマリインスキー・オペラとそのオーケストラ「マリインスキー歌劇場管弦楽団」による『チャイコフスキー・フェスティヴァル』(11月30日~12月7日/東京文化会館、サントリーホール)。【チケット情報はこちら】オペラと管弦楽曲の両輪で本場ロシアの大作曲家の魅力を味わい尽くすことができるという、ありそうでなかった本気のオール・チャイコフスキー・プログラムだ。オペラのほうは、代表作の《スペードの女王》のフル演出上演と、上演機会の少ない秘曲《マゼッパ》をコンサート形式上演の2演目。そして管弦楽コンサートのほうでも、交響曲第4~6番やピアノ協奏曲第1番、ヴァイオリン協奏曲などおなじみの名曲はもちろん、なかなか実演を聴くことができない前期交響曲の第1~3番や、ピアノ協奏曲第2番、第3番も含め、まさにチャイコフスキーの全貌を見せてくれるうれしい企画。この記事の配信時点で、すでに《スペードの女王》は終了したが、その舞台リハーサル直前のつかの間、演出を手がけたアレクセイ・ステパニュクに話を聞いた。「《スペードの女王》と《マゼッパ》は、どちらもロシアの最も優れた詩人であるプーシキンの原作によるオペラです。ただし《スペードの女王》では、原作とオペラでは多くの点が異なります(オペラ台本の執筆はチャイコフスキーの弟モデストによる)。それをプーシキンの原作に近づける演出も少なくないのですが、私の演出は、マエストロ・ゲルギエフの音楽と補い合うようにして、チャイコフスキーの構想に合致した作品になっていると思います。私が音楽の作り方に関して感じるのは、あくまでも主観でしかありませんが、まだレニングラード音楽院の学生だった頃に観たユーリ・テミルカーノフ指揮の《スペードの女王》は、非常に強い印象を残すものでした。彼はすべての間や余白を拡大していました。ゲルギエフの指揮は、それよりさらに、オーケストラの重さや暗さを強調しています。これがサンクト・ペテルブルグのスタイルだと思います。荘厳な間や、宇宙的な規模にまで達するかと思うようなクレッシェンド、そしてまったくの静寂。ゲルギエフはそれを鋭く感じ取っています」そんな壮大なスケールのゲルギエフの音楽が、チャイコフスキー作品のさまざまな側面を振幅大きく描き出す。《マゼッパ》では、劇場アカデミー出身の若い歌手たちも中心を担って劇場としての底力を見せつけるし、コンサートでは協奏曲のソリストに、五嶋龍(ヴァイオリン)、辻井伸行(ピアノ)という、頼もしい日本、そしてロシアの俊英が顔を揃える。ロシアを代表する劇場の誇りが薫るチャイコフスキー・フェスティヴァル。後半戦も大いに盛り上がるはずだ。取材・文:宮本明
2019年12月02日各地の複数の劇場やホールがオペラを共同で新演出上演する「全国共同制作オペラ」(文化庁助成)。2020年2月には白河文化交流館コミネス(福島県白河市・9日)、金沢歌劇座(石川県金沢市・16日)、東京芸術劇場(東京都・22日)の3館がヴェルディ《ラ・トラヴィアータ(椿姫)》を上演する。演出家・出演者らが都内で会見を開いた(11月18日)。【チケット情報はこちら】このプロジェクトの特色のひとつが、演出に、演劇やダンス、映画など、ふだん他ジャンルを中心に活躍する才能を積極的に起用してオペラに新たな可能性を模索していること。これまでにも森山開次や河瀬直美、野田秀樹、笈田ヨシら、世代やジャンルにこだわらず、さまざまな大物たちに演出を委ねてきた。今回の演出を手がけるのは、ダンス・カンパニー「ニブロール」を主宰する振付家・演出家の矢内原美邦(やないはら・みくに)。オペラ初演出だ。会見冒頭、「わくわくドキドキしている。でも私がやるからには、普通のオペラでなく、未来につながるような新しいオペラを」と、いきなりオペラ界に宣戦布告。とはいえ、もちろん対決姿勢はゼロ。具体的な手法としては、「映像をふんだんに使う。そのスクリーンは美術セットでもあり、そのセット自体も固定せずにどんどん自由に動かす。予算の許す限り大掛かりに(笑)」その映像を作るのは、ニブロールでもずっと矢内原とコンビを組んでいる映像作家の高橋啓祐だ。ダンサーや役者ら助演(歌わない役)にも大きく重点が置かれ、そこに歌手や合唱団も加わるという。「突っ立って歌わせるつもりはない」と語るが、この日が初顔合わせだった歌手一同からは、「われわれも踊るのか?」という質問が次々に飛んで来るので、それには「答えない」という作戦に出たと会場を笑わせた。でも、「たぶんみなさんがちょっとびっくりするようなことがあると思います」朝から晩までずっと稽古しているような小劇場の世界で育った矢内原にとっては、最初の打ち合わせで聞いたオペラの稽古時間の少なさは衝撃的だったそう。「でも今日会って、ひとりひとりにとても興味を持った。全員がいい舞台を作りたいと思っているのはまちがいない。そういう舞台にしたい」と抱負を語った。主役のヴィオレッタには、円熟期を迎えた名ソプラノのエヴァ・メイ(この日の会見は欠席)。華やかな高音の技巧から内面的な重い表現まで、要求される声の演技が幕ごとに異なるこの役には、彼女のように経験を積んだコロラトゥーラ・ソプラノは適役だ。恋人アルフレードに宮里直樹、その父ジェルモンに三浦克次。ベルリン・フィルのヴィオラ奏者出身という異色の経歴の指揮者ヘンリク・シェーファーがタクトをとる。すでにさまざまなアプローチが尽くされてきた名作オペラに、気鋭の演出家がどんな光を新たなに当てるのか。2月まで首を長くして待とう。チケットは各地の公演ともすでに発売中。取材・文:宮本明
2019年11月27日