花總まりが、喜劇作家ニール・サイモンの代表作『おかしな二人』で本格的なコメディに挑戦する。開幕を約2週間後に控えた稽古場で語る心境に、耳を傾けた。【チケット情報はこちら】1965年に米ブロードウェイで初演され、映画やTVドラマに派生した本作。いずれもニューヨークにあるアパートの一室を舞台に、性格が正反対の男性2人が巻き起こす騒動が描かれる作品だが、85年には登場人物の性別を入れ替えた別バージョンが上演された。今回はこの85年版を下敷きに“無精者”のオリーブを大地真央、“病的なまでに几帳面”なフローレンスを花總が演じ、その脇をシルビア・グラブ、宮地雅子、平田敦子、山崎静代(南海キャンディーズ)、渡辺大輔、芋洗坂係長といったコメディの腕利きが固める。これまでミュージカルの出演が続いた花總は、まず「膨大なセリフ量を覚えて発することに必死で、内容のおもしろさを的確に伝えるのが難しいですね」と会話劇の洗礼を受けている様子を明かした。同時に“コメディエンヌ”と称される大地と向き合う中で「自然なお芝居の中に絶妙なテンポ感や間があって……さすがだな、と日々勉強させてもらっています」と喜劇の“先輩”から学ぶ姿勢を欠かさない。演出を手がける原田諒とは、花總が宝塚歌劇宙組のトップ娘役に就いていた2003年から面識があり「演出助手として入団した原田さんが今ではテキパキ指示を飛ばしており、時の流れを感じました」と笑顔を見せた。原田の演出は「神経質なフローレンスなら、きっとここを片付けたくなるはず」といったように、芝居の動きを整えて作品の精度を上げていくもの。「役を昇華して自分の中へ浸透させる参考になります」と信頼を寄せる。キャストやスタッフから薫陶を受けるだけでなく、映画(68年)も自らの血肉に変える花總。「何も取り繕わない、あるがままの2人の小競り合いがこれほどおかしいなんて」と感想を述べると、「このおもしろさを伝えるには大地さんとのキャッチボールが重要」「力を抜いて楽しみます」と“爆笑コンビ”を誓った。楽しく華やかな歌唱ナンバーが続くスペシャルカーテンコールと併せて、花總が見せる新たな一面に注目してほしい。公演は10月8日(木)~25日(日)に、東京・シアタークリエにて。その後、11月5日(木)~8日(日)に大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティと巡演する。ぴあでは、座席指定できるチケットを販売中。取材・文:岡山朋代
2020年09月28日KAAT神奈川芸術劇場プロデュースによるダンス作品『星の王子さま –サン=テグジュペリからの手紙–』が、今秋幕を開ける。8月中旬のプレ稽古期間中、本作の演出・振付を手がけ、自身も出演する森山開次に構想を尋ねた。【チケット情報はこちら】フランスの作家、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリによる小説『星の王子さま』をベースに、彼の人生や『夜間飛行』といった他作品もモチーフに散りばめつつ展開される本作。キャストにはアオイヤマダ、小㞍健太、酒井はな、島地保武らダンサーが名を連ねるほか、歌手の坂本美雨もステージを彩る。音楽座ミュージカル在籍時の演目として、また白井晃の演出版(2005年)に出演したことから『星の王子さま』に親しみを覚えていた森山。「自分が手がけたらどうなるか、挑戦したい作品のひとつだった」と企画の始まりを紹介し、「その世界を分解・再構築した上で、身体表現で表してみたい」と意気込んだ。“大切なものは目に見えない”に代表される小説の有名なフレーズも「登場しないことは確実」「そもそも劇中で言葉を用いる可能性が少ない」とクリエーションの初期段階で述べるほど、森山は身体表現を追求する構えを見せる。観客によっては哲学的で難解と感じられるテーマを、ノンバーバルでどのように伝えるのか──。そう尋ねると、森山は『星の王子さま』の1章で綴られるエピソードを持ち出した。子どもが描いた、象を丸呑みして体がデコボコに膨れた“ウワバミ(大蛇)”の絵を、大人は“帽子(シルクハット)”としか捉えられない。この場面について「子どもの方が発想力豊かで、大人になるほどセンサーが衰えることは現代にも通じる」と感じた森山は、「コロナ禍で視野が狭くなりがちな今だからこそ、同じ物事をいろんな視点から見つめて解釈することが必要」として“想像力”の大切さを訴えた。この力を鍛えるには「言葉より身体表現の方が、想像の余白やグレーゾーンを残しておける」と森山。そういった意味で「一般的にイメージされる『星の王子さま』をなぞることはせず、ビジュアルからして別物になるでしょう」と予告し、「原作とのギャップを楽しんでください」「大切なものだからこそ、お目にかけたい」と笑ってみせた。日比野克彦の美術・ひびのこづえによる衣裳が、森山のビジョンをどのように支えるか──。こちらもぜひ劇場で確かめて欲しい。公演は、11月上旬~中旬に神奈川・KAAT神奈川芸術劇場 ホールにて。その後、11月21日(土)に長野・まつもと市民芸術館、12月5日(土)・6日(日)に京都・京都芸術劇場 春秋座、12日(土)に兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールと巡演する。10月3日(土)の一般発売に先駆け、9月27日(日)より先着先行受付開始。取材・文:岡山朋代
2020年09月25日2017年に日本初演され、再演が待ち望まれていたミュージカル『ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー〜』が9月に幕を開ける。バレエダンサーになる夢を抱える主人公ビリーにレッスンを申し出る“ウィルキンソン先生”をWキャストで務める柚希礼音と安蘭けいに話を聞いた。【チケット情報はこちら】1984年のサッチャー政権下、労働者のストライキに揺れるイングランド北部の炭鉱町を舞台に、バレエに活路を見出した少年が夢に向かって突き進む姿を描いた本作。エルトン・ジョンの音楽が加わり、映画からミュージカルへ進化を遂げた本作は日本で初演されると約16万人を動員。菊田一夫演劇賞大賞、読売演劇大賞選考委員特別賞などを獲得した。日本初演に引き続いて同じ役を演じる柚希は「初演をなぞるだけではダメ」「より新鮮で血の通った人物をお見せしなければ」と背筋を伸ばす。再演版から参加する安蘭は、ニューヨークで本作を鑑賞するほどの作品ファン。日本初演も欠かさず観て「ウィルキンソン先生の人物像を詳しく知ったら演じてみたくなった」と語り、オーディションで役を勝ち取ったエピソードを明かした。宝塚歌劇で星組在籍時代にトップスターと二番手の関係だった二人。安蘭が退団してから10年ぶりに再会したという。柚希が当時を「瞳子さん(安蘭の愛称)との実力差で、何をやっても間違っている気がしていた」と振り返ると、安蘭は「ちえ(柚希の愛称)もトップを何年も務めて経験を積み、実力をつけて今の位置にいるんだから」とフォロー。本公演と新人公演でともに同じ役を演じた過去を紹介し、「当時は私がちえに教える立場だったけど、今は役に対してお互い対等に意見を言い合う“同志”だね」とほほ笑んだ。コロナ禍の今、本作を上演する意義はどこにあるか──。最後にそう尋ねると、柚希は「ビリーを取り巻く大人たちの思いやり、人と人を結ぶ“絆”の力を感じられる作品です」とまっすぐに答える。対する安蘭は、炭鉱町で不況にあえぐ劇中の登場人物とコロナ禍を嘆く現代人の姿が重なると分析。「その中でも夢を持つことがどれだけ尊く希望になるか、舞台を通じて感じ取ってもらえたら」と語った。オープニング公演は9月11日(金)~14日(月)、東京公演は16日(水)~10月17日(土)、ともに東京・TBS 赤坂ACTシアターにて。その後、10月30日(金)~11月14日(土)に大阪・梅田芸術劇場 メインホールと巡演する。チケット販売中。取材・文:岡山朋代【安蘭けい衣装】ワンピース¥39,000/グレースコンチネンタルピアス¥4,419/アビステパンプス¥16,000/ダイアナ(ダイアナ 銀座本店)
2020年09月18日白井晃の演出による、KAAT神奈川芸術劇場プロデュース「音楽劇『銀河鉄道の夜2020』」の幕が上がる。8月下旬、初日を約1ヵ月後に控えて稽古に臨むジョバンニ役の木村達成、カムパネルラ役の佐藤寛太(劇団EXILE)に話を聞いた。【チケット情報はこちら】KAAT10周年プログラムのキックオフとなる本作は、1995年に初演され、翌96年に再演された「イーハトーボの音楽劇『銀河鉄道の夜』」を新たに“再生”するもの。初演では宮沢賢治の小説「銀河鉄道の夜」を題材に、能祖將夫が上演台本、バイオリニストで作曲家・編曲家の中西俊博が音楽監督、シンガーソングライターのさねよしいさ子が作詞・作曲・出演を担った。今回の上演版には、演出を手がける白井をはじめ、初演のクリエイティブスタッフが再集結。キャストには木村と佐藤のほか、ザネリ・青年役の宮崎秋人、男(ケンジ)役の岡田義徳が名を連ね、初演に続いてアメユキ役をさねよしが演じる。稽古スタートから2週間が経ち、佐藤は「作品テーマの解釈はキャストに委ねられている気がする」と白井の演出スタンスを紹介。木村も「僕たちが受け取ったものを演技に出してほしい、という白井さんのメッセージを感じます」と続く。だとしたら、二人はこの作品をどのように捉えているのか──。ジョバンニとカムパネルラの旅路には、座礁したタイタニック号の被害者が銀河鉄道の乗客として居合わせるなど“死”の影がつきまとう。これに、佐藤は「生きていることや日常のありがたさを実感する」「日ごろあまり身近でない“死”に触れることで、宮沢賢治の死生観をキャッチしてもらえたら」と語った。カムパネルラの取った行動に「他人のために生きる自己犠牲について深く考えた」と話すのは木村。また劇中の“生きていたことを証明する、それが残された者の務め”というセリフを挙げながら、「周りの人が亡くなることは誰にでも起こり得ることで、その人たちを忘れないでいることが、ジョバンニに象徴された役割だと思います」と自負した。個人で捉えた作品のテーマを述べながらも、木村と佐藤は「感じ方は人それぞれ」と多様な価値観を持つ観客に向けた気配りも忘れない。「賢治がこの作品から何を受け取ってほしかったのか、僕らも役を全うしながら読み解いていきます」「劇中にたくさん散りばめられた胸を打つセリフから自由に感じてください」と観客に呼びかけ、取材を結んだ。公演は9月20日(日)~10月4日(日)に、神奈川・KAAT神奈川芸術劇場 ホールにて、まもなく開幕。取材・文:岡山朋代
