唯一無二の物語を紡ぎ出す29歳。脚本家、演出家、映画監督・加藤拓也に迫る!
できればこのやり方は続けていきたいです。脚本の解釈を共有するには、パッと集まってその場で合わせるのでは難しい。俳優の体を通して、セリフがセリフではなくなる瞬間までリハーサルを重ね、時間をかけて作り上げるというのは必要かなと思いますね。
――同じ芝居を繰り返して、新鮮味を失うことはないのですか?
1万回同じセリフを口にしても、新鮮な気持ちで言えるのが俳優なんだと思います。もちろん現実には1万回もリテイクすることはないですし、蓄積は存在するけど。実際の撮影では、立ち位置や動き、セリフを話すタイミングなど、踏まえなければいけない決まり事がたくさんあります。でも、そういうものがまるでないかのように、その場に本当に生きているように感じさせる演技というのは、勘でできることではないですよね。
――脚本も演出も、綿密に積み上げているから、リアルな表現が生まれているんですね?
普通に話しているように見せるって、俳優の能力の高さも必要ですし、努力も必要なんですよね。
普通の会話なので、一見誰でも喋れそうに見えますが、そのまま話しても言葉が抜けていってしまって、観る人に伝わりません。ちゃんとその瞬間瞬間、写実的な気持ちを動かしながら自分の言葉で話しているように喋るというのは、作品に触れている時間が長くないと難しいと思います。