メジャーリーガー同様とまでは言わないが、日本人俳優がハリウッド作品に出演すること自体、以前ほどには珍しい出来事でなくなってきたのは事実である。だが、浅野忠信がハリウッド進出を果たすとなれば話は別だ。事件と言ってもいいだろう。90年代からいまに至るまで、日本映画界の最前線を走り続けてきた男。すでに香港、タイ、モンゴルなどの作品に出演を果たしており、早い段階から海外志向は強かったと言えるが、一方で日本国内での出演作に目を向ければ、岩井俊二に青山真治、是枝裕和といった、どちらかというとインディペンデント色の強い作品への出演が目立つ。そんな彼が、マーベル・コミックを原作とした3D超大作『マイティ・ソー』でハリウッド進出。そこには彼が自らのルーツと共にずっと抱き続けてきた思い、そして20年にわたって映画に携わる中で芽生えたある変化が――。いまなお渇望を抱え、全力で走り続けることをやめない男が、胸の内を明かしてくれた。めぐって来たハリウッドへのチャンス「誰もが知るあの世界に踏み込んでみたかった」「やっと来た」――。今回のハリウッド進出を語る上で、幾度となくこの言葉を口にした。つまり、彼にとってハリウッド映画への出演は、決して降ってわいた話ではなく、以前から熱望し続けてきた夢なのだ。すでによく知られている事実だが、浅野さんはアメリカ人の祖父を持つ。そうしたルーツも踏まえ、今回のアメリカ進出のキャリアにおける位置づけをこう語る。「本当に大きなチャンスだと思っています。ハリウッド映画は世界中で上映されますし、何よりおじいちゃんの存在があって、ずっとアメリカ映画に出たいという思いはありました。長い時間をかけてやっとスタートラインに立ち、スタートを切れた――。それを1回、2回で簡単に終わらせるつもりもないし、ここからまた時間をかけて“浅野忠信”という俳優をみなさんに知ってほしい。いまは役者人生において、大きなチャンスが来たという思いです」。過去の作品ラインナップを見れば分かるが、浅野さんの名が多くの人々の知るところになったのは、岩井監督の初期作品に代表されるような“とがった”作品、役柄を通してであると言える。もちろん、年齢と共に幅広い役柄を演じるようにはなったが、いまなおそうした“独立色”のイメージがついて回る。そうした意味でハリウッド進出を以前から考えていたというのは意外な気も…。「憧れはずっと前からありましたね。もちろん、面白い映画に出たいという思いは若い頃からあったし、各国の映画に出たいとも思ってました。その一方でワーッと楽しめるハリウッド映画のノリは決して嫌いじゃない。それこそ小さい頃から観ていたし、俳優としても思いきりやってみたい、という気持ちはあった。僕は欲張りで、本当にいろんな映画に出たい(笑)。誰もが知るあの世界に踏み込んでみたいというのはずっと思ってました」。ずっと思い続けてきた“夢”がかなった形だが、決してそれだけではない。俳優として映画界の最前線に立つ中で、浅野さん自身も常に変化し続けたきた。「こだわりを持たないこと」――現在の自らの俳優としてのスタンスをそう表現する。「いまは自分の中で(役を受けるか否かの)基準を作らないようにしています。オファーが来たということは、僕が出たら面白いと考える人がいるということ。もしも受け取った台本がつまらなかったら、なおさら僕がそれを面白くすることができるのか?って思ってやりたくなるんです。『面白い』、『かっこいい』なんていうのは誰かが既に作ったものですから、それに乗っかっても、その先はない。だったら自分が何もない底辺で、一番ひどいものを一番かっこいいものに変える方がよほど面白いだろうって」。そう考えるに至る一因は、映画界の最前線に立ち続ける中で、肌で感じた映画界そのものの“変化”だった。90年代に浅野さんが好んで出演していた、先述のような“とがった”作品はいつしかあまり撮られなくなっていった。「その中で、僕自身に対しても“求められ方”が変わっていくのは感じましたね。例えば『鈍獣』(’09)のような映画やあの役柄にしても、90年代には求められなかっただろうと思うし、『ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜』(’09)でも、すごく質の高い芝居を要求されているのを感じた。そういう現場の経験を通して、やはりこれは僕が何かやらなきゃ始まらない、自分が考え方を変えなきゃとんでもないことになるぞって思ったんです。そこで、ガムシャラに自分の思いつくことをぶつけて、監督たちと一緒に作っていくのがすごく楽しかった。まあガムシャラにぶつけられるだけの役をいただけていたというのもありますが。なるほど、自分を窮屈にしていたのは自分だったし、知らないことが世界を狭くしてたんだって。失敗する方向にあえて行くことで、失敗じゃなかったと気づくということがいっぱいありました」。10年後を見据えて、“応えて求められる”俳優に常に壊し、新たな道を作り上げる。それは決して過去が失敗だったからではない。全てを受け入れ、そして吐き出していく。それが表現者・浅野忠信の生き方なのだ。ハリウッドの現場でも、それは何ら変わることはない。改めて己の往くべき道に確信を持ったようだ。「海外の連中は、自分で選んでこの仕事をやっている、という意識が強い。だから簡単には文句言わないし、どんな小さいシーンでも『明日、おれがセリフ言うシーンがある。楽しみでしょうがない。明日が待てない』って姿勢なんですよ。それは当たり前のことだけど、日本にいたら忘れかけていたかもしれない。自分でもらった役を自分がMAXで楽しまなきゃ誰が楽しむんだっていう話ですから。そういう環境にどっぷり浸かれたのは大きかった」。浅野さんが演じたのは、ソーに仕える戦士で、侍を思わせる男・ホーガン。「戦いのことだけを考えているタイプの戦士なので、やはりアクションシーンが大事だと思ってました。ただ、アクションと言ってもコミック発の作品だから、キレイにやるんじゃなくてワイルドに大胆に動きたかった。それは、スタントの方にも常に言ってました」。この男から迷いは感じられないが、改めて今後の俳優としてのビジョンを聞いてみた。「いま、こうやって『マイティ・ソー』が公開されて、観てくださる人たちがいて、ここから僕がどういう風に必要とされるのか?必要とされたときに、それに応えられる“何か”を持ってないといけない。この先も応えて、応えて求められ続けるようにしたい。それが10年後くらいにひとつの形になっていてほしいですね。これまで日本でやっていく中で、自分の“役割”というものを与えてもらったように思えるので、これから同じように役割を感じられるようになりたいです」。静かに浮かべた笑みは自信、いや覚悟の表れと言えるかもしれない。浅野忠信の“新章”が始まる――。(photo/text:Naoki Kurozu)■関連作品:マイティ・ソー 2011年7月2日より丸の内ルーブルほか全国にて公開© TM & © 2010 Marvel © 2010 MVLFFLLC. All Rights Reserved.■関連記事:『マイティ・ソー』クリス・ヘムズワース インタビュー神に“不可能”の文字はなし松たか子、浅野忠信の米進出を祝福「立派になられましたね」今年だけで公開作は5本注目せざるをえない女優、ナタリー・ポートマンの魅力オレ様ヒーローに胸キュン!女性限定『マイティ・ソー』3D試写会に25組50名様ご招待【ハリウッドより愛をこめて】夏休み注目映画続々!今年は“ヒーロー”が熱い!
