CYBERDYNEとPEZY Computingは8月24日、CYBERDYNEのロボットスーツHAL向けに適用可能な小脳処理機能と学習型汎用AI(人工知能)の共同開発を目的とした業務提携を前提とする資本提携を行ったと発表した。発表によれば、CYBERDYNEは7月10日にPEZY Computingに対し出資を行っており、今後HAL向けの小脳処理機能を含む信号処理技術および小脳機能を実装したプロセッサの共同開発を行っていく。PEZY Computingが2012年に開発したMIMD型では世界最大規模となる1024コアのメニーコアプロセッサ「PEZY-SC」は、現在の並列処理コンピューティングの主流であるSIMD型と比較して、同時に多種多様な演算処理を多並列に行え、柔軟な処理が可能となることから、運動と姿勢制御に大きな役割を果たす高性能な小脳機能の高度な実現が期待されるほか、高い省電力性により、バッテリー駆動を前提とするロボットスーツへの適用が見込まれている。HALには現時点でも複雑な信号処理技術が導入されているが、人間の小脳と同等以上の信号処理性能、反応速度および適応能力を有した小脳機能が実装されることで、利用者の身体機能や外乱に高速に適応する能力が向上し、より高度な使用と安全な運用が可能になると期待されている。これにより、HALを装着した利用者の小脳機能や医師の指示に従う知能を備えた学習型HALが実現できたり、職場や生活環境で安全かつ柔軟に機能する学習型汎用AIを備えたさまざまなロボットの実現につながっていくとしている。
2015年08月24日NECは8月20日、自動でデータの傾向を学習する人工知能ソフトウェア「NEC Advanced Analytics - RAPID機械学習 V1.1」を発売すると発表した。同製品は、高精度な画像認識やデータ関連性の分析を行うディープラーニング技術を搭載しており、事前に手本となるデータを読み込むことで、自動で傾向を学習する。カメラ画像からの不審者の自動検出などが可能となる「画像解析版」と、求職者の適性にあった求人企業の紹介など効果的なマッチングを実現する「人材マッチング版」という2種類のほか、検証評価用の短期ライセンスとして「検証評価版」が用意された。また、メモリに読み込むデータ量を圧縮することで、省リソースで高速処理を実現し、サーバ1台から導入することができるという。初年度年間利用料は「画像解析版」が530万円~(税別)、「人材マッチング版」が560万円~(税別)。「検証評価版」は1カ月間利用料が110万円~(税別)と設定されており、いずれも8月21日の出荷開始を予定している。
2015年08月21日データセクションは8月20日、人工知能(ディープ・ラーニング)を活用した「Web画像フィルタリングサービス」の提供を開始した。利用料金は月額10万円(税別)~となる。同サービスはAPI経由で提供され、Web上に多数存在する画像を自動判定し、ジャンル分類を行う。例えば、裸や事件などの不適切画像を自動で判定することで、自社メディアや掲示板、SNSなどに不適切な画像が投稿された場合でも、掲載前に自動で除外可能となる。また、学習データ(顧客が保有している画像判定したいデータ)を用意することで企業ごとのカスタマイズが可能になり、顧客ニーズに沿ったサービス提供を実現する。これにより、さまざまな画像の中から、性的・官能的な画像や凄惨な画像といった不適切画像を高精度かつ低コストで判定可能となる。同社は今後、さらなる高精度化を図るほか、動画・音声領域への展開や広告などのリコメンド領域での活用を目指す。また、同技術を利用するサービス展開にも取り組んでいく意向だ。
2015年08月21日篠崎愛らが所属する芸能事務所シャイニングウィルとクラウドファンディングサイト「GREENFUNDING by T-SITE」を運営するワンモアは、篠崎愛の人工知能(AI)をつくることでアイドルの活躍の幅を拡大していく実験プロジェクト「篠崎AIプロジェクト」をスタートした。同プロジェクトは、篠崎愛の人工知能(AI)をつくり、アイドルの活躍の幅を拡大していく実験プロジェクト。動機として、シャイニングウィルの担当者は「タレントの消費のスピードが早い」ことを挙げ、大切なタレントが「消費される存在」ではなく「一生残る存在」となることをめざすという。また、同プロジェクトでは、オルツの人工知能「al+(オルツ)」の技術を使用。「篠崎AI」は、本人の代わりにファンと24時間いつでも対話する、街中の電子案内板などの社会インフラに入るなどの展開を想定しているが、今回のクラウドファンディングでは、第一歩として、「最低限、対話できるスタートモデル」の開発を目標とする。支援額に応じたリターンが設けられており、その中には「『篠崎AI』に初期登録される会話パターンの「投げかけ・質問」項目を考えられる権利」や「篠崎愛と篠崎AIの対談イベント」への招待のほか、「"篠崎愛との焼き肉食事会"で一緒に焼き肉を食べながら会話できる権利」などが挙げられている。
2015年08月20日フロムスクラッチは8月19日、次世代型マーケティング・プラットフォーム「B→Dash」において、AIを搭載したマーケティング・オートメーション機能を新たに実装し、自動解析・最適化・施策提案が可能になったと発表した。新機能は、マーケティングプロセスにおける集客施策領域だけでなく、販売促進や売上・顧客管理の領域までを対象とする。これにより、最も収益が最大化されるカスタマージャーニー・ベストプラクティスの自動解析・要因分析や次回施策の提案、改善案の提示を実現したという。仮説生成の段階では、新機能によりLTVを基点とした分析が可能となり、ユーザーがどの施策から流入・回遊し、どのようなステップでエンゲージメントされるとLTVが最大化されるのかといったベスト・プラクティスを、AIが自動で明らかにする。それを基に、どのような施策を打てば収益が最大化されるのかといった次回施策の提案のレコメンドを行う。また、業務やレポート作成業務の自動化により、マーケターはマーケターにしかできない業務が可能に。ツールが代替できる業務を代替させ、それにより空いた時間を利用し、マーケターは人間にしかできない戦略策定業務等を行う。本質的な自動化の実現により、マーケターを作業員から戦略家へと変えていくことができるという。同社は今後、積極的・継続的にAI分野への研究開発投資を行い「B→Dash」の機能強化を行い、2015年内に300社への導入を目指す。