2020年09月18日9月11日に開幕したミュージカル『ビリー・エリオット~リトルダンサー~』。オープニング期間を経て16日から本公演を控える中、プレスコールとキャストによる質疑応答が行われた。1984年のサッチャー政権下、労働者のストライキに揺れるイングランド北部の炭鉱町を舞台に、バレエに活路を見出した少年が夢に向かって突き進む姿を描いた本作。エルトン・ジョンの音楽が加わり、映画からミュージカルへ進化を遂げたこの作品は2017年に日本で初演されると約16万人を動員。菊田一夫演劇賞大賞、読売演劇大賞選考委員特別賞などを獲得した。待望の再演となる今回、タイトルロールのビリー役をクワトロキャストで務める川口調・利田太一・中村海琉・渡部出日寿の4人は、応募総数約1,500通から選ばれた逸材。コロナ禍で発令された緊急事態宣言の影響で2ヵ月ほど稽古が中断され、73公演が中止となったあとの“門出”に「やっと本番の舞台に立ってビリーを演じられることが本当に嬉しいです!」と全員が瞳を輝かせる。そんな彼らを背後から見守っていたお父さん役の益岡徹は、初演を経験していることに触れ「自慢の“息子”がまた増えました」「信頼できる仲間と11月まで宝物のような時間を過ごしたい」と笑顔。同じく初演からウィルキンソン先生を演じている柚希礼音も「コロナで明日も幕が無事に開くかわからない状況だからこそ、毎公演を大切にしたいと思う気持ちがより強くなった」と続く。Wキャストであるお父さん役の橋本さとし、ウィルキンソン先生の安蘭けいは再演版からの参加キャスト。ともに日本初演版に感化されオーディションに参加し、役を掴み取った経緯があることから、橋本は「何度号泣したか知れない作品に出演できて本当に嬉しい」、安蘭も「ビリーのように夢が叶った気分ですね」とカンパニーの一員になれた喜びを語った。プレスコールで報道陣に公開されたのは、川口・利田・中村・渡部がそれぞれビリー役を務める5シーン。オープニングを飾るナンバー「The Stars Look Down」では重厚感あるステージングが展開され、安蘭扮するウィルキンソン先生らによるナンバー「Shine」では、中村演じるビリーがアンサンブルのバレエガールズとともに羽根を用いた華やかなダンスを披露した。続く「Expressing Yourself」では、利田演じるビリーと佐野航太郎によるマイケルがカラフルな衣裳で歌い踊る。バレエスクールの受験を禁じられた怒りが爆発する「Angry Dance」では、川口演じるビリーが力強いタップを踏んで観客を魅了。炭鉱夫のストライキとバレエレッスンの様子が交差する「Solidarity」では、渡部演じるビリーが堂々とダンスを繰り広げた。上演時間は約180分(休憩含む2幕)。公演は10月17日(土)まで、東京・TBS 赤坂ACTシアターにて。その後、10月30日(金)~11月14日(土)に大阪・梅田芸術劇場 メインホールと巡演する。チケット販売中。取材・文:岡山朋代
2020年09月15日城田優が、ミュージカル『NINE』に主演する。演出を務める藤田俊太郎の構想を胸に、稽古へ臨む前の心境に耳を傾けた。【チケット情報はこちら】アーサー・コピットが脚本、モーリー・イェストンが作詞・作曲を手がけた本作は、フェデリコ・フェリーニの自伝的映画『8 1/2(はっかにぶんのいち)』を原作としたミュージカル。1982年の初演はトニー賞10部門にノミネートされ、作品賞、作詞・作曲賞、助演女優賞、衣装デザイン賞、演出賞の5部門で最優秀賞を獲得した。今回の上演版で城田が演じるのは、スランプに陥り迷走する映画監督グイド・コンティーニ。劇中では、妻・愛人・女優など彼を取り巻く女性たちとの“愛”の物語が繰り広げられる。色男の代名詞といえる“カサノヴァ”を挙げ、グイドの人物像を表した城田は、年始に作品の舞台となるイタリアを訪れた理由を「グイドは普段の僕と正反対のタイプだから、出演にあたって役のイメージを膨らませたかった」と話す。グイドのように「とにかく女性とベッドをともにすることしか考えず……というのは冗談半分本気半分ですが(笑)」と海を渡ったものの、城田いわく「結果は収穫なし」──。そう冗談交じりに笑い飛ばしながらも、「イタリア男性はおしゃれでダンディ」「自信に満ち溢れる彼らを目の当たりにして、グイドもそうだったのかもと感じた」と人間観察を通じた旅での発見を口にした。その考察をもとに、主人公をどう演じるのか──。そう問われた城田は「確固たる意志があるようでないグイドのように、固定観念を持ちすぎず稽古場で生まれる反応に身を委ねたい」とコメント。同時に、どこか憎めないプレイボーイを演じるには「大人のセクシーな魅力が必要」として、「劇場の帰り道に、観客の皆さんを“腹立つのにグイドに抱かれたい”とエロティックな気分にさせることができたら成功」と笑顔を見せる。最後に城田は、現時点で藤田が説明した『NINE』の構想を紹介。映画監督グイドに想を得た“映像”の活用、またプロデューサーから東京オリンピックが延期になって季節が一周し、“春”をイメージした演出の予定が発表された。「斬新なセットや演出のアイディアをお聞きして、今からワクワクしています!」と述べた城田。今秋どのような色気をまとってグイドを立ち上げるか、楽しみに待ちたい。公演は11月12日(木)~29日(日)に、東京・TBS赤坂ACTシアターにて。その後、12月5日(土)~13日(日)に大阪・梅田芸術劇場 メインホールと巡演する。11月20日(金)ぴあ貸切公演の先行抽選申込を9月14日(月)まで受付中!取材・文:岡山朋代ヘアメイク:Emiyスタイリスト:横田勝広(YKP)
2020年09月10日フォトグラファーの、三谷ユカリ(@mitsuyuka_lp)さんは、岡山城前に広がる美しい光景を撮影。写真をTwitterに公開したところ、反響が上がりました。日本の和を彩る4枚の写真がこちらです。夏の岡山が美しかった。 pic.twitter.com/fWDA0HOQOV — 三谷ユカリ (@mitsuyuka_lp) September 2, 2020 岡山城を背景に、たくさんの番傘がライトアップされています。これは2020年8月31日までのイベントで、光の花が咲き乱れる夢の花園をテーマにしているとのこと。色とりどりの番傘と城の写真は、多くの人の心を打ったようです。・めちゃくちゃきれい!これはすごいですね。・岡山県にこんな素敵な所があるとは。・言葉を失うほど美しい。岡山を誇りに思います。色彩豊かな番傘は、まるで小さな花火がたくさん上がっているようにも見えますね![文・構成/grape編集部]
2020年09月03日生駒里奈が主演する『かがみの孤城』が、8月28日に開幕。これに先立ち、公開ゲネプロと会見が行われた。【チケット情報はこちら】本屋大賞を獲得した辻村深月の小説を、成井豊の脚本・演出によって舞台化する本作。同級生の悪意に傷つき、家に閉じこもる中学1年生のこころ(生駒)はある日、自室の鏡を通じて見知らぬ城がそびえ立つ異世界へ引き込まれてしまう。そこで出会った6人の仲間と望みが何でも叶う“願いの鍵”を見つけようと奔走するうちに、彼らは自分たちが城に集められた理由を目の当たりにして──。共演者には溝口琢矢、野田裕貴(梅棒)、前田航基、原田樹里、河内美里らが名を連ねている。新型コロナウイルス感染症対策で、1ヵ月半の稽古期間をマスク姿で奮闘してきた一同。会見における成井の「ずっと互いの目元しか見えなかったけど、昨日の場当たりで初めて透明のマウスシールド姿になり、表情がわかるようになったら……演技が変わって抜群によくなったキャストが現れてね」という言葉に、生駒・溝口は大きく頷く。「特に一段とよくなった」と演出家からお墨付きを受けた生駒は、「いじめを機に不登校になってしまった中学生の人物造形と、演劇で求められる“大きな表現”をどうやって両立させようか迷いました」と稽古中の悩みを吐露。しかし「劇場入りしたらステージの大きさに後押しされ、引き出しが開いたような感覚です」と手ごたえを口にした。同じように、溝口も「劇場に入ったら、大きく楽しく伝えようという気持ちがどんどん膨れ上がってきました」と続く。原作者の辻村は「コロナで物理的な制限はあっても、心は誰にも縛られることなく自由」「どうか『かがみの孤城』の中で過ごした時間を、たくさんの人たちに持ち帰ってもらえたら」と観客に呼びかけ、会見を結んだ。公開ゲネプロは、孤城で過ごす中学生7人の姿を中心に、現実世界におけるこころや、彼女を取り囲む母親・教師・同級生らの葛藤が差し挟まれる形で展開。孤城の仲間が次第に心を通わせ、友情を育む様子がダンスシーンを交えて描かれた。全編を彩るFor Tracy Hydeの涼しげな音楽も、劇効果を最大限に高めている。上演時間は約120分(休憩なし)。公演は9月6日(日)まで、東京・サンシャイン劇場にて。その後、18日(金)~20日(日)に大阪、22日(火・祝)に愛知と巡演する。感染症対策を十分に講じて上演される劇場公演のほか、PIA LIVE STREAMでは収録映像を後日視聴できる「ディレイ配信」と、東京千秋楽公演の「生配信」も行われる。チケット販売中。取材・文:岡山朋代
