2019年7月5日 21:00
村上春樹のトラップ? 芥川賞&直木賞作家もハマった仕掛けとは?
自分好みの海外恋愛小説。
島本:上田さんの『私の恋人』もそうですけれど、男の人が一方的に女の人を追いかける話も好きで、アンナ・カヴァンの『氷』は、氷の壁が迫ってくる世界で、超法規的な手段を使って地の果てまで好きな少女を捜しに行っては、フラれてすごすご帰る話。設定の大胆さとリアリティとのバランスが不思議な一冊です。グレアム・グリーンの『情事の終り』は嫉妬深い作家が、自分を振った女性に他の男ができたと思って調べ始める。信仰が絡んでくる話なんですが、キリスト教と恋愛小説の親和性って高いなと感じて、自分も宗教と恋愛というものを書いてみたくなりました。
上田:フランスのミシェル・ウエルベックやイギリスのイアン・マキューアンは読みます?この二人は僕にとって、淀んだヨーロッパの2大巨頭なんです。西洋文化はこの500年くらいのトレンドですけれど、今はもう煮詰まっている。その問題を書いている二人ですね。
ウエルベックのほうが露悪的で原始的で欲望に忠実。たとえば『服従』はヨーロッパがイスラムのマネーや文化に服従していく話なんですよ。
島本:難しいけど面白そう。
上田:マキューアンの『土曜日』なんかは、脳神経外科医が認知症の母親をシステマティックに面倒を見たりする様子や、テロの脅威が描かれていく。