玄関を開けると焼き菓子店「玄関先にお店をつくるという条件を先に決めて設計に取りかかりました」と話すのは村上譲さん。村上さんは建築家で、お店というのは妻の祥子さんが切り盛りする焼き菓子のお店だ。「妻が焼き菓子をつくって自然食品屋さんに卸したりしていたんですが、お菓子をつくって売る場所がほしいということでまずはそれをつくることが最初に決まりました」。旗竿地で、東側には広い駐車場があって開けているけれどもいつ建物が建つかわからない。この敷地条件のもと、お店をつくるほかには、外に開いていく設計ではなく、家の中でいかに快適に過ごせるかかがまずは設計のテーマになったという。村上邸は旗竿地に立つ。右の玄関戸の正面に焼き菓子のお店を設けた。半地下の大空間家の中に入ってすぐ正面につくられた焼き菓子のお店の前を進むと住宅には珍しいといっていい大きな空間が現れる。将来的に焼き菓子店の延長で客席を設けカフェのような空間にすることも考えてつくったというこの半地下の空間は「セミパブリックのような感じで人が入って来られるような状況をつくりたかった」という。天井までの高さが3.5mで面積は32㎡ほど。気積の大きな空間にしたかったが、ふつうにつくったら家自体のボリュームが周囲より大きくなってしまうので、そうならないよう80cmほどフロアレベルを下げて半地下空間にしたのだという。「敷地が旗竿地ということもあり、できるだけ窓を取りたかったのですが、周囲と同じレベルで窓を開けると外部からの視線が気になるので、半地下にすることで視線をずらし居心地を損なわないことを意図しました」手前のフロアよりも80㎝低い半地下空間。現在は村上家のLDKとして使われているが、将来的には外部に開放してセミパブリックな空間にすることも考えているという。壁は漆喰仕上げ。漆喰には川砂とすさをまぜている。半地下の空間から見る。左奥に玄関と焼き菓子店、中央奥が水回り関係、キッチン奥にはパントリーがある。落ち着き感と安心感この半地下空間は「フロアレベルを少し下げることで洞窟にこもっている感じをつくろう」とも意図したというが、これがまた空間に落ち着き感をもたらしている。この空気感をつくり出すのにはさらに木を多用しつつ材のスケールに少し余裕をもたせていることも作用しているようだ。「この家では設計で線を細くしてくような作業はしていません。家具や開口の枠周りなどもスギの無垢材で30㎜程度であえて太めにつくっています」。さらに「材をぎりぎりまで細くして緊張感をつくるというよりは安心感をつくりたかったというのはあったかもしれない」とも。天井のスギ板は厚さが36㎜で梁せいは240㎜あるという。こうした設計上の選択も無意識の裡に安心感のようなものを空間にいる人間にもたらすのだろう。開口部は東側に設けた。トップライトから落ちる光が大きな壁面を照らしている。キッチンの横幅は4.3mと広め。娘さんたちとともに料理をするためのほか、いずれ料理教室を開くことなども想定してのものという。天板と壁はモールテックス。ロフト部分は昔の民家を思わせるような懐かしさを感じる。スケルトンにして家のつくりを見せる2階の柱梁のグリッド構成をもとにしたシンプルなつくりは家族の成長の具合に応じられるよう可変性を考えてのものという。仕切りには障子を採用したが「この昔からの日本の様式はすごくいいなと思っていたので、あえて壁を立てずに障子だけで仕切ることで、空間を大きくしたり小さくしたり調整しながら生活ができる」という。「それとこれは家全体の話になりますが、成り立ちというか、どうやって家が出来ているかをこの家を訪れてくれた方に、ぱっと目で見てわかりかつ容易に説明ができるようにしたいという思いもあって、できるだけ木造のスケルトンのような状態にしています。また、この家をつくってくれた棟梁は飯能で修業時代を過ごし西川材に縁があるため、スギの無垢材はすべて飯能の西川材を使用しています。そういった“ものづくり”のストーリーも大切にしたいと考えています」東側に設けた階段部分が吹き抜けになっている。トップライトから落ちる光が壁にさまざまな表情をつくり出す。2階はシンプルなグリッド構成でつくられている。左の障子の奥が書斎で右が寝室。左の大きなスピーカーは実家のご両親がマンション住まいになる際に引き取ったタンノイというイギリスのメーカーのもの。寝室の横に設けられた書斎的スペース。東側の壁をトップライトからの光が明るく照らす。お菓子の陳列に一工夫祥子さんが切り盛りしているのはmalcoと名付けた焼き菓子店。扱っているのはスコーンやクッキーなどの日持ちのする焼き菓子がメインで、卵、乳製品や白い砂糖を使わずアレルギーにも対応したもの。今では全国から注文が来ているという。スペースが限られていて平棚などにお菓子を並べて置くことが難しいため、譲さんには「本屋さんで本を立てかけて陳列させているような感じでお菓子を並べていきたい」とリクエストしたという。玄関のガラス戸を開けると正面が焼き菓子店のスペース。場所をコンパクトにおさめるため商品の焼き菓子は桟の上に本のように立てかけて並べている。景色がいいこの家に移り住んでから2年ほど。祥子さんは半地下の空間の東側に設けられた窓が気に入っているという。「わたしはこの窓が一番好きで、床に座ると視線が気持ちよく空まで抜けていくんです。電線も目に入らないし大きい建物もなくて隣の駐車場のところに人がいても視線が合わないのでカーテンがなくてもそんなに外が気にならない。あと家の中にいながら天気や明るさの変化が感じられるというのもすごくいいなと思っています」祥子さんはこの開口部から外を眺めるのが好きという。譲さんは階段を上がりながら1階の景色が変わっていく感じが気に入っているという。譲さんは半地下のダイニングテーブルに座っていることが多いという。「最近は家で仕事をすることが多くて、2階の書斎で子どもと並んで作業をしたりすることもあるんですが、夜、家族が寝てからはこちらのほうが落ち着くのでこの場所にいる時間が長いですね」さらに「この場所の景色がいい」「目のやり場がたくさんある」とも。住宅ながら空間を“見渡せる”ようにゆったりとしたスペースは天井も高く上を向いてもすぐに視線がぶつかることもない。こうしたことが落ち着くだけでなく、飽きることなく長い時間過ごすことを可能にしているのではないか――そう思えた。村上家は夫婦と娘さん3人の5人家族。床は当初モルタル仕上げだったが、お子さんが生まれた際にカーペットを敷いたという。大きな空間を半地下につくったため、周囲の2階建ての住宅と比べても屋根は高くない。グレーの部分がトップライトになっていて吹き抜けから半地下空間へと光を供給する。村上邸設計Buttondesign所在地東京都中野区構造木造規模地上2階延床面積99.2㎡
2021年09月06日義母との体験談をコミカルなマンガでInstagramに投稿しているまむ(@mamu.0801)さんは、出産をきっかけに夫の両親と敷地内同居をすることに。今でこそ義母とは良い関係を築いていますが、環境の変化や慣れない育児もあり産後は義母との関わり方に苦戦……。そんなまむさんの義母との体験談を短期連載にてご紹介していきます。 里帰り出産を終え、新生活がスタート!長女の出産後から1カ月が経過……。里帰りしていたまむさんは、夫の待つ家に帰ってきました。不安な思いもありながらも、夫の両親と敷地内同居を始めることに。 娘が赤ちゃんのときに、よく「チュチュチュチュ」と叫んであやしてくれていました。 フィーバー期は、インターホンに怯え玄関に人影が見えると動悸がするなど、ラリラリしておりましたが、義母はとても良い人です。 今は丁度良い距離感で仲良くさせていただいております。 ちょっと大変だったころの記憶をふざけたマンガにして、良い思い出として上書きしてやろうというのが今回の目的です。 ◇◇◇ 義母の孫大フィーバー!この豹変っぷりは、まむさんも衝撃を受けてしまいますよね。 前途多難は敷地内同居は、これからどうなるのでしょうか。次回、ハラハラの1日目! お見逃しなく! 著者:イラストレーター まむ二人の姉妹の母。Instagramで家族の日常を漫画で投稿しています。