2015年08月20日オルツは8月19日、電通と共同で、人工知能による芸能人のデジタル人格クローン生成の共同プロジェクトを立ち上げることを発表した。同社の開発する人工知能「al+ (オルツ)」は、個人やその集合体のライフログデータなどを分析することで個人の人格をクラウド上に再構築するパーソナル人工知能だ。ユーザーが普段利用するさまざまなSNSやアプリケーションと連携することで、自動的にユーザーの思考を学習し、アプリケーション上にて仮想的に、ユーザーの人格コピーを生成することができる。同社によると、今後、同技術を搭載したアプリの提供を行うという。時期は未定で、まずはiOSからスタートし、順次Androidへも対応する予定となる。また、今回発表された電通との共同プロジェクトでは、コミュニケーションエンターテインメントコンテンツの提供を目的とし、芸能人のデジタル人格クローンの共同開発を行っていく。その第一弾として、アイドルの篠崎愛を人工知能上に再現するという。なお、同サービスの提供時期は発表されていない。(2015年8月19日時点)
2015年08月19日LINEは8月7日、日本マイクロソフトが開発・提供する人工知能「りんな」を活用した、人工知能(AI)型のLINE公式アカウントを提供すると発表した。LINEの企業向けAPIソリューション「LINE ビジネスコネクト」を利用している。LINEは2012年6月より企業向けにLINE公式アカウントの提供を開始し、これまで国内外で300を超える企業やブランドに導入されているという。また、2014年2月にはLINE公式アカウントの各種機能を企業向けにAPIで提供し、各企業がカスタマイズして開発・提供できる「LINE ビジネスコネクト」を発表。従来のLINEユーザーへの一方通行のメッセージ配信のみならず、特定のユーザーに対してより最適化されたメッセージ配信や双方向コミュニケーションなどを可能にしている。今回、提供を開始する人工知能(AI)型のLINE公式アカウントは、LINEの企業向けAPIソリューション「LINE ビジネスコネクト」と日本マイクロソフトが開発・提供する人工知能「りんな」の会話エンジン技術を活用し、企業向けの新たなマーケティングソリューションとして提供するもの。このサービスの導入により、企業は、LINE公式アカウントでの個々のユーザーとの会話内容をもとに、おすすめの商品や必要な情報を提供したり、ユーザーからのさまざまな問い合わせに対し、的確にLINE上で対応しつつ、オペレーターの人的コストを削減したりといったことができるようになり、新たなCRM/マーケティング・ツールとして、LINE公式アカウントを有効に活用できるという。なお、企業での導入に先駆け、日本マイクロソフトのLINE公式アカウント「りんな」(LINE ID:@ms_rinna)を公開しているので、ユーザーは「りんな」と会話を楽しみ、企業は自社の導入検討の参考にすることができる。
2015年08月10日LINEは7日、企業向けAPIソリューション「LINE ビジネスコネクト」と日本マイクロソフトが開発・提供する人工知能「りんな」を活用した、人工知能(AI)型のLINE公式アカウントを企業向けに提供すると発表した。新たに提供される人工知能(AI)型のLINE公式アカウントは、企業向けの新たなマーケティングソリューションとして提供されるもの。「LINE ビジネスコネクト パートナープログラム」認定の公式パートナーであるデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム、トランスコスモスを通じ「LINE ビジネス」対応ソリューションのひとつとして「りんな API for Business」を提供、企業のLINE公式アカウントに実装することで導入可能となる。同サービスを導入することで、企業は、LINE 公式アカウントでの個々のユーザーとの会話内容を元に、おすすめの商品や必要な必要な情報を提供したり、ユーザーからの問い合わせに対し、的確にLINE上で対応しつつ、オペーレーターの人的コストを削減したりなど、新たなCRM/マーケティングツールとして、LINE公式アカウントを活用できるとしている。
2015年08月08日LINEは7日、日本マイクロソフトと連携し、人工知能「りんな」を活用した人工知能型のLINE公式アカウントを、企業向けに提供することを発表した。「りんな」は日本マイクロソフトが開発した"女子高生AI"。7月末頃から、この技術を使ったLINE公式アカウント「りんな」が公開されており、SNSを中心に話題になっていた。「りんな」では、Bing検索エンジンで培ったディープラーニング技術と、機械学習のクラウドサービス「Azure Machine Learning」を組み合わせた会話エンジン技術を活用。LINE上でメッセージを送ると自動で返信があり、会話を楽しめる。今回、企業向けの新たなマーケティングソリューションとして、「りんな」の会話エンジン技術を利用した「りんな API for Business」と企業向けAPI「LINE ビジネスコネクト」を組み合わせた、LINE公式アカウントサービスを提供。導入することで、特定のユーザーに対して、より最適化されたメッセージ配信や双方向コミュニケーションを提供できる。ユーザーの会話内容をもとにしたおすすめ商品や必要な情報の提供など、マーケティングツールとしての利用や、オペレーターの人的コスト削減のための問い合わせ対応といった用途があるという。
2015年08月07日KDDIは8月6日、グローバル・ブレインが運営するコーポレート・ベンチャー・ファンド「KDDI Open Innovation Fund」を通じて、ファミリー向け知能ロボット「Jibo(ジーボ)」を開発する米国拠点の企業Jibo,Inc.に対し出資を行ったと発表した。Jiboは人間とのコミュニケーションを焦点とし、抽象的な型でありながら豊かな動作表現力を持つ、ファミリー向けの知能ロボット。マサチューセッツ工科大学メディアラボで、パーソナルロボット研究グループを率いるシンシア・ブリジール准教授が創業者として開発している。KDDIはこれを、ロボティクス市場における有望なスタートアップ企業であると判断し、資本提携を決定した。KDDIは同出資を通じ、Jiboが日本に進出する際はビジネス開発、マーケティング、ローカライズなどの幅広い支援を行うとともに、Jiboを中心とした、家族とモノの新しいコミュニケーションが生まれる世界を顧客に提案する。Jiboに対しては、電通ベンチャーズも出資している。携帯キャリアによるロボットへの取り組みとしては、ソフトバンクロボティクスが自社開発として「Pepper」の一般販売を開始、2カ月連続で1000台が1分で完売しているほか、NTTドコモも、しゃべってコンシェルの技術を活用した「OHaNAS」をタカラトミーと共同開発している。
