卵のプラセンタ「セラメント」を配合株式会社エポラが、同社のホリスティック・ヘルス&ビューティーブランドのepoから、高濃度美容液「エポリペアエッセンスナイトウォーム」を、10月16日に発売する予定だ。「エポリペアエッセンスナイトウォーム」には、卵のプラセンタ「セラメント(鶏卵胚体外膜細胞順化培養液:保湿成分)」が配合されており、epoが提唱する“生命力×10 or LESS×科学”の生命力の部分を担う。美容成分を肌の角質層まで届けるべく、“浸透”を研究して開発。肌にのせた瞬間に“あたたまる”最先端科学のヒートテクノロジーも採用され、"あたためながらセラメントを肌へ届ける"温感パック美容液となっている。水と油のどちらともなじむ「両親媒性の成分」「エポリペアエッセンスナイトウォーム」は、水と油のどちらともなじむ「両親媒性の成分」が、オイルのような厚みと「膜が張ったような」新感覚のテクスチャーとなっていることも特徴の1つ。「乾燥による小じわを目立たなくする効果」や、「敏感肌用パッチテスト クリア」など、効能評価試験済みだ。1個あたりの容量は30mLで、税込み価格は6,050円となる。(画像はプレスリリースより)【参考】※エポリペアエッセンスナイトウォーム
2023年10月18日住んでいた場所は違っても、年齢が近ければ「そうそう!わかる」って盛り上がれるのが、青春時代におなかがよじれたお笑い番組の話。各界で活躍する同世代の女性と一緒に、“あのころ”を振り返ってみましょうーー。「中学では器械体操部に入って、一生懸命、練習に取り組んでいたから、テレビを見る時間はものすごく限られていて……。土曜まで頑張って、くったくたに疲れて、それでようやく好きなテレビにたどりつけるんですね。それが『オレたちひょうきん族』(’81〜’89年・フジテレビ系)でした。ホント、楽しい時間なんですが、日曜の朝からまた厳しい部活が始まるので、エンディングでEPOさんの『DOWN TOWN』が流れると“ああ、休みが終わっちゃう”と、ちょっとした絶望を感じたりしていました」歌手、女優など幅広く活躍する濱田マリさん(52)は、関西出身ということもあり、小学校時代からお笑い番組は大好きだった。’80年、濱田さんが小6のときに漫才ブームがやってきた。その中心にいたお笑い芸人が集結して、’81年にスタートしたのが『オレたちひょうきん族』だ。お気に入りのコーナー、キャラを数え上げたらキリがないが、とくに印象に残っているのが『ひょうきんベストテン』に登場した「うなずきトリオ」だ。「漫才ではツッコミを担当する、ビートきよしさん、松本竜介さん、島田洋八さんのユニット。ふだんはボケの“引立て役”の3人が“主役”となって歌う『うなずきマーチ』が衝撃的で。曲も面白いだけじゃなく、とってもキャッチーでオシャレ。それもそのはずで、後で調べてみたら、作詞・作曲はあの大瀧詠一さんなんですよね」ほかにも明石家さんまの『アミダばばあの唄』は桑田佳祐が作詞・作曲、安岡力也扮する「ホタテマン」が歌う『ホタテのロックン・ロール』には内田裕也が作詞に参加するなど、『ひょうきん族』から生まれた曲には、当時すでに一流といわれていたミュージシャンが制作にかかわっている。「ふざけているようで、しっかり作り込まれているから、番組全体のクオリティがめちゃめちゃ高い。“面白いことを、ド真面目にやる”ことのスゴさ、大切さは『ひょうきん族』から教わりました」そう感じたのは、器械体操部を高1でやめ、夢中になれるものを失ったからかもしれない。「技ができたときはうれしいけど、最初に挑戦するときは怖いし、練習もキツい。しかも強豪校でかなり真剣にやっていたから、後輩に追い越されたりすると、プライドがボロボロになる。楽しいことより、つらいことのほうが多かったんです」両親から「体操をやめて何をするんだ」と言われるたび、“私に何が残っているんだろう”と悩み、誇れる“何か”を探した。「そんなとき、部活を続けていたら出合わなかった、ちょっと不良の友人に、『難波ベアーズ』や『十三ファンダンゴ』といったライブハウスに連れていってもらったんです。