2021年7月11日 19:10
注目作家オススメの“官能小説” 官能を書く喜び、読む楽しみを語る
友だちと感想を言い合いたくなる作品集です。
蝉谷:一穂さんの挙げた山田太一さんの『飛ぶ夢をしばらく見ない』はどういう物語ですか。
一穂:主人公の中年男性は、病院で衝立越しにいる女性と性的な交流を持つのですが、翌朝、彼女は自分よりずっと年上のおばあさんだとわかり、ショックを受けるんですね。ところが、女性はどんどん若返っていくんです。ひとり逆行していく時間を生きる彼女に何ができるかと、主人公が苦悩する悲恋物語です。最初に読んだのが中学生のときなので「性の描写なんて要らない。そこがなければ美しい話なのに…」と思っていたんですが、大人になったいまは、「官能描写は貴重だな。あった方がいい」と大転換。
「喪失の日」筒井康隆
童貞喪失を夢見る青年は、官能の扉を開けられるか。
主人公は、24歳の会社員。ある日、童貞喪失のチャンスが巡ってくる。しかも相手は会社のマドンナ的存在。目の前の目標に囚われ、朝からハイテンションな青年は、仕事はミスし、挙動が同僚に不審がられる。「性愛で頭がいっぱいになった人間の滑稽さが味わい深いです」。(『最後の喫煙者―自選ドタバタ傑作集 1―』に所収)新潮文庫605円
「DECO-CHIN」