2人兄弟を育てるゆーとぴあさん。2歳児健診で長男は言葉が遅いと発達相談を受け、親子教室に通います。次男は言葉の遅さ以外に加えて多動傾向にも関わらず、健診では問題なしと言われたことに疑問を抱き、後日保育センターに相談して長男と同じ親子教室に通うことにしました。それでも次男が心配で、同時にほかの施設の教室にも参加させ幼稚園に備えました。入園式は制服を身につけるのを嫌がり、抱っこしていないと走り出してしまう状態で通園に不安を覚えます。予想に反して次男はすぐに幼稚園に慣れたものの、お迎えで毎日のように先生から次男の問題行動の報告を受け、発達医療センターへ行くように言われました。さらになんと長男まで発達医療で診てもらうように言われて驚くのでした。次男と長男、ほぼ同じタイミングで発達医療の受診をすすめられました。長男はかんしゃくを起こしたりやすぐに泣いたりすることはありましたが、これまで幼稚園から何も言われてこなかったのに、2人いっぺんの相談に釈然としません。先生は特別支援級の見学日程が決まっているので、まずは参加と半ば強引に決め、突然のことで気持ちが追いつかないゆーとぴあさんは戸惑いを隠せません。 子どもの問題を一方的に母親のせいにする無礼な叔母 帰宅して、先生からの話を夫に報告すると、まず見学してみて支援級が合っていればそれでもいいのではと冷静に受け止めていました。 しかし数日後、義理の叔母が家に突然やってきて、長男の支援級が確定事項かのように話し、不躾に兄弟の特性に踏み込んできます。それだけでなく、長男の先天性の病気である「仙尾部奇形腫※」は、母親のゆーとぴあさんが変なのではと言うのです。 無礼な言葉にムッとしつつも、軽く受け流そうとするゆーとぴあさんに障害があるからじゃないのかとハッキリ切り込んできました。 その夜、夫にまだ受診前の未確定事項を言わないようにと訴え、心の中では子どもの問題はすべて母親のゆーとぴあさんと決めつける義理の家族に割り切れない怒りと悲しさを覚えるのでした。 ※「仙尾部奇形腫(せんびぶきけいしゅ)」とは、仙骨の尾骨先端にできる奇形腫瘍。新生児でもっとも頻度が高く、約4万出生に1例の割合で発生するといわれている。組織型は基本的に良性で、摘出術により予後は良好であることが多い。 ◇◇◇ 子どもの体の問題をなぜか母親のゆーとぴあさんが原因と決めつけ、土足でものを言う叔母の無礼な言葉は信じられないですね。夫がいても、子育てはゆーとぴあさんだけのほぼワンオペ状態で、子どもについての悩みに一番心を痛めているはずです。まず夫は、細心の注意を払ったうえでわが子のことを親族へどこまで告知するかを考え、ゆーとぴあさんにも相談してほしいですよね。 ゆーとぴあさんの連載は、以下のサイトからもご確認いただけます。ぜひチェックしてみてくださいね。 著者:マンガ家・イラストレーター ゆーとぴあ
2023年09月13日最近よく耳にするようになった、「発達障害」という言葉。町田粥さんの初コミックエッセイ『発達障害なわたしたち』は、当事者による当事者へのインタビューがベースになっていて、そもそも発達障害とは何なのか、日常でどんなことに困っているのかを明るく解読している。インタビュアーは限りなく本人に近いキャラクター、マンガ家のM(エム)ちださんと担当編集のK成(ケーなり)さん。ふたりは同時期に発達障害の特性のひとつ、軽度のADHD(注意欠如・多動性障害)の診断を受けている。当事者もそうでない人も、大人の発達障害について明るく語ろう。「自分が発達障害だと言われたら、いろんなリアクションがあると思うのですが、私はショックや動揺ではなく『面白い!』と思ったんですよね。劣等感に繋がっていた部分を説明できるようになって救われもしたので、そういう気持ちになれる人はほかにもいるはずだと思いました」ふたりの事例から始まり、登場するゲストはMちださんの妹、ADHD寄りのASD(自閉スペクトラム症)の特性のあるマンガ家のカメントツさん、性別で見ると圧倒的に少ないASD傾向の女性など。「子どもの頃からの困り事を軸に、解決するためにどんな動きをして、今どうやって過ごしているのか、それぞれ順を追ってお聞きしました。カメントツ先生の“辛い人は『辛い』って言っていいし、辛くない人は『辛くない』って言っていい”という言葉が印象的で、たしかに大変かどうかは周りが決めることではない。その人と向き合った聞き方をしなければいけないと感じました」発達障害の特性のある人たちが、日々の困り事を減らすために欠かせないのが、家族や職場など周りの人たちの理解やちょっとした配慮であることも、本作は教えてくれる。たとえば衝動の強い人は、いわゆる失言や余計なことをしてしまいがちなのだが、本人に悪気がないことを知っておくだけで、受け取り方が変わってくるだろう。得手不得手の差が激しいという傾向も、周囲の理解さえあれば、組織内で大きな力を発揮することにも繋がっていく。「正しい知識がないと、当事者にどう接したらいいかわからないと思うのですが、ネットの情報は結構偏っていたりすることも監修の先生への取材を通して知りました。なので間違った知識や偏見を、丁寧につぶしていくつもりで描いています」連載中から本作への反響は大きく、このテーマへの関心の高さや、他人事ではない感じもうかがえる。「2巻以降、お話を聞きたい人がすでに何人かいて、『実は私も…』という声も多くいただいています。そういった繋がりから、さらに話が広がっていくかもしれないですね」『発達障害なわたしたち』1軽度のADHDと診断されたマンガ家と担当編集者が、さまざまな症状の当事者にインタビュー。発達障害について、ポジティブに考えるきっかけになる一冊。祥伝社1034円。©町田粥/祥伝社フィールコミックスまちだ・かゆマンガ家。『マキとマミ~上司が衰退ジャンルのオタ仲間だった話~』でデビュー。著作に男のみの歌劇団を描いた『吉祥寺少年歌劇』など。※『anan』2023年9月6日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2023年09月05日発達障害っ子の災害対策!わが家の防災ノウハウ大公開!私は、もともと「何かあったらどうする?どうなる?」と考える性格。いざというときに、持ち出すものに迷ってぐずぐずしないようにするため、お薬手帳や、保険証、病院の診察券は常にまとめて、持ち出しやすいようにしてあります。Upload By 寺島ヒロバラバラな場所で被災したらわが家の凸凹きょうだいは、現在、兄タケルが大学院生、妹いっちゃんが通信制の高校生。比較的家にいることが多く、くっつき合って暮らしているので、もし地震などがあってもお互いを探し合うことはあまりないかもしれません。しかし、頻度は低いですが、タケルはフィールドワークで1人で遠くに出かけることもありますし、いっちゃんも友達と遊びに行くこともあります。もしそういうときに大きな災害に遭ってしまったら、不安でその場から動けなくなったり、逆に慌てて動き回ったりして危険かもしれないなと思います。位置情報が分かるアプリを活用集団で被災したときは、指示されたことを理解できなかったり、何か手伝いを任されてもうまくできなかったりして、ほかの人に迷惑をかける可能性もあります。そういうことも考えて、一刻も早く合流できるよう、いつも持っていスマートフォンやタブレットに家族全員がお互いの居場所が分かるアプリを入れています。わが家で使っているアプリは、そのスマホやiPadがある場所を「だいたいこの辺にあります」と地図上で表示してくれるものです。普段から「動けなくなった!」などのSOSを受けて探しにいくときも便利に使っています。お出かけのときには必ず障害者手帳をまた、バラバラに被災したとき、身元を分かるようにするため、出かけるときには障害者手帳を常に携帯するようにしています。もちろん、帰ってきたら「元の位置」に戻すようにします!避難所暮らしはどうなる?災害復旧がすぐにできない場合は、避難も考えないといけません。しかし、わが家の凸凹きょうだいは、基本1人になりたい時間が長いので、ほかの人と一緒の環境で寝泊まりするのは難しそうです。特にタケルは緊張が高まるとしゃべり続けてしまう可能性も高いですし、一緒にいる方々に迷惑をかけてしまうかもしれません。基本的には自宅避難基本的には家でできるだけ粘ろうと思っているので、乾物や缶詰はいつも1週間分ほど買い置きしてあります。Upload By 寺島ヒロまた、避難のための移動や、避難所暮らしが難しい場合に簡易寝所として使うため、何がなんでも自家用車(軽ですけど)を維持しようと思っています。わが家の家計においては、本当に大きな負担ではあるのですが……日ごろの送迎にも使いますし、車があると夜間の時間を有効に使えるというのもありますから、なんとか頑張っています。普段からちょっと気をつけていること災害対策というわけではないですが、地域での繋がりをつくるために、ちょっとだけ心がけていることがあります。それは、地元の夜中のコンビニに行くこと。夜中に行くと店番しているのは大体経営者家族の誰か、つまり、元々地域に住んでいた人だったりするんですよね。特に深夜でもお酒を販売している店は、ずっとその地域で塩屋や酒屋を営んでいた一家の可能性が高いのです。特に仲良くなろうと意気込むことはないと思うのですが、ときどき買い物に行って丁寧に会話して「この辺に住んでいるのだな、子どもになにか障害があるみたいだ」と覚えておいてもらえるようにします(行き帰りの夜道には気をつけて!)。もちろん助けてもらうことばかり考えるわけにはいかないので、こちらも近くのお店の人や、人の顔は覚えるようにするし、地域のイベントの手伝いを頼まれたら引き受けたりもします。地味ですが、こういうことがいざというとき、お互いの助けになるんじゃないかなと思って、日ごろから心がけています。執筆/寺島ヒロ(監修:新美先生より)災害時のための備えについて教えて下さりありがとうございます。とても具体的な内容で、分かりやすく、わが家でどのような対策が必要かについて考えるきっかけにもなりました。災害時という「普段と違う状況」というのは、発達の偏りがある人にとって、通常よりもさらにストレスがかかりやすい状況で、実際にその時はそれなりに苦労することが予想されます。それでも、一人ひとりの特性にあった対策を立てておいて、いざというときにも乗り切っていくしかないですね。お子さんが成長して行動範囲が広がっているなら、GPSを使った位置共有アプリなどを設定しておくのはとてもいいですね。突発的な出来事がおきるとパニックになって連絡がすぐにとれないということもあるかもしれません。災害時は電話が繋がりにくくなることがあるかもしれないですが、位置共有アプリならデータ通信が生きていれば場所が特定できてお互いに安心ですね。避難所生活が、発達の偏りのあるタイプの人にとって可能かどうかは、その方の特性にもよりますが、他者との距離が近く人が多くざわざわしている避難所には入れない方もいると思います。自家用車や、テントなどを活用することを考えて準備しておくことは大事ですね。また、非常事態では、口頭でいろいろ説明するとかえって不安が増しやすく、書いて見せて伝えたほうが伝わりやすいという方もいます。筆談セットなどを用意しておくのもオススメです。寺島さんのご家族は、家族一人ひとりが災害時に備えて準備したり、役割を分担したりしているのはとても素晴らしいです。この記事を読んで、わが家ももう少しいざというときのための対策をしておかなければいけないと反省しました。ありがとうございました。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年09月04日きょうだい児として育ったはちみつこさん。きょうだい児とは、障害や病気などを兄弟姉妹に持つ子どものこと。はちみつこさんにはふみちゃんという妹がいるのですが、子どものころから少し「あれ?」と感じることが多くありました。そんな矢先、「就職したはずの妹が解雇になった」と母親から電話を受けたはちみつこさん。結局ふみちゃんははちみつこさんが住むB市に引っ越すことが決まったものの、家賃はすべて母親持ち。自分とあまりにも違う扱いを不公平に感じ、はちみつこさんはふみちゃんへのイライラを抑えられません。はちみつこさんがふみちゃんにイラ立ちを募らせていたのは、当時の仕事上での待遇にも原因があったようで……?そして3年後。妹との関係は… しばらくの間ふみちゃんと距離をおいていたはちみつこさん。そんな2人の関係を変えるきっかけとなったのは、はちみつこさんの出産でした。母親から、ふみちゃんははちみつこさんにずっと憧れていること、女性としての幸せを望めない可能性があることなどを聞いたのです。親になったからこそ、母親のふみちゃんへの気持ちを理解できるようになったはちみつこさん。今ではピンチのときに助けてもらうなど、ふみちゃんを頼りにしています。まだふみちゃんを心配に思うこともあるはちみつこさんですが、限りある人生の中で、家族と暮らす「今」という時間を大切にしたいと思っているのでした。 はちみつこさんが感じたように、「親になって初めてわかった」という経験をしたことがある方は多いでしょう。たしかに、マイペースなふみちゃんとしっかりもののはちみつこさんに対し、母親の対応は平等ではなかったかもしれません。 ですが、母親はどちらの子のこともしっかりと愛していたはず。 人のきょうだい関係を羨ましく感じることもあるかもしれませんが、家族の存在は何にも代えがたいものです。 自分の家族だからこそ築ける、かけがえのない関係を大切にしていきたいですね。著者:マンガ家・イラストレーター はちみつこ
2023年08月31日発達障害の姉と妹は仲良し姉妹わが家には3歳差の仲良し姉妹がいます。自閉スペクトラム症、ADHDがある姉(現在中1)は、小1~小3は通常学級(小1は加配あり)、小4~小6は特別支援学級(情緒)、中学進学後も特別支援学級(情緒)に引き続き通っています。普段は素直で優しい姉ですが、こだわり強め、癇癪頻発、また特性から1日中しゃべり続けていることもあります。記憶力が良いため昔のことをよく覚えていて、特につらく悲しい記憶が抜けない面があります。以前交流級の男子数名からいじめにあったことがあり、学校へ行くことが怖く現在は不登校を選んでいます。妹(現在小4)は、周りをよく見ていて常に気配りできる子どもです。いつも自然に姉の面倒を見てくれていて、声かけのタイミングや話の聞き方は療育の先生より上手と思えるほどです。二人の関係は良好です。妹が姉のやりたいことを優先してくれることもありますが、妹が対戦ゲームをしたいときなどは、姉を誘って一緒に遊んでもらうこともあります。姉は話を聞いてもらいたいタイプなのですが、脈絡なく話してしまったり、話が飛び飛びになったりもするし、聞き取りにくいことも多々あります。それでも妹は相づちを入れつつ「ちゃんと聞いているよ」という姿勢で姉との会話を楽しんでいるようです。このように妹は話の聞き方一つにしても、親以上に姉への対応が上手だなと感じています。それは4歳の頃から自然に身についていったように思えます。Upload By ユーザー体験談4歳から自然と身についていた姉への「声がけの仕方」妹は小さい頃から”周囲の人を助けたい”と思う性格のようで、園や学校のお友達が困っていると自然と手助けをしていましたし、姉のフォローもいつもすすんでしてくれています。姉は話しかけられても気づかないことが多いのですが、妹は4歳くらいの頃から、姉に話しかけるときは姉の視界に入る場所に移動して名前を呼び、一旦注目させてから話すということを自然と行っていました。普段私がそのように話しかけている様子を見て、自然に習得したようです。妹が年長くらいになると、出かける際、姉に「〇〇(姉の名前)、□□(場所)に行きます。あわてないで準備します」などと姉に声がけをするようになりました。姉のパニックや癇癪に事前に気づいてくれるまた、妹は姉のパニックや癇癪に対して、落ち着くまでそっとしておいたほうがいいときと声がけをしてあげたほうがいいときの違いを感覚的に掴み、対応してくれます。それも妹が4歳頃から自然と行っていたように思います。姉がパニックや癇癪を起こしたときは、落ち着くまで待つのが1番の対応になります。妹はそのときも何も話しかけずただ待っています。そして、おさまったタイミングで、「落ち着けてよかった」など声をかけて、パニックや癇癪を起こしたことは責めません。ちゃんと落ち着けたタイミングを見極められていることもすごいことだなぁと思います。また、姉がパニックを起こしそうになる状態に気づくのがとても早く、先生がそれに気づかず進めていると、「〇〇(姉の名前)大丈夫?ちょっと休む?」と絶妙なタイミングで声をかけています。妹の声かけがもう1分遅かったら癇癪を起こしていただろうと思うことが何度もありました。癇癪を起こしてしまうと長いし、本人も周りもつらいので、一瞬の表情の変化や動きで気づいて助けてくれる妹にはとても助かっています。また姉も「ありがとう、ちょっと休みたいな」と妹の声がけだと素直に応じられることが多いです。Upload By ユーザー体験談姉のパニックを最小限に抑えてくれる妹のすばやい状況理解と対応以前療育施設で、姉と妹だけ別の部屋に案内されたときの話です。案内された部屋には、学校の机と椅子があり、その部屋に案内された時、一瞬姉の動きが止まりました。瞬時に妹はその動きに気づき「やばい!」と思ったそう。やはり姉が癇癪起こす直前の状態、体が強張る様子になっていました。いじめられて不登校になった姉は、学校を思い出させる机と椅子がとてもつらく、耐え難いものでした。療育の先生はそのことを知らなかったということもあり、異変の理由に気づきませんでした。私は、姉が学校の机と椅子が嫌なことを妹には話していなかったのですが、妹は姉が学校を連想したのかもしれないとすぐ気づき、部屋に入る前に「このお部屋は学校みたいだから〇〇(姉の名前)は苦手みたい」と療育の先生に教えてくれました。また姉には「この部屋はいやだよね。無理しなくていいと思うよ」と穏やかに声をかけていました。Upload By ユーザー体験談その後、妹が姉にその後の予定を話し、落ち着かせようとしてくれました。姉も一旦落ち着きかけたのですが、少しパニックになってしまったため、その日の療育はそのまま終わってしまいました。ですが、あのまま案内された部屋に入っていたら、1週間は荒れていたと思います。妹の気づきと素早い対応のおかげで、その日1日荒れる程度で済みました。これからも仲良し姉妹で!姉は少しでも過ごしやすいように、妹には好きを優先してほしいこのように妹には姉だけでなく、私もとても助けてもらっています。ただ、優しすぎて自己主張が苦手な面がある妹。いつも負担や我慢ばかりさせているかと思うと、親として申し訳ない気持ちもあります。ですので、母と妹2人で出かけたり、ぎゅーっと抱きしめることは欠かせません。Upload By ユーザー体験談親としては、二人がこれからも仲良し姉妹でいてもらいたいというのが何よりの望みです。姉は、素直で優しい部分はそのままで、気持ちのコントロールを徐々にできるようになってもらい、悲しみばかりに囚われず少しでも過ごしやすくなってもらいたいです。妹は……いつも自分の気持ちよりも相手のことを優先しがちなので、もっと自分のやりたいこと、好きなことを優先できるようにになってもらいたいです。サポートには本当に助かっていますが、妹には妹の人生があると思うので、その部分は我慢をさせないように親としても注意して見守っていきたいです。また妹は、家では姉をサポートし、学校では特別支援学級の子をサポートしているようです。本人も人を助けたい思いが強く、大人になったら姉の通う療育施設の先生になろうかなと話しているので、療育の先生になって支援が必要な子やその家族の支えになる存在になってくれればと思っています。イラスト/カタバミエピソード参考/naco.(監修:森先生)とっても良い妹さんですね。お母さんから妹さんへの配慮も、大変素晴らしいと感じます。発達障害のある子どもが成長するためには、親だけでなく家族全員の協力が得られるとより良いですよね。親だけではケアできない部分もあり、同年代のきょうだいからケアしてくれることは、とっても助かるでしょう。ただし、パニックや癇癪の対応は、大人でも疲れてしまうこともあるくらい大変なことです。「きょうだい児」がどんなに優秀でも、親はそれに甘え過ぎないことが大切です。「きょうだい児」にも、安心して家族に甘えたり、ときに反抗したりすることも必要です。「きょうだい児」とのコミュニケーションも大切にして、ときに親と2人っきりで甘えられる時間を意識的にとってあげること。「お世話をしてくれるから」でなく、「その子自身を愛している」こと、「その子のやりたいことを応援している」ことを、これからも今の調子でしっかりと伝えられるといいのではないかと思います。
