ボーイングは3月10日、最新鋭航空機777X型機向けのプライマリー・フライト・コントロール・アクチュエーション・システムの供給について、日本のパートナーであるナブテスコと合意したことを発表した。アクチュエーターは、主翼の補助翼や尾翼の昇降舵などの舵面を動かして飛行中の機体の姿勢を制御する航空機システムの重要な部品。ナブテスコは現行の777プログラムでも、フライト・コントロール・アクチュエーター4種をボーイングに供給している。今回の新たな契約によって、ナブテスコはスポイラーを含む全舵面、計8種のアクチュエーターを供給することになり、その業務範囲がおよそ2倍に増加する。ボーイング ジャパン社長のジョージ マフェオ氏は「ナブテスコは、40年近くにわたりボーイングの傑出したパートナーであり続けています。今回の合意により、今後数十年続く新型航空機777Xの製造を、これまで以上の業務範囲でサポートいただけることをうれしく思っています」とコメントしている。ボーイングはナブテスコのパフォーマンスへの評価として、2014年には合計2万1,000社以上の中から「2013 Boeing Supplier of the Year」にも選出しており、マフェオ氏も「ボーイングはナブテスコの777Xも含めた今後のコミットメントとパートナーシップに感謝しています」と言う。ナブテスコの航空宇宙カンパニー社長の長田信隆氏は、「今回、ボーイングに777Xのパートナー企業として選定していただき非常に光栄です。777Xは現行の777同様、将来ベストセラー機になると確信しております。そのような重要プログラムにおいて重責を担えることを誇りに思います」とコメントしている。新たに777ファミリーとなる777Xには、777-8Xと777-9Xの2種があり、それぞれ市場のニーズと航空会社の要望に応えるように設計されている。777Xの設計は現在も進行中で、これまでに航空会社6社から300機の受注・発注コミットメントを獲得している。なお、生産開始は2017年、初回納入は2020年を予定している。
2015年03月10日エアバス(本社: 仏トゥールーズ)は現地時間の3月9日、米ロサンゼルスを拠点とする航空機リース会社のエア・リース・コーポレーション(ALC)がA330-900neoを25機とA321LRを30機、合計55機を正式発注したことを発表した。A321LRはA320neoファミリーの派生機で、A321neoの最大離陸重量を97tに増加させたタイプ。ALCは2014年のファーンボロ航空ショーにて、ローンチされた新型エンジンを搭載する広胴型機A330neoファミリーに対して最初に発注意向を表明しており、A321LRのローンチカスタマーでもある。A321LRの発注覚書は2015年1月に締結され、2014年にA321neoを60機発注し、A321neoに対する合計発注数は90機に増加した。今回確定発注した30機のA321neoと25機のA330neoを合わせると、ALCのエアバス機に対する合計発注数は258機になる(A320ceoが53機、A320neoファミリーが140機、A330ファミリーが15機、A350 XWBファミリーが25機、A330neoファミリーが25機)。A321neoの最大離陸重量を97tに増加させた派生機であるA321LRは、航続距離が4,000海里(7,408km)に延長される。これは単通路型機の中で最長の航続距離で、大西洋横断路線での運航に最適な機体となる。これにより、航空会社は従来の単通路型機では実現できなかった新たな長距離路線市場開拓も可能。快適な2クラス制の客室に206席を装備する。初号機の引き渡しは2019年に開始される予定。A330-800neoとA330-900neoは、エアバスのワイドボディ機ファミリーの新型派生機。2014年7月にローンチされ、初号機の引き渡しは2017年第4四半期(10月~12月)の予定。ロールス・ロイス社製新型エンジンのトレント7000エンジンを装備する。また、空力性能を強化して客室装備も改良する。A330neoは、A330ファミリーの経済性と柔軟性、高い信頼性を受け継ぎ、座席あたりの燃費を14%削減する。中距離用ワイドボディ機市場において最もコスト効率の優れた航空機となる。大幅な燃費削減のほか、最大400海里(740.8km)航続距離が延長され、他のエアバス機ファミリーとの運航共通性を保持する。
2015年03月10日トプコンは2月24日、ドローンなどのUAS(Unmanned Aerial Systems=無人航空機システム)で撮影された画像から広範囲の3点地形モデルを作成することができる3D画像計測統合ソフトウェア「Image Master UAS」を発売すると発表した。同製品は新開発の画像解析エンジンにより、UASに搭載されたデジタルカメラの画像を自動で評定することができるため、簡単に大量の空撮画像から詳細な3D点群データを作成できる。また、算出した3D点群データをもとに、TIN作成、等高線作成、体積計算などの機能を用いて各種応用計算も可能だ。また、撮影間隔や飛行速度、地上分解能など空撮計画の策定に必要な撮影条件を計算するソフトウェアと、現場で撮影した画像の良否判定が即座に行えるソフトウェアが付随している。標準価格は新規単体パッケージで86万4000円。
2015年02月24日JALグループでは3月3日のひなまつりに、7回目となる「ひなまつりフライト」を実施する。当日は航空機の運航に携わる様々な職場で働く女性社員が出発前の搭乗口に集まり、乗客を見送りする。フライトは羽田10:05発・長崎12:05着で、機長や副操縦士とともに、女性運航乗務員が担当。また、出発前の整備(※)や貨物、機内食搭載も女性社員が実施する。※女性の有資格者がいなため、最終整備確認サインは男性社員が行う
2015年02月17日世界を代表する航空機メーカーであるボーイングとエアバス。2013年の売上高はボーイングが530億ドル(6兆2,833億円)、エアバスが420億1,200万ユーロ(5兆7,618億円)。ほぼ互角の勝負を長年にわたって続けている両社である。ただ、1970年代から2014年までジャンボジェット(747型機)が国内線に就航し、2011年にはANAが最新型機の787を世界で初めて就航させるなど、日本では長い間、ボーイング機の存在感が大きかった。実際、ANAもJALも主力機はボーイング機が占めていた。ところがここ数年、日本におけるエアバスの存在感が増している。○JALがエアバス最新機・A350XWBを大量発注日本におけるエアバスの戦略で強いインパクトを与えたのが、2013年10月のJALによるエアバスA350XWB(エクストラ・ワイド・ボディ)の大量発注だ。2014年11月には同機のテストフライトが日本(羽田)でも実施されたが、これはJALが発注したからだった。また、世界の先端を行くサービスで知られるシンガポール航空やエミレーツが運航する総2階建てのエアバスA380も旅行者の話題の的。さらには国内で便数を増やす低コスト航空会社(LCC)の多くがA320を使っていることも、日本でエアバスが知名度を上げている理由のひとつだろう。○ヨーロッパの威信をかけた航空機メーカーしかし、エアバスの歴史はボーイングに比べると約60年も浅い。エアバスの旅客機が初めて就航したのは1974年のこと。それまではボーイング、それにロッキードやマクドネル・ダグラス(後に両社はボーイングに吸収・合併)といったアメリカ勢が、民間機の世界を席巻していた。エアバスの歴史は1970年に設立されたエアバス・インダストリーに始まる。同社はフランス、西ドイツ(当時)、イギリス(後に撤退しスペインが参加)によってヨーロッパの威信をかけて設立されたが、最初はさっぱりと言えるほど売れず、1976年頃までは生産が受注を先行していた。航空機はオーダーメイド生産だから、つまるところ、工場が"開店休業状態"というありさまだったのだ。○命運をかけた前代未聞の戦略しかし、エアバスは思い切った戦略に出て、これが見事に成功する。敵地アメリカの航空会社であるイースタン航空にセールスをかけたのだ。内容は、当時エアバスが1機種だけ展開していたA300というワイドボディ(2通路機)を半年の間、無償で使ってもらうというもの。しかも、30機もという前代未聞の好条件を提示した。加えて、エアバスは試用期間の整備費や運航証明取得手続きの費用を負担し、さらには自社のリスクでイースタン航空への金融機関からの融資の手配までしたという(※)。実は当時、イースタン航空は経営状態が芳しくなかった。