わが子と一緒にいると、「やっぱり親である自分と価値観が似ているな」と感じる瞬間はありませんか?物の見方、感じ方、考え方など、子どもと自分に通じる部分を感じ取ると、どこか嬉しく、誇らしいような気持ちになる人も多いはず。しかし一方で、無意識のうちに親の価値観をそのまま子どもに押し付けてしまう危険性も知られています。親と子どもは別の人格であり、違う価値観を持っていて当たり前なのに、自分とわが子を同一視してしまうのです。今回は、価値観の押し付けによって子どもに何が起こるのか、詳しく解説していきます。子どもの価値観を決める親の価値観まだ自己が確立されていない小さい子どもでも、それぞれに個性があり、意見をぶつけ合って喧嘩をしたり、同調して共感し合ったりする様子を目にします。ふとその子の親を見ると、子どもの価値観形成に大きな影響を与えていることが見て取れるのではないでしょうか。アドラー心理学で知られる精神科医アルフレッド・アドラー氏によると、両親が持っている価値観を『家族価値』と呼ぶそう。家族価値とは、家族の理想であり目標です。たとえば「学歴が第一」「将来成功することが大事」「男は男らしく、女は女らしく」など、夫婦間でよく話題にのぼるようなことを指します。子どもは、この『家族価値』を無視することができません。面と向かって言い聞かせなくても、家族の会話の中で感じ取り、無意識のうちにその価値観に影響を受けてしまうのです。そして多くの場合、子どもは全面服従して家族価値をそのまま自分の価値として取り込みます。もしくは、その逆に全面反抗するケースも多いそう。まじめで厳しい親に反発して非行に走ったり、落ちこぼれたりするのは、その典型であると言えるでしょう。親の価値観を押し付けると子どもはどうなる?筑波大学附属小学校副校長の田中博史先生は、自分の価値観を子どもに押し付ける親は、「どんなに小さくても、子どもはすでに『自分で考える生き物』だと認識できていない」傾向があるといいます。特に母親は、「自分から産まれた子なのだから」という理由から、自分と子どもを一心同体のように感じてしまいがち。しかし、親と子は別人格であり、子どもは子どもなりに少しずつ自己を形成していくのです。また、教育評論家の石田勝紀氏は、「子どもにこうなってもらいたい」と強く願う親が、その価値観や思考の枠からはみ出た子どもに対して “強制的に戻させようとする” ことに苦言を呈しています。広い意味での社会道徳や倫理観というものは確かにありますが、それが親の水準になると狭い意味での社会道徳、倫理観となり、極めて柔軟性の欠ける親主導型の「親の価値観押し付けモデル」となることが少なくありません。親と子では得意とする部分も異なり、才能も異なり、価値観も異なるのです。(引用元:東洋経済ONLINE|子どもを追いつめる、親たちの「願望と正論」「押し付け」を変えるための「6つの提案」)それなのに、何をするにも「こうしたほうがいいんじゃない?」「お母さん(お父さん)の言う通りにしたら失敗しないから」と、親の思い通りに誘導したり、決断の機会を奪ったりする生活を送っていると、どのような人間になってしまうのでしょうか。石田氏は、ほかの人に決めてもらうほうが楽な時間をたくさん過ごしていた子どもは、自分で決めないですぐにほかの誰かを頼るようになる、といいます。親はよかれと思ってあれこれと手出し口出しをしても、それは結果的に子どもの判断力や決断力を奪い、大人になってからも誰かに頼って生きていくようになってしまうのです。また、価値観を子どもに押し付けてしまう背景には、現代の余裕のない子育て環境も影響していると言われています。子育てに関する著書を多数執筆、カウンセラーとしても活躍中の高橋愛子先生は、「核家族化が進んだ現代は、親にゆとりがなく『子どもをきちんとしつけなくては』とプレッシャーを感じる人も多い」と述べています。お子さんが引きこもりやニートになってしまったご家庭では、子供の気持ちに耳を傾けず、「親の言うことは正しいのだから、その通りにしていればいいんだ」と命令しているケースがほとんどです。自分の気持ちを理解されずに生きてきた子供は鬱積した寂しさや悲しさを処理しきれなくなり、社会や家族ともコミュニケーションを断つのです。(引用元:プレジデントムック(2017),『プレジデントFamily 小学生からの知育大百科 2018完全保存版』, プレジデント社.)このように、親の価値観を押し付けることは、成長後の人間関係にも大きな影響を及ぼすということを忘れないようにしてください。親と子は違う人間だと認識する親と子の価値観の違いは理解できたものの、やっぱりどこか受け入れがたいと感じる親御さんも多いのではないでしょうか。前出の石田氏によると、その場合「親が考える『こうあるべき』や『ルール』をすべて撤廃し、子どもの良い点は何か、子どもが大切にしている価値観は何か、にフォーカスすることが唯一の方法」だそうです。“親目線” ではなく、“子ども目線” で。わが子をよく観察して、何をしているときにもっとも「ワクワク感」や「充実感」に満ちた顔をしているか、それを見つけてみましょう。そして、そこを入り口としてアプローチすることが秘訣です。また、子どもに話しかけるとき、「〜〜しなさい」といった指示・命令用語を頻繁に使っていませんか?こういった言葉は、子どもの「できていない部分」に意識が向いてしまうがゆえに口を突いてしまうものです。その結果、子どものネガティブな部分にばかり目がいくようになり、結局は悪循環を引き起こしてしまいます。不完全である子どもの足りない部分にばかり注目することは、ありのままのわが子を受け入れていないことと同じです。そもそも、親である自分自身も完璧とは言いがたいのではないでしょうか?親も子も、どちらも良い部分と未熟な部分を持ち合わせているという前提に立ってみると、子どもが「別の人格を持ったひとりの人間」であることに納得できるはずです。子どもの価値観形成を手助けするのはOK子どもの価値観を理解するためには、親から子どもに歩み寄り、いつもの言葉がけに少し変化を加えるといいでしょう。NPO法人 親子コミュニケーションラボ代表理事の天野ひかりさんは、「母親として、この子を “しつけなければ” というプレッシャーや脅迫観念から、時として直接的で短絡的な言葉を使ってしまう。子どもをきちんと育てたい、能力を伸ばしてあげたいという目標設定は正しいのに、言葉がけという手段を誤っている」パターンが多いといいます。それは子どもの自己肯定感を低下させることにもつながります。たとえば、お子さんがマンガばかり読んでいることを心配して、「マンガなんかよりも歴史の本を読みなさい!」と命令していませんか?これはNGです。天野さんはこの声かけに対して、「子どもに本を読む楽しさ、本で知識を得られることの喜びを知ってほしいはずなのに、子どもの読書欲を邪魔している」と指摘します。ここで大事なのは、『本来の目的』を明確にすることです。「その本いいね。おもしろそう」などと、子どもの読書欲を削がない言葉をかけてあげましょう。そのうえで、どうしても子どもに読んでほしい本があるなら、「自分が読むこと!」と天野さんは提案しています。親が興味を持って読んでいるものは子どもの心を惹きつけるので、まずは親がお手本を見せてあげるといいでしょう。親が「子どものために」といくら環境づくりに励んでも、子どもにとっては「何でも勝手に決められてしまう」としか映りません。前出の筑波大学附属小学校の田中先生は、「難しい本に焦って出会わせなくても、考える子に育つ環境づくりはもっと身近なところにある」といいます。まずは、日々のお手伝いやお出かけの準備といった小さなことなどから、子どもたちに「選ばせて」「決めさせる」ように心がけましょう。たとえばお出かけのとき、子どもの靴まですべてそろえていませんか?たまにはいじわるして、とってもいい天気なのに長靴を置いてみたりする。我が子がどのように動くか少し離れて観察してみると面白い。もしも、何も疑わず長靴をはいて天気のいい日にでかけていったとしたら、少し我が子への接し方を見つめ直した方がいいかもしれない。(引用元:現代ビジネス|わが子の「考える力」を奪う親たち、その意外過ぎる共通点)反対に、長靴を見た子どもが「どうして長靴なの?」と言ったり、外を見て「雨は降っていないよ」と言ったりするようなら、自分の頭で物事を考えているということ。このように、日常の中の小さな出来事をきっかけにして、「自分で考える力」を身につけることは可能です。その延長として、親の意見や価値観をそのまま鵜呑みにしない強い心が養われていくでしょう。***子どもが「親の言うことは絶対!」と信じ込むのはよくありません。自信を奪い、自立への妨げになってしまいます。わが子を心配するあまり、すぐに正解を出してしまったり、自分の思い通りになるように誘導したりすると、いずれ子ども自身が「選べない」「決められない」人間になってしまうかも。ここは一歩引いて、お子さんを信じて見守ってあげませんか?(参考)DIAMOND ONLINE|子どもの価値観を決めるのは「○○価値」である現代ビジネス|わが子の「考える力」を奪う親たち、その意外過ぎる共通点東洋経済ONLINE|子どもを追いつめる、親たちの「願望と正論」「押し付け」を変えるための「6つの提案」プレジデントムック(2017),『プレジデントFamily 小学生からの知育大百科 2018完全保存版』, プレジデント社.LEE,2017年12月号,pp.202-205.
2019年08月31日親であれば、まずは子どもが健康であることを願うものです。全身運動である水泳は、それこそ体全体をバランス良く鍛えてくれるものですから、子どもをスイミングスクールに通わせている人も多いでしょう。せっかく通わせるのなら、体を鍛えるだけではなく、「もしものとき」に溺れないようにしっかり泳げるようになってほしいものです。でも、なかには子どもがなかなか上達しないことを不安に思っている人もいるかもしれません。そこで、アドバイスをお願いしたのは、運動が苦手な子どもを対象にした体育指導のプロフェッショナルである西薗一也さん。西薗さんは「スイミングスクールの指導には問題点もある」と語りますが……。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)スイミングスクールの規定が子どもの邪魔をしている?いま、スイミングは習い事のなかでいちばんの人気を誇ります。全身運動ということや、学校の体育の授業での狙いのように「もしものときに溺れないために」と親が考えていることもありますが、水のなかでフワフワと浮かぶことが脳の発達を促すといわれていることも大きく起因しているように思います。じつは、東大生が小学生のときにしていた習い事のナンバーワンがスイミングだというデータもあるのです。そういう背景もあって、いまはどこのスイミングスクールもキッズクラスは満員という状態です。ただ……すべてのスイミングスクールを非難するわけではありませんが、その指導には首を傾げるような部分も。なかなか上達しないという子どもの場合、1年経っても2年経っても25メートルを泳げないというケースも珍しくないからです。これには、スイミングスクールのシステムが大きくかかわっています。ひとつはインストラクターと子どもたちの人数の問題です。20人のクラスで60分のレッスンを受けるとしたら、ひとりの子どもがインストラクターから直接指導を受けられるのは単純計算でわずか3分です。それでは一人ひとりにいき届いた指導ができるはずもありません。ほかには、たとえば「バタ足のテストに合格しないと次の級に進めない」といったことも問題点として挙げられます。もしかしたら、その子どもは手で水をかくことはすごく得意かもしれません。でも、バタ足のテストで引っかかってしまうがために先に進めないということがあるのです。将来的にスイマーを目指すというならともかく、「25メートルを泳ぐ」ということが目標なら、どんなかたちであれプールの底に足をつかずに25メートルを泳ぎ切ることができればいいわけです。しかも、その目標をより早く達成できれば、それだけ子どもの自信にもなる。むしろ、スイミングスクールのシステム、規定が子どもたちの成長の邪魔をしているように感じることも多いのです。酸素を浪費させる「バタ足信仰」とNGの声かけ泳ぐ距離にもよりますが、きちんと息継ぎさえできれば水泳というものはそれほど苦しいものではありません。でも、たとえ息継ぎができる子どもでも、スイミングスクールでは多くの子どもたちが苦しんでいます。なぜかというと、先にも少し触れたバタ足に対するこだわりが強過ぎるからです。激しくバタ足をすれば、どんどん酸素を消費することになります。しかも、まだ体の使い方がうまくない子どもたちがバタ足をすると、どうしても膝が曲がり過ぎてしまう。すると、脚が沈んで頭が上がり、どんどん体が立ってきて前に進めなくなるのです。また、息継ぎと同時に膝が曲がってしまうので、体が一気に沈んでしまいます。加えて「もっと頑張れ!」というような声をかけて指導をしていたら、それも問題といえます。子どもたちは素直で必死ですから、「頑張れ!」といわれると「頑張らなきゃ!」と思う。つまり、その声かけが緊張を生むわけです。緊張すると、今度は脳でも酸素をどんどん消費することになる。バタ足でも脳でも酸素を浪費して、本来の能力でいえばもっと泳げるはずの子どもでも、その距離に達する前にギブアップしてしまうということになるのです。プールがない自宅でもできる水泳の練習法これらのことを踏まえると、まずは「バタ足信仰」ともいえる考え方を捨てる、それから子どもに「緊張させない」ことが大切になります。そもそも、クロールの推進力でいえば、手で水をかくことが7、バタ足が3くらいの割合です。つまり、推進力の弱いバタ足をがむしゃらに練習させるより、手による推進力をもっと増すために「上半身をできる限り伸ばす」練習をさせてあげるべきなのです。まずは、しっかり体を伸ばせば水の抵抗が減るということを感じさせてほしい。僕の場合、プールの壁から少し距離を置いたところに立ち、僕の胸に指先を突き刺すようなイメージで子どもに蹴伸びをさせます。その際、「槍のように」「ロケットのように」と子どもたちがイメージしやすい言葉をかけてあげれば、そのイメージに自分を重ねてしっかり体を伸ばすことができるようになります。最初からクロールをさせると「かく」イメージが強すぎて肘が曲がってしまいますので、まずは「指先を奥に伸ばそう」という意識が必要。そのために、槍やロケットをイメージして全身を伸ばそうという意識を持たせるのです。これに近い練習は家庭でもできます。むしろ、プールがないという環境を生かしましょう。うつ伏せで寝た状態でまっすぐに手と脚を伸ばし、蹴伸び姿勢をつくらせてみてください。そして、本人に客観視させるために、スマホやカメラで撮影して見せてあげるのです。水のなかではないからこそ撮影するのも簡単です。本人はしっかり体を伸ばしているつもりでも、そうできていないことが視覚的にわかれば、修正することができます。また、子どもに「緊張させない」ということでいえば、その逆に「安心させる」ことが大切。そのためには、子どもが少しでも頑張れたら褒めることを心がけましょう。ありがたいことに、水泳には距離というわかりやすい指標があります。泳げる距離が1メートルでも伸びれば「すごいじゃん!」と褒めることができるわけです。もちろん、細かいテクニックについてはここでは伝えきれませんが、もっとも重要となるのは、この「褒める」こと。先に触れたように、「もっと頑張れ!」「あとちょっとだよ!」といった言葉かけでは、子どもはプレッシャーを感じて緊張するだけです。そうではなく、いまできたことを「すごいぞ!」と褒めてあげてください。そうすれば、子どもは「これでいいんだ!」「自分はできる!」と安心して成長をしていくでしょう。『『うんどうの絵本 全4巻セット(ボールなげ・かけっこ・すいえい・なわとび)』』西薗一也 著/あかね書房(2015)■スポーツひろば代表・西薗一也さん インタビュー一覧第1回:運動神経は成功体験で伸びる!運動が「得意な子」と「苦手な子」の違い第2回:どんな運動も“細かく分解”できる。子どもの運動能力を高めるために親ができること第3回:「跳べた!」という強烈な体験が自己肯定感を押し上げる。“プロ直伝”縄跳び練習方法第4回:子どもが泳げるようになる魔法の言葉。酸素を浪費する「バタ足信仰」は捨てるべし【プロフィール】西薗一也(にしぞの・かずや)東京都出身。株式会社ボディアシスト取締役。スポーツひろば代表。一般社団法人子ども運動指導技能協会理事。日本体育大学卒業後、一般企業を経て家庭教師型体育指導のスポーツひろばを設立。運動が苦手な子どもを対象にした体育の家庭教師の事業をはじめとして、子ども専用の運動教室の開設や発達障害児向けの運動プログラムの開発など、新たな体育指導法の普及に幅広く取り組む。著書に『発達障害の子どものための体育の苦手を解決する本』(草思社)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年08月29日子どもが生まれると、保育園に始まり、学校や習い事など、数々の局面で親としての選択を迫られることがありますよね。そんなときに、「子どもの生き方」について思いを寄せることもあるかもしれません。子どもたちが歩む人生にはさまざまな選択肢が待ち受けていますが、そんなときに親としてはどのように関わればいいのでしょうか。子どもの生き方についてのアンケートをもとに、考えてみたいと思います。■「自分のような生き方をしてほしい」親はたった3割!?アンケートでは、子どもに自分のような生き方をしてもらいたいか聞きました。その結果、「すごくそう思う」、「そう思う」、「少しそう思う」と答えた人があわせて32.3%となり、その度合いに大小はあるものの「子どもに自分のような生き方をしてほしい」と思っている親は約3割にとどまることがわかりました。一方で、「思わない」という回答は65.5%となり、6割以上の親たちが「自分のような生き方をしてほしくない」とは考えているようです。Q.子どもには自分のような生き方をしてほしい?すごくそう思う 8.3%そう思う 6.1%少しそう思う 17.9%思わない 65.5%その他 2.2%■親の思い1、「諦めた夢、子どもにはかなえさせたい」それでは、まずは「自分のような生き方はしてほしくない」と考えている親たちの思いについて、掘り下げていきたいと思います。「私は学生時代、友だちとは自由に遊べない、夢を持つこと、何かをやり遂げることができない家庭環境だったので、娘には自分をしっかり持って生きていってほしいです」(鳥取県 40代女性)「幼少期に否定されて育ったため、かなりマイナス思考な自分のようにはなってほしくないです。わが子には『いーじゃん! やってみよー!』と言うように心掛けております」(愛知県 40代男性)「バブルに踊らされ、人生しくじりどん底見ているので、子どもたちには後悔しない人生を歩んでほしい」(三重県 50代女性)「私は、経済的に夢を諦めたので子どもたちには、自分の夢をかなえてほしいです。夢をかなえてあげられるように、自分もがんばろうと思います」(静岡県 40代女性)どのコメントからも、自らのつらい経験を思い返して、子どもにはできれば同じ思いはさせたくないと考える親の気持ちが伝わってきます。ほかにも、「自分のようにモラハラな男性とは結婚しないで」とか、「生活のためにいやいやしている仕事なので、子どもにはそんな仕事はさせたくない」などという切実な声も届いていました。家庭環境や経済状況、また結婚や仕事など、人生のさまざまな局面で、親自身も苦労してきた場合、どうしても子どもには同じつらさを経験させたくないと思ってしまいますよね。大事な存在だからこそ、守ってあげたいという親の思いが伝わってきます。■親の思い2、「子どもは自分のコピーじゃない!」また、子どもと親は別の人間だから同じ人生は歩めないという意見も多く寄せられていました。「子どもには自分とは違う可能性があるので、その可能性を少しでもサポートしていけたらと思う」(愛媛県 40代男性)「子どもは自分のコピーではない。性格や特性が違うから、自分に合った生き方をしてほしい」(千葉県 50代女性)「小3の長女に対して、義母も夫も『将来は○○になるのが一番!』など勝手に将来を決めてうるさく言うけど、娘の将来は娘のもの。親なんて二の次で良いと思う」(茨城県 30代女性)筆者は男子2人の母なのですが、長男は自分と性格がまったく違うため、何をするときも少し離れたところから応援してきました。しかし、次男とは性格がとても似ていて、失敗の予測がつきやすく、つい口出しをしてしまうことが多くなってしまいがちです。子どもが歩む人生を見据えつつ、どの程度のサポートをしてあげればいいのか、悩みは深まるばかりです。■親の思い3、「私以上の幸せに」なかには「自分よりもいい人生を送ってほしい」という願いを抱く親たちもいるようです。「生き方とか人生観とか難しい話はともかく、子どもには自分以上に幸せになってほしいと思うのが親心」(千葉県 40代女性)「『何となく』、その言葉がぴったりの私の人生でした。先を深く考えず決める事ばかりで、後悔しまくりです。同じ人生を歩んでほしくないので、いろんな知識や常識を子どもには教えています」(神奈川県 30代女性)「自分の今までを全部否定する訳ではありませんが、私の様にはなってほしくない。嫌なことも良いこともいろいろな経験をして、後悔のないような生き方をしてほしいと思います」(岩手県 40代女性)そのほかにも「しっかり勉強して、知識、社会性、専門性を身に付けて親を越えて行ってほしい」という声もありました。たしかに、親としては子どもにはいい人生を送ってほしいと思うものですよね。そして比較できるものではありませんが、自分が歩んだものよりもいい人生を送ってほしいと考えてしまうのは、あたり前なのかもしれません。■親の思い4、「自分を見て同じ道を歩いて」一方、「自分のような生き方をしてもらいたい」と考えている人たちは、どのような考えを持っているのでしょうか。「『後悔のないように前進あるのみ!』というのが私のポリシー。そんな姿を見て、同じ道を歩いてくれている娘です」(宮崎県 40代女性)「信頼できる最愛のパートナーと結ばれ、かわいい子宝に恵まれてほしい。