人気乙女ゲームを原作にした舞台「OZMAFIA!! sink into oblivion」が、2017年の初演からキャストを一新して上演される。主演の神永圭佑と、谷佳樹、遊馬晃祐に話を聞いた。【チケット情報はこちら】本作は、記憶を失った少女・フーカと、「オズの魔法使い」や「赤ずきん」など名作童話をモチーフにしたさまざまなキャラクターが出会い、物語を展開していくゲームの舞台化。脚本は小日波著書、演出は伊勢直弘が手掛ける。初演からキャストを一新しての上演となる今作。主演を務める神永は「個人的に初演キャストに知り合いが多いので、彼らの気持ちを継いで真ん中に立つと思うと、より“しっかりやらないと”という気持ちになりました」と明かす。それを聞いた谷が「そんな神永くんを後ろから支えられる存在でいたいです。今回は若いキャストも多いので、30代の僕は嫌われ役になってもいいかも。はっちゃけすぎたときに止められたらなって」と語ると、遊馬は「僕は谷さんに止めてもらうタイプかもしれない!(笑)役の関係性的にもおふたりとお芝居することが多いと思うし、いい関係を築いていきたいです」と、初対面ながらいい雰囲気。神永は、マフィア「オズファミリー」のボス・カラミアを、谷は相談役・キリエを、遊馬は幹部・アクセルを演じる。神永は「カラミアは大らかで、おっちょこちょいで、常に笑っているような人物。でもオズファミリーのボスなんです。そこに何かがあると思うので、研究していきたいです」、谷は「キリエはとにかく喋るし口が悪い人。そういう人がどうして“相談役”なのかが大事なのかなと思っています。今回は“ファミリー”というくらいだから、関係性を大切に演じたいですね」、遊馬は「アクセルはツンデレで、なにか気持ちはあっても抑えてしまうタイプなんだと思います。僕とはなにかと真逆な人なので、稽古場でしっかりと役を深めていきたいです」とそれぞれ語る。乙女ゲームをやるにあたり「フーカと僕らのやりとりを見て『私もこうされたい』と思ってもらえたら、原作の魅力に近づくのかなと思っています」と神永。演出について谷は「僕、伊勢さんとは今年だけで4本目なのですが(笑)、伊勢さんの稽古は早いし短い。最初は驚くのですが、だからこそすごくいいものができあがる」とふたりに伝授する。遊馬は「僕はデビューから2.5次元作品だけをやってきて、前作、前々作で初めてオリジナル作品をやらせてもらいました。コテンパンになりながらいろんなことを学んだので、今回はより魅力的なキャラクターを作りたいです」と意気込む。そんな3人が出演する本作は10 月23 日(水)から27 日(日)まで東京・こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロにて上演。取材・文:中川實穗
2019年09月20日2006年に公開された映画『フラガール』を原作にした舞台『フラガール - dance for smile -』が10月から11月にかけて上演される。総合演出は河毛俊作、構成演出は岡村俊一が手掛ける本作で、主演を務める井上小百合(乃木坂46)に話を聞いた。【チケット情報はこちら】本作について井上は「母と一緒に映画館に観に行ったのを覚えています。当時も『おもしろかったね』と話した記憶があるのですが、今改めて観ると、あのときとは違う感想を持ちました」と語る。作品の舞台は昭和40 年の福島県いわき市。かつて栄えた炭鉱の町がエネルギーの石油化で滅んでいく中で、町おこしのために常磐ハワイアンセンターの設立が計画される。建設への反対や、当時は馴染みのないフラダンスへの偏見を浴びながらも、少女たちが必死にフラガールへと生まれ変わっていく物語だ。「すごく深い話だったんだと思いました。描かれているのは女性が社会進出する姿で、登場人物たちは女性ならではの強さや美しさや明るさで、いろいろな壁を突破していく。作品の舞台は昭和40年ですが、私は今もまだ女性の社会的な立場は男性と同じでないように思います。だからこそすごいエネルギーを届けられる作品になるはず。男女問わずいろんな人に観てほしいです」作品の肝と言えるのが、クライマックスのフラダンス。井上も「あのシーンがあってこその作品だと思う。本格的なフラダンスは初めてですが、舞台は全てが見えるしごまかしがきかないので、一生懸命頑張りたいです」と意気込む。自身が演じるフラガールのリーダー・谷川紀美子については「どこにでもいそうな素朴な子。そういう子が最後にすごいダンスを見せることがドラマチック」と印象を語り、役は「自分に合ってると思います。田舎育ちですし、素朴だねってよく言われるんですけど、やると決めたことは最後まで突き通すタイプなので」と話した。舞台での活躍も目覚ましく、演じることが好きだという井上。「私は自分を出すのも、自分のことを知られるのも得意じゃなくて。だから舞台上にいるときのほうがいろんなことを表現できるんです。もともとお芝居を観るのが大好きで、元気や勇気やいろんなエネルギーをもらっていました。その舞台に立つ側になったとき、自分も誰かに何かを与えられていると思う。そこが原動力にもなっています」。井上が「この令和の時代に生きる人たちがこの作品を観て、どんなことを考えるのかが私は楽しみ」という舞台『フラガール - dance for smile -』は、10月18日(金)から27日(日)まで東京・日本青年館ホール、11月2日(土)から4日(月・祝)まで大阪・サンケイホールブリーゼにて上演。チケットぴあでは9月19日より先行先着を実施。一般発売は9月21日(土)より。取材・文:中川實穗
2019年09月19日ホイットニー・ヒューストンとケビン・コスナー主演の大ヒット映画を舞台化したミュージカル『ボディガード』来日公演が東京・東急シアターオーブにて初日を迎えた。公演を前に主要キャストと来春開幕の『ボディガード』日本版キャストらが劇場のレッドカーペットに登場。華やかなドレス姿で来場客を沸かせた。【チケット情報はこちら】まず来日版の主役3名、レイチェル役(Wキャスト)のアレクサンドラ・バークとジェンリー・シャロー、フランク(ボディガード)役ブノワ・マレシャルに加え、オフィシャルサポーターのLiLiCoがボディガードに守られながら登場。レイチェル役のふたりは「お客様が一緒に立ち上がって楽しんでくださるのを楽しみにしています」(アレクサンドラ)、「ホイットニーというレジェンドの音楽を披露できることに感謝しています」(ジェンリー)と喜びを抑えきれない様子。ブノワは「1年ほど一緒にやってきたカンパニーなので、最高のものをお見せしたい」とダンディーな笑顔を見せ、「ハジメマシテ」と覚えたての日本語を披露。LiLiCoは「映画はみなさんよくご存知だと思いますが、あのシーンをこう見せるんだ、というのが一番の驚き。そしてホイットニーの歌を誰が歌えるのか?と思ったけれど、この素晴らしいキャストは映画を超えてます!」と興奮気味に絶賛。続いて来年3月に開幕する日本版キャストの柚希礼音、新妻聖子(Wキャスト)、大谷亮平の3名が登場すると、歓声があがった。英国での公演を観たという柚希は「私がボディガード役だと思う方もいたんじゃないかと思いますが(笑)、守られる役をしっかりと演じたい。歌が多いので、稽古して自分なりのレイチェルに挑む」と意気込みを語った。新妻は「日本版は歌詞も日本語になるので、ポップスシーンの歌がより演劇的になるのでは?」と推測。フランク役の大谷は今回が初舞台。「おふたりを役としてしっかり守れるように、舞台期間中は気持ちだけでも守っていけたら」と抱負を述べた。その後、初日が開幕。人気絶頂の歌手レイチェルのきらびやかなコンサートから始まり、ストーカーへの恐怖、フランクとのラブストーリーがスピーディーに展開するが、妹の影にいる姉ニッキーの葛藤、息子への思いも丁寧に描かれ、映画とは違った印象を残す。大ヒット曲『I Will Always Love You』はもちろん、ホイットニーの名曲が数多く使われ、カーテンコールは『I Wanna Dance with Somebody』で客席も総スタンディング。大迫力のパフォーマンスと芝居を楽しめるので、ミュージカルになじみがない人にこそおすすめしたい。公演は、10月6日(日)まで東急シアターオーブ・東京にて。10月11日(金)~20日(日)まで梅田芸術劇場メインホール・大阪にて上演。日本キャスト版は、大阪公演は2020年3月19日(木)~29日(日)、東京公演は4月3日(金)~19日(日)。取材・文:郡司真紀
2019年09月18日日本初演50周年となるミュージカル『ラ・マンチャの男』が9月7日より大阪のフェスティバルホールで開幕している。初演からセルバンテス/ドン・キホーテ役を演じ続け、本作品を自身のライフワークと位置づける松本白鸚は、今年8月19日に喜寿を迎え、帝国劇場で上演される10月19日17時の部で通算上演回数1300回を突破する予定だ。初日を前に東京都内で公開された、通し稽古の様子を取材した。【チケット情報はこちら】スペインの小説『ドン・キホーテ』を原作とした『ラ・マンチャの男』がブロードウェイで初演されたのは1965年。日本初演は69年4~5月で、市川染五郎(現・二代目松本白鸚)は26歳だった。70年には、日本人として初めてブロードウェイから招待を受け、名門マーチンベック劇場にて計60ステージに立った。以降これまでの上演回数は1265回にも上る。舞台は、16世紀末、スペインのセビリアの牢獄。投獄された『ドン・キホーテ』の作者であるセルバンテスは、牢名主からの追求を逃れるために、他の囚人たちを巻き込んで、『ドン・キホーテ』の劇を演じ始める…。この日の通し稽古は、オーケストラと衣裳がついた、本番に近い稽古だった。主演の松本白鸚は、とても77歳には見えない、力強く、熱のこもった芝居。6月に行われた製作発表では「真新しいラ・マンチャでございます。何しろ主演の俳優の名前が変わりましたから!」と挨拶し、笑いを誘っていたが、改めて白鸚のすごさは、この年になっても、何度も立った舞台であっても、常に自身の限界に挑んで、変化を楽しんで、観客の心を動かせることなのだと知る。白鸚演じるドン・キホーテが想い姫と慕うアルドンザ役は、本作初出演の瀬奈じゅん。元宝塚歌劇団のトップスターらしく、激しいダンスをこなし、伸びやかな歌声を披露していた。また、セルバンテスの従僕であるサンチョ役は駒田一。駒田自身、サンチョ役10年目ということで、主人への愛がより溢れ出ていたように思う。公演のキャッチコピーは「遍歴の旅はクライマックスへ」。ミュージカル史に残る“遍歴の旅”を、ぜひ心に焼きつけてほしい。上演時間は約2時間5分(予定)。大阪公演は12日(木)まで。宮城公演は9月21日(土)~23日(月)東京エレクトロンホール宮城。愛知公演は9月27日(金)~29日(日)愛知県芸術劇場大ホール。東京公演は10月4日(金)~27日(日)帝国劇場。チケット発売中。チケットぴあでは東京公演のOVER50向けの企画チケットを発売中。取材・文:五月女菜穂