2015年08月07日KDDIは6日、グローバル・ブレイン運営のコーポレート・ベンチャー・ファンド「KDDI Open Innovation Fund」を通じて、ファミリー向け知能ロボット"Jibo(ジーボ)"を開発する米国拠点の企業「Jibo」に出資したと発表した。出資額は明らかにされていない。Jiboは「顔認識」「写真撮影」「物語の読み聞かせ」「メッセージやスケジュールの読み上げ」「テレビ電話」の5機能がデフォルトで搭載予定のファミリー向け知能ロボット。開発者はSDKを通じてJiboの機能拡張が行える。Jiboはマサチューセッツ工科大学メディアラボで、パーソナルロボット研究グループを率いるシンシア・ブリジール准教授が創業者として開発。サービス用ロボット市場の拡大が見込まれ、ロボットと同名の企業Jiboはロボティクス市場における有望なスタートアップ企業であると判断され、今回の資本提携に至った。KDDIは今回の出資を通じて、Jiboが日本進出の際に、ビジネス開発、マーケティング、ローカライズなどの支援を行っていく予定。また、Jiboを中心としたサービスを提供していく。
2015年08月06日ここ数日、SNS上で女子高生AI「りんな」というLINE公式アカウントが話題となっている。公式サイトでの紹介は「マイクロソフトの女子高生AI」。サイト左上隅には日本マイクロソフトのロゴも掲載されている。公式サイトの「りんな」使用条件によると、「りんな」は人工知能ロボットであり、会話内容はマイクロソフトの検索エンジンおよび蓄積されたビッグデータに基づくもの。データの大半がインターネット上の情報に由来するため、自動および手動によるフィルタリングを行っているものの、正確でない情報や不快な情報が含まれる可能性があるという。日本マイクロソフト広報によると、りんなの件に関しては「多数の問い合わせをいただいているが、何も回答できない」とのこと。謎の女子高生AI「りんな」。その出自も謎ながら、なぜ女子高生なのか、なぜ「りんな」という名前なのか、なぜ黒髪セミロングなのか(担当者の趣味なのか? いや自分も大好きですけど)……いずれ明らかになるのかもしれないが、現時点では、あくまで自己責任で試していただきたい。
2015年08月05日●Googleの人工知能とは異なる性格日本IBMは30日、同社のコグニティブコンピューティングプラットホーム「ワトソン(Watson)」の開発状況について報道機関向けの説明会を開催した。ワトソンは、名前は見かけるが、内容については正しく理解されているとは言い難い。IBMが目指す第3世代コンピューティングシステムの現状と未来についてレポートしよう。○スタートはクイズ番組ワトソンは元々、コンピュータが自然言語で投げかけられた質問に対し、文脈を含めた質問の意図を理解し、回答する「質問回答システム」としてスタートしたプロジェクトだ。2011年にはコンピュータが学習能力のみで米国のクイズ番組「ジェパディ!」に答えられるのか、という企画が行われ、百科事典など書籍約100万冊分のテキストデータを学習したワトソンが人間と対決して勝利を収めている。この対決ののち、ワトソンは一般デベロッパー向けにも提供を開始している。IBMはワトソンを、自然言語を理解し、人間の意思決定を支援するための「コグニティブ・コンピューティング・システム」と呼んでいる。「コグニティブ」とは「認知」という意味の単語で、コンピュータが言語を認識し、文脈等を類推して学習を重ねていくアプローチのシステムだ。IBMはこのコグニティブ・コンピューティングこそが、コンピュータにおける第3世代のコンピューティングであると定義している。第1世代はデータを入力して単純な演算結果を得られた、初期のコンピュータ。第2世代が現在我々が使っているような、プログラム(アプリケーション)によってさまざまな汎用的な処理を行えるようになった状態だ。そして第3世代では、プログラムを用意しなくてもコンピュータが自分で収集した情報からさまざまに類推し、学習を深めていき、人間がコンピュータの助けによって専門知識を拡張したり、知識や技能の習得を早められるようになる。コンピュータやインターネットの登場(いわゆる情報革命)により、現代は、人間がひとりで処理するにはあまりに膨大なデータが溢れている状況だ。たとえばSNSから得られる非構造化データと、センサー類から得られるデータをそれぞれ相関性を持った形で処理する必要があるが、今のツールではそうしたことができない。ワトソンはまさに、そうした独立したデータ同士を分析し、意味のあるものに変換するためのツールなわけだ。○個性の異なるさまざまなワトソンワトソン自体は、IBMのサーバー上に構築されたLinux上で動作するソフトウェアだ。用途によってクラウドで提供されることも、ハードウェア込みのシステムで提供されることもあるが、例えば医療向けとサポート向けにまったく同じシステムが提供されるわけではない。ワトソンは各分野ごとに最適化するよう、取得するデータの重み付けや分析する言葉の傾向、出力内容などといったアルゴリズムを変更することができ、それが20以上のAPIのパッケージとなって提供されている。つまり、目的によって様々な個性を持ったワトソンたちがいることになる(ちなみに、ワトソンは物理的にも複数存在する)。それぞれのワトソンが蓄積した学習結果は、ひとまとめにされることはなく、個々のシステムとして育っていく。この点は、巨大なサーバーファームの中で世界中のデータを喰らって巨大化していく印象のある、Googleの人工知能とは性格を異にした存在だと言えるだろう。●ロボット店員の登場も近い!?○どう使われているのか基本的に、ワトソンの機能は「データを与えて学習させ、質問を投げかけるとデータから答えを類推して回答を導き出す」ことだ。質問の入力として自然言語を認識でき、データソースとしてはテキストだけでなく、画像や音声、動画、MRIやレントゲンからの入力なども加えられているという。