恋心は今も昔も一緒!? 『和泉式部日記』の和歌から読み解く“平安女子の恋のリアル”
この歌が詠まれたのは梅雨時。親王は大雨で増水した川の水を見て「岸に到達するほどの水より、あなたを想う心のほうが深い」と送る。恋心の深さを水の深さで表現するのは和歌の習わし。対して和泉式部は「そうは言っても今は来てくれないのでしょう。嬉しくないわ」とピシャリ。「岸」が「来し」に、「川」が「彼(か)は」に掛けられている。
揺らぐ想い
楽しさばかりでない恋愛に、振り回される心。時に素直に、まっすぐな想いを込めていく。
和泉式部は恋多き女とウワサされた人物。ある日、親王が彼女の家へ行くと、男の車が止まっていたため、親王は憤る。それは和泉式部の家に住んでいた別の女性の恋人の車だったが、親王はこの一件を根に持ってしまう。
つらしともまた恋しともさまざまに思ふことこそひまなかりけれ【敦道親王】
あふことはとまれかうまれ嘆かじをうらみ絶えせぬ仲となりなば【和泉式部】
浮気を疑われている!?でも別れたくない!
しばらく親王からの連絡が途絶えたのち、届いたのがこの一首。「つらい、恋しいとか、いろいろ考えて心に暇がない」。つまり、あなたのことで頭がいっぱいだということ。それに対して和泉式部は「二人の仲が絶えてしまわないなら、会えるとか会えないとか嘆かない」