親がしてあげたいことと、子どもが求める距離感は違うかも?自閉スペクトラム症と知的障害のある息子ほぺろうは この4月から特別支援学校の1年生!ですが感情のコントロールはまだまだ難しく発語もないので、気持ちを表現できずにイライラしている様子です。ほぺろうが怒っているときは『抱っこ拒否・共感拒否』なので私は触らず喋らず、ただ癇癪につき合わされるだけという日々。せめて気持ちを切り替える為に こちらから働きかけることができたら…と悩んでいます。Upload By ぼさ子三木先生:大人も機嫌が悪いとき、かまって欲しい人、放っておいて欲しい人とかいろいろいますよね。ほぺろう君は放っておいてほしい感じですか?ぼさ子(以降ーー): いや、触らせてくれないくせにつき合ってほしいタイプみたいです。三木先生:なるほど。おそらく、積極的には介入して欲しくないけど側で「うん、うん、」って言ってほしい感じですかね。ホント距離感って人それぞれなので、ほぺろう君の場合は近所の子くらいの距離感を求めているのかも。側に居てほしいけど抱きしめるのはチョット…みたいな。ーーまさにそんな感じです!三木先生:でも親としては近所の子の距離感を求められると切ないっていうのがあるじゃないですか。親なんだからなにかしてあげたいって。自分が思う親の役割を 自分は果たせてないと凹んでしまう親御さんは結構います。だから親側がその気持ちをどう飲み込むかっていうところも考えてた方がいいかもしれないですね。ぼさ子さんはどうですか?そういうのつらいかな?ーーいや、今はあんまり気にしてないです。ただ、癇癪が長引くとほぺろう本人がつらいかなって思っちゃいますね。三木先生:そうですね。でも本人にもどうしようもないって部分はあると思うので、こちら側が子どもの距離感を尊重してあげるのがいいですね。そういう意味では、ぼさ子さんは割り切って接してあげることができていると思います。ーーメンタルによってはできていないですけどね(照)Upload By ぼさ子気持ちの切り替えルートは大きく二つ三木先生:気持ちが切り替わる方法って大きく2つありまして、1.本人の気が済む2.周りの刺激に引っ張られるですね。Upload By ぼさ子1は内側のことなので外部が介入するのは難しいですが、2は本人が刺激を受け入れられる準備ができているかによります。本当にどうしようもないときは待つしかないけど、ピリピリの水準がどれくらい下がったときにどんな刺激を受け入れてくれるか、経験を積み重ねて模索することですね。例えば、子どもがすごく怒っていたとしても「遊園地行こう!」みたいな強烈な報酬があると その刺激に引っ張られて機嫌が直るけど、いつもそういうワケにいかないじゃないですか。親側のコストが少なくて済むように、先入観なしで試行錯誤でいろいろ試してみるといいですね。そうやって経験を積み重ねていくと「今ならこうかな?」っていうのが見つかっていくと思います。あとは、切り替えの刺激になりそうなもののバリエーションを増やすことです。これも先入観なしにいろいろ試してほしいんですけど、大人が興味ないようなことで子どもがすごく喜ぶなんてことあるじゃないですか。例えば小さい子だと、プレゼント放り出して包装紙で遊んじゃうみたいな。ーー確かに子どもってそういうところありますね!三木先生:子どもって大人の価値観で判断しきれないところがあるので、本当にヤケクソでもいいのでやってもみてほしい。マンネリすると刺激が弱くなってしまうので、新しい方法を編み出していくと効果が高いと思います。Upload By ぼさ子おやつ・絵本・ふとんから読み取る、切り替えの『性質』ーーちなみに、今ほぺろうの三大切り替え方法は『おやつ・絵本・ふとんにくるまる』なんです。おやつを食べてお腹いっぱいになったら落ち着く、好きな絵本をじっくり読んでもらうと落ち着く、自分がふとんにくるまっているのを母に横から眺めてもらうと落ち着く…という感じで。三木先生:なるほどね!実はそれ面白いバリエーションがあることが分かるんです。おやつは、食べる行為そのものよりも、食べることで体の状態が変わるってところがポイントなんです。そこを拡張していくと『体の状態変わる』という性質のものを見つけていくといいですね。絵本は、『周りの刺激に引っ張られる』の要素だと思うんですけど、安心できる空気を浴びることによってピリピリ水準を下げる事を間接的に実現してるんだと思います。ふとんもそうで、くるまってる安心感とか圧迫感が好きで、体の状態も変わってくるしピリピリも下がってくるっていうのをゆっくり実現しているんですね。つまりは、そういう系統の刺激で落ち着きやすいという性質のものを探していって、いつもの方法が通じなかったとき、同じ意味を持つ別の方法を見つけておくといいでしょう。Upload By ぼさ子三木先生:あと、ただ見守ることが大切だったりします。親として何かしなければ!と不安にかられる人は多くて、何かしようとして余計悪化しちゃうことはよくあります。ーー案外、何もしないことが正解ってときもあるかもしれませんね。私は、癇癪を抑えるには「絵カード」というイメージがあったんですけど、ほぺろうは絵カードをあまり受けつけてくれなくて…。でも これまでのお話を聞くと、絵カードにこだわらなくてもいいと思えて安心しました。三木先生:方法は目的じゃないんで、目的が達成できるんだったら何でもいいんです。一般的な自閉スペクトラム症のあるお子さんの多数派に当てはまるものはあるけど、その子の特徴だったり、シチュエーションやタイミングによっては使えないものだってあります。Upload By ぼさ子当てはまらないときは「やり方が間違ってる」可能性も振り返ってみる三木先生:ただ、試してもあまりにはまらないときは「やり方が間違ってる」という可能性も頭に置いた方がいいですね。僕もよく反省するんですけど、例えば薬を出しても効かなかったとき「薬が効かなかったのか?僕が効くと思ってた見立てがズレてたのか?」っていうのはいつも振り返るようにしてて、どうしても合わないときは「意味を取り違えてないか?」と考え直したりしています。考え直しても合わないときは「この子には合わない」という結論になったりしますね。ーーやっぱり経験を重ねる事が大事ということですか?三木先生:一般論という近道もありますが、必ずそれが当てはまるというものではないので、やはりウチの子の場合という方法を探すといいですね。感想(みんなと同じじゃなくて大丈夫!!)ーー自閉スペクトラム症のある子どもだからって『全員同じ』というワケじゃないって思っていいんですね。実は、「発達障害のある子どもだったら 普通こうすればできるようにならない?」という意見をもらうことがたまにあって、ほぺろうはほかの発達障害のある子どもができることをできないのかと落ち込むことがあります…。Upload By ぼさ子Upload By ぼさ子三木先生:自閉スペクトラム症のあるお子さんも人それぞれ。あくまでウチの子の場合で考えましょう。気にしなくて大丈夫!!ーーそうですよね!ありがとうございました!執筆/ぼさ子
2022年04月20日「時効警察」シリーズ、『大怪獣のあとしまつ』などを手掛ける三木聡監督が、成田凌と前田敦子をキャストに迎えた、異世界アドベンチャー映画『コンビニエンス・ストーリー』の公開が決定した。絶賛スランプ中の若手脚本家・加藤。映画の企画を持ち込んでも全く手ごたえがなく、悶々と悩む日々を過ごしている。恋人の愛犬・ケルベロスのペットフード「犬人間」を買いに出かけたはずが、ひょんなことから欲しいものが何でも見つかるコンビニエンス・ストア「リソーマート」に迷い込む。妖しげな人妻・惠子と出会い、創作意欲が湧き始めるのだが――。主演の成田さんが演じるのは、スランプ中の若手脚本家・加藤。とあることから、異世界を彷徨うことになる。また前田さんが、不思議なコンビニ・リソーマートで働く妖艶な人妻・惠子を演じる。『くれなずめ』で初共演し、息ぴったりの2人が、本作では異世界で出会い、恋をする不思議な距離感のキャラクターで再共演する。企画は、ジャパンタイムズで日本映画の批評を行う映画評論家でプロデューサーのマーク・シリング。マークが三木監督の才能に惚れ込み、本作をオファー。5年間ふたりで企画を温め、ようやく本作が誕生する。<キャスト・監督コメント>・成田凌念願の三木組。デビュー前からご一緒したかった三木聡監督、ご一緒できて嬉しいです。脚本を初めて読ませて頂いたときに、これだー。とガッツポーズしました。不思議な世界へ皆様をお連れしますぜひ映画館でニヤニヤ見ていただけたらと思います。・前田敦子コンビニの店員ですが異世界の方の店員。なんだか普通では当たり前にいられない三木さんの世界観を思う存分味わえた撮影期間は終始夢見心地でした。本作の三角関係はほんとに奇妙です笑どんな映画になっているのか、私も楽しみです。・三木聡監督「謎は謎だから謎であり、全ての謎は解けてしまえば謎ではない」エレクトリックソウルマンの有名なセリフですが、その通りだと思います。突然、現れる不可解な薬による不可解な眩暈と不可解な不倫の男女関係。それは、成田凌、前田敦子はじめ濃密な俳優達との濃密な時間の中で醸成されて行きました。果たして、この映画はどこに行こうとしているのか?今となっては監督の私にすら判らないのです。お願いです、探さないで下さい。『コンビニエンス・ストーリー』は8月5日(金)よりテアトル新宿ほか全国にて公開。(cinemacafe.net)■関連作品:コンビニエンス・ストーリー 2022年8月5日よりテアトル新宿ほか全国にて公開©2022「コンビニエンス・ストーリー」製作委員会
2022年04月13日大好評企画「児童精神科医 三木先生に聞いてみた!」まとめ第二弾漫画『リエゾン ーこどものこころ診療所ー』の監修や、発達ナビでもコラムの執筆などでおなじみのフリーランス児童精神科医の三木崇弘先生。今回はそんな三木先生とママコラムライターさんが対談した大好評企画「児童精神科医 三木先生に聞いてみた!」コラムをまとめてみました。第二弾でご紹介するコラムのテーマは「言い争いにならない伝え方」「不登校と将来」「進路問題」「障害告知」「子どもと親の距離感」「衝動性」などなど…気になるコラムはぜひリンクをクリックして読んでみてくださいね。当たり前が分からない!息子が理解しやすい伝え方は?おもちゃを拾ってくれた大人を見て「おもちゃとった!」と大騒ぎになってしまったむっくん。もしかして"当たり前"のことが分かってない?発達障害のある息子の癇癪。納得するのに必要なのは…!?小さなころから癇癪が起きがちなむっくん。ウチノコさんが家庭で行ってる対策や三木先生のアドバイスは役に立つものばかりです。中2発達障害長男。進学しても進路や勉強の悩みは尽きず…中学2年生のASDとADHDのある長男くん。理系の私立の中学に進学し、本人の環境にも合っているのに「進路を変えて定食屋になりたい」と言い出して…!?小5ADHD次男への障害告知のタイミング次男くんも小5になり、そろそろ障害告知をする時期が近づいているのかも…と思うスガカズさん。障害告知、障害受容などどのように考えていったらいいのか三木先生にお聞きしました。親は発達障害のある子どもをどこまでサポートしたらいいの?まだまだコウくんにはサポートが必要だと考えているさとこさん。でも一体どこまで関わっていいのかサポートの加減に悩んでいて…。衝動性からの「ついやっちゃった」への対応への理解と付き合い方ASD・ADHDのあるコウくん。理屈では理解していても「ついやっちゃった」「なんとなく」と衝動性で動いてしまうこともしばしば。そんなときに親としてできることとは…?三木先生のコメントには今後の子育てのヒントがたくさん三木先生の優しさと、ときに鋭さのあるコメントに「なるほど…!」と感じる方も多いのではないでしょうか。三木先生とママライターさんたちの掛け合いの様子も楽しい対談コラムです。各ママライターさんたちの描く三木先生の似顔絵も必見!
2022年01月02日大好評企画「児童精神科医 三木先生に聞いてみた!」まとめ第一弾漫画『リエゾン ーこどものこころ診療所ー』の監修や、発達ナビでもコラムの執筆などでおなじみのフリーランス児童精神科医の三木崇弘先生。今回はそんな三木先生とママコラムライターさんが対談した大好評企画「児童精神科医 三木先生に聞いてみた!」コラムをまとめてみました。第一弾でご紹介するコラムのテーマは「癇癪」「親の心の傷」「きょうだい児問題」「学校トラブル」「将来の方針」「コミュニケーション問題」などなど…気になるコラムはぜひリンクをクリックして読んでみてくださいね。「怒る」の定義が違う?条件反射のように癇癪を起こす息子への対応方法感覚過敏もあり、刺激に対する不安や癇癪の多いむっくん。本人の恐怖心や不安を取り除くために、親ができることとは。ポイントは『屁理屈』!? 本人が怒られたと感じないための言い回しとは母のウチノコさんの言葉の意図が伝わらず、結果怒られたと思い癇癪につながることのある息子・むっくん。そんなむっくんが納得するのに必要なのは「屁理屈」だった!?発達障害児育児をしている方に読んでほしい。自分自身を大切にするために。育児を通して自分の心の傷に気づく瞬間ってありませんか?自分で自分を癒していくためのヒントがもらえる、そんな素敵なコラムです。きょうだい児の気になる「誤学習問題」について4人きょうだいのスガカズさん一家。障害児ときょうだい児両方の子育てをする中で気になる「誤学習」についての解決方法や確認方法など、参考になるアドバイスがたくさんです。きょうだい児の精神的フォロー、どうしたらいい?長男・次男に発達障害があり、その下の長女・三男が定型発達。障害のある子に手がかかってきょうだい児がガマンしすぎていないか心配…。そんなきょうだい児へのフォロー方法などを三木先生にお聞きしました。発達障害のある子の学校トラブル、先生への相談の仕方は?ADHDのある次男くんが小1のときの出来事です。親と学校側の連携がうまくいかなかった経験のある母のスガカズさん。あのとき、一体どんな対応すればよかったの?「長い目で見て方針になるもの」が知りたい!ASD親子に必要なのは「失敗への準備」?どうしても「現時点での課題」に目が行きがちだと話すコウくんの母、丸山さとこさん。長期的な方針が知りたいと三木先生に聞くと、鋭くも現実的なアドバイスが返ってきて…。成長はしているけれど…ASD息子のコミュニケーション問題以前より落ち着いて会話ができるようになってきたASDとADHDのあるコウくん。ですがまだまだコミュニケーションの課題は多く…。各ご家庭、さまざまな悩みを抱えているけれど三者三様、さまざまなお悩みがありますが、三木先生の回答やお話の中で解決の糸口が見つかっていく様子が素敵ですね。参考になる対応方法や考え方などもたくさんです。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!
