新国立劇場バレエ団が2020/2021シーズンの開幕演目として、プティパ振付のバレエ『ドン・キホーテ』を上演する。原作は、スペインの作家ミゲル・デ・セルバンテスの長編小説。バレエでは、自分を騎士と思い込んだドン・キホーテと従者サンチョ・パンサがバルセロナで出会う町娘キトリと若者バジルの恋物語となっている。様々なバージョンが存在する本作だが、新国立劇場では99年、当時のボリショイ・バレエ芸術監督アレクセイ・ファジェーチェフを招いて新たになヴァージョンとして初演。以来、再演を重ねる人気の舞台だ。文:高橋彩子
2020年10月17日熊川哲也 Kバレエ カンパニー Autumn 2020『海賊』が開幕。ひと足早くゲネプロを鑑賞する機会に恵まれた。芸術監督の熊川による演出・振付で全幕作品として2007年に初演され、レパートリー化された本作。19世紀イギリスの詩人ジョージ・ゴードン・バイロンが発表した長編の詩をもとに多くの振付家が生み出した様々なバリエーションを、熊川は再構成。ストーリーを編み直し、起承転結に呼応する音楽を選ぶことによって、七つの海を渡る屈強な海賊コンラッドらの壮大な冒険譚に仕立て上げた。ゲネプロは、船の難破を活写するプロローグで幕開け。海賊の首領コンラッド、その部下ビルバントやアリの躍動する姿が、紗幕越しに浮かび上がる。トルコ領ギリシャの浜辺に打ち上げられた彼らは、メドーラとグルナーラ姉妹から介抱されることに。メドーラの美しさに心を奪われ、恋に落ちるコンラッド。しかし姉妹と仲間の娘は奴隷商人ランケデムに捕らえられ、市場へ売りに出されてしまう。彼女たちを奪還すべく、立ち上がった海賊の行方は──。強い絆を前面に押し出した勇壮な踊りの中に見え隠れする、個性豊かな海賊たちのキャラクター。中でも、かつて熊川も扮した従者アリは命がけの忠誠心をもって首領を守り抜く存在感を見せつける。取材日にこの役を演じていた山本雅也は、1月に上演された『白鳥の湖』でプリンシパルに昇格した次世代の踊り手。2017年の『海賊』出演時にも見せた高い跳躍力で、鳴り響く銃声に立ち向かう。周りを取り囲むダンサーも実力派が揃い踏みだ。コンラッド役の堀内將平は、リーダーにふさわしい堂々たる踊りを披露。伸びやかな舞いで観客を魅了した成田紗弥は、柔らかい肢体の中に可憐なメドーラ像を覗かせた。なお、回替わりでコンラッドを務める遅沢佑介とメドーラを務める中村祥子は、本作でKバレエのラストステージを飾る。ゲネプロ後には熊川からコメントが到着。約半年の活動休止期間を経てカンパニー再始動を果たす思いを『海賊』に乗せ、「この作品が持つ力強さこそ、カンパニーが踏み出す新たな第一歩にふさわしく、かつてないほどのエネルギーと感動が劇場を満たすはず」と語った。なお、熊川は10月28日(水)に刊行される小説版『海賊 Le Corsaire』の巻末インタビューで演目の成り立ちや舞台裏などを明かしている。公演は10月15日(木)~18日(日)に、東京・Bunkamuraオーチャードホールにて。チケット販売中。なお15日18:30、17日(土)12:30、18日12:30開演回ではオンラインでの生配信も。それぞれ翌日23:59までアーカイブ視聴できる。取材・文:岡山朋代
2020年10月15日トリー バーチ(TORY BURCH)は、パンプス「トリーチャーム バレエ」の新作を伊勢丹新宿店の期間限定ストア「ザ シュー ショップ」にて2020年9月30日(水)から先行発売する。「トリーチャーム バレエ」新作パンプスを先行発売「トリーチャーム バレエ」は、トリー バーチのシグネチャーであるダブルTロゴをブラッシュゴールドで配し、クラシカルなボウをあしらったフラットパンプス。先行商品として、深みのあるレッドやグリーンのイールレザーや、パイソンプリントでアップデートした新作シューズが展開される。伊勢丹新宿店の期間限定ストア「ザ シュー ショップ」では「トリーチャーム バレエ」に加え、フロントにラッフルを配した限定スニーカー「トリー ラッフルスニーカー」やレトロなデザインの「トリー スニーカー」なども展開。多彩なバリエーションのシューズが勢揃いする。アイコンバッグ「リー」が1階バッグ店に加えて、10月7日(水)から20日(火)までは、伊勢丹新宿1階バッグ店にアイコンバッグ「リー(LEE)」が登場。A4収納可能なサイズからプチサイズまで、ベーシックなブラック、ベージュカラーからアイキャッチなプリントまで、様々なカラー・サイズの「リー」が店頭に並ぶ。【詳細】トリー バーチ「トリーチャーム バレエ」先行発売日:2020年9月30日(水)先行発売場所:伊勢丹新宿店 / 本館2階=婦人靴/プロモーション住所:東京都新宿区新宿3-14-1価格:43,000円+税■伊勢丹新宿店 期間限定ストア「ザ シュー ショップ」期間:9月30日(水)~10月13日(火)場所:伊勢丹新宿店 本館2階=婦人靴/プロモーション※会期中、税込30,000円以上購入するとプリントトートバッグをプレゼント(数量限定につきなくなり次第終了)。■アイコンバッグ「リー」展開期間:10月7日(水)~10月20日(火)展開場所:伊勢丹新宿1階バッグ店価格例:・リー ラジウィル スモール ダブルバッグ 128,000円+税・リー ラジウィル ダブルバッグ 143,000円+税・リー ラジウィル プチ ダブルバッグ 86,000円+税【問い合わせ先】トリー バーチ ジャパンTEL:0120-705-710
2020年09月27日ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)の2020年秋冬コレクションから、新作レディースシューズ&ブーツが登場。“LV イニシャル”付きバレエシューズ「カプシーヌ・フラット バレリーナ」は、ラムスキンで仕立てたバレエシューズ。光沢感のあるブラックのポインテッドトウキャップと、アイコンバッグ「カプシーヌ」から着想したゴールドカラーの“LV イニシャル”が目を惹く。カラーバリエーションは、ピンク、ホワイト、ブラックの3色を用意した。“モノグラム・フラワー”ソールのショートブーツ「ブリージー・ライン アンクルブーツ」は、ブラックのスエードカーフレザーにシアリングを施し、独特の風合いに仕上げたアンクルブーツ。モノグラム・フラワーを配したトレッド付きのアウトソールと、ホワイトの“LV サークル”を施したラバー素材のトウキャップが特徴だ。“LV サークル”が輝く洗練ショートブーツベルベットのような質感のブラックスエードベビーゴートレザーを用いて、洗練された印象に仕上げたのが、日本限定「ブリス・ライン アンクルブーツ」。5.5cmのブロックヒールに煌めくゴールドカラーの“LV サークル”をプラスして、ミニマルなブラックショートブーツにアクセントを加えた。モノグラム・キャンバスを用いたコンバットブーツミリタリーなコンバットブーツを、ブラックレザーとモノグラム・キャンバスで再構築したのは「メトロポリス・ライン ブーツ」。ブランドロゴをエンボス加工したパッチや、モノグラム・キャンバスのバックループを採用するなど、メゾンのアイコンモチーフを随所に落とし込んでいる。【詳細】ルイ・ヴィトン 2020年秋冬新作レディースシューズ&ブーツ販売店舗:ルイ・ヴィトン各店、公式オンラインストア・「カプシーヌ・フラット バレリーナ」108,000円+税・「ブリージー・ライン アンクルブーツ」133,000円+税・「ブリス・ライン アンクルブーツ」157,000円+税<日本限定>・「メトロポリス・ライン ブーツ」172,000円+税【お問合せ先】ルイ・ヴィトン クライアントサービスTEL:0120-00-1854
2020年09月14日書籍『華麗なる「バレエ・リュス」と舞台芸術の世界ロシア・バレエとモダン・アート-』が発売。モダンバレエの基礎“伝説の”バレエ団「バレエ・リュス」20世紀初頭、ヨーロッパをセンセーションの渦に巻きこんだロシアのバレエ団「バレエ・リュス」。ロシア出身の芸術プロデューサー、セルゲイ・ディアギレフを筆頭に、伝説のダンサー・ニジンスキーなど、天才アーティストが集結した「バレエ・リュス」は、絵画、音楽、ファッションなどあらゆる芸術運動に影響を与え、モダンバレエの基礎を築いたといわれる。書籍『華麗なる「バレエ・リュス」と舞台芸術の世界ロシア・バレエとモダン・アート-』では、モダン・アート史に大きな変革をもたらした、バレエ団「バレエ・リュス」にフォーカス。芸術世界を華やかに彩った「バレエ・リュス」の魅力を舞台・衣裳デザイン画とともに紹介する。また、同時代の舞台芸術作品なども収録。約700点の図版を解説ととも紹介する。【詳細】書籍『華麗なる「バレエ・リュス」と舞台芸術の世界ロシア・バレエとモダン・アート-』3,800円+税発売日:2020年8月24日(月)仕様:B5判変型(257mm×186mm)、ソフトカバー、464ページ(フルカラー)発売元:パイ インターナショナル【問い合わせ先】パイ インターナショナルTEL:03-3944-3981
2020年08月31日パメオポーズ(PAMEO POSE)2020年秋冬新作シューズ「バレエ ヒール シューズ」と「W レース アップ シューズ」が、2020年9月よりパメオポーズ表参道本店、渋谷パルコ店ほかで発売予定だ。“トゥーシューズ”着想のパンプス&ブーツ名作バレエ「白鳥の湖」をテーマにした今季のパメオポーズは、“トゥーシューズ”からインスピレーションを得た2つのシューズを新作として提案する。“靴を丸ごと包み込む”レースアップパンプス「バレエ ヒール シューズ」は、トゥーシューズの要素をそのまま落とし込んだパンプス。靴を丸ごと包み込むようにあしらわれた、平ひものレースアップがポイントだ。素足で履くと、リボンの隙間から肌がのぞき、色っぽい雰囲気に。カラーは、ロマンティックなピンク、キラキラと輝くラメが印象的なブラックをはじめ、全4色を展開。ヒールが太めなので安定感があり、履き心地にもこだわっているのも嬉しいポイントだ。厚底レースアップブーツパメオポーズ人気のブーツも、今季は“トゥーシューズ”スタイルにアップデート。「W レース アップ シューズ」にも靴を丸ごと包み込むようにリボンを配し、エッジィな印象に仕上げた。どの角度から見ても四角形に見える、ユニークなフォルムで、コーディネートの主役となる存在感を発揮。抜群の安定感をあわせ持ち歩きやすいので、ショッピングなどお出かけの日にもおすすめだ。【詳細】パメオポーズ2020年秋冬新作シューズ・バレエ ヒール シューズ 33,000円+税・W レース アップ シューズ 37,000円+税発売時期:2020年9月※予定取り扱い店舗:パメオポーズ表参道本店、渋谷パルコ店、公式オンラインショップほか【問い合わせ先】パメオポーズ 表参道TEL:03-3400-0860