2023年08月31日幼稚園からあった登園渋りが、小学校になりよりひどくなって…現在10歳の息子は、4歳で自閉スペクトラム症(ASD)、ADHDの診断を受けています。息子は感覚鈍麻があり刺激が欲しくて多動になるタイプです。小学校入学後に服薬を開始したため衝動や多動はだいぶ落ち着いていますが、基本的に落ち着きがなく、一度にたくさん指示があると処理しきれずに「もういい!」とキレることが多々あります。幼稚園でも入園直後から登園渋りはあったのですが、年中から療育に行くようになると息子にあった声掛け、対応ができるようになったこともあり、少しずつ成長することができました。進学にあたっては就学相談を行い、学校とも相談をしたのですが、入学予定の学校に情緒級がなかったこと、通級指導教室は別の学校へ移動して受けるということを息子が「疲れるから嫌だ」と拒否するのが予想できたので避け、結果通常学級となりました。そして、入学後間もなく、登校渋りが始まってしまいました。登校渋りの原因1:ゲーム依存ゲーム時間、寝る時間を守ってくれず…息子の登校渋りの原因は大きく分けると2つあると思います。1つ目はゲーム依存でした。幼稚園の頃、友達の家で見たオンラインゲームを「やりたい!」とずっと言っていた息子。ゲーム依存の危険性も理解していたのですが、時間を守ることを覚えたり、友達と約束をして楽しくプレイするのは成長になるかと思い、あるシューティングゲームを1年生のゴールデンウィーク前に解禁しました。ですが、これが間違いでした。それまで慣れない小学校への登校で疲れていた反動もあってか、ゴールデンウィークに過度にゲームにのめりこんでしまった息子。寝るように言っても寝てくれず、生活リズムは大きく崩れました。学校に行くようになったら朝起きてくれるだろうと思っていたのですが、ゴールデンウィークが終わり登校する日の朝、「嫌!行かない!」とベッドで癇癪を起こしたのです。Upload By ユーザー体験談「どうして?」と聞いても、本人はうまく気持ちを言語化できないのもあり、「全部が嫌になったんだ!」と声を上げるばかり。1日休ませてみたところ、翌朝も同じように癇癪を起こしたので、遅刻して登校させてみたりと、なんとか意地でも学校に行かせるという状態になってしまいました。寝る時間を約束しても、ゲーム時間を制限しても、時間がくると駄々をこねまくり、毎回こちらが疲れてしまいました。ここで私が面倒になって、長時間ゲームをやらせていました。でも、ボイスチャットで友達とギャグを言い合いながらプレイする姿が本当に楽しそうで……。そんなに楽しいなら……と思ってしまう面もあったのは否めません。登校渋りについてはスクールカウンセラーさんに相談していたのですが、6月、ゲームのシステムがアップデートをし、本人が目指していたステージのクリアが課金をしないと難しくなりました。さんざん課金をお願いされたのですが、私も夫もそこは許可しなかったところ、「飽きたらから辞めた」とあっさりそのゲームからは引退。その後は別のゲームを始めたのですが、前のようにはまることもなく、時間もそこそこコントロールできるようになりました。ただ、学校で嫌なことがあるとゲームに依存しがちになってしまうので、そこは前のように依存しないように注意して見ています。登校渋りの原因2:友達トラブル運動会で「また、分からなくなっちゃったの~?」と揶揄される息子2つ目は友達とのトラブルで、これが最大の原因であり今も頭を悩ませているものです。切り替えの苦手さや不注意の特性からの失敗をクラスメイトによく注意され、それが嫌だと言っている息子。1年生の運動会での玉入れ競技のとき、その場面を実際に見る機会がありました。玉入れが終わり数を数える場面で、息子は玉を持たなくていいのに手に玉を持ってしまいました。すると、それに対してクラスメイトの男の子が「また、分からなくなっちゃったの~?」と揶揄していたのです。先生から言われていたことを忘れてしまっていたこと、また、やることの切り替えがスムーズにできなかったことが原因の失敗だと思います。「今は玉は持たなくていいんだよ」という声掛けなら問題ないのですが、男の子の言い方からはバカにされたようなニュアンスを感じた私は、(今までもよく友達に注意されると言っていたけれど、こういう言い方だといじめに発展しかねない……)と不安に感じました。そして即、教頭先生や教育支援センターに相談し、なるべくクラスの様子を見に行ってもらえるようお願いしました。Upload By ユーザー体験談「こんな特性持って生まれてきたくなんてなかった」「俺のことなんだからほっとけよ!」と叫ぶ息子このようなトラブルがありましたが、1、2年の時は先生の対応も手厚く、だいたいは登校できていたと思います。ですが3年生になると「学校なんて行かない!」と本格的に不登校になってしまいました。本人が落ちついているときに改めて「学校に行きたくない理由は?」と聞いてみたところ、「クラスメイトに注意されるのが嫌なのが1番の理由。それがなければ学校は案外楽しいので行けるよ。勉強嫌いだけど。好きな教科もあるし」と言う息子。でもその後興奮して、「俺はもう一万回はクラスの子から『遅い!』とか『早くしろ』とか、『どうしようもないな!』って言われてきた!もう生きるのが嫌だし、こんな特性持って生まれてきたくなんてなかった!俺のことなんだからほっとけよ!」と爆発していました。Upload By ユーザー体験談さらに、「お母さんやお父さんだって、特性がなければもっと俺のことを自慢できたし、俺だって、特性がなければ●●君みたいなしっかりした子みたいにやれたし。お母さんもそんな子どもが欲しかったでしょう?」とも……。息子には少しでも生きやすい方法を身につけてほしい……、親ができることは何でもしたい……そんな思いの中、私は再度学校に相談をすることにしました。中学まで引き継げる支援を。息子を支えるチーム体制ができ、母の負担が減りました私は担任の先生に面談をお願いし、「通常学級が合ってないのかもしれません」と伝えました。すると先生は「注意されることが苦痛であるならば、環境調整で原因を取り除くことによって改善できるはずです。授業そのものは本人にも楽しんでいる様子がありますし、発言も見られます。もっと頑張れる子だと思います」と言われました。そして先生方は以下の対応をしてくれることになりました。・なるべく叱らない・おおげさなくらいに応援して、課題ができたらほめる・不注意があったら先回りして配慮をしておくUpload By ユーザー体験談また、教育支援センターに相談したところ、巡回相談をしてくれることになりました。そして、心理士さん、言語聴覚士さん、作業療法士さんの中で1名(日によってどなたがが参加されます)、学校に配属されている発達障害のある子どもと保護者をつなぐベテランコーディネーターの方、担任の先生と私の4人で、どうして息子が学校に行けないのか、行けるようになるためにどのような支援が必要かを話す場が設けられました。「学校でできる工夫」「家でできる工夫」「それをもとに変わってきたこと」小さな目標をたて、それができているか確認、見直しをしています。息子の行動の説明やアドバイスをまとめた資料をくれることもあります。感覚鈍麻がある息子は、高いところからジャンプすることで、自分の体の感覚をつかむ訓練になるのでそういった遊びをするといい、などです。一緒に考えていただけるようになって私の負担が少し減りました。小学生のうちに息子の困りごとを減らすとともに、中学校生活での必要な支援をまとめておくことで、息子の助けになればと思っています。特性を抱えて生きるつらさを感じている息子に寄り添っていきたい息子は明るく根は素直で、悪いことをしたら謝れる子どもです。ユーモアもあるので、最初の友達作りに問題はありません。ただ、頑固さや切り替えの悪さなどから、その後の継続した関係が難しいようでなかなか仲の良いクラスメイトができません。息子が特性を抱えて生きるつらさを感じている現在、息子の気持ちに寄り添うことが私のつとめだと思っています。ですので、不登校を許容したい気持ちもあるのですが、それよりも今は周りの助けを借りて本人の困りごとを取り除き、環境調整をしていくことが最優先です。100人いれば子育ても100通りですよね。他の子どもと比べてしまったり、今も何かあるたびに落ち込んだり、疲れてしまうこともありますが、「息子には息子にあった子育てをしよう!」と思っています。イラスト/吉田いらこエピソード参考/翠ママ(監修:藤井先生より)100人いれば子育ても100通り、息子さんには息子さんにあった子育てを、との言葉に強く共感いたしました。この言葉の意味を頭では分かっていても、どうしても実行できないことが親子だからこそあると思います。見守る、寄り添う、その子のペースを大切に、と言われてもできません、と話される親御さんは多くいます。私自身も子育て中なので、そのお気持ちはよくわかります。それでも、100人いれば100通りの子育てというのはとても大切だと思います。そこにたどり着くまでに時間はかかるかもしれませんが、一人で子育てを抱え込まず、いろいろな人に相談することで、視野が広がり、お子さんのペースを大切にする視点に立つことができるようになります。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年08月24日【発達障害×子育てアンケート】家庭での勉強に関してお困りごとがありますか?発達障害のあるお子さんの保護者の中には、「子どもがなかなか勉強に取り掛かろうとしない」「宿題に時間がかかってしまう」、そんな悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか?夏休みには宿題が多く出されることもあり、家庭での勉強法について気になっている保護者の方もいらっしゃることでしょう。そこでLITALICO発達ナビでは、家庭での勉強法について公式LINEにてアンケートを実施しました。今回のアンケートでは、家庭学習での困りごとはあるか?また、具体的な困りごとや工夫していることについてなど、みなさまから回答をいただきました。※アンケートはLITALICOの公式LINEにて!『お友だち登録』お待ちしています!Upload By 発達ナビ編集部具体的な困りごとの内容、家庭で工夫していることの回答「難しい漢字や、算数の文章問題が苦手で癇癪を起こしがちです。カーッとなってるときは手がつけられないので、自宅では本人ができるとこだけやって直しはせず(直そうとすると余計に怒るので)、翌日学校では落ち着いているので先生に教えてもらったり直していただいたりしています」「間違えると適当になり、ひどいと紙をぐちゃぐちゃにしてしまうこともあるので、勉強のときは横について一緒にやっています」「集中力がなく、気が散るタイプなので、自分自身で集中できないことが多い。自分でできるようになってほしいので、少しずつ本人に任せてみていますが、気づかせてできていないと一度パニックになって、落ち着いてからじゃないと進まないので、なかなか難しいです」LITALICO公式LINEアカウントお友達へのアンケート結果より回答期間:2023年8月1日~8月3日回答人数:1,578名※一部抜粋「だいたい始める時間と終わる時間を決めてしまい、はかどらなくても終わりの時間が来たら思い切ってやめてしまう。あまりにもはかどらなかった次のときはやる量を決めてやる」「宿題が終わったらゲーム解禁にしてあります。あとは終わったらオヤツとか。いくつもあるときは、せめて一つだけでも終わらせよう! と声をかけ、自分で選んだものだけでも終わらせるように促します」「気持ちが落ち着くとあっさりできる場合が多いので、一旦勉強はやめて、遊ぶなど本人の好きなことをやって、再開できるまで待っています。ただ、遊ぶ時間が長くなりがちで『そろそろ』と声をかけて、子どもも『そうだね』となる日と、『うるさい』と言われる日があり、再開するまで時間がかかり、一体いつするの? と思うと、親はハラハラ、イライラしてきます」LITALICO公式LINEアカウントお友達へのアンケート結果より回答期間:2023年08月1日~08月03日回答人数:1,578名※一部抜粋まとめ今回のアンケートでは、お子さんの家庭学習で困りごとはあるかをお聞きしたところ、多くの回答者が「困りごとがある」と答えていらっしゃいました。全体の4割近くの方が「勉強になかなか取りかからない」、次いで多かったのが「誰かが見ていないと進まない」という回答でした。保護者の方の多くが、ご家庭で勉強に向かわせる困難さを感じていました。また、癇癪を起こす、気が散るなど、発達障害の特性とも捉えられる困りごとも寄せられていました。家庭学習の具体的な困りごとは多種多様で、工夫して対処できているご家庭もあれば、「このまま勉強をしなければどうなるのだろう……」といった、お子さんの将来に対する不安を抱えている方も多くいることが分かりました。さまざまな困りごとがある中で、子どもの得意・不得意を整理しながら一人ひとりに合った対策を考えることが大切になります。進路や将来の就職、自立に向けて、子どもの個性を伸ばす学びの環境を整えることも必要なのではないでしょうか。LITALICOでは、お子さん一人ひとりに合った環境を整えるサポートのサービスをLITALICOライフが担っています。LITALICOライフでは、実際の障害に合わせた環境の整え方や、どういう対策が必要かを一緒に考える「勉強会」「個別相談」を行っています。お気軽にご相談ください。LITALICOライフでは現在、【ADHD向け個性にあった小学校・中学校選び】に関する勉強会を開催しています。子どもの困った行動への対処法や、ADHDがある子どもの事例を通じて、小学校から高校までの進路についてどのような選択肢があるのかを知ることができます。Upload By 発達ナビ編集部※アンケートはLITALICOの公式LINEにて!『お友だち登録』お待ちしています!(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年08月22日息子が発達ゆっくりのため、娘ももしかしたら…?娘が産まれる少し前から息子の発達が気になっていた私……娘が産まれてすぐ、まだ産院に入院していた頃から、娘ももしかしたら発達ゆっくりさんではないかと心配していました。娘は息子と同じく産院ではすごくよく眠る赤ちゃんでしたが、息子と違った点は母乳の飲み方が上手かったこと。私自身も2人目の育児で慣れてきていたのもあるかもしれないのですが、息子のときには感じなかった力強さを感じました。しかし退院してから『抱っこしていないと眠らない、眠ってもすぐ起きる、そして物音に敏感な赤ちゃん』に豹変した息子のことがあったので、「もしかしたら、退院してから娘も豹変するんじゃ……」と不安を抱えていました。しかしいざ退院してみると、娘は入院中と全く変わらず母乳をよく飲み、よく寝る赤ちゃんでした。全く手がかからなかったので「え、2人目育児ってこんなに楽なもんなのか!?私、母としてのスキル爆上がりしてる!?」なんて勘違いするほどでした。(笑)Upload By 海乃けだま反応が返ってくる!!育児を心の底から楽しめていた時期生後2ヶ月頃になると、娘はあやすとよく笑うようになりました。息子のときには全くと言っていいほど反応がなかった"いないいないばぁ"にもニコニコ笑ってくれるではありませんか!!「こ……これがもしや……いわゆる定型発達児の反応なのか!?」あやすとすぐに反応を返してくれる娘に「めちゃくちゃ可愛いやんけーーーー!!」と親バカが炸裂し、"娘ももしかしたら……"という心配は吹き飛んでしまいました。(笑)息子のときにはしなかった寝返りも5ヶ月頃には自らしていて、それからもハイハイやつかまり立ち、離乳食の手づかみ食べやスプーン食べもすんなりと進み、10ヶ月頃には単語や指差しも出てきました。育児書に書いてある目安どおりの順調な発達に「娘は定型発達に間違いない!!」と思い込むようになりました。Upload By 海乃けだま順調に思えた発達。落ち着きのなさが気になり1歳半健診で相談するも…1歳1ヶ月頃になると、娘はひとり歩きができるようになりました。しかしこの頃、娘の成長を喜ぶ反面、少し気になることも出てきていました。腰がすわった頃から横抱きよりも縦抱きを好んでいた娘ですが、ハイハイができるようになった頃から、娘は抱っこされること自体を嫌がるようになっていたのです。ひとり歩きが安定してくるようになると、さらに落ち着きのなさが目立ち始めたので、1歳半健診で保健師さんに一応相談してみることにしました。健診をひと通り終え、落ち着きのなさ以外には特段困っていることもなく、発達の遅れも見られなかったので、保健師さんからは「様子を見ましょう」と言われました。保健師さんのその一言に「落ち着きはないけれど、診断されるほどじゃないのかもしれない」と少し安堵しました。Upload By 海乃けだま様子見と言われながらも、兄と比べて意思疎通ができていたため、発達の凸凹を受け入れたくなかった入園までの日々…1歳半健診後、定期的に保健センターの保健師さんから、娘の発達についての確認の電話がありました。その頃の娘はというと、2語文がなかなか出ずに少し心配していたものの、2歳を過ぎた頃から爆発的に言葉が出てきたこと、そしてASDの息子と比べて意思疎通も容易だったため、様子見のまま発達相談はせずにいました。正直なところ、息子にASDの診断が出たばかりだったので「息子だけじゃなく、兄妹2人とも発達障害だとしたら……娘にも診断が出るのは耐えられない」と受け入れ難い気持ちばかりが大きくなっていました。しかし、このまま幼稚園に入園して「きっと大丈夫だろう」と思う反面、「もしも集団生活についていけなかったら……」という気持ちは常に頭の隅にありました。娘が2歳半を過ぎた頃にまた保健師さんより連絡があり、発達教室のお誘いがありました。最初は断ろうと思いましたが、「一応通っておこう」と考えなおし、発達教室に参加することにしました。発達教室での娘は、落ち着きのない一面はありつつも、保健師さんの話を聞いてちゃんと動けているように感じました。「落ち着きはないけれど、このまま幼稚園にも行けそう……行けてほしい!」揺らぐ気持ちは変わらないまま、娘が定型発達であってほしい思いだけが強くなっていきました。Upload By 海乃けだま体験入園で園長先生から言われた言葉。娘への後悔…発達教室が終わり、保健師さんに発達検査(新版K式発達検査)をしてもらうことになりました。検査の結果は"年齢相応の発達指数"でしたが、保健師さんから「1対1で行う検査ではこの数値だけど、娘ちゃんには意識が逸れやすいところがあるから、集団生活だと娘ちゃんの持ってる力を発揮しづらいかもしれない」と言われました。それでもなお、私の中では、娘は定型発達であると信じたい気持ちが先行し、保健師さんの言葉を素直に受け入れることができませんでした。そんな矢先、娘の入園予定の幼稚園で、満2歳児向けの体験入園が始まりました。「何事もなく過ごしてほしい……」と祈るような気持ちで娘を体験入園させましたが、そんな私の思いとは裏腹に、娘は先生のお話中に教室を出て行ってしまったり、絵本の時間におままごとのおもちゃで遊び出したり……明らかに集団行動が苦手な様子でした。そんな娘の様子を見ていた園長先生から「海乃さん、息子さんのことでよく知ってると思うから言わせてもらうんだけどね(息子もその幼稚園に転入予定であったため、園長先生には事前に息子がASDであることを伝えていました)、娘ちゃんはどうかな?療育を受けたほうが今後の娘ちゃんのためにもなると思う」とすすめられました。園長先生からの言葉に、今までわが子2人に診断が出てしまうことが受け入れられなくて、娘の発達に期待を寄せ過ぎ、娘の発達凸凹な部分を見て見ぬふりをしてきてしまった自分を悔やみました。その体験入園の日の帰り道、泣きながら保健センターの保健師さんに電話し、児童精神科への紹介状を書いてもらいました。医師による診察の結果、娘は神経発達症(ADHDと軽度の自閉スペクトラム症)と診断されました。幼稚園入園前の3歳9ヶ月のことでした。現在、娘は幼稚園に通いながら、週1日療育園に並行通園しています。何にでも興味があり積極的に楽しむ娘は、幼稚園も療育園も、どちらも「行くー!!」と全力で楽しんでいます。Upload By 海乃けだま執筆/海乃けだま(監修:鈴木先生より)一般的に乳幼児健診などで保健師さんが「様子を見ましょう」という場合は、経過観察のみとなることが多いため、お子さんの発達に気になる点があれば、できるだけ早期にかかりつけ医に相談するのがお勧めです。病名告知は医師にしかできません。「わが子は定型発達で、障がいがあってほしくない」と思うのは、親御さんの自然な感情だと思います。それでも、お子さんの発達の特性がなくなるわけではありません。今回のケースのように悩んだ末、集団の中に入ってから他児との違いに気づき、専門医を訪れる親御さんもいます。今回、娘さんは3歳で神経発達症の診断がつきましたが、早いほうです。お子さんの発達のつまずきに悩み続けている親御さんが就学前に専門機関へ繋がれるようにするため、5歳児健診が少しずつ全国に広まりつつあります。できるだけ早期に診断して受容し、将来に向けて家族や保健師・教員・かかりつけ医等と一緒に考えて歩んでいくことが、お子さんのためには重要なのです。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年08月16日周囲の子どもとの差に悩んでいた2~3歳頃しのくんは、2歳を過ぎても意味のある発語がなかったことから「ことばの教室」に通うようになり、3歳になる頃には集団行動ができないということで療育センターに通うようになりました。言葉の遅れと集団行動の苦手さにくらべると、運動面での大きな困りごとはなかったのですが……当時の私は、ほかのお子さんと比較しては落ち込んだり悩んだり……ということが多く、しのくんが2歳の頃は、特に「ジャンプができない」ことに悩んでいました。知り合いの特別支援学級の先生に相談したところ、「ジャンプとスキップができることは、運動面の発達の状態を知る一つの目安になる」と聞いた私は、あわてて家庭用のトランポリンを買い、毎日しのくんとジャンプの練習をすることにしました。Upload By keiko練習の成果なのかは定かではありませんが、3歳を過ぎてジャンプができるようになったしのくん。しかし私は、今度は4歳を過ぎても「ブランコに乗れない」ということが気になりだしました。しのくんの隣で、夫がブランコのこぎ方を見せながら教えていたのですが、どうしてもうまくできず、最終的には夫や私の膝の上に乗ってブランコ遊びを楽しんでいました。Upload By keiko年長になってもブランコに乗れない…その理由は?