2020年09月01日榊原郁恵、深田恭子、綾瀬はるか、石原さとみらを輩出し、今年で44回目の歴史を誇る『ホリプロタレントスカウトキャラバン』(以下:TSC)が9月に幕を開ける。実行委員長を務めるマネージメント第二事業部・川畑良太氏と、公演事業部・大屋佳枝氏に話を聞いた。新人発掘の場として、募集テーマを変えながら日本全国を行脚してきたTSC。今年は「未来のキング&クイーンを探せ!」をタイトルに、世界に羽ばたく次世代の“ミュージカルスター”を探すオーディションが開催される。根底にあるのは「新型コロナウイルス感染症の影響で打撃を受けた演劇界の“夜明け”を象徴する原石を見つけたい」という想いだ。コンテストを見守るスペシャルアンバサダーには、今秋ミュージカル『生きる』で主演を務める市村正親が就任。アイコンとしての起用に「彼のように長く第一線で活躍し、舞台でも映像でも通用するマルチな才能を目指して欲しい」という狙いが込められる一方で、両者ともに「その才能をホリプロ全体で“育てる”」といった気概も覗かせる。そのため、川畑氏は「いま歌やダンスの能力が未熟でも大丈夫」「応募者の意欲を尊重したい」とコメント。タレントと作品のマッチングを意識してきたプロデューサーの大屋氏も「育ったグランプリや受賞者が活躍する“場”を提供できる土壌があるところもホリプロの魅力」と続き、フォロー体制の充実をアピールした。応募資格は、芸能プロダクションに所属していない11~20歳の男女。女性タレント発掘のイメージが強いTSCだが、川畑氏は「チャンスに性別は関係ない」と幅広く門戸を開く構えだ。Webエントリー制の一次選考はプロフィールと写真のほかに、歌唱動画の提出が求められる。大屋氏は「好きな曲を大きな声で歌ってもらい、光る個性を見せてください」と応募を呼びかけた。通常のTSCと異なり、二次・三次選考ではオンライン面談を中心とした審査を行う。リモート環境下でどれだけ人を惹きつけられるか確認するために、両者いわく「配信サービスを使って観客とコミュニケーションを図る機会なども検討中」──。視聴者を巻き込んで展開する新たなTSCの構想に「オーディションの過程で応募者が成長し、スターが生まれる瞬間を見届けてください」と語り、取材を結んだ。一次選考のWebエントリー期間は、9月1日(火)~30日(水)。通過者にのみ、10月16日までに結果が通知される。その後、二次・三次選考は10月下旬~11月上旬、講師によるレッスンを通じた審査を行う四次選考は11月下旬、グランプリを決定する決戦大会は12月中旬に行われる。取材・文:岡山朋代
2020年08月28日檀れいが、明治座『恋、燃ゆる。~秋元松代作「おさんの恋」より~』に主演する。原作となるTVドラマを鑑賞し、作品や役柄のイメージを膨らませる稽古前の心境に耳を傾けた。【チケット情報はこちら】石丸さち子が上演台本・演出を手がける本作は、近松門左衛門の浄瑠璃『大経師昔暦』をベースに、秋元松代が執筆したTVドラマシナリオ『おさんの恋』を原作としている。商家・彩玉堂に嫁いだ美しく気立てのよい“おさん”は、奉公人である茂兵衛から寄せられた一途な想いに触れて──。共演者には中村橋之助、東啓介、多田愛佳、石倉三郎、西村まさ彦、高畑淳子らが名を連ねている。男性中心社会の江戸時代を舞台に、抑圧される存在であった女性が自らの“意志”に目覚め、行動を起こしていく強さ・美しさを描きたい──。そうプロデューサーから説明を受けた檀は「東洋、西洋を問わず時代物に携わるたびに、女性は長らく苦しい時間を過ごしてきたのだな、と実感してきました」と語る。今回演じるおさんの人物像を「自分の気持ちを抑えて耐えて、ひたすら主人に仕える女性」「顔で笑っていても、心の中では冷たい涙を流している」と捉えた檀。“個人”として自由に生きられない切実さに思いを馳せつつ、「そんな彼女が、自分の想いをストレートに伝えてくる男性に出会ってどう変化するか……その葛藤や喜びを、おさんの人生に魂を吹き込みながら活き活きと表現したい」と意気込んでみせた。相手役・茂兵衛を演じる橋之助との共演経験はない。しかし、檀は過去に橋之助が出演した歌舞伎を鑑賞しており、当時の印象を「瞳がエネルギッシュに輝いており、役を突き詰めて演じることが本当に好きなんだろうな、というのが伝わってきました」と述べる。さらに「自分の心にまっすぐな茂兵衛を彼が演じたら、どんな熱量でおさんの心を揺さぶるんでしょうね?」と微笑み、「一緒にお芝居するのが今からすごく楽しみです」と期待を寄せた。座長としての気がかりは、流行中の新型コロナウイルス感染症だ。檀は不安な気持ちを吐露する中にも「苦しい時に観た舞台に心が救われるように、人間にとって心の潤いや活力になるのはエンターテインメント」の信念を打ち出す。そして「上演するからには万全な態勢で、皆さんに上質な作品を届けたい」「そのために、自分に与えられた役割を全うします」と覚悟を覗かせ、取材を結んだ。公演は10月19日(月)~11月15日(日)に、東京・明治座にて。また本作は、新型コロナウイルス感染症の予防対策を講じて上演される。8月30日(日)の一般発売に先駆け、8月28日(金)より先行先着開始。取材・文:岡山朋代
2020年08月27日木津つばさが、成井豊の脚本・演出で舞台化される『かがみの孤城』に出演する。稽古前の6月下旬、作品の魅力や役どころを尋ねていると、飛び出してきたのはとある人物との意外な接点だった。【チケット情報はこちら】辻村深月が2017年に刊行し、翌年の本屋大賞を獲得した本作。同級生の悪意に傷つき、家に閉じこもる中学1年生の主人公・こころ(生駒里奈)はある日、自室の鏡を通じて見知らぬ城がそびえ立つ異世界へ引き込まれてしまう。そこで出会った6人の仲間と望みが何でも叶う“願いの鍵”を見つけようと奔走するうちに、彼らは自分たちが城に集められた理由を目の当たりにして──。台本を読み、いじめを起点とした作品の感想を「SNSでの誹謗中傷に注目が集まる今だからこそ“刺さる”物語だと思いました」と語る木津。ネタバレにも踏み込みつつ「学校へ行けない悩みは時代を超えて一緒だし、“あなただけじゃない”と背中を押してもらえるはず」「最後には “学校へ行ってきます”って気持ちになれるのでは」と作品の魅力を述べる。木津は、こころと同じく城に集められた不登校の中学2年生・マサムネ役を演じる。自身は「普通に学校へ通う、等身大の中学生だった」と振り返るだけあって、大のゲーム好きであること以外、マサムネとの共通点はない。しかし「自分と遠いからこそ想像力を働かせ、感じるままに演じてみたい」「役と一心同体になる普段のアプローチとは異なる、新たな挑戦です」と意気込んでみせた。集められた7人にとって、孤城は次第に大切な“居場所”となっていく。ではかつて中学生だった木津の、心の拠りどころになる“孤城”は何だったのか。答えは、間髪入れることなく「ムロツヨシさん」──。DVDで観た映画『サマータイムマシン・ブルース』におけるムロのたたずまいに惹かれ、彼が当時出ていたラジオへメール投稿するように。ある日、怪我でサッカー選手になる夢を諦め「人生どうでもいい」と送った内容が番組内で紹介されると、ムロから「役者なら誰にでもなれる」という言葉が。それで現在の道に進んだ──という原体験を明かした。公演は、8月28日(金)~9月6日(日)に東京・サンシャイン劇場にて。その後、18日(金)~20日(日)に大阪・サンケイホールブリーゼ、22日(火・祝)に愛知・刈谷市総合文化センター 大ホールと巡演する。また本作は、新型コロナウイルス感染症の予防対策を講じて上演される。取材・文:岡山朋代
2020年08月07日浜中文一が主演する舞台『スケリグ』が、7月31日に開幕。これに先駆け、公開ゲネプロと取材会が行われた。イギリスの作家デイヴィッド・アーモンドが執筆した同タイトルの小説を、アーモンド自身が戯曲化した本作。再演となる今回もウォーリー木下が演出を手がけ、浜中がタイトルロールを続投する。このほか、出演者には新キャストとなる大東立樹(ジャニーズJr.)と清水らら、初演キャストの奥村佳恵、工藤広夢、金子昇、瀬戸カトリーヌが名を連ねた。物語は、古い家に引っ越してきた少年マイケル(大東)と、荒れ果てたガレージの片隅でうなだれる埃にまみれたスケリグ(浜中)の出会いを機に動き出す。大きく捻じ曲がったスケリグの背中に“何か”を感じ取ったマイケルは、隣家の少女ミナ(清水)と一緒に彼を助けようと冒険へ乗り出す。不思議な言動を繰り返す異形のスケリグを、浜中はミステリアスに造形。マイケルやミナとの幻想的な邂逅によって、次第に生命力を取り戻すギャップが特に印象深い。大東は純粋なマイケルをひたむきに、清水は風変わりながら聡明なミナをはつらつと立ち上げた。プロジェクションマッピングや影絵を駆使したウォーリーの演出、舞台上手のブースでさまざまな音を奏でる吉田能の生演奏にも注目したい。ゲネプロ後には、江口剛史プロデューサーが「この作品における“奇跡”は、キャスト・スタッフ・観客全員が新型コロナウイルスに感染することなく千秋楽を迎えること」と挨拶。ガイドラインに沿った対策を徹底し、今後もカンパニーで定期的に抗体・PCR検査を受けることが発表された。キャストが飛沫防止のマウスシールド姿で舞台に上がるのも、感染症対策のひとつ。取材会で金子は「曇りで表情が隠れないように拭く手間も、安全性を確保できるなら惜しくない」と前向きに捉え、瀬戸は「耳が痛くならないよう、スタッフがゴム部分をストッキング素材に変えてくれた」と感謝を述べた。袖で着替えながら赤ちゃんの泣き声を出す浜中を筆頭に、キャストが多彩な役どころに扮して幻想的な世界観をつくり上げる本作。ウォーリーはそのアナログともいえる演出意図を「原作の持つホームメイドな温かさをいろんな手法で体現したかった」と説明した。浜中は「お客さんがストレスを感じることなく安心して楽しんでいただけるよう最善を尽くします」と座長らしく宣言。最後に、スケリグとは何者か──と問われると「ご覧になった方同士で話し合うきっかけにしてもらえたら」と含みを持たせ、取材会を結んだ。上演時間は約115分(休憩なし)。公演は8月16日(日)まで、東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて。その後、22日(土)・23日(日)に大阪・松下IMPホール、25日(火)に愛知・刈谷市総合文化センター 大ホール、9月11日(金)に埼玉・所沢市民文化センター ミューズ マーキーホールと巡演する。チケット販売中。取材・文:岡山朋代
