デザイナーのコシノジュンコが衣装を手掛け、宮本亜門が構成・演出を務める、全世界で650万人の動員を誇る和太鼓エンターテイメント集団「DRUM TAO」の新作舞台「百花繚乱 日本ドラム絵巻」の東京ロングラン公演(全16回)が、7月16日より天王洲 銀河劇場にて上演されることを記念して、同日、マスコミに向けた公開前舞台稽古が行われた。本作は「DRUM TAO」結成22年目の今年、宮本亜門という初めての演出家を招いての舞台。物語は、ある美しい国の小さな村に住むひとりの少年の成長譚だ。ある日、突如として起きた火山の噴火で少年は両親を失い、さらに天変地異をきっかけに隣部族との抗争が勃発、そんな少年を慈愛の心で見守る天女…時代を越え、語り継がれてきた神話が舞台上で紡がれる。しかし、語られるセリフというものは存在しない。会場に響くのは体の芯まで痺れるような和太鼓を始めとした和楽器の音と、役者たちの「セイヤッ!」「ハッ!」という掛け声のみ。感情は全て楽器の音色と演舞でのみ表現されるという圧巻の演出が本作の見所だ。小粋な祭り囃子から、全てを飲み込まんとする大自然の猛り、闘いの舞と共に響く激情、そして琴や三味線で表現される悲しみと葛藤。役者たちは時に和太鼓を抱えたまま舞い、巨大な太鼓を前にすれば一心不乱に打ち鳴らす。太鼓を打つというその所作と舞との間に切れ目はなく、体を目一杯駆使してそれぞれのキャラクターの想いは伝えられる。取材の最後には、「DRUM TAO」のメンバーである西亜里沙、江良拓哉、岸野央明に加え、コシノジュンコと宮本亜門もQ&Aに応じた。初参加となる宮本亜門は「今日、改めて見て感じたことはやっぱり素晴らしかったです。今の日本にすごく必要な人たちだし、このエネルギーと潔さと、氣を入れるというこの感じ。『DRUM TAO』見なきゃ、日本はダメなんじゃないかと思ってるくらいです(笑)」と自信のほどを窺わせる。衣装を手掛けるコシノジュンコは12年からタッグを組んでおり、今回で4年目。新作「百花繚乱」の衣装について、「最初に『DRUM TAO』を見た時、どんどん衣装を強烈にしていきたいと思いました。(劇中の)衣装といいながらも、やっぱり“魅せる”ということがすごく大切だと思っていて、『百花繚乱』というゴージャスで、江戸がすごく面白かった時代。あの時代の雰囲気を再現できないだろうかって夢をいつも持っているんです。だから今回、思い切りキッチュで、破裂しそうで、叫びだしそうな凄さ、なのに品があってカッコよくて…上手く言葉にできないですけど(笑)、そんなものを目指しました。とにかく見てもらいです」と独特の言葉で語っていた。また、本作は16年2月にニューヨークのオフブロードウェイで上演することが決定している。そして、宮本亜門とコシノジュンコは共に舞台の本場といわれる、ブロードウェイの経験者。そんな2人だからこそ、こんな本音が飛び出した。「ニューヨークは大変なところです。でも、僕が世界でも見たことないような、このドラムとドラマとアートでそこに挑戦できることがとても楽しみです。ニューヨークの人々は良い意味でちゃんと見ててくれます。実力のある人しかニューヨークは認めないんです。でも日本の場合は正直に言うと、実力がなくてもやっていける人がたくさんいます。僕はそういう人ともたくさん仕事してるから(苦笑)。オーラだったり、可愛げがあるだけだとニューヨークではバッサリ切られるんです。それでも、僕の感覚では(DRUM TAOは)絶対にウケるという確信があります。稽古場でも身を削って、血を流して作り上げてきた作品だから、世界に応えられるものになってると思います。そして、新たな旋風を巻き起こしてくれるだろうと信じてます」(宮本亜門)。「ブロードウェイは、はっきりと『良いものは良い、悪いものは悪い』という世界なのでとても怖いところです。少しでも欠けてるともうダメ。だから、来年までにもっと鍛えて、日本の楽しくて、優雅で、カッコいい所を届けて、日本が持つ感性をメッセージとして伝えられるようなものをやりたいと思っています。最高に楽しい仕事です。ブロードウェイというビジョンがしっかりした中でモノ作りができるという環境は素敵ですね」(コシノジュンコ)。その後も2人からは、「日本が世界に誇れるもの」「絶対に成功する」と自信のほどを感じさせるコメントがこぼれる。ブロードウェイでの挑戦も然りだが、新国立競技場の建設騒動で賛否を呼んでいる5年後の東京オリンピックも、世界へ日本のカルチャーを発信する場となるはず。これについて、東京オリンピックの文化委員を務めるコシノジュンコは「全てのことがオリンピックに繋がると思っているんですね。東京だけのものでは当然ないですし、オールジャパンで取り組んでいくことだと思っているんです。そういう意味では、日本という感性を持った『DRUM TAO』はまさにぴったりと思うんですね。伝統芸術とスポーツを掛け合わせたようなもので、これから日本が目指すコンセプトに当てはまると思っています。まだ、具体的に何ができるかは分からないですが、これから『DRUM TAO』は日本のあちこちを回っていくんですが、その時にオリンピックへと繋がるメッセージが届けられれば、もっと大きな意味を持ち始めるんじゃないかと思っています」。【公演詳細】「百花繚乱 日本ドラム絵巻」■東京公演日時:7月16日~7月26日(日) 計16回会場:天王洲 銀河劇場場所:品川区東品川2-3-16 シーフォートスクエア内2階料金:S席 7,500円(1階・2階)、A席 6,000円 (3階)■NY公演日時:2016年2月11日~2月14日(日) 計6回会場:Skirball Center for the Performing Arts
2015年07月17日バイオリニストで1児の母でもある宮本笑里が、6月22日からキッズステーションでスタートする新番組『えいごのおはなしCBeebies!』の関連番組『日本初放送の BBC 知育番組を体験!「宮本笑里 meets CBeebies」』に出演する。CBeebies(シービービーズ)は、BBC(英国公共放送協会)が運営する6歳以下の幼児向け専門チャンネルから生まれたブランド。新しく始まる『えいごのおはなし CBeebies!』では「楽しく学ぶ」をコンセプトに、CBeebies が厳選した良質なアニメーションを吹き替え無しで原語のまま放送。生きた英語で「えいご耳」を育てるのが狙いだ。宮本は「色の鮮やかさ、音やリズムなど、CBeebies のアニメーションは子どもを引き付けるパワーがすごいなと思いました。それまで泣いていた私の娘も番組が始まった瞬間、集中して観ていました。バイオリンなどクラシック音楽の楽器は幼少期に始めると良いとよく聞くのですが、英語もネイティブの発音でなるべく小さいうちに聞くことで自然に身に付いていきそうなので、これから親子で一緒に楽しみたいと思います」とコメント。番組では英語や音楽をテーマに、これからの知育について母親の目線で語る。『日本初放送の BBC 知育番組を体験!「宮本笑里 meets CBeebies」』はBSスカパー!にて6月20日(土曜 12:00~)放送。
2015年06月14日大腸がんの治療のため今年2月から演奏活動を休止していたピアニストの中村紘子。3月6日には自身が音楽監督を務める「浜松国際ピアノアカデミー」のオープニングコンサートでリサイタルを行なうなど、すでに活動を再開しているが、6月3日、都内で会見してあらためて現状を報告した。中村紘子 コンサート情報「がんだけど元気なんですよ。体力も耐久力もあるし、深刻なところが全然ないの。楽天的なんでしょうね。あまり元気なせいで、仮病だと疑う人がいるので会見することにしました」と、ユーモアを交えて明るく語る。昨年2月に腸閉塞の手術を受けた際に大腸がんが見つかった。5段階に分類されるがんの進行度のうち、リンパ節への転移のないステージ2という診断だった。いったんは抗がん剤治療を試みたものの、身体への負担も大きく、活動に支障をきたすと判断。その後は食事療法などの民間療法に切り替えて、体調も安定していたという。しかし昨年末、腹部に痛みを感じて都内のがん専門病院で診断を受けたところ、再び抗がん剤による治療を強く薦められたため、2月からの治療休養に踏み切った。いまは4度目の抗がん剤投与が終わったところ。医師からも「できるだけピアノを弾いて、普通の生活をしてください」と指導されているそうで、今月も12日のソウルでのリサイタルや19日の東京オペラシティでのトーク&コンサートなど3本のコンサートがあるほか、12月のサントリーホールでのリサイタルなど、来年3月まで月数本ずつのペースでコンサート予定が決まっている。「最近は若い時ほどはたくさんコンサートをやっていたわけではありませんでしたが、それでもいま思うとかなりプレッシャーだったかもしれません。(このペースだと)楽しみながらコンサートを準備する余裕ができて、生活を楽しむことを久しぶりに体験しています。演奏家にとって大事なのは毎日の練習なので、それをいかにうまく治療と両立して続けていくか。主治医の先生も演奏スケジュールに合わせて治療計画を立ててくださっています。治るかもしれないし、治らないんだったら共存すればいいかなと」治療にも演奏活動にも前向きに取り組む姿勢は中村らしい。今年で71歳。さらに深化していくだろうその音楽を、私たちもあまり深刻にならずに聴き続けることが、なによりの応援になるはずだ。12月5日(土)にサントリーホールで開催されるリサイタルは6月11日(木)により先行発売が開始される。◆今後の主な公演6月19日(金) 東京オペラシティコンサートホール【トーク&リサイタル】9月27日(日) サントリーホール【小林研一郎指揮日本フィルハーモニー交響楽団と共演】10月30日(金) サントリーホール 【渡邊一正指揮東京フィルハーモニー交響楽団と共演】12月5日(土) サントリーホール 【ピアノ・リサイタル】取材・文:宮本明
