直木賞作家・佐木隆三の小説「身分帳」を原案に、役所広司を主演に迎えた西川美和監督最新作『すばらしき世界』が、第45回トロント国際映画祭に正式出品されることが分かった。公開日も2021年2月11日(木・祝)に決定した。トロント国際映画祭は、北米最大の国際映画祭であり、米アカデミー賞前哨戦とも言われている。今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、世界中の映画祭が規模縮小を余儀なくされ、同映画祭も長編映画50本、短編映画プログラム5本と、例年の1/4程度に絞られている。そんな非常に狭き門を見事突破した本作は、西川監督が初めて実在の人物をモデルとした原案小説を基に、その舞台を約35年後の現代に置き換え、徹底した取材を通じて脚本・映画化に挑んだ作品。西川監督作が同映画祭へ出品されるのは、本作で3作品連続の快挙だ。また本作は、英題『Under The Open Sky』としてワールドプレミア上映を予定。劇中で主人公が生きる世界を印象付けるあるセリフから引用したという。なお、トロント国際映画祭の開催期間は9月10日から19日までとなっており、受賞結果は最終日に発表される。トロント国際映画祭には格別な思い出があるという西川監督は「『夢売るふたり』(2012)の上映中、ラスト20分のところで観客の目の前でフィルムが燃えたのです。映画は突然中断し、私は映写技師のところに駆け込み、スタッフは大慌てでしたが、応急処置で上映が再開されるまでの30分間、地元の映画ファンのほとんどが席を立たずに辛抱強く待っていてくれており、最後は同じ旅を終えた仲間のような拍手で迎えてもらいました。北米最大の映画祭であると同時に、市民や映画ファンと距離の近い、大好きな映画祭です」とふり返り、「『すばらしき世界』の招待を決断して頂いたことに、心から感謝しています。今作も、“燃えるような”上映になりますように!」と今回の出品を喜ぶ。主演の役所さんは「『うなぎ』で初めてカンヌ国際映画祭に参加しました。その時、海外の観客と一緒に観て『こんなにも、笑ってくれるんだ!』って驚きましたが、この『すばらしき世界』にも、『うなぎ』と共通するような、ユーモアや笑えるところがあります。まっすぐ過ぎて不器用な三上と本作を、是非楽しんで頂けたらと思っています」とコメントしている。『すばらしき世界』は2021年2月11日(木・祝)より全国にて公開。(cinemacafe.net)
2020年07月31日トロント映画祭が、ラインナップの一部を発表した。映画祭まで2カ月半ある、この早い時期に発表するのは異例だが、新型コロナにどう対応するのかの報告にからめてのものだ。今回明らかにされた上映作は、ケイト・ウィンスレット主演の『Ammonite』、イドリス・エルバ主演の『Concrete Cowboy』、マーク・ウォールバーグ主演の『Good Joe Bell』、ハル・ベリーの監督デビュー作『Bruised』、河瀬直美監督作『朝が来る』など。上映作品数は、通常より大幅に減らされた50本。映画祭の最初の5日は、ソーシャルディスタンスを守りながら、シアターやドライブインシアターで上映される。しかし、今年はデジタルでの上映も用意され、レッドカーペットもヴァーチャルとなるとのことだ。トークイベント、業界向けコンフェレンスもデジタルで開催される。これらを含めた詳細は、追って発表される。今年のトロント映画祭は9月10日から19日まで。文=猿渡由紀
2020年06月25日東京ミッドタウン日比谷にて開催される「HIBIYA CINEMA FESTIVAL(日比谷シネマフェスティバル)」。このイベント期間中に開催する「トロント日本映画祭 in 日比谷」での上映8作品が決定した。「HIBIYA CINEMA FESTIVAL」は、普段は静かな空間で観ることの多い映画を、屋外大型ビジョンを中心に“観る”だけでなく“参加する”ことにもこだわった“体験する映画祭”。今年は、大型ビジョンへデバイスをかざすと最新作『ルパン三世 THE FIRST』のキャラクターが街へ飛び出す…!?最新AR技術を活用し映画の世界が現実へ拡張する体験が味わえる「ルパン三世 THE FIRST インタラクティブシアター」と、今年6月の「トロント日本映画祭」で上映された最新作を上映する「トロント日本映画祭 in 日比谷」が、10月18日(金)~10月27日(日)の期間で開催。さらに、10月28日(月)~11月4日(月・祝)の期間でアジア最大級の国際映画祭「第32回東京国際映画祭」の日比谷会場が登場。「日比谷オープニングイベント」「東京国際映画祭屋外上映会」「ゴジラ・フェス 2019」の3つのプログラムを実施予定だ。そして今回発表されたのは、「トロント日本映画祭 in 日比谷」の全8作品。ここでは、外国人の方にも邦画を楽しんでもらえるように英語字幕付き邦画上映を実施。矢口史靖監督によるミュージカルコメディ『ダンスウィズミー』や、二階堂ふみが初の男役、GACKTが高校生役に扮し、魔夜峰央の漫画を実写化した『翔んで埼玉』、山崎努と樹木希林さんが初共演した『モリのいる場所』をはじめ、『恋のしずく』『ウスケボーイズ』『ねことじいちゃん』『かぞくいろ―RAILWAYS わたしたちの出発―』『ビブリア古書堂の事件手帖』を上映。また矢口監督、柿崎ゆうじ監督、吉田康弘監督、三島有紀子監督と上映作品の監督が挨拶&トークセッションも行う。さらに、今年は“リラックスエリア”も登場!都心の真ん中で上質な映画体験を楽しんでもらうための特別シートとして、デッキチェアとブランケットをセットで貸し出すという(40席※先着順、500円)。ほかにも、『ルパン三世 THE FIRST』コラボレーションメニューが登場。ハンバーガー/ホットドッグを提供する全5店舗で同作のキャラクター5種のオリジナルフラッグピックつきのメニューを提供。各店でルパン三世をイメージしたオリジナルスイーツ・ドリンクメニューも展開予定だ。「HIBIYA CINEMA FESTIVAL」は10月18日(金)~11月4日(月・祝)日比谷ステップ広場、日比谷アートゲートほかにて開催。(cinemacafe.net)
2019年10月06日トロント映画祭が、現地時間15日に閉幕した。観客賞を受賞したのは、タイカ・ワイティティ監督の『ジョジョ・ラビット』(来年1月日本公開予定)。第2次大戦時を舞台にした、笑いと感動の映画で、主人公ジョジョは、ナチに憧れるドイツ人少年。ヒトラーは彼の想像の中にもしょっちゅう出てくる特別な存在だが、ある時、母がユダヤ人の少女を家の中に匿っていることを知る。母を演じるのはスカーレット・ヨハンソン。ヒトラーをワイティティ監督、ジョジョにとって教官となるナチの軍人をサム・ロックウェルが演じている。次点は、やはりヨハンソンが出演する『Marriage Story』(Netflixが世界配信)。こちらの映画で、ヨハンソンの役は、夫と離婚すると決めた、ひとり息子を持つ妻だ。監督、脚本はノア・バームバック。3位はカンヌで最高賞パルムドールを受賞したポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』(来年1月日本公開予定)だった。トロント映画祭の最高賞に当たる観客賞は、カンヌ、ヴェチア、ベルリンと違い、審査員でなく、その名のとおり一般観客が投票で決める。つまり、アカデミー会員が投票するオスカーとは、まるっきり投票者が被らないのだが、この賞を取った作品がオスカーでも大健闘する確率は、極めて高い。昨年も、ここで観客賞を取った『グリーンブック』がオスカー作品賞を受賞したし、ほかにも『それでも夜は明ける』『英国王のスピーチ』『スラムドッグ$ミリオネア』『アメリカン・ビューティ』などが、同じ道を辿っている。昨年の受賞作『スリー・ビルボード』、そのひとつ前の『ラ・ラ・ランド』も、オスカー作品賞を最後まで争った。『ジョジョ・ラビット』『Marriage Story』『パラサイト 半地下の家族』は、上映が行われた時からどれも観客、ジャーナリストの間で非常に受けが良く、この結果は決して驚きではなかった。ただ、やや残念なのは、これら3本とも男性監督の作品であること。今年、トロントは女性監督の作品を積極的に上映するだけでなく、ウェブサイトやメールを通じても、彼女らの映画を観に行くことを観客や記者に奨励し続けたのだ。それらの中には、マリエル・ヘラー監督、トム・ハンクス主演の『A Beautiful Day in the Neighborhood』、 ロレーン・スカーファリア監督、ジェニファー・ロペス主演の『Hustlers』、ガブリエラ・カウパースウェイト監督の「The Friend」、ジュリー・デルピー監督の『My Zoe』、ブライス・ダラス・ハワード監督のドキュメンタリー『Dads』などがあった。カンヌやヴェネチアは、この面において今も非常に遅れを取っているだけに、トロント映画祭の姿勢には、大きな拍手を贈りたいと思う。取材・文=猿渡由紀