常連のお兄さんやお姉さんにいろんな音楽を教わったり、ステージに上がらせてもらったりもしました」音楽の道に入り、結成したバンド「砂場」は『三宅裕司のいかすバンド天国』(通称・イカ天、’89〜90年・TBS系)にも出場。「私たちの音楽はとんがっていましたが、ついでに態度もとんがっていて、審査員のみなさんから酷評されました(笑)。でもなぜか、ベストボーカリスト賞をもらうことができて。トロフィを神戸まで大事に持ち帰りました」同じころ、ショートコントなどを取り入れたエンターテインメントバンド「モダンチョキチョキズ」にゲスト参加し、『新・オバケのQ太郎』をカバーした。「面白くて楽しい曲ですが、メンバーはすでにプロとして活動していた人ばかりで、演奏のクオリティが抜群に高いんです。そこがスゴかった!自分で言っちゃってますけど(笑)」“面白いことを、ド真面目にやる”ーー『ひょうきん族』にも通じるギャップがレコード会社の目に留まり、’92年にメジャーデビュー。現在の女優業にもつながる人生の転機を迎えたのだった。「たけしさんやさんまさんとお仕事でご一緒する機会にも恵まれ、すごい幸せなことをやらかしていると思うんです。さすがに声をかけるのも恐れ多くて“『ひょうきん族』のファンでした”なんて言えませんけど。でも、私のセンスや仕事へのスタンスは、10代のころに『ひょうきん族』から教わり、磨かれたんです!……って、そう思っていいですか?ずうずうしいかな?それほど大好きな番組です」「女性自身」2021年3月16日号 掲載
2021年03月07日住んでいた場所は違っても、年齢が近ければ「そうそう!わかる」って盛り上がれるのが、青春時代におなかがよじれたお笑い番組の話。各界で活躍する同世代の女性と一緒に、“あのころ”を振り返ってみましょうーー。「中学では器械体操部に入って、一生懸命、練習に取り組んでいたから、テレビを見る時間はものすごく限られていて……。土曜まで頑張って、くったくたに疲れて、それでようやく好きなテレビにたどりつけるんですね。それが『オレたちひょうきん族』(’81〜’89年・フジテレビ系)でした。ホント、楽しい時間なんですが、日曜の朝からまた厳しい部活が始まるので、エンディングでEPOさんの『DOWN TOWN』が流れると“ああ、休みが終わっちゃう”と、ちょっとした絶望を感じたりしていました」歌手、女優など幅広く活躍する濱田マリさん(52)は、関西出身ということもあり、小学校時代からお笑い番組は大好きだった。「私の育った神戸は、大阪ほどではありませんが、それでも、勉強やスポーツができる子より、面白い子が人気。だから土曜のお昼はみんな、お好み焼きを食べながら“午後の授業”として『よしもと新喜劇』(’62年〜MBS系)を見るんです。そして夜は『8時だョ!全員集合』(’69〜’85年・TBS系)が定番でした」’80年、濱田さんが小6のときに漫才ブームがやってきた。「ツービートさん、明石家さんまさんが大好きで。ザ・ぼんちさんの『そーなんですよ』というギャグも“次に来るぞ”ってわかっているのに、何度聞いても笑っちゃうんですよね」こうした漫才ブームの中心にいたお笑い芸人が集結して、’81年にスタートしたのが『オレたちひょうきん族』だ。「『ひょうきん族』は、まわりのスタッフの笑い声がそのまま録音されたり、『ひょうきん懺悔室』ではプロデューサーさんが神父として出演したり。まるで業界の裏側をのぞくような、大人な感じのするお笑いでした」『全員集合』は小さな子どもでも楽しめる内容だったため、中学への進学を機に、ちょっと背伸びした笑いを求めたくなった。「今でも覚えているのが“ハチの一刺し(ロッキード事件で当時、田中角栄元首相が賄賂を受領したことを裏付ける証言)”で話題となった榎本三恵子さんに、ハチの扮装をさせたシーン。まだ子どもでいまいち意味がわかりませんでしたが、大人たちがゲラゲラ笑っているのを見て“これは面白いんだ”って。大人のギャグセンスを磨きました」「女性自身」2021年3月16日号 掲載