2015年06月05日数あるイタリア・オペラの中でも一二を争う人気作《椿姫》に、またひとつ名舞台が加わった。5月10日、新国立劇場の新演出《椿姫》の初日が幕を開け、洗練されたシンプルな演出とクォリティ高い演奏が揃った舞台に、満員の聴衆が大きな拍手を贈った。新国立劇場オペラ「椿姫」のチケット情報演出は日本初登場のフランス人演出家ヴァンサン・ブサール。写実的な装置は最小限に抑えられている。第一幕や第二幕第2場の華やかなパーティ・シーンでは、リアルで豪奢なシャンデリアと、書き割りの背景という対照が印象的(二幕の屋台崩しはスペクタクル!)。抽象的な舞台ながら、奇抜ではなく十分に説得力があり、しかも美しい。下手側にそびえる巨大な鏡の壁は、舞台に奥行きを与えるとともに、正面を向いて歌う歌手の背中や横顔を同時に見るという、ちょっと不思議な感覚も体験させてくれる。鏡とともに常に舞台上に置かれているのがピアノ。パーティ・テーブル、書き机、ポーカー台とさまざまに用いられる。台本にはない設定だが、原作のデュマ・フィスの『椿姫』には主人公マルグリットがピアノを弾く場面が描かれているし、さらにそのモデルである実在の高級娼婦マリー・デュプレシはフランツ・リストとも浮き名を流していた。幕開けに映し出されるモンマルトル墓地のデュプレシの墓碑銘とともに、登場人物としてのヴィオレッタだけを描いているのではないというメッセージが感じられる。ヴィオレッタが息をひきとる第三幕。天井から長く垂らされた幾重もの紗幕は、幻想的な照明を映すスクリーンでもあるが、それ以上の意味を持っている。再会したヴィオレッタを抱きしめるアルフレードだが、ふたりの間に常に挟まっているのがこの薄い紗幕。現実の出来事ではないことを示す象徴のようでもある。もしかしたらアルフレードはヴィオレッタの臨終に間に合わなかったのかもしれない。尻上がりに調子を上げて迫真のヴィオレッタを演じたベルナルダ・ボブロ、まさに今が旬の美声で魅せたアントニオ・ポーリを始めとする歌手陣や、それにぴたりと寄り添いながらオーケストラから陰影豊かな音楽を引き出したイヴ・アベルの巧みな棒さばきなど、演奏も高水準。大満足の新制作初日となった。なお、休憩は幕ごとではなく、第二幕の第1場と第2場の間に1回とられていて、全体を大きな二部構成のように見せている。新国立劇場の《椿姫》は5月26日(火)まで、全6公演が上演される。文:宮本明◆新国立劇場オペラ「椿姫」5/10(日) 14:00開演5/13(水) 14:00開演5/16(土) 14:00開演5/19(火) 19:00開演5/23(土) 14:00開演 ★ぴあスペシャルデー5/26(火) 14:00開演新国立劇場 オペラパレス(東京都)★ぴあスペシャルデー:ぴあ貸切公演。プレイガイドでのチケット販売はチケットぴあのみ。
2015年05月11日5月、東京都交響楽団を指揮するベルトラン・ド・ビリーは、パリ生まれのフランス人。コンサートとオペラの両輪で活躍し、2002~2010年にはウィーン放送交響楽団の首席指揮者兼芸術監督を務めるなど、ヨーロッパで多くのポストを歴任している指揮者だ。すでに何度か来日して日本でもおなじみだが、都響にはこれが初登場となる。「ぜひ呼びたい」と彼を指名したのは、今シーズンから都響の第5代音楽監督に就任した大野和士。その魅力を次のように語っている。東京都交響楽団 5月定期公演のチケット情報「以前から評判は聞いていましたが、初めて出会ったのは彼がバルセロナのリセウ大劇場で首席指揮者を務めていた頃です。大変な才人で、学生時代からヴァイオリニストとしても名を馳せながら、指揮者としてもどんどん頭角を現してきました。作品への洞察力、スコアを読み込む力、いずれも長けており、作品全体を把握してその構造を見通しよく明らかにする力が素晴らしいと思います」今回はふたつの公演を振る。5月13日(水)の定期演奏会(東京文化会館)はフランスの現代作曲家アンリ・デュティユーとブラームスというふたりの作曲家の「交響曲第2番」。そして5月17日(日)のプロムナードコンサート(サントリーホール)では、ベートーヴェン、モーツァルト、シューベルトというウィーンゆかりのプログラムを聴かせる。彼ならではのプログラム・ビルディングに大野も期待を寄せる。「デュティユーとブラームスのプログラムは、いわば相対するふたつの大曲。まったく異なる内容、形式をもつ作品です。きっと熱く、しかも整然とした解釈で聴かせてくれるでしょう。また彼は近年、ウィーン放送響で芸術監督を務めるかたわら、ウィーン国立歌劇場にも登場し、フランスもの、ドイツもの、いずれにも如何なくその才能を発揮してきました。ベルトラン・ド・ビリーというひとりのフレンチ・コンダクターの感受性の中に、全ヨーロッパ的、全世界的なものが共存している、とでも言いましょうか。彼の音楽の中に、きっと目を見張る点を見出すことになると思います」大野は今シーズンの都響定期全体のテーマを「対照の妙味」と表現しているが、デュティユーとブラームスなどは、「フランスとドイツ」「現代と古典」がそれぞれに互いを照らす、まさにそのテーマに合致した選曲だろう。楽しみな初顔合わせになりそうだ。文・宮本明
2015年05月01日19世紀のパリ。社交界の夜の華として君臨する高級娼婦ヴィオレッタが、真実の愛に目覚め、しかしその愛ゆえに別離を選ぶ悲劇──。ヴェルディのオペラ《椿姫》は、幕開け早々に置かれた有名な〈乾杯の歌〉を始め、名曲が次から次に惜しげもなく登場する、「オペラ」というジャンルを代表する傑作だ。ずば抜けて人気も高い。まもなく幕を開ける新国立劇場の《椿姫》。初日を2週間後に控えた4月26日、立ち稽古が行なわれている劇場を訪ねた。新国立劇場オペラ「椿姫」のチケット情報この作品で一番重要なのは、何と言ってもヴィオレッタ役だ。ほぼ出ずっぱりで演じなければならないこの圧倒的な主役に起用されたのは、スロベニア出身のベルナルダ・ボブロ。新国立劇場初登場となる。2012年にウィーン・フォルクスオーパーとも来日していたが、多くのファンが彼女の名前に注目したのは、その数か月前に英国ロイヤル・オペラで演じたヴィオレッタ役での成功だろう。彼女の当たり役なのだ。稽古だからいくぶんセーブはしているのだろうけれど、そうとは思えない。高音の厄介な技巧が要求されるナンバーも余裕しゃくしゃく。ストレスなく美しく響く声は実に気分爽快だ。中音域の声にも説得力があるので、たとえば第二幕で、恋人アルフレードと彼の家族のために身を引く決心をする場面の、心情の移り変わりも巧みに描写する。ヴィオレッタは幕ごとに異なるキャラクターを要求される役なので、その歌い分け、演じ分けも見どころのひとつとなる。ヴィオレッタの恋人アルフレード役には、2013年ミラノ・スカラ座、2014年ローマ歌劇場と、近年続けて来日しているイタリア・テノールの新星アントニオ・ポーリ。柔らかい真っ直ぐな美声が、純情だが直情的な田舎の青年貴族にふさわしい。アルフレードの父ジェルモン役は、メキシコ出身のバリトン、アルフレード・ダザ。実年齢はまだ若いものの、温かみのある声と情熱的な歌唱で父親役を演じる。このふたりも新国立劇場初登場だ。《椿姫》は、新国立劇場でもすでに繰り返し上演されてきた演目だが、今回は演出や舞台装置、衣裳などすべてを刷新したニュー・プロダクション。これが日本での初仕事となるフランスの気鋭の演出家ヴァンサン・ブサールが演出と衣装を手がける。新しい《椿姫》の幕が上がるのを楽しみに待ちたい。5月10日(日)から26日(火)まで、全6公演が予定されている。文:宮本明■新国立劇場オペラ「椿姫」5/10(日) 14:00開演5/13(水) 14:00開演5/16(土) 14:00開演5/19(火) 19:00開演5/23(土) 14:00開演 ★ぴあスペシャルデー5/26(火) 14:00開演新国立劇場 オペラパレス(東京都)★ぴあスペシャルデー:ぴあ貸切公演。プレイガイドでのチケット販売はチケットぴあのみとなります。
2015年04月30日鳥山明氏原作の人気アニメ『ドラゴンボール』の最新作となるTVアニメ『ドラゴンボール超(スーパー)』が、2015年7月よりフジテレビ系で放送されることが28日、明らかになった。これは28日に都内で行われた『ドラゴンボールZ復活の「F」』の舞台あいさつにて発表。物語は、孫悟空が魔人ブウとの壮絶な戦いを終えて平和を取り戻した地球が舞台で、TVシリーズ初となる鳥山氏原案による物語を新たにTVアニメで描いていくという。魔人ブウ後の世界としては、2013年に公開された映画『ドラゴンボールZ 神と神』、現在公開中の『ドラゴンボールZ復活の「F」』、そして原作518話があり、これらの物語との関連にも注目が集まる。今回のアニメ化について、孫悟空/孫悟飯/孫悟天役の野沢雅子は「CM、ゲーム等で数知れず"超"という言葉を言ってきましたが、いよいよシリーズ"ドラゴンボール超"がスタートするという事で最高です。首を長~くして待ちに待った新シリーズ、長~く、長~く続くともっと最高です」とコメント。また、この日の舞台あいさつでは「待っててください! 私たちも本当に待っていたんですから!」と喜びをあらわにしていた。また、フジテレビの野崎プロデューサーは、鳥山氏から届いたプロットを見て「夢が膨らむばかりです。もしかしたら、ブウやフリーザ以上に強い敵も登場するかもしれませんよ…」と大きな期待を寄せ、「ドラゴンボールの続編が再び完全新作のテレビアニメとして、しかも鳥山先生のプロットをもとにした話で始まるということで、私自身がワクワクドキドキしています」と話している。『ドラゴンボール』は、漫画誌『週刊少年ジャンプ』(集英社)で1984年~1995年の期間に連載された国民的漫画で、単行本(完全版含む)は全世界で2億3,000万部を超える発行部数を記録。TVアニメは1986年の『ドラゴンボール』を皮切りに、1989年『ドラゴンボールZ』、1996年『ドラゴンボールGT』、2009年『ドラゴンボール改』、2014年『ドランゴンボール改』(魔人ブウ)編が放送。映画、ゲーム、玩具なども含め世界中で愛されている。TVアニメ『ドラゴンボール超』は、2015年7月よりフジテレビ系にて、毎週日曜朝9:00~9:30に放送。また、公開7日目で動員100万人を突破している映画『ドラゴンボールZ復活の「F」』は、現在全国公開中。