ワトソンでは莫大なデータを人間では不可能な速度で解析し、最適な対応を導き出せるため、たとえば投資分野においては、アナリストなどから毎日発行される数千以上ものレポートを検証し、次に投資するべきターゲットの候補をピックアップする、といったことも実現できる。もっとも、これだけであれば、ちょっと気の利いた検索機能と大差ないように思えるが、ワトソンでは莫大なデータから、ワトソン自体が類推して「発見」または「発明」と呼べるような新しい回答を導き出せる点が異なる。現象としては、人間がふとしたことから思いつく「発想」に近い。たとえばその一例として、料理誌「ボナペティ」と共同で、ワトソンに化学や文化、食品に含まれる成分などの情報を与えることで、新しいレシピを考案する「シェフ・ワトソンwithボナペティ」という試みが行われ、実際にまったく新しいレシピも考案された。これは、単なる検索ではできない機能だ。また、医療分野ではiPhoneで肌を撮影した画像をワトソンが解析・学習し、メラノーマ(悪性黒色腫)とそうでない皮膚を見分けるシステムが構築されている。診断率が高くなれば、医療機関に通わなくても自己診断が可能になるし、専門家でなくとも早期に異常を発見して治療に結びつけることもできるようになるわけだ。また、現在は教育分野においてもコグニティブ・コンピューティングを役立てようと開発が進められているという。特定の問題をかかえる生徒に対し、教師が対応するためのアシスタント的な役割を果たすという。米国ではワトソンを使った「CogniToys」というおもちゃが登場している。このワニのおもちゃに話しかけると、無線経由でインターネットに接続し、ワトソンがバックボーンで処理をして子供からの質問に答える。子供の年齢や好みを理解して会話のレベルを変えることもできる。また、ワトソンをソフトバンクの「Pepper」のバックボーンとして動作させるデモでは、ヤマダ電機の店員として、客と4Kテレビの商談を自然な日本語で行う様子が公開された。ロボット店員というのもまるでSFのような話だが、すでに実現まであと一歩というところまで来ているようだ。●1年間で4年間分の進化をするワトソン○Watson Yearの1年は実世界の4年分ワトソンのロードマップについての質問があったときに、IBM Watson事業シニア・バイス・プレジデントのマイク・ローディン氏の口から、興味深い言葉がでた。ワトソンの開発チーム内では1四半期で通常の1年分の進歩があるという。つまり1ワトソン年=通常の4年分というわけだ。ローディン氏は、2013年にワトソンの事業をスタートさせたとき、2015年にどんなことができるかはさっぱりわからなかった。従って将来ワトソンがどうなっているかは、まったく予想ができないというのだ。通常の4倍もの速度で進化を続けるワトソンは、やがてさまざまな形で自然に人間の知的生産を支えるツールになるのだろう。ワトソン自体は前述したようにサーバー上に構築するシステムなので、クラウドと連携して動作する機会の多いスマートフォンとは相性がいい。将来は、たとえばニュースアグリゲーションサービスも、ワトソン経由で記事の内容までを加味して配信が行われるなど、まるで自分だけの秘書のように動作するワトソンサービスを多数使い分けるような時代もそう遠くはなさそうだ。日本においてはIBMはソフトバンクと共同でワトソンの日本語対応および日本の事業者への導入拡大を図っており、初期エコシステムのパートナーとして9社が発表されたほか、東大医科学研究所がワトソンを使ったがん研究を開始するなど、その一歩を踏み出したところだ。これまでの4倍の速度で進化していくワトソンを使い、日本ならではのサービスが生み出されるのか、期待したい。
2015年08月03日日本IBMは7月30日、東京大学医科学研究所(東大医科研)と日本IBMが「Watson Genomic Analytics」(ワトソン・ジェノミック・アナリティクス)を活用して先進医療を促進するための、新たながん研究を開始すると発表した。「Watson Genomic Analytics」の利用は、北米以外の医療研究機関では初だという。がん細胞のゲノムには数千から数十万の遺伝子変異が蓄積しており、それぞれのがん細胞の性質は変異の組み合わせによって異なっているという。そこで、がん細胞のゲノムに存在する遺伝子変異を網羅的に調べることで、その腫瘍特有の遺伝子変異に適した治療方法を見つけ、効果的な治療法を患者に提供することが可能となるという。インターネット上には、がん細胞のゲノムに存在する遺伝子変異と関連する研究論文や、臨床試験の情報など膨大な情報があり、東大医科研では、「Watson Genomic Analytics」の活用により、特定された遺伝子変異情報を医学論文や遺伝子関連のデータベース等の、構造化・非構造化データとして存在する膨大ながん治療法の知識体系と照らし合わせる。そして「Watson Genomic Analytics」は科学的に裏付けられたエビデンスと共に、有効である可能性を持った治療方法を提示するという。今回のがん研究では東大医科研が有するスーパーコンピュータ「Shirokane3」と、クラウド基盤で稼働する「Watson Genomic Analytics」が連携し 、研究を進めていくためのビッグデータ解析基盤とする。また、 将来的には臨床応用への可能性を検証していくという。
2015年07月30日日立製作所は7月22日、賛否が分かれる議題に対し、大量のテキストデータを解析し、肯定的もしくは否定的な意見の根拠や理由を英語で提示する技術を開発した。開発された技術は、意見を述べる際に人やコミュニティに重要と考えられる健康や経済、治安などの価値に着目し、世の中の事象とそれぞれの価値との相関関係を用いて、大量のニュース記事から、より確実性の高い根拠や理由を抽出。複数の価値を基準にすることで、1つの側面に偏ることのない根拠や理由を提示する。同技術は、人とコンピュータの論理的な対話を可能とする人工知能の実現に向けた基礎技術であり、将来、企業が持つ文書や公開されているレポート、病院の電子カルテなどを解析し、業務を支援するデータや意見を生成するシステムへの応用が期待されるという。具体的には、「賛否の根拠や理由を抽出するための基準となる価値体系辞書の作成」「大量のテキストデータから事象と価値の相関関係データベースの作成」「抽出した根拠や理由となる可能性のある文について確実性の算出」「多数のアルゴリズムを非同期かつ分散的に実行するアーキテクチャの構築」を行う。