しのくんはこの春から年長になりましたが、いまだにブランコには乗れません。いよいよ運動面での遅れが心配になってきたため、療育センターでの作業療法の時間を半年に1回から2ヶ月に1回に増やしてもらうことにしました。まず、療育センターの作業療法士の先生に、しのくんがブランコに乗っている様子を実際に見てもらうことになりました。しのくんははりきってブランコに乗りましたが、自分でこごうとしたとたん、バランスを崩してブランコから落ちてしまったのです!Upload By keikoその様子を見た作業療法士の先生は「しのくんは頭で考えてから、体が動くタイプ。また、同時に複数の動作を行うことが苦手な特性がある」と教えてくれました。・ブランコが上手くこげないのは、鎖を持つ手に意識が集中しているから。・ブランコから落ちてしまうのは、逆にこぐ動作に集中してしまい、鎖をつかむ意識がおろそかになってしまうから。ということがブランコに乗れない原因のようです(ちなみに、しのくんは、なわとびも上手く跳べないのですが、これも、ブランコに乗れないのと同じような理由なんだそうです)。さらに、作業療法士の先生は「宙に浮く感覚はすごく大事なので、椅子型ブランコに乗って練習するといいよ」とアドバイスしてくれました。スモールステップで取り組んでいくことに作業療法士の先生にいただいたアドバイスをきっかけに、無理に自分でブランコをこぐ練習をさせるのではなく、まずはしのくんを椅子型ブランコに乗せて、後ろから押して宙に浮く感覚に慣れてもらうことにしました。今後は、しのくんの特性をしっかり理解し、ほかのお子さんと比べず、しのくんに寄り添って行動したいと思います。Upload By keiko執筆/keiko(監修:鈴木先生より)療育センターでの作業療法は、感覚統合訓練かと思われます。重力不安や前庭機能の低下などをやわらげる訓練方法で、作業療法士(OT)の人がきちんと講習を受けて訓練する必要があります。訓練した結果を評価する必要があるからです。ASDのお子さんの場合、体の動きを制御する脳のはたらきの違いが、動きのぎこちなさに影響しているとも考えられています。また、バランス感覚の悪さもあるため、片足立ちが苦手なお子さんはスキップやケンケンも苦手です。このような不器用さを訓練するのがOTの行う感覚統合訓練なのです。さまざまな感覚を刺激する公園の遊具やアスレチックの遊びもよいとされています。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年08月15日「障害」について深く考えたことがなかった私私は身近に障害のある人がいたことがなく、障害者と直接関わった経験もないまま大人になり、母親になりました。世の中にはさまざまな障害のある人がいるけれど、それは自分とは関係のない、どこか遠い世界の話のように思っていたのです。そんな私がまさか障害のある子どもを産み育てることになるなんて、想像もしていませんでした。妊娠すれば障害のある子どもが生まれる可能性を、誰しも一度は考えることがあるとは思いますが、私はそんなときでも「わが子に限って大丈夫だろう」と安易に考えていました。Upload By みん障害があるかもしれないわが子を心から可愛いとは思えない日々でも次男のPを出産後、わが子の成長に違和感を感じはじめ、発達障害の可能性を疑い、その不安がみるみる現実のものとなっていく日々は本当につらく苦しい時期でした。息子に発達障害があるかもしれないと分かった頃は、一体どの程度の障害なのか?どんな風に成長するのか?がまだまだ未知だったので、障害のあるお子さんをもつ人のブログやSNSを読み漁っては、不安に思っていました。見ず知らずの人の子どもとわが子を比べては、感情の浮き沈みが常にありましたし、「障害があってもわが子は可愛い」という障害のあるお子さんを育てている親御さんたちの言葉を耳にしても、私にもそんな風に思える日が来るの?と正直自信がありませんでした。なぜなら、毎日Pと関わることに必死で、初めての育児でもないのにこんなに育てづらいものなのか?と、1歳半を過ぎた頃からは可愛いと思う余裕もなく目まぐるしく日々が過ぎていくだけだったからです。Upload By みん将来を悲観していた私…障害の受容へと繋がったきっかけは?そんな悲観的だった私の心に変化が現れたのは、Pを療育園へ入園させた時期です。それまで、「こんなに大変な子どもはどこにもいない!周りのお母さんたちは育児がラクで羨ましい!」と卑屈になっていた私の気持ちが、入園とともに少しずつ溶けていきました。なぜなら、療育園にはPと同じように困りごとを抱えたお子さんと、私のように育児に悩み、疲れているお母さんたちがたくさんいて、そんな親子を助けてくれる療育の知識や経験をもった先生方がたくさんいたからです。同じ目線で私の話を聞いてもらえ、共感してもらえる療育園の環境はたった1人で戦っているわけじゃないと実感できましたし、何より孤独ではなくなりました。それに療育園では、困りごとを相談すれば関わり方のアドバイスをもらえ、先生たちの知識や経験の多さに救われながら、私自身にも知識や経験が増えていきました。同時に障害のある子どもへの福祉制度のことや、就学、就労についてなども見聞きする機会が増えていきました。Upload By みん「想像できない」ことで不安になるのなら、「知る」ことで少しでも不安を和らげよう!「Pの将来はどうなってしまうんだろう?」と悲観ばかりしていましたが、こんな制度やこんな場所があるんだ!と具体的に想像することができ、現実的に考えられるようになったことが、私にとっては障害の受容へと繋がるきっかけになったと思います。誰だって未来が想像できないと不安だし心配になると思います。私はこれまで障害者と関わりがなかったために、障害者の生活や人生に対する知識が全くなく、メディアなどで見聞きしていたマイナスなイメージばかりを持っていたので、わが子に障害があるとなると、どうしても悲観的になるし、戸惑うのも当たり前だったと思います。Upload By みんでも子どもの未来は障害のある無しに関わらず、親がいくら理想をもっていても、逆に絶望したとしても、結局は子どもと共に過ごす日々の中で一緒につくっていくものなんだと感じました。子どもの成長に対して、親が勝手に過信や期待をしすぎるのも、悲観的になったり諦めたりするのも、どちらも違うと思いますし、子どもの現在を見て今必要なことやできる限りのことをし、精一杯関わっていくことで、Pにとっても私たち家族にとっても、自然とより良い未来へと繋がっていくと信じています。執筆/みん(監修:森先生より)「子どもを可愛いと思えない」というお母さんは、子どもに愛情を持っていないわけではありません。むしろ反対で、子どもへの責任感が強すぎて、その重圧から育児を素直に楽しめなくなっているのです。真面目で思い詰めてしまうタイプに多いでしょう。最愛のわが子に障害があると伝えられたら、受け入れられない気持ちがわいてくるのは当然のことです。受け入れられないことすら受け入れられず、自分を責めるという悪循環に陥ってしまう方が少なくありません。同じ状況にいる人にしか分からない葛藤や悩みがあります。当事者やその家族同士が関わる機会があると、悩んでいるのは自分だけでないことに気がつきます。悩みを安心して話せて、理解し合える人がいると思うだけで、心理的な負担はグッと減ります。また、人は漠然とした未来に対して一番不安を募らせるものです。将来を具体的に想像できるような道筋を見聞きすることで、障害を受け入れて、地に足をつけて準備を進めることができますね。1人で不安を抱えていないで、まずは行政や療育センターに相談してみるといいですね。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年08月14日小学校に入学した発達障害の息子を持つママ・つくさんは、フルタイムで働いていたため、周りの保護者と交流を持つ時間がなく、ママ友作りに苦戦していました。そして、発達障害の息子が同級生とうまく関わっていけるのか不安があり、「周りにどう思われるか……」と、そればかりを気にしていました。交流が苦手なつくさんですが、学童に通う息子をお迎えに行った際は、すれ違う保護者に必ずあいさつをしていました。保護者たちが快くあいさつを返してくれる中、毎日会うあるお母さんは、なぜかいつも冷たい反応……。つくさんが苦手なイメージを持っていたその保護者は、息子と同じ学年のNくんのお母さんでした。親同士はなんとも言えない空気が流れていたものの、子どもたちは大の仲良し。息子とNくんはよく遊ぶ間柄だったのです。ある日、ふたりが公園で遊んでいたとき、転んだ拍子に歯を折ってしまったNくん。息子は急いでNくんのママを呼びに行き、帰宅後、つくさんに公園での出来事を報告しました。 Nくんが心配になり、Nくんの家へ足を運ぶことにしたつくさん。息子と遊んでいた際の事故のため、「もし難癖つけられたらどうしよう」と不安もある中、Nくんのママと顔を合わせました。Nくんを気遣う言葉をかけると、「わざわざ来てくれて、ありがとうございます……!」と、つくさんの予想とは裏腹に、申し訳なさそうに深く頭を下げるNくんのママ。 折れた歯は、抜けかけていた乳歯だったそうで、つくさんが安心していると……。 冷たい反応だった原因は…!? 「それより……息子さんがわざわざ家まで呼びに来てくれて、とてもありがたかったです」。 ニコッとほほ笑むNくんのママ。 「Nくんのママが笑ったところ、初めて見た……。今まで勝手に冷たいイメージを持っていてごめんなさい……」と、心の中で謝るつくさん。 Nくんのママは、お友だち作りが苦手なNくんを心配していたそう。 「だけど、息子さんがお友だちになってくれて、本当によかった……」 Nくんのママの話を聞き、「学童で冷たい雰囲気だったのは、心配と不安のせいだったのかな……」と感じたつくさん。 それから、Nくんのママとは“ママ友”になりました。 そして、お友だちが転んでしまったとき、とっさにお友だちの家に連絡した息子に、つくさんは感心していました。まだまだ心配することも多いですが、「私がもっと、息子を信じてあげなきゃ」と、つくさんにとっても気づきのある出来事となりました。 思わぬハプニングにより、息子の成長を感じたつくさん。ついつい心配になり手を差し伸べてしまいがちですが、子どもは親が思っている以上に成長していたり、できることが増えていたりするのかもしれませんね。 つくさんが気づきを得たように、「子どもを信じて見守る姿勢」が、子どもが成長するきっかけの一つになるのかもしれません。 著者:マンガ家・イラストレーター 星河ばよ
2023年08月13日小学校に入学した発達障害の息子を持つママ・つくさんは、フルタイムで働いていたため、周りの保護者と交流を持つ時間がなく、ママ友作りに苦戦していました。そして、発達障害の息子が同級生とうまく関わっていけるのか不安があり、「周りにどう思われるか……」と、そればかりを気にしていました。交流が苦手なつくさんですが、学童に通う息子をお迎えに行った際は、すれ違う保護者に必ずあいさつをしていました。快くあいさつを返してくれている中、毎日会うあるお母さんは、つくさんがあいさつをしても冷たい反応……。 つくさんが苦手なイメージを持っていたその保護者は、息子と同じ学年のNくんのお母さんということがわかりました。 学童で会えば、必ずあいさつをしていたつくさんですが……。 冷たいママの子どもと息子が… 「いつあいさつしても、冷たい感じの人だな……」 悲しい気持ちになっていたつくさんは、「もしかして、うちの子がNくんに何かやらかした? それで嫌われてるのかな……!?」といった可能性が頭をよぎりました。 それからしばらく経ったある日、つくさんの息子・Sくんが公園で遊んでいると、ベンチでひとり、読書をするNくんを見つけます。 「Nくん! 何を読んでるの?」 無邪気に話しかけるSくんに驚くNくん。そのままSくんを無視して読書を再開しました。 また別の日もNくんを見かけたSくんが、「一緒に遊ぼう」と声をかけましたが、何も言わず去ってしまうNくん。 「Nくんの読んでるマンガ、僕も読んでる。おもしろいよね」 めげずに声をかけるSくん。Nくんが読んでいたマンガについて話すと、NくんはやっとSくんに顔を向けました。 家に帰り、Nくんとの出来事をつくさんに報告するSくん。「Nくんと一緒に遊んだの!?」とつくさんは驚いていました。 「Nくんと遊んで楽しかった」と話す息子に、Nくんのママとは微妙な関係性ではあるものの、「子ども同士仲良くしてくれてうれしいな」と、ほほ笑ましく思うのでした。 お母さんとは壁がある中、子ども同士が仲良くしていることに安心したつくさん。あいさつをしても反応が薄いお母さんが気がかりだったつくさんですが、結局は、“子どもが学校で楽しく友人関係を築いていること”が一番の安心材料なのかもしれませんね。 著者:マンガ家・イラストレーター 星河ばよ
2023年08月10日小学校に入学した発達障害の息子を持つママ・つくさんは、フルタイムで働いていたため、周りの保護者と交流を持つ時間がなく、ママ友作りに苦戦していました。そして、発達障害の息子が同級生とうまく関わっていけるのか不安があり、「周りにどう思われるか……」と、そればかりを気にしていました。フルタイムで忙しく働いていたつくさんは、年下ばかりの周りの保護者に気が引けてしまい、ママ友作りに苦戦。発達障害の息子が周りにどう思われるか、そればかりを気にしていたところ……。 何もしていないのに、なぜ…!? ママ友作りが苦手なつくさん。フルタイム勤務で周りのママと話す機会がなかったことや、周りの保護者より年齢が上ということもあり、気が引けていました。 そして4歳のときに発達障害と診断された息子が、小学校で同級生とうまく関わっていけるのか、不安があったのです。 「周りの保護者にどう思われるか……」そればかりを気にしていました。 交流が苦手なつくさんですが、学童に通う息子をお迎えに行った際は、すれ違う保護者に必ずあいさつをしていました。快くあいさつを返してくれている中、毎日会うあるお母さんは……。 「こんにちは」 「……」 反応が薄く、そのお母さんに苦手なイメージを持っていたつくさん。学童で何度が会ううちに、同じ学年のNくんのお母さんということがわかりました。 「いつあいさつしても、冷たい感じの人だな……」 つくさんは悲しい気持ちになるのでした。 いつあいさつをしても反応の薄いお母さん。つくさんは顔を合わせればあいさつをしていたようですが、理由もなく冷たくされてしまうと、気になってしまいますよね。 ママ友作りが苦手なつくさんですが、“必ずあいさつをする”と決めていました。皆さんは、新しい環境で出会う周りのママに対し、意識して行動していることなどはありますか? 著者:マンガ家・イラストレーター 星河ばよ
2023年08月09日発達障害があるわが子、大学で受けられる支援とは?発達障害があるお子さんやその保護者のみなさんが進路選択を行う際、中学校や高校、さらにその先の進路についても考えることも多いのではないでしょうか。そうしたとき、・発達障害のある大学生はどのくらいいるのか・大学受験の際に配慮を求められるのか・授業やレポート、試験では、どのような配慮や支援を受けられるのか・国立大学のほうが合理的配慮を受けやすいのかなど、気になることが尽きないかもしれません。今回は、日本学生支援機構学生生活部障害学生支援課の取り組みや調査結果についてインタビューとともにお届けします。――日本学生支援機構の障害学生支援の概要と役割について教えてください。障害学生支援課:日本学生支援機構は、2004年に創設された独立行政法人で、国や大学等の機関と連携して、奨学金事業をはじめとするさまざまな事業を実施しています。その一つとして、大学等が障害のある学生を支援するための教職員向けの研修事業や、各大学等における障害のある学生の修学支援に関する実態を把握するための調査などを行っています。この調査は、2005年度から大学、短期大学、高等専門学校を対象に毎年実施され、調査結果は当機構のホームページで公表しています。また、9大学を拠点校とする「障害学生修学支援ネットワーク」を設け、各拠点校において、全国の大学等から障害のある学生の修学支援に関するさまざまな相談に応じるなどの取り組みを行っています。――教職員のみなさんに向けた支援、研修等も行われているのですよね。障害学生支援課:当機構では、各大学等の障害学生支援の実務担当者を対象とした研修会を例年行っています。2023年度は7月4日、5日の2日間にわたって、障害種別の学生の修学上のニーズや支援方法、障害学生のキャリア・就職支援に関する内容を取り上げ、オンライン形式で行いました。このほかにも、各大学等の教職員を対象に、障害のある学生に対する支援の在り方や、合理的配慮の提供などをテーマとしたオンラインセミナーを行う予定です。――ホームページで公表されている調査結果、特に具体的な支援事例は学校関係者の方はもちろん、保護者の方にとっても参考になりそうです。障害学生支援課:改正障害者差別解消法が2024年4月から施行されることとなり、私立も含めた全ての大学等において、不当な差別的取扱いや合理的配慮の不提供の禁止などが法的義務とされることになりました。当機構では、2016年度から2022年度まで、大学等における不当な差別的取扱いや合理的配慮に関する紛争の防止・解決等の事例を収集し、そのうち、大学等で合理的配慮を行う際などに参考となるものを選定して、ホームページで公表しています。――例えばどのような事例が見られますか。障害学生支援課:2022年度に公表した事例のうち、発達障害に関しては、それぞれの特性に応じた配慮がされた例を公表しています。例えば、手書きが困難である学生に出願書類のパソコンでの作成を認める例や、実験科目においてティーチング・アシスタントが実験の進行に係る補助やアドバイスを行う例などがあります。このほか、学生から申出があった配慮について、大学と学生とが話し合い、大学が提供できる内容で学生も納得して決定した例などを公表しています。――これから障害学生支援で注力されることを教えてください。障害学生支援課:大学等に在籍する障害学生の数は年々増加し、これに伴って障害学生を受け入れる大学等も広がっている傾向にあります。各大学等では、そうした学生が適切な支援を受けて充実した学生生活を享受することができるよう日々尽力しています。当機構としても、引き続き、セミナーの開催や情報発信を通じて、各大学等の取り組みを支援していきます。――ありがとうございました。データで見る!発達障害がある学生への支援日本学生支援機構では、診断書のある発達障害学生だけでなく、診断書はないものの発達障害があることが推察され教育上の配慮を行っている学生についても調査を行っています。2021年度は大学、短期大学、高等専門学校を合わせて1,176校から回答を回収、発達障害の診断の有無にかかわらず支援を受けている学生は、8,622人という調査結果でした。Upload By 発達ナビ編集部日本学生支援機構|令和 3 年度(2021 年度) 大学、短期大学及び高等専門学校における 障害のある学生の修学支援に関する実態調査結果報告書(P69)次に、主な入学後の支援内容について見てみます。実施している学校数にはばらつきがあるものの、授業支援だけでなく専門家によるカウセリングや自己管理指導、障害学生向け求人情報の提供など授業以外の支援も行われていることが分かります。Upload By 発達ナビ編集部日本学生支援機構|令和 3 年度(2021 年度) 大学、短期大学及び高等専門学校における障害のある学生の修学支援に関する実態調査結果報告書(P72)それでは、インタビュー内でも取り上げた支援事例について、その一部をご紹介します。【受験・入学】ASD(自閉スペクトラム症)のある学生:「試験時の座席について、一番後ろかつ隣は空席を希望(私立短大)」Upload By 発達ナビ編集部日本学生支援機構|「障害者差別解消法」施行に伴う障害学生に関する紛争の防止・解決等事例集令和4年度収集事例(P54)【授業・研究】ADHD(注意欠如・多動症)のある学生:「障害があることをクラスメートに知られずに配慮を受けたい(国立大学)」Upload By 発達ナビ編集部日本学生支援機構|「障害者差別解消法」施行に伴う障害学生に関する紛争の防止・解決等事例集令和3年度収集事例(P32)【試験・単位】SLD(限局性学習症)のある学生:「本人はレポート代替を希望していたが、かかりつけ医の所見に従い別室受験とした(私立大学)」Upload By 発達ナビ編集部日本学生支援機構|「障害者差別解消法」施行に伴う障害学生に関する紛争の防止・解決等事例集令和2年度収集事例(P32)ほかにも、受験時、授業や課題についてなど、さまざまな支援事例が紹介されています。気になる方はぜひチェックしてみてください。日本学生支援機構|障害学生に関する紛争の防止・解決等事例集各校の支援内容を確認し、気になることがあれば早めに相談を今回ご紹介した日本学生支援機構の調査結果から、大学、短期大学、高等専門学校では、受験・入学から卒業までさまざまな障害学生支援を受けられる可能性があることが分かります。希望する支援内容によっては、医師の診断書など必要書類をそろえる必要があり、それをもとに学校関係者と丁寧に合意形成を図ることが重要になります。お子さんが進学先で希望する学びを深めて卒業を目指せるように、早めに各校の支援内容を調べてオープンキャンパスなどで相談しておくと安心です。独立行政法人 日本学生支援機構(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2023年08月09日遠回り、マンホール観察…自閉症息子のこだわりは私の体力を削り続け…現在小学3年生の息子は、2歳の時に知的障害(精神発達遅滞)、自閉スペクトラム症(非定型自閉症)の診断を受けています。