映画『マザーウォーター』(松本佳奈監督)の完成披露試写会が10月21日(木)、東京・スペースFS汐留で行われ、小林聡美、小泉今日子、加瀬亮、永山絢斗ら主要キャスト7人が舞台挨拶に顔を揃えた。映画『かもめ食堂』、『めがね』などシンプルな人間ドラマを製作してきたプロジェクトシリーズの最新作で、京都を舞台にウイスキーだけ出すバーを営むセツコ(小林さん)、コーヒー屋のタカコ(小泉さん)、豆腐を売るハツミ(市川実日子)ら7人の男女の群像劇。同シリーズ初参加となった小泉さんだが「前からこのシリーズを見ていたし、それぞれお仕事してきた方も多かったので『いなかったっけ?いままでも』って感じで違和感なく入っていき『いままでもいましたよ』みたいな顔してやっていました」。シリーズの常連、もたいまさこさんから「全然オッケーでしたよ。小泉さん、全部仕切っていました」と“座長ぶり”を明かされ、「ヘルシンキ(『かもめ食堂』ロケ地)からずっとねぇ…」とおどけた。対照的に同じくシリーズ初参加の永山さんは「素敵なキャストのみなさんの中に僕が入っていいのかと思いましたがどうにか…」とコチコチだった。一方、冒頭で光石研が「みなさん楽しんでいってください」とオーソドックスな挨拶をすると、小泉さん、小林さん、加瀬さんらほかのキャスト陣が一様にニヤリとして意表を突かれたような表情を向け、光石さんが大テレする一幕も。セツコのバーに入り浸る青年・ヤマノハを演じた加瀬さんは「僕が(セツコを)養っていました」。もたいさんも自身の役どころについて「いつも通り謎の女で何やっているのか、フラフラしています。散歩の達人に見えたらいい」とそれぞれ軽快なトークを繰り広げ、会場の笑いを誘っていた。『マザーウォーター』は10月30日(土)よりシネスイッチ銀座、新宿ピカデリーほか全国にて公開。(photo/text:Yoko Saito)■関連作品:マザーウォーター 2010年10月30日よりシネスイッチ銀座、新宿ピカデリーほか全国にて公開© 2010パセリ商会■関連記事:市川実日子インタビュー京都で心地よく演じた“豆腐のような人”人気フードスタイリスト飯島奈美が『マザーウォーター』クッキーを初プロデュース!『かもめ食堂』チームに小泉今日子、永山絢斗が参戦今度の舞台は“京都”
2010年10月21日『かもめ食堂』、『めがね』、『プール』──特別な事件が起きるわけでもなく、そこにいる人たちの間にゆったりと流れる時間をただ切り取ったような…けれど、観終わったあとに新たな一歩を踏み出せる映画。そんな一見、“ゆる系”だけれど“芯”のある作品を作り続けてきたプロジェクト・チームが新たに送り出すのが『マザーウォーター』だ。『めがね』に続いての出演となる女優・市川実日子もその作品群と同様に、どこかゆるりとした空気感をまとった人のように感じるが、本人は「私はこのプロジェクトが作ってきた4作が、癒しの映画だとは思っていないんですよね」と意思表示する。そこで、自然体な人と場所を舞台にしてきたこのプロジェクトの芯なる部分を語ってもらうことにした。「『めがね』のときも、海がきれい、ご飯が美味しそう、ゆったりとした時間が流れていそうとか、癒される映画だねって言われることが多かったんです。けれど、私自身は決してそれだけではない映画だと思っていて。というのは、『めがね』という作品に出会ったことで、自分の中で問題提起を与えてもらって、疑問に思ったことを自分自身で行動に移すことができたんです。だから『マザーウォーター』で、あのメンバーともう一度仕事ができることは嬉しくもあり、同時に身が引き締まる思いでもあって」と、言葉を選びながらゆっくりと自分の辿ってきた道のりをふり返る。そんな彼女が『マザーウォーター』で演じるのは、京都の街で豆腐屋を営む女性・ハツミ。「マザーウォーター(=ウィスキーの仕込みに使われる水のこと)」というタイトルからも伝わってくるように、今回は“水”がキーワードのひとつでもある。豆腐作りにももちろん水が大切、水に触れることが役作りに繋がったと語る。「ちゃんとお豆腐屋さんに見えているのかなという不安もあったけれど、あの白い服を着て、お水に手を入れて、白いお豆腐を触っていると、なぜか気持ちがシャンとしたんですよね。事前の役作りですか?撮影に入る前の本読みのときに、監督からハツミの人物像を綴ったメモ書きをもらったんです。そこに書いてあったのは具体的なことではなくて“豆腐のような人である”と(笑)。実際に撮影に入っても監督からは特別な指示はなく、自分で想像することが必要でした」。「豆腐のような人」という表現は、演じる者にとって曖昧な表現かもしれないが、スクリーンに刻まれているハツミから感じるのは、確かに豆腐のような人。そして、市川さんがキモに据えたのは「きっとハツミはこういう人なのかなって心に留めていたのは、誰が相手でも同じように接する人。人によって態度を変えない人。そういう人であることに気を付けて演じました」。毎日変わらず同じ豆腐を作り続ける──その変わらない作業、変わらない姿勢が、もしかしたらハツミという女性を形容するために必要だったのかもしれない。「自分の生き方に責任を持っている女性たちをステキだなと思った」また、このプロジェクトに欠かせないのがフードスタイリスト・飯島奈美さんが作り出す美味しい料理の数々。「奈美さんの料理ってほんとに美味しそうで、目にした途端『食べたい!』って思うんですよね」と、とびきりの笑顔を見せ、話は豆腐から料理の話へ。「現場では奈美さんが作ったご飯を実際にいただきました。今回はグラタン、サンドウィッチ…ほんとに美味しくて。現場では食べるのが専門でしたけど(笑)、家では奈美さんの料理の本を見て作ったりします。たとえば豚の生姜焼きで、一回油を取ると美味しく出来上がるとか、ちょっとしたコツが奈美さんのレシピには詰まっているんですよね」。市川さんを笑顔にさせる飯島さんのご飯が、本当に美味しいものだからこそ美味しく映るように、舞台となる京都という街も、本当に心地いい場所だからこそ心地よく映っているのだと、街が持つ心地よさも代弁する。「京都の街の空気は肌触りがいいというか、なんだろう…空気が丸くて気持ちがいいんです。だから、この映画にも言葉ではない肌で感じる気持ちよさがあって、それをすごく大切にしていると思う。あと今回の京都の撮影で久々にコーヒーの美味しさを実感しました。昔はよく飲んでいたんですけど、最近はあまり飲まなくなっていて。京都ならではのコーヒーの歴史もあるし、京都の空気にはなんだかコーヒーがよく似合うなって感じました」。ただゆっくりとコーヒーを味わう何気ない時間を、至福のひとときであると感じさせてくれる。そういう心地よさの“気づき”が『マザーウォーター』の魅力なのだ。豆腐を丁寧に作るハツミ、ウィスキーを丁寧に作るセツコ(小林聡美)、コーヒーを丁寧に淹れるタカコ(小泉今日子)──ゆったりとした時間の中で丁寧に愛情を込める彼女たちの姿がとても美しく映し出され、市川さんも「自分の生き方に責任を持っている女性たちばかり。ステキだなと思いました」と、キャラクターを通じて女性の“芯”なる部分を感じたという。その中でも一番影響を受けたのは、やはり自身の演じたハツミ。そしてお豆腐。「もともとお豆腐は好きで、普段の料理でもお豆腐の出番は多いけれど、この映画を機に街のお豆腐屋さんが気になって。最近はお豆腐屋さんに行くようになりましたね。お豆腐屋さんに行けないときはスーパーで色々な銘柄を試したり。私のおすすめの食べ方は、蒸したお豆腐を塩とわさびとオリーブオイルで食べる。ほんとに美味しいんです」。(photo:Utamaru/text:Rie Shintani)CS日本映画専門チャンネルにて、旅先での出会いをきっかけに、人生の大きな転機を迎えたり、自分の新たな一面を発見したヒロインたちを描いた映画特集「TRUNK. 映画で旅する彼女たち」を10月〜11月の毎週金曜23:00〜放送中。10月30日(土)公開の『マザーウォーター』に出演する市川実日子が紹介番組のナビゲーターとして登場、出演映画『めがね』も放送。公式サイト:■関連作品:めがね 2007年9月22日よりテアトルタイムズスクエア、銀座テアトルシネマほか全国にて公開© めがね商会マザーウォーター 2010年10月30日よりシネスイッチ銀座、新宿ピカデリーほか全国にて公開© 2010パセリ商会■関連記事:人気フードスタイリスト飯島奈美が『マザーウォーター』クッキーを初プロデュース!『かもめ食堂』チームに小泉今日子、永山絢斗が参戦今度の舞台は“京都”『かもめ食堂』荻上直子最新作『トイレット』特報が到着“ばーちゃん”って何者?やっぱり猫が好き?超人気ブログ「くるねこ」アニメ化で小林聡美が一人全役に挑戦夏の星空の下、ロマンチックに屋外映画鑑賞!「スターライトシネマ PLUS」開催
