育児放棄や虐待によって罪のない子どもたちが巻き込まれる事件を目にすることが日本でも増えていますが、今回ご紹介するのは、中東の子どもたちの過酷な現状を描いた話題作です。その作品とは……。全世界が絶賛する『存在のない子供たち』!【映画、ときどき私】 vol. 246中東の貧民窟に生まれた12歳の少年ゼインは、学校にも通わずに朝から晩まで両親に働かされていた。両親が出生届を出さなかったために、法的には社会に存在すらしていないゼイン。唯一の支えは妹のサハルの存在だけだった。ところが、サハルが11歳で強制結婚させられてしまい、怒りと悲しみからゼインは家出をしてしまう。そこでは厳しい現実が待ち受けていたが、ゼインは「僕を産んだ罪」を理由に、自分の両親を訴えることを決意するのだった……。中東が抱える貧困と移民の問題に真っ向から挑み、高く評価されている本作ですが、今回は全身全霊を捧げたこちらの方に、あふれる思いについてお話いただきました。レバノンが生んだ美しき才能ナディーン・ラバキー監督!2007年には、『キャラメル』で監督・脚本・主演を務め、一躍注目を集めたラバキー監督。女優としても幅広く活動しており、本作ではゼインの弁護士役として出演もしています。そこで、自身が目撃した現実やいまの思いについて語っていただきました。―まずは、多くの難民を受け入れてきたレバノンの現在の状況から教えてください。監督レバノンは文化的にも、国民の気質的にも、誰に対しても温かく歓迎するところがあるので、これまでに150万人以上の難民を受け入れてきましたが、これはいろいろな意味で大きな挑戦でもありました。そのなかで私たちはベストを尽くしてはいますが、本来この責任は世界でわかち合わなければいけないもの。難民条約にサインしたにも関わらず、多くの国がその責任を果たしていません。それゆえに、ヨルダンやトルコなど近隣諸国が難民の60%以上を受け入れており、経済的にも社会的にも大きな影響を受けています。世界で考えたら、本来はもっとできることがあるはずですが、これが現状です。―では、本作のストーリーは監督が実際に見たものが描かれているのでしょうか?監督レバノンでは苦しんでいる人々を当然のように目にする状況にあります。食べ物が足りないとか、戸籍がないために世間から“見えざる者”になってしまっている人や違法滞在者など、本当につらい現実です。水も電気もなく、まるで下水道のなかにいるかのような耐え難い環境で暮らしている人たちも多く、収容所やキャンプでは寒さが原因で亡くなる方もいるほど。いまでは難民だけでなく、レバノン人にとっても非常に厳しい状況が続いています。そして、そのなかでもっとも心を痛めているのが、子どもたちについてです。犠牲を払っている子どもたちの“声”を届けたかった―その思いがこの作品を作るきっかけとなりましたか?監督彼らが寒さに震えていたり、お腹を空かせていたり、学校に通えなかったり、子どもなのに仕事をしなければいけなかったり、つらい思いをしている姿を見るたびに、「私たち大人がいかに彼らを失望させているのか」「いかにシステムが欠落しているのか」を感じています。子どもたちが一番もろい存在のはずなのに、一番大きな代価を彼らに払わせてしまっているのです。その結果、自分の誕生日も知らず、無言のままに重荷を背負わされ、毎日虐待されるつらい生活が普通の人生だと考えている子どもはたくさんいます。そして、彼らは存在を知られることなく生まれ、存在を知られないまま亡くなっていくのです。私はそういった現実を見ているうちに、「何かしなければいけない」という責任を感じましたし、この映画を作ることを義務だと思うようになりました。つまり、子どもたちは声なき者だからこそ、この作品は彼らの“声”として届けたかったのです。―今回は主人公のゼインを演じた少年が本物のシリア難民であることをはじめ、全員がプロの役者ではないそうですが、どのように選びましたか?監督本作は3年間かけてリサーチをしてから脚本を書いたので、私自身が見たものからインスピレーションを受けており、事実が基になっています。キャスティングについても、現実世界で同じような境遇にある人を探すという方法で、彼らを見つけることができました。たとえば、ゼインの外見は、栄養不足が原因で実年齢よりも体つきが小さい子どもたちをたくさん見てきたということを反映させています。キャラクターのイメージとしては、家族のために早く大人にならなければいけなかった環境にあったため、聡明さと路上で生きるタフさを持つ、大人のような子ども。それが頭のなかで描いていたゼイン像でしたが、想像していた通りの少年と出会ったときは奇跡のようでした。