2011年06月29日是枝裕和監督の最新作『奇跡』が6月11日(土)に全国で公開され、東京・新宿バルト9では是枝監督をはじめ、主演を務めた小学生漫才コンビ「まえだまえだ」の前田航基と旺志郎、大塚寧々、樹木希林が登壇する初日舞台挨拶が行われた。緊張しているのか、はたまた余裕なのか…マイペースに舞台挨拶をこなす前田兄弟に対し、樹木さんは「普段からうるさかった。大人として『漫才だって“間”が大切でしょ』って真剣にアドバイスしたんだけど、全然聞いていない」とお説教。しかし航基くんと旺志郎くんは「だって、僕ら子供やもん」と日本映画界が誇る名女優を手玉に取っていた。2人が演じるのは、両親(大塚さん&オダギリジョー)の離婚によって離れて暮らす兄弟という役どころ。「博多と鹿児島をそれぞれ出発する、九州新幹線の一番列車がすれ違う瞬間を目撃すると、奇跡が起こる」。そんなうわさを聞きつけた兄弟が、もう一度家族の絆を取り戻そうと大冒険に出かける。是枝監督は「まさに奇跡的な出会いに支えられた、素敵な映画に仕上がった。僕らの体験をスクリーンを通して感じてもらえれば」。前田兄弟には台本を見せずに、「周りの大人の役者さんに付き合ってもらいながら、その時間を楽しむ子供たちの自然な表情を引き出すことができた」と独特な演出方法を語った。また、撮影前に樹木さんから「大人は“背景”なんだから、サラッと描いてくれればいい」とアドバイスがあったといい、「おかげで子供たちの目線やバランスが、自分の中でハッキリした」とベテラン女優に最敬礼だ。「子供たちが本当にキラキラして、暖かな眼差しにあふれた作品だと思う」と語るのは、母親役の大塚さん。そんな美しい“お母さん”に航基くんは「(本番前)やらなきゃいけないことがたくさんあるはずなのに、僕らとトランプやUNOで遊んでくださった」とデレデレ…と思いきや、「家族でケンカするシーンは、すごく怒っていて怖かった。1分前まであんなに穏やかだったのに、人ってこんなに変われるのかってビックリしました」とその豹変ぶりに驚きを隠せない様子。旺志郎も「さっきまでの優しさはどこいってん!」とツッコミを忘れなかった。そんな大人の怖さ(?)を学ぶ機会にもなった本作が、なんと韓国、台湾、スペインなど世界13か国で公開されることが決定。これには航基くんも旺志郎くんも童心に返って大喜び。是枝監督も「待っていてくれる人が世界中にいるのは、大きな励み」と笑顔を見せた。最後は特製の巨大クラッカーでヒットを祈願し、全国公開が始まった本作の門出を祝った。『奇跡』は新宿バルト9ほか全国にて公開中。■関連作品:奇跡 2011年6月11日より新宿バルト9ほか全国にて公開© 2011『奇跡』製作委員会■関連記事:【シネマモード】あなたはどこに注目する?是枝監督最新作『奇跡』まえだまえだインタビュー素で魅せる!是枝監督を唸らせた奇跡の主演デビューシネマカフェ読者ゴコロなんでもベスト5(第15回)憧れるリアル父親俳優は?本木雅弘&内田也哉子の娘が祖母・樹木希林と共演親は渋ってた…?是枝裕和監督の最新作!!『奇跡』完成披露試写会に50組100名様ご招待
2011年06月13日「最近のお勧めは?」と尋ねられると、きまって私は『奇跡』と答えています。ここまで勧める相手を選ばなくて良い作品も珍しい。映画好きでいろいろ深読みするのが好きな人にも、わかりやすさを求める人にも、悪い人が登場する作品が嫌いな人にも、淡々としすぎている作品は眠くなってしまうから苦手という人にも、男性にも、女性にも、子供にも、大人にも、きっと気に入っていただける作品なのですから。主人公は、両親の離婚により、母の実家のある鹿児島と父の故郷である福岡へと、離れ離れになった兄弟。九州新幹線が全線開通するその日にだけ出会えるという奇跡を探しに、友達を引き連れて、兄弟は再会&奇跡探しの小冒険へと旅立つのです。主人公の兄弟を演じるのは、小学生兄弟漫才コンビ・まえだまえだ。面白トークと、自然な演技が素晴らしいことといったら。もともと、“わざとらしさ”“あざとさ”という手垢のついていない、近年まれに見る子供らしさと芸達者ぶりには感心していましたが、さすが、世界の是枝監督が注目するだけのことはあります。オーディション中に出会った彼らのために、プロットを大きく書き換えたとのエピソードも。おかげで、何度彼らのやりとりに大笑いしたことか。とにかく楽しく、さらには心動かされるシーンも数多く、とことん良質な作品ですから、きっと誰にでも満足していただけるはずです。本作は決して子供映画ではないのですが、子供の輝きが肝になっていることは間違いありません。それを実現させたのは、芸達者なベテランたち。オールスターキャストとも言える、贅沢な配役にも注目ですが、個性豊かな俳優陣がオーラを放ち過ぎてしまうと、主役の子供たちにも影響が出る可能性が。ところが、そんな心配を払拭するかのような一言を、監督に対して放った人がいたそうです。「今回は子供たちが主役の映画なんだから、アップなんていらないからね」。これを言ったのは、祖母役の樹木希林さん。『東京タワーオカンとボクと、時々、オトン』、是枝監督の『歩いても 歩いても』での母親ぶりも素晴らしく、いずれの演技でも女優賞を受賞しています。彼女はいま、私にとって最も気になる女性のひとり。夫(内田裕也)の逮捕騒動の際に行われた、あの堂々とした会見に、シビれた人も多いはず。「本当の謝罪は本人から頭を下げてもらいたい。籍を入れた責任上、どうするかを考えながら生きたい。夫ひとりだけ、奈落の底に落として、自分だけ保身ということはしません」と語ったのを耳にしたとき、夫よりも、彼女の方がよほどかっこ良く“ロック”している人だったんだと気づきました。夫が勝手なことをやっていられたのも、彼女がいたからだったはず。そんな彼女のかっこいい精神が言わせたのが、「アップなんていらないからね」という言葉だったのでしょう。是枝監督だって、誰かに言われなくては、大物ばかりを前に悩んでしまったかもしれません。女優なら、どんな状況でも自分が引き立てられたいと思うものだとばかり思っていましたが、作品のために自分を抑えてベストを目指すというのもなるほど、女優魂。子供たちの奇跡のような演技だけでなく、かっこいい樹木さんの姿も、ぜひ『奇跡』で堪能してみてくださいませ。『奇跡』は6月11日(土)より新宿バルト9ほか全国にて公開。(text:June Makiguchi)■関連作品:奇跡 2011年6月11日より新宿バルト9ほか全国にて公開© 2011『奇跡』製作委員会■関連記事:まえだまえだインタビュー素で魅せる!是枝監督を唸らせた奇跡の主演デビューシネマカフェ読者ゴコロなんでもベスト5(第15回)憧れるリアル父親俳優は?本木雅弘&内田也哉子の娘が祖母・樹木希林と共演親は渋ってた…?是枝裕和監督の最新作!!『奇跡』完成披露試写会に50組100名様ご招待まえだまえだが是枝裕和最新作に主演!大塚寧々&オダギリジョーが両親役
2011年06月08日子供たちはいま、自分たちがこれ以上ない絶景を望む場所に立っていることを気づいているだろうか?いや、気づく必要なんてないのかもしれない。そんなことは気に留めず、彼らは隣の友達と些細なことで泣いたり笑ったりしながら、必ず起こるに違いない“奇跡”を信じて歩き続ける――。ドキュメンタリーを思わせる瑞々しさで、現代版『スタンド・バイ・ミー』とでも言うべき子供たちの旅を切り取った、是枝裕和監督最新作『奇跡』。主人公の兄弟を演じるのは、小学生の兄弟漫才コンビとして活躍する「まえだまえだ」の前田航基と旺志郎の2人。ひと夏の冒険を経て、彼らが得たものは――?航基「是枝監督の説明って、ホンマだいたいなんです(笑)」両親の離婚により離れて暮らす航一(航基くん)と龍之介(旺志郎くん)。もう一度、家族4人で元通りに暮らしたいと願う航一は学校で、まもなく開通する九州新幹線のあるうわさを耳にする。博多と鹿児島をそれぞれ出発する一番列車がすれ違う瞬間を目撃すると、どんな願いも叶うというのだ。奇跡に立ち会うべく航一と龍之介は旅の計画を立てるが…。何より、子供たちの自然な演技が素晴らしい本作。2人揃って映画に出演するのは初めてだったが、役柄や演技について航基くんが「普段の自分そのまんまの感じの役だったので、本当にそのまんまいつもの感じでいました」と言えば、映画出演自体初めての旺志郎くんも「演技しているというよりも普通の生活をしているみたいやった。こういう場面になったら、旺志郎たちも同じことするだろうな…って思いました」と何ら気負いなく演技に臨んだようだ。是枝監督は『誰も知らない』などで子供たちを演出したときと同じように、台本を渡さずに、撮影の直前に口頭で状況の説明とセリフを伝えるという手法を用いた。加えて、本作に関してはキャスティングが決まってから、役柄や脚本を2人に合わせて変更していったという。例えば劇中、航一も龍之介も自分のことを“僕”でも“おれ”でもなく名前で呼ぶが、これはまえだまえだの2人が普段からそうしているから。そうやって俳優に合わせつつ、カメラの前でその魅力を最大限に引き出し、断片をつないで物語にしていく監督に、航基くんはすっかり心酔した様子。「監督の事前の説明って細かくなくて、ホンマにだいたいなんです(笑)。それでこっちもやってみるんですが、完成した映画を観たら『なるほど、そういうことか!』って何度も思いました。やっぱり映画監督、というか是枝監督ってすごいんだなと思いました」。いやいや、“だいたい”の説明だけで監督の要求に応えてしまう2人こそ、すごいと思うが…。食は渋好み?九州の名産品を堪能!2人の年の差は2つ。小学校高学年から中学にかけてという、たった1年で心身ともに急激な変化を迎えるこの時期。普通、たった1年の差でも大きな開きのように思えてしまうものだが、2人の間には年齢差やいわゆる“兄”と“弟”といった関係性があまり見えてこない。航基くんは「兄弟というよりは友達。親友よりももう一歩深く奥に入った関係」と表現する。先述のように、映画の中からも普段の2人の素顔が垣間見えるが、改めて“相方”について語ってもらおう。航基くんは旺志郎くんについてこう語る。「旺志郎は、何でも気楽にサーッと受け流す、あっさりしたヤツですね。こだわり過ぎずにいい意味で適当な半面、それが雑という悪い部分で出てくることもあるんですが(笑)」。まさに、劇中の龍之介といったところ。では、旺志郎くんから見た兄、そして相方の航基くんはというと…。「いろんなこと考え込みますね。