2010年10月19日小林聡美、小泉今日子、加瀬亮、市川実日子ら豪華キャストで贈る注目作『マザーウォーター』のフードスタイリストを担当している飯島奈美のプロデュースによる、本作に登場する3人の女性をイメージしたオリジナルクッキーが発売されることになった。フィンランドでのオールロケが行われた『かもめ食堂』に、南の島のとある宿での物語を描いた『めがね』、そしてタイのチェンマイを舞台にした『プール』など、“好きな場所と好きな人”というシンプルなテーマで佳作を世に送り出してきた製作プロジェクトが次の舞台に選んだ場所は京都。大きな川や湧き水、疎水など確かな水系を持つこの古都に暮らす人々の物語が綴られる。飯島さんはこのプロジェクトの全てにフードスタイリストとして参加。劇中に登場する、素朴ながらも思わず手を伸ばしたくなるような印象的な料理の数々を手がけている。今回、飯島さんのプロデュースにより、『マザーウォーター』に登場する3人の女性をイメージした大きなクッキーが発売されることに。小林聡美が演じるセツコは、ウィスキーしか置いてないバーを営んでいる女性ということでウィスキー瓶をかたどったチーズ味のクッキー。小泉さん扮するタカコは疎水沿いにコーヒー店を開いており、そのままコーヒーカップ型のクッキー。味はもちろんコーヒー味!そして市川さんが演じ、水の中から湧き出たような豆腐を作る女性・ハツミをイメージして誕生したのはおからが入ったクッキー。パッケージにはそれぞれのキャラクターの名前が大きく記載されている。人気フードスタイリスト飯島さんの初めてプロデュースを手がけたこちらのクッキー。味も形も楽しめそう!こちらの商品は公開日の10月30日(土)より本作が公開される劇場(一部の劇場を除く)にて販売される。また、その2日前の10月28日(木)には、飯島さんによる書籍「飯島本」(マガジンハウス刊)が発売。飯島さんがこれまでの作品の中で制作してきた全65品の料理を撮りおろし、そのレシピを紹介、さらにエッセイも添えられている。映画を観て「食べてみたい!」と思ったあの料理に挑戦してみては?『マザーウォーター』は10月30日(土)よりシネスイッチ銀座、新宿ピカデリーほか全国にて公開。■関連作品:マザーウォーター 2010年10月30日よりシネスイッチ銀座、新宿ピカデリーほか全国にて公開© 2010パセリ商会■関連記事:『かもめ食堂』チームに小泉今日子、永山絢斗が参戦今度の舞台は“京都”
2010年10月13日『かもめ食堂』、『めがね』の荻上直子監督がカナダのトロントでのオールロケを敢行し、大部分が現地スタッフ&現地のキャストという中で作り上げた『トイレット』が先週末に公開を迎え、順調に客足を伸ばしている。カナダ人の3人の兄妹と、彼らの母が死の直前に呼び寄せた、英語の話せない日本人の“ばーちゃん(もたいまさこ)”の交流を描いた本作。タイトルにもなっている、劇中の物語のトイレにまつわる部分は、『かもめ食堂』のフィンランド人スタッフが来日した際に、日本のウォシュレット付きのトイレにかなり感動していた、というエピソードを基にしているとか。誰しも海外に行けば、その地では当たり前でも自分にとっては信じられないような習慣にカルチャーショックを受けるもの。シネマカフェでは「海外で驚いた物は?」というテーマでそんな驚きエピソードを募集した。その結果を大発表!まず何と言っても最も多くの投稿が寄せられたのは、そのものズバリ“トイレ”にまつわるびっくりエピソード。特に中国に行った経験のある方からの扉にまつわるカルチャーショックが多数!うわさに聞いたことはあったものの「中国ではトイレの仕切りの壁がなかった」(10代・女性)、「傘などで隠さないと隣りの人に見えてしまうので困りました」(20代・女性)といった体験談が続々。なかったのは扉だけでなく、何と「イタリアで、便座がないトイレにしばしば遭遇した」(30代・女性)という体験、「タイのトイレでトイレットペーパーがなく、水道の蛇口があったこと」(30代・女性)、「トイレの紙が詰まるので、流さずにゴミ箱に捨てる習慣の国があって驚いた」(20代・女性)などという声も。また、海外のトイレ体験談で意外と多いのが「有料制だった」(30代・女性)、「チップを払う必要があった」という声。各国のトイレ事情をまとめるだけで、1冊の本が軽くできちゃいそうなほど、トイレにまつわる文化、習慣の違いが存在するよう。ちなみに、トイレ以外に多くの投稿が寄せられたのは“食の事情”にまつわるびっくり。何より日本人にとっては「ハンバーガーの大きさにびっくり!」(20代・女性)、「牛乳の大きさ」(20代・女性)など1人前の量の大きさに驚かされるケースが多い様子。得した!安い!という喜びも束の間、食べきれないともったいない気持ちになってしまう…。Sサイズ、Mサイズ、Lサイズといったサイズの基準がそもそも日本とは異なるのでご注意あれ!そしてもう一つ、数多くの投稿が寄せられたのが各国の“交通事情”。「電車が時刻表通りに来ない」(40代・女性)というのが当たり前の国も…。ついつい日本では定刻通りが当然と思ってしまいがちだが、改めて考えるとすごいことなのかも。「シンガポールの高速エスカレーター」(30代・女性)なる、日本にはない乗り物(?)や「バスの乗り方が日本と違って慌てた」(30代・女性)、「自転車ごと電車に乗り込んでくる人がいた」(20代・男性)など日本とは異なるシステムにびっくりさせられたという声も数多く寄せられた。トイレ、食べ物、乗り物…海外に行ったら避けては通れない要素だが、国が違えばここまで習慣も異なるのかとびっくり…。海外スタッフに囲まれて、異国の地で本作を作り上げた荻上監督、もたいさんらに改めて拍手!この結果を踏まえて映画の中の“ばーちゃん”を見ると、少し違った感想がわいてくるかも。『トイレット』は新宿ピカデリー、銀座テアトルシネマ、シネクイントほか全国にて公開中。シネマカフェSweet「映画監督という仕事『トイレット』特集」■関連作品:トイレット 2010年8月28日より新宿ピカデリー、銀座テアトルシネマ、シネクイントほか全国にて公開© 2010“トイレット”フィルムパートナーズ■関連記事:『トイレット』荻上直子監督×フードスタイリスト飯島奈美餃子に込めた思いと旨味荻上直子監督『トイレット』初日に早くも次回作構想「メキシコで酒を飲みながら…」荻上監督作品に欠かせないフードスタイリスト・飯島奈美の餃子料理実演が大盛況「トイレの神様」推奨のトイレ掃除、荻上監督はボーイフレンドにお任せ?オールカナダロケの『トイレット』荻上直子監督×主演俳優カルチャーギャップトーク
2010年09月06日『かもめ食堂』ではフィンランド。前作『めがね』では南の島。そして最新作『トイレット』ではは北米。荻上直子が作り出す物語の舞台は、我々にとって非日常ともいうべき場所だが、不思議なことに描かれるのは、ごくごく当たり前の人間の日常の営みである。その日常の営みにおいて欠かすことができない食事に関して、荻上監督を一手に支えるのがフードスタイリストの飯島奈美。『かもめ食堂』以来、数々の食事シーンで苦労を、そして楽しみを共にしてきた2人が、初めて揃っての取材に応じてくれた。まずは出会いから。2人を繋いだのは、『かもめ食堂』、『めがね』と荻上作品で立て続けに主演を務めた小林聡美だった。飯島:小林さんが出演されていたパンのCMの料理を担当していて、(CMが撮影される)半年ごとに小林さんにご挨拶はさせていただいていたんです。荻上:そのプロデューサーが『かもめ食堂』のプロデューサーに声を掛けてくださって…。飯島:初めて会ったときのこと覚えてます?荻上:覚えてますよ、代官山でしたね。もう、この手は絶対においしいおにぎりを作ってくれる、間違いないですよね!って思いました(笑)。飯島:小林さんには「おっきい手!」って言われました(笑)。出会いの『かもめ食堂』では鮭にしょうが焼き、『めがね』では彩り豊かな朝ごはんにかき氷など、作品ごとに印象的な食べ物が登場するが、今回の目玉はもたいまさこ演じる“ばーちゃん”の手作り餃子!でもなぜ餃子なのだろうか?荻上:みんなで作って食べられる料理にしたかったんです、家族のお話なので。餃子ってテーブル囲んでみんなで作れるじゃないですか。私もちっちゃい頃に母と一緒に餃子をつめた思い出があります。飯島:私もあります。みんなありますよね…ありません(笑)?もちろん、あります(笑)!この餃子というチョイスの素晴らしさ、監督の遠謀深慮(?)は食べるシーンを見れば分かる。