2015年04月28日3月9日(月)に幕を開ける新国立劇場のプッチーニ《マノン・レスコー》新制作上演。7日、舞台での最終通し稽古(ゲネプロ)がプレス公開された。新国立劇場オペラ「マノン・レスコー」のチケット情報この舞台は4年前の3月に東日本大震災で中止を余儀なくされたもの。その時とほぼ同じメンバーを再結集しての今回の上演には、出演者・スタッフも通常以上の思いがあるだろう。プッチーニ自身が「私に苦しみを与えなかった唯一のオペラ」と述べているように、彼の3作目のオペラ《マノン・レスコー》は初演から大成功を収め、オペラ作家としての出世作となった。主人公は18歳の美少女マノンと青年騎士デ・グリューのふたり。マノンは「金」や「恋」に依存しがちな気まぐれさも魅力の、魔性の女だ。物語はふたりの出会いから始まり、マノンに振り回される男たちと、その魔性によって最後は彼女自身も破滅していく悲劇を描く。そんな小悪魔を演じるのは、新国立劇場初登場の美貌のソプラノ、スヴェトラ・ヴァッシレヴァ。小顔でバランスのよいスタイルが舞台に映え、コケティッシュな魅力を振りまく。小柄ながらしっかりした芯のある声と迫真の演技で、終幕の有名なアリア「ただひとり、絶望し見捨てられて」の悲痛な叫びなど圧巻だ。デ・グリュー役のグスターヴォ・ポルタ(テノール)も、持ち前の強くて艶のある声を存分に響かせる。情熱的な歌唱は、たとえば第3幕終盤の短いがひときわ印象的な「見てください、僕は狂っている」の狂おしい心情にぴったりだし、終幕の二重唱では最高音のドもばっちり聴かせてくれた。白を基調に、具象を最小限に抑えたシンプルな舞台装置の中で、衣裳やメイクで登場人物の属性が示されている。マノンを妾にする金満家ジェロントの顔は白塗りだ(!)。気持ち悪い動作や歌い口と相まって老人のスケベ度を強調しているよう。演じる妻屋秀和(バス)の芸達者ぶりに拍手。マノンの兄レスコー役のダリボール・イェニスの二枚目のバリトンは、常に妹の幸せを優先して行動するレスコーの、ある意味の一途さにふさわしい。第1幕で学生とトランプに興じる彼のカード捌きも隠れた見どころ!デ・グリューの友人エドモンド役の望月哲也は、ほれぼれする美声で第1幕の若々しい雰囲気を盛り上げる。新国立劇場合唱団(合唱指揮:三澤洋史)の熱演とともに見逃せないポイントだ。上演時間は、第2幕後の休憩を含めて約2時間40分。21日(土・祝)までに5公演が行なわれる。文・宮本明
2015年03月09日東京都交響楽団桂冠指揮者エリアフ・インバル(1936~)。細部をないがしろにしない緻密な音楽づくりに、近年は大胆で自由な勢いにもいっそうの充実が加わり、その芸境はいよいよ深まっている。3月、楽団の創立50周年を記念し、東京での第784回定期演奏会と同じプログラムを携えて名古屋、福岡でも公演を行なう。演奏曲目は、ワーグナーの《トリスタンとイゾルデ~前奏曲と愛の死》とブルックナーの《交響曲第4番》。公演を前にインバルからメッセージが届いた。「東京都交響楽団」のチケット情報「都響の魅力は、特にその〝日本的〟なクオリティにあります。豊かな色彩、繊細さ、調和のとれた面が、素晴らしいヴィルトゥオーソ、演奏のスタイル、ダイナミックさでさらに強調されます。それは国際的にも高いレベルです」インバルが初めて都響を指揮したのは1991年。その後、特別客演指揮者(1995~2000年)、プリンシパル・コンダクター(2008~2014)を務めるなど、両者は20年以上にわたって密接な関係を築きあげてきた。今回のメイン・プログラムであるブルックナーの交響曲第4番は、その明るく美しいメロディにより、一般に、「ブルックナーは重厚長大で苦手」と敬遠する人にもとても聴きやすい作品として知られている。しかし巨匠はさらに、そこから「宇宙の存在」をすくい取る。「この交響曲はとても成熟した作品で、味わいの深いメッセージです。自然が持つ力や、美しさや、永遠の広がりに対する感嘆の念。宇宙の力や、神秘や、無限に対する感嘆の念。神による創造や、神が人類に与えたもう影響に対する、感嘆と賛美。ブルックナーは、宇宙の存在の意味を音楽で見いだそうとした作曲家の一人です。アインシュタインが相対性理論によって明らかにしようとしたこと、つまり万物の法則を、ブルックナーは音楽で試みたのです」抜けるような青空の向こうに、実は無限の宇宙が広がっているのと似ているかもしれない。定評あるインバル=都響のブルックナーの力強い響きが、それを眼前に現して、宇宙の深遠を体感させてくれるにちがいない。文・宮本明、コメント翻訳・東京都交響楽団、ぴあ■日程・会場2015/3/14(土) 愛知県芸術劇場 コンサートホール2015/3/15(日) アクロス福岡 福岡シンフォニーホール2015/3/18(水) 東京文化会館 大ホール■出演指揮/エリアフ・インバル■曲目ワーグナー:楽劇《トリスタンとイゾルデ》より「前奏曲と愛の死」ブルックナー:交響曲第4番 変ホ長調《ロマンティック》(ノヴァーク:1878/80)
2015年02月27日フリーアナウンサーの宮本隆治、歌手の八代亜紀、吉幾三、川中美幸が13日、都内スタジオで行われた、BSスカパー!の特別番組『宮本隆治の歌謡ポップス☆一番星コンサート』の公開収録に参加した。同番組は、音楽情報バラエティー番組『宮本隆治の歌謡ポップス☆一番星~演歌・歌謡曲情報バラエティ~』の特別番組。ゲストの八代、吉、川中によるトークコーナーのほか、生バンドの歌唱ステージを披露する内容で、番組は、3月29日18時からBSスカパー!で先行放送、5月上旬に歌謡ポップスチャンネルで90分の完全版を放送する。番組収録前、報道陣の取材に応じた八代は、「人生の贈りもの」、「心をつなぐ10円玉」を披露するにあたり、「今、どうしても歌いたい曲。言葉が素敵なので、じっくり見て聞いてくれればうれしい」とアピール。一方、コラボレーションを含む7曲を歌唱する吉は、「3曲がギリギリ……」とこぼしながらも、「カラオケじゃなく生バンドという音楽番組はなかなか無い。こういう番組は続けて欲しいし、この3人で毎週出てもいい」と番組初のコンサート形式が楽しみな様子だった。また、番組司会を約2年半務めている宮本アナは、「司会生命をかけて、誰も知らない素顔を引き出したい」と意欲満々。フリー転身前のNHK時代には、『紅白歌合戦』や『のど自慢』など歌番組の司会を担当してきた宮本アナだが、八代は以前からの印象を、「表も裏も面白い人」と称してにっこり。「生放送が終わると面白いって言われてましたけど(笑)。私は額縁ですから、中の絵を引き立たせることに徹します」と照れ笑いする宮本アナに、川中は、「額縁の方が高い時もある」と突っ込んで笑いを誘っていた。
2015年02月14日「ドイツ音楽の真髄を体現するコンビ」と名高いのが、ベルリン放送交響楽団と、2002年以来その芸術監督兼首席指揮者を務めるマレク・ヤノフスキ。その両者が3月に来日、全国6都市8公演を巡るツアーを行なう。「マレク・ヤノフスキ指揮 ベルリン放送交響楽団」日本公演の情報ベルリン放送交響楽団は1923年創立、東西ドイツ時代には東側に属していたオーケストラだ(現在「ベルリン・ドイツ交響楽団」と改称している楽団が、西ベルリンの放送オーケストラだった)。ヨーロッパの放送局傘下のオーケストラは、放送用の現代曲を次々に演奏するため、さまざまなスタイルの音楽に対応する高い演奏技術を持っている場合が多い。ベルリン放送響も、もともと優れたオーケストラだったのが、ヤノフスキが現在のポストに就任してから、その実力にさらに磨きがかかった。めきめきと評価を高め、多くの楽団が高いレベルでしのぎを削るベルリンのオーケストラ界でのポジションを上げている。ヤノフスキは1939年生まれのポーランド系ドイツ人。「東京・春・音楽祭」で進行中の、彼が指揮するワーグナー《ニーベルングの指環》チクルスに注目しているオペラ・ファンも多いだろう。ドイツ各地の歌劇場でアシスタントとして研鑽を積むという、典型的なドイツのオペラ指揮者らしいキャリアを重ね、34歳でフライブルク歌劇場の音楽監督として開花。1970年代後半からは、世界の主要歌劇場で彼が招かれていない劇場がないと言えるほど旺盛に活躍していた。ところが45歳でフランス放送フィルハーモニーの音楽監督に就任した頃からオペラ指揮の活動を縮小し、今度はシンフォニー指揮者としての名声を高めてきた。過度な感情移入を排した、緻密で正確な解釈で高い評価を得ているヤノフスキ。といっても面白味のない音楽作りとは正反対で、理詰めで読み込んだ楽譜を丁寧に解きほぐし、作品本来の構造をくっきりと浮かび上がらせて感動を形作る、確かな手腕を持っている人だ。その手腕が、堅牢な楽曲構造そのものが魅力のドイツ音楽で本領を発揮するのは言うまでもない。だから、ドイツ音楽の王道プログラムを携えてやってくる彼らの来日公演は大注目。古典的な渋い輝きをたたえたブラームスの交響曲、そして「ドイツ音楽ここに極まれり」というようなブルックナーの交響曲第8番。「正統」という言葉の意味を噛み締めながら楽しみたい。文・宮本明◆マレク・ヤノフスキ指揮ベルリン放送交響楽団2015/3/15(日) ハーモニーホールふくい 大ホール2015/3/16(月)・18(水) サントリーホール 大ホール2015/3/20(金) グランシップ2015/3/21(土・祝) 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO 大ホール2015/3/22(日) 周南市文化会館2015/3/23(月)・24(火) 武蔵野市民文化会館
