2020年9月10日 20:50
岩井俊二監督「逆にエンジンがかかった」コロナ禍の心境を語る
手紙にまつわる仕草には情緒があり、惹かれるものがある
―確かに難しいかもしれないですね……。では、本作のモチーフにもなっている手紙についておうかがいしますが、これまでも手紙に関する作品を監督は撮られています。手紙にまつわる原体験があれば教えてください。
監督僕は仙台で生まれ育ったあと、横浜の大学に入ったので、そのころは友達から手紙がよく来ていました。LINEも何もない時代でしたけど、お互いに手紙を送り合うのはけっこう楽しかったですね。そういうことは、手紙を振り返ったときの懐かしい思い出としてあります。あとは、書簡体の小説を読んだりとか、手紙をエピソードにした作品を目にしたりしているうちに、やってみたいという思いがだんだん積もっていった気がしますね。
―デジタルの発達によって手紙は廃れつつありますが、だからこそ惹かれるものがあるのでしょうか?
監督『Love Letter』では主人公がワープロを使って手紙を書くスタイルでした。
かつては手紙を書くという所作はありきたりだったので変化を求めたわけですが、今回は便せんにペンで書くという一番オーソドックスな手法を取りました。改めてカメラを通して見ると、手紙を書く仕草にも読む仕草にも情緒があるんですよね。