息子のこだわりに気づき始めたのは9ヶ月、離乳食後期の頃でした。それまで私がスプーンで食べさせていたのですが、これを急に拒否!自分の手で食べるようになり、それからはクリームシチューや餡かけなどのトロッとした物は一切受け付けなくなりました。トロッとしたものが本当に嫌だったんでしょうね…。息子のこだわりはここからはじまり、いまも絶好調!行きたい場所、やるべきことにこだわりまくり、私の体力を遠慮なく削っていきます。例えば……・駅までまっすぐ歩いたら徒歩5分のところを、わざわざ遠回りをして2~3倍の時間と距離をかけて移動。・電車で帰れば10分のところなのに、バスで1時間近くかけて帰る。しかも最後列右側の席限定!・髪の毛が地面についてもおかまいなし。マンホールがある度に中をのぞいたりにおいをかぐ。マンホールは数メートルごとにあるので、全然進まない……。・目の前の信号が青なのに拒否し、遠い場所にある決まった信号からしか渡らない!・エレベーターに乗ったら、僕は右側、ママは左側のボタンの横で立ってという指示。満員だから無理だよと伝えても、ママは左側へ行けと妥協なし……。大雨や大荷物でクタクタのときも、暑すぎる真夏でも、寒すぎる冬でも容赦なく発動されるこれらのこだわり。腰痛もちの私はもう限界に近いです……。Upload By ユーザー体験談息子のこだわりへの対応は、私の障害受容レベルによって変化してきましたそんな息子のこだわりへの私の対応は、だんだんと変化してきました。それは、私自身の障害受容のレベルとも深く関係していると思います。いまに至るまで、3段階を経てきました。1段階目、まだ障害受容ができていなかったころは、同じことの繰り返しに親のほうが飽きてしまってイライラすることが多く、止めさせようとしたこともありました。ですが、止めさせようとすると子どもが癇癪を起こすなどお互いにストレスをためてしまい、デメリットが多くあったと思います。そして2段階目、障害受容していたつもりでただ自分が我慢していただけの頃、全て好きなようにやらせて、私がそれに合わせて行動するという期間がありました。いま思い返すと、思考停止になることで楽になりたかった時期です。その後、海外で生活をした際に幼稚園の先生がとても広い気持ちで受容・対応してくれているのを目の当たりにし、自分自身がどこかでまだ障害を受容し切れていなかったことに気づきました。それからは周りの人に子どもの障害についてオープンにし、積極的に助けてもらうようになりました。これが3段階目です。Upload By ユーザー体験談海外に住んでいた頃、まだ学習できていないものなのか(未学習)、間違ったことを正しいと誤って学習してしまったものなのか(誤学習)を意識しつつ、子どもの個性を大事にしていくことの大切さを学びました。いまは、ただ好きにやらせるのではなく、子どもに対しては基本的には本人の意向に沿いつつ、こだわり、ルールを完全に定型化しないよう、たまに「揺らし」を入れて妥協を覚えさせるように練習しています。例えば、息子が、放課後等デイサービスの送迎で覚えた電車の見えるスポットに連れて行ってくれるとき。目的地も分からず「こっち」といってひたすら歩かされ、だいたい1万~1万2千歩くこともざらだったのですが、息子にどんなところに行こうとしているのか、そこで何がしたいのかを先に伝えてもらうように練習しました。それを聞いた上で、行けるときは行く、行けないときは理由を伝えて、次にこういう条件になったときに行こうという約束と、本日の代替プランBを提案して選択してもらっています。また、遠回りをする、決まった道を通ろうとするときは、「こっちは草がいっぱい生えてるから、ここから先は歩道に出ようか」、「今日はゴミが落ちてるからそっちは通らないよ」などと正当な理由を伝えて、別の道に勧めるようにしています。最初は「こっち!」と嫌がっていましたが、実際に歩いてみて「ほらね、草がいっぱいでしょ?」「あそこに犬の糞がある」などと経験することで納得してくれ、ちょっとずつ妥協を覚えてくれるようになりました。このように対応できるようになって、私も精神的に楽になりました。Upload By ユーザー体験談「こだわりはいつか必ず強みになる」息子の人生が楽しいものであるように心から願っています息子が2歳のときに通っていた体操教室の先生が「こだわりはいつか必ず強みになる」と言ってくださったのが強く記憶に残っています。Upload By ユーザー体験談息子には強い好奇心、記憶力、研ぎ澄まされた色彩感覚、卓越した運動能力、ソムリエ並みの味覚があります。これらを生かして「好き」から「得意」を見つけ自己肯定感を得て、もしその得意なことから将来仕事に繋がるものを見つけられたら最高だなと思っています。もし職業に繋がらなくても、これから生きていく中での毎日の楽しみや生き甲斐になれば充分です。ひとりっ子で、ママ命の甘えたがり。注意されると全否定されたと感じるようで、素直に聞き入れられずつい文句を言ってしまう……そんな息子に、これからも体力の限界までつき合っていきたいと思います!エピソード参考/おかんレベル8イラスト/カタバミ(監修:鈴木先生より)ASDには、こだわり保存の法則というのがあります。あるこだわりが減ると、ほかののこだわりが増えるということです。ある道に興味がなくなっても、ほかの道にまた興味がわくかもしれません。また、自分だけではなく、他人、特に親をこだわりを巻き込むことがあります。これを「巻き込みこだわり」と言います。自分が青い服を着たら親にも同じ色の服を着せるなど、自分以外の人にもこだわりを巻き込ませるのです。ASDの子どもは予定の変更が苦手です。こだわりがASDの子どもの「予定」の中に既に入っているので、それを変更することは困難になります。可能ならば、なるべく早めに予定の変更を提示してあげることも重要です。誰でも突然変更されると嫌なものです。これからもこういうASDの特性を理解してつき合っていきましょう。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年08月08日発達障害と知的障害の違い発達障害も知的障害も、社会生活を送る上で生きづらさを伴うことは、大きな共通点です。では、発達障害と知的障害は、何が違うのかと疑問に思う方もいるかもしれません。発達障害というのは、よく「発達凸凹」とも呼ばれます。得意なものと苦手なものの差が大きいイメージです。いろいろな能力の中に、著しく高いものもあれば、低いものもある状態です。一方、知的障害は全体的に発達がゆっくり進んでいると考えてみてください。どこかの能力が低いというのではなく、全体的にゆっくり成長しているのです。例えば、IQ70の10歳児であれば、精神年齢は7歳くらいというイメージです。そう解釈すると、目の前の子どもにとって何が必要かが見えてきます。小学校4年生の中に小学校1年生の子どもが混じっている、だからレベルに合った学習内容の取得が必要だといった具合です。そしてそのゆっくりとした成長が、成人になっても12歳くらいの水準で止まってしまうのが軽度知的障害です。ただし、必ずしもみんなの精神年齢が12歳レベルで止まるかというとそうではなく、生活上の経験値がそれぞれ異なりますので、あくまでも目安です。子どもたちの知的なしんどさもしも発達障害と知的障害の両方がある場合、個人的には、まず知的なしんどさに対応することが先決と考えます。日常生活や社会的な生活を送る上での困りごとは、知的なしんどさから生じる部分が多いからです。発達障害に知的障害も伴う場合は、知能の程度(軽度・中等度・重度)がどうかという点が重要になります。発達障害でもIQが高ければ、今の社会を生き抜いていく方法は少なからずあるでしょう。こだわりが強い自閉スペクトラム症のある人が、興味や専門性が活かされるような技術職や研究職に就いて、高いパフォーマンスを発揮できることも見聞きします。また、大手企業を起業した経営者のなかにも、診断を公表している方がいます。ADHDの特性である行動力やアイデア力が、起業に生きるというのは想像しやすいでしょう。「軽度・中等度・重度」の程度の違い知的機能の水準は一般的にはIQで表され、知的障害の基準のひとつに「IQ70未満」があります。障害は、その程度によって次のように4段階に分けられます(WHOの「ICD-10」より)。IQ50~69(おおよそ9~12歳)……軽度IQ35~49(おおよそ6~9歳)……中等度IQ20~34(おおよそ3~6歳)……重度IQ20未満(おおよそ3歳以下)……最重度※()の年齢は、発達期を過ぎた成人に対する精神年齢です。4段階のそれぞれの特徴は、次の通りです。各段階で、学力の習得が可能な年齢(学年)というのも付記していますが、あくまでも目安となる年齢です。支援次第で、目安の年齢以上に、成長を促せる可能性はあります。・IQ50~69…軽度多くの場合、身のまわりのことは自分でできるようになります。自分で考える力も身につき、小学6年生くらいまでの学力を習得できます。簡単な読み書きや計算ができます。ただし、言葉の発達や抽象的なことの理解に遅れが生じる傾向があります。高度なスキルが必要な場合を除き、仕事に就くこともできるでしょう。一般的に知的障害といっても、本人や周囲の人にも「知的障害」という自覚がなく、支援を得ることなく生活しているケースもあります。そのため、実際の人数よりも認定数が少ないものと考えられます。また統計上は、知的障害者の約85%がこの段階に分類されます。ですので、知的障害といえば、概して「軽度」のことを指すといっても過言ではないでしょう。・IQ35~49…中等度身のまわりのことはだいたい自分でできるようになりますが、一定のサポートは必要なことが多いでしょう。簡単な読み書きや計算が部分的に可能です。乳幼児期に言葉の遅れはありますが、コミュニケーション能力はあります。適切な支援を受ければ、小学2年生くらいまでの学力を習得できます。配慮があれば、単純作業の仕事などに就くこともできるでしょう。・IQ20~34…重度乳幼児期はほとんど会話をしませんが、学童期になると、基本的な生活習慣(会話、食事、排せつなど)を身につけることができます。学力の習得目安は5歳くらいまでで、読み書きや計算は難しいでしょう。簡単なお手伝いやおつかいといった作業は可能です。・IQ20未満…最重度快・不快の表出は可能な場合が多いですが、言葉でのコミュニケーションを身につけることは難しい場合が多いでしょう。適切な支援によって能力の成長は見られますが(3歳程度まで)、身のまわりのことを自分で処理することは難しく、常に周囲からの支援や保護が必要となります。誤解されやすい「障害程度」なお、知的障害の男女比はおよそ1.6:1(軽度)~1.2:1(重度)で、全体での男女比は1.5:1程度とされます。ここまで、知的障害の程度区分の4段階について解説してきましたが、ここで誤解されやすいことがあります。それは、「障害程度が低い」=支援の必要性も低いのか?ということです。確かに身のまわりの世話などが必要な場面は、中等度や重度よりも軽度のほうが減るかもしれませんが、それでも支援をしなくていいわけではありません。むしろ軽度知的障害の場合、定型発達と見分けがつきづらく、支援されない可能性すらあります。そうなると、生きづらさは増していきます。失敗を極度に恐れ、失敗するくらいだったら最初から挑戦しない。そんなプライドの高い子どもがいます。小学校低学年のAくんもそんなひとりです。Aくんは、先生から「この問題、間違ってもいいからやってごらん」と言われても、(少しやってみて)「やっぱり無理」「もうやめた」(考えもせずに)「わかりません!」「できません」などと答えるパターンが多いのです。Aくんは、あきらめるのが早いのです。しかし、これらの言葉はできないことへの防衛でした。知能検査を受けたところ、Aくんには軽度知的障害があることがわかりました。 By 宮口幸治気づかれない「軽度知的障害」軽度知的障害のある子どもは、普通に話したり遊んだりしている分には、定型発達児とほとんど見分けがつきません。また自分が興味のあること・好きなことの記憶力はよかったりします。しかし、言われたことはだいたいできますが、いつもとやり方が違ったり何か問題が発生した際の対処法が分からなかったり、自分で新たな工夫をするのが苦手なことが多いのが特徴です。なお、軽度知的障害がある場合でも、保護者が熱心に教えたり、個別塾に通わせたりすることで、小学生までの勉強にはなんとかついていけることもあります。小学生では成績がそれほど悪くなかったからといって知的障害がないとも限らないのです。もし知的障害が疑われるなら、「まだ小学生だから様子を見ましょう」と経過観察するよりも、少しでも今できることを考えてあげたほうがいいでしょう。例えば、自治体の教育センターや発達に詳しい医療機関を受診し、どこの部分につまずきが見られるのかをしっかりアセスメント(子どもの状態や特性を把握し評価すること)してもらって、具体的にできる今後の対応策を、学校、保護者が一緒に検討することが望ましいと考えます。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
2023年08月04日ASD息子初めての一人旅!楽しいキャンプになるはずが小学4年生の夏休みに、地元の福祉支援グループの方々が企画したキャンプに参加することになったわが家のASD息子、タケル。幼稚園や学校での行事ではお泊りもキャンプも経験していますが、全く知らない子どもたちと、家族と離れて一人でイベントに参加するのは初めてです。一泊二日で、1日目はレクリエーションとカレーづくり、2日目は山登りという日程だったと思います。自然の中での遊びが大好きなタケルは、大変楽しみにしていました。しかし…Upload By 寺島ヒロ当然その子たちはスタッフさんにゲームをしているのが見つかり、ゲーム機を没収されました。どうやら、これがきっかけで何かと嫌がらせをされることになってしまったようなのです。キャンプの班活動で仲間はずれにすれ違いざまに蹴られたり、作業の分担をさせてもらえなかったりしたため、泣きながらスタッフさんに帰りたいと訴えたタケル。しかし時間はもう夜。「後は寝るだけなので我慢して」となだめられたそうです。泣いているタケルを見て、スタッフさんに怒られてると思ったのか、参加者の女の子がやって来て「タケルくんは悪くない!私見てた!」と説明してくれました。経緯を知ったスタッフのお兄さん、同じ班の子どもを呼び出し「ゲームをしていた方が悪い!仲直りして!」と叱ってくれました……。が……タケルの方は仲直りしたくないわけですよ!まあ、そりゃそうよね……と、思いますが、握手してと言われてもしない、次の日は別の班に入れてあげると言われてもやはり帰りたいと言って泣き続けるタケルに、スタッフの皆さんは困惑してしまったようです。Upload By 寺島ヒロ泣き続けてパニック!ついに倒れてしまったタケルここに至って、私たちに電話がかかって来ました。「すぐ行きます!」実は、私と夫はずっとキャンプ場の近くのファミリーレストランで待機していたのです。なぜかというと……「なんか嫌な予感がしてた」から!嫌な予感がした、そのわけは...最初に集合場所に連れて行ったとき、全員が揃う間の待ち時間に子どもたちがリズムゲームをしていたのですが、タケルを送り届けて、私が帰ろうとしたら「親御さんも一緒にリズムゲームをしましょう!」と、誘われました。「え?いや私は……やめておきます」ASDの傾向があり、予定にないことをさせられるのが苦手な私は即座に断りましたが、「お子さんと思い出をつくりましょうよ!みんな待ってますよ!」などと強引に誘われ、しぶしぶ参加したのでした。なお、ゲームは散々なものでした。わたしのところでゲームが止まる、そしてタケルのところでも止まる。周囲の子どもたちの視線が痛かったです……。Upload By 寺島ヒロ嫌な予感は的中…!10分でキャンプ場に到着し驚かれる。すぐ行きますの言葉通り、10分弱で現地に到着し、硬直したタケルを車に乗せ、嵐のように撤収しました。車の中で多少は落ち着いたのか、滝のように呪詛の言葉を吐きはじめるタケル……。それで親のほうも何が起こったのかを把握することができました。スタッフの方々は善意と熱意でいろいろやってくださっているとは思うのですが、こちらのニーズには合っていなかったのです。うまくいかなかった経験も大切に子どもにとっては滅多にない機会だけに、楽しい思い出にできなかったのは残念でしたが、親子共にいい経験になりました。これは嫌味とかではなく、「転び方」を覚えることも必要だと思うからです。これ以降も何度か「合わないイベント」に参加しては失敗はするのですが、かばってくれたあの女の子のような誰かに助けられたり、ときには限界を超えて倒れたりしながらも乗り越えてきました。その一つひとつが、タケルにとってはかけがえのない、いい経験になっていると思います。これからもあまり恐れることなく、いろいろなことに飛び込んで経験を積んでいってほしいなと思っています。執筆/寺島ヒロ(監修:初川先生)イベント参加の失敗例についてのシェアをありがとうございます。スタッフの方々の思いも分かりますが、タケルくんには本当にきつかっただろうなぁとお察しします。初めて会う同世代集団との遊びも、タケルくんからしたら、状況がよく分からないけれどとりあえず飛び込んでみた感じのものだったと思います。そこでトラブルに巻き込まれてしまうと、文脈が取りづらい面があるがゆえに、自分に対する嫌がらせに困惑し、つらかったろうと思います。スタッフの方々も、善意と熱意で誘って下さるのはありがたいけれど、しかし、特性のあるお子さんからすると、欲しいのは状況の説明(翻訳)であったり、お子さん自身の気持ちを聞いて下さることであったりして、緊張感の高い時間が結果として続いてしまったのかもしれないですね。タケルくんはさまざまなイベントに参加してきて今回の経験をし、そしてその後もさまざま参加されているのですね。参加してみようという意欲が続いているのは素敵なことだと思います。お子さんによっては、一度つらい思いをすると似たようなイベントへの拒否が強くなることもあるかもしれませんね。お子さんの成長度合いにもよりますが、イベントなどのスタッフの方の中に、「この子には発達的な特性が強くあるのかもしれない(発達障害があるのかもしれない)」と折にふれて“発達障害かも”というメガネをかけてお子さんのことを見ることができる人がいる(つまり、発達障害や発達的な課題への知識や経験がある)と、まずはお子さんの安心につながるだろうと感じます。知識の有無というよりも、イベント以前からの関係性があったり、細やかに個別対応できる人的余裕があったりすることでも、そのあたりはクリアできるかもしれません。ともあれ、お子さんが新奇性や非日常性の高いイベントに参加する場合は、まずは本人が安心しやすい設定かどうかを見るのも1つかなと思います。失敗もまた「いい経験」、「転び方」を知る。ヒロさんの捉え方素敵ですね。失敗がお子さんにとって大きな傷にならないように、ヒロさんらは近くで待機されていたり、女の子たちのサポートに気づいてみたり(振り返ってみたり)。イベントの前後でタケルくんへのフォロー体制を取られていたがゆえに、そのように捉えることができるのだろうと感じました。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年08月03日自閉スペクトラム症のある中1娘、1歳の次男にどう接していいか分からない…!?小児科に行ったときに…広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)のある娘は、中学1年生。2人の弟(長男・小学1年生、次男・1歳9ヶ月)がいます。娘はコミュニケーションが苦手という特性があり・話すこと・察することが得意ではありません。1歳の次男のことは大好きなのに、しゃべることのできない次男は長女にとっては苦手要素の塊。どう接していいか分からないようで…。ある日、娘と次男を連れて小児科を受診すると・・・Upload By SAKURAよその家族が、上の子が下の子を抱っこして、お母さんがゆっくり看護師さんと話している横で、わが家は、私が次男の相手をし、娘は優雅に本を読むという状況。薬局での処方説明のときも…。Upload By SAKURA暴れる次男を抱っこしながら、私が必死に話を聞き、娘はぼーっとしています。何も知らない人からどう思われてるのか気になってしまいもしかしたら…何も知らない周りの人は「あの大きなお姉ちゃんは、弟の面倒を見ないのだろうか…」と思うかもしれません。しかし、この状況で、もし娘に次男の相手を頼むと…Upload By SAKURA抱っこが苦手な娘が、暴れる(重すぎる)次男を抱えきれなかったり…Upload By SAKURAイヤイヤする次男に、娘がイライラして、肌をかきむしったり…Upload By SAKURA外に出ようとする次男を娘が止めなかったり…結局、私が代わることになってしまいます。Upload By SAKURAまだまだ親のフォローが必要な娘。「一般的な当たり前」について考えるこんな感じで、自分の言葉が通じない、言葉をちゃんと話すことができない、小さい子どもの面倒が苦手な娘。コミュニケーション以外にもいろいろな苦手があるので、親のフォローがまだまだ必要です。私は今まで「上の子が中学生なら、下の子の面倒を見てもらえるでしょ」と言われたら、「そうですね」と答えていました。実際にはいろいろありますが、知り合い程度の人だと、そこら辺の事情を話して、(娘に発達障害があると知り)相手がリアクションに困ったりすると、申し訳ないと思っていたからです。