2022年12月1日 19:00
告発されるリスクも……違法な中絶を選ぶしかなかった「女子大生の壮絶な実体験」【映画】
それはまるで、扉の裏側を見せてもらうような感じでもあったので、デリケートであると同時にワクワクする瞬間でもありました。
―実際、ご本人からお話を聞いて感銘を受けることもあったのではないでしょうか。
監督確かに彼女に話してもらったことのなかには、興味深い話がたくさんありました。なかでも印象的だったのは、彼女が感じた恐怖。非常に厳しい法律を犯してまで中絶をしたわけですから、それに対する恐怖心というのはものすごくあったと教えてくれました。
そして、忘れられないのは、中絶を行ったときの話をしていた彼女の目に浮かんでいた涙。その姿を目の当たりにしたとき、若い頃に味わった苦痛が80歳を越えたいまなお彼女のなかにあり、傷が癒えていないことを痛感せずにはいられませんでした。
中絶の権利は、合法化されたいまでも脆弱に感じる
―劇中では、アンヌを演じたアナマリア・ヴァルトロメイさんがアニーさんの心情を見事に体現されていたと思いますが、演出面で意識されていたことはありますか?
監督私たちの仕事は共同作業なので、私がオーケストラの指揮者のようにそれぞれのパートをどうしたらまとめられるかを考えました。
今回のアナマリアは、知的で最高のパートナーだったので、この作品における哲学を理解し、同じ方向を見ることができたと思います。