温かい家庭と信頼関係、そこだけは、自分と同じような生き方になってほしいな」(宮城県 30代女性)「子どもの頃からなりたかった職業につき、やりがいをもって仕事ができていて、嫁ぎ先でたくさんの良い友人ができて毎日楽しく過ごせている。娘にも息子にも自分がやりたいことを見つけ、楽しく充実した生活を送ってほしいなと思います」(神奈川県 40代女性)そのほかには、「学校を出て、普通に就職して家庭をもった。子どもにも同じような人生を送ってほしい」、「子どもには自分と同じように早く結婚して出産してもらいたい」などという、それぞれの人生を経た経験から来るアドバイスが寄せられていました。100%同じ人生を送ることはできなくても、自分が人生で「よかった」と思えたことは、子どもにもできれば同じように経験させてあげたいと思う人も多いでしょう。人生の先輩だからこその親の助言ができるポイントにもなりそうですね。■子どもに身につけてほしい力とは子どもに「親と同じような生き方」または「まったく異なる生き方」を望むとしても、親はどのような力を子どもに身につけてほしいと願っているのでしょうか?「自分の思うように生きてほしい。自分の選んだ道なら、失敗も受け入れざるを得ないし、その失敗の痛みと、はい上がる力、成功の快感を感じながら、なりたい自分になってほしい」(神奈川県 40代女性)「今は、私の時代とは全く違います。どんなに生きづらい世の中でも、強く楽しくまっすぐに歩んでいってほしいと願っています」(茨城県 40代女性)「元気で人の気持ちがわかる人間になってほしい。うそ付かずに、真っすぐな人間になってほしいです」(埼玉県 40代女性)「『あなたに会えてほんとうによかった』、そう言われる生き方をしてほしい。ただそれだけです」(東京都 40代女性)「人の迷惑にならない、犯罪を犯さない、できれば社会の役に立つ人間になってほしいです」(東京都 40代女性)「とにかく、事故や病気で親より早く逝く事がないように、大人になってほしいです」(埼玉県 40代女性)「一人一人、顔や性格が、違うように、生き方も違うと、思います。誰かのまねではなく、自分の人生を思い切り生きてほしい。願うなら、人に囲まれ、笑顔の多い人生を」(愛媛県 40代女性)■子どもの人生に親はどうかかわるべき?それでは親としては、子どもの生き方にどのように関わっていけばいいのでしょうか。いくつか、コメントからヒントが見つけられそうです。「子どもは親と同じような生き方をしなくてもいい。自分のありようを考えながら、つまずきながらでも。つまずいた時は、立ち止まってまた歩けばいいのです。歩き出すサポートはいくらでもします」(山梨県 50代女性)「子の可能性や将来の選択肢の幅を広げる手伝いまでが親の仕事」(宮崎県 40代女性)「子どもの人生は親が決めるものでもないし、親が決めていいものでもない。しかし、親を見てその後をついていきたいと思われるように、自分を磨いていきたい」(茨城県 30代男性)「適当に生きてきた事を後悔してるので子どもには私の失敗談をたくさん話して反面教師にしてほしい。適当に過ごすのではなく、自分できちんと考えて進んでいってほしい」(奈良県 30代女性)ここまで、子どもの生き方について、親の人生との関わりも含めて考えてきました。さまざまな理由から、子どもに親のような生き方をしてもらいたい人としてもらいたくない人がいること、その背景には親自身が生きてきた人生が大きく関わっていることが理解できます。寄せられたコメントのなかでもっとも多く出てきた言葉は、「子どもの人生は子どもの人生」というもの。子どもを心配する気持ちから、つい口出ししてしまったり、先回りして失敗を遠ざけたりしてしまう親のふるまいは、時に重要な役割を果たすこともあります。ただ、その度合いによっては、子どもの道を邪魔してしまいかねない場合もあるかもしれません。親と子の人生は別物だということを、強く認識しておく必要があるのだと痛感させられます。子どもの人生を考えるとき、忘れがちとなってしまう「自分の人生」。親と子の人生が同一のものではないということは、親の人生も親だけのものでもあります。もちろん親としてふるまわなければいけない側面もあるでしょうし、子育て中に我慢しなければいけないこともあるでしょう。でもパパママである前に、一人の人間として「したいことをする」「夢を持ってみる」「毎日を楽しく過ごしてみる」ことも、とっても大事なことだと思います。子どもの人生を応援しつつも、自分の人生を楽しむ親の姿は、子どもにも希望と勇気を与えられそうな気がします。Q.子どもには自分のような生き方をしてほしい?アンケート回答数:4974件 ウーマンエキサイト×まちcomi調べ
2019年08月25日授業中、積極的に手を挙げて発言する子どもがいる一方で、やる気がないのか、それとも恥ずかしがっているだけなのか、ほとんど手を挙げない子どももいます。自分の子どもが後者の場合、「どうして手を挙げないのだろうか……」と心配になってしまう親御さんも多いのではないでしょうか。今回は、子どもが授業で手を挙げない理由や、改善策についてご紹介しましょう。子どもが「手を挙げない」ことに悩む親は多い「授業参観に行ったら、子どもがまったく手を挙げない」「家では解けていた問題が出されたのに、手を挙げない」「担任の先生に『授業ではほとんど手を挙げないんです』と言われてしまった」など、子どもが手を挙げないことについて悩む親は多いものです。答えがわからないから手を挙げないのならまだしも、答えがわかっているはずなのに手を挙げないとなると、つい「どうして手を挙げないの!」「もっと積極的に授業に参加しないとダメでしょ!」と頭ごなしに怒ってしまうこともあるかもしれません。しかし、まずは、なぜ子どもが手を挙げないのか考えてみてはいかがでしょう。なぜ手を挙げないの?子どもが手を挙げない理由には、以下のケースが考えられます。●恥ずかしがり屋である手を挙げて指名され、自分の考えや答えを発表することを「恥ずかしい」と思っているケースです。教育評論家の親野智可等氏は、こうした恥ずかしがり屋でおとなしい、引っ込み思案な性格の子どもは、ひとつのクラスに何割か必ずいると言います。親野氏いわく、そのような性格の子どもにとって、授業中に手を挙げて発表するというのは、大人が思っている以上に大変なことなのだそう。それを親や先生に強制されたとしたら、子どもにとってかなりの苦痛になってしまいます。●内弁慶な性格である「家ではうるさいくらいにしゃべっているのに、授業や集団活動になると借りてきた猫のようにおとなしくなる」といった内弁慶な性格であることから、手を挙げることができないケースです。白梅学園大学子ども学部や鎌倉女子大学児童学部等で非常勤講師を勤め、発達心理学・保育学が専門の塚崎京子氏によると、内弁慶な子どもは、自分が人前に立ったときに相手がどう思うかを非常に気にする傾向があるため、手を挙げることを避けてしまうのだそう。●周囲との関係に不安がある友だちや家族とケンカしてしまった、うまくいっていないなど、周囲との人間関係に不安を抱えていることから、手を挙げることができなくなっているケースです。公益財団法人・愛知県教育振興会によると、子どもは自分が周囲の人々に「受け入れられている」と感じたとき、心を開いて自分を外へ出すことができるそうです。授業中、クラスメートの前で「手を挙げる」という活動も、その表れであるとのこと。そのため、何らかの事情によって「自分は受け入れられていない」と感じている子どもは、積極的に手を挙げることができない場合もあるのです。手を挙げられるようになるためのポイント子どもが手を挙げられるようになるため、親は以下のポイントを意識してみましょう。●子どもが得意なことを褒めて伸ばすスポーツや歌、お絵かきなど何でもいいので、子どもが好きなこと・得意なことを伸ばしてあげましょう。保育士として15年以上保育業務に関わっている市川由美子氏によると、好きなことに没頭して親に「よくできたね!」などと褒められた子どもは、好きなことをきっかけに行動範囲を広げられるようになり、恥ずかしがらずに堂々と振る舞うことができるようになるそう。そこから、自信を持っておしゃべりができるようになり、手を挙げるなどの能動的な行動にも抵抗がなくなっていくのです。また、恥ずかしがり屋の子どもは、大勢の前で緊張してしまう傾向にあるため、はじめは少人数のグループで得意なことをして遊ぶ経験を積み、自分らしさを発揮できる場所を作ることで、自信が持てるようになるそうです。●「手を挙げたくない」という気持ちを受け止める子どもがなぜ手を挙げたくないのかという理由を聞き、その気持ちを受け止めることも大切です。例えば、子どもが「答えはわかっていたけど、手を挙げるのが恥ずかしかったんだよ」と言ったら、「そうだったんだね。みんなのお母さんやお父さんも来ていたし、緊張しちゃうよね」と共感しつつ受け止めてあげましょう。私立小・中学校に23年間勤務後、作家・教育評論家として活動している中井俊已氏によると、そうして子どもの気持ちを受け止めたうえで「ノートにはきちんと答えが書けていたね」「正しい姿勢で授業が聞けていたね」などと、違う視点から子どもを褒めると、子どもは自信がつき「もっと頑張って授業を受けよう」と思えるそう。自信がつくことで、やがて手を挙げて発言できるようにもなっていきます。●失敗や間違いを責めない前出の中井氏は、学校の授業について次のように述べています。教員は、授業中、みんなで協力し合い、よいところを伸ばし合う雰囲気をつくろうと努力しています。誰かが間違ったことは、クラス内で共有して、みんなで理解できればよいのです。(引用元:ベネッセ教育情報サイト|学校と子どものことがよくわかる!授業参観のチェックポイント【後編】)授業では、みんなで協力して正解までたどりつくことが大切であり、発言が正解である必要はありません。失敗や不正解を恐れると、子どもはますます発言できなくなってしまいます。子どもが何か失敗したり、間違ったりしたときは、責めることなく「自分の考えを言えてえらかったね」「正解に辿り着くためにはどうすればいいと思う?」などと、ポジティブな言葉をかけることを心がけましょう。また、「○○ちゃんは何度も手を挙げていたのに、どうして手を挙げなかったの?」などと、人と比較することもNGだと中井氏は言います。人と比較する言葉をかけていると、子どもは順位ばかりを気にするようになったり、1番以外はダメだという思考になったりしてしまうのだそう。「去年よりもノートのとり方がわかりやすいね」「教室内の掲示物、すごく上手に作れていたね」のように、誰かと比べることなく、子ども自身の成長を見つけて褒めてあげましょう。***積極的に手を挙げるのは良いことですが、だからといって「手を挙げない=出来が悪い、やる気がない」というわけではありません。手を挙げるように強いるのではなく、それ以外の子どもの長所に目を向け、伸ばしてあげることも大切なのです。文/田口 るい(参考)ベネッセ教育情報サイト|恥ずかしがりやで授業中に手をあげるなど積極性がありません[教えて!親野先生]ベネッセ教育情報サイト|恥ずかしがり屋の子どもへのNG対処法とOK対処法ベネッセ教育情報サイト|学校と子どものことがよくわかる!授業参観のチェックポイント【前編】ベネッセ教育情報サイト|学校と子どものことがよくわかる!授業参観のチェックポイント【後編】東洋経済オンライン|4月授業参観に「行くだけの親」が見落とす本質公益財団法人 愛知県教育振興会|授業中、挙手をしないZ会さぽナビ|子どものココロジー 引っ込み思案な子
2019年08月23日関西人主婦で二児の母のモチコです。子どもには聞かれたくない単語ってありますよね……。我が家はその単語を親同士の会話で使うとき、子どもにはわからないよう隠語を使っています。 アルファベットどころかひらがなすらまだ全く読めないイチコ……。なのに「NATTO=納豆」とバレてしまいました!おそらく普通に「納豆」と言って大丈夫な場面で間違えて「NATTO」と言ったからかと。しまった……! そしてこの後は、ご飯を食べたのにまた納豆を食べさせるか、我慢させて泣かせるかという選択を親が迫られます。まあ納豆くらい多少食べ過ぎてもいいか。(適当)このように、子どもに聞かれるとその後大変な展開が予想される言葉は、親同士でしかわからない隠語で喋っています。その方法をお伝えします。目次 0.1 ⑴アルファベット化する!0.2 ⑵英語で言う!0.3 ⑶ロゴやキャラクターなどをイメージで伝える!1 モチコさんのその他の記事はこちら●⑴アルファベット化する!「納豆=NATTO」のように、アルファベットで言っています。単語をそのまま伝えるので、夫婦間で誤解なく単語を認識できます。 ……が、アルファベット化も、アルファベットをひらがな化するのも、多少手間取ります。「えっと……O、Y、A、T、Uどこにしまった? 」「O? Y? え? なんて ?」みたいな。慣れるまでまどろっこしい会話になります。●⑵英語で言う!これもよくやります。例えば、名前を聞くだけで息子が食べたがってしょうがない「いちご」は「strawberry」みたいな。このとき、発音は照れずに本場っぽく英語の発音にするのがコツ。うっかり日本語の発音で「ストロベリー」と言うと、娘が「ストロベリー?いちご?」と言うので、結局息子の耳に「いちご」という単語が入ってしまう……!(ちなみに娘はアイスやチョコでストロベリーはいちごということに気付いたようです。)同様にカタカナと英語の発音が近いもの(ムービーとmovieなど)は使えませんのでご注意を!●⑶ロゴやキャラクターなどをイメージで伝える!ものすごく有名なロゴやキャラクター、キャッチコピーなどがあるものは、それを利用して伝えます。「mのマークのファストフード」とか「ねずみの国」みたいな。ちょっとクイズっぽくなるのも楽しいです。ただ子どもに気づかれてしまう隠語になることもあるので、口に出す前に難易度を考えなければなりません。(「I’m lovin it」と言ったら一瞬でバレました。みんな大好きマクドナルド。CMに出てくるフレーズは基本使えません。)以上、我が家の隠語のパターンでした。4コマでも描きましたが、うっかり同じものばかり使うと子どもにバレてしまうので、手を替え品を替えいろんなパターンで乗り切るのがオススメです!うまいこと親にしかわからない隠語を駆使して、ワガママやイヤイヤの火種を撒かないよう気をつけていきましょう……! 隠語使わずとも平和に過ごせる日が待ち遠しいです。●ライター/モチコ
2019年08月19日「これからの時代を生き抜くための力を育てるには、『失敗』が不可欠なんです」と言うのは、花まるグループ「西郡学習道場」代表の西郡文啓(にしごおり ふみひろ)さん。そう言われても、そもそも論として、「失敗が怖い」筆者は、わが子に失敗をさせてあげる胆力(心の余裕)がありません。どうしたら良いのでしょうか? 「Vol.1 “良い大学”では生き抜けない時代。子育ての新しい道筋は?」 の続きです。「いまの学校教育が育てているのは、“受験に合格する力”です」と語る「花まる学習会」グループの西郡さん。AIが進化して答えのない時代に、いま、子どもに、本当に必要な力を、どう育てていけば良いのでしょうか?■“成長”の前には、必ず失敗や困難がある「みなさんも、自分の人生を振り返ってみれば、『自分が成長したな』『壁を乗り越えたな』と感じたときには、その前に必ず失敗があったのではないでしょうか?」と西郡さんは言います。たとえば、部活動で試合に負けて、その悔しさをバネに練習をがんばったとき、大人になってからは、お客様に叱られる、大きなミスをする。そうしたことを乗り越えて、何かを成し遂げたとき。「そんなとき、自分の成長を感じた方も多いのではないでしょうか?」(西郡さん) 成長は、失敗や困難の先にある。失敗ではなく、その先にある成長の方に意識を向けられるようになってくると、いま、目の前にある「失敗」は、成長のためのジャンプ台に見えてくるのかもしれませんね。…と、そんなことを書いてみてはいる筆者ですが、じつは最近、仕事で大失敗をして、ただいま激しく落ち込んでいます。そんななか、「失敗は、ジャンプ台」なんていう気分には、じつは、まったくなれません(涙)。■「失敗」を避ける日本の教育失敗恐怖症ともいえる筆者。「なぜ、自分はこれほどまでに失敗が怖いのか?」ということを理論的に知ることも、失敗恐怖症を和らげるのに役立つかもしれません。従来の日本の教育では、なるべく「失敗」を避けて効率的に生きることが良しとされています。良い大学に入れるように、テストで良い点を取るための勉強をする。「成功の方法は教えてもらえますが、失敗したあとの方法は教えてもらえないのです」(西郡さん)そこには、「失敗」をして遠回りする時間の余裕がないという、致し方ない側面もあります。試験で点数を取るためには、知識を効率よく詰め込む必要があります。「そのため、自分のやり方ではなく、『正しいとされている』やり方を教えられるのが日本の教育なのです」(西郡さん)現在の教育のあり方そのものが、「失敗」を排除する方向にいきがちである。そういった認識を持っておくことが、子どもの失敗を許容できる母への第一歩なのかもしれませんね。■なぜ、うちの子は「失敗」を嫌がるのか?しかし、西郡さんは「『失敗』を奪っているのは教育現場だけではありません。親も、知らず知らずのうちに、子どもを失敗から遠ざけようとしています」とも、言います「親の接し方で、子どもは違ってきます。たとえば、子どもに対して『これはこうでしょ!』と上から目線で伝えるのではなく、『もっとよく見て、これはどうなると思う?』と、示唆的に考えさせるような会話をすることが大切です」(西郡さん)問題を解けなければ、叱る。正解すれば、褒めるという教え方では、子どもはできないことに焦りや不安を感じてしまいます。「失敗をした上での成功体験を持っている子どもは、わからないことそのものを楽しく感じます。その差が、将来の学力の差になるのだと思います。『わからないからおもしろいんだよ』と、繰り返し伝えてあげてください」(西郡さん)。■「できちゃった」が「またやりたい」を生む西郡さんがおっしゃる、「わからないからおもしろいんだよ」と子どもに言える母である、という境地。母であるなら、ぜひとも辿り着いてみたいものです。けれども、現在の筆者は辿り着けていません(涙)。どうしたら良いのでしょうか? 「そもそも、学習とは、ひと言で表せば、『できなかったことをできるようにすること』なんです。『できなかったこと』が、『できちゃった』とき、子どもは大きな快感を味わいます。そして、より勉強をおもしろいと感じるようになり、明日もやりたいという『学習意欲』が生まれます」(西郡さん)やはり、その根底には、『失敗』があります。たとえば、問題が解けなかった。その後、どうすれば解けるようになるか考えて試行錯誤し、最終的に正解を導き出すことで、「やった!」「解けた!」という大きな達成感が生まれるのですから。「その感覚が楽しいから、また勉強をがんばります。そして、もっともっと学びたい、いろいろなことを知りたいという『向上心』が生まれるのです」(西郡さん)■子どもが「明日またがんばろう」と思えるためには「『学習意欲』と『向上心』。この2つを得ることができれば、どんな子も伸びていきます」(西郡さん)。「学習意欲」と「向上心」と書くと難しく感じるかもしれませんが、要するに「明日またやろう」「より良くしよう」という気にさせることだそうです。そのために大切なことは、大人が「できなかったことができるようになっているか」という部分に着目してあげること。「つまり、他人ではなく、以前のその子自身と比べて伸びているかどうかが重要なのです」(西郡さん)昨日の自分にはできなかったことができちゃった。それが楽しいから明日もまたやりたい。「この連鎖が、何よりも子どもを成長させていくのです」(西郡さん)<「失敗する子」の育て方>1)これからの時代を生き抜く子を育てるためには、「失敗」が不可欠2)「できちゃった」が「またやりたい」を生む3)その子自身の成長に注目してあげると、学習意欲と向上心が育つ■花まる学習会/西郡学習道場代表 西郡文啓さんの新著 『ちゃんと失敗する子の育て方』 高濱 正伸、西郡 文啓 (著)/総合法令出版 1,300円(税抜き)●高濱 正伸さん花まる学習会代表・NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長・算数オリンピック委員会理事。1959年熊本県生まれ。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。1993年、「この国は自立できない大人を量産している」という問題意識から、「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を主軸にすえた学習塾「花まる学習会」を設立。ロングセラー『伸び続ける子が育つお母さんの習慣』ほか、『小3までに育てたい算数脳』『わが子を「メシが食える大人」に育てる』『算数脳パズルなぞぺー』など、著書多数。花まる学習会公式サイト: ●西郡文啓(にしごおり ふみひろ)さん1958年生まれ。熊本大学教育学部卒業。花まるグループ内に「子ども自身が自分の学習に正面から向き合う場」として「西郡学習道場」を設立。現在「官民一体型学校」として指定を受けた小学校「武雄花まる学園」にて、学校の先生とともに、小学校の中で花まるメソッドを浸透させていくことに尽力中。高濱さん曰く、「私が経営者という立場で運営部分に頭を働かせているときも、彼はただただ、子どものことだけを考えてきた人間です。頭のてっぺんから足のつま先まで、根っからの教育者で、どんな子でも一度も見放したことはありません」。