2021年06月01日ぐるぐると回れる家があこがれ300㎡と広い敷地に立つ安達邸。もともとは奥さんの千紘さんの実家が立っていたこの土地で千紘さんのお父さんとの2世帯住宅を建てることになったのが4年前だった。家づくりに際し夫妻の間には「人が集まれる家」「古くなっていくのが面白い家」「かくれんぼができる家」などのイメージがあったという。設計を担当した建築家の岸本さんには、それらに加えて「子ども部屋を閉じた空間にしたくない」「敷地を生かした家にしたい」などの希望も伝えた。「トトロに出てくるサツキとメイの家みたいにぐるぐると回れる家があこがれだった」とも話す千紘さん。安達邸は階段を中心にしてぐるりとめぐるつくりになっている。トップライトから光の落ちるこの階段室の1階部分には階段を囲むようにお父さんの部屋と浴室などの水回り、そしてお父さんからのリクエストだった書庫がつくられている。そしてこの書庫は階段室の1階部分の壁ともなっている。2階から見る。3階に開けられた小窓を通して階段室の様子をうかがうことができる。階段室の1階部分の2つの壁が本棚になっている。書庫と子ども部屋「父からは最初にとにかく書庫をつくってほしいと。本が多いので最初は図書室のようなイメージだったんですが、本を中心として居場所をつくる提案をしていただいたのが面白かったですね」(千紘さん)。そして2階には、この書庫と同じように階段室に対して開かれた、いずれ子ども部屋となるスペースがつくられた。「2世帯住宅でよくやるんですが、この安達邸でも親世帯と子世帯をつなぐつなぎ目のところに子ども(孫)の居場所をつくりました」と岸本さん。またこの2階は「1階の延長であってほしかった」ともいう。「“2階に上がった”という感じにしないことを考え始めたときから階段の仕上げや造形、プロポーションを徹底的にスタディして、2階に至るまでは大地がそのまま延長・連続していくような、地形あるいは彫塑的な造形として扱っています」3階部分の壁に開けられた窓から見下ろす。将来子ども部屋になる2階部分はL型につくられている。2つにわけられるようスイッチも2カ所に付けられている。壁がなくオープンなつくりの子ども部屋から階段室を見る。2階から階段室を見る。3階に上がって扉を開けるとキッチンが正面に見える。キッチンと「こもり部屋」3階にあるキッチンは「はじめは“こもれるような感じにしたい”ってお願いしました」と千紘さん。キッチンに隣接して「こもり部屋」がつくられてこの“こもれる願望”がかなったため、実現したキッチンは完全にクローズな空間にはしなかったけれども、ひとりで集中して作業のできるスペースになったという。「完全に仕切られているわけではないので家族と話したりしながらでも料理をつくれるけれども、床が一段下がっていて白い鉄筋の棒と吊り棚で区切られた感覚もあるので集中して作業をすることができます」キッチンとダイニングスペース。キッチンでは冷蔵庫の収めどころがいつも問題になるが、安達邸では千紘さんの「こもり部屋」との仕切りとして機能しかつキッチンと隣りあわせにもかかわらずぐるりと迂回するために心理的な距離もつくっている。丸テーブルのところからキッチンを見る。天井は家形になりかつ壁との境目が柔らかくあいまいにされている。ベンチは丸テーブルのところからぐるりと手前側へとつくられている。テーブルを中心に多くの人が集まれるつくりだ。千紘さんのお気に入りの2畳ほどの「こもり部屋」からキッチンを見る。キッチンは周囲の床から13㎝下がっている。キッチン部分に立てられた白い鉄筋棒が透過性をもちつつ吊り棚とともに通路とキッチンとを仕切っている。居場所がいろいろある引っ越してきてから4カ月ほど。安達さんは3階のキッチン横から寝室のほうにまでL形にぐるりとめぐるようにつくられたベンチにいることが多いという。「日当たりに合わせてベンチの位置を移動してクッションがあれば寝転がれるというのもいいですね」。さらに「このベンチのほかにもこの家には座れる場所がすごくたくさんある。階段もそうですが居場所が厳密に決められているというのではなく、日の当たり具合だけでなく、季節や時間帯などによっても移動して、移動しながら自分のいいところを探していけるような感じになっている」と話す。お子さんが2階で遊んでいるときには階段をイスのようにして座って様子を見たりとかもしているという。千紘さんは安達さんと同様に3階のベンチも好きだが、やはりキッチン横の「こもり部屋」がとても気に入っているという。「2人目がまだ小さいので昼間はまったく自分の時間がない。でも、夜、子どもを2人とも寝かせたあとなどにあそこに座っていると、囲まれていることで安心感がありかつ目の前に窓があって視線も抜けるので、すごく気分がいいですね」玄関側から階段室を介して奥に浴室などの水回りスペースを見る。2階が子ども部屋。彫塑的、あるいは地形的につくられた階段部分。手前のタイルの部分はお子さんと本を読むスペースにもなっている。トップライトから落ちる光が階段室を介して周りのスペースにも光を供給する。浴室側から階段室を介して玄関方向を見る。最後に2世帯住宅にしたことについて話していただいた。「2世帯住宅ということはあまり気にならないです。とはいえ、お父さんがいるかどうかはちゃんとわかるのがいいですね」と安達さん。千紘さんは「2世帯住宅に住むのはわれわれの暮らしにとって大きな変化でした。父の部屋は父の部屋で扉を閉めれば独立して暮らしているようにもなるんですが、階段のところで子どもと一緒に遊んでくれたりするし、庭で遊んでいる時に父の部屋が見えたり声が聞こえたりとかというのもけっこう面白かったので、2世帯でもこうやって暮らすのは悪くないなと思っています」と話す。「3世代で一緒にご飯を食べたりすることもよくある」という安達家。暮らしの変化は、不自然になることなく親世代・子世代ともにすでにしっくりとなじんできているようだった。左の扉を開けると千紘さんのお父さんの部屋。右に玄関の引き戸が見える。玄関の引き戸を閉めた状態。手前の空間は「リビングみたいな使い方にしたいと思っています」と安達さん。玄関の引き戸をすべて外に出した状態。「開けば外でもあり閉じれば中でもありという感じがほしいかった」という。300㎡と広い敷地は旗竿地。奥に竿の部分が見える。敷地に対して斜めに角度を振って四方に庭をつくっているため、誰も足を踏み入れないような「裏」の空間がない。安達邸設計acaa所在地東京都杉並区構造木造規模地上3階延床面積116.4㎡
2020年10月05日敷地の高低差は3.5m敷地について、「日当たりのよい土地を探していて、以前からいい場所だと思っていた」という三石さん。すでに更地になっていた敷地は途中から斜面になっていて最高部では前面の道路と3.5mくらいの高低差があったという。「まず、高さがあるので道路からの目線がそんなに気にならないんじゃないかと。それからそこに塔のような感じで建てたら眺めもすごくいいだろうし、地面のレベルから4階建てくらいの高さまでをふつうの住宅一軒で体験できるのは面白いのではないかと思いました」(三石さん)旗竿敷地の傾斜した旗の部分に立つ三石邸。家の前側は地面を掘削している。玄関は前面道路と同じレベルだが以前は地下だった。雨にぬれずに階段を上がりたい設計は友人の武田さんに依頼した。武田さんは敷地を見て「これはちょっと大変そうだな」と思ったという。「まずこの傾斜地にどう建てるかというところから考え始めないといけない。ただ建築家としてはこの場所でしか建たないものにできそうだなとは思いました」難しいのは傾斜している土地に建てるだけではなかった。これに三石さんからのリクエストが加わり設計の難易度はさらに増したようだ。「敷地に高低差があるところでは外階段を上がって玄関があるパターンが多い。この家の並びも全部そうなんですが、そこを僕は家の中に入ってから上がりたいと。それに対して武田さんは“何を言ってるんだ?”みたいな反応でしたが、“雨にぬれずに階段を上がって行きたい”って言ったんです」玄関から階段で上がるとリビング。リビングのある部分も掘削してつくられた。ダイニングから旗竿敷地の竿の部分を見る。室内の壁=擁壁以前は地下レベルであったところに玄関がつくられ、そこから階段を上がったところにリビングが配置されているが、このリビングも掘削して元の地盤面よりも低いところに位置している。