そこにエアバスは目をつけて攻勢をかけたのだ。結果、エアバスは31機(オプション9機含む)の受注に成功する。数百円や数千円の製品ならばそうした商法も見かけるが、1機あたり数百億円というケタ違いな旅客機の世界ではまさに前代未聞の手段である。○優れた旅客機で高い評価を得るしかし、この成功は大胆な販売戦略だけがもたらしたものではなかった。性能が悪ければ売れない。その点で、エアバスが売り込んだA300はほとんどトラブルなく運航されたのだ。それが、エアバスという航空機メーカーの高い信頼性をヨーロッパ外に広めるという相乗効果をもたらしたのだった。その後、ナロウボディ(単通路機)のA320を開発した際に、同社の努力が花開く。A320は1987年の初飛行の時点で約400機もの受注を集め、これを機にエアバスはボーイングのライバルとして認められる存在となった。○A320で一気にボーイングのライバルにA320はLCCだけでなく、レガシーキャリア(大手)の大型機を飛ばすには需要が足りない路線にもマッチした。A318、A319、A321(数字が大きいほど機体が長く座席数が多い)といったファミリー機が次々に造られ、最大離陸重量(乗客+貨物+燃料の重さ)を増加し航続距離をファミリー機最長の7,408kmまで延長させたA321neoもつい最近ローンチされるなど、いまだに売れ続けている。その受注数は1万1,514機(2014年12月末時点)と、"300~500機が採算ライン"と言われる旅客機事業で驚異的な数字に達している。なお、A320シリーズの標準座席数は107~185席で、ボーイングの737シリーズの競合機だが、737の初飛行は1967年とA320より20年も早い。しかし、すでにA320シリーズの総受注機数は737に肉薄している状態だ。また、エアバス機全体の「2014年末の受注機残数は航空史上最大の6,386機に上る」(同社)という。かつてアメリカ勢の独壇場だった本国に攻勢をかけ、最近ではボーイングの牙城だった日本の旅客機市場にくい込み始めたエアバス。トータルの受注機数は歴史の長いボーイングがまだまだ上だが、近年のエアバスの勢いには目を見張るものがある。もちろん一方のボーイングも負けてはいないわけで、両社の競争により良質な旅客機が開発され続けるなら旅行者としては楽しみが増すばかりだ。※参考文献『新・航空事業論』(井上泰日子著・日本評論社刊)
2015年02月17日他の交通機関と比較すると、民間航空の運賃は複雑怪奇に見える。単に「A空港とB空港の間の路線ならいくら」とシンプルに決まっているわけではなくて、購入のタイミングや時期・時間帯によって異なる割引の設定があるためだ。○需要が少なければ安くなるこれを好意的に書けば「飛行機の運賃は弾力性がある」という話になる。購入後の変更に制約が加わる等のリスクを許容する代わりに早期購入によって安くできるとか(エアラインの側から見ると、早めに売り上げと席数を確保できることになると思われる)、需要が少ない時期・時間帯のフライトを安くして需要喚起を図るとかいう話になる。飛行機でも鉄道でもバスでも、定期運送事業を行う場合、供給可能な席数は先に決まってしまうから、後はそれをどこまで埋めるかという問題になる。空席のままでも満席でも運行経費にべらぼうな差はないだろうから、安売りしても空席を埋める方が売り上げは増える、というのが基本的な考え方になるのだろうか。それに、同じ路線で複数のエアラインが競合している場合、競合路線の動向も問題になる。同じ路線で同じ時間帯のフライトなのに、自社の方が高い運賃を設定してしまったら、ライバル社に乗客が流れるかもしれない。となると、ライバル社の動向も横目に見ながら運賃を決めなければならない。実際、競合社のフライトがある場面で、需要ベースというより戦術的見地から値下げを仕掛けたと思われる事例は存在するように思う。といっても、安売りの度が過ぎれば売り上げに響くから、どこでバランスをとるかという問題になる。すると、過去の実績に基づく需要予測がカギを握ることになる。人力で経験とカンに頼って数字を出してもよいが、コンピュータによるデータ解析の方が迅速かつ正確になると期待できる。面白いことに、異なるエアラインの間で割引後の運賃が同じような水準に落ち着いてしまうことがある。どこの会社も同じような需要予測とロジックに基づいて運賃の割引幅を決定している結果なのか、それともライバルの動向を考慮に入れながら割引幅を決定した結果なのか。おそらく、その両方があるのではないだろうか。航空機の話から脱線するが、最近の新幹線では列車種別ごとに停車駅を一律に決めないで、列車ごとに停車駅を変えながら割り振っていくことが多い。これも過去の実績や需要予測に基づき、最小限の運転本数で最大限の効果を追求することの現れといえる。それはそれとして。○オーバーブッキングもうひとつ、過去の実績や需要予測がモノをいう場面がある。それが「意図的なオーバーブッキング」。前述したように、できるだけ空席は少ない方がいい。ところが、ちょうどいっぱいいっぱいになるように予約を受けていても、実際には空港に来ない人がいたり、土壇場でキャンセルする人がいたりするものであるらしい。筆者はそういうことをやった経験はないが。そこで、その手のドタキャンが発生することを見込んで、意図的に定員より多くの予約を受けることがある。それが意図的なオーバーブッキング。どれぐらい上乗せするかは、過去の実績に基づいて予測・決定するわけだ。その予測が的中すれば、過不足のない、ちょうど満員(ないしはそれに近い)乗客を乗せて飛ぶことになる。ドタキャンが予測より多ければ、いくらか空席ができる。空席ができないに越したことはないが、逆の場合よりはマシだ。逆の場合、つまりドタキャンが予測よりも少なかった場合にはどうなるか。ドタキャンを見込んでオーバーブッキングした席数が、実際に使える席数より多くなってしまうわけだから、あぶれる乗客が出る。すると、「○便をご利用のお客様の中で、後続の便に振り替えていただける方はいらっしゃいませんか?」などと放送して、志願者を募ることになる。当然、その際にはなにがしかの見返りを用意しなければならないだろうから、経済的には一種のロスが発生することになる。つまり、意図的なオーバーブッキングは必要だが、どこまで精確に予測するかが問題になる。ドタキャンの数を多く見積もりすぎて、あぶれる乗客が出る事態はできるだけ避けたい。そこで予測の精度がモノをいうし、そこで使用するコンピュータ・プログラム(正確にいえば、そこで用いる予測ロジック)の出来・不出来が問題になるわけだ。エアライン同士の競争が激しい昨今、運賃設定にしろオーバーブッキングにしろ、ギリギリの線を追求しなければならいだろうから、担当者は毎日、胃が痛む思いをしているものなのかもしれない。なお、意図的なオーバーブッキングだけでなく、トラブルが出た機材がシップチェンジになった結果として定員が減ってしまい、それで「振り替え志願者」を募るケースもあるとかないとか。しかし、これはコンピュータによる需要予測とはまるで次元の違う問題だから、本稿のテーマからは外れてしまう。○執筆者紹介井上孝司IT分野から鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野に進出して著述活動を展開中のテクニカルライター。マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。「戦うコンピュータ2011」(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナビニュースに加えて「軍事研究」「丸」「Jwings」「エアワールド」「新幹線EX」などに寄稿しているほか、最新刊「現代ミリタリー・ロジスティクス入門」(潮書房光人社)がある。