2019年09月17日田代万里生と平方元基が出演するふたりミュージカル『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』が10月4日(金)の大阪・新歌舞伎座からスタート。その通し稽古に潜入した。【チケット情報はこちら】本作は、作詞・作曲をニール・バートラム、脚本をブライアン・ヒルが手掛け、2006年の初演以降、世界各地で上演されているミュージカル。日本では初上演となり、演出を高橋正徳(文学座)が手掛ける。また、田代と平方が公演によって役を入れ替える2バージョンでの上演となる。この物語は、ベストセラー作家のトーマス・ウィーヴァーが、幼馴染のアルヴィン・ケルビーの弔辞を書くシーンから始まる。その弔辞を書くために、二人の思い出を振り返る“温かな感動もの”をイメージして稽古場に訪れたが、実際はそのイメージとも違う展開が待っていた。最初にトーマスが歌う楽曲では「何を見落としているんだ?」「いつ壊れてしまった?」「俺のせい?」「どうしろと?」と自らに問う。幼馴染の死というショッキングな出来事を前に、緊張感のある始まりだ。この日、田代が演じたトーマスは「書くにはプロセスが大事なんだ」と言うような、どちらかというと常識的なイメージの人。平方が演じたアルヴィンは「君の頭の中には何千という物語があるはずだよ」と言うような、ユニークで自由だけど繊細な人。それぞれの役柄も、田代・平方二人の役者も魅力的だからこそ、両バージョンを観たくなる。劇中では、ふたりの数十年のうちのいくつかの場面が、断片的に描かれていく。ひとつひとつは取りとめもない思い出に見えるが、それを並べていくと、少しずつ見えてくるものがあった。田代と平方は、役のうえで幼少期から成人期までを演じる。年齢だけでなく、その時どきのふたりの関係性もふまえながら、丁寧に演じていく。また、ふたりの関係性の変化は音楽にも表れていた。そうやって辿った記憶から浮かび上がるものはなんなのか。ふたりミュージカルならではの熱演に、最後は思わず胸を押さえてしまう本作は、10月4日(金)から5日(土)まで大阪・新歌舞伎座、10月9日(水)から16日(水)まで東京・よみうり大手町ホールにて上演。その後、水戸、名古屋でも上演する。事前に映画『素晴らしき哉、人生!(It’s a Wonderful Life)』(1946)を観ておくとより楽しめる作品だということもお伝えしたい。チケットはぴあにて一般発売中。取材・文: 中川實穂
2019年09月17日ケビン・コスナーとホイットニー・ヒューストン主演により、世界的大ヒットを記録した映画『ボディガード』。そのミュージカル版がついに来日、英国版がこの9月に、そして日本キャスト版が2020年春に上演される。そこで日本キャスト版に出演する大谷亮平に話を聞いた。【チケット情報はこちら】『逃げるは恥だが役に立つ』でブレークし、現在放送中の『ノーサイド・ゲーム』も好評な大谷。そんな大谷にとって本作は、初の舞台出演となる。「映像の仕事をメインにさせていただいてきたので、自分が舞台に出るということは、正直あまりイメージが出来ませんでした。というのも舞台は生なのでミスが許されませんし、覚悟を持って臨まなければいけないなと。今回のお話をいただいた時も、まずは挑戦だという気持ちが強くて。ただ同時に、みんなで時間をかけてつくっていく楽しさ、やりがいもすごく感じていますし、いい作品、いいご縁をいただいた喜びもとても大きいです」人気歌手レイチェル・マロンの身辺警護を依頼された、元シークレット・サービスのフランク・ファーマー。楽観的なレイチェルは当初フランクを邪険に扱うが、彼のボディガードとしての仕事ぶりを目の当たりにし、徐々に信頼し始める。そしていつしかふたりの間に恋心が芽生えるが…。極上のサスペンスとラブロマンスが融合した名作。大谷は作品としての魅力をどんな点に感じているのか。「常に追われている感はありますよね。その緊張感、スリルがある中での禁断の恋というか。ふたりの距離がだんだん縮まっていく、あの瞬間が僕は結構好きで。いいのか?いいのか!?みたいな(笑)。とても興味深い関係性なので、自分がそれを演じられるのはとても楽しみです」そのフランクを大谷が、レイチェルを柚希礼音と新妻聖子がWキャストで演じる。「フランクはとにかく無骨な男ですよね。自分の仕事をひたすら全うする。それ以外のことは排除してきたような生き方というか。まぁ男の僕から見てもカッコいいですし、共感も出来る。ただそれを超えていくのが、ちょっと言うのも恥ずかしいですが、“愛”だったりするわけで。駄目だと思っていても、どうしても自制心がきかなくなってしまう。そういう役を演じるってこともまた挑戦ですし、それが舞台というのがやはり一番の挑戦。やる前とやった後では全然違う、大きな財産になるだろうなと。新しい世界を見るような感覚なので、自分がその時にどうなっているのか、それもまた楽しみですね」公演は2020年3月19日(木)~29日(日)まで、梅田芸術劇場メインホール・大阪にて、4月3日(金)~4月19日(日)まで東急シアターオーブ・東京にて上演。ひと足早く、ぴあ貸切公演のいち早先行を、9月14日(土)11:00~受付開始!取材・文:野上瑠美子
2019年09月13日今年1月に日本初上陸を果たし、ディズニー名曲の数々をブロードウェイのステージさながら、圧倒的なパフォーマンスと歌唱力で披露するコンサート「ディズニー・ブロードウェイ・ヒッツ」。同公演が2020年1月30日(木)・1月31日(金)に東京・国際フォーラム ホールAで再演される事が決定した。【チケット情報はこちら】今年1月の公演では、『美女と野獣』の「Be Our Guest」のナンバーで華やかなオープニングを迎え、『メリー・ポピンズ』メリー・ポピンズ役(オリジナルキャスト)、「『美女と野獣』ベル役のアシュリー・ブラウン、『ターザン』ターザン役(オリジナルキャスト)のジョシュ・ストリックランド、『ライオンキング』父親・ムファサ役を4300回以上を演じた記録を誇るアルトン・フィッツジェラルド・ホワイト、『ライオンキング』ナラ役を誰よりも長く演じたキシー・シモンズなど、海外キャストが舞台に勢揃いした。ブロードウェイで活躍する俳優たちが実際に演じた楽曲を熱唱する姿に、会場のボルテージも一気に高まった。そんなディズニー・ミュージカルが伝える夢、希望、そして愛が詰まったコンサートが、さらにパワーアップして2020年に開催。『ライオンキング』『ターザン』のアソシエイト・ディレクターを務め、日本でも『ライオンキング』『リトル・マーメイド』の幕開けに携わり、本公演のプロデューサーでもあるジェフ・リー(Jeff Lee)は、「東京で2年目のディズニー・ブロードウェイ・ヒッツを迎えられる事を光栄に思います」と再演への喜びと意気込みを語った。チケット一般発売に先駆けて、最速抽選先行を実施。受付は9月16日(月)午前11時から25日(水)午後11時59分まで。■「ディズニー・ブロードウェイ・ヒッツ」公演日程:2020年1月30日(木)・1月31日(金) 開場18:00/開演19:00会場:国際フォーラム ホールA(東京都)料金:VIP席 : 16,000円(お土産付、前方席保証) S席 : 11,000円 A席 : 8,800円 B席 : 6,000円※3歳以下の入場不可、4歳以上チケット必要※全席指定・税込
2019年09月13日荻田浩一が脚本・演出を手掛け、水夏希が主演する『カリソメノカタビラ~奇説デオン・ド・ボーモン~』が9月12日、東京・浅草九劇で開幕する。実在したスパイ、シュヴァリエ・デオンを主人公に、虚実織り交ぜ作り上げるミュージカル。11日、初日に先駆け行われた最終舞台稽古を取材した。チケット情報はこちらデオン・ド・ボーモン(シュヴァリエ・デオン)は、18世紀フランスに生きた実在の人物。フランス国王ルイ15世の私的スパイ機関で働き、マリー・アントワネットとも交流があったこの人物は、生涯の前半を男性として、後半を女性として生きたと言われている。女装してロシアへわたり女帝エリザベータの女官として働いたと思えば、今度は男性としてロンドン特命全権大使の任務に就く……史実自体がドラマチックだが、荻田浩一はここにさらにひとひねり加え、デオンを“女性の肉体をもって生まれた男性”として創作。豪華な歴史絵巻の中、“自分とは”という現代的テーマが貫く作品になった。出演者は5人のみ。デオンを演じる水は、元宝塚歌劇団トップスターならではの男装の凛々しさ、マントさばきや剣さばきの美しさでこの宮廷絵巻の豪華な世界を作り上げると同時に、デオンの持つ複雑な内面をぶれることなく丁寧に演じている。このミュージカル、あらすじから想像する以上にコミカルなシーンも多いのだが、水のデオンがぶれることなく存在することで、物語に一本の芯が通った。また、共演の4名は実力派揃い。ボーマルシェ役の坂元健児はストーリーテラーとして物語を支えるとともに、軽妙な存在感で作品にシニカルな味を加える。ロシア女帝エリザベータからルイ15世・16世など様々な役に扮する植本純米の怪演は圧倒的だし、植本とともに八面六臂の活躍をしつつ、デオンとは別の角度から女性の自立というテーマにもスポットをあてる笠松はるの柔軟さも見事。ジュゼッペ役の溝口琢矢は爽やかな風を吹かせながらも、ベテラン勢と対等にわたりあい頼もしい。何よりもこのキャストを、浅草九劇という客席100人超の緊密なスペースで観る贅沢さ。特に坂元、笠松らミュージカル界でも屈指の歌唱力を持つキャストの歌声がこの空間に響きわたる興奮は、なかなかほかでは味わえないだろう。ミュージカルの世界では様々な物語が生まれているフランス革命期だが、作演出の荻田が新たな主人公に光を当て、スリリングなミュージカルが誕生した。ゴージャスな世界観を持つ作品ではあるが、どこか浅草らしい雑多さもある。笑いながらも考えさせられ、知的好奇心もくすぐられるミュージカルだ。この不思議な感覚、ぜひ劇場で味わってほしい。公演は9月23日(月・祝)まで、同劇場にて。