2021年12月27日「怒る」の定義が親と子で違う?ウチノコ(以下、――)むっくんは現在小学2年生。ADHDと自閉スペクトラム症の診断を3歳の時に受けました。感覚過敏もあり周囲からの刺激に対する不安感の強い子なのですが、昔から悩んでいるのが癇癪。怒られるのがいやだ!という恐怖心や怒られたらどうしようという不安から癇癪を起すことが多く、本人の恐怖心や不安をどう取り除いたらいいのか、どう関わってあげたらいいのか悩んでいます。Upload By ウチノコ三木先生:う~ん、なんでだろう。普段怒ることは多いですか?――小さなころは危険な行動の多い子だったので、それなりに叱責はあったけど…診断も早く、早期から対応を学べたので「過度に」というほどでもないかと思います。…でも、例えば「お菓子食べたい」という息子の欲求に対して「ご飯前だからダメ」と私が返すと「怒られた!」と捉えるんですよね。なので、私が思うよりも本人が怒られたと感じる回数はずっと多いかもしれません。三木先生:なるほど「要求が通らない=怒られた」になってしまうんですね。怒った(怒られた)か怒っていない(怒られていない)の定義が親子で統一できていないってことですね。そこは統一した方がいいかもしれないです。――ああ!なるほど!三木先生:本人が「怒られるんじゃないか」と怯えている時に、親側がいくら「怒っていないよ」と伝えたところで、【怒る】の意味がかみ合っていないから伝わらないのでしょうね。だからそれを本人に伝わるようにわかりやすく伝えるというのをやって、怒られたと感じる回数を減らしてみるか…。でも要求が通らないことが嫌なんだよね~。――そうなんですよね…先生のおっしゃる通り「怒った」か「怒ってない」かで親子で言い争いになることが多いので、実は一か月くらい前に「お母さんが怒るときの条件」を紙に書いて壁に貼ってみたんです。ここに書いている内容以外ではお母さんは絶対怒りません!だから安心してって。それで要求が通らない時の反応が穏やかになりました。まぁ効果は2週間くらいで既にマンネリ化してるのですが、そういうことを繰り返していくっていうイメージで合ってますか?Upload By ウチノコ三木先生:そうです!掲示は目新しい方が入りやすいと思うので、その表を数種類作って、2~3週間おきに張り替えて目新しさを維持してみるとマンネリ化を防げるかもしれません。まぁ張り替えでどの程度効果が得られるかは試してみないとわからないのだけど、2度目が初回の7割くらい目新しく感じてくれるといいですね。――ウチノコ:そっか~!それだけでも新鮮になるのですね!三木先生:とは言っても、目新しさが弱かったらまた同じことを伝える新しい方法を探さないといけないので果てしないんですけどね(笑)――ウチノコ:ひぇ~(苦笑)三木先生:まぁ、目先を変えるというのは合うと思います。他にも掲示を左右替えてみたり、色合いを変えたり、紙の縦横を変える、それでも変化になります。どういう変化が合うかはその子によって異なりますが、そういった工夫で伝えたいことを意識しやすくなればいいですよね。Upload By ウチノコ癇癪後に我に返る力を育む――瞬間的に爆発して、暴言などが起きる瞬間はどうしたらいいのでしょう…。結局きっかけの出来事ではなく、爆発中の暴言やらで怒られてしまうので、損しているなって思うんですよね。嘘でいいから黙って悲しそうな顔で下を向いていたら嵐は過ぎ去るのに…三木先生:爆発するその瞬間はどうしようもないです。でも、その後に必ずハッと我に返るタイミングがあるはずです。それが何秒後か、何分後か、どれくらい時間が必要かわからないけど、その時に「今気が付いたね!」と言ってあげる。Upload By ウチノコ――ああ!確かに爆発して私に掴みかかろうとした手を引っ込めることが最近見られます!三木先生:おお!それはすごくいいですね。それを認めて、リピートしてハッと我に返れるようにしていきましょう。そしてあわよくば、ですが我に返った後に元の場所に戻って悲しそうにシュンとする動作をやってみる。――シュンとするは本心でなくてもいいんですよね!三木先生:そうそう!それが、怒られるかもという不安に対するデフォルトの動作になるといいですよね。嫌なことがあったらシュンとする練習を普段からしていくのもいいかもしれません。見た目はちょっとシュールですが。それを「いいねいいね!悲しそうだね。お母さん守ってあげたくなっちゃう!」と褒めておく。――あはは(笑)シュンとできるようになると、すっごく助かりますね。Upload By ウチノコ三木先生:もう我に返るまでは親もどうしようもないし、本人にもどうしようもないんです。とにかく子どもがハッと我に返ったという見極めを親ができるかどうかが大事です。爆発中に声かけをしてもいいけど、無駄だと思うので…。我に返るまではしょうがないなと、本人が怪我などしないように安全にして見守る。そして我に返った後に対応していくしかないのかなと思います。三木先生との対談では、私の持つ情報ををうまく引き出してもらい、先生の言葉で改めて耳から聞くことでむっくんへの理解が深まるという不思議で楽しい時間でした!悩ましい癇癪ですが、先生のアドバイスを参考にできることから一つずつ意識していこうと思います。
2021年07月23日仕事での学校との出会い僕が最初に「学校」というものに触れたのは、児童精神科医として勤務しはじめてすぐのころでした。当たり前ですが、発達障害や不登校の子どもは学校でも困ったことが発生します。ですから、患者さんが先生方やスクールカウンセラーと一緒に外来を受診することもありました。ところが、僕が小学校を卒業したのはその時点で20年以上前です。外来で話を聞いても「この子が困っている学校って、そもそもどんな場所だったっけな…」とあまりうまく想像ができませんでした。そこで「現場では実際にどう困っているのか」に興味が湧き、折に触れて「学校に行ってみたいです」という話をしていました。学校から仕事が来たそんなことをあちこちで言っていると、少しずつですが学校から仕事の依頼を頂くようになりました。教員向けの研修講師や、ケースのコンサルティング(困っている子どもの様子を観察して教員にアドバイスする仕事)です。そうやって少しだけ学校に出入りするようになった僕は、そこで3つのことを感じました。1 先生たちは納得していない2 自分で見ないと分からないことがある3 やっぱり学校は良い場所だ学校で仕事をして気づいたこと研修では一般的な話もしますし、質問があった場合には具体的なケースの対応策などもお話しします。熱意があって前向きな先生は一生懸命聞いてくださるのですが、全体研修ではそんな先生ばかりではありません。うしろのほうで眠そうにしているベテランの先生や、明らかに興味のなさそうな管理職の先生もおられました。僕が国立病院の医師として「外部講師」に招かれ、話をしている限り、研修を受けても意識は変わらないんだろうなと思いました。その場では「貴重なお話をありがとうございました」とお礼を言ってくださっても、職員室では「あんなことできるわけない」と話しているのではないかと。そこで僕は「外の人」ではなく「中の人」になればいいんじゃないかと思ったのです。先生方がなぜ興味が持てないのか、なぜ納得できないのか、どうすればできるようになるのか。僕が外から偉そうなことを言ってるだけではだめなのではないかと。学校の様子は、診療中には子ども本人や保護者の方から伺います。しかし、見たことのないものは想像することができません。先ほども書きましたが、僕が自分の学校に行っていたのは20年前の話で、しかもいま働いている場所ではありません。時代も地域も違う学校のことを想像するのは難しい。実際に見てみた学校では「授業中立ち歩くってこういうことか」「この位置関係だと先生が個別に指示するのは難しいな」など、現場を見るからこそ気づくこともたくさんありました。僕が学校に行ってみた一番の感想は「学校は良いところだ」です。たくさんの子どもたちが生活を紡いでいて、彼らの成長を願っている大人たちが一生懸命に働いている。一見つまらなく感じるかもしれないような、小さなこと一つひとつを大人と子どもがお互いの視点から悩み、より良い人生になることを願っている。こういう「素敵な祈り」がある場所に、もっと触れていたいなと感じました。学校の「中の人」になりたいそんなエピソードもあり、僕は学校の「中の人」になる方法はないかと考えました。そうやって悶々としていたある日、友達のスクールカウンセラーから「精神科医はスクールカウンセラー採用試験の受験資格あるよ」という話を聞きました。なぜ採用対象に医師が入っているのかは謎でしたが、一も二もなく採用試験に申し込み、無事に東京都教育委員会に採用されました。中の人になってみて思うのは、やはり現場を知らずにコメントをしても実効的ではないということ。そとからの「こうあるべき」と学校現場がマッチしないことはしばしばありますし、全体の流れの中でしか分からないこともあります。定期的に見ているからこそ分かることや、先生たちの考え方、思い、できることとできないこと。教育行政のカタさや、一方でどういう方法ならその難しさをクリアできるのかなど、新しい学びがたくさんあります。(詳しくは次回以降で触れられればと思います)また、実際に働いてみると学校現場は楽しく、生き生きとしたものだと感じています。(ただ、子どもたちのエネルギーを浴びてものすごく疲れますが…笑)※厳密にはスクールカウンセラーは「学校の中の人」ではない立ち位置なのですが、僕的には「中の人=学校で定期的に働いてる人」でいいかな、という整理です。とにかく学校はいい!しつこいようですが、学校というのは本当に素敵な場所です。たくさんの大人が、たくさんの子どもの成長と幸せを願っています。(保護者の方によってはそうは思えないこともあると思いますが、基本的には学校関係者は善良で前向きな方が圧倒的に多いと思います)そういう場に身を置くことによって、また僕自身も子どもたちの未来に思いを馳せられる。誰かの暮らしの中で働くと、こういう楽しみがあるのだなと感じています。
2021年06月01日はじめまして、児童精神科医の三木崇弘ですはじめまして。フリーランスの児童精神科医をしています、三木崇弘と申します。クリニック以外にも、学校や児童相談所、児童養護施設や保健所などで勤務しています。「困っている子とその保護者」が関わるいろんなシーンにいる人、と思ってもらえるといいかなと思います。第1回となる今回のテーマは「保護者の感情」です。子育て中にはイライラするシーンがつきもの。発達障害のある子どもを育てていると、不安になったり困ったりする場面も多くあるのではないかと思います。今日は「保護者の感情」を子どもがどう感じているかと、その対応についてお話ししたいと思います。Upload By 三木崇弘子育て中のイライラ、どうすればいい?子育てをしていると、どうしても感情がコントロールできないこともあります。声を荒げてしまったり、聞こえるように溜息をついてしまったり…最終的には保護者が自分で収拾をつけるとしても、浴びた側の子どもにとって親の気分や感情はどのような意味を持つのでしょうか?保護者の感情表現は、子どもにとって天気みたいなもの子どもからすると、お父さんやお母さんの気分や感情は家の中の天気みたいなものです。ご機嫌であれば晴れだし、イライラしていれば雨。怒っていれば嵐と言っても良いかもしれません。大人同士であればその天気をある程度距離を取って眺めることもできるかもしれませんが、大人と子ども、まして親子であれば、子どもが保護者から受ける影響は大きいものです。大荒れの天気の中、ずぶ濡れの子どもはどうすることもできず立ち尽くすしかありません。嵐の日があってもいい、でも…お父さんやお母さんだって人間ですから、雨の日があってもいい。そもそも外の世界も晴ればかりではなく、雨の日も風の日も、嵐の日だってあります。子どもにとっていろんな天気を体験することがその後のたくましさを育むのは間違いありません。ただそれが「ある程度は安心で、予報(予測)が可能であること」が大事です。私たちだって、毎日どんな天気か分からないまま暮らすのはとてもストレスです。最近の異常気象で朝晩の気温差があまりに大きかったり、予兆もなく突然雨が降ったりすると、とても大変ですよね。台風だって、いつどこでどれくらいの雨と風が起きそうか分かるから、建物の中で安心して過ごすことができます。だから、大人が不機嫌なときや怒っているときでも、「自分が何をしたからお母さんが怒ったのか」や「怒っていても関係性の根本が変わらないこと」を子どもがしっかり理解できるような関わりが大切です。お子さんの安心・安全を守るために、心がけてほしいことそのためには、普段から「いま大人がなぜ不機嫌なのか」「どういう状態なのか」をしっかりと話すようにすると良いでしょう。子どもは保護者や家族に起きていることを自分の責任だと思い込むことがよくあります。例えば、「私が悪い子だからママが私のことを嫌いになった」「私がちゃんとしてないからパパとママが喧嘩した」という感じです。大人からすると「そんな訳がない」のですが、子どもが自分の理解できる範囲でものごとの因果関係を捉えようとした結果、こういった解釈をします。一昔前であれば同居の祖父母や近所のおばちゃんが「そんなの気にしなくていいよ」「それはパパが悪いね」とニュアンスの調整をしてくれたのですが、今は親が自分でどうにかしないといけない環境であることが多いですよね。だから、余計な不安を与えないように「〇〇ちゃんが約束を守らなかったらママは怒ってるけど、それは〇〇ちゃんを嫌いってことじゃないからね」と声をかけたり、「パパとママは××について意見が合わなくて喧嘩になっちゃったけど、ちゃんと仲直りするつもりだから安心してね」と状況を共有したりすると良いでしょう。気分が不安定なときにこういったひとことを追加するのはとても大変ですが、このひと手間がお子さんの安心・安全を作ってくれると思います。