しかし傾斜した部分の土をすべて取り除いたわけではないため、残った土を押さえるための擁壁が必要となる。三石邸ではこの擁壁を建築の壁として活用しかつ仕上げで隠さずに室内で露出して見せている。このコンクリート壁が独特の質感を空間に与えている。「ふつうは木造2階建てというとフローリングの下にコンクリートの基礎があって土を押さえているわけですが、生活の中ではそれがわからない。それを室内で見せてRC造の質感みたいなものを出しています」(武田さん)そしてこの擁壁はふつうのコンクリートではなく、洗い出し仕上げでコンクリートの中にある骨材が浮きだしたような見えになっている。この住宅内部では見ることのない仕上げを三石夫妻は気に入っているという。「洗い出し仕上げは外構で使われているイメージがあったので最初聞いたときは“え?”と思って、家の中にある状態をイメージするのが難しかったんですが、でもなんか面白そうだよねと」。奥さんは公園のような場所で使われているイメージがあったという。しかし現場で見たときには「“ああこうなるのか”という感じで思っていたより荒々しくもなく、住んでみて今すごく気に入ってます」と三石さん。リビングにはキャンプ用のテーブルやランタンが置かれている。左がダイニングキッチン。階段を上がったところからリビングを見る。左の壁と奥の壁は擁壁がそのまま室内の壁として使われている。リビングの壁と同様に左と奥の壁は、型枠に遅延効果シートを貼ってコンクリートを打設し、型枠をはずした後にウォータージェットで表面を洗い出している。乾燥後、表面を固めるためにコーティング剤を塗っている。ダイニングキッチンの奥にはお風呂などの水回りが配置されている。キッチン側からダイニングを見る。最後の最後までキッチンとダイニングテーブルの高さをそろえるか迷ったという。最終的には美しさを優先しこの形になった。キッチン側からワークスペースを見る。吹き抜け途中につくられた三石さんのワークスペース。光と風と開放感三石邸はこの洗い出し仕上げのほかに吹き抜け空間の開放感と明るさも大きな特徴となっている。吹き抜け部分の高さは5.5m。そこに大きな開口がいくつも開けられ旗竿地ながら光がふんだんに注ぎ込む。日当たりの良さを気に入って入手したこの土地、当然ながら光をたくさん採り入れたいというリクエストがあった。「明るくしてほしいというリクエストはしました。あと旗地は周りが家に囲まれているのでその閉塞感、圧迫感をどうやってクリアしていこうかと。さらにリビングで上を見上げたときに空が抜けて見えると住み心地の良さにつながるのではと思って、窓だらけにしてほしいとリクエストしました」(三石さん)さらに通風に関してのリクエストもあった。「周りを囲まれているので風が抜けるのかどうかとても心配しました」。窓を全開にして寝たいというリクエスも出して、いまでは、真夜中でも2階の窓を全開して風が抜けるような状況にしていることもあるという。吹き抜け部分を見上げる。高さは5.5mあり、大きく取られた開口部から光がふんだんに注ぎ込む。手前が吹き抜けの途中につくられたワークスペース。三石さんはここでギターを弾くこともあるという。2階には寝室が並ぶ。いちばん手前側が主寝室。主寝室の壁は中まで光を採り込むために施工途中でリクエストしてガラス張りに変更してもらった。ダイニングから玄関とリビングを見下ろす。左が主寝室。下のお子さんが成長したらこの部屋を2つに分けて主寝室と子ども部屋にすることも想定されている。夫妻ともにお気に入りという塔屋スペース。晴れた日には横浜のランドマークタワーが見えるという。奥のギターはギブソンとフェンダー。リビングの奥にもう1本テイラーのセミアコがあり、主にブルースを弾くという。つねにアウトドア感覚住み始めてから4か月ほど。「ほんとに毎日が楽しい」という三石さん。家に居ながらにしてアウトドアみたいな感覚が体験できるのが特に楽しいという。「それとリビングだと半分ぐらい土に囲まれていて土につながっているという感覚があって、ちょっと暖かみがありますね。あと半分洞窟の中にいるような感じもあります」「もともとキャンプとかアウトドアが大好き」だという三石さん。「夜には照明をぜんぶ落としてランタンやろうそくを点けてお酒をのんだりするのが楽しみで、いつもキャンプしている気分です」4人のお子さんたちもこれで楽しくないはずがない。「相当喜んでいて走り回っています。高低差があるのでアスレチックの延長線みたいな感じもあって」。そういわれてみると、吹き抜け部分の柱梁のスケルトンが多く露出したつくりがアスレチック施設のように見えないこともない。このあたりもアウトドア好きの三石さんにはたまらないポイントなのではないだろうか。ウッドデッキでは子どもたちが遊んだりべランピング的なことをしたりすることを当初より想定していた。2階のリビングから庭を見る。三石邸設計武田清明建築設計事務所所在地東京都世田谷区構造木造規模地上2階延床面積 115.01㎡
2020年08月05日丘の途中の敷地小長谷邸は住宅に建築家である小長谷さん、奥さんで照明デザイナーの真理子さんの仕事場が併設されている。敷地はそのためのスペースが取れるような場所を5年ほど探して見つけた。丘の途中にある敷地は370㎡と広かったものの、旗竿敷地で、かつ、旗部分の端には古い擁壁がありその擁壁が高いところで6m、低いところで2.5mと南から北に向けて高さにかなりの差があった。擁壁に沿って走る道路から見下ろした印象は敷地いっぱいに立った古家の印象も相まって暗く少しじめっとして決して良いものではなかったらしい。建築家の小長谷さんはしかし問題なく家を建てられる土地だと判断したという。「庭をゆったりとつくりながら建てるとまったく違う環境になるだろうと思いました。と同時に古いコンクリートブロックの擁壁も亀裂や歪みがなかったのでよほどのことがない限り崩れることはないだろうと」。敷地を見てピンときたという真理子さんは「道路から下がった場所でちょっと暗い感じはしたんですが、敷地の上の土地の高さが2段階あって、1段上が公園になっている。それですごく面白くて個性的な土地だなと。反対側は下への眺めが開けているので2階はすごく景色が良さそうだし、いい案を考えてくれるんじゃないかと思った」と話す。西側の道路から2階の事務所部分を見る。真鍮製の扉が玄関。道路からは小さな家のように見えるがこの下に1階の住居部分がつくられている。右に緑のある部分が公園になっていて、その一段上に道路が走る。南側の庭を見る。中央部分に見えるのが古い擁壁。その左の1段高くなった部分に公園がある。反対の北側は下へと傾斜していて開口からは遠くまで視線が抜ける。本棚の右側に主寝室への入口がある。1階をコンクリート造に家のつくりの大枠はこの敷地条件から導かれたといっていいだろう。万が一、擁壁が崩れても問題の無いようにまず1階部分をコンクリートにする。そうすることで擁壁の近くまで建物を建てることができるし、古い擁壁をつくり直さずに浮いたコストを建物のほうにかけることができる。そしてさらにそれによって思い切った建築ができるだろう。敷地を見てすぐに浮かんだというこの小長谷さんのアイデアが実現されることになる。そして「1階をコンクリートにしたうえで、2階部分の床に車が駐車できるようにすること」を大前提にどのような住空間にするかを考えていった。しかし「コンクリートはどうしても閉じているとか重たいなどの印象があった。自分たちの家は木造で建てるものだと思っていた僕らにとってそれが感覚的にどうなんだろうと思った」という。「それで南北両側の開口を思いきり開けて視線が抜けるようにして景色と庭の両方を楽しめるようなつくりに」したという。南側の庭を見る。庭は夫妻で木を植えている。「“キャンプ場のような感じで日本の雑木林のような雰囲気にしたいね”って言っています」(真理子さん)。公園の木と90cmほど出た庇があるため夏でも日差しの強い時間帯は直射光がほとんど入らないという。キッチンは当初正面の本棚の位置であったが、真理子さんの「庭を見ながら料理をしたい」との要望から位置が変更された。壁式に見えるが実はラーメン構造。壁の両端部分に柱状の鉄筋が隠れている。開口から向こう側の丘まで視線が抜ける。