―彼らの実人生が役に影響を与えた部分もありましたか?監督通常の映画であれば、脚本や監督のイメージに役を合わせていくものですが、今回は彼らの個性をベースにして、私たちがそこに合わせていくような作り方を意識しました。そもそも彼らの生活や人物像というのは私が想像で作り上げてはいけないものだし、そんな権利は自分にはないと感じていたからです。それほど現実にはリアルな苦しみと困窮があるわけだから、なるべく真実を捉えたいと考えていました。彼ら自身の経験や感情を私たちが描こうとしている物語やキャラクターを寄せていったので、スタッフも演者たちも現実とフィクションがわからなくなって混乱することもあったくらいです。演者が自分の経験をアドリブで語ることもあった―そのなかで忘れられない出来事もありましたか?監督実際、彼らが本能的に自分の経験を話すようなアドリブも多くありました。たとえば、子どもから訴えられたゼインの母親が「あなたは私のような状況に置かれたことがないからそんなことが言えるんだ」と弁護士役の私に向かって言うシーン。そのなかで、母親役の女性が「お金がなくて子どもに砂糖と水しか与えられない経験をしたことがないでしょう?」と訴えるのですが、これは彼女自身の経験です。彼女は映画のなかに出てくるスラム街に住んでいる人ですが、あの瞬間はゼインの母親としてではなく、自らの思いを語っていたのです。ほかのみんなも同様のことをしてくれました。―だからこそ、俳優では演じられないようなリアルな表情には思わず言葉を失いました。監督自らの現実と演じている役が入れ替わってしまうこともありましたが、彼らの言葉はすごく重要だったので、そういったものが自然に起きるようなオープンな現場は意識していたところです。つまり、彼らが「どんなことを言っても大丈夫なんだ」と自由でいられる環境をしっかり用意したいと思いました。それによって、彼らも“翼”を持つことができたのではないかと感じています。―とはいえ、撮影中に問題が起きたことも多かったのではないでしょうか?監督確かに、演者が翌日来ないかもしれないといった我々ではコントロールできない部分でのリスクはつねに負い続けていた作品だったと思います。というのも、戸籍や証明書を持っていないような人も多かったので。実際、ゼインを助けるエチオピア移民のラヒルを演じた女性が、拘束されたシーンを撮ったあとに逮捕されてしまったことがありました。そのときは、ラヒルの子ども役を演じていた赤ちゃんの両親も逮捕されてしまい、その先がどうなるのかわからない状況に陥ってしまったこともあったほどです。この方法でしか作ることができなかった作品―そんななかで、どのようにして作品を完成まで導いていったのでしょうか?監督そもそも大きなリスクがある作品だとわかっていたので、私たちは完全にインディペンデントで製作することにしていました。私の夫であるハーレドもプロデューサーとして入っていますが、ここまで大変だと知っていたら彼もやらなかったかもしれないですね……。まずは製作する場所も何もないところからスタートしなければいけなかったのですが、予定していた刑務所が閉鎖してしまうことになったり、せっかく見つけた子役たちもいま撮らなければ大きくなってしまうこともあったりしたので、すぐに撮影を開始しなければいけませんでした。ただ、子どもも大人も演技についてはまったくの未経験。「アクション!」といって求めているものをすぐに演じてくれるわけではなかったので、彼らとも時間を過ごす必要がありました。製作期間中はカメラマンも編集者もみな同じアパートで作業してくれました。編集などを含め完成までに2年。本当に小さな現場でしたが、これ以外の方法でこの作品を作ることはできなかったと思います。―撮影自体も困難が伴ったと思いますが、身の危険を感じることはありませんでしたか?監督もちろん、とても危険な場所ではありましたが、危害を加えられるというよりも、公害のような環境の問題のほうが大きいと感じました。というのも、貧困地域では雨が降ると、下水から水が溢れてきて、水浸しになってしまうからです。そのため、不衛生で臭いもすごいし、空気さえも汚染されているのがわかるほどだったので、私も熱を出してしまったことありました。しかも、当時私は2人目の子どもを出産したばかり。撮影の合間には授乳のために家に帰らなければいけなかったので大変でしたが、どんなに危険な状況でも、私たちは大きな目的があったし、使命感もあったので、それが続ける強さに繋がっていたと思っています。―まさに意志を貫く強さを監督から感じます。それを支えているものは何ですか?