2019年09月17日『グリーンブック』や『ラ・ラ・ランド』『スリー・ビルボード』などアカデミー賞に直結する作品を多数送りだしてきたトロント国際映画祭の最高賞「観客賞」に、タイカ・ワイティティ監督最新作『ジョジョ・ラビット』が輝いた。『マイティ・ソー バトルロイヤル』のタイカ・ワイティティ監督が、4度アカデミー賞作品賞に輝き、創立25周年を迎えたFOXサーチライト・ピクチャーズのもと、スカーレット・ヨハンソンやサム・ロックウェルら世界を代表する豪華キャスト陣と共に、第2次世界大戦下のドイツを舞台とした壮大なヒューマン・エンターテインメントを作りあげた。第44回トロント国際映画祭では開幕前からマスコミ陣も映画ファンも注目、ワールドプレミアは熱狂をもって迎えられた。ワイティティ監督自身が、主人公の少年ジョジョの空想に登場するアドルフ・ヒトラーを演じるとともに、オーディションでジョジョ役をつかんだローマン・グリフィン・デイビスがその愛くるしいルックスと確かな演技力を披露し、一躍注目の新星の座に躍り出た。戦争に対する風刺をハートフルなコメディの形をとりながら表現し、戦時下における人々の生きる喜びを正面から描いた本作は、最もアカデミー賞に近い賞といわれるトロントの観客賞を獲得したことで、今季の映画賞レースの目玉となりそう。なお、観客賞次点2位にはノア・バームバック監督の『マリッジ・ストーリー』、3位にはポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』が選ばれている。『ジョジョ・ラビット』は2020年1月、全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2019年09月17日ライアン・ジョンソンが監督、脚本、プロデュースを兼任する『Knives Out』が、トロント映画祭で世界プレミアされた。アガサ・クリスティを思わせる密室の犯罪スリラーで、娯楽性たっぷりの作品だ。“泣かせる”、“意義がある”、というタイプの映画ではないため、オスカーとは無縁だろうが、映画祭での受けは非常に良く、ここでの観客賞はまったく不可能ではない。少なくとも、劇場公開時にはヒットが見込めそうだ。主人公は、すご腕の私立探偵ブランク(ダニエル・クレイグ)。大富豪一家の長ハーランが85歳の誕生日に自殺を図った時、彼は、匿名の人物から捜査を依頼された。ブランクは、その日に家にいた家族のメンバーと使用人をひとりひとり取り調べする。この中の誰かが嘘をついているのか、あるいは、犯人はまったく別のところにいるのか。そもそも、どこから見ても自殺なのに、ブランクに捜査を依頼したのは、誰なのか。映画は次々に糸口を見せつつ、どんどん違う方向に展開し、見る者を引き込んで離さない。今作をジョンソンのキャリアの最高作と呼んでも、恐らく間違いはないだろう。イギリスのスマートなスパイ、ジェームズ・ボンド役で知られてきたクレイグは、今作で南部訛りに挑戦し、まったく違う味を出す。彼を囲むキャストも実力派揃いだ。自殺する大富豪を演じるのは、オスカー俳優クリストファー・プラマー。彼の子供、その配偶者、孫らを、ジェイミー・リー・カーティス、マイケル・シャノン、ドン・ジョンソン、トニー・コレット、クリス・エヴァンスら。献身的にハーランの世話をしてきた看護婦をアナ・デ・アルマスが演じている。純粋な娯楽作でありながら会話の端々に、移民問題など、今のアメリカならではの事柄が含まれているのも、映画にさらなるスパイスを与える。アメリカ公開は、アメリカ人が家族で感謝祭を祝う11月27日(水)。その後には日本公開も決まっている。取材・文=猿渡由紀
2019年09月12日クリスチャン・ベールとマット・デイモンが、『Ford v Ferrari』で初共演を果たした。トロント映画祭で行われた記者会見で、ベールが、その体験について語った。映画の舞台は、1966年のル・マン24時間耐久レース。どうしてもフェラーリを打ち負かしたいフォードは、アメリカ人として珍しく優勝した経験を持つキャロル・シェルビー(デイモン)と、彼が運転の腕を認めた無名の男ケン・マイルズ(ベール)を雇い、その念願を果たそうとする。だが、そもそもフォードがこのレースに参加するのは、企業イメージをアップして、もっと車を売るためだ。車の修理店のオーナーであるマイルズにこの重要なレースのドライバーを任せることへの反発は社内で根強く、シェルビーとマイルズのコンビは、レースの前にも、レース中にも、さまざまな障害に直面するのだった。ベールは今作でフォード側の男を演じるわけだが、過去に彼は、エンツォ・フェラーリの伝記映画に主演を検討した結果、断った経緯がある(この映画にもエンツォ・フェラーリは登場する)。今作の監督ジェームズ・マンゴールドによると、その頃、このテーマにからむ映画のプロジェクトは数本あり、彼もそれらについて耳にしていたらしい。「予算がかかるため、どれも先に進まない状態だった」が、彼は、その頃からリサーチを始め、『LOGAN/ローガン』(2017)が完成した後、今作を手がけることに決めたのだという。「車オタクではない僕にとって、これは友情の物語」と、マンゴールド。それを表現する主演俳優ふたりの細やかでリアルな演技には、編集室に入ってからも感心させられることの連続だったそうだ。この会見にデイモンは来なかったが、ベールも彼について「すごくニュアンスに満ちた演技をする人。それに、人間としても非常に寛大で心優しい人だ。変な競争心は皆無。彼はいつも協力し合おうとする」と絶賛を送った。映画のラストシーンに関しては特に、ふたりの間で相当に綿密な話し合いがなされたとのことだ。そんなふうにベールが仲良しぶりを語ったところへ、ある記者が「マット・デイモンは、ジョージ・クルーニーと長年の友達。ベン・アフレックとは幼馴染み。そこへ来て、やはりバットマンを演じたあなたと今度は友達になったわけですね?」と質問した。意外な指摘をされたベールは、「じゃあ、今ごろマットはロバート・パティンソンとお近づきになろうとしているのかな」と受けて、笑いを取っている。映画のアメリカ公開は11月15日(金)。日本での公開も決まっている。取材・文=猿渡由紀
2019年09月11日トム・ハンクスの最新主演作『A Beautiful Day in the Neighborhood』が、トロント映画祭で世界プレミアされた。ハンクスが演じるのは、60年代末から長年にわたって子供向け番組の司会者を務めたフレッド・ロジャース。歌ったり、踊ったり、ぬいぐるみを使って話しかけたりしながら、ミスター・ロジャースは、子供たちにポジティブなメッセージを送り続けた。彼の人生全体については、昨年アメリカで公開され、スマッシュヒットとなったドキュメンタリー『Won’t You Be My Neighbor?』があるが、今作は、彼を取材した『Esquire』誌のライターの記事をもとに、彼の視点から語るものだ。映画ではロイドという名前になったそのライターは、他人に対して批判的になりがちで、それが記事にも表れる。それだけに、彼にインタビューされることを拒否する人物は多いのだが、ミスター・ロジャースは、喜んで引き受けてくれた。彼とのインタビューは奇妙なことだらけだったが、そうやって接触していくうちに、ロイドの生き方は大きく変わっていくのである。監督は、昨年トロントで上映されて好評を得た『Can You Ever Forgive Me?』のマリエル・ヘラー。プレミアの翌朝の記者会見でヘラーは、プレミアが終わった深夜1時半頃にミスター・ロジャースの妻であるジョアンから「あなたが彼に直接会えることがあったらよかったのにと思います。あなたたちはとても良い会話をしたでしょう。そして彼はこの映画をとても誇りに思うことでしょう」とのメールが届いたと、感激しながら報告をした(ロジャースは2003年に74歳で亡くなっている)。1956年生まれのハンクスは、ミスター・ロジャースの番組が人気になる頃にはすでにティーンエイジャーだったため、個人的な思い入れはそれほどなかったという。しかし、ミスター・ロジャースと車椅子の子供が対話する映像を近年見た時には、心から感動させられたと語った。とは言え、ミスター・ロジャースのおなじみの歌、振り付けをそのとおりに再現するのは「生き地獄だった」とまで言っては記者たちを笑わせている。意外にも苦労させられたのは、カーディガンのファスナーを引き上げるタイミングだったそうだ。ミスター・ロジャースが実際に着ていたのは妻の手編みで、そのニュアンスを出すためにハンクスの衣装も手編みで作られたため、ファスナーがすんなりと上がりにくかったのだそうである。あのオープニングシークエンスは「何度テイクをしたかわからないが、たくさんだった」とハンクスが言うと、横からヘラーが「22回テイクをやったわよ」とフォローした。また、言ってみれば有名な歌のお兄さんを演じる上では、「自意識過剰にならないようにすること、キャラっぽくならず、人間らしさを出すこと」に注意したとも振り返っている。今作のアメリカ公開は11月22日。日本公開も決まっている。取材・文=猿渡由紀