真理子さんが照明計画でいちばん悩んだのがキッチン部分だった。階段が斜めに走り吊り戸棚もないこの場所で考えたのがバー状の照明で、真鍮をカットした材の表面を小長谷さんが研磨して仕上げた。フードも同様にして製作された。“高架下”の住空間「コンクリートの堅牢な壁に囲まれた家というより、敷地にコンクリートの下駄を置いたぐらいの感じで、コンクリートの壁2枚とその上に屋根があって、あとはぜんぶ1階は公園というか庭の一部みたいな感じ」とイメージを共有していたお2人。さらに「家族では“高架下”って呼んでいましたね。そのくらいざっくばらんで楽しさがあるというか。家のスケールを超えた工場とか、家らしくない空間に住んでみたいという変な願望があったので、これは“高架下”だと思ったとき、すごく興奮しました」と続ける。その“高架下”の両サイドの開口のサッシには木を採用したが、このガラス面のレイアウトが面白い。「1階は3.46mという天井高なのでアルミサッシなどの既製品が使えない。スチールなどで特注でつくるとコストが高くなるというのと、この地域は防火制限がゆるくて網ガラスや防火サッシにする必要がないので、木を使って自由な窓面をつくってみようと思いました。ガラスの配置を均一とすると庭との境界を強く感じてしまったので、ランダムな配置として外の風景とインテリアが親和するようにしました」(小長谷さん)リビングの窓際にはハンモックがぶら下がる。家族全員で使っているという。同じく窓際に置かれているのは古いミシンの脚部分を使ってつくられたテーブル。素材とディテールレスコンクリートの躯体と木サッシの質感のコンビネーションが目に心地良いが、素材選びにはいたるところでこだわった。2階の玄関扉とインターフォン、その脇の窓枠、そしてキッチンのフードと照明部分には真鍮、2階では玄関の土間と壁面に黒皮鉄板を採用、2階の床はコンクリートの地肌をそのまま残して黒い薄い塗料を塗った。キッチンや扉にはアフリカのブビンガという個性的な木目の木を使っている。躯体は防水コンクリートでつくったため仕上がりと防水も兼ねたものになったが、そのほか全体的に素材をそのままを使うようにしたのは経年変化を楽しみながらイニシャル、ランニングも含めコストを抑えるという意図から。コストを抑えるためにはテーブルやキッチンのフード、照明器具などを自ら製作するなどのほかディテールレスも目指した。「建築家はよく手間のかかるディテールを考えますが、カッコ良くはなるけれどもコストがかかる。この家ではディテールレスをどこまでできるかを試してみました」1階の木サッシまわりでは、嵌め殺しの窓の部分を見ると上に木の枠がない。「コンクリートを打つときに溝/目地を取ってそのへこんだところにガラスを差し込んでいます。そうすると材料も減るしコンクリートとガラスのみのミニマムな納まりとなり、とてもすっきりとした見映えになるのです」壁に架かる絵はこの敷地の元住人であった画家の遺族から譲り受けたもの。照明器具はアンティーク。家具屋さんに製作してもらった棚の間に大谷石を挟んで組み立てたのは小長谷さん。半地下の納戸兼パントリーから南側の庭を見る。この場所は息子さんの読書スペースになっているという。階段は手動で上下の位置を変えられる。リビングより半階上が子ども部屋で下の半地下部分が納戸兼パントリー。洗面上の額縁に入ったガラスを右にずらすと収納棚が現れる。南側に設けたこの浴室/洗面所では洗濯物も干す。浴室/洗面所からリビングを見る。浴室には珍しいペンダント照明は真理子さん設計のオリジナル。階段脇の壁がガラスのため事務所からも景色を存分に楽しむことができる。階段近くに北側の庭への出入り口がある。その右側を進むと子ども部屋/納戸がある。玄関を入ってすぐの場所から2階部分を見る。両サイドとも開口から視線が抜けて気持ちの良い事務所スペース。オフィスっぽさを避けるために天井の照明のほかに必要な場所にペンダント照明を下げている。子どもたちの勉強、工作、お絵描きスペースにもなっている。真理子さんの事務所と打ち合わせスペース。窓際のペンダント照明は「カフェなどのお店」のようにも見えるようこの場所に下げた。子どもたちの勉強・工作・お絵描きのスペースにもなっている。ケースの中には小長谷さんが集めた鉱石が入っている。手前の黄鉄鉱はきれいな立方体だが自然そのままの形という。鉱石のガラスケースの横には世界の珍しい草木の実。道路側から建築事務所のスペースを見る。梁の間には全般照明用のLEDのライン照明が入る。正面の黒皮鉄板には磁石で図面を貼ったりしているという。最近はひたすら庭の木々と格闘しているという小長谷夫妻。「木を買ってきては自分たちで植えて少しずつ増やしてます。芝も含めてキャンプ場みたいな感じでちょっとワイルドな雰囲気にしようかと思っています」(小長谷さん)。真理子さんが「1階のソファで横になったりハンモックに乗っていると気持ちがいい」というのにはおそらく2人で植えて育てたこの庭の緑の存在もあるのだろう。コストの関係でとりあえず入れずにすましたが、小長谷さんが「冬はそれがあれば完璧」と話すのは薪ストーブ。「デザインしたものをつくってくれるところがあるのでリビングにいつか付けたいなと」。いつでも入れられるようにコンクリートスラブと木造の屋根には穴をあけてあるという。「それは楽しみでしょう?」と聞くと即座に「そうですね」との答えが笑顔で返ってきた。奥の照明はこの空間が大きく天井も高いので1、2個では少し寂しい印象になる。そこで高さをランダムに変えて8個の裸電球をぶら下げた。はじめ、壁の間は現状より90㎝狭く設計したが、「家族みんなが集まる場所」を検討した結果幅を広げることに。南側の庭/公園側から見る。大きな開口が両サイドにあるため建物を通して向こう側の景色が見える。小長谷邸設計小長谷亘建築設計事務所照明設計内藤真理子/コモレビデザイン所在地東京都町田市構造RC造+木造規模地上2階地下1階延床面積148.64㎡
2020年06月10日面積広めの旗竿敷地笹沼邸が立つのは旗竿敷地。敷地自体は約190㎡と広く、そのため土地の値段は当初の予算をオーバーしていたという。しかし「西側が開けていて、駅からの距離感や駅の規模感なども含めトータルで考えた時にいい敷地だと思った」と笹沼さんは話す。そして予算のオーバー分をうまくやりくりする手段として賃貸併用のアイデアに思い至ったという。賃貸のワンルームを2戸併設した笹沼邸の設計を依頼したのは奥さんの旧友であった北澤さん。建築のデザインに興味をもっていた笹沼さんは、北澤さんが妹島和世さん、西沢立衛さんのお2人が主宰するSANAAで働いていたこともあり「会ってみたい」と連絡を取って知り合ったのが5年ほど前のことだったという。2階右端と1階左端が賃貸部分。外壁は小波のガルバリウム。箱がずれたような構成になっているが、それをあまり強調したくなかったため、全体として大きな一軒の家のような連続性を感じさせる素材ということで選択された。ダイニング側から「まえにわ」を見る。この壁の裏側に2階の賃貸スペースへと上る階段がある。旗竿敷地に建てられた笹沼邸のエントランス部分。3つのリクエスト笹沼さんが北澤さんにこの家の設計でまずリクエストしたのは「友だちが来て楽しくなるような家にしてほしい」「外と中の関係をあいまいにしてほしい」「天井の高い家にしてほしい」の3点だった。はじめの2点が明確に表れているのはエントランス部分だ。上部に賃貸部分がつくられた「まえにわ」と呼ばれるスペースとダイニングキッチンのスペースがガラスの開口を介してつながっていて通常の玄関のように内と外との関係が切れていない。「そもそもスペースが限られた中で玄関をつくるのがもったいないと思い、縁側からスッと入るように外と中が連続するようなつくりにしました。正面にキッチンをつくったので1階は奥様がお店をやっているような感じになって、外と中とがつながりつつ楽しそうになっていいかなと」(北澤さん)エントランス側からダイニングキッチンを見る。2階はリビング。キッチンからエントランス側を見る。ハイサイドライトは朝日を入れるため施工途中で開けることに。このアイデアにたいして笹沼さんは「もともとふつうの家はいやだなと思っていたのと、建築によって生活が変わる楽しさみたいなのも許容しようと思っていたので楽しく受け入れました」と話す。