2018年8月5日 22:00
沖縄の少年少女の運命をつむぐ! 小説『宝島』に込められた想い
手にするだけで熱が伝わってきそうなパワーを秘めた本。沖縄を舞台にした真藤順丈さんの『宝島』は、そんな圧倒的大作だ。
あの時代の沖縄で夢を追いかけた若者たちの運命を描く熱い一冊。
「7年前、戦後の琉球警察の話を書こうと取材に行ったんです。当時は戦果アギヤーという、米軍施設から物資を強奪していた人たちがいて、その事件を調べるうちに、警察より彼らに興味が移って。自分の書きたいものが表現できる気がしました」(真藤順丈さん)
書きたいもの、とは?
「路上のサバイバルだったり、市井の言葉や風景だったり、挫折も失敗もするけど生きていくバイタリティだったり……恰好よく言うと、我々が忘れている魂というところでしょうか」
1952年。盗んだ物資を市民に配る戦果アギヤーの義賊だったオンちゃんが、キャンプ・カデナで米兵に見つかり失踪。英雄を失った混乱の島で、オンちゃんと繋がりのあった3人の少年少女は生き抜く。
「3人それぞれに自分を投影していますね。お調子者で怠け者だけどやるときはやるというグスクはその後警官になり、血の気の多いレイは危険人物になっていく。教師になるヤマコはこの頃の沖縄を受け止める象徴的な女性。