「元恋人の2人を再会させることに怖さもあった」トラン・アン・ユン監督が語る名優たちの共演秘話
事前に作り込まず、俳優たちに好きなように動いてもらうなかで一番いいタイミングをカメラに捉えようとしていたので、そこは大変だったかなと。
でも、余白を残すからこそ、そこに発見や即興の余地がありますし、しなやかさも生まれたと思っています。撮影中は、ステディカムを持ったカメラマンの後ろで腰を持ち、僕が誘導していく形を取りました。
自分と妻との関係性が反映されている
―官能性を意識されていたとはいえ、監督の過去作で描かれているエロティックさとは異なるような印象を受けましたが、ご自身のなかでもそのあたりの感覚に変化はありますか?
監督下手すると退屈に見えてしまうので、そもそも官能性を映像化するのは非常に難しいことなんですよ。しかも今回は、人物の精神性や魂の美しさを含めたうえで官能性を出さなければいけなかったので。
劇中にドダンがウージェニーに対して「君が食べているところを見ていてもいい?」というシーンがありますが、これはフレーズ自体がとてもエロティックですよね。そんなふうに、本作では2人がお互いの話に耳を傾け、穏やかな視線を向け合うなかで生まれる官能性を描きました。とても繊細な感覚ですが、みなさんにも感じ取っていただけると思っています。