監督彼らは同じ状況に置かれたままなのに、「私は家族と幸せになっていいんだろうか」という罪悪感をいまだ抱いている部分もあり、心理的な負荷はまだ乗り越えられてはいません。「自分にはやらなければいけないミッションがあるんだ」という感覚があるからだと思います。人が存在しているのには、それぞれに理由があると考えています。私は恵まれていることに何かを変えることができるかもしれない自分なりの貢献方法や理由を見つけることができたと思っています。「ひとりひとりが物事を変えることができる」という考え方は甘いと言われるかもしれませんが、私は心からみなが自分なりにできることがあると信じているのです。その変化というものは、たとえ大きくなくても、他人の人生や命に影響を与えられることができると思っています。そんなふうに自分の目標や夢、そして存在理由を感じられることが、私にとっては毎朝起きる力になっているのです。日本でも同じ思いを感じている人はいるはず―それでは最後に、これから観る方に向けてメッセージをお願いします。監督状況は違っていても、同じような思いをしているような人は世界中にいるはずなので、ただ遠い国の話という風には感じないと思っています。実際、こういった問題はレバノンだけではなく、アメリカでも子どもの7人に1人のはお腹を空かせているような状況ですし、コミュニティのなかで端に追いやられてつらい思いをしている人は文化や国に関係なく、日本にもいるはずです。だからこそ、きっとみなさんの心に触れる作品だと思っていますし、人類はこのまま子どもたちに対する不公平さに目をつぶっていくことはできないと、私は信じています。目をそらしてはいけない現実がそこにはあるそれぞれの人物が放つ存在感と物語の持つ強さに圧倒され、激しく心を揺さぶられる本作。現代社会が抱える問題を描きつつ、「自分にできることは何か」「生きるとは」「愛されるとは」といった普遍的な思いがあなたのなかにも生まれるはず。映画の持つ力を目の当たりにすることができるいま観るべき1本です。胸を引き裂く予告編はこちら!作品情報『存在のない子供たち』7月20日(土)よりシネスイッチ銀座、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館ほか全国公開配給:キノフィルムズ©2018MoozFilms/©Fares Sokhon
2019年07月19日本年度ゴールデン・グローブ賞やアカデミー賞にて『ROMA/ローマ』や『万引き家族』と外国語映画賞を競ったレバノン代表作品『カペナウム/Capernaum』(原題)が、邦題『存在のない子供たち』として7月、日本公開されることが決定した。ストーリーわずか12歳で、裁判を起こしたゼイン。訴えた相手は、自分の両親。裁判長から「何の罪で?」と聞かれたゼインは、まっすぐ前を見つめて「僕を産んだ罪」と答えた。中東の貧民窟に生まれたゼインは、両親が出生届を出さなかったために、自分の誕生日も知らないし、法的には社会に存在すらしていない。学校へ通うこともなく、兄妹たちと路上で物を売るなど、朝から晩まで両親に働かされている。唯一の支えだった大切な妹が11歳で強制結婚させられ、怒りと悲しみから家を飛び出したゼインを待っていたのは、大人たちが作ったさらに過酷な“現実”だった――。カンヌをはじめ映画賞を席巻した衝撃作パルム・ドールに輝いた是枝裕和監督作『万引き家族』とともにカンヌ国際映画祭を震わせ、コンペティション部門「審査員賞」「エキュメニカル審査員賞」を受賞した本作。その後もゴールデン・グローブ賞ならびにアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた。メガホンをとったのは、『キャラメル』(’07)で監督・脚本・主演の一人三役を果たし、カンヌ国際映画祭の初上映で話題を集めた後も多くの映画賞を受賞したナディーン・ラバキー監督。女優としても活躍しており、5月14日より開催される第72回カンヌ国際映画祭<ある視点部門>の審査員長も務めることが先日発表されたばかり。リサーチ期間に3年を費やした本作は、主人公ゼインをはじめ出演者のほとんどは彼と似た境遇にある演技未経験の素人ばかり。感情を「ありのまま」に出して自分自身を生きてもらい、彼らが体験する出来事を演出するという手法をとった結果、リアリティを突き詰めながらも、ドキュメンタリーとは異なる“物語の強さ”を観る者の心に深く刻み込むことに成功。いまも全世界へと広がり続けている絶賛の波が、ついに日本へも押し寄せる。目をそらしたくなる貧困の生々しさの中で、必死に生きようとする彼らの強いまなざしやその歩みには、胸を打たれずにはいられない。