2021年7月11日 19:10
注目作家オススメの“官能小説” 官能を書く喜び、読む楽しみを語る
中島らも
ぶっ飛んだ世界観で描かれる音楽と性愛と生の三つ巴。
主人公が出会ったのは、奇形のメンバーで構成されている奇妙なバンド〈ザ・コレクテッド・フリークス〉。この短編が不慮の事故でこの世を去った著者の遺作でもある。「狂気じみた性愛を切り取ったラストシーンが圧巻。誰しもが持つ破滅願望を突き付けられ、背筋が冷えます」。
(『君はフィクション』に所収)集英社文庫576円
『SEX』LiLy
女性主体の性愛のかたち。共感ポイントも多いはず。
マッチングアプリで出会った男女の一夜限りのアフェア、ずるずる続くオフィスラブ…身近なシチュエーションがリアル、性愛にまつわる5編を収録。「女性が主体的にありのままに描かれているので、読んでいても清々しい。表現に臨場感もあって、『これぞ官能』と思わずときめいてしまうような圧巻の小説集です」。幻冬舎1650円
『飛ぶ夢をしばらく見ない』山田太一
限られた時間の中で、性愛は切なく燃え上がる。
「読み返して惹かれたのは、時を遡っていく恐怖に苛まれながら、束の間の蜜月を繰り返す睦子の強さと聡明さ。彼女の言葉〈私にこんな思いをさせている神様かなにかには、意志も善意も悪意も理性もなくて(略)