作った餃子を食べながら彼らが「これはばーちゃんのだ」などと、それぞれ形の違う餃子についてあれこれ会話を交わす…思わず「あぁ、分かる分かる!」と膝を打ってしまう。異国の地でばーちゃんと外国人の孫が餃子を作って食べるというシュールな絵のはずが、グッと“日常”を引き寄せてくるのだ。荻上:みんな、自分が一番うまいと思っててね(笑)。飯島:(現場でも)もたいさんは皮を作る練習をひたすらされてましたね。荻上:カナダ人キャストも一緒にやりましたけど…ヘタクソでしたねー(笑)!2人の仕事に進め方について尋ねると「今回の餃子のように、あらかじめ脚本段階で決まっているものもあるし、書いてないものもある。決まってないものは奈美さんに考えていただく」(荻上監督)とのこと。実際、本作での餃子以外の食事を飯島さんはどのように決めたのか?飯島:まず、おばあちゃんっぽく煮物にしようと思いました。カナダのおいしいジャガイモと鮭で肉じゃが……餃子で肉を使っているので、鮭がいいなと。それから、ビールが出てくるのでもう一品、ポテトフライのようなものを考えました。ジャガイモはもう使っているので、ナスにしようとナスフライに決めました。ちなみに、映画では見えない部分ですが、あのフライにはガーリックパウダーとジンジャーパウダーが入ってます。コーンスターチで揚げるとカリッとするんです(笑)。荻上:そうそう、カリッとね!美味しそうでしたし、実際、美味しかったです。すでに観る者にとっては“荻上作品=美味しい食べ物”という公式が出来上がっているといえるが、監督自身は映画を作る上で、食べ物のシーンというのにどのような意識を持っているのだろうか?荻上:今回に関して言うと、家族の距離が縮まるときに、食卓を囲んでほしいと思って、食事を作って、庭で食べて、というシーンを入れました。すごく幸せそうで、でもすごくもの哀しいんですよね。幸せだけど永遠には続かない時間――その儚さがあの食事のシーンにはあると思います。でも普段、脚本を書くときに意識して『ごはんのシーンを出してやろう!』とは思ってないんですよ」。飯島:でも日常を描いた作品なら当然、ごはんは出てきますもんね。よっぽど…殺しの映画とかじゃなければ(笑)荻上:でも殺人犯だってごはん食べますしね(笑)。意識はしていない――。だが、監督が何気なく脚本に書いた食べ物が、飯島さんというプロの手で、想像を超えたシーンに“変身”することも!飯島:(『めがね』のときの)伊勢えびとかはおもしろかったですね。荻上:あれは最初から脚本に書いてあったんですよね、“伊勢えびとビール”ってだけ(笑)。それを茹でて、豪快にバリッと割って丸かじりするというのは、奈美さんのアイディア。飯島:ああいう贅沢な食べ方もいいなぁって。昔、「レディーボーデンのアイスを、大きくなったら1箱食べたい」とか考えてて(笑)。それに近い感覚でした。荻上;私は単に、えびを食べるってことしか想像してないんですよ。そこで奈美さんが「こうすると美味しそうです」って提案してくださるんです。食のシーンに関しては、まさに“共同演出”と言える関係の2人。プライベートでも一緒に食事をすることも多いとか。また、監督は自宅で、飯島さんのレシピ本を片手に料理することもあるそうだ。荻上:私は、目分量で作ったりすると、とんでもないことになるから(苦笑)、ちゃんと計って作る。そしたらおいしくはできるんです。でも絶対、奈美さんが作る方がうまい…それは絶対、奈美さんの手から“おいしい成分”が出ているんだと…。飯島:他人に作ってもらった方が美味しいんです!荻上:いや。絶対、奈美さんだからだよ。ハンドパワーです!では、監督はご自宅でかなり凝ったものを作られることも?荻上:ほかに作ってくれる人がいればしないんですが…そういう人もいないので、します(笑)!奈美さんの本から、意外と簡単に少ない材料でできるものを探し出して作ってます!最後に飯島さんから、餃子の最後の難関“焼き”についてアドバイスが!飯島:そうですね、5ミリずつ離してフライパンに並べて、中火で焼きます。うっすらと焼き色がついたら、熱湯をフライパンの3分の1ぐらい入れて、フタをして少し放置します。5分ほど経ったらをフタを外して水分が残っていれば捨てます。フライパンを傾けても餃子がはりついて落ちてこないので、パッと水分を切って少し油を足します。そして、必ずフタをして、2分ほどするといい感じになってきます(笑)。時々、フタを開けて焼き色を見ながらやると良いと思います」。映画を観れば必ず(!)餃子が食べたくなるので、ぜひお試しあれ!シネマカフェSweet「映画監督という仕事『トイレット』特集」■関連作品:トイレット 2010年8月28日より新宿ピカデリー、銀座テアトルシネマ、シネクイントほか全国にて公開© 2010“トイレット”フィルムパートナーズ■関連記事:荻上直子監督『トイレット』初日に早くも次回作構想「メキシコで酒を飲みながら…」荻上監督作品に欠かせないフードスタイリスト・飯島奈美の餃子料理実演が大盛況「トイレの神様」推奨のトイレ掃除、荻上監督はボーイフレンドにお任せ?オールカナダロケの『トイレット』荻上直子監督×主演俳優カルチャーギャップトーク『めがね』荻上直子監督新作『トイレット』オリジナルグッズセットを5名様プレゼント
2010年09月03日映画『トイレット』をはじめ、荻上直子監督による3作品で料理監修を務めるフードスタイリストの飯島奈美さんが餃子作りを実演する料理イベントが8月20日(金)、東京・京橋の明治屋クッキングスクールで行われ、荻上監督とスポーツジャーナリストの中西哲生、一般参加者約30人らが舌鼓を打った。全編カナダ・トロントでのロケを敢行し、カナダ人3兄妹と英語の話せない日本人の祖母“ばーちゃん”(もたいまさこ)の共同生活を描く『トイレット』で、ばーちゃんが作る料理として餃子が登場することから、この日のイベントが実現。飯島さんは、荻上作品2作に主演した女優の小林聡美が出演するCMの料理監修を担当していた縁で『かもめ食堂』、『めがね』にフードスタイリストとして参加し、おにぎりやかき氷など、様々な食べ物を印象的に劇中に登場させている。タネを作り、皮を伸ばす生地作りには中西さんが挑戦。普段から料理はせず、餃子作りも初めてという中西さんは、飯島さんが4枚、5枚と完成させていく間、最初の1枚にかかりきりと悪戦苦闘。「才能ないな〜俺…」とつぶやき、飯島さんから「いえいえ、ほかに才能がたくさんあるんですから」と励まされると「サッカーだって才能ないからこうなったんです」とボヤキトーク。「なんで(飯島さんが作る皮は)そんなに丸くなるんです?」と飯島さんに尋ね、「祈るんです」と言われると、「まぁるくなあれ」。コミカルなやりとりで、会場の笑いを誘うひと幕も。具を包む作業を終え、約10分かけて焼き上げると、室内には香ばしい香りが充満した。焼き上がった餃子が皿で配られ、全員で試食。「美味しい!」、「皮が違う」などの声が飛び交った。前日にもウォーミングアップで餃子を食べたという中西さんは「全然違う!」と目を丸くして次々と頬張っていた。荻上監督によると「カナダ人のスタッフ、キャストたちも『これまで食べた餃子で一番美味しい』って言っていました」と異国の地でも大好評だった。材料のポイントについて飯島さんは「干しシイタケですね、入れた方が歯ごたえも香りもいい」とコツを伝授。劇中にも登場する飯島さんの餃子レシピは、本作の公開劇場で販売されるパンフレットに掲載される予定。3度のタッグを組んだ荻上監督について、飯島さんは「基本的に任せてくれる。『これがいいんじゃないですか?』って提案すると、『いいね』って言って下さる。スタッフそれぞれのモチベーションを上げてくれる」と絶賛。荻上監督は「監督らしくない監督なので『すみません、すみません』って言っているとみんなが助けてくれる」と謙遜しつつも「才能のある方の才能を全部吸い取りたいので」とスタッフ“演出”のコツを語っていた。『トイレット』は8月28日(土)より新宿ピカデリー、銀座テアトルシネマ、シネクイントほか全国にて公開。(photo/text:Yoko Saito)シネマカフェSweet「映画監督という仕事『トイレット』特集」■関連作品:トイレット 2010年8月28日より新宿ピカデリー、銀座テアトルシネマ、シネクイントほか全国にて公開© 2010“トイレット”フィルムパートナーズ■関連記事:「トイレの神様」推奨のトイレ掃除、荻上監督はボーイフレンドにお任せ?オールカナダロケの『トイレット』荻上直子監督×主演俳優カルチャーギャップトーク『めがね』荻上直子監督新作『トイレット』オリジナルグッズセットを5名様プレゼント荻上直子監督オーディション抜擢の“ヘンな子俳優”初披露『かもめ食堂』荻上直子最新作『トイレット』特報が到着“ばーちゃん”って何者?