2021年03月07日土岐麻子さんのカバーアルバム『HOME TOWN ~Cover Songs~』が素晴らしい。時代も性別もジャンルも超えた全11曲(ボーナストラック含む)を、歌声とアレンジが彩り、目の前に鮮やかな風景を広げてくれるのだ。「今回、もっといろんなジャンルの楽曲を、私の声と出合わせてみたいと(スタッフから)言われたんです。それで、みんなで選曲しました。そんな中で、私なりに“ホームタウン”というテーマが見えてきたんですね。これまでは街のことを歌ってきたんですが、2020年は家にずっといて、自分の近くにあるものや内面に意識が向かうようになったので、そこに寄り添ってくれるような、温かい楽曲を選びたいと思ったんです」シティポップ=街のイメージがある土岐さんにとっては、奇しくもターニングポイントとなった2020年。とはいえ、このテーマと歌声は、驚くほどにマッチしている。「年々静かな声になっているんですよね。だから内向きな声だと思うんです。今回のテーマでも、大きなキーワードになっていると思います」歌声によって楽曲の印象が変わる、ということを、今作の中で特に象徴しているのが、荒井由実さんが原曲の「CHINESE SOUP」。「この曲、いろんな方が歌っていて。スープを作りながら物語が進んでいく曲ですけど、同じスープでも味が違うように聞こえますよね。吉田美奈子さんが歌うとスパイシーで、ユーミンが歌うとごま油の香りがして卵でとじてあるような感じ。渡辺真知子さんのバージョンは薬膳みたいな、出汁が効いている感じがする」今作には「Rendez-vous in ’58」のセルフカバーも収録されている。デュエットとして生まれ変わっており、お相手はなんとバカリズムさん!その背景には、様々な想いが重なり合っている。「2013年に作ったんですが、雨が降って休みの計画は崩れたけれど、家でも音楽と会話でいろんな時代と場所に旅ができるっていう、ささやかで大きな幸せを歌っていて。これは今こそ大切な歌だと思って、仲のいい二人の歌だから、セルフカバーでデュエットしようと。相手はバカリズムさんしか浮かばなかったんです。これはEPOさんの作曲なんですが、私は小学校1年生の時、『オレたちひょうきん族』を見て、コントでハチャメチャになっても、EPOさんのエンディングテーマ『DOWN TOWN』でおしゃれに締め括られる感じが新鮮で。そして、同学年の升野さん(バカリズム)も同番組の影響を受け、音楽とお笑いを切り離して考えられないって言っていて。あの頃のような音楽のときめきを共有できる升野さんと歌えてよかったです」まさに日々にときめきを与えてくれる、音楽の栄養が詰まった一枚だ。ASIAN KUNG-FU GENERATIONの「ソラニン」をはじめ、くるりの「Jubilee」、桑田佳祐の「白い恋人達」など、ボーナストラックを含む全11曲収録。『HOME TOWN ~Cover Songs~』¥3,000(A.S.A.B)とき・あさこCymbalsの元リードボーカル。シンガーとしてはもちろん、CMソングやラジオパーソナリティを務めるなど声のスペシャリスト。3月6日(土)には日本橋三井ホールにてワンマンライブを開催。※『anan』2021年3月3日号より。写真・岡本 俊(まきうらオフィス)取材、文・高橋美穂(by anan編集部)
2021年03月02日いまや多くの人の日常生活において欠かせない音楽ですが、私たちのもとに届くまでにもさまざまなドラマがあるもの。そこで、名曲の誕生秘話を存分に味わえるドキュメンタリー『音響ハウス Melody-Go-Round』をご紹介します。見どころについて、こちらの方にお話をうかがってきました。写真・北尾渉(佐橋佳幸)ギタリストの佐橋佳幸さん【映画、ときどき私】 vol. 343佐橋さんが出演している本作で舞台となっているのは、昨年で創立45周年を迎え、「CITY-POP」の総本山として近年ふたたび注目を集めているレコーディングスタジオ「音響ハウス」。今回は、日本の音楽史を陰で支え続けてきた音響ハウスとゆかりの深い佐橋さんに、スタジオの魅力や忘れられない思い出などについて語っていただきました。