唯一無二の物語を紡ぎ出す29歳。脚本家、演出家、映画監督・加藤拓也に迫る!
――どちらの作品も胸が締め付けられました。『綿子はもつれる』では夫の連れ子を演じた田村健太郎さんが、『ほつれる』では冷め切った夫婦の夫役というギャップにも驚きました。もう一度舞台を観たくなったくらいです。
舞台では中学生役でしたからね。『綿子はもつれる』は10月に台湾で上演します。
――劇団た組、初の海外公演ですね!加藤さんの作品は、説明なしに場面がふいに飛んで時系列が前後することがあり、脳内でアジャストしながら観ていく作業が楽しいです。主人公の目的は何なのだろうと想像しながら、前のめりで観てしまいます。
どうしても人は他人の行動に明確な理由を求めがちですよね。
自分の中の限られた知識から、合理性を見出し、腑に落とそうとします。でも、はたからは非合理に見えても、当人にとっては理屈が通っている自然の行動ということは現実にたくさんあります。他者の合理性を押し付けない、起きる出来事や人物の行動に整合性を求めないということが、物語である意味なんじゃないかというふうに思っています。――加藤さんの作品を観て毎回痛感するのは、自分がいかに物語の定型に侵されているかということです。次はこうなるんじゃないかと物語をいくつかのパターンに照らし合わせながら観ていることに気づかされました。