外と中の関係があいまいということでは、2階上部にあるサンルームと呼ばれるスペースとテラスとのつながり、さらに、白い壁にところどころに開けられた開口を通して外部へと視線が気持ちよく抜けていく点も見逃せない。「リビングのハイサイドライトとか外からの視線が気にならないところは大きく開けてカーテンも付けていません。そうすると外の空気の動きとか天気の様子などが中にいてもすごく感じられて、体感として大きな外部環境にいるように感じられるのではないかと」(北澤さん)2階からダイニングキッチンを見下ろす。キッチンは奥さんの希望でアイランド式に。壁は塗装に見えるが薄手のクロスが貼られている。ずれつつ縦に展開天井の高さはダイニングキッチンが4745mmでリビングが4515mmとふつうの住宅よりも2mほど高い。笹沼さん曰く「どちらも住宅であまり経験したことがない高さでどんな感じになるのか全然イメージがわかなかった」。そしてまた天井が高いばかりでなく、ダイニングキッチンとリビングというプロポーションの近い箱状のスペースが2つ縦にずれながらつながり、さらにその上のサンルームへと、これもずれながらつながる構成も笹沼邸の大きな特徴だ。キッチンから2階へと上る階段を見る。ダイニングテーブルからの眺め。階段と2階部分の手すりにはさび止め効果のある常温亜鉛めっきが施されている。1階から見上げる。階段上部の梁だけが下の柱と揃えて白く天井が仕上げられている。2階リビングからサンルームに至る階段を見上げる。白の壁とそのほかの木の部分とのコントラストがきいている。2階のリビングからダイニングキッチンとその上につくられたサンルームを見る。サンルーム側からリビングを見下ろす。奥の木の扉を開けると左が書斎で、右はベッドルームに至る階段がある。奥さんは設計時には「子どももいるので階段が多いことなどに抵抗があった」というが、「住んでみたら各スペースの高さが違うことで室内でも見晴らしが良く、下に子どもがいても上の階から見えるので良かった」と思っているそうだ。笹沼邸では白い壁と天井などに使われた木のコントラストも特徴的だが、設計では当初、天井は梁を見せずに白い板を張って白い箱が連続しているようなイメージだったが、天井が減額対象となって、現状のような構造をそのまま見せるつくりとなった。抽象性の高いイメージから素材のコントラストを意識させるような構成へとシフトさせたということだろう。ダイニングキッチン上部につくられたサンルームからリビング方向を見る。湾曲した木の扉はトイレの扉。階段を上った先にはテラスがある。「いずれ、バーベキューパーティとかできたらいいなと思ってます」(笹沼さん)。テラスへと至る階段には家具的な佇まいも感じられる。「床がコンクリートということもあって、この1階のスペースには長い時間はいないかもと思っていたんですが、住んでみたら、人が来たときは皆ここに集まって、キッチンで何か作業をしながらでもお話がとてもしやすくて思っていたよりも好きな空間になりました。なので今はこの1階にいるのが長いですね」。奥さんはさらに、「夏は1階が涼しくて快適でしたが、冬は2階のリビングが長くなるのかな」と話す。季節により住む空間が変わる、というつくりも気に入っているようだ。奥さんはさらに「2階のリビングでゴロンとしてテレビを見るのも好き」と話すが、笹沼さんも「2階はプライバシーが他よりも保たれている場所なのでだらっとできる気持ちよさがある」としつつも1階の心地よさを強調する。「1階は天井が高いだけでなく光も溢れているし外気にも接することができて気持ち良く、いろんなことが体感できるので面白くて好きですね」と話す。「あとお風呂上りとかにテラスに出る階段に座って歯を磨くんですが、あそこは窓が3面開くので夜風がとても気持ちがいい」とも語る笹沼さん。「あそこでビールとか飲んだら気持ちいいだろうなって思ったりしますね」。これを実行するのは冷えたビールのうまい来夏あたりだろうか。奥さんが思っていた以上に好きになったと話すダイニングキッチンのスペース。どの方向にも視線が抜けて快適なスペースになっている。賃貸スペースを2つ併設した笹沼邸。北澤さんは「距離感がそれなりにありがながら関係性をうまくつくれる」ような構成を考えたという。敷地奥の1階にある賃貸スペースの前には「うしろにわ」がつくられている。内部は縦方向にずれながらつながっていたが、横方向でもずれつつつながる。笹沼邸設計北澤伸浩建築設計事務所所在地神奈川県横浜市構造木造規模地上2階延床面積159.6㎡(賃貸スペース含む)
2019年11月04日見事な眺望に一目惚れ横浜市の見晴らしの良い住宅街に建つKさん邸。今年の7月に竣工した家では、ご主人、奥さま、奏(かなで)ちゃん、季(みのり)ちゃんの4人家族が、新しい生活を楽しんでいる。「以前はマンション住まいだったのですが、僕も妻も戸建で育ってきたので、いつかは自分の家が欲しいよね、と話していました。子どもたちにとって思い出に残るような“実家”をつくってあげたいという想いもありましたね」(ご主人)。そして、土地探しを始めたご夫妻。すぐに良さそうな土地が見つかったが、いまいちピンと来なくて、しばらく保留にしていたと振り返る。「当初の候補になったのは、落ち着いた住宅地にあって、真四角で平坦で全面道路が広いところ。なんの不足もなかったけれど、なんだか面白味を感じなかったんです」(奥さま)。そんなある日、不動産屋さんに紹介されたのがこの土地だった。「旗竿地なのですが、突き当りの南東側が見事に開けていて、眺望が素晴らしいんです。すぐに気に入って、即決しました」と、ご主人は振り返る。家を建てるなら、「自由度の高い注文住宅に」と考えていたKさんご夫妻。設計は、IYs inc.(イノウエヨシムラスタジオ株式会社)の井上亮さんと吉村明さんに依頼した。「不動産屋さんに紹介していただいたのですが、スタイリッシュでユニークなデザインの事例が多くて、この方たちにお願いしたら、楽しい暮らしになりそうだなと思いました」(ご主人)。Kさん邸エントランス。旗竿地だが、奥は段差になっていて、南東に視線が抜ける。オリジナルの表札。長方形を対角線でくぎったデザインは、この家のプランとリンクしている。斜めの線が生み出すもの家づくりにあたってKさん夫妻が希望したのは、眺望を生かすこと、こもり感も併せ持つこと、そして床座でくつろげることだった。それを受けた井上さんと吉村さんは、実に50余りのプランを考案。Kさんご夫妻と話し合いを進める中でたどり着いたのが、「長方形の建物形状に対角線を引いて、そこでフロアを上下にずらず」というシンプルだがユニークな案だった。井上さん、吉村さんは、「対角線でできる段差が舞台のようになり、舞台の上に立つと一番良い方向の眺望が楽しめるようにしました」「丘陵地という周辺風景に合わせ、家の中にもリズムのある高低差をつくりました」と、その狙いを語る。さらに、斜線制限に応じて斜めにした屋根の形状も相まって、家の中は「低いところで1.3メートル、高いところで3.4メートル」という幅広い天井高に。大きく開いた南東の反対側は開口を控えめにしているので、開放感とこもり感がうまいこと両立している。一般的な四角い間取りとはかけ離れたこのアイデア。提案を受けたKさんご夫妻は、「どんな家になるんだろう」とワクワクドキドキしたという。「せっかく建築家さんに頼むなら、自分たちでは思いつかない発想を取り入れたいと思いました。あと、本当にたくさんのプランを提案していただく中で、だんだん普通じゃ物足りなくなってきたんです(笑)。訪れる人が『わあ!』って驚いて笑顔になってくれる家にしたいと思うようになりました」(奥さま)Kさん邸の初期のラフ模型。床と天井の斜めの線が生み出すオリジナルの空間がよくわかる。2階のリビング・ダイニングに上がったところ。低い方のフロアがダイニング、階段を3段上がった上がリビングになっている。さらに上がったところにはロフトを設けていて、家の中は4層に分かれる。南東側は一面に窓を設け、見事な眺望を楽しめるように。窓の下にはつくりつけた棚は、ベンチとして腰掛けることもできる。ダイニング側は白いクロス、リビング側はシナベニヤの天井とし、気分が自然と切り替わるようにした。