2019年08月19日ウーマンエキサイト読者の皆さま、こんにちは!koyomeです。今回「親になって強くなったこと」を考えてみました。正直、あんまりないんですよね…。(むしろ、娘達を産んで、弱点が増えたような気もしますがその話はまたいずれ。)ただ、ひとつだけ強くなったなぁと思うことがあったので、それを描いてみました。スーパーなどに買い物に行ったときのこと。昔から、忙しそうな店員さんに話しかけるタイミングをうかがうのが苦手というかタイミングがわからないというか…。気にしすぎと言われればそれまでですが、結局は人見知りなんですけどね。とにかく、苦手意識がありました。そして、子どもを連れた今現在はというと…トイレの場所を探す、お迎えの時間が迫っていて急いで買い物を終わらせなきゃ…とギリギリなことが多く、恥ずかしいとか言ってる場合ではなく、必然的に店員さんに話しかけ、時には頼ることも増えました。店員さんのやさしさに触れることも多く、本当にありがたいです。ただし現在、時々1人で買い物に行ったりすると…まだ…こうなることもあります。幼稚園や習い事でも、知らないママさんに話しかけなければいけない場面や、逆に話しかけられる機会も増えました。娘たちのおかげで、行動せざるを得ないことが増えて、人見知りなんていってられない!!…強くなったなぁと思います。
2019年08月19日親に言われたり、されたりして傷ついたエピソードを、20~30代女性の集まるアンアン総研メンバー200人にリサーチしました。親の立場になってみれば、わからなくもないセリフもありますが、多くは「酷い」のひと言につきます。これから親になるみなさん、既に親となっている方も、ぜひとも反面教師にしてくださいね!文・田中亜子【アンアン総研リサーチ】いまも忘れない! 親の非情な言葉「いろいろありましたが、一番呪いになっているのは『こんなに美人な私から(母はかつてモデル)、こんなデブでブスな子どもが生まれるとは思わなかった』です」(30歳・公務員)「兄と弟がいるのですが、お手伝いは私にしか頼まず、私がなんで私にばかり頼むのと聞いたら、『女の子でしょ!』と言われたこと。何かにつけて女の子なんだからと兄弟と扱いが違っていた」(32歳・主婦)「親の立場に立てば理解できる話ですが、中学生の時に将来なりたい夢を話したら『あんたには才能がないからムリだよ。普通の会社に働いて暮らしなさい』みたいに言われたこと。自分にもし子どもができたら、もう少しうまく伝えてあげたいなと思います」(31歳・自営業)「勉強して現役で国立大学に合格することができたのですが、それを親に報告したら『今からでもいいから医学部医学科を受け直さないか?』と言われ、大人になってからも『医者になっていたらよかったのに』と言われます。確かに医者になっていたら給与は格段に上だったんでしょうけど、言われるたびにもやもやします」(32歳・専門職)「『バカばっかり産んで』っと泣きながら自分のお腹を叩く母親。子ども達はすごい学歴でもないので本気の発言だったのだろうが、忘れられない」(34歳・会社員)どれも怒りが湧いてしまうきっかけがあって出た言葉だと仮定して、親もひとりの人間。頭に血がのぼり、理性を失ってしまうこともあるのかも。それでも、子どもの前では、いつも笑顔であり続けたいものです。信じられない! 親の最低な行動「門限を破ってしまい、母親からかかと落としされた」(32歳・会社員)「揉めるとすぐ暴力に結びつける父。でも、初めて私が父を倒してからは、父の暴力はなくなった」(34歳・公務員)「夏休み、友達に会えないように、服を全部捨てられたり、携帯を取り上げられたり、電話線を切られた」(31歳・自由業)「父親と大喧嘩した後日、家の鍵が知らない間に変わってて家に入れなかった」(27歳・会社員)「何かで怒らせたらしく。自分の誕生日会前日の夜に買いに行ったジュースを、帰り道の途中でその場に全部捨てられた。いまだに忘れられません」(30歳・会社員)「子どものころ、肺炎で入院しているとき、お見舞いに来てくれた両親が「車を見てくる」という嘘をついて帰ったこと。話の途中で、そういったので私は病院のベットでずっと待っていた。看護婦さんに帰ったことを知らされて嘘をつかれたことを知った。素直に言えばいいのに、なんで嘘をつくのか疑問で悲しかった」(30歳・自営業)思春期になり、反抗的な態度をとる子どもに、親はつい手を出してしまうかもしれませんが、いかなる理由があっても、暴力はいけません。別の方法を模索して親子関係を少しでも良好に保ちたいですね。最後に、自分の親ではない大人から傷つけられたエピソードもご紹介します。「両親は共働きだったので、私はかぎっ子でした。けっこう頻繁に周りの親たちから、『さみしい思いしてない? かわいそうに』などと言われていて、それが普通と思っていた自分は、その生活を楽しんでいたのですが、あまりにも周りが言うものだから、“私ってさみしい子なの?”“私ってかわいそうなの?”と思うようになりました。例えかわいそうと思っても、それがしあわせな子もいるのだから、周りはとやかく言うことはないと思いました。私は、働く母を尊敬してるし、それが誇り。私が親になって、鍵っ子ちゃんがいても“お母さんかっこいいね!”って言いたいです」(33歳・専門職)これは独身の方や子どものいない人にも刺さるお話ではないでしょうか。何気ない言葉が子どもを傷つけることもあります。言葉の持つ影響力を考え、相手の立場になる想像力を働かせて、軽はずみな言葉かけは慎みたいものですね。©Esther Moreno Martinez / EyeEm/Gettyimages©ljubaphoto/Gettyimages
2019年08月18日先日まで全8話にわたって長女との中学受験実録シリーズをお届けしてきました、もりりんパパです。いつも読んでいただき本当にありがとうございます。今回はその総括的なお話、我が家の経験から見えてきた家庭学習での親のあり方を書くことにしました。が、その前に…。僕は前回の記事にて”特集:私がコミックライターになるまで”に参加させていただいたんですよね。その中で自身の毒親疑惑の部分、そしてそれをブログに助けられたことについて少し触れてみました。で、僕はブログやウーマンエキサイトさんでの連載を嫁さんや子ども・両親・親族等に伝えています。子どもたちの成長状況を記事で伝えることも含めて。そして、前回の話を見た長女から言われたんです。…うん。ですよね(-"-;その辺も含めて今回のお話を書き進めていきたいと思います。少しダークなお話になるかと思いますが、どうかお付き合いください。教育で毒親にならないために…僕が長女の勉強に携わりだしたのは彼女が小学3年生の頃。元々は嫁さんが宿題を見ることが多かったんです。しかし、その年の夏休みに…。ずっと様子を見ていた嫁さんがギブアップしてしまいまして。で、ここでバトンタッチをして僕が長女の勉強を見ることになったんです。勉強を見るにあたってその時点で気をつけたいと思ったこと、それは…・主役(勉強をする)はあくまで長女本人・教える側(僕)は基本静観して必要な時のみ声かけくらいでした。しかし、実際は…実際はこのような感じでした。後に長女に尋ねると、それはもう恐ろしい親だったそうです。自分でも今振り返ると…ありえない親だったかもしれません。せっかく一緒に勉強に取り組んでも思い通りに動かない子ども。時には僕は声を荒げ、物を投げてしまうことも…。それが日々続き、自分の感情がエスカレートしていくのが分かりました。これではいけない、それは分かっている。でも感情が爆発すると止まらない、止められない。勉強はきちんとして欲しい、だけど思い通りにならない。どうすればよいのか、分からない…!!まさに負のスパイラル。その流れを止めてくれたのは…。他でもない、長女からのSOSとそれを重く受け止めた嫁さんの存在でした。もちろん、嫁さんに言われてすぐに全て納得出来たわけではありません。それでも、少しづつ自分の中に落とし込んで気をつけていくようにしました。子どもは子ども、親は親。長女は僕自身ではありません。こうやって文字にしてみると当たり前のことですが、それが自分の感情がコントロール出来なくなると分からなくなり、無理強いをしていたのだと思います。まずは親である僕の…自分の気持ちに余裕を持つこと。それが出来ない時は一旦勉強をやめ、環境を変えて思い切ってリフレッシュすること。長女には長女の考えがありますし、もしかしたらだらけているように見えても実は考えがあるのかもしれません。そう気づいたのは、彼女が6年生の頃。中学受験への取り組みをしていた時でした。気づくのに時間がかかりすぎて、長女を中心に、家族には辛い思いをさせてしまったと思います。今だって、正しいと思い行っている育児や教育が、実は間違っているかもしれませんが…。最初に書いたように、長女の人生は長女が主人公。まだ全てを彼女が決めて生きていけるわけではないので、親として時に注意し、時に一緒に笑いながら今この時をともに生きているのだとは思います。でも、そんな中で親としての僕の感情が爆発してしまった時。それを一方的に攻撃的にぶつけてしまうのは違います。自分はあくまで支える側。自分の役割をきちんと考えておかないと、家庭学習にはとくに様々なリスクが潜むと感じました。親としての自身のコントロール。難しいですが…それを怠るとエスカレートし、止まらなくなっていつしか”毒親”となってしまう。大げさではなく、そう感じるようになりました。そうならないためにも、前回の記事に書いたようにブログを書くことで自分の視点を変えて行ったり。また、主役である子ども自身の心の声に耳を傾けて考えていく。そう考えながら接していくことがより良い関係性を築けるのでは…そう考えながら日々家族みんなで過ごしています。以上、前回の続きのお話でした。ここまで読んでいただきありがとうございました。
2019年08月14日映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』(9月13日公開)に出演する、千葉雄大の場面写真が10日に公開された。同作は、小説家・太宰治の遺作にして傑作である『人間失格』の誕生秘話を、小栗旬演じる太宰自身と彼を愛した3人の女たち(宮沢りえ・沢尻エリカ・二階堂ふみ)の目線から、事実をもとにしたフィクションとして蜷川実花監督が映画化する。天才作家でありながら、酒と恋に溺れた自堕落な生活を送り、自殺未遂を繰り返した果てに、愛人と川に身を投げるという日本中を騒がせた“文学史上最大のスキャンダル”の真相を描く。千葉が演じるのは、太宰の愛人で弟子でもあり、小説『斜陽』のモデルとされる太田静子(沢尻)の弟、太田薫。太宰の子どもを身ごもった姉・静子に対して、世間体を気にして苦言を呈するも、音信不通となった太宰に本気で怒りをぶつける、姉想いの弟役を強気に演じている。千葉は自身の役どころについて「薫はある意味堅物だと思いますが、常に姉の事を思っている。それを根底に演じました。もっと、この世界観に浸っていたかった」と述べ、姉・静子役の沢尻は薫について「可愛いんだけれど、芯があっていいなぁと思う。そういう人好きです。登場人物の中で唯一ちゃんとしている」と、小栗旬、成田凌、瀬戸康史、高良健吾、藤原竜也といった豪華な男性キャストがひしめく中でべた褒め。姉の為にまっすぐに突き進む千葉の弟っぷりを蜷川監督が捉えた、新たな色気が注目となっている。
2019年08月10日小栗旬主演映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』から、本編映像が追加された「東京スカパラダイスオーケストラ」の主題歌入り予告編が到着。正妻 vs 愛人の修羅場と小説家としての修羅場、W修羅場シーンが収められている。今回到着したのは、本作の主題歌「東京スカパラダイスオーケストラ」の「カナリヤ鳴く空feat.チバユウスケ」が挿入され、楽曲と相まって太宰治と3人の女たちの“スキャンダラスな恋”がさらに加速していく予告編。小説「斜陽」誕生の瞬間が映し出される本映像では、弟子であり愛人の静子(沢尻エリカ)の家で彼女の日記を読んだ太宰が、「これで書ける」と静かに興奮する姿や、もうひとりの愛人・富栄(二階堂ふみ)との密会を、妻・美知子(宮沢りえ)と子どもたちに目撃される衝撃的なシーンが新たに公開。普通なら背筋の凍るような修羅場だが…。さらにそれだけでなく、太宰の“小説家”としての修羅場も。後に日本を代表する作家となる三島由紀夫(高良健吾)だが、無名時代にスター作家の太宰と直接対面し「僕は太宰さんの文学が嫌いです」と真っ向から批判。そして太宰が彼の首を絞めながら、「あんた、俺のことが好きなんだよ」と急接近する、緊張感漂うシーンも収められている。果たして、太宰はこれらの修羅場をどう乗り切るのか。この続きはぜひ劇場で見届けて。『人間失格 太宰治と3人の女たち』は9月13日(金)より全国にて公開。(cinemacafe.net)■関連作品:人間失格 太宰治と3人の女たち 2019年9月13日より全国にて公開© 2019「人間失格」製作委員会
2019年08月09日「子どもの言うことを親がジャッジしてしまうと、子どもは『親にとって正しい答え』を言おうとするようになり、自分で考えることをしなくなる」と話すボーク重子さん。一人娘スカイさんが「全米最優秀女子高生」コンテストで優勝し、さらに自身も2004年に念願のアジア現代アートギャラリーをオープンさせ、現在では子育て、キャリア構築、ワークライフバランスについての講演会やワークショップを展開しているボークさんに、現在の日本の育児の現状についてもお話をうかがいました。前回、ボークさんは「グローバル社会で生き抜くスキルをつけるために、家庭での対話が重要」とお聞きしました。そこで重要となってくるパパとママの対話についてお話をお聞きします。さらに日本で問題となっているのが「ワンオペ育児」の状況。日本のママが直面する問題にボークさんは、「いたしません!」宣言というポジティブなメッセージをママに贈ってくれました。》 「英語できない親でも、グローバル時代を生き抜く力を育てられる!」 ■「パパとママの会話が子どもの手本になる!――子どもが自分の意見を表に出せるようにするためには、何が大切なのでしょうか?ボークさん:子どもの対話力をあげるには、大人が手本になるのもいい方法です。子どもにとって、一番身近な存在は、パパとママ。家族というのは最小にして最強のコミュニティですから、ここでも否定から入ってはいけません。「この材料で、カレーしかメニューが思い浮かばないなんて!」という批判的な対応だと、親の顔色を見て、ウケのいい答えを言おうとしてしまいます(※)。※リベラルアーツ的思考力の素地を作るためには、家庭での毎日の会話で十分にできるとボークさんは語ります。たとえば晩ご飯のメニュー決め。ただ子どもの意見に対して親がジャッジしてはいけないと話します。――大人にとって都合のいいことや気にいることを言ってくれる子のほうが、大人はラクだから「いい子」だと思いがちですよね。ボークさん:都合のいいことも、悪いことも、まずは否定しないことが大切です。そして、それを夫婦のやりとりで、見せてあげれば、子どもは安心します。冷蔵庫の材料を伝えて、パパも一所懸命考えて答える。ママも受け止める。そのような親のやり取りを見て、子どもは自然と学びます。パパが「肉じゃがができるね。今日は肉じゃがが食べたいな」と言ったとき、ママが面倒臭く感じても、即座に「え? 肉じゃが? じゃあ、自分で作れば?」というような反応ではなく(笑)、「たしかに肉じゃがも作れる材料だね。でも、今日は、ちょっと煮物を作る時間が足りないから、この材料を小さく切ってカレーにしようか?」などと返せばいいのです。「否定されない」、「受け止めてもらえる」、という見本をぜひ、ご夫婦でも見せてあげてください。「安全でない」と子どもが感じると、子どもは自分を見失い始めます。大人が求める答えをしてしまうのです。そうすると、自己肯定感は下がります。■「ママはどれだけやるか?」ではなく、「どれだけやらないか」――「ワンオペ育児」が多い日本だと、夫婦の会話を子どもに見せる機会自体が少ないご家庭もありそうです。ボークさん:私は「ワンオペ育児」という言葉を知ったときに、とんでもないことだと思いました。驚きとショックでプルプルしてしまったほどに。日本の女性は有能なので、やれば、ほとんどのことができてしまうんですよね。だから、ワンオペ育児もやろうと思えばできてしまう。――たとえ「ワンオペ育児」でなくても、育児中のワーママは、やることがたくさんありすぎて、あらたに何かを始めることが大変だと感じてしまうかもしれません。ボークさん:やることがたくさんありすぎて、それを整理するために、to doリストを作る方もいるかもしれませんが、to doリストは、達成感をもたらしてくれるけれど、疲れも持ってきます。だって「やらないといけないこと」が書き連ねてあるのですから。だからto doリストを見直してみてください。本当にやらなければならないこと、その中に、いくつありますか? 仕事、家事、育児、全力投球を3つもしなければならないなんて、無理です。to doリストを作ったら、作った端から消してしまいましょう(笑)。料理、洗濯、掃除……すべてを納得のいくまで行うなんて無理なのです。家族のために、子どものために、食卓においしそうな料理を並べたいと思う気持ちに嘘はなくても、美しい料理を作るためにママの笑顔が消えてしまったら、本末転倒。「買ってきたけれどおいしそうでしょ?」ってママが笑って言うほうがよっぽど、子どもはうれしいものです。■パパがいるときには、「いたしません」宣言を!――笑顔でいることが大切! それを実現するには?ボークさん:リベラルアーツ(※)を培うためには、ママが対話の時間や心のゆとりを持つことがマストです。そのためには時間を作り出すことが必要。でも1日の時間は決まっています。そんななかで笑顔を保つためにできること、それには日常のTo Do家事をどれだけ「やらないか」が勝負です。※リベラルアーツとは、「自由とは?」、「正義とは?」など問いを立てて、自分と向き合い、そこから自分の考え方や生き方についての意見を構築していくための学び掃除はお掃除ロボットを回しておけばいい。生ゴミはディスポーザーに入れればいい。パートナーが在宅しているとき、ママは家事を「いたしません」でいいんです。たとえば、日曜日の昼食の準備は「いたしません」のように。やってしまえばできることを「いたしません」と言うのには、覚悟が必要です。でも、やらないことで時間を作り、その時間は、ママが心にゆとりを持つこと、例えば「やりたいこと」に時間を使ったり、子どもとの対話に使ったりしましょう。――サボったり、手抜きでいいのでしょうか? 仕事をしているだけで罪悪感を感じるママもいる中、家事も手抜きだとさらに罪悪感を感じるママもでてきそうです。ボークさん:「女性はこうあるべき」「ママはこうあるべき」「妻はこうあるべき」「働くママはこうあるべき」など、女性に課せられたいろんな「べきが」あるなか、あえて「いたしません」というのは罪悪感や劣等感を伴うかもしれません。だから母、妻という立場ではなく、女性は、「自分でいる」ことがとても大変なんです。そう考えると、もしかしたら女性が自分でいられるというのは、生まれたときだけかもしれませんね。その後は、「女の子なんだから」と言われ続けて育ちます。どんなときも、いい娘、いい妻、いい母でいるように、そして自分のことは後回しにしていい、と訓練されていってしまう。そして、気づかぬうちに、自分でも自分にそう言い聞かせてします。国の調査によると、6歳未満の子どもをもつ夫婦の家事・育児関連時間は、男性が1時間23分(女性が約7時間34分)と圧倒的に低い状態です(※1)。そんなの私に言わせれば犯罪です(笑)。ハーバード大のリサーチ(※2)によると、「働くママに育てられた女の子は、マネージャーになる確率が高く、男の子は家事育児の時間が倍で、不幸になることなんて『ない』」というデータがあります。ママが働いているからという理由で、罪悪感を抱える必要なんてないんです。働くことが好きなら罪悪感から自由になってもっともっとエンジョイしてほしいと思います。「ママが心にゆとりを持つ」。この時間を確保するために、いますぐできることがあります。それは家族の役割を決めるということです。なぜなら家族はコミュニティーなのですから、全員参加が基本です。子どもの場合は、年齢に合わせて「家族のためにできること」をみんなで決めます。それは、たとえばお皿を下げることかもしれないし、おもちゃを自分で片すことかもしれない。パパの場合には、週末のランチとディナーと1週間に必要な食料の買い出しをするとかいかがでしょう?家族の役割を決める時に大切なルールが1つだけあります。それは「ダメ出しをしない」。ランチがまずくても、作ってくれた人に文句は言いません。子どものおもちゃの片付け方が完璧でなかったとしても、ママはやり直しをしないようにしましょう。そして大切なことは、「ありがとう」と伝えること。こうしたことを家族で習慣にして、それを繰り返していくうちに、だれもがどんどん上手になっていくのですから。「世界基準の子どもの教養」で必要なことの1つに、「誰かの役に立つ」意識を持つことがあります。それは、お子さんが家族の役割を果たしたときに、「あなたのおかげで、家の〇〇が助かった」と声かけするだけで家庭で育むことができるんです。それは、家庭からからスタートして、学校、社会と世界が広がっていきます。さらに家族の役割を決めて全員参加で助け合うことにはもう1つ利点があります。それは子どもの自己肯定感が上がるということ。誰かの役に立つことで、自分も幸せな気持ちになり、「自分ってすごいじゃない」と思え自分を認められるようになるのです。――貢献する意識を小さい頃から芽生えさせることはできそうですね。ボークさん:激動する社会を生き抜き、みずからの力で将来を切り開いていくためには、みずから課題を見つけ、考える力が必要です。考える力を培うには、意見を述べる機会をどれだけ増やせるかが鍵になってきます。そして私たちは一人では生きていけません。社会とのつながりのなかで生きていきます。だからこそ自分の意見を構築する第一歩を、そして「誰かの役に立つ」意識作りを、まずは今日から、家庭で始めてみてください。この2つを意識することは、グローバル社会で活躍するために必要不可欠になっていきます。■今回のお話を伺ったボーク重子さんのご著書 『世界基準の子どもの教養』 (ボーク重子/ポプラ社 1,600円(税抜き))ボーク重子(ぼーく・しげこ)さんICF認定ライフコーチ。アートコンサルタント。福島県出身。米・ワシントンDC在住。子育てと並行して自身のキャリアも積み上げ、2004年に念願のアジア現代アートギャラリーをオープン。2006年にワシントニアン誌上でオバマ前大統領(当時は上院議員)と共に「ワシントンの美しい25人」の一人として紹介される。『心の強い幸せな子になる0〜10歳の家庭教育「非認知能力」の育て方』(小学館)、『「全米最優秀女子高生」を育てた教育法 世界最高の子育て』(ダイヤモンド社)のほか、近著に『世界基準の子どもの教養』(ポプラ社)がある。※1.総務省 「平成 28 年社会生活基本調査」 (pdf)※2.ハーバード・ビジネス・スクールKathleen McGinn教授レポート「Working Mothers Raise More Successful Daughters and Empathetic Sons」
