2020年4月10日 19:00
子どもを持つ意味とは? “女性の苦しさ”描く『犬のかたちをしているもの』
愛と性と生殖という、女性がいつか直面する問題に切り込む意欲作、高瀬隼子さんによる小説『犬のかたちをしているもの』。
「セックスをしないでも仲のいい、同棲中のカップルというのがまず浮かんできたんです。展開はそのつど考え、『こうだったらもっとつらいだろうな』と薫が思うような状況に、少しずつ追い込んでいきました」
高瀬隼子さんの『犬のかたちをしているもの』の主人公は、〈わたし〉こと間橋薫(まはしかおる)。卵巣の病気をきっかけに性交に抵抗を感じるようになり、それで別れた恋愛も経験している。〈セックスしなくなるよ、わたし〉と言う薫に、いまの恋人・郁也は〈薫のこと、好きだから大丈夫〉と答えてくれた人。実際、セックスレスになってからの方がずっと長い。そんなある日、郁也は、自分との子を妊娠している〈ミナシロさん〉という女性に、薫を引き合わせる。ミナシロさんから「産むけれど、薫と郁也にもらってほしい」と告げられ、薫はあらためて、愛や子どもを持つことの意味を考え始める。
「薫、郁也、ミナシロさん…、それぞれの立場に身を置いてみたら、どの葛藤も困惑もわかるというか、彼女たちが『こうなったかもしれない自分』に思えたんです」