2021年04月20日渡辺えりと八嶋智人が出演する『喜劇 お染与太郎珍道中』が、2月1日に開幕。これに先立ち、初日前会見とゲネプロが行われた。「喜劇 お染与太郎珍道中」の公演情報はこちら作家の小野田勇が喜劇俳優・三木のり平とタッグを組み、1979年に『与太郎めおと旅』として初演された本作。tsumazuki no ishiの寺十吾が演出を手がける今回は、恋人を追って京へ旅立つことになった米問屋の箱入り娘・お染(渡辺)と、その付き人となるドジで間抜けな手代・与太郎(八嶋)の珍道中が描かれる。表向きは“夫婦”として江戸を出発した旅路に、騒ぎが起こらぬわけもなく──。会見で見どころを問われた渡辺は「初めて娘役をやること」とコメント。「小さい時から太っていて声も低く、学芸会デビューは同級生のお母さん役でした」と続き、1991年に上演された『楡家の人びと』を思い出しながら「母と同い年である八千草薫さんの“ばあや”を演じて老け役ばかりでしたけど、年を重ねてから娘役が来るとは」と言って、報道陣を笑わせた。そんな渡辺と喜劇初顔合わせとなる八嶋が「稽古の最後には、えりさんが二十歳のお嬢様に見えて……どんどんかわいく思えてきた」と話すと、渡辺は「かわいいんだよ!もともと」と毒づいて息ぴったりの様子を覗かせる。自身は「三木のり平さんが演じた与太郎をやるので恐縮していますが、(在りし日の彼を連想させる)丸いレンズのメガネをつくって臨みます」と意気込んだ。この掛け合いを「稽古場でも珍道中のままですよ」と紹介する西岡徳馬は、お染与太郎と出会う堅物の浪人役。実娘(優妃)と親子役で初共演とあって「つい観察しては自宅でダメ出ししちゃいますね」と父親の顔を見せる。二人の珍道中を見守る鳶役の太川陽介は、緊急事態宣言下で旅番組のロケ中止を話題に挙げ、「収録現場に居合わせた方と触れ合えない日々が続きますが、この作品でお客さんの前に出られる幸せを感じています」と感謝の気持ちを伝えた。ゲネプロは一幕のみ公開され、お染・与太郎の旅を中心とする人情喜劇が展開。渡辺は低音ボイスで老け役続きだった過去とは一転し、麗しい声色で若々しさを立ち上げる。一方で、京へ向かった恋人を慕う気持ちを情感たっぷりに歌い上げ、客席を魅了した。日ごろツッコミ気質を謳う八嶋のおとぼけ与太郎ぶり、そして悪役・お役者小僧との二役対比にも注目したい。公演は2月17日(水)まで、東京・新橋演舞場にて。その後、2月21日(日)~27日(土)に京都・南座と巡演する。チケット販売中。取材・文:岡山朋代
2021年02月02日八嶋智人と渡辺えり撮影/佐藤靖彦箱入り娘のお嬢様とおっちょこちょいの手代が珍道中を繰り広げる舞台で共演する渡辺えりと八嶋智人。ともに劇団出身で長年、親交のある先輩後輩による爆笑秘話。■クリアすべき課題が「多すぎますよ(笑)」――舞台『喜劇お染与太郎珍道中』の感想は?渡辺えり(以下、渡辺)難しい戯曲だと思っています。シンプルなストーリーですが、それを役者が個性で笑わせる。でも、役者にとっては大変やりがいのある芝居ですね。三木のり平さんと京塚昌子さんの初演(1979年)は見てはいませんが、おそらくお客さんが大笑いしながら喜んでいたんだろうな、と想像しています。以前、のり平さんの舞台(『雲の上団五郎一座』)を拝見したときに、セリフの行間を面白く埋めていくかのようなのり平さんのひと言や演技に(共演者が)みんな笑いたいのを我慢しながら震えていたんですよ。安井昌二さんおひとりだけ笑っていなくて、あとは全員が笑っていて、お客さんも笑い転げて椅子から落ちるほどでした。もし自分が出演者だったら安井さんみたいに笑わないでいられるのかな、と考えちゃいました。今度は自分があそこまで笑いをもたらすことができるのかなと思うと、どんどん緊張してきて今は怖くなっています。八嶋智人(以下、八嶋)個性というのもありますが、のり平さんがやっていらした東京の喜劇には、面白さの中に悲しみ、怒りも入って芝居に仕上げている。そういう東京の喜劇人の粋みたいなところには関西人の僕は、なかなか到達できないだろうな、と。今回ご出演の錚々たる先輩陣は憧れてきた役者さんばかり。でもお弁当でいうと揚げ物が山盛りなくらい個性的です。それが東京の喜劇の粋に包まれて、決して油っぽくなくおいしく食べて(見て)いただけると思いますよ。――喜劇での共演は初めてになりますが、相手役としては?渡辺心配です(笑)。八嶋君は漫才でいうと普段からツッコミ。今回はボケ役。私の役はツッコミでもないので、その加減がすごく難しいだろうと思っています。私が演じる苦労知らずのお嬢様育ちのお染が、本当の愛情を知って(八嶋演じる与太郎に)ひかれていく。リアルな気持ちを持ちながら一生懸命にやればやるほど笑っていただけるのではないかと思っています。わざと笑わせるような芝居はせずに存在感で演じようと思っています。八嶋君は「あとは、えりさんにお任せ」みたいなところがあるので、そこが心配です。八嶋俺がダメみたいじゃないですかっ(笑)。でも確かに、おとぼけ系はやったことがない役ですね。渡辺カムカム(八嶋所属の劇団『カムカムミニキーナ』)では、ツッコミ役を見ているし、二枚目も演じられる。いろんな芝居ができるうまい人だけど、今回のようなおっとりした役を見たことがないので新境地ですよね。今回、共演者に昔からの知り合いや友達が多いのも心強いですね。でも、宇梶(剛士)君に「(お染と恋仲の)重三郎様」と言うのが照れくさくて照れくさくて、できるのかな。吹いちゃうかも。役者としてクリアしなくちゃいけないことが多すぎますよ(笑)。八嶋共演のみなさんは、面白い方しか出ていないですからね。みなさん僕なんかよりも経験値の高い大好きな先輩ばかり。「先輩のみなさん、どうぞ僕をよろしくね!」って感じです。■「土下座した」苦い思い出――劇団出身のおふたりの出会いは?八嶋僕が20代前半のとき池袋のある小劇場で、(渡辺主宰の)劇団3〇〇の『タイム』を上演することになって、そこに客演したんです。でも結局、芝居作りが初日に間に合わなくて(芝居が)できているところまでを上演するしかなくなって。その初日に、作者であるえりさんが見に来られたんですが、できているところまでやって、そこで土下座しました。覚えていないと思いますけど、それが初めての出会いです。渡辺詳しくは覚えていないけど、芝居がここまでしかできていませんと、お辞儀して途中で終わったのに驚いちゃって(笑)。そこに誰が出ていたのかまでは覚えていなかったですね。八嶋エンディングに向かって盛り上がるところで急にここまでです、と終わったんですよね。渡辺あきれちゃって怒る気にもなれなかった。そんなことは生まれて初めてだったもの。後になって、その芝居に八嶋君が出ていたことを聞いて驚きましたね。八嶋僕も後にも先にもそれしかないです。渡辺八嶋君を役者として認識するようになったのは、彼の劇団(『カムカムミニキーナ』)を見に行くようになってからです。後輩たちにも厳しく指導していて、それは己にも厳しいということですから、きちっとまじめに芝居を作っていく人なんだなと思いました。八嶋それから普段からも仲よくしていただいています。僕らの劇団が「座高円寺」を定小屋にできたのは、えりさんのおかげですし、劇団をずっと見てくださり応援してくださっている。劇団の方向性としても、直系の大先輩ですしね。だけど、偉ぶらないし、逆にイジリがいのあるチャーミングな先輩なので、僕は大好きです!失礼なことをたくさんしてきたと思うけど1度もぶち切れられたことはないですし、僕が甘えています。渡辺1回、絶交だぁ!と言ったことはあったけどね。八嶋ありました?僕じゃない人では?渡辺段田(安則)さんに“昨日、八嶋君と絶交したから”と言ったら、段田さんがものすごくウケたのを覚えている。なんで絶交したかは忘れて、いつの間にか元に戻ったけどね。――今回、絶交はない?渡辺わからないですよ(笑)。絶交して4年間まったく口をきかなかった役者さんもかつていましたから。今回もわからないです(笑)。八嶋すげぇなー(笑)。■こんなときだからこそ笑ってほしい――コロナ禍での舞台公演は?渡辺マスクをして稽古をするというのはつらかったです。表情がわからない。通し稽古でマスクを取ったときに初めて「あ、こんな顔なんだ」とわかる。スタッフの顔もずっとわからないというのも初めての経験でした。でも逆によかったのは毎回、死ぬ気でできることですね。毎回、稽古も最後のつもりで悔いのないよう1日1日を死ぬ気でやる。(コロナ禍)以前は1か月の稽古は、最初はラフに入って、徐々に進んでいました。コロナ禍では、明日はどうなるかわからないから毎日、死ぬ気です。集中力がすごいですね。いい意味で焦りながら早く作っていく。せっかちなタイプの私には向いているのかなと思います。八嶋最初のころは責任の所在は、継続するのも中止するのもわれわれにあった。でも、だんだんガイドラインがしっかりしてくると、それに則ってやればという状況になった。劇場側も、しっかりとコロナ対策をしていて、そこに集まってくるお客様も真剣に感染予防をされている。私語は慎んで静かな時間も多いけれども、(芝居が)終わったときの拍手は(観客数は)今までの半分以下なのに、変な言い方ですが、とても分厚いんです。えりさんも僕もウィズコロナの状況になってから舞台に立っていると、それがよくわかるんです。もしかしたら自粛期間中に喜劇をやるのは不謹慎だと思った方もいるかもしれない。でも、楽しい時間を安全に過ごすために、稽古も本番も(感染防止の)対策を万全に取りながら行っています。喜劇と銘打った芝居ができる喜びを感じながら、みなさんに存分に楽しんでいただきたいです。渡辺こういうときだからこそ心から楽しんでいただきたいですし、お客様に笑っていただきたい。笑うことは免疫力を上げるともいわれているので、自然治癒能力を活性化させる意味でも大いに笑っていただきたいです。共演がうれしいワケ写真撮影の雑談では、こんな会話も。渡辺「最近、町田啓太にハマっちゃっている。彼が出演したBLドラマ(『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』)、ネットフリックスの『今際の国のアリス』も町田君目当てに見たほど」八嶋「彼とは映画で共演して連絡先を知っていますよ」渡辺「えっ、そうなの?教えてもらってもいい?よかった、八嶋君と共演できて」八嶋「なんですか、それ(笑)」舞台『喜劇お染与太郎珍道中』(2月1日~17日東京・新橋演舞場、同21日~27日京都・南座)【物語】江戸の米問屋の箱入り娘・お染(渡辺えり)は、恋仲の若侍・重三郎が京都藩邸に転勤に。さらに大名家から妾になるよう迫られたお染は、重三郎を追って京都に向かう。お付きに選ばれたのはおっちょこちょいの手代・与太郎(八嶋智人)。表向き夫婦として五十三次を旅するお染、与太郎のドタバタ珍道中。渡辺えり:ヘアメイク/藤原羊二スタイリスト/矢野恵美子衣装/アクセサリー:アビステ八嶋智人:ヘアメイク/国府田雅子(Barrel)、スタイリスト/久 修一郎(impiger)、衣装/すべて BLUE BLUE JAPAN(OKURA)
2021年01月24日2021年1・2月に上演される「よみがえる明治座東京喜劇 -ニッポン放送『高田文夫のラジオビバリー昼ズ』全力応援!!-」。高田文夫の企画によって、舞台作品と寄席演芸(ゲスト日替わり)の2本立てで構成される本公演のうち、第一部の喜劇『こちとら大奥様だぜぃ!』の脚色・演出を手がけ出演する宅間孝行と、主演の田中美佐子が取材に応じた。高田の敬愛する三木のり平が打ち出した“笑い”を現代に蘇らせ、「東京喜劇」として観客に差し出そうと企画された本作。この東京喜劇を体現する者として高田が白羽の矢を立てたのが、笑って泣かせる人情喜劇を得意とする宅間だった。宅間は今回、のり平劇団の作家・小野田勇による『俺はお殿様』を大胆にアレンジ。主人公をとある藩主の“奥方様”に翻案し、放蕩三昧の夫(前川清)に愛想を尽かして城を飛び出した彼女の行く末をドタバタコメディーとして描き出す。落語から派生したストーリーには、のり平らしさが覗く。宅間は、本作のモチーフである「らくだ」や「松曳き」といった古典落語のおかしさを、どうやって現代人に伝えようか試行錯誤。その結果、「今の時代に江戸のエッセンスを乗せて爆笑をかっさらう噺家さんのスタンスを見習って、古典の中にあるオーソドックスな笑いをきちんと伝えたい」という境地にいたる。宅間作品のファンで長年彼の舞台を鑑賞してきた田中は、その魅力を「楽しく笑いながら観て、最後は泣ける」と捉え、宅間主宰のタクフェス『流れ星』(2019年)に主演した。演出家としての宅間は、笑いへの飽くなき探究心を覗かせる厳しい一面があるという。その姿勢は萩本欽一や志村けん、翻ってのり平にも通じるらしく「お笑いの師匠方ってしっかりとした“芝居”を求めるんです。その中で生まれる笑いはトレーニングを積み重ねた結晶なんですよ。だから奔放なアドリブのように見せることだってできるの。宅間さんの現場も同じでしたね」と振り返る。師匠方の近くで笑いの真髄を目の当たりにしてきた田中に宅間は絶大な信頼を寄せ、再び主演の座を託した。「美佐子さんは最初から全力で“アホ”に徹してくれるから、他のキャストも引っ張られてどんどんよくなるんですよ」「特に“顔”がね」と目配せすると、田中は「表情筋がどうなろうと構わないくらい必死ですから!」「でも実際はイヤよ?だって女優だもの」と即答し、報道陣の爆笑をさらった。公演は、2021年1月29日(金)〜2月14日(日)に東京・明治座にて。ぴあでは、座席指定できるチケットを販売中だ。取材・文:岡山朋代
2021年01月22日2月に上演される『喜劇 お染与太郎珍道中』で“ワケあり夫婦”に扮する渡辺えり・八嶋智人。過去に共演経験はありながらも“喜劇初顔合わせ”となる二人に、稽古前の思いを語ってもらった。作家の小野田勇が喜劇俳優・三木のり平とタッグを組み、1979年に『与太郎めおと旅』として初演された本作。tsumazuki no ishiの寺十吾が演出を手がける今回は、恋人を追って京へ旅立つことになった米問屋の箱入り娘・お染(渡辺)と、その付き人となるドジで間抜けな手代・与太郎(八嶋)の珍道中が描かれる。表向きは“夫婦”として江戸を出発した旅路に、騒ぎが起こらぬわけもなく──。バラエティ番組での仲の良い姿が印象的な二人は、日ごろから出演作をチェックしあうなど役者として互いを尊敬しあっている。かつて、三木のり平とドラマで共演をしたことがあるという渡辺が「のり平さんは、ご自分が率先してバカやって周りを生かして笑わせる、とても面白い方でした。八嶋さんにとっては、かなりの挑戦となる役に巡り会えたのでは」と言うと、八嶋は「俳優として新たな何かを得られる予感にワクワクします」と述べた。お染を演じるにあたって、渡辺は『与太郎めおと旅』で同じ役を演じた故・京塚昌子について、「日舞など何をなさっても素晴らしい芸達者な女優さんでした。それらを全て封じて大らかな存在感で観客を魅了していらっしゃった」と思いを寄せる一方で、「私は体重を利用して人を踏み潰すようなシーンもあるので多分かなり動き回らなきゃ」といって八嶋と取材陣を笑わせた。江戸の香りが残る東京喜劇こと“のり平芝居”にどう向き合うか尋ねると、八嶋は「現代に生きる関西人の僕にとって、のり平さんが演じていらっしゃった当時の“粋”を体現することは大きなハードルになりそう」とコメント。「内包された怒りや悲しみまで昇華していく東京人の粋な笑いは一朝一夕に身につけられるものではない」と背筋を伸ばす。一方で「普段はツッコミ気質だから、与太郎みたいなおとぼけキャラを演じるのは難しいですが、とても楽しみ」とも。“コロナうつに笑いは良薬”とばかりに「とにかく笑わせたい」と語る渡辺。古代ギリシャの医師たちが演劇を医療として用いていたエピソードに触れながら「お客さまや私たち演劇人が受けた傷を喜劇の力で癒すことができれば」と意気込む。その話にうなずく八嶋も「コロナが流行し始めた頃は不謹慎だと思う方もいらっしゃったかもしれない“喜劇”も、今はお客さまに必要としていただいている」と続き、「スタッフの皆さんの努力で、万全な感染予防対策でお迎えする劇場で、安心して楽しい時間を過ごしてもらえたら」と語った。公演は、2021年2月1日(月)~17日(水)に東京・新橋演舞場で。その後、2月21日(日)~27日(土)に京都・南座と巡演する。12月26日(土)10:00からチケット発売。取材・文:岡山朋代