リビングからロフトに上がる階段は、幅広でゆったりした雰囲気に。透かし階段にしたことで、視線の抜けを確保した。中央の壁は、「あった方が落ち着く」というご主人の要望で設けた。ダイニングの床はシカモアのフローリング、リビングの床は絨毯。リビングで床座でくつろぐのが、Kさん一家の団らんスタイル。ダイニングからリビングに上がる階段は可動式で、気分によって置き場所を変えられる。ロフトに上がる階段の奥には食材を保管する棚をつくり、空間を有効活用。ダイニングとリビングの段差によって1階からロフトまでがひとつながりの空間となっているが、全館の空気を循環させる換気システムを取り入れているので、高低差による温度差は解消されている。「眺望を楽しめる土地を選んで本当に良かった」とご主人。三角形のダイニングテーブルは、斜めを基調としたこの家の間取りに合わせて購入したもの。感性を刺激する空間一方の1階は、空間を対角線上で区切って壁を設置。できた三角形の片方はコンクリート打ちっ放しのギャラリーのようなスペースにして、家族4人が使える衣類の収納棚を造りつけた。もう片方は閉じた空間とし、寝室、洗面、風呂、トイレを納めてある。奥さまは、「一見奇抜ですが、着替えやタオルを用意してお風呂に入る、帰ってきて上着をハンガーにかけて手を洗う、と入った流れがとてもスムーズで、考え抜かれた動線だなあと感じます」と頷く。Kさん一家がこの家に暮らし始めて数ヶ月。「この家はとにかく移動が楽しい。空間にメリハリがあるので、ちょっと歩くたびに気分が変わるんです」と話すご主人に「対角線って長辺よりも長いので、広く伸びやかに感じるんです。『斜め』をぜひ皆さんに進めたいです!」と続ける奥さま。4歳の奏ちゃんは元気いっぱいに家中を歩きまわり、一番高いロフトスペースと、1階の三角形の端の鋭角な部分がお気に入りだという。「子どもたちは高低差が楽しいらしくて、1歳の季もロフトに上がるとニコニコしています。この家が子どもたちの好奇心をどう育んで行くのか、かなり楽しみですね」と微笑むご夫妻に、IYs inc.のお二人は、「自然の中のようにいろいろな角度や高さがあると、普通の四角いお家とは体感の幅が違うので、感性は刺激されると思いますよ」と頷く。玄関を入ると、コンクリート打ちっ放しの空間。右のカーテンの中はたっぷりの収納、左の壁の向こうは寝室や水回りになっている。「1階はあえて家っぽくないギャラリーのような空間にしました」と井上さん。2階に上がる階段。階段から上は1階とは雰囲気が一転し、木の温もりを感じる空間になっている。玄関の脇にはシューズインクロークをつくったので、玄関周りはいつもスッキリ。造りつけの収納は棚の高さを自由に変えられるので、しまいたいものやお子さんの成長によってフレキシブルに使える。広々とした洗面スペース。洗濯機の周りは囲って、スッキリした印象に。メンテナンス時などは囲いを外すこともできる。お気に入りの「鋭角」にはまる奏ちゃん。「お風呂上がりに姿が見えないなあと思ったら、よくはまっています。もうおかしくて(笑)」と奥さま。階段下はトイレにして、スペースを有効活用。新しい挑戦がつくった家普通の「四角い家」の概念を打ち破り、ユニークなだけではなく住み心地も抜群な家をつくりあげたIYs inc.のお二人。「Kさん邸を手がけられたことは、僕らにとっても発見の連続でした」と振り返る。しかし、施工面では苦労も多く、複雑な形状の施工を狂いなくおさめられたのは、熟練の大工さんの腕に頼る部分が大きかったという。「普段からお世話になっている大工さんに頼んだのですが、『こんなに難しいのは初めて。勉強になったよ!』」と言われました。設計者にとっても施工者にとっても、新たな挑戦となるお家だったので、今のKさん一家の楽しそうな暮らしぶりを拝見すると、とてもうれしく思いますね」(井上さん)。この家とともに、家族の時間を重ねていくKさん一家。お子さんの成長とともに、この家は新たな過ごし方やお気に入りの居場所を与えてくれそうだ。モールテックスというモルタルで造作したキッチンカウンター。奥さまが選んだ明るいベージュが、温かみのある雰囲気をつくっている。ロフトの壁と天井の収まりは「職人技の結晶」と吉村さん。飾られていたのは、奏ちゃんが生まれたときの大きさを記録したスケッチ。南東側から見たKさん邸。バルコニーの手すりはよく見ると上に行くほどピッチが広くなっていて、デザインへのこだわりが感じられる。Kさん邸設計IYs inc.(イノウエヨシムラスタジオ株式会社)施工坂牧工務店所在地神奈川県横浜市構造木造規模地上2階建延床面積約110㎡
2019年09月25日妻が育った場所に住む富安朝海さんが生まれ育った土地に建てた一戸建て。「キッチンの場所が、私の以前の部屋と同じ場所なんです。キッチンに立っていると不思議な感じがします」旗竿敷地なので以前の建物は日当たりが悪かった。なので、新しく建てる家は、光をたっぷり差し込む明るい家にしたい、というのが希望だったそうだ。キッチンには大きな天窓を設け、3階までの吹き抜けの階段室は、1階まで光が届く。ここが旗竿敷地だとは思えない気持ちのよい光と風が満ちている。設計はHOUSE TRADにお願いした。「打ち合わせにお伺いしたら、以前の勤務先で店舗の内装をお願いしたことがあったとわかりました。大まかな希望を伝えると、イメージ通りのものを作っていただいたので、お願いして良かったです」と良明さん。「キッチンの天窓はこんな感じのものにしたいねと夫と話していたら、ズバリなイメージのものを提案していただいたのには驚きました」と朝海さん。白の壁と木目に、1階はグレー、2階は淡いブルーをアクセントカラーに加え、モダンでシックなウェストコーストの家が完成した。リビングはツヤ感のあるフローリング、キッチンはPタイルを採用。良明さん、朝海さん、3歳の凛ちゃん、1歳の紗々ちゃんの4人家族。ソファはHOUSE TRADのオリジナル。生地を外して洗えるので、小さい子どもがいる家庭でも安心。アメリカンダイナーのようなダイニングテーブル。フィフティーズっぽいベンチシートが、コンパネにペイントした壁の味わいにしっくりとハマる。「時間が経つにつれてコンパネの地色が浮いてきて、どんどんいい味になってきました」階段の手すりはエキスパンドメタル。「子どもが小さいので手すりにはネットが必要だと思っていたのですが、いっそのこと、最初からエキスパンドメタルにすればいいのでは?と考えを変えました」ウッドのキャビネットの中にダイニングスペースがある。ソファのブルーとキッチンのタイルのブルーが、白とウッドの空間に映える。大きな吹き抜けの天窓から明るい光が差し込むキッチン。カウンターは防水効果の高いモールテックスで仕上げている。釉薬のかかった淡いターコイズ・ブルーのタイルが美しい。段差とキャビネットで空間を分ける「階段に座るのが好き、と伝えると、キッチンとダイニングを2段の階段でゆるやかに空間をわけてくれました」キャビネットの向こうには、ベンチシートのダイニングが隠れている。「ベンチシートのダイニングも希望したもののひとつです。アメリカンな感じになりすぎない、イメージしていたものよりはるかにいい感じのものになりました」ダイニングがキャビネットでゆるやかに目隠しされることで、ソファスペースがよりくつろげる空間になる。「子どもがもう少し大きくなったら、ダイニングで宿題などをするようになるのかなと想像しています。なので、なるべく広いベンチシートにしてもらいました」エキスパンドメタルを使い、アパレルショップのようなウォークインクローゼットを作った。「服が多いので、大きな収納はマストでした」3階はメインベッドルーム。パシフィックファニチャーサービスのベッドを2台合わせてゆったりと。「ここを子供部屋にすることも考えて、将来的に壁で仕切ることができるようにしてもらいました」1階のベッドルームには、ベンチシートとデスクを造作してもらった。子どもと共に成長する家富安邸は、エキスパンドメタルを効果的に使っているのも特徴のひとつ。子どもが小さなうちは階段からの落下を防ぐためにネットをはることが多いが、それならば最初からエキスパンドメタルにしようという発想の転換で、階段の手すりにエキスパンドメタルを採用。