2019年09月10日先日開幕した「第44回トロント国際映画祭」にてスペシャル・プレゼンテーション部門に出品された新海誠監督最新作『天気の子』。現地時間9月8日に本作の公式上映が行われ新海監督が出席、世界でも盛り上がりを見せている。7月19日に全国359館448スクリーンで公開スタートした本作は、公開から34日間で興行収入100億円を突破し、歴代邦画興行収入ランキングトップ10入り。また、公開初日から9月8日までの52日間で観客動員900万人、興行収入120億円を突破。140の国と地域での配給が決定し、米アカデミー賞の日本代表にも選出されるなど、世界中から大きな注目と期待を集めている。そんな本作が、ベルリン国際映画祭、カンヌ国際映画祭に次ぐ規模の来場者数32万人を集める、北米最大の映画祭「トロント国際映画祭」に出品。同映画祭初参加となる新海監督は、この公式上映にあわせて現地入りし、上映前には「海外の方がどうのように受け止めてくださるのかとても興味深いです」と期待を膨らませていた。プレミア上映会場となったスコシアバンクシアタートロント(キャパ552席)では、18:00(現地時間)からの上映のチケット即日完売、当日券にも長蛇の列ができ、100人以上が入手できずという現地での期待値の高さが伺えた。上映前の舞台挨拶に登壇した新海監督は、大喝采と歓迎の拍手で迎えられ英語で挨拶し、「カナダに来るのは初めてなのですが、僕の作品を見たことある方いますか?」と観客へ逆質問する場面も。そして「トロント国際映画祭に出品が決まった時は驚きました。なぜならば『天気の子』は5年10年と残るものというよりは、2019年のこの夏に、日本の若者に見てほしいと意識して作った作品です。この数年間、天気や気候といったものが変わってきていると実感しており、その今起こりつつある変化を、今みんなに見てもらえる映画として作りました。どのように感じてくださるのか楽しみにしています」と語った。その後の上映では、笑いと感嘆の声があがったり、クライマックスではすすり泣いたりする声も。上映後のティーチイン舞台挨拶に登壇した新海監督は、観客からの「今までSFと日本の神道をモチーフにしてきたものが多いですが、それについての背景と、『晴れ女』のことについて教えてください」という問いに「晴れ女とか雨男だよとか、日本ではよく言うのですがカナダではないのですか?天気の子という映画では日本に住んでいる自分たちの足元を深く掘ることをしたいと思いました。例えば鳥居を通るときは手を合わせるとか、自分たちに染みついている習慣をこの映画の仕掛けにしたいと思いました」と回答。また、前作『君の名は。』でも「RADWIMPS」とタッグを組んだ新海監督。「新海監督とRADWIMPSはセットのように思えますが、次も一緒にやりますか?」という質問には、「今日は歌の歌詞に字幕がついていなかったので、残念でした。歌詞がわかればより作品に込めたメッセージを感じていただけて、作品がより魅力的に見えたのではと思います」と前置きし、「次はまだ決めていません。一緒にやりたい気もしますし、違うチャレンジをしたくもあります」と答えるなど、終始大盛り上がりの舞台挨拶となっていた。そして映画祭後、新海監督は「映画ファンとアニメーションファン、僕の作品の昔からのファンが多く集まってくれた。映画を鑑賞中の反応も、随所に笑い声や泣き声を上げてくれてとてもビビッド。とても幸せなフェスティバルだなと感じました」と初参加の感想を明かしている。『天気の子』は全国東宝系にて公開中。(cinemacafe.net)■関連作品:天気の子 2019年7月19日より全国東宝系にて公開(C)2019「天気の子」製作委員会
2019年09月10日トロント映画祭はオスカー予測上、非常に大事な指針となる映画祭だ。今年も、早くも3日目にして、賞レースに食い込みそうな作品が世界プレミアされた。マイケル・B・ジョーダンが主演とプロデューサーを兼任する『Just Mercy』だ。時事的な社会問題を取り上げる実話でありながら、前向きな姿勢も失わない今作は、アカデミー会員にもアピールする要素が十分。それ以前に、このトロント映画祭でも、観客賞を得る上でかなり健闘するのではと思われる。主人公は、若手黒人弁護士ブライアン・スティーブンソン。せっかくハーバードを出たというのに、彼が選んだのは、人種差別の根強い南部で不当に刑務所入りをさせられた人々を助ける弁護士になること。そんな彼が出会ったひとりが、ウォルター・マクミラン(ジェイミー・フォックス)だ。物質的証拠がまるでなく、唯一の証言も矛盾だらけであるにもかかわらず、彼は死刑囚として獄中生活を強いられている。スティーブンソンは、自身も差別や脅迫にさらされつつ、勝ち目の非常に少なそうな戦いに挑んでいくのだった。現地時間7日に行われた記者会見には、ジョーダン、フォックス、スティーブンソンの仕事上のパートナーを演じるブリー・ラーソン、デスティン・ダニエル・クレットン監督らに加え、スティーブンソン本人も登壇。ジョーダンは、彼が書いた原作本を読むまで、「恥ずかしながら、彼のことをよく知らなかった」と告白。しかし、人に勧められて本を読んだとたん、「これはどうしても映画にしたい。そうすることで、この重要なメッセージを伝えることにかかわりたい」と思い、積極的に実現に向けて猛プッシュしたのだと振り返る。一方でフォックスは、不条理な形で刑務所に入れられることは、悲しいことに、普通に生活している黒人にも当たり前に起こることなのだと語った。この映画はまさにそれを語るものだが、彼は、今作は黒人には受けても、白人からは嫌われるかもしれないと思っていたようだ。だが、一般人を入れたテスト上映では、黒人の評価が100点中97点だったのに対し、白人は98点と聞き、驚いたと彼は明かした。最近“#BlackLivesMatter”運動が起こったことが示すように、その問題は今も続いている。「この映画は、そういった人たちがただの数字、データなのではなく、人間なのだということを、このすばらしい俳優たちの演技を通じて伝えるものなんだ」と、スティーブンソンは述べた。アメリカでは、年末にオスカー資格を得るための限定公開があり、年明けに本格公開となる予定。その後には、12月末に日本公開も決まっている。取材・文=猿渡由紀
2019年09月09日トロント映画祭2日目、観客を本当に泣かせる映画が、早くも上映された。ダコタ・ジョンソン、ケイシー・アフレック、ジェイソン・シーゲルが主演する『The Friend』だ。原作は、米『Esquire』誌に掲載された記事。執筆者マシュー・ティーグの妻ニコールがガンで亡くなる時、ふたりの長年の友人であるデインは、彼らの家に住み込み、最後まで献身的に家族のために尽くしてくれた。当初は2週間程度のつもりで仕事を休んできたのだが、それが無期限になるうちに、彼は恋人から捨てられることにもなる。デインが、良い歳になってもバイトの延長のような職にしか就いていないこともあり、本当の事情を知らない仲間には、単にタダで住めるから住み込んでいるのかとバカにする人もいた。だが、ティーグ一家は、デインなくしてあの悲劇を乗り越えられなかったのだ。だから、マシューは、すべてが終わった時、妻よりも友達に焦点を当てた記事を書いたのである。デイン役にコメディで知られてきたシーゲルをキャスティングしたのは、今作の最高の勝因だろう。彼が放つ良い人のオーラとユーモアが、重くなりがちなテーマに明るいニュアンスをプラスし、アフレック演じるマシューとの友情に信憑性をも与えるのだ。アダルト向け恋愛映画『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』で知名度を上げたジョンソンにとっても、これは本当の演技力の見せどころ。公式上映後の舞台挨拶でジョンソンは、「この映画からは、これまでにないほど大きなことを学ばせてもらいました」と、今作の後は、自分が他人にいかに多くのことをしてあげられるのかを意識して生きるようになったと語っている。また、舞台にはマシュー本人も登壇し、ニコールとの間に持つふたりの娘のことは「元気にしています」と述べた。娘たちは、完成前に映像を多少見せてもらってもいるそう。映画でマシューを演じたアフレックは、出席しなかった。『The Friend』は、日本でも公開が決まっている。取材・文=猿渡由紀
2019年09月09日トロント映画祭初日、シャイア・ラブーフの自伝的映画『Honey Boy』が、メディアと業界関係者に向けて上映された。今作はラブーフが12歳だった頃に焦点を当てたもの。ラブーフは、自ら脚本を書き下ろしたほか、父親役で出演もしている。タイトルの“honey boy”は、父が彼に向かって時々使った呼び名だ。映画は、20代の俳優オーティスが、カウンセラーの指導で過去を見つめ直す形で展開する。彼の問題行動の根本にあるのは、子供時代に受けた父親からの虐待だ。両親が破局した後、オーティスは父親に引き取られ、安モーテルで生活をしていた。生活費を稼ぐのは子役として活躍するオーティス。父は、彼にタバコやマリファナを教えることはするが、どこかに連れて行ってくれることもなく、まともな愛情表現すらしてくれない。父もまた、不幸な子供時代を送り、それを引きずっているのである。大人になってからのオーティスを演じるのは、今最も注目の若手俳優ルーカス・ヘッジズ。子供時代を演じるのは、『クワイエット・プレイス』『ワンダー 君は太陽』のノア・ジュプだ。子役としてキャリアを積み、スピルバーグに見出されて『トランスフォーマー』などに主演したラブーフは、その頃から、自分がこの道に入ったのは「家が本当に貧しく、家計を支えるためだった」と語っていた。その後もオリバー・ストーンなど大物監督から演技力を評価されるものの、近年はプライベートでのトラブルが続出。警察沙汰になった中には、アルコール依存症と思われる事件もあった。そんな彼がすべてを吐き出したと思える今作は、見る人の心に直球で投げかけてくる。演技面ではもちろん、脚本家としても、彼のキャリアが新たなステップへと向かったことを確信させるものだ。この映画祭における今作の公式上映は10日(火)。アメリカでの劇場公開は11月で、日本公開も決まっている。取材・文=猿渡由紀