ひとつのことに興味持つと、そればっかりになって、ほかのことしなくなる。1回ハマると抜け出せない(笑)」。サラリと核心を衝く弟の指摘に航基くんは「あかんと思いつつ…人間、なかなか直らんもんですね…」。少し渋い顔をしていたが、九州のおいしいものは食べた?と尋ねると、たちまち笑顔に。「シシャモがおいしかったです。シシャモって卵を持っていない方が実は脂が乗っていておいしいと聞いたんですが、めっちゃおいしかったです!」と本当に12歳?と思える渋好みだ。一方の旺志郎くんは「明太子でご飯を食べるシーンがあるんですが、すごくおいしかったです。馬肉?監督に食べに連れて行ってもらいました!お土産に馬肉せんべいまで買って(笑)、新幹線で食べて帰りました」。ご当地のおいしいものと言えば、橋爪功が演じる祖父が作る鹿児島の伝統的な銘菓“かるかん”は?劇中では、2人は微妙な反応を見せるが…?「おいしいですよ。あんことは違ってほんのりとした甘さで。あっさりしてるけどお腹にたまるから朝ごはんにもいけるし」(航基くん)、「生地はもっちりしてて蒸しパンみたいです」(旺志郎くん)と、グルメレポーター顔負けのコメントでアピールしてくれた。“奇跡”の瞬間の葛藤――2人が得たものは?学校へ、駅へと全力で駆ける航一の姿や博多と鹿児島でそれぞれ離れて暮らす2人の電話でのコミカルなやり取り。オダギリジョー扮する飄々とした父親や、離れて暮らしても息子を思う大塚寧々演じる母親と、彼ら以上に大人びた子供たちの言動など、思わずクスリと笑ってしまう見どころが満載だが、何と言ってもクライマックスは、一番列車が行き交う轟音の中で、思い思いの“奇跡”を願い、叫ぶシーンだ。どんな気持ちであのシーンに臨み、その結果をどう受け止めたのか?航基くんはこう説明する。「最初、航一は何が何でも家族4人が元通りになることを望んでいたけど、旅をするうちに微妙な気持ちの移り変わりがあったんでしょうね。ギリギリまで葛藤があって、一度、口に出したら取り返しがつかなくなる、という思いもあって…。そう考えているうちに新幹線がすごいスピードで通り過ぎて行って、むなしさとか悔しさとかいろんなことを感じたと思う。あれだけ苦労して、みんなで協力して努力して辿りついて、きっと人生の厳しさを学んだのかな」。願えば全てが叶うほど人生は甘くないし、二度と取り戻すことのできない“何か”を失いながら人間は大人になっていく――この物語が少年たちに示すのは、そんな人生のしょっぱさかもしれない。それでもこの映画は断じて悲しい映画ではない。是枝監督は、2人にオーディションに接して「生きていくことに対してポジティブな力をもらった」と明かしたが、おそらく監督が感じたものと同じものをこの映画は与えてくれる。少しだけヒリヒリした心を抱えて映画館を出つつ、こう思えるはずだ。「大人になることはそう悪くもない」と。(photo/text:Naoki Kurozu)■関連作品:奇跡 2011年6月11日より新宿バルト9ほか全国にて公開© 2011『奇跡』製作委員会■関連記事:シネマカフェ読者ゴコロなんでもベスト5(第15回)憧れるリアル父親俳優は?本木雅弘&内田也哉子の娘が祖母・樹木希林と共演親は渋ってた…?是枝裕和監督の最新作!!『奇跡』完成披露試写会に50組100名様ご招待まえだまえだが是枝裕和最新作に主演!大塚寧々&オダギリジョーが両親役
2011年06月07日映画『奇跡』の完成披露試写会が、5月5日(木)のこどもの日に行われ、主演のお笑いコンビ「まえだまえだ」(前田航基&前田旺志郎)、オダギリジョー、樹木希林、阿部寛に子役の林凌雅、内田伽羅、監督の是枝裕和が舞台挨拶を行った。両親の離婚で離ればなれで暮らす兄弟が、九州新幹線開業の日に起こる“奇跡”を信じて旅をする姿と、子供たちを見守り、翻弄されつつも癒される大人たちの様子が描かれる。兄の航基くんは「まさか主演をやらせてもらえるとは思っていなかったので、ちょっとクサくなっちゃいますが、ここに立っていること自体が奇跡」と初主演映画のお披露目の喜びを語る。さらに「監督は世界の是枝監督。自信を持って面白いと言えます」と胸を張った。すると弟の旺志郎くんも「初の映画で初主演で大丈夫かな、と思いましたがみなさん優しくて、監督(の指導)も演技というよりは自然な感じで」と兄弟そろって監督を絶賛した。自身も昨年、父親になったオダギリさんにとっては初の父親役だったが「役者として初めての経験で、私生活と比べるなんてとてもできませんでしたが、2人(航基&旺志郎)ともしっかりしていて、親というより友達の目線だった」と述懐。教師を演じた阿部さんは、九州での子供たちとの撮影をふり返り「子供たちが純粋な目でこちらを見てくるんですが、すごく強くて、怖くて…。ほかにはないパワーをもらえました」と語った。その阿部さんと『歩いても 歩いても』に続いて共演となった林くんは将来の夢を聞かれ「阿部寛さんのような俳優になりたい!」。これに横から樹木さんが「オダギリジョーさんじゃダメなの?」と割り込むと、オダギリさんが「方向性が違うよね?」と返し、会場は笑いに包まれた。樹木さんは、子供たちとの現場について「“互角”にやりました。(劇中の設定の)祖母と孫というよりも、俳優同士という関係」とふり返る。すると航基くんは「上下の差がない関係に緊張しましたし、恐れ多い気持ちでした」と大先輩との共演を思い出し、いまにも汗が吹き出しそうな表情。また、樹木さんは孫の伽羅さんとの初共演も果たしているが「是枝監督の作品に入ることは、良い思い出、経験になると思った」と自らオーディションへの参加を勧めたそう。「親(本木雅弘&内田也哉子夫妻)は渋ってましたが…」と説明。伽羅さんは「『(是枝監督は)素敵な監督』と勧められてオーディションを受けました。(両親からは)『自然に緊張しないでやりなさい』と言われました」と明かしてくれた。監督はまえだまえだの起用について「いま、おそらくみなさんが受けているのと同じ印象で、オーディションの部屋を出た後に私も元気になっていました。生きていくことに対してのポジティブさをもらったと思います。この子たちならきっと、映画の中心に置いても引っ張っていってくれると思った」と説明。「自分で映画を観て元気になれました」とこれから映画を鑑賞する観客を前に力強く語った。『奇跡』は6月11日(土)より新宿バルト9ほか全国にて公開。■関連作品:奇跡 2011年6月11日より新宿バルト9ほか全国にて公開© 2011『奇跡』製作委員会■関連記事:是枝裕和監督の最新作!!『奇跡』完成披露試写会に50組100名様ご招待まえだまえだが是枝裕和最新作に主演!大塚寧々&オダギリジョーが両親役
2011年05月05日小学生の兄弟お笑いコンビ「まえだまえだ」(前田航基&旺志郎)の2人が是枝裕和監督の最新作『奇跡』に主演することが決定!大塚寧々、オダギリジョー、夏川結衣、阿部寛、長澤まさみ、原田芳雄、樹木希林、橋爪功らが共演することもあわせて発表された。来年3月に九州新幹線が開業するのを機に九州を身近に感じてもらうべく、本作の企画は始動。鉄道好きであり、かつて柳楽優弥にカンヌ国際映画祭の最優秀男優賞をもたらした『誰も知らない』とは違った形の子供を描いた作品を撮りたいと考えていた是枝監督の元にプロデューサーを通して相談が持ちかけられ、完全オリジナル脚本であることを条件に是枝監督はメガホンを取ることを承諾したという。通常、撮影許諾を取得することが非常に難しいとされる新幹線を撮影できるという点も、監督が魅力に感じた一因であるとか。まえだまえだの2人が演じるのは、両親の離婚により、離れて暮らす兄弟。兄の航一(航基くん)は母と祖父母と鹿児島で暮らし、弟の龍之介(旺志郎くん)は父親と福岡で暮らしているが、2人は何とか昔のように、家族4人で仲良く暮らせないかと頭を悩ませている。まもなく開業する九州新幹線について、開業の日に博多から南下する「つばめ」と鹿児島から北上する「さくら」の一番列車が行き交う瞬間に奇跡が起こる、といううわさを聞きつけた2人は、ある壮大で無謀な計画を立て、周囲の人間をも巻き込んでいく――。是枝監督は、まもなく始まる撮影を前に「オーディションで出会った子供たちから得たインスピレーションで物語を作り、彼らと会って話したことで登場人物のキャラクターと台詞が生まれました。子供と一緒に映画を作るのはとても刺激的でワクワクの連続です(スタッフはハラハラしていると思いますが)。まえだまえだ兄弟をはじめ、この時期の子供たちが持っている“奇跡”のような輝きをフィルムに焼きつけるべく頑張りたいと思っています。お楽しみに」と意気込みを語る。また、「鉄道好き」といううわさについては「出演していただく原田芳雄さんなどを前にして、とても“鉄道マニア”などと僕は言えません。撮り鉄でも乗り鉄でもありませんが、電車が通過するときの…すれ違うときのワクワク感というかゾワゾワ感を何とか映画の中で描きたい。そう思っています」とコメント。劇中でも兄を演じるまえだまえだの航基くんは「とても嬉しいですが、とても緊張しています。自分も役と一緒の小6なので、中学生になる前に、旺志郎と一緒に映画に出演できるのも嬉しいです。監督はその日まで内緒と言って、僕たちは台本をもらってません。その場その場で撮影するみたいなんで、どんな映画になるか、とてもとても楽しみにしてます。どうやら桜島が噴火する話やないかと旺志郎としゃべってます。水着の衣裳があったので水泳選手の話かな?一生懸命頑張ります!」と期待に胸を膨らます。弟の旺志郎くんも「代表作になるとマネージャーさんに言われました。初めて映画に出るのでめちゃめちゃ嬉しいです!九州はゆっくり行ったことがないので楽しみです。ご飯も美味しいと聞いたのでいっぱい食べたいです!」と撮影を待ち焦がれている様子。2人以外の配役は、大塚さんが2人の母親で、父親で売れないミュージシャンをオダギリさん。是枝作品の常連、夏川さんは大塚さん演じるのぞみの友人でスナックのママを演じ、『歩いても 歩いても』に続いての是枝組参加となる阿部さんは航一の担任の先生役。長澤さんはその学校の図書室の先生。橋爪さんと樹木さんは2人の母方の祖父母で、原田さんは祖父の親友という役どころとなっている。この共演陣がどのように2人が画策する“奇跡”に巻き込まれていくかも見どころと言えそうだ。航基くんのコメントにもあるように、脚本を俳優に渡さない、もしくは口頭でセリフを伝えるなどといったやり方は是枝監督がこれまでにも用いてきた手法。今回はどのように作品を作り上げていくのか?また、完成後の国際映画祭への出品も気になるところ!『奇跡』は2011年初夏、全国にて公開。■関連作品:奇跡 2011年初夏、全国にて公開