2010年08月20日映画『トイレット』のトロント体感イベントが8月11日(水)、東京・赤坂のカナダ大使館で行われ、荻上直子監督と「トイレの神様」で一躍ブレイク中のシンガーソングライター、植村花菜がゲストで出席した。カナダ人3兄妹と英語が全く話せない日本人の祖母(もたいまさこ)が、突然始まった共同生活を通じ、家族の絆を深めていく姿を描く物語。全編カナダロケを敢行し、もたいさん以外のキャスト全員とスタッフのほどんどにカナダ人を起用した日本、カナダ合作作品となっていることから、今回のイベントが実現した。植村さんのヒット曲「トイレの神様」は、自身が小学校三年生のときから21歳で上京するまで二人暮らしをして育ててくれたという、いまは亡き祖母への想いを歌った内容。“おばあちゃん”と“トイレ”つながりで駆け付けた植村さんは「気立てのいい花嫁になりたいと思って掃除、洗濯と手伝いをしていたけど、トイレ掃除だけが嫌いだった。でもおばあちゃんに、トイレにはべっぴんの神様がいて、掃除をすればべっぴんになれる、と言われ、べっぴんになりたい一心で、その話を聞かされた日からトイレ掃除を一生懸命やり始めました。今日もしてきました、ピカピカでございます」と同曲のルーツを解説。すっかり聞き入っていた荻上監督は「だからすっかりべっぴんさんになられたんですね」と感心しきり。だが、自宅でのトイレ掃除については、一緒に住んでいるというボーイフレンドに「『お前がやれ』って命令して、私はしません」ときっぱり。「だからべっぴんになれなかった」とサバサバ話し、観客約220人を笑わせた。トーク後、植村さんはギターの弾き語りで同曲を披露。愛するおばあちゃんとの想いを切々と語るような歌声に、観客は聴き入り、中には涙を拭う年配の女性客もいた。一方、トーク前にはロビーでカナダワイン、カナダビールと軽食が振る舞われ、軽食は出されてからあっという間になくなるほど好評だった。『トイレット』は8月28日(土)より新宿ピカデリー、銀座テアトルシネマ、シネクイントほか全国にて公開。(photo/text:Yoko Saito)シネマカフェSweet「映画監督という仕事『トイレット』特集」■関連作品:トイレット 2010年8月28日より新宿ピカデリー、銀座テアトルシネマ、シネクイントほか全国にて公開© 2010“トイレット”フィルムパートナーズ■関連記事:オールカナダロケの『トイレット』荻上直子監督×主演俳優カルチャーギャップトーク『めがね』荻上直子監督新作『トイレット』オリジナルグッズセットを5名様プレゼント荻上直子監督オーディション抜擢の“ヘンな子俳優”初披露『かもめ食堂』荻上直子最新作『トイレット』特報が到着“ばーちゃん”って何者?『かもめ食堂』の荻上直子新作『トイレット』公開決定“ミューズ”もたいまさこ健在
2010年08月11日フィンランドで撮影された『かもめ食堂』(’06)に続く海外となる、オールカナダロケで作られた荻上直子監督の最新作『トイレット』は、主演のもたいまさこ以外全てカナダ人キャストで、クルーの多くもカナダ人。映画の中でもばーちゃん(もたいさん)と突然生活を共にすることになった3兄妹の姿が描かれているけれど、実際の撮影風景はどんな様子だったのでしょうか。長男・モーリーを演じたデイヴィッド・レンドルと、荻上直子監督に語っていただきました。デイヴィッドの第一印象は?「ヘンな人」!―デイヴィッドさんが生まれ育ったトロントの街で日本の映画が撮影され、その映画に出演するという経験はいかがでしたか?デイヴィッド「本当に不思議な体験だったけれど、すごく楽しくて、エキサイティングで…でも、やっぱり不思議な体験だったとしか言い表せないなあ(笑)」。―お互いの第一印象はいかがでしたか?デイヴィッド「ナオコは作りたいものがとても明確で、こういうふうにはっきりとしたビジョンを持った監督と仕事してみたいなあと思った。だけど初対面のオーディションはあっという間に終わってしまって、決め手になるような印象を与えることはできなかったんじゃないかなって思っていたんだ」。荻上「まず、『ヘンな人!』と思いましたね(笑)。すごくヘンなメガネをかけていて、『顔が見たいからメガネを外してください』とお願いしたんです。そうしたら『ヤダ』って言われて。それで、いじわるな俳優だったらどうしようと不安になったんです(笑)。そのことは話したよね?」デイヴィッド「うん。言い訳をさせてもらうと、僕はすごく目が悪くって何も見えない状態で演技したくなかったから…でも確かに、メガネを外したくないって気持ちもあったかもしれないな(笑)。そうしたら、いじわるな人に見えても仕方なかったよね」。―日本の撮影方法とカナダの撮影方法の違いはありましたか?デイヴィッド「自分が置かれている状況によって違いの感じ方は違うと思う。僕の体験で言うと、スタイリストのホリコシ(堀越絹衣)さんは真のプロフェッショナルだった。ホリコシさんは映画やキャラクターをよく理解して考え抜いた上で衣裳を選んでくれて、いままでここまでプロフェッショナルな仕事をするスタイリストには出会ったことがなかったよ。そしてイイジマ(飯島奈美)さんはすごいシェフだった!彼女の作るギョーザは本当においしくって、『ワオ!』としか言いようがなかった」。荻上「仕事自体に関して言うと、日本もフィンランドもカナダもやっていることは変わらなかったです。ただ、カナダにはユニオン(組合)があって1日12時間しか撮影できない決まりがあったので、毎晩制限時間に近づくとどんどん焦って『とにかく撮り終えましょう!』ということになったのが大変でしたね。毎日毎日追い立てられていた気がします」。初めてのカナダロケ「英語でも自分のカラー出せた」デイヴィッド「撮影現場でのナオコは…いじわるだった(笑)。みんなをいじめていた。というのは冗談で、ナオコはとても緻密で、小さいディテールにもきっちりこだわりが感じられる監督だったよ。それと同時に、引いた画面で遠くから見ているような視点も感じる。細部にこだわりつつ引いたカメラで撮影するというやり方をする監督にはいままで出会ったことがなかった」。荻上「そうなんだ〜」。デイヴィッド「ヨーロッパや海外の映画に見られるようなアプローチだったので、やっていてすごくおもしろかった。そして、リハーサルでのナオコはすごくオープンで、僕らの意見を聞いて取り入れてくれるのが嬉しかったな」。荻上「撮影終了時間には追い立てられていたけれど、気持ち的には落ち着いてやることができました。いままではベテランのスタッフと仕事して助けてもらうことも多かったんですが、この作品では私が一番年長で経験を積んできているので、若いスタッフの先頭に立って引っ張って行かなくちゃいけない感じがありました。ああ、年とったんだなって感じました(笑)。カナダで初めて撮って、英語という言語で撮っても自分のカラーみたいなものを通せたような気がして、そこに関しては満足しています」。―できあがった作品を観た感想はいかがでしたか?デイヴィッド「俳優はもらった脚本を基に、頭の中でどんな映画になるか想像して撮影に臨む。そしてできあがった映画を観ると、脚本を最初に読んだときの印象なんかが呼び起こされたりするものなんだ。僕が最初に脚本を読んだときに笑ったシーン、感動したシーンが全て作品の中に発見することができたね。それと同時に、被写体から距離を置き、ゆったりとしたカメラワークのせいなのか、まるで絵画を見ているような印象を受けました。そこは脚本からは想像できなかった部分だったな」。荻上「なるほど。ある一定の距離を保ってコミュニケーションを取るというのは、外国人との関係に限らず、私の中にあるものなのかもしれないですね」。(photo:Yoshio Kumagai/text:Itsuko Hirai)シネマカフェSweet「映画監督という仕事『トイレット』特集」■関連作品:トイレット 2010年8月28日より新宿ピカデリー、銀座テアトルシネマ、シネクイントほか全国にて公開© 2010“トイレット”フィルムパートナーズ■関連記事:『めがね』荻上直子監督新作『トイレット』オリジナルグッズセットを5名様プレゼント荻上直子監督オーディション抜擢の“ヘンな子俳優”初披露『かもめ食堂』荻上直子最新作『トイレット』特報が到着“ばーちゃん”って何者?『かもめ食堂』の荻上直子新作『トイレット』公開決定“ミューズ”もたいまさこ健在