2020年08月08日5月頃から、屋外で雨に打たれながら、裸足でバレエを躍る少年の動画がソーシャルメディアでで話題となっている。しなやかな肢体と美しい回転に目を奪われるが、彼の周囲を見ると地面は未舗装で泥だらけ。いびつな塀の傍らには空きビンやバケツが積まれている。彼はナイジェリアの貧困地区にあるバレエ教室「リープ・オブ・ダンス・アカデミー」の生徒、アンソニー・ムメソマ・マドゥくん(11)。同校は独学でバレエを学んだダニエル・アジャラ・オウォセニさんが、貧しい子どもたちにバレエという芸術に触れる機会を持ってもらうため’17年に設立した。レッスンは無料で、運営費はオウォセニさんが貯金を切り崩して賄っているという。学校のInstagramアカウントでは、子どもたちのレッスンの様子を動画や写真で紹介。マドゥくんの動画も、このアカウントから発信されたものだったが、この1本の動画が彼の人生を大きく変えることとなった。Instagramでは31万回以上再生され、世界中からバレエ用品の寄付や支援金の申し出が多数寄せられた。Twitterでは女優のヴィオラ・デイヴィスが彼のダンスを絶賛。そして、米国で最も有名なバレエスクールから奨学金のオファーも舞い込んできたのだ。世界最高レベルのバレエ団アメリカン・バレエ・シアター(ABT)のジャクリーン・ケネディー・オナシス・スクール。芸術監督を務めるシンシア・ハーヴェイは「英国の友達がこのビデオを送ってくれたの。すぐに彼を見つけようと動いたわ」とCincinnati Enquirerに語る。ハーヴェイは、マドゥくんがABTの3週間の集中プログラムに参加できるよう全額奨学金の手配をしたという。また、オウォセニさんも、インストラクションの技術を磨く2週間のトレーニング・カリキュラムへ招待。ハーヴェイは「これほど熱心な子どもには手を差し伸べるべきです。世界が私たちに教えてくれたことがあるのだとすれば、私たちはあらゆる種類の人を鼓舞し、お互いに多くのことを学ぶべきだということです。ダニエルとアンソニーに機会を提供するのは正しいことだと思います」とコメントした。
2020年08月05日新国立劇場がこどものためのバレエ劇場として、オリジナル作品「竜宮」を上演する。新作の世界初演まであとわずか。振付・演出を手がける森山開次がインタビューに答えた。実は、「シンプルな話なのでバレエにはしにくい、と候補から外していた」と、モチーフとなった浦島太郎の物語について語る森山。「が、昔話にはいろんな伝わり方があって面白い。『御伽草子』の浦島太郎は、彼がおじいさんになって終わるのではなく、鶴の神に変化すると書かれている!」という。バレエの副題は、「亀の姫と季(とき)の庭」──。『御伽草子』をもとにしたこのバレエでは、太郎が助けた亀は実はプリンセスで、彼が招かれた竜宮城には、春夏秋冬の美しい四季が堪能できる不思議な季(時)の部屋が登場する。「『御伽草子』に出会って、これは“時の話”だったんだ、とても深い話だったんだと思ったのです。これならばバレエにできると。竜宮は、ある種の桃源郷、異世界の一つの象徴と考えています。そこにある季の部屋というものを表現することで、日本の四季のうつろいの美しさ、素晴らしさをもう一度見つめ直してもらえたら」コンテンポラリー・ダンスの世界で、ダンサー、また振付家として活躍、子ども向けの舞台、映像にも積極的に取り組んできたが、「ちゃんとバレエを創りたい、という思いがあります。バレエのファンの方や子どもたちが観て、バレエっていいなと思ってもらえるよう、バレエの醍醐味をしっかりと伝えたい。バレエには懐の深さ、広さがあります。また、トウシューズならではの表現や、バレエダンサーの持つ身体の軸の強さに、僕は惹かれるのかもしれません」そう話す森山の手には、自作の可愛らしい亀の模型が。美術、衣裳のデザインでもその才能を発揮、おもてなし担当のお茶目なフグ、タンゴを踊るイカの三兄弟など、遊び心満載のキャラクターを生み出した。森山ワールドとも呼ぶべきそのユニークな発想の源は──?「妄想、です(笑)。語呂合わせや駄洒落で遊び、出演者の皆にも楽しんでもらいたいと思っているんです」主演は米沢唯と井澤駿、池田理沙子と奥村康祐、木村優里と渡邊峻郁という3組のカップルだ。「バレエ団のモチベーションは高まっている。新型コロナウイルスのことがあって、自粛生活があって、皆さんの中で時間の感覚に対する意識が変わった部分があるのでは。劇場は玉手箱、時を封じ込めた場所でもある。時とともに、皆の思いも閉じ込めたこの劇場に、足を運んで頂けたら嬉しく思います」公演は7月24日(金・祝)から31日(金)、東京・新国立劇場オペラパレスにて。チケットは発売中。取材・文:加藤智子
2020年07月20日新型コロナウイルス感染拡大防止のため、全公演を中止していた宝塚歌劇団が、7月17日から、兵庫県宝塚市の宝塚大劇場で、31日からは、東京・有楽町の東京宝塚劇場でも、いよいよ公演を再開する。宝塚大劇場で上演されるのは、本来なら3月13日に開幕するはずだった花組公演、ミュージカル浪漫『はいからさんが通る』。この作品は、花組新トップスターの柚香光(ゆずかれい)と、昨年から引き続きトップ娘役を務める華優希(はなゆうき)が、トップ就任前の2017年に上演して大好評だったもので、新トップコンビの本拠地お披露目公演として再演される予定だったが、4ヶ月遅れでようやく初日を迎えることになった。これに合わせ、宝塚歌劇専門チャンネル「タカラヅカ・スカイ・ステージ」では、当日特別番組を放送し、番組内で初日のフィナーレからカーテンコールまでを生中継する。さらに翌18日の公演と9月5日の千秋楽が、動画配信サービス「タカラヅカ・オン・デマンド」で、初めて全編ライブ配信されることも発表された。また、恒例となった千秋楽ライブ中継も、全国各地の映画館で上映される。感染防止対策で、座席を前後左右空け、最前列を販売しないなど、観客を通常の半数以下に減らしたため、チケットが手に入らず涙を呑んだ多くのファンにとっては、嬉しいサービスになるだろう。宝塚大劇場公演後、中断していた星組公演も7月31日より再開東京宝塚劇場では、3月27日から上演するはずだった星組の『眩耀(げんよう)の谷~舞い降りた新星~』『Ray -星の光線-』が、同じく4カ月遅れで初日の幕を開ける。こちらも新トップコンビ、礼真琴(れいまこと)と舞空瞳(まいそらひとみ)の東京お披露目公演で、3月9日に宝塚大劇場公演が閉幕してから、東京での再開が待たれていた。この公演も、31日の初日当日、スカイステージで再開特別番組を放送し、その中でフィナーレからカーテンコールまでを生中継。さらに翌8月1日の公演と9月20日の千秋楽には、タカラヅカ・オン・デマンドで全編ライブ配信が実施される。映画館での千秋楽ライブ中継も行なわれる予定だ。宝塚歌劇ではこのほか、宙組トップの真風涼帆主演『FLYING SAPA -フライング サパ-』が、8月1日に大阪の梅田芸術劇場メインホール、9月6日に東京の日生劇場で、雪組トップ望海風斗のコンサート『NOW! ZOOM ME!!』が、9月11日に宝塚大劇場、26日に東京宝塚劇場でそれぞれ上演されるなど、中止を余儀なくされた公演の再開が、8月以降続々と決まっている。文:原田順子
2020年07月17日リノ(LENO)は、2020年秋冬の新作バレエシューズを2020年7月末に発売する。リノのバレエシューズは、日本人の足に合うよう木型からオリジナルで製作したこだわりのシューズ。丸みのあるフォルムとパテントレザーの艶やかな質感が、華やかなフェミニンさを演出する。2020年秋冬コレクションではさらに改良を重ね、革やライナーも丁寧に作り込んだ。アッパーには、高度な技術を持つ工場に特注したパテントレザーを採用。きめ細かく、滑らかな手触りのカーフレザーを用いて仕立てた。内側には、柔らかい革に沿うよう伸縮しやすいライナーを組み合わせている。インソール全面にクッションを入れ、アウトソールにはヴィブラムのラバーを配しているため購入後すぐに履けるのも嬉しいポイント。履き口に1周通っているリボンを結びなおせば、フィット感の微調整をすることもできる。また、アッパーに使用しているパテントレザーはケアも簡単。汚れ・水濡れはすぐにふき取ることで、ツヤのあるきれいな佇まいをキープすることができる。【詳細】リノ 新作バレエシューズ発売時期:2020年7月末展開店舗:リノ アトリエ アンド ショップ、リノ アップステアーズ 他価格:28,000円+税カラー:グレージュ、ピンク、グリーンサイズ:36(22-22.5cm) / 37(23-23.5cm) / 38(24-24.5cm) / 39(25-25.5cm) 40(26-26.5cm)
2020年07月06日新国立劇場(所在地:東京都渋谷区)は、4月10日より「巣ごもりシアター」ページを開設し、新国立劇場主催公演の記録映像を劇場サイト上で無料配信するサービスを行っております。そしてこの度、5月1日(金)からの追加配信内容が決定、新国立劇場バレエ団による珠玉のバレエ公演2作品を、皆様のご自宅でご覧いただけます。 5月の第1週(5月1日 15時~5月8日 14時)の配信作品は、情感あふれるドラマチックな振付で知られる英国の巨匠ケネス・マクミランによる「マノン」。本作品は、新国立劇場バレエ団にとって8年ぶりとなる待望の再演として、去る2020年2月に上演されましたが、残り2公演を前に、残念ながら公演中止となりました。バレエ団プリンシパル:米沢唯と、英国ロイヤル・バレエ・プリンシパル:ワディム・ムンタギロフの卓越した技術力はもちろんのこと、今まさにその時代の人物が生きているかのような表現力と役柄への深い解釈で、作品の世界観を眼前に繰り広げ、当日はスタンディングオベーションが湧き上がりました。新国立劇場屈指の名舞台となった本公演を、ご自宅で、配信期間中何度でもご観劇いただけます。5月第2週(5月8日 15時~5月15日 14時)にお届けする作品は、スペインの港町を舞台とし、セルバンテスの名著を題材としたクラシックバレエの名作「ドン・キホーテ」です。今年のゴールデンウィーク中(5月2日~10日)に上演を予定しておりましたが、新型コロナウイルスの影響により上演を断念しました。スカッとするような超絶技巧を披露する見せ場が随所に散りばめられ、そして新国立劇場バレエ団が誇る美しいコール・ド・バレエ(群舞)も存分に堪能できる、目にも楽しい古典バレエの大人気作は、晴れ晴れとした初夏のご観劇にふさわしいプログラム。異国情緒あふれる音楽とカラフルな舞台美術・衣裳も相まって、きっと、おうち時間を過ごす皆様を軽快なお祭り気分へといざなってくれることでしょう。ぜひ 「#巣ごもりシアター」「#nnttathome」のハッシュタグと共にご感想をお寄せください。●「巣ごもりシアター」のご案内ページはこちら:※動画視聴に伴う通信料は、お客様のご負担となります。