2010年09月16日9月1日(水)よりイタリア・ヴェネチアで開催される第67回ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門への出品が決まった『ノルウェイの森』、『十三人の刺客』の監督およびキャストの喜びのコメントが到着した。『十三人の刺客』は、暴政の限りを尽くす将軍の弟を討つべく送り込まれた13人の男たちが文字通り、命を懸けて戦う姿を描いた本格時代劇。数々のヒット作を世に送り出し、海外でも高い評価を受ける三池崇史監督がメガホンを握り、役所広司をはじめ、山田孝之、伊勢谷友介、松方弘樹、松本幸四郎に稲垣吾郎など錚々たるメンバーがキャストに名を連ねる。三池監督は「やったね。ヴェニスをサムライの血で染めてあげましょう」と短い言葉に喜びと決意を込める。監督と共に現地入りする予定の主演の役所さんは「(出品の知らせを聞いたときは)『やったー!』と。ヴェネチアのお客さんに日本の時代劇を楽しんでもらうことが一番ですね。映画の初号上映後のスタッフ・キャストの異常な盛り上がりが、ヴェネチアの映画祭会場でも見られるのではないかと期待しています。日本映画のお家芸である時代劇が海外で評価されるのは本当に嬉しいことです」と喜びを語る『ノルウェイの森』は、いわずと知れた日本を代表する作家・村上春樹の大ベストセラーの映画化作品で、すでに『シクロ』でヴェネチアの最高賞である金獅子賞を受賞しているトラン・アン・ユンが監督を務めるとあって、公開前から世界的な注目を集めている。映画祭には、監督に加え主演の松山ケンイチに菊地凛子、水原希子らがヴェネチア入りする予定だという。トラン・アン・ユン監督は「私が是枝裕和監督とお会いしたのはヴェネチア映画祭のときでした。後に、ロッテルダムで再会し、そこで橋口亮輔監督と知り合うことになりました。そのとき、3人で語り明かしたことが、いまでも素晴らしい思い出です。私たちは2人の“村上氏”(※村上春樹と村上龍)について語り合い、私は『ノルウェイの森』、2人は『69 sixty nine』と『限りなく透明に近いブルー』の話をしました。まさか、数年後に日本映画を出品するためにヴェネチアの地に戻り、その作品が『ノルウェイの森』になろうとは思ってもみませんでした!」と感慨深げ。松山さんは「光栄なことです。一足早く海外の方に観てもらうのですが、どんな反応を示すのか興味津々です。きっと素晴らしい経験になると思います」と期待に胸を膨らます。すでに発表されているように、今年の審査員長を務めるのは、日本映画、そして三池作品のファンとして知られるクエンティン・タランティーノ。三池監督作品にはイタリアでも多くのファンが存在し、また、小説の「ノルウェイの森」は同国でも出版されて、こちらも高い評価を得ているとあって、おそらく現地での期待も高く、金獅子賞受賞の可能性は十分にあると言える。世界最古の歴史を誇る国際映画祭で、この2作がどのように受け止められるのか?ヴェネチア国際映画祭は9月1日(水)より11日(土)までの日程で開催。『十三人の刺客』は9月25日(土)より、『ノルウェイの森』は12月11日(土)より全国東宝系にて公開。■関連作品:ノルウェイの森 2010年12月11日より全国東宝系にて公開© 2010「ノルウェイの森」村上春樹/アスミック・エース、フジテレビジョン十三人の刺客 2010年9月25日より全国東宝系にて公開© 2010「十三人の刺客」製作委員会■関連記事:ヴェネチア国際映画祭ラインナップ発表。『ノルウェイの森』など日本映画3本が登場異例!『ノルウェイの森』主題歌にザ・ビートルズ原盤の「ノルウェーの森」が決定高良健吾初のフォトブックが発売撮影現場&箱根プライベート旅行の様子も!あのシーンも原作の種田そのまま!『ソラニン』高良健吾の落書き顔公開2010年、最も活躍すると思う俳優は?1位は不動のジョニー・デップ!
2010年07月30日今年で10年目を迎える東京フィルメックス。個性的な作品をいち早く紹介し、コアな映画ファンにも定評あるが、映画祭というもの自体、初心者には若干足を運びづらいイベントであるのも事実。しかし、映画祭の大きな魅力はゲストとの触れ合い。憧れの監督やキャストの話を間近で聞くことができるチャンスが数多くある。そんなイベントのひとつとして、丸の内カフェでは「水曜シネマ塾〜映画の冒険〜」と題し、全5回に渡り毎週豪華ゲストを招待。11月18日(水)のトークイベントに登場したのは、海外からも注目されている若手女性監督の西川美和。映画業界に入ったきっかけや今年6月に公開された『ディア・ドクター』の撮影裏話を集まったファンに語った。映画好きの兄の影響で、小さい頃から映画館へ足を運んでいたという西川監督。それでも何らかの形で映画の仕事に関わりたいと目覚めたのは大学生後半になってから。「私、ツイてるんですよ〜」と話す彼女は就職試験の面接で偶然、面接官を務めていた是枝裕和監督に出会ったことにより、映画界に進むきっかけをつかんだ。是枝監督の『ワンダフルライフ』に始まり、複数の作品の助監督を経て、後に監督の道に進むことになるが、最新作『ディア・ドクター』でも「ツイていた」エピソードを披露。「(主人公を)最初はソン・ガンホさんで行きたかったんですけど、なかなか難しくて、行き詰まっていたときに是枝監督に相談したら『鶴瓶さんはどうだろう』と言ってくれたんです。多分、本人はあまり深く考えずに言ったんだと思うんですけど(笑)。でもTVを主軸に活躍している方はスケジュールが難しく、忙し過ぎるかなと思っていましたが、映画にとても興味を持ってくださり、毎年3週間奥さんととられている夏休みを返上して映画に参加してくれました」。小説やコミックを原作にした映画が国内外ともに急増する中、「文章では絶対表現出来ないものを映画にしたい」というこだわりを持つがゆえに、自ら脚本を書くことを貫き、「オリジナルが書けなくなったら、映画は撮らなくなるのでは」とまで断言する西川監督。そんな彼女の作品を世に紹介することに一役買ったのが、7年前、コンペティション部門で初監督作品『蛇イチゴ』を上映した東京フィルメックスなのだ。ちなみに、いまでの東京フィルメックスで印象深い作品としては、ファンだというソン・ガンホが出演する『シークレット・サンシャイン』を挙げ、今年は、「ソン・ガンホさんの映画しか観ていないと思われるかもしれないですけど(笑)、『サースト〜渇き〜』(仮題)は観たいですねあとはツァイ・ミンリャン監督の『ヴィザージュ』、そして女性監督が撮ったという『フローズン・リバー』も気になりますね」と、映画祭への興味を語った。第10回東京フィルメックスは明日、11月21日(土)より開催。<第10回 東京フィルメックス>期間:2009年11月21日(土)〜11月29日(日)会場:有楽町朝日ホール・明治大学アカデミーホール・東劇・シネカノン有楽町1丁目公式サイト: CAFE■関連作品:ディア・ドクター 2009年6月27日よりシネカノン有楽町1丁目ほか全国にて公開© 2009『Dear Doctor』製作委員会■関連記事:松たか子×浅野忠信『ヴィヨンの妻』がモントリオール出品で、太宰イヤーを飾る!「本物の方が怖いかも(笑)」『ディア・ドクター』西川美和が描く、愛すべきニセモノ瑛太、鶴瓶と過ごしたひと夏の思い出にニンマリ「本当にずーっと一緒にいました」鶴瓶&瑛太が深酒で倒れた?余貴美子も病院送りの恐るべき『ディア・ドクター』誰しもが抱える“嘘”から見る人間の“揺れ”西川美和最新作『ディア・ドクター』
2009年11月20日聴く者の心に迫るボーカルと唯一無二の存在感で熱狂的なファンを持つ歌手・Coccoの姿を追ったドキュメンタリー『大丈夫であるように −Cocco 終らない旅−』のDVDがいよいよ11月18日(水)にリリース!これに先立ち、劇中のCoccoのライヴシーンから、この映画が作られるきっかけになったと言われる「ジュゴンの見える丘」の熱唱シーンの映像がいち早くシネマカフェに到着した。昨年の12月に公開され、ドキュメンタリー映画としては異例の大ヒットを記録した本作。先頃公開され大きな話題を呼んだ『空気人形』の是枝裕和監督がメガホンを握り、全国17か所、50日間にわたるライヴツアー、そしてCoccoの地元・沖縄での日常に密着した。この映像の途中に挿入されている、2頭のジュゴンの映像。沖縄の米軍基地移設予定の海に現れたこのジュゴンの姿に喚起され、沖縄で生まれ育った彼女は「ジュゴンの見える丘」を発表。そして、核再生処理施設のある青森県・六ヶ所村の少女からの手紙をきっかけに、彼女は全国ツアーを行うことを決める。また、彼女がライブ・アースでジュゴンについて語り、歌う姿を見た是枝監督は彼女の姿をカメラに収めることを決意する。奇しくもいま、沖縄の基地移転問題が再燃し、連日ニュースとして大きく取り扱われている。ジュゴンが暮らす美しい海を守るという視点からこの問題について考える上でも、この作品の持つ意味は決して小さくないはず。まずは彼女の渾身の歌声をチェック!なお、初回限定版には彼女の新曲であり、劇中でテーマ曲のひとつとして歌われていながらもいまだCD化されていなかった「鳥の歌」が新たにレコーディングされ、12cmCDとして付属!さらに16ページにおよぶフォトブックに、B3サイズのポスターと豪華特典が付いてくる。『大丈夫であるように −Cocco 終らない旅−』DVDは11月18日(水)より発売開始。こちらの映像は『大丈夫であるように −Cocco 終らない旅−』作品情報ページおよびMOVIE GALLERYにてご覧いただけます。MOVIE GALLERY『大丈夫であるように-Cocco 終らない旅-』(初回限定盤) [DVD]価格:4,800円(税込)『大丈夫であるように-Cocco 終らない旅-』[DVD]価格:3,990円(税込)発売・販売元:ビクターエンタテインメント株式会社製作・著作:© 2008「大丈夫であるように」製作委員会発売日:11月18日(水)■関連作品:大丈夫であるように −Cocco 終らない旅− 2008年12月13日よりシネマライズ、ライズXほかにて公開© 2008「大丈夫であるように」製作委員会■関連記事:Cocco初のドキュメンタリーが公開決定、是枝裕和監督が素顔に迫る!