2019年09月06日トロント国際映画祭が、現地時間9月5日に開幕する。オスカー予測の上でも重要な役割を果たすこの映画祭は、今回もまた期待作が目白押し。ハリウッドスターが集まることでも有名で、今年もニコール・キッドマン、ジェニファー・ロペス、マイケル・B・ジョーダン、ダニエル・ラドクリフ、クリスチャン・ベール、マット・デイモンなどがレッドカーペットを歩く予定だ。オープニング作品は音楽ドキュメンタリー『Once Were Brothers: Robbie Robertson and The Band』。クロージング作品はロザムンド・パイク主演の『Radioactive』。この映画祭で世界プレミアを果たすのは、先に述べたオープニング、クロージング作品のほかに、タイカ・ワイティティ監督、スカーレット・ヨハンソン出演の『Jojo Rabbit』、トムハンクス主演の『A Beautiful Day in the Neighborhood』、ライアン・ジョンソン監督、ダニエル・クレイグ主演の『Knives Out』、マイケル・B・ジョーダンとジェイミー・フォックスが共演する『Just Mercy』、ブロードウェイ劇の映画化で、ケリー・ワシントンが再び主演する『American Son』などがある。ひと足先にヴェネチア、テリュライドでプレミアされた作品では、是枝裕和監督が初めてフランス語と英語で撮影した『真実』、ホアキン・フェニックス主演の『ジョーカー』、レネ・ゼルウェガーがジュディ・ガーランドを演じる『Judy』、エディ・レッドメインとフェリシティ・ジョーンズ共演の『Abominable』など。さらに、それより早くカンヌで受賞したボン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』、ペドロ・アルモドバル監督の『Pain and Glory』なども上映される。トロントは、カンヌ、ヴェネチア、ベルリンと違い、審査員が話し合いで賞を決めるのではなく、一般観客の投票で決まるのが大きな特徴。つまりは、気取った小難しい作品よりも、ストレートに人々の心に響く作品が受賞するということ。昨年の受賞作も、『グリーンブック』だった。ご存知のとおり、この映画は、見事、オスカーも受賞している。その前にも、『スラムドッグ$ミリオネア』『英国王のスピーチ』『アメリカン・ビューティ』などがその道をたどった。今年もまたここから、次のオスカーが生まれるのだろうか?それを期待しつつ、これから映画祭レポートを書かせていただくことにする。受賞結果発表は、現地時間9月15日(日)。取材・文=猿渡由紀
2019年09月05日7月19日(金)より公開中の新海誠監督最新作『天気の子』が、第44回トロント国際映画祭のスペシャル・プレゼンテーション部門に出品決定した。前作『君の名は。』は社会現象を巻き起こし、いま最も世界から注目を集めるアニメーション監督・新海誠。そんな新海監督の『君の名は。』から3年ぶりとなる新作『天気の子』は、天候の調和が狂っていく時代に、運命に翻弄される少年と少女が自らの生き方を「選択」する物語を描いている。公開前から140の国と地域での配給が決定するなど、世界中から大きな注目を集める本作は、日本では初日からわずか3日間で興行収入16億を突破し、『君の名は。』(興収250.3億円)対比で128.6%を記録と好スタートを切った。そんな中、ついに本作が世界へ!出品が決定したトロント国際映画祭は、ベルリン国際映画祭、カンヌ国際映画祭に次ぐ規模の来場者数32万人を集める、北米最大の映画祭。米アカデミー賞の前哨戦として広く知られ、近年では最高賞となる観客賞を受賞した『ラ・ラ・ランド』『グリーンブック』などが米アカデミー賞を受賞している。今回『天気の子』が選出されたのは、昨年『万引き家族』も出品された、世界を代表する映画作家の作品を集めた「スペシャル・プレゼンテーション部門」。最高賞・観客賞の選考対象だ。なお、これまで北野武監督の『座頭市』が観客賞を受賞しているが、本映画祭にアニメーション作品が選出されるのは稀。邦画としてはジブリ作品以来。日本では好成績でスタートしたこともあり、世界中の期待がさらに高まったようだ。『天気の子』は全国東宝系にて公開中。「第44回トロント国際映画祭」は9月5日(木)~9月15日(日)開催。(cinemacafe.net)■関連作品:天気の子 2019年7月19日より全国東宝系にて公開(C)2019「天気の子」製作委員会
2019年07月24日トロント映画祭のオープニング作品が発表された。音楽ドキュメンタリーで、タイトルは『Once We Were Brothers: Robbie Robertson and The Band』だ。本作は、カナダのミュージシャン、ロビー・ロバートソンが2016年に出版したメモワールからインスピレーションを得て制作されたもの。カナダのドキュメンタリーが、この映画祭のオープニング作品に選ばれるのは初めてのことだ。ロバートソンは『レイジング・ブル』をはじめ、マーティン・スコセッシ映画の音楽監督を務めてもいることから、スコセッシもこの映画のエグゼクティブ・プロデューサーに名を連ねている。今作は、カナダではストリーミング配信される予定。昨年のオープニング作品『アウトロー・キング~スコットランドの英雄~』も、Netflixで配信される作品だった。今年のトロント映画祭は9月5日(木)から15日(日)まで。文=猿渡由紀
2019年07月19日空腹感がなく太りにくい体質に変えるメソッドカナダ・トロントの減量専門機関で行われているダイエット法などを掲載している新刊『トロント最高の医師が教える 世界最新の太らないカラダ』が発売された。同書に掲載されているメソッドにより、空腹感がなく太りにくい体質へと変えることができるという。著者は医学博士のジェイソン・ファン氏で、新刊は四六判並製、本文463ページ、1,600円(税別)の価格でサンマーク出版が発売している。減量専門機関の「間欠的ファスティング」1973年に生まれたジェイソン・ファン氏はトロントで育ち、トロント大学医学部を卒業。アメリカ・カリフォルニア大学ロサンゼルス校では腎臓専門医として研修している。その後、糖尿病で独自の治療法を開発。減量と糖尿病のためにファスティングを臨床の現場に取り入れている。同書は肥満大国アメリカで大ベストセラーとなり、米Amazonでも好評価のレビューが並び、世界中の医療関係者が絶賛。日本でも日本語版の出版を医師たちが待望していたという。同書によると、減量において最も重要なのは食事の量やその内容ではなく、食事の回数だという。ファン氏は食事の回数が少ない人のほうがやせやすいとしており、新刊ではトロントの減量専門機関で行われている「間欠的ファスティング」などが公開されている。(画像はAmazon.co.jpより)【参考】※トロント最高の医師が教える 世界最新の太らないカラダ - サンマーク出版
2019年01月12日“歌姫”レディー・ガガが映画初主演を務めた『アリー/ スター誕生』。ブラッドリー・クーパーが初監督したことでも話題の本作が、この度トロント国際映画祭2018の「ガラプレゼンテーション部門」に出品され、2人も参加。質疑応答ではスタンディングオベーションが巻き起こり、終始熱い熱気に包まれていた。初お披露目となった「第75回ヴェネチア国際映画祭」に続く今回の「トロント国際映画祭」では、試写会場前に敷かれたレッドカーペットには、ヴェネチアを超える約3,000人ものマスコミ陣とファンたちが集結し、同映画祭史上空前の盛り上がりに。ヴェネチアでは、淡いピンクのファードレス姿で登場した主演のガガだが、今回は黒いベールに黒のロングドレスとシックな衣装で登場。監督・主演のブラッドリーと共に会場に現れると、あふれんばかりの大歓声と一斉にフラッシュが焚かれた。また、2人は向けられたカメラに向かってポージングをしつつも、しっかりと手を握り、劇中のアリーとジャクソンのように仲睦まじい雰囲気。集まったファンひとりひとり丁寧にファンサービスも行っていた。続いて、上映前の舞台挨拶に登場したガガとブラッドリー。まず、ブラッドリーが「この作品で僕の人生は大きく変わったんだ。彼女(ガガ)のおかげだと思っているよ。とてつもなく高い山を登るなら、パートナーがいてくれた方がいい。彼女はまさに僕にとってのベストパートナーだった」と言うと、ガガは「100人いるうちの99人が信じてくれない中、1人だけが自分を信じてくれることがある。今回のブラッドリーがまさにそうだったの。彼の最初の監督作品に主演女優として出演できたことに心から感謝しているわ」とそれぞれお互いの存在の大きさを語っていた。試写後に行われたQ&Aでは、ガガとブラッドリーを含めたキャスト・スタッフが集結。会場からは割れんばかりの拍手と称賛が惜しみなく贈られ、中には感動の涙が止まらない観客も。質疑応答の中で、ガガは「最初にデュエットしたときから、ブラッドリーは優れたシンガーだとわかったわ」と言い、その理由を「彼は魂から歌うの。すぐに分かった。彼と一緒に歌うのは、私にとって最高の時間よ」とふり返る。一方、ブラッドリーは 「初めて出会った時、この作品で、彼女は彼女がなりたかったような女優になり、僕は僕のなりたかったような監督になる、と誓ったんだ」と明かし、また「僕にとってこれまでで最高の経験だったので、また誰かがお金を出してくれるなら、ぜひやりたいですね(笑)」と早くもガガとの再タッグを願っていた。『アリー/ スター誕生』は12月21日(金)より全国にて公開。(cinemacafe.net)■関連作品:アリー/ スター誕生 2018年12月21日より全国にて公開© 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