―まずは、初めて音響ハウスに来たときのことを教えてください。佐橋さん高校の先輩に、シンガーソングライターのEPOさんとアレンジャーの清水信之さんがいましたが、僕が音楽業界に入る大きなご縁となったのは、彼らとの出会いでした。あるとき、そのおふたりが音響ハウスでレコーディングしていると聞いて、「見学に行っていいですか?」とお願いして来たのが初めて。僕は組んでいたロックバンドの解散が決まって、音楽活動とバイトを掛け持ちしていた頃でした。1985年にリリースされたEPOさんの「私について」という曲をレコーディングされていたときに、清水先輩からいきなり「ちょっとギター弾いていくか?」と言われたんです。で、そこにあったギターでソロを弾きました。あれがここで初めて演奏した瞬間でしたね。―このスタジオでの経験が、音楽の道で生きて行こうとする気持ちを後押しした部分もありましたか?佐橋さんそれはありましたね。そのあと僕はスタジオミュージシャンをやりつつ、編曲家やプロデューサーとして裏方の仕事も始めるわけですが、35年以上のキャリアのなかで一番多く来ているスタジオは音響ハウス。少し前にもレコーディングで来たばかりですが、やっぱりいいですよね。ここはインディペンデントのスタジオとしては先駆けだったそうで、それがいまだに同じ場所で、稼働し続けているのはすごいことだと思います。あとは、場所が銀座というのもいいですよね!当時、下北沢に住んでいた20代の若者にとっては、銀座に行くというだけでもイベント性が高かったです(笑)。「ここに来ない理由がない」のひと言に尽きる―いままでを振り返って、思い出の場所や忘れられない出来事を教えてください。佐橋さん通常、最後は6stで全部の音をまとめるミックス作業をすることが多いんですけど、その間スタジオ前のロビーで曲が仕上がるのをずっと待っている時間が楽しいんですよ。曲が完成する瞬間は、ワクワクしますからね。当時はテープに録音していたので、いまなら1時間でできることも3~4時間くらいかかってしまうのが普通で、当然スタジオにいる時間が長くなり、ここで1日中過ごすというのが日常茶飯事でした。でも、居心地がいいんですよね。それはみんながここを好きな理由でもあるのかなと。それから、映画のなかで矢野顕子さんがいまはないとんかつ屋さんの話などをしていましたが、ここで食べる出前も思い出深いんですよ。だから、銀座のグルメもここで味わった感じかな。しかも、人のお金で(笑)。―素敵な思い出ですね。ちなみに、ここだからこそ生まれた曲というのも、ありましたか?佐橋さんいろいろありますが、一度、ほかのスタジオで録音した曲が、どうしても思い通りのサウンドにならなくて、ピアノだけここの2stで録り直したということがありました。ほかのパートも、ピアノの演奏も素晴らしかったんですけど、ピアノの音だけがイマイチで……。それでプレイヤーに音響ハウスに来てもらって、ピアノだけ演奏して差し替えました。結果的には、妥協しなくてよかったと思える仕上がりになりましたが、そんなこともありましたね。―そういった設備の豊富さやクオリティの高さも、音響ハウスの魅力のひとつでしょうか?佐橋さんそうですね。ここは、時代の最先端に全部ついてきたところはあると思います。しかも、ここに常設してある機材や楽器は非常によくメンテナンスされているんですよ。最近のスタジオでは楽器どころか、ピアノがないところもありますから。たとえば、星野源ちゃんがいまだにここを使うのは、彼の好きなマリンバがちゃんとあるというのも大きいんですよ。昔から劇伴やCMのセッションも多いので、基本的な楽器が揃っている。とても安定した響きを持った部屋もありますし、僕みたいにみんなで合奏したい人にとっては大勢で音を出せる広いスタジオ環境も魅力。とにかく好きなところや素晴らしいところがいっぱいあるので、「ここに来ない理由がない」というひと言に尽きます。おもしろいインスピレーションが湧いてくる場所―ミュージシャンのみなさんにとっては、インスピレーションを刺激してくれる場所でもあるんですね。