2009年11月16日角川春樹が150万人動員のためにまさに体を張ってプロモーション!大森南朋を主演に迎えた自身、12年ぶりの監督作となる『笑う警官』の宣伝のために、角川監督自らが23時の時報の“時計”になることが明らかになった。「時計になる」とはこの写真のように大きな時計の前で自らの体を使って23時を示すというもの。実写版『時をかける少女』(’97)以来の監督作で、本作がタイムサスペンスということに因んでの試みとなるが、自ら時を刻むことに…。近年、日本映画のヒット作では、監督自らが数々のプロモーションに参加する姿が目立つ。『ザ・マジックアワー』では三谷幸喜監督が100本以上の番組に出演、一時期、TVは同監督によるジャック状態に。また、『劔岳点の記』では木村大作監督が全国90か所での舞台挨拶を、自らが車を運転して各地を回りながら敢行し話題を呼んだ。最近では、『空気人形』の是枝裕和監督が、出演陣と揃って「笑っていいとも!」に出演していたが、今回、新たに一人の映画監督によって日本初となる究極のプロモーションが実現!角川監督は本作について「150万人動員できなければ、映画は辞めようと思ってます」と宣言しているが、目標達成のために体を張った形だ。まずは10月30日(金)の22時59分45秒に、監督の“時計っぷり”が本作公式サイト上で公開されるほか、AXN、FOXチャンネルほか、STV札幌テレビ放送、テレビ愛知、三重テレビ、読売テレビ、RKB毎日放送などで、この23時の時報が放映される予定。『笑う警官』は11月14日(土)より全国にて公開。『笑う警官』公式サイト■関連作品:笑う警官 2009年11月14日より全国にて公開© 2009『笑う警官』製作委員会■関連記事:【TIFFレポート】大森南朋、原作者の「かっこよすぎる」という称賛に複雑な気分大森南朋「監督と一緒に、人間ドラマをしっかり作った」『笑う警官』舞台挨拶恋したい“大人”な俳優は誰?MTVオリジナルiTunesダウンロードカードを10名様プレゼント大森南朋主演『笑う警官』主題歌に復活間近の歌姫W・ヒューストンの新曲が決定!人気警察小説の映画化!『笑う警官』モニター試写会に50組100名様ご招待
2009年10月30日8日夜に韓国で華々しく幕を開けた第14回釜山国際映画祭。日本からも数々の作品が出品する中、10日、累計410万部を突破した松本光司の大人気漫画を実写化した『彼岸島』の公式上映が行われ、主演の石黒英雄がキム・テギュン監督と共に舞台挨拶に登壇し、韓国の映画ファンから温かい歓迎を受けた。彼岸島と呼ばれる、吸血鬼と化した住人たちに支配された孤島を舞台に、絶体絶命の極限サバイバルを描く本作で、石黒さんは行方不明の兄を探しに島に赴く主人公・明を演じる。原作は日本のみならず韓国でも熱狂的な人気を呼んでおり、当日は深夜0時の開映にもかかわらず、ワールドプレミアには10代、20代の女性を中心に約1,000人が集結!司会が石黒さんの来場を伝えると歓声が沸き起こった。石黒さんはキム監督の母国でのワールドプレミアに敬意を表し、「はじめまして、石黒英雄です。今日は『彼岸島』のプレミアにお越しいただきありがとうございます。今夜は楽しんでください!」と韓国語で挨拶。約半年ぶりに再会した監督と撮影中のエピソードを語り、ファンの声援にも笑顔で応えながら「夜遅いけどみんな寝ないでね!」と呼びかけた。無事に海外映画祭デビューを飾った石黒さんは、「どんな舞台挨拶になるかすごく不安だったけど、お客さんがみんな本当に温かいですね」と感激した様子。また、日韓コラボの作品としては、ほかにも映画祭常連の是枝裕和監督による『空気人形』(現在公開中)が、主演のペ・ドゥナの地元で初披露とあって高い注目を集めていたが、同日の公式上映ではこちらも満席の興奮状態。現地入りした是枝監督を盛大な拍手が迎え、「全編が詩のようでとても感動的だった」などの感動の声が伝えられていた。『彼岸島』は2010年1月9日より新宿バルト9ほか全国にて公開。■関連作品:彼岸島 2010年1月9日より新宿バルト9ほか全国にて公開©2010松本光司/講談社・「彼岸島」フィルムパートナーズ空気人形 2009年9月26日よりシネマライズ、新宿バルト9ほか全国にて順次公開© 2009業田良家/小学館/『空気人形』製作委員会■関連記事:是枝監督、真田広之登壇東京国際映画祭「映画人の視点」招待券を10組20名様にプレゼント是枝裕和監督&ARATAインタビュー喪失を乗り越えていく姿にある“何か”板尾&ARATA、カンヌでの居眠りを告白もペ・ドゥナが優しくフォローみずみずしく純粋な空気人形に、感情の素晴らしさを再確認『空気人形』ペ・ドゥナ『空気人形』インタビュー誰もが持つ“空っぽ”な感覚とそれを満たすもの
2009年10月13日是枝裕和監督の最新作『空気人形』で、心を持ってしまった空気人形が恋に落ちるビデオ屋の店員・純一を演じたARATA。是枝作品への出演は、彼自身の映画初出演作『ワンダフルライフ』、『DISTANCE』に続き8年ぶり3度目…とここまで書いて、え?まだ3度目?8年も空いてたっけ?という思いに駆られてしまう。“ぴったり”などという言葉では足りない、「彼の存在こそ是枝作品そのもの」と言えるくらいの何かが、ARATAと是枝監督の間には存在しているような気がしてならない。本作でも、韓国から空気人形役に迎えたぺ・ドゥナを挟んで、しっかりとその“何か”を感じさせてくれる。「監督の『人形を常に優しく見守って』という言葉だけで役柄を理解できた」「存在しているかもしれないけど、存在していない」――。ARATAさんは、是枝監督がこれまでにARATAさんに与えてきた役柄に共通する“テーマ”を、禅問答のようなこの言葉で表した。「僕が勝手にそう捉えているだけなんですが、この要素はいままでも、そして今回の役にもあって。ぶれない1本の筋としてあるから、純一という役にスムーズに入っていけました。監督と一緒に“空虚”というものを模索していくという流れでね」。劇中、純一に関して、その心の内面や過去、背景などは一切描かれない。いわば、突然心を持った空気人形以上に謎の存在なのだが、どのように役にアプローチしていったのだろうか?「監督から言われたのは『現場で、人形をいつも優しく見つめてあげてほしい』ということ。正直、その言葉だけで僕の中で、純一の全てを理解できました。彼の私生活の部分やバックボーンといった要素は必要なかった。常に人形のそばにいて、人形が徐々に人間になっていく過程を見つめ、彼女の質問に優しく答えを返す、それだけの行為の中にも彼の位置というのがしっかりとあって、純一という人間を説明することができる、と感じました」。是枝監督が、原作の短編漫画を映像化したい、と思ったきっかけになったのが、穴があいて空気が抜けていく人形に、純一が息を吹き込むという描写。監督はそこに“エロティック”なものを感じたとのことだが、では、映像化に当たってどのように撮っていったかというと…。「ARATAくんには『息を吹き込むとき、一瞬だけ人形を見てくれ』とだけ言ったね。あとは余計な感情表現や演出は一切排除してる。じゃあ何でそこがエロティックに見えるか?それは見た人の中でいろんなものが混ざってそう見えるんでしょうね。僕自身、このシーンに関しては、撮る前から『エロティックに!』ってスタッフ全員に言ってた。でも、どうやって?何で?っていうのは難しいところですよ。強調されてるのはビニールが膨らんでいくパリパリって音だったりして…そんなのエロいわけないでしょう(笑)!そこが面白いところですね、映画にするっていうことの」。繰り返されるテーマ。その原体験は――?ARATAさんの冒頭の言葉にもあるが、「存在と不在」、「喪失」といった要素は、是枝作品を語る上で、常に挙げられるキーワードである。漫画を原作とした本作でも、これらの要素は健在である。監督自身、この点については一貫して「自分では意識していないので、そこに惹かれているのは分かるけど、なぜかというのは分からない」と言っているのだが…。なおも食い下がると、「全然違う話だけど…」と前置きしつつ、自身が初めて携わったというドキュメンタリー作品の話をしてくれた。「ある小学校で牛を一頭飼っていて。その牛が子牛を産んだら、みんなで乳搾りをするという目的で、クラスで世話をする姿を3年間追ってたんです。みんな楽しみにしてたんだけど、母牛が死産しちゃった。子供たちはわんわん泣きながらお葬式して、でも母牛からは乳が出るんですよ。それがおいしいの(笑)!給食のときにみんなおかわりして飲むんですよ。その子たちが書いた詩がすごく良くて、『悲しいけどおいしい』って詩で。まさに、喪失があったゆえに複雑な表現が生まれたんです。何が言いたいかって(笑)、ある価値観の反転や屈折の美しさ、ある種の喪失や欠落をどう乗り越えていくかって姿に、僕は人間の“何か”を見たいんですよね、恐らく」。ARATAさんは、是枝監督のそんな言葉を隣で聞いて、最後に自身にとっての是枝監督の存在の大きさについて、こんな言葉で説明してくれた。「自分の原点、ルーツを見直させてもらえる貴重な、本当に貴重な現場なんです。自分と向き合って…もちろん10年前の自分に戻ってもしょうがないところもあるし、でも大切にしたい部分でもあって。そうした感覚を持つことができるのは、“ここ”だけなんです」。言葉で伝えるのが決して簡単ではない答えをゆっくり、じっくりと語ってくれた是枝監督とARATAさん。映画を観れば、静ひつな映像の中から言葉ではなく、2人が伝えたかった思いがきっと伝わってくるはずだ。(photo:HIRAROCK)『空気人形』ペ・ドゥナ インタビュー■関連作品:空気人形 2009年9月26日よりシネマライズ、新宿バルト9ほか全国にて順次公開© 2009業田良家/小学館/『空気人形』製作委員会■関連記事:板尾&ARATA、カンヌでの居眠りを告白もペ・ドゥナが優しくフォローみずみずしく純粋な空気人形に、感情の素晴らしさを再確認『空気人形』ペ・ドゥナ『空気人形』インタビュー誰もが持つ“空っぽ”な感覚とそれを満たすものペ・ドゥナ、ARATAを「頼れる人」で板尾は「近づけない感じ」ARATA、メイド従業員に手ほどき「ぺ・ドゥナをしっかり研究して」