2020年08月03日生駒里奈が、成井豊の脚本・演出で舞台化される『かがみの孤城』に主演する。原作を読み、主人公・安西こころを「自分にぴったりの役」と述べ、作品や役柄のイメージを膨らませる稽古前の心境に耳を傾けた。【チケット情報はこちら】辻村深月が2017年に刊行し、翌年の本屋大賞を獲得した本作。同級生の悪意に傷つき、家に閉じこもる中学1年生のこころはある日、自室の鏡を通じて見知らぬ城がそびえ立つ異世界へ引き込まれてしまう。そこで出会った6人の仲間と望みが何でも叶う“願いの鍵”を見つけようと奔走するうちに、彼らは自分たちが城に集められた理由を目の当たりにして──。共演者には溝口琢矢、野田裕貴(梅棒)、木津つばさ、前田航基、原田樹里、河内美里らが名を連ねている。小学校で友人に無視され、独りで過ごしていた経験から「不登校になってしまう、こころの気持ちがすごくわかるんです」と役柄に自身を重ねる生駒。以来、内省的な性格になったというが「私がとても活発な女の子で、何の屈託もなく女優の道を進んでいたら、この役は難しいかもしれません」「でもいじめの経験がある自分だからこそ説得力が出るだろうし、同じ悩みを抱えている少年少女に向けて発信したい」と前を向く。生駒は、小説の舞台化に際して「生身の人間が演じることで、作品にどれだけプラスアルファの力を与えられるかが大切」と受け止める。原作を活かした緻密な演出に定評のある成井については、初タッグながら「この“プラスアルファ”を成功に導いてきた方」と印象を述べ、「作品をどのように構築していくか、近くで拝見するのが楽しみです」と笑顔を覗かせた。集められた7人にとって孤城が次第に“居場所”となったように、生駒にとって現在の“孤城”は何か。最後にそう尋ねると、まっすぐ「作品に取り組んでいる時間です」と答える。「舞台や映像では役をまっとうして物語の中で生きる瞬間が、私の居場所です」──。公演は、8月28日(金)~9月6日(日)に東京・サンシャイン劇場にて。その後、18日(金)~20日(日)に大阪・サンケイホールブリーゼ、22日(火・祝)に愛知・刈谷市総合文化センター 大ホールと巡演する。また本作は、新型コロナウイルス感染症の予防対策を講じて上演される。取材・文:岡山朋代
2020年07月21日『中村勘九郎 中村七之助 歌舞伎生配信特別公演』が、ライブ動画配信サービスのPIA LIVE STREAMにて配信される。歌舞伎界にとって初の取り組みとなる、実際の劇場を用いた無観客生配信に挑む勘九郎・七之助の兄弟に話を聞いた。【チケット情報はこちら】9月に全国17ヵ所で開催予定だった『中村勘九郎 中村七之助 錦秋特別公演2020』の中止を受けて企画された本公演。東京・浅草公会堂から世界に向けてリアルタイムで歌舞伎が届けられる試みは、勘九郎いわく「制約があって大劇場に足を運びづらいお客様の声を受け、中村屋自ら全国各地へ出向く」という“錦秋”15年来の構想と重なる。出演者には勘九郎と七之助のほか、勘九郎の長男・中村勘太郎、次男・中村長三郎、そして中村鶴松らが名を連ねた。演目には、舞踊「お祭り」を再構成した新作の舞踊「猿若揃江戸賑(さるわかそろうえどのにぎわい)厄祓浅草祭(やくはらいあさくさまつり)」がラインアップされた。見せ場で大向こうから「待ってましたっ!」と掛け声がかかり、役者が「待っていたとはありがてぇ!」と応じる活気に満ちたやり取りが特徴だが、オンライン視聴している観客とどうやって双方向のコミュニケーションを図るのか──。七之助は「合図にあわせて配信のチャット機能に、テキストで“待ってました!”と書き込んでもらえたら」とコメント。なおチャット機能に寄せられたメッセージは、舞踊後に行われる勘九郎・七之助による芸談(トーク)に即時反映される。「錦秋で設けている質問コーナーを配信でも」と企むのは勘九郎。「相互的なやり取りでライブ感を味わっていただけたら」と続く。カメラは手持ち・固定合わせて4台が稼働し、「シネマ歌舞伎」のようなズームアップや多様なアングルにも対応する予定だ。カメラクルーは稽古に密着し、スイッチのタイミングを検討して本番に臨むという。七之助は「劇場で捕らえることが難しい役者の表情や細やかな所作、小道具に着目してご覧になるのがポイントでしょうか」と映像における歌舞伎の楽しみ方を紹介した。「僕たちの仕事は生活に必要じゃない」「ノアの方舟に絶対乗れない職業」──。勘九郎はコロナ禍における役者の“業”を痛感する一方で、「医療従事者の皆さんをはじめ、方舟の乗客を笑顔にして見送るのが僕らの役割」と自負する。七之助も「兄と甥、4人揃って初めて舞い踊る姿をリラックスして楽しんでもらえたら」と続き、インタビューを結んだ。配信は7月18日(土)13時、19日(日)11時の2回。チケットはそれぞれ当日22時まで販売され、24時まで見逃し配信が視聴できる。ぴあでは16日(木)23:59まで、海外在住者に向けた英語の販売ページも設けられる。取材・文:岡山朋代カメラマン:源賀津己
2020年07月10日新型コロナウイルス感染症(以下、コロナウイルス)の流行により、2020年4月~5月にかけて全国で緊急事態宣言が発令されました。同年6月現在、宣言は解除され、さまざまな施設や店では『三密(密閉・密集・密接)』を避けるよう配慮した上で、営業が再開されています。岡山県にあるコンサートホール『岡山シンフォニーホール』も、その1つです。同県のプロオーケストラ『岡フィルハーモニック管弦楽団』の活動拠点として有名なこちらのホールでは、コロナウイルスの感染予防対策として、一風変わったアイディアを取り入れたといいます。『岡山シンフォニーホール』の大ホールに用意された、こちらの座席をご覧ください。コロナ対策としての取り組みをご紹介します。【大ホールの座席】ご来場のお客様には、お席を一つ空けて座っていただくように致しました。会場内は作曲家の方の指定席がございますので、みなさまと一緒に鑑賞いただけます。 pic.twitter.com/9zTuvy7uLF — 岡山シンフォニーホール&岡フィル (@hall_okaphil) June 13, 2020 来場者同士の距離を保つため、『岡山シンフォニーホール』が用意したのは、著名な作曲家などのイラストが描かれた紙!『岡山シンフォニーホール』は、Twitterで来場者に向けて、次のように声をかけています。会場内は作曲家の方の指定席がございますので、みなさまと一緒に鑑賞いただけます。ユーモアのある感染予防対策に対し、ネット上では「面白い」「こういう遊び心は好き!」「両隣に作曲家がいるなんてぜい沢」といった声が相次ぎました。来場者は、音楽を聴くだけでなく、会場内に用意された作曲家の指定席を見ていっそうワクワクできるのではないでしょうか![文・構成/grape編集部]
2020年06月16日2020年4月現在、新型コロナウイルス感染症が流行する中、ゴールデンウイーク(大型連休)の人の移動によってさらに感染拡大するのではないかという懸念がされています。そんな中、岡山県の伊原木隆太知事は同月24日に山陽自動車道下り線の瀬戸パーキングエリアにて、来県者の検温を行うことを発表。ネット上では称賛の声が上がったほか、「うちの県でもやってほしい」といった声も寄せられていました。「岡山に来たことを後悔すればいい」岡山県知事の発言に「最高」「愛がある」検温中止の理由とはしかし、同月28日の会見で検温を中止することを明かし、理由をこのように説明しています。中止の理由についてでございますが、この報告を担当セクションに検温現場での職員に危害を加えるといった内容の電話が多数入っておりまして、この状況では従事する職員の安全を担保できないと判断したためであります。岡山県政広報チャンネルーより引用また、FNNプライムオンラインによると、脅迫の電話はおよそ50件にのぼるといいます。その後、県外に住むと見られる人などから県職員に危害を加えることを予告する内容や「岡山県民、岡山県知事えらそうにするにもほどがある」といった内容の電話などが約50件寄せられたということです。FNNプライムオンラインーより引用伊原木知事は、「大きなトラブルになってしまったり、ケガ人やもっとひどいことが起きたら命を守ろう、健康を守ろうというためにやっていることが逆になってしまうのでやむなく中止しました」とコメント。ゴールデンウィーク期間中、検温は中止し、インターチェンジの閉鎖を求める考えを示しています。ネット上には、たくさんの怒りの声が上がっていました。・脅迫電話ってそれはもう犯罪じゃないの?知事の言葉は県民を守るためだと思う。・ひどすぎる。なぜそこまで…。とてもいい方法だと思ったのに。・脅迫電話なんて怖すぎる。岡山県には頑張ってもらいたい。誰かを脅迫をするのは到底許されることではありません。しかし、もし本当に職員の生命を脅かされるような事態が起きてしまってからでは遅いでしょう。検温や、インターチェンジの閉鎖などをしなくても、自主的に他県への移動を避け、感染拡大とならないような行動を一人ひとりが心がけてもらいたいものです。[文・構成/grape編集部]