佐橋さん過去には、10人のギタリストが弾いているような効果を僕ひとりで出したくて、「広い部屋にもし10人のギタリストがいたら?」というのを想像しながらある実験をしたこともありました。同じパートをひとりで10回演奏するんですが、1回録音するごとにマイクをどんどん離し、10人が1つの部屋で同時に演奏している様子を疑似的に生み出しました。できあがりは、最高でしたし、おもしろかったですね。ここでしかできない実験や無駄な努力に見えるようなことも、本当にいろいろとやりました。でも、みんな本気ですし、おかしなことをしていても、誰も「バカじゃないの?」とは言わないんですよ。だからそういうおもしろいインスピレーションが湧くんだと思います。―最高の環境ですね。では、そのなかでも佐橋さんがお気に入りの場所を教えてください。佐橋さん実は、2stを使うときには、“僕の部屋”みたいにしているスペースがあるんです。本来ドラムのブースなんですが、そのなかにギターのアンプを入れて扉を全開にして弾くと、すごくいい音がするので、そこが僕の好きな場所。今回、映画のなかで作っている新曲「Melody-Go-Round」でも、(葉加瀬)太郎ちゃんのソロのあとにある僕のギターソロはそのスタイルで録りました。ここには数えきれないほど来ていますが、長年通うなかで見つけた方法です。―では、完成した映画をご覧になったときに印象に残っているエピソードはありましたか?佐橋さん自分が出ていないほかの方々の話は、どれも本当におもしろかったです。特に、矢野顕子さんが娘の(坂本)美雨ちゃんが眠たくなったときに、ドラムセット用の毛布をかけて寝かせたというのには爆笑しましたね。あとはプロデューサーの笹路正徳さんが音響ハウスの響きのことを「真面目な音」っておっしゃっていましたけど、まさにその通りだなと。オリジナリティを追求するあまり、変わった響きのスタジオもありますが、ここはどの部屋も本当にナチュラルな響きを持っているので、「ここでやれば間違いない!」という安心感はありますね。それから、大貫妙子さんがテープで録音していた時代の話をされているなかで、「テープを巻き戻す時間がいいのよ」とおっしゃってましたが、確かに僕もあの時間に次はどうしようかなって考えていたことを思い出しました。みんなの思いがそのまま曲に反映されている―アナログならではの良さがあったということですね。佐橋さんそうですね。ただ、いまでは笑い話だけど、当時はスタジオにいたみんなが固まってしまうような出来事もありました。たとえば、現在は有名な録音エンジニアがアシスタントだった頃、撮り直さないといけないところを残して、残さないといけないところを間違えて全部消してしまったんです。いまは間違えても、「Undo」で簡単に戻れますけど、あのときはそれができない時代でしたから。怒鳴られて泣いてましたよ(笑)。とはいえ、やり直せないからこそ味わう緊張感は優秀な人材を育てるためには、必要な部分もあるのかなとも思っています。―それはあるかもしれないですね。では、新曲「Melody-Go-Round」についてもおうかがいしますが、今回こだわった部分を教えてください。佐橋さんこの曲は、井上鑑さんや高橋幸宏さんをはじめ、音響ハウスを好きで使い慣れているメンバーが集まっているので、みなさんにもここのスタジオならではの音作りをしてもらえたと思っています。楽曲としては、80年代っぽいところがありますが、その時代はちょうど僕が音響ハウスデビューした頃なんですよね。撮影中もその当時のことや失敗した思い出話とか、お化けが出た話とか、いろんな話をしながら作ったので、そういうみんなの思いもそのまま曲に反映されていると思います。―現在はコロナ禍で音楽業界も大変だと思いますが、そのなかでお感じになっていることはありますか?佐橋さんエンタメ業界に関するガイドラインは、現場の事情がわかる人の意見を聞いたうえで見直してほしいという気持ちはありますね。すでに潰れてしまったスタジオもありますし、今後もそういうところは増えてきてしまうと思うので。