2015年02月16日●日本の航空機産業発展に向けたプロジェクトがスタート小型旅客機「MRJ」や先進技術実証機(ATD-X)の初飛行、そしてホンダジェットの納入開始など、2015年は日本の航空機産業にとって大きなニュースが目白押しだ。そしてさらに、将来の航空機にとって必要不可欠な新しい技術の研究が日本で始まることとなった。宇宙航空研究開発機構(JAXA)航空本部は2月10日、2つの新しいプロジェクトを今年1月に立ち上げたと発表した。ひとつは高効率で軽量なファン、タービンの技術実証を行う「aFJR」、もうひとつは航空機から出る騒音を低減する技術の飛行実証を目的とした「FQUROH」である。○JAXA航空本部と新プロジェクトの位置づけ発表ではまず、JAXA航空本部の役割について説明が行われた。一般にJAXAというと、小惑星探査機「はやぶさ」や宇宙飛行士など、宇宙に関する取り組みが多く注目される傾向がある。しかし、もともとJAXAは、「宇宙開発事業団(NASDA)」と「宇宙科学研究所(ISAS)」の他に、「航空宇宙技術研究所(NAL)」も統合されてできたものであり、宇宙開発と同じぐらいに、航空分野でも長く大きな歴史と実績がある。例えば国産旅客機「YS-11」の開発支援や、短距離離着陸実験機「飛鳥」の開発、そして後述する国産初のターボ・ファン・エンジン「FJR710」の開発などを手掛けたのはNALであった。2003年10月にJAXAに統合された後も、航空機技術の発展のために日夜力強く研究が続けられている。JAXA航空本部では、大きく3つのプログラムを実施している。航空環境技術の研究開発を行う「ECAT(Environment-Conscious Aircraft Technology Program)」、航空安全技術の研究開発を行う「STAR(Safety Technology for Aviation and Disaster-Relief Program)」、そして航空新分野の創造を行う「Sky Frontier」だ。またそれら3つを支える形で、基礎的・基盤的技術の研究を行う「Science & Basic Tech」がある。航空機産業は今後20年で2倍以上の成長が見込まれており、また部品点数が自動車の約100倍もあるため、産業構造の裾野が広いという特徴がある。日本は航空機分野では若干遅れをとっているが、今後シェアの拡大や、国際共同開発における主導権を獲得し、日本の航空機産業を発展させるためには、経済性、環境への適合性、安全性、そして長期的な視点に基づいた先端研究に力を入れることが重要とされる。その中で、今回ECATから2つ、「aFJR」と「FQUROH」のプロジェクトが開始された。詳しくは後述するが、aFJRは高い効率を持つ軽量のファン、タービンの技術実証を行うことを目的とし、一方のFQUROHは、機体から発生する騒音を低減させる技術の飛行実証を目的としたプロジェクトだ。この2つのプロジェクトは、国際的な水準に照らして高い技術目標を掲げており、またこれ以上に獲得した技術の社会的、技術的な波及効果を意識した「出口志向」の強いものとなっており、そのために産業界と連携して進めていくこととされている。また文部科学省の「戦略的次世代航空機研究開発ビジョン」でも、優先技術として開発することが定められている。●日本が誇る高性能ターボ・ファン・エンジンの名を継承○効率の良い次世代エンジンの開発に貢献するaFJRaFJRは、これまでよりも効率の良い次世代ジェット・エンジンの開発を目指したもので、「advanced Fan Jet Research」の頭文字から取られている。またFJRという名前は、今から約40年前に開発された日本製の高性能ターボ・ファン・エンジン「FJR710」にも因んでいる。FJR710はその成果が「V2500」というエンジンに技術が継承された実績があり、同シリーズのエンジンは現在、エアバスA320シリーズなどの世界的なベストセラー機に搭載されている。また日本のメーカーは主に低圧系のファンとタービンの製造を担当しており、そのシェアはエンジン全体の23%に上るほどだという。今回はじまる新しいプロジェクトも、FJR710のように日本の航空産業に貢献したいという想いが込めて、FJRの名前が継承されたのだという。aFJRが立ち上げられた背景には、航空機の騒音やNOx(窒素酸化物)に対する環境基準が年々厳しくなっていることや、また燃料価格の高騰や不安定さから、燃費の良い航空機が期待されていること、また、燃費が良くなればCO2などの温室効果ガスの排出量も減少させることができることなどがある。そのためには、エンジンの「バイパス比」を大きくすることが必要だ。バイパス比というのは、エンジンの前方に取り付けられた大型のファン部分のみを通過する空気の量と、エンジンの中心部分を通過する空気の量の比率のことで、これを大きくすることで燃費が上がり、排気ジェットの騒音も減少させることができる。ただ、バイパス比が大きいほうが良いというのは亜音速で飛行する航空機に限った話で、超音速で飛行する航空機にとっては、逆にバイパス比が低いエンジンのほうが適している。旅客機用のターボ・ファン・エンジンのバイパス比は年々高くなっており、例えばV2500シリーズのエンジンのバイパス比は5前後だが、最新のボーイング787に搭載されているRRトレント1000というエンジンは11もある。また、エアバスのA320neoや、日本が開発中の旅客機MRJに搭載されるPW1000Gシリーズは、最大で12にまで達するという。しかし、aFJRではさらにその先を見据えて、バイパス比13以上にもなる超高バイパス比のエンジンを実現させるという。開発のポイントとしては、まずファンの軽量化が挙げられる。素材には炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が使われる。すでにCFRPはいくつかのエンジンで使われ始めているが、aFJRでは内部を中空化したり、構造を見直すことで、さらなる軽量化を図るという。これにより、V2500と比べて0.9%ほど軽くなるという。また、軽量化ファンのブレードの形状を工夫し、表面を流れる気流の層流が乱流に変わる地点を後方に遅らせて抗力を減少させる「層流ファン空力設計技術」が使われるという。さらに、そのファンを回すために使われる低圧タービンの羽にセラミックス基複合材料(CMC)を用いることでも軽量化が図られる。さらに、エンジン・ナセルの内側にある、音を吸収する吸音ライナーも、現在はアルミが使われているが、性能を維持しつつ、より軽量なプラスチックを用いるという。これらの改良によって、V2500シリーズと比べて、エンジン総質量を10%程度減少させることを目指すとされる。aFJRは、これらブレードや吸音ライナーなどの技術について、各要素レベルでの性能試験を行う計画だ。試験にはJAXAの他、IHIや東京大学、筑波大学、金沢工業大学が参画し、JAXAやIHIの試験設備を使って、性能の確認の他、ファンに鳥が衝突したときの状態を見るためのゼラチンを打ち込む試験、また軸が破断したときに回転数が上がるのを防ぐため、羽を壊しながら速度を落とす過回転防止ブレードの試験などが行われる。各要素の開発は数年前からはじまっており、2012年度までに設計技術や使用する材料の研究が行われ、2013年度には計画の準備や策定などが行われた。そして2014年度から試験がはじまり、2015年1月にaFJRチームが発足したという。試験計画は5年で、2017年度までに終え、その後実際のエンジンの開発、製造に活かすため、技術移転を行っていきたいとのことだ。エンジンから出る騒音が減り、燃費も向上すれば、航空会社にとっては利益が増加するため、aFJRの市場における価値が高くなることが期待されるという。またV2500のファンや低圧タービンなどの低圧系要素は日本のメーカーが担当しているため、多くの技術の蓄積がある。おそらく国際共同開発になるであろう次世代エンジンにおいても、aFJRの成果とその優位性を活かして、開発や製造に食い込みたいという。発表を行ったaFJRプロジェクト・チームのプロジェクト・マネージャーの西澤敏雄氏は「試験の成果を実機の開発につなげていきたい」と期待を語った。またIHI理事の金津和徳氏は「このプロジェクトを通じて、日本のエンジン競争力の向上に期待したい。また若手技術者の人材育成になることも期待している」と語った。●エンジン以外からの騒音も減らすことで低騒音の実現を目指す「FQUROH」○フクロウのように静かに飛べる飛行機を目指すFQUROHaFJRと並んで、この日発表されたもうひとつのプロジェクトが「FQUROH」だ。FQUROHは「Flight demonstration of Quiet technology to Reduce noise from High-lift configurations」の頭文字から取られており、航空機から出る騒音を低減するための技術の飛行実証を目的としている。FQUROHはフクロウと発音するが、これは実際のフクロウが空を静かに飛ぶように進化してきた鳥なので、航空機の騒音低減というミッション目的と合致することから名付けられたそうだ。