2015年02月10日人気テノール歌手・錦織健がプロデュースし、自らも出演する「錦織健プロデュース・オペラ」の第6弾として、モーツァルト《後宮からの逃走》が、2~3月に全国7都市で上演される(全8公演)。「錦織健プロデュース・オペラ」は、ビギナーも気楽に楽しめるエンタテインメントとしてのオペラ上演を理想に掲げて2002年にスタートした、彼曰く「旅まわりの一座」。抵抗なくオペラに入るためには笑いが一番と、毎回喜劇を題材にした作品を採り上げている。何事も同じだと思うけれど、初体験にはなるべく上質なものを勧めたい。「オペラは初めて」という観客も重視しているからこそ上演クオリティにはこだわっている。日本のトップクラスの歌手たちに「座長」の錦織自身が声をかけて集めるキャストはいつも豪華な顔ぶれ。加えて、稽古の質の高さと内容の濃さは、オペラ歌手たちの間でも評判になっているほどだという。若い頃からテレビのバラエティ番組でロックやポップスを熱唱したりと、オペラを囲む垣根を取り払って広い層のファンを獲得してきた錦織ならではの経験と熱意と本気が結実したプロジェクトと言ってよいだろう。《後宮からの逃走》は「ジングシュピール」と呼ばれ、歌と歌をつなぐたくさんのセリフによって物語が進行してゆくタイプの作品。今回は歌の部分は原語のドイツ語だが(日本語字幕つき)、セリフは日本語で上演するからわかりやすい。わりに単純な物語なので、特別な予習なしでも理解できるはずだ。筋さえわかってしまえばあとは歌芝居。モーツァルトの軽快で美しい音楽と声の魅力を、耳が感じるままに楽しもう。実は歌い手にとってはかなり技巧的で難しい曲も多いのだけれど、観る側としてはそれも大きな楽しみのひとつだ。オペラの筋は、公演タイトルに添えられた錦織発案の「ハーレムから助け出せ!」というキャッチコピーのとおり、スペイン貴族の青年ベルモンテが、誘拐された恋人コンスタンツェを奪還すべく、トルコの後宮(ハーレム)に単身乗り込むという、恋と冒険の物語。最後には大どんでん返しのハッピーエンドが待っている!文:宮本明
2015年02月05日いま、世界のオーケストラ界で最も注目を集めているコンビと言ってよいだろう。指揮者クリスティアン・ティーレマンとドレスデン国立歌劇場管弦楽団(シュターツカペレ・ドレスデン)がおよそ2年半ぶりに来日。2月22日(日)から24日(火)に東京と横浜で公演を行なう。「クリスティアン・ティーレマン指揮ドレスデン国立歌劇場管弦楽団」の公演情報ドレスデン国立歌劇場管弦楽団は、名前のとおりドレスデン国立歌劇場(ゼンパーオペラ)の座付きオーケストラだが、その歴史は劇場の創建よりずっと古い。1548年に組織されたザクセン選帝侯の宮廷楽団を起源とする彼らは、オペラ劇場どころか、16世紀末にイタリアでオペラそのものが生まれる前からの長い伝統を持っているのだ。クラシック音楽ファンの多くは、このオーケストラのサウンドをしばしば「いぶし銀」と形容する。「華やかさには欠けるが実力がある」というその本来の語義からは、地味で目立たないという印象を思い浮かべるかもしれないが、そうではない。「熟成」「落ち着き」「慈しみ」。そんなキーワードをイメージするとよいと思う。情報や人の行き来が制限されていた冷戦時代に、結果として伝統が「冷凍保存」されていたこともそのキャラクターの醸成に大きく関係しているのだろうけれど、メンバーの採用が自由になり、ドレスデンの響きがどんどん新しくなっている現在でも、ベースにあるのはやはり「いぶし銀」のサウンドだ。これぞ、まさに伝統。その響きが真価を発揮するのはなんといってもドイツ系の音楽で、深いツヤを放つ彼らの演奏は、ワーグナーやR.シュトラウスを始めとする歴史上の多くの大作曲家たちを刺激し、幾多の作品がこのオーケストラに献呈され初演されてきた。2012年から首席指揮者としてドレスデンを率いるティーレマンは1959年ベルリン生まれ。すでに現代の巨匠としてのポジションを確立している存在で、とりわけ往年のドイツの巨匠指揮者たちの正統な継承者としての評価は高い。現代的なセンスをバランスよく持ちながらも、その解釈は良い意味で保守的。ドレスデンとの両者の相性はアプリオリに保証されていたとさえ言えるかもしれない。今回も、R.シュトラウス、ブルックナーを軸に、ドイツ音楽のメイン・ストリームを満喫できるふたつのプログラムを携えての来日。首席指揮者就任後3シーズンをかけて、いよいよ深まっている両者の蜜月を、私たち日本のファンに見せつけてくれるにちがいない。文・宮本明◆クリスティアン・ティーレマン指揮ドレスデン国立歌劇場管弦楽団2015年2月22日(日) 14時開演横浜みなとみらいホール2015年2月23日(月) 19時開演サントリーホール2015年2月24日(火) 19時開演サントリーホール[お詫びと訂正]2015.2.5※上記公演情報の横浜公演の開演時間に誤りがございました。【誤】19時開演【正】14時開演お詫びするとともに、ここに訂正させて頂きます。
2015年02月02日待ってました! 2012年度に第44回サントリー音楽賞を受賞していた世界的メゾ・ソプラノ藤村実穂子の受賞記念コンサートが、2月16日(月)、東京・サントリーホールで行なわれる。第44回サントリー音楽賞 受賞記念コンサート<藤村実穂子>の公演情報サントリー音楽賞はサントリー芸術財団が主宰する顕彰で、1969年度にスタート(1978年度第9回までは「鳥井音楽賞」)。毎年、わが国の洋楽文化の発展にもっとも顕著な業績をあげた個人または団体に贈られている。過去の受賞者(※注1)もそうそうたる顔ぶれ。受賞者によるコンサートは恒例だ。※注1:サントリー音楽賞 過去の受賞者(外部リンク)藤村実穂子の世界トップクラスの実力は、昨年亡くなったクラウディオ・アバドなど多くの指揮者たちが彼女を信頼して共演者に指名している事実でも証明できるだろう。東京藝術大学卒業、同大学院修了後、ミュンヘンに留学。2002年にワーグナー《ラインの黄金》のフリッカ役でバイロイト音楽祭にデビュー。日本人歌手として初めてバイロイトの主役級を務めたことはセンセーショナルな話題だった。以来、同音楽祭に連続出演するなど、現代を代表するワーグナー歌手としての評価はゆるぎない。もちろんワーグナーだけでなく、バロックからフランス・オペラ、現代曲、そしてドイツ歌曲まで幅広いレパートリーで活躍。世界中の歌劇場やコンサートホール、音楽祭から引っ張りだこの存在だ。2002年出光音楽賞、2003年第54回芸術選奨文部科学大臣新人賞、2007年第37回エクソンモービル音楽賞洋楽部門奨励賞など受賞多数。2014年紫綬褒章受章。サントリー音楽賞の受賞対象となった2012年度は、パリ・シャンゼリゼ劇場でのワーグナー《パルジファル》クンドリ役、英国ロイヤル・オペラでの同《神々の黄昏》ヴァルトラウテ役、フィリアホールや紀尾井ホールでのドイツ歌曲リサイタル、いずみホールでのマーラー《大地の歌》(室内合奏版)、バイエルン放送交響楽団来日公演のベートーヴェン《交響曲第9番》のアルト独唱などが高い評価を得た。受賞コンサートはクリストフ・ウルリヒ・マイヤー指揮の新日本フィルハーモニー交響楽団によるオーケストラ伴奏。J.S.バッハのカンタータ、ドイツ歌曲、オペラ・アリアと、彼女の活動が凝縮されたプログラムはすべてが聴きどころ。彼女が声を発するときに、その全身から放たれるオーラのような華やかさを感じるよろこびは、会場で直に空間を共有する聴き手だけのものだ。文:宮本明
2015年01月27日バイオリニストの宮本笑里が1月25日(日)、映画『マエストロ!』公開を記念して行われたトークイベントに出席し、11億円の価値があると言われるバイオリンの王様“ストラディヴァリウス”を生で演奏した。さそうあきらの漫画を原作にした本作。謎めいた指揮者の元に集った“負け組”のオーケストラの団員たちが名門オーケストラの復活のために奮闘するさまを描き出す。この日、宮本さんが演奏したストラディリヴァリウスは“HAMMA(ハンマ)”という名器で1700年代前半に製造されたもの。本作の完成披露試写会で、主演の松坂桃李も緊張しながら手にしていたが、本作にも協力している「株式会社日本ヴァイオリン」の社長で、この日のイベントにも出席した中澤創太氏によると「9億円~11億円」の価値があるとされる。宮本さんは「愛のあいさつ」(エルガー)、「主よ人の望みの喜びよ」(バッハ)、「チャールダーシュ」(モンティ)の3曲をピアノ伴奏に合わせて演奏し、集まった聴衆の割れんばかりの拍手喝さいを浴びたが、この名器を手に「格が違う。輝きやオーラを表情や本体から感じます」と語った。中澤氏はストラディヴァリウスについて、この楽器の前の持ち主だったというベルリンフィルのコンサートマスターのバイオリニストの「わがままなお嬢様のよう」という言葉を紹介。「手にとっていきなり弾くことが許されない」「前の人(演奏者)の音色が残っているんです」とその不思議な特徴を説明。具体的に、他のバイオリンとどのように音色が異なるのか?という質問に「音が大きいし、音量だけでなく音の届き方が違う」と答えつつも、一方で科学的な視点でのそうした違いの理由については「100%は分かってないんです。(製造者のアントニオ・ストラディヴァリウスが)天才だったと言えるし、(使われている)木が違うこと、黄金比などとも言われますが…」と300年を経てなお多くの演奏者、聴衆を魅了する名器の“謎”にも言及した。宮本さんは「ずっしりと重いのかと思ったら意外と軽いんです、大丈夫かな?と思うくらい。弾いてみると、音に重みがあり、深みが出てくる」と語り、“ダイヤモンドトーン”と呼ばれる高音域についても「高い音がキラキラと輝きがある」とウットリとした表情を見せていた。2人とも、すでに映画も鑑賞しているというが、宮本さんは「いまのクラシック業界をそのまま表した映画です!指揮者とオーケストラの関係性や音楽性の部分も分かりやすい。俳優のみなさんの楽器を持っての演技も集中力が高いのを感じました」と絶賛。中澤氏も「日本のクラシックの大変さがリアルに描かれている」とうなずく。また、約1年という長期にわたってバイオリンの練習に励んだという松坂さんの演技についても「上手いんですよ!ボウイングや構えが上手い。相当、練習したのが分かります」と語り、宮本さんも「ビックリしました。バイオリンは小さい頃からの積み重ねで馴染んでいくものですが、1年でこんなに楽器と一体になってるというのはものすごいこと」と惜しみない称賛を送る。映画を通じて「もっともっとクラシックを知ってもらえたら」と会場に足を運んだ観客に呼びかけていた。『マエストロ!』は1月31日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:マエストロ! 2015年1月31日より全国にて公開(C) 2015『マエストロ!』製作委員会(C) さそうあきら/双葉社
