2015年7月3日 08:00
スクールカーストの呪縛も 奥田亜希子『透明人間~』の魅力
奥田亜希子『透明人間は204号室の夢を見る』実緒は忘れられかけている作家だ。好意を寄せる春臣に掌編小説を送り続けているうちに彼の恋人いづみと出会い、奇妙な三角関係が始まった。集英社1300円
高校3年生のときに小説の新人賞を受賞した佐原実緒。その後書けなくなってしまったまま6年。<佐原澪>の名前で出した茄子紺色の処女小説は、いまや<目に見えない本>のようだ。
かつてのスクールカーストでの苦い記憶や、自分のみじめな現状から、ヒロインは、自分を透明人間のようだと感じている。
そんな彼女のささやかだが確かな決意を描いたのが、奥田亜希子さんの『透明人間は204号室の夢を見る』だ。
「実緒が書けない作家ということで、私自身ときっと重ねられるだろうな、と思ったりはしましたね(笑)。実際、実緒の面倒なキャラクターは、表情と言葉が一致しないために誤解されやすいなど想像の部分も多いのですが、ファッションの悩みや、おしゃれなお店に気後れする後ろ向きな気持ちは、昔の自分を思い出して投影しました。スクールカーストでいっときでも暗いところにいると、なかなかその呪縛から抜けられないのだということも、書きながら私が強く感じたことです」