2017年7月12日 21:15
「I use. 」~私は使役する。~|12星座連載小説#117~山羊座 最終話~
前に体育館での朝練を覗いたときのことを思い出す。
紺の袴と、彼の凛々しい横顔に、不覚にもキュンとしたのは内緒だ。
私と彼の関係が、学校内の誰かに知られるのも時間の問題だろう。でも、それはそれで良いと今は思っている。
いつも形から入る私だから。必要以上に怖がって身構えてしまうけど、意外と人生なんとかなるものなのよね。(そんなこと、絶対に北野先生には言わないけどねっ!)
キーンコーンカーンコーン……
終業のチャイムが夕暮れの校内に響き渡る。茜色に染まったグラウンドでは、野球部員たちが今日も練習に勤しんでいる。
そんな姿を、窓から眺めるのが私は好きだ。
『私も、青春してるぞっ』
誰もいない廊下で、あたたかなオレンジ色の光に包まれながら、つい独り言を呟いてしまう。
スマホを見てみると、
「お疲れさま」
と、彼からLINEが入っていた。
私も、「ガンバってね」と送る。
変化のない日常の中で、私は何かが少しずつ変わってきたのを、ゆっくり、でも確かに感じていた。
山羊座の女の人生は、
“I use.” ~私は使役する。~
自分自身を取り巻く世界と、そして人々。
日々変化していく社会の中で、しっかりと人生の手綱を握り締めコントロールしていく。