2020年04月28日小宮有紗・加藤玲奈(AKB48)がW主演を務める『体育教師たちの憂鬱』。顔合わせから1週間が経った稽古場を訪ねると、作・演出を手がける金沢知樹とキャスト一同が緻密な立ち稽古を重ねていた。【チケット情報はこちら】本作は、金沢の主宰する劇団K助が2018年に初演した“密室サスペンスコメディ”。スポーツ強豪校として全国に知られる女子高で見つかった一冊の交換日記には、生徒と教師の秘められた恋のやり取りが記されていた。体育部長から禁断の仲を問い質されると、6組の部活キャプテンと顧問らの隠された過去や事件が次々と明らかになって──。キャストは他に赤澤遼太郎、佐藤江梨子、羽場裕一らが名を連ねている。取材日は冒頭から各シーンの精度を上げる作業が繰り返された。金沢がよく口にしていたのは「言葉を“立体”にして」──。含みを持たせ強調すべきセリフを役者が漫然と発した場合には流れを遮って呼びかけ、演出意図を説明する。バラエティ番組の構成作家らしく、芸人のキャストには「会話になっておらず、ピンネタ見ているみたい」とバッサリ。しかしいずれも次から改善され、ぐっと魅力あるシーンに変化するのだ。小宮に求められたのは、台本上セリフに起こされていない“オフ芝居”。剣道部顧問(みなみかわ)に遠慮して本音を言い出せない場面で、金沢から「必然性が足りない」と言われると、すぐ顧問の視界に入らないよう立ち位置を変更し、表情をつくって乗り越える。ゴシップ好きの卓球部キャプテンを演じる加藤には、日常的な動作が「ポージングをキメてるように見えちゃう」という指摘が。一考したあと、やり直しの際には等身大の高校生らしいナチュラルな演技で応戦してみせた。赤澤が扮する卓球部顧問は、この女子高に来たばかり。キャラクターの濃い周囲の教師に圧倒される日和見主義な一面を、泳ぐ視線や小さな声色で表した。佐藤の「入室時の挨拶が“おはようございます”一辺倒だと芸能界みたい」という提案に対しては、カンパニー全員でアイディアを出し合うひと幕も。夢の遊眠社出身で舞台・映像ともに数多くの経験を持つ羽場は、芝居の引き出しが非常に豊富で「観ていて楽しい」「何パターンか拝見したい」と金沢から頼りにされるほど。交換日記の持ち主に激高する一方でスポーツ名門校の醜聞にうなだれる体育部長役を、緩急自在の迫力ある演技で立ち上げた。公演は一部公演中止、4月18日(土)〜19日(日)は東京・シアタートラムにて上演予定。最新情報は公式HPをご確認ください。取材・文:岡山朋代
2020年04月03日片桐はいりが、岡田利規の作・演出によるKAAT神奈川芸術劇場プロデュース公演「未練の幽霊と怪物 ―『挫波』『敦賀』―」に出演する。3月上旬、岡田の企画説明をもとに作品のイメージを膨らませる心境を尋ねた。【チケット情報はこちら】能の上演形式に倣い、間狂言を挟んだ2曲の現代能で構成される本作。建築家ザハ・ハディドをシテ(主人公)にした『挫波』と、廃炉の道をたどる高速増殖炉もんじゅをめぐる『敦賀』の2作品が、霊的な存在が思いを語る“夢幻能”の構造を用いて繰り広げられる。新国立競技場の設計者に選ばれたもののデザイン案が撤回され、失意のうちに没したハディド、もんじゅに夢のエネルギー計画を投影した人々が抱える“未練”とは──。岡田からのオファーを「ザハ役かと思っちゃった」と振り返り、周囲の爆笑をさらった片桐。2014年に現代能楽集Ⅶ『花子について』、佐渡薪能『サイコ』と能にまつわる作品への出演が続き、当時の経験やノウハウを求められているのでは……と推測をぶつけてみたところ、「話題にすら挙がらなかった」と笑う。片桐が主に託されているのは、間狂言における“間(アイ)”。通常は狂言師が担い、物語の設定や背景などを解説する役どころで、岡田はドイツの公立劇場ミュンヘン・カンマーシュピーレのレパートリーとして能をモチーフに創作した『NO THEATER』(2017年)でも間狂言を差し込んだ。その“進化版”となる今回、片桐は自身に求められる役割を「狂言の笑いの部分を担当するんじゃないでしょうか」と岡田の構想から類推する。同時に「題材のインパクトを和らげて受け入れやすくするためにお声がけしてくださったわけではない気がする」とも。上演に際して、岡田は「社会の犠牲者が果たせなかった思いを直視せず忘れてしまうことに抗うために、能の構造を借りる」とメッセージを寄せている。開幕は6・7月。東京オリンピック・パラリンピックを前に新国立競技場の問題を再び俎上へ載せるわけだが、片桐は「岡田さんは政治的なメッセージを訴えるために作品をつくろうとしているわけではないのでは」と読み解く。大切なのは、こうしたテーマを題材にどれだけ興味深い作品をつくれるか。キャストに並ぶ森山未來、栗原類、石橋静河、太田信吾や謡手として参加する七尾旅人らの顔ぶれに、片桐は「実現できそうな人たちが揃いましたよね」と信頼を寄せる。「きっといろんな境地へ連れて行ってもらえる、間口の大きな作品になるんじゃないかな」と予想。最後に「通りがかりの人まで驚かせたいですね」と薄く笑った。公演は、6月3日(水)~24日(水)に神奈川・KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオにて。その後、愛知・新潟・兵庫と巡演する。3/23(月)11:00までプレイガイド最速先行受付中。取材・文:岡山朋代
2020年03月18日南沢奈央が、演出・白井晃のもとで再びKAAT神奈川芸術劇場プロデュース公演に臨む。挑戦するのは、アイルランドの劇作家エンダ・ウォルシュが2016年に発表した『アーリントン』。副題に“ラブ・ストーリー”と冠された日本初演となる戯曲を一読し、作品のイメージを膨らませる稽古前の心境に耳を傾けた。【チケット情報はこちら】高層ビルの中にある待合室を舞台に、自分の“番号”が呼ばれるのを待つ若い女アイーラと、隣の部屋でモニター越しに彼女を見つめる若い男を軸とした物語が描かれる本作。壁を隔てた2人の間に何が芽生え、アイーラの番号が来た時に男はどんな決断を下すのか──。共演者には平埜生成、入手杏奈が名を連ねている。2019年5・6月に主演した白井の演出作『恐るべき子供たち』を通じて、彼と「もっと一緒に仕事をしてみたい!」と直感した南沢。豊富なアイディアや戯曲解釈の多様性を体感するだけでなく、役や作品のバックボーンをわかりやすい形で共有し、キャストの表現力に委ねる白井の演出手法に「新しい一面を引き出していただけた」と信頼を寄せる。1年を待たずに迎える再タッグは、白井からのオファーで実現した。南沢いわく「戯曲を読んだ白井さんが、今回演じるアイーラに私が重なったとおっしゃっていて」──。感情を内に秘める南沢の性格が、さまざまな過去や思いを抱えながら少しずつ自分について語るアイーラの役どころに「近いかもしれません」と分析する。南沢は、劇中の監視体制を「投稿を楽しむ一方で自分も誰かに見られている」とSNSが隆盛する現代のインターネット社会に置き換える。同時に「自分の目で観る、耳で聴く、肌で感じる機会がどんどん失われている気がして」とバーチャルへ移行しつつある世界についてコメント。しかし『アーリントン』では、アイーラと男の間にリアルな心の交流が芽生える。「誰かにそばにいて欲しいと願う彼女が、根本的な人の“あたたかさ”に触れる姿を見届けてください」と呼びかけた。その様子を、説得力ある形で観客へ提示するには──。南沢は「相手役の顔が見えず、声だけ聴いて反応する芝居は初めて。きっと五感をフル活用しないといけませんね」と青写真を描く。「最初は居心地が悪いと思いますが、そのやり取りで揺れ動くアイーラがおもしろいはず。新たなチャレンジです」と笑顔を覗かせた。公演は、4月11日(土)~5月3日(日・祝)に神奈川・KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオにて。チケット販売中。取材・文:岡山朋代
2020年03月10日芸能生活40周年を迎えるタレントのコロッケが、節目を記念した「ものまねエンターテイメント コロッケコンサート『勝手にやってすみません!~40th Anniversary』」を行う。還暦となった翌日から幕を開けるステージの詳細を掘り下げようと、本人のもとへ向かった。【チケット情報はこちら】1980年に日本テレビ系『お笑いスター誕生』でデビューしたコロッケ。300種以上のものまねレパートリーを抱え、バラエティ番組で活躍する一方、東京・明治座、愛知・御園座、大阪・新歌舞伎座、福岡・博多座などの大劇場で座長公演も務めている。本コンサートの構成を尋ねると、ちあきなおみ・美空ひばり・岩崎宏美・森進一・五木ひろし……といった“定番芸メドレー”のほか、「今回いちばん力を入れたい」と準備を進める“40周年スペシャルメドレー”の構想を明かしてくれた。25周年コンサートにおいて30人ほどのメドレーで出発したこの企画は、30周年で100人に膨れ上がり、35周年では年代別に展開。脚光を浴びる“時の人”のものまねを取り入れるスタイルが好評を博した。その心は、コロッケいわく「ものまねを古い芸にしたくない」──。「常に新境地を開拓して、お客さんに喜んでもらいたいんです」と語る。というのも、最近始めたYouTubeチャンネルの視聴者に「親世代がコロッケファン」の若者が現れ始めたから。彼らに刺さるネタとして、大人気マンガ『鬼滅の刃』の主人公・竈門炭治郎を「キンプリ(King & Prince)の平野紫耀くんでやってみようと思いついて」と言いながら目の前で披露する。他にも米津玄師・Official髭男dismをはじめとする最新のJ-POPアーティスト、東方神起・BIGBANG・BTSといった韓流アイドルまで網羅する幅広さを覗かせた。「ヒット曲をレパートリー内の誰に歌わせたら楽しんでもらえるか」といった着眼点も持ち合わせる。その源泉は「ロボットの五木ひろしさん」など、コロッケが「30%似ていて70%は“別の生き物”」と割り切るデフォルメ芸。本人にどれだけ似せるかより、その特徴を面白おかしく捉え直す“パロディ”は本コンサートでも発揮される。LiSAが歌ったアニメ版『鬼滅の刃』の主題歌「紅蓮華」に対しては「玉置浩二さんか徳永英明さんでやったら面白そう」とニヤリ。目下構想中で変更の可能性もあるが、定番芸と最新エンタメから想を得たネタが一堂に会する、老若男女にとって親しみやすいショーとなりそうだ。コンサートは3月14日(土)の神奈川・横須賀芸術劇場、21日(土)の東京・中野サンプラザ ホールを筆頭に、2021年2月まで全国計25会場を巡演する。チケット販売中。取材・文:岡山朋代