2015年01月26日『宇宙刑事ギャバン』や『マジンガーZ』の音楽をはじめ、数々の特撮作品の音楽や主題歌、映像音楽を手がけてきた作曲家・渡辺宙明氏による「渡辺宙明卆寿記念コンサート」が、8月30日に東京・渋谷区立文化総合センター大和田さくらホールで開催されることが明らかになった。「宇宙刑事」三部作をはじめとした「メタルヒーロー」シリーズの音楽の礎を築き、「スーパー戦隊」シリーズ、『仮面ライダーBLACK』や『仮面ライダーBLACK RX』、そのほかにもさまざまな特撮作品の音楽を担当し、特撮音楽の巨匠として知られる渡辺氏。その活躍は特撮だけにとどまらず、『マジンガーZ』や『グレートマジンガー』、『鋼鉄ジーグ』、『最強ロボ ダイオージャ』とアニメ作品も手がけている。昨年には、新たにVシネマとして生まれ変わった特撮作品『宇宙刑事シャリバンNEXT GENERATION』と『宇宙刑事シャイダーNEXT GENERATION』の劇中BGMを手がけたことでも記憶に新しい。渡辺氏が8月19日に90歳を迎えることを記念して開催される「渡辺宙明卆寿記念コンサート」は、同氏の代表的作品を組曲としてオーケストラで演奏する公演。渡辺氏本人の監修、そして当時のオリジナル楽譜が渡辺氏より提供され、数々の名曲はもちろん、これまでステージで一度も演奏されずにいた伝説の音楽の数々が生演奏で披露されるという。演奏は、昨年にゴジラ音楽のフルオーケストラ演奏で、NHKや新聞にも取り上げられ、タワーレコードチャートで1位を記録したオーケストラ・トリプティークが務める。演目は、宇宙刑事ギャバン組曲、マジンガーZ組曲ほかが予定されている。チケットは1月19日10:00より「カンフェティチケットセンター」で先行発売。700席程度のホールのため、プレミアムチケットになることが予想される。チケットの詳細は、「カンフェティチケットセンター」まで。
2015年01月19日チケットぴあの集計によれば、今年2014年の12月に行なわれる日本全国の「第九」演奏会(有料)は105公演。それぞれに異なる個性とエネルギーの「第九」が鳴り響く。チケットぴあ/「第九」コンサート特集2014「年末の第九」の元祖、NHK交響楽団には、「新時代のカリスマ指揮者」の呼び声も高いフランソワ・グザヴィエ・ロトが登場。1971年パリ生まれのロトは、南西ドイツ放送交響楽団首席指揮者を務める一方で、古楽器と現代楽器の両方を駆使する革新的アンサンブル「レ・シエクル」を率いて、バロックから現代作品まで新鮮な演奏を聴かせる異才。すでにさまざまな時代的アプローチが繰り広げられているベートーヴェンで、どんな解釈を聴かせるのだろう。読売日本交響楽団を振るのは1935年生まれのベテラン、レオポルト・ハーガー。ザルツブルク生まれで、モーツァルトを始めとするウィーン音楽に定評あるハーガーの、掌中のベートーヴェンに期待が高まる。日本の国立オペラハウス=新国立歌劇場合唱団の「第九」が聴けるのは読響だけだ。東京都交響楽団の指揮台には、同楽団との長い共演関係を経て今年4月に終身名誉指揮者に就任した小泉和裕が登場する。互いに手の内を知り尽くした、飾らない深い信頼で結ばれた指揮者とオーケストラならではの息づかいを堪能したい。ちょっとユニークなプログラムを組んだのがダン・エッティンガー指揮の東京フィルハーモニー交響楽団。「第九」とともに演奏する伊福部昭《SF交響ファンタジー第1番》は、あの「ゴジラ」を含む、特撮映画音楽からの演奏会用オーケストラ曲だ。「第九」と「ゴジラ」を一緒に聴けるのはおそらく日本だけ!来日オーケストラでは佐渡裕指揮のケルン放送交響楽団に注目。東京・大阪で計10公演を行なうが、独唱者や東京オペラシンガーズと晋友会合唱団による総勢110人の合唱団も含めて全公演を同じメンバーで演奏する。集中力が研ぎ澄まされる本番を重ねる中で、日本の「第九」演奏史上でも稀なハートの通い合ったアンサンブルが生まれるのでは。2015年9月からウィーン(と近郊のザンクト・ペルテン)を本拠とするトーンキュンストラー管弦楽団の音楽監督に就任する佐渡裕にとっても、今後いっそう関係が深まるであろうベートーヴェンとの新しいページをめくる機会になるはずだ。今年もよりどりみどりの「第九」。身はひとつで全部聴くことができないのが悩ましい。文:宮本明←年末の第九(1)なぜ年末?戦後に定着した風物詩
2014年12月08日今年も「第九」の季節がやってきた。いまや俳句の季語にもなっている暮れの風物詩だが、なぜ年末に「第九」なのか。さまざまな説があるものの、決定版的な答えは見つからない。しかし「年末の第九」が恒例化した様子を、演奏記録からおおまかに探ることはできる。チケットぴあ/「第九」コンサート特集20141926年発足の新交響楽団(NHK交響楽団の前身。1942年に日本交響楽団。1951年に現称)が最初に「第九」を演奏したのは、ベートーヴェン没後100年の1927年5月のこと。日本のプロ・オーケストラによる初めての「第九」だ。そして新響は翌1928年、初めて12月に「第九」を演奏している。同楽団の初代指揮者・近衛秀麿による日本人指揮者初の「第九」が、日本の師走に響いた初めての「第九」でもあった。ただし、新響の次の「年末の第九」は10年後の1938年まで待たなければならない。そしてどうやらその1938年12月こそが、「年末の第九」恒例化の始まりと言えそうなのだ。1938年末の公演を指揮したのは専任指揮者としてドイツから招かれていたジョセフ・ローゼンストック。「年末の第九」の定着に、彼の示唆が影響したとも言われる。というのは、彼が、当時ドイツで習慣だったという大晦日のラジオ・ライヴの「第九」に言及した記録が残っているからだ。いずれにしても新響は、この1938年以降ほぼ1年おきに、1946年からは原則として毎年、12月に「第九」を演奏し、「年末の第九」恒例化の先鞭をつけた。さらに同じ頃から、NHKのラジオ放送もこれに同調するように動き始めていた。1940年の大晦日に初めて新響による「年末の第九」を放送すると、太平洋戦争中も、正月に移りはしたが「第九」放送が続き、終戦の1945年からは再び年末に戻って放送している。テレビ放送初年の1953年末にはさっそくテレビ中継も行なわれた。こうしたメディアの力も大きかったのだろう、1950年代半ば以降、各オーケストラも続々と「年末の第九」に加わった。「第九」研究家・鈴木淑弘氏の集計によれば、1955年に全国でたった3回だった12月の「第九」公演は、1960年代には2ケタに増え、70年代に50回を、80年代に100回を突破している。戦前から戦中に始まった「年末の第九」が、どんどん定着してきたのだ。今年も全国各地でさまざまな「第九」が演奏される。注目の公演をピックアップしてみよう。文:宮本明⇒年末の第九(2)注目公演がいっぱい!どれを聴く?【参考資料】NHK交響楽団ホームページ 演奏会記録 [URL]鈴木淑弘『〈第九〉と日本人』(春秋社/1989年)『洋楽放送70年史』(洋楽放送70年史/1997年)
2014年12月08日ウィーンの名手たちがずらりと顔をそろえる「トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン」が2015年も来日、4月2日(木)から12日(日)まで全国6都市を巡ってコンサートを開く。「トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン」2015年日本公演の情報「マスター・プレイヤーズ」という名称だけ見ると小規模な室内楽を連想する人がいるかもしれないが、さにあらず。「トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン」は総勢30人のれっきとしたオーケストラなのだ(2管編成。指揮者なし)。ウィーン国立歌劇場の特別協力を得て、同歌劇場管弦楽団やウィーン・フィルのメンバーを中心とする精鋭たちが組織する特別編成で、2000年に初来日、2015年で13回目の日本ツアーとなる。企業の社会貢献活動の一環ということもあり、入場料は3千円台からとうれしい価格設定。これまでに計89公演で15万人の聴衆を動員している、息の長い大好評プロジェクトだ。とにかく顔ぶれが豪華。首席クラリネット奏者として長くウィーン・フィルの木管セクションの「顔」的存在だったペーター・シュミードルが芸術監督を務め、現役ばりばりのコンサートマスター、フォルクハルト・シュトイデを筆頭に、ウィーン・フィルの新旧の首席奏者たちが何人も参加しているから、彼らが留守中のウィーンは大丈夫なのかと心配してしまうぐらい。演奏曲目は、もちろんモーツァルトやベートーヴェン、ヨハン・シュトラウスII世といったウィーンゆかりの音楽を軸に、3つのプログラムが組まれている。 プログラムAでは安藤赴美子(ソプラノ)が、プログラムBでは菊池洋子(ピアノ)が、ソリストとして共演する。さらにツアー初日に当たる名古屋公演のプログラムCは、後半に恒例となっている名古屋フィルとの合同演奏が組み込まれ、リストの交響詩《前奏曲》とムソルグスキー(ラヴェル編)の《展覧会の絵》を下野竜也が指揮する。一人ひとりの技術や音楽性の高さはもちろんのこと、同じウィーンの伝統のもとで育まれたメンバー相互のアンサンブルと息づかいが、今回もまた私たちの耳に心地よいウィーンの風を運んでくれるにちがいない。文・宮本明◆トヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーン〈プログラムA〉【仙台】2015年4月4日(土)東京エレクトロンホール宮城【福岡】2015年4月7日(火)アクロス福岡 福岡シンフォニーホール【苫小牧】2015年4月12日(日)苫小牧市民会館 大ホール〈プログラムB〉【東京】2015年4月6日(月)サントリーホール 大ホール【岩手】2015年4月11日(土)岩手県民会館 大ホール〈プログラムC〉【愛知】2015年4月2日(木)愛知県芸術劇場コンサートホール