2009年09月29日今年のカンヌで喝采を浴びた是枝裕和監督の最新作『空気人形』が9月26日(土)に公開を迎え、是枝監督、ペ・ドゥナ、ARATA、板尾創路による舞台挨拶が行われた。この舞台挨拶のために来日したペ・ドゥナは「緊張していますが、初日を迎えて感無量です。“空気人形”として生きて時間は幸せでした」と笑顔で語った。是枝監督も初日を迎えてホッとした様子。アメリカを含む世界15か国での本作の公開も決まり「よかったです」と喜びを口にしたが、「何より日本で多くの人に観ていただきたいと思っています。今回は力を入れて、みんなで『笑っていいとも!』にまで出ましたので(笑)」とユーモアたっぷりに日本の観客にアピールした。ARATAさんは、本作を「是枝監督が詩のように綴った人間讃歌です。観終わって生まれた感情を大切に家に持ち帰ってください」と呼びかけた。板尾さんは、“勝負服”の純白のタキシードで登場!「撮影はちょっと孤独でした。ARATAくんと一緒の芝居はほとんどないし、監督は静かで、ぺ・ドゥナとはほとんどしゃべらなかったし…」と正直に明かしつつ「完成した作品を観て、参加してよかったな、と思いました」と胸を張った。続いて、話題はこのメンバーで参加したカンヌ国際映画祭の思い出に。板尾さんは「レッドカーペットがデカかったです。普段はどこに収納してるんでしょうか?幅が広くて継ぎ目もなくて、保管が大変そうですね」と心配そうに語り、笑いを誘った。そのカンヌで、本作の上映の際にARATAさんと板尾さんは居眠りをしてしまったとか…。上映後、会場は歓声と拍手で包まれたそうだが、板尾さんは「僕が目を覚ましたことに対して拍手してもらってるかのように思えました。『板尾、起きたわー』って(笑)」と苦笑いを浮かべつつ「それぐらい、素晴らしい映画なんです!」と無理矢理まとめた。ARATAさんも「上映する日の朝にカンヌに着いて、取材、取材で…、上映前には食事会もあって『危険だな』と思ってたんですが。気がついたら話が飛んでるワケです…(笑)。隣りを見たら板尾さんも目を閉じてて『助かった!』って思いました」と申し訳なさそうにふり返った。これに対してペ・ドゥナは「2人が寝てたことは知りませんでした。夜の上映でしたが、人間は夜の方が感性が鋭いものです。私はハマりこんで観てました。思わず涙を流したとき、ARATAさんが黙ってハンカチを差し出してくれたんですが、寝てても優しく私を気遣ってくれていたんですね(笑)」と見事なフォロー。是枝監督は、このやり取りに「複雑な気持ちです…。今日、観に来てくださったみなさんはペ・ドゥナさんや私の側の方々だと信じています」と横目で板尾さん、ARATAさんをチラリ。さらにこの日は、10月11日に30歳の誕生日を迎えるペ・ドゥナと、本日“誕生日”を迎えたこの映画のためにケーキの形をした特製ボードが登場。ペ・ドゥナは「30歳が本当の意味での女優としてのスタートだと思っています」と笑顔でさらなる飛躍を誓った。『空気人形』はシネマライズ、新宿バルト9ほか全国にて公開中。■関連作品:空気人形 2009年9月26日よりシネマライズ、新宿バルト9ほか全国にて順次公開© 2009業田良家/小学館/『空気人形』製作委員会■関連記事:みずみずしく純粋な空気人形に、感情の素晴らしさを再確認『空気人形』ペ・ドゥナ『空気人形』インタビュー誰もが持つ“空っぽ”な感覚とそれを満たすものペ・ドゥナ、ARATAを「頼れる人」で板尾は「近づけない感じ」ARATA、メイド従業員に手ほどき「ぺ・ドゥナをしっかり研究して」オダギリジョーも飛び入り参戦!トロント映画祭で『空気人形』観客総立ちの絶賛
2009年09月26日原作は2000年に発表された業田良家のわずか20ページの短編漫画。空気人形がある日心を持ち、恋をするラブ・ファンタジーだ。短いながらも圧倒的インパクトを持つ原作の世界観に魅了された是枝裕和監督は「この作品をどうしても映画化したい」と、即映画化に向けて行動に出たそうだが、1998年の『ワンダフルイライフ』以降、『DISTANCE』、『誰も知らない』、『歩いても 歩いても』など、つねにオリジナル・ストーリーにこだわってきた監督にとってそれは異例のこと(監督第1作目『幻の光』はオファーがあって引き受けた作品)。そんな深い思い入れのある作品を9年間温め、映像化。まず驚くのはCGを使わずに空気人形を描いていることだ。人形が心を持った後は、韓国のトップ女優ペ・ドゥナが演じているが、ビニールの人形からペ・ドゥナに変わるシーンは誰もがCGを使うだろうと予測する。しかし、空気人形が光にあたって透ける様をはじめCGを使わないという手法を監督は選んだ。何の違和感なくペ・ドゥナに変わっているシーンに驚いてしまう。心を持った空気人形は街を歩き、人と出会い、恋をする。出会うものすべてを子供のように純粋に吸収していく姿が何ともみずみずしい。そして、自分の体の空気が抜けたときに愛する人の息で満たされたように、自分の愛する人を満たしてあげたいという愛が悲劇を生む…。ラブドールという響きからは、入ってはいけない領域のような印象を持つ人もいるかもしれないが、この作品で描かれるのは単にセックスの代用品としてではなく、人形が体感していく人間の内面。混沌とした社会で生活するうちにいつの間にか感情が鈍くなっている現代人に、ペ・ドゥナの演じる空気人形は感情の素晴らしさを再確認させてくれるだろう。また、ペ・ドゥナの大胆ヌードは女性から見ても「美しい!」と惚れ惚れしてしまう。(text:Rie Shintani)■関連作品:空気人形 2009年9月26日よりシネマライズ、新宿バルト9ほか全国にて順次公開© 2009業田良家/小学館/『空気人形』製作委員会■関連記事:ペ・ドゥナ『空気人形』インタビュー誰もが持つ“空っぽ”な感覚とそれを満たすものペ・ドゥナ、ARATAを「頼れる人」で板尾は「近づけない感じ」ARATA、メイド従業員に手ほどき「ぺ・ドゥナをしっかり研究して」オダギリジョーも飛び入り参戦!トロント映画祭で『空気人形』観客総立ちの絶賛「中華食べるの楽しみ」 『空気人形』トロントへ出発を前に“意気込まない”是枝監督
2009年09月25日本年度のカンヌ国際映画祭での喝采から4か月余り、公開を今か今かと盛り上がるを見せている、是枝裕和監督の最新作『空気人形』。9月19日(土)、シルバーウィークでにぎわいを見せる渋谷HMVにて、是枝監督と来日中のペ・ドゥナに加えて共演の板尾創路を交え、和やかなムードの中、トークイベントが開催された。先日のトロント国際映画祭を始め、各地を回り観客へのアピールを精力的に行ってきた是枝監督は、プロモーション活動の終盤にきて「『空気人形』が終わったらしばらく休もうと思います」と宣言。「(この作品で)出し切った感じがします。とても納得のいく作品になりました。(自分で言うのも何ですが)素晴らしいスタッフのみなさまのおかげで自分の力以上の作品になっていると思います。しばらく休んで、鍛え直して戻ってこようと思ってます」と、公開を前に早くも決意を新たにしていた。主演を務めたペ・ドゥナも同じく感慨深げな様子で「初日を迎えると『空気人形』を送り出さないといけないのが、すごく残念な気持ちもします。いまはまだ『自分』に戻れきれていない気がします」とコメント。観客から「共演者の中で誰が一番好き?」との直撃されると、「共演者の中で一番可愛がったのは柄本さんで、精神的に頼っていたのはARATAさんです。板尾さんは私が近づくことが出来ないくらいのカリスマ性を持っていて、イタズラできない感じでした。ARATAさんはとても優しくて気遣いの出来る方でした」とふり返った。ここで、ドラマのクランクアップ直後の板尾さんが会場に駆けつけ、観客の興奮はさらに高まりを見せた。「この何十年間の間に観た映画の中で、ベスト10に入る作品です」と胸を張って作品をアピールする板尾さん。「カンヌ映画祭のとき、(睡眠不足など)極度の疲労でARATAさん共々寝てしまいましたが(笑)、とても心地よい作品になっております」と話すと、監督も「(役者もカメラワークも)リズムが同じ方向を向いていたから、心地よかったのだと思います」と話し、あらためて一同の一体感をうかがわせた。『空気人形』は9月26日(土)より渋谷シネマライズ、新宿バルト9ほか全国にて公開。■関連作品:空気人形 2009年9月26日よりシネマライズ、新宿バルト9ほか全国にて順次公開© 2009業田良家/小学館/『空気人形』製作委員会■関連記事:ARATA、メイド従業員に手ほどき「ぺ・ドゥナをしっかり研究して」オダギリジョーも飛び入り参戦!トロント映画祭で『空気人形』観客総立ちの絶賛「中華食べるの楽しみ」 『空気人形』トロントへ出発を前に“意気込まない”是枝監督是枝裕和監督ティーチイン付き『空気人形』試写会に25組50名様をご招待是枝裕和監督『空気人形』、カンヌに続きトロント映画祭に“マスターズ”出品決定