2019年07月31日「子どもが我慢できなくて困っている」という悩みを抱える親は多いものです。しかし、我慢には、子どもにとって良い影響をもたらすものと、そうでないものがあることをご存じですか?今回は、子どもの成長に欠かせない我慢と、子どもをダメにしてしまう我慢についてご紹介しましょう。「我慢できる子ども」は将来伸びる!生きていくうえで、我慢しなければならない場面は多々存在します。スーパーで買い物をしてレジの行列に並ぶときや、車の運転中に赤信号で止まるとき。怠けたくても学校や会社に行かなければならないときや、人間関係……。もし我慢ができなければ、多くの人に迷惑がかかったり、事故やトラブルが起こったりするのは当然。子どものうちから我慢することを覚えるのは、協調性を育てて周囲の人々と良好な関係を保つために、そして社会の一員として生きていくために、欠かせないことなのです。また、米コロンビア大学の心理学者ウォルター・ミシェルが考案した「マシュマロ・テスト」という実験では、我慢と学力に関係があることが示されています。この実験は、186人の4歳児の目の前に1個のマシュマロを置いた状態で「しばらく我慢すればマシュマロを2個食べられるけど、もし今すぐにマシュマロを食べてしまったら2個目のマシュマロは食べられないよ」と告げたあとの様子を観察し、自制心の高さを測るというもの。その結果、マシュマロを食べることを我慢して2個目のマシュマロを獲得できた子どもは、全体の2~3割しかいませんでした。そして、マシュマロ・テストを受けた子どもたちが22歳になるまで追跡した結果、当時我慢できた子どもは我慢できなかった子どもに比べて、青少年期に問題行動が少なく、アメリカの大学入試で標準的に用いられているSAT(大学進学適性試験)で平均より高い点数を取っていたことがわかったのです。また、成人後の肥満指数が低く危険なドラッグなどに手を染めていない、さらに対人関係が良好で自尊心が高いとの報告もありました。幼少期に我慢できるかどうかは、その後の人生に大きくかかわってくるといえるでしょう。しなくてもいい我慢、させてない?しかし、子どもの我慢する力を育てたいからといって、何でも我慢をさせればいいというわけではありません。文京学院大学大学院特任教授の平山許江氏によれば、子どもに我慢をさせすぎると、次第にやる気を失い、「やりたい!」という気持ちや意欲が減退してしまうのだとか。やりたがらなくなってしまった子どもに「やりなさい」と促すのは、やりたがる子どもを「やめなさい」と制するよりも難しく、成長に支障をきたす恐れもあると言います。何でもかんでも我慢をさせることは、子どもにとってストレスです。「あれもダメ」「これもダメ」と妥協させられ続けた子どもは、「どうせきっとこれもダメなんだろう」と諦めてしまい、意欲を失い、主体性が損なわれていきます。自分の欲求を我慢するのは、大人でも難しいですよね。幼い子どもにとってはもっと難しいもの。子どもの意欲を殺さずに、我慢する力を育てるためには、子どもに合わせた我慢の度合いを考え、時には我慢しなくてもいい環境を与えてあげることも大切なのです。子どもが伸びる我慢・子どもをダメにする我慢我慢のなかには、「子どもでも必ずしなくてはいけない我慢」と「子どもにとって悪い我慢」があります。しなくてはいけない我慢は、子どもが伸びるきっかけにもなる大切な要素です。まずは、子どもが伸びる我慢についてご紹介しましょう。精神科医で評論家の和田秀樹氏は、我慢が伸ばす3つの力について次のように述べています。◎こんなことをしたらカッコ悪いと考えて我慢する→社会性が伸びる和田氏いわく「おもちゃを買ってもらえないから、泣いて駄々をこねたい。でも、周りの人に笑われるから、できない」「すごく楽しくてはしゃぎたい気分だけれど、今は電車の中だからそんなことをしたら恥ずかしい」などの「こんなことをしたらカッコ悪い」という感覚が自分を高めたいという欲求につながり、我慢する力が育っていくのだそう。こうした経験を重ねるうちに、人の目を意識するようになり、社会性が育っていきます。 ◎相手の気持ちを想像して我慢する→思いやりの心が育つ集団生活を送るなかで、時に失敗を重ねながら「こんなことをしたら○○くんは怒るだろうな」「これを言ったら△△ちゃんは傷つくな」ということを覚えて、自分の感情をコントロールできるようになると、相手の立場を考えた思いやりのある行動ができるようになると和田氏は言います。親はどうしても子ども同士のケンカや争いを避けようとしがちですが、子どもはこれらを通して我慢することを覚え、思いやりの心を育てるのです。 ◎我慢することで「ひとりでできた!」という快感を覚える→自立心が育つたとえば、小さい頃はオムツが必須ですが、ある程度成長すると、一定時間我慢してからおまるやトイレで用を足せるようになりますよね。すると、親御さんが「よくできたね!」と褒めてくれます。和田氏いわく、このとき子どもは「お母さんに頼らずに自分の力でできた!」という自立の快感を味わうのだそう。子どもは、その快感をもっと味わいたいためにまた我慢し、さらに自立の快感を味わう……というループで、我慢する力と自立心を伸ばしていきます。そのため、我慢と自立には、親が褒めてあげることが欠かせません。子どもが我慢できたら、きちんと褒めてあげましょう。 一方の「子どもにとって悪い我慢」について、東京家政大学ナースリールーム主任の井桁容子氏は以下を挙げています。×大人の都合で子どもを我慢させる自宅では許していることを、ほかの人に「だらしない親だ」と思われたくないがゆえに、人前でだけ「ダメ」と叱ったことはありませんか?普段なら許していることを、イライラして「ダメ」と禁じたことはありませんか?このように、大人の都合で我慢させるのはNGです。子どもには、大人の都合はわかりません。井桁氏いわく「あるときは良いけど、あるときはダメ」と対応を変えると子どもは混乱し、その行為が良いことなのか、我慢するべきことなのかわからなくなってしまうそう。 ×威圧的に「ダメ」と我慢させる「子どものため」「しつけ」という理由でなんでも「ダメ」と我慢させたり、子どもがやりたがらないことを無理にやらせたりすることはNGです。なぜダメなのか、子どもがきちんと理解できなければ、禁止してもまた同じことを繰り返してしまうでしょう。威圧的に我慢させるのではなく、「なぜダメなのか」「なぜやらなければならないのか」を説明してあげることが大切だと、井桁氏は言います。反対に、理由を説明できないものは我慢させるべきではないと言えますね。 ×人のせいにして我慢させる「店員さんに叱られるよ」「あのおじさんが怒ってるよ」「先生はこう言ってたよ」など、第三者のせいにして叱ったことはありませんか?このように、親以外の誰かのせいにして我慢させると、子どもは「その人の目の届かないところならやっていい」と解釈してしまい逆効果です。なぜダメなのか、親自身の思いを説明してあげなければ、我慢ができるようにはなりません。 井桁氏によると、こうした悪い我慢を強いられた子どもは、無気力になったり、人間関係がうまく築けなかったり、自分の感情をうまくコントロールできなくなったりする可能性があるそう。子どもに悪い我慢をさせていないか、親は日頃の言動を振り返ってみることも必要ですね。***我慢は生きていくために大切なことではありますが、状況や言い方によっては悪影響を及ぼす場合もあります。子どもに我慢を教える際には、それが子どもにとって本当に必要な我慢なのかどうかを考えてみることも大切でしょう。文/田口 るい(参考)こどもまなび☆ラボ|我慢ができない子どもは “親の愛” を試してる!?「自制心」が育つ親の言葉こどもまなび☆ラボ|「辛抱強い子」を育てるヒント。「我慢する力」を伸ばすのは “○○上手な親” だった!PHPファミリー|子どもにさせていい我慢、わるい我慢PHPファミリー|わるい我慢をさせてない?子どもに我慢を教えるコツPHPファミリー|「我慢する力」は、どう育まれるのかPHPファミリー|子どもを我慢させる時、受け止める時東洋経済オンライン|「おやつの我慢勝負に勝つ子」が優秀なワケベネッセ教育情報サイト|小学校以降の成長のベースとなる「我慢をする力」は家庭で伸ばす!【前編】
2019年07月27日蜷川実花監督が「人間失格」誕生秘話を太宰治自身と彼を愛した女たちの目線から事実を基にフィクションとして映画にした『人間失格 太宰治と3人の女たち』。この度、太宰治演じる小栗旬をはじめ、本作に登場する豪華俳優陣の姿をとらえた場面写真が到着した。場面写真にはタイトルにもある“3人の女たち”、正妻・美知子(宮沢りえ)と子どもたちとの家族団らんな1枚をはじめ、愛人・静子(沢尻エリカ)と見つめ合う姿や、最後の女・富栄(二階堂ふみ)と密着する場面が切り取られ、まさにスキャンダラスな恋を感じさせる。一方、女性陣だけでない、太宰を取り巻く文豪や編集者を演じる豪華な男性陣の姿もとらえた場面写真も到着。藤原竜也扮する作家で同士の坂口安吾から「地獄に堕ちて書いてるか?」と発破をかけられ、心を許す親友作家・伊馬春部(瀬戸康史)と酒を酌み交わし、若き小説家・三島由紀夫(高良健吾)からは挑発されつつも“本当の傑作”を追い求める太宰。また、太宰の子どもを身ごもった静子の弟・薫(千葉雄大)からは認知を迫られ、若手編集者・佐倉潤一(成田凌)からは「書いてください!」と小説「人間失格」執筆を迫られる。さらに雪の中、虚ろな表情で佇む太宰の姿も公開。豪華実力派俳優たちが魅せる圧巻の演技だけでなく、蜷川監督の艶やかな世界観が覗ける写真となっている。『人間失格 太宰治と3人の女たち』は9月13日(金)より全国にて公開。(cinemacafe.net)■関連作品:人間失格 太宰治と3人の女たち 2019年9月13日より全国にて公開© 2019「人間失格」製作委員会
2019年07月16日たまの休みくらいは、思いっ切り子どもを自然のなかで遊ばせてあげたい――。都市化が進み、誰もが多忙な時代だからこそ、そう考える親も少なくないでしょう。でも、親子ともに自然に触れる機会が減っているいま、親は子どもにどのように自然体験をさせてあげればいいのでしょうか。「プロの自然解説者」である、プロ・ナチュラリストの佐々木洋さんにお話を聞きました。アドバイスに先立って語ってくれたのは、子どもたちとの自然体験活動を通じて佐々木さんが感動したというエピソードです。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)いまもむかしも子どもたちの本質は変わらないわたしがおこなう子ども向けの活動は本当に多岐にわたっていて、それこそ虫ばかりを追いかけるようなこともあれば、ただのんびりと山を歩くということもあります。過去25年以上にわたっておこなってきた活動のなかでとくに印象に残っているエピソードをお伝えしましょう。その日、出掛けたのは干潟で、「泥んこ体験」をさせることが目的でした。幼い頃に干潟や田んぼで遊んだことがあれば、足の指と指の間を柔らかい泥が抜ける独特の感触を思い出すという人もいるでしょう。なんともいえない気持ち良さがありますよね。地方であれば、いまも干潟や田んぼで泥まみれになって遊んでいるという子どももいますが、都心部だとそうはいきません。連れて行った子どもたちは幼稚園の年長さんたちで、ひとりも干潟で遊んだ経験はありませんでした。当然、子どもたちはおっかなびっくりです。しかも、「汚れるとお母さんに怒られる」なんて思っている子どももいて、なかなか泥んこになりません(笑)。ところが、ある男の子が転んで泥だらけになっちゃった。すると、その瞬間、子どもたちが一斉に「わーッ!」と叫んで泥まみれになって遊びはじめたのです。わたしは、その光景を見ていて子どもたちにかけられた「現代の呪文」が解けた瞬間だと思いました。いまもむかしも子どもたちの本質は変わりません。ただ、いまの子どもたちは自然に触れる機会が激減しているというだけなのです。「ついに子どもたちの『本能』に火がついた」と、感動したことを強く覚えていますね。擬人化して虫への恐怖心を取り除く子どもたちが自然に触れる機会が減っていることを思えば、子どもを自然に親しませるには親などまわりの大人が工夫してあげることも必要かもしれません。虫が苦手だという子どもも多いものです。虫の怖さは人によってさまざまでしょうけど、ひとつは「自分でコントロールできない」ということが考えられます。自分で飼っている犬などのペットなら、その行動もある程度コントロールできますし、行動の予測もできるでしょう。でも、触った経験のない虫の場合はどんな動きをするのかがわかりません。だから怖いのです。だとしたら、それこそペットのように思わせてあげればいいのです。自然体験が少ない子どもなら、おとなしくて危険でもないダンゴムシでも触れないという子どももいます。そういう子どもにはダンゴムシに親近感を持たせてあげましょう。何匹かのダンゴムシがいたら、「どのダンゴムシが好き?」と聞いてみる。ダンゴムシを怖がる子どもなら、「いちばんちっちゃいダンゴムシ」なんて答えるかもしれません。そうしたら、「お父さんはこの大きくて格好いいヤツがいいな」「大きさがちがうから、もしかしたら親子かな?」なんて話してみる。いわば、擬人化するというわけです。そうすると、子どもは自分が選んだダンゴムシに親近感を持ちはじめます。他の虫には触れなくても、「『僕の、わたしのダンゴムシ』なら大丈夫」というふうに虫への意識が変わっていくのです。そうすれば、徐々に他の虫に対しての恐怖心も和らいでいくはずです。「子どもと一緒に体験する」という意識また、以前と比べて自然体験が減っているのは、大人も変わらないかもしれません。そういう親が子どもに自然体験をさせようとすると、つい「もっと勉強してから」と思ってしまいがちです。とくに教育熱心な親の場合、全部勉強してから教えようと考える真面目な人が多いのです。でも、そんなことをしているうちに子どもはどんどん成長してすぐに親と一緒に外で遊ぶような年齢ではなくなってしまいます。大切なことは「子どもと一緒に体験する」という意識です。公園で子どもに「この花、なに?」と聞かれて、その場で答えられなくてもなんの問題もありません。「なんだろうね?」「うちの近くにもあるかな?」なんて答えて、帰宅してから子どもと一緒に調べればいいのです。子どもとは、親が上から下に向かって教え諭すだけの対象ではありません。親もわからなくて知らないことであれば、子どもと同じ目線に立って一緒にワクワクドキドキしながら学んでみてはどうでしょうか。また、「同じ目線」という意味でいえば、実際の目線の高さを親子で交換することもおすすめします。親子で散歩をしているとき、子どもは目ざとく虫や花を発見しますよね。もちろん、目がいいということもあるのですが、それは子どもの目線が物理的に低いからです。地面に近いのですから小さな花にも気がつきますし、草木の葉の裏に隠れている虫も見つけられるというわけです。そこで、親が実際に子どもと同じ高さで周囲の自然を見てみる。逆に、子どもを抱っこしてあげて大人の目線から見える風景を味わわせてあげる。きっと、親子ともに新たな発見や感動があるはずですよ。『ナンコレ生物図鑑 あなたの隣にきっといる』佐々木洋 著/旬報社(2015)■ プロ・ナチュラリスト 佐々木洋さん インタビュー一覧第1回:「自然だし、仕方ない」現代の恵まれた子どもたちが“自然体験”から学ぶ重要なこと第2回:「虫が怖い」はこうして克服。ダンゴムシすら触れない子に、親は何をすればいい?第3回:自然観察=現場検証!?生き物の“痕跡”探しから始まる、都会でもできる自然体験(※近日公開)第4回:カブトムシやクワガタが採り放題!夏休みに親子で作る“スーパーバナナトラップ”(※近日公開)【プロフィール】佐々木洋(ささき・ひろし)1961年9月30日生まれ、東京都出身。プロ・ナチュラリスト。公益財団法人日本自然保護協会自然観察指導員、東京都鳥獣保護員などさまざまな立ち場で自然解説活動をしたあと、「プロ・ナチュラリスト 佐々木洋事務所」を設立。「自然の面白さや大切さを多くの人とわかち合い、そのことを通じて自然を守っていきたい」という思いのもとに、25年以上にわたって、自然観察指導、自然に関する執筆・写真撮影、講演、テレビ・ラジオ番組の出演・企画・監修、エコロジーツアーの企画・ガイド等の活動をおこなう。著書に『ぼくはプロ・ナチュラリスト 「自然へのとびら」をひらく仕事』(旬報社)、『モリゾー・キッコロ 森へいこうよ! 会える! 虫図鑑』(宝島社)、『「調べ学習」に役立つ水辺の生きもの』(実業之日本社)、『よるの えんてい』(講談社)などがある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年07月14日共働き家庭が増え、親も子どもも忙しいいま、子どもが自然に触れる機会は以前と比べて減りつつあります。そもそも、幼いうちから自然に触れることは、子どもになにをもたらしてくれるのでしょうか。お話を聞いたのは、佐々木洋さん。職業は「プロ・ナチュラリスト」で、ご本人いわく「プロの自然解説者」です。まずは、プロ・ナチュラリストの仕事内容から語っていただきました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)老若男女を相手に自然の面白さを説く「自然解説者」わたしの仕事は「プロ・ナチュラリスト」です。耳にしたことがあるという人はあまり多くないかもしれません。というのも、これはわたしが商標登録をしているもので、一般的に広く知られた職業ではないですからね(笑)。仕事の内容をひとことでいえば、「プロの自然解説者」です。活動にはいくつかの柱があります。まずは幼稚園や保育所、小学校などで授業の一環として自然の大切さや面白さを話すというもの。それから、各地のホールなどでおこなう講演会や講習会。これらにはただ話をするだけではなく、実際に自然のなかで自然観察の指導をおこなうというものもあります。それから、書籍などの執筆活動に、テレビやラジオ番組の企画、出演です。講演会や講習会の対象は子どもたちということもあれば、子持ちかどうかにかかわらず大人の場合もあるし、外国人ということもある。場所、対象によって内容もさまざまですね。そもそもなぜわたしがこの仕事をはじめたかというと、単純に自然が好きだったということに尽きます。でも、学生時代の専門は英語音声学でした。学生の頃は英語を使った仕事をしようと考えていたのですが、自然の世界が懐かしくて戻ってきたという感じですね。わたしの出身は東京ですが、都内とはいえ河川敷がすぐそばにあって自然豊かな場所でした。その原風景がわたしをこの仕事に導いてくれたのです。「ありのままの自分でいい」と思わせてくれる自然の多様性いまの子どもたちは、かつてと比べて自然に触れる機会が圧倒的に減っていると感じています。とはいえ、自然の豊かさそのものは以前とほとんど変わっていません。都内であっても動物も虫もたくさんいて季節の草花も豊かに咲き誇るのに、それに触れる機会が減っているだけなのです。それが本当に残念でならない……。とくに幼児期から自然に触れることは子どもにたくさんのものを与えてくれます。それこそ、その「効能」には枚挙にいとまがありませんが、なかでもわたしが大切だと思っている3つの効能をお伝えします。第一に「多様性を知る」ということ。子どもは自分が好きなことであれば大人以上に熱心に知識を蓄えていきます。新幹線が好きな子どもであれば、どんな新幹線でもひと目見れば名前を答えることができるでしょう。でも、自然だとそうはいきません。どんなに虫が好きな子どもでも、幼稚園の園庭にやって来るすべての虫の名前をいうことはできないでしょう。わたしにも無理です。なぜかというと、それだけ多くの種類の生きものがいて、多様性に富んでいるのが自然というものだからです。しかも、もっといえば、それらのいろいろな生きものにはなにひとついらないというものもありません。人間からは嫌われることが多いカラスだって、自然界では食物連鎖の一部を担ってしっかり役に立っています。この意識は人間教育にもつながるものです。人はそれぞれすべてちがっていて、しかもちがっていていい。ありのままの自分を受け入れて力強く人生を歩むためには、幼い頃に自然を通じて多様性を知るべきなのです。思いどおりにならないなかで最大限の創意工夫と努力をするふたつ目の効能は、「究極の癒やしを与えてくれる」ということ。大人のみなさんだって、仕事や人間関係でストレスがたまれば、海を見たくなったり森のなかを散歩したくなったりすることもあるでしょう。これは子どもにもあてはまることです。子ども自身が大人のように意識しているかどうかは別として、自然のなかで受け取る癒やしが子どもの心をほぐして健やかに育ててくれるのです。3つ目は、「思いどおりにならないことがあると知る」こと。いまの子どもたちはかつてと比べて物質的には恵まれていますし、大人も以前ほど厳しく怒らなくなりました。ともすれば、そういう環境にある子どもは「なんでも思いどおりになる」と感じてしまいそうですが、自然だけはいまもむかしも変わらず思ったとおりにはなりません。どんなに丹精を込めて植物を育てても花を咲かせてくれないということもあります。「昨日、アゲハチョウを見た!」という友だちの話を聞いてその場所に行ってみても、今日は見つからないということもあるでしょう。そこで、子どもは子どもなりに「自然だし、仕方ない」と「あきらめる」ことを知ります。この「『あきらめる』ことを知る」ということが重要なのです。「あきらめる」というと、努力をやめるというイメージを持つかもしれませんが、そうではありません。努力や、それからお金などではどうにもならないということもあるのが世のなかです。