2014年12月04日2014/2015シーズンの新国立劇場オペラ公演の目玉のひとつが、2015年5月に上演されるヴェルディ作曲《椿姫》の新制作上演だ。新国立劇場オペラ「椿姫」〈新制作〉の公演情報19世紀半ばのパリを舞台に、華やかな社交界で男たちを虜にする高級娼婦ヴィオレッタが掴んだ真実の愛と悲運の最期。振幅の激しいドラマチックなストーリーに加えて、有名な〈乾杯の歌〉〈花より花へ〉〈プロヴァンスの海と空〉など次から次に登場する流麗な音楽が、ただ美しいだけでなく、登場人物の心理・感情を巧みに表現しているのがすごい。世界中の歌劇場で頻繁に上演されているのは当然と言えるだろう。新国立劇場でも2002年の初演以来繰り返し上演されてきた人気演目の、待望のニュー・プロダクションが登場する。演出と美術・衣裳を委ねられたのはフランス人演出家のヴァンサン・ブサール。1999年パリのコメディ・フランセーズで演出家デビュー以来、いまやヨーロッパ中の劇場から引っ張りだこの存在で、これが新国立劇場初登場。彼が《椿姫》を手がけるのも初めてだ。2006年にインスブルックで上演された《ドン・ジョヴァンニ》の映像が商品化されているのでご覧になった方も多いかもしれないが、写実的な装置を排した現代的でシンプルな舞台の中に、ほのかに伝統の香りも感じさせるスタイリッシュな手腕は高い評価を得ている。主役のヴィオレッタはソプラノ歌手にとって難役だ。第一幕では華やかな高音のアリアがあり、第二幕、第三幕と進むにつれ劇的な性格描写が必要な役柄なので、幅広い、しかも異なるタイプの声の表現が求められる。ほぼ出ずっぱりで休む間もないからなおさらだ。今回ヴィオレッタを演じるのはスロヴェニア人ソプラノのベルナルダ・ボブロ。凛とした透明な美声を持つ彼女の名前を一躍有名にしたのが2012年に英国ロイヤル・オペラで急遽代役で歌った《椿姫》だった。出世役を引っさげての新国立劇場初登場に期待が高まる。ヴィオレッタの恋人アルフレードを歌うのは、注目のイタリア人若手テノール、アントニオ・ポーリ。スカラ座の2013年来日公演《ファルスタッフ》フェントン役やローマ歌劇場の2014年来日公演《ナブッコ》イズマエーレ役で聴かせた甘くのびやかな歌声も記憶に新しい。「新しい酒は新しい革袋に盛れ」の故事もある。オペラ界の次代を担う旬の顔ぶれが揃った新制作《椿姫》が魅力的だ。文:宮本明◆新国立劇場オペラ「椿姫」〈新制作〉2015年5月10日(日) 14:00開演2015年5月13日(水) 14:00開演2015年5月16日(土) 14:00開演2015年5月19日(火) 19:00開演2015年5月23日(土) 14:00開演(★)ぴあスペシャルデー2015年5月26日(火) 14:00開演新国立劇場 オペラパレス★=ぴあ貸切公演。プレイガイドでのチケット販売はチケットぴあのみ。
2014年12月02日クリスマス・シーズンには華やかなバレエがよく似合う。新国立劇場は1998年の劇場オープンから毎年、このシーズンに《くるみ割り人形》と《シンデレラ》の2つのバレエを交互に上演している。今年は《シンデレラ》。継母や義理の姉たちにいじめられているシンデレラが妖精の魔法でドレスアップ。かぼちゃの馬車でお城の舞踏会に出かけていって王子さまに出会い……。いうまでもなく、シャルル・ペローのおなじみの童話が原作のバレエだ。新国立劇場バレエ団「シンデレラ」の公演情報新国立劇場の《シンデレラ》は、20世紀の名振付家フレデリック・アシュトンが英国ロイヤル・バレエ団(当時「サドラーズ・ウェルズ・バレエ団」)のために振付けた1948年のプロダクション。バレエの古典的風格を保つ抒情的な舞台は、世界中の数多くのバレエ団によって上演されている、《シンデレラ》の定番だ。現在アシュトン版オリジナルの豪華な舞台美術を観ることができるのは、世界でも新国立劇場だけ。妖精の魔法、宮殿の舞踏会、シンデレラと王子との出会いなど、ため息の出るような美しい場面の連続は、初めてバレエを観るという人や子どもたちでも素直に入り込みやすいはず。しかも、少しネタばれかもしれないけれど、このアシュトン版は意地悪な姉たちを男性ダンサーが演じるので、随所で笑いも起こるなど、ユーモアの要素を織り込んだ舞台であることも親しみやすさを増している。音楽は20世紀前半に活躍したロシアの作曲家セルゲイ・プロコフィエフ。初期には当時の前衛音楽に傾倒したプロコフィエフだが、この《シンデレラ》は19世紀以前の古典音楽に回帰した保守的なテイストで書かれていて、全編を美しいメロディが貫いている。とはいえそこは20世紀の作曲家。色彩豊かなオーケストラの響きはときに斬新かつ幻想的。TVドラマや映画の音楽で実はなにげに現代音楽的な響きに馴れた私たちの耳にもなじみやすい適度な新しさが、《シンデレラ》の物語に似つかわしいファンタジーを生み出している。コアな新国バレエ・ファンにとっては、今シーズン新国立劇場バレエ団に入団したばかりの伊澤駿が早くも王子役に抜擢されたのも大きな見どころだ(12/21公演)。観る人を幸せな気分に包みこむ美しい夢の舞台で繰り広げられる永遠のファンタジー。クリスマス・シーズンにふさわしい、華麗で贅沢なバレエ体験を!文:宮本明◆新国立劇場バレエ団「シンデレラ」【日程と出演者(シンデレラ&王子)】12/14(日) 14:00開演 小野絢子&福岡雄大12/18(木) 19:00開演 米沢唯&菅野英男12/19(金) 14:00開演 長田佳世&奥村康祐12/20(土) 13:00開演 小野絢子&福岡雄大★ぴあスペシャルデー公演12/20(土) 18:00開演 米沢唯&菅野英男12/21(日) 14:00開演寺田亜沙子&井澤駿12/23(火・祝) 14:00開演長田佳世&奥村康祐
2014年11月28日2007年にルチアーノ・パヴァロッティが世を去り、最近はプラシド・ドミンゴがバリトン役を歌うなど、1990年代に世界中を熱狂させた「三大テノール」の中でいまも“現役テノール”なのが最年少のホセ・カレーラスだけというのは、時の流れの必定とはいえ寂しい限り。今年4月、そのカレーラスがなんと12年ぶりにオペラの舞台に立った。ホセ・カレーラステノール・リサイタル2014「郷愁」の公演情報カレーラスが出演したのは、4月26日、29日、5月2日にスペイン・ビルバオのアリアガ劇場で世界初演されたクリスティアン・コロノヴィツ作曲の新作オペラ《裁判官 EL JUEZ》(同劇場とオーストリアのチロル音楽祭の共同製作)。コロノヴィツは映画・ミュージカルの作曲やポップス・アーティストの共演オーケストラの指揮などマルチに活躍するオーストリア人音楽家で、ウィーン・フォルクスオーパーで再演を重ねている人気の子供向けオペラ《アントーニアと野獣》(2009年)も彼の作品だ。新作《裁判官》は、フランコ政権時代のスペインで教会や病院が多数の新生児を組織的に誘拐していたとされる実在の「盗まれた子供たち」事件をベースにしたオペラ。主役の元孤児の裁判官役を熱演して公演を成功に導いたカレーラスに、世界中から押し寄せたファンがスタンディング・オベーションで大きな拍手を贈り、スター・テノールのオペラ復帰を祝福した。8月にチロル州のエルル祝祭劇場での同作オーストリア初演にも出演したカレーラスだが、これがキャリア最後のオペラとなるのか、はたまたこれを機にオペラ活動が再燃するのか、今後が注目される。カレーラスのオペラ出演に関しては、2009年に英『タイムズ』紙がオペラ引退宣言を報道し、カレーラス側がすぐに否定するというちょっとした「事件」があった。しかしカレーラスのオペラ出演は2002年ワシントン・オペラの来日公演《スライ》(ヴォルフ=フェラーリ作曲)が最後だったから、ファンの多くは暗黙の了解として実質的なオペラ引退を覚悟していたはずだ。それだけに今回のオペラ復帰は驚きだった。ほぼ毎年来日して、独特の愁いを帯びた情熱の歌声を聴かせてくれるカレーラス。今年も11月29日(土)に東京・サントリーホールで「郷愁」と題するリサイタルを行なう(共演:ロレンツォ・バヴァーイ[ピアノ])。リサイタル翌週の12月5日(金)が68歳のバースデイ。その歌には、齢を重ねるごとにいっそうの魅力が刻み込まれている。文・宮本明◆ホセ・カレーラステノール・リサイタル2014「郷愁」11月29日(土) 18:00開演サントリーホール 大ホール (東京都)共演:ロレンツォ・バヴァーイ(ピアノ)