2019年09月12日日本初演から上演50年を迎えた松本白鸚主演のミュージカル『ラ・マンチャの男』が9月7日、大阪のフェスティバルホールで幕を開けた。白鸚は1969年、当時市川染五郎だった26歳でこの作品に主演し、翌年、日本人としては初めてブロードウェイから招聘され現地でも出演。以後、作品とともに50年の歩みを続けている。「ラ・マンチャの灯がいつまでも日本に灯されますように」と願う、今年喜寿の白鸚の、気迫のこもった演技と歌声が会場中に響き渡った。ミュージカル「ラ・マンチャの男」チケット情報16世紀末のスペイン・セビリアの牢獄が舞台。教会を侮辱した罪で投獄されたセルバンテス(白鸚)は、即興劇で申し開きをしようと思い立つ。セルバンテスは田舎の紳士キハーナと、キハーナが作り出したドン・キホーテを演じる。自由奔放なキホーテは遍歴の騎士となり、従僕のサンチョを従えて、真実を求める旅に出る。三重構造になった哲学的な物語は、頭で理解しようとするよりも、体感するほうが何かを得やすい。とても喜寿とは思えない、セルバンテス、キハーナ、ドン・キホーテの3役を務め、そのセリフが血肉となり、今、役を生きている白鸚を見ていると、誰が想像上の人物で何が現実かを考えるのがナンセンスになってくる。白鸚は「一番憎むべき狂気とは、あるがままの人生に、ただ折り合いをつけてしまって、あるべき姿のために戦わないことだ」というセルバンテスのセリフがこの作品のテーマだと語る。風車を巨人だと思い込み、娼婦のアルドンザを“憧れの姫”と敬う、狂人だと笑われるキホーテこそ、折り合いをつけず、あるべき姿のために真っすぐに戦っている真実だと気付かされていく。2009年からサンチョを演じ「やるたびに身が引き締まる」という駒田一と白鸚のコンビは、ますます息もピッタリで笑いと涙を誘う。初参加の瀬奈じゅんは「50年の歴史を台無しにしないように、プレッシャーと緊張感でいっぱい」だと話すが、力強さの中に悲しみ、切なさを抱えたアルドンザを演じ切った。余命幾ばくもないキハーナをサンチョとアルドンザが抱きかかえるシーンは、荘厳として悲しく胸を打つ。劇中劇が終わり、セルバンテスは一歩一歩、裁判所への階段を登っていく。白鸚は「この作品は私の亡き父と、亡き菊田一夫さんのふたりの見果てぬ夢なんです。僕は、男ふたりの夢を『見果てぬ夢』という劇中歌でレクイエムとして、感謝と祈りとこれからへの思いを込めて歌い続けてきました」と話す。また、「77歳の男がいう言葉ではないんですが、夢とは夢を叶えようとする心意気。口には出さないけれどそういう思いを胸に秘めた大人は素敵だと思います」ともいう。私たち観客の秘めた見果てぬ夢も背負って、今日も白鸚は舞台に立ち続ける。大阪公演は9月12日(木)までフェスティバルホールにて上演。その後、宮城、愛知、東京公演あり。チケット発売中。取材・文:米満ゆうこ
2019年09月09日二代目松本白鸚が26歳の頃から主演を続けるミュージカル『ラ・マンチャの男』。今年は日本初演50周年記念公演が全国4都市で上演される。白鸚は日本初演の翌1970年に日本人として初めてブロードウェイから招待を受け、単身ニューヨークへ渡り、全編英語台詞で計60ステージを完走した。本作はトニー賞ミュージカル作品賞ほか計5部門を受賞。その中で脚本の故デール・ワッサーマンは生前、受賞トロフィーを「この作品にふさわしい人に渡してほしい」と言い遺しており、日本上演通算1200回記念公演の日にはワッサーマン夫人から白鸚にトロフィーが授与された。白鸚は今年77歳の喜寿を迎え、本ツアーで通算上演回数は1300回を更新する予定だ。そんな伝説的作品で、元宝塚歌劇団月組トップスターの瀬奈じゅんがヒロインに初挑戦する。ミュージカル「ラ・マンチャの男」チケット情報『ラ・マンチャの男』は、スペインの作家・セルバンテスの代表作『ドン・キホーテ』をもとにした舞台。小説とセルバンテスが投獄された史実を絡めて描かれた作品で、三重構造で展開する。舞台は16世紀末のスペイン。宗教裁判で有罪となり投獄された作家セルバンテスは、獄中で自らが書いた『ドン・キホーテ』を囚人らと劇として上演する。主人公の田舎の郷士キハーナは、自らを遍歴の騎士ドン・キホーテと思い込み、悪を成敗する旅に出る。白鸚は作者セルバンテス、キハーナ、そしてドン・キホーテの3役を演じ分け、瀬奈は囚人として、ドン・キホーテには憧れの姫ドルシネアに見える、あばずれ女アルドンザを演じる。オーディションでヒロインの座を射止めた瀬奈。『ドン・キホーテ』はシンシア・ハーヴェイ出演のアメリカン・バレエ・シアターの作品で慣れ親しみ、幼少期は祖父の家に飾られたピカソが描いたドン・キホーテの抽象画が大好きだったと振り返る。「陽気だけど影もあり滑稽さも感じられる絵の世界観が大好きでした」。そして初めてミュージカル版を観た際には、出演者らの気迫に圧倒されたという。「ギターの音色に合わせて踊る、そのシルエットから始まり、冒頭から早くも鳥肌が立ちました。ドン・キホーテの台詞ひとつひとつが深くて、観る度に捉え方が変わる。それは演じる白鸚さんご自身が積み重ねてこられた人生そのものに起因することなんだろうなと。歴史ある作品を前に今必死にお稽古をしています」。稽古では「相当な気力と体力が必要な役だと実感した」という瀬奈。「短い間に様々なことが凝縮された劇中劇なので、瞬発力が必要ですし、アクロバティックな演出もあり、家に帰ると何でこんな所にアザが?という感じ。白熱のソロナンバーでは、稽古で初めて歌い終わった後に目の前がチカチカしました。喉のケアを大切に、お客様には新しい気持ちで楽しんでいただけるように頑張ります」。公演は9月7日(土)から12日(木)まで大阪・フェスティバルホール、10月4日(金)から27日(日)まで東京・帝国劇場にて上演。他、地方公演あり。チケット発売中。文:石橋法子
2019年09月06日中村誠治郎が主演する『今、僕は六本木の交差点に立つ』が、9月4日に東京・天王洲 銀河劇場にて開幕した。“経済界の風雲児”と称される実業家・シンガーソングライター、橋本ひろしの半生をモチーフにした物語が繰り広げられる本作。莫大な富と名声を手に入れた彼は、なぜ50代で音楽活動をスタートさせたのか──。TRASHMASTERS主宰の中津留章仁が脚本を、赤澤ムックが演出を手がけ、橋本を連想させる主人公・稲本ふとしを中村が演じる。舞台はふとしのライブ場面で幕を開ける。MCと歌が混然一体となった“トーキングブルース”で知られる橋本のステージを彷彿とさせるように、ギターを抱えた中村は内省的なメッセージが込められた「天に向かって弓を射ろ」を熱唱。やがて登場するふとしの実業家仲間・津田山涼介(定本楓馬)の狂言回しぶりも手伝って、観客は自然とマクドナルドの日本第1号店が開店した1971年の東京へいざなわれていく。父の死で長野の実家に呼び戻された19歳のふとしは、一家の生計を立てるためにさまざまな事業へ乗り出す。作品には、橋本が実際に手がけたプリント基板製造メーカー・キョウデンや生鮮コンビニ・SHOP99(現在はローソンストア100)などを思わせる企業が。持ち前の商才とコミュニケーション能力を発揮して次々とビジネスで成功を収めるふとしの立身出世に、親友・山口俊(有澤樟太郎)との友情やガンを患った中年男性・久保田康徳(山寺宏一)とのエピソードが密接に絡み──。劇中には、公演タイトルを含め「たまるか」「目標」「ハレルヤ」など橋本のオリジナルナンバー7曲が登場。いずれも前向きで、聞く者の心を鼓舞するようなむき出しの熱い歌詞が並ぶ。開幕に際して「橋本ひろしさんというすごい方の人生を生き抜きたい」とコメントを寄せたように、中村は情熱的な歌声とパフォーマンスでふとしの波乱万丈な人生を体現した。劇世界を彩る、アンサンブルのバラエティ豊かなステージングにも注目したい。交差点をイメージさせる、十字の八百屋舞台で展開する160分(休憩含む2幕)の濃密な人間ドラマを見届けよう。公演は9月8日(日)まで。チケットぴあでは現在、当日引換券を発売中だ。取材・文:岡山朋代撮影:源賀津己
2019年09月05日2005年にブロードウェイで初演され、トニー賞で10部門11ノミネート、ミュージカル主演男優賞を受賞した傑作コメディミュージカル『ペテン師と詐欺師』が東京・新橋演舞場で9月26日まで上演中だ。演出を手がけるのはテレビドラマ・映画でヒット作を数多く生み出し、舞台でも活躍するコメディの名手・福田雄一。そして主演するのは、福田とのタッグで数々のヒットをとばす山田孝之と、ミュージカル界の名優・石丸幹二のふたりだ。いったいどんなミュージカルになるのか。8月、稽古場の山田と石丸に聞いた。【チケット情報はこちら】若いアメリカ人詐欺師であるフレディ・ベンソン (山田) がやってきたのは高級リゾート地である南仏のリヴィエラ。そこでは凄腕の詐欺師ローレンス・ジェイムソン (石丸) が富豪の女性たちをターゲットに荒稼ぎをしていた。ローレンスの正体を知ったフレディは、その詐欺師の才能にほれ込むが、そのうちふたりは縄張りをめぐって敵対するように。ついにはアメリカ人旅行者のクリスティーン (宮澤エマ)から、先に5万ドルを巻き上げたほうが勝ちという対決をすることになる・・・。「出演が決まったときはプレッシャーよりも楽しみのほうが大きかった」と話す山田は、福田演出のミュージカル出演は3回目。「歌と踊りは不慣れなので、ただ緊張していますが、お芝居はたのしみ。石丸さんとのかけ合いで笑えるところがいっぱいありますし」と石丸との共演に期待をよせる。対する石丸も「ミュージカルの現場でご一緒でき、夢のようですね」と待望の共演だったことを明かし、「この作品もブロードウェイで観て、いつかやりたいと思っていた。ただ、絶え間なく笑いを呼ぶ作品なので、挑戦できることは光栄なことですが、いっぽうで緊張と不安もありました」と出演が決定したときの思いを語った。山田が演じるフレディは「若くてスキルはないけど、自信はあって調子に乗っている。そんな自分の未熟さを痛感したりもするんですけど、その根拠のない自信が彼のかわいさでもあると思う。対する相手によってキャラが変わっていくのが、おもしろいんじゃないかな」と自身の役柄を紹介。対決する石丸は役について「ベテラン詐欺師として自信満々でいた自分の縄張りに、若手のフレディがやってきて、もう一度初心に戻るカンフル剤になる。そこがおもしろい。この役は、ただの二枚目ではなく、シチュエーションに合った変化球を投げなければいけない」と意気込みを語った。ブロードウェイのミュージカルコメディで「観終わった後には、ハッピーな気持ちになれる作品」(石丸)だ。歌とダンスとともに大いに笑いたい。公演は9月26日(木)まで東京・新橋演舞場にて上演。チケットは発売中。