断ち切ることも抜け出すこともできなかった、ちいさな存在が起こすセンセーショナルな展開に感情を揺さぶられ、深く自身に問わずにはいられない衝撃作を目撃して。『存在のない子供たち』は7月、シネスイッチ銀座、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2019年04月23日イランに引っ越してきて、早いもので半年が経ちました。 ヒジャブ生活にも慣れて、言葉も少しずつ覚えて。最近では人と話すのが楽しくなってきました。 そんな私ですが、先日初めてのイラン近隣国への旅行を体験しました! 初めての中東旅行。行き先は、「レバノン」と「トルコ」です。今回は「ヒジャブを外して近くの国をお散歩-レバノン編」を紹介します。 中東旅行の穴場!レバノンってどんな国? シリアやイスラエルに隣接し、地中海に面する国。 飛行機のチケットを取る前に、地図でみて「危なくないかな。」と少し不安になる位置にある、サイズは岐阜県程度、国民も600万人もいないくらいの小さな国。※エリアによっては危ないとされているところもあるようなので、事前に調べることをお勧めします。 ドキドキしながら訪れた初レバノン。結果、ハッとするくらい綺麗な景色と、地中海からやってきた美味しいレバノングルメと、おおらかな人たちに癒されるステキな旅となりました。 写真多めで紹介します! あなたはどっち?首都ベイルート、それともゆったりしたリゾート街 空港からホテルへの移動で出会ったUBERの運転手さんはこう言いました。 「ベイルートはビジネスの中心。買い物をしたいならベイルートをお勧めするよ。人も多くて賑やかだよ。ジュニエ(ベイルートの隣町、海辺)は、海が近くて人が少ない。ゆっくりしたいならジュニエだよ。」 わたしたちが選んだのは、ジュニエ!テヘランは海から遠く、人が多くて…。(東京よりももっともっと人口密度が高いんです!)ゆっくり、海を見て、シーフードを食べたいねと、海辺のホテルを予約しました。 ジュニエの景色はこんな感じ! 人が本当に少なくて、海の音を聞きながら、ゆったりゆったり過ごすことができる街でした。 UBERの運転手さんに教えていただいた現地の人に大人気のレバノン料理屋さんや(35ドルで飲み放題、無限にレバノン料理が出てくるコスパの良さ…!) 波の音と沈む夕日に癒されるシーフードレストランや 昼間から青い海を眺めながらビールとシーシャ(水タバコ)を楽しむことができるレバノンレストランまで。 外食に飽きたら、品揃え豊富なスーパーで買い物をしてお部屋ごはんも◎。 レバノン=中東なので、イスラム教色が強いのかな、ラマダン中だしな。と心配していたのですが、イスラム教とキリスト教徒が半々程度でいるようで、アルコールもレストランはもちろん、スーパーやコンビニのような小さなお店でも豊富に取り揃えてありました。 品揃えにびっくり!ジュニエ最高! (でも、少しは観光もしないとな。)と思い、本当に少しですが、観光もしました。 世界遺産ビブロス、首都ベイルートを少しだけ観光してきた! 首都ベイルートから北に30キロ。レバノンに5つある世界遺産のうちの1つがあります。大きな十字軍の城砦跡をはじめとする、遺跡群が海をバックに残っています。人が全然いなくて、6月は気候もよくて気持ちよく観光できました! そして観光を終えると、大きなスーク(バーザールのようなもの)があり、買い物をしたり、かわいいカフェで寛いだりもできます。 屋外にあるバーカウンターが最高に可愛くて、思わずパシャり。 そして、ベイルートへ!一気に車や人の量が増えます。モハメド・アル・アミンモスクを少し見学して。(女性は黒いマントを貸し出ししていただけます。) おしゃれなシーフードレストランでランチをして。 kumamotoという名前の牡蠣がありました。九州出身のわたしは、嬉しくなってkumamotoをおかわり! そして中東のパリと呼ばれる街並みを散歩して。 あまりレバノンだけに旅行に行く機会はないかもしれませんが、中東に旅行に行く際は、気分転換に、レバノンもいいのかも!と思えるような国でした。はやくもまたレバノンに行きたい!と思うほど。 アラビア語とフランス語がよく聞こえてくる、イスラム教とキリスト教が入り混じる不思議な中東の国、レバノン。これからも、行ったことのない国に気軽に行けるフットワークを持って生活していきたいなと思います! Mami