価値体系辞書の作成にあたっては、人やコミュニティが判断をくだす際の根本にある価値をリスト化するとともに、それらの価値と関係が深い単語をデータベースでの使用頻度に基づいて抽出し、価値に対してポジティブかネガティブかに振り分けた。さらに、使用頻度に応じて重要度を付与することで、価値とそれに関連する単語を体系的に整理し、例えば、「健康」という価値においては、「運動」はポジティブ、「病気」「肥満」はネガティブなどのように単語の関連性を体系的に整理している。事象と価値の相関関係データベースの作成にあたっては、大量のニュース記事の中で使用されているさまざまな文章の中から、記載されている事象がどのような価値をもたらしているかを抽出した。この手法により、約970万件のニュース記事から、約2億5千万からなる相関関係データベースを作成したという。そのほか、価値体系辞書と相関関係データベースを活用して抽出した文を、引用元の記載や数値データの有無、使われている表現などの指標を用いて数値化することで、議題に対して関連性の高いものであるかどうかを判定する。根拠や理由となる可能性のある全ての文にこの処理を行い、数値を算出することで、より確実性の高い文を選出し提示することができる。今回開発されたアーキテクチャは、1つのアルゴリズムを並列に分散処理するとともに、次のプロセスへの非同期な処理を行うことで、指定した時間内に根拠を抽出することができる。なお同技術は、東北大学(総長:里見進)大学院情報科学研究科の乾・岡崎研究室の協力を得て開発された。
2015年07月23日リクルートホールディングス(以下、リクルート)の人工知能(AI)の研究機関であるRecruit Institute of Technology(RIT)は7月16日、世界最大のデータサイエンティストコミュニティである「Kaggle」において、日本企業として初の共催となるデータ予測コンペティション「RECRUIT Challenge Coupon Purchase Prediction」を開催すると発表した。Kaggleは世界で最も大きなデータサイエンティストのコミュニティで、企業や研究者がデータを提供し、Kaggleコミュニティに所属する世界194カ国、30万人以上のデータサイエンティストや研究者が最適モデルを競い合うコンペティションの運営を行っている。コミュニティには、物理/生物/化学/経済/金融/数学/統計/コンピュータ科学などの幅広い領域の研究者が所属しており、Kaggle上で実施されるコンペに毎日2,500人以上が参加している。また、コミュニティのフォーラムでは新しい解析手法やアルゴリズム、分析のTipsなど毎日200以上の投稿がされており、データサイエンティストがスキルやナレッジを身につける学習の場にもなっている。リクルートは、2015年4月1日よりAI分野の研究所として新生RITをスタート。その取組みの一環として今回、Kaggleコミュニティに所属するグローバルのデータサイエンティストおよそ30万人と協働し、データ予測によるマッチングサービスの提供に挑戦していくという。その第一弾となる取組みとして、リクルートライフスタイルの運営する割引チケット共同購入サイト「ポンパレ」における購買データ(約1年分)をもとにした特定期間(1週間)におけるクーポン購買予測をテーマ に、9月末までの約2カ月半の間コンペを開催する。RECRUIT ChallengeのWebサイトより参加申込みが可能。対象者は、原則的に誰でも参加可能(※詳細の参加資格はkaggleの参加ページの要項に記載有)。7月16日 10:00~10月1日 8:59(日本時間)の期間開催される。賞金として、1位に3万ドル、2位に1万5,000ドル、3位に5,000ドルがKaggleより支払われる予定。
2015年07月17日LIPは14日、人工知能による入会審査をパスした大学生・大学院生のみが入会できるSNS「Lemon」のユーザーエントリー受付を開始した。利用料は無料。「Lemon」は、「30%以上の既存メンバーとの親和性がある」と人工知能に判定された場合のみ入会できるという、大学生・大学院生向けのSNS。アプリではなく、Webブラウザを介して利用できる。6月25日より、完全招待制でベータ版を運用開始しており、海外留学生、モデル、ライターなどの経歴を持つ大学生などが加入している。サービスには、親和性が高い相手を人工知能で検出し、毎日相互に紹介する「メンバー紹介機能」や、自由に書き込み・コメントができる掲示板「ボード機能」などがある。また、公式特別アカウントとして数名の難関企業ヘッドハンター、芸能プロダクション関係者が登録されており、メンバーに対しスカウトが届くこともあるという。サービス開始当初は、大学生・大学院生限定だが、今後は社会人のエントリーも可能になる予定だとしている。なお、審査方法に関する詳細は公開されていない。
2015年07月14日インターネットイニシアティブ(IIJ)は7月13日、人工知能(AI)技術を活用したセキュリティソリューションの開発に向け、実証実験に着手したと発表した。まず、同社のネットワークにAI技術を導入し、サイバー攻撃の自動解析、判断、学習などを通し、その有用性の検証を8月より開始する。IIJは、AI技術を活用して人手を介さずに24時間365日リアルタイムで通信トラフィックの監視、異常検知を行うことで、新たな脅威の予測と迅速な対策が可能になるとしている。実験では、AI技術と高性能コンピュータ(HPC: High Performance Computer)を用いた検証システムを構築し、大量のトラフィックの監視や異常検知が行えることを確認したうえで、秋をめどにセキュリティ脅威の予兆・検知などの実用化に向けた技術検証を進め、来年度の商用化を目指す。