航空機から発生する騒音はすさまじく、空港周辺に騒音対策を施したり、建築物の建設に制限が出たり、夜間の離発着を行わないようにしたり、あるいは航空会社が支払う着陸料に、騒音に応じたペナルティがあったりといった対処がなされてきている。しかし、航空機による輸送はこれからも年5%ほどのペースで増えると予測されており、今後20年で2.6倍になり、離発着数も今の2倍になるという。それにより、騒音も平均で3dbほど増えることが予測されている。そこで航空機から出る騒音を、さらに減らしていく必要がある。かつては、騒音の主原因はエンジンにあったため、バイパス比を増やすことで騒音を減らしてきた。しかし、数字の上では年々、確かに下がってはきているものの、いよいよバイパス比の改良だけでは追い付かなくなってきたのだという。そこで、エンジン以外の部分から発生する騒音も減らしていかなければならない。騒音の原因として大きいのは、離着陸の際に主翼から展開させるフラップとスラット、そして着陸脚だという。これらは90から100dbほどの音を発生させる。だが、騒音の源となる空気の流れは、物理現象が複雑で予測するのが難しく、また巡航時は機体に収容する必要があるため、最適な形状にすることが難しいという課題があった。FQUROHは2013年からプリプロジェクトとして進められており、これまで数値解析や風洞実験を通じて研究が行われてきた。そして見通しが立ったことで、実際の飛行機を使って実証することを目的とし、正式にプロジェクトとして立ち上げられたという。また日本はこの50年間、航空機を開発した経験が少ないため、航空機を飛行させて新しい技術の実証を行う、そのプロセスを確立することも目的とされている。実証試験はまずJAXAが保有する「飛翔」を使って行われる。飛翔はJAXAが2011年に導入した実験用の航空機で、米国セスナ社のサイテーション・ソヴリンを改造した機体だ。試験では、飛翔のフラップ上面に騒音を抑制するための装置を装着し、また端の形状が丸められる。また着陸脚のタイヤとタイヤの間のブレーキ部に、穴の開いたフェアリングを装着するという。そして2019年ごろには、三菱航空機のMRJを使った実証試験を行いたいとのことだ。試験にはJAXAの他、三菱航空機、川崎重工業航空宇宙カンパニー、住友精密工業が参画する。また大学や海外の研究機関との連携も図られるとのことだ。登壇した川崎重工業航空宇宙カンパニーの葉山賢司氏は「これまで数値計算や風洞実験を行ってきたが、実証機を使った飛行試験はなかった。このFQUROHで実際に効果を確認でき、またその後物を造るという、「設計のループ」を初めて取り扱うことになる。世界的にもまだこの技術は実用化されていない。非常に期待している」と期待を語った。また三菱航空機の中西邦夫氏は「現在開発しているMRJでは、環境に優しいこと、低騒音であることを売りにしているが、まだまだ低騒音化を進めていかないといけない。期待している」と語った。最終的な数値目標については、FQUROHは各要素の実証を行う計画であるため、また既存の機体を改造する形でやるので、低騒音化には限度があるという。成功基準としては、各騒音源それぞれ2db程度下げることを目指すという。いずれ、本格的にこの技術を使った航空機を造ることがあれば、エンジン低騒音化などを含めると4db程度下げることを目指したいとのことだ。参考・・・
2015年02月13日小松製作所は2月12日、ZMPと建設・鉱山機械の無人化・自動運転化などの分野における協業を進めていくため、ZMPへの出資を行ったと発表した。ZMPは、自動車の自動運転技術開発用プラットフォーム「RoboCarシリーズ」およびセンサー・システムの開発・販売や移動体メーカー(自動車、商用車、建設機械、農業機械、物流搬送機器、屋外作業機械など)向け自動運転技術の開発を行っている。コマツは、建設・鉱山機械の自動化を展開しており、ZMPとはすでに鉱山機械の制御技術開発において協業を進めている。両社は今回の資本提携を機に、建設・鉱山機械の無人化・自動運転化をはじめさまざまな分野において、協力関係をさらに深めていくとしている。
2015年02月13日軽くて歩きやすく、幅広い世代から人気のフットウェアブランド「クロックス」が、最新モデル「ノーリン」の発売を記念し、3月5日(木)~8日(日)の間、いま話題の無人飛行機「ドローン」による、世界初の空中ストアを東京ミッドタウンにて開催する。コンセプトは「おどろきを持った軽さの体験」。空中ストア内に設置されたiPodから気になるシューズの色をタッチすると、オリジナルドローンが「空飛ぶ靴屋」さながらに約80足のノーリンが陳列する高さ5メートル、幅10m、奥行き6mという巨大なシューズディスプレイ台から、指定された色のシューズを手元まで運んできてくれる。クロックスは、今年で日本上陸10周年を迎え、「Find Your Fun」をブランドテーマに多彩なラインナップを展開する。3月5日、新発売となるタウンスニーカー「ノーリン」は、2011年に発売され人気を博してきた「フーバー」が新たに生まれ変わった最新モデル。細身なフォルムとクロックス独自素材「クロスライト™」を使用したアウトソールとミッドソールにより軽さと快適な履き心地を追求した。さらに、裸足でもムレを気にせず快適に履けるように進化した。会場内には試着スペースもあって、「ノーリン」の軽さと履き心地を体験できる。また特設サイト「flying norlin projyect」では、空中ストアやノーリンに関する事前情報や期間限定ストア実施後には、ドローンから撮影した参加者の画像などを集めた動画集や、世界初の空中ストアに挑戦する過程に密着したドキュメンタリームービーを公開される。空中ストアは、3月5日(木)~8日(日)の11時~20時まで開催。入場料は無料。(text:Miwa Ogata)
2015年02月09日「ボーイング」や「エアバス」が航空機メーカーの社名だというのは広く知られている。では、その社名の由来をご存知だろうか? さらに、この2社が世に出している飛行機は全て、7○0となっているのにも、実は理由があったりなかったりなのである。○ワイドボディ機の開発ゆえの社名ボーイングの社名は創立者がウィリアム・ボーイング(William Edward Boeing)という名前であったことに由来する。一方、エアバスの社名は、かつて航空機メーカーがワイドボディ(2通路)機を開発する時の総称として使い、例えば「エアバス(AIRBUS)構想」などといった使われ方をしていた。そこから社名がとられているわけだ。また、ボーイングやエアバスより小さな旅客機を主に製造する「エンブラエル」(Embraer)はといういと、国籍のあるブラジルの"航空ビジネス"という意味のポルトガル語の頭文字などをとったもの。そのエンブラエルのライバルであるカナダの「ボンバルディア」(Bombardier)は、カタカナで"ボンバー"と読める言葉が混じっていることから穏やかならぬ社名だと誤解しがちだが、これも創業者の名前に由来している。○名前も存在もA380は特別しかし、旅客機の機種名(正確には型式名)はけっこういい加減だったりする。周知の通り、型式名はボーイングが737 、747、767、777、787、エアバスがA300、310、320、330、340、380などと数字で表記される。では、これら数字に統一性があるのかといえば、そうでもない。エアバスの旅客機には「3」が付くわけだが、これは現行の航空機ファミリーで最初に開発されたのが300人乗りの旅客機だったため、A300と名付けられたことに由来する。ただし、その後は310、320、330、340と順に番号が割り当てられる形となり、座席数とはなんの関係もなくなった。では、その後も開発順だったかといえば、そうではない。A340の後に開発され、現在でも唯一の総2階建ての旅客機には当初、「A3XX」という仮の名前が付けられた。そして、後にその機能が航続距離8,000マイルと優れたものになったことで、その性能を強調する意味でA380に決定した。とはいえ、その後に開発され2014年末から定期(商業)運航を開始したA350はまたもとの順番性に戻っている。なんともいい加減な感じがするが、一方で、総2階建てのA380はあまりに巨大で空港に特別な設備が必要なためセールス上の主力機にはなりにくい。そのため、順番から外れた名前になったとも考えられる。○787は"末広がり"では、ボーイングの旅客機に「7」が付いているのはなぜか。「7」が割り当てられたのはジェット旅客機である707が最初で、それ以前のプロペラ機や軍用装備品で「6」までの数字が使われていたからで、要するに順番制。ただし、「700」という名前ではインパクトが薄いと考えられ「707」となった。その後、筆者は「777」が開発された時に「スロットマシーンで当たったみたいで縁起がいいな」と感じたが、関係者に聞くとそういう意図はなかったそうだ。ただ、「7」と「7」の間に挟まれる数字は一応、順番に割り当てられてはいるが、今後もそうかとは言い切れない。最新機の「787」は当初「7E7」と、同機のセールスポイントであるEfficiency(効率)の頭文字が仮に振られ、その後「787」に決まったのは777の後なので順番通りにも思えるが、実際には「八」は日本でもそうだが中国でも"末広がり"を表す縁起が良い数字であり、中国の航空会社が大量に発注したため「8」の数字が割り当てられたとも言われているのだ。
