2019年4月11日 18:50
失われた世界で「なぜ働くのか」を問う 漫画『一日三食絶対食べたい』の魅力
ユキはマイナス45°Cの雪原で、氷のなかから植物や生活用品など前時代の“遺品”を切り出す、少々危険な仕事をすることに。会社員時代の作者の経験が生かされているだけあって、上司とのやり取りやチーム間の軋轢など、仕事を通して描かれる感情はとてもリアルだ。
「今はお金を稼ぐだけでは、精神的に満足できないような人も多いと思うのですが、仕事の目的が自己実現ではなかったり、やりたい仕事がないような状況で、それでもなぜ働くかっていうと、大事な人と一緒にごはんを食べるためなのかなって」
オムライスやホットケーキなど、貴重な食材で丁寧に作る、質素だけどおいしそうなふたりの食事も見どころのひとつ。過酷な環境ゆえに、温かさや優しさがより染みてくる。
「これからもユキの成長をメインに、いろんな家族のかたちや、ビオトープを継続させるために働く人たちなどの姿を描いていきたいです」
現代人の複雑な感情を持ち合わせたまま、ふりだしに戻ってしまった世界で生きる人々を通して、本当に大事なものについて考えさせられる。
『一日三食絶対食べたい 1』滅亡寸前の世界で、少女のためにダメ人間が立ち上がる。読み切り作品が反響を呼び、連載化が実現。