本当に、現場は大変なことになっていますから。そのいっぽうで、みんな時間ができてものづくりに励んでいるところはあるので、いつかこの騒動が終わったとき、新しい良質なものがたくさん生まれている可能性もあるのかなと。僕も、そういう前向きな考えで過ごすようにはしています。ちなみに、これまでは家でギターを弾くことはあまりなかったんですけど、最近は家でも毎日弾くようになりました。もしかしたら、前よりもうまくなったかもしれないです(笑)。先日、Charさんにこの話をしたら、「俺も今までで一番ギター弾いてるかもしれない」と。お互いに「酒を飲むか、ギターを弾くしかないよな」って話になったくらいです。時代にそくしたものづくりを大事にしていきたい―(笑)。いままでとはまた違う音楽との向き合い方をされているんですね。佐橋さんそうかもしれないですね。あと、僕はギタリストの小倉博和さんと「山弦」というギターのデュオもやっていますが、「リモートでやろう」って話になって、もうすぐ15年振りのアルバムが完成しそうです。そんなふうに、おうちでできることもあるんだなというのは感じています。ただ、繰り返しにはなりますが、早くきちんとしたガイドラインの変更は早急にお願いしたいですね。―では、佐橋さんにとって“いい音”を生み出し続ける秘訣を教えてください。佐橋さん時代の変遷とともにツールやメディアも変わるので、音も変わってしまいますが、僕はその都度エンジニアやスタジオの方々と相談しながら自分が表現したいイメージに近づけていくようにはしています。それはたとえるなら、いつも変わらない味を出し続けている老舗の料理屋さんと同じこと。食材も人もいつも同じとは限らないなかで、ただ同じことを繰り返しているだけではなく、変わらない味を出すための努力をしているはずですから。そんなふうに、僕らも時代にそくしたスタイルにアレンジしながらものづくりすることは大事なことだと思いますし、変わっていくことに対応しないといけないなと。僕は「いつも通りやってるから責任取れないよ」みたいな生き方はしたくないですね。座右の銘は「温故知新」ですけど、ただの懐古主義になってしまうのではなく、「2021年なら2021年らしい音」みたいにそのときに合った音をこれからも作っていけたらいいなと思っています。インタビューを終えてみて……。とても気さくで、いろいろな裏話を聞かせてくださった佐橋さん。アーティストのみなさんがいかに音響ハウスを愛しているのか、その理由がよくわかりました。これからもここで誕生する素敵な音楽が、私たちの人生を彩り豊かなものにしてくれる予感でいっぱいです。45年にわたる歴史の重みを感じる!まるで音響ハウスのなかに、一緒にいるかのような気分を味わえる珠玉のドキュメンタリー。一流のアーティストたちがものづくりをする感動的な瞬間はもちろん、普段はなかなか見ることのできないミュージシャンたちの素顔も垣間見ることができるのはうれしいところです。“至福の音”に身を委ねてみては?写真・北尾渉(佐橋佳幸)取材、文・志村昌美ストーリー1974年12月、東京・銀座に設立された音響ハウス。多種多様なスタジオを持つ総合スタジオとして、数々の有名アーティストたちに愛されてきた。本作で、音響ハウスとの出会いや楽曲の誕生秘話について語っているのは、坂本龍一をはじめ、松任谷由実、松任谷正隆、佐野元春、綾戸智恵、矢野顕子、鈴木慶一、デイヴィッド・リー・ロス(ヴァン・ヘイレン)といった錚々たる顔触れ。そんななか、ギタリストの佐橋佳幸とレコーディングエンジニアの飯尾芳史が発起人となり、大貫妙子や葉加瀬太郎、井上鑑、高橋幸宏といった音響ハウスにゆかりのあるミュージシャンによるコラボ新曲「Melody-Go-Round」が誕生しようとしていた。心が躍る予告編はこちら!作品情報『音響ハウス Melody-Go-Round』11月14日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開配給:太秦©2019 株式会社 音響ハウス
2020年11月13日