発達障害のある子の大学受験。共通テストの合理的配慮申請に感じる高いハードル
特に、「受験生」は、子どもの心身に大きな負担やプレッシャーが長期的にかかりがちなので、「通常の状態ではない」ことも、十分考慮する必要があると思います。
共通テストに限らず、さまざまな場面で「合理的配慮の提供には、医師の診断書を」と線引きされることも多いのですが、このような事情などから、現実的には診断書の提出が難しい子たちもいるのです。
次に「状況報告書」について。
これは、高校等で受けた配慮について、高校の先生などに具体的に記入してもらう書類です(校長と担任等の記載者の署名が必要)。つまり「申請時期までに高校等での配慮実績が必要」なのです(ちなみに、高校等に在籍していない子の場合は、塾などの教育機関での配慮の状況や、専門家の意見を保護者が記入しても良いようです)。
ですから、高3の8月よりの申請時期に間に合うには、高1・高2から遅くとも高3の1学期までに、定期テスト等で試験時間を延長してもらったり、別室で受けたり、拡大した問題用紙を用意してもらったり、あるいは独自の配慮を実施して、それを学校側にも「個別の指導計画」「個別の教育支援計画」等にできるだけ記録してもらう必要があります。
……こうしたことにスムーズに対応できる学校は、現状どれだけあるでしょうか。
今年(2024年)4月より、通称「障害者差別解消法」が改正され、公立校だけでなく、私立学校等でも合理的配慮の提供は、法的義務となりました。
ですから、本来、すべての高校で生徒からの要望があれば、学校側は可能な範囲での合理的配慮を提供する必要があります。
ただし、現在、高校には特別支援学級はなく、一部の自治体で通級指導教室の設置が少しずつ増えている……という中で、発達障害対応の知識・経験の豊富な高校の先生は、まだまだ少ないのが現状のようです(大学の教員免許取得の必修科目に特別支援教育が組み込まれたのは2019年度から)。
大学入学後は、未診断も含めた障害学生への理解・配慮などもかなり進んでいる印象なので、特に高校時代は「支援のエアポケット」状態にあると思います。
そんな中、現実的には、一部の先進的な取り組みをしている国公立高や、発達障害の生徒を積極的に受け入れている私立高等でなければ、大部分の高校で現場の先生方が手探りをしている中、配慮実績を作ることはそんなにスムーズに行かないことも多いでしょう。受験勉強だけでも大変なのに、定期テスト等での配慮を受けるために、根気強く学校側と交渉する必要があるのなら(ここでも「診断書」