2020年12月25日三谷幸喜が、自らを演劇の道へと導いた“恩師”、喜劇王ニール・サイモンの傑作コメディの演出に再び乗り出した。『ロスト・イン・ヨンカーズ』(2013年)に続く今回は、サイモン自身の下積み時代の体験を描いたとされる、人気コメディアンのオフィスに集う放送作家たちの物語だ。瀬戸康史、松岡茉優、吉原光夫、小手伸也、鈴木浩介、梶原善、青木さやか、山崎一、浅野和之の鉄板のチームワークが立ち上げる、三谷×サイモンの笑いに大注目!王道から外れたものにあえてチャレンジしたくなる——三谷さんが手がける2本目のニール・サイモン作品です。前回の『ロスト・イン・ヨンカーズ』から7年ぶりになりますね。僕自身、翻訳モノの演出の経験は数えるほどしかないんです。どうしてもオリジナルでやりたいものを優先してしまって。たとえば初めて手掛けた翻訳モノの『桜の園』(2012年)では、チェーホフのどこが面白いのか、どこに皆は魅了されるのだろうか、喜劇と言われているけど、本当にそうなんだろうか――と、勉強のようなつもりでやりました。ゴルドーニの『抜目のない未亡人』(2014年)も、コクトーの『声』(2013年)も、自分では絶対に書かないような作品をあえて演出することで、何か自分に得られるものが欲しい――、そんな思いがあるんです。ただ、僕はニール・サイモンに出会えたことで、この演劇の道に進んだとも言えるので、やはりいつかはやりたいと思っていました。でも『おかしな二人』や『サンシャイン・ボーイズ』のような、いわば“ザ・ニール・サイモン”的なものは、今、僕が演出しても、あまりワクワク感がないように思っていて。僕も、お客さんも。だから『ロスト・イン・ヨンカーズ』も今回も、ニール・サイモンの王道から少し外れたものにあえてチャレンジしてみようと思ったんです。——『23階の笑い』は1950年代のアメリカ・テレビ業界が舞台。冠バラエティ番組を持つ人気コメディアンと、彼のオフィスで働く個性的な放送作家たちの物語です。ジョークを潜ませた会話の応酬、そのテンポの良さが圧巻ですね。正直なところ、翻訳台本を読んだ時に、これを立ち上げるのはかなり難しいなと思いました。とくにコレといった事件が起こるわけでもなく、とにかくジョークの応酬で。コメディライターたちの話だから、台詞のすべてがジョークと言ってもいいくらいで、どういうさじ加減でやればいいのか、上演台本を作る時にかなり苦労しました。「あ、ここでアメリカ人は笑うんだろうな〜」なんて想像しながら2時間観ていただくのは申し訳ないので、ちゃんとコメディとして成立するものにしないといけない。かといって日本人がわかるような日本語のダジャレや時事ネタみたいなものは入れるべきではないし……。なかなか難しいチャレンジでした。個性豊かな登場人物たちは「水族館の魚を見るように」楽しんでもらえたらもちろんニール・サイモンの作品をムチャクチャにはしたくないから、きちんと戯曲どおりですよ。でも、ちょっとぶっ飛んでいる登場人物たちばかりで、なかなか感情移入して観るのは難しいだろうなと最初は感じました。ではお客さんは何を観たらよいのか? と考えた時に、僕自身が主人公のルーカスと同じように新人作家として、ベテランの放送作家の人たちに混ざってバラエティ番組とかを作っていた時期があったので、そこにすごく重なる部分があると思ったんです。とにかくここに出てくるマックス・プリンスという人気コメディアンを筆頭に、この不思議な人たちの生態をきちんと描き出そうと。ヘンな例えですけど水族館で魚を見るような感じで、彼らの生き様を2時間飽きずに、お客さんに観てもらおう。あ、この人たちは本当に生きているんだな! といった匂いや空気感を、きちんと作るべきだと思ったんです。配信ドラマを手がけて感じた今のテレビドラマ界の限界僕、このあいだ配信のドラマ(編集部注;「Amazon Prime Video」にて配信中の香取慎吾主演『誰かが、見ている』)をやったんですが、そのときに、常に時間に追われて制作されている地上波のテレビドラマは、もしかしたら、もう限界に近づいているんじゃないかなと感じることがありました。でも僕はテレビが大好きだから、もしいつか終わりが来るのであれば、それをきちんと見届けなければいけないという思いをもったんです。それと同じ空気を、このマックス・プリンスたちの物語に感じるんですね。華やかで勢いのあった50年代のテレビ界の中で、取り残されていった人たちの物語――ならば、その人たちの滅び方というか、踏ん張り方をちゃんと見せることが、今この『23階の笑い』をやる意味だという気がするんです。僕が経験した1980年代の、テレビが元気だった頃の空気感をうまくこの作品の世界観に重ねて、それをお客さんに楽しんでもらうことが一番の見せ方なのかな……と感じて今、作っています。「瀬戸康史さんを“休ませない”のがテーマ」――多彩な面々が揃ったキャスト陣——キャストは、三谷作品におなじみの方もいれば、初参加の方も。この物語の登場人物と同様に個性の強い、華やかな顔ぶれです。そうですね、とても力のある俳優さんたちが集まってくださいました。理想は、「この人たち、覚えた台詞を言っているんじゃなく、今思いついた言葉でやりとりしているのでは?」と見えるくらいにしたいんですよね。今回はそれが出来る俳優さんたちですし、おそらくその域までたどり着くような気がします。ニール・サイモンの舞台を観ると、普通だったらあんなにしゃべる人たちはいないし、あんなに洒落た台詞を言い合う夫婦なんてありえない……と思うことがあります。それをどれだけリアルな空間に落とし込めるか――、この挑戦は面白いですね。——魅力の出演陣から、三谷さんの舞台に初参加となる瀬戸康史さん、吉原光夫さん、鈴木浩介さん、山崎一さんについて、稽古場での印象などをお願いします。瀬戸さんが演じるルーカスは、ほかの人たちが会話している場にいて何もしない時間が長いんです。なので一瞬たりとも気が抜けないように、皆に目配りしてコーヒーを入れたり、何かを片付けたり、相槌を打ったりとか、台詞以上に覚えなきゃいけないことが山ほどあるようにしたい。瀬戸さんを休ませないのがテーマですね。吉原さんは、ちょっと強面で怖いじゃないですか。で、「自分はコメディをやったことがないので」って堂々と仰るので、どうしていいかわからない(笑)。でも(吉原と同じく劇団四季に所属していた)栗原英雄さんとかいろんなところから「吉原をよろしくお願いします」とメールが来て、多くの人に可愛がられているんだな、というのはわかりました。でもまだ怖いです(笑)。鈴木さんは同じ事務所ですが、実は一度も会ったことがなかった。お会いする機会がなかったんですね。すごく何でも器用にこなしちゃう人かな〜と思っていたら、意外にそうではない、ということがなんとなくわかってきた(笑)。ただ、あの品のある佇まいは得難い。僕のオリジナル作品にも出て欲しい人です。山崎さんは、まあ、控えめに言って最高です。あの清潔感と存在感は得難い。面白い役者さんです。ヴァルというロシア移民の役で、ロシア語訛りの英語を話す、と戯曲には書かれているんです。それで、あえて翻訳調の“主語述語をハッキリ、きちんと言う人”にしたんですけど、もう、山崎さん、完璧です。歩く姿が三木のり平さんに似ているんです!面白い台詞とそのやり取りを存分に笑って楽しんでもらいたい——中心人物であるコメディアン、マックス・プリンスを演じる小手伸也さんは『子供の事情』(2017年)に続いての三谷作品への登場ですね。マックス・プリンスという人を誰にやってもらうかで、このお芝居は決まってくるわけです。小手さんはご自分でもホンを書かれたり、演出もされる方で、僕が思っていた以上に知的な人でした。あの体型なので、もっとノホホンとしたのんきな人なのかな? とイメージしていたんですが、ご本人は全然そうじゃない真逆のタイプでした。劇団をやっているだけあってリーダーシップもあって、皆の上に立つカリスマ性を持っている感じもある。それで今回マックスを誰にするかという時に、思い切って「小手さんは?」と提案しました。ご本人はビックリしていると思いますよ。このマックス・プリンスのモデルになっているのはシド・シーザーというコメディアンです。お笑いの人って、人前で演じている時と普段がまったく違って、オンオフの切り替えがものすごくはっきりしている人が多いんだけど、この物語はマックスのオフィスで展開するので、彼が表に立っているところは観客にはいっさいわからないんです。だから、「テレビに出ている時の感じをそのまま引きずっているマックスにしよう」と小手さんと話しました。「いるだけで面白い。一挙手一投足がコメディアンのそれになっているふうに作りたい」とお願いしたら、小手さん、頑張ってくれてます。彼は体の動きがすばらしい。足をぶつけて痛がっている様子とか、それだけでチャーミング。僕のマックス・プリンスがここにいる、という感じです。——いろいろ想像するだけで笑いが込み上げてきます。本番が楽しみです。『23階の笑い』はポピュラーではありませんが、ニール・サイモンの代表作に匹敵するくらい面白いものだと、皆さんに再認識していただけたら嬉しいです。とにかく皆おしゃべりで洒落ていて、ある種のファンタジーとして観ていただけるのではないかと思います。不思議な登場人物たちのやりとりを十分に味わえるよう僕なりに工夫しましたので、たくさん笑って、楽しんでいただけたらと思います。取材・文:上野紀子撮影:源賀津己■公演情報『23階の笑い』作:ニール・サイモン翻訳:徐賀世子演出:三谷幸喜出演:瀬戸康史 / 松岡茉優 / 吉原光夫 / 小手伸也 / 鈴木浩介 / 梶原善 / 青木さやか /山崎一 / 浅野和之2020年12月5日(土)~2020年12月27日(日)会場:世田谷パブリックシアター(東京)チケットは11月22日(日)よりチケットぴあにて一般発売開始! ※11月16日(月)11:00まで先行抽選受付中
2020年11月14日松竹では『喜劇 お染与太郎珍道中』を、2月1日(月)~17日(水)まで新橋演舞場、2月21日(日)~27日(土)まで京都・南座にて上演される。この度、本舞台の出演者が追加発表された。『喜劇 お染与太郎珍道中』は、昭和54年(1979年)3月明治座にて『与太郎めおと旅』という題名で初演。作家の小野田勇が稀代の喜劇俳優・三木のり平とタッグを組み、落語の噺を中心に、さらに歌舞伎のエピソードも加えてドタバタ珍道中に仕上げた。すでに渡辺えり、八嶋智人の出演を発表していたが、ふたりが演じるお染、与太郎が“ワケあり珍道中”で出会う人々に、太川陽介、宇梶剛士、石井愃一、深沢敦、春海四方、石橋直也、三津谷亮、有薗芳記、一色采子、広岡由里子、あめくみちこ、そして西岡德馬の出演が決定した。『喜劇 お染与太郎珍道中』2021年2月1日(月)~17日(木)新橋演舞場(東京都中央区銀座6-18-2)ご観劇料(税込)1等席:12,000円2等席:8,500円3階A席:4,500円3階B席:3,000円2021年2月21日(日)~27日(土)南座(京都府京都市東山区四条大橋東詰 )ご観劇料(税込)1等席:12,500円2等席:7,000円3階A席:4,000円特別席:13,500円チケット一般発売日:12月26日(土)10時より電話予約・WEB販売開始松竹ホームページ:
2020年11月02日吉高由里子と横浜流星がW主演を務める、三木孝浩監督の最新作『きみの瞳が問いかけている』。この度、三木監督が恋愛を題材にしている映画を撮るうえで必ず描くことについて語ったコメントがシネマカフェに到着した。本作のメガホンをとった三木監督は、今年で長編監督デビュー10周年。本作の主演である吉高さんと初タッグを組んだ『僕等がいた』や、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』『フォルトゥナの瞳』と数多くの恋愛映画を手掛け、今年公開した『思い、思われ、ふり、ふられ』ではいままでのキラキラ恋愛映画とは一線を画す内容で高い評価を得た。そんな様々な恋愛映画を手掛けてきた三木監督は、作品を描くうえで必ず描くことにつて、「『想い』の目線を必ず描くようにしている」と話す。続けて、「誰かを好きになった時、どこか周りの風景が消えてその人しか見えなくなるような感覚を、セリフ等の説明ではなく観客もキャラクターとシンクロして追体験できるような主観的な画作りで表現するよう心がけています」と、三木監督にしか描くことのできないキャラクターの繊細な表情や雰囲気作りについて語った。さらに、「恋愛映画は他のジャンルに比べて物語が出来事ベースではなく感情ベースで進むことが多いのが特徴で、キャラクター達の感情が動いた瞬間、特にセリフを喋る方よりも受ける方のリアクションを丁寧に捉えて、観客に能動的にその感情を想像してもらえるよう、間とか余白を大事にしています」とも語り、恋愛映画に真摯に向き合って作品を撮り続けた三木監督ならではのこだわりを明かした。そんな三木監督のこだわりを、本作でも存分に発揮。吉高さん演じる目の見えない主人公・明香里の“目の演技”は目の見えないハンデキャップを感じさせない、純粋な「想い」の目線を美しく描き、天真爛漫な明香里の言葉や行動にとまどいながらも、徐々に心を開いていく横浜さん演じる塁の“表情と声”だけで、この2人の関係性の変化を描いていく。『きみの瞳が問いかけている』は10月23日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:きみの瞳(め)が問いかけている 2020年10月23日より全国にて公開©2020「きみの瞳が問いかけている」製作委員会