2019年09月04日朝夏まなとが主演を務めるミュージカル『Little Women -若草物語-』が9月3日(火)に開幕する。それに先がけ囲み取材と公開ゲネプロが行われ、取材には朝夏まなと、彩乃かなみ、井上小百合(乃木坂46)、下村実生(フェアリーズ)が出席した。【チケット情報はこちら】本作は、名作小説『若草物語』とその続編『続・若草物語』を下敷きに、2005年にブロードウェイで初演されたミュージカル。主人公で次女のジョーを朝夏、長女のメグを彩乃、三女のベスを井上、四女のエイミーを下村が演じるほか、林翔太(ジャニーズJr.)、宮原浩暢(LE VELVETS)、川久保拓司、久野綾希子、村井國夫、香寿たつきが出演する。翻訳は小山ゆうな、演出・訳詞は小林香。取材ではまず朝夏が「いよいよ始まるんだなと実感しています」と笑顔で語り、「家族や姉妹という“絆”が大事な作品ですが、このカンパニーは皆さんが温かく、今すごくいい状態だと思います」と話す。自身の役柄について、朝夏は「ジョーは、女性は結婚して子供を産むことが当たり前な時代に自分の夢を追いかける人です。それも、(自分のためだけでなく)家族のためにそうありたいと思っている。演じていて、強い精神力と挫折しても立ち上がる強さを感じます」、彩乃は「メグは夢見がちでロマンティックなものが好き。唯一、マーチ家が裕福だった時代の記憶があるので、過去と今を比べてしまったりするのですが、ある男性と出会うことで自立していく過程がよく見える人です」、井上は「ベスは三女ということもあってか、真ん中の視点で人をよく見ていて、いろんな人の影響を受けたり与えたりもしている人です。病弱で人見知りですが、私はベスから生きることの強さを学びました」、下村は「エイミーはおしゃまでかわいいものが大好きな女の子です。一幕ではまだまだ子供なのですが、色々な出来事と共に成長していって、二幕では大人の姿になります」とそれぞれ紹介した。ジョーを中心とした四姉妹のエピソードがテンポよく描かれていく本作。有名な小説家になって家族になんでも買ってあげたいと突き進むジョーをはじめ、登場人物それぞれが生き生きと人生を生き、そしてやさしく支え合う姿が数多く観られる作品だ。それぞれの“人との関わり”がそのままのカタチで表現されている楽曲も1曲1曲が印象的。また、10人のキャストだけでつくりあげる舞台は、例えばジョーの書く“流血もの”小説も彼らよって再現されるため「あの人があんな役を!?」と思わず笑ってしまう楽しいシーンとなっていた。細部まで凝ったセットや衣裳もぜひ注目してほしいポイントだ。『Little Women -若草物語-』は9月25日(水)まで東京・シアタークリエにて上演後、愛知、福岡を巡演。
2019年09月03日稲垣吾郎主演舞台『君の輝く夜に ~FREE TIME, SHOW TIME~』が8月30日に東京・日本青年館ホールで幕を開けた。【チケット情報はこちら】2012年、2014年、2016年と3度に渡り上演された稲垣主演の舞台『恋と音楽』シリーズ。数々のオリジナルミュージカルを手掛けた実績を持つ劇団ラッパ屋主宰の鈴木聡が作・演出を担当し、鬼才のジャズピアニスト・作曲家の佐山雅弘が音楽監督を務め、好評を博してきた同シリーズ。そのクリエーター陣が再びタッグを組み、昨年夏に京都で上演された舞台がパワーアップして東京で上演される。共演には安寿ミラ、北村岳子、中島亜梨沙という実力派女優3人が顔を揃えた。本作は音楽劇と、合間にショーが入る二部構成となっているところがユニーク。物語の舞台は国道沿いにある海の見えるダイナー兼ホテル。夏の終りのある日、ひとりの男性客・ジョージ(稲垣)が店を訪れる。ライザ・ミネリ好きという店主・ライザ(北村)が訳ありな様子の男に事情を聞くと、10年前に別れた恋人と、この店で今日再び会おうと約束したのだという。そこにホテルの宿泊客である若い女性・ニーナ(中島)、休暇中だという女社長・ビビアン(安寿)が現れ、男一人&女3人の夏の一夜が繰り広げられていく……というストーリー。過去の恋にセンチメンタルになりつつ、若い美女にはつい惹かれてしまうという、ちょっとお調子者のジョージを稲垣が好演。ときに子供っぽくなってしまう振る舞いも、彼のチャーミングさとどこか浮世離れした雰囲気が見事に魅力に変えている。また、彼を振り回す(?)3人の美女たちも、コミカルなライザ、謎めいたキャリア女性ビビアン、若さとパワー全開のニーナと三者三様。歌を交えた軽妙なやり取りが、とにかく観ていて楽しい。そして“楽しい”といえばなんといっても、間に入るショウタイム!全員がゴージャスな白い燕尾服に身を包み、生演奏に合わせて『ニューヨークニューヨーク』や『マック・ザ・ナイフ』などスタンダード・ナンバーを歌い踊っていく。京都公演からはショウの時間も拡大され、稲垣と北村のタップダンスシーンなど、追加された場面も見逃せない。初日前に行なわれた囲み会見で稲垣は、昨年11月に逝去した音楽監督・佐山について触れ、「暗い雰囲気は佐山さん自身が好きではないと思うので。稽古場でもずっと近くに感じながらやっていましたし、本番も1番の特等席で観劇してほしいですよね」とコメント。北村も「きっと今日いらしてますよ」と話し、キャスト全員が頷きあうひと場面も。稲垣は「(今回のキャストは)みんなエンターテインメントの世界でやってきて、でもちょっとだけ畑が違ったりとか、育ってきた環境も違ったりとか。そこがまたミックスされた面白さが特徴」と本作の魅力を語った。夏の終りにしっとりと愉しみたい“大人のエンターテインメント”と言えそうだ。公演は9月23日(月祝)まで日本青年館ホールで上演。チケットぴあでは限定公演のみ公演前日までチケット発売中。取材・文:川口有紀
2019年09月02日男も女も魅了する希代のプレイボーイ。TBS赤坂ACTシアターで9月18日(水)まで上演されているミュージカル『ドン・ジュアン』でこの難役に挑戦しているのは、初ミュージカルとなるKis-My-Ft2の藤ヶ谷太輔だ。【チケット情報はこちら】舞台はスペイン。荒野にあらわれる人たちが語る、誰もがその魅力に囚われるドン・ジュアン。フラメンコの調べに乗せて、口々に彼について語られる。藤ヶ谷が共演者を「ミュージカルの百戦錬磨の方々なので」と言うように、どっしりと重く、情熱的なスペインの風を吹かせる歌とダンス。それぞれが魅力を放つ登場人物達が惹かれるドン・ジュアンとは……?待望と、こんなに期待させていいの?という少しの不安が高まる。その不安を打ち破るように、登場したドン・ジュアンはじっくりたぐり寄せるように観客を惹きつけていく。なめらかなしぐさから滲む色気。細身の身体から出る太い声が、やり場のない苛立ちを地鳴りのように響かせる。そして、歌は叫びのようにぐっと惹き付ける。藤ヶ谷は「J-POPと歌い方が違うので苦労している」そうだが、率直に生への思いを表現する。女を抱いては捨てる冷酷な男。けれど藤ヶ谷本人は「女性を乱雑に扱えなかった」と振り返る。「でもやらないと相手の女性もリアクションがとれないから」と、周囲と相談しながら役を作ってきた。身勝手なドン・ジュアンの一方、同世代の男性達の誠実な生き方が対比する。ミュージカル経験の豊富なふたり……上口耕平の幅広いダンスと伸びやかな歌声、平間壮一の身体能力と安定し力強い歌が、ミュージカル初挑戦の藤ヶ谷のエネルギー溢れる個性をより立たせる。3人それぞれの“愛”の貫き方が違うのも面白い。また、ドン・ジュアンをめぐる女達……蓮佛美沙子、恒松祐里、春野寿美礼らも、確かな歌唱力と異なる個性でさまざまな愛を表現する。そして物語を強く率いていく亡霊役の吉野圭吾。その“愛の呪い”により、ドン・ジュアンは愛に翻弄されていく……。愛は誰かを愛しく思い、幸せに満たされるだけではない。嫉妬、不安、憎しみ、独占欲、許しなどいろんな感情が絡み合う。今まで知らなかった感情を知っていくドン・ジュアン。愛とはいったい何なのか。さまざまな愛が交差するなか、身勝手に生きてきた彼なりの、愛への答えとは……。本作は同じく生田大和演出で宝塚歌劇団でも上演されているが、さらに脚色も加わり本カンパニーならではの舞台となり、愛と生き方を問いかける。取材/河野桃子
