「元恋人の2人を再会させることに怖さもあった」トラン・アン・ユン監督が語る名優たちの共演秘話
という考え方ですからね。
本作では、2つの官能性を合わせて表現している
―本作は料理映画ではありますが、官能性を持って表現されているのがトラン・アン・ユン監督ならではだと感じました。そのあたりはどのような意識をされていましたか?
監督映画というのは、アイデアや言葉を具現化するものだと思っているので、この映画では料理が持つ“肉体性”というのを描き出したいと考えていました。本作で感じられる官能性については、俳優たちの内から湧き出るものとカメラワークが重要で、それらが交わり合って1つのハーモニーとなっています。僕が人間の営みのなかでもっとも官能的な行為と考えているのは、食べることとセックスをすること。劇中でわかりやすい例を挙げるなら、洋ナシのコンポートが登場するシーンのあとに、まるで洋ナシのようなフォルムをしているウージェニーの裸体を映しています。そんなふうに、2つの官能性を映像で表現しました。
―なるほど。
調理過程の撮影はワンカットで行い、カメラは1台しか使われなかったというのも驚きです。
監督みなさんからすると、とても自由で優雅な感じに見えるかもしれませんが、今回のカメラワークは非常に複雑でした。