<配信ラインアップ&スケジュール>◆バレエ『マノン』(2020年2月23日公演)配信日:2020年5月1日 15:00~5月8日 14:00◆バレエ『ドン・キホーテ』(2016年5月5日公演)配信日:2020年5月8日 15:00~5月15日 14:00※5月15日以降も映像配信を予定しております。近日詳細発表いたします。<配信予定公演詳細>◆ バレエ『マノン』(2020年2月23日上演)【音楽】ジュール・マスネ【編曲】マーティン・イェーツ【振付】ケネス・マクミラン【出演】米沢唯、ワディム・ムンタギロフ、木下嘉人、中家正博、木村優里、本島美和、福田圭吾、貝川鐵夫 ほか【指揮】マーティン・イェーツ【管弦楽】東京交響楽団アベ・プレヴォーによって書かれたマノン・レスコーの物語を、英国バレエの巨匠ケネス・マクミランがバレエ化した、ドラマティック・バレエの最高傑作のひとつです。愛ゆえにひたすら破滅へと落ちていくマノンとデ・グリューの美しくかつ壮絶な物語。デ・グリュー役には英国ロイヤル・バレエ プリンシパルのワディム・ムンタギロフを迎え、8年ぶりに上演し、大喝采を博しました。【配信日時】2020年5月1日 15:00~5月8日 14:00◆バレエ『ドン・キホーテ』(2016年5月5日上演)【音楽】レオン・ミンクス【振付】マリウス・プティパ/アレクサンドル・ゴルスキー【改訂振付】アレクセイ・ファジェーチェフ【出演】米沢 唯、井澤 駿、貝川鐵夫、高橋一輝、菅野英男、マイレン・トレウバエフ、長田佳世、本島美和、細田千晶、五月女 遥 ほか【指揮】マーティン・イェーツ【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団セルバンテス著「ドン・キホーテ」のエピソードを原作にした、楽しさと活気に溢れた古典バレエ。闘牛士たちによるスペイン舞踊、風車のエピソード、ドン・キホーテの夢の中で繰り広げられる美しい群舞、そして最終幕の恋人たちによるグラン・パ・ド・ドゥまで、古典バレエの美しさと陽気で楽しい踊りの数々を堪能できる人気演目です。このたび敢え無く5月公演が中止となった本作の、2016年公演の映像をお届けします。【配信日時】2020年5月8日 15:00~15日 14:00~巣ごもりをもっと楽しく!関連動画~新国立劇場のYouTubeチャンネルでは、バレエ鑑賞の予習にぴったりな「3分でわかる!」シリーズや、その他公演の名場面集などを多数ご紹介しております。「巣ごもりシアター」での配信2演目についても、ぜひ“ご鑑賞”前の予習として、関連動画をご活用ください。◆『マノン』◇新国立劇場バレエ団 3分でわかる!『マノン』◆『ドン・キホーテ』◇新国立劇場バレエ団 3分でわかる!『ドン・キホーテ』新国立劇場 「巣ごもりシアター」とは新型コロナウイルス感染症対策に係る政府等の要請及び緊急事態宣言を受け、現在新国立劇場は2月26日の公演を最後に、主催公演を全公演中止しております。お客様を劇場にお迎えできないこの状況下においても、新国立劇場を応援してくださる皆様と常に共にありたいという思いから、“巣ごもりシアター”として名付けたオンラインでのサービスを、まずはオペラ公演3作品の無料配信から、4月10日より開始いたしました。配信初作品のオペラ『魔笛』の再生回数は、配信期間1週間のうちに3万回以上に達し、そして第2作の『トゥーランドット』も4万回弱と、舞台芸術ファンはもとより、「日ごろ劇場に足を運ぶ機会は少ないけれど、ちょっと見てみたい!」という方にも、今だからこそできる「おうちでできる体験イベント」としてご好評をいただいております。また、新国立劇場の演劇作品もご自宅でお楽しみいただくべく、“巣ごもりシアター おうちで戯曲”が4月23日から始動。当劇場のために書き下ろされた戯曲を、2週間限定で劇場ウェブサイトにて公開をしております。演劇の土台であり、稽古場での設計図である戯曲を、自分流に楽しむことができる試みとして、話題となっています。再び安心して新国立劇場に御来場いただける日が訪れるまで、舞台芸術の力を支えに「巣ごもり」をしていただければと願っております。●「巣ごもりシアター」総合案内ページはこちら:●「巣ごもりシアター おうちで戯曲」はこちら:~新国立劇場について~新国立劇場は、 日本唯一の現代舞台芸術のための国立劇場として、オペラ、 バレエ、 ダンス、 演劇の公演の制作・上演や、 芸術家の研修等の事業を行っています。Web: Page: 企業プレスリリース詳細へ本記事に掲載しているプレスリリースは、株式会社PR TIMESから提供を受けた企業等のプレスリリースを原文のまま掲載しています。FASHION HEADLINEが、掲載している製品やサービスを推奨したり、プレスリリースの内容を保証したりするものではございません。掲載内容に関するお問い合わせは、株式会社PR TIMES()まで直接ご連絡ください。
2020年04月28日「可愛いチュチュを着て舞台で踊ってみたい」「レオタードを着てバーにつかまってみたい」――このように、華やかなバレエの世界に憧れる子どもは多いことでしょう。しかし、実際に習い始めると、「なかなかトウシューズをはかせてもらえない」「レッスンが厳しくてついていけない」といった壁にぶつかる子もいるかもしれませんね。35年以上バレエ界の第一線で活躍してきた草刈民代氏は、自身のエッセイ本『バレエ漬け』で、「バレエの舞台は華々しいが、ダンサーの日常は地道なことの積み重ねだ」と述べています。憧れの世界の舞台裏には、さまざまな悩みや苦労があることが伺える言葉ですね。では、もしも子どもから「バレエの練習がつらい」「バレエを辞めたい」と言われたら、親はどのように対応すればいいのでしょうか?親ができる声かけや対処法について説明します。子どもが「バレエを辞めたい」と言ったら、まずはこう声かけをバレエに限らず、習い事には練習がつらい時期や辞めたくなる時期があります。小学館の子育てサイト『HugKum』が、子ども(0~10歳ぐらい)に習い事をさせている保護者115人を対象に調査したところ、46.1%と約半数の子が、一度は「習い事を辞めたい」と言ったことがあるとわかりました。習い事が嫌になる時期というのは、ほぼ2人に1人が通る道。では実際に子どもがバレエなどの習い事を辞めたそうにしたら、親はどうしたらいいのでしょう?『子どもの能力を決める 0歳から9歳までの育て方』の著者で、家庭教育の専門家・田宮由美氏は、子どもにまずは次のような声かけをすると良いといいます。■「なぜ、辞めたいの?」と理由を聞く「どうしてバレエのお教室に行きたくないの?」「なぜ、お稽古がつらいの?」など、まずは子どもがバレエの練習がつらいと訴える理由を聞いてあげましょう。バレエの練習がつらい理由が「通うのに時間がかかり体力が持たない」「先生や友だちと合わない」であれば、レッスンの曜日を変えたり、別の教室を探したりすれば解決する可能性があります。「脚が上がらない」といったテクニック的なことであれば、親からも先生に相談することで解決の糸口が見つかるかもしれません。人間関係の悩みを抱えている場合など、時には子ども側にも歩み寄りが必要なこともあるでしょう。しかし、まずは「そうだったのね」と共感することが大切だと田宮氏は言います。そのうえで、どうすれば改善できるのかを親子で考えていくのが理想的です。■「よく頑張っているね」と子どもの努力を認める「こんなに上達したんだね」「ここまでよく頑張ってきたね」など、子どものこれまでの頑張りを認めてあげましょう。たとえバレエが嫌になってしまっても、親から努力を認めてもらい褒められると、子どものやる気が復活することもあると田宮氏は言います。「アン・オー(手のポジション)が指先まできれいね」といったように、具体的に褒めるとよりよいとのこと。そのためには、親もバレエにこれまで以上の関心を持つことが大切ですね。■「発表会まで頑張ってみようか」と目標を話し合う前向きな声かけをしても、子どものバレエを辞めたい意志が強いこともあります。しかし、「イヤなら辞めればいい」というのが当たり前になると、逃げ癖がつきかねません。そこで田宮氏は、辞める前に目標を設定して、それを達成したら辞めるように話し合うといいと言います。バレエなら、「次の発表会まで頑張ろう」といったような目標を決めることができますね。目標達成の過程でスキルが向上すれば、もっと頑張りたいと考え直すこともあり得ます。特に、トウシューズをまだ履いたことがない子どもなら、初めてトウシューズを履くお許しが出たときこそ心境が変化するチャンス。「辞めたい」といくら強く思っていても、考えが変わる可能性はあるのです。これらの声かけは、バレエの習い事に限らず有効です。子どもに習い事を辞めたい様子が見られたら、ぜひ実践してみてください。「上達できないから辞めたい」子には、レッスン外で親がサポートを「バレエがうまくならない」「練習がつまらない」などの理由で子どもがバレエを辞めたがっている様子なら、親が練習のサポートをしたり、バレエのレッスンが好きになれるように働きかけたりすることで、子どもの気持ちは変わるかもしれません。バレエの上達に必要なのは、お稽古場でのレッスンだけではありません。レッスン以外の時間で培った経験が能力を高めたり、バレエへの情熱を強くしたりする可能性があります。お父さん・お母さんがお子さんと一緒にできる、バレエの練習が好きになる対処法を説明しましょう。■読書で集中力を高めるパリ・オペラ座バレエ学校などでバレエ教授法を学んだ千田裕子氏によると、レッスンの悩みで多いのは「コンビネーション(アンシェヌマン)がなかなか覚えられない」「体が思い通りに動かない」「すぐに反応できない」といったことなのだそう。レッスンを重ねてもこれらの悩みが解決されない場合、集中力が足りない可能性があると千田氏はいいます。レッスンのときは、自分の意思で体をきちんと動かそうとしなければ、なかなかじょうずになりません。レッスンに集中できるかできないかが、あなたの上達に大きく影響するのです。(引用元:千田裕子著(2009),『きれいをつくるバレエ習慣』, 新書館.)※太字は筆者が施した頑張って練習しているつもりでも、うまくなったという実感がなければ、モチベーションが下がるのも無理はありませんよね。モチベーションが下がれば、集中力がさらに落ちて悪循環に陥ることも考えられるでしょう。だからこそ、子どもがバレエの練習に集中できるよう、親がサポートする必要があります。そのために千田氏がすすめる身近な方法は読書です。文字や絵など、本から得た情報は脳を刺激し、考える力を高めます。考える力が高まると、レッスン中も「膝がゆるむ癖があるから、腰をまっすぐ伸ばすように意識しよう」といったように、自分で上達に必要なことを考えられるようになり、同じ失敗を繰り返さないようになります。このように、自分で考え、意識して体を動かすことこそが「集中力」であり、それを高めるには読書が有効だと、千田氏は言っているのです。