2015年07月14日人工知能や自然言語処理などを活用したサービスを提供するクーロンは7月7日、Webメディア向けに機械学習・自然言語処理・行動分析に基づく独自の人工知能「フェアプレイアルゴリズム」を搭載したコメントシステム「QuACS」の提供を開始したと発表した。同システムでは、Webメディアに数行のコードを埋め込むだけで、読者が自由に意見や感想を投稿できるコメント欄を設置することができる。また、読者がコメント欄に投稿した言葉や文章の意味を解析する「文章評価」機能を搭載しており、誹謗中傷や罵詈雑言、差別用語、人権侵害、公序良俗に反する内容、違法取引、出会い目的などの内容を人工知能が自動的に判断し、フィルタリングすることが可能。さらにWebメディアごとのガイドラインやポリシー、トーン&マナーなどに応じて、フィルタリングの強弱が設定できるため、媒体が持つ独自の雰囲気をコメント欄でも醸成することが可能となっている。同社は、同システムの海外展開を2016年春ごろに計画しているほか、国内ではWebメディア以外にも、ブログやレビューサイト、各種掲示板などへ順次導入を進めていく考えだ。
2015年07月07日物質・材料研究機構(NIMS)と京都大学は6月26日、金属基板の上で超分子を用いた人工分子モーターを作製し、その回転方向を制御することに成功したと発表した。同成果は物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(MANA)の内橋隆 MANA研究者、ジョナサン・ヒル MANA研究者、中山知信 ユニット長、クリスチャン・ヨアヒム MANA主任研究者(フランスCEMES/CNRSグループリーダー兼任)らのグループと、京都大学化学研究所の小野輝男 教授らによるもので、米化学会発行の「Nano Letters」に掲載された。生体内のATP合成酵素などに代表される分子モーターは、回転子などの部品が分子によって構成されており、回転動作を行うことでエネルギーの生成や消費を行い、生命活動の基礎を担っている。化学合成の手法を用いることで溶液中で人工分子モーターを作製に成功した例は多く報告されており、固体基板上で作製した例もいくつか報告されている。しかし、人工分子モーターではモーターを構成する部位が共有結合という強い結合によって結び付けられていることから、モーターの回転方向を反転させることが難しく、挙動の柔軟性に問題があった。今回の研究では、超分子を分子モーターの構成部品に用いることでこの問題を解決した。超分子は複数の分子が共有結合より弱い水素結合などによって結ぶついており、分子の設計によってその結合力を調整することができる。研究では、ポルフィリンという有機分子に3本の「足」をつけ、さらに結合のための「手」を1つつけることで、2つのポルフィリン分子が結合して超分子を作り、さらに基板上で滑らかに動くように設計。この超分子に電流を注入したところ、分離することなく全体で回転運動をし、注入する電流の電圧を負の値にすると超分子内で分子同士の結合の組み替えが起こり、回転方向を反転させることができたという。同研究グループは「今後は、さらに複数の超分子を組み合わせてより複雑で高機能なナノスケールの機械的システムの構築を目指す」とコメント。また、今回開発した人工分子モーターが、自己組織化や自己修復の性質を持つため、周りの刺激に応じて自らの機能を変化させていく、生物のような柔軟なシステムの構築に開発につながる可能性があるとしている。
2015年06月29日IHIは6月24日、子会社のIHIエアロスペース(IA)が、米ボーイングの子会社ボーイング衛星システムズインターナショナルより、米インテルサットの人工衛星インテルサット35eのメインエンジンを受注したと発表した。IAが受注したエンジンは、人工衛星を軌道へ投入するためのもので、推力500Nという世界最高の燃費性能を有し、ボーイングが製造する702MPバスの一部としてインテルサット35eに搭載される。IAは、衛星用エンジンでは138台の海外向け受注実績があり、今回の受注によって米ロッキード・マーチンのA2100衛星バスや米オービタル・サイエンシズのGEOSTAR衛星バスなどを含めて、N2H4(ヒドラジン)およびMON3(酸化剤)を燃料とする米国の主要な静止軌道衛星にエンジンを供給することになる。
2015年06月25日人間の知能の高さを測定する“IQテスト”のスコアが、いまなお伸び続けているのをご存じでしょうか?スポーツの世界でも、「昔はやっとできていたような技を、いまは軽々とこなしてしまう」というようなことがありますよね。でも、人間の能力はなぜ伸び続けているのでしょうか?そして、これからも伸び続けていくのでしょうか?無限ともいえる人類の可能性について、『newsminer.com』の記事よりご紹介します。■人類のIQは世界的に伸び続けている1909年から2013年まで、31カ国に住む合計400万人のIQを調査したところ、各10年間でそれぞれIQの上昇が見られたそうです。国や年齢、性別に関わらず、人類のIQは上昇しているのです。だから10年前の人といまの人のIQを、そのまま比べることはできないのだとか。なお、このように知能テストの平均値が上昇する現象を、“フリン効果”と呼ぶそうです。科学者の間では、栄養状態がよくなったこと、教育の質の向上、テスト自体への慣れ、少子化による教育機会の増加などが理由として考えられていますが、はっきりとした理由はわかっていません。一方、IQテストそのものに猜疑的な科学者も少なくありません。心理学者のハワード・ガードナー氏は従来のIQテストではなく、言語能力、理解力、身体能力などから総合的に知能をはかるテストを行うべきだと主張しています。たしかにこうしたテストのほうが、頭の良さをはかるのにはよさそうですよね。でもまずは頭の良さを定義しなくてはならないので、まだまだ従来のIQテストが活躍しそうです。■でも人類のIQの伸びはもう打ち止め説もまた、今後はこれまでのような知能の伸びは見られないだろうと考える科学者もいます。栄養状態や教育の質の向上による効果は、もうこれ以上は出ないだろうということ。さらに、IQを上げるための方法も使い尽くされたというのが彼らの意見です。IQを上げるための方法として、コーヒーや紅茶を飲んでカフェインを摂取するという方法が有名です。カフェインには、集中力を高めてくれる効果があります。ですから仕事や勉強の合間に、コーヒーを飲んだ経験のある方も多いかと思います。■脳のマイクロチップで情報をゲット可能!では、人間の知能はもう上がることはないのでしょうか?結論からいえば、そんなことはありません。心理学者のマリア・コニコヴァ氏が2015年に発表した最新の研究によると、脳にマイクロチップを埋め込むことで、人間の知能はまた飛躍的に上昇するというのです。脳にマイクロチップを埋め込めば、インターネットにダイレクトに接続できるようになります。すると、膨大な情報への瞬時のアクセスが可能になり、記憶のために脳を使う必要がなくなります。わからないことはインターネットで調べればいいのです。もちろん家族のことなど個人的な情報は自分で記憶するしかありませんが、それでも負担はずいぶん軽くなり、もっと違うことに脳を使えるようになります。脳の能力を最大限に生かすことができるようになるわけです。機械を使って脳の働きを補助することができるようになれば、認知症などの症状の改善にも役立てることができるでしょう。この技術はまだ研究の段階ですが、やがて、脳のなかに小さなコンピューターを持つことが常識になる時代が来るかもしれません。人類の前には、まだまだ無限の可能性が広がっているのです。(文/和洲太郎)【参考】※Studies show people are getting smarter-why?-newsminer.com