2019年09月02日トップスター・明日海(あすみ)りおの退団公演となる宝塚歌劇団花組公演、ミュージカル『A Fairy Tale -青い薔薇の精-』、レヴューロマン『シャルム!』が、8月23日、兵庫・宝塚大劇場にて開幕した。宝塚歌劇花組 宝塚大劇場公演 三井住友VISAカード シアター Musical『A Fairy Tale -青い薔薇の精-』/三井住友VISAカード シアター レヴューロマン『シャルム!』チケット情報『A Fairy Tale -青い薔薇の精-』は、19世紀半ばの大英帝国が舞台。世界初の万国博覧会が大成功を収めたロンドンでは、異国からの珍しい植物が大ブームとなっていた。ある深い霧の夜、植物研究科のハーヴィーは、枯れ果てた屋敷の庭で“青い薔薇の精”エリュと出会い、かつてこの屋敷に住んでいたシャーロットという少女にまつわる話を知ることになる…。人々が現実だと信じている世界と、目に見えない異次元の世界とを交錯させながら描く本作。美しく幻想的な世界観の中で明日海が扮するエリュは、自然界の掟に背いた罪により、霧に包まれた闇の中で孤独に生きる。悲しみの“青色”に染まったエリュは、気高くも寂しげな空気をまとい、50年もの間、シャーロットを思い続ける。人間離れした妖しげな美しさ、愁いを帯びた佇まい、内に秘めた熱い想い…。圧倒的な歌唱力でも魅せ、男役の集大成として、明日海の魅力が存分に引き出された役となっている。シャーロットを演じるのは、本作で大劇場お披露目となるトップ娘役・華優希(はな・ゆうき)。無邪気で愛らしい少女時代から落ち着きのある老年までを演じているが、その演じ分けは目を見張るものがある。また、次期トップスターが発表されている柚香光(ゆずか・れい)は、植物学者のハーヴィー役。唯一精霊たちとコミュニケーションが取れる人間で、最初は彼らの存在に戸惑いながらも、友情を築き上げていく様を丁寧に表現している。第2幕の『シャルム!』は、花と光の都パリの地下都市を舞台に繰り広げられるレヴュー。華優希扮する愛らしい少女に誘われ、若者たちがマンホールの中に足を踏み入れると、そこには豪華絢爛な世界が広がる…。アダルトな雰囲気のプロローグから目くるめくシーンが展開。明日海をはじめとする花組生の色香に目を奪われながら、組子に囲まれサヨナラを思わせる場面、柚香との絡みも印象的な黒燕尾の場面など、ラストステージならではの演出に心を揺さぶられる。公演は9月30日(月)まで宝塚大劇場、10月18日(金)から11月24日(日)まで東京宝塚劇場にて上演。東京公演のチケットは9月15日(日)発売開始。取材・文:黒石悦子
2019年08月30日ブロードウェイの新進気鋭ソングライティング・コンビと日本のクリエイティブ・チームの共作で、世界に先駆け上演する新作ロックミュージカル、A New Musical「FACTORY GIRLS~私が描く物語~」。芸歴20周年を迎えた柚希礼音が主演、読売演劇大賞・優秀女優賞を受賞し、注目を集めるソニンらが共演、19世紀半ばのアメリカ・ローウェルを舞台に、自由を求め闘った女性達の物語だ。共演には元宙組トップ娘役の実咲凜音、映像・舞台での活躍目覚ましい清水くるみ、12年の「RENT」以来のミュージカル挑戦となる石田ニコルら個性豊かな女優陣が集結した。この度行われた本作の稽古場公開、囲み取材が行われ、キャストが意気込みを語った。【チケット情報はこちら】柚希が演じるサラ・バグリーは、実在した女性であり、働く女性たちのリーダーとして立ち上がる人物。その役について「宝塚のトップ時代に色々リーダーとして悩んだ事がすごく思い出されました」とし、「20年間ミュージカルをやらせて頂いておりますが、宝塚以外で取材でこんなに女性が並ぶのは滅多にない(笑)。なので、とても革命的なミュージカルだと思います。本番までには役名のない方もキラキラして、誰を観たら良いか分からないくらいの中で、私達も増々エネルギーをもってやりたいと思っています。恋愛がメインではなく、でもお客様にかなり共感してもらえる事が多い作品になっているので、女性はもちろん、男性も「女性はこう思ってるんだな」と分かってもらえるのでぜひ見て頂きたいと思います」と、語った。ソニンが演じるのは工場で働くガールズの寄稿集「ローウェル・オファリング」の編集者として女工たちの憧れの存在であったハリエット・ファーリー。役について「皆から1歩引いて周りの様子をみて、上司と雇用者の間にたって中間をとる役どころ。その人なりの悩みを繊細に伝えられたらと思っています。これに共感してくださる方もいるのではないかと思います」とコメント。また作品について「新作という事で、我々がオリジナルの作品になっていくので、日々キャスト、スタッフ皆で話し合いながら一緒に作っていっているので、正直大変なところもありますが、幕が開けた時に今まで感じた事のない達成感がまっているかと思っています。女性だけが並んで激しく踊る、女性だけのユニゾンで聞く迫力は初めてなので、お客さんが聞いたらゾワゾワするのではないかと想像しています」と期待を煽った。公演は9月25日(水)から10月9日(水)まで東京・TBS赤坂ACTシアターにて、10月25日(金)から27日(日)まで大阪・梅田芸術劇場メインホールにて。チケットは発売中。
2019年08月30日南北戦争時代のアメリカ北部で、愛し合い助け合いながら生きる四姉妹を描いた、ルイ―ザ・メイ・オルコットの不朽の名作「若草物語」のミュージカル化である、『Little Women─若草物語─』(演出:小林香)。都内稽古場では東京・シアタークリエでの初日に向けた通し稽古が行われた。【チケット情報はこちら】まず、心に染みるソロナンバーを2幕で披露する宮原浩暢演じるベア教授と主人公・次女ジョー役の朝夏まなと(この日は朝夏のみ衣裳をつけて稽古に臨んだ)の会話から、女性の自己実現が極めて難しかった時代に小説家として身を立てようと志すジョーの、現代に通じる生き方を巧みに提示して、物語は四姉妹が揃うコンコードのマーチ家へと遡る。あくまでも稽古場仕様の代替えが使われているセットもありながらの転換の流麗さに、すべてが本番用に創り込まれ、照明も入った舞台での絵姿の美しさへの期待が膨らむ中、長女メグ役の彩乃かなみ、三女ベス役の井上小百合、四女エイミー役の下村実生が登場。プレゼントもツリーもないクリスマスを嘆く姉妹たちを、ジョーが鼓舞し、作家になって皆の望みを叶える!そして私達はいつまでも変わらない四姉妹でいよう!と固い約束を交わすまでが快調に進み、四姉妹の賑やかな明るさが弾ける。そこに母親役の香寿たつきが帰宅。彼女がこの家の要であることが一目で分かる、宝塚歌劇団で朝夏と同じく男役トップスターを務めた人の持つ香寿のオーラ、凜とした立ち姿と優しさに賢夫人ぶりが際立ち、表現力に満ちた歌声が本作の豊かさを示してくれる。父からの手紙を読む母の周りに四姉妹が集い、父の願いと母の愛に包まれる姿が美しい。そこから、原作の読者にはお馴染みの展開に、尚新しい風をもたらし、新たなミュージカル作品としての興趣を最後まで離さない中で、“姉妹の絆を強く信じるが故の寂寥感に苦しむジョーを奮い立たせるのが「書く」ことであり、その原動力もまた家族への愛である”という根幹が見事に伝わってくる演出に、心の綾を歌い上げる朝夏の堂々たる主演としての存在感が輝く。メグ役の彩乃にも元宝塚歌劇団娘役トップスターの出自を感じさせるひたむきさと気品とがあり、彼女とひと目で恋に落ちるジョン・ブルック役の川久保拓司とのロマンスも美しい。ベス役の井上の健気で真摯な演じぶりには涙を誘われずにはいられず、天真爛漫で、どんな我儘を言っても全く嫌味にならないエイミー役の下村の愛らしさは微笑ましく、随所に見せるダンスのキレも鮮やか。更に、深い愛情が根底にあることが感じられる村井國夫と久野綾希子が、その佇まいだけで「ザ・ミュージカル!」の香りも放つのが貴重。中でも驚かされたのは、ローリー役の林翔太の実によく通る、しっかりしたミュージカル唱法の確かさで、本番での活躍に期待したい。全体を統括している演出の小林香の温かな目線も印象的な、作品の開幕に期待の膨らむ通し稽古をみせた本作は、9月3日(火)より東京・シアタークリエで上演後、愛知・福岡を巡演。チケット好評発売中。
2019年08月30日今秋、二代目松本白鸚主演ミュージカル『ラ・マンチャの男』が日本初演から50周年を迎える。本作に演者として24年関わる駒田一は「39年の役者人生において原点のような作品。出演が決まり光栄ですし、背筋がピシッとする思い」と高揚感を滲ませる。ミュージカル「ラ・マンチャの男」チケット情報小説「ドン・キホーテ」はスペインの国民的文学。本作では著者セルバンテスの物語として始まる。16世紀末のスペイン。宗教裁判で有罪となり投獄された作家セルバンテスは、獄中で自著「ドン・キホーテ」を囚人らと劇として上演する。主人公の(田舎の)郷士キハーナは自らを遍歴の騎士ドン・キホーテと思い込み、悪を成敗する旅に出る。白鸚は作家、(田舎の)郷士、そしてドン・キホーテの3役を演じ分け、駒田はドン・キホーテに仕える従僕サンチョを演じる。「ごはんにありつくために仕えるご主人様ですから、その実『何言ってんだこのオヤジ』と思っているかもしれない。でも同時に、この人が見ている世界を唯一理解してあげようとしている人。ご主人様も従僕のことを信頼しきっていてその関係が面白い」と駒田。10代で初めて作品を観た時は、「うまく作品の意図がつかめなかった」。その後、年齢を重ね繰り返し観るうちに、作品の“何か”に心を突き動かされるようになったと明かす。「例えば、劇中に散りばめられたグッとくる台詞の意味を、あれはどういうことだろうと考える時間も人間にとっては有意義なこと。それだけでひとつ観た甲斐がある。分かんなくてもいいと思う。感じることができれば。ドン・キホーテには風車が怪物に見えるけれども、囚人たちは最初、誰もそれを理解できなかった。だけど次第に何かを感じ取って心動かされていく。最後に彼らが初めて役を離れてドン・キホーテに向かって『インポッシブルドリーム(見果てぬ夢)』を歌う場面は、あれを超えるエンディングはないんだろうなって思うくらい感動しますね」。酎ハイサワーのマドラーをストローと間違えたり、舞台袖でこそっと「1日2回公演は無理だよ」とおどけてみせたり。オチャメな一面も大好きだが、役者白鸚の志の高さに毎回胸打たれると言う。「僕よりふた回りほど年が上の白鸚さんが昨日より今日、今日より明日と進化を追求されるので、稽古が何より楽しいですね。同時に苦しくもあるんですけど(笑)。一番好きなシーンは、さあお芝居を始めようと白鸚さんが舞台上で化粧をするところ。カッコよすぎてたまらんですよ」。最後に「100人いれば100通りの感じ方ができる」と改めて作品をアピールする。「絶対感じられる何かがあるし、感じられないわけがない。もし感じられなかったら?その時は、再度観てもらえたら(笑)。何卒よろしくお願いします!」。公演は9月7日(土)から12日(木)の大阪・フェスティバルホールを皮切りに、宮城、愛知、東京を巡演。チケット発売中。取材・文:石橋法子