本を読みながら頭の中で情景を思い浮かべると、想像力がつき、バレエの表現力を高めることにもつながるので、一石二鳥ですね。■五感を鍛え、表現力をつけるバレエに必要な表現力を養うには、日常生活で五感(視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚)を鍛えることも大切です。夜空を見上げる、川のせせらぎに耳をすませる……こうしたことでも子どもの五感は鍛えられると千田氏は言います。たとえば、花に触れて花びらの柔らかさを知っていると、『ジゼル』に出てくる花占いの表現に役立ちます。このように、日常の体験がバレエに役立つこともあるので、練習がつらいときは少し足を止めて、五感を刺激する経験をさせてあげるのもよいでしょう。より実践的なことをしたいなら、「マイム(身体や表情による表現)」の練習が有効です。『白鳥の湖』など有名な作品には長いマイムがあり、言葉に頼らないぶん、より高度な表現力が求められます。名門イングリッシュ・ナショナル・バレエ・スクールでは、友だち同士での「おはよう」のあいさつにもマイムを用いるほど重要視されているそうです。ジャンプや回転と違い自宅でも練習しやすいので、「わたし・あなた」「愛」といった基本的な表現を子どもに見せてもらいましょう。子どもがマイムで何を表現しているのか、どんな感情を込めているのか、お父さん・お母さんが想像してみると、親子で楽しい時間が過ごせそうですね。■バレエの名作を鑑賞し、作品について勉強するバレエ講師の厚木彩氏は、多くの作品を積極的に見て、たくさんの踊りに触れることが大切だといいます。特に、『白鳥の湖』や『眠れる森の美女』『ドン・キホーテ』『ジゼル』といった有名な作品の見どころを知っておくことは、踊るうえでの必須項目とのこと。たとえば『眠れる森の美女』では、オーロラ姫が4人の求婚者からバラの花を受け取りながら踊るローズ・アダージオなどの見どころがあります。これらの作品をスクールの発表会で見るのもいいですが、プロのダンサーが集まるバレエ団の公演で見てほしいと、前出の千田氏は言います。最高の舞台を見ることで、本当のバレエがどんなものか知ることができ、バレエを見る目が養われるためです。また、緊張感あふれるプロの舞台を見てバレエ鑑賞のマナーが身につくと、会場全体の雰囲気を感じられるようになるとのこと。たとえば、演目によっては幕が下りるまで拍手をせず、余韻を楽しむこともあるのだそう。そのようにしてプロの舞台ならではの雰囲気を全身で味わうことは、バレエの上達に役立つだけでなく、バレエへの憧れの気持ちを再燃させることにもつながるでしょう。***華やかそうに見える裏で、地味な練習や悩みも多いバレエの習い事。しかし、親の声かけや対処法によっては、子どもが改めてバレエの良さに気づき、より練習熱心になる可能性があります。もちろん、無理強いはしないように。子どもの様子を見ながら適切に対処してあげてくださいね。ぜひ、親子でバレエの世界と向き合ってみましょう。文/かのえかな(参考)草刈民代著(2006),『バレエ漬け』, 幻冬舎.HugKum|子どもが「習い事を辞めたい」と言ってきたら・・・続けるべき?辞めるべき?対処法は?ママパパに徹底調査!All About|子どもの習い事は無理にでも続けさせた方がいい?ARUHIマガジン|「習い事やめたい! 」と言われたら!? 親がサポートする時のポイント千田裕子著(2009),『きれいをつくるバレエ習慣』, 新書館.ジェーン・ハケット著, 白川直世訳(2008),『Ballerina―バレエのためのステップ・バイ・ステップ・ガイド』, 文園社.厚木彩監修(2017),『ジュニアのための バレエ上達 パーフェクトレッスン』, メイツ出版.
2020年02月22日バレエは、親が子どもにさせたい習い事のひとつとして根強い人気がありますよね。華やかだというだけでなく、習うと姿勢や身のこなしが美しくなることも、バレエの魅力ではないでしょうか。そんなバレエは何歳から習い始めるのがいいのか、悩むお父さん・お母さんは少なくないはずです。このコラムでは、子どものからだの成長を踏まえた「バレエを習い始めるベストなタイミング」を説明しましょう。バレエスクールに入学できるのは何歳から?子どもがバレエを習うことができる最低年齢は何歳なのか調べてみたところ、多くの幼児向けバレエスクールが3歳以上を対象としているようです。3歳といえば、自分の意志でトイレに行きたいと伝えられるようになる年齢。バレエを習い始めるのは早くても3歳からという見方が一般的だといえます。また、3歳以後何歳までが習い始めに適しているのかも気になるところ。本場パリで研鑽を積んだ講師陣が教える「堀文雄クラシックバレエ・スタジオ」や、創立60年以上の伝統を持つ「渡バレエ学校」をはじめとした複数のバレエスクールは、「本格的にバレエを身につけたいのであれば、小学校低学年(6歳~8歳)までに習い始めるのが理想的だ」としています。つまり、子どもにバレエを習わせるなら3~8歳ごろがベストだと考えられているのです。3歳から、踊りが好きならいつでも始め時です。小学生低学年までに始められると良いでしょう。(引用元:堀文雄クラシックバレエ・スタジオ|よくあるご質問)バレエスクールの多くは、子どもの年齢に沿った複数のクラスを用意しています。前出の2つのスクールでは未就学児か小学生かでクラスが分かれます(小学生以上は、経験や学年によりステップアップ)。ほかには、未就学児をさらに細分化してクラス分けしているスクールも。たとえば、英国ロイヤル・バレエ団元プリンシパルの熊川哲也氏が率いるKバレエスクールの子ども向けバレエ教室では、3~4歳が対象の「Toddler Class」、5~6歳が対象の「Kids Class」、7~10歳が対象の「Junior Class」と3つのクラスが用意されています。バレエを「低学年までに」習い始めるべき理由とは?次に、多くのバレエスクールが「バレエは小学校低学年までに習い始めるのが理想的だ」とする理由を掘り下げてみましょう。これには、子どもが運動能力の基礎を築くうえで重要な「ゴールデンエイジ」と「プレ・ゴールデンエイジ」が大きく関係しています。■ 一生に一度しかこない「ゴールデンエイジ」ゴールデンエイジとは、9~12歳ごろにおとずれる、運動能力が著しく発達する時期のことです。その根拠は、アメリカの医学者・人類学者のスキャモンが発表した「スキャモンの発育発達曲線」(下図)によって説明することができます。(画像引用元:国立スポーツ科学センター|女性アスリート指導者のためのハンドブック 1 発育・発達について)スキャモンの発育発達曲線では、人間の器官を一般型、神経型、生殖型、リンパ型の4つに分類し、それぞれが100%に成熟するまでの発達の仕方が曲線で示されています。このうち「神経型」の青い線を見ると、10歳ごろまでに大人と同等のレベルまで発達することがわかります。神経型は脳や神経の働きのことであり、スポーツの面ではすばやい身のこなしや反射神経といった重要な能力に関与しています。この能力が10歳ごろまでに完成することから、9~12歳ぐらいのゴールデンエイジは運動能力の基礎を築くうえで重要な時期だと言われているのです。ちなみに、ゴールデンエイジは一生に一度しかやってきません。「神経が急激に発達するこの時期に運動することで、スポーツがうまくなる」という、まさに「黄金期」なのです。■ 年中~低学年にあたりにやってくる「プレ・ゴールデンエイジ」このゴールデンエイジの前段階が「プレ・ゴールデンエイジ」です。リオ五輪で陸上日本代表のコーチを務めた堀籠佳宏氏によると、プレ・ゴールデンエイジは骨も筋肉も発達途上な時期。この年齢のうちに競技を問わず幅広い運動経験をすることが、のちの運動能力の基礎になるのだそう。ゴールデンエイジを最大限充実させるには、プレ・ゴールデンエイジからの運動経験が重要なのです。そんなプレ・ゴールデンエイジがやってくるのは、5~8歳ごろ。年中~低学年ごろにあたる時期です。運動能力を高める一生に一度のチャンスを最大限に活かすためにも、プレ・ゴールデンエイジにしっかり運動経験を積むべきである……。これが、3歳~低学年ごろまでにバレエを習うべきとされる理由だというわけです。8歳を過ぎてからバレエを習い始めたら、遅すぎるの?では、子どもが8歳を過ぎてからバレエに興味を持ち始め、習いたいと思っても、それでは遅すぎるのでしょうか?答えは「ノー」です。老舗バレエ用品メーカーのチャコットによると、8歳以降から始める子どもたちは、“憧れの○○さんのように踊りたい”など目的意識がはっきりしているため、バレエを習う意義は十分にあるのだそう。本人にしっかりと意思があれば、遅めのスタートでも問題ないのです。現に、8歳以降からバレエを習い始めた方でも活躍している人はいます。たとえば、熊川哲也氏の習い始めは10歳。英国の2つのロイヤル・バレエ団でプリンシパルを22年間にわたって務めた吉田都氏も、9歳から習い始めたそうです。また、43歳で引退するまでバレエの第一線で活躍し続けた草刈民代氏も8歳からバレエを習い始めたので、比較的遅いスタートだったと言えます。子どもが「バレエを習いたい」という高い意欲を持っていたら、年齢に縛られず、ぜひ挑戦させてあげてください。***華やかな舞台が、大人も子どもも惹きつけるバレエ。頑張ってレッスンを積み重ね、初めてトウシューズを履けるようになったら感動もひとしおでしょう。3歳を過ぎたら、レッスンを始めるかどうか、ぜひご検討ください。文/かのえかな(参考)Kバレエスクール|熊川哲也のキッズ・バレエ Ballet Garden堀文雄クラシックバレエ・スタジオ|よくあるご質問渡バレエ学校|よくあるご質問松山バレエ団|松山バレエ団に関するよくある質問チャコット株式会社 公式Webサイト ニュース|これからバレエをはじめたいキッズ&ママ・パパへ株式会社 明治|成長期に必要なトレーニング~「敏しょう性」~Hanako ママ web|あらゆるスポーツの基礎を作る、プレ・ゴールデンエイジって?国立スポーツ科学センター|女性アスリート指導者のためのハンドブック 1 発育・発達についてDews (デュース)|引退を発表したバレリーナ吉田都の魅力をバレエ経験者が解説!STAGE(ステージ)|〈草刈民代〉キャリア35年のバレエを完全引退。女優道をまい進する彼女が見出した試行錯誤の人生とは…