2015年01月29日JALと三菱航空機は、三菱リージョナルジェット(以下、MRJ)32機(確定32機)の購入について正式契約を締結した。両社は2014年8月28日にMRJ32機の導入に関して基本合意をしており、1月28日に正式契約に至った。JALは、次世代リージョナルジェット機であるMRJの性能のみならず、導入後の運航支援などに関する三菱航空機からの提案を高く評価。三菱航空機にとって、MRJの合計受注機数は、今回の契約を含めると407機(確定223機、オプション160機、購入権24機)となっている。なお、JALへの納入は2021年に開始する予定となっている。契約した32機は、JALグループのジェイ・エアが運航する予定。JALグループは、MRJを地方ネットワーク路線の主力機として活用し、利便性の高いネットワーク構築に努めるとともに、商品・サービス品質の向上に取り組み、最高のサービス提供を目指すという。三菱航空機が開発するMRJは、70~90席クラスの次世代民間旅客機。世界最先端の空力設計技術、騒音解析技術などの適用と、最新鋭エンジンの採用により、大幅な燃費低減と騒音・排出ガスの削減を実現する。また、高い運航経済性と環境適合性により、エアラインの競争力と収益力の向上に大きく貢献するという。1列4席の配置、大型のオーバーヘッド・ビンの装備などを採用し、これまでのリージョナルジェット機にはない快適な客室空間を提供する。MRJは今春にも初飛行を予定しており、1月13日には飛行試験機初号機において右舷エンジンの試験運転を初めて実施した。ほかの飛行試験機2,3,4号機においても、最終組み立てを進めている。その進捗として、1月13日に実施した飛行試験機初号機における右舷エンジンの試験運転と、2014年12月25日に実施した全機静強度試験機の主翼上曲げ試験の様子が公開されている。飛行試験機初号機における右舷エンジンの試験運転の動画全機静強度試験機の主翼上曲げ試験の動画
2015年01月28日三菱航空機は現在開発を進めている「MRJ」(三菱リージョナルジェット)の、初飛行に向けた各種試験の最新動画を公表した。MRJは今春にも初飛行を予定しており、1月13日には飛行試験機初号機において右舷エンジンの試験運転を初めて実施した。ほかの飛行試験機2,3,4号機においても、最終組み立てを進めている。現在公開されている動画は、1月13日に実施した飛行試験機初号機における右舷エンジンの試験運転と、2014年12月25日に実施した全機静強度試験機の主翼上曲げ試験の様子となっている。飛行試験機初号機における右舷エンジンの試験運転の動画全機静強度試験機の主翼上曲げ試験の動画
2015年01月26日三菱航空機は現在開発を進めている「MRJ」(三菱リージョナルジェット)の、進捗状況を発表した。MRJは今春にも初飛行を予定しており、1月13日には飛行試験機初号機において右舷エンジンの試験運転を初めて実施した。現在はほかの飛行試験機2,3,4号機においても、最終組み立てを進めている。初号機は各種機能試験や技術試験を実施しており、2号機は翼胴結合と脚の取り付けを完了、3号機は翼胴結合の作業を、そして4号機では、胴体結合が完了し塗装作業を行っているという。
2015年01月22日富士重工業は1月20日、愛知県半田市にある半田工場敷地内に新たに3棟目となる航空機の組立工場の建設に着手したことを発表した。この新工場では、米国ボーイング社の次世代旅客機「777X」の胴体と主翼をつなぐ重要な部位である中央翼の組み立てを行う予定で、工場完成は2016年を目指しているという。半田工場では現在、ボーイング社の大型旅客機「777」「787」の中央翼、および防衛省の固定翼哨戒機(P-1)・次期輸送機(C-2)の中央翼などの組み立て作業を行っている。今回新たに「777X」用の中央翼納入を計画するにあたり、中央翼組み立て作業の集積や完成品輸送効率の観点から、当社の半田工場敷地内に建設することになった。新工場を含む「777X」関連の設備投資額は100億円規模を予定。これによって、半田工場は世界に例を見ない、中央翼生産センターになるという。なお、新工場は2014年12月17日に愛知県による「21世紀高度先端産業立地補助金」の「平成26年度第2回補助対象案件」に選定されている。
2015年01月20日KODAWARIは、航空機で使用されるアルミ素材を採用したiPhone 6用バンパー「PATCHWORKS Alloy X for iPhone 6」の販売を開始した。価格は7,236円。同製品は、航空機で使用されるアルミ素材を採用したiPhone 6用のバンパーである。アルミブロックを加工後、ひとつひとつハンドメイドで生産にあたっているという。本体の厚さは2mmで、重量は16g。新構造を採用し、装着にネジを必要としない。iPhoneと本体が直接触れない仕様になっており、内側には衝撃吸収用のウレタンフォームが取り付けられている。また、iPhoneをテーブルなどに置いた際、カメラ部分が接地面に触れないようになっている。カラーはBlack、Silver、Space Grey、Champaigne Goldの4色を用意している。
2015年01月16日エアバスは現地時間の1月13日、最大離陸重量を97tに増加させたA321neoをローンチしたことを発表した。米ロサンゼルスを拠点とする航空機リース会社のエア・リース・コーポレーション(ALC)が同型のローンチカスタマーとなった。ALCは、A321neoを30機追加発注する覚書(MoU)を締結し、A321neoの合計発注数を90機に増加させた。最大離陸重量を97tに増加させることでA321neoの航続距離は4,000海里(7,408km)に延長される。これは単通路型機の中で最長の航続距離で、大西洋横断路線での運航に最適な機体となる。これにより、航空会社は従来の単通路型機では実現できなかった新たな長距離路線市場開拓も可能となるという。ALCの覚書による30機のA321neoと25機のA330neoの発注が確定発注となれば、同社のエアバス機に対する合計発注数は258機になる(A320ceoが53機、A320neoファミリーが140機、A330ファミリーが15機、A350 XWBファミリーが25機、A330neoファミリーが25機)。97tのA321neoは客室に高い快適性と柔軟性を提供するキャビン・フレックス(Cabin-Flex)を採用。機体前部の床下に燃料タンクを追加し、主翼と胴体を少し改良することで、快適な2クラス制の客室に206席を装備できる。初号機の引き渡しは2019年に開始される予定となっている。A320neoファミリーは、新型エンジンと大型のウイングチップであるシャークレットを取り付け、燃費を最大15%削減する。さらに2020年までには最大20%の削減を可能にする。同ファミリーは2014年12月末時点で、70社から3,600機以上の受注を獲得している。
2015年01月14日三菱航空機は1月13日に初めて行った、「MRJ」(三菱リージョナルジェット)飛行試験機初号機右舷エンジンの試験運転の写真を公開した。MRJは今年第2四半期に予定しているYS-11以来約50年ぶりの国産旅客機かつ初の国産ジェットで、13日より初飛行に向けた本格的な各種試験が始まった。エンジンの初運転によって、機体に搭載されたエンジンなどの動力系統、各種システム(油圧・燃料・空調・電気系統など)が機体として総合的に作動したことが証明されたという。今回の全機静強度試験は、設計・製造された機体の強度が航空機を安全に飛行させるために必要な基準を満たしていることを検証する機体構造試験のひとつ。あらゆる飛行条件の中で想定される最大の力を負荷するもので、予測通りの試験結果が得られたという。