2019年08月30日NHK連続テレビ小説『ひよっこ』、ドラマ『今日から俺は!!』、『きのう何食べた?』など、近年数々の話題作に出演し、多彩な魅力を振り撒く若手実力派俳優、磯村勇斗。今夏、10人組異色アイドルグループ「GANG PARADE(通称:ギャンパレ)」の主演・楽曲で綴るミュージカル『プレイハウス』にダブル主演する。脚本・演出は根本宗子。舞台は夜の町、歌舞伎町。そこで生い立ちや性格は正反対と呼べる風俗嬢ミキと、町一番のホスト一ノ瀬聖夜(磯村勇斗)が出会うとき、物語が動き出す――。「プレイハウス」チケット情報カリスマホストの聖夜役を極めるべく、事前にホストについて研究したという磯村。「ナンバーワンといっても、可愛い系からオラオラ系まで見た目や営業スタイルは多種多様。むしろ参考にならないんじゃないかと混乱しました(笑)」。聖夜はルールを守る正当派だが、女性を翻弄する術も持っている。「裏表がしっかりあるキャラクター。最初は観ている方も聖夜がどういう人物なのか掴めないと思う。でも最後にはとんでもないオチがあって…。そこで『可愛いな』と思ってもらえたら、演じて良かったと思えるかもしれません」。注目の作家、根本宗子については「ひと癖ある方」と見る。「普通、言葉と身体は連動しますが、聖夜に関しては真逆でいきたいと。生理とは違う動きなので、今はまだ演じていても気持ち悪い(笑)。でも非常に実験的な演出が面白く、やり甲斐があります」。人前で歌やダンスを披露するのは初めてだが、単なるミュージカルには留まらないようで…。「ギャンパレさんたちの楽曲を使うのでライブに近いような感覚もありますし、ストレートプレイとミュージカルの間を行くような、新たなジャンルが生まれたという感覚ですね」。根本にも話したという自身のモテ期については、「幼稚園時代」と即答する。「女の子を廊下に一列に並ばせて、園長先生たちに『今から全員にキスするから見ていてね』ということをよくやっていました(笑)」。舞台にもこのエピソードが生かされるというから、注目してほしい。現在、「女子校に紛れ込んだ男子生徒のような気分」で稽古に勤しむ磯村。「ギャンパレさんたちは、普段から自分たちのことを『遊び場』、ファンのことを『遊び人』と呼び、観に来てくださった方を楽しませることを一番に活動されているので、本作も間違いなくそんな作品になると思います。いまだ見たことのないミュージカルをお届けできると思うので、構えず遊びに来てほしいなと思います」。公演は8月25日(日)から9月1日(日)まで東京芸術劇場プレイハウスにて、9月28日(土)に大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演。チケット発売中。取材・文:石橋法子
2019年08月23日喜劇作家で演出家、オリジナルミュージカルも手がける鈴木聡と、ジャズピアニストで作曲家の鬼才・佐山雅弘。さらに主演の稲垣吾郎という三者三様の稀有な個性がタッグを組み、2012年から2年おきに“大人のための、上質で等身大のミュージカル”を世に送り出してきたシリーズ。昨年、京都劇場で上演された『君の輝く夜に~FREE TIME,SHOW TIME~』は、その決定版として話題となったが、ショウシーンを大幅にリニューアルし、この秋東京で上演される。都内稽古場にて、稲垣と、共演の安寿ミラ、北村岳子、中島亜梨沙に話しを聞いた。【チケット情報はこちら】物語は海の見えるダイナーを舞台に、ひとりの男と3人の女たちとの夏の終わりの恋の行方を描く。芝居と歌による構成で、1幕と2幕の間にあるが見どころだ。今回は、昨年の上演後に急逝した佐山雅弘の遺志を継ぎ、息子でやはりジャズピアニストの佐山こうたが音楽監督とピアノを担当。前作よりを10分拡大し、曲目も大幅に変更する。稲垣は「での歌やダンスも役のキャラクターのままなので、『1幕と2幕の間にこんなことがあったのかな?』とか、あるいは4人の関係性のイメージとして受け取ってくれてもいい。ちょっとした表情に僕自身の素の部分が重なって見えるのも“ショウ”の面白いところかもしれないですね」と話す。また、今回タップダンスにも挑戦する稲垣。稽古場ではチャップリンの曲『スマイル』に乗せて、初めてとは思えない足さばきを見せていた。ミュージカル界の実力派で知られる北村も、「しれっとしたお顔で出来てしまうのが、稲垣さんなんですよね。芝居でもショウでも、自然に立っているからすごい。それでいてフッと自分の世界に引き込んでしまうんだからズルイ!(笑)」と感心しきりだ。北村のほかに、元宝塚で日本人離れした佇まいが印象的な安寿や、硬質な美貌をもつ若手の中島という、“稲垣を巡る女たち”の配役の妙も魅力のひとつだ。前回、黒燕尾服の着こなしぶりが話題になった安寿は、「今年は“白エンビ”です」と笑う。「ひとりひとりに個性があって、それぞれに独りで立っている感じが心地いい座組み。この楽しい雰囲気が、そのままお客様にも伝われば」と語る。一方の中島も、「あて書きしてくださったお芝居も、キャラクターのままストーリー仕立てになっているショーも楽しくて。これも温かい座組みのおかげだなと思っています」と話した。その言葉通り、稽古でも毎回違うアドリブを足してくる稲垣に、鈴木らスタッフから思わず笑いが漏れたりと、終始なごやかなムードに包まれていた稽古場。大人の男女が肩の力を抜いて楽しめるエンターテインメントの舞台を、今から楽しみに待ちたい。公演は8月30日(金)から9月23日(月祝)まで東京・日本青年館ホールにて開催。チケット発売中。取材・文:佐藤さくら
2019年08月23日近年、高い歌唱力を武器に数々の大型ミュージカルでヒロインを務める20歳の新星、木下晴香。「自分を高められるような作品を前に、奮い立つような気持ち」と、またもやオーディションを勝ち抜き、ミュージカル『ファントム』のヒロイン、クリスティーヌ役を射止めた。この冬、元宝塚歌劇団月組トップ娘役、愛希れいかとのWキャストに挑戦する。ミュージカル「ファントム」チケット情報自らを「オペラ座の怪人」と名乗り、精神世界に閉じこもる青年エリックが、父親との関係性を軸に人間性を取り戻す物語。ガストン・ルルー原作のミュージカルとしては、すでにアンドリュー・ロイド=ウェバー作曲版『オペラ座の怪人』が先行していたが、作詞・作曲したモーリー・イェストンは「それでも創りたいと思ったのは、まったく新しい解釈の作品を創れると確信したから」と語っている。事実、奥深い人間心理に迫った愛と再生の物語は、1991年の初演以来世界中で親しまれ、日本でも宝塚歌劇団などが繰り返し上演するなど、人気作として定着している。今回、城田優が加藤和樹とのWキャストで主演し、同時に演出を務めることでも話題の本作。オーディションで木下は、城田から「怖がらずにすべてを出して」と背中を押されたという。「まだ頭で考えた範疇でしか表現できない自分にとって、城田さんはその考え方さえも広げてくださるような方。本作で自分の知らなかった自分が見つかるんじゃないかな」。Wキャストは役を客観視できるのが利点という。「負けず嫌いな性格なので、相手のすごさを見ることで力が沸くし、逆に自分はこうだなと演技の軸が定まりやすい」。相手役がWキャストの場合も自らの軸はぶらさず、その都度沸き起こる感情を大切にしている。「加藤さんは優しさの中にも憂いを感じる方なので、エリックの悲劇性をどう表現されるのか楽しみ。城田さんは歌の言葉がすごく心に入ってくる方なので、聞いていて力をもらったり、気づいたら泣いていたこともありました。最近表現者として、お客様に伝わったものがすべてだなと感じることが多く、城田さんには心に響く表現の仕方をいろいろと教わりたいです」。進路に迷っていた学生時代、ミュージカル『レディ・ベス』を見て進むべき道が定まった。「力強いヒロインの姿が、本来の自分を目覚めさせてくれました。ミュージカルにはそういうパワーや熱量があると思うので、今回も『こんな衝撃を受けたのは初めて!』と言っていただけるような作品にしたいなと思います」。公演は11月9日(土)から12月1日(日)まで東京・TBS赤坂ACTシアター、12月7日(土)から16日(月)まで大阪・梅田芸術劇場メインホールにて上演。ともにチケットは9月7日(土)発売開始。チケットぴあでは8月26日(月)10時より2次先着先行を受付。取材・文:石橋法子
2019年08月23日土田英生が自身の劇団MONOで2004年に上演し、2010年にはG2の演出により再び上演。いずれも高い評価を得たヒューマンコメディ『相対的浮世絵』が、新たに青木豪の演出で蘇る。そこで達朗役の山本亮太(宇宙Six/ジャニーズJr.)と、智朗役の伊礼彼方、さらに青木を含めた3人に話を聞いた。【チケット情報はこちら】40代手前にして、それぞれやっかいな問題を抱えることになった智朗とその同級生の関。そんな彼らの前に、20年前に死んだと思われていた智朗の弟・達朗と同級生の遠山が姿を現したところから物語は始まる。作品の魅力について青木は、まず「劇団に書かれたものだということが大きい」と切り出した上で、「劇団の役者さんや劇団の空気、そういったものを土田さんがすごく愛して書かれているもの。その点をしっかり受け止めつつ、この5人でどんなものがつくれるのかってことを考えていきたいと思います」と続ける。山本は「ずっとコメディがやりたかったんです!」とひと言。「だからすごく嬉しいですし、それと同時に期待に応えないといけない、スベれないなって想いもあって…」と不安な想いも明かす。すると伊礼から「自分でプレッシャー与えてない?(笑)」とすかさずツッコミが。「与えてますね」と笑う山本に、「大丈夫。俺なんかシリアスな芝居がしたいって言ってたのに、これが決まったから」とさらなる笑いを誘い、場を和ませた。キャストは5人のみ。山本、伊礼のほか、石田明(NON STYLE)、玉置玲央、山西惇と、年齢も出自も異なる個性的な面々がそろった。この5人の素材をいかように調理したいか青木に聞くと、「やっぱり本がしっかりしたものですからね。それぞれのキャラクターうんぬんというよりかは、この5人の関係性さえしっかりつくれれば、あとは自然に出来上がっていくんじゃないかと思います」と現段階での構想を語った。また近年外部公演への参加も多い山本にとって、本作は2度目の単独主演舞台。“芝居”にかける想いを、「ここ2年でだいぶ変わって、普通に好きになったと思います。そしていろんな人と共演出来ることが、今すごく楽しくて!今回は公演数も多いですし、それだけ皆さんと長く過ごせることがとても楽しみです」と語る。そんな山本に対し「ジャニーズの方って皆さん好青年だし、やっぱりエンターテインメント性が高いですよね」と伊礼。さらに青木も「あと人を明るくさせるよね」と続く。そんなふたりの期待に、「さらにいろいろなプレッシャーが…」と苦笑しつつ、その目は本作への強い意気込みで輝いていた。公演は10月25日(金)から11月17日(日)まで下北沢・本多劇場にて。チケットぴあにて8月26日11時までWEB2次抽選先行のエントリーを受付中。取材・文:野上瑠美子