2020年02月18日ダブルヘッダー特別公演『おおきく振りかぶって』『おおきく振りかぶって 秋の大会編』が上演中。今回は、2月15日に初日を迎えた新作『秋の大会編』におけるゲネプロの様子をレポートする。【チケット情報はこちら】ひぐちアサの野球マンガ『おおきく振りかぶって』を、成井豊の脚本・演出によって舞台化する本シリーズ。キャストには、主人公・西浦高校ピッチャーの三橋廉役を演じる西銘駿をはじめ、三橋とバッテリーを組むキャッチャー・阿部隆也役の大橋典之、本作のメイン対戦校である武蔵野第一高校ピッチャー・榛名元希役の神永圭佑、同校キャッチャー・秋丸恭平役の佐伯亮らが名を連ねた。ゲネプロは、前作『夏の大会編』で美丞大狭山高校に負け、5回戦敗退となった西浦高校野球部の再出発シーンから始まる。メンバー全員でチームの目標を定めるべく気持ちをひとつにしようとした瞬間、TVアニメ版『夏の大会編』の冒頭を飾った主題歌・Galileo Galilei『夏空』のイントロが流れ、オープニングのダンスへ突入。卑屈で気弱なキャラクターの三橋に扮する西銘も、ここは笑顔で伸びやかな動きを見せていた。本作は、西浦のメンバーが観戦する武蔵野第一高校vs ARC学園高校(夏大会準決勝)、そして西浦高校vs武蔵野第一高校(秋大会2回戦)の2試合が展開される。プロを目指す実力者であるがゆえに“ワンマン”ぶりが目立つ剛腕サウスポー・榛名を、神永は傍若無人ながらもチャーミングに造形。勝利や成長への貪欲さに欠ける秋丸が正捕手としてのプライド、さらに榛名とのバッテリーに目覚めていくさまを、佐伯はくっきり鮮やかに表現した。もちろん、主役校・西浦高校における三橋・阿部バッテリーの活躍も健在。開幕前の囲み取材で、大橋が「三橋を引っ張る存在だった阿部が彼を認め、手を組む必要性を感じたのが前作まで」「今回は三橋と手を取り合った上でどんな試合運びや関係性に現れるか、ご覧ください」と述べていた通り、ボールカウントごとの心理戦でトライ&エラーを繰り返し、信頼関係を育んでいくふたりの絆にも注目だ。ステージ上に再現された球場を駆け回るキャストらの奮闘によって、新作もテンポよく試合が展開。一方で、緩急自在のストップモーションが印象的な場面も。どこで繰り広げられているか、ぜひ劇場で確かめて欲しい。上演時間は約120分(休憩なし)。公演は2月24日(月・祝)まで、東京・サンシャイン劇場にて。チケットぴあでは現在、当日引換券を販売中。取材・文:岡山朋代
2020年02月17日ダブルヘッダー特別公演『おおきく振りかぶって』『おおきく振りかぶって 秋の大会編』が、2月14日に開幕。これに先立ち、再演版となる『おおきく振りかぶって』の公開ゲネプロと囲み取材が行われた。【チケット情報はこちら】ひぐちアサの野球マンガ『おおきく振りかぶって』を、成井豊が舞台化する本シリーズ。囲み取材では、主人公・西浦高校ピッチャーの三橋廉役を演じる西銘駿が「笑いの絶えない現場だった」と楽しい稽古を振り返る。一方で、脚本・演出を手がけた成井は2作品で4試合というゲーム数の多さを強調しつつ、「打席やボールカウントの行方を、みんなで忘れる瞬間があった」と裏話を披露。登壇したキャストから口々に「すみません!」と謝罪の声が飛ぶと、会見場は笑いに包まれた。三橋とバッテリーを組むキャッチャー・阿部隆也役の大橋典之は、再演版への出演でシリーズ全てに登板。これを踏まえて、三橋と阿部の信頼関係を「足し算が掛け算に変わって、相乗効果が生まれてきた」と表現する。『秋の大会編』でメイン対戦校となる、武蔵野第一高校ピッチャー・榛名元希役の神永圭佑はシリーズ初参加。野球経験はあるものの「左投げは初めて」らしく、投球ポーズの会得に苦労したエピソードを語った。榛名の相棒となる同校キャッチャー・秋丸恭平役の佐伯亮は「オープニングとエンディングのダンスに注目してください」と呼びかける。ダンスシーンに用いられる楽曲は、初演に同じくBase Ball Bearの「ドラマチック」。再演版には新曲「いまは僕の目を見て」も挿入されることから、Base Ball Bearのメンバーも応援に駆けつけた。小出祐介は「アニメ版(2007年)で使ってもらうため、『ドラマチック』は1か月くらいかけてつくった大切な楽曲」と思い入れを語り、関根史織・堀之内大介は「新曲も印象的なシーンで使っていただけて光栄です」と笑顔を覗かせる。公開ゲネプロでは、球場に見立てた八百屋舞台をところ狭しと走り回るキャストによって白熱した試合がスピーディに展開。三橋にとって因縁の三星学園と繰り広げる初試合、前年度に甲子園へ出場した強豪・桐青高校との初陣を通じて、西浦高校野球部としてチームの結束が高まっていく様子が描かれた。上演時間は約120分(休憩なし)。公演は2月24日(月・祝)まで、東京・サンシャイン劇場にて。チケットぴあでは現在、当日引換券を販売中。取材・文:岡山朋代
2020年02月17日セルゲイ・ポルーニン初の日本単独公演「Sergei Polunin セルゲイ・ポルーニン “SACRE”『春の祭典』」開催に先立ち、ポルーニンと振付家の大石裕香による取材会が2月上旬に行われた。【チケット情報はこちら】“世界一優雅な野獣”と題に冠されたドキュメンタリー映画やYouTube累計再生回数2,700万回を記録した「Take Me To Church」(Hozier)のMVで知られるポルーニンは、ウクライナ出身の元英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル。独ハンブルク・バレエ団における日本人初の女性ソリストを務めた大石は、現在ダンサー・振付家としてグローバルに活動しており、本公演では2演目のうち「Paradox & SACRE」の振付を手がけている。「日本に裕香さんと『春の祭典』を持って来られて嬉しい」と笑顔を見せたポルーニンは、ロシア人バレエダンサー・振付家のヴァーツラフ・ニジンスキー(1890~1950)と西側諸国のダンサーが演じたものであると作品の由来を紹介。同時に「日本人である裕香さんが振り付けしたおかげでアジア的なテーマやエレメントが融合され、クールで素晴らしい形に仕上がった」と彼女に対する感謝の思いを伝えた。一方の大石は、スイスにおけるポルーニンとの出会いを振り返る。言葉を交わした際のシャイな第一印象と、実際の「オーラをまとった」パフォーマンスには大きなギャップが。その姿に「感情を吐き出したいと思っているのでは」と感じ、「一緒に仕事するなら、彼の中に溜まっている何かを発散できる作品を一緒につくれる気がした」と創作意欲を刺激され、のちにスイスで彼と共作に至ったエピソードを披露した。本公演の見どころを尋ねられたポルーニンは「深遠なテーマを扱いますが、必ずエネルギーをチャージできるエンターテインメント性の高い作品です」とコメント。現在は芸術性の追求より、「多くの観客を惹きつけ、輪が広がるような作品をつくることが大切」であるとも述べた。また「作中で僕はさまざまな人々の“生命”を踊ります。ニジンスキーも登場しますが彼の人生を舞うのではなく、彼の作品で私は私の人生を踊るのです」と持論を展開。最後には「ステージには自然体で向き合ってください。フィーリングで楽しんで」と呼びかけ、取材会を結んだ。公演は5月14日(木)・15日(金)に、東京・新宿文化センター 大ホールで行われる。2月29日(土)の一般発売に先駆け、2月16日(日)23:59まで先着先行受付中。取材・文:岡山朋代
2020年02月14日人気アクションゲーム「戦国BASARA」の舞台化シリーズ第17弾として、4月に東京・神戸にて上演される最新作・斬劇『戦国BASARA』豊臣滅亡。そのビジュアル撮影現場で、本作より新たな“蒼紅”に扮する伊達政宗役の武子直輝、真田幸村役の前田隆太朗に作品への思いを尋ねた。【チケット情報はこちら】石田三成(沖野晃司)が主演を務める本作で、新生蒼紅としてお披露目されるふたり。武子は「多くの先輩が出演され、ファンから長年愛されている作品」と“斬バサ”が持つ歴史の大きさに触れ、政宗役としてオファーを受けた時の率直な感想を「プレッシャーに感じましたが、それ以上の喜びがありました」と述べた。出演が決まった際、前田の第一声は「えっ、俺?」──。偉大なタイトルに驚いたものの、次第に「幸村になれるんだ、と思ったら嬉しくて!」と笑顔を見せる。ビジュアル撮影を「役に近づき、イメージを膨らませる大切な時間だった」と振り返ったふたりは、過去に舞台(おおきく振りかぶって 夏の大会編)で共演した仲。高校球児から一転、今度は“戦国武将”として同じステージに立つ。互いにどう向き合うか問いかけると、前田は「この前は対決シーンがなく、直輝くんと芝居上で絡むのは初めてだから楽しみ」とコメント。武子は「劇中は敵で、共演者としてはよきライバル」と続き、「隆ちゃんと切磋琢磨できる関係性を築けたら、それが作品にも現れる気がします」と前田に目配せしてみせた。シリーズの醍醐味といえる、迫力あるアクションシーンに殺陣は欠かせない。舞台『刀剣乱舞』シリーズへの出演などで経験のある武子は、政宗の六爪流(刀を指の間に挟む形で片手3本ずつ持ち、爪で引っ掻くように相手を斬る剣術)を実際にやってみて「経験はいったん脇に置いて1からのスタート」「指の筋力をアップさせて手なずけたい」とクールに意気込んだ。すでに殺陣稽古を始めている前田は初心者だけあって、幸村が両手に構える2振りの十文字槍を持て余し気味。それでも「必死に取り組み自分のものにして、舞台上の説得力としたい」と努力を約束した。ふたりの成長がどのように結実したか、ぜひ本番で確かめて欲しい。公演は4月10日(金)から19日(日)まで、東京・品川プリンスホテル ステラボールにて。その後、4月24日(金)から26日(日)まで、神戸・AiiA 2.5 Theater Kobeでも上演される。チケットの一般発売は、2月9日(日)10:00よりスタート。取材・文:岡山朋代(c)CAPCOM CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.