2015年01月14日エアバス(本社: 仏トゥールーズ)は現地時間の1月13日、航空機リスト価格を平均3.27%引き上げたことを発表した。1月1日から全てのエアバス航空機に適用されている。
2015年01月14日三菱航空機は1月13日、今年第2四半期に予定しているYS-11以来約50年ぶりの国産旅客機かつ初の国産ジェット旅客機「MRJ」(三菱リージョナルジェット)の初飛行に向けた各種試験を本格化したことを発表した。13日に県営名古屋空港(愛知県西春日井郡豊山町)のエプロンにおいて、MRJ飛行試験機初号機右舷エンジンの試験運転を初めて実施。エンジンの初運転によって、機体に搭載されたエンジンなどの動力系統、各種システム(油圧・燃料・空調・電気系統など)が機体として総合的に作動したことが証明された。また、2014年12月25日には、三菱重工業名古屋航空宇宙システム製作所小牧南工場(愛知県西春日井郡豊山町)に隣接する技術試験場において、全機静強度試験機の主翼上曲げ試験を施した。今回の全機静強度試験は、設計・製造された機体の強度が航空機を安全に飛行させるために必要な基準を満たしていることを検証する機体構造試験のひとつ。あらゆる飛行条件の中で想定される最大の力を負荷するもので、予測通りの試験結果が得られたという。
2015年01月13日ボーイングは1月7日、2014年に単年度としては過去最多となる723機の民間航空機を納入し、2年連続で記録を更新したことを発表した。また、金額ベースにして2,327億ドル(リストプライス)相当の1,432機を受注(ネット)し、2007年に樹立されたボーイング民間航空機部門売上記録を上回り史上最高となった。2014年末時点での受注残は5,789機で、これまでの記録を更新。2014年の航空機プログラムは、737型機は485機納入、777型機は99機納入、787型機は114機納入(ローンチカスタマーであるニュージーランド航空への787-9初号機納入と、航空会社13社への初納入を含む)で、単年度記録を塗り替えた。ボーイングが2014年に受注(ネット)した民間航空機1,432機の内訳は、次世代737型機と737 MAXが合わせて1,104機で最多、続いて777型機と777X型機が合わせて283機となっている。ボーイングでは今後、2014年9月に737 MAX 8 をベースにローンチした737 MAX 200 など、今後も航空機市場に新製品、新サービスを提供していく予定。
2015年01月07日三菱航空機は1月5日より、YS-11以来約50年ぶりの国産旅客機かつ初の国産ジェット旅客機「MRJ」(三菱リージョナルジェット)に対して、今後本格化する飛行試験や量産準備を見据え、現社屋(名古屋市港区)から県営名古屋空港(愛知県西春日井郡)ターミナルビルに本社の全機能を移転し、業務を開始した。MRJの最終組み立て、地上試験、飛行試験のいずれも、県営名古屋空港とそこに隣接する三菱重工業名古屋航空宇宙システム製作所小牧南工場で行われる。そのため、県営名古屋空港ターミナルビルに本社機能を移転することで、効率的な業務遂行ができる体制を整える。同社は今回の本社機能の移転を機に、さらなる受注・開発に向け、全社一丸となって取り組んでいくという。MRJは三菱航空機が開発する70~90席クラスの次世代民間旅客機。世界最先端の空力設計技術、騒音解析技術などの適用と、最新鋭エンジンの採用により、大幅な燃費低減と騒音・排出ガスの削減を実現する。また、優れた運航経済性と環境適合性により、エアラインの競争力と収益力の向上に寄与する機体となっている。機内は1列4席の配置、大型のオーバーヘッド・ビンの装備などの採用により、これまでのリージョナルジェット機にはない快適な客室空間を実現する。移転先概要愛知県西春日井郡豊山町 名古屋空港内
2015年01月05日KDDIは12月25日、航空機向け衛星通信サービス「インマルサットSB(スウィフトブロードバンド)」の提供開始を発表した。従来の約7倍となる上下最大432Kbpsを実現しており、これまで利用できなかった音声通話とデータ通信の同時利用も可能となった。この衛星通信サービスは、インマルサット第4世代衛星を利用しており、これまでのインマルサットエアロ(Swift64)の最大64Kbpsから飛躍的に通信速度が向上した。また、インマルサット第4世代衛星は3基が展開されており、ほぼ全世界をカバーしているという。同社はこれまでにも船舶向けの衛星通信サービス「KDDI Optima Marine」を提供しており、こちらも世界の多くの地域をカバーしている(16日に同サービスを活用した飛鳥IIのWi-Fiサービス提供も発表されている)。ほかに、5日に発表した衛星モバイルルーター「イリジウム GO!」の取り扱いなど、様々な状況下での衛星通信サービスを通して、携帯電話が繋がらない環境でも通信が利用できるようサポートを行うとしている。使用契約料は1契約ごとに12万2900円(税別)となり、月額基本料は0円。音声通話は固定電話・携帯電話宛が1分480円、インマルサット衛星端末向けは1分688円。データ通信では、ISDN通信(64Kbps)が1分3197円、ベストエフォート型のスタンダードIPが1MBあたり1503円、帯域保証型のストリーミングIPが32Kbpsの保証で1分1373円、64Kbpsで1分2923円などとなっている。SMSの送受信は1通あたり173円(基本料と通信料はいずれも免税)だ。
2014年12月25日日本航空写真家協会(JAAP)は12月11日~17日、東京新宿区のアイデムフォトギャラリー「シリウス」にて「日本航空写真家協会 2014写真展」を開催する。JAAPは主として「航空」をテーマに撮影している写真家の集団。写真展では実際に空を飛ぶことでしか見ることができない光景や、躍動感あふれる航空機の姿など、プロの航空写真家ならではの視点で捉えたカラー・モノクロの43点を展示する。開催時間は10:00~18:00(最終日は~15:00)。入場料は無料。
2014年12月11日前回は、慣性航法装置(INS : Inertial Navigation System)とコンピュータの組み合わせによって、昔は「指示された針路を維持するだけ」だった自動操縦装置が「指示された経由地点通りに自動的に針路をとる機械」に進化した、という話を書いた。○FMSの出現ただし問題は、経由地の緯度・経度をいちいち手作業で入力しなければならないという点である。そこで入力を間違えると、明後日の方向に飛んでしまう。最悪の場合には、知らず知らずのうちに他国の領空を侵犯してしまって撃墜される、なんていう事態にもなりかねない。その問題を解決する手段として登場したのが、FMS(Flight Management System)である。あまり日本語で書くことはないように思えるが、日本語訳すれば「飛行管理システム」というところだろうか。FMSの特徴は、「経由地(ウェイポイント)」「航路」「無線航法援助施設」「飛行場・滑走路」「離着陸時の標準経路」といった情報を、予めデータベースとして持っている点にある。そして、コックピットに設けられたCDU(Control Display Unit)を使って、飛行計画を入力すると、経由地に関する情報をデータベースから自動的に拾い出していく。これなら、いちいち緯度・経度を入力する手間を軽減できるので、その分だけ入力ミス、ひいては航法ミスの危険性を減らすことができる。つまり、自動操縦装置を使用する際のワークロード低減とミスの回避を実現できるというわけだ。また、飛行前に計画を立案して入力する場面だけでなく、飛び立った後で入力済みの計画を変更する場面も考えられる。何も問題がなければ当初の計画を変更する必要は乏しいのであって、計画を後から変更するというのは、相応の事情があったときだ。そちらの方が切羽詰まっていて時間的・気分的な余裕が少なそうだから、入力ミスの可能性を減らすことの意味は大きい。そして、航法データベースを事前に持っているFMSを利用すれば、緯度・経度をいちいち手入力するよりも間違いが少なくなると期待できる。なお、航法援助施設については以前に第12回で取り上げたことがあるので、そちらを参照していただければと思う。○MPSもワークロード低減につながる本連載の第15回で取り上げた、軍用機向けの任務計画立案システム、つまりMPS(Mission Planning System)も、ワークロード低減手段のひとつといえる。