2014年11月07日日本文学の金字塔・三島由紀夫の不朽の名作を、宮本亜門の演出で贈る舞台「金閣寺-The Temple of the Golden Pavilion-」。2月25日(火)、新キャストとなる主演の柳楽優弥、水橋研二、水田航生らキャストらが稽古場にて顔合わせ、稽古始めの台本の読み合わせの模様が公開された。生来の吃音から疎外感に悩みながら育った男・溝口、下肢に障害を抱えながらも不敵に溝口を挑発する柏木、そして溝口とは寺の同朋で、明るさの裏で自死を選ぶ鶴川。「生とは何か?」「美とは何か?」と自問する溝口と2人の友人を軸に、現代にも通じる若者の苦悩や閉塞感を描き出す本作。舞台は俳優の身体だけでなく、映像や声の演出で三島文学を表現し、正式招待された「リンカーンセンター・フェスティバル2011」でのニューヨーク公演では“Fusion Theater(融合劇)”と評され大きな注目を集めた傑作だ。今回の公演で新キャストに抜擢されたのは、主人公・溝口役には独特のオーラを放つ柳楽優弥、柏木役には実力派の水橋研二、鶴川役には昨年の映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』での大抜擢でも注目を浴びた水田航生、さらに溝口の初恋の相手・有為子役とその有為子に存在を重ねるお花の師匠に市川由衣。今回の主演抜擢を受けて、柳楽さんは「今日は稽古初日ということで、めちゃめちゃ緊張していますので、頑張って乗り切ろうという思いです(笑)。初舞台は『海辺のカフカ』で蜷川幸雄さんの演出だったので、演出家の方はみんな、“恐い”という印象だったのですが、取材時にライターさんたちから『亜門さんは優しい』と聞いて、優しい演出家の方もいるんだと思いました(笑)。亜門さんを信じて稽古に励んでゆきます」と挨拶。三島文学のキャラクターとあって、かなりの難役になることが予想されるが「僕は、『僕の内界と外界との間の扉に鍵があり、うまく開いたためしがない。それどころか、その鍵は、錆び付いてしまっているのだ』という(小説の)一節に現れる、溝口の心の変化を精一杯演じていきたいと思います」と力強く語る。さらに役作りについて聞いてみると、「寺の坊主の役なので、役づくりのために、京都の宝泉寺に修行に行きました。座禅をしたり、太極拳をしたり、すごく緊張しました。今は一番“声”のことを意識しています。映画で声が小さいと言われるので(苦笑)。髪型は、今以上にスッキリします!坊主にします!」と明かした。本作は2011年に宮本さんが芸術監督を務めるKAAT神奈川芸術劇場の柿落し公演として創作されたもので、今回再演となるが宮本さんは「今回は、単なる再演ではなく、新しい役者さんもたくさん加わっていますし、自分にしかできない『金閣寺』を一緒に創り上げていきたいと思います」と話す。柳楽さんの起用理由については「非常に面白い役者さんです。溝口を演じるには、溝口に共鳴できるかどうかが重要なんですが、柳楽さんは溝口が好きなんだと聞きました。『海辺のカフカ』も観て思いましたが、柳楽さんにはそこに“存在”できる力がある。舞台では、その“存在”できる力が大切なんだと思います」とも。最後に、「初演時に比べると、それぞれ役の実年齢に近い方が揃っています。『金閣寺」は、テーマがとても深く、時期や自分の置かれている立場によって、見方が変わりますので、自分自身を見つめ直す機会となりうる作品だと思います。3年前とは情勢が変わっています。自分という人間は何ぞや、日本とは何ぞやということを、いま一度、感じ取って頂ければ」と語りキャスト・スタッフともに気合い十分といった様子だった。舞台「金閣寺-The Temple of the Golden Pavilion-」は、赤坂ACTシアターにて4月5日(土)~4月19日(土)公演。(text:cinemacafe.net)
2014年02月26日9月2日、家具メーカーのマルニ木工が、同社東京ショールームで、プロダクトデザイナーの深澤直人と、「ミナペルホネン(mina perhonen)」デザイナ-の皆川明による初のコラボレーションプロジェクト「ふしとカケラ・マルニコレクション・ヒロシマ・ウィズ・ミナペルホネン(MARUNI COLLECTION HIROSHIMA with mina perhonen)」の発表会を開催。深澤、皆川両氏登壇により、トークセッションが行われた。同プロジェクトは、今秋開催の「三越伊勢丹デザインウィーク(ISETAN MITSUKOSHI DESIGN WEEK 2013)」のメインコンテンツ。深澤デザインのイス「HIROSHIMA(ヒロシマ)」などマルニ木工のイスにミナペルホネンの"カケラ"(残布)のパッチワークを組み合わせた商品や、端材を使ったテーブルなどのオリジナル家具が期間限定で発売される。皆川氏は、「2011年に西麻布のギャラリーで初めて"HIROSHIMA"を見て、その横姿の美しさに感動した。"カケラ"とは、洋服を仕立てる際に出る、端切れなどの余り布のこと。余り布も他の生地と同じように手間暇かけて作られるのに、廃棄されてしまうのはもったいないと常々感じていた。そんな余り布に“ピース=カケラ”としてもう一度生命を与えようというのが今回の試み。毎年発表してきたミナペルホネンのコレクションラインで使われたアーカイブ生地を組み合わせることで、タイムレスな魅力が感じられるものになったと思う」と語った。今回、皆川氏は使い続け生地が擦り切れると、織り込まれた別の色が見えてくる生地をイスの座面用に提案。「使い込む内に現れる経年変化を楽しめるようなイスを作りたいと考えた。この生地は2色の糸が互いの色を干渉し合わないようにしながら高密度で織り込んで作られており、表地と裏地が時間の経過と共に歩みよってくるような仕掛けになっている」と話す。また深澤氏は、「人はモノを買う時、”傷がなく奇麗な商品が欲しい”と思うのが正直なところ。だが、このプロジェクトで、"ふし"(がある木材)や"カケラ"を使ったモノであっても、"自分にしか手に入れられないもの"という価値がそこに存在する、という新しい考え方を提供できたのが大きな意義だと思う。プロダクトデザイナーとして、これまでは美しくクオリティーの高いものを目指してモノ作りを行ってきたが、今回そこに”無駄にしない”という意識を持ち込むことができた」と語った。同プロジェクトは、伊勢丹新宿店1階ザ・ステージで10月23日から29日まで開催されるイベントで公開予定。
2013年09月06日東京ヤクルトスワローズは、9月28日の広島東洋カープ戦から10月4日の阪神タイガース戦までの神宮主催5試合において、イベント「宮本慎也ファイナルシリーズ」を開催する。同イベントは、今季限りで現役を引退する同球団・宮本慎也選手の実績に敬意を込めて実施するもの。企画チケット、記念グッズの販売などを展開する。企画チケットは4種。「ミズノ製限定仕様宮本モデルグローブ付チケット」は、宮本モデル軟式グローブに引退記念デザインが刻印されたグローブ付。「ベースボールマガジン社製フレーム入りカードセット付チケット」は、限定300セットでシリアルナンバーが刻印されている。その他も、デザイナーPanson Worksがデザインしたつば九郎と宮本選手がプリントされたTシャツが付いたチケットや「燕パワーメントユニフォーム」に、宮本慎也ファイナルシリーズ限定ワッペンと、背番号「6」がついた限定仕様のユニフォームが付いたチケットも販売する。販売対象試合は、9月28日(広島東洋カープ戦)、9月29日(横浜DeNAベイスターズ戦)、9月30日(横浜DeNAベイスターズ戦)、10月1日(読売ジャイアンツ戦)、10月4日(阪神タイガース戦)。販売は、すでにSwallows CREW プレミアム会員、Swallows CREW レギュラー、ライト、キッズ会員には先行販売している。9月4日の11時より、Swallows CREW 無料会員に先行販売開始。9月6日の11時から、スワチケ一般販売、9月8日11時から、神宮球場窓口でも販売する。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2013年09月03日今週末にKAAT 神奈川芸術劇場 ホールで開幕する、宮本亜門の舞台『マダムバタフライX』の公開舞台稽古が11月8日に行われた。『マダムバタフライX』公演情報「オペラ!~ネクスト・ジェネレーションへの試み」と題した『第19回神奈川国際芸術フェスティバル』のフィナーレを飾る作品。イタリアオペラの最高傑作であるプッチーニ作曲『蝶々夫人』と、宮本亜門独自の台本による現代劇を融合させたもので、「ネオ・オペラ」というべき新しい表現を追求する。「蝶々さん」の物語と、その舞台を作る「現代人」の物語が交錯する二重構造の舞台。二期会の実力派歌手陣と若手俳優陣が、ふたつの物語を歌い演じていく。スタイリッシュな舞台美術も見どころのひとつ。新国立劇場『サロメ』での宮本とのタッグも記憶に新しい伊藤雅子の舞台装置、さらに映画の合成画像技術を用いて実写とドローイングを融合させて作り上げる栗山聡之の映像。これらが一体となって、宮本亜門がオペラの名作を現代に蘇させる。公演は11月10日(土)から18日(日)まで、KAAT 神奈川芸術劇場 ホールにて。一部公演を除きチケット発売中。