自分がなんでも支配できるわけではないということです。仕事をしている大人でもそうですよね?人間関係などさまざまな要素が絡む仕事では、ひとりの人間が思いどおりにできることは限られています。でも、その制約のなかで最大限の創意工夫と努力をする。「どうすれば花を咲かせられるか」と考える。自然と触れるなかで得るその姿勢こそが、子どもを大きく成長させてくれるはずです。『ナンコレ生物図鑑 あなたの隣にきっといる』佐々木洋 著/旬報社(2015)■ プロ・ナチュラリスト 佐々木洋さん インタビュー一覧第1回:「自然だし、仕方ない」現代の恵まれた子どもたちが“自然体験”から学ぶ重要なこと第2回:「虫が怖い」はこうして克服。ダンゴムシすら触れない子に、親は何をすればいい?(※近日公開)第3回:自然観察=現場検証!?生き物の“痕跡”探しから始まる、都会でもできる自然体験(※近日公開)第4回:カブトムシやクワガタが採り放題!夏休みに親子で作る“スーパーバナナトラップ”(※近日公開)【プロフィール】佐々木洋(ささき・ひろし)1961年9月30日生まれ、東京都出身。プロ・ナチュラリスト。公益財団法人日本自然保護協会自然観察指導員、東京都鳥獣保護員などさまざまな立ち場で自然解説活動をしたあと、「プロ・ナチュラリスト 佐々木洋事務所」を設立。「自然の面白さや大切さを多くの人とわかち合い、そのことを通じて自然を守っていきたい」という思いのもとに、25年以上にわたって、自然観察指導、自然に関する執筆・写真撮影、講演、テレビ・ラジオ番組の出演・企画・監修、エコロジーツアーの企画・ガイド等の活動をおこなう。著書に『ぼくはプロ・ナチュラリスト 「自然へのとびら」をひらく仕事』(旬報社)、『モリゾー・キッコロ 森へいこうよ! 会える! 虫図鑑』(宝島社)、『「調べ学習」に役立つ水辺の生きもの』(実業之日本社)、『よるの えんてい』(講談社)などがある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年07月13日我が子が、果たして順調に言葉や文字を覚えてくれるだろうか――。幼い子どもを持つ心配性の親なら、そんな不安を抱えているかもしれません。そこで、発達心理学を専門とし、『しまじろうのわお!』(テレビ東京)などの幼児教育番組や幼児向け教材の監修を行っている静岡大学情報学部客員教授の沢井佳子先生に、言葉や文字を子どもに効果的に教える方法を聞きました。まずは、その前の段階、まだしゃべらない子どものコミュニケーションについて教えてもらいます。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)赤ちゃんのときの動作に言葉を覚える前兆を見るまだしゃべらない子どもでも、あとあときちんと話せるようになるかどうかを確認する方法があります。その方法は、生まれて間もない赤ちゃんの段階でもできることです。対話の基本はキャッチボールのように交互に話すことですよね?Aさんが話しているときはBさんが聞く。そして、Aさんが話し終わったあとでBさんが話す。それと同じことが赤ちゃんの行動にも見られるのです。親が「○○ちゃん、かわいいね」というと、赤ちゃんは親を見てじっとしている。そして、いい終わったあとに自分の手足を動かす。こういう答えるような動作が見られるようでしたら、心配ありません。こうした行動から、その子どもには対話へと発達するベースが備わっていることがわかるのです。また、2、3歳になってもなかなかしゃべらないとなると、やはりおうちのかたは心配でしょう。その段階になるまでに、発達上の問題がないかをチェックする方法があります。赤ちゃんは1歳になる前頃から「指さし」をするようになります。あるいは、はっきりとした指さしをしなくても、親が見る方向を一緒に見ます。たとえば、お母さんが犬を見て、「あ、ワンワンがいるよ」といったとします。その言葉を聞いて、子どもはお母さんが見ている方向を見る。これは「共同注視」と呼ばれます。別のパターンとしては、親の前でテレビを見ていた子どもが、ある場面で親のほうを振り返るということもあります。これは、まだしゃべれなくても、「面白いよね?」「お父さんも見ているよね?」と伝えようとしているということで、「社会的参照」と呼ばれ、他の霊長類にはあまり見られない、人間の子ども特有の行動です。これらは「前言語的コミュニケーション」と呼ばれる行動で、いわば「言語のもと」といえます。こういう行動が見られるようであれば、言葉が出てくるのは時間の問題。心配の必要はありません。ひらがなを覚えるための第1ステップは「音節分解」こうして子どもがしゃべるようになると、熱心な親なら五十音を順に書かせるなどして幼い子どもにひらがなを覚えさせようとするかもしれません。でも、残念ながら、しゃべりはじめたばかりの子どもにいきなり文字を覚えさせることにはあまり意味がないのです。なぜなら、まずは「聞き取る」ことが大事だからです。その視点から、ひらがなを読む、覚えるために必要となる準備として「音節分解」があります。たとえば、「たぬき」という文字を覚えるにも、まずは「た・ぬ・き」と音節ごとに分解できる必要があります。幸い、日本語のひらがなは一部の例外を除いて1音節に1文字が対応しています。英語の場合、「ノック」という1音節の発音の言葉でも文字にすると「knock」と5文字にもなる。つづりを覚えるのがやっかいですよね。英語と比較しても、日本語の「ひらがなの読み」は幼児にとって学習しやすいのです。言葉や文字の勉強というと、つい紙と鉛筆でするものをイメージしてしまいます。でも、紙と鉛筆では音節という概念を学ぶことは簡単ではありません。目と耳と口と動作を通して、音節の区切りを学ぶことが大切です。この音節分解を学ぶためには、わたしが監修したものも含めて音声や映像で教えるビデオ教材がありますから、そういうものをご覧になるとわかりやすいでしょう。注意してほしい点は、「音節分解ができなくても文字が読めるように見える」子どもがいるということ。電車が好きな子どもなら、「とうきょう」という駅名標のひらがな表記を見て「トーキョー」と声に出すことがあります。ただ、それはきちんとひらがなを読んでいるわけではなく、「とうきょう」という文字の連なりを絵のようなまとまり(パタン)として記憶し、それに「トーキョー」という音をペアにして覚えているに過ぎないのです。そこで勘違いして、「うちの子はもうひらがなが読めている」なんて思ってはいけません。まずは音節分解ができるようになること。それができてから、本当に、ひらがなという表音文字を読む……という言葉の学習がはじまるのです。とくにオノマトペの学習に有効な「実況中継」そして、子どもの語彙を豊かにしてあげたいのなら、親が「実況中継」するということをぜひ心がけてください。いまこの瞬間に起きていることを、いちいち言葉で表現して、目の前の出来事を実況中継するのです。そうすることで、紙と鉛筆で書くという学びでは得られない、生活の感覚の「実感」を伴って子どもが言葉を覚えることにつながります。これは、とくに擬態語や擬音語などのオノマトペ(※)を子どもが学ぶ際にはとても有効な手段です。たとえば、子どもがご飯を食べているときに口のまわりを汚してしまったなら、「口のまわりが『べたべた』になっちゃったね」「水で洗ったら口のまわりが『さっぱり』して『さらさら』になったね」というふうに言葉で実況するのです。そうすると、子どもの脳には「べたべた」「さっぱり」「さらさら」という言葉の音が、べたべたの触覚などの、ライブの身体感覚を伴って入っていきます。これらの感覚は紙と鉛筆で学べるものではありません。紙と鉛筆を用意してわざわざ勉強をするという場面をつくらなくてもいいのです。親が実況中継をすれば、日常のなかで子どもは、微妙なニュアンス、感覚の違いとともに言葉をどんどんと覚えていくのですから。※オノマトペ:自然界の音や声、ものごとの状態や動きなどを象徴的に表した語。擬態語、擬音語、擬声語など■ 静岡大学情報学部客員教授・沢井佳子先生 インタビュー一覧第1回:“○歳だからこれができないとダメ!”その思い込みから親を解放する「発達心理学」入門第2回:幼い子どもの言葉が格段に豊かになる、親から子への「実況中継」という方法第3回:「10まで言えるのに、5個が数えられない」?未就学児への“数”と“時間”の教え方(※近日公開)第4回:「非認知能力」という名称の流行が生んでしまった“誤解”と“困った副作用”(※近日公開)【プロフィール】沢井佳子(さわい・よしこSAWAI, Yoshiko)1959年生まれ、東京都出身。チャイルド・ラボ所長、静岡大学情報学部客員教授。認知発達支援と視聴覚教育メディア設計を専門とする。学習院大学文学部心理学科卒業。お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修士課程修了。同大学院人間文化研究科博士課程単位取得退学。専攻は発達心理学。幼児教育番組『ひらけ! ポンキッキ』(フジテレビ)の心理学スタッフ、文教大学人間科学部講師などを経て現職。他に、日本こども成育協会理事、人工知能学会「コモンセンス知識と情動研究会」幹事、日本子ども学会常任理事などを務める。幼児教育シリーズ『こどもちゃれんじ』(ベネッセコーポレーション)の「考える力」プログラム監修、幼児教育番組『しまじろうのわお!』(テレビ東京系列/2016年国際エミー賞子ども番組部門ノミネート、2019年アジアテレビ賞受賞)の監修など、多様なメディアを用いた幼児向け教材やテレビ番組の制作におけるコンテンツ開発に携わっている。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年07月10日最近よく耳にする「毒親」。毒親とは、名前のとおり子どもにとって毒になる親、害悪になってしまう親、という意味の言葉です。具体的には、子どもに必要以上の圧力を加える親のこと。そうすることによって、子どもが成長してから生きづらさを感じるようになってしまいます。しかし、子どもから毒親と言われてしまう親のほとんどは、自分が毒親であることを認識していません。それどころかむしろ、「子どものために頑張ってきたのに…」という親も多いもの。今回は、オンラインで育児相談なども行っている心理カウンセラーの筆者が、10年後に子どもから「毒親認定」されないために、幼少期から気をつけておきたいポイントを紹介します。子どもの決断を妨げないで「毒親」と呼ばれてしまう親が必ずやっていることがあります。それは、子どもの決断を妨げ、親の決断を押しつける行為です。例えば、子どもに「誕生日だから、あなたの好きなおもちゃを買ってあげる」と言って、おもちゃ屋さんに連れて行きます。子どもはAというおもちゃを選びますが、親がBのほうが良いと思った場合、「AよりもBがいいわよ。頭もよくなるし役に立ちそう。ねえ、Bがいいわよね?」と誘導したり、場合によっては「どうしてAなんて選ぶの!Bのほうがいいに決まっているでしょう!」などと怒ったりして、子どもにBを選ばせる…。これはほんの一例で、生活の中で同様のことはいくらでも起こり得ます。時には進路や友達選びなど、子どもにとって非常に重要な局面で、子どもの選択より、親の選択を優先させることも。このとき親は、子どもにとってよりよいルートを選んであげているつもりなのです。しかしこうしたことが続くと、子どもは「自分自身で決断することは悪いことなのだ」「親の言うことを聞けば、親が自分をほめてくれる、認めてくれるのではないか」と、自らの意志を抑えつけ、相手の顔色を見て生きるようになります。子どもの失敗を恐れないでさきほどのおもちゃの例や、進路、友達選びのように、本来は子どもがするべき選択を親が代わって行ってしまうような時、親には「かわいい子どもに、失敗をさせたくない」という心理が働いています。親にとって、子どもの失敗はかわいそうで、胸が痛むものです。また、親が理想とするような方向にわが子が進んでくれるといいな…という気持ちもあるでしょう。そこで、親は子どもに代わって、よりよいと思われる決断をしてあげるのです。ところが、子どもは失敗によって多くを学ぶものですし、それどころか目の前の失敗を、将来的に大きな成功につなげていくこともよくあります。反対に、幼少期に親が決断を代行することで、子どもが大切な学びの機会を失ったり、自分の決断に自信をもてなくなったりすることのほうが、子どもにとっては大きな失敗であると言えます。長い目で見れば、目の前のことは失敗してもよい、それこそが子どもにとっての成功であると考えなくてはなりません。親の仕事は、目の前の選択を成功させることではなく、子どもを自分の意志と学びとによって、しっかりと選択できる大人に育てることです。ヒステリックに子どもを否定しないで子どもの選択を尊重するといっても、時には子どもを導いてあげなくてはならないことが、確かに存在します。そんな時に心がけたいのは「ヒステリックにならない」ということです。自分は毒親に育てられた…と自覚する人の中には「事あるごとに親がヒステリックになるのがイヤで、自分の気持ちを親に正直に話すことができず、すべてガマンして過ごした」と言う人がたくさんいます。親と子どもは別の人間ですから、親の気持ちと子どもの気持ちが違うのは当たり前です。その時、ヒステリックになって子どもの気持ちを親に従わせれば、子どもは「自分の意見は、主張してはいけないものだ」ととらえるようになり、そのまま自己主張のできない大人に成長していきます。子どもの選択において、子どもの気持ちにしっかりと耳を傾けることは不可欠です。そのうえで、子どもの選択や気持ちを尊重してあげられない理由を話すとよいでしょう。親が声を荒らげ、大きな声で子どもの意志を力任せにつぶすことだけは、絶対にしてはならないのです。常に一歩後ろから、可能性を信じて!目の前の選択肢からひとつを選ぶ、生きることはこの繰り返しです。子どもでも大人でも、間違った選択肢を選ぶことはあります。それによって「これはダメだった!他の選択肢じゃなくちゃ、いけなかったんだ!」と知り、次の選択の機会には、以前とは違う選択をしていけるようになります。子どもには、そうした成長の可能性が常に秘められているもの。親は一歩後ろから子どもの選択を見守り、子どもが転んでしまったら、起きられるように手助けしてあげればよいのです。親が応援してくれている、自分の選択を尊重してくれていると感じれば、子どもはそれだけで自信をもつことができます。反対に、親が自分の選択をまったくアテにしていないと感じれは、子どもは自信を失い、自分のことを「ダメな子」だと思い込み、どんどん自分の可能性をつぶしていきます。子どもがそのことに気づいた時、「うちの親って毒親だったんだ…」と認識するでしょう。一方で、毒親の中にはヒステリックなだけでなく、暴力で子どもの意志を抑えつけたり、育児放棄をすることによって子どもの声をまったく聞かないといったパターンもあります。共通しているのは子どもの気持ちを尊重しないということ。子どもの話を聞き、「そうだよね」と共感することで、親は子どもにとって、安心できる存在でいられます。「あなたのためよ」という言葉で、子どもの意志をむりやりにつぶしていないか、常に親が自省することで、よい親子関係を築いていけることでしょう。<文・写真:ライターあん茉莉安>
2019年07月07日蜷川実花監督と小栗旬がタッグを組み、天才作家・太宰治のスキャンダラスな恋と人生を大胆に描く『人間失格 太宰治と3人の女たち』。この度、太宰治のポーズを再現した蜷川監督撮り下ろしビジュアルが到着した。天才作家・太宰治が死の直前に完成させた「人間失格」は歴代ベストセラーのトップを争う、“世界で最も売れている日本の小説”。その小説よりも遥かにドラマチックだった誕生秘話を、太宰と彼を愛した3人の女たちの目線から、事実を基にしたフィクションとして初めて映画化。今回、太宰に扮する小栗さんは、大幅な減量を敢行しながら、究極のダメ男でモテ男、才気と色気に溢れたかつてない太宰像を創りあげた。予告編を見た人から「小栗さんめちゃめちゃエロくて朝からうひゃーってなった」「色気がありすぎて惚れちゃうだろ」「にやにやが止まらない」などと早くも話題となっている小栗旬版太宰だが、今回新たに太宰治の写真として残る有名な一枚を再現した写真が公開!太宰本人が写る写真は、1946年に銀座にある太宰の憩いの場、BAR「ルパン」で撮影。坂口安吾のほか数々の文豪や写真家なども常連だったという。そして、小栗さん扮するこの太宰写真は、蜷川監督が撮影。本作の撮影にあたり「最高の孤独とはいったいどこに存在しているのか、手に入るものなのか。そんなことを日々感じながら、一歩一歩、太宰に寄り添いながら過ごした」という小栗さん。実際にBAR「ルパン」の太宰が座っていた席と同じ場所で撮影され、指先からつま先まで、完璧に再現されたこだわりの一枚となっている。『人間失格 太宰治と3人の女たち』は9月13日(金)より全国にて公開。(cinemacafe.net)■関連作品:人間失格 太宰治と3人の女たち 2019年9月13日より全国にて公開© 2019「人間失格」製作委員会
2019年07月01日元号が平成から令和に変わりましたが、生活や気持ちに変化はありましたか? 昭和や平成の時代を生きてきたパパママにとって、令和は子どもたちが生きていく新たな時代だという印象もあるかもしれません。そんな令和時代を生きる子どもたちに対して、親たちはどのようなことを望むのか、今回は少し未来に目を向けてみたいと思います。■令和時代に親が子どもに望むこととは?アンケートでは、令和時代を生きる子どもに親が望むことについて聞きました。その結果、1番多かったのは「失敗しても立ち直れて成長できること」、2位は「自分の力で道を切り開けること」でした。パパやママたちの8割以上が、子どもたちに「失敗しても立ち直る力」と「切り開く力」をつけてほしいと期待しているようです。Q.令和時代を生きる子どもに親が望むことは? ・失敗しても立ち直れて成長できること 46.0%・自分の力で道を切り開けること 38.9%・世界の人とつながり協同できること 5.6%・AIに負けない考える力を持つこと 3.3%・その他 3.0%・特にない 3.1%■令和キッズに望むこと1、「失敗しても立ち直る力」4割を超える親たちは、「失敗しても立ち直れて成長できること」と答えました。パパやママたちがもっとも重視している「失敗しても立ち直る力」とは、一体どのようなものなのでしょうか。「新しい時代こそ、失敗してもいいのでいろいろなことに挑戦してほしい。そして、失敗してもリカバリーしやすい時代になってほしい」(三重県 40代男性)「今後、失敗だけでなく壁にぶち当たったり、試練もあると思います。それを乗り越える力をつけてもらいたいです」(神奈川県 40代女性)「自分で道を切り開いていってほしいけど、その途中で失敗もあるでしょう。そのまま沈むのではなくて、立ち直る過程で成長してくれたらきっと宝物になるはず」(和歌山県 40代女性)「失敗や挫折をしても、それを糧にできるような大人になってくれたらいいなと思います。『人生楽なことばかりじゃない』って自分なりに学んでほしい」(岩手県 40代女性)小学生ぐらいになると、失敗を恐れる子どもが多くなるように感じます。さらに、親たちもできるだけ子どもが傷つかないようにと行動しがち。どんなに親が先々の不安を取りのぞいたとしても、子どもが成長していけば、そうもいかなくなるでしょう。筆者自身も、小学校に入学した長男が徐々に親と離れて過ごす時間が増え、それと同時に失敗して落ち込み乗り越える様子を、できる限り見守らなければと考えているところです。「『レジリエンス』という困ったことが起こっても負けない折れない心を持つことが大事」と最近よく耳にします。同じように、子どもが失敗して、そこからどう乗り越えて自分の学びとしていくかを重視している親は多いようです。「自分で考える。失敗をこわがらずにチャレンジをする。そうして、自分でやったことに責任を持ってほしい」という声も寄せられました。子どもがいつか自立するときのために、「失敗することの大事さ」そして「失敗から立ち直る力」を願う親たちの思いが伝わってきます。■令和キッズに望むこと2、「自分で道を切り開く力」2番目に多かったのは、「自分の力で道を切り開けること」でした。「子どもたちには、何でもいいので『これ!』と見つけたら、遠回りでもいいから貫いてほしい」(愛媛県 30代女性)「なんでもチャレンジしてほしい。親としては、心配になるところをぐっと我慢し、子どもを信じて見守っていきたい。でも、困ったことがあったら相談してほしい」(富山県 40代女性)「考えて実行して、評価してまた実行してと、自分の力で前に進む勇気と決断力を持ってほしい」(神奈川県 40代女性)そのほか、「周りに流されることなく、自分の思いを貫けるような強い人になってほしい」という意見もありました。親からみて「こんな人になって欲しい」という願いはもちろんあるでしょう。でもその願いと同じ、もしくはそれ以上に、「自分はどうしたいのか」をしっかり考え、そして行動する人になってほしいという思いがあるようです。また、「勉強ができる頭がいい子ではなく、生き抜いていける頭のいい子になってほしい」という声も。自分の進むべき道を見つけ、その道を切り開いていく、そうした強さを子どもたちに身に付けてほしいと思っているパパやママが多いようですね。■令和キッズに望むこと3、「他人と協調して生きる力」「人は1人では生きていけないから、必ず人との関わりは出てきます『見極める目』を持ってほしい。いい仲間を作ってほしいですね」(神奈川県 50代男性)「仲間と協力すること、人を思いやる心を持てる優しい人間であってほしい。自分だけでじゃなく、誰かが失敗したら助けてあげれる人になってほしいです」(北海道 30代女性)これまで見てきた回答とは異なり、自分だけでなく、周りの人とのかかわりを重視している親からのコメントが多くありました。■令和キッズに望むこと4、「多様性のある社会で活躍できる力」「これからの子どもは世界と対等に戦っていく必要があるので、いい意味でズルく立ち回れるスキルを身に付けてほしいと思います」(神奈川県 50代男性)「日本国内に留まらず、いろいろな世界を見てほしい。価値観や文化の違いなどがあるなかでも自分を見失わず信じる未来に向かってくれたらと思っています」(神奈川県 40代女性)またほかには、「これから進むAI化をうまく使い、日本だけでなく世界の一員として大きく羽ばたいてほしい」という声もありました。「グローバル社会」という言葉を聞くようになり、もう何年もたちます。これからの子どもたちは、さらに海外でも活躍できる力を身に付けてもらいたいという思いを抱く親もいるようです。■令和キッズに望むこと5、「あたり前の幸せな社会」寄せられたコメントには、「平成が終わったから」、「令和になったから」ではなく、子どもたちにはいつの時代でも元気いっぱいでいてほしいという内容も多く見られました。「幸せになってほしい、幸せでいてほしい。時代は変わっても親が子どもの幸せを願う思いだけはずっと変わらない」(神奈川県 40代女性)「健康で平和に暮らしていってくれれば、それでいいです。これだけで充分です」(福島県 40代女性)「いまを精一杯生きてもらいたいです。今ある平和を大事にしてもらいたい。当たり前に感じていることがあたり前ではなくなることもあるのだから」(奈良県 40代女性)「子どもたちが健康であること。世の中が平和であること」、いまさらながらあたり前で、そしてとても大切な願いに気付かされるとともに、あまりに多くを子どもに求めすぎてないかという戒めにもなりそうな声です。あらためて身が引き締まる思いになります。■令和ママ、パパはどう子どもと向き合うべきかそれでは、親自身はどのようにあるべきなのでしょうか?「子どもにどうのこうのではなく、まずは親、大人が変わらない限り子どもも変わらない。親の背を見て子どもは育つと言うように、自分も含めて大人がもっとちゃんと生きたい」(三重県 40代女性)親が生きてきたなかで大切に培ってきた価値観、そして変わりゆく時代に対応するために親自身も変化していく必要があると感じる価値観。AIの登場によって、今後はますます時代の変革が激しくなり、親が子ども時代に常識だったことも、変わっていく可能性があります。そんなときにはガチガチの頭で子どもを押さえつけるのではなく、多様性を受け入れながら、従来の考え方にしばられずに、柔らかい頭で対応していきたいとも思います。ワンオペ育児だったり、三歳児神話といった昔ながらの価値観がまだ残っている育児、そして男性の育児休暇取得が進まない会社といった価値観については、いまの親世代が子どもに残さないようにしたいことのひとつではないでしょうか。最後に、こちらのコメントも紹介したいと思います。「健やかに、豊かに、人生を生きてほしい。そのために、自分を磨く努力をし、結果を残し、人生の終わりに『良かった』と言える人生であれば、それでいいと思う」(愛媛県 40代女性)はたして、自分は子どもにどんな人生を送っていってほしいのか…。時代が変わっても変化しない思い、そして新しい時代だからこそ親も見つめ直したいこれからの子どものこと。「令和キッズが大人になったとき、どんな社会になって欲しいのか」未来に思いを馳せてみること。それは、もしかしたら親も今一度、自分の生き方も考えてみるチャンスになるのかもしれませんね。Q.令和時代を生きる子どもに親が望むことは?アンケート回答数:4908件 ウーマンエキサイト×まちcomi調べ