Upload By SAKURA話を合わせたあとは、少しだけ違和感がありました。これは発達障害がある娘を責めているわけではありません。誰にだって、得意不得意があります。発達障害がなくても、小さい子の世話が苦手な子だっています。しかし、一般的な当たり前が、どこにでも当てはめられると思われ、できて当たり前だと思われるのが、嫌でした。そんなふうに思いながらも、私は、娘に次男の世話を頼み続けていました。娘に対して、下の子の面倒をよく見るお姉ちゃんを、ついつい求め、一般的なことをあてはめようとしていたのかもしれません。次男の遊び相手やお世話を頼んだとき、娘はいつも、どうしていいか分からないといった顔で、次男のそばに立ち、楽しそうではありませんでした。Upload By SAKURAそんな娘ですが、何もできない訳ではありません。実は家ではかなりの戦力になっており、大活躍な一面もあり…!? 弟の世話だけが姉の役割じゃない。娘の特性を活かしたわが家の役割分担はまた別のコラムで書いていければと思います。執筆/SAKURA(監修:初川先生より)娘さんは次男くんが大好きだけれど、お世話を頼まれると困ってしまうのですね。次男くんは1歳とのこと。1歳児を相手にする場合、年長者の側が察して・先んじて、さらには次男くんを楽しませてといった気遣いや配慮をすることまでもを含んでの「お世話」になります。なかなかの難度です。ASD特性をお持ちの娘さんだとなおのこと難しい面はありますね。そして、1歳児の育児をする保護者は、平常時からしてなかなか大変だからこそ、兄姉に助けてほしい面もあるでしょうし、中学生だったらできてほしいという思いも自然なものだと思います。しかしながら、実際に娘さんに頼んだ経験から手間やひやひやする思いが増えたこともあり、娘さんには(小児科や薬局で)頼まず、おひとりで見ることにしたけれど、しかしもやもやする面が多少あるのですね。そんな中、SAKURAさんは、娘さんの家庭内での大活躍もしっかりと気づいていらっしゃるのですね。次回のコラムも楽しみにしています。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年08月02日2回目の予防接種、車の中で注射だと気づかれパニックになった障害のある息子3歳で軽度知的障害を伴う自閉スペクトラム症、ADHDの傾向ありと診断を受けた息子が、6歳になったころの出来事です。その日は一日保育のあと、2回目のインフルエンザの予防接種を受けに行く予定でした。ごきげんで保育園から戻った息子。ただ、私には心配なことがありました。息子は、昔あった嫌なことをなかなか忘れないタイプです。注射や鼻の粘膜の検査など痛い思いをした病院は「イヤだ!」と言って、行こうとすると癇癪を起こしてしまいます。ですので、行くことができる病院がどんどん減ってしまい、この年の1回目のインフルエンザの予防接種は、初めて行く病院で受けたくらいでした。そのときは、注射をすることを伏せたまま診察を終え(診察は痛くないので、問題なく受けてくれます)、いざ注射というときは私が息子をしっかり押さえたため無事に接種できました。本人は泣いていましたが…。この日は、やむを得ず1回目を受けた病院へ行くことになっていたので、もしかしたら感づかれるのではないか…、でも、1回しか行ったことがない病院だからさすがに覚えていないのでは…と不安だったのです。機嫌のいい息子を乗せて、行き先は告げずに車を走らせました。すると、心配していたことが現実になってしまいました。一度しか行ったことがない病院なのに、道や場所を覚えていた息子。走らせている方向であのときの病院に行くんだ!と気づいてしまったのです。その後は「注射ヤダ!」の一点張りでした。病院に近づくにつれ、だんだんと大きくなる声。「ヤダヤダヤダ‼」とパニック状態です。私は運転しながら「おりこうさんだよー。注射に行こうねー」となだめていましたが、効果はありませんでした。ようやく病院へ到着した私は、お菓子で切り替えてもらおうと息子を車から降ろしつつお菓子を持たせました。いつも好きなお菓子があれば癇癪状態からも切り替えができていたので、今回もそれでどうにかなるだろうと思ったのです。しかし、息子はお菓子を持たず、私の脇をすり抜け病院の目の前の車道へ向かって全速力で走り出しました。Upload By ユーザー体験談「あぶない‼」一気に血の気が引き、焦って追いかけた私。すると、そのまま勢いよく転んで強い衝撃を感じたかと思うと目の前は真っ暗。私は意識を失ってしまいました…。Upload By ユーザー体験談意識を失った私。目覚めたときは病院で…目を開けると、私は病院のベッドに横になっていました。なぜここにいるんだろう?と思っていると、横から泣き声が。息子がそばで号泣していたのです。意識は戻ったものの頭がぼーっとしてあまり考えられなかったのですが、ともかく息子がそばにいることに私はホッとしました。Upload By ユーザー体験談あとで教えてもらったのですが、病院の駐車場にいた方が、私が転倒したのを目撃し病院へ知らせてくれ、私は看護師さん達に車椅子に乗せられて病院内に運ばれたそうです。このとき息子がどうしていたのか誰も覚えていないようなのですが、気づいたら私のそばにいたのだとか。あまりにも泣いていたので、私が大変なことになってしまったと、とても心配していたんだと思います。私が目を覚ますと息子は安心したのか、徐々に落ち着きを取り戻し、やがていつものように病院内をウロウロしていました(多動性があるので)。そのとき私から連絡を受けた夫が駆けつけてくれました。私は顎を大きく切っていたため、縫合を終えたあと、念のため救急車に乗って大きい病院へ行き一晩過ごすことになりました。息子は夫の車で家に帰ってもらいました。夫から聞いたところによると、息子は帰りの車では落ち着いていたもの、夜ごはんはあまり食べなかったそうです。いつもはたくさん食べるのに…。でも、翌朝保育園へ行くときは、いつもと変わりない様子だったとか。いつも通りに過ごしていた息子が退院した私を見て「おかあさーん!良かった、良かったー!」と大泣き私は翌日午後には帰宅でき、痛みがひどかったためベッドで横になっていました。夕方、保育園から息子が帰ってきました。そして私の姿を見たとたん「おかあさーん!良かった、良かったー!」と大泣きし、そばに駆け寄ってきました。いつもと変わらないように見えてもたくさん不安だったんだな、我慢していたんだなと思い、私も泣きながら「ごめんね、心配したね。大丈夫だよ」と息子の頭をなでました。Upload By ユーザー体験談私はこの件でとても反省しました。場合によってはいつもできていた切り替えもできないこと、子どもの気持ちをもっと考えなければいけないこと…、大事にすべきことを見落としていたと思いました。それからは、お出かけ先で機嫌が悪くなったり癇癪起こしたときの対応策をたくさん準備するようにしました。おもちゃやお菓子もそうですが、6歳も後半となった最近では言葉でも伝わるようになってきたので、「これがいやなら、これはどう?」といった提案のレパートリーをたくさん用意しています。今では外で癇癪を起こしても、私が移動すると息子も泣きながらもついてきたり、癇癪中でも自分で気持ちを切り替えようとしている様子が見られるようになりました。成長したなあと感じています。ただ、定期接種はまだ終わっていません…。なるべく接種期限前に、接種期限が切れたとしても、小学校入学までには必ず受けに行かなければと思っています…。息子は誰かに恐竜や妖怪の名前を教えたり、 好きなおもちゃを見せるのが大好き!これからも、好きなことには猪突猛進し、友達との関わりを大事にする子に成長して欲しいと思っています。これからも大切な息子を見守っていきたいです。イラスト/taekoエピソード提供/さくら(監修:藤井先生より)予防接種や診察や診察に伴う検査を嫌がり、癇癪起こされると、対応をどうしたら困ることがあるかと思います。事前に見通しをもった声かけをすると、頑なに拒否されることもあり、見通しをもたせた声かけのタイミングもお子さんによってさまざまです。声かけしなくても、道順で覚えてパニックになるお子さんもいます。パニックなどが起こりうる可能性を想定し、少しでもそれが軽減できる対応策がないかと、探るのはとても良いですね。成長とともに、少しずつできた経験が積み重なると、パニックも軽減されてくるお子さんもいます。できる対応策がないか、療育の先生、園の先生、かかりつけの先生に相談するのも良いでしょう。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
2023年07月20日保育園で1歳から始まったトイレトレーニング。順調だったスタートしのくんが通っている保育園では、1歳からトイレトレーニングがスタートします。周りの子どもと比べて、言葉の発達が遅かったしのくんですが、先生の頑張りの甲斐あって、2歳0ヶ月ころにはトイレに行きたくなったら、「無言でズボンとオムツを外す」といった行動を取るようになりました。2歳4ヶ月ころまで意味のある発語がなかったしのくんなので、「トイレに行きたい」と言うことができず、無言でズボンを下ろすという行動で意思を伝えてきていたのでした。そして、私はしのくんがズボンを脱いだのを見て、「トイレやね!OK!」とトイレに連れて行くことができていました。Upload By keikoトイレトレーニングに立ちはだかった壁。それは…順調に進んでいると思われたしのくんのトイレトレーニングですが、ちょうどその後、手術と新型コロナウイルス感染症のパンデミックが重なります…。しのくんには生まれつき停留精巣という疾患があり、2歳半ごろに入院して手術を受けることになっていました。その手術は無事に終わったのですが、タイミング悪く新型コロナウイルス感染症の流行による緊急事態宣言が重なったことで、約2ヶ月半も保育園を休むことになってしまいました。そして、その間に何もかもリセットされ…しのくんは自分からトイレに行くそぶりを全く見せなくなってしまったのです。再び保育園に行けるようになったあとも、その状況は変わりませんでした。そして、いつの間にか、保育園の3歳児クラスでオムツが外れていない子どもは、しのくんだけになってしまいました…。ある日の参観日で、クラスのみんなはトイレに行っているのに、しのくんだけ先生にオムツを履かせてもらっている姿を見て「どうしよう!」と焦ったのを覚えています。Upload By keiko3歳のとき、外のトイレを怖がるように!?きっかけは…親の焦りを知ってか知らずか、3歳の誕生日を過ぎても、相変わらずオムツだったしのくん。自分からトイレに行くことはなく、親のほうからトイレに誘う日々が続いていました。そんなある日、その状況に追い討ちをかけるかのような事件が発生しました。家族で遊園地に遊びに行ったときのことです。オムツを交換しようとしのくんをトイレに連れて行ったのですが…しのくんは、トイレの中が薄暗かったせいか、急にトイレが怖くなってしまったらしく、ズボンを払いのけ、オムツ姿のままトイレの外へ走りだしてしまったのです!そのときは、どんなになだめてもトイレでオムツを替えることができなかったので、仕方なく私と夫で壁をつくって、外から見えないようにして、トイレではない場所でオムツを履き替えさせるしかありませんでした。Upload By keiko一番悩んでいたとき、思いがけず訪れた転機この事件以降、しのくんは、家以外のトイレに入ることができなくなってしまいました。そんなふうに、トイレトレーニングで一番悩んでいたある日…しのくんが2歳7ヶ月ごろから通っている「ことばの教室」に行ったときのことです。私はしのくんがオシッコをしたそうに、もじもじしているのに気づきました。「環境に慣れている『ことばの教室のトイレ』だったら、もしかしたら行けるかもしれない!」すると、しのくんの様子にピンときた先生がさりげなくしのくんを誘い、トイレに連れて行ってくれました。そして、私と先生が見守るなか…なんとしのくんは、数ヶ月ぶりに家以外のトイレで用をたすことができたのです。「すごいすごいすごい!」と先生と私で褒めまくりました。Upload By keikoことばの教室でのトイレの成功で、しのくんの中で自信がついたのか、その後、だんだんとトイレでできることが増えました。また、3歳半を過ぎたころから言葉も増えてきて、自分から「トイレに行く」と言えるようにもなりました。そして、4歳目前でついにオムツが外れました。5歳になった現在、悩んでいたころを振り返って5歳になった今では、もう外のトイレは怖がりません。むしろ、女性用トイレに入りたくないといって、一人で男性用トイレに入って行くくらいです。オムツ卒業の時期は人によって違うので、そんなに焦ることなかったなと今では思います。しかし、当時の私は心配で心配でしかたありませんでした。そんな私の焦りもきっとしのくんに伝わっていただろうなと思うので…今となっては反省しております。ほかの子どもと比べたり、周りの目を気にしないで、しのくんを第一に考え、しのくんのペースに合わせていきたいなと思います。執筆/keiko(監修:鈴木先生より)ASDの患者さんの場合、幼少時からズボンとパンツを脱いでトイレへ行く習慣をつけると、大人になってからも同じ行動をすることがあります。自宅ではいいのですが、外出したときは男児ならズボンを脱がないでできる習慣を本人のペースも考えてできるだけ早い時期から身につけるようにしましょう。一般的に公衆トイレは汚いイメージがあり、感覚過敏があるお子さんは臭いや汚れを気にして入れないこともあります。誰でもきれいなトイレのほうがいいとは思いますが、特に、ASDのお子さんはこだわりが強いため、外出時はどこにきれいなトイレがあるか確認していくといいでしょう。潔癖など強迫性症状のある方は他人が使うトイレに行けず、わざわざ自宅へ帰ることもあります。携帯の除菌スプレーを持参するなどの工夫も必要となります。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2023年07月13日つかまり立ちを始めたのは生後10ヶ月ごろ生まれてからずっと発育が順調だった息子。しかし、生後10ヶ月ごろになっても、なかなかつかまり立ちをしはじめません。今まで順調に育っていたのに、どうしてつかまり立ちをしないのだろう?そう思った私は部屋の中の家具を見渡しました。すると、背の低い家具がないことに気づいたのです。ローテーブルはあるものの、ハイハイ状態の赤ちゃんからすると手を伸ばしても届かない高さ…。そこでダンボールに本や雑誌を詰め込み、上部にタオルを貼りつけたお手製の台を作ってみました。物珍しいものに興味津々の息子はハイハイで近づき、そのまま一発でつかまり立ち成功!Upload By ネコ山「やったー!」とうれしい気持ちと同時に、はじめてのつかまり立ちをした息子の足はつま先立ちで、まるで小鹿のように小刻みに震えていたのを覚えています。その後、息子は楽しそうにこの台でつかまり立ちをするようになりました。それから数日後、低い台での練習を経てついにローテーブルでのつかまり立ちに挑戦!立ち方のコツをつかんだのか、まずはお座りをしてからテーブルに手を掛け、一気に立ち上がったのです。「やったー!すごいよ頑張ったね!」と私もはしゃぎ、息子の一つひとつの成長がうれしかったです。つま先立ち…!?つかまり立ちができるようになってから数日、息子がいつ転んでも助けられるように近くで構えていて気づいたことがあります。それはずっとつま先立ちをしていること。初めは「足の裏の感触が慣れないのかな?」と、思っていましたが、伝い歩きを少しだけしはじめてもつま先立ちのまま。たまにかかとを地面につけて足全体に重心を置くことはありますが、伝い歩きするときはつま先立ち。いや普通に疲れると思うんですが!?つま先立ちが気になったのでインターネットで検索してみると『発達障害』の文字がたくさん浮かび上がってきました。その文字にドキリとしたことを覚えています。これが私が初めて発達障害という言葉を意識した出来事でした。Upload By ネコ山発達障害について調べていくと、10ヶ月くらいの乳児にみられる発達障害かもしれない特徴がいくつか紹介されていました。しかし息子は、つま先立ち以外の特徴には当てはまりません…どういうこと?保健師さんに相談してみた私たちの住む自治体では、3歳までの乳幼児と保護者向けに予約なしで参加できる親子健康相談というのがあります。保健師さん・栄養士さんが常駐で、身長体重などの測定・発達や離乳食などの相談ができる行政サービスで、私たちはこちらをよく利用していました。主な目的は身体測定だったのですが、保健師さんにちょっとした悩みや疑問を話したり、アドバイスや知らなかった行政サービスを紹介してもらったり、初めての育児に奮闘する私にとって、心の支えのような存在でした。この日も身体測定を目的に親子健康相談を訪れました。身長体重ともに成長曲線上振れの息子、「ほかに何か聞いておきたいことなどありますか?」と保健師さんに聞かれたので、最近気になっているつま先立ちについて話すことにしました。つかまり立ちをし始めた月齢や、つま先立ちの様子などを話すと、保健師さんは「つかまり立ちしはじめたばかりだから、どんなもんかな〜こんな感じかな〜って模索してるんじゃないかな」とのことでした。Upload By ネコ山その言葉に「確かに!つかまり立ちをはじめたばかりだから、きっとそうかも!立つことに慣れてきたり、歩きはじめたりしたらかかとをつけて歩くんじゃないかな」と、私も納得しました。その日から息子がつま先立ちをしていても気にならなくなりました。しっかり歩くようになっても…1歳ちょうどで1人歩きをはじめた息子は、靴を履いて外を散歩するようになりました。歩くときは足裏全体を地面につけてドテドテと歩く、いかにも幼児らしい歩き方でしたが、ふと見ると、つま先立ちをしていることがありました。本当に不意につま先立ちで歩くのです。Upload By ネコ山相談した保健師さんは「つかまり立ちをしはじめたばかりだから…」と、仰っていましたが、歩きはじめても息子はつま先立ちをしています。あれ?とは思いましたが、基本的に足裏をつけて歩いているし、たまにつま先立ちで歩いていても何も不都合なことがないので「よく分からないなぁ、個性的だなぁ」と思うに留まっていました。発達検査で指摘された4歳ちょうどで発達検査をしました。このころには、つま先立ちのことは私もすっかり忘れていたので、検査のときに指摘されたことが衝撃でした。発達支援センターで心理士さんに検査をしていただいたのですが、検査以外の息子の様子も注視する心理士さん。「つま先立ちが気になります」とのことでした。どうやら息子のつま先立ちは、歩きはじめで模索中なのではなく、心理士さんにとって発達上、気になるポイントだったようです。Upload By ネコ山生後10ヶ月のころ、インターネットで検索したときに「つま先立ち」「発達障害」と出てきたのに、そのときは「発達障害かもしれない」とは疑いませんでした。それは当時の息子には、「つま先立ち」とともに記載されていた、逆さバイバイやくるくる回る、目が合わないといった様子はまったくなかったからです。その後、5歳になった息子はADHD+ASDの傾向があり、児童精神科医からグレーゾーンの診断を受けることになるのですが…そのお話はまた次回以降に書きたいと思います。執筆/ネコ山(監修:新美先生より)つま先立ち歩きについて聞かせていただきありがとうございます。確かに、「つま先立ち」で検索すると、「自閉症」「発達障害」のキーワードはけっこう出てくるので、心配になって受診したということはよく聞きます。また自閉スペクトラム症などの発達障害と診断されたお子さんの幼児期早期を振り返ると、つま先立ちで歩いていたという記録が残っていることはあります。ですが逆に、つま先立ち歩きをしているお子さんの大半は、特別何かの診断につながることはなくただの歩き方の個性だったということも多いのです。特に、歩き始め数ヶ月程度は、歩き方を模索する過程で、一時的につま先立ち歩きをするお子さんは少なくありません。歩き始めの数ヶ月は何も気にしなくてよいでしょう。歩き始めて1年以上経ってつま先立ち歩きが目立ち、足を床につくことができないぐらいかかとの関節やふくらはぎが固くなっている場合や、歩き始めよりも1年以上たってからの方がだんだん転びやすくなってきた場合、片足だけ明らかにつま先立ちでアンバランスな場合などは、まれに神経などの病気が隠れていることがあるので、一度受診をおすすめします。かかとの関節が固いわけじゃなく足をついて歩くこともできるけど、ときどきつま先立ち歩きもするという場合の多くは、特別何かの診断につながるものではない、歩き方の個性の範囲のことが多いので、つま先立ち歩きだけで何かを疑って心配する必要はないでしょう。自閉スペクトラム症のお子さんがつま先立ち歩きをすることがある理由として、足底の感覚が過敏で足底をべったりつきたくないという場合や、足底の感覚が鈍感でつま先に集中して感覚を入力したいという場合、体の使い方が不器用な場合などがあります。つま先立ち歩きは確かに自閉スペクトラム症のお子さんにときどき見られる特徴ではあるのですが、つま先立ち歩きだけで自閉スペクトラム症だといえるものではないので、「こういう歩き方をする子なんだな、もしかしたら足の裏が敏感なのかもしれないな、だから靴下履くの嫌がるのかな?」などなど、お子さんの特徴の一つとしてただ観察していればいいと思います。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