2012年11月09日“超ど級・パワフルミュージカル”と銘打ち、宮本亜門が演出を手がける舞台『ウィズ ~オズの魔法使い~』。9月28日(金)からの横浜公演を皮切りに、大阪、東京、名古屋で上演される。8月22日には都内にて制作発表が行われ、宮本をはじめ主演の増田有華(AKB48)のほか、ISSA(DA PUMP)、森公美子、小柳ゆき、陣内孝則らが会見に応じた。「ウィズ-オズの魔法使い-」 チケット情報「震災後の日本を元気にしたい!」という宮本の思いで企画されたのが本公演。宮本は「もともとはブロードウェイ作品ですが、メイド・イン・ジャパンの香り満載で、日本から発信する舞台だと思ってください。心をオープンにできる本当に素晴らしい作品。歌も踊りもパワフルで、テンションが高くないとできないミュージカル」と本作を紹介した。ISSAが「現場が本当に楽しくて、今は一秒でも長く稽古場にいたい」と話すように、出演者・スタッフは実に個性豊か。主役のドロシー役をつとめる増田有華は、AKB48などに所属するメンバー186名の中から、約3か月におよぶオーディションによって宮本に認められ、その役を勝ち取ったシンデレラガール。「はじめは皆さんのテンションの高さに圧倒されましたが、すぐに打ち解けられ、もう3年くらい一緒にいるような感じで家族みたい。この役が決まってから、大げさではなく私の生き方が変わり、もっとたくさんのことを伝えなきゃと思うようになりました。物語の中のドロシーとともに、私自身も成長していきたい」と抱負を語った。キャストだけでなくスタッフも個性派揃いだ。振付を担当するのは、ダンサーとしてブリトニー・スピアーズとも共演し、振付家として少女時代をはじめ数々のトップアーティストを手がける仲宗根梨乃。「みんなすごいんですよ!毎日、作るのがとにかく楽しい!」と、そのテンションの高さで役者陣を圧倒し、会場を沸かせた。きゃりーぱみゅぱみゅのアートディレクションをはじめ、その独特な世界観で注目を集めている増田セバスチャンも美術監修として宮本の演出を助ける。まさに個性豊かな面々に宮本は「正直、まとまりはありません。猛獣だらけ。だから僕もまとめる気はない。こんなにもカラフルな人たちが、みんなで作り上げていく作品です」とコメント。色とりどりのキャラクターたちが登場し、苦難にあいながらも、力を合わせてハッピーエンドに向かっていく『ウィズ』。宮本が言うように、きっと元気をもらえる、そんなミュージカルになりそうだ。公演は10月18日(木)から28日(日)まで東京国際フォーラムホールCで上演のほか、11月5日(月)まで各地を巡演する。なお、東京公演はチケットぴあにて8月25日(土)11:00より8月31日(金)18:00までインターネット先着先行(プリセール)を受付。取材・文:大林計隆
2012年08月23日プロモが運営する韓国料理屋「チヂミのおいしい店 明洞房(みょんどんぼう)」は、7月1日より「牛レバ刺し」にそっくりな新メニュー「明洞房オリジナルレバ刺し」の発売を開始する。7月1日より、焼肉店や居酒屋の人気メニュー「牛レバ刺し」の、飲食店での提供が禁止となる。6月12日の厚生労働省よる正式発表以降、「食べ納め」をしようと、多くの人が「牛レバ刺し」を提供する店を訪問しているという。同店ではこの「牛レバ刺し」人気を受け、「牛レバ刺し」を細部まで忠実に再現した「明洞房オリジナルレバ刺し」を販売開始する。「明洞房オリジナルレバ刺し」の正体は、韓国で昔から食べられているという伝統家庭料理「묵(ムク)」。どんぐりやソバ、緑豆の澱粉を豆腐状に固めたもので、最近では、どんぐりの美容効果から美容食品としても注目されている。同店では、この「ムク」を使用し、「牛レバ刺し」特有のとろっとした“見た目”、独特なシャクっとした“食感”、そして濃厚な深い“味わい”の3要素を、独自の製法で見事に再現した。その再現力は、本場の味・素材にこだわり、韓国から直接食材を取り寄せている同店ならではのもの。「牛レバ刺し」好きも思わず納得の、自信を持って勧められる仕上がりになっているという。「明洞房オリジナルレバ刺し」はホームページ上で6月29日より受け付けを開始し、7月1日より店頭とホームページ上での販売を開始する。■「チヂミのおいしい店 明洞房(みょんどんぼう)」住所:愛知県名古屋市緑区桶狭間切戸2412番地(大型駐車場完備、R23号線有松インター降りてすぐ)営業時間:11:30~14:30/17:00~23:00定休日:毎週月曜日(月曜が祝日の場合は営業し、翌日休み)【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年06月29日ミュージカル『アイ・ガット・マーマン』が現在、東京・シアタークリエにて上演中だ。この作品は今やブロードウェイにウェストエンドにと、世界を舞台に活躍する宮本亜門の演出家デビュー作。1987年の初演から25年という節目の年を迎えたこの新春に、諏訪マリー、田中利花、中島啓江というオリジナルキャストの3人がエネルギッシュに舞台上で弾けている。『アイ・ガット・マーマン』チケット情報はこちらマーマンとはブロードウェイ黄金時代の大スター、エセル・マーマンのこと。本作は『エニシング・ゴーズ』『アニーよ銃を取れ』などの数々のヒット作に主演する一方で、5度の結婚を繰り返すなどドラマチックな私生活を送った彼女の生涯を、彼女自身がヒットさせた名曲群で綴っていく作品だ。3人の女優たちが2台のピアノをバックに時にマーマンになり、時にマーマンを語るクラブ・ショーのようなスタイルは、舞台転換もなくシンプルだけれども何故かゴージャス。それは3人の女優たちの存在感が醸し出すものだろう。諏訪の華やかさ、田中のファンキーさ、中島のド迫力。そして3人に共通して、マーマンの代名詞でもあった“大声量”。ソロから三重唱までどこを切り取ってもパワフルだ。ナンバーも幕開けから「アイ・ガット・リズム」「ショウほど素敵な商売はない」と名曲のオンパレードで、一気に心が沸き立つ。コメディかはたまたおしゃべりか、3人の息の合った掛け合いも楽しい。今回の公演は3チームのキャストが出演するが、作品の歴史とともにあるオリジナルキャスト版は「Tribute to Merman」と銘打ち、初演時の映像とともに3人が当時を振り返るシーンも加えられた。「あの頃はスリムだったわねぇ」「私は変わってないわ!」など目を細めて懐かしさを語りつつも、今の自分にも自信を見せる3人が可愛らしくも頼もしい。25年という歴史の重みと、『アイ・ガット・マーマン』という作品への愛が入り混じり、なんともハッピーな劇場空間になっていた。そして最新ヒット曲も織り込んだりとさらに進化する『マーマン』を見せつけてもいた。初演は4日間だけの公演だった。25年後も同じ作品に出ているとは「針の先ほども想像しませんでした」と諏訪。田中も「ずっと『マーマン』をできたらいいなぁ、と思ってはいましたが、それが実現するとは」と今の喜びを噛みしめる。そして「まるでタイプの違う3人の出演者それぞれの個性が絡まりあって、ひとりの女性“マーマン”を演じてゆく。これは、たまらないですよね」(諏訪)、「人生、十人十色でも、それぞれのどこかに重ね合わされるドラマがある。マーマンを知らない人でもきっと大笑いし、泣き、ため息をつく!」(中島)とこの作品が愛され続ける理由をそれぞれ語った。3人が賑やかに歌い、底抜けの笑顔を振りまく姿を観るだけでも、身体の底からムクムクとパワーが湧き出てくるこの舞台、公演は1月19日(木)までシアタークリエにて。なお1月10日(火)からは浦嶋りんこ、シルビア・グラブ、エリアンナの“ファビュラスキャスト”、樹里咲穂、西国原礼子(SDN48)、Mizの“ニューキャスト”が出演する。その他地方公演あり。
2012年01月06日1987年、宮本亜門が初めて作・演出を手がけたミュージカル『アイ・ガット・マーマン』。初演時は日を追うごとに評判を集め千秋楽には大入り満員、翌年には芸術祭賞受賞という快挙を成し遂げた。この作品が2012年1月、初演から25周年という節目の年に10年ぶりの上演を果たす。12月19日、初演の会場となった東京・ブディストホールにて製作発表が行われ、宮本のほか、キャストが一堂に会した。『アイ・ガット・マーマン』チケット情報はこちら物語はブロードウェイの女王エセル・マーマンの波乱の人生を軸に、彼女がヒットさせた名曲の数々を織り込みミュージカルの素晴らしさを謳い上げた作品。舞台には3人の女優と2台のピアノだけ、女優たちは代わる代わる、時には同時にマーマンを演じていくというシンプルかつ斬新なスタイルもヒットの要因だ。とはいえ初演の初日は「お客さんは真ん中(のブロック)だけ、後ろ2列は空席で、“え、これしかいないの!?”というのが演出家人生のスタートです」という状況だったと宮本は語る。だが「2日目にはいっぱいになり、3日目には立見が出て……。アルバイトをし、うちの親父に借金をしてこのホールを借り、キャストの3人に直接電話でオファーをし初演をした。僕は大劇場など大きな仕事をしているイメージがあるかもしれませんが、基本はこの空間。この作品をやるたびに初心に戻ります」と思い出の地での会見に感慨深そうに当時を振り返っていた。今回のキャストは初演から出演している“オリジナルキャスト”の諏訪マリー、田中利花、中島啓江、カンパニーの大黒柱“ファビュラスキャスト”の浦嶋りんこ、シルビア・グラブ、エリアンナ、今回オーディションで選出された“ニューキャスト”の樹里咲穂、西国原礼子、Mizという3チームにて上演される。宮本と苦楽を共にしたオリジナルキャストのメンバーは「今回のオファーがある前になんだか予感がして25キロ体重を落としました。痩せないと絶対舞台立てない(笑)。でも絶対踊れないと思ってもなんだか動けちゃう、亜門マジックかな」と中島が笑わせ、「オリジナルのキャストとして25周年のステージに立てるということはとても誇りに思う」(諏訪)、「この作品と一緒に人生がある。それがとても幸せ」(田中)とそれぞれ話した。またニューキャストとして初参加するSDN48の西国原礼子は「オーディションを受けたはいいですが、受かってからどうしよう!と不安が押し寄せました。でも亜門さんは私と性格がすごく似ていて、一緒に暮らしたいくらい。大好きです!」と明るく挨拶。亜門も「僕、申し訳ないんだけど彼女のグループのことよく知らなくて……なんだっけ?ついSKDって言っちゃう(笑)。でも秋元(康)さんに日本のスーザン・ボイルって言われているんでしょ? それほど、彼女も、(ニューキャストの)3人ともすごいんです。存在感も歌も。存分にそれを出してほしい」と期待を話していた。公演は1月3日(火)から19日(木)に東京・シアタークリエ、1月22日(日)に大阪・サンケイホールブリーゼにて。チケットは発売中。その他地方公演あり。
2011年12月20日