2019年06月30日赤ちゃんのころとは違い、言葉や態度でわが子とコミュニケーションがとれるようになってくると、さまざまな問題が出てくるようになります。そのほとんどは、「どうして親の気持ちをわかってくれないの?」「自分の子どもなのに考えていることがわからない……」といった、お互いのことを理解し合えない悩みなのではないでしょうか。しかし、たとえ親子であっても、“ひとりひとり違う人間” だということを忘れてはいけません。子どもをひとりの人間として認め、親自身もまた自分の気持ちを正直に見つめ直すことで、親子の関係は劇的に改善されるのです。今回は、『親業』プログラムをベースにした、すぐに役立つ「親子コミュニケーション」のコツをお伝えします。“良い親子関係” を作るための「親教育」プログラム『親業』という言葉を初めて聞く方も多いのではないでしょうか。簡単に言うと、「親としての役割は、ひとりの人間を生み、養い、社会的に一人前になるまで育てる仕事に携わること」という考え方を基にした「親教育プログラム」を意味します。1960年代、アメリカの臨床心理学者トマス・ゴードン博士は、非行少年たちの治療に携わっていました。治療を進めていくうちに、問題児が出るのは問題親がいるからであるとの視点を明確にし、子への適切な接し方を親に教えることで、問題が起こる芽をつむことができるという結論に達したのです。そのような経緯で開発されたのが『親業訓練』です。カウンセリング、学習・発達心理学、教育学など、行動科学の研究成果を基礎にしているこのプログラムは、親としての役割を効果的に果たすための具体的な方法を教えてくれる講座として発展していきました。通常、子育てとは「子どもがいかに育つか」ばかりに重点がおかれています。対して「子どもが育つうえで親がいかに関わるか」と親の側に焦点を当てている『親業訓練』は、今では子育てに悩む世界中の親御さんたちから支持されるようになったのです。親業訓練は親も子も変える!親業訓練では、次の「3つの柱」をベースにしてプログラムを進めていきます。■親業訓練の3つの柱1. 聞くこと(能動的な聞き方)子どもが心を開いて本当の気持ちを親に話すように接し、悩みや問題を抱えていたら自分自身で解決できるように手助けをする。2. 話すこと(わたしメッセージ)親が子どもに自分の気持ちや考え方を率直に伝える。3.対立を解く(勝負なし法)子どもの欲求と親の気持ちがそのままでは折り合わない場合、どのように解決するかを考える。親が一方的に自分の意見を押しつけるのではなく、また子どもの欲求にいつも応じてしまうのでもなく、お互いに納得できるように解決へと導く。では、親業訓練を経て、親と子それぞれにどのような変化が見られるようになるのでしょう。■親業訓練による子どもの変化1. よく勉強するようになった。2. 親に対してより受容的になり、拒否的でなくなった。3. 自尊心が高まった。4. 学業不振であった子どもたちが充分な成績を取るようになった。■親業訓練による親の変化1. 親としての自信が高まった。2. 親と子の相互理解度・相互信頼度が高まった。3. 自分自身のことがよくわかるようになった。4. 子どもに対する信頼と自立を許す気持ちが高まった。アメリカでは親子関係を改善し、青少年犯罪や非行を予防するプログラムとして効果的であることが認められている『親業訓練』。その効果が確かなものであることがうかがえます。12のパターンに要注意!子どもが悩んでいたり不安を感じていたりするとき、90%以上の親がしている対応を、ゴードン博士は12の型に分類しました。それらはすべて、子どもの考える力を育てるのに効果がないとされている対応です。たとえば、子どもが学校から帰ってきて、「隣の席の子に貸した消しゴムが返ってこなかった……」と落ち込んだ様子を見せたとき、どのような言葉をかけてあげますか?おそらく次の12パターンのどれかに当てはまるのではないでしょうか。1.命令・指示「明日、そのお友だちに『返して!』って言いなさい!」2.脅迫・警告「またなくしたの!?次なくしたらもう買わないからね!」3.説教「返し忘れてるだけかもしれないよ。お友だちのことを悪く言うのはよくないんじゃない?」4.提案・助言・忠告「明日、『返して』って言ってみて、だめだったら先生に言ってみたら?」5.講義・論理による説得「その場で『返して』って言えないのも悪いんじゃない?誰だって後から言われたら嫌でしょう」6.非難・批判「なんですぐ物をなくすの!人のせいにしないの!」7.同意・賞賛・ご機嫌とり「嫌だったのを我慢したんだね、えらいよ」8.侮辱・悪口・はずかしめる「あなたが弱虫だから意地悪したくなったんじゃない?」9.分析・解釈「その前に、そのお友だちの嫌がることをしたんじゃないの?」10.同情・なぐさめ・激励「そのお友だちひどいね。そんな子のことは気にしなくていいよ!」11.尋問・質問、原因・動機・理由を探る「返してって言わなかったの?」12.ごまかし・皮肉「その話は後で聞くから、まずは宿題をやろうか」「え?なんでダメなの!?」と思った方も多いはずです。たしかにこの12パターン以外の言葉はなかなか思いつきませんよね。ではいったい、なにがよくないのでしょうか。じつは、この12の型、すべて「親の意見」であることに気づきましたか?この型にのっとって発せられた親の言葉によって、子どもは次のようなメッセージを感じ取ってしまうそう。「私の気持ちはたいしたことないと思ってるんだ」「私がどんな気持ちでいるか気にしてないんだ」「問題は隣の子じゃなくて私だと思ってるんだ」そして、そのようなメッセージを感じ取った子どもは、次のような反応を示すといいます。・これ以上話しても無駄だと黙り込む・防衛的で反抗的になる・自分はだめだ、劣っていると感じる・自分を変えなければならないと圧力を感じる・自分では解決できないと思われていると感じる・自分は信用されていないと感じる・イライラする・反撃したくなるでは、親業をベースにした理想的な対応とは、どのようなものなのでしょうか?理想的な聞き方・伝え方親業インストラクターとして活動中の松永美佐寿さんによると、「大事なのは、親から命令や提案、忠告、非難などのメッセージを出すのではなく、子どもからのメッセージを聞くこと」だそう。■「能動的な聞き方」の例「そうか」「ふーん」「そうだったんだ」と、うなずいたり相槌をうったりして穏やかに聞くように心がけましょう。それだけでも、子どもは話しやすくなり、つらい気持ちを吐き出すことができます。たとえば、子どもが「学校へ行きたくない」と言っているとき、松永さんによると次のような聞き方を心がけるといいそうです。子「もう学校イヤだ」親「学校へ行くのがイヤなんだね」子「だって給食が嫌いなんだもん」親「給食が嫌いなんだ」(※子どもの言葉を繰り返す)子「残すと叱られるから」親「給食を全部食べないと叱られて、それがイヤなんだね」(※理解したことを自分の言葉で言い換える)子「当番の人に減らしてって言えばいいんだけど、○○くんが意地悪して減らしてくれないの」親「○○くんが減らしてくれないから残すことになって叱られちゃうんだね。それはつらいね」(※気持ちをくむ)「学校へ行きたくない」と言われると、反射的に「何言ってるの!そんなこと言わないで早く行きなさい!」と叱ってしまったり、「どうして?なにがあったの!?」と過度に心配して責めるような口調になったりしてしまいがちです。しかし、まずは子どもの気持ちを肯定的に受け止めてあげることが大事。上のようなやりとりを重ねることによって、子ども自身が自分の気持ちに気づいて自発的に答えを出す力が育まれます。■「わたしメッセージ」の例次に、子どもが行動を変える気になる効果的な「わたしメッセージ」をご紹介します。次の3つの要素を盛り込むことを意識するのがポイントですよ。1. 子どもの具体的な行動(非難しない)2. わたしへの影響(行動が与える影響)3. わたしの感情(率直な気持ち)たとえば、子どもが脱いだ服や靴下をそのままにしているとします。ついイラっとして強い口調で叱ってしまいそうですが、次のように伝えてみてはいかがでしょうか。「○○くんが脱いだ洋服や靴下を床に置きっ放しにしていると(←具体的な行動)、すぐに掃除機がかけられなくて(←わたしへの影響)、部屋が片づかなくて困っちゃうな(←わたしの感情)」相手への非難や命令の要素はいっさい入っていませんが、このメッセージを受け取った子どもは、自分の行動が親にどんな影響を与えてどんな気持ちにさせているのかがはっきりわかるはずです。命令されてイヤイヤ動くのではなく、自分から行動を変えようとするので、子どもにとっても親にとってもストレスなく問題を解決することができるでしょう。***『親業講座』とは、悩みながら手探りで育児をしている親御さんたちに、方向性を提示してくれる「コミュニケーション訓練」です。今はインターネットにたくさんの情報があふれています。それらの情報に振り回されているうちに、自分の子育てに自信がなくなってしまうことも。そんなときは、このプログラムを参考にしたコミュニケーションを意識してみましょう。きっと親子の関係がこれまでとは違うものになるはずです。(参考)親業訓練協会|おやぎょうとは親業 親だって人間!|親業とは?All About|親子関係に効く!親業を知っていますか?親の学校プロジェクト|子育てコラム⑨「お決まりの12の型」を知っていますか?親業・親子コミュニケーション【キッズドアスタイル】|子どもを支援する基本はまず聴くこと親業・親子コミュニケーション【キッズドアスタイル】|子どもを支援する基本はまず聴くこと
2019年06月30日ある日のことでした。幼稚園のバスから降りた途端、これまで我慢していたのが切れたかのように、息子が泣き始めて、抱きついてきました。理由を聞いてみると、「首が痛くて回らない」とのこと。■親の目が届かないところで起こる事故その日は遠足で、大きな公園に遊びにいっていました。息子曰く、これまで幼稚園では、転んで血が出た程度のケガしかしていなかったので、少し焦ってしまいました。また、息子の言うケガの状況の説明がどれだけ正確なのかがわからない…。■「首が回らない」治療はどうなる?「首から落ちるって、大丈夫なの…?」右側に首が回らないらしく、また、直立した状態で見ると顔が傾いていました。整形外科に行き、いろんな角度からレントゲンを撮ってもらった結果、「環軸椎回旋位固定」かもしれないとのことでした。医師によると、「『環軸椎回旋位固定』は、顔を上下左右に向けるときの軸となる部分が亜脱臼することにより起こる」ということで、息子のように顔が傾くのだそう。ただ、そこまで深刻なものではなく、「適切な処置をするとちゃんと治っていく」とおっしゃっていただき、安心しました。そして1週間後、再度レントゲンと目視で見ていただき、「まだ少しだけ頭は傾いているものの、このまま自然に治っていくだろう」と言われ、ほっと胸をなでおろしました。結果としてはそこまでひどいものではなかったですが、“目の届かないところでの事故”は怖いと思った出来事でした。■ケガをした!? そのとき子どもはどうする? 幼稚園の対応は?幼稚園は、ケガの翌日はお休み。その連絡をするときに、先生に息子のケガや診察の結果をお伝えしたところ、幼稚園の先生は今回のことを把握していなかったことがわかりました。たしかに、多くのやんちゃな園児たちを、数名の先生たちが細かくすべて把握するのは難しいだろうと思います。子ども同士のケンカやケガはよくあること。私もそういった状況を理解していたので、とくに先生を責める気持ちは起こりませんでした。しかし、先生たちは親の心配する気持ちを汲み取ってくれ、次のように言っていただけました。また、幼稚園にも今後何かあったときには教えていただけるようお願いをしました。幼稚園では、すぐに先生たちの間でも情報を共有していただき、また園児に向けても、「昨日こんなことがあった」と話してくださったということです。「どういったことが危ないのか」、「してはいけないこと」など、今後、園児に同じことが起こらないように伝えてくれたとのことで、そんな園の対応には感謝の気持ちでいっぱいです。これからどんどん親の目が届かないところに行ってしまう子どもたち。これからもこういうことは何度も起こると思います。親としては心配ですが、心配してばかりもいられないので、「何かあったときに子どもはどうすればいいのか」、話せる良い機会になりました。それでも、子どもの身に何も起きませんように!毎日元気に家を出て、元気に家に帰ってくるのを毎日祈るばかりです。※この体験記に記載された症状や治療法は、あくまでも筆者の体験談であり、症状を説明したり治療を保証したりするものではありません。
2019年06月28日“世界で最も売れている日本の小説”「人間失格」の誕生秘話を、太宰治自身と彼を愛した3人の女たちの目線から初めて映画化する『人間失格 太宰治と3人の女たち』。この度、蜷川実花監督の撮りおろしによる、小栗旬演じる太宰と彼を愛した3人の女たちの美しすぎる場面写真3点が解禁となった。世界でもトップクラスの写真家である蜷川監督が自ら撮影した今回の写真は、小栗さん演じる太宰と、宮沢りえ、沢尻エリカ、二階堂ふみ演じる3人の女たちのそれぞれの関係性を見事に映し出したもの。太宰治×正妻・美知子(宮沢りえ) 「あなたは、もっと凄いものが書ける」献身的な妻であり母であるだけでなく、夫の才能を誰より理解し叱咤する、別格の存在が美知子。太宰が自分をさらけ出し、子どものように甘えられる唯一の存在。彼女が見せる、夫に対する様々な感情を飲み込んだ複雑な表情と繊細なまなざしは、日本を代表する女優・宮沢さんならではのもの。太宰治×愛人・静子(沢尻エリカ) 「愛されない妻より、ずっと恋される愛人でいたい」戦後の混乱の中、上流階級の娘にもかかわらず世間体を気にせず、ただ恋に堕ちていきたいと望む静子。その可憐な美しさと無邪気でまっすぐな好意で太宰の心を強く動かす彼女の天真爛漫な少女性を、沢尻さんが華やぐ雰囲気で演じている。太宰治×最後の女・富栄(二階堂ふみ) 「死にたいんです、一緒に」未亡人でありながら、太宰と出会って瞬く間にその魅力に溺れていく太宰の“最後の女”・富栄は、まるで病に蝕まれる太宰の体を独占するかのように盲目的に太宰との情事に耽っていく。結核で急激に弱っていく太宰の晩年期の変化を最も間近に、つぶさに観察した女性であり、若手随一の演技派・二階堂さんが静子の軽妙さとは対照的に、湿気のある吸引力で緻密に作り上げた。それぞれの女性と映る、小栗さん演じる太宰の表情もまた、関係性によって全く異なるのも印象的。本編でも、これらの写真同様、3人の女性たちの感情が寄り集まって、太宰の全体像が露わになっていく。一見、太宰に振り回されているように見えて実は自分の意志で力強く生きている女性たちを、“世代別王者”と呼ぶにふさわしい日本を代表する三女優がどう魅せてくれるのかに期待が高まる。『人間失格 太宰治と3人の女たち』は9月13日(金)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:人間失格 太宰治と3人の女たち 2019年9月13日より全国にて公開© 2019「人間失格」製作委員会
2019年06月27日子どもが親の意見に対して口答えしたり、反抗的な態度を取ったりするようになると、「もしかしたらうちの子、反抗期?」と思うパパママは多いことでしょう。今回、「子どもの反抗期」についてアンケートを取ったところ、「反抗期の時期」や「反抗期がある、ない」については、必ずしも一律ではなく、子どもによって異なってくることがわかりました。まだ子ども自身が小さくて反抗期はまだ先と思うパパママも、なんとなく気になるこの話題。すでに突入している人たちからお子さんの反抗期の態度、親が取った対応などを聞きながら、乗り越えるコツについて考えてみたいと思います。■「子どもの反抗期」7割以上があると回答アンケートでは、子どもに反抗期があったかどうか聞きました。その結果、「小学校低学年から高校生までの間に反抗期があった」と答えた人はあわせて74.4%となり、7割以上の親が子どもの反抗期を経験していることがわかりました。また、「まだ反抗期になっていない」と答えた人は23.3%で、その回答の裏には「これから反抗期を迎えるだろう」という予測も含まれていると考えられそうです。一方、「反抗期はなかった」と答えたのはわずか6.2%で、多くのパパやママたちが子どもの反抗期を経験しているか、もしくはこれから迎えるだろうと考えているといえそうです。Q.子どもに反抗期あった?小学校低学年であった 15.1%小学校高学年であった 18.4%中学生であった 20.5%高校生であった 20.4%まだ反抗期になっていない 23.3%反抗期はなかった 6.2%わからない 8.2%その他 5.1%■反抗期の特徴1、暴言、暴力「反抗期」と一口に言っても、実際に子どもとの具体的なやり取りは、家庭によって異なります。今回いただいたエピソードから多かった反抗期で起こる子どもの態度を3つにまとめました。まずは、親にとってもっとも過酷と思える暴言、暴力に関するエピソードです。「中学のとき喜怒哀楽が激しくなって、私に対していつも怒っていましたね。『お母さんにしかあたれないんやな』と理解していました」(三重県 50代女性)「高校受験前は反抗期が一番ひどかった。朝、『おはよう、今日はゆっくりだね』と言っただけで『死ね』と言われていました。最高に険悪でしたが、高校になったら落ち着きました」(東京都 40代女性)「高校生の息子とバトル。ああ言えばこう言う、みたいな言葉戦がエンドレス。口だけは達者!」(神奈川県 40代女性)「小学校5年生くらいから中学3年生までありました。一番ひどかったのは中学生のときで、『食器棚のガラスは割る』、『ドアに穴を開ける』、『壁に足跡のへこみをつける』など大変でした」(千葉県 40代女性)理由もないのに「死ね」と言われたり、家の中を壊されたりという、驚きの体験談が寄せられていました。ほかにも、「高校生になった娘とは毎日口ゲンカが絶えなかった」というコメントもあり、反抗期の子どもたちはなかなか手ごわそうです。■反抗期の特徴2、会話が成立しない暴言、暴力はなくても、話してくれない、会話にならないといった、「子どもとのコミュニケーション」がスムーズにできなくなったという声も多く寄せられました。「次男が中学3年のときに突然反抗期が始まり、いつもニコニコして明るかったのに一切しゃべらなくなり、その変貌ぶりにとても悲しい思いをしました」(大阪府 50代女性)「娘が小5から中2までひどかった。何もかもにつっかかり、文句をつけて人のせいにする、そして無視される日々。『人が真面目に話してるんだから聞けー』って叫びながら戦ったこともあります」(青森県 30代女性)「中3の反抗期は最悪。受験の大事な時期なのに、志望校を決める話し合いすらできませんでした」(千葉県 50代女性)こうした子どもの変化は、親としてもなかなか認めたくないと感じてしまうもの。また受験、進路を決める時期といった子ども自身の将来を考える上で大切なときに、話さえできなくなると、親も焦ったり、追い詰められたりと言った気持ちになるのかもしれません。