2016年7月1日 20:00
セックスレスでもラブラブ夫婦…柚木麻子の新作は明るく笑える?
愛があるのに噛み合わないさまは、可愛らしくて滑稽でもある。
「私もそうなんですが、周りを見ても、夫以外の男性と全然しゃべれない既婚者って多いんですよ。『男の人と話が通じないなー』と思っている女性は案外多くて、初美も話が通じる唯一の相手と結婚し、すごく幸せだと思っている。そもそも、好きじゃなければどうでもいいわけで」
そう、好きだからこそ悩むのだ。
「初美は、友だち関係も仕事も良好で、生活そのものをエンジョイしまくっています。誰かに満たしてもらおうと思っていないところが、イマドキの女性らしくて好きですね。深刻になりがちな話ですが、性的なことがうまくいかないちょっとしたシーズンにすぎないかもしれない。自分が問題なのではと思っていた初美は、ふたりの問題だと捉え直すことで変わります。
実際、気持ちが通じ合っていれば焦る必要もないし、いろいろ模索すればいいんですよね」
◇約3年に及ぶ初美と啓介のセックスレスの行方は。各話に季節感を表すフルーツが登場。色とりどりの果実のように目を引く装丁にも注目。文藝春秋1300円
◇ゆずき・あさこ作家。1981年、東京都生まれ。2008年にオール讀物新人賞を受賞。