2020年02月07日KAAT神奈川芸術劇場の2020年度ラインアップ発表会が行われ、同劇場芸術監督の最終年度を迎える白井晃、2019年から参与を務める長塚圭史のほか、本年度の公演に携わるクリエイター計10人が登壇した。【チケット情報はこちら】冒頭で白井は「大きく揺らぐ過渡期の日本で“忘れられがちだが大切なこと”に着目する、社会的な題材のプログラムを前半に揃えました」とコメント。その筆頭として、白井は自身の演出作『アーリントン〔ラブ・ストーリー〕』、音楽家の清水恒輔が「発展しすぎた資本主義が現代に通じる」と述べた『メトロポリス 伴奏付上映会 ver.2020』、演出家・桐山知也によるリーディング公演『ポルノグラフィ』の3作品を紹介した。白井いわく、「シーズン後半はKAATの10周年企画が続きます」──。自身が1995年に青山劇場の10周年記念で演出した音楽劇『銀河鉄道の夜』、芸術監督の就任後に取り組み続けたブレヒト劇の集大成となる『コーカサスの白墨の輪』、任期ラストを飾るミヒャエル・エンデ原作のオペラ『モモ』に懸ける思いを語る。地点×KAATの第3弾企画に新作『君の庭』を書き下ろす松原俊太郎は「今回は法廷劇」と構想を明かした。谷賢一はベストセラー『サピエンス全史』に想を得た『人類史(仮)』で「ヒトの起源を探りたい」とひと言。日韓共同製作に定評のある多田淳之介は『外地の三人姉妹(仮)』でチェーホフ劇の翻案に臨む思いを「日韓の芸術交流を粛々と進める」とした。長塚は『セールスマンの死』再演に対して「新作の消費より1本をゆっくり見つめ直して」と呼びかける。岡田利規からは「ザハ・ハディドと高速増殖炉もんじゅを主人公に据えた夢幻能『未練の幽霊と怪物』をつくる」という映像コメントが到着。ギリシャ悲劇をもとにした新作現代劇(作:瀬戸山美咲)に挑戦する杉原邦生も映像コメントで「大スタジオより広いホールをどう活用するか」と思いを巡らせた。なお、野村萬斎の演出版が2018年に多数の演劇賞を獲得した『子午線の祀り』もラインアップされている。サン=テグジュペリの名著『星の王子さま』をダンス化する森山開次は「哲学的な言葉をどう身体表現で見せるか」を課題に掲げ、小野寺修二は「“わからないけど魅力的なもの”に好奇心を向けさせる作品を」としてルーツのパントマイムに立ち返る点を強調。現代美術家の冨安由真は「現実と非現実の境が曖昧になるインスタレーションを」と意気込んだ。キッズ・プログラムは2本。昨夏、山本卓卓によって上演された『二分間の冒険』は全国7会場の巡演ツアーとして復活。初の子ども向け作品に挑戦する松井周からは映像コメントが到着し、「白石加代子さん演じる認知症の老婆が子どもと記憶を探す物語」である『さいごの1つ前』が紹介された。就任当初から「事件を起こせる劇場でありたい」と目指すKAAT像を設定し、2020年度もラインアップに落とし込んだ白井。ラストイヤーの芸術監督ぶりから目が離せない。取材・文:岡山朋代
2020年02月07日大鳥れいが主演を務める舞台『花火の陰』が、2月5日に東京・三越劇場にて開幕した。【チケット情報はこちら】村松みさきの脚本・演出で2017年に初演された本作。再演となる今回は、わかばやしめぐみ(おぼんろ)が演出を手がける。大鳥をはじめ、笠松はる、きよこ、阿紋太郎、岡田達也といった初演キャストは続投。新たに野村宏伸、石田隼、藤田奈那、森めぐみ、藤崎卓也、森大がキャスティングされ、過去と現在が交錯する“ノスタルジック・ファンタジー”が繰り広げられる。報道陣に公開されたゲネプロを前に、大鳥・野村・岡田のキャスト3人が初日へ向けた意気込みを述べた。大鳥は「私たちは毎日全力で舞台をやるのみ」「チームワークをご覧いただきたい」とコメント。野村が「再演ですからね」と好評を博した初演を強調すると、岡田は「前回は“ゴースト・ファンタジー”とも言われて」と続き、「亡くなった人との再会を軸に、心温まる物語が展開されますのでどうぞお越しください」と呼びかけた。物語は、女優として成長した姫川春子(大鳥)が小河内ダムを擁する奥多摩町を再訪したことから始まる。かつて映画撮影チームの助手を務めていた春子が、ロケ地だったこの場所に立つのは20年ぶり。当時の懐かしい顔ぶれと再会し、止まっていた彼女の時間が再び動き出す。とある事件を機に、完成の日を迎えることのなかった映画──。過去を回想する中で、春子は長年封じていた思いにめぐり逢う。監督・サクマ俊介(岡田)のもとで映画『湖底の郷』を撮影していた1990年、喪服姿の春子が奥多摩を訪れる2010年。ふたつの時代が行きつ戻りつしながら、舞台は進む。映画撮影チームの面々と彼らを受け入れる町民の交流や、ささやかな日常生活が丁寧に描かれるからこそ、やがて来る事件が痛ましく悲しい。大鳥はオープニングで、「かの日にもどしたまえ」と消えない喪失感に苛まれる現在の春子の思いを澄んだ歌声で表現。女優としての成功を夢見て下積み生活に励む若き春子との演じ分けにも注目したい。人々の記憶に残る最高の映画を目指して奔走するサクマは、一瞬の輝きを放つ“花火”を象徴するような存在。一方で“陰”を抱えるキャラクターを、岡田は朗らかながらどこかもの悲しさを湛える演技で立ち上げた。上演時間は135分(休憩なし)ほど。公演は2月10日(月)まで。8日(土)18時、9日(日)13・18時開演回の終了後には、キャスト・スタッフらによるアフタートークも。チケットぴあでは現在、当日引換券を販売中。取材・文:岡山朋代
2020年02月06日劇団東京乾電池の綾田俊樹とベンガルによるユニット、綾ベン企画にとって約3年ぶりとなる公演『川のほとりで3賢人』が間もなく幕を開ける。演出は、前作『やんごとなき二人』を手がけた映画監督・平山秀幸が続投。本読みを終え、立ち稽古2日目を迎えた1月半ば、綾田・ベンガル・平山がインタビューに応じた。【チケット情報はこちら】木野花をゲストに迎えて上演された『質屋の女』(1990年)以来、女優と三人芝居を繰り広げることの多かった綾ベン企画。今回は、東京乾電池を1999年に退団した広岡由里子をゲストに、多摩川の河川敷で隣り合わせに暮らす男性ホームレスふたりと、彼らの前に現れた「福祉課・馬場マチコ」を名乗る女性の“哀しくもおかしな”物語が展開される。本作のはじまりは、前回公演に遡る──。「ホームレスに興味があった」綾田とベンガルは、平山をはじめスタッフと実際に多摩川を訪れ、河原で暮らす人々と交流を図った。煙草を差し入れると喜んで会話に応じる者も、一方で「絶対に口を閉ざす話題があった」と語るのはベンガル。彼らの“虚実ないまぜ”話に平山は「ドラマ性を感じた」として、旧知のシナリオライター・安倍照雄に脚本を依頼したと振り返る。今回の上演にあたって再び多摩川を訪れると、2019年10月の台風19号による氾濫で全てを流されても戻ってきた、打たれ強いホームレスの姿が。綾田は「たくましい生活力を持つ人たちを身近に感じてもらえるように」、ベンガルは「社会からドロップアウトせざるを得なかった彼らの事情を念頭に置きながら」それぞれの役どころを全うできれば、と静かに決意を新たにしてみせる。平山は、第2回公演から東京乾電池を“追っかけ”ている生粋の劇団ファン。「(綾田とベンガルの)ふたりが気持ちよく芝居できる手伝いができたら」という思いで、本作も演出を手がける。脚本・てっかんマスターの正体は、東京乾電池の劇団員・戸辺俊介。乾電池“一味”が揃い踏みする中、劇団に縁のあるゲスト・広岡を、ベンガルが「あいつが河原に現れるだけで強烈だよな……」と評すると、綾田もすかさず「洪水以上のインパクトあるよね!」と続く。その様子を見守っていた平山も大きく頷き、「放し飼いで好きに演じてもらえたら、それがいちばんおもしろいよね」と笑った。公演は2月21日(金)から3月1日(日)まで、東京・下北沢駅前劇場にて。チケット販売中。取材・文:岡山朋代