軍用機が事前に任務飛行の計画を立てる際にも、民航機と同様に、途中で経由する地点やタイミング(時刻)、最終的に到達すべき目標地点、などといったデータを必要とする。民航機と違うのは、行先や経由地が毎回のようにバラバラで、一定していないところだ。定期航路を飛ばしているわけではないので、そういうことになる。だから、事前に持っている航法データベースから必要な情報を拾い出せばOK、というわけにはいかない。そのため、軍用機のMPSでは地上側のコンピュータで飛行計画を立てて、それをデータ転送モジュール(DTM : Data Transfer Module)という名のハードディスクやフラッシュメモリで機体のミッション・コンピュータに転送する。その際に、敵が対空砲や地対空ミサイルを配備して護りを固めている場所が分かっていれば、それを回避するような針路をとることで、危険を避けることができる。そういう情報も、あるいは地形・地勢に関する情報も、事前にMPSの計画立案用コンピュータに入れておけば、これもワークロード低減の一助となる。それにより、行き帰りの飛行を自動化できればパイロットの疲労が減って、肝心の交戦を確実に遂行するために体力・気力をセーブしておくことができる。ちなみにこの手の機能は、平時でも役に立つ。騒音被害を減らすために人口密集地帯を避けて飛ぶ必要があれば、その人口密集地帯を「回避すべき危険地帯」として登録しておくわけだ。実際には地上からミサイルが飛んでくるわけではないから危険でもなんでもないのだが、避けて通らなければならないという点においては同じである。○軍用機でも時間厳守(のこともある)民航機であれば時刻表通りに飛行機を飛ばすことが重要になるが、軍用機でも時刻を守ることは重要になる場合がある。たとえば、複数の編隊が同時にひとつの目標を襲撃するような場面では、タイミングを合わせて目標地点に到達しなければならない。その複数の編隊がそれぞれ異なる機種、異なる針路、異なる兵装を搭載していれば、飛行に際しての条件も異なるので、それぞれに合った形の飛行計画を立てる必要がある。それをいちいち手作業で計算して立案した上で、さらに経由地に関する情報を機体の航法装置に入力して、飛行中の速度も計画通りに手作業で維持する、なんていうことになればワークロードが大きい。コンピュータで計算できるところはコンピュータにやらせて、人間は人間でなければできない作業に専念するのが筋というものだ。○執筆者紹介井上孝司IT分野から鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野に進出して著述活動を展開中のテクニカルライター。マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。「戦うコンピュータ2011」(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナビニュースに加えて「軍事研究」「丸」「Jwings」「エアワールド」「新幹線EX」などに寄稿しているほか、最新刊「現代ミリタリー・ロジスティクス入門」(潮書房光人社)がある。
2014年12月08日ヤンマーは、同社の建設機械のコンセプトモデルとして、「無人型バックホー」(小型ショベルカー)を発表した。「無人型バックホー」は、同社が昨年発表したコンセプトモデル「YT01」、ならびにそれを量産化した「YTシリーズ」と同様、フェラーリを手がけたことで知られる工業デザイナーであり、同社取締役である奥山清行氏がデザインした電動バックホー(小型ショベルカーの一種)。操縦者は同機には乗り込まず、遠隔地よりヘッドマウントディスプレイを装着して操縦を実施。機体に取り付けられたカメラからリアルタイムに送信される映像をもとに、作業を進めることができる。大阪府・梅田の同社本社ビルにて19日に行われた発表会の中では、奥山氏自らがデモンストレーションの解説を担当。災害現場や歴史的建造物の内装分解など、作業者の立ち入りが困難な作業環境が多く存在していることを解説した上で、そのような場面で人命を守り、かつ作業を正確に行うために同機を開発しているのだと語った。また、機体のデザインは近未来的な印象を与えるが、奥山氏によれば「(機体のデザインを)平面で構成しているのは、将来的に、鉄板や丈夫なコンポジット(複合材料)を溶接し、組み合わせて作ることを視野に入れている」ためと説明。そのほか、未来的なイメージを強調している青いLEDの光は、「(建造物など作業環境の)外部から見て、機体がどこにあるか分かるよう、機体の輪郭が分かりやすい場所に設置した」とコメントした。さらに、操縦者が見る映像にはAR(拡張現実)技術を活用しており、あらかじめPC上の図面を読み込むことで、地面の中に埋まっている配管や電線を可視化できる。そのほか、機体のアームは油圧で稼働し、先端部に取り付けられているバケットはいわゆるショベルカーとして一般的なものだが、今後パーツのバリエーションによって、さまざまな作業に対応することもできるよう開発を進めるという。なお、同機は量産化を視野に入れて開発が進められているが、現段階では発売時期や価格は未定。奥山氏は「絵に描いた餅ではなく、未来の可能性としてご覧いただきたい」と語り、機体の内部を公開して、熱遮断シールドや装置が実際に入っている様を披露する一幕もあった。
2014年11月20日Luminox(ルミノックス)は、発売中の「P-38 LIGHTNING SERIES」(AIR)に、待望の機械式自動巻モデル2機種を加える。発売時期は2014年11月下旬を予定、予価はクロノグラフモデルの「Ref.9461」が398,000(税別)、3針モデルの「Ref.9401」が178,000円(税別)。多くの航空ファンに愛される伝説の航空機「P-38 ライトニング」。その美しい機体には、模型で親しんだ方も多いだろう。ルミノックスのアビエーション・コレクション「AIR SERIES」は2014年5月、ロッキード・マーティン社の公認を取得。名機P-38からインスパイアされた「P-38 LIGHTNING SERIES」が登場した。同シリーズのクロノグラフモデル「Ref.9441」は、7月末に発表されたルミノックス・オーナーズアワードで5位を獲得する人気アイテムとなっている。そんな人気シリーズのヴィンテージデザイン・タイムピースに、待望の機械式自動巻ムーブメントを搭載したモデルが登場。ムーブメントは自動巻(Ref.9461:Valjoux 7750, Automatic Chronograph / Ref.9401:SW220-1 special HH)。ケース径は44mm、厚さは14mm、重さは145g。ケース材質はステンレススティール(ブラッシュ加工)で、防水性能は200m。風防はサファイアクリスタルガラス(片面無反射コーティング)。ストラップはブラックレザー。
2014年11月14日航空業界の地上職のひとつに、「グランドハンドリング」という業務があることをご存知だろうか。航空機の到着・出発に伴う地上作業のことであり、通称"グラハン"と呼ばれている。世界最高クラスの定時到着率をたたき出しているJALの裏には、乗客と接することのないグランドハンドリングの存在も大きいという。そんなJALでは、技術の向上とともに"グラハン魂"を熱くさせるコンテストを実施している。○JALだけが実施するコンテスト10月30日に羽田空港のメンテナンスセンターで実施されたコンテストは、今年で2回目になる。JALでは全国の整備士が競う「技能オリンピック」や全国のグランドスタッフが競う「空港サービスのプロフェッショナルコンテスト」などを実施しているが、こうした取り組みは他社でも行われている。しかし、グランドハンドリングのスタッフが競うコンテストはJALだけだという。コンテストはJALのグランドハンドリングを委託しているJALグランドサービスが主催し、安全性や業務の的確さを競いながら、互いに学びあうことを目的にしている。JALは全国に5,000人以上のグランドハンドリングのスタッフがおり、同コンテストには各空港で選抜された国内26空港の42人が参加。若手の成長を促すために入社歴15年以内を条件にしており、今年は入社1年目の新人も参戦していた。また、まだ5%程度と少ないものの、JALには女性のグランドハンドリングスタッフもおり、会場には女性の姿も見受けられた。「グランドハンドリングは力仕事でもあるため、男性の方が適していると思われがちですが、繊細さや丁寧さで女性ならではの技術も高く評価されています」(JAL グランドハンドリング・ロードコントロール企画部 諏訪次郎グループ長)と言うように、空港地上業務でも女性の活躍が期待されているようだ。