2019年08月22日宝塚歌劇月組公演『I AM FROM AUSTRIA-故郷は甘き調べ-』の制作発表会が8月20日に都内にて開催された。2017年にウィーンで初演され、今年6月までロングラン上演されていた大ヒットミュージカルで、日本とオーストリアが国交を樹立して150周年となる今年、日本で初演される。会見には月組トップコンビ、珠城りょうと美園さくらのほか、オリジナルプロダクションであるウィーン劇場協会のCEOフランツ・パタイ氏らも登壇した。【チケット情報はこちら】『エリザベート』や『モーツァルト!』など、いまや日本では定番となり、世界でも旋風を巻き起こす“ウィーン生まれのミュージカル”。パタイ氏は「ウィーン劇場協会の作品は世界21の国で上演されていますが、このサクセスストーリーは23年前、(オーストリア)海外での初めての上演として宝塚歌劇団が『エリザベート』を上演してくれたところから始まります」と語り、日墺の特別な結びつきを強調。ただ意外にも宝塚歌劇団でウィーンミュージカルを上演するのはその『エリザベート』に続き2作目とのことで、「とても身の引き締まる思い。月組は先日『エリザベート』も上演しましたが、それとは世界観も雰囲気も、楽曲の毛色も180度違う作品。新たな挑戦が出来ることを光栄に思います」と珠城。作品は、ウィーンの老舗ホテルの跡継ぎジョージと、オーストリア出身のハリウッド女優エマを中心に描かれる物語。珠城は「男女の恋愛だけでなく、家族愛、友情、祖国愛が美しい音楽にのせて紡がれる。観終わったあとに温かいものが心に残る作品。家族や友人の大切さや、自分自身が将来どうなっていきたいのかと考えることがいかに大事かということを、作品から感じ取っていただけるのではないかなと思います。丁寧に、いい作品に仕上げていきたい」と意気込み。珠城とともにウィーン公演を観劇したという美園は「華やかでスタイリッシュなパフォーマンスに圧倒された。その感動を余すことなく日本の皆さまにもお届けできるように頑張りたい」と話した。音楽は、オーストリアの国民的シンガーソングライター、ラインハルト・フェンドリッヒによるヒット曲で綴られる、いわゆるジュークボックスミュージカル。中でもタイトル曲『I AM FROM AUSTRIA』はオーストリアの第二の国歌とも呼ばれる、オーストリア国民が愛する曲。会見の冒頭で珠城と美園がこの曲を含む2曲のパフォーマンスを披露したが、協会の芸術監督であり脚本も手掛けたクリスティアン・シュトゥルペック氏は「ふたりがパーフェクトにこの役が要求する重要な部分を表現されていて本当に感動しました」と絶賛。また演出を手掛ける齋藤吉正は「この曲はオーストリアそのものの歴史、文化が描かれている。我々はこの作品が持つメッセージ、さらには作品をこえたオーストリアという国がもつカルチャー、歴史をこの作品を通じて伝える義務があると思っている」と気を引き締めて語った。公演は10月4日(金)から11月11日(月)まで兵庫・宝塚大劇場、11月29日(金)から12月28日(土)まで東京宝塚劇場にて上演される。
2019年08月22日ただの映画音楽コンサートではない! フルートが魔法のステッキになり、フラッグが舞踏会のドレスに変わり、パーカッションが都会の喧騒を鮮やかに彩る!! 世界中で愛されるディズニーミュージックに、マーチングバンドとダンスパフォーマンス、デジタル映像を融合させ新たな息吹を注んだ「ブラスト!:ミュージック・オブ・ディズニー」が、イリュージョンを巻き起こす。そんな奇跡の公演が、7月10日より全国ツアー開始。そして、待望の東京公演が8月20日(火)に、東急シアターオーブにてスタートした。【チケット情報はこちら】東京公演初日の20日には、スペシャルサポーターの武田真治が、筋肉隆々の腕でサックスを携えてステージに登場。もう1人のサポーター小島瑠璃子が見守る中、アンコール曲で情熱的なサックスの音色を響かせた。『ブラスト!』は、パーカッション、金管楽器を中心とした60種類の楽器を演奏するマーチングバンドと、フラッグやバトンを操るダンサーたちによって構成されたエンターテインメント集団。今回の公演では、ディズニーミュージックがテーマということもあり、会場には子ども連れの家族や学生たち、若いカップル、そして熟年夫婦まで、まさに老若男女が埋め尽くす盛況ぶりだ。スペシャルサポーターの武田と小島、さらにブラスト入団歴20年も石川直が、会場の雰囲気をこう語る。武田「山形公演を観にいったんですけど、お客さんがめちゃめちゃ盛り上がるんです!拍手で演奏できなくなるんじゃないかって不安になるくらいにね」小島「とにかくお客さんが熱狂していますよね。演奏が進むに従って反応が日本人離れしていくんですよ!」石川「お客様と僕らが一緒になって作り上げていくステージで、最後はホームパーティのような雰囲気になるんです!」公演は、往年の名曲「星に願いを」を始め、美女と野獣やアラジンなど人気作のテーマ曲の他、オリジナルメドレーを含む全17曲以上を披露。映画のワンシーンを彷彿とさせるファン心をくすぐる演出を随所に加えたパフォーマンスと、ダンサーかと見間違えるほどアクティブに動き回る金管楽器奏者たち、そして圧倒的されるパーカッションのリズムで、見るもの全てを魔法の世界へ引き込んでいく。武田「ディズニーの名曲は楽曲そのものにドラマがあって、聞いたその時の自分や映画のシーンを思い出したりすることで音楽の広がり方も違うと思いますし、年齢も選ばないと思います。だからみんなに見て欲しい。特に若い学生さんは人生観が変わりますから!」小島「楽器の持つ、心の奥の方が震える感じが体感できるコンサートです。すべての方に見ていただきたいです!デートで提案されたらセンスのいい方だなって思います」東京公演は東急シアターオーブにて9月1日(日)まで、以降は8都市を巡り9月16日にファイナルを迎える。チケットは発売中。取材・文浅水美保
2019年08月21日「ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」“飛翔”」製作発表が、東京都内の体育館にて行われた。【チケット情報はこちら】集英社「週刊少年ジャンプ」にて連載中の古舘春一による「ハイキュー!!」を原作に、2015年から7作品が上演された演劇「ハイキュー!!」シリーズ。“飛翔”から、烏野高校の全キャストが刷新。オーディションで選出された新生鳥野が始動する。8月19日の“ハイキュー!!の日”に実施された製作発表には、日向翔陽役の醍醐虎汰朗、影山飛雄役の赤名竜之輔がキャラクタービジュアルで登壇。これまでに引き続いて演出・脚本を手がけるウォーリー木下も参加し、彼らの門出に華を添えた。製作発表は「ハイキュー!!」を連載している集英社、週刊少年ジャンプ・中野博之編集長による激励でスタート。その後、前回シリーズで日向を演じた須賀健太からの応援コメント映像がサプライズとして流された。映像には、劇団☆新感線「いのうえ歌舞伎《亞》alternative『けむりの軍団』」で須賀と共演中で「ハイキュー!!」ファンの古田新太、池田成志の姿も。須賀は「どんな“新生烏野”が飛び出すのか楽しみにしています!」とメッセージを贈る。さらにサプライズは続き、会場には原作者・古舘の描いたモノクロ原画が。サブタイトル〝飛翔?と大きく冠されたイラストを受け取った醍醐と赤名は「うわぁ、カッコいい!」と大喜び。ウォーリーも「感動しました」と続き、本作の構想を「ぶつかり合いを経て春高出場への覚悟を固めていく“人間ドラマ”に仕上げる」と紹介した。須賀から役を引き継ぐ思いを問われた醍醐は「偉大な先輩の真似ではなく、自分のフィルターを通した日向翔陽を“1から始める”つもりでリアルに演じたい」と意気込む。赤名は、自身の演じる影山を「ひとりの男として尊敬する」としつつ、「初の2.5次元舞台だからこそ伝えられるものがあると思ってがんばります」と強い気持ちをにじませた。それを受けたウォーリーは「本作から登場する“託す”という言葉になぞらえて、信頼関係を育んで相手に“託す”面白さを感じてもらえたら、きっと素敵な“頂”の景色が見られるんじゃないかと思います」と新キャストを鼓舞し、製作発表を締めくくった。公演は11月1日(金)から4日(月・休)まで、東京・TOKYO DOME CITY HALLにて。さらに大阪・宮城と巡演したのち、12月に再び東京へ凱旋する。チケットぴあでは、9月3日(火)11時より先行抽選を受け付ける。取材・文:岡山朋代(c)古舘春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会