2020年10月16日恋愛映画の旗手・三木孝浩が監督を、吉高由里子、横浜流星がダブル主演を務める『きみの瞳(め)が問いかけている』が、10月23日(金)より全国公開される。この度、横浜演じる“塁”の新たな場面写真が公開された。本作は、不慮の事故で視力と家族を失った女・明香里(吉高)と、罪を犯しキックボクサーとしての未来を絶たれた男・塁……光を失って生きてきたふたりが織りなすラブストーリー。横浜は世界大会での優勝経験を持つ空手の技術を生かし、本作のために10キロ増量して肉体を改造してアクションシーンを演じた。公開された場面写真では、明香里に出会う前、暗闇の人生を歩んでいる最中の、どこか遠くを見つめ切なさが宿る塁、そして明香里と出会った後の光が差し込んだような柔らかな笑顔の表情を浮かべる塁という、ひとりの人物の対照的な表情が切り取られている。本作に横浜が起用された理由として、三木監督は「横浜君の魅力のひとつに、表情の豊かさがあります。内に秘めたものがあるキャラクターを演じられる彼だからこそ、あのラストにたどり着けたと思っています。自分の内側の感情を揺らして芝居をするのが、彼の大きな魅力のひとつですね」と、表情の豊かさがキャスティングの決め手のひとつだったと語った。また、声にもこだわったという横浜は「目の見えない明香里に、声でおじさんだと勘違いされるので、少し低く、でもわざとらしくならないように、いいさじ加減を狙いました。自分の普段の声とは違うので、最初は違和感があったのですが、塁として生きていくうちに慣れていきました。話し方はぶっきらぼうでも、優しさが滲み出るというのが大事だと思っていましたので、温かみがあるような声の出し方というのは意識していたかもしれないです」とコメントした。『きみの瞳が問いかけている』10月23日(金)より全国ロードショー
2020年10月14日吉高由里子と横浜流星がW主演を務め、邦画界を牽引する恋愛映画の旗手・三木孝浩監督が作り上げる最高純度のラブストーリー『きみの瞳が問いかけている』より、メイキング写真が到着した。今回のメイキング写真では、不慮の事故で視力と家族を同時に失う悲劇に見舞われる難役に挑む吉高さんと、入念なやりとりをする三木監督の写真をはじめ、本作でも重要なシーン、海岸の場面で三木監督が、キックボクサーとして未来を絶たれた塁を演じる横浜さんへ演出する場面が切り取られている。『僕等がいた』以来、今回8年ぶりの再タッグとなった吉高さんと三木監督。吉高さんは「三木監督とは、迷っていること、これは違うかもしれないなと感じたことなど、お互いになんでも話し合える間柄」と関係性を語り、「すぐに走ってきては『こういう感じ』と微妙なニュアンスを直接伝えてくださるので、大変わかりやすかったです。演じる側、観る側の気持ちを理解して、温もりのある演出をされる、心から信頼できる監督です」とその強い信頼関係を明かす。一方、三木組初参加となった横浜さんは「一つのシーンを、いろいろな角度からたくさん撮ることによって、その場面の登場人物たちの心情を大事に作ってくださる監督で、ご一緒していて非常に心強かったです」と印象を述べ、「現場でも様々なアドバイスをくださっていたのですが、言われたことをただそのまま形にするのではなく、監督が何を求めているのか自分なりに解釈して、塁の気持ちを見つめながら演じるようにしました」と撮影をふり返った。そんな2人から厚い信頼を寄せられている三木監督は「今回はメイン二人の物語になりますので、特に重視したのは彼らの距離感です。最初に出会った時から、ラストへ向けてどう変化していくか。物語の流れに沿った順撮りではないので、シーンが変わる度に二人と確認し合いました」とメイキング写真の通り、それぞれと入念なやり取りを行っていたとコメントしている。『きみの瞳が問いかけている』は10月15日(木)先行上映(一部劇場を除く)、10月23日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開。(cinemacafe.net)■関連作品:きみの瞳(め)が問いかけている 2020年10月23日より全国にて公開©2020「きみの瞳が問いかけている」製作委員会
2020年09月08日(写真左から)ジェームス三木、原田龍二人生に反省はつきもの。昨年、世間をにぎわせた俳優・原田龍二もまた、自らの過ちと向き合いながら、猛省の日々を過ごしている。そんな原田が、波瀾万丈(はらんばんじょう)な人生を送る人々と言葉を交わす『週刊女性』の人気対談企画、『全裸俳優・原田龍二の「人生、反省。」』。第6回のお相手は脚本家のジェームス三木、その人だ。数々の浮名を流した重鎮・ジェームス三木との濃厚な時間。ドラマ顔負けの茨道を歩んできた、彼にしか語れない“男の生き方”とは!?■名刺には「脚本・演出・喫煙」原田小学生のころに、堺正章さんの『西遊記』を夢中になって見ていたので今日、ジェームス三木先生とお会いするのをとても楽しみにしていました!三木『西遊記』か!あれは楽しい仕事だったなあ。原田くんはいま何歳?原田今年50歳になります。三木僕は85だから……35歳下か。そんなに下か!原田そうなんです。そこで今日は、ジェームス先生の元気の源をお聞きしたくて馳せ参じました。三木元気の源ねえ。50歳のときに脳腫瘍(のうしゅよう)の大手術をして死ななかったのは、その後の人生にも影響してると思うよ。病気をしたあとのほうが元気かもしれない。原田病気がきっかけになったんですね。病気の後に、何か生活で変えたことはありますか?三木いや、特に大きくは変えてないよ。健康面では、ちゃんと薬を飲んで、歯科医に行ってる。最近、量は減ったけど、酒は飲むしタバコも吸うんだよ。原田たしかに、先生の名刺に「脚本・演出・喫煙」って書いてある!喫煙も仕事のうちなんですね。三木原田くんはタバコを吸うのかい?原田はい、吸います。三木おお、それはよかった。タバコはいい。理容師さんも「タバコを吸ってる人はハゲない」って言ってたんだから。原田そうなんですか!?初耳です。先生は食べるのもお好きなんですか?三木そりゃ好きだわなあ。妻と一緒に外食するのも楽しい。料理店にふたりで行って仲居さんなんかが料理を運んできて「前菜です」と言うと、妻はいつも「私は後妻です!」と言うんだよ。おもしろいだろ。原田うまいですねえ(笑)。三木前妻とは、泥沼離婚をしたから大変だったよ。前妻が1992年に出版した『仮面夫婦』という本の中で、僕が170人以上の女性と関係を持ったことを暴露されて、その本が15万部も売れちゃってさ。連日、事務所にはレポーターが押し寄せてたよ。ここ、ここの事務所だよ。原田壮絶ですね……。当時、奥様に気づかれてるな、という感覚はあったんですか?三木そりゃ気づくだろうな(笑)。黙って自宅を訪ねてきたりして、今で言う“匂わせ”をしていた女性もいるからね。原田170人以上ですからね……。三木当時は本当にどん底だった。もう一生、脚本は書けないかと、腹を括(くく)ったよ。それが57歳くらいだったから、思い起こせば、50代は本当にいろんなことがあった。原田脳腫瘍に『独眼竜政宗』の大ヒット、泥沼離婚……。人生の山場が全部50代に集約されてますね。三木泥沼離婚の渦中で、業界に干されていた僕に、NHKの川口幹夫会長(当時)が『八代将軍吉宗』の脚本を依頼してくれたんだ。でも、当初は「人間性に問題がある人に脚本を担当させるな」という抗議もたくさんあったとか。それでも、川口会長は「今回の件は、刑事事件ではなく、家庭の事情。ジェームス三木さんには脚本家として期待しています」と励ましてくれたんだよ。原田男気がありますね!すごくカッコいい。■女性は低い声の男にしびれるんだな原田先生はもともと、歌手をしていたんですよね。三木俳優座に入って役者を目指していたこともあるけど、アルバイトが忙しくて落第したからあきらめたんだ。20歳のときにテイチクレコードの歌手コンクールで合格して、13年間、歌手をしてた。ディック・ミネさんの前座をしたり、横浜のナイトクラブで歌ったりして生活をしていたけど、鳴かず飛ばずだったね。でもね、原田くん、歌手はすごく女にモテるんだよ。原田またいきなりですね!三木歌手としては売れなかったけど、出待ちの女の子はたくさんいてね。女性は低い男の声にしびれるんだな。原田くんは声も低いし男前だから、スキャンダルがあっても、女性が誘いにくるんじゃないか?原田いやいや、もう誰も寄ってこないですよ(笑)。三木そうかい。あんまりまじめになるとつまらん男になるから、気をつけるんだよ。原田アハハ(苦笑)。歌手時代、先生はどんな歌をうたっていたんですか?三木英語の歌や、楽器が弾ける友達と『前科二犯のブルース』っていういい曲を作ってたね。(歌う三木)原田すごい……!先生の歌を聴いて失神した女性もいたんじゃないですか?三木歌手時代はモテたけど、失神はしてなかったなあ(笑)。30代に入って限界を感じて、ほかのことをやろうと『月刊シナリオ』のコンクールに応募したんだ。それで『アダムの星』という作品が入選したのが転機だな。その後は、わりとトントン拍子に脚本家になったかもしれない。原田俳優、歌手、脚本や小説……と、さまざまな芸術に携わってきたんですね。■帰り際に「次は口説くぞ」が効く三木僕は「芸術には国境も国籍もない」というのが信条でね。特に歌は言葉が通じなくても伝わるから、すごくいいよ。芸術と、あともうひとつ、国境も国籍もないものがあるんだよ。原田なんですか?三木セックス。どこの国でも、セックスだけはなくならないだろう。もちろん、人間以外の動物も子孫を残すためにセックスをしているから、国籍どころじゃない。どんな生物も営んでいる行為なんだよ。にもかかわらず、今の日本はセックスについてまじめに語らないよね。原田そうですね。神聖化しすぎてフタをしているかもしれません。三木しかも最近の男は「セクハラ」と言われるのが怖くて女性を口説けなくなってるそうじゃないか。原田そうですね。僕は別の理由で、もう女性を口説けないですけど……。三木原田くんは僕から見たらまじめな男なんだけどな。原田くんは別として、セクハラが怖くて女性を口説けないという男性にもアドバイスがあるんだよ。例えば、1回目のデートでは女性を口説かず、帰り際に「次は口説くぞ」と宣言して別れるんだよ。そう言われれば、口説かれたくない女性は次のデートには行かなければいいし、セクハラと訴えられることもないと思うんだよな。原田なんだかドラマのワンシーンみたいですね。先生もそう言って今の奥さんを口説き落としたんですか?三木いや、僕は言ったことないんだよ。最近考えたから。原田ないんですか!(笑)三木惜しいことをしたよね。使ってみたかった。今の妻は、僕が講師をしていたシナリオ学校の生徒だったんだ。原田先生と生徒として出会ったんですね。じゃあ個人授業で仲を深めて……?三木個人授業もしてないよ(笑)。ちょうど、離婚騒動で大変だったときに知り合ったから、僕を気の毒に思ったのかもしれないな。原田お優しいんですね。三木優しいんだろうな。でも、もう子どもはつくれないよ(笑)。原田夫婦関係の形はそれだけじゃないですから!先ほどの奥さんとのエピソードを聞いて、ご夫婦の仲のよさが伝わってきましたよ。三木今じゃ、完全に尻に敷かれてるよ。僕の味方はもう愛するネコしかいない……。原田また、ご冗談を。三木僕と同じ50歳で人生の岐路を迎えた原田くんには、縁を感じるよ。若いころの自分を見てるようだ。新しい芸名でジェームス原田ってのはどうだ?原田うれしいです!今日は、先生の闘魂をしかと受け取りました。末はジェームス原田を名乗れるように、これからも精進します!【本日の、反省】ジェームス先生は、85歳の今も男としての色気をきちんとまとっている、すべてを超越した存在でした。男としての理想像を持っているから軸がまったくブレない。いろいろな経験を通して反省と奮起を繰り返してきたからこそ、言葉に説得力がある。でも“男はこうあるべき”という考えを押しつけるわけではない、優しさを感じました。女性関係で追従はできませんが、男としてジェームス原田になれるよう、がんばります!《取材・文/大貫未来(清談社)》ジェームス・みき◎1935年、旧満州奉天(瀋陽)生まれ。小学生のときに大阪府に引き揚げ、高校を中退後、劇団俳優座養成所に入る。その後、テイチク新人コンクールに合格し、歌手として活躍。’67年に「月刊シナリオ」コンクールに入選し、野村芳太郎監督に師事し、本格的に脚本家の道へ。大河ドラマ『独眼竜政宗』など、数々のヒット作品を手がける。はらだ・りゅうじ◎1970年、東京都生まれ。第3回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストで準グランプリを受賞後、トレンディードラマから時代劇などさまざまな作品に出演。現在は俳優業にとどまらず、バラエティーや旅番組に多く出演し、活躍の幅を広げる。芸能界きっての温泉通、座敷わらしなどのUMA探索好きとしても知られている。
2020年03月28日青春恋愛映画の名手・三木孝浩の映画監督デビュー10周年を記念して、映画上映イベント「三木孝浩 filmo day ~音楽と映画~ 2020」の開催が決定。スクリーンで観られる機会はめったにない作品ばかりを上映予定だ。『ソラニン』『僕等がいた』などを手掛ける三木監督の映像作家としての始まりはMV。当時、レコードメーカーでMVのディレクターとして「ORANGE RANGE」など数々のMVを制作し、「MTV VIDEO MUSIC AWARDS JAPAN 2005」最優秀ビデオ賞、「SPACE SHOWER Music Video Awards 2005」BEST POP VIDEOなどを受賞。「JUJU feat. Spontania」の「素直になれたら」の世界初のペア・ムービーでは「カンヌ国際広告祭2009」メディア部門金賞を受賞した。そして2010年に『ソラニン』で長編映画監督デビューし、『僕等がいた』は前後篇あわせて42億円を超える大ヒットを記録。以降も映画を中心にTVCM、ショートフィルム、MVと精力的に制作を続ける中、映画はこの10年間で15作品を発表(公開前作品含む)。今後は、浜辺美波、北村匠海らが出演する人気漫画の実写映画『思い、思われ、ふり、ふられ』や、吉高由里子と横浜流星が共演する『きみの瞳が問いかけている』の公開を控えている。そんな三木監督の作品を上映するイベントを開催。三木作品の単独上映イベントは、前回の映画監督デビュー5周年記念上映イベントから5年ぶり。進行MC全てを三木監督がまわすスタイルは変わらず、今回はこれまでの監督作品の中から、映画3本、ショートフィルム、そしてMVをスクリーンの大画面で上映する。また上映後には、ゲストを招いての舞台挨拶&ティーチインも実施。これまでの作品をふり返りながら、当時の秘話を語る。本イベントは、作品ごとに出入り自由な音楽ライブフェスのような上映イベント“三木フェス”となっている。今回の開催に関して三木監督は「10年というこのタイミングで、自分の辿ってきた足跡を見つめ直すと、自分の作品が本当に素敵な音楽に支えてもらってたんだなぁと改めて感じます。そんな素敵な音楽たちに想いを巡らせながら上映作品を楽しんでいただけたら嬉しいです!」と呼びかけている。なお、本イベントのチケット申込受付(抽選)は2月13日(木)18時から行われる。「三木孝浩 filmo day ~音楽と映画~ 2020」は4月19日(日)ユーロライブ(東京・渋谷)にて開催。(cinemacafe.net)