○制限時間付きでよりリアルな審査コンテストは9空港が参戦した初開催の昨年度と同様、貨物を機内に詰め込む「搭載部門」とコンテナを移送・搭載する「車両部門」を実施。大きく変更した点は競技に制限時間を設けたことで、参加者はよりリアルな環境で技術を競うことになった。「勝負は勝負。お客様を想う気持ちを体現し、JALの"グラハン魂"をしっかり見せつけていただきたい」というJAL代表取締役副社長の佐藤信博氏によるメッセージで、コンテストは幕を開けた。「搭載部門」は、コンテナに搭載されている貨物を自分の判断力を使って可能な限り多く、機内に見立てた別のコンテナへ搭載するというもの。機内に見立てたコンテナに搭載する人が競技者で、貨物を競技者に渡す人は競技者の指示を受けて作業をサポートすることになる。実際にコンテナへ搭載できる量よりも多くの貨物が用意されており、制限時間は5分と決められている。貨物は形状の違いのほか、天地無用のものや実際には搭載不可のもの、破損物もある。それらを的確に判断できるかも審査ポイントとなっている。また、機体に搭載する場合、天井から2インチ程度スペースを空けなければならず、振動で貨物が損傷を受けないように、重い貨物はコンテナの下の方へ搭載しなければならない。こうした様々な観点から、10人の審査員が一人ひとりの技術を審査する。一方、「車両部門」は「搭載部門」と違い、2人1組で行う。ひとりはコンテナを載せるための台(ドリー)を接続したトーイングトラクター(TT)に乗り、バックしながらクランクを通過し、コンテナをドリーに載せる。もうひとりはコンテナを機体に搭降載するハイリフトローダー(HL)に乗って、機体に見立てたラダーのそばで荷役状態にする。コンテナを搭載したドリーをHLに装着できたら、機体のサブデッキの高さまでメインベットを上げる。この作業を10分以内に行うのだが、基準タイムの6分を境に加点・減点となる。TTでバックをすることは実際でもよくあることのようだが、ドリーを接続してクランクを通過することはあまりない状況だという。諏訪グループ長自身、ここで脱落するチームもあるかもしれないと思っていたようだ。審査では車両の運転技術・姿勢のほか、誘導や相互確認行為なども審査ポイントとなっているため、チームで的確に作業を行う技術も大切になっている。○コンテストは勝敗だけが重要ではないコンテストの間、参加者は席を立って審査の行方を見守っており、他の参加者が競技をしている様子を写真に収める人もいた。実際、このコンテストは勝負ではあるものの、互いの技術を学び合う場でもある。前日には、機体に荷物を固定するタイダウンベルトの競技も行われたそうだが、特にタイダウンが正確で素晴らしかった参加者に、競技の最後にもう一度実践してもらい、技術を学びあう時間も設けられたという。グランドハンドリングそのものには特に航空法などで定められた規制はなく、各航空会社によって運営体制が異なる。JALでは過去の事故事例も記した手順書でスタッフに指導をしているが、各空港の周辺状況や各個人によって技術的な違いは生じる。コンテストには各空港の腕利きが集結しているので、日々の業務を見直すきっかけにもなるのだろう。諏訪グループ長は、「弊社は再建後、どうすれはよりよいサービスが提供できるかを考えてまいりました。グランドハンドリングはお客様の荷物を安全にお届けすることはもちろん、時間通りに飛行機を運航させるためにスピードや的確さも求められます。このコンテストでは、互いに優れた技術を学びあうとともにほめあうことで、より一体となった"JALブランド"を感じ取ってもらえればと思っています」と言う。実際に目の前でグランドハンドリングの様子を見ることはあまりないだろうが、スタッフは常日頃から一つひとつの作業に対して、「よし!」と声だしをしながら確実に作業を進めているという。グランドハンドリングはこのほか、航空機を駐機場に誘導するマーシャリングや航空機への燃料給油など、様々な業務を担っている。CAやパイロットほど華やかなイメージはないかもしれないが、こうした作業が航空会社の快適さ・安全さにつながっていることにも心にとどめておきたい。
2014年10月31日国際宇宙ステーション(ISS)に物資を送る米国の無人補給機「Cygnus」を積んだ米国の民間ロケット「Antares」が10月28日午後6時22分(現地時間)に米バージニア州にあるアメリカ航空宇宙局(NASA)の施設から打ち上げられたが、発射してすぐに爆発した。「Cygnus」には約2.3tの物資のほかに、千葉工業大学が開発した、ISSから流星の長期連続観測を行うための超高感度カメラなどが搭載されていた。NASAとOrbital Sciences Corporation(Orbital Sciences)は19億ドルで計8回の打ち上げを契約しており、今回はその3回目だった。NASAによれば、けが人はなく、建物などへの被害は発射場の周辺に限定されるという。「Antares」を開発したOrbital Sciencesは「現時点で詳細はわかっていない。速やかに調査を開始し、原因の解明と再発防止に努める」コメント。今後、詳細が判明し次第公表していくという。
2014年10月29日ドイツのアウディ社は、「RS 7 自動運転コンセプト」で無人での限界走行を実施したと発表した。ホッケンハイムのグランプリコースを数センチの誤差もない正確な走りで2分を少し超えるタイムを記録した。この走行テストはドイツツーリングカー選手権最終戦の前に実施された。同社は自動運転を最も重要な開発領域のひとつと位置づけ、今回のテストはエンジニアに危険走行時の自動回避機能開発への洞察を与えるものだったとしている。自動運転のシステムはGPSと3Dカメラを組み合わせたもので、3Dカメラは事前にプログラムされたデータと撮影した映像との間に違いがないかを比較するという。アウディAG研究開発担当取締役のウルリッヒ・ハッケンベルク氏は、「今回の最高のパフォーマンスは、我々アウディの自動運転おける開発力の高さを実証するものです」と述べている。アウディのドライバーアシスタントシステムは今後発売をされる上級モデルに、アウディサイドアシスト、アウディアクティブレーンアシスト、ストップ&ゴー機能付ACCといった形で搭載され、ユーザーが体験することができるという。
2014年10月24日本田技研工業の航空機事業子会社であるホンダ エアクラフト カンパニー(Honda Aircraft Company : HACI)は、米国フロリダ州オーランド市で開催されているビジネス航空ショー『ナショナル ビジネス アビエーション アソシエーション(NBAA) 2014』にて、現地時間10月20日に、小型ビジネスジェット機「HondaJet」による顧客向けデモツアーの開始と最新の活動状況について発表した。HACIは、HondaJetの量産1号機が完成したことを受け、顧客へのデモンストレーションフライトを開始し、これまでに米国のユタ州ソルトレークシティー、アイオワ州デモイン、ノースカロライナ州グリーンズボロ、カナダのカルガリー、エドモントン、トロントにおいて延べ100人以上の顧客やディーラー関係者を乗せての体験フライトを実施した。今後は、米国テキサス州サンアントニオ、フロリダ州フォートローダーデール、メキシコのモンテレーやトルーカなどでも開催する予定。カスタマーサービス分野では、HACI本社敷地内に設立されたHondaJetトレーニングセンターが稼働開始。HondaJetの飛行条件を精密に再現するフライトシミュレーター「フルモーション・レベルD・フライトシミュレーター」が2015年第一四半期に導入され、HondaJet用のタイプレーティング(機種別ライセンス)やパイロットの定期訓練などが開始される。また、HondaJetの購入に際してのファイナンスサービスを行うホンダ アビエーション ファイナンスカンパニー(Honda Aviation Finance Company, LLC)を設立し、エアクラフトファイナンスサービスの受付を開始したことも発表している。認定飛行試験については、横風時や高高度での離着陸試験、片発エンジンでの離陸試験、アビオニクス試験(航空機に搭載される航法用電子システムの試験)および空調与圧試験(温度や機内圧を調整するシステムの試験)などを順調に進めており、全米の70カ所以上の空港で2,000時間を超える飛行試験を実施。HondaJetの認定取得は、2015年第一四半期を予定している。
2014年10月21日