2018年09月11日カナダ経済の中心地でカナダ最大の都市・トロントは、住民の半数以上がカナダ以外にルーツを持つという真の国際都市。トロントはトロント国際映画祭が開かれる映画の街としても知られていますが、世界有数のアートな都市としても有名。この時期は特に個性的な展覧会が目白押し!トロントのおすすめアートスポットをご紹介します。世界的アーティスト、バンクシー(BANKSY)のエキシビションが開催中!このためだけにトロントを訪れてもいい!と思ったのが、バンクシーのアートエキシビション『THEARTOFBANKSY』がです。工業ビルを改装した大きな建物の中に、バンクシーの作品80点以上が展示されています。とても広い会場に作品がぎっしり覆面アーティストとして活動し、神出鬼没なバンクシーの作品をまとめて見られることはかなり稀。展覧会に出品されている作品は、ロンドンやロサンゼルスのセミナーに作品や、世界中のアートコレクターからこの展示のために集められたものです。同じモチーフの作品を、さまざまなアプローチから見ることができる風船の女の子や、花束を投げる兵士、ミュージシャンたちとのコラボ作品など、さまざまな作品が展示されています。会場もとても広く、作品を見て回るだけでも2~3時間かかりました。バンクシーを代表する作品も多数この展覧会の企画を立てたのはバンクシー本人ではなく、バンクシーの元マネージャーのスティーブ・ブライデス氏。そしてなんと6月10日には、今回の展示作品の中の1作品が盗難被害にあったとして国際的なニュースにもなりました。何かと波乱含みですが、バンクシーの作品を一度にこれだけ見られる機会は、またとないチャンス!ぜひ訪れておきたいスポットです。【THEARTOFBANKSY】●住所:213SterlingRd,Toronto●電話:+1-855-323-7878●開場時間:日~水11:00~19:00、木~土11:00~20:00●休館日:なし●入館料:35CA$/大人、32.5CA$/シニア・学生、無料/5歳までTHE ART OF BANKSYマノロ・ブラニクの特別展も!世界の靴が大集合女心をつかんで離さないミュージアムが、1万点以上の靴が展示されている世界最大規模の靴の博物館〔バーター靴博物館(BataShoeMuseum)〕です。《バーター(Bata)》とは世界的に有名な靴メーカーで、バーターの社長夫人で靴のコレクターだったソニア・バータさんの膨大な靴コレクションをもとに1995年に〔バーター靴博物館〕を設立しました。紀元前数千年前に発見されたエジプトの靴から、中国の纏足文化時代の靴、日本の祭事に使われる靴など、学術的・文化的にも貴重な靴から、ハリウッドセレブやバスケのスーパースターのバスケットシューズまでもりだくさん。館内には膨大な量の靴があるのですが、ソニアさんの靴への愛着が伝わってくるような展示方法で、見ていてまったく飽きません。歴史的にも貴重な靴から現代ファッションとしての靴までずらりさらに、2019年1月6日までは、女性憧れのシューズブランド《マノロ・ブラニク》の企画展『MANOLOBLAHNÍKTHEARTOFSHOES』が開催されています。《マノロ・ブラニク》の美しい靴はもちろん、スケッチワークや実際に靴を作る工程が分かる木型の展示、本人のインタビュー映像などを見ることができます。アート級のお値段がする靴ですが、実際にその工程を目にすると、たしかに高いのは納得……といった感じ。マノロ・ブラニクのアートのような美しいスケッチや、気が遠くなるような職人の工程を知ることができる昔のハリウッド女優の靴の横に置いてあったとしても通用するような存在感。乙女な世界にどっぷりつかれること間違いありません。【BataShoeMuseum】●住所:327BloorStreetWest,Toronto●電話:+1-416-979-7799●開場時間:日~水・土10:00~18:00、金10:00~21:30、日12:00~17:00●休館日:なし●入館料:14CA$/大人、12CA$/シニア、8CA$/学生、5CA$/子ども(5~17歳)、無料/4歳までBata Shoe Museum併設カフェやレストランも人気!器の世界にうっとりテーブルセッティングが楽しくて仕方ない。そんな人におすすめなのが、15~19世紀のヨーロッパの陶磁器を集めた〔ガーディナー陶磁器美術館(GardinerMuseum)〕です。カナダのスターシェフ、ジェイミー・ケネディ氏がプロデュースしてたカフェが併設され、されていることでも有名。今年8月には美術館併設の《クレイ(CLAY)》レストランがリニューアルオープン予定ということで、工事の真っ最中でした。館内にはイタリアのマジョルカ陶器やドイツの《マイセン》など、陶磁器マニアにはたまらない貴重な品が展示されています。年代別に少しずつ変化していく食器の変遷がわかっておもしろい個人的に一番のツボだったのが、モンキーオーケストラ。かなりリアル地下の教室では、ワークショップのプログラムも多数用意されているので、時間があれば参加するのも楽しそうです。【ガーディナー陶磁器美術館】●住所:111Queen’sPark,Toronto●電話:+1-416-586-8080●開場時間:月~木10:00~18:00、金10:00~21:00、土・日10~17:00●休館日:なし●入館料:15CA$/大人、11CA$/シニア、9CA$/学生、無料/子どもガーディナー陶磁器美術館美しい布の世界を堪能したい!13000点以上のコレクションを誇る〔テキスタイルミュージアム(大オブカナダ(TextileMuseumofCanada)〕は、布や衣服を通して私たちにさまざまななことを考えさせてくれる美術館ですカナダへ移民してきた人たちの文化を布からたどる展示テーマごとに展示されているコレクションは、見る側へのアプローチ方法もユニーク。楽しみながら布について学ぶことができます。展示品の周りには、それぞれが感じたキャプションを書いていきますみんなで完成させようという作品もアートなテキスタイル作品コーナーもギフトコーナーも充実していました当時の手仕事を感じる貴重な布や、現代アートとしてのテキスタイルなど、さまざまな布の魅力に出会うことができる場所です。ウェブサイトでは、過去の展覧会の詳細が確認できるので、まずはチェックしてみて。【TextileMuseumofCanada】●住所:55CentreAvenue,Toronto●電話:+1-416-599-5321●開館時間:平日11:00~17:00、水11:00~20:00●休館日:なし●入館料:15CA$/大人、10CA$/シニア、6CA$/学生Textile Museum of Canada街並みのアート散策も楽しいトロントの街中アートのランドマーク的な存在が、《セントローレンスマーケット(St.LawrenceMarket)》から徒歩5分ほどの場所に建つ《グッダーハムビルディング(GooderhamBuilding)》、通称《フラットアイアンビル》です。上から見ると細長い三角形をしている特徴的なビルビルの後ろ側に描かれたイラスト。中には本物の窓も!ビルの後ろには、本物の窓に混じってトリックアートが描かれています。そして、このビルのすぐ隣にある《バークジーパーク(BerczyPark)》に今年誕生して話題をさらっているのが、黄金の骨が輝く犬の噴水です。ワンちゃん大集合。子どもから大人まで大人気の噴水たくさんのワンちゃんたちが、骨を見上げている姿がかわいい!中には猫も1匹まじっているので、探してみてくださいね。食べ歩きやお土産物探しが楽しめる〔セントローレンスマーケット〕〔セントローレンスマーケット〕は、昔からトロント市民の台所として愛されている市営の市場。イートインスペースもたくさんあり、メープルシロップなどのお土産もたくさんあって、おすすめのスポットです!カナダへは、デルタ航空のデトロイト経由で乗り継いできたのですが、デトロイト空港内のトンネルが、かなりアートで楽しめました。音楽とライトアップで楽しませてくれるデトロイト・メトロポリタン空港内のトンネル【取材協力】●デルタ航空●オンタリオ州観光局デルタ航空オンタリオ州観光局●写真・文美濃羽佐智子