2015年06月24日WACULは6月17日、Webサイトのデータを分析し改善提案まで行う人工知能「AIアナリスト」を、メディックスが導入したと発表した。AIアナリストは、Google Analyticsのアクセス解析データと連携することで、Webサイトの大量データを自動分析し、改善提案までを行う人工知能。Webサイトのなかで、成果への影響が大きい課題を自動で抽出できるうえ、過去の事例に基づき、180種類のサイトのタイプ別に改善策を自動で提示する。一方で、AIアナリストでは「なぜその方法が良いのか」「さらに成果を高めるためにはどうしたら良いのか」という深堀までは行えない。そこでメディックスでは、AIアナリストの提案に同社の知見を掛け合わせることで、クライアント企業の成果を最大化する新たな解析サービスを提供していく考えだ。
2015年06月17日5月26日に開催されたNVIDIAの「ディープラーニングフォーラム2015」において、東京大学の松尾豊 准教授が「人工知能の未来-- ディープラーニングの先にあるもの--」と題して講演を行った。人工知能のこれまでの歴史から、最新のディープラーニングの研究状況、そして、その先に来るものについて分かりやすく説明されており、非常に参考になる講演であった。○これまでも2度、ブームが起こっていた人工知能研究脳は電気+化学変化で情報処理を行っているマシンである。とすれば、プログラムで脳の機能を実現できるはずという考えから、研究が始められ、1956年に「人工知能(Artificial Intelligence)」という言葉が作られた。1960年代には第1次AIブームが起こり、推論と探索で人工知能を実現しようとした。このアプローチは、解きたい問題を推論・探索問題として記述できるおもちゃ的な小さな問題は解けるが、大規模な実用的な問題は解けない。例えば、チェスや将棋、碁などはすべての手を探索すれば解けるはずであるが、場合の数が多く、現実には計算できない。このように、実用的な問題が解けないことから1970年代にはAI研究は下火になり、冬の時代に入る。1980年代になると、知識を教えてやれば、それをベースに推論と探索を行うエキスパートシステムが考案され、第2次のAIブームが起こった。わが国では、多額の研究費を投入して第5世代プロジェクトが行われた。知識を記述して教え込めばAIシステムは賢くなり、伝染性の血液疾患の診断を行うMYCINなどのエキスパートシステムが開発された。しかし、知識を記述するルールが数万にもなると、書ききれない、メンテナンスができないなどの問題が明らかになってきた。また、対象が広がると、一般的な常識が必要となり、教える知識が爆発的に多くなってしまうという問題があるという。"He saw a woman in the garden with a telescope."は、文法的には、彼は庭にいる彼女を望遠鏡で見たとも、彼は望遠鏡を持って庭にいる彼女を見たとも訳せる。常識的には前者が正しそうだが、なぜ、それが分かるのか? そして、これをどのようなルールとして記述して人工知能に教えられるのかというような問題が起こる。また、どこまでの因果関係を考えるのかというフレーム問題がある。将棋のゲームならルールの範囲の手だけを考えればよいが、駒を置く音が周囲に与える影響や駒の移動に伴う重力場の変化の影響まで考え始めるとキリがない。しかし、なぜ、これらを無視して良いのか、その知識をどのように記述するかという問題も出てくる。さらに、人間は、縞と馬の知識があれば、動物園で初めてシマウマを見た時にも、これはシマウマと分かるが、シマとウマという言葉とその実体との対応が分かっていない(シンボルグラウンディングング問題)コンピュータには、このようなことはできない。知識を書けば賢くなるが、知識を書くのがとても大変というか、これって本当にできるのか? ということで1995年ころからAI研究は下火になり第2の冬の時代に突入した。これまでの人工知能の壁は、表現の獲得の壁で良い特徴量とそれによって定義される概念を作る作業はコンピュータには出来ず、人間がやるしかなかった。(次回は6月1日に掲載予定です)
2015年05月29日UBICとサムライインキュベートは5月23日と24日、人工知能によるビジネス上の課題解決をテーマとした「人工知能ハッカソン」を開催した。同イベントでは、抽選で選ばれた若手エンジニアを中心とした参加者40名が8チームに分かれ、メンターの東京大学大学院工学系研究科准教授の松尾豊氏、トレタCTOの増井雄一郎氏のアドバイスを受けながら、人工知能によるビジネス上の課題解決について、アイデアのユニークさとソフトウェアの完成度を競った。その結果、「異性とのコミュニケーション内容の良否を人工知能が判断することで交際をサポートするサービス」が最優秀賞を受賞。課題の現実感と、実際にサービスがあったら使ってみたいと思える内容であったこと、非常に早い段階からAPIを利用し、トライアンドエラーを繰り返していた開発に対する姿勢などが評価された。メンターの増井氏は同イベントの総評として、「人工知能も、アイデア次第で今までなかったものを生み出し、生活を大きく変える可能性を秘めています。人工知能を使った開発を今後も続けて、面白いものを作ってもらいたいと思います」とコメントしている。