2020年02月13日いよいよ今月で幕を下ろす平成。日本テレビ系「金曜ロードSHOW!」では今週と来週の2週にわたり「さよなら平成2週連続スタジオジブリ」と銘打ってジブリ作品を連続放送。1週目の4月5日(金)今夜は高畑勲監督作『平成狸合戦ぽんぽこ』を放送する。本作は『火垂るの墓』『おもひでぽろぽろ』『かぐや姫の物語』など数々の名作を手掛け、昨年4月5日に逝去した高畑監督の手によって1994年(平成6年)に公開され大ヒットした作品。放送日である本日は高畑監督の一周忌でもある。舞台は昭和40年代の東京・多摩丘陵。当時の多摩地区はまだタヌキたちが平和に暮らしていた山だったが、宅地造成の波が押し寄せるなかで、激しい縄張り争いの末にタヌキたちの“合戦”が始まる。しかし人間の宅地開発のために森が切り崩されていく事態に「戦っている場合ではない」と、おろく婆(清川虹子)に一喝されたタヌキたちは、菩提餅山・万福寺の長老・鶴亀和尚(柳家小さん)の元で緊急会議を開き、先祖伝来の秘術「化け学」を復興させることに。佐渡や四国に住むという伝説の長老を招いて指導を受けるべく、玉三郎(神谷明)たちが使者として派遣されることになる。正吉(野々村真)やぽん吉(林家こぶ平)、おキヨ(石田ゆり子)ら若いタヌキたちは変化術の特訓を積み、遂に人間に「化ける」ことができるまでに。合法的に人間界で1000円稼いでくるという卒業試験にも合格したタヌキたちは、習ったばかりの変化術を駆使して人間撃退作戦を実行に移すことになる。武闘派の権太(泉谷しげる)は宅地開発のためにやってくるトラックの走行妨害をするという過激な作戦に着手するが、権太が怪我をしてしまい今度は怪奇現象を起こして人間を追い出そうとする。突然の妖怪の出現はマスコミに大きく取り上げられるが開発阻止には効果ゼロ。そんななか、四国から長老たち(芦屋雁之助、桂米朝、桂文枝)が到着して…という物語。正吉の声優にはバラエティやドラマなどで活躍する野々村さん、おキヨには大ヒット作「逃げるは恥だが役に立つ」や『コーヒーが冷めないうちに』などの石田さん、朝ドラ「まれ」「後妻業」などの泉谷さんをはじめ、三代目古今亭志ん朝、林家正蔵(当時:林家こぶ平)、三木のり平、芦屋雁之助、桂米朝、桂文枝、柳家小さんといった落語界から数多くのキャストが起用されている。これが平成最後のTV放送となる『平成狸合戦ぽんぽこ』は4月5日(金)今夜21時~日本テレビ系「金曜ロードSHOW!」枠で放送。次週4月11日(金)は『風立ちぬ』をオンエア。(笠緒)
2019年04月05日●漫画原作の魅力はキャッチーなキャラクター第57回小学館漫画賞一般向け部門を受賞し、「このマンガがすごい! 2009オンナ編」第1位に輝いた小玉ユキの漫画『坂道のアポロン』が実写映画化され、3月10日より公開される。長崎・佐世保を舞台に、孤独な青年・薫(知念侑李)が札付きの不良と恐れられるクラスメイト・千太郎(中川大志)と、心優しいクラスメイト・律子(小松菜奈)と出会い、ジャズを介して心を通じあわせていく。アニメ化されたときには、演奏シーンのリアルさが「名場面」として話題を読んだ同作。実写映画化にあたっては、三木孝浩監督自らキャスティングに関わっているという。今回のキャスティングのポイントや脇を固める俳優陣の魅力について、三木監督に話を聞いた。○男性ファンが多い作品――原作やアニメが人気の『坂道のアポロン』ですが、私の周りにも男性でこの作品が好きな人がいて、幅広い世代に支持されているのかなと思いました。男性ファンがすごく多い作品ですよね。選曲も良くて、「Moanin」や「My Favorite Things」は、初心者でも聞きなじみのある曲ですし、全然ジャズを知らない薫が段々ジャズを演奏する喜びに気付いていくという展開なので、薫目線で入っていけるのだと思います。僕もこの作品に関わるまではそんなにジャズに詳しくなくて、作品に関わりながら「あ、ジャズってこういうところが楽しいんだ」と気づいていけたので、映画にする上でも入りやすさはすごく大事にしました。――今、漫画原作の映画がすごくたくさんあるという状況ですが、その魅力はどういうところにあると思いますか?やっぱり、良い作品が本当に多いという、日本の漫画文化の深さがあるのだと思います。もちろん小説原作でもたくさんありますが、漫画原作の面白さは、キャラクターにあるのではないでしょうか。ストーリーの起伏だけでなく、それぞれのキャラクターに魅力がある作品がすごく多いなと思います。今回も、客観的に見ると千太郎はすごくキャッチ―なキャラクターだと思うんですよね。その魅力に薫が引っ張られていくのですが、漫画ならではの面白さが出ている強烈なキャラクターなのではないかと思います。――今までの中川さんのイメージとも、また少し違うキャラクターのように思いました。そうですね。映画化の企画をもらったときに、誰よりもまず「千太郎、誰がやるの? 今の日本映画界にいる?」という話になりましたから(笑)。ハーフ顔に見えて、ガタイが良くて、ドラムができて……もう、キャスティングする側からしたらゾッとするようなキャラクターですけど、だからこそ、トライしがいがある。ヴィジュアルもドラムの演奏も含めて、大志君がキャラクターを体現してくれて嬉しかったです。●薫と千太郎はセットで考えていた○運命的な2人にオファー――キャスティングには1から関わっていらしたんですか?もちろん、まっさらな状態から関わっています。多分キャスティングだけで半年か1年以上かかりましたし、「いいキャストが見つかるまで、これは進められないね」と言っていました。定期的にプロデューサーと集まってキャストを探していたのですが、何かのタイミングで、フッと「知念君と大志君の身長差は面白いな」という話になったんです。そこから大志君がドラムをかじったことがあると聞いて、「おっ!」と思って、プロフィール写真を茶髪にしたり短髪にしたり落書きして、「千太郎、いけるんじゃないの!?」という話になってから、グッと現実味を帯びて来ました。――薫と千太郎はセットで探されていたんですか?完全にセットでしたね。組み合わせを考えているうちに、知念くんと大志くんのコンビにすごくピンときたんですが、2人が、実は共演経験もあって仲が良いということは、全然知らなかったので、すごく運命的だと思いました。――小松さんについてはいかがですか?律子のキャストは、まず「薫と千太郎を決めてから」という思いはありました。すごく難しいポジションなんですよね。薫と千太郎の2人はキャラクター作りの拠り所があるのですが、律子は受け身の立場。2人を見てどういう表情になるのか、というのが芝居のベースになります。『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』を監督したとき、菜奈ちゃんの演技のすばらしさを感じていましたが、本当に何かを感じて出る表情のリアリティが素晴らしい女優さんだと、改めて思いました。お客さんは律子というフィルターを通すことで、2人のことをより深く理解していくので、すごく重要な役どころです。菜奈ちゃんが素敵なのは、技術で泣いたりするんじゃなくて、現場で内から湧き出た感情を大事にするところ。その表情の嘘のなさに、ますます信頼できる女優さんになったと感じました。――ほかにも豪華キャストが集まっているのがすごいですよね。ディーン・フジオカさん(桂木淳一役)も、真野恵里菜ちゃん(深堀百合香役)も、中村梅雀さん(律子の父・迎勉役)もすばらしかったです。梅雀さん、本当にその世界では名の知れたベーシストですし。もともとご本人はエレキが得意ですが、今回を機に「ぜひウッドベースもやりたい」とおっしゃっていて、実際にめちゃくちゃうまくて。何よりやはり、「プレイするのが楽しい」という表情が1番出ていましたね。あの梅雀さんの表情で、恐る恐る入ってくる薫が「ジャズって、楽しい」と思えるような、優しく迎え入れてくれる感じに助けられました。もちろんディーンさんもアーティストなので、ピアノもギターもできるんですよ。でもトランペットはやったことがなかったので、「これを機にぜひ覚えたい」と特訓してくださって。音楽に対するモチベーションがものすごく高いメンバーに集まってもらえたことが嬉しかったです。■三木孝浩1974年生まれ、徳島県出身。これまでに、いきものがかり、FUNKY MONKEY BABYS、YUI、ORANGE RANGE等、数多くのPVやライブ映像、TVCM,ショートムービーなどを手掛け、MTV VIDEO MUSIC AWARDS JAPAN 2005 最優秀ビデオ賞、カンヌ国際広告祭2009メディア部門金賞などを受賞。2010年に『ソラニン』で長編映画監督デビュー。以降、『僕等がいた』(前篇・後篇/12)、『陽だまりの彼女』(13)、『ホットロード』(14)、『アオハライド』(14)、『くちびるに歌を』(15)、『青空エール』(16)、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(16)、『先生!、、、好きになってもいいですか?』(17)などがある。(C)2018 映画「坂道のアポロン」製作委員会 (C)2008 小玉ユキ/小学館
2018年03月09日●友情を超えた、眩しい絆の物語第57回小学館漫画賞一般向け部門を受賞し、「このマンガがすごい! 2009オンナ編」第1位に輝いた小玉ユキの漫画『坂道のアポロン』が実写映画化され、3月10日より公開される。長崎・佐世保を舞台に、孤独な青年・薫(知念侑李)が札付きの不良と恐れられるクラスメイト・千太郎(中川大志)と、心優しいクラスメイト・律子(小松菜奈)と出会い、ジャズを介して心を通じあわせていく。メガホンをとった三木孝浩監督は、恋愛映画の名手としても知られているが、今回は薫と千太郎の友情が物語を動かしていく。知念、中川、小松という若手トップクラスの俳優陣や同作の見どころについて、三木監督に話を聞いた。○未成熟な人間がもがく姿を描きたい――恋愛映画のイメージが強い三木監督ですが、今回は薫と千太郎、2人の友情がメインなのかなと思いました。恋愛映画のイメージ、強いですか?(笑) 僕は、大きなくくりで「青春映画」が多いということなんだと思います。だから恋愛も青春映画だし、友情も青春映画なんですよね。「未成熟な人間が、自分のあるべき姿に向かってもがく」ところに美しさを感じるし、キャラクター達がすごく愛おしくなるので、描くのが好きなテーマです。もがく対象が恋愛のときもあれば、部活のときもあり、音楽や友情だったりもする。でも目指すものがそれぞれ違うだけで、根底には未成熟な人間の成長があります。――今回の『坂道のアポロン』では、これまで恋愛映画で使われていた手法を、2人の友情を描くときにもとられていたというお話でしたが。普通のラブストーリーに使う手法を、薫と千太郎の関係を描くときに応用したところはありますね。たとえば薫が千太郎を見る時の音楽や映像表現は、女の子が魅力的な男の子を見た瞬間の演出にしています。「強烈な魅力を放つ千太郎に、どんどん反発しながらも惹かれていく薫」という図を、一種のラブストーリーに見えてもいいかな、くらいの感覚で撮っていました。というのも、この作品は単なる友情の話ではなく、それぞれが奥底に孤独を抱えながら、「独りじゃない」と思わせてくれる相手に出会う物語だからなんです。薫と千太郎が音楽を通じて「自分がここにいていい」という証明を見つけて、互いに存在理由を見出していく。その友情を超えた結びつきは、律子の目線で見るとすごくうらやましく感じるし、映画を観た方が「その中に入りたい」と思ってくれたら、世界観が描けているということなのだと思いました。――夜の教会に2人で並んでいるところや、2人で坂道を駆け下りていくところなど、あまりにもまぶしすぎて……。手を取ってダッシュするって、映画『卒業』のような駆け落ちパターンですからね(笑)。しかも笑顔で駆け下りていく。でも、薫と千太郎だったら「そうだよな」と納得してしまう感じがありますし、観客の方にも愛おしく見えたらいいなと思いました。●期待以上の演奏シーンに、監督もキュンキュン○律子のキュートさは小松菜奈ならでは――一方で、律子と薫もキュンとするシーンが多くて、糸電話のシーンやキスシーンも素敵でしたよね。糸電話も、昭和の時代設定だからこそ描けるアナログ感でしたね。電話も携帯ではなく家の電話ですし、なかなかコミュニケーションを取れない難しさがある。でも顔を見合わせることがやっぱり一番のコミュニケーションというところが、この時代を描く面白さだったりもしますし、今までにない空気感を出せたのですごく楽しかったです。――出演者の方も少しレトロポップ感のある顔立ちなのかなと思いました。特に菜奈ちゃんは、60年代のファッションがすごく似合うんですよ。元々、モデルもやっているので何でも似合うんですけど、あのキュートさは、なかなか出せない。やっぱり、菜奈ちゃんだなと思いました。――三木監督は、映画を観てキュンとしたりするタイプなんですか?めちゃめちゃします(笑)。もう、キュンキュンしてますね。――撮影中もキュンキュンされているんですか?かなりしています(笑)。でも今回何が一番キュンと来たかって、完成披露のときの舞台挨拶かな。その場でピアノを演奏した知念くんと、ドラムを演奏した大志くん、2人の目線が合った瞬間は、もうキュンキュンしました。映画の演奏シーンも、千太郎と薫が「よしいくぞ!」と目を合わせたり、相手の演奏を見て「すごいな」と笑顔になっていたりする瞬間、2人は笑顔なのに、観ているこっちは泣けてくるんです。彼らが音楽を演奏している姿を見て、孤独を抱える2人が本当に幸せそうな表情をしているところが、やっぱりグッときました。演奏シーンでは互いの目線を撮るときに、2つのカメラでそれぞれ顔に寄っていたんですが、モニターを並べて見ていたら、「これだけ演奏を練習してきたけど、もう、表情だけでシーンが成立するんじゃないか?」という気持ちになりました。これまでの準備や練習があって、感情も高めて来たからこそ、この表情が出来るんだなと思いました。表情だけで2人のすべてが伝わる、それくらいの演技をしてくれたんです。○アニメ版に刺激された――映画を拝見しても、よくあの演奏を……とびっくりしました。やはり演奏シーンはすごく大事に撮られていたんですか?原作も素晴らしいですし、僕も元々アニメ版を観ていたので、文化祭のシーンのすごさは身に染みていました。プレイヤーの動きをトレースして、もはや音楽が流れていなくても音の伝わるようなアニメーションになっていて、すごいと思っていたのに、それを自分が撮らなきゃいけない。これを実写でやるとなると、役者に相当負担がかかると思いました。実際に若い年代の俳優さん達がやらなければいけないと考えると、最初は「それは無理じゃないかな」と、思ったくらいです。でも目標としては、遜色ないものを作りたかったですし、特にこだわって作った部分でした。――演奏シーンをプロの方の吹き替えにしようと考えたりはしなかったんですか?最初は、手元はプロのプレイヤーに任せるという選択肢もあるのかな、と思いました。でもこちらの想像以上に、2人が演奏曲を完璧にトレースできていたので、もう本当に、感動しましたね。嘘をつかなくてすむというのは、監督として本当に幸せな事です。本人が演奏しているというリアリティがあるからこそ、感動できるというのは大きいです。■三木孝浩1974年生まれ、徳島県出身。これまでに、いきものがかり、FUNKY MONKEY BABYS、YUI、ORANGE RANGE等、数多くのPVやライブ映像、TVCM,ショートムービーなどを手掛け、MTV VIDEO MUSIC AWARDS JAPAN 2005 最優秀ビデオ賞、カンヌ国際広告祭2009メディア部門金賞などを受賞。2010年に『ソラニン』で長編映画監督デビュー。以降、『僕等がいた』(前篇・後篇/12)、『陽だまりの彼女』(13)、『ホットロード』(14)、『アオハライド』(14)、『くちびるに歌を』(15)、『青空エール』(16)、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(16)、『先生!、、、好きになってもいいですか?』(17)などがある。(C)2018 映画「坂道のアポロン」製作委員会 (C)2008 小玉ユキ/小学館