2018年08月25日《Happy Birthda Yuzu》 カナダのトロント郊外のバス停に、突如としてそんな文字が綴られたポスターが貼り出された。祝福の言葉とともに写っているのは、衣装をまとった羽生結弦(23)だ。 11月9日、NHK杯の練習中に“右足関節外側靱帯”を負傷。現在は練習拠点でもあるトロントでリハビリに専念している羽生。12月7日に23歳の誕生日を迎えた彼を待ち受けていたのが、トロントの人々によるこの“粋なサプライズ”ポスターだった。 「カナダの人たちも応援してくれていますからね。もちろん、けがのこともわかっていて、激励の意味もあったんだと思います」(現地関係者) ポスターを見た羽生は「すごい……」と声を挙げたそう。また、リンクでも羽生は仲間たちに祝福されていた。 「コーチやスタッフのみんなが集まって、サプライズで羽生をお祝いしていました。用意されたケーキのプレートには、シンプルに『ハッピーバースデー』とだけ書かれていました。『五輪』や『金メダル』などの文字を入れて、リハビリ中の彼のプレッシャーにならないよう気遣ったそうです」(スケート関係者) というのも、この日は羽生の誕生日であると同時にGPファイナルの開幕日。毎年、羽生はライバルたちに囲まれながら誕生日を迎えてきた。だが、今年はリハビリの中で迎えることに――。 7年ぶりにテレビで観戦することになったGPファイナルの悔しさ。そして、サプライズづくしの誕生日で感じた周囲の期待の大きさ。羽生はけがを乗り越え“完全復活”に挑む――。
2017年12月14日アカデミー賞作品賞に最も近い賞として近年注目されるトロント国際映画祭・観客賞を受賞した『スリー・ビルボード』(原題:Three Billboards Outside Ebbing, Missouri)が、2018年2月1日(木)より全国公開。このほど、スリリングなストーリー展開で話題を呼ぶ本作から、“嵐の前触れ”を予感させるポスターが解禁となった。本作は、『ファーゴ』(’96)でアカデミー賞主演女優賞を獲得した、ハリウッドが誇る演技派女優フランシス・マクドーマンドが主演するクライム・ドラマ。舞台はアメリカ、ミズーリ州の片田舎の町、7か月前に何者かに娘を殺された主婦のミルドレッドは、さびれた道路の3枚の広告看板にメッセージを出す。犯人は一向に捕まらず、何の進展もない捜査状況に腹を立て、警察署長にケンカを売ったのだ。署長を敬愛する部下や町の人々に脅されても、一歩も引かないミルドレッド。その日を境に、次々と不穏な事件が起こり始め、やがて思いもかけない、誰もが想像できないドラマが始まる――。ヴェネチア国際映画祭では脚本賞に輝き、トロント国際映画祭では観客賞を受賞した本作。トロントの観客賞といえば、オスカーに最も近い賞といわれ、近年は作品賞に『スラムドッグ$ミリオネア』『英国王のスピーチ』『それでも夜は明ける』、主演女優賞に『世界にひとつのプレイブック』『ルーム』『ラ・ラ・ランド』などが選ばれており、本作も本年度賞レースの大本命との呼び声も高い。主人公の主婦ミルドレッドを演じる名女優フランシスは、2度目のオスカーもささやかれており、警察署長にはアカデミー賞2度ノミネートを誇る『猿の惑星:聖戦記』のウディ・ハレルソン、彼の部下には『コンフェッション』でベルリン国際映画祭男優賞を受賞したサム・ロックウェルと実力派がずらり。『ゲット・アウト』のケイレブ・ランドリー・ジョーンズや『ジオストーム』の注目女優アビー・コーニッシュ、先の賞レースを沸かせた『マンチェスター・バイ・ザ・シー』のルーカス・ヘッジズ、「ゲーム・オブ・スローンズ」で“TV界のアカデミー賞”エミー賞を受賞したピーター・ディンクレイジなども名を連ねている。監督は、26歳で劇作家として衝撃のデビュー以来、世界の演劇界を震撼し続ける鬼才マーティン・マクドナー。映画界でも、デビュー作でいきなりアカデミー賞短編賞を獲得。長編3作目となる本作でついに映画界でも頂点を極めようとしている。『スリー・ビルボード』は2018年2月1日(木)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2017年11月08日沼田まほかるの同名人気ミステリー小説を、蒼井優&阿部サダヲのW主演で映画化した『彼女がその名を知らない鳥たち』。9月13日(現地時間)、現在カナダ・トロントにて開催中の第42回トロント国際映画祭にて、本作のワールド・プレミアが開催され、白石和彌監督が登壇した。アカデミー賞に向けた賞レースの始まりを告げる、北米最大規模の映画の祭典として名高い「トロント国際映画祭」。本作は、コンテンポラリー・ワールドシネマ部門(Contemporary World Cinema)という「世界的な視野と注目すべきストーリー性を持つ作品」をセレクションする部門に選出されている。本作の世界初お披露目の舞台となったワールド・プレミアには白石監督が登壇。注目の作品をいち早く観ようと集まった観客で埋めつくされた会場では、泣いている観客も多数みられた。万雷の拍手が鳴り響くなか、現地の観客から日本語で「この映画は凄い、オメデトウ」と声をかけられると、白石監督は「ありがとうございます。嬉しいです」と感無量の様子で挨拶した。Q&Aコーナーでは、多くの質問に1つ1つ丁寧に答えていた白石監督は、「個人的には特に(阿部さん演じる)陣治に感情移入をしました。陣治の愛の証明の仕方は誰にでもできるものではないし、心が張り裂けそうな気持ちになりました」とコメント。本作のテーマは「陣治の愛」かと問われると、「それもそうですし、大切なものは常に隣にある。日本の芸能スキャンダルはいま“不倫”が全盛時代を迎えていて、そのニュースが多い中で、真実の愛はフラフラっと来たいい男よりも、僕みたいなブサイクな男にあるんじゃないかと(笑)。それがひとつの大きなテーマです」とも語った。また、対する十和子役については「原作を最初に読んだときに蒼井さんが思い浮かびました。ほかの人にはオファーしておらず、蒼井優さんじゃなければ成立しなかったと思います」と告白し、「十和子の大事なシーンを撮っているときに、蒼井優さんに『どういう表情していいかわからない』と言われたんです。彼女の人生を想像したとき、『僕は凄い素敵だと思う、豊かな人生が待っているんじゃないかな』と、そう話したら、少しだけ泣きながらも、何とも言えないいい表情をしていた。素晴らしい女優です」とべた褒め。主演の蒼井さん、阿部さんの2人をそう絶賛しながらふり返る監督に、時間ギリギリまで質問が飛び交う大盛況ぶり。終了後には、会場の外で観客を出迎えた白石監督が「とても感動した!ありがとう!」とサイン攻め、握手攻めにあう光景も見られるなど、共感度0%、不快度100%の“まぎれもない愛の物語”が、トロントでセンセーションを巻き起こしていた。日本が誇る実力確かな豪華俳優陣の熱演と、『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』の白石監督が初めて挑んだ本格的な大人のラブストーリー。本映画祭の最高賞となる観客賞(People’s Choice Award)は、期間中に作品を観た一般の観客の投票によって決定するが、過去に観客賞に輝いたのは『ラ・ラ・ランド』『英国王のスピーチ』『スラムドッグ$ミリオネア』など、アカデミー賞作品賞をはじめ数々の賞を総ナメにし、日本でも大ヒットを記録した作品ばかり。邦画作品では北野武監督『座頭市』(’03)が同賞を受賞しており、邦画作品として14年ぶりの受賞の快挙となるか、今後の動向にも要注目。トロント国際映画祭は9月17日(現地時間)まで開催される。『彼女がその名を知らない鳥たち』は10月28日(土)より新宿バルト9ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:彼女がその名を知らない鳥たち 2017年10月、全国にて公開(C) 2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会
2017年09月14日10日(現地時間)、アンジェリーナ・ジョリーが長男マドックスくんを除く5人の子どもたちとトロント映画祭に出席した。アンジーがプロデュースしたアニメ映画『The Breadwinner』(原題)のプレミア上映とだけあって、アンジーは白の爽やかなドレス、女子の中では年長のザハラちゃん(12)も総レースの赤いワンピースでおめかし。パックスくん(13)、ノックスくん(9)、双子のシャイロくん(11)&ヴィヴィアンちゃん(9)はカジュアルな装いでレッドカーペットに登場した。「People」誌によると、アンジーたちは、『The Breadwinner』の監督ノラ・トゥーミー、主人公パルヴァナ役の声を担当したサアラ・チョウドリーと合流し、和やかムードで記念撮影。アンジーは集まっていたファンにサインしたり一緒にセルフィーを撮ったりとファンサービスにも気軽に応じたようだ。アンジーは製作に携わったこの作品だけでなく、11日には自身が監督した『最初に父が殺された(原題:First They Killed My Father)』のプレミア上映も控えている。同作はカンボジアの人権擁護活動家ルオン・ウンの回想録を映画化したもので、アンジーは製作と脚本にも名を連ねている。(Hiromi Kaku)