2010年08月02日映画『トイレット』の完成披露試写会が6月24日(木)、東京・東新橋のスペースFS汐留で行われ、荻上直子監督、主演のもたいまさこ、オーディションで抜擢されたカナダ人俳優のデイヴィッド・レンドルが舞台挨拶に立った。荻上監督にとって『めがね』以来3年ぶりの新作で、バラバラに生きてきたそれぞれクセのあるカナダ人3兄妹と、日本からやってきた英語を話せない彼らの祖母が、突然始まった共同生活を通じ互いの個性を受け入れ合いながら家族の絆を深めていく姿を描く物語。デイヴィッドは、引きこもりで、上手なはずのピアノが弾けない状態に陥る、ゲイ疑惑のある長男モーリー役。3兄妹役はオーディションで選んだ若手俳優を起用。荻上監督は「モーリー役がなかなか決まらなかった。ヘンな子をずっと探していて、でもヘンな子がなかなか出てこなくて、カナダのキャスティング・ディレクターに、『もう誰もいないよ』って言われて。でも『役者じゃなくてヘンな子がほしい』って言って。そしたらデイヴィッドが現れたんです」と運命的出会いに感謝しきり。“ヘンな子”の連発に観客ともたいさんからは笑いが起きたが、デイヴィッドは「その通り、当たっています。監督が思ったこと、分かる気がします」とニッコリ。「アーティストが抱える葛藤と、ピアノの才能がある部分を大切に演じました」と役作りについて話した。デイヴィッドは今回が初来日で、前日に日本に到着したばかり。早速、大好物を食した?とMCから聞かれ、「YES!うなぎ丼!Very Good!」と大喜び。一方、もたいさんも、昨年秋の全編カナダロケ中の食事をふり返り、「日本ならロケ弁とかですけど、カナダではキッチンカーが来るんですよ。おやつの時間にはエスプレッソ・マシンのコーヒー、お腹が空くとホットケーキを焼いてくれたりする。なんという待遇なんだ!と思ったら、向こうでは普通なんだそう」と日本とカナダの“食事格差”を証言。会場の笑いを誘っていた。映画『トイレット』は8月28日(土)より新宿ピカデリー、銀座テアトルシネマ、渋谷シネクイントほか全国にて公開。(photo/text:Yoko Saito)■関連作品:トイレット 2010年8月28日より新宿ピカデリー、銀座テアトルシネマ、シネクイントほか全国にて公開© 2010“トイレット”フィルムパートナーズ■関連記事:『かもめ食堂』荻上直子最新作『トイレット』特報が到着“ばーちゃん”って何者?『かもめ食堂』の荻上直子新作『トイレット』公開決定“ミューズ”もたいまさこ健在
2010年06月24日流れる時間に身を委ねるように「人」が「場所」に集うさまを描いてきた、『かもめ食堂』、『めがね』、『プール』の制作プロジェクトから、また新たな作品が誕生する。そのタイトルは、『マザーウォーター』。フィンランド、南の島、タイに続き、本作の舞台となるのは、シンプルな美意識を貫いてきた街、京都。3月10日(水)より京都オールロケにて快調撮影中の本作だが、完成を間近に控えた3月29日(月)、出演陣が全員登壇しての製作会見が行われた。『かもめ食堂』『めがね』を手がけた荻上直子監督に代わり、今回指揮を執るのは松本佳奈監督。小林聡美、もたいまさこ、加瀬亮、市川実日子、光石研の『めがね』組に、今回初参加となる小泉今日子、永山絢斗を加えた総勢7人の俳優陣が京都に集結した。まずは一人ずつ自己紹介からスタート。小林さんが「どこからかやってきて、バーをやっているセツコを演じています、小林聡美です。だんだん映画が出来上がってきて、気も引き締まる思いです」と口火を切れば、コーヒー屋を始めるタカコ役の小泉さんは「この街に最後にたどりついて、新しい人生が始まる役でワクワクします」と笑顔で挨拶。続いて、市川さんは「お豆腐屋のハツミ」、加瀬さんは「中古家具屋で修理をしているヤマノヤ」、永山さんは「銭湯・オトメ湯で働くジン」、光石さんは「オトメ湯の主人・オトメ」と自己紹介。そして「マコト役」のもたいさんはというと、「よく分からないのですが、いろんなとこで、いろんな人と関わる謎のおばさん?おばあさん?それも分からないような不思議な存在です」とのこと…。京都を舞台に選んだワケを、「たくさん人がいて大きい街だけど、個人商店とか昔からの人との関係が残っている場所。大きな鴨川から派生する小さな川、人と水の生活が繋がっています。人から人を描くのに、日本の中で京都は特別な街だと思って、京都にしました」と説明する松本監督。キャスト陣も各々、京都での楽しみを見つけているようで、「奥が深く素敵な街」(小林さん)、「仕事とかを大事にしている意気込みを感じる」(小泉さん)、「道の先が異界につながっているんじゃないか」(加瀬さん)と、東京とは違う神秘さにとりつかれた様子。そんな中、もたいさんは「京都に来たら…たくさん寝ています(笑)」。実は、小林さんと小泉さんは意外にも映画では本作が初共演となるが、小泉さんは小林さんについて「同級生ですし、とても信頼している方のひとりです。また一緒に映画の世界の中で何か残せたら良いと思っていたので、とても楽しい日々を過ごしています。最近もらうのは癖のある役が多かったので、この現場で毒消ししている感じです(笑)」と全幅の信頼を寄せている様子。同じく初参加の永山さんも「独特な雰囲気になじめるか不安で、クランクイン前はすごく緊張していました。久しぶりに手に『人』という字を書いて飲みました(笑)。いまもう大丈夫です。すごい世界観の中で、毎日が楽しいです」とすっかりなじんでいる様子。そんな2人に向けて、小林さんは「このチームは半分“寅さん”みたいな雰囲気なので(笑)、女性のマドンナと男性のマドンナが来てくれた!という感じです」と意気揚々。撮影の様子について尋ねると、小林さんはもう一人の出演者に言及。「田熊直太郎くんという1歳半くらいの男の子です。いつも機嫌の良い子で、もたいさんのセリフの口癖に『今日もキゲンよくやんなさいよ』というのがあるんですが、まさにそんな子です」と溺愛ぶりを見せる一方、小泉さんからは「バーの控え室が卓球場なので、みんなで卓球をしました。みんなすごくうまくなったよね」と微笑ましいエピソードも飛び出し、和やかな撮影の様子が伝わってきた。本作はまもなく、4月4日(日)にクランクアップ予定。果たしてどんな作品に仕上がるのか?『マザーウォーター』は10月下旬、シネスイッチ銀座、新宿ピカデリーほか全国にて公開。■関連作品:マザーウォーター 2010年10月下旬、シネスイッチ銀座、新宿ピカデリーほか全国にて公開© 2010パセリ商会
2010年03月29日『かもめ食堂』、『めがね』など独特の“ゆる〜い”世界観が熱い支持を集める荻上直子監督の最新作としてつい先日公開が発表された『トイレット』の特報映像が解禁となった。冒頭、皿いっぱいに敷きつめられたギョーザが映し出され、“ジュー”っと心地良い音が響き渡る。荻上作品と言えば食べ物!『かもめ食堂』でも『めがね』でも、劇中に登場する食べ物がおいしそうと話題を呼んだが、先に挙げた2作同様、今回もフードスタイリストの飯島奈美がスタッフに入っており、今回も映画を観ながらお腹が鳴りそう?そして気になる物語だが、この特報を見る限りではいまだ謎に包まれた部分が多い。オタク青年のレイ、引きこもりピアニスト・モーリー、勝気でワガママな大学生のリサという3人の兄妹と“センセー”と呼ばれる猫と、「天国のママが置いていった」という“ばーちゃん”の奇妙な共同生活が描かれるというのだが…。面白いのは、北米東部を舞台にした物語で、3人の兄妹はもちろん英語で話すのだが、もたいまさこ演じるばーちゃんを、そのまま“ばーちゃん”と呼んでいること。そして特報の最後に出てくるのは、ばーちゃんの言葉と思しき「みんな、ホントウの自分でおやんなさい」という教訓(?)。また、タイトルの“トイレット”が意味するところは?などなどいろいろと気になるが、公開は8月とまだしばらく先。今後、少しずつ明らかになってくるであろう詳細を期待して待ちたい。『トイレット』は8月28日(土)より新宿ピカデリー、銀座テアトルシネマ、シネクイントほか全国にて公開。※こちらの特報はMOVIE GALLERYにてご覧いただけます。MOVIE GALLERY■関連作品:めがね 2007年9月22日よりテアトルタイムズスクエア、銀座テアトルシネマほか全国にて公開© めがね商会トイレット 2010年8月28日より新宿ピカデリー、銀座テアトルシネマ、シネクイントほか全国にて公開© 2010“トイレット”フィルムパートナーズ■関連記事:『かもめ食堂』の荻上直子新作『トイレット』公開決定“ミューズ”もたいまさこ健在やっぱり猫が好き?超人気ブログ「くるねこ」アニメ化で小林聡美が一人全役に挑戦夏の星空の下、ロマンチックに屋外映画鑑賞!「スターライトシネマ PLUS」開催【ベルリン国際映画祭】『めがね』日本映画初のザルツゲーバー賞を受賞!もたいまさこは女優生命をかけて踊り、加瀬亮はひたすら眠り続けた『めがね』公開