2020年02月20日2月22日(土)から、新国立劇場バレエ団がケネス・マクミラン振付による物語バレエの傑作、『マノン』を8年ぶりに上演する。アベ・プレヴォーが18世紀に書いた小説『マノン・レスコー』を原作に、マクミラン率いる英国ロイヤル・バレエ団が1974年に初演した作品。オペラや映画、絵画の題材としてたびたび取り上げられてきた“運命の女”マノンの壮絶な物語を、マスネの音楽と見事に融合した、マクミランの独創的な振付がドラマティックに描き出す。パリ近郊の宿屋で出会って恋に落ち、駆け落ちをした美しい少女マノンと若い神学生のデ・グリュー。しばし共に暮らすふたりだったが、デ・グリューの留守中に富豪のムッシューGMとマノンの兄レスコーが現れ、大金を餌にマノンを説得、彼女を愛人として連れ去ってしまう。ムッシューGMのパーティーで再会し、逃げ出すマノンとデ・グリュー。だがムッシューGMに見つかったマノンは、売春婦としてアメリカに送られてしまう……。マノンとデ・グリューを演じるのは、米沢唯&ワディム・ムンタギロフ(22、23日)、小野絢子&福岡雄大(26日、1日)、米沢唯&井澤駿(29日)の3組。主役ふたりによる“寝室のパ・ド・ドゥ”や“沼地のパ・ド・ドゥ”は、ガラ公演で踊られる機会も多いバレエ史上屈指の名シーンだが、物語バレエのパ・ド・ドゥはやはり全幕で観てこそ。この機会に、愛と破滅の物語にどっぷりと浸かりたい。文:町田麻子
2020年02月20日“今、東京で観るべき舞台”とはっきり言い切ってしまっていいだろう。青年団『東京ノート・インターナショナルバージョン』『東京ノート』の2作品連続公演が、2月6日(木)に開幕する。『東京ノート』は、1994年の初演以降13か国語に翻訳され、世界16ヵ国以上で上演されてきた平田オリザと青年団の代表作とも言える作品のひとつだ。国内での上演は8年ぶりとなり、再演を待望していた演劇ファンも多いだろう。舞台は近未来のとある美術館。ヨーロッパで大きな戦争が起こり、そこから避難してきた絵画を前に家族や恋人たちが、両親の世話や相続問題、進路や恋愛などについての会話を繰り広げていく。小津安二郎の『東京物語』をモチーフに描かれたこの作品には、バラバラに暮らしている家族を中心としたミクロな日常と、戦争により世界が不穏な空気をまとっているというマクロな視点、その両方が見事に内包されている。だからこそ、目の前で淡々と描かれる2時間の光景に、いつしか観客は胸を打たれてしまう。一方、『東京ノート』は平田作品の中でも特に世界的な広がりを持つ1本でもある。2017年からは毎年、台湾、タイ、フィリピンでの翻案上演が行われ、“現地化”がされているのだ。今回同時に上演される『インターナショナルバージョン』は、その集大成として上記の3か国の俳優に加え、日本、アメリカ、ウズベキスタンの俳優が参加。脚本も全面改訂され、登場人物も増加しているという。平田オリザと青年団が日本の演劇界に与えた大きな衝撃として、俳優たちが舞台上で同時に複数の会話を行う“同時多発会話”が挙げられるが、このバージョンで飛び交う言語はなんと7か国語!ある意味、究極の“同時多発演劇”と言えるだろう。2019年の豊岡演劇祭とシアターオリンピックスで上演され話題を呼んだ作品だが、東京では初の上演となる。『東京ノート』初演から26年。再演を重ねるごとに「遠い国で戦争が起きている」という状況はよりリアルなものとして私たちに差し迫り、“家族”の形についても私たちに再確認を問いかけてくる。そして、各国の俳優が揃う『インターナショナルバージョン』は、まさに現在の東京が持つ混沌に等しい。今、東京で上演されることに大きな意義がある……そんな2本の作品なのだ。『東京ノート・インターナショナルバージョン』は2月6日(木)より16日(日)まで、『東京ノート』は2月19日(水)から3月1日(日)まで、東京・吉祥寺シアターで上演される。文:川口有紀
2020年02月05日昨年創立20周年を迎えたKバレエ カンパニーの21年目の幕開けを飾る公演、『白鳥の湖』が1月29日(水)から2月2日(日)まで東京・Bukamuraのオーチャードホールで上演される。このクラシックバレエの代名詞の、熊川哲也演出・再振付版の初演は2003年。英国を代表する舞台美術家ヨランダ・ソナベンドが手がけた美しい舞台装置や、熊川による巧みなストーリーテリングが好評を博し、初演以来たびたび上演されてきたプロダクションだ。毎回大きな話題になるのはやはり、白鳥オデットと黒鳥オディールという、相反するキャラクターを演じ分ける主演ダンサー。今回も、Kバレエ カンパニーならではの豪華な競演が実現する。まずは、今作に主演するのは5年ぶりとなる、世界最高峰の舞姫・中村祥子。そして、熊川をして「天才」と言わしめる若きプリンシパル・矢内千夏。さらには、2018年の公演で急きょ代役を務めて高い評価を得た小林美奈に、今回が初役となる成田紗弥。彼女たちがそれぞれのパートナー、遅沢佑介、高橋裕哉、堀内將平、山本雅也とともに織りなす、ドラマティックな『白鳥の湖』の世界に期待したい。文:町田麻子
2020年01月28日英国ロイヤル・バレエ団が誇る不朽の名作、ケネス・マクミラン振付のバレエ「ROMEO AND JULIET(原題)」が、映画『ロミオとジュリエット』として2020年3月6日(金)に日本公開される。20世紀バレエの最高傑作『ロミオとジュリエット』がスクリーンへケネス・マクミラン振付の『ロミオとジュリエット』は、イギリスの劇作家シェイクスピアによる『ロミオとジュリエット』をベースとした作品。官能的かつ感情的な作品を得意とするケネス・マクミランは、シェイクスピアの戯曲とは異なり、悲劇の物語における2人の心理的側面を強調することで、リアリティや登場人物たちの感情を存分に表現するバレエ作品を作り上げた。1965年、マクミランの『ロミオとジュリエット』は、コヴェント・ガーデンで初演され、実に40分間も拍手が鳴りやまず、43回ものカーテンコールが行われるという大成功を収めた。ロイヤル・バレエにおいて上演された回数は400回以上。20世紀バレエの最高傑作と言っても過言ではない。16世紀ヴェローナの街を再現初演から50年以上の時を経て、2020年、短い生を情熱的に駆け抜けたロミオとジュリエットの恋の物語は、名曲プロコフィエフの音楽に乗せた現代的な演出と、劇場用映画ならではのカメラワークによって、これまでになくドラマティックに表現される。映画『ロミオとジュリエット』は、16世紀のヴェローナの街を再現したオールロケで撮影された。ストーリー物語の舞台はイタリア・ヴェローナの街。そこでは、敵対し争いを繰り広げる2つの名家、モンターギュ家とキャピュレット家があった。モンターギュ家の1人息子ロミオは、親友ベンヴォーリオ、マキューシオと、キャピュレット家の仮面舞踏会に忍び込む。そこで出会ったキャピュレット家の1人娘ジュリエット。運命に導かれるように2人は惹かれ合った――。英国ロイヤル・バレエ団を代表するダンサーたちが集結キャストには、主役から脇役に至るまで英国ロイヤル・バレエ団を代表するダンサーたちが集結。映画『キャッツ』で白猫ヴィクトリア役を演じたプリンシパル・ダンサー、フランチェスカ・ヘイワード、そして期待の若手ファースト・ソリストのウィリアム・ブレイスウェルが、運命に翻弄された恋人たちを演じる。また、敵役のティボルト役は、マシュー・ボーン版の『白鳥の湖』で男性の白鳥として主演を務め、今やバレエ界で最も熱い視線を浴びるプリンシパル、マシュー・ボールに決定。さらに本作では、原作の登場人物の実年齢に近い、若いダンサーたちが主要なキャストとして選ばれており、演技と共にバレエの超絶技巧も披露する。作品詳細『ロミオとジュリエット』公開時期:2020年3月6日(金) TOHOシネマズシャンテ 他 全国ロードショー監督:マイケル・ナン撮影監督:ウィリアム・トレヴィット振付:ケネス・マクミラン音楽:セルゲイ・プロコフィエフ美術:ニコラス・ジョージディアスキャスト:フランチェスカ・ヘイワード、ウィリアム・ブレイスウェル、マシュー・ボール、マルセリ-ノ・サンベ、ジェームズ・ヘイ、トーマス・ムック、クリストファー・サウンダース、クリスティン・マクナリ-、ベネット・ガートサイド、金子扶生 ほか
2019年12月30日1995年に岸田國士戯曲賞を受賞した平田オリザの『東京ノート』。青年団によって初演されてから四半世紀を経て、若き演出家によって解体・再構築される舞台が、本日より開幕する。東京にある美術館を舞台に、そこを訪れる客や学芸員の断片的な会話を同時多発的に見せる。物語の背景にはヨーロッパで起きた架空の大きな戦争があり、登場人物たちの会話を聞くごとに少しずつそのことが浮かび上がってくる。これまで13カ国語に翻訳され、世界16カ国で上演された。そんな、青年団の金字塔とも言うべき代表作に、2005年から青年団に所属している演出家で俳優の堀夏子が挑む。青年団では劇団員誰もが企画公演を立ち上げることができ、その中から審査を通った者が「若手自主企画」として上演を果たすのだ。オリジナル版『東京ノート』では20人いた出演者が、今回はなんと7人。同時多発で聞こえづらかったセリフや、登場しない人物たちにフォーカスをあてて、「不在」を浮かび上がらせる。タイトルも『トウキョウノート』と改題しての上演だ。堀は桜美林大学在学中から平田に師事。2006年から20012年まで平田演出の『東京ノート』に出演しており、2020年に上演される『東京ノート』にも出演予定。今年10月に、演劇集団キャラメルボックスの俳優・多田直人による企画公演で初めての作・演出を経験したばかりだ。新しい世代の作り手が、かつての名作を作り直す。ただの「再演」とは違う、実にクリエイティブな試みがそこにある。青年団若手自主企画vol.80 堀企画『トウキョウノート』は、東京・アトリエ春風舎にて12月29日(日)まで。文:小川志津子
2019年12月24日2017年10月にシーズンの幕開けを飾る作品として初演され、初めてクリスマスの時期に登場した昨年の公演も好評を博した、ウエイン・イーグリング振付による新国立劇場バレエ団の『くるみ割り人形』。今年も12月14日(土)から22日(日)までの上演が決まっており、昨年の公演でも主役ペアを演じた米沢唯&井澤駿、小野絢子&福岡雄大、木村優里&渡邊峻郁、池田理沙子&奥村康祐の4組が再びクリスマス気分を盛り上げる。舞台はクリスマス・イブの夜。パーティーの準備で大忙しの少女クララの家に、続々と招待客が訪れる。一家の友人であるドロッセルマイヤーと彼の甥も到着し、ハンサムな甥にほのかな恋心を抱くクララ。ドロッセルマイヤーは、クララにくるみ割り人形をプレゼントする。パーティが終わり、眠りに就いたクララは夢を見る。くるみ割り人形とねずみたちとの戦いをドロッセルマイヤーが収めると、人形は士官服姿の甥へと姿を変え、クララと彼はロマンティックなパ・ド・ドゥを踊るのだが、ねずみの王様が甥を人形の姿に戻してしまい……?主役ペアによる高度なパートナリング技術が必要なパ・ド・ドゥ以外にも、群舞やディヴェルティスマンなど踊りの見せ場が多く、多彩な音楽と踊りが楽しめるイーグリング版。また、狂言廻し的に登場するドロッセルマイヤー、ちょっぴりコミカルなねずみの王様など、キャラクターの面白さにも定評がある。何かと慌ただしい年末、美しく心温まるバレエでゆっくりとクリスマス気分に浸ってみては? 東京・新国立劇場 オペラパレスにて上演。文:町田麻子
