2019年6月26日 21:10
読むと結婚が怖くなる!? 不倫夫婦を描く、金原ひとみの新作小説
「最近、夫婦がもめたり破綻したりする話を頻繁に聞くようになって。私自身も結婚生活が長くなり、お互い分かり合える部分と分かり合えない部分が明確になって、分かり合えないことへの悲しみが蓄積される感覚がある。それを描いてみたいな、というのが始まりでした」
独身女性の間で“読むと結婚が怖くなる”とまで言われる金原ひとみさんの新作『アタラクシア』。既婚ながら他の男性と恋愛中の由依を中心に、結婚生活にもがく複数の男女の視点が描かれる。次第に由依の空虚さが見えてきて強烈な印象を残す。
「感情が薄くしれっと生きている感じですよね。私自身がフランスに住んでいた頃、最初のうちは言葉も通じなくてすごくきつかったんですが、ある時、感情のスイッチが切れて、何も感じないダウナーな状態で生活していました。それは生きやすくはあるけれど満たされない空白感があって。
その経験が発端で、由依という人物を作りました」
由依の他、体だけの関係の愛人がいる真奈美、浮気性の夫を持つ英美、由依の夫や愛人ら、個々の生きづらさが生々しく吐露されていく。
「不倫というと快楽を求めるイメージがありましたが、最近はそこにアタラクシア(心の平静)