2017年09月11日パックスは写っていないが同行していた(写真:ロイター/アフロ) アンジェリーナ・ジョリーが現地時間10日、子連れで第42回トロント国際映画祭に登場し、輝くような笑顔を見せた。 ジョリーに伴ってレッドカーペットを歩いたのは、パックス(13)、ザハラ(12)、シャイロ(11)、ノックス&ヴィヴィアン(9)の5人。長男のマドックス(16)以外が一堂に会したことになる。 ジョリーはカナダ・アイルランド・ルクセンブルグ合作のアニメーション映画『The Breadwinner』のプロデューサーの一人として同作のプレミアに出席。タリバーンの支配下にあるアフガニスタンで、父を不当に逮捕された少女パルヴァナが家族を支えるために男装して奮闘する物語だ。 子どもたちと歩くジョリーは、いつになく柔和な表情を見せ、観客のサインにも快く応えていた。
2017年09月11日第41回トロント映画祭の受賞結果が発表された。その他の情報カンヌやヴェネツィアと違い、審査員ではなく観客が投票するトロントでは、観客賞が最高賞となる。この栄誉に輝いたのは、多くが予測したとおり、デイミアン・チャゼル監督の『La La Land』だった。現代のL.A.を舞台にしたミュージカルで、主演はエマ・ストーンとライアン・ゴズリング。ストーンは、今作で、ヴェネツィア映画祭の女優賞を受賞したばかり。この観客賞受賞で、オスカーに向けて、さらにはずみがついた。次点はガース・デイビスの『Lion』と、ミラ・ナーイルの『Queen of Katwe』。また、昨年始まった、審査員が決めるプラットフォーム賞には『Jackie』のパブロ・ラレイン監督が選ばれた。今作では、主演のナタリー・ポートマンにも絶賛が集まっており、アワードシーズンでの健闘が期待できそうだ。トロントで観客賞受賞から、オスカー作品賞につながった作品には、『アメリカン・ビューティ』『スラムドッグ$ミリオネア』『英国王のスピーチ』『それでも夜は明ける』などの例がある。昨年の受賞作『ルーム』は、受賞こそ逃したものの作品部門にノミネートされ、ブリー・ラーソンが主演女優賞を受賞している。『LA LA LAND(原題)』2017年2月 TOHOシネマズ みゆき座ほか全国ロードショー取材・文:猿渡由紀
2016年09月20日マーク・ウォルバーグ主演、ピーター・バーグ監督の『Deepwater Horizon』が、トロント映画祭でワールドプレミアを行った。その他の情報本作は、2010年のメキシコ湾原油流出事件を描く、実話物。原油が流出で起こった大爆発のため、海上で作業をしていた11人の従業員が命を失った。ウォルバーグが演じるマイク・ウィリアムズは、その悲劇を間近に体験した生存者。ウィリアムズ本人も、映画の製作に深くたずさわった。「彼に脚本を彼に見せて、『これは本当に起こった。これは、むしろこんなふうだ』というように、いろいろ指摘してもらったんだ。そうすることで、映画は事実に正確になる。人命が失われた実話を語るのは、いつだって、とても難しいことだよ。一方で、大きな充実感も伴う。その人たちに、敬意を払うことができるんだから」(ウォルバーグ)当時、事件は大きく報道されたが、主には環境汚染の側面が語られ、この11人の人々の話は、それほど聞かれなかった。「人が死んだのに、そこに一番の焦点が当たらなかったなんて、それもまた悲劇だよね」とウォルバーグ。だからこそ、この映画を作って彼らの話を伝えたかったのだと、バーグも認める。「製作にあたって、僕は11人全員の遺族に会い、僕がこれをどんな映画にしようとしているのかを説明した。これはあなたが誇りに思えるような映画になる、『私の夫はこんな人だったのよ』『これが僕の父なんだ』と、孫たちに見せられる映画になると、彼らに言ったんだよ。撮影現場に来たいという人がいれば来てもらったし、プライベートの試写を組んで、誰よりも先に完成作を見てもらうこともした」(バーグ)ウォルバーグとバーグは、やはり実話に基づく『ローン・サバイバー』でも組んでいる。今年末に北米公開されるボストンマラソン爆撃事件についての『Patriots Day』も、このコンビによるものだ。「ピーターと僕は、お互いから最高のものを引き出す。お互いに対して、とても多くを期待するし、言いたいことは遠慮せずに言える関係だ。僕は彼のすべてが好きだよ。彼がニューヨーク・ジャイアンツのファンということを除けばだけどね(笑)」日本公開は来年。『Deepwater Horizon(原題)』2017年公開取材・文:猿渡由紀
2016年09月20日大学進学以来、スクリーンからややご無沙汰しているダコタ・ファニングが、2作品を引っ提げてトロント映画祭を訪れた。ひとつは、ユアン・マグレガーが監督デビューを果たす『American Pastoral(原題)』。もうひとつは、マーティン・クールホーヴェン監督の『Brimstone(原題)』だ。その他の情報いずれも暗い役。とりわけ『Brimstone(原題)』は、女性に対する暴力を描く時代物のスリラーで、ダコタが演じるリズは、数々の信じられないような苦難をくぐり抜けていく。映画のはじめで彼女は、耳は聞こえるが口をきけない女性として登場。時間が逆戻りする形で話が展開する中、どうしてそうなったのかが次第にわかっていく。「『Brimstone』は、これまでに読んだどんな脚本とも違っていた。こういう役には、めったにめぐり会えないものよ。今作と『American…』は立て続けに撮影したの。『American…』にはずいぶん前から出演を約束していたけど、実現に時間がかかった。今作の方はすぐ実現して、これを半分撮影し、『American…』を撮ってすぐ残りの『Brimstone』を撮る、というスケジュールになったのよ。それでずいぶん長いこと、暗い役にどっぷり浸かることになった。それは平気。私は自分をプッシュしてくれるような作品が好きなの。そういう作品は、絶対ではないけれど、暗い作品であることが多いのよ」とダコタは話す。久々のレッドカーペットも、純粋に楽しんでいるという。「あれも女優の仕事の一部よ。ファッションは自分という人間を見せる手段。映画には、いつも本来の自分ではない姿で出るでしょう?だから、私は本当はこういう姿です、と見せる機会があるのは楽しいことよ」。すでに、その次の作品も撮り終えている。「学業と仕事の両立は、昔からやってきたこと。むしろ学校が終わってしまったら、時間ができすぎちゃって、どうすればいいかわからないかもね(笑)」。取材・文・写真:猿渡由紀
2016年09月16日デヴ・パテル、ニコール・キッドマンが出演する『ライオン(原題)』が、トロントで高い評価を集めている。実話に基づく感動のドラマで、オーストラリアのTVや短編を手掛けてきたガース・デイビスが監督を務める。トロント映画祭 その他のニュース物語の舞台は、インドとオーストラリア。インドの小さな村で、母、兄、妹と、貧しくも平和な毎日を送る5歳の少年サルーは、ある夜、なんとなく停車中の電車に乗り込む。彼が眠っている間に電車は動き出し、2日間も車内に閉じ込められた結果、はるか遠いカルカッタに到着。自分がどこから来たのかもきちんと説明できないサルーは、孤児たちのための施設に入れられるが、まもなく、タスマニアの夫妻に養子として迎えられることになった。血の繋がらない父母はたっぷりと愛情を注いでくれ、サルーは立派に成長。だが、大人になった彼は、故郷で自分を心配している母のことが気になり始め、なんとか探し出せないものかと試みるようになる。キッドマンが演じるのは、サルーを引き取って育てるスー・ブリエリー。記者会見で、キッドマンは「その子がどこから来たにしろ、愛に囲まれた環境で育ててあげるのが、何よりも大事。スーはそれをしてあげたの。私も養子を取った母。共感できる部分がたくさんあったわ。映画の中でも語られるけれど、スーは血のつながった子を産むことができたのに、養子を取る方を選んだの。そう聞くと驚く人も多いでしょうけれど、それが彼女の望んだことなのよ」と語った。大人になってからのサルーを演じるパテルは、無名だった8年前、『スラムドッグ$ミリオネア』でトロント映画祭を訪れている。作品は観客賞を受賞し、ついにはオスカーにも輝いた。「インドの幼い男の子、貧しい場所、という部分は『スラムドッグ…』と共通するけれど、この2作品は全然違う。『ライオン(原題)』は母と子の関係を描く物語。それに今作のサルーはオーストラリア人として育ち、インドに戻っても、現地の言葉をもう喋れなくなっている。とは言え、またトロント映画祭に戻ってこられたのは、とても素敵な気分だよ」(パテル)。北米公開は、オスカー狙いの有力作品が集中的に公開される11月下旬。『ライオン(原題)』2017年公開取材・文・写真:猿渡由紀