2019年08月21日三谷幸喜の最新作『愛と哀しみのシャーロック・ホームズ』が9月1日(日)、世田谷パブリックシアターにて開幕する。“無類のシャーロック・ホームズ好き”を自認する三谷が思い入れ深く描いた本作は、まだ“名探偵”の評判を得る前の、未熟でがむしゃらな青年ホームズの冒険譚だ。主演に抜擢されたのは、出演舞台を観た三谷に「僕のシャーロック・ホームズがここにいる」と言わしめた柿澤勇人である。「嬉しかった。ああ、観てくれている人っているんだな、頑張って来てよかったなと思いました」稽古が始まったばかりの今は、ほぼ出ずっぱりの主人公のセリフを覚え、その人物像をいち早く捉えるべく、「稽古場で談笑している余裕がないです」と苦笑する。「いわゆる皆さんがご存知のシャーロック・ホームズではないんです。もちろん天才的な要素は持っているけれど、まだまだ子ども。三谷さんには“精神年齢は8歳くらいで、10秒以上じっとしていられず、何かしら動いていてほしい”と言われています。人にどう思われるかは気にせず、自分の世界に没頭している。そしてワトソンのことを父親のように慕っているので、ワトソンの奥さんに嫉妬したり(笑)。周囲の人たちが、“まともな仕事にもつけず、人の気持ちがわからないこんな子どもみたいなヤツを、どうしたら救ってやれるか”という視線でホームズを見ているんですね」ワトソン役の佐藤二朗とはすでに共演済みで気心の知れた間柄。佐藤独自の愉快な個性が三谷舞台でどう発揮されるかも気になるが、柿澤は「皆さんがイメージする二朗さんではないですね」と悪戯っぽく微笑む。「もちろん二朗さんがやるから要所要所面白いんですが(笑)、今回のワトソンは、父親のようにホームズを見守っている人物。笑いを仕掛けにいくのではなく、僕らのやりとりから自然な笑いが生まれるんじゃないかなと思っています。ホームズとワトソンの関係性がかなりキーになるので、今、僕と二朗さんは相当アタフタしています(笑)」佐藤と同様に、ホームズの兄を演じる横田栄司もかつて共演した心強い先輩だが、柿澤を含め3人ともに三谷ワールド初参戦。「二朗さんも栄司さんも、稽古場で“どうしよう~!”と初めての顔を見せてます(笑)。たぶん、僕もそう。そんな新鮮な緊張を楽しんでいますね」。そのほか、事件の依頼人である令嬢役の広瀬アリス、ワトソンの妻役の八木亜希子など、魅力の顔合わせで綴る“シャーロック・ホームズの成長物語”。三谷が仕掛ける世界で、うごめく人間たちの妙味を存分に味わいたい。「自己中心的で浅はかで、傲慢なホームズだけど、やっぱり愛される人でなければ。皆に愛されるホームズになって舞台に立ちたいと思います」予定枚数終了していた東京公演で追加席を発売中。取材・文上野紀子
2019年08月20日宝塚歌劇団花組トップスター明日海りおの退団公演となるミュージカル『A Fairy Tale-青い薔薇の精-』、レヴューロマン『シャルム!』が、8月23日(金)より兵庫・宝塚大劇場にて幕を開ける。「宝塚が大好きで、男役が何より好きでした」という明日海のラストステージにかける想いを聞いた。宝塚歌劇花組 宝塚大劇場公演 三井住友VISAカード シアター Musical『A Fairy Tale -青い薔薇の精-』/三井住友VISAカード シアター レヴューロマン『シャルム!』チケット情報『A Fairy Tale-青い薔薇の精-』で演じるのは、青い薔薇の咲く禁断の園に生きる精霊エリュ。幻想的な世界観の中、人々が現実だと信じている世界と、異次元の世界とを交錯させながら人間と精霊との交流を描き出す。「エリュは、他の精霊たちよりも少しプライドが高く、周りから一目置かれているような存在で、人間よりも自分のほうが優れているという意識があります。そんなエリュが、“精霊が大好き”という少女シャーロットと出会い、そのまっすぐさに惹かれていきます」。自然界では、人間に姿を見られると、大人になる前に忘れてもらわなければならないという掟があるが、「忘れてほしくない」エリュは、掟を破ってしまう。「思いが強すぎるという点では良くない精霊で(笑)、プロローグでは霧の中でしか生きられない状態から描かれます。ミステリアスで、人間ではない者のすごみや、切なさが表現できたらと思います。(作・演出の)植田景子先生が描かれる作品は、繊細な心の動きや感情の豊かさが必要とされます。私はすごく芝居が好きでこれまでも男役に対してこだわりを強く持って演じてきましたので、技術でというよりは、自分のすべてを役に預けて表現していきたいと思います」。稲葉太地が作・演出を手がけるショー『シャルム!』は、パリを舞台にした華やかなレヴュー。集大成ならではの、男役の魅力がたっぷりと堪能できるショーになりそうだ。「アダルトな雰囲気のプロローグから、スーツにハットの場面、軍服を着た中詰、黒燕尾など、宝塚歌劇の王道の中に、花組のいろんな面が見えるものになっています。トップになって初めてのショーも稲葉先生で、そのときは“ひな鳥”をイメージしたようなキラキラしたプロローグだったのですが、それから5年が経ち、このように変化しましたという姿を楽しんでいただければと思います」。2014年のトップ就任から5年あまり、トップスターとして花組を牽引してきた明日海。「たくさんのお役と素敵な作品に出会うことができ、その中で悩んだり、打ちひしがれたりと、常に自分との戦いでした。でもやっぱり、宝塚が大好きで、男役が何よりも好きという思いでここまでやってきました。卒業する日までは、公演のこと、サヨナラショーのことに専念して、自分が納得するものに仕上げたいと思います」。公演は8月23日(金)から9月30日(月)まで兵庫・宝塚大劇場、10月18日(金)から11月24日(日)まで東京宝塚劇場にて上演。東京公演のチケットは9月15日(日)発売開始。取材・文:黒石悦子
2019年08月20日2012年の『RENT』ぶりの舞台出演となる、石田ニコル。挑戦するのは、9月25日(水)より東京・TBS赤坂ACTシアターにて上演される新作ロックミュージカルA New Musical『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』だ。【チケット情報はこちら】7年ぶりの舞台を前に緊張を隠せないが「緊張は無駄だとも思うんですよ」と腹をくくった様子も見せる。「『RENT』の時は、ボイトレも演技もしたことがなかった。なにも色も味もついていない状態が新鮮だったと言ってくださって、人生で1番大きい経験となりました。でも終わったら「もっとできたんじゃないか」という考えが止まらなくて。もっと色んな経験を積んでから、もう1度チャレンジしたいと思いました」。舞台を観るのは好きだ。去年末、ある観劇中に「自分だったらどう演じるだろう」「私も歌ってみたい」と考えている自分に気づいた。「たぶん私、ミュージカルに出たいんだ、と自覚した頃、出演の話をいただきました。良いタイミングが重なった」。しかも共演者は、憧れの柚希礼音、『RENT』で共演したソニン、友人の清水くるみなど、願ってもないメンバーだ。「舞台に立っている回数が圧倒的に少ないので、すごい方達の中で私にしかできない役をどうするか……まずは喉を大事にして舞台に臨みたいです」物語は、19世紀半ばのアメリカ・ローウェルで自由のためにペンを手に戦うファクトリーガールズ(女性労働者)達を描く。「女性の差別問題は今の時代にも残っているけれど、この時代の女性はもっと辛い思いをしている。それをロックな音楽や物語でどう表現していくのか。観に来てくださる女性の勇気になればいいなと思いますし、男性の方にも響いてくれたらいいな。いろんな人に、女性や、人間の強さが伝わると嬉しいです」。石田が演じるマーシャは華やかな世界を夢見ている女の子。自分磨きに熱心で、ファッションが好きな部分は「モデルの自分に近いかも」と想像する。しかし恋愛に積極的なところは本人と違うようで、「着飾っている裏にはどんな思いがあるのかを見つけたい」と意欲的だ。近年はドラマや映画の出演も増えてきた石田。演じることについて、「1作にすごく時間をかける。モデルとはまた違う楽しさ」と言う。「ひとつのことについて考えるのはすごく好きです。しかも舞台はナマモノなので、毎公演同じではないことが面白い。楽しみです」上演は9月25日(水)から10月9日(水)東京・TBS赤坂ACTシアター、10月25日(金)から27日(日)まで大阪・梅田芸術劇場メインホールにて。取材・文:河野桃子
2019年08月14日7月28日(日)、劇団四季のミュージカル『ノートルダムの鐘』が京都劇場で幕を開けた。今回は2017年から約2年ぶりの上演。が、前回は2か月の期間限定上演だったため、チケットは発売後すぐに完売した。その反響を知りながら、観ることのできなかった人たちが期待を胸にここにいる。団四季「ノートルダムの鐘」チケット情報1482年、パリ・ノートルダム大聖堂の鐘が鳴り響き、幕が上がる。大聖堂に集まる人々、厳かな聖歌隊の歌、語りかけるノートルダムの大助祭・フロロー。フロローがローブを脱いだ瞬間、時代は彼の過去へとさかのぼる。フロローは“みなしご”として弟と大聖堂に引き取られるが、奔放な弟は大聖堂を追放され、その後、弟はジプシー女性との間に生まれた息子をフロローに託して病死する。葛藤の末、フロローは怪物のような容貌の赤ん坊に「できそこない」という意味の「カジモド」と名付け、大聖堂の鐘楼に閉じ込めて育てることにする…。物語のプロローグが、前回と比べて非常に印象に残る。フロローとカジモドの“宿命”。それは物語の根幹をなし、大きく激しい流れで最後へと導いていく。聖歌隊の歌声も、さらに美しく整い、そのハーモニーは清らかに、力強く、観客を大聖堂の中へと誘う。鐘楼にこもって鐘をつき、青年となったカジモド。外の世界に憧れる気持ちを、石像たちに語りかけ、歌う『陽ざしの中へ』。1年に1度の道化の祭りの日。飛び出した街で、カジモドは美しいジプシーの踊り子・エスメラルダに出会い、恋をする。フロローは彼女に邪悪な欲望を抱き、戦場から赴任して来たハンサムな警備隊長・フィーバスも心奪われる。3人の熱い視線がエスメラルダに注がれ、交錯し、スパークする…。エスメラルダを軸として展開する4角関係の愛を描いた物語。人間を容姿や地位だけで判断してはいけないというテーマ。それが『ノートルダムの鐘』と観ていたが、ドラマはもっと深く人間の光と闇をあばき、4人それぞれの苦悩を、そしてその「宿命」をくっきりと浮かび上がらせる。名古屋公演の折、海外クリエイティブスタッフが来日して作品をブラッシュアップした。キャラクターはより生き生きと、関係性を際立たせ…。その成果は物語全体に確実に表れている。が、「こんなシーンがあった?」と思うほど違う印象。合唱の素晴らしさに、そして作品の核の部分に触れた2度目。この作品は2度観の効用が体感できる。公演は2020年1月19日(日)まで京都劇場にて上演中。取材・文:高橋晴代
2019年08月09日