2019年12月12日クリスマス・イヴの夢の物語を描く、バレエ『くるみ割り人形』の季節がやってきた。独特の発想と美しさで人気の新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』について、同団トップダンサー、小野絢子・福岡雄大ふたりのプリンシパルにインタビュー、その魅力や見どころを聞いた。【チケット情報はこちら】「主人公クララに親近感をもって観ていたのを覚えています。一緒に冒険する感覚が楽しかったですね」と、子供の頃を振り返る小野。福岡も「チャイコフスキーの三大バレエのなかでも、等身大の人たちの人間的で温かみのある作品。音楽と踊りが一体化した時の化学反応を楽しんでいただきたいです」と話す。この傑作が誕生したのは、1892年。初演から120年以上を経たいまも、これに新たな演出・振付をほどこした様々なヴァージョンが上演されている。新国立劇場が上演しているのは、2017年に初演されたウエイン・イーグリング振付の版。「アイデアがいっぱい詰まっていて、彼の子供時代のおもちゃ箱ってこんな感じだったのかなと思えるような舞台です。振付は総じてアクロバティック!息を呑むようなリフトがたくさん出てきて、目が離せなくなると思います」(福岡)、「気球に乗って旅に出る、というのも、ほかでは見られないアイデア。新国立劇場ならではの大掛かりな装置は、優秀なスタッフあってこそ実現します。迫力の舞台を楽しんでいただきたいです」(小野)とも。福岡が演じるのはドロッセルマイヤーの甥、くるみ割り人形、王子と三役だ。「クララはドロッセルマイヤーの甥にほのかな恋心を抱いているんです。夢の世界に入ったクララは、第1幕の終盤、雪の場面で彼とパ・ド・ドゥを踊り、第2幕のクライマックスではこんぺい糖の精となって、王子と華やかなグラン・パ・ド・ドゥを踊ります。主役ふたりの踊りの大きな見せ場ですね」(小野)。さらに、次々と披露される各国の踊りや、オレンジ色のポピーのイメージが鮮烈な花のワルツも、見応えたっぷりだ。初演以来、回を重ねて上演することで、「最近、クララの兄・フリッツの演技を見ていて、もしかしたら『くるみ割り人形』は、クララだけでなく、フリッツの夢でもあるのかもしれないな、と気づきました。年齢、性別を問わず、存分に楽しめるバレエだと感じています」という福岡。小野も、「年々、バレエ団の皆から支えられていることをより強く実感します。皆と一緒に、毎回1度きりの舞台と思って取り組みたい」と意欲を見せた。公演は新国立劇場オペラパレスにて、12月14日(土)から22日(日)まで全8公演。小野、福岡はこのうち2公演で登場するほか、22日(日)13時開演のぴあスペシャルデー公演でも主演する。チケットは発売中。取材・文:加藤智子
2019年12月10日東京バレエ団が、長年上演を重ねてきた『くるみ割り人形』を刷新し、新演出で上演する。初日を2週間後に控えた11月末、リハーサルが公開された。【チケット情報はこちら】チャイコフスキーの音楽による『くるみ割り人形』は、クリスマスの風物詩として高い人気を誇るバレエ。この日は、本作の改定演出・振付を手がけた斎藤友佳理芸術監督の陣頭指揮で、クリスマスの夜、主人公マーシャが夢の世界を旅する第2幕の稽古が繰り広げられた。その後行われた記者懇親会で、「東京バレエ団の従来のヴァージョンを、自分がダンサーとして踊っていた時、“もっとこうだったら”と感じていたことを思い出しながら、アレンジしてみました。でも実際に作業をしてみると、ゼロから新しく、まったく違う『くるみ割り人形』を創ったほうがもっと簡単だっただろうと、つくづく感じているんです」と笑う斎藤友佳理芸術監督。新しい『くるみ』に着手するにあたり、「ここでまったく新しい何かを誕生させなければ意味がない」と、毎日、自宅の大きなクリスマスツリーを眺めて考えていたという斎藤。そんなとき、家族にすすめられて、ふと、ツリーに頭を入れて、中の空間を覗いて見た。「こんな世界があったんだ!」とその光景に感激した彼女は、「すべての物事はクリスマスツリーの中で起きていて、マーシャたちは、ツリーのてっぺんにあるお菓子の国を目指す、という発想にたどり着いたんです」という。この日のリハーサルでマーシャ役を踊った川島麻実子は、「皆とコミュニケーションをとりながら創っていますが、これを踊りきることができたら、自分にとって大きな糧になるのではないかと思います。最初、マーシャは7歳という設定ですが、王子と出会って、精神的にも少しずつ成長し、最後のグラン・パ・ド・ドゥではさらに成熟を見せる──。私たちも、そう踊っていきたい」。くるみ割り王子役の柄本弾も、「これまで彼女と組んで踊った舞台の中で、いちばんいいものをお届けしたい。自分たちの気持ち、内面を、お客さんに伝えるためにはどうしたらいいかと、たまに言い合いをしながら創っている。いい舞台が出来上がると確信しています」と思いを明かした。ふたりが登場するのは公演初日。新たにロシアで製作した装置・衣裳も、この日お披露目となる。魅力的な主人公たちはじめ、表現力豊かなカンパニーが一丸となって取り組む新制作。見応えたっぷりの舞台となるだろう。公演は12月13日(金)から15日(日)は東京文化会館、22日(日)はロームシアター京都、24日(火)がよこすか芸術劇場。チケットは発売中。取材・文:加藤智子
2019年12月05日1991年から99年まで名門ネザーランド・ダンス・シアターに所属するなど、ヨーロッパで長らく活躍後、2007年に日本に拠点を移してからもダンサー・振付家として精力的に活動している中村恩恵。彼女が2017年、新国立劇場バレエ団のダンサーたちと首藤康之に振付けた『ベートーヴェン・ソナタ』が、本日11月30日(土)と12月1日(日)の2日間にわたって東京・新国立劇場 中劇場にて再演される。ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンという大作曲家の音楽と生き方にインスピレーションを得て創作され、「世界に発信できる高い水準」との高評価を得た作品だ。「ベートーヴェン」と「ルートヴィヒ」というふたつの役柄でひとりの人物を表す本作で、前者を演じるのが福岡雄大、後者が首藤。ふたりをはじめ、失恋相手ジュリエッタ役の米沢唯、恋人アントニエ役の小野絢子、甥カール役の井澤駿、その母ヨハンナ役の本島美和と、主要キャスト全員が初演からの続投となる。新国立劇場バレエ団と首藤康之が初めて共演することも話題を呼んだ初演から2年半、深みを増した舞台が期待できそうだ。文:町田麻子
2019年11月30日世界屈指の名門、英国ロイヤル・バレエ団の一員として数々の主要な役柄を踊り、2018年10月、惜しまれながら同団を引退した小林ひかるが、来春上演のガラ公演〈輝く英国ロイヤルバレエのスター達〉で初めてプロデュースに挑戦する。【チケット情報はこちら】現役を退き、「生活のリズムががらりと変わりました!」と、インタビューにこたえる小林。「現役時代からオンラインの大学でスポーツサイエンスを学び、指導者として活動する準備を進めてもいました。同時に、日本のダンサーたちの活躍の場をもっと広げたいという思いから、より多くの方々にバレエを楽しんでもらえる公演を実現したいと考えていたんです。プロジェクトは4年先まで考えているけれど、これはそのスタートとなる公演なんです」ローレン・カスバートソン、ヤスミン・ナグディ、高田茜、平野亮一、ワディム・ムンタギロフら、ロイヤルのスターたちが次々と登場する豪華さに加え、誰もがバレエに親しめるようにと独自の工夫を散りばめる。「バレエは言葉なしに伝えることができる芸術だけれど、様々な作品の抜粋が次々と上演されるガラ公演は、初めての方にとってわかりにくいことも多いでしょう?この公演では、各上演作品の上演前に短い解説の映像をお見せします。語るのはダンサー自身。話すのが得意ではない人もいて、収録は大変ですが(笑)」プログラムの組み方も独創的だ。「ダイナミックさが感じられるもの、演劇的なもの、神秘的な物語と、テーマの異なる3つのプログラムを、1公演につき2プログラムずつ上演します。バレエにはいろんな要素があるということをお伝えしたくて!」小林の夫君、ロイヤルの人気プリンシパルのフェデリコ・ボネッリも登場、「めったに抜粋上演されない、マクミランの『レクイエム』から、男性のソロを踊ります。またメリッサ・ハミルトンは、ロイヤルのレパートリーにない、ベジャールの『ルナ』を踊るんですよ」。『ルナ』は、100年にひとりとうたわれた天才ダンサー、シルヴィ・ギエムが踊ったことで知られる傑作だが、「最近自覚したのですが、こうした作品の上演許可を取るのってすごく大変なんですね!」と、尻込みすることなく、日々挑戦を続けている。12月にBBCで放映される『ロミオとジュリエット』で主役を演じるウィリアム・ブレイスウェル、今シーズン、ファースト・ソリストに昇進し、活躍の幅を広げているアクリ瑠嘉など、将来が楽しみなダンサーも登場、「ダンサーたちそれぞれの、奥深い部分まで見ていただけるはず。ぜひ注目してください」公演は2020年1月31日(金)、2月1日(土)、昭和女子大学人見記念講堂。チケットは発売中。取材・文:加藤智子
2019年11月22日プロジェクションマッピングを使用したバレエ「くるみ割り人形」が、2019年12月21日(土)、22日(日)に新宿文化センターにて開催される。プロジェクションマッピングで“名作バレエ”をカラフルにこれまで100年以上もの間、世界中で上演され続けてきた古典バレエの代名詞「くるみ割り人形」。埼玉で活動するNBAバレエ団による「くるみ割り人形」は、バレエとプロジェクションマッピングが融合したカラフルな演出で、大人から子供まで楽しめる作品となっている。バレエ作品は通常、シーンが移り変わる場面で装置の入れ替えが行われる。それにより、どうしても物語の雰囲気が途切れてしまうのだが、本作では装置転換時に、色鮮やかで存在感のあるプロジェクションマッピングを投影。作品全体に華やかさが増し、より没入感のあるバレエを楽しむことができる。オリジナル演出の「葦笛の踊り」もまた、原作にアレンジを加えたユーモアあふれる演出も。原作にある「葦笛(あしぶえ)の踊り」の場面では、3匹のねずみが、魔法によって人間の姿になり登場し、オリジナルのストーリーが展開されていくという。誰もが知る名作とは一味違う“カラフル”なバレエで、素敵なクリスマスを過ごしてみては。【詳細】NBAバレエ団「くるみ割り人形」公演日:2019年12月21日(土)18:00(開場17:30)、12月22日(日)15:00(開場14:30)公演場所:新宿文化センター 大ホール住所:東京都新宿区新宿6丁目14−1チケット価格:S席10,000円、A席8,000円、B席5,000円/親子ペアS席15,000円/シニアS席9,000円※親子ペア席は大人1名+中学生以下の子供1名、各回50セット限定。※シニアS席は60歳以上。身分証の提示を求める場合あり。※3歳未満は入場不可。チケット取り扱い場所:NBAバレエ団(月~金 9:00~17:00)、チケットぴあ、イープラス【問い合わせ先】NBAバレエ団TEL:04-2924-7000