2023年07月11日発達に遅れがあるとは思ってもいなかった0~3歳までの長男Upload By プクティ長男は生後1ヶ月で首が座ったり、5ヶ月でハイハイを始めたりと、体重も大きめ成長も早めな健康児でした。言葉も1歳になってから単語が次々と出てきて、気づけば2語文を話すようになり、2歳になると3語文をすらすらとしゃべっていたので、このときは特に発達に遅れがあるとは夫も私も全く思いませんでした。それに1歳半健診や3歳児健診のときも、何か発達について指摘されることもありませんでした。Upload By プクティ3歳で幼稚園入園、初めての集団生活。ところが…生まれてからずっと自宅保育で育てていた長男も3歳になり、いよいよ幼稚園へ通うことになりました。このままスムーズに幼稚園生活が送れる、そう思っていたのですが…。Upload By プクティ入園当初は登園を渋ったり、制服を嫌がったりしていた長男でしたが、徐々に慣れてくれて問題なく登園できるようになりました。幼稚園ではどのように生活しているのか気になっていましたが、入園から1ヶ月たったころに保育参観があり、幼稚園での長男の様子を見られることになりました。当日はとても楽しみに園へ向かったのですが、そこには目を疑う光景がありました。入園して最初の保育参観で目にした光景は…Upload By プクティそこには椅子に座らず、上履きも履かず、床に寝そべる長男の姿がありました。ほかの子どもはきちんと先生の言うことを聞いて歌ったり踊ったり、製作したり。長男はどれにも参加することはなく、ときには教室を出て行ってしまう場面もありました。その姿を見てショックではありましたが、このときはまだ入園してすぐでしたし、保育園へ行っていない長男には初めての集団行動、さらには早生まれということもあるので、これから徐々に慣れていってくれるだろうとあまり重く考えてはいませんでした。保護者面談で告げられた、予想外の言葉そして、1年目の園生活も後半にさしかかったころ、保護者面談の機会がありました。長男がどのくらい園で成長しているのか先生に聞くのを楽しみにしていたのですが、先生から伝えられたのは思いもよらない言葉でした。それは…入園当初から長男の様子は変わっていないということ、そして発達支援センターに連絡をして療育に通ってほしいということでした。Upload By プクティこのとき初めて長男に発達の遅れがある可能性を知り、その後発達支援センターや療育医療センターへ通った結果、長男に知的発達症があることが発覚したのでした。知的発達症と分かってからもいろんな問題や出来事がありましたが、徐々に成長もしている長男。そんなわが家のエピソードをお届けできたらと思います!執筆/プクティ(監修:室伏先生より)知的発達症と診断されるまでの長男さんのご様子とプクティさんのお気持ちを共有してくださり、ありがとうございました。予想していない検査結果、診断で、受け止められるまでの葛藤やご不安があったことと思います。お母さま、お父さまというのはさすがで、お子さんの伝えたいこと、想いを汲み取るのがお上手ですし、お子さんも言葉で伝えられないことをジェスチャーなども駆使して上手に伝えてくれることもあるので、ご家族との間ではコミュニケーションに困っていないことも多く、ご家庭で気がつくことは難しい場合もあるかと思います。言語の発達については、1歳~1歳半ごろまでに単語の発語がみられ、2歳ごろには2語文が出てきます。このころまでに、簡単な指示に従う、「〇〇どれ?」の問いに指差しで答える、身体のパーツの名称を理解する、などができるようになります。3歳では、3語文が出てくる、自分の名前が言える、大小や長短などの形容詞や色の理解ができる、などが可能となってきます。4歳では、同じ年代のお子さんと言葉でのやりとりができるようになってきたり、数概念(3こちょうだい、などの指示に応じられる)の理解も進んできます。5歳になると、じゃんけんなどの簡単なルールが理解できるようになったり、左右の理解、ひらがなの読みなどが進んできます。個人差もありますし、年齢が進むにつれて遅れが目立ってくることもあり、健診では指摘されないこともあります。ご不安や違和感を感じられたら、まずは園の先生にお話を聞いてみるでもよいでしょうし、発達相談の窓口へも気負わずにご相談いただけるとよいかと思います。今後もプクティさんからのエピソード、楽しみにしております。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年07月06日株式会社voice and peaceが運営するギフテッド・発達障害の支援者向け動画メディア《インクルボックス》は、日本中の発達障害に関するオススメ情報(専門家、支援施設、支援グッズ、イベントなど)を集め動画にして広く伝えるため、2023年7月1日からクラウドファンディングを活用してアンバサダー(同志)を募集します。(詳細はこちら )発達障害動画メディア《インクルボックス》アンバサダー募集■クラウドファンディング概要期間 : 2023年7月1日(土)~2023年8月15日(火)目的 : 発達障害支援のアンバサダー(同志)を募集し、実体験やクチコミなど良質な支援情報を動画にしてインクルボックスで配信するため支援金額 : 1,500円~30,000円クラファンURL: 【アンバサダーへのお願い】(1) 発達障害支援のオススメ情報(専門家、支援施設、支援グッズ、イベントなど)を教えてください(2) インクルボックスの動画の感想を教えてください(3) ギフテッドや発達障害を周りの人に教えてください※どれか一つでも構いませんアンバサダーへのお願い【リターン品】・インクルボックス視聴権・発達障害者の声に応えたノート「mahoraノート」(大栗紙工)・療育現場の声に応えた下敷きとリーディングトラッカー(オフィスサニー)・工藤 勇一校長(横浜創英)と村中 直人さん(『ニューロダイバーシティの教科書』著者)のオンラインイベント参加券などリターン1,500円リターン5,000円Aリターン5,000円Bリターン10,000円■インクルボックスとは?インクルボックスは、ギフテッドや発達障害の支援方法や支援情報などをワンストップで視聴できる動画メディアです。「専門家の最新知見」「発達障害のニュース番組」「発達障害の基本知識」「関連書籍の要約動画」「支援企業やイベント団体情報」「支援グッズ紹介」など10分程度の動画と、「1分で分かる支援動画」など計450本以上(2023年6月時点)の動画を視聴できます。インクルボックスはマルチデバイスで視聴可能工藤 勇一校長、入山 章栄教授、飯田 覚士さん、村中 直人さんなど支援イベント、取り組み、グッズアニメーションでわかりやすく豊富な動画カテゴリー■インクルボックスが解決する課題は?インクルボックスは発達障害を巡る以下2点の課題を解決します。(1) 発達障害の対面型研修は効果が出ない2010年代、発達障害に関する学術論文で「教育者は発達障害の対応が不十分」「対面型研修の効果が出ていない」という内容が頻出します。文科省も「対面型研修の効果が低いことは喫緊の課題」と回答しています。(2) 日本は発達障害人材の未活用で損失2兆3,000億円ニューロダイバーシティの概念が進む海外で、発達障害は周辺社員の知見を高めることでイノベーション人材として活躍しています。日本では一般社員の発達障害の知見が向上しておらず発達障害人材の有効活用が出来ていません。企業内で知見を高めることで、イノベーションが促進され業績が向上します。参考: また改正差別解消法による2024年の「合理的配慮の義務化」にも対応可能です。インクルボックスはテレビクオリティの動画をスキマ時間で視聴し効率的に発達障害のリテラシーを向上させます。■インクルボックスの対象は?インクルボックスは動画を週に2本配信しています。(2023年6月段階で動画は450本以上配信済)保護者や教育者、人材活用や合理的配慮でお悩みのビジネスパーソンが、スキマ時間に「時短・ながら聴き・ながら見」でご利用いただいています。■インクルボックスの運営は?インクルボックスは現役アナウンサー(元テレビ東京)でギフテッドと発達障害の子供を持つ代表の赤平と、現役テレビスタッフ、発達障害支援有識者たちが運営しています。会員登録後は全ての動画を見放題。無料サンプル動画あり、登録後1カ月間は全動画視聴無料、いつでも解約可能。初期手数料や解約手数料は0円です。代表 赤平の略歴■代表:赤平 大 (あかひら まさる)略歴元テレビ東京アナウンサー。現在はフリーアナとしてWOWOW「エキサイトマッチ」「ラグビーシックスネーションズ」ジェイ・スポーツ「フィギュアスケート」など実況、ナレーターとしてテレビ東京「モーニングサテライト」、NHK BS「晴れ、ときどきファーム!」「ザ少年倶楽部プレミアム」など担当。2015年から工藤 勇一校長(当時)のもと千代田区立麹町中学校でアドバイザー。2022年から工藤 勇一校長の横浜創英中学・高等学校でサイエンスコース講師を担当。2E(発達障害とギフテッドを併せ持つ)の子供の親。■メディア出演と講演実績(2023年6月まで)メディア取材と講演●インタビュー記事リンク(一部)・IDEAS FOR GOOD( )・小学館「HugKum」( )・読売新聞「ヨミドクター」( )・幻冬舎「堀江貴文のChatGPT大全」( )■受賞歴Baby Tech(R) Awards 2022「保育・ICT部門」大賞受賞歴■《インクルボックス》サービス概要《価格》 : 月額770円(税込)※初期費用0円、いつでも解約可能、契約後1ヶ月無料※法人契約は割引料金でご利用いただけます《販売方法》: インクルボックスサイトで「新規登録」 ※法人契約の際はお問い合わせください 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2023年07月04日3歳児の発達の目安は?わが子の多動の原因は?ADHDの可能性がある?3歳ごろの子どもは、基本的な運動動作が一通りできるようになり、生活習慣の自立も進みます。ことばによるやり取りもできるようになり、社会性も育ってきて、徐々にお友達と関わりながら遊ぶことも増えてきます。3歳になって、幼稚園に入園するなど初めての集団生活を経験することになり、わが子とほかの子どもの様子を比べて「わが子は多動かもしれない…」「もしかして、ADHDの可能性がある?」と気になる方もいらっしゃるかもしれません。このコラムでは、・3歳児の多動の原因・多動と発達障害の関連性・困ったときの相談先などをご紹介し、多動にまつわる保護者のお悩みや困りごとなど専門家の先生にアドバイスいただきます。【小児科医に聞く】3歳児の「多動」に関する悩みーー落ち着きがない、集団行動が苦手、発達障害との関係は?医師が回答(質問)3歳の子どもがじっとしていられず、外でもすぐ走り出してしまいます。落ち着きがなく、幼稚園に入れるのか不安です。多動は、もう少ししたら落ち着くのでしょうか?(回答)3歳だと、自宅など家族がいる場面では落ち着きがないように見えても、幼稚園や保育園などでは落ち着いて過ごせているお子さんもいます。しかし、家でも外でも落ち着きがない場合には、心配かと思います。多動が落ち着く時期は、お子さんによってもさまざまです。多動の原因は、さまざまな要因が組み合わさっていることがあります。注意欠如・多動症(ADHD)などの脳の発達・機能の異常が関与していることがあります。ADHDに自閉スペクトラム症や知的障害が併存していることによる場合もあります。また、家庭環境の不安定さ、過度のストレスがかかったなどの環境要因が関連することもあります。言葉の遅れがあり、落ち着きがない場合には、言葉の発達に伴って落ち着いてくることもあります。言葉が遅れていないが、落ち着きがない場合には、いろいろな物事に興味が移り変わりやすく、多動が長く続くこともありますが、小学校の中学年以降には多動は落ち着いてくると言われています。幼稚園や保育園での集団生活で、お集まりのときにじっとしていられないなどがある場合には、発達支援センターやかかりつけ医に相談することをおすすめします。Upload By 発達障害のキホン(質問)幼稚園の年少(3歳児)の子どもが、落ち着きがなく、指示も通らず、集団行動ができません。どのくらいの程度の多動の場合、発達障害の可能性が考えられるのでしょうか?医師に診てもらったほうがいいのでしょうか。(回答)まだ3歳ですとADHDなどの発達障害の可能性があるかどうかは、判断がつけられません。じっとしていられない、静かにすべきところで静かにすることができない、気持ちのコントロールがつきにくく癇癪が激しい、物の扱いが乱暴、動きが多く目が離すことができないなどの様子から、ADHDの疑いがあるということで、専門機関に相談されることがあります。入学前でも、家や園でも落ち着きがなく、日常生活や園生活に支障がある場合には、専門機関に相談することをおすすめしています。Upload By 発達障害のキホン(質問)子どもがじっとしていないので、買い物や外食にも行けません。子どもの発達のことを相談できる人もおらず、不安です。(回答)じっとしていないと、買い物も外食にも行きにくいですね。多動が激しい場合、外出先で注意ばかりで疲れてしまうというお声を聞くこともよくあります。外出先でお子さんがじっとして待つのが難しく、負担がかかる場合には、お子さんが園などに行っている時間内に用事を済ませるのも良いでしょう。一緒に行かざるをえない時には、○分買い物をします、など見通しを立ててから出かけ、少しでも待てたら、待てたねと、できていることに注目して声をかけましょう。しかし、まだ3歳ですと、待つのも難しいときも多々あるかと思います。買い物や外食が、親子一緒に必ず行かなければならないものなのか、お子さん・親御さんに負担がかかるものではないかを振り返ってみましょう。声かけなど工夫しても、お子さんが落ち着かず、対応について困る場合には、幼稚園・保育園の先生、保健センター、かかりつけ医、地域の発達支援センターなどに相談すると良いでしょう。Upload By 発達障害のキホン多動にまつわるコラムコラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年07月03日努力をするのが発達障害当事者だけというのは、アンフェアでは?そこからスタートしたオールマイノリティ・プロジェクトUpload By 発達ナビ編集部All Minorities Project(オールマイノリティ・プロジェクト)は、発達障害の当事者が社会的孤立・孤独に陥らないフェアな社会の実現を目指すプロジェクトです。本プロジェクトの代表である千葉大学の子どものこころの発達教育研究センター大島郁葉先生にお話を伺いました。LITALICO発達ナビ編集部(以下――)オールマイノリティ・プロジェクトとはどういうものか教えていただけますか?大島郁葉先生(以下大島先生):オールマイノリティ・プロジェクトは、「社会的孤立、孤独の予防」をテーマにした五ヶ年計画のプロジェクトです。マイノリティの中でも、発達障害のある方に着目しています。私の専門は自閉スペクトラム症(ASD)で、支援者の1人として発達障害のある方と関わることが多いのですが、努力をするのが当事者だけというのはアンフェアではないかとずっと考えていました。なぜなら、 発達障害のある方たちが感じるつらさの一部は、マイノリティの人たちへの無配慮であったりとか、偏見、差別といった非常に心理社会的な問題であったりします。ですが、マジョリティ※1はそれに気づかず、ただ当事者の方たちが一生懸命適応しようと頑張っている状況だからです。例えば、通常学級に在籍している場合、当事者は通常学級に合わせようとかなり過剰適応していたりします。その上、かなりのコストをかけて、心理療法やさまざまなトレーニングを積ませるのは、アンフェアです。ですので、このプロジェクトを機に、当事者の方たちを努力させるのではなく、周りのマジョリティがマイノリティとの非対称性を認知し、悪意なくおこなってしまう差別的な言動に気づく仕組みづくりをしたいと考えています。われわれが生きる社会は、片方に権力が偏ることなく、それぞれみんな等しい人権を持つべきです。みんながマイノリティであるという社会にしていった方がいいという想いを込めて、「オールマイノリティ」という言葉を使いました。※1 マジョリティとは、「多数者」や「多数派」を意味する言葉ですが、単純な人数の多さだけではなく、「強い発信力がある」、「優位な立場にある」といった、より多くのパワー(権力)持つグループを指す場合もあります。オールマイノリティ・プロジェクトでは、後者の「強い発信力がある」、「優位な立場にある」という意味でマジョリティという言葉を使用しています。――仕組みづくりとは具体的にどのようなものになるのでしょうか?大島先生:マジョリティ、例えば支援者たちがマイクロアグレッション、つまり見えない差別に陥らないような、心理教育のためのツールを作りたいと思っています。具体的に言うと、何回か研修会を実施した上で、自分のマジョリティ性や、マイクロアグレッションの癖みたいなものを確認できたり、あのときの発言はどうだったとか自分で振り返れるようなセルフモニタリングできるアプリです。われわれ支援者は、支援するスキルはある程度持っていますが、実は当事者に対する偏見とか見えない差別に対しては、全くといっていいほど教育を受けていません。ある意味本人次第で対応しているところがあると思います。そんな中、このアプリを使うことで、自分で気づいて発言や行動をコントロールできるようになれば、当事者の方たちが不当な扱いを受けることを減らすことができます。また、支援者だけでなく保護者の方やそのほか多くの方にご利用いただき、自分の行動がマイクロアグレッションになっていないかご確認いただきたいです。これを本プロジェクトの5年後のゴールとしています。Upload By 発達ナビ編集部――とても興味深いアプリですね。このアプリはマジョリティ向けとのことですが、発達障害当事者の方も使えますか?大島先生:そうですね。当事者の方も使うことはできるとは思います。「私はやっぱり嫌なことを言われていたんだ」と気づけることがあるかもしれません。そこで「仕方ないって思わなくてもいいんだ」と知って、役立てていただきたいです。「なんでできないの?」「普通に見えるね」。当事者が日常的に受けているマイクロアグレッションに多くの人は気づいていない――先生が実際に見たマイクロアグレッションには、どのようなものがありましたか?大島先生:まず多いのは、「なんでできないの?」でしょうか。私は成人や思春期以降の方にお会いすることが多いんですけれども、みなさん口を揃えておっしゃるのが「みんなと一緒にできない」ということです。ほかの人ができないことができてしまう場合もありますが、自閉スペクトラム症のある方で、みんなが当然のようにできることができなかったりすると、「なんでできないの」と悪気がなくても言われることが多いです。そう言われた当事者は「自分は劣った人間なんだ」と、自分の中で結論づけてしまいます。また、変に解釈されてしまうこともありますよね。みんなと一律にできないことを、先生が「わがまま」と決めつけたりすることなどです。以前、大人の当事者の方が話してくださったのですが、小学校のとき(過敏などの特性があって)給食をほとんど食べられなかったら、先生から「そんなんじゃ小さいまま成長が止まって、大人に一生なれないよ」と言われたそうなんです。他にも「親のしつけが悪い」と親のせいにされたりとか…。人を傷つける、許してはいけない言葉です。大人の場合は、「あなたは自閉スペクトラム症の中でも優秀な方だよね」とか、 「発達障害でもきっと幸せになれるよ」といったことを言われる場面もあります。これらには『発達障害は幸せじゃない』というメッセージが隠れています。ほかにも「普通に見えるね」、「全然バレないから大丈夫」、「第一印象いいから大丈夫だよ」。こうした言葉も、一見褒めているように思われがちですが、『発達障害があると嫌われるけど、バレてないから平気だよ』というメッセージがその背後にあります。言われた本人は非常に気持ち良くないですし、傷つく言葉です。ほかにも、実際に言われた言葉だけではなく、例えば本のタイトルなどでよくある「発達障害を克服する」とかは、克服しなければいけないものだと考えているということですし、カサンドラという言葉は「人に迷惑かけるんだ」というメッセージになります。あと、ドラマなどで、”発達障害のある方の役柄が天才”ということもよく目にするのではないでしょうか。そうした、ステレオタイプのキャラクターが実は多いですよね。それをみて「自分は天才じゃないから意味はない」と思わされるということもよくありますね。こういったマイクロアグレッションはあらゆるところに転がっていて、それを毎日毎日当事者たちは受けているのが現状です。Upload By 発達ナビ編集部――発言した当人も、相手を傷つけてしまうことに気づいていないものもありそうです。もし、このようなマイクロアグレッションを受けた場合、当事者はどのように反応するべきなんでしょうか。大島先生:とても健康的で自信がある人ならば「それは違うんじゃない」、「それはこういう意味に捉えられて嫌なんですけど」と言い返せればいいのですが、そういうことができる人はほんの一部だと思います。あとは、「違うよね」とディスカッションできる理解者、仲間が近くにいると、認知的変容ができるかもしれません。ですが、いない場合は難しいでしょう。セクハラやパワハラと一緒で、マイクロアグレッションを受けた側はメンタルヘルスが阻害されて、落ち込んだり傷ついてしまいます。また、権力を持っている学校の先生や支援者といったマジョリティの方を、発達障害の人は上に見てしまいます。そうすると、パワーがある人たちが言っていることは正しいし逆らえないと思ってしまい、彼らから言われた言葉を「私はそうなんだ」と信じてしまいます。