2010年03月09日『かもめ食堂』、『めがね』など、その独特の世界観が支持を集める荻上直子監督の最新作『トイレット』の公開がこのほど発表された。海外で自分のオリジナル脚本で作品を作りたいという荻上監督の熱意のもと、昨年9月からカナダのトロントで撮影され、仕上げに至るまで全て、トロントで行われた本作。「人生は退屈の繰り返しに耐え忍ぶことだと思う」と信じて生きてきたプラモデルオタクの青年に、引きこもりピアニストの兄、そしてエアギターで自らのスピリットを表現しようとする大学生の妹という、それぞれバラバラでマイペースに生きている3兄妹が、母親の死をきっかけに、生前母親が日本から呼んだ“謎のばーちゃん”と交流し、少しずつ心の扉を開いていく姿が描き出される。荻上監督は「1994年から6年間、ロサンゼルスに滞在し、映画製作を勉強していました。映画の面白さを教えてくれ、映画を作りたくて作りたくてしょうがない気持ちにさせてくれたのは、ハリウッド映画ではなく、おかしくて上質な当時のアメリカン・インディペンデント映画でした。『ウエルカム・ドールハウス』、『ゴースト・ワールド』、『アメリカン・スプレンダー』など、多くの作品に刺激を受けました。それらは私の原点であり、いつか必ず北米で映画を作りたいとずっと願っていました。構想から約5年、昨年9月からトロントで撮影をした『トイレット』は、私がどうしてもどうしても作りたかった映画です」とのコメントを寄せ、本作に懸けた熱い思い入れを明かしてくれた。気になるキャストだが、物語のカギを握る人物であり、トイレから出ると必ずため息をつくという“謎のばーちゃん”を演じるのは、過去の全ての荻上作品に出演している監督の“ミューズ”もたいまさこ。個性豊かな3兄妹には、トロントでのオーディションにより若手俳優アレックス・ハウス、デイヴィッド・レンドル、タチアナ・マズラニーが選ばれた。さらに、『西の魔女が死んだ』のサチ・パーカーも監督の熱いオファーを受け、これまた“謎の”女性として出演している。スタッフは日本側から『かもめ食堂』、『めがね』に引き続き、フードスタイリストとして活躍する飯島奈美、衣裳の堀越絹衣が参加しているほか、現地カナダの若手スタッフを登用している。ちなみに、スチール撮影には『イースタン・プロミス』のデイビッド・クローネンバーグ監督の娘、ケイトリン・クローネンバーグが参加している。謎のばーちゃんが家族の絆を教えてくれる!『トイレット』は今夏、新宿ピカデリー、銀座テアトルシネマ、シネクイントほか全国にて公開。■関連作品:トイレット 2010年夏、新宿ピカデリー、銀座テアトルシネマ、シネクイントほか全国にて公開© “トイレット”フィルムパートナーズ
2010年02月18日小林聡美&もたいまさこというおなじみのコンビの主演で贈る、タイを舞台に繰り広げられる愛情いっぱいの映画『プール』が9月12日(土)、公開を迎えた。初日の舞台挨拶に小林さん、もたいさんに加え、共演の加瀬亮、伽奈、そして大森美香監督が登壇した。『かもめ食堂』、『めがね』と多くのファンを持つ作品のスタッフ、キャストが再集結した最新作ということで、あいにくの天気にもかかわらず、開場前から劇場の前に列ができるほどの盛況ぶり。映画上映前の舞台挨拶となったが、小林さんは「隠すほどのことは何もないんですよ(笑)」と前置きし、自身が演じた4年前から家族の元を離れ、タイのチェンマイに暮らす京子について「すでにチラシなどでも書かれている通りなんですが…。表面的には“好き勝手に生きる母親”と捉える方もいるかもしれません。でも、優しいところもあるんですよね…きっと…」と周囲をうかがうような口ぶりで説明してくれた。もたいさんは、京子が働くゲストハウスのオーナー・菊子を演じたが「この菊子という女性の生き方がどのように、けつじちゅ…けちゅじちゅ?……結実するのか(笑)、楽しみでした。タイに行ってみて、やっと答えが見つかったような気がします!」と晴れ晴れとした表情で語った。もたいさんが、“結実”と言えずに口ごもってる横で、小林さんは大きく口を開けて「け・つ・じ・つ!」とフォロー。ファンにとっては2人のこうしたちょっとしたやり取りや掛け合いがたまらない様子!客席からは大きな笑いがわき起こった。ゲストハウスで働く青年・市尾役の加瀬さんは、撮影について、いきなり「まあ、基本的にいいかげんな人たちの集まりなんで…」とのんびりとした口調で語り、「ゆっくりと撮影が進むんですが、スタッフもキャストもみんなが、ひとつひとつのシーンを見てるんですね。そこがほかの映画と違いましたね」と現場の様子を語ってくれた。今回、初めての映画出演となった伽奈さんは少し緊張気味。母親役の小林さんは「初めての現場に一人で入ってくるのって心細いだろうな、と心配していたんですが、伽奈さんは若いけど精神的に自立してました」と称賛…したかと思いきや「私たちがあれこれ構う方がわずらわしい、という感じでしたよね?」と笑顔でイジワルなコメント。伽奈さんは「そんなことないですよ!」と慌てて否定するも、「(伽奈さんが)動くたびに楽しませてもらいました。ランニングシャツがこれほどまでに似合う女性はいない!」(小林さん)、「小学生の男の子みたいでした。一家に一台ほしい!」(もたいさん)と2人して“ホメ殺し”の集中砲火!大森監督は、伽奈さんとタイ人の少年・ビーくんのやり取りに触れ「一緒の時間を過ごしていく中で、伽奈さん自身の体験がそのまま映画になってました。新鮮な風を吹かせてくれましたね」とこれまた称賛を贈った。4人と監督の壇上での絶妙な絡み合いに、映画の上映前から観客はすでに映画を観ているような気分になったのでは?『プール』は9月12日(土)よりシネスイッチ銀座、新宿ピカデリーほか全国にて公開中。■関連作品:プール 2009年9月12日よりシネスイッチ銀座、新宿ピカデリーほか全国にて公開©プール商会■関連記事:飯島奈美インタビュー人気フードスタイリストが手がける『プール』魅惑の料理人気モデルから期待の映画デビュー伽奈が語る『かもめ食堂』スタッフ新作『プール』あなたが作ってあげたい料理は?『プール』原作本を3名様にプレゼント『プール』完成!現場も作品もゆる〜く?映画初出演の伽奈は「大目に見てやって」小林聡美&桜沢エリカがサイン会「聡美ちゃんの映画はいつもお腹がすきます」
2009年09月12日「あの映画のあのシーンに出てきたあの料理、おいしそうだったなぁ…」と、映画を観終わったあとに無性にその料理が食べたくなる、誰しも一度は経験しているのではないだろうか。決して目立つことはないけれど、映画に寄り添い、観客の心の隅に温かな記憶として焼き付けられる──そんな印象的な“ごはん”が映画『プール』にはたくさん登場する。そこで、本作をはじめ『かもめ食堂』、『めがね』、『東京タワーオカンとボクと、時々、オトン』など、数多くの映画でフードスタイリストとして活躍する飯島奈美さんに、『プール』の“食”と魅力についてインタビューした。タイ料理とチラシ寿司が同じテーブルに並んでいるワケ映画の舞台はタイの古都チェンマイ。プールのあるゲストハウスで働く日本人・京子(小林聡美)を中心に、5人の6日間の物語が描かれる。約1か月にわたってチェンマイで撮影が行われたそうだが、飯島さんにとってタイはどんなふうに映っていたのだろうか?「バンコクやパタヤには何度か行ったことがあるんですが、チェンマイは初めて。撮影前に現地には『こういう素材があるよ』という情報をもらっていたけれど、実際にチェンマイの市場に行ってみると、とにかく野菜の種類が豊富で!見たことのない野菜がたくさんあって、ほんと楽しかったですね。特に気に入った野菜は“ハヤトウリのつる”。炒めても茹でてもシャキシャキして美味しいんです」。劇中にもチェンマイの市場が登場するが、確かに見ているだけでもウキウキしてしまう、不思議な力を持っている。