2018年03月07日今回の「さんまのまんま」は、1月9日(土)に『ピンクとグレー』の公開を控える、いま大注目の若手実力派俳優・菅田将暉が初登場!以前、他局のバラエティー番組で“若き日の明石家さんま”を演じたことがある菅田さんを、さんまさん本人が大絶賛していることが分かった。映画、TV、CMと大活躍の2015年に、2016年も『ピンクとグレー』ほか、中村倫也主演『星ガ丘ワンダーランド』、柳楽優弥とコンビを組む『ディストラクション・ベイビーズ』、池松壮亮と高校生を演じる『セトウツミ』など、いまや若手随一の売れっ子となった菅田さん。さんまさんを演じた際のバラエティー番組では、撮影日が1日しかない上に「みんなが知っているさんまさんなので、すごくやりにくかったです」と役づくりに大苦戦したことを報告。しかし、「バラエティーの企画で本気で芝居するのが面白いと思った」と、役を演じ切った充実感を語った。そんな姿に、さんまさんも「菅田君の中の明石家さんまをやってくれた。あんなに真剣に演じてくれるとは…」とベタぼめ。また、今回のお土産は、なんと菅田さん手作りというスカジャン。「生地選びに5時間かけて、ミシンも全部ボクが縫いました」と話すほどの自信作で、ポケットの位置や模様などにもこだわりが詰め込まれている。「カッコええわ」と感動し、さっそく着てみたさんまさんだが、重大な問題が発覚してしまい…。菅田さんが悔しがったその問題とは!?そして、さんま役を演じるために練習していたという、吉田拓郎の名曲「人生を語らず」の弾き語りを本人の目の前で生演奏。さんまさんが「ここ(さんまのまんま)では、桑田佳祐さんや松山千春さんも歌ったんやで~」とプレッシャーをかける中、美声を聞かせる菅田にまさかの展開が…!?さらに、CMで“鬼ちゃん”役が好評を博している菅田さんだが、「人気CMに後から入っていくのが怖かった」と役に大抜擢されたことへの不安や、“鬼ちゃん”役について役者ならではのこだわりを明かし、「そんなに芝居、好きなんやな」と、さんまさんを驚かせるひと幕も。そんな菅田さんに、さんまさんは三國連太郎や三木のり平、大先輩役者たちのエピソードを話して聞かせる。役者・菅田将暉の真摯な姿に、すっかり感心した様子のさんまさん。ラストのまんまコーナーでは、高校時代にアメフト部だった菅田さんがまんまとキャッチボールをするというから、その姿もチェックしてみて。「さんまのまんま」(ゲスト:菅田将暉)は12月26日(土)13:56~関西テレビにて、2016年1月10日(日)13:00~フジテレビにて放送。(text:cinemacafe.net)
2015年12月26日『ソラニン』『くちびるに歌を』を手がけた三木孝浩監督を特集する上映イベント「三木孝浩 filmo day ~音楽と映画~」が、11月8日(日)に開催されることがこのほど決定した。『僕等がいた』『ホットロード』『アオハライド』など、恋愛青春映画の名手として大ヒット作の多くを手がける三木監督。映画監督デビュー5周年を記念して実施される本イベントでは、ミュージックビデオ監督出身の三木監督にとって長編映画デビューとなった『ソラニン』をはじめ、山崎賢人が初映画出演にして主演を務めた『管制塔』、初めて“ラブストーリー”ではない本格的な“人間ドラマ”に挑んだ『くちびるに歌を』の、どれも音楽をモチーフにした3作品が上映される。中でも『管制塔』は、2011年の公開当時、ロケ地である稚内での先行上映と東京・大阪にてわずか2週間しか上映されず、ニューヨーク・ロンドン・ノルウェー・シカゴでの国際映画祭で高い評価を受けた作品であり、今回の劇場での上映は貴重な機会となる。『ヒロイン失格』『orange』と公開作が続く山崎さんが披露する初々しい演技と歌声も見どころだ。三木監督は今回のイベント開催に際して「昨年、『くちびるに歌を』を撮り終えて、ふとこれまでの自分を振り返った時に、あぁやっぱり自分の作品は音楽によって背中を押されてるんだなぁと実感する瞬間がありました。音楽が翼になって、見たかった風景(シーン)を求めて旅をする。それは MVディレクター時代から変わらない自分の創作の源でもあります。そうして創ってきた映画たちを、今回あらためて皆さんに観ていただける機会ができたことをとても嬉しく思います」とコメントしている。また、イベントでは三木作品出演者からの映像コメントをスクリーンで上映するほか、ゲストを招いての舞台挨拶、三木監督作品のパッケージ販売、さらに三木監督のサイン会も開催される。作品ごとに出入りは自由となっており、音楽ライブフェスのような映画上映ベントとして、ぜひチェックしてみて。「三木孝浩 filmo day ~音楽と映画~」は11月8日(日)、渋谷ユーロライブにて開催。(text:cinemacafe.net)
2015年10月13日ASIAN KANG-FU GENERATIONやORANGE RANGE、いきものがかりなど、数多くのアーティストのミュージックビデオを手掛ける三木孝浩監督。映画監督デビューを飾った『ソラニン』以来、能年玲奈主演の『ホットロード』、本田翼&東出昌大主演の『アオハライド』など、青春映画の新たな名手として着実にフィルモグラフィーを更新し続けている。15歳だったすべての人へ――。そんな印象的なキャッチがつけられた三木監督の最新作『くちびるに歌を』は、今15歳という年齢を迎える子どもたちや、かつて15歳だった私たち大人の心を、確かな感動で包み込むような素晴らしい作品に仕上がっている。乙一の変名として知られる中田永一による原作小説は、アンジェラ・アキ「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」を物語の主軸に、アンジェラさんが長崎県・五島の中学校を訪ねたテレビドキュメンタリーがもとになっている。原作を読んだ三木監督は、映画化への強い思いを抱いたそうだ。「ああそんなことに悩んでいたなあというような、自分が15歳だったときの気分を思い出させてくれた作品だったんです。だから自分の実体験も重ねやすかったですし、すごく自分で映画化したいなと思いました」。撮影に入る前に、ひとりでロケハンを行ったという三木監督。舞台となった長崎県・五島の透き通るような海の青と、生き生きとした緑が視界に飛び込む美しいショットの数々が映し出されている本作は、三木監督が「手紙」からイメージされる風景を自らの足で探し、イマジネーションを膨らましていったそうだ。本作の何よりの魅力は、合唱に夢中になって挑む子どもたちの真摯な姿だろう。仲村ナズナ役の恒松祐里や桑原サトル役の下田翔太をはじめ、今後この作品が機転となり活躍していくであろう子役たちが、演じる役とともに成長する姿を生き生きと感じることができる。映画制作において子役の演出は難しいと言われることがしばしばあるが、三木監督はその行程が楽しかったと語る。「むしろ大人に芝居をつけるよりも楽しいですね。すごく変化や成長しやすい時期ですし、“1”言ったら“5”も“10”も自分の中で考えてくれていたりするので。これだけ人数がいると、それぞれの相互作用があって、ひとりの子がいい芝居をすると、それに引っ張られるように周りもいい芝居をしたりとか、その影響し合う姿を観ても面白かったですね」。『ソラニン』『管制塔』と同様、ひとつの楽曲が物語の主軸となり、“未熟”な登場人物たちが、音楽を通して成長していく様を描く本作。だからこそ、クライマックスにおける演奏シーンが観るものの心に感動をもたらすのだが、過去作品を振り返りながら、合唱がテーマとなった本作の演出の裏側について三木監督は明かす。「みんなほぼ合唱に関してははじめてだったので、一から練習して本番に向けて頑張りました。そこが実は撮影の狙いでもあって、子どもたちが役者として成長していく姿と、この子たちが物語の中で成長していく姿というのが、撮りながらリンクしていくといいなと思ったんです。役者として合唱を練習していくその成長過程をちゃんとこの子たちが体感することで、物語の中でそれが投影されれば、すごくリアルにできるんじゃないかと。それは過去の作品にも言えるのですが、音楽単体で聞くよりも、物語のキャラクターをそれぞれ知った上で歌を聞くと、よりその歌が深く聞こえるというのはどの作品にも共通する部分だと思います。この作品も、最後に合唱する姿を観て、それぞれのキャラクターのいままでのことを思いながら、歌詞にその子たちの気持ちが乗って歌ってるんだということを、観たひとが想像してくれたらいいなと思っています。合唱っていうのは、たぶんそれぞれの悩みはあるけれど、一緒に歌うことでその子たちの救いになっているというのが、言葉での説明ではなく、観てるひとの体感として感じてもらえる効果があるんじゃないかなと思いましたね」。子役のキャスト陣に対して、大人側のキャストには木村文乃や桐谷健太といった魅力的な配役はもちろんだが、本作のもうひとつの大きな見どころとしてあげられるのは、やはり主演を務めた新垣結衣のキャスティングだろう。印象的な彼女の笑顔が封印され、まったく笑わないクールな柏木ユリ役を新垣さんが演じる本作は、観るものに新鮮な意外性と、新垣さんの新たな魅力を感じさせる。三木監督はそんなキャスティングへの“戦略”を語った。「毎回キャスティングするときに、特に女優さんは、いままでにない表情を切り取りたいなと思っていて、パブリックイメージと逆のキャスティングをしています。それが観ているひとの予想を裏切ったり、逆にギャップを感じさせることで、共感度が増すと思うんです。今回も、パブリックイメージ的には明るくて元気なイメージがある新垣さんにあえて笑っている姿を封印してもらうことで、どこかでドキッとするというか、“あれ、いつも笑っているひとが笑っていない”という負荷がかかっている状態で観てもらうことで、なぜそうなんだろうと能動的に想像してもらう。もしかしたら、普段は明るく見えている新垣結衣本人にもそういう一面があるんじゃないかと思ってもらえたら“勝ち”かなと思っているんですね。それが柏木ユリを演じてもらう上で実は大事なポイントだった気がしますね。特にあんまり自分の気持ちを吐露するキャラクターではないので、柏木は子どもたちを今観てどう思ったんだろうとかどう感じたんだろうと想像しながら柏木ユリが再生していく様を観てもらえればと思いました」。錆びてぼろぼろの車や折りたたみ式のガラケーなど、ユリの人物造形における細部に至るまでの設定が、柏木ユリという人物をなんとも実在感のあるキャラクターに仕上げることに成功しているのだが、実は柏木ユリ人物造詣の多くは映画オリジナルのもの。そこには、三木監督の並々ならぬ思いが注がれていた。「実は、原作はほとんど中学生それぞれの話なので、柏木ユリ自体のキャラクター造形や、柏木先生の視点は深く掘り下げられてないんです。ですが、物語のベースになっているアンジェラ・アキさんの『手紙』が、歌の一番が十五歳の自分が大人の自分に宛てて書いた手紙、二番が大人の自分が十五歳に向けて書いた手紙という構成になっているので、映画自体も十五歳の視点と大人の視点というのを相互に作用させられるような構成にしたいなと思いました。なので、柏木先生については、折りたたみケータイに執着してるところとか、映画オリジナルですごく膨らませた部分があります」。本作の人間ドラマとしての魅力は、三木監督が柏木ユキという主人公に仮託した大人の目線に他ならない。これまでの作品では、どちらかといえば物語の中で成長していく“子ども”の主人公たちに目線に寄り添ったかたちが多かった三木監督だが、本作における「手紙」の構成になぞらえて描かれた二つの視線は、本作をさらに感動的に演出している。そしてそんな柏木ユキの人物造形への思い入れは、三木監督自身が親になったことが大きいようだ。「今回視点の変化っていう部分では、自分が親になったっていうのがすごくありますね。今回の映画の中で中学生だけの視点だけじゃなくて、柏木先生というのを強く入れたかったというのはその部分で。撮影前の取材やオーディションをしたり準備をする中で、子どもたちの成長をみて自分がハッとさせられる瞬間っていうのが多かったんですね。子どもたち視点っていうのはもちろん大事なんですけど、子どもたちが成長する姿を観る大人がどう感じるかっていう方が、この作品を描く上では逆に一番重要なんじゃないかなと思ったんです。だからこそ、柏木先生が大人の代表として子どもたちの姿をみることで変化していくっていうのは、一番共感してもらえるんじゃないかなと思いました」。現在5歳と2歳の二人のお子さんがいるという三木監督。演出の際にも、自分の娘が十五歳ぐらいになったらどんな悩みを持つのか想像しながら作ったのだそう。本作に溢れる暖かい目線は、父親としての三木監督のひととなりが現れているからこそなのかもしれない。「今後残っていく作品にしたい」と思い制作したという本作を経たいま、今後の展望について語ってもらった。「映画の中で成長だったり再生だったりを描くのが、毎回自分の中でテーマになっていて、ジャンルは変わっても今後もそれがモチーフになるのは変わらない気はしますね。そこが愛おしいというか、未熟だったり未完成な人間が、それでももがきながら自分のあるべき姿を求めて頑張っている姿というのが、観る方としても感動しますし、作り手としてもそこを描きたいなと常々思っています」。人間ドラマの描き手として、今後の三木監督に期待したい。(text:cinemacafe.net)■関連作品:くちびるに歌を 2015年2月28日より全国にて公開(C) 2015 『くちびるに歌を』製作委員会(C) 2011 中田永一/小学館