そして、アパレル会社に勤めていた良明さんは服の量もかなり多い。ウォークインクローゼットは、扉にエキスパンドメタルを使ってショップ風にアレンジした。1階のバスルームは白のメトロタイル、白のルーバーの扉を使い、大きな窓から差し込む光が白い空間に満ちてとても明るい。1階のベッドルームを夫婦の寝室にして、3階を子供部屋にする計画もあるそうだ。2階のベンチシートのダイニングスペースで子どもたちが勉強するようになると、リビングとキッチンの関係性も変わっていきそうだ。子どもの成長とともに家がどんなふうに変わっていくのか、これから先が楽しみだ。洗面所はメトロタイルを採用。ベッドルームへと回遊できる動線になっている。1階のバスルームも気持ちの良い光がたっぷりと差し込む。洗面台はモールテックス。ルーバーの収納扉とドアには真鍮の把手を。階段室は2階まで吹き抜けになっている。エキスパンドメタル越しに光が1階まで差し込む。1階から2階の階段はカーペット敷き。白と木目+グレーの組み合わせが西海岸を感じさせる家にシックな落ち着きをプラス。ガラスブロックから明るい光が差し込む広々とした1階エントランス。グレーのカーペットと、大判のグレーのタイルの組み合わせ。(建築家クレジット)富安邸設計HOUSETRAD所在地神奈川県川崎市構造木造規模地上3階
2019年08月28日財産を相続する際に、遺族間で揉めてしまう場合があります。子どもの1人が実家の敷地に住宅を建てている場合は特にその可能性が高くなります。相続で揉めないために、親が元気なうちにやっておくことがあります。父親:死亡母親:実家の敷地の土地所有者子どもA:実家の敷地に自分名義で家を建てた、かつ母親の財産を2分の1ずつ均等に相続する権利を有する子どもB:母親の財産を2分の1ずつ均等に相続する権利を有するという場合どんなことをすれば、トラブルを未然に防ぐことができるか考えてみましょう。■ 1.なぜトラブルが起こるのかmidori / PIXTA(ピクスタ)両親のうちの片方が亡くなる「一次相続」で、生存している母親が土地を相続する場合は、子ども同士のトラブルは起こりませんが、その後、母親が亡くなったときの「二次相続」で、遺産分割を巡り兄弟姉妹間のトラブルに発展する可能性があります。Aは母親名義であった土地に家を建てているので、土地を自分名義にしたいと思うのが自然ですが、母親の相続財産が土地しかないとき、法定相続に従うと土地はAとBの共有名義になります。土地を子どもAとBが共有する形で相続すると、やがて困ったことが起こります。子どもAにとっては、自分の家が建っている土地を自由にできません。子どもBにとっても、土地を売却して換金するにはAの承諾が必要ですし、そもそもAの家が建っている土地に買い手は現れないでしょう。Bにとって固定資産税がかかるだけの不要な財産となってしまいます。■ 2.トラブル回避のための予防策はhoriphoto / PIXTA(ピクスタ)トラブル回避のためには、母親が元気なうちに行動を起こす必要があります。親が亡くなったとき、兄弟姉妹間のトラブルがなく、円滑に遺産分割が進み、遺族が納得して相続する方法について、生前に親が子どもに提案するのがベストです。親の意識が足りない場合は子どものほうから働きかけましょう。2-1 事前に母親から子どもA、Bに意思を伝えるbee / PIXTA(ピクスタ)事前の親子間の合意形成をすれば、トラブルを未然に防げます。母親から、AとBに対して、事前に「家を建てているAに、将来自分の土地を相続させたい」という自分の考えを明確に伝え、互いに納得してもらいましょう。AとBには母親の財産を均等に相続する権利があるものの、相続時に当事者間で合意できれば、実際にはどのような分け方をしても構わないからです。しかし、生前の合意には法的拘束力がありません。実際に母親が亡くなった後に、Bが自分の権利を主張しはじめた場合は、トラブルになります。2-2子どもBに土地と同じ価値の財産を準備するAとBには、母親の財産を2分の1ずつ均等に相続する権利があるため、AとBに相続させる財産をあらかじめ特定しておく方法があります。そのために、母親は生前に遺言を書いておくべきです。Aに相続させたい土地の価値と同様の財産をBが相続できるように遺言に書いておくのです。2-3母親が遺言で子どもBの相続する権利を縮小させるテラス / PIXTA(ピクスタ)Aに相続させたい土地の価値と同等の財産を、Bに準備できない場合でも、母親が遺言を書けば、Aが土地を相続できる権利を取得させることはできます。しかし、「遺留分」という法律のために権利をまったくなくすことはできません。この家族構成の場合、Bの遺留分は母親の財産の4分の1となります。そのため母親が、最低限全財産の4分の1を子どもBに相続させ、土地1,000万円を含めその他の財産をAに相続させる内容の遺言を書けば、土地を確実にAに渡すことができます。ただし、母親が亡くなったあとのAとBの関係が悪化する可能性があることは否めません。2-4どの方法でも話がまとまらない場合は、代償分割を母親が亡くなった後、AとBが協議をして、代償分割という方法を使えば、Aが土地を相続することが可能です。代償分割とは、相続人のうちの一人または数人が不動産などの現物の資産を相続し、他の相続人に代償金(または代償財産)を支払うことで遺産を分け合う方法です。たとえば、1,000万円の土地をAが相続し、あとでAからBに500万円の代償金を支払います。こうすることで、結果的にはAとBが公平に相続したことになります。母親が元気なうちに話がまとまらない場合はこの方法を選択するのもよいでしょう。■ 3.まとめpixelcat / PIXTA(ピクスタ)土地を取得するための費用がかからないと、実家の敷地に住宅を建てる人は将来的に兄弟と揉める可能性があります。親が元気なうちは、土地を親から無償で借りる形になり、問題はありませんが、親が死亡した後にトラブルが起きる可能性があります。残された子どもたちにわだかまりが残らないように、家族全員で相続について話し合うようにすることをおすすめします。宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー(AFP)/家族信託コーディネーター吉井希宥美
2019年08月10日子どもメインの家づくり鈴木邸が建つのは目黒区にある旗竿敷地。竿の部分の先に見えるその姿は他では見たことのないものだ。妻側の壁面がそのまま扉のように外へと向かって開いているように見えるのだ。奥さんとニジアーキテクツの谷口さんが保育園のママ友だったところから設計をお願いすることになったという鈴木夫妻。リクエストとして伝えたのは「リビングは明るく、また人が呼べる空間に」「キッチンから階の全体が見渡せるように」「お風呂は広く掃除がしやすく」などだったが、ともに幼い2人の子どもの親であることから、子どもを中心にした家づくりになったのは自然な流れだった。「リクエストとしてお伝えはしませんでしたが、子どもメインで考えていました。設計サイドでも子ども目線で考えてくれて、子どもが伸び伸びと遊べる空間もつくっていただきました」と鈴木さん。旗竿敷地の竿の先の部分に壁を外へと向けて開いたようなエントランスがつくられている。階段を上がって左側に玄関がある。半地下をつくって広く明るく「お2人の人柄をよく知っていたのでイメージはしやすかった」と話すのは谷口さん。夫で設計事務所を共同主宰する原田さんとまず考えたのは、半地下の部屋をつくって最上階の2階を明るく広い空間にすることだった。「3階建てにするとどうしても北側斜線の制限から3階が窮屈になってしまう。それだったら建物を少し沈めて最上階を思いきりゆったりした空間にしようと考えた」(原田さん)という。1層を完全に地下に埋めると工事費がかさむので、大きな影響の出ない範囲内に収めるため1.5mほど沈めることに。2階のベランダ。左がリビングで右が外側へと開いた袖壁。2階リビング。左の袖壁からの反射光が室内へと入る。このように開口を開けると袖壁の部分までリビングが延長したように感じられる。横幅いっぱいの大開口をつくれたのはこの袖壁のおかげ。構造的にも防火の上でも役立っている。