2018年06月25日レバノンの国民は、映画館で『ワンダーウーマン』を見ることが難しくなるかもしれない。その理由は、主演女優がイスラエル出身のガル・ガドットであること。ここ数十年レバノンとイスラエルは敵対関係にあり、アラブ諸国はイスラエルの製品を禁じている。しかし、『ワンダーウーマン』は主演女優がイスラエル人であるものの、製作国はアメリカだが…。同映画のレバノンでの上映を禁止させようと求めているのは、「Campaign to Boycott Supporters of Israel-Lebanon」というグループで、ガルに対し「イスラエル軍の元兵士であり、ガザ地区に対するイスラエル軍の方針をサポートしている」と非難。「映画が公開される1時間前でもいいから上映を禁ずるべきだ」と主張している。「AP通信」によると、『ワンダーウーマン』を上映禁止にするには、6人から構成される経済省の委員会からの提言が必要だというが、そういった動きはまだ出ていないようだ。また、レバノンの首都ベイルートでは、映画のポスターやデジタル看板があちらこちらに飾られており、少なくとも1つの映画館での公開が水曜日(現地時間)から始まる。(Hiromi Kaku)
2017年05月31日料理も大好きですが、食べるのも好き。珍しいもの、話題のもの、伝統的なもの、あっちに美味しいものがあると聞けば飛んでいき、こっちにうまそうなものがあれば駆け込んで食べております。 パリは世界の胃袋ですからね、食べられないものなんかめったにありません。渡仏したばかりの15年前、その食のバラエティにびっくりしました。レモン味のチキンが有名なセネガル料理とかファラフェルで有名なイスラエル料理など知りませんでした。カンボジア料理とかグルジア料理とかペルー料理とか……。挙げればきりがありません。香辛料専門店なんかも結構あって、入ると世界中のスパイスが何百種類と売られています。 少し前にここで紹介しましたグーラッシュというウイーン料理。見た目は牛肉カレーのようですが、カレー粉は使わずパプリカで作ります。我が家ではカレーにとってかわり大人気。 イスラム系移民とともにフランスに渡ってきたクスクスもよく作ります。肉と野菜の串焼きがクスクスという世界一小さなパスタの上にどんと載っている、豪快な食べ物です。アフリカの唐辛子ペースト、アリッサをお好みでつけて食べるんですが、やみつきになる美味しさ。 昔、フランスはベトナムの宗主国でしたから、ベトナム料理店もかなりあります。行きつけのフォー専門店のおやじは私が顔を出すと店では出してない魚を発酵させた、超酸っぱい酒のアテのようなものをこっそり出してくれます。これがうまいんです。日本の珍味みたいな感じですかね。 中華街が2つあるので中国料理もかなり浸透しています。行きつけの店は誰一人フランス語をまともに話せません。顔なじみなので、話が通じなくても頷くだけでいろいろと出してくれます。ここの麻婆豆腐は八角が超利いており、猛烈にスパイシー。たまりません。 スペイン料理のおやじはいつも私が行くと、熟成された生ハムをちょこっと出してきます。これが口の中で溶けるんです。どんぐりだけを食べて育った豚です。とにかく、まさにパリは世界の胃袋。それだけ移民が多いということでしょうな。 じゃあ、今日はなすを使ったレバノン料理をご紹介しましょう。なすと言えば、麻婆なすとか、なす田楽とか、なすのおしんこなんかを想像しますが、違います。あのやぼったいなすが超おしゃれな一品に大変身しますよ。料理といってもディップのようなおつまみ、なすのキャビアと申します。キャビアはあのチョウザメのたまごのキャビアのこと。ナスのツブツブ感をキャビアに見立てたのだとか。こじつけ?(笑)でも、フランスではパンに載せて、食前の一品として白ワインなんかと一緒に食します。最高ですぞ。 材料:米なす2本(約600g)、細かくみじん切りにしたにんにく2片、オリーブオイル大さじ3、レモン汁大さじ1、イタリアンパセリのみじん切り大さじ1(お好みで)、塩・こしょう適量。 なすを縦半分に切り、火が通りやすいよう切り口に格子状の切り目を入れ、オリーブオイルを振りかけます。切り口の方を上にしてオーブン皿に並べ、220度に熱したオーブンで20分くらい(※なすの大きさによる)焼きます。しっかり火が通ったら、スプーンでなすの中身だけを容器に取り出します。そこにレモン汁、にんにく、パセリ、オリーブオイルを加え、塩・こしょうで好みに味を調えたら、フォークの背でなすがトロッとなるまでよく潰しましょう。滑らかなディップにしたい場合はミキサーにかけてもOK。完成したらラップをして冷蔵庫でよく冷やし、パンの上に載せていただきます。 日曜日の午後、白ワインに自家製なすのキャビア、ああ、なんとおしゃれなことでしょう。 ボナペティ! 本誌連載の料理をえりすぐったレシピ本『パリのムスコめし世界一小さな家族のための』も絶賛発売中です!