■反抗期の特徴3、親の言うことを聞かない「こうしなさい、ああしなさい」など、親が子どもに対して指示したことは、かえってやりたくないというのは、子どもの反抗期の特徴的な態度と言えるかもしれません。「男の子ですが小5で反抗期に。怒られるとわかっていることをして、怒られるとふてくされる」(千葉県 30代女性)「上の子は小2ですが小1から反抗期。毎日の宿題や家庭学習、日々の最低限の片付けや生活習慣などについてケンカばかりで、情けないですが母親をやめたいと思ってしまうほどです」(北海道 40代女性)「うちの子は『うん、わかった』と返事はいいのですが、言ったことはやらず、行動は反抗的です。いろんな反抗期があるんだな~と勉強になりました」(茨城県 40代女性)自分が子どもだった頃を思い返してみれば、その気持ちも理解はできそうですが、親となってみると自分の話をまったく聞いてもらえないと、悲しく感じたり、イライラしてしまったりするものですよね。■反抗期はいつから? いつまで?また、「反抗期の時期」については、「小学生」と答えた人があわせて3割余り、「中高生」と答えた人が約4割という結果になりました。アンケートの選択肢にはありませんでしたが、期間をまたいで反抗期が長期に渡って続いたという声も多くありました。「長女は、年長で2人目ができてからずっと反抗期だった気がします。高校生になって少し落ち着いたかな」(広島県 50代女性)「小学校高学年から高校3年のいまに至るまで、ずっと反抗期が続いています。家庭に平和はいつ訪れるのでしょう…」(静岡県 50代男性)「14歳の息子、もともとあまのじゃくで言うことを聞かないし、ああ言えばこう言うので、いつが反抗期なのかわかりません」(千葉県 40代女性)そもそも、反抗期とそうではない時期というのは、子どもの性格の違いや親自身の感じ方の違いなどもあるため、明確に線引きできるものではありません。ただ、そのなかでも長期間にわたって反抗期が続いていると感じている親たちは多かれ少なかれ、「いつ終わるかわからない」というストレスを抱えていることは想像がつきます。さらに、「兄弟間でも反抗期の有無や反抗期の時期が異なっているため、回答はしぼれない」というコメントも複数ありました。子どもの反抗期を一括りにして説明することの難しさをあらためて感じるとともに、兄弟間でもまったく異なる成長をしていくのだと気づかされます。■反抗期は必要!? 「反抗期はない」も不安一方で、反抗期がないがゆえの悩みを持つ親もいるようです。「長男が高校生、次男が中学生、長女が小学生のとき、私にガンが見つかった。みんなで落ち込み、見つかった当初は私は泣いてばかり。主人は自分の仕事が一番で、手術日以外は病院に来てくれませんでした。それを見ていた子どもたちだから、もしかしたら反抗する機会がなかったんじゃないかとも思います」(神奈川県 40代女性)「4年生、2年生、年長の三兄弟がいますが、まだ反抗はなく、それどころか言い返すことさえしないので心配。私は愛情を注いでいるつもりですが、『怖いのかな』とか、仕事で帰りが遅かったりするので『甘えたいのかな』とか。逆に悩みどころです」(島根県 40代女性)「反抗期は子どもが親にきちんと気持ちをさらけ出せているということ」、「愛されていることがわかっている証拠」などと言われることもあります。こうした考えを聞いてしまうと、「反抗期がないことが心配」と、悩みを抱えてしまう場合もあるのかもしれませんね。あればあるで大変な反抗期、されどなければないで心配な反抗期、つくづく子どもの反抗期とは、親の悩みのタネだと言えそうです。■反抗期を経験した親たちから学ぶことそれでは、子どもの反抗期をどのように乗り越えればいいのか、コメントをもとに考えてみましょう。▼子どもとあえて距離をとる「何を話しても無視でしたが、中学に入ったらピタッと反抗期が終わった。反抗期の子どもにはかまわないのが1番だと思います。その方が早くその時期を抜け出せる気がしています」(新潟県 40代女性)子どもたちがコミュニケーションを拒否する場合、親は干渉せずに、あえて距離をとる。子どもが中学、高校生といった場合には、この対処を選択する人は多いかもしれませんね。子どもが自立を考えるような気もちでの反抗期の態度であれば、この対処もある一定の効果が期待できそうな気はします。ただもし、子どもが学校などで悩んでいる場合に起こっている感情の不安定さだったことを考えてしまうと、親としても決断するのは難しそう。また「子どもには子どもの人生がある」と十分わかっていても、親がはたして距離を取ってしまうことが本当にいま現在良いことなのか、悩む親が多い気がします。▼根気強く子どもと向き合う「息子がちょっとづつ反抗し始め、いつか笑って話せるようにと思いつつ、子どもの間違ったところには命懸けでぶつかり合う覚悟で向かっています」(千葉県 50代女性)「長女とは中学生のときに取っ組み合いのケンカをしました。社会人のいまはお互い1番信頼できる関係です。ストレス解消として、『家に帰ってあたれるところがある』というのはいいのではと思います。取っ組み合いでも大ゲンカしてでも子どもがそれで発散できたらいいと思います」(埼玉県 50代女性)「根気強く子どもと向き合って話し、体ごと真剣に受け止めてあげることが大切。親になるための試練でもあるので、親子としての絆を深めるためには必要な過程だと思う」(北海道 50代男性)子どもがいくら反抗的な態度だったとしても、「間違っていることは間違っている」とはっきり言葉で伝える。ときには体でぶつかって、子どもと向き合うと心がけている。という真正面から子どもと向き合う親からのコメントもありました。子どもとぶつかり合うのは、親の時間、体力、精神力が必要となってきます。場合によっては、真正面からぶつかり合うことで、お互い消耗してしまうこともあるかもしれません。それでも、「子どもとは向き合う」を重視している声が聞かれました。▼「命令」ではなく「提案」をする「『~しなさい』という指示ではなく、『~しよう』と提案するよう意識しました。提案だと、受け入れるかどうかを子どもに委ねることになり、子どもは『やるかやらないかを自分で選んだ』という気持ちを持てるし、結果の責任も自分になります。そして、うまくいかなかったときに、『だから言ったじゃない』と言わないようにしています。そうすると、子どもなりに次から気を付けるようになります」(埼玉県 30代女性)子どものためだからと、ついつい「あれしなさい、これしなさい」と、命令口調になってしまう。これは日々自覚しながらも、あらためようと思っている親も多いのではないでしょうか?自分が子どもの立場になってみると、命令ばかりされては、なかなか行動に移せないとわかります。さらに「子どものため」と言いつつ、それは「親の都合」「親の責任転嫁」だったりすることも…。コメントのように、「提案」とすることで、「決めるのは子ども」と実感させることは、とても大切なことだと思えます。ただ、どこまで任せられるのか、結局何もしなかった場合にどこまでなら「子どもの決めたこと」を通せるのか。親としての度量の深さも問われていると言えそうです。▼子どもに寄り添う「自己主張できるのはすばらしいこと。本人の言い分をまずは聞いてあげたいです」(東京都 40代女性)「まずは言い分を聞いてあげたい」、「子どもにとっていい距離を模索している」など、子どもに寄り添いたいと考えているパパやママからの声が集まりました。反抗期とは言っても、これまで親子で築いてきた時間がなくなってしまうわけではありません。たしかにその関係性が変わることもあるかもしれませんが、それも子どもの成長の証と認められると、あらたな親子関係を模索していくことができるのかもしれません。ここまで、子どもの反抗期について考えてきました。子どもによって反抗期の有無、その大小や種類は異なっていて、大変な思いを抱えているパパママがたくさんいることがわかりました。そして同じだけ、いえもっと多くの子どもが自分の感情のゆれや大人になっていく体と精神のギャップに悩んでいるのかもしれません。記事中では反抗期について種類を分類して、対処法についても考察しましたが、目の前にいる子どもにはここで挙げたような方法がうまくいかない場合も多いことでしょう。そして日々の摩擦で、悩んでいるパパやママもいるかもしれません。最後に、こちらのコメントもご紹介します。「反抗期の娘、なかなか毎日がハードです。お母さんだって人間だもの、参考書どおりの対応がいつもできるわけじゃない。その代わり自分に余裕があるときは思いきり甘やかすし全力で一緒に遊ぶ! 子どもの心の成長に寄り添えていたらいいな」(岩手県 20代女性)日々、トゲトゲした感情に触れていて、疲弊してしまっているパパママもいるでしょう。「反抗期の親のNG行動」「反抗期のやってはいけない接し方」といった情報をみながら、日々格闘している人も。そんなときには、一度パパママも子どもと真正面から向き合うことを横に置いてしまってもいいかもしれません。家のなか全体がギスギスして、金切り声だけが響いている環境というのは、やっぱり親も子も苦痛でしょう。それならまずは自分の元気を取り戻すことに注力して、日々をリセットしてみるのも悪くはないのではと思います。反抗期は、親子関係をあらためて考えなおす「試練の時」という気もします。寄せられたエピソードのなかには、「子どもが巣立つときが必ず来るから、いま一緒にいる時間を大切にしたい」といったコメントもありました。もう一度、親子関係を構築することで、子どもはより自立した大人へ、親も手を繋いで守ってきた子どもとの子離れへと進んでいかれるのかもしれませんね。Q.子どもに反抗期あった?アンケート回答数: 5324件 ウーマンエキサイト×まちcomi調べ
2019年06月23日「食育」への関心が高まるなか、「親元を離れたときに困らないように……」と考えて、子どもを料理教室に通わせている親が増えています。でも、調理経験によって子どもが得るのは、調理の知識や技術だけではない――。そう語るのは、食育、家族社会学を専門とするお茶の水女子大学生活科学部非常勤講師の松島悦子先生。では、松島先生が考える「調理経験によって子どもが得られるもの」とはどんなものでしょうか。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)料理は子どもの自己肯定感と自己効力感を高める「食育」とひとことでいってもその中身は幅広いもので、「実際に調理をする」ということも含まれます。いま各地で子ども向けの料理教室やイベントが開かれていることを見ても、食育の重要性を親が強く意識していることがうかがえます。また、子ども向けの料理教室やイベントのニーズの高まりの背景にはジェンダーに関する価値観の変化もあるように思います。いまは男女問わずに料理ができる人が尊敬されるようになってきて、古くからある「料理は女性の役割」という偏見がなくなってきました。だからこそ、男の子であれ女の子であれ、子どもに料理を学ばせようとする親が増えているのではないでしょうか。もちろん、調理経験は子どもにさまざまなものをもたらしてくれます。多くの手順がある調理は「小さな成功体験」を積み重ねる作業ですから、自己肯定感を高めることになる。そして、「目標を達成できる!」という「自己効力感」も高めることになります。以前、わたしが中高生を対象に行った調査では、「普段、料理をする」という子どもは、料理をしない子どもに比べてチャレンジ精神や達成感、工夫する楽しさ、人に食べてもらうよろこび、褒められるよろこびなどを強く感じていて、自分の性格を肯定的にとらえるだけでなく、将来の夢を持つといった生きるうえでの積極性が強いことがわかりました。日本人の子どもたちは、外国の子どもたちと比べ自己肯定感が顕著に低いことが問題とされています。でも、料理をして小さな成功体験を積めば、自己肯定感と自己効力感を高められると推測できるのです。調理は成功体験を積み重ねるプロセスそれから、調理経験が子どもにもたらすもっとも重要なものとしては、問題解決能力が挙げられます。変動が激しいこれからの時代は、さまざまな問題が次々に立ち現れるでしょう。いままでのように知識と技能を習得するだけでは、それらの問題を乗り越えることはなかなか難しいはずです。そこで求められるものこそ、問題解決能力です。その力は、実際に問題を解決して成功体験を重ねることで得られます。調理というのは、わずかな時間でその一連のプロセスを完結できる素晴らしいものなのです。どんな料理をつくるかという課題を決めて、レシピや調理の手順という計画を立てる。その計画を実行してつくった料理を食べれば、美味しかったかどうかという評価、振り返りもできる。仮に失敗や反省すべきことがあれば、それは「次」への課題になります。しかも、その「次」は、それこそ翌日にだって試せるものです。成功体験を重ねるというプロセスを、どんなことよりも手っ取り早く家庭でもできるものが調理なのです。小学生くらいの子どもなら、それこそ目玉焼きをつくるという簡単なものでいいでしょう。子どもが一生懸命に目玉焼きをつくってくれたなら、つくってくれたことを褒めてあげてください。そして、「ありがとう」と感謝し、「美味しい」と褒めて、もし改善すべきところがあれば「今度はこうしようね!」とアドバイスしてあげましょう。目玉焼きのような簡単な料理をつくることであっても、先にお伝えしたプロセスを子どもはしっかり経験することになります。「興味を示したとき」が子どもに料理をさせるチャンス!子どもの発達はそれぞれ個人差がありますから、調理を経験させるべき適正年齢というものはありません。「子どもが調理に興味を示したとき」が、そのチャンスだと思ってほしいのです。料理をしている親の姿をじっと見つめたり、「やらせて」といってきたりする子どももいます。そのタイミングは、早い子どもなら2、3歳くらい。ピークは5歳頃です。もちろん、いくらそのタイミングがきたからといって、調理をするには多少の危険も伴いますから、親が忙しい平日に無理をして調理をさせる必要はありません。週末にでも時間をつくって、親自身がゆったりした気分でいられるときに子どもに調理をさせてみるのがいいでしょう。最初にやらせるのは、本当にちょっとしたもので構いません。調理器具を使ってなにかをかき混ぜるといったことでも、小さな子にはハードルが高いことなのです。最初は手を使ってレタスをちぎるとか、クッキーのうえにレーズンやアーモンドを乗せる、ハンバーグの種をこねるといったことがいいでしょうね。そのときのポイントは、あれやこれやと口出しをしないこと。危ないことをしようとした場合は別ですが、しっかり手順を教えたらあとは極力見守ってほしい。そうでないと、調理への興味を失いかねないからです。小学校に上がる頃になって危険性が理解できるようになったら、包丁やコンロを使った調理にも挑戦させてあげてください。大切なのは、子どもの成長を親がしっかり観察すること。ひとつできるようになったら、次は「ちょっとだけ難しそうなこと」をさせてあげることで、得られる達成感や次へのモチベーションも高まっていくはずです。ただ、そうした調理経験が子どもにもたらす「効果」に親が期待するのもわかりますが、わたしとしては別の視点も持ってほしいと思います。親子で料理をつくるときには、相対するのではなく基本的に横に並びますよね?狩りをして生きていた時代の名残なのでしょう。相対する相手に対しては、人間は本能的に「敵」だとみなします。一方、横に並ぶ相手は「味方」、大事な存在だとみなすのです。つまり、親子が同じ方向を見て並び、おしゃべりをしながら料理をつくることは、親子の絆を深めることになる。きっと、親子の関係をより良くしてくれるはずです。『白熱教室 食生活を考える』松島悦子 他 著/アイ・ケイコーポレーション(2016)■ お茶の水女子大学生活科学部・松島悦子先生 インタビュー一覧第1回:「食育=食生活の教育」ではない!?常識を超えた、食育の“真のねらい”第2回:「家族で食べたい」と素直に言えない子どもたちに、親がすべき“食事の場”づくり第3回:子どもに「調理」をさせるメリット。料理をする子・しない子の“内面”の大きな違い第4回:「父親のかかわり」で食は2倍豊かになる!料理が苦手でもできる食育の方法とは?(※近日公開)【プロフィール】松島悦子(まつしま・えつこ)お茶の水女子大学生活科学部非常勤講師。専門は食育、家族社会学、消費者科学。お茶の水女子大学家政学部食物学科卒業、同大学大学院人間文化研究科博士後期課程修了、博士(社会科学)。東京ガス都市生活研究所勤務、お茶の水女子大学食育プロジェクト講師、和洋女子大学家政学群准教授を経て現職。著書に『子育て期女性の「共食」と友人関係』(風間書房)、『白熱教室 食生活を考える』(アイ・ケイコーポレーション)、『食物学概論』(光生館)、『消費者科学入門』(光生館)などがある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年06月19日作家・太宰治の日本文学史上最大のベストセラー「人間失格」の誕生秘話を描く『人間失格 太宰治と3人の女たち』から、ビジュアルと予告編が解禁。さらに主題歌が「東京スカパラダイスオーケストラ」に決定した。今回解禁された予告編では、冒頭から小栗旬さん演じる太宰が二階堂ふみさん演じる愛人の富栄に愛をささやくなど、太宰の危うい色男ぶりが炸裂している。「お父さんは天才」と子どもたちに語りかける宮沢りえさん演じる妻の美知子、「愛されない妻より、ずっと恋される愛人でいたい」と太宰に抱かれる沢尻エリカさん演じる静子、「死にたいんです、一緒に」と刹那的な笑顔で太宰に迫る富栄が次々と登場し、3人の女たちと太宰のスキャンダラスな関係性が垣間見える。先日解禁となった成田凌、千葉雄大、瀬戸康史、高良健吾、藤原竜也ら豪華男性キャスト陣も今回の映像で初披露。「書くためならなんでもやる」と陰口を叩かれ不倫を続ける太宰に詰め寄る成田さん演じる編集者・佐倉や、「地獄に堕ちて書いてるか?」と悪魔のように太宰を挑発する藤原さん演じる同志の作家・坂口安吾の姿も気迫に満ちている。女たちとの濃密な逢瀬の間で、次第に狂気を帯びながら苦悩し、執筆と格闘するスター作家・太宰を演じる小栗さんの、いまだかつて見たことのない様々な表情に心奪われる予告編となっている。予告編と同時に解禁となったビジュアルには、アップで映し出された小栗さんの姿が。唇に付いた血を拭う色っぽさ漂う姿と、「死ぬほどの恋。ヤバすぎる実話。」のキャッチコピーが彼が巻き起こす波乱万丈なストーリーを期待させるビジュアルとなっている。さらに今回、2001年にリリースされた「東京スカパラダイスオーケストラ」の名曲、「カナリヤ鳴く空 feat.チバユウスケ」が主題歌に決定。構想初期からこの曲をイメージしていたという蜷川監督の熱烈オファーに応え、主題歌決定の運びとなった。太宰が“全部ぶっ壊して書く”「人間失格」とは。そして、スキャンダラスな恋の向こう側で、太宰が本当に求めていたものとは…。超豪華キャストが競演する鮮やかな世界から目が離せない。『人間失格 太宰治と3人の女たち』は9月13日(金)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:人間失格 太宰治と3人の女たち 2019年9月13日より全国にて公開© 2019「人間失格」製作委員会