2020年02月06日「MANKAI STAGE『A3!』~AUTUMN 2020~」が、1月18日に東京・品川プリンスホテル ステラボールにて開幕した。【チケット情報はこちら】ダウンロード数650万を突破したイケメン役者育成ゲーム『A3!(エースリー)』。その舞台版「MANKAI STAGE『A3!』」シリーズ5作目となる本作は、劇団・MANKAIカンパニー内における4ユニットのうち“秋組”にスポットを当てた単独公演となる。劇中では、第2回公演『異邦人』・第3回公演『任侠伝・流れ者銀二』に向けた2編のストーリーが展開される。初日を控えた会見では、1幕の劇中劇『異邦人』の主演を務める伏見臣役の稲垣成弥が「臣の魅力全開でお送りします!彼が成長する瞬間を見届けてください」と大きな笑顔でコメント。2幕の『任侠伝・流れ者銀二』で主役を演じる古市左京役の藤田玲は「これまで登場した劇中劇の中で、いちばん挑戦している」と冷静に分析し、「皆さんの予想を超える内容になりましたのでご期待ください」と観客に呼びかけた。兵頭十座役の中村太郎が「秋組らしくブチかましていけたら!」と熱いひと言を放てば、七尾太一役の赤澤遼太郎は「春・夏と単独公演を重ねて、お客さんの期待も大きくなっているのを感じます」とバトンを繋いできた舞台版シリーズの歴史や重みに触れる。役者が役者を演じる上で発見した、俳優業の面白さとは──?そう問われた摂津万里役の水江建太は「まさにAステの現場で育んでいるので、このステージを全力で楽しみたい」と抱負を述べた。ゲネプロは、これまで単独公演の冒頭を飾ってきたナンバー「Brand new world」の秋組バージョンで幕開け。1幕は親友を失くした過去が原因で役者として突き抜けることができずにいた臣が、秋組メンバーの働きかけによって成長する物語が繰り広げられる。2幕は左京の脱退騒動を前に、仲間のために奔走する一座の絆が描かれた。「他の組より“漢(おとこ)”っぽい」と新庄リョウ役の里中将道が秋組を表したように、メンバーはワイルドな魅力で客席を魅了。不器用にぶつかり合いながらも切磋琢磨する男たちの友情に注目だ。なお、突発性虚血心不全で2019年11月に急逝した滝口幸弘が演じたカンパニー付きの演出家・鹿島雄三にキャストが呼びかけるシーンも。姿は見せずとも鹿島が舞台上にいるような演出、代役を立てず上演に踏み切った制作陣の心意気が胸に迫った。上演時間は160分(休憩含む2幕)ほど。東京公演はいったん1月26日(日)で幕を閉じ、1~2月に愛知・兵庫へ巡演。その後、2月20日(木)~3月1日(日)に再び東京・品川プリンスホテル ステラボールへ凱旋する。取材・文:岡山朋代(c)Liber Entertainment Inc. All Rights Reserved. (c)MANKAI STAGE『A3!』製作委員会2020
2020年01月21日宅間孝行の主宰するタクフェス「春のコメディ祭!」シリーズが来春に上演される。第3弾となる『仏の顔も笑うまで』のビジュアル撮影日、東京都内のスタジオへ一堂に会したキャストの宅間、モト冬樹、樋口日奈(乃木坂46)、肥後克広(ダチョウ倶楽部)の4人は衣装で取材に応じた。【チケット情報はこちら】タクフェスの前身・東京セレソンデラックスが上演したシチュエーションコメディ『Happy』を改題して再演する本作。今回も作・演出を手がける宅間は、モトを相棒とする銀行強盗バディに扮する。とある落語家の生前葬が行われる寺に逃げ込んできたこの2人を軸に、寺に関わる人々のさまざまな思いが交錯する、暗転なし・ノンストップの“ジェットコースターコメディ”だ。「全力投球せずにはいられない、パワーと覚悟のいる作品だった」と初演時を振り返る宅間は、冗談交じりに「あまりに大変だから遺作になると思う(笑)」と言って共演者を和ませた。バディを組むモトは、2018年10月~12月上演のタクフェス『あいあい傘』で同じ舞台に立った仲。「気心が知れている」ことから、次々と繰り出される強盗コンビの応酬も「セリフ通りきっちり進めるより、演じながらつくっていく」と稽古の構想を口にする。対するモトも、『あいあい傘』当時の宅間を「芝居への愛情があって、何を言っても受け止めてくれた」と紹介し、信頼している様子を見せた。今回のタッグについても「スリルがあって楽しみ」とコメント。タクフェスらしいコメディとは何か、と尋ねられると「“本気度”が高いこと」と即答し、「一生懸命やらないと説得力がなくなっちゃうから」と意気込んでみせる。宅間扮する銀行強盗にひと目惚れされる寺のひとり娘を演じる樋口は、本格的なコメディに初挑戦。勉強のために吉本新喜劇を観に行ったエピソードを披露し、「客席に笑いを届けようとする(新喜劇キャストの)皆さんの“本気度”が伝わってきたので、私も爪跡を残せるように一生懸命がんばります!」と笑顔を見せた。「ふたりがかりで袈裟を着せてもらった」と合掌する肥後は、寺の住職役。オファーの感想を「リアクション芸人である自分をなぜキャスティングしたのか」と漏らすも、手にした台本の面白さに魅了され、出演を決めたと話す。「宅間さんの計算されたシナリオ・演出もさることながら、彼のマンパワーに少しでも近づけたら」と一座を率いる宅間に花を持たせる形で、取材を結んだ。公演は、4月22日(水)~29日(水・祝)に東京・渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール、5月9日(土)・10日(日)に愛知・御園座、5月14日(木)に岩手・北上市文化交流センター さくらホール 大ホール、5月16日(土)に福島・けんしん郡山文化センター 中ホール、5月20日(水)~24日(日)に兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールと巡演する。チケットぴあでは1月18日(土)から1月23日(木)11時まで、東京公演の抽選先行を受付中。取材・文:岡山朋代
2020年01月17日ワハハ本舗の全体公演が生まれ変わる──。ピリオドを打った『ラスト3~最終伝説~』から3年、来春2020年5月に復活する全体公演のタイトルは『王と花魁』。そのビジュアル撮影日、構成・演出の喰始、艶やかな花魁に扮した久本雅美、座長の大久保ノブオに“新生”ワハハ本舗への思いを尋ねてみた。【チケット情報はこちら】『ラスト』三部作を終えてもなお、募る全体公演への思い。一座に広がる「ワハハ本舗ワールドを消したくない」という機運を久本と盟友・柴田理恵がキャッチして訴え、喰がそれに応えて全体公演の“復活”を決断したのが本作の始まりだ。オリンピックイヤーに重なる劇団の新たな門出を、大久保も「本当に泣きましたね!」と振り返る。その前哨戦として、今年6月に行われたのが『ベスト・オブ・全体公演~ショー・マスト・ゴー・オン~』。1989~2017年で計32回に及んだ全体公演から選りすぐったネタを、300席弱の小劇場で展開した。“オカルト二人羽織”など、近年の大ホール巡演で見せることのなかった初期の伝説ネタを繰り広げた久本は「ワハハを初めて観るお客さんに喜んでもらえて嬉しかった」とコメント。1996年に入団した大久保も「僕が加入する前の伝説のネタを通じてワハハの歴史に感じ入りました」と続き、改めて全体公演への思いを強くしたと語る。では“新生”全体公演はどうなるのか──。喰は「歌舞伎をはじめ、日本の“和”をモチーフにさまざまな世界が融合した作品になると思います」と現段階での構想を口にした。この日、ビジュアル撮影現場で出た案は“ヘヴィメタ花魁”。喰の「生演奏で音楽遊びをしてみたら?」という提案に、大久保とタマ伸也のコミックバンド・ポカスカジャンが名乗りを上げる。ワハハの特徴である観客参加型のステージも予定しており、久本は「来たからには『(観客の)みんなも劇団員だろ?』って煽っちゃう」とニヤリ。なお『王と花魁』ポスタービジュアルの“王”には、大物ミュージシャンを起用。本番に出演しないイメージキャラクターだが、誰がワハハ本舗の新たな局面を祝うのか注目だ。さらに喰は、本作に続いて「2作目は“ミュージカル”、3作目は“フェスティバル”をテーマに新しい三部作を立ち上げます」と予告。今後も“新生”ワハハ本舗ワールドから目が離せない。公演は5月27日~31日に東京・なかのZERO 大ホールで行われたあと、6・7月に全国17会場を巡演する。チケットぴあでは1月18日から1月27日まで東京公演の抽選先行を受付。取材・文:岡山朋代撮影:川野結李歌
2020年01月16日