2009年09月24日質の高いオリジナルの脚本作品を数多く世に送り出し、映画ファンを魅了してきた是枝裕和監督が、業田良家の傑作短編集を原作に、9年の歳月をかけて完成させた恋愛映画『空気人形』。先日開催されたトロント国際映画祭で上映され、喝采を浴びたばかりの本作だが、9月17日(木)、公開を記念し、大型シネコン・新宿バルト9にて、是枝監督はじめ主演で来日中のぺ・ドゥナ、ARATAの3人が出席してのイベントが行われた。トロントから帰国したばかりの是枝監督は、「カンヌでワールド・プレミアを行ってから、監督のわがままでまた編集をして、おとといはトロントで初公開。ようやく日本で公開できて嬉しい」と、公開までの長い道のりをふり返り、喜びもひとしおと言った表情。ぺ・ドゥナとARATAさんも「みなさんにとっていろんなことを考えさせてくれる映画になってくれたら嬉しい」(ぺ・ドゥナ)、「個人的にとても思い入れのある是枝組で一緒できて、素晴らしい映画ができました」(ARATA)と共に公開される喜びを語った。実はここ新宿バルト9では、迫るシルバーウィーク(9月19日〜23日)の期間中、本作の公開を記念し、劇中でぺ・ドゥナ扮する空気人形が着用するメイド服をイメージし、劇場の女性スタッフ全員がメイド姿で接客するというキャンペーンを開催!舞台下の階段からはメイド服姿の女性たちが次々と登場し、一同を驚かせた。ずらりと整列した彼女たちを前に、ぺ・ドゥナは「綺麗な方たちばかりで、全身で応援してくれてありがとうございます」と満面の笑み。一方、男性陣はというと、ARATAさんは少々戸惑った様子で「みなさんは…映画を観られましたか?」と尋ねるや「映画を観てぺ・ドゥナの動きや歩き方を研究して、頑張ってください」とアドバイス。是枝監督は「お客さんとして来ようと思います」とニンマリ。さらに、「こんなにしていただいて心日和です。劇場に来る方もぜひこの格好で来ていただければ(笑)」と冗談を交え、観客を沸かせた。『空気人形』は9月26日(土)より新宿バルト9、シネマライズほか全国にて順次公開。■関連作品:空気人形 2009年9月26日よりシネマライズ、新宿バルト9ほか全国にて順次公開© 2009業田良家/小学館/『空気人形』製作委員会■関連記事:オダギリジョーも飛び入り参戦!トロント映画祭で『空気人形』観客総立ちの絶賛「中華食べるの楽しみ」 『空気人形』トロントへ出発を前に“意気込まない”是枝監督是枝裕和監督ティーチイン付き『空気人形』試写会に25組50名様をご招待是枝裕和監督『空気人形』、カンヌに続きトロント映画祭に“マスターズ”出品決定ペ・ドゥナ、駆け込みセーフに日本語で「遅れて申し訳…」ARATAも板尾もホッ…
2009年09月17日業田良家の短編集「ゴーダ哲学堂空気人形」の一篇を原作に、『誰も知らない』の是枝裕和監督が、心を持ってしまった“空気人形”の恋を描いたラブ・ファンタジー『空気人形』。公開を目前に控えた9月13日(現地時間)、本作がトロント国際映画祭「マスターズ」部門にて公式上映された。舞台挨拶には、是枝監督に加え、本作に出演するオダギリジョーも祝福に駆けつけ、300人の観客総立ちでの絶賛に迎えられた。これまでの監督作7作全てが出品され、同映画祭ともトロントの市民ともなじみの深い是枝監督。前日からチケットは完売し、キャンセル待ちの長蛇の列が出来るほどの熱狂ぶりが見られた。上映中は、通路に座って鑑賞する観客もいれば、同じく映画祭に参加していた役所広司の姿も。そんな中、司会者から「トロントで最も愛されている日本人監督!」と紹介された是枝監督は、「いつも来るたびに本当に楽しみにしています。今回の映画は、いままで僕の映画を観てくれていた方は驚かれるかもしれませんが、不思議なファンタジーで、人間でないものが主人公になっています。とはいえ、いままでの僕の作品と共通する部分も結構あるのではないかと思います」と挨拶。本作のテーマについて、「人形が抱えている空虚感が、自分では埋められなくて他人に息を吹き込まれたときに初めて満たされるという、自分と他人の考え方というのが、非常に豊かだと思ってテーマにした」と話す監督。主演のぺ・ドゥナのキャスティングについて聞かれると、「一人の人形が、好奇心で世界へ出て言葉を覚えて人を好きになるという物語だったので、日本語が最初出来なくてもお願いできる役だなと思い、もともと大ファンだったペ・ドゥナにダメもとでお願いしようと、韓国に手紙を書き、実現しました。とても幸せなコラボレーションでした」とふり返った。また今回、『狼災記(The Warrior and the Wolf)』で奇しくも同映画祭に参加していたオダギリさん。「こんばんは、オダギリです。実はこの映画に出ていまして、たぶん気づかない方もいるんじゃないかと思いますが、人形を作る生みの親の役をやりました」と謙虚に挨拶をすると、是枝監督は「大好きな役者さんなので、今日は来てくれて本当に嬉しいです!」と喜びを表した。曰く、実在の人形師から聞いた話を基に作ったというこの役だが、「オダギリさんがOKしてくれなかったらこの役はなくなっていたんじゃないかと思うくらい重要な役」とし、「非常に大好きなシーンになりましたので、楽しんでいただけたらと思います」と監督自らアピールした。このティーチインは予定時間を大幅に上回る大盛況、米アカデミー賞の前哨戦とも位置づけられる同映画祭での観客賞の受賞も期待される。『空気人形』は9月26日(土)よりシネマライズ、新宿バルト9ほか全国にて公開。■関連作品:空気人形 2009年9月26日よりシネマライズ、新宿バルト9ほか全国にて順次公開© 2009業田良家/小学館/『空気人形』製作委員会■関連記事:「中華食べるの楽しみ」 『空気人形』トロントへ出発を前に“意気込まない”是枝監督是枝裕和監督ティーチイン付き『空気人形』試写会に25組50名様をご招待是枝裕和監督『空気人形』、カンヌに続きトロント映画祭に“マスターズ”出品決定ペ・ドゥナ、駆け込みセーフに日本語で「遅れて申し訳…」ARATAも板尾もホッ…【カンヌ現地レポ 02】是枝監督、観客の反応に「安心した」『空気人形』初披露
2009年09月15日まもなく開幕するトロント国際映画祭の「マスターズ」部門にて最新作『空気人形』が上映される是枝裕和監督が、トロントへの出発を前に報道陣の取材に応じてくれた。『ヴィヨンの妻』の根岸吉太郎監督がモントリオール世界映画祭で最優秀監督賞受賞という快挙を成し遂げた直後の取材となったが、是枝監督には一切気負いなどない様子で、淡々とした口調で抱負を語った。5月のカンヌ国際映画祭に続いての海外映画祭への出品となるが、是枝監督はこのトロント国際映画祭がことのほか気に入っているとのこと。「(デビュー作の)『幻の光』以来、これまで全ての作品を上映してもらってるんです。9.11の事件があった年は行けなかったけど、それ以外は全て現地に行っているし、『幻の光』のときは初めて海外で売れたりと自分にとって出発点になった映画祭なんです」。ベルリン国際映画祭、カンヌ国際映画祭に次ぐ来場者数を誇り、世界でも有数の国際映画祭となっているが、その特徴はノン・コンペティションであり、観客賞(ピープルズ・チョイス・アウォード)が最高賞にあたるという点。「“市民”の映画祭なんですよね。僕自身、顔が思い浮かぶなじみの観客の方がいっぱいいますよ。“競いに行く”という感じじゃないんですね。(トロントは)食事がおいしくて、チャイナタウンで中華料理を食べるのが楽しみです」と、出発前からかなりリラックスしている。根岸監督がモントリオールで監督賞を受賞した点に話題を向けても「良かったと思います」と意識するでもなくニッコリ。加えて「奥田瑛ニさんが海外の映画祭で審査委員を務めている、という点も映画界にとって非常に大切なことだと思います」と真摯な表情で語った。意気込むという雰囲気を全く感じさせず、「楽しむ」という言葉が何度も口をついて出た。巨匠たちの作品が並ぶ「マスターズ」部門で、是枝作品はトロントの観客にどのように受け止められるのか?朗報を待ちたい。『空気人形』は現地時間で9月13日に上映される予定。日本では9月26日(土)よりシネマライズ、新宿バルト9ほか全国にて順次公開。■関連作品:空気人形 2009年9月26日よりシネマライズ、新宿バルト9ほか全国にて順次公開© 2009業田良家/小学館/『空気人形』製作委員会■関連記事:是枝裕和監督ティーチイン付き『空気人形』試写会に25組50名様をご招待是枝裕和監督『空気人形』、カンヌに続きトロント映画祭に“マスターズ”出品決定ペ・ドゥナ、駆け込みセーフに日本語で「遅れて申し訳…」ARATAも板尾もホッ…【カンヌ現地レポ 02】是枝監督、観客の反応に「安心した」『空気人形』初披露【カンヌ国際映画祭】日本から唯一、是枝裕和監督『空気人形』「ある視点」に正式出品
