2022年3月12日 20:10
藤原季節「役を演じることで、日常の仮面をふわっと剥ぎ捨てることができて快感」
――映画中の兄と弟の間に流れるぎこちない空気がリアルで、そう感じたのは、自分自身の兄弟に対して気恥ずかしさや後ろめたさがあるからだと気づかされました。
後ろめたさは、僕にも心当たりがあります。僕には姉と妹がいるんですが、二人は地元の北海道に住み続けています。かたや自分は東京に出て就きたい仕事に就いている。そのことへの後ろめたさをカムフラージュするために、笑顔を見せているところもあるかもしれません。人って、兄である自分、弟である自分、息子である自分、社会人の自分と、相手やその場に応じて多少なりとも演じているんだと思います。バイト先でうまくやっていこうと無理にニコニコする自分はすごく嫌で、本当の自分との乖離が苦しかったですね。
――俳優は、役としていろんな人を演じる仕事ですよね。
役を演じることで、日常の仮面をふわっと剥ぎ捨てることができて快感ですね。自分の体を通して役を演じていると、自分の核心に近づいていく感覚があるんです。きっと僕は個人的な問題を作品に持ち込むのが好きなんでしょうね。自分の欠落した部分や心の中にある穴をどうしたら埋められるのか、役を通じて考えていますし、その穴が作品や役を引き寄せているようにも感じるんです。