2019年11月17日岩井秀人、松井周ら、優れた劇作家・演出家を輩出している青年団の若手自主企画。演出家・蜂巣ももが青年団内で発足した「ハチス企画」の新作『まさに世界の終わり』が本日11月9日に東京・アトリエ春風舎で開幕した。伊藤キムや寺田みさこに師事しながら、演劇とダンスの境界線や、非現実な身体と言語について考え抜いてきた蜂巣。彼女が今回取り上げるのは、1995年に38歳の若さで亡くなったフランスの劇作家、ジャン=リュック・ラガルスの1990年発表作である。同作を基にした、グザヴィエ・ドラン監督による映画『たかが世界の終わり』(2016年)は、第69回カンヌ国際映画祭で、グランプリとエキュメニカル審査員賞を受賞している。長年、家族のもとを離れていた長男ルイ。彼が帰郷したのは、自らの死を家族に告げるためだった。しかし家族はそれぞれの吐露を繰り返し、ルイの言うことに耳を傾けない。いつまで経っても自分の死を告げることができないまま、時間だけが過ぎていく……。同公演の紹介文の一行目にはこうある。「家族の政治、身体を問い直す」。思えば、家族の会話をふと一歩引いて聞いてみると、めいめいが、自分の都合や事情を通すことに必死であったりする。ある時は弱っている自分を演出し、ある時は泣いてキレて暴れたりする。果たしてそこに、どんな革命がもたらされるのか。そして、彼らが掲げるフレーズはもうひとつ。「家族という他人は、友情を育むことができるのか」。そこに描かれるのは希望か、それとも……。青年団若手自主企画vol.79 ハチス企画『まさに世界の終わり』は11月24日(日)まで。文:小川志津子
2019年11月09日世界最高峰のオーケストラ、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が来日する。その凄さは、なんといってもメンバーの質の高さ。スポーツに例えてみれば、スター選手ばかりを集めたバスケットの“NBAオールスター”といった趣だ。全員がソリストとして通用するだけに、そのステージに接して最初に驚くのがオーケストラから放出される音の大きさだ。もちろん大音量のみならず消え入るようなピアニッシモに至るまでを、一糸乱れぬ精緻なアンサンブルによって描き出すあたりは流石ドイツ。ポルシェやメルセデスを生み出した世界最高峰の工業技術にも通じる圧倒的な完成度が目の前に展開されるのだ。この世界最高の楽器とも言えるベルリンフィルを指揮する今年のシェフは、インド出身の巨匠ズービン・メータだ。プログラムに用意されたR.シュトラウス、ベートーヴェン&ブルックナーという、これまたコテコテのドイツ音楽を、自由自在にドライブする事間違いなし。車の世界においては、日本の速度規制によって本来の性能を味わうことはなかなか難しいことではあるが、音楽の世界では心配無用。リミッターなしのベルリン・フィルを思う存分堪能できるチャンス到来!●公演概要11月13日(水)愛知県芸術劇場 コンサートホール11月14日(木)、15日(金)フェスティバルホール11月19日(火)ミューザ川崎シンフォニーホール11月20日(水)、21日(木)、22日(金)サントリーホール●ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団は、1882年に自主運営楽団として創立。以来、世界で最も優れたオーケストラの一つとして長きにわたり評価されている。オーケストラの初公演は1882年10月17日、楽員たちによって選ばれたルートヴィヒ・フォン・ブレナーによる指揮のもと行われた。それから5年後、当時の名興行主であり、楽団設立当初よりオーケストラの運営面を支えていたヘルマン・ヴォルフの導きにより、ハンス・フォン・ビューローが初代首席指揮者に就任。彼はベルリン・フィルをドイツにおける一流オーケストラの水準へと一気に向上させた。その後を率いたのはアルトゥール・ニキシュ。1895年から1922年まで首席指揮者を務め、ブルックナー、チャイコフスキー、マーラー、シュトラウス、ラヴェル、ドビュッシーなど多岐にわたるオーケストラのレパートリーを確立した。ニキシュの逝去後、弱冠36歳のヴィルヘルム・フルトヴェングラーが首席指揮者に就任。古典派やドイツロマン派の作品を得意とすると同時に、ストラヴィンスキーやシェーンベルク、バルトーク、プロコフィエフといった近現代曲にも取り組み、レパートリーを拡大した。しかしながら、第二次世界大戦によりフルトヴェングラーは指揮者としての活動を奪われ、終戦後間もなくレオ・ボルヒャルトがその任を担うが、1945年8月、悲劇的な誤解によりアメリカ歩哨に射殺されてしまう。その後、若きルーマニア人指揮者セルジュ・チェリビダッケがオーケストラを率いることとなった。1952年、フルトヴェングラーの首席指揮者へ復職が認められ、1954年の逝去までその任を務めた。また、戦後の1949年、空襲により崩壊したベルリン・イエス・キリスト教会が再建され、当時のオーケストラの新しい本拠地として寄与したほか、音響が非常に優れていることから現在もオーケストラの活動を支えている。1955年、ヘルベルト・フォン・カラヤンが終身首席指揮者兼芸術監督に就任。以後数十年にわたりオーケストラと確固たる関係を築き、唯一無二の音と演奏スタイルを発展させ、ベルリン・フィルの名声を世界中に轟かせた。そして1989年10月、新しい首席指揮者に任命されたクラウディオ・アバドは、あるテーマのもとに、伝統的な作品と現代作品という対照的な作曲家を組み合わせたプログラミングを考案。また、楽員による室内楽活動の奨励に加え、オペラのコンサート形式演奏会を取り入れるなど、オーケストラにさらなる特異性と多様性を与えた。アバドの退任後はサー・サイモン・ラトルが首席指揮者兼芸術監督に就任、2002年9月から2017‐18シーズンまでその任を務めた。彼との契約は、オーケストラが若い世代で最も成功している指揮者を獲得したことに留まらず、重要かつ革新的な方針を展開するに至った。民間組織としてのベルリン・フィルハーモニー管弦楽団財団が創設されたことは、最先端の組織構造を生み出し、音楽家たちの経済的生命線を確保しながら、創造力のある発展のために幅広い機会を与えている。また、同財団はメインスポンサーとしてドイツ銀行の寛大なるサポートを享受。この援助は、サー・サイモン・ラトルが舵取りをしていた時代に作り上げられた教育プログラムに1つの焦点を当てており、特に若い聴衆たちの育成に専心するなど、オーケストラの活動の域はより広がりを見せている。その献身的な取り組みに対し、ベルリン・フィルとラトルは芸術団体として初のユニセフ親善大使に任命された。2009年には「デジタル・コンサート・ホール」を立ち上げ、インターネットを通じてベルリン・フィルのライヴ演奏会や過去の記録を定期的に配信し、世界の聴衆たちがテレビやパソコン、スマートフォンやタブレットなどを通じて演奏を楽しむ機会を提供している。2012年春には、数十年続いたザルツブルク・イースター音楽祭での最後の演奏を遂げ、2013年からバーデン=バーデンで新しい音楽祭の歴史の幕を開けるなど、新しい試みを続けている。2014年、オーケストラの自主レーベル「ベルリン・フィル・レコーディングス」を創設。オーケストラの演奏による傑出したコンサートの数々を、最高の技術と編集によって記録に留めることを目的としている。最新盤はサー・サイモン・ラトル指揮による『ベルリン・フィルアジア・ツアー2017~ライヴ・フロム・サントリーホール』で、首席指揮者として最後のアジア・ツアーにおける演奏が収められており、非常に高い評価を得ている。2015年6月21日、ラトルの後任としてキリル・ペトレンコが楽員による多数票を得て次期首席指揮者に選出された。2019‐20年シーズンよりそのポジションに就任する予定である。●ズービン・メータ(指揮)(C)Wilfried Hosl1936年ボンベイ(現ムンバイ)生まれ。著名ヴァイオリニストでありボンベイ交響楽団の創設者でもあった父メーリ・メータより音楽の手ほどきを受ける。ボンベイの医大予科で学んでいたが、1954年ウィーン国立音楽大学指揮科に入学、ハンス・スワロフスキーに師事した。1958年にはリヴァプール国際指揮者コンクール優勝、タングルウッド音楽祭のアカデミーでも受賞するなどすぐさま頭角を現し、1961年までに既にウィーン・フィル、ベルリン・フィル、イスラエル・フィルを指揮。以来、これら3のオーケストラとは50年に及ぶ関係を築いている。これまでにモントリオール交響楽団音楽監督(1961- 1967)、ロサンゼルス・フィルハーモニック音楽監督(1962-1978)、ニューヨーク・フィルハーモニック音楽監督(1978-1991、ニューヨーク・フィルの歴史において最長在任期間)、フィレンツェ五月音楽祭管弦楽団首席指揮者(1985-2017)を歴任。1969年音楽顧問に就き1977年より音楽監督を務めるイスラエル・フィルハーモニー管弦楽団とは3,000公演以上も取り組み、ツアーも5大陸に及んでいる。1981年には終身音楽監督に任命されているが、ちょうど在任50周年を迎える2019年10月に、音楽監督を退任する意向が発表されている。オペラ指揮者としても名を残しており、1963年モントリオールにおける《トスカ》でのオペラ・デビュー以来、メトロポリタン・オペラ、ウィーン国立歌劇場、ロイヤル・オペラ・ハウス、ミラノ・スカラ座、シカゴ・リリック・オペラ、フィレンツェ歌劇場、ザルツブルク音楽祭などに登場、1998年から2006年まではバイエルン国立歌劇場で音楽監督を務めた。2006年10月にはバレンシアにソフィア王妃芸術宮殿(バレンシア州立歌劇場)を開館、2014年6月まで同地で毎年行われる地中海音楽祭の総裁も務め、スペインの前衛パフォーマンス劇団”ラ・フラ・デルス・バウス”とともにフィレンツェ歌劇場との共同制作による《ニーベルングの指環》のツィクルスにも取り組んだ。メータは、シカゴ・リリック・オペラとバイエルン国立歌劇場とも同作品のツィクルスを行っている。数々の名誉にも輝いており、カール・ベームから遺贈された「ニキシュ・リング」をはじめ、フィレンツェとテルアビブの名誉市民や、ウィーン国立歌劇場(1997)、ミュンヘン国立歌劇場(2006)、ウィーン楽友協会(1997)の名誉会員にも選ばれている。また、名誉指揮者の称号も多数、ウィーン・フィル(2001)、ミュンヘン・フィル(2004)、ロサンゼルス・フィル(2006)、フィレンツェ五月音楽祭歌劇場(2006)、シュターツカペレ・ベルリン(2014)、バイエルン国立管(2006)から授与されているほか、2016年にはナポリのサン・カルロ劇場より名誉音楽監督にも任命されている。日本の皇室からも2008年10月に高松宮殿下記念世界文化賞が授与されており、2011年3月にはハリウッド大通りに名前を刻まれた星型プレートを獲得。2012年7月にはドイツ連邦共和国より功労勲章(大功労十字章)、2013年9月にはインド政府より「タゴール文化調和賞」を授与された。一方、教育の分野にも情熱を注ぎ、才能ある若手音楽家の発掘と育成への支援を世界中で続けているほか、弟のザリン・メータと共にボンベイのメーリ・メータ音楽財団の共同代表を務め、200人以上の子供たちに対してクラシック音楽の教育を行っている。また、テルアビブのブッフマン・メータ音楽学校はイスラエルの若い才能を育て、イスラエル・フィルと密接な関係を構築。現在、シュワラムとナザレにて地元の教師やイスラエル・フィルの団員たちと共に、アラブ系イスラエル人の若者を指導するという新しいプロジェクトも進行している。