ですので、やはりマイクロアグレッションがないことが1番ですね。――オールマイノリティ・プロジェクトのホームページにある”COMIC”というコンテンツの中にマイクロアグレッションをテーマにしたマンガがありますよね。この中で、発達障害があることを告白した方が、悪意のないマイクロアグレッションを受けていますが、先生だったら、発達障害だと告白された場合、どのように答えるのが適切だと思われますか。大島先生:そうですね。「そうだったんだ、知らなかった」とか「言ってくれて ありがとうね。なにか気をつけることあったら教えてね」という感じがいいでしょうか。相手との関係性によってかける言葉も違いますので、あまり親しくない人か言われたらちょっと慌ててしまう人が多いと思います。 どう答えるかは難しいですね。このマンガにあるように、悪気のない行動でも、マイクロアグレッションとして成立してしまいます。このように起こりうるものだと自覚すること、悪気はなくても当事者にはすごくダメージがあることを知識として社会が意識していけるようにしたいですね。――ありがとうございます。障害は当事者ではなく、周りの方にあるというお話につながっていくと思いました。相手に合わせる「社会的カモフラージュ」で、発達障害のある方たちは疲弊している――2023年4月23日(日)に開催された本プロジェクトのシンポジウム「マイノリティに対して、社会の認知や行動は変容するか?」では、発達障害のある方たちが取る社会的カモフラージュに触れていらっしゃいました。こちらについても教えていただけますか?Upload By 発達ナビ編集部大島先生:社会的カモフラージュとは、自閉スペクトラム症の方たちが定型の社会に馴染むために取るような、 普通の人のような振る舞いのことを指します。例えば 、大して興味はない流行りのものをみんながいいねと言っていたら「そうだね」と合わせる、といったことです。仲間づくりをしたいとか、嫌われたくない、印象良くしたいという思いは誰でもあります。普通でないもの、つまり異質なものは世間から排除されてしまいがちですので、その異質さを消すように印象を管理し、周りに合わせて振る舞う。自分に対する批判や攻撃を避けるための行動ですね。――定型発達と言われる人も、そのような行動をとることはもちろんあると思います。ですが、やはり発達障害のある方たちの場合は、心身への負担感が違うのでしょうか。大島先生:そうですね。調査の結果、発達障害のある方の社会的カモフラージュは定型発達の方より非常に多く、長時間行っていることが分かっています。また、特性的にも、やりたくないことをやることに苦痛に感じる方たちです。このカモフラージュ行動自体非常にストレスです。よくも悪くも柔軟な定型発達の人であったら、まあいいやと本心では違うと思っていても、周りに合わせたりできますが、自閉スペクトラム症のある人が無理をしてそのような行動をとると、嫌だったという感じがずっと残ったり、過剰な負荷によってメンタルヘルスに非常に悪影響を与えてしまいます。つくり笑い一つとっても、意識して顔の筋肉を動かし、一生懸命笑顔をつくることはとても疲れると教えてもらったこともあります。マイクロアグレッションの概念が出てきたのは、10年ぐらい前です。社会的カモフラージュはここ5、6年ですね。海外のコンテンツですとマイクロアグレッションの動画や解説は結構ありますが、日本にはほとんどありません。日本では当事者の人権をどう守るかという視点が遅れていますので、このプロジェクトで多くの人にこれらのことを知っていただきたいと思っています。――日本もこういう知識をきちんと得て、マイノリティを含むすべての人々が生きやすい社会をつくっていくっていくことがとても大切だと思います。最後に、LITALICO発達ナビの読者へ、メッセージをお願いします。大島先生:現在の日本の一般的な公教育は、定型発達、マジョリティの人にとっても画一的で非常に厳しい面があると思います。私は、発達障害のある方たちがこの公教育に適応しなければいけないとは到底思いません。たとえ頑張って適応できたとしても、ストレスが溜まってしまい、幸せで楽しく、自発的に好きなことに取り込むという日々から遠ざかってしまうからです。お子さんが学校生活に適応しづらいと思い詰めている方がいらっしゃったら、どうか思い詰めずにお過ごしいただきたいです。また、診断があるお子さん、ないお子さんともに、個性的な面が多分におありになると思います。「もっとこうできれば」と思うとそこに目がいきがちですし、親御さんはさまざまなことが気にかかりでしょうし心配してしまいますよね。それがお子さんの長所だとしてもです。私の専門は自閉スペクトラム症ですが、自閉スペクトラム症のあるお子さんから大人まで一貫して言えるのが、みなさん本当に素直で誠実で、裏表なく、人間として素晴らしい素質がいっぱいあるということです。そういったところを見てあげるといいと感じています。――ありがとうございました。※クリックすると発達ナビのサイトから『オールマイノリティ・プロジェクト』のページに遷移します。Upload By 発達ナビ編集部開催日時<リアルタイム:当日参加>2023年7月23日(日)13:00〜16:30※12:50開場予定。前後することがあります<見逃し配信>2023年7月23日以降設定完了次第~8月23日(水)23:55開催方法ウェビナー形式(Web会議システムZoom)参加費無料内容第1部:基調講演「発達障害のある人の社会的孤立・孤独とマイクロアグレッション」大島 郁葉 さん(千葉大学子どものこころの発達教育研究センター 教授)第2部:パネルディスカッション「青年期・成人期において、発達障害の"障害"は社会のどこにあるのか?」<パネリスト4名>堀口 里奈 さん(筑波大学大学院生)村田 淳 さん(京都大学学生総合支援機構 准教授)大島 郁葉 さん(千葉大学子どものこころの発達教育研究センター 教授)佐々木 銀河 さん(筑波大学人間系 准教授)※モデレーター※クリックすると発達ナビのサイトから『一般公開WEBイベント「発達障害の"障害"は、社会のどこにあるのか?」』の申し込みページに遷移します。
2023年07月02日中学生になったウッシーヤは問題続出いまからおよそ13年前の、次男ウッシーヤが中学生のときのエピソードです。わが家は家系的に第二次成長期がゆっくりおとずれるようで、だいたい高校以降です。現在は大柄なウッシーヤも、中学1年生のころは小柄なほうでした。中学生になったウッシーヤは、まだ指しゃぶりもあり、学力は小学3年生レベルのまま足ぶみが続いており、周囲との差が開いていく一方でした。Upload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイウッシーヤは中学1年生の秋に、学校を揺るがす大事件を起こしてしまいました。私は、子育てが悪いのでは、もっと厳しくしつけるべきだったのでは、と思い悩み自分を責めていました。担任と校長先生を交えて相談した結果、専門家の力を借りるのがいいだろうということに決まりました。学校から紹介された教育センターの専門家と面談したところ、「アスペルガー症候群(※今でいう自閉スペクトラム症)かもしれない」と告げられました。驚きつつも、いただいた資料を読むと心あたりのある症状が90パーセント以上ありました。さらに資料を取り寄せて読みこむと、ウッシーヤにはほかにも発達凸凹の特性があることが分かってきました。さらに、わが家のほかの子どもたちにも発達凸凹の特性があることに気がつきました。ずいぶん気づくのが遅れましたが、当時は情報や支援が現在ほど充実していませんでした。特に夫ラクマはかなりショックを受け、発達障害の可能性があると知ってから3日間、一睡もせず資料を読んでいました。しかも、その間中泣いているのです。資料にある内容があまりにもわが家の子どもたちに当てはまる上に、子どもたちを追い込んで学校や職場でトラブルが絶えないのは父親である自分の責任だと強く感じていたのでした。周囲の友人たちからは「ラクマ家で誰か不幸があったのか?」と心配されたほどでした。でも私はこれまでの問題の原因がはっきりと分かり、しかもこれが子育てが悪いためではないと知ってホッとしました。Upload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ専門家からの告知で子育ての方向転換教育センターでの面談から3ヶ月ほど待って、ようやく発達外来を受診することができました。なにごとにもマメな性格のラクマは、これまでのいきさつをパソコンでまとめて病院に提出しました。すると担当医から「ウッシーヤ君は本当に発達障害なのかは分からない」と言われ、ものすごく驚きました。しかし、担当医は続けて「診断は出せると思うが、(検査などで)時間はかかる。(診断が出れば)お子さんの状況によっては薬の処方も可能になる」と説明しました。いま思えば、当時の担当医もまだ発達障害に関する知識が乏しかったのだと思います。のちに調べてみると、たしかに発達障害はその原因やメカニズムが医学的にまだ不明な部分も多いこと、診断が難しいこと、さまざまな要因があり、必ずしも遺伝するものではないことなどが分かってきました。病院での診察を終え、自宅に戻って夫婦でこれからのことを話し合いました。結果として医療のみではなく、何か別の方法も探してみようということになりました。というのは、ほぼ同じころ、仕事上の悩みを抱えていた長女ニャーイを心療内科に連れていったところ、「うつ病」と診断されました。薬を処方され、その後半年間、休職して自宅療養しましたが、処方された薬が合わなかったのか、何度か命の危険すら感じることもありました。すでに成人したニャーイにこれほど薬が合わないなら、まだ中学生のウッシーヤはどうなるのかという不安があったのです。Upload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイウッシーヤには資料で見つけた工夫を重ねました。その中で一番うまくいっていまも使っているのが、わが家で「ボード」と呼んでいる工夫です。マグネット式のボードとカードを用意して、やるべきことを書いて並べて、やり終えるとひっくり返します。すると「できた!」という文字が現れます。勉強で使うファイルは教科ごとに色分けしたり、学習机は引き出しにプレートを貼ったりして、中身がすぐに分かるように工夫しました。また書店をまわってグレーゾーン向けの参考書を購入して、ウッシーヤに使わせてみました。すると、少しずつ理解が進むようになりました。グレーゾーン向けの参考書は例えば、一番つまずいていた繰り上がりの計算の考え方が視覚的に分かりやすく説明されていたりしました。また、私の同僚のアメリカ人教師から「文章を読むときはモノサシを当てて読むといい」と教わりました。実際やってみると、とてもうまくいきました。Upload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイそのうち家庭内での工夫だけではなく、専門家からの支援が必要だと感じるようになりました。同じ市内に発達障害のある人の支援に関して実績のある療育施設を見つけ、ウッシーヤの発達相談で通っていたのですが、そのうちに夫婦でペアレント・トレーニング(ペアトレ)を受講することになりました。そのころ、子育ての一番の悩みは、ウッシーヤの動きが極端に遅いことでした。お風呂やトイレに入ると何時間でも出てこないし、アニメを見たり、生き物の観察をやり始めると何時間もやめませんでした。ペアトレでは、アニメ視聴をやめさせて次の動きを促すことをテーマにしてトレーニングを行いました。具体的な声かけの仕方から、注目の集め方、相手との距離、そのくり返し方など、かんたんな台本を作って、実際にやってみるのです。とくに重要なのが「まるで外国人になったみたいに、なるべくオーバーにほめましょう」ということでした。わが家の子どもたちはみな中学生以上で、すでに成人している子どもや大人なみの体格になっている子どもがほとんどなのに、オーバーにほめるなんて恥ずかしいと思いました。でもトレーナーさんは「お子さんをほめるんじゃないですよ。行動をほめるんですよ」とアドバイスしてくれました。私はそれならできるかもと思い、自宅にもどってやってみました。すると末っ子のウッシーヤは効果がすぐ現れました。すでに成人したほかの子どもたちにもやってみましたが、やはり効果があり、とても驚きました。Upload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイこの工夫は、一番動きのにぶい次男に向けて行うことが多かったので、問題のあまりないほかの子どもたちが怒りだしました。「できない子をほめるのはおかしい。子育てが間違っている。弟をダメにしたのは親の教育が悪いせいだ」という主張です。そこで私と夫はペアトレの資料を引っ張り出してきて、なるべく丁寧に説明しました。ペアトレは結果が出るのに時間はかかるかもしれないが国際的に実績のあるトレーニングであることを伝えていきました。発達凸凹の子育ては、当事者に対する工夫だけでなく、周囲の人々の理解を得るための説明も同じくらい大切なのだと実感しました。ペアトレが少しずつ結果を出してきたので、続いてストレス・マネジメント講座を受講しました。これで発達凸凹の子育てと家庭生活と仕事のバランスをうまくとる工夫ができました。Upload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ家庭内で工夫を重ねるうちに、学校でも同じ工夫を行えば効果はもっとあがるだろうということに気がつきました。ちょうどそのとき、子どもたちの通うインターナショナル系のフリースクールで教師を募集したので応募し、採用されました。学校の職員研修でペアトレを提案すると採用されたので、わが家が受けたトレーニングを全スタッフで受講することができました。そのため家庭内で行なっている工夫を学校に紹介しやすくなりました。家庭と学校で連動して行なった工夫のくわしい内容は、別の話題のときにご紹介します。Upload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ小学校高学年から親子で行っていたボランティア活動などの社会体験を、もっと就労を意識したものに変えていきました。ウッシーヤが野菜を育てたいと言うと、知人の農家に頼んで、収穫体験をさせてもらいました。将来は動物園で働きたいと聞くと豆記者として動物園を取材しました。本人がアルバイトをしたがると、知人に頼んで草刈りや洗車のアルバイトを一緒にしました。これらの社会体験は主に夫が同行してくれました。その後、私の母のすすめで母が勤務する保育園で、夏休みに次女リスミーとウッシーヤの2人がボランティア体験をしました。初回は次女リスミーとウッシーヤの2人で参加しました。ところが、ウッシーヤはよほど楽しかったようで、残りの休み期間の間中、ボランティアに通いつめました。しかも、ウッシーヤは通うほどにますます保育園での活動にはまりました。その後は長期休暇のたびに10年間も同じ保育園に通いつめるようになりました。執筆/ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ(監修:井上先生より)発達障害に気づかれたあと、ご夫婦でそのことについて学ばれ、子どもさんと一緒にさまざまな工夫や活動をされてきたことは、親御さんにとっても子どもさんにとってもとても得難い体験となっているのではないでしょうか。特に、ボランティア体験をお父さんと一緒に何種類も行われたことはすごいことだと思います。将来の就労に向かって実際に体験したことはお子さんにとって大きな財産になると思います。またきょうだいに対して納得できるような丁寧な説明も、大切だと思います。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年07月01日産院ではスヤスヤとよく寝ていた息子、退院したら豹変!?想像以上に大変だった新生児期。予定日より5日ほど早く産まれてきた息子。入院中、病室では全く泣くことなく良く眠る赤ちゃんでした。寝息も聞こえないくらい静かだったので、息をしてるか何度も確認していたのをよく覚えています。そして完全母子別室の産院だったので、授乳時以外は助産師さんがほとんどお世話してくれて、夜もぐっすり眠ることができました。ベッドに寝ているだけで、高級レストランのような食事が運ばれ、赤ちゃんはスヤスヤとよく眠り、母親としてやることは授乳だけ…。まるで天国のような入院生活でした(笑)。そんな入院中、唯一の不安は授乳でした。今思えば息子の吸啜(きゅうてつ)力も少し弱かったのと、私も初めての育児だったこともあり、30分以上かけて授乳しても体重を計り比べてみると1グラムも増えていないことがほとんどでした。しかしここでも、母乳が足りない分はミルクを足してくれる産院だったので、入院中に息子のお世話に大変さを感じることはあまりありませんでした(フラグ)。Upload By 海乃けだまいざ退院してくると、息子は入院中とは別人のように豹変しました(早すぎるフラグ回収)。産院では授乳の終わりと共に、抱っこだけでスヤスヤと寝ていたのに(むしろ授乳中に寝ていた。笑)、退院した途端に抱っこで歩きながらでないと寝なくなりました。しかも背中スイッチも装備され、産後ボロボロの身体でなんとか抱っこして寝かしつけても、布団に下ろすと目を開ける…(恐怖)。あの手この手でやっと布団に寝かせても、膝がパキッとなるだけで簡単に目を開ける敏感過ぎる息子。この終わりのないループを幾度となく繰り返し…気づくと次の授乳時間が迫っていました(白目)。Upload By 海乃けだま息子が寝ない間、気晴らしに見ていたのがスマホでした。当時の私の脳内は息子のお世話で育児一色だったので、自然と育児関連の記事を見るようになりました。少しでも気になることがあれば、スマホですぐに検索するようになっていました。そしてその習慣がいつしか産後のホルモンバランスと睡眠不足も相まって、思考をだんだんとネガティブにしていき…スマホの息抜き時間はいつの間にか“検索魔”となっていったのでした。真夜中の薄暗い部屋で調べれば調べるほどだんだんと怖くなり、さらに眠れなくなる…という悪循環でした(検索魔、本当良くないですよね。汗)。運動面の発達がゆっくりなのは少し気になっていたけれど、特性に気づかずに見逃していた日々…。1ヶ月健診を終え、保健センターの親子イベントにも参加するようになりました。そこで出会った息子と同学年の親子と仲良くなり、よく遊ぶようになりました。とはいいつつも、まだまだ家の中での生活が長かったので、あいかわらず膝が「パキッ」となるだけで起きる敏感な息子を起こさないよう忍びのような生活を続けていました。3~4ヶ月になるころにはだんだんと起きている時間も増えてきて、“検索魔”になる時間もとれなくなっていました。母子手帳の3~4ヶ月ごろの記録ページに「あやすと良く笑いますか?」という項目があるのに、息子が“あまり笑わない赤ちゃん”ということが少し気になってはいましたが、全く笑わないということはなかったため「こんなもんかな…」とスルーしていました(いや今検索してー)。そしてこれは下の子が産まれてから気づいたのですが、息子は赤ちゃんのころから物音に敏感なところがある反面、音のする方を気にして見ようとしたり、追視することがほとんどありませんでした。ママ友とは定期的に会っていて、子どもたちの成長・そのときの困りごとなど話し合っていました。離乳食が進まないことや、スプーンの持たせ方など話していましたが、息子はスプーン以前に手がベタベタするのを極度に嫌がり、手づかみ食べすらしていませんでした。このころから少しずつママ友との悩みがズレ始めていたように思います。8~9ヶ月あたりを過ぎたころ、少しずつ周りの子どもたちよりも息子の運動面の発達が遅れていることが目立つようになってきました。ハイハイやつかまり立ちする子どもが出てくる中、息子はお座りの一点張りでした。正確には、お座りの姿勢から動けない…の表現が正しいかもしれません。息子はそれまで寝返りをすることが一度もなく、自分でお座りの姿勢までもっていくことができなかったのです。私がお座りの状態にさせて、後ろに倒れてしまったときは起き上がれないので(寝返りをしないので)、泣いて私を呼ぶという状態でした。運動面の遅れを感じながらも、個人差だろうと安易に考え息子のペースでハイハイしてくれるのを待っていました。Upload By 海乃けだま集団健診で声をかけられるものの、様子見にしてしまった私…ちょうど息子が1歳になろうとするころは、バタバタしていてママ友と遊ぶ機会も減っていました。そんなとき、集団健診の時期がやってきました。相変わらずハイハイはできないものの、このころには息子も寝返りを習得していたため、お座りの姿勢まで自分で持っていくことができるようになっていました。健診の時間がちょうどお昼寝時間とかぶっていたこともあり、健診にきていたほかの子どもたちも泣いていたり、歩き回っていたりと、割といろんなお母さんたちが大変そうにしていました。そんな中、まだ歩けない息子は私が抱っこすると大人しく抱っこされていたため、特段大変とは思いませんでした(このときそう思ってしまったことが後々に響くとは知らずに…)。ほかの子どもたちが健診を終えて帰って行き、息子が呼ばれたのは最後の方でした。案の定お昼寝できずに不機嫌な息子は、発達検査のテストはほぼできませんでした。健診のころには今思えば分かりやすく特性が出ていた息子。手先の感覚が過敏で手づかみ食べをせず、一粒でもご飯粒が手につこうものなら、全力で手をブンブン振って払おうとするので、食後はそこらじゅうに米粒が飛び散っていました。