2016年09月14日エイミー・アダムス主演、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『メッセージ』(原題:Arrival)が、トロント映画祭で上映され、現地時間12日に記者会見が行われた。モントリオール出身のヴィルヌーヴは近年、トロント映画祭の常連だが、現在『ブレードランナー』をヨーロッパで撮影中のため、会見は欠席している。『メッセージ』/その他の情報『プリズナーズ』『ボーダーライン』のヴィルヌーヴにとって、本作は初めてのSF映画。エイリアンが地球のあらゆる場所に到来した時、米軍は、言語学者ルイーズ(アダムス)に、彼らの言葉を分析してくれないかと依頼する。彼女の仲間としてその困難なミッションに挑むのが、ジェレミー・レナー演じるイアン。ふたりは少しずつながらエイリアンとコミュニケーションをとれるようになるが、世界は彼女らの成功を待つほど辛抱強くなかった。物語の最後には驚くべきどんでん返しが待ち構えている。脚本を初めて読んだ時、アダムスはそんな展開をまったく想像していなかったと告白した。「まさかああいうことだとは思いもしなかったわ。それがわかるシーンを読んだ時、すごいショックを受けた。そして、わかった上で、また最初から読み直したのよ」(アダムス)。重大な使命を任されるものの、ルイーズはあくまで一般人。「軍隊や危機管理についてのリサーチはしましたかと取材で聞かれたりするけれど、必要なかったの」とアダムスは語る。「ドゥニと初めてミーティングを持った時、私たちはルイーズのキャラクターという一番大事な部分において、まったく同じ視点を持っていることが分かった。彼女はごく普通の人。エイリアンに会うなんて想像もしたことがないし、あんな服(一見、宇宙服のような体を守るスーツ)を着たこともない。すべてはそこをベースに築かれていくのよ」(アダムス)。アダムスとレナーは『アメリカン・ハッスル』でも共演した仲。今作では助演に徹するが、「ルイーズが経験することが本当に興味深いので、僕もこの物語を語る手助けをしたいと思ったのさ」と、レナーは出演を決めた理由を述べた。アダムスは、やはりこの映画祭で上映された『Nocturnal Animals』でも絶賛されている。オスカーキャンペーンはどちらに絞るのかと聞かれると「今、私にとって大事なキャンペーンは米大統領戦だけよ」と答え、場内を笑わせた。『メッセージ』2017年公開取材・文・写真:猿渡由紀
2016年09月13日俳優・渡辺謙らが、主演作『怒り』(9月17日公開)がカナダの第41回トロント国際映画祭でスペシャル・プレゼンテーション部門に出品されたことを受け現地時間10日、プレミア上映が行われた映画館・エルギンシアターに登壇した。同映画祭は、1976年より開催。世界最大級の映画市場である北米に欠かせない映画祭で、例年300本以上の作品が上映されており、ベルリン国際映画祭、カンヌ国際映画祭に次ぐ規模の来場者数32万人を集めている。渡辺、共演の女優・宮崎あおい、そしてメガホンを取った李相日監督の3人は、上映に先駆けトロントのシンボル・CNタワーが一望できる名所・センターアイランドを訪問。映画祭を前に渡辺は、「マーケットに対しての影響力が一番大きな映画祭だと聞いていたので、賞をとるということではなく、世界中からこの地に集まる映画人に『怒り』を見ていただく。そういう意味では非常に価値ある映画祭」とコメント。上映についても「日本の方が見ても非常に簡単に答えが見つかるような映画ではないので、外国の方がどうのように受け止めてくださるのかとても興味深い」と期待を膨らませていた。また、トロントへ留学経験もある宮崎は「家と学校の往復のみでほとんど観光をしたことがなかった」と回顧。前日に、李監督と夜の街を歩いた際、「人がたくさんいて活気のある街」と実感したようで「思い入れのあるトロントに映画祭で戻ってこれて、すごくぜいたくでうれしい気持ち」と喜びを口にした。上映前のカーペットアライバルには、10代からシニア層まで観客約500人が集結。大きな声援に包まれた渡辺と宮崎は、サインや写真に応じた。18時から行われた上映には映画祭最大級の劇場を埋め尽くす1400人の観客が来場。場内満席となった中、上映前の舞台に登壇した3人はそれぞれ流ちょうな英語であいさつした。ラストシーンで響いたのは、観客の感嘆とすすり泣く声。上映後は、約10分にわたり観客総立ちで拍手が続いた。それを受けた渡辺の目には、うっすら涙が。宮崎と李監督も興奮した観客の余韻に浸っていた。映画祭を終え、渡辺は「一緒に上映を見ていて、お客さまがすごく素直に笑えるところは笑って、楽しんでもらえているな、と感じました」と歓喜。自身は2回目の鑑賞で、疲れもあったと笑いながら、「1回目に見たときよりも、ものすごい温かいものを感じた」と感慨を話す。加えて、「終わってからしゃべるのって難しい」としながら、「ただ泣けるとかではなく、本当に心の芯をつかまれているそんな作品だと思います。最後には心から温かい拍手を受け取りました」と満足気に語った。本作は、『悪人』(10年)の原作・吉田修一氏と李監督が再タッグ。吉田氏の同名小説を原作として、SNSやスマートフォンなどの発達により、簡単に他人を疑ってしまう不信の時代に「"信じる"とは?」という根源的な問いを、一つの殺人事件をきっかけに投げかける。(C)2016 映画「怒り」製作委員会
2016年09月12日「第41回トロント国際映画祭」スペシャル・プレゼンテーション部門に出品されている映画『怒り』が、9月10日(現地時間)にプレミア上映を行い、本作で父娘を演じた渡辺謙と宮崎あおい、そして李相日監督が登壇した。2010年、原作・吉田修一×李監督で挑んだ映画『悪人』の大ヒットチームが再集結し、新たに挑戦する意欲作『怒り』。本作は、八王子で発生した陰惨な殺人事件。被害者のものと思われる血で書かれた「怒」の一文字と、逃亡を続ける犯人。1年が経過しても犯人の有力情報は得られぬまま、事件から生まれた疑いが日本中に広まり、人々の“信じたい”気持ちに歪みを与えていく。前歴不詳の3人の男と出会い距離が縮まる3組の登場人物たちは、信じたはずが一度生じた疑いから逃れられず“信じる”“疑う”と対極の感情の間で揺れる。行き着く先は救いか破滅か。そして信じた先の“怒り”は凶行を生み思わぬ形で殺人事件を解き明かしていく――。この日の公式上映にあわせて、主演の渡辺さんらは現地入りし、上映に先駆けてトロント市のシンボルであるCNタワーが一望出来るトロント市の名所“センターアイランド”を訪問。トロントの印象について渡辺さんは、「アメリカのパブリシストとよく話をするとき、行くならトロント映画祭だと。マーケットに対しての影響力が一番大きな映画祭だと聞いていたので、賞を獲るということではなく、世界中からこの地に集まる映画人に『怒り』を観ていただく。そういう意味では非常に価値のある映画祭だと思います」とコメント。過去にトロントへ留学経験がある宮崎さんは「家と学校の往復のみでほとんど観光をしたことがなかったんです。昨日監督と夜の街をフラフラ歩いたのですが、人がたくさんいて活気のある街だなと感じました。思い入れのあるトロントに映画祭で戻ってこれて、すごく贅沢で嬉しい気持ちです」と印象を語った。そして、センターアイランドを訪れた後3人は、TIFF Bell Lightboxで行われた公式会見に参加。李監督作品に出演することに対して渡辺さんは「李監督は日本映画業界の宝物。一緒に仕事を出来たことを誇りに思っています」。李監督は本作の“信じる”というテーマについて聞かれると「この作品は、日本の社会の隅にいる人たちの物語ですが、同じようなことがたぶん世界でも起きていると思います。我々は知らない人たち、改めて知り合う新しい人たちをどれだけ信頼できるか、信頼することがいかに難しいか、信頼することによって失うこと、疑うことによって、失うことがどれだけあるのかは、いままさに世界で同じように起きていることだと認識しています」と話した。その後、ついにプレミア上映が開催。会場となったのは、1913年に建てられた歴史ある映画館「エルギンシアター」。上映前のカーペットアライバルには、10代からシニア層まで約500人もの観客が劇場前に詰めかけた。そして上映には映画祭最大級のキャパシティを誇る劇場を埋め尽くす1,400人もの観客が来場し、場内満席の大盛況の中上映前の舞台に登壇した渡辺さん、宮崎さん、李監督はそれぞれ流暢な英語で挨拶。また、上映中ラストシーンでは感嘆の声とすすり泣く声も聞こえ、本編上映後は約10分に渡って観客総立ちの拍手喝采となっていた。映画祭終了後は「一緒に上映を観ていて、お客様がすごく素直に笑えるところは笑って、楽しんでもらえているな、と感じました。今回自分は2回目の鑑賞なので、疲れました(笑)。1回目に観たときよりも、ものすごい温かいものを感じたんです。この監督は本当にやさしい人なんだ、温かいものを届けたい人なんだ、とすごく感じました」(渡辺さん)、「今回私は本作を観るのが2回目だったのですが、やっぱり前回とは違うところで感情を動かされました。謙さんとご一緒に取材をさせていただく中で、お父ちゃんがどんな気持ちで私(愛子)を見ていたのかを聞いたりして、それを聞いているせいか、お父ちゃんの気持ちになってしまって、こんなに自分のことを思ってくれているのに、その気持ちにものすごく心が打たれて、お父ちゃんの顔にぐっときてしまいました」(宮崎さん)と語った。『怒り』は9月17日(土)より全国東宝系にて公開。(cinemacafe.net)
2016年09月12日