多用途な袖壁これで2層分に近い高さとなった2階部分は、扉のように開いた部分につくったベランダがリビングが延長しているように感じられることとも相まって実際の床面積以上に広く感じられることに。このベランダはまたコンパクトな敷地で子どもたちが走り回れる場所を確保することにもつながっている。旗竿敷地にもかかわらず十分な明るさを確保できたのは三角屋根に設けたトップライトの存在もあるが、妻側に袖壁をつくったことも大きい。2階リビングの大開口が可能になったのはこの外側に開いたように見える袖壁があるおかげなのだ。構造と防火面でも役立っているほか、この袖壁は周囲から家族のプライバシーも守っている。1階も同様で、玄関扉にガラスを使えたのも寝室の開口を壁の横幅いっぱいに開けられたのもこの袖壁が隣家との間にあるからだ。南側に設けたトップライトから光が室内へと降り注ぐ。テレビの上の壁面前にはロフトスペースがつくられている。キッチン部分の壁の高さは1.2m。リビングに座っている人からは調理している手元が見えない高さという。玄関を入って左側に寝室、その奥に浴室がある。浴室はリクエスト通り「広く、かつ掃除がしやすい」ものになったという。階段は段板の裏にリブを設けずすっきりとしたデザインに。リブのかわりに蹴込みの部分に板を渡して補強している。玄関前から敷地の竿の部分を見る。右の寝室部分の開口は壁の横幅いっぱいに開けられている。寝室前から階段を見る。一筆書きのように続く手すりが美しい曲線を描いている。将来は子ども部屋として使う予定の半地下の空間。上のお子さんはこの半地下の空間が家の中で一番のお気に入り。朝起きるとすぐ「地下に行きたい」と言うほどという。大人も満足設計サイドでは夏場に2階の大開口を開け放しにしてベランダで子どもたちが水遊びをすることも想定したという。去年は「たらいみたいなものをベランダに出したら“キャッキャキャッキャ”と言いながらみんなで走り回って」(奥さん)と想定通りの展開になったそうだ。夫妻の希望であった「子どもメインの家」になったが、もちろん大人も満足させる空間となっているようだ。「リビングを子どもが大きくなってもみんなが集まれる空間にしてほしいというのは設計の途中でお伝えしたんですが、今まさにわれわれ大人もここにほとんどいるような感じになっています」(鈴木さん)奥さんの自慢はトップライトという。「朝起きて2階に上がると、天気のいい日はパーッと光がきれいに通って、夜は夜でお月様がきれいに見えるんです」。「初夏とかは、冷房を付けないでもここ(大開口)とトップライトを開けると風が抜けて」とても気持ちよく過ごせるのだという。「土地を最初に見に来た時にわれわれが共通して抱いたのは、竿の部分から渦を巻くようにして上昇していくイメージでした。それを空間としてつくれたと思っています」と話す原田さん。渦の終着点はリビングの家族の座るあたり。鈴木邸設計ニジアーキテクツ所在地東京都目黒区構造木造+一部RC造規模地上2階地下1階延床面積64㎡
2019年02月13日神奈川・箱根のポーラ美術館では、2018年8月25日(土)・26日(日)の1泊2日で、美術館敷地内の森にてキャンプ宿泊が体験できるアウトドアイベント「FOREST MUSEUM 2018」を開催する。イベント当日は、テントを持参する必要なく、自然あふれる富士箱根伊豆国立公園の中でキャンプ形式での宿泊が可能。夜の森では、野外映画フェス「夜空と交差する森の映画祭」を手がけるサトウダイスケのセレクトによる映画上映も行われる。また、閉館後の美術館は貸し切りに。美術を身近に楽しめるものにするために活動しているアートテラー・とに〜、企画展「ルドンひらかれた夢」の担当学芸員によるトークイベントも開催される。箱根ならではのグルメが楽しめるのも、本イベントならではのポイントだ。夕食はポーラ美術館・レストラン「アレイ」にてブッフェを、朝食は箱根の老舗・富士屋ホテルの焼きたてパンとスープを提供してくれる。さらに「森のCafé&Bar」では、コーヒー専門店・豆工房コーヒーロースト、小田原の老舗・鈴廣かまぼこによる拘りのコーヒーや地ビールなども味わえる。野鳥のさずりを聞きながら読書出来る「森の図書館」の設置、イベント参加者へのお土産として箱根湯本の「箱根湯寮」日帰り温泉の入浴券&ポーラのアメニティが付属するなど、美術館・自然・箱根の魅力が詰まったイベントとなっている。【開催概要】「FOREST MUSEUM 2018」開催日:2018年8月25日(土)・26日(日)の1泊2日会場:ポーラ美術館 森の遊歩道(神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285)集合時間:25日14:00(解散予定時間:26日10:00)申込期間:6月15日(金) 10:00〜7月7日(土) ※抽選制※抽選の当落結果は7月10日前後にPeatix経由にて通知。申込方法:Peatixより(※6/15 10:00より公開参加人数:限定20組(最低催行人数30名)参加費:1人 23,000円(税込)参加費に含まれるもの:朝・夕の計2食、寝袋・シュラフマット以外のキャンプ用品使用料(テント、マット、ランタン、イス等)、25日・26日の入館料(3,600円相当)、箱根湯寮利用料(1,400円相当)、各イベント費、国内旅行保険料。※寝袋・シュラフマットの別途レンタル可。レンタル料:寝袋 2,000円/シュラフマット 1,500円参加要件:1組2名以上での申し込み。1テントあたり4名まで可。※未成年の場合は保護者同伴。※未就学児不可。※健康であること、イベントのスムーズな進行に協力出来ること。※保険申請のために名前・生年月日・性別の申告が必要。<イベントスケジュール>■8月25日(土)・1日目14:00~15:00 受付・ガイダンス15:00~17:00 森のCaféオープン、ハンモックワークショップ(自由参加)、自由時間17:00~18:00「ルドン ひらかれた夢」展・ギャラリートーク18:30~20:00 夕食(レストラン「アレイ」にて)、順次自由時間、森のBarオープン20:30~21:30 野外映画上映23:00 消灯、テント内就寝■8月26日(日)・2日目7:00~ 森のCaféオープン8:00~ 朝食10:00 解散、各自で箱根湯寮へ
2018年05月14日先日、友人のバースデーをお祝いするために、Wホテルの敷地内にある素敵なレストランに行って来ました!コロニアルな建物が目を引くレストラン「The house on Sathorn」色合いがとっても可愛らしいコロニアル建築は、なんと築126年。BTSサトーン駅からも少し見えるので、この建物を見かけたことがある方も多いはずです。店内は落ち着いた空間で、中庭ではアフタヌーンティーが楽しめます。ランチコースは2種類ランチコースは、前菜+メイン+デザートの中から2種選ぶことのできる「2コース」(720バーツ=約2,400円※税金、サービス料別)、と3種選ぶことのできる「3コース」(920バーツ=約3,000円※税金、サービス料別)の2つ。私達は3コースにしました。前菜は3種あり、今回選んだのは蟹のカッペリーニパスタ(写真右)。キャビアがのっていて、塩味であっさりめ。蟹肉もたっぷりです。メインは、お魚とお肉、ベジタリアン対応の3種類が用意されています。メインの魚料理は銀ダラのグリル(写真左)。銀ダラの下にトマトやズッキーニが重なっていてヨーグルトソースでかなりボリュームがあります。メインの肉料理は、ラム肉。(写真右)串焼きになっているのが面白い!柔らかくてジューシーで、付いているタレはかなりスパイシー。デザートは2種の中から選びます。珍しい柿を使ったデザート(写真左)も!柿のムースは、濃厚な甘さでボリュームがありました。ココナッツ味のプリン(写真右)の中にはジャスミンライスが入っていました!カオニャオマムアン(マンゴーとタイ米のデザート)が食べられる人なら、美味しいと思うはず。私は好きでしたよ!コースの最後には、コーヒーもしくは紅茶がついてきます。私はラテにしてもらいました!料理は、見た目も素敵で味も美味しく、店内・中庭は撮影スポットが満載!女子にはたまらないレストランです!!
2016年02月07日