2019年11月07日新国立劇場バレエ団がケネス・マクミラン振付『ロメオとジュリエット』を上演する。シェイクスピアの悲劇のバレエ化で、1965年の初演以来、世界中で愛されている名作だ。新国立劇場では2001年以来レパートリーに加わり、今回で5演め。押しも押されもせぬ人気演目となっている。主演3キャストのうち木村優里・井澤駿組の、舞台上での衣裳付きリハーサルに潜入した。【チケット情報はこちら】ジュリエットの木村は初役、ロメオの井澤も前回(2016年)は怪我で降板したため、共に観客には初お目見えのフレッシュなコンビとなるふたり。スラリとした容姿が実に舞台映えする。見学した3幕は、ロメオとジュリエットが初めて一夜を過ごしたあとから始まる。ロメオはその前の2幕でジュリエットの従兄ティボルトを殺害してヴェローナの町を追放となり、ジュリエットと離れなければならない。指揮者が振るタクトに合わせ、オーケストラではなくピアノがプロコフィエフの音楽を奏でるという、リハーサルならではの光景の中で展開するのは、愛と嘆きがない交ぜになった切ないパ・ド・ドゥだ。去ろうとするロメオのマントを脱がせ、別れを惜しむ木村ジュリエット。そのジュリエットを切なげに抱きしめ、抱き上げる井澤ロメオ。マクミランの振付は、演劇のように自然かつドラマティックで、ジュリエットの踊りにも両手で手を覆って嘆くなどの仕草が組み込まれるのだが、そうした動きと共に木村の悲しげな息遣いが聞こえてきて、真に迫る。別れの時が来てロメオが去ると、入れ替わりにジュリエットの両親、乳母、そして、婚約者パリスが入ってくる。意に沿わない結婚に抵抗し、懇願するジュリエットだが、両親も乳母も取りつく島がない。そのことを悟ったジュリエットがベッドの上で身じろぎせず何秒間も座り続ける場面があるのだが、彼女が覚悟を決め、結果的に悲劇へと向かう前のこの姿には、心打たれずにはいられない。教会へ出向き、ロレンス神父から仮死状態になる薬を渡されたジュリエットが自室に戻ると、再び両親やパリスが現れる。ここでパリスと踊るジュリエットは、うつろな、まるで魂の入っていない人形のよう。さらに必見なのは、薬を相手に彼女が繰り広げる、怯えや恐怖、決意の表現。木村の瑞々しい表現力が光る。こうしてドラマは、ジュリエットが死んだと思い込んだロメオの自殺、そのロメオを見たジュリエットの慟哭、そして自害まで一気に駆け抜けていく。愛し合いながらすれ違い、それでも互いを想いながら果てる恋人たちの姿を、悲しく美しく描き上げたマクミランの傑作の開幕は間もなくだ。取材・文:高橋彩子
2019年10月17日東京バレエ団が、世界的に活躍する振付家、勅使川原三郎に委嘱した『雲のなごり』を世界初演する。約2週間後に初日を控え、勅使川原によるリハーサルが公開された。この作品には、東京バレエ団から5人のダンサーたちが出演、演出助手で共演もする佐東利穂子とともに、勅使川原との創作に取り組んでいる。リハーサルの冒頭、「いま私たちは、音楽に対しての理解を、誤差のないように、ともに同じ身体言語で捉えようと稽古しています」と語った勅使川原。音楽は、武満徹の『地平線のドーリア』(1966年)と『ノスタルジア-アンドレイ・タルコフスキーの追憶に-』(1987年)、本番ではオーケストラの生演奏が実現する。その独特のサウンドがスタジオに響くと、ダンサーたちはたちまち身体を反応させる。2016年の勅使川原演出のオペラ『魔笛』に出演し、彼の世界は経験済みというダンサーもいるが、皆一様に手探りの状態でのスタート。そんな中にも時折、目を見張るほど美しい瞬間が立ち現れる。創作のプロセスは順調に進んでいるようだ。【チケット情報はこちら】リハーサル後の記者懇親会で、「このような機会をいただき、とても嬉しい。悩むことなく武満さんの音楽でいきたいと思った。『地平線のドーリア』には、独特の、直観的な、身体的な感じを受けていた」と話す勅使川原。藤原定家の歌「夕暮れはいずれの雲のなごりとてはなたちばなに風の吹くらむ」に着想し、「はじまりもおわりもないことがありうるのではないか」と、創作にのぞむ。佐東も、「武満さんの音楽を初めて聴いた瞬間、身体が衝撃を受けたことを思い出します。あらためてこの音楽を捉えなおし、向き合いたい」という。同席した東京バレエ団の斎藤友佳理芸術監督は、「東京バレエ団での新作の初演は、ノイマイヤー振付『時節の色』以来19年ぶり。創立55年でようやく日本人振付家の方に振付をお願いできることになった」と感無量の様子。ダンサーたちも、「どれだけ新しい世界に自分が入ることができるか、挑戦です」(沖香菜子)、「苦戦と模索の日々だが、作品ができる場にいられることは、ダンサーにとっていい経験」(柄本弾)、「稽古場で勅使川原さんが言われる言葉を素直に受け取り、自然と作品になっていくことを目指したい」(秋元康臣)と意欲的。勅使川原も「私が上から色を塗るのではなく、皆の中から何かを引き出すことがこの作品の第一の目的」と、彼らの可能性に賭ける。同時上演は、バランシン振付『セレナーデ』とベジャール振付『春の祭典』。勅使川原の新作とともに、趣の異なる現代の傑作がずらりと並ぶ。公演は10月26日(土)、27日(日)、東京文化会館にて。チケットは発売中。取材・文:加藤智子
2019年10月15日熊川哲也率いるKバレエカンパニー『マダム・バタフライ』が開幕。プッチーニのオペラに熊川独自の目線を加えて送る新作だ。初日のもようをレポートしよう。【チケット情報はこちら】舞台上には、月岡芳年や喜多川歌麿の美人画を思わせる洋装と和装の女性が二重写しになった、オリジナルの幕。実際、和洋の対比は、この作品の大きな特徴となっている。プロローグで、目隠しをした少女の傍らでひとりの武士が短刀で自害する。この少女こそ幼き日のバタフライ。蝶々夫人の父が帝から短刀を下賜されて切腹して娘に短刀を遺し、その短刀で蝶々夫人が自害するというオペラのエピソードを発展させた場面だ。続く1幕1場の舞台は、アメリカ海軍士官学校。卒業を控えた水兵の卵達が、若々しく喜びに満ちた踊りを見せる。教官のピンカートン(堀内將平)が颯爽と登場。敬礼も織り交ぜたダンスが小気味良い。やがて、ピンカートンの恋人のケイト(小林美奈)、さらに色とりどりのドレスに身を包んだ女性達も現れ、男女の踊りの輪が広がっていく。だがピンカートンには長崎行きの辞令が下る。1幕2場は、来日したピンカートンが仲間と遊郭を訪れる場面。小部屋に入った女性達が買い手を待っている。女性達をきびきびととりまとめるスズキ(荒井祐子)。やがて花魁道中が始まった。優美に扇をひらめかせる夜の蝶達の中心にいる花魁(中村祥子)は、憂いを帯びた圧倒的な美しさだ。と、そこにバタフライ(矢内千夏)が飛び出してくる。さくらさくらのメロディで天真爛漫に踊るバタフライに、すっかり魅了されるピンカートン。道化的な斡旋人ゴロー(石橋奨也)の仲立ちで二人の”結婚”が決まり、その場は祝祭モードに。ここまでが、オペラにはない、いわば熊川が創った前日譚だ。2幕以降はオペラをベースに、クライマックスまで、息を呑むような美しく哀しい人間ドラマが展開する。バタフライとピンカートンの結婚式。矢内のバタフライからは、これまで信じてきた宗教を変える戸惑いと、アメリカ人の妻としての誠を捧げようと心を決めるいじらしさが手に取るように伝わってくる。幼馴染のヤマドリ(小林雅也)も祝福するが、バタフライの叔父ボンゾウ(遅沢佑介)はピンカートンに刀を向ける。すると、バタフライがその前に立ちはだかり、さらにあの小刀がボンゾウを止めるのだった。その後のバタフライをいたわるピンカートンとの甘やかなパ・ド・ドゥは感動的。しかしそれは束の間の愛に過ぎず、ピンカートンは帰国。洋装もすっかりさまになったバタフライは、愛の結晶である一子を育てながらその帰りを待つが、彼女を待ち受けるのは悲しい運命だったーー。バタフライが凄絶な覚悟を決めるラストシーンでの、能さながらの舞は必見。なお、この日のレッドカーペットには、三田佳子、コシノ・ジュンコ、斉藤由貴、トリンドル玲奈、デヴィ・スカルノ、瀧川鯉斗も登場。『マダム・バタフライ』世界初演という特別な日を彩った。10月10日(木)~10月14日(月・祝)まで東京文化会館大ホールにて公演。チケット発売中。取材・文:高橋彩子
2019年10月04日つい先日『カルミナ・ブラーナ』という大作を世に送り出したばかりの熊川哲也が、早くも次なる新作を発表する。プッチーニのオペラ『蝶々夫人』を全幕バレエ化する『マダム・バタフライ』だ。『カルミナ・ブラーナ』がBunkamura開業30周年記念公演なら、こちらはKバレエ カンパニーの20周年記念公演。本日9月27日に東京・オーチャードホールで幕を開けたあと、10月10日(木)からは東京文化会館 大ホールでも公演を行う。過去には『カルメン』でもオペラのバレエ化に挑んだ熊川。その時はオペラの物語に忠実に沿う形だったが、今回は肉付けを施すと言う。開国まもない長崎で、遊女見習いのバタフライと米兵ピンカートンが出会い、つかの間の結婚生活を送る……という骨子はそのままに、ピンカートンのアメリカ時代や、彼がバタフライを見初めた過程などを追加。アメリカのシーンではドヴォルザークの音楽も使うなど、演出・振付・台本をひとりでこなす、熊川ならではの手法で悲恋物語を描き出す。舞台美術を手がけるのは、オペラやミュージカルでも多くの実績を持つダニエル・オストリング。西洋で生まれた日本が舞台のオペラを、日本人振付家が西洋人デザイナーとともに、西洋の踊りであるバレエで表現する本作。和と洋がどのように融合するのかにも注目だ。文:町田麻子
2019年09月27日