そんなタイの食材を使った料理の数々──カニのカレー炒め、揚げバナナ、ソムタム…などが、スクリーンの向こう側からおいしそうな匂いを運んできてくれる。そして、タイ料理であるのにどこか懐かしさを感じるのは、タイ料理とちらし寿司や酢豚が同じ食卓に並んでいるからかもしれない。「登場人物たちは日本からタイに来たという設定なので、タイ料理に加えて、少しタイ風にアレンジした日本食も登場させました。ソムタムはいろいろな野菜や果物を使ったタイの食卓の定番メニュー。最初はソムタムにエビを入れようと思ったんですが、同じテーブルに並ぶ料理が、カニのカレー炒めや酢豚だったので、バランスを取って野菜だけのシンプルなソムタムにしました。小林さんの演じる京子は好奇心旺盛な性格。その辺も意識しているんです」。キャラクラーに合わせて素材を変えているとは驚きだ。加瀬亮さんのおかげであるものをお買い物!撮影が早く終わった日は、スタッフ&キャストみんなでご飯を食べることもあったのだとか。メインキャストは『かもめ食堂』、『めがね』でも顔を合わせている馴染みの面々。なかでも小林聡美とはもう7〜8年の付き合いになるという。「小林さんとはパスコのCMの頃からのお付き合いなんです。とっても気さくなのに(現場では)ほどよい緊張感をくれる方ですね。小林さんの料理の腕はかなりのものですよ。今回も演技をしながらキュウリをトントントンッって、薄く、きれいに切っていましたし、揚げ物のシーンも自然な感じでした」。その揚げ物とは“揚げバナナ”のこと。ジュジュッとバナナを揚げる音、サクサクッと食べる瞬間の音、多くの人が「これ、食べたい!」と食欲をかき立てられる。もちろん、その裏には飯島さんの挑戦があった。「タイで買ってきた料理本を見て、天ぷらを揚げるように作ってみたんです。でも、時間が経つとしんなりしてしまって…。どうしたらあのパリパリ感を出せるのかタイの屋台で研究してみると、低温で20分以上かけて揚げていたんです。おかげでキャスト・スタッフにも好評の一品になりました」と、にっこり。きっと揚げバナナを食べているときのみんなの表情も“にっこり”笑顔だったことだろう。また、撮影がオフのときはチェンマイの街を歩きまわり、その土地の雰囲気を満喫したという飯島さん。そして、ある買い物をしたのだとか。「チェンマイのある屋台で小さな棚を見つけたんです。あの棚が欲しいなぁ…と言っていたら、なんと加瀬さんがわざわざお店の人に売ってもらえるかどうか聞いてくれたんです!私も屋台を持っているので、その棚を使ってそのうち屋台を出したいですね」と、思い出のエピソードを語ってくれた。飯島さんの屋台、いまから楽しみ。けれど、まずは『プール』の温かな世界観を満喫しなくては!(text:Rie Shintani)「シネマカフェsweet」『プール』特集■関連作品:プール 2009年9月12日よりシネスイッチ銀座、新宿ピカデリーほか全国にて公開©プール商会■関連記事:人気モデルから期待の映画デビュー伽奈が語る『かもめ食堂』スタッフ新作『プール』あなたが作ってあげたい料理は?『プール』原作本を3名様にプレゼント『プール』完成!現場も作品もゆる〜く?映画初出演の伽奈は「大目に見てやって」小林聡美&桜沢エリカがサイン会「聡美ちゃんの映画はいつもお腹がすきます」キャスト陣舞台挨拶付き!『プール』完成披露試写会に10組20名様をご招待
2009年09月11日スラリと伸びた長い手足。涼しげな目元には、ツヤツヤの黒髪ショートヘアがよく似合う――。2005年からその日本人離れした肢体をフルに活用し、モデルとして華々しい活躍をしてきた伽奈。ハイファッションな雑誌でクールにポーズを決める彼女の写真からは想像ができないほど、実際の彼女は柔らかい空気に包まれた女性。スクリーンデビューとなる『プール』について瞳を輝かせて話す彼女は、時に少女のような健やかさをのぞかせてくれた。「わ、私?なんで私?と思いました(笑)」「心がうたれると同時に、とてもお腹が空く映画でした」と、冒頭こちらが述べた感想に「静かな映画なので、お腹の鳴る音、気になりますよね!」と無邪気な笑顔で応じてくれた伽奈さん。本人は口下手だと謙遜するが、人を自然とリラックスさせてくれる優しいオーラの持ち主だ。だが映画初出演となる『プール』は、大ヒットした『かもめ食堂』、『めがね』の制作スタッフによる最新作。彼女が感じていたプレッシャーは、計り知れなかったようで…。「最初に『プール』の出演のお話が来たときは、『わ、私?ほんとに私?なんで私?』と思いました(笑)。とても人気のある作品のシリーズだったので、もちろん嬉しかったんですが、緊張や不安の方が大きくて。ロケ先のタイに出発する前の晩は、一人で『も〜うダメだ!全然できない気がする…』って、本当に大変でした。ほとんど寝られませんでしたね。演技をすることがまず不安で、次にこの映画の中に自分が溶け込めるのかっていうのも不安で」。だがスクリーンに佇む伽奈さん演じる“さよ”は、至ってナチュラル。「何も(役を)作らずに体ひとつで、そのままで来てくれって監督やプロデューサーからは言われてました。でもやっぱり不安で…」と言いながらも、自由奔放に生きる母・京子(小林聡美)への複雑な想いを、時に不器用に時に繊細に演じてみせた。劇中、徐々に心を開いていくさよだが、「ほぼ順撮り(※映画のストーリーと同じ順番で撮影が進むこと)でした」という撮影の成果か、伽奈さん自身の緊張も次第にほどけていったとか。「私はタイ自体、初めて行ったので、(ロケ地の)チェンマイももちろん初めて。だからほかのタイの都市とは比べられないんですが、すごくいい所だなぁって。朝夜は涼しくて、昼間は暑いんですが、風通しのいい暑さなので不快じゃないというか…。チェンマイに着いて、気候の暖かさだったり、花の綺麗さだったり(チェンマイは“花の町”と言われるほど、多くの花が咲き乱れる美しい街)、お寺や昔からの古い建物の雰囲気だったり、その辺を歩いている野良牛だったり(笑)。そういうのを見ているうちに、自然とリラックスできてきて。ただ完成した作品を見ると、最初の方は動きが硬いし、緊張してるな〜って思います。でも最後の方になると安心して見られました」とニッコリ。ベテラン揃いのキャスト陣からは、毎日吸収することだらけ!京子が自分に知らせずに一緒に暮らしていた現地の少年・ビーに対しても、最初は嫉妬と苛立ちがない交ぜになっているさよ。そんな思いさえも、実際の伽奈さんとうまくリンクした。「私自身、さよと同じくらい、最初はビーくんにどう接していいか分からなかったんです。言葉も分からないし、小さい子供との接し方にも慣れてなくて。でも撮影が進むにつれて、コミュニケーションが取れてきて、よく一緒に遊ぶようになりました。楽しかったです」。そんなビーくんがしがみつくくらいなつき、「優しい人なんだな〜と思いました(笑)」という加瀬亮、そして主演の小林聡美、もたいまさこ…と、初映画にしていきなりベテラン揃いのキャスト陣。「もちろん緊張はしたんですが、みなさんとても安心できる方でした。本当に優しいし面白いし、私が聞いたことのないようなお話をたくさんしてくれて。毎日、吸収することだらけでしたね」。中でも特に思い出深いというのが、初めて京子と母娘の対話をする“鍋のシーン”。劇中では鮮烈な印象を残すが、伽奈さん自身にも「演じてみて初めて分かる」という貴重な体験をもたらした。「台本を読んだだけの時点では、京子という人に対して、やっぱり不思議だな〜って思いが強くて。この人、何考えてるんだろう?とか、随分変わったお母さんだなって思いました。でもあの鍋のシーンで、実際に小林さんがセリフを喋って、お芝居をされてるのを見て、初めて感じる気持ちや、初めて知る感覚があったんです。これまで台本の文字だけを読んで想像していたのとは違う感覚…『あ、そういうことか!』みたいなのがあって。初めてお母さん(京子)の本当の魅力が分かった気がしました」。「私に演技ができていたとすれば、キャストやスタッフ、みなさんのおかげだと思います。このチームは特別だし、このメンバーだから私でもなんとかなったのかなって」。最後まで決して奢らず、慎重な姿勢を崩さなかった伽奈さん。でもこの唯一無二の清冽な存在感を、映画界が放っておくことはないはず。今後が楽しみな、大型新人女優の誕生です。(text:Kaoru Endo/photo:Yoshio Kumagai)「シネマカフェsweet」『プール』特集■関連作品:プール 2009年9月12日よりシネスイッチ銀座、新宿ピカデリーほか全国にて公開©プール商会■関連記事:あなたが作ってあげたい料理は?『プール』原作本を3名様にプレゼント『プール』完成!現場も作品もゆる〜く?映画初出演の伽奈は「大目に見てやって」小林聡美&桜沢エリカがサイン会「聡美ちゃんの映画はいつもお腹がすきます」キャスト陣舞台挨拶付き!『プール』完成披露試写会に10組20名様をご招待『プール』セレクトショップがオープン映画の世界観を楽しめる雑貨、内装にうっとり