2015年09月08日ヴイエムウェアは3月3日、副社長を務めていたジョン T. ロバートソン氏が代表取締役社長に、2005年10月から代表取締役社長を務めていた三木泰雄氏が代表取締役会長に就任すると発表した。三木氏は、「ジョンは2007年に入社したのだが、当時の従業員は30名弱。当時から、2人でヴイエムウェアを成長させるべく、奮闘してきた。社内でも『次の社長はジョン』と見られており、ようやくその時が来たことになる」と、今回の社長交代が規定路線だったことを明らかにした。三木氏の会長就任後のミッションは、「新規事業の開拓とパートナーとのリレーションシップの強化」となる。「パートナーの数はますます増えている一方、リレーションシップの強化が重要になってきている。こうした業務と社長としての任務を一人でこなすことは難しい」と、会長職への就任理由を説明した。ロバートソン氏は、2007年に入社後、5年にわたりエリア バイスプレジデントを務める。その後、2012年にVMware ASEANのバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャに就任し、シンガポールを拠点にアジア地域のビジネスを開拓してきた。2014年にヴイエムウェアの副社長に就き、今回、社長に就任する運びとなった。ロバートソン氏は20年以上、日本で生活しているとのことで、日本語が堪能。発表も流暢な日本語で行われた。同氏は、2015年度の事業戦略について、「モバイルとクラウドへの対応が迫られる顧客の成功に向け、"One Cloud, Any application, Any Device”を実現する」と説明した。同社が目指すOne Cloud, Any application, Any Deviceとは、あらゆるデバイスからあらゆるアプリを企業のプライベートクラウドとパブリッククラウドから構成されるハイブリッドクラウドで利用することを可能にすることを意味する。また、ロバートソン氏はヴイエムウェア自身が「Japanese Heart」と「外資系mind」を兼ね備える「ハイブリッド企業」だと語った。「Japanese Heartは、例えば、チームワークのよさや顧客のための奉仕をいとわないところに表れており、また、外資系mindはグローバルのベストプラクティスを利用できるところにある」と同氏。今後は、社長として、「三木氏とのコンビネーションを続けていく」「vCloud AirやAirWatchといった新規事業への投資を積極的に行っていく」「これまで以上に離職率を抑えるため、女性活用を進め、ワークライフバランスを強化していく」といった3つの点に注力していくという。マイクロソフトも前日に社長交代を発表したが、現社長が会長に就任し、社長がカバーしきれない業務をサポートしていくという同様の内容の社長交代劇となった。ヴイエムウェアは、昨年、国内でパブリッククラウド「vCloud Air」を提供開始したが、それ以来、サービスプロバイダーとの付き合い方も変わってきているという。これまではサービスプロバイダーに対しソフトウェアを提供するのみだったのが、一緒になってクラウドサービスを開発する方向に向かっているとのことだ。ヴイエムウェアのほかにも、日本IBMやマイクロソフトも企業のハイブリッドクラウド活用の推進に力を入れており、競争はますます激化している。各社の社長交代が、今後どのような形でビジネスに影響を及ぼすのか、興味深い。
2015年03月04日若い世代を中心に絶大なる人気を誇る漫画家・浅野いにおの作品「ソラニン」の実写映画化を手がけた三木孝浩監督の動画インタビューが到着!宮崎あおいを始めとする若手人気キャストを迎え、主題歌はASIAN KUNG-FU GENERATION(以下、アジカン)が担当するなど、公開前から大きな話題を呼んでいる本作。これまで、多くのミュージックビデオの演出を行ってきた監督とあって、映画化に際してもライヴシーンを重視。原作について「音のない表現で音を感じさせて素晴らしい」と絶賛しつつ「映画ではそれとは違う形で音楽が持っている力を表現したかった」と思い入れを明かす。さらに、宮崎さんとのクランクイン前の会話、バンドのシーンにまつわるエピソード、主題歌をアジカンに決定した経緯、自らの青春時代についてまで、落ち着いた口調ながらも熱い思いが感じられるコメントが並ぶ。監督の視点、思いを知ることで、作品の見え方、受け止め方がまた違ってくること請け合い。映画を観る前に、ぜひご覧あれ!『ソラニン』は4月3日(土)より全国にて公開。※こちらのインタビュー映像はMOVIE GALLERYにてご覧いただけます。MOVIE GALLERYシネマカフェSweet「『ソラニン』 素晴らしきマンガワールド特集」■関連作品:ソラニン 2010年4月3日より全国にて公開© 2010浅野いにお・小学館/「ソラニン」製作委員会写真:太田好治■関連記事:芽衣子は理想の恋人?あなたの青春恋愛ソングは?『ソラニン』アンケート結果発表映画公開直前!『ソラニン』原作者・浅野いにおから動画メッセージが到着超豪華!宮崎あおい、高良健吾らキャストサイン入り『ソラニン』プレスを1名様にプレゼント桐谷健太×近藤洋一インタビュー「そっくりなベーシストが出てくるマンガがあるよ」宮崎あおいの言葉にアジカンのゴッチ感激!「録音して着ボイスにしたかった…」
2010年04月02日映画『ソラニン』の試写会が3月15日(月)、若い世代に人気の書店『ヴィレッジヴァンガード」(以下V.V.)主催で開催され、本作の三木孝浩監督とV.V.のオンラインショップの“中の人”こと中本恵二氏によるトークイベントが行われた。トークイベントは作品上映後ということで、中本さんは映画を観たばかり。早速、感想を尋ねると「いまもウルウルしていて、感動冷めやらぬ感じです。印象に残ったのは、最後のライヴシーン。宮崎あおいさんのギターを弾いているときの真剣な表情は、演技を超えてかなり(役に)入っているな、と。ひと言で言えば、観てよかったな、と」と絶賛。三木監督はこの言葉にホッとした様子。その三木監督は、ミュージックビデオの分野で活躍しており、本作で初めて映画監督に挑戦した。以前から(原作の)浅野いにおさんの作品は好きだったものの、「ソラニン」だけは読んでいなかったとか。「読んでみたらまさしく自分がやってきた音楽というフィールドに近い、バンドをやる若者たちの話で、ぜひやりたいと思って(監督の話を)引き受けました。音楽をテーマにしつつ、『夢を持ってるんだけど、まっすぐに進めないモヤモヤした感じ、冷めている感じ、想いと戦っている感じ』に共感できたし面白いと思った」と語った。中本さんは、原作漫画の連載当時、および漫画の発売当時について「よく『浅野いにおの新刊読んだ?』と話してました。読んでみて『なかなかない物語だな。売ってやろう!』という気持ちになって、当時かなり押しましたし、お客さんの反応も良かったですね」とふり返った。さらに話は世代論に。「浅野さんよりも少し上の世代」と言う三木監督は、90年代後半を引き合いに「あの頃は、斜に構える感じでも、根本は明るいというか、少しのん気さがあった。『ソラニン』のシビアな感じ…例えば貯金残高がなくなったり、タイムリミットが差し迫ってるという感覚はこの世代ならではかも。(劇中の)種田(高良健吾)や芽衣子(宮崎あおい)の悩み方ってきっと僕らの世代以降の悩み方だと思うんです。自分の幅が見えてしまい、設定が出来てしまう」とも。これに中本さんも「劇中の、ギターを初めて弾いた少年の『世界が開けたような』感覚を得る機会が少なくなっている。ネットで検索すれば何でも見える時代で、自分の発見に感動することがなくなった」と頷く。監督はさらに、自らの経験を挙げ「僕は徳島の田舎育ちで、高校時代に『映画監督を目指す』と周りに話して、何となくビデオ回して作った作品を『これは傑作なんじゃないか!』って幻想したりして(笑)、それがモチベーションになってた。いまは、例えば曲を作ればすぐにマイスペースに上げられて世間にも評価されてしまう。そこで自分のレベルにある程度、想定がついてしまう」と現代の“手軽さ”が、皮肉なことに若者たちの“熱”を奪っている現状を語った。若い世代を中心とした観客は、真剣な眼差しで監督の言葉に耳を傾けていた。また、トークイベントの最後には三木監督は、『ソラニン』以後について「浅野先生の別作品もやってみたいですね。『世界の終りと夜明け前』(小学館刊)が大好きなのでぜひ映像化したいです」と意欲を語った。『ソラニン』は4月3日(土)より全国にて公開。■関連作品:ソラニン 2010年4月3日より全国にて公開© 2010浅野いにお・小学館/「ソラニン」製作委員会/写真:太田好治■関連記事:『ソラニン』Twitterが熱い!フォロワーが3,000人突破宮崎あおい、夢はガソリンスタンドのバイト?『ソラニン』イベントで幻の楽曲も公開アジカン後藤バンドブレイク前をふり返り「僕らはちょっとおかしい」ふたりの想いをつなぐ歌!『ソラニン』劇場鑑賞券を5組10名様にプレゼント高良健吾率いる劇中バンド熱唱のデモCD付き!『ソラニン』特別前売鑑賞券予約開始
2010年03月16日『亀は意外と速く泳ぐ』や『転々』など、ゆるりとしたギャグと徹底的に作り上げられた独特の世界観で数々のファンを魅了する、日本映画界きっての奇才・三木聡。またもや摩訶不思議なタイトル『インスタント沼』と名づけた、監督の集大成とも言うべき最新作がDVDリリースされた。作品の随所から見られる監督の「映画」へのこだわり、そしてその原風景について、話を聞いた。実は、「〜沈丁花ハナメの冒険〜」という副題を考えていたと話す監督が、今回主軸に置いたのは、30歳前後の岐路を迎えたヒロイン・沈丁花ハナメ(麻生久美子)の“成長譚”。これまでにも増して、この作品では、主人公が前向きに人生と向き合っていくさまがストレートに描かれている。「ただギャグをやる以外の、別の楽しみ方を映画の中で見つけたいという気持ちはあった」と監督は話す。「人生の中で、成長しなきゃいけないとか、利益を上げなきゃいけないとか、いろんなことの目標値を周りに設定されるじゃないですか。でも、目標のない人生がむなしいというのは単なる植えつけで、別に意味なく一生を過ごしてもその人が良ければそれでいいわけじゃないですか。頑張らなきゃいけない理由なんて何にもないんですよね。そういう柵からちょっとフリーになってもいいんじゃないかという気持ちはあったと思います、2008年の夏は。それはそのときの気分だったんだろうし、それを観た人がまた別の気分を見出してくれると、ちっちゃい思想しかない映画が勝手な広がりになっていく。観た人がそれぞれ自由に思ってくれることが一番ですよね」。そんな三木監督の作品に欠かせない要素というのが、ナンセンスなジンクスや“未確認”生物の存在。今回も、物語のゆくえを司る“沼”しかり、河童や空飛ぶ龍しかり、期待を裏切らない、ナンセンスがそこかしこに転がっている。「やっぱり目の前にあるものだけを認めなくてもいいんじゃないかというのは、映画の基本構造としてあります。僕自身も、底なし沼があったらいいなと思ってた世代なわけですよ。小さい頃は、アマゾンに人が落ちたらピラニアに喰われて骨だけが浮いてくるということにドキドキした世代だから。デヴィッド・リンチとかも大好きな監督なんだけど、ある種の“まがまがしさ”というのを映像にしていくことに惹かれるんです」。続けて、監督は楽しそうにこう語る。「僕の映画の原始的な体験って小さい頃大好きだった西部劇ごっこなんです。おもちゃの兵隊を目の高さに持ってきて、別の世界をミニチュアサイズの中に作っていくという構築の仕方はいまも影響されてるのかなと思います。小学校6年生くらいのときって男子より女子の方が成長してる感じがあるじゃないですか?その関係っていまもあると思うけど、女性の監督さんはその辺がすごくドラスティックで、俺が作っている映画の方が随分単純でくだらないなと思うことはありますね(笑)」。では今回、なんでまた“沼”を題材に選んだのか?それも日本の社会が急成長した70年代、幼い頃の日常にあった、沼が埋め立てられ団地にされていくという景色と深く結びついていた。「沼とかがブルドーザーで埋められてるのを見て、何で埋め立てちゃうんだろうと。社会が成長していく上で排除されているものに対して、あってもいいんじゃないという気持ちはありますね。雑多なものやイメージが街の中にあるからこそ街なんだという気もするし、そういうことへのアンチテーゼも池や沼に結びつき、骨董屋にも結びついていったんだと思います。電球商会(劇中の骨董屋)というのはまさにカオスで、昔は古着の山の中にすごく高いものが埋まってるんじゃないかという幻想みたいなのがあったと思うんだけど、そういうのが無くなることへの懸念もあったり。『転々』のときも、無くなってしまうだろう空き地とか、開発中の変な建物だとか、ぽつんと駐車場に取り囲まれたアパートとかを背景にしているんですよ」。脱力系ワールドとは裏腹に、既成の価値観やルールをぶち壊すスピリットを強く感じさせる三木監督。改めて、監督にとっての“映画”とは何かを聞いてみた。「こうでなきゃいけないというのがない、懐の深さが映画の最大の特徴だと思います。特に2000年以降は、映画界以外の分野からいろんな人が参入したり、いろんなトライ&エラーがなされてきた。(不景気の煽りを受け)いまはちょっとみんなへこんでますけど、それが終わったときに映画がどんなトライ&エラーをしていくのか楽しみですし、自分も目撃者としてそこにいたいという気はありますね」。早くも次回作が待たれるが、では監督、次はどんな映画を撮ってみたいですか?「ロックな映画をやってみたいですね。僕も一時期バンドをやっていたことがあるんですけど、大きな声でバカバカしく歌うっていう。昔の『ロッキー・ホラー・ショー』でおっさんが編みタイツ履いてたり、ああいうロックそのものの破天荒でバカバカしいイメージを再現したいなと思いますね(笑)」。三木聡監督プロフィール1961年神奈川県生まれ。テレビの構成作家やシティボーイズのライブの作・演出などを務めた後、最近では、高視聴率のドラマ「時効警察」の脚本・演出でも話題になる。監督作に『イン・ザ・プール』(’05)、『転々』(’07)など。「インスタント沼ミラクル・エディション」発売元:角川映画/販売元:ポニーキャニオン価格:4,935円(税込)発売中© 2009「インスタント沼」フィルムパートナーズ■関連作品:インスタント沼 2009年5月23日よりテアトル新宿、渋谷HUMAXシネマほか全国にて公開© 2009「インスタント沼」フィルムパートナーズ■関連記事:『蒲田行進曲』と麻生久美子の浅からぬ因縁とは?風間杜夫は必死の自毛アピール【どちらを観る?】加瀬亮の“染まり”を検証『重力ピエロ』&『インスタント沼』幸運!?の“ジリ貧”『インスタント沼』特製マグカップを2名様にプレゼント「出たとこ勝負(笑)!」麻生久美子が30歳を前に迎えた岐路と出会いとは?引越し大好きの麻生久美子、“ジリ貧”脱出法を伝授「おかげで運気が上がった」
2009年12月08日