また、机に置かれた「おしぼり」もすごく嫌がり、一切触ろうとしませんでした(“おしぼりの防波堤”を作っておけば、それ以上手を出してくることもなかったので、外食の際には重宝していました。笑)。そしてあまり笑わない・目が合いにくい、名前を呼んでも振り向かない・運動面もゆっくりでハイハイをしようとしない…指差しもしない。とにかく反応が少なかった息子なので、保健師さんも言葉を濁しつつ「育てにくいと思ったことはないですか?」と聞いてきましたが、私は初めての息子の育児で「こんなもんやろ」と思い込んでしまっていたのと、呼ばれるまでの間に私よりもっと大変そうな親御さんがたくさんいると感じていたので、こんな私が大変だなんて言えないと気持ちに蓋をしてしまったのです。そして…保健師さんの様子観察の提案に対する私の言葉は「大丈夫です」でした(あぁーーー…←心の叫び)。Upload By 海乃けだま今まで可愛いと思っていた行動が特性だった⁉︎メンタルはどん底に…1歳1ヶ月を過ぎたころ、息子はついにハイハイを習得し徐々に表情も豊かになっていました。このころに気に入っていた遊びは、表裏柄の違う薄っぺらい布や、葉っぱなどを目のすぐ横でヒラヒラとさせることでした。ある程度勉強した今ならすぐに、「同じ行動を繰り返す」という、ASDの特性の一つ「常同行動」では?とピンときますが、当時はただただ「ニコニコしながら布などを振る」その謎の行動が可愛くて仕方ありませんでした(親バカ炸裂)。Upload By 海乃けだまようやく新居への引っ越しも落ち着いたころ、ママ友と久々に会うことになりました。たった2~3ヶ月会わないだけでママ友の子どもは喃語から単語を少し話すようになっており、母親のお話に対して“はい/いいえ”の意思をしっかり示していました。このころの息子はと言うと、名前を呼んでも10回に1回振り向くかどうか、単語はおろか母親である私でも解読不可能な喃語パラダイスでした。未だに指差しもなく、欲しいものがあるときは「あー!!」とぐずるスタイルでした。それでも産まれてから片時も離れず、1日中一緒に過ごしていたので、指差しや発語がなくてもだいたいの息子の要求は汲み取れていました。…が、さすがに無知な私もこのころから「…あれ…なんか息子、ちょっと様子が違うかも…?」と思うようになりました。そう感じてからは児童館へ行っても、スーパーへ行っても、公園に行っても、同じ月齢の子どもを無意識に見ては、息子との差を比べてしまっていました。ただただ「息子と同じくらいの発達の子どもはいないか」と、自分を安心させたい気持ちだけでした。しかし…どこへ行っても息子ほど反応が少ない子どもはいませんでした。私の疑問の気持ちは確信に変わっていきました。それでも息子の時間は過ぎてゆく…1歳半健診を待てずに発達相談したあの日。次のステップへ進むために。真っ暗闇の出口の見えないトンネルに息子と2人きりでとり残されている心境でした。「妊娠中の食べ物がよくなかった?」「産むときに何かあったんじゃ…」「私の育て方が下手なせいで…」答えなんてないのに、自問自答を繰り返していました。発達障害は母体の環境や親の育て方は関係ないと言われていますが、自分を責めずにはいられませんでした。食事も喉を通らなくなり、1週間で3キロ痩せました。少しでも暇があれば発達障害について調べるようになり、“特性があったけど発達障害ではなかった”という記事を見つけては、ほんのひととき安堵するも、また目の前の息子を見ているとやっぱり発達障害があるんじゃないか…と育児が楽しめなくなっていた自分がいました。モヤモヤした気持ちのまま息子と過ごしていましたが、発達障害のことを調べていくうちに“早期療育”の文字が目に入りました。息子の貴重な幼少期、「少しでも早く環境を整えてあげたい!!」と1週間後に迫っていた1歳半健診を待てず、気づくと発達相談の予約窓口へ連絡をしていました。発達相談の日、保健センターの発達相談員さんに新版K式発達検査を実施してもらった結果、息子の発達年齢は「10ヶ月程度」と言われました。息子はそのとき1歳10ヶ月でした。頭によぎるのは、夜寝なかった乳児時代の息子、ヒラヒラと布を揺らして喜んでいた1歳のころ…あのときから行動に移していれば、息子にもっと早く療育を受けさせてあげられたのに…後悔ばかりが募っていました。Upload By 海乃けだま後ろばかり見ていた私でしたが、「とにかく息子のために今できることをできる限りやるしかない!」と夫と共に病院へ行き、療育先を探しに行きました。正直なところ今でも「息子にASDがなかったら、どんな子どもになったんだろう」と思わない日はありません。でもそんなとき、超楽天家な夫は「息子は息子やん!おもろいやん!」と私のネガティブな気持ちを軽く吹き飛ばしてくれます(吹き飛ばない日も多々あります(笑))。Upload By 海乃けだま私自身、息子が発達障害かもしれないと落ち込んでいたとき、藁にもすがる思いで見ていた発達障害に関する記事に背中を押してもらいました。この私の体験談が、誰かのお役に立てれば幸いです。執筆/海乃けだま(監修:室伏先生より)けだまさん、発達障害かもと思われたきっかけや、療育へ繋がるまでのエピソードを具体的に共有していただき、ありがとうございました。もっと早く療育を受けさせてあげられれば、と後悔があると書いてくださっていますが、1歳半健診よりも前に発達相談窓口にご連絡されたとのことで、とても早い段階で発達相談や療育につながれたのではないかと思います。もちろんお子様、ご家族が直面しているお困りの内容にもよりますが、3歳児健診で指摘されたり、就学前の段階で園の先生からご相談があったり、ということを契機に医療や療育につながる方が多いように思います。就学後や、成人になってから診断を受けられる方も少なくありません。自閉スペクトラム症の場合、1歳のお誕生日を迎える前の段階では、夜泣きや癇癪が強い、逆にとてもおとなしい、人見知りをしない、あまり笑わない・目が合いにくい、名前を呼んでも振り向かないなどの徴候が見られることもありますが、受診をしていただいてもその時点での診断は難しく、コミュニケーションの発達(言語発達だけでなく非言語的なコミュニケーションも含みます)、遊び方の発達、情緒の発達、感覚の偏りなどを見て、総合的に判断していくことが多いです。発達障害であるかどうかについて判断がつきにくい時期であっても、発達に関して不安な点があれば、ぜひ発達相談や受診を考えてみていただきたいと思います。けだまさんは、発達相談につながるまで、ママ友とも悩みごとを共有できないままに、お一人で悩まれたり、自分を責めてしまったりと、おつらかったですね。時間のかかる寝かしつけや、手の感覚過敏などもあり、育児も本当に大変だったことと思います。発達に関して相談することは、勇気のいることかもしれませんが、早期に療育機関につながりやすくなったり、関わり方のアドバイスをお伝えできたり、睡眠の困難さに対しては必要に応じて薬物治療を検討できたり(成人で使用される睡眠薬とは異なり、眠るためのホルモンを調整するようなお薬があります)と、いろいろメリットがあると思います。自閉スペクトラム症は関わり方が原因で発症するものでは決してありませんが、家庭でできる療育的な関わりにより、言語や社会性の発達を促すことも期待できます。1歳半健診では、言葉が出ているか、アイコンタクトや模倣、表情などの非言語的なコミュニケーションが育っているか、などを確認していますが、短時間の診察になりますし、個人差もあるため、多少のおくれがあっても指摘されないこともあります(3歳児健診も同様です)。健診で指摘がなくても、不安や違和感を感じた時点で相談を検討していただければと思います。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年06月30日「仕事しないで家にずっといればいい」そう言われても…。親なきあと、私はどうなるの?私は、幼いころから衝動性が強い子どもでした。ですが当時は発達障害についての社会の理解が低かったこと、また両親も私のそんな特性に気づかなかったこともあり、ADHDの診断を受けることはありませんでした。短大を卒業し就職しましたが、仕事自体はできても環境になじめずにすぐに辞めて…を繰り返すようになりました。「なんでうまくいかないんだろう」「私ってダメなのかな」と感じる場面は日に日に増えていき、そんな中私は「こんなにうまくいかないのには、何か理由があるのかもしれない」と感じるようになりました。そんな私に同居している両親は、「仕事なんてしないで家にずっといればいい。体調が悪ければ家で寝ていればいい」と言います。ですが、そんなことを言われても、親がいなくなったら私はどうなるの?という焦り、不安、心配に押しつぶされそうな毎日でした。私は、自立をするためには働かなければならないと決意しました。「病院で診断を受け、精神障害者保健福祉手帳を取得、その後就労移行支援を受けて就業する」という目標を立て、行動を始めたのです。Upload By ユーザー体験談自分の人生を生きたい!でも、手帳取得、就労移行支援に大反対する両親私は精神科を受診し、ついにADHDの診断を受けました。そして、精神障害者保健福祉手帳を申請する段階となったときに、そのことを両親に伝えました。ところが、両親は手帳取得も就労移行支援事業所に通うことにも大反対!しかもADHDの診断も認めない!と言うのです。「おまえは障害者じゃない。精神科に通うのはやめてくれ」「手帳を取るのも自分たちがなくなってからにしてくれ。おまえくらい養うから」その言葉は、到底受け入れられるものではありませんでした。私は仕事をしたい!何より自分の人生を生きたい!人生で初めて、親に対して抵抗をしました。Upload By ユーザー体験談私に障害があると認めたくない両親に、私は手帳を取るために必死にプレゼンをしました。発達障害、特性、生きづらさについて、そしてこれらにどのような支援があるか、資料を広げて詳しく説明をしました。すると、資料を見ていた父が突然、父自身に自閉スペクトラム症の特性があるかもしれないと、つぶやいたのです。そして後日、私の精神科の受診に父も同行することになりました。話を聞いてくれた主治医は、「お父さんには自閉スペクトラム症の特性がありますね」と言いました。昔から父は、ほかの人に何か言われても全く気にしないタイプでした。私は、父にもやっぱり特性があるんだと、改めて感じました。私の手帳取得に反対するのも、この特性がかかわっているのかもしれないとも…。その後、双極性感情障害の診断も受け精神障害者保健福祉手帳を取得した私は、グループホームを検討したいと思うようになりました。そこで、主治医に意見書を書いてもらう機会があったのですが、そこには『父親に自閉スペクトラム症の特性あり。父親による決めつけなどの精神的負荷が大きく、早く別居してグループホームに入居した方がよい』と書かれていました。父はこの意見書を読み、さすがに思うところがあったようで、その後は私の障害ややることについて過度に干渉することはなくなりました。Upload By ユーザー体験談自分の人生を大切にしていきたい。いつかグループホームを検討しています昨年、家のルールについて父と対立し、「出ていけ!」と言われたためウィークリーマンションを借りて一時別居した時期がありました。その生活のなんて快適なこと!ストレスの原因は、過干渉な両親だったんだな…とつくづく感じる結果になりました。その後、高齢の両親が心配になり実家に戻ったのですが、同じ敷地内でも住む建物を別にしたので、両親との距離を取りながらなんとか暮らしています。私は、企業に勤めています。就労移行支援事業所に2年通い、就職することができました。リモートワークができる会社なので、在宅で仕事をしているのですが、その仕事時間中にも両親が私の部屋へ来ることがあり困っていました。「◎◎を買ってきて」など、業務中にできないお願いをしてくるので、やめて欲しいと何回も注意したら、最近ようやく来なくなりました。一度、ウィークリーマンションを借りて別居したことも、よいきっかけになったのかもしれません。今後は両親とよい距離感をたもちつつ、将来はグループホームを検討して、自分の人生を大切にして暮らしていきたいと思っています。Upload By ユーザー体験談イラスト/吉田いらこエピソード参考/はっちゃん(監修:鈴木先生)神経発達症(発達障がい)に対する社会の無理解やSNSによる情報が広まったことで「診断を受けないまま大人になってしまった神経発達症」の方の受診が増えています。障がいを認めたくない親御さんの元で育ったため、まだ診断のついていない方が藁をもつかむ心境で相談に来られています。たとえ母親と受診したとしても、特性の強い父親などは外来へは一緒に来ない場合も多いです。子どもの障がいを認めたくないのと、自分の特性についてとやかく言われたくないからだと思います。お子さんに対する投薬や部活などに関しても反対するケースが多くみられます。精神障害者保健福祉手帳は取得することで、さまざまな補助が得られます。私のクリニックでは、主にマル福(医療福祉費支給制度)(※)が過ぎた18歳以上の方に書いています。診断名はASD+ADHDで書くことが多いです。手帳は「障害」ですが、ご本人には「ASDは特性、ADHDは慢性疾患」だとお伝えしています。(※)茨城県において、小児・妊産婦・ひとり親家庭・重度心身障害者などの医療福祉受給対 象者の方が、医療保険で病院などにかかった場合の一部負担金相当額を公費で助成し、医療費の負担を軽減 する制度コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2023年06月22日片づけ問題、忘れる問題をお助け!4つの商品化候補グッズについてアンケート実施中3月に実施したアンケート、「【発達ナビ×フェリシモ】発達障害フレンドリーなグッズづくり 第5弾あなたの「欲しいもの」はどれ?」にご協力いただき、ありがとうございました。気になるアイテム案へたくさんの投票をいただき、投票結果を興味深く拝見しました。2月には、発達が気になるお子さんと関わる先生方にオンラインでお集まりいただき、座談会を実施。「こんな商品があったらいいな」というアイデアをみんなで話し合うことができました。投票や座談会を経て、いただいたお声などから検討を繰り返し…候補を次の4つに絞り、2つの商品化を目指します!1.プリントやお手紙を色別で仕分けできる「カラフルトレータイプの収納BOX」2.あちこち置くのをストップ!「いったん置き場収納ラック」3.玄関先や鞄など、いろんな所に貼って忘れ物防止!「貼ってはがせるタスク管理シール」4.いつでもどこでもタスク管理!「文字が書けて簡単に取れないリストバンド(紙製)」具体的な商品化に向けて、さらに詳しくみなさんのご意見を教えていただくために、追加アンケートを実施いたします。それぞれのお悩み解決のための、さまざまなコメントをお待ちしております。発達ナビユーザーのみなさんと一緒に、より便利で使いやすいアイテムをつくっていきたいと考えていますので、ぜひご回答をお願いいたします!※詳細ボタンをクリックすると発達ナビのサイトから株式会社フェリシモのサイトに遷移します所要時間:約5~10分回答期限:2023年7月2日(日)【発達ナビ×フェリシモC.C.P】発達障害フレンドリーなグッズをチェック!これまでも【発達ナビ×フェリシモC.C.P】では、発達が気になるお子さんや保護者のみなさん、当事者の方が便利に快適に過ごせることを願ってさまざまな商品を開発してきました。その中から人気商品をピックアップしましたので、ぜひチェックしてみてくださいね。Upload By 発達ナビ編集部※詳細ボタンをクリックすると発達ナビのサイトから株式会社フェリシモのサイトに遷移しますUpload By 発達ナビ編集部※詳細ボタンをクリックすると発達ナビのサイトから株式会社フェリシモのサイトに遷移しますUpload By 発達ナビ編集部※詳細ボタンをクリックすると発達ナビのサイトから株式会社フェリシモのサイトに遷移します
2023年06月19日23歳娘はグループホームに入居中Upload By 荒木まち子発達障害がある娘は高等特別支援学校を卒業後、特例子会社に就職、勤めて4年目にグループホームに入居しました。発達障害がある娘の特性娘は計算が大の苦手です。でもいろいろな経験を重ねつつ日常の買い物やATMの使い方などを身につけてきました。なので私は娘がグループホームに入居するとき、それまで彼女が働いて貯めていた貯蓄(含む障害年金)を通帳ごと娘に渡し、グループホームの使用料の振り込みや生活費(食費、保険代、携帯料金、余暇のお金など)の支払いをすべて本人に任せることにしました。収入激減なのに…原因はさまざまですが、メンタル面が崩れると娘は不眠や吐き気を催し会社を休むことがよくあります。グループホームに入居してしばらくして娘はネットトラブルなどいろいろな要因が重なり、再び会社を休みがちになりました。収入は格段に減り、娘は貯蓄を切り崩して生活するようになりました。障害年金だけではグループホームの使用料(家賃)は足りません。それでも娘に節約をする様子はなく、フルタイムで勤務していたときと同じような生活をしていました。むしろ会社を休んでいる間の時間を持て余し、習い事を始めたり、ゲーミングチェアを購入したり、外食が増えたりと、以前にも増してお金を使っているように見受けられました。グループホームの世話人さんから「娘さんがネットで注文した商品がグループホームに毎日のように届く」と言われ、私は娘に貯蓄の残高は大丈夫なのかと何度も確認しました。娘はそのたびに「まだあるから大丈夫」と言っていました。決定的な出来事グループホームに入居後も娘のケース会議は定期的に開かれていて、今後のことを見据えた選択肢や方向性についての話し合いが行われていました。本人を交えた支援者会議で大まかな見通しが立ってしばらくしたころ、私のところにグループホームの世話人さんから「娘さんが“お金がない”と言っている」と連絡がありました。支援者会議ではあと数ヶ月の生活費は残っているという前提で話を進めていたので私は急いでグループホームに向かいました。Upload By 荒木まち子何にお金を使ったか調べてみると、携帯電話会社の決済サービス(課金やネットでの買い物)などが主な原因でした。娘は学生時代、フィルタリングサービスを利用していたのでゲームなどで課金をしたことはほとんどありませんでした。でも娘は今や成人の社会人。携帯電話の契約も本人名義に変更していて、機種や料金プラン、決済サービスも自分で選べるようになっていました。またATMで頻繁に現金を引き出していて、何に使った覚えていない“使途不明な支出”も多くありました。本人に聞くと「あのときの自分はどうかしていた」と言っていました。確かにそのころは娘のメンタルがとても不安定な時期でした。それでもまさか娘が1ヶ月で数十万円も使うとは…。成年後見人制度私はそれまでも「成年後見人」という言葉を耳にはしていましたが「親も健在だし、娘にはまだ必要ないかな」と思っていました。でもこの一件で娘には保佐人、または補助人が必要なのだとあらためて思いました。現行の成年後見人制度は、費用がかかる、一度選定されると一生涯変更ができないなど不便な点があります。また、周りから見たら「それって無駄使いじゃない?」も思えることでも、本人にとっては「すごく重要で、生きていくうえでとても大切なこと。唯一の楽しみ」という場合もあるので、なんでもかんでも管理・制限するのはどうなんだろう?という気持ちもあります。現在、成年後見人制度はいろいろな観点から見直しが論じられているので、これからも注視していこうと思っています。経験して身につく貯蓄が底をついてはじめて自分の置かれている立場を理解したようで、娘は生活の見直しをしました。・習い事を減らし、ポケットWi-Fiは解約・外食は控える・通帳は“貴重品”としてグループホームの世話人さんに預け、お金は本当に必要なときだけ引き出し、何に使ったか記録する・携帯には再度フィルターをかける娘は何事も経験しないと分からないタイプです。働かなければ収入が減り、それまでと同じ生活を送るのは難しくなるということは、当然娘も『知識』として分かっていたと思います。でも実際経験して初めて『実感』したのでしょう。また、計算が苦手な自分が、お金の管理を自分一人でする難しさにも改めて気づいたようです。休職中も娘は「働きたくない」と思っていたわけではありません。娘はコミュニケーションは得意ではありませんが、一人でいるよりも誰かといる方が好きなので「吐き気やだるさがなければ働きたい」と、ずっと言っていました。今回の出来事は、娘が次の新たなステップに進む一つのきっかけにもなったと私は思っています。彼女はさらなる自己理解を経て、オトナへの階段をまた一段登りました。随分と高い授業料となってしまいましたが(笑)(執筆/荒木まち子)(監修:渡部先生より)確かに授業料は高くついてしまいましたが、娘さんが生活の見直しをできたという成果も大きかったですね。成年後見制度は一度始めたら原則やめられないものですが、相続や契約など必要なときのみ利用して、その手続きが終了したらほかの制度に移行して後見人は辞任する、といった見直しが現在検討されています。また、成年後見制度以外にも、日常生活自立支援事業など、障害のある方を支える制度もありますので、今後の制度の動きを見ながら、娘さんがより安心して生活できる仕組みを選んでください。コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如・多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
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