2017年03月21日ライフスタイルショップ・ブリック アンド モルタル(BRICK&MORTAR)が、レバノン雑貨を紹介する期間限定イベント「From Beirut」を開催する。ブリック アンド モルタル 中目黒本店(東京都目黒区中目黒1-4-4 1階)では4月29日から5月15日まで、ブリック アンド モルタル ルミネ新宿店では5月18日から31日まで。「From Beirut」は、ブリック アンド モルタルによる日本文化のルーツを探すイベント。昨年6月に開催された、トルコのアイテムにフォーカスした第1弾「From Turkey」に続き、今回はシルクロードの西の果てにある、かつて中東のパリとも謳われたレバノンの首都・ベイルート近郊で出会ったプロダクトを紹介する。参加ブランドのうち、サンチュール・ドリアン(Senteurs d’ Orient)は、昨年秋に日本初上陸を果たしたブランド。世界中から探し求めた高品質の植物や花、アロマティックハーブ、オリーブオイル、パームオイルなどを素材に100%植物性の自然な香りと原料にこだわったホームコスメティックを展開している。ORIENT499は、エスニックなアパレルラインやスパイシーな香りのアロマキャンドル、ローカルアーティストによるオブジェなど中東伝統工芸技とモダンなテイストが同時に楽しめる雑貨を販売するセレクトショップ。レバノン製の商品の他、シリア、トルコ、モロッコなどからセレクトされたアーティスト作品や工芸品も取り扱っている。その他、香水の一大産地であるグラースで丁寧に生産されたハイエンドフレグランスを展開するフレグランス ヒューバート ファタル(FRAGRANCES HUBERT FATAL)や、古代オリエントに由来する自然派石鹸や自然派スキンケア商品を展開するORIENTAL BATH BEAUTYなどのアイテムも登場する。また、5月12日18時から21時にはブリック アンド モルタル 中目黒本店で、中東料理に精通する料理家のRanによるフードやレバノンワインが楽しめるレセプションも開催される。
2016年04月20日食用、医薬品、化粧品にも注目される有益な投資用家畜1月3日、中東のメディアグループ THE AL BAWABA のニュースサイトは、商品作物としてのダチョウの活用についての記事を掲載した。レバノンのベッカー高原(Bekaa Vally)の農場で、新しい商品作物としてダチョウが注目されている。ダチョウの飼育は有益な投資となり、得られる利益はその他の家畜によるものを上回るという。200羽以上のダチョウを飼育する農場主の Mohamed Yaseen が、ベッカー北部にダチョウ農場を始めたのは2006年、戦争によって南部の農場を破壊された後だった。ベッカー北部の気候と環境はダチョウの飼育に最適だったのだ。伝統的な農業をやめてダチョウ農場に切り替える者も増えている。概ね成功を得ているが、温度管理や空調の設備にはまだまだ難しい部分があるということだ。シリア情勢の悪化により動物飼料の価格も高騰している。皮膚オイルを化粧品に爪や卵も無駄無く活用農場のエンジニア Nasser al-Din は、ダチョウには無駄になる部分が無い。と言い切る。高タンパク低脂肪、鉄分も豊富な肉は味もクセが無く、多くの人に好まれている。アメリカの食品協会は、心臓病やガン、糖尿病の患者にも勧められるバランスの良い食品としてダチョウの肉を挙げている。他の鳥は1キロ3ドルだが、ダチョウの肉は雄も雌も1キロ300ドル程度で売れるそうだ。また、ダチョウの皮膚にも高値がつく。皮膚の下から抽出されるオイルが医薬軟膏と化粧用クリームに使われるのだ。卵は食用またはインテリア装飾品として、爪はダイヤモンドを磨くために、まつ毛さえも無駄にならない。利益に比べ生産コストが高いという見方もあるが、Nasser al-Din は牛の飼育による経済効果よりも効率的で無駄が無いと言う。牛は1日に10キロ食べるがダチョウは2キロだ。成長も早く卵もたくさん産む。ベッカー高原のダチョウはレバノンへ送られ、ソーセージやハム、ケバブ、コロッケなど日常的な食材として使われている。化粧品としての活用はまだポピュラーではないようだが、今後の商品展開が期待されている。元の記事を読む
2013年01月05日