2020年9月20日 18:30
安野モヨコ「1週間で40頁描いてと言われ…」 名作『ハッピー・マニア』秘話
という作品以外を休載し、しばらく休養をしていたんです、体調を崩しまして。その5年後くらいから少しずつ、再びストーリーマンガを描くことを試すようになり、『鼻下長紳士回顧録』という作品に取り掛かりました。しかし、正直なかなか原稿を仕上げることができない状況で。でもそんなイレギュラーな状態でも、『フィール・ヤング』の編集の方は、いつ描き上がるかもわからない原稿を待ってくれ、しかも上がったら掲載してくれるという、とても懐の深い対応をしてくださった。当時はもちろん今も、本当にありがたいと思っています。その気持ちが発端ですね。
――久しぶりにシゲタカヨコ(『ハッピー・マニア』の主人公)の恋愛世界に戻られたわけですが、スムーズに筆は進んだのですか?
いや、最初はやっぱり手探りでした。シゲタさんももう40代なわけで、昔の、20代の頃のようなシゲタさんだと、ちょっとおかしな人すぎる。
だからといって、落ち着きすぎてもつまらない。そのへんのバランスはすごく考えました。
――40代のバランスとは?
シゲタさんは既婚者で、子供がいない。そして、仕事をちゃんとしてきていない人。今の彼女は、人としてのエネルギーが落ちた状態といいますか(笑)。