安達祐実「過去の自分が今の自分を支えてくれている感じがして嬉しい」
一昨年のドラマ『きれいのくに』では市川森一脚本賞を、昨年の舞台『ドードーが落下する』などでは岸田國士戯曲賞や読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞。今、急激に注目度が増している劇作家で演出家の加藤拓也さん。安達祐実さんにとって、新作舞台『綿子(わたこ)はもつれる』は、3作目の加藤作品出演となる。
本物の感情でやれることが、今の私には大事なんです。
「加藤さんと初めてご一緒したのは’20年の舞台『誰にも知られず死ぬ朝』でした。そのときは舞台出演が7年ぶりで苦手意識もあり、手応えを感じる余裕もないまま。ただ、稽古終盤、ふたりで会話をするシーンで、相手の俳優さんの芝居…セリフの言い方とか表情の作り方がいつもと少し違ったんです。そしたら、何度も演じた場面で、それまで一度もなったことのない感情になって、相手の芝居でこんなに変わるんだと驚きました。
そこで自分にもまだまだ伸びしろがあると期待を持てたし、あの面白さはなんだろうって知りたい気持ちが芽生えたんです」
一見何気ない日常の中、恋慕や嫉妬、自意識のねじれや衝動が引き起こす複雑な感情の機微を、セリフの言外に描き出す。そこに見えてくるのは、人間同士の分かり合えなさだ。