2015年05月26日京都大学は5月22日、細胞内マイクロRNAを使って細胞を選別する人工RNA(RNAスイッチ)を用い、自動的に心筋細胞以外の細胞が取り除かれるシステムを開発したと発表した。同成果は同大学iPS 細胞研究所の三木健嗣 研究員、遠藤慧 研究員(現東京大学大学院新領域創成科学研究科)、齊藤博英 教授、吉田善紀 講師らによるもので米国科学誌「Cell Stem Cell」に掲載された。ES細胞やiPS細胞など幹細胞から高純度の心筋細胞を得るためには、細胞表面の抗原を識別して細胞を選別する必要がある。しかし、心筋細胞には特異的な抗体が無く、ゲノムに傷をつける可能性があるDNA導入などを使わないと高効率に純化することは困難だった。そこで研究グループは、マイクロRNAを検知することで細胞を識別する方法の開発に着手。心筋細胞に特徴的なマイクロRNAを同定し、そのマイクロRNAが存在しない時だけ蛍光タンパク質が光るRNAスイッチを作製した。また、この仕組を応用し、蛍光タンパク質の代わりに細胞死を誘導する遺伝子を導入し、心筋細胞のマイクロRNAを持たない細胞では細胞死が起きるシステムを構築した。これにより、機械で選別することなく、高純度に心筋細胞だけを培養することに成功した。同システムは上皮細胞や肝細胞、インスリン生産細胞などにも応用可能とのことで、従来では選別が難しかったさまざまな細胞が取得できるようになり、幹細胞分野における幅広い研究での活用が期待される。
2015年05月25日ITプロパートナーズは5月21日、同社の提供する仕事紹介サービス「ITプロパートナーズ」と、約600万人のソーシャルデータと人工知能を活用したタレントマイニングサービス「TalentBase」とのAPI連携を開始したと発表した。アトラエが運営するTalentBaseは、今年3月にリリースされた人工知能とビッグデータ解析の活用によるタレントマイニングサービスで、エンジニアを中心に利用されているWebサービス「Qiita」や「GitHub」のアカウント情報から、ソーシャルメディア上のつながりやアクションデータを解析し、独自のアルゴリズムで個人のテクニカルスコア(技術力)を算出するもの。今回のAPI連携により、ITプロパートナーズでは登録者の技術力を類推したスコアを数値化して把握することが可能となり、このスコアを企業と個人のマッチングを行う際の参考数値として活用していくという。
2015年05月21日ソフトバンクは、人工知能型システム「ワトソン」を活用したコンテンツやアプリを2015年度内に提供開始する。同社の宮内謙社長は「ポケットの中のスマートフォンが、パーソナルブレイン、パーソナルアシスタント、パーソナルヘルパーになる」とアピールした。ワトソンは、米IBMが開発したコグニティブ(認知する)・テクノロジーを使った人工知能型システム。人間の言葉を解釈する「自然言語処理」、膨大なデータを元に仮説を立てて検証する「仮説生成」、経験から学習する「学習」といった能力をあわせ持っている。例えばヘルスケアの分野では、膨大な医療データと個人の遺伝子情報・症状・医療データを照らし合わせ、病名、対処法、近くの専門医を探し出すことができる。食生活を改善したい人には、個人の食事履歴・栄養バランス・体質・味の好みなどから、今日行くべきレストランやメニューを提案することも可能。教育分野においては個人の知識・性格・理解度・いままで学習してきた内容などをもとに、志望校の過去問と照らし合わせることで、今後どのように学習を進めれば良いかをアドバイスできる。ソフトバンクでは、このワトソンを活用したコンテンツやアプリをスマートフォンに搭載する考え。ゲーム、健康、教育、グルメ、趣味、会話といった分野でパートナー企業群と連携してサービスを提供していく。宮内氏は「スマートフォンの価値を上げて、利用者の皆さんのパーソナルライフをより豊かなものにしていきたい。これが本当の価値創造。世界中のすばらしいテクノロジーの叡智を集結させて、それをスマートフォンの上で実現していく」と意気込んだ。
2015年05月20日ヤフーは5月19日、人工知能技術「ディープラーニング」を同社で開発した音声認識エンジン「YJVOICE(ワイジェイボイス)」に実装し、認識精度を大幅に改善させたと発表した。「ディープラーニング」のサービスへの実装は初めてのことで、同日より18のスマートフォン・タブレットアプリとウィジェットで、精度が向上した音声認識機能が利用できるようになった。この人工知能技術は脳神経細胞の働きを工学的にモデル化した手法。通常、こうした技術では様々な事例を学習させるための膨大なデータが必要だが、同社では、「Yahoo!検索」や「音声検索」などで蓄積したビッグデータを生かし、2013年より研究を開始していた。また、東京工業大学の篠田研究室の篠田 浩一教授との共同研究なども進めている。今回の実装によって特に向上したのは、騒音下における認識精度。従来は騒音などの影響で一定の場面で誤認識があったもののうち、約1/3で精度が改善された。例えば、駅ホームでの「Yahoo!乗換案内」、街頭での「音声検索」などが、従来より快適に利用できるようになったという。「YJVOICE」を搭載するスマートフォン・タブレットアプリ、ウィジェットは、iOS、Android用が、Yahoo! JAPAN、Yahoo!音声アシスト、Yahoo!カーナビ、Yahoo!地図、Yahoo!乗換案内の10種。その他、iOS用は、音声検索など3種。Android用は、Yahoo!ブラウザーなど3アプリ、2ウィジェットとなる。
2015年05月20日ソフトバンクモバイルとソフトバンク コマース&サービスは5月18日、ソフトバンクグループ最大規模の法人向けイベント「SoftBank World 2015」を、7月30日、31日の2日間にわたって開催すると発表した。今年で4回目を迎える「SoftBank World 2015」は、「情報革命で、いま、次の世界へ」がテーマ。モバイルインターネットやクラウドコンピューティングの活用によりビジネススタイルを実現するソリューションや製品、IoT(インターネット・オブ・シングス)や人工知能といったテクノロジーに関するコンテンツを紹介する。また、導入事例を紹介する講演や、各分野のスペシャリストによる特別講演のほか、100社を超える協賛企業によるモバイル、クラウド関連のソリューションやサービスの展示も行う。開催時間は両日とも午前10時から午後7時で、会場は「ザ・プリンス パークタワー東京」、入場は無料。SoftBank World公式サイトで、2015年5月18日(月)~7月29日(水)午後6時に事前登録を受け付ける。
2015年05月19日