韓国の名優クォン・ヘヒョ「好きなことを仕事にできていなくても、悩まなくていい」と語る意味
あえて俳優たちに準備をさせないようにしているのです。
ホン監督の演出は日常を描くうえでは“最善の方法”
―つまり、準備をさせないからこそ得られるものがあると。
クォンさんそうですね。事前に情報がたくさんあると、俳優たちはこれまでの慣習を踏襲して、何らかのテクニックを使って演じようと思ってしまいます。でも、それを遮断することによって、私たちの日常や人生により近づけるようになるので、これが“最善の方法”と言えるのかもしれません。
俳優というのは、前後の情報を切り取られた状態になると、いまこの瞬間に精神を捧げ、真心を込めて役を演じようという気持ちが強くなるものです。実際、誠意を込めてセリフを発し、相手の言葉により耳を傾けられるようになりますから。
―なるほど。
そういう部分がホン監督の演出によって引き出されるのですね。クォンさん撮影の30分から1時間ほど前に脚本をもらうのですが、そんな短い時間でも俳優というのは本能が働いて、どういうふうに演じようかと計画を立ててしまいがちです。ただ、そうするとホン監督から「いまのは偽物だね」とか「それだとありきたりだよ」とか「演技をしないでほしい」と言われてしまいます。