2009年09月08日桜沢エリカの書き下ろした漫画原作を人気脚本家の大森美香がメガホンを取って映画化!『かもめ食堂』、『めがね』のスタッフ、キャスト陣が再び集結して贈る、ゆるーく、そして美しい物語『プール』がまもなく公開を迎える。9月2日(水)に本作の完成披露試写会が行われ、上映前の舞台挨拶に主演の小林聡美、加瀬亮、もたいまさこ、伽奈、そして大森監督が登壇した。本作が東京で上映されるのはこの日が初めて。小林さんを始めとするキャスト陣は、初上映を前にやや緊張しつつも、観客の反応を楽しみにしている様子。今回、映画初出演を果たした伽奈さんは「初めてお芝居させていただきましたので…大目に見てやってください」と自嘲気味に語り笑いを誘った。続いて、キャスト陣4人に自分とは別の登場人物を紹介してもらった。菊子役のもたいさんから見て、小林さん扮する京子は「冷静沈着で頼りがいがある人。思いやりをさりげない形でそっと見せてくれる大人の女性です」とのこと。その京子から見ての娘のさよ(=伽奈さん)はというと「素直なんだけど一方で意地っ張りなところもある娘。独立心が強いから、ほったらかしにしてしまって、逆に母親の方が娘に甘えているような部分もありますね」と苦笑交じりに語ってくれた。では、さよの視点で加瀬さん扮する市尾はどう見えるかというと「優しいけど不器用。それが分かってるのにうまくいかない。そんなところがありますね」とのこと。最後に加瀬さんが語る菊子という女性は?「死というものを実感を持って感じている方で達観している部分があり、物事の受け止め方が大らかで潔いんですね」。それを聞いていた大森監督は「みなさん、すごくよく見てくださってるなと思います。現場で、みなさんと話しながら作り上げていった日々を思い出しました」と感慨深げな表情を見せた。報道陣からはキャスト4人に、「この中で誰がチームを引っ張るのか?」などの質問が出たが「仕切り人はいないですね。みんなバラバラですから」(小林さん)など、作品同様に何ともゆるやかな空気感が伝わってきた。『プール』は9月12日(土)よりシネスイッチ銀座、新宿ピカデリーほか全国にて公開。■関連作品:プール 2009年9月12日よりシネスイッチ銀座、新宿ピカデリーほか全国にて公開©プール商会■関連記事:小林聡美&桜沢エリカがサイン会「聡美ちゃんの映画はいつもお腹がすきます」キャスト陣舞台挨拶付き!『プール』完成披露試写会に10組20名様をご招待『プール』セレクトショップがオープン映画の世界観を楽しめる雑貨、内装にうっとり最も浴衣が似合うと思う俳優は?「MTV」オリジナル携帯ストラップを10名様プレゼントやっぱり猫が好き?超人気ブログ「くるねこ」アニメ化で小林聡美が一人全役に挑戦
2009年09月04日『かもめ食堂』、『めがね』という秀作を作り上げてきたスタッフ&キャスト陣が再結集して、タイを舞台に贈る『プール』が9月12日(土)より公開される。本作の主演を務める小林聡美と本作の原作者・桜沢エリカ。小林さんの新作のエッセイ(「アロハ魂」)と桜沢さんが映画化を前提として書き下ろした本作の原作漫画(「プール」)の合同サイン会が8月23日(日)、丸善・丸の内本店にて開催され、多くのファンが訪れた。桜沢さんの原作について、小林さんは「私は美しく描いてもらいました(笑)」と語る一方で、桜沢さんは映画を「普通の状態では観られませんでしたね。自分が書いたものと照らし合わせるみたいで」と少し照れくさそう。映画の中で描かれる母と娘の葛藤について、小林さんが「いまは“友達親子”が多いようですが、私のような昭和な人間にとって、母は母であって、分からないのは当たり前でした。『プール』の中の母娘は見たことのない関係でしたね」と言えば、桜沢さんは「私の母を下敷きにしているのは事実です。いろんな親がいるんですよ。子供には伝えていくけれど、家にいないことはありましたよ。この歳になっても母に対する恨みはあります(笑)」と作品に込めた思いを明かした。また、映画の中で小林さんは初めて歌を披露しているが「音楽をやっている方々は本当にすごいと思います。見られる、撮られることを前提に歌いながらギターを弾くというのは本当に大変でした」とふり返り、「そうは見えなかったですよ」という声に「一応、女優なんで」とニッコリ。最後に桜沢さんが映画をアピール。「タイ料理が食べたくなりますよ。聡美ちゃんの映画はいつもお腹がすきます」と笑顔でメッセージを贈った。『プール』は9月12日(土)よりシネスイッチ銀座、新宿ピカデリーほか全国にて公開。「アロハ魂」(小林聡美著)発売元:幻冬舎定価:1,365円(税込)「プール」(桜沢エリカ著)発売元:幻冬舎定価:1,000円(税込)■関連作品:プール 2009年9月12日よりシネスイッチ銀座、新宿ピカデリーほか全国にて公開©プール商会■関連記事:キャスト陣舞台挨拶付き!『プール』完成披露試写会に10組20名様をご招待『プール』セレクトショップがオープン映画の世界観を楽しめる雑貨、内装にうっとり最も浴衣が似合うと思う俳優は?「MTV」オリジナル携帯ストラップを10名様プレゼントやっぱり猫が好き?超人気ブログ「くるねこ」アニメ化で小林聡美が一人全役に挑戦
2009年08月24日女性からの根強い支持を受けスマッシュヒットを遂げた『かもめ食堂』、『めがね』のスタッフと小林聡美らおなじみキャストが、緑あふれるタイの古都・チェンマイを舞台に再結集して贈る、癒しムービー『プール』。9月の公開を記念して、8月15日(土)より期間限定で映画オリジナルのセレクトショップ「プールショップ」がオープンする。こちらの「プールショップ」では、映画に登場するグッズやオリジナル商品の開発を行い、発売。映画のポスタービジュアルとなった原画の展示や、映画写真などの展示も行われる予定だ。映画美術を手がけた富田麻友美が内装を担当した店内で、映画の世界観を一足早く味わえる。また、これと併せて8月21日(金)には、本作のオリジナルサウンドアルバムもリリース。“聞こえない音が映画の中から聞こえてくる”をコンセプトに、米米CLUBのサックスプレイヤーで作曲家の金子隆博が音楽を手がけるが、中には、小林聡美が初の試みとして作詞・作曲・歌に挑んだ劇中歌「君の好きな花」も収録されている。果たして、どんな歌声を披露しているのだろうか?『かもめ食堂』ではフィンランド、『めがね』では美しい浜辺がある与論島を舞台に、引き寄せられるように集まった個性的なキャラクターたちの過ごす、ゆったりとした時間を描いてきたが、本作『プール』では、舞台をチェンマイのとあるゲストハウスに移し、ここに集まる5人の男女の物語を描く。原作は人気漫画家の桜沢エリカ、メガホンを取るのは、『デトロイト・メタル・シティ』などの脚本を手がけてきた大森美香。そして小林聡美、もたいまさこ、加瀬亮の『めがね』チームに加え、新たにモデルの伽奈が映画デビューを果たす。「プールショップ」は8月15日(土)から9月30日(水)まで営業予定。『プール』は9月12日(土)よりシネスイッチ銀座、新宿ピカデリーほか全国にて公開。「プールショップ」開店期間:8月15日(土)〜9月30日(水)予定営業時間:12:00〜19:00(月・水〜日曜)※火曜休場所:渋谷区上原1-20-1 1F(代々木上原駅より徒歩4分)問い合わせ:03-6804-7445『プール』公式サイト■関連作品:プール 2009年9月12日よりシネスイッチ銀座、新宿ピカデリーほか全国にて公開©プール商会■関連記事:最も浴衣が似合うと思う俳優は?「MTV」オリジナル携帯ストラップを10名様プレゼントやっぱり猫が好き?超人気ブログ「くるねこ」アニメ化で小林聡美が一人全役に挑戦
2009年08月06日