2019年06月19日2005年に食育基本法が制定されたこと、また、教育意識そのものの高まりもあって、子どもを持つ親の「食育」への関心は高まっています。ただ、食育、家族社会学を専門とするお茶の水女子大学生活科学部非常勤講師の松島悦子先生は、その傾向を歓迎しながらも、「懸念している部分もある」と語ります。それは、「孤食」をめぐる問題でした。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)子どもの好き嫌いに表れる食育意識の高まりここ十数年で「食育」への意識はかなり高まったように思うのですが、それは「子どもの好き嫌い」のデータにも表れています。30代、40代といういまの親世代が子どもの頃に嫌われていた食べものというと、ピーマン、セロリ、ナス、アスパラガス、グリーンピース、トマト、シイタケ……などが横並びで挙げられていました。ところが、いま、子どもたちがいちばん苦手としているのは、ニガウリ。いわゆる、ゴーヤだというのです。その嫌われ方は断トツで、ある調査データによれば2番目に嫌われているナスは小学生の9.4%が苦手としているのに対し、ニガウリはなんと27.5%の小学生が苦手としています。なぜこんな変化が起きたのでしょう?沖縄料理ブームによってゴーヤが全国的に浸透したことも理由のひとつとして考えられますが、健康志向が高まるなか、子どもに対して親が積極的にゴーヤを食べさせようとしているのだろうと推測されます。また、給食でも頻繁にゴーヤが出されるようになったということもあるでしょう。なぜゴーヤを子どもに食べさせたいのか?それは、ゴーヤが持つ栄養価の高さや病気の予防効果などにあります。ニガウリは、沖縄の伝統的な野菜のひとつで、ゴーヤチャンプルやてんぷらなどの料理で食されています。果実や種子には、ビタミンCやポリフェノールといった抗酸化物質や各種生理活性物質が多く含まれることから、古くから薬用として糖尿病予防などに用いられてきました。近年の研究では、血糖低下作用や脂質代謝調節作用、抗がん作用、抗炎症作用などの生理作用を有することが次々報告されています。また、特有の苦み成分は、食欲増進効果など、様々な生理作用があるといわれています。食育への意識が高まっている親たちが、健康への期待を込めてゴーヤを子どもに食べさせようとした結果、独特の苦味があるゴーヤが嫌われてしまったようなのです。ゴーヤと同様のことはレバーにもいえます。いまの親世代が子どもの頃と比べて、レバーが苦手という子どもの割合が増えているのです。これもまた、栄養豊富なレバーを親が子どもに食べさせようとした弊害なのでしょう。研究者としては面白く感じられて興味深いことですが、食育に対する関心が高まるなかでの結果としては、皮肉なものです。「孤食」の拡大は時代の流れによる必然?食育への関心が高まることは歓迎すべきことですが、わたしは懸念も抱いています。それは、「孤食」をめぐる問題……。孤食とは、現在はNPO法人食生態学実践フォーラム理事長である足立己幸先生が1983年に出版された『なぜひとりで食べるの 食生活が子どもを変える』(日本放送出版協会)の内容がテレビ放映されたことによって広まった言葉で、文字通り、「ひとりで食べる」食事形態を指すもの。当時は、高度経済成長期を経て、大型冷蔵庫や電子レンジが普及した時代でした。さらに、美味しい冷凍食品がどんどん登場し、お惣菜やお弁当を買ってきて家などで食べる「中食」という選択肢も登場したことで、子どもひとりでも食事ができるようにもなった。加えて、2000年代以降でいえば、共働き世帯が急激に増えたことも孤食の傾向に拍車をかけている要因だと見ることができます。しかも、いまは親も子どももすごく忙しい時代です。働き方改革が推進されているとはいえ、やっぱり長時間労働を強いられている親は多いですし、子どもだって小学校5、6年生になればお弁当持参で塾に通っている。そうなると、家族全員で食事をする機会は必然的に減っていきます。そんな時代にあって、家族がそろって食事をする「共食」に対して、「孤食は良くないものだ」ととらえられがちです。でも、これは時代の流れによる必然のことであり、わたしは「いい、悪い」の問題ではないと思っています。「共食」はその頻度より中身が大切それなのに、食育への意識が高まった結果、子どもに孤食をさせることに対して親が必要以上に罪悪感を抱いたりプレッシャーを感じたりするようになれば、それこそ問題ではありませんか?職業にはさまざまなものがあります。看護師など就業時間が不規則な職業もあるし、夜間に働いている親だっているでしょう。では、そういう親のもとに育ち、孤食をしがちな子どもがみんな健全に育たないかというと、そんなわけはありませんよね。もちろん、家族がそろって食事をする場合には必然的に品数が多くなり栄養面で優れているとか、家族の会話によってコミュニケーション能力が育つといったように共食のメリットはたくさんあります。ただ、共食については、その頻度というより中身が大事なのです。いつも家族全員がそろって食事をしたとしても、誰かがスマホをいじっていれば共食とはいえません。会話がなければ家族関係が良くなることも子どものコミュニケーション能力が育つこともないでしょう。つまり、共食の頻度が減っているいまだからこそ、週末など家族が集まれるときの食事をいかに楽しい場にするかということを意識してほしいのです。先述の足立先生が小学生を相手に行ったグループインタビューで、子どもたちは興味深いことを答えています。子どもたちは、「家族全員で食事をしたいと思っている」「でも、親にはそれをいわない」のだそうです。なぜならば、幼いながらも親が忙しいことをきちんとわかっているからです。その健気な思いを考えれば、家族みんなで食事ができる限られた時間こそスペシャルなものにしてあげてほしいですね。『白熱教室 食生活を考える』松島悦子 他 著/アイ・ケイコーポレーション(2016)■ お茶の水女子大学生活科学部・松島悦子先生 インタビュー一覧第1回:「食育=食生活の教育」ではない!?常識を超えた、食育の“真のねらい”第2回:「家族で食べたい」と素直に言えない子どもたちに、親がすべき“食事の場”づくり第3回:子どもに「調理」をさせるメリット。料理をする子・しない子の“内面”の大きな違い(※近日公開)第4回:「父親のかかわり」で食は2倍豊かになる!料理が苦手でもできる食育の方法とは?(※近日公開)【プロフィール】松島悦子(まつしま・えつこ)お茶の水女子大学生活科学部非常勤講師。専門は食育、家族社会学、消費者科学。お茶の水女子大学家政学部食物学科卒業、同大学大学院人間文化研究科博士後期課程修了、博士(社会科学)。東京ガス都市生活研究所勤務、お茶の水女子大学食育プロジェクト講師、和洋女子大学家政学群准教授を経て現職。著書に『子育て期女性の「共食」と友人関係』(風間書房)、『白熱教室 食生活を考える』(アイ・ケイコーポレーション)、『食物学概論』(光生館)、『消費者科学入門』(光生館)などがある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年06月18日子どもがつらいことや、何らかの問題を抱えていたら、絶対に助けてあげたい、守ってあげたいと思っている親はたくさんいます。しかし現実には、子どもが親になかなか助けを求めないため、そのSOSが伝わりにくいことも。今回は心理カウンセラーの筆者が、いざという時に子どもから「助けて!」というヘルプサインを出してもらうためのポイントを、3つピックアップしました。苦しいことやつらいことは少しでも早い段階で教えてほしいと願う親が、普段から気をつけておきたいこととは?「まず子どもの主張を聞く」ように心がける普段、子どもに接するとき、自分が言うべきことを言うことと、子どもの主張を聞くこと、どちらを優先していますか?たとえば子どもがきょうだいケンカをしているとき、事情はともかくケンカをやめさせなくては…と、まず怒ってしまうのは、よくあることです。しかし、事情も聞かれず、最初に抑え込まれた子どもは、「怒られた」ということに対して強い印象を持ってしまうため「ママやパパは私の話を聞いてくれない」と感じてしまいます。1度だけではなく、いつもそうだったら?子どもは最初から、親に自分のことを話そうとはしなくなってしまうでしょう。子どもを怒るときや注意をするときには、まず子どもの言い分を聞くことを心がけてください。もし先に親が言いたいことを言ってしまったとしても、あとから必ず、子どもが言いたいことは何だったのかを聞く時間をとるようにするとよいでしょう。注意する声は、音量を控えめにするママやパパに怒っているつもりがなくても、大きな声で注意されたというだけで、子どもは「怒られた!」と感じます。大人が思っているよりも、子どもは大人の大声に対して威圧感を感じているものです。まして怒るときに四六時中怒鳴っていては、子どもはそれを避けようとし始めます。トラブルにひとりで立ち向かうことの恐怖よりも、トラブルを大人に打ち明けて怒鳴られたらどうしよう…と思うことが先にくるのです。結果的に子どもが大人にトラブルを隠そうとしてしまい、大人が気づいた時には大ごとになっていることも…。こうした事態を避けるためには、日常的に小さめの音量で子どもと対話をする必要があります。特に子どもを怒るときには音量を小さくするよう心がけて。大人が大声を上げることは、子どもの声を消し、遮ることを意味します。「あなたの味方だよ」と寄り添う子どもが友達とケンカをして、家に帰ってくることはよくあります。その話を聞いたとき、あなたはどのような反応をしていますか?たとえば「○○くんが、ぼくを叩いた!」といったときには「でもあなたも○○くんが叩くようなことをしたんじゃないの?」などと言ってしまいがちではないでしょうか。毎回それでは、子どもは「何を言っても、ママはぼくが悪いって言う。ぼくの味方ではないのだ」という受け止め方をするようになります。子どもが友達とトラブルを起こしたと聞いたときは、まず子どもを疑うような言い方をするのではなく「叩かれる前に何があったの?」という聞き方をするのがおすすめです。そして、わが子に非があった場合はそれを指摘した上で、ケンカをした子どもの心情にも一定の理解を示す必要があります。実際、親の理解を得ることで子どものトラブルが減るケースも。親はつい子どものケンカや失敗を責めがちですが、「あなたの味方だよ」と寄り添う姿勢が大切です。「いつでも言いなさい」と常日頃から言っておきましょう親の目が届かない場所に出かけるようになった子どもには、どのようなトラブルも起こり得ます。いざという時、「SOS」を出してもらうためには、親の側にそのSOSを聞く気持ちがあることを、常日頃からわが子に知らせておくことが大切です。また、子どもにいつもと違う様子がないかを意識して見ておくことも必要です。たとえば、いつもならハッキリ言うことをモゴモゴと言いよどんだり、今まで聞かなったようなことを聞いてきたりするときは、「困ったことがあったら、いつでも言うのよ」と声をかけるチャンスですよ!3つのポイントを押さえつつ、「ママやパパはあなたの味方だよ」と直接的な言葉を用いて語りかけることで、子どもはいざというときに助けを求めることができるようになっていくでしょう。<文・写真:ライターあん茉莉安>
2019年06月15日ここぞというときに学力をぐんと伸ばす子。東大などの難関大学に合格する子。困難なときも自分で道を切り開いていける子。そういった子どもと、そうではない子どもの違いって、いったい何だと思いますか?その答えは “家庭”にありました。さっそく、詳しくご紹介しましょう。子どもの伸びしろは家庭環境で決まる?入塾テストがないにもかかわらず、中学受験の第一志望合格率が7割以上、大学受験では難関大への合格率が8割以上という進学塾 VAMOS(東京・吉祥寺)を主宰している富永雄輔氏は、受験コンサルタントとしてこれまで2,000人以上の親と接してきた経験から、次のように述べています。そもそも、「伸ばしやすい子」とはどういう子なのでしょう?それは、十分な「伸びしろ」が準備されている子です。「伸びしろ」とは、さらに成長する余地であり、可能性のこと。しっかりと「伸びしろ」をつくられた子どもは、きっかけさえ見つかれば、飛躍的に学力を伸ばしていきます。そして、その「伸びしろ」を育てるのはそれぞれのご家庭なのです。(引用元:富永雄輔(2017),『東大生を育てる親は家の中で何をしているのか?』, 文響社. )親の心がけ、幼少期からの家庭での習慣、休日の過ごし方、環境づくりなどが、子どもの「伸びる」「伸びない」に関係しているということ。なにげなく過ごしている家庭での日々が、じつはとても大切なのです。1. まず心がけたい「心休まるおだやかな家庭」「陰山メソッド」に代表される基礎学力の向上や、『徹底反復シリーズ』をはじめとする教材開発などで知られる教育者・陰山英男氏はこう述べています。私は教員時代に毎年何十件と行っていた家庭訪問で、子どもの性格と家庭の雰囲気の関係を考えるようになりました。そうして振り返っていきますと、やはりおだやかな心地よさが感じられる家庭のお子さんは成績がいい子が多く、また年齢相応のしっかりとした話し方のできるお子さんが多いということが改めて感じられたのです。(引用元:ベネッセ教育情報サイト|陰山英男氏に聞く!子どもの学力を伸ばす勉強法・習慣とは?)また、これまで多くの子どもや親たちに指導を行なってきた「花まる学習会」代表の高濱正伸氏も、「家族関係の良さが子どもの安心感の源泉」であり、「家族で心からくつろげて安心できる家である」ことが、伸びる子を育むうえでとても大切なことだと指摘しています。両親は共働き、子どもは習い事や塾で忙しい……今はそんな毎日を過ごすご家庭も多いのではないでしょうか。だからこそ、家の中では家族全員が心から落ち着ける空間、良好なコミュニケーションが取れる雰囲気を意識的につくっていくことが必要かもしれません。伸びる子のベースには、「家庭で得られる安心感」があることを忘れないようにしたいですね。2. 伸びる子の親の褒め方伸びる子の親の特長として、「褒め上手である」こともかなり大きなポイントのようです。たしかに、褒められることで子どもは自信がつき、自己肯定感を高められる――というのは、よく聞く話ですよね。ただし、褒めすぎは要注意だそう。というのも、伸びる子は常にもっともっと上に行きたいという上昇志向を持っているから。子どもを伸ばしたいなら、この “ハングリー精神” は不可欠なのだそうです。たとえば、算数で80点の壁をなかなか超えられなかった子どもがいるとしましょう。努力の甲斐あって、85点を取ることができたとしたら、どんな褒め言葉をかけてあげますか?目標よりさらに5点高い85点を取れたのだからおおいに褒めてもいいのですが、ある親御さんはこう言ったのだそうです。「よく頑張ったね。さあ、これで90点を目指す準備ができたじゃない!」これこそ、絶妙な褒め言葉。85点を取れたことはしっかり褒めていますが、その先にも目を向けさせるような言葉です。褒めるのはもちろん必要ですが、時に大事なのは、「それはまだゴールではない」と子どもに感じさせることなのです。ほかにも、伸びる子の親の傾向として、以下に挙げた行動が挙げられるようです。ぜひ参考にしたいですね。■「勉強(宿題)しなさい」と言わない■テストの結果、成績の上下に一喜一憂しない■家族の目の届く場所(リビングなど)で勉強させる■平日も休日も生活リズムを崩さない■家庭菜園をする■お手伝いをしっかり任せる■無駄なものを家におかない■収納のしつけをする■子どもと一緒に図書館、劇場、美術館、博物館、科学館などに行く3. こんな環境づくりでさらに伸びる子に家の中にちょっとした “仕掛け” をつくって、家族みんなで楽しむこと。これも、伸びる子が育つ家庭の特長です。ポイントは、“自然と視界にはいってくるもの” “手を伸ばしやすい場所にある”です。ただし、強制はせず、うまくいけば儲けものくらいの感覚で試してみてくださいね。■ファミリーライブラリーを作る伸びる子の特長のひとつとして、“読書好き” あるいは “多読だった時期がある” が挙げられるようです。読書が子どもに良い影響を与えるのは、もはや周知の事実ですよね。問題は、「どうやったら読書好きになるのか」ではないでしょうか。そこで試していただきたいのが、「ファミリーライブラリー」。ファミリーライブラリーとは、いつでも目に入るところ、手に取りやすい場所に、親自身が読みたい本、親が子どもに読んでほしい本、子ども自身が読みたい本などを棚などに並べておくこと。そのうち何冊かは、表紙を向けて並べておくのが効果的だとか。そうすることで、子どもの視覚に訴えやすく、瞬間的に手を伸ばすようになるのだそう。さらに、親もなにげなく本を手に取ることが増えるでしょう。親の読書する姿を日常的に子どもに見せることも、子どもを読書好きにさせると言われています。子どもと一緒に調べものができるように、本の近くに辞書や辞典、世界地図、地球儀を置くのもおすすめです。■覚えたいことを紙に書いて貼る四字熟語、歴史の年号、英単語、漢字……覚えなくてはいけないことが増えてきたら、紙に書いて「トイレの壁」や「冷蔵庫のドア」に貼っておきましょう。そうすることで、記憶に残りやすくなり、ひとつやふたつは無意識のうちに覚えてしまうものなのだとか。メディアで活躍中の山口真由さんも、著書『東大首席・ハーバード卒NY州弁護士と母が教える 合格習慣55』の中で、「何かを記憶として定着させたいとき、毎日、何度か必ず行く場所に貼っておくのが効果的」だと言っています。また、山口さんはもっと効果的な方法として、「覚えたことを親子の会話の中で声に出してアウトプットする」と書いています。ポイントはゲーム感覚で楽しむこと、だそうですよ。***どれも、ちょっとした親の心がけや工夫でできてしまうことばかりでしたね。でも、そんななにげない些細なことが、知らず知らずに子どもに大きく影響を与えることは間違いないようです。ぜひ幼少期から家庭で取り入れてみませんか。文/鈴木里映(参考)富永雄輔(2017),『東大生を育てる親は家の中で何をしているのか?』,文響社高濱正伸,相澤樹(2018),『あと伸びする子はこんな家で育つ』,大和書房ベネッセ教育情報サイト|陰山英男氏に聞く!子どもの学力を伸ばす勉強法・習慣とは?Business Journal|学力の高い子ども、親の習慣や家庭環境に「共通の傾向」…文科省調査で判明東洋経済ONLINE|「勉強しなさい!」が不要な子の”家庭内習慣”山口真由(2018),『東大首席・ハーバード卒NY州弁護士と母が教える 合格習慣55』,学研プラス
2019年06月15日幼い子どもを抱える親の悩みのひとつに、公共の場で子どもが騒いでしまうということがあります。また、子どもが小学生くらいになれば、勉強やスポーツに辛抱強く取り組む子どもになってほしいと願うはずです。その悩みを解決し、願いをかなえる子どもの「我慢する力」はどうすれば育むことができるのでしょうか。発達臨床心理学、保育学、児童学を専門とする東京都市大学人間科学部教授の井戸ゆかり先生に、アドバイスをしてもらいました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)「生理的な我慢」は強いるべきではない「我慢」にもいくつかの種類があります。ひとつは「自己抑制」という意味での我慢。これは、なにかいいたいことややりたいことがあっても、自分で判断をして「この場ではいわないほうがいい」「やらないほうがいい」と自分を抑えることです。そういう意味での我慢は社会生活を営むうえでとても大切なものですから、幼いときからさまざまな経験を通して徐々に教えていくとよいでしょう。一方で、とくに幼い子どもの場合は、「生理的な我慢」を強いるべきではありません。トイレに行きたくなってしまう排泄欲などはその代表的なものです。そういう我慢を無理にさせると健康にも害が及ぶことがあります。たとえば電車に長時間乗らなければならないときなどは、乗車前にトイレに行かせるとか途中でトイレ休憩を取るなど、親が工夫してあげる必要があります。それらの工夫は、子どもにとって必要なルールを覚える訓練にもなります。たとえば、幼稚園や保育所のなかには、お昼ご飯の前に子どもたち全員をトイレに行かせるというところもあります。これには、食事中にはなるべくトイレには行くべきではないというマナー、ルールを教えるという意味も込められているのです。生理的な我慢を強いるべきではないといっても、野放しにしてしまっては問題です。まずはきちんとルールを学ばせる。そのうえで、どうしても体の具合が悪いときなどは遠慮しないできちんと親や保育者に伝えるということを教えることが大切です。無理な我慢をさせないように親が工夫する先にお伝えした自己抑制という意味での我慢についても、あまり幼いときから無理に我慢させることは注意が必要です。というのも、子どもは幼稚園や保育所での集団生活を通じて、徐々に自己抑制を学んでいくからです。3歳児たちの入園式では、どの子どもも落ち着きがありません。でも、3年後の卒園式では、みんなが静かにできて見違えるほどに成長した姿を見せてくれるものです。そう考えれば、電車やレストランなど、静かにしていてほしい場所に幼い子どもを連れて行く場合には、親の側が工夫するべきではないでしょうか。3歳くらいまでの幼い子どもは、走ってはいけない場所や静かにしておかないといけない場所というものがそもそもわからないのですから、まずはそういう場所にはなるべく連れて行かないという選択をすることを考えてほしいですね。どうしても行かなければいけないというときなら、短時間で済ませることも選択肢となります。または、静かなレストランで食事をするならば、お父さんとお母さんのどちらかが子どもに絵本を読んであげるとか、子どもを抱いて外に連れ出してあげるというふうに、両親が交代で子どもを見るということもできますよね。片方が子どもを見ているあいだに、食事は済ませればいいのです。あるいは、いまならキッズスペースを設置しているような子どもを連れて行きやすいような工夫をしているお店もありますから、そういうところを選ぶことも検討すべきことです。そもそも、親の都合で幼い子どもに我慢をさせることはなるべく避けるべき。なぜなら、3歳くらいまでの幼い子どもに無理やり我慢をさせたり、「ダメ!」とむやみに禁止したりすると、自発性が伸びなくなるからです。そのくらいの子どもにはなるべく伸び伸びとできる環境を用意してあげるように意識してほしいですね。「褒める」ことが子どもを我慢強くするその後、子どもが成長して小学生くらいになれば、勉強やスポーツなどに一生懸命に取り組める我慢強い子どもになってほしいですよね。そういう子どもに育てるためのポイントは、やはり「褒める」こと。子どもが我慢強くなにかに取り組めたとしたら、「頑張ったね!」「よく我慢できたね!」と褒めてあげて、「本当は遊びたかったのにね」と子どもの気持ちに寄り添ってあげましょう。我慢できたことを褒められた子どもは、我慢することに意味があると気づくようになります。同時に、褒めることは子どもの達成感を高めることにもなります。なにかを成し遂げれば、子どものなかで達成感は生まれますが、親に褒められることがその達成感をさらに高めてくれる。その体験を経て、子どもは自信を持って「次も頑張ろう」と思えるようになります。親などまわりの大人が褒めてあげることの重要性は、子どもには自分で自分を褒めることが難しいという点にあります。大人であれば、自分を客観視して「今日は頑張ったから自分にご褒美をあげよう」ということもできます。でも、子どもにはそれが難しいのです。だからこそ、子どもが我慢強くなにかに取り組んだのなら、たくさん褒めてあげて、「頑張って我慢してよかった」と感じさせてあげてください。『保育の心理学 実践につなげる、子どもの発達理解』井戸ゆかり 編著/萌文書林(2019)■ 東京都市大学人間科学部教授・井戸ゆかり先生 インタビュー一覧第1回:あなたの子どもは大丈夫?絶対に見過ごしてはいけない「自己肯定感」低下のサイン第2回:「失敗を恐れない力」の育て方。子どもに「挑戦したい!」と思わせる、効果抜群な言葉かけ第3回:「辛抱強い子」を育てるヒント。「我慢する力」を伸ばすのは“○○上手な親”だった!第4回:「先生に言いつけるよ」がダメな理由。自己主張できない子が育つ“4つのNGなしつけ”(※近日公開)【プロフィール】井戸ゆかり(いど・ゆかり)東京都出身。東京都市大学人間科学部教授。専門は発達臨床心理学、保育学、児童学。学術博士。横浜市子育てサポート研修講師、渋谷区子ども・子育て会議会長などを務める。二児の母。著書に『子どもの「おそい・できない」にイライラしなくなる本』(PHP研究所)、『「気がね」する子どもたち-「よい子」からのSOS-』(萌文書林)、編著に『保育の心理学Ⅱ 演習で学ぶ、子ども理解と具体的援助』(萌文書林)』、監修書に『1さいのなあに? のびのび育つ! 親子ふれあい絵本』『2さいのなあに? 「知りたい」がいっぱい! であい絵本』(ともにPHP研究所)などがある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年06月14日