2009年09月10日周囲を山に囲まれているのに、そのホテルの名は“シーサイドモーテル”。そんな微妙なモーテルの一室で、生田斗真と麻生久美子が何をする――?別冊漫画ゴラクに連載された岡田ユキオの漫画「MOTEL」を原作に、あるモーテルに偶然集まったひと癖もふた癖もある輩たちが微妙に、絶妙に交錯しつつ、小さな幸せを見つけようとする姿を描いた『シーサイドモーテル』の製作が決定!主人公のセールスマン・亀田を『人間失格』で映画初出演にして主演を務める生田斗真が、そして一見、陽気なコールガールのキャンディを独特の空気感で観る者を魅了し、次々と話題作へと出演する麻生久美子が演じることが発表された。物語の舞台は周りを山に囲まれ、どこにも海なんかないのになぜか「シーサイド」という名がついたモーテル。かたや怪しげな化粧品を売りさばくインチキ・セールスマン。かたや三十路を前にすでに人気に陰りの見えるコールガール。この偶然の出会いが2人にもたらすのは、彼らが求めてやまない小さな幸せ?それとも…。生田さんは、自身の役を「インチキクリームを売りさばく詐欺師で、モーテルで偶然出会ったコールガールに恋をしてしまう青年」と説明。さらに「豪華なメンバーと作品を共に出来ることを楽しみながら演じていきたいです。監督からは、好きに遊んで下さいと言われました。本気で遊びます」と意気込みを語る。一方の麻生さんも「生田さんとの会話劇をテンポ良く作り上げられるよう頑張りたいと思います。とにかく出演者の方々が魅力的なので、贅沢な見どころ満載な映画になると思います」とコメント。是枝裕和監督(『誰も知らない』、『空気人形』)や西川美和監督(『ゆれる』、『ディア・ドクター』)の作品を手がけてきた独立系制作プロダクション、テレビマンユニオンによる本作。メガホンを取る守屋健太郎監督は2人について「生田くんは、いままでにないこの軽薄なキャラクターを楽しみながら演じてくれています。すでに衣裳合わせのときには亀田になりきっていて、数日前まで太宰治の作品をやっていたとは思えない豹変ぶりでした。麻生さんが演じるのは、亀田を翻弄する存在で、どこまでが駆け引きの言葉で、どこからが本音なのか、なかなか本心が見えにくい難しいキャラクターなのですが、とても絶妙なバランスで演じてくれています」と絶賛。2人の掛け合いを見どころに挙げている。因みに本作には、亀田とキャンディ以外にも個性的なキャラクターが数多く登場。借金を踏み倒したギャンブラーに、その恋人の猫好きな女。借金取りにチンピラ、伝説の拷問職人にED気味の社長、やる気のない警察官などが絶妙に交錯する群像劇となっている。現段階で生田さんと麻生さんのほかに、先輩・後輩の警察官コンビを演劇を中心に活躍する赤堀雅秋(「THE SHAMPOO HAT」主宰)、ノゾエ征爾(劇団「はえぎわ」主宰)が演じることが明かされているが、それ以外の登場人物の配役に関しては今後、徐々に発表されていく予定。この個性的過ぎる面々を誰が演じるのか?そして生田さん、麻生さんとの“化学反応”も楽しみだ。やがて朝を迎えたとき、彼らは海の見えないこのモーテルに海を見つけることが出来るのか――?すでに8月より撮影は開始されている『シーサイドモーテル』。公開は2010年を予定。■関連作品:シーサイドモーテル 2010年、全国にて公開
2009年09月10日日本映画界を牽引する是枝裕和監督が、韓国の実力派女優、ぺ・ドゥナを主演に迎えて贈る、心を持ってしまった“空気人形”と人間のラブストーリー『空気人形』。先月開催されたカンヌ国際映画祭「ある視点」部門への正式出品で喝采を浴びた本作が、これに続き、9月10日(現地時間)から開催されるトロント国際映画祭の「マスターズ」部門に正式出品されることが決定した。1995年、初監督作にしてヴェネチア国際映画祭オゼッラ賞を獲得した『幻の光』以来、全作品が国際映画祭に出品されている是枝監督。トロント映画祭への参加はこれで4度目となるが、今回は実績のある巨匠とされる監督の作品のみが出品される「マスターズ」部門への出品ということで、世界からの高い注目がうかがえる。また現時点では、同映画祭への日本映画の出品は本作のみ、先陣を切っての出品となる。この快挙について是枝監督は、「5月のカンヌでのワールド・プレミアに続き、北米でのプレミアをトロントという素晴らしい国際映画祭で迎えられることを、たいへん光栄に思います。“マスターズ”という世界中の巨匠たちが集う部門への出品は、まだまだ時期尚早とも感じつつも、この市民に支えられた映画祭で『空気人形』が観客からどのように受け入れられるのか、いまから心地よい緊張感を感じています」と喜びのコメント。既に10以上の世界各国の映画祭から出品のオファーを受けている本作だが、トロント映画祭はアカデミー賞レースの前哨戦とも言われるだけにその評価が注目される。『空気人形』は今秋、シネマライズ、新宿バルト9ほか全国にて公開。■関連作品:空気人形 2009年秋、シネマライズ、新宿バルト9ほか全国にて公開© 業田良家/小学館/2009『空気人形』製作委員会/写真:瀧本幹也■関連記事:ペ・ドゥナ、駆け込みセーフに日本語で「遅れて申し訳…」ARATAも板尾もホッ…【カンヌ現地レポ 02】是枝監督、観客の反応に「安心した」『空気人形』初披露【カンヌ国際映画祭】日本から唯一、是枝裕和監督『空気人形』「ある視点」に正式出品是枝裕和、次に描くのは“空気人形”の恋ヒロインには韓国女優ぺ・ドゥナを抜擢!
2009年06月26日先に行われたカンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に正式出品され、称賛と共に迎えられた是枝裕和監督の『空気人形』。日本でも高い人気を誇る、韓国の実力派女優ペ・ドゥナを主演に、心を持ってしまった“空気人形”と周囲の人間とのドラマを描いた本作の完成披露記者会見が6月18日(木)に行われた。ロシア・千島列島の火山噴火の影響で飛行機が欠航し、ペ・ドゥナが会見には間に合わず、その後の舞台挨拶にも間に合わないかと思われたが、何とか舞台挨拶途中で登場。是枝監督および共演のARATA、板尾創路らと共に観客の完成を浴びた。先に舞台に立った監督、ARATAさん、板尾さんは、“野郎”だけの登場となったことを詫びつつ、ペ・ドゥナが会場に向かっているとの報を受け、引き伸ばし戦術を敢行。できるだけゆっくりと話を長引かせていたが、そのかいあってギリギリ、ペ・ドゥナが到着すると、一様にホッとした表情を見せた。息を切らせながら舞台に上がると、ペ・ドゥナは日本語で「遅れて申し訳ございませんでした…」と謝罪。会場は盛大な拍手で迎え入れた。「こんなに大事な日に火山が爆発してしまい、あせりながら来ました」と苦笑いを浮かべるペ・ドゥナ。今回、心を持ち、あろうことか恋までしてしまう空気人形という役を引き受けると決めたときの気持ちを聞かれ「全てのセリフが日本語で、しかも人形の役ということで難しそうだとは思いました。でも是枝監督の作品は全て観ていて、大好きだったのでオファーをいただけて嬉しかったですし、迷いも戸惑いも計算もなく引き受けました」と語った。さらに演じるに当たっては「特に役を“演じる”ということを意識したり、イメージを作ったりはしませんでした。人形が心を持つということについては、赤ちゃんがこの世に生まれたような感覚で演じました。外の世界に出るシーンでは、心を真っ白にして、キラキラするものや動くものを見たり触ったりするときも、まさに人形のような気持ちでした」とふり返った。空気人形の元の持ち主である秀雄を演じた板尾さんは、当初の会見で「ペ・ドゥナが遅れているので、代わりにうちの嫁を連れてこようかと思いました…。早く来ないかな」と落ち着かない様子を見せていたが、共演について聞かれると「彼女はすごく真面目でしっかりしてて、気迫が伝わってきました。空気人形が秀雄と向き合い、思いをぶちまける場面があるんですが、そのシーンまで僕はあんまり役以外のところで話をしない方がいいと思って…。彼女は気を遣って日本語で話しかけてくれたんですが、すごく失礼な態度で接してしまいました。いまさらですが、すいません」と頭を下げた。ARATAさんは、空気人形が恋に落ちるレンタルビデオ屋の店員・純一に扮した。これが3作目の是枝作品への参加となるが「是枝組は僕にとって特別な場所であり、最初は『帰ってきたな』という気持ちでした。でも撮影が進む中で是枝監督の姿を見ていて懐かしくもあり、また新鮮な気持ちにもなりました。思うがまま、自然に存在することを考えました」とふり返った。ペ・ドゥナとの共演については「彼女は本当にプロフェッショナルで、真剣に役に向き合ってるんですが、ユーモアも忘れず、現場を和ませてくれるんです。いちご大福とか、甘いものを差し入れてくれたりしました」と笑顔で語った。業田良家の20ページほどの漫画を映画化した本作。監督は「普段はあまり、他人の原作を映画化したいとは思わないんですが、ワンシーンだけ、これは映像で見たいと思ったところがあったんです。それは空気が漏れて、空気人形がしぼんでしまい、好きな人の息でふくらませてもらう場面。官能的でこれを映像にしたいと思ったのが出発点でした」と語った。板尾さんから「詩のような映画」という感想が語られたが、是枝監督自身「詩を書くような映画にしたいと思っていたので、出演した人にそう言ってもらえて嬉しい」と笑顔を見せた。カンヌでの高評価を受け、日本でも期待が高まる『空気人形』。公開は今秋、シネマライズ、新宿バルト9ほか全国にて。■関連作品:空気人形 2009年秋、シネマライズ、新宿バルト9ほか全国にて公開© 業田良家/小学館/2009『空気人形』製作委員会/写真:瀧本幹也第62回カンヌ国際映画祭 [映画祭]■関連記事:【カンヌ現地レポ 14】やんちゃぞろいの審査員たちの思惑…パルムドール決定の裏側【カンヌ現地レポ 13】52歳の新星!ブラピを喰った男演賞俳優クリストフ・ワルツ【カンヌ現地レポ 12】娘シャルロットの快挙に母ジェーン・バーキンも絶叫!【ハリウッドより愛をこめて】次世代